説明

複合筆記具用の固形芯繰出体

【課題】複合筆記具用の固形芯繰出体を細径に構成できるとともに、ガイド筒9内で固形芯10が折れた場合でも、固形芯10をガイド筒9により確実に保持する複合筆記具用の固形芯繰出体に適用できる。
【解決手段】チャック1とチャック1を長手方向後方に付勢するスプリング5とを有するチャックユニットにガイド筒9を連結する。このガイド筒9内に固形芯10を内蔵し、チャック1の前進動作により押棒8を繰り出す。この押棒8の前進とともに固形芯10を繰り出す固形芯繰出体であって、ガイド筒9の前部に固形芯10を適度の力で保持する係合部9Bを形成するとともに、押棒8の前端に前膨出部8Aを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャックにより繰り出される押棒で固形芯を繰り出す複合筆記具用の固形芯繰出体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、チャックの前進動作によって送出される細棒の先端に棒状物を取り付け、この棒状物をチャックの前進動作によって案内筒内を前進させる棒状物繰り出し装置が知られている。(特許文献1参照)
【0003】
しかしながら、上記棒状物繰り出し装置は、棒状物を固形芯にした場合には、固形芯が細棒46から抜けたり、あるいは固形芯が折れたりすると、固形芯が案内筒部50から外れて落下してしまうものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−226193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、ガイド筒内で固形芯が折れた場合に、固形芯がガイド筒から外れて落下してしまう点である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、チャックとチャックを長手方向後方に付勢するスプリングとを有するチャックユニットにガイド筒を連結し、このガイド筒内に固形芯を内蔵し、チャックの前進動作により押棒を繰り出し、この押棒の前進とともに固形芯を繰り出す固形芯繰出体であって、ガイド筒の前部に固形芯を適度の力で保持する係合部を形成するとともに、押棒の前端に前棒出部を形成したことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、チャックの前進動作によって押棒を繰り出し、この押棒とともに固形芯を繰り出す複合筆記具用の固形芯繰出体において、固形芯が折れた場合でもガイド筒から固形芯が外れる恐れがないという利点が得られるものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の実施例1の複合筆記具用の固形芯繰出体を示す拡大部分断面図である。(実施例1)
【図2】図2は、本発明の実施例1の複合筆記具用の固形芯繰出体を示す主要部拡大平面図である。(実施例1)
【図3】図3は、本発明の実施例1の複合筆記具用の固形芯繰出体を複合筆記具に収納した状態を示す部分断面図である。(実施例1)
【図4】図4は、本発明の実施例2の複合筆記具用の固形芯繰出体を示す拡大部分断面図である。(実施例2)
【発明を実施するための形態】
【0009】
チャックの前進動作によって押棒を繰り出し、この押棒とともにガイド筒内を繰り出される固形芯が折れてしまった場合でも、ガイド筒より固形芯が外れて落下してしまう恐れがない複合筆記具用の固形芯繰出体を実現した。
【実施例1】
【0010】
以下、図1及び図2に基づいて本発明における実施例1の複合筆記具用の固形芯繰出体を説明する。尚、図1の左側を前方とし、右側を後方とする。先ず、チャック1の頭部1Aを複数に分割し、このチャック1の頭部1Aに締具2を外嵌する。更に、締具2を受け止める外筒3の内段3Aとチャック1の後部に連結されたノック筒4の前端との間に取付時荷重300g〜800g程度でスプリング5を取り付けチャックユニットを構成する。前記スプリング5によりチャック1を長手方向後方に付勢し、チャック1の頭部1Aを締具2に押圧する。すると、締具2が外筒3の前端に当接し、チャック1が閉じられる。前記外筒3の前部に先部材6を着脱可能に螺合し、先部材6の係止段6Aと外筒3の前端との間を締具2が摺動可能に構成する。前記先部材6にはゴム製のホルダー7が内蔵される。
【0011】
前記ホルダー7及びチャック1内に合成樹脂製の棒状体からなる押棒8を挿入し、押棒8をホルダー7で適度の力で保持するとともにチャック1で押棒8を強く保持する。このホルダー7及びチャック1に挿入された合成樹脂製の押棒8の前端に熱を加えて大型の外鍔状に変形させ前膨出部8Aを形成する。また、押棒8の後端に熱を加えて小型の外鍔状に変形させ後膨出部8Bを形成する。更に、金属パイプからなるガイド筒9の前部に長手方向に伸びた切溝9Aを並列に形成し、この切溝9Aにより構成された弾性部を内方に変形させて係合部9Bを形成する。このガイド筒9の後部を前記先部材6の前部に圧入固着し、固形芯繰出体を構成する。
【0012】
次に、ノック筒4を前方に押圧してチャック1を拡開した状態で、前記ガイド筒9に固形芯10を挿入し、ガイド筒9の係合部9Bで固形芯10を適度の力で保持するとともに、固形芯10の後端を押棒8の前膨出部8Aに当接し、固形芯10を十分に挿入した状態でノック筒4の押圧を解除し、固形芯繰出体に固形芯10を収納する。この固形芯10は、直径2.4mm程度の棒状体で、消しゴムで消去可能な焼成した鉛筆芯や、無焼成の色鉛筆芯等が考えられる。
【0013】
この固形芯繰出体は、並列した切溝9Aにより弾性部を形成し、この弾性部を内方に変形させて係合部9Bを形成するので、ガイド筒9が太くならず細径の固形芯繰出体が構成できる利点が得られるものである。また、押棒8の後端に後膨出部8Bが形成されているので、誤って押棒8を前方に引っ張っても押棒8が外れてしまう恐れがない。
【0014】
更に、この固形芯繰出体には、ノック筒4の細径の後部4Aに合成樹脂製のパイプ部材11を圧入固着して取り付ける。このパイプ部材11の後部を操作部材12の前端に形成された接続部12Aに圧入固着する。この操作部材12は、後端側に形成されかつ外方に突出する操作部12Bと、操作部12Bの反対側に設けられる前側突出部12Cと、前側突出部12Cの後方に設けられる後側突出部12Dと、接続部12Aのやや後方に形成される鍔部12Eとを備える。
【0015】
前記固形芯繰出体は、従来から実施されている種々の複合筆記具に利用可能であるが、例えば、操作部材を接続した2種類の筆記体を任意に選択して後方から軸筒13内に複数収納して使用する複合筆記具に利用可能である。この複合筆記具は、軸筒13内に色の異なるボールペン体14を2本収納して使用することもできるが、図3に示したように1本はボールペン体14を収納し、別の1本を本発明の固形芯繰出体を選択して使用することができる。更に詳しく説明すると、先ず、蓋体15が軸筒13の後端の開口部を閉鎖した状態から、係合を解除して蓋体15を開き軸筒13の後端の開口部を開口する。その後、互いに接続されたボールペン体14と操作部材16を開口部を通して軸筒13内に挿入する。更に、ボールペン体14はコイルスプリング17及びスプリング支持部材18の内孔18Aを挿通して前後方向に移動可能に収納される。また、操作部材16の操作部16Aは軸筒13の側壁に前後方向に伸びる窓孔13Aより突出する。そして、コイルスプリング17はスプリング支持部材18と操作部材16の鍔部16Bにより圧縮される。このコイルスプリング17により後方に付勢された操作部材16は後端が蓋体15に当接して停止する。同様に、パイプ部材11を介して操作部材12に接続された固形芯繰出体もコイルスプリング17及びスプリング支持部材18の内孔18Aを挿通して前後方向に移動可能に収納される。そして、コイルスプリング17により後方に付勢された操作部材12の後端が蓋体15に当接して停止する。また、操作部材12の操作部12Bが軸筒13の側壁に延びる窓孔13Aより突出する。
【0016】
そして、固形芯10で筆記を行う場合には、固形芯繰出体に接続された操作部材12の操作部12Bを窓孔13Aに沿って前方にスライドさせることにより、固形芯10が軸筒13の前端孔13Bから突出するとともに、操作部材12の後端係止部が軸筒13の内壁に形成された係止壁部に係止され、固形芯10が突出した状態に維持される。
【0017】
この状態で固形芯10を繰り出す場合には、操作部材12の操作部12Bを前方に押圧すると、ガイド筒9の前端が軸筒13の前端部内壁13Cに当接する。更に、操作部材12を前進させるとガイド筒9に対してチャック1が前進する。すると、締具2により閉じられたチャック1は押棒8を保持して前進する。押棒8が前進すると、押棒8に押された固形芯10がガイド筒9の係合部9Bと摩擦接触しながら前進する。そして、締具2が先部材6の係止段6Aに当接すると、チャック1から締具2が外れて押棒8を解放し、一定量固形芯10が繰り出される。尚、押棒8の後端に後膨出部8Bが形成されているので、必要以上に操作部材12の押圧を繰り返して押棒8を繰り出しても、押棒8の後膨出部8Bがノック筒4の内段4Bに当接するので、押棒8が外れてしまう恐れはない。また、押棒8の前端に大型の前膨出部8Aを形成することにより、押棒8で固形芯10を確実に押すことができ、固形芯10の後端を削ったり破損させてしまう恐れはない。
【0018】
また、固形芯10を没入させる場合には、ボールペン体14に接続された操作部材16を押圧すれば、ボールペン体14側の操作部材16の前側突出部16Cが固形芯繰出体に接続された操作部材12の後側突出部12Dに当接して固形芯繰出体に接続された操作部材12を外方に押し上げ、軸筒13の係止壁部から操作部材12の後端係止部が外れ固形芯繰出体が後退して固形芯10が没入する。また、同様にしてボールペン体14を突出したり没入することができる。
【0019】
この筆記体を任意に選択し後方から軸筒13内に挿入して使用する複合筆記具の場合には、ガイド筒9、先部材6、外筒3、ノック筒4及びパイプ部材11の最大外径をコイルスプリング17の内径及びスプリング支持部材18の内孔18Aより細く形成する。
【実施例2】
【0020】
以下、図4に基づいて本発明における実施例2の複合筆記具用の固形芯繰出体を説明する。尚、図1と同一部材は同一の符号を付してその説明を省略する。押棒108をホルダー7及びチャック1に挿入する前に、押棒108の前端に熱を加えて大型の外鍔状に変形させ前膨出部108Aを形成する。この押棒108をホルダー7及びチャック1内に前方から挿入する。
【0021】
次に、ノック筒4を前方に押圧してチャック1を拡開した状態で、ガイド筒9に固形芯10を挿入し、ガイド筒9の係合部9Bで固形芯10を適度の力で保持するとともに、固形芯10の後端を押棒108の前膨出部108Aに当接し、固形芯10を十分に挿入した状態でノック筒4の押圧を解除し、固形芯繰出体に固形芯10を収納する。この固形芯繰出体も、従来から実施されている種々の複合筆記具に利用可能である。
【0022】
尚、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、ノック筒、外筒、先部材といった部材は複数の部材を固着して一体化し構成しても良い。また、先部材の一部に弾性片を形成してホルダーとしても良い。更に、押棒に形成される前膨出部や後膨出部は必ずしも一体で形成する必要はなく、別部品を圧入や接着により固着して形成することも考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
複合筆記具用の固形芯繰出体を細径に構成できるとともに、ガイド筒内で固形芯が折れた場合でも、固形芯をガイド筒により確実に保持する複合筆記具用の固形芯繰出体に適用できる。
【符号の説明】
【0024】
1 チャック
5 スプリング
8 押棒
8A 押棒8の前膨出部
9 ガイド筒
9A ガイド筒9の切溝
9B ガイド筒9の係合部
10 固形芯
108 押棒
108A 押棒108の前膨出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャックとチャックを長手方向後方に付勢するスプリングとを有するチャックユニットにガイド筒を連結し、このガイド筒内に固形芯を内蔵し、チャックの前進動作により押棒を繰り出し、この押棒の前進とともに固形芯を繰り出す固形芯繰出体であって、ガイド筒の前部に固形芯を適度の力で保持する係合部を形成するとともに、押棒の前端に前膨出部を形成したことを特徴とする複合筆記具用の固形芯繰出体。
【請求項2】
ガイド筒の前部に長手方向に伸びた切溝を並列に形成し、この切溝により構成された弾性部を内方に変形させて係合部を形成したことを特徴とする請求項1記載の複合筆記具用の固形芯繰出体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−52520(P2013−52520A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190383(P2011−190383)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(303022891)株式会社パイロットコーポレーション (647)
【Fターム(参考)】