複合粒子の製造方法、複合粒子、樹脂組成物、波長変換層および光起電装置
【課題】発光特性(発光量子収率)に優れるとともに、長期にわたる分散性および耐久性に優れた複合粒子を効率よく製造する方法の提供。
【解決手段】酸化亜鉛の半導体粒子と、無機化合物の粒子とを含む複合粒子を製造する方法であって、複合粒子の製造工程中に少なくとも1回、複合粒子の中間体を還元処理する工程を有することを特徴とするものである。還元処理する工程としては、半導体粒子の分散液と無機化合物の粒子の分散液を混合し噴霧乾燥法により混合分散液を乾燥させるに際し、還元能を有する気体を含む還元雰囲気下で、複合粒子の中間体を加熱処理するものであり、例えば、噴霧乾燥装置100を用いて複合粒子の中間体を噴霧乾燥する際に、キャリアガスとして水素ガスを用いる方法が好ましい。かかる複合粒子の製造方法により製造された複合粒子を含有する樹脂組成物は、高性能で信頼性に優れた波長変換層および光起電装置に用いられる。
【解決手段】酸化亜鉛の半導体粒子と、無機化合物の粒子とを含む複合粒子を製造する方法であって、複合粒子の製造工程中に少なくとも1回、複合粒子の中間体を還元処理する工程を有することを特徴とするものである。還元処理する工程としては、半導体粒子の分散液と無機化合物の粒子の分散液を混合し噴霧乾燥法により混合分散液を乾燥させるに際し、還元能を有する気体を含む還元雰囲気下で、複合粒子の中間体を加熱処理するものであり、例えば、噴霧乾燥装置100を用いて複合粒子の中間体を噴霧乾燥する際に、キャリアガスとして水素ガスを用いる方法が好ましい。かかる複合粒子の製造方法により製造された複合粒子を含有する樹脂組成物は、高性能で信頼性に優れた波長変換層および光起電装置に用いられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合粒子の製造方法、複合粒子、樹脂組成物、波長変換層および光起電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光起電装置は、太陽光を光電変換して電気エネルギーを取り出す太陽電池として用いられる。この種の光起電装置としては、現在、光を起電力に変換する光起電層に単結晶シリコン、多結晶シリコン、球状シリコンやアモルファスシリコン、CdTe、CIGSを用いたものが主流である。最近では、色素増感型太陽電池などの有機太陽電池なども開発されており、有機系材料を含む様々な光起電層が用いられるようになってきた。
【0003】
これらの光起電装置の場合、分光感度が略可視光領域に限られているため、太陽光線のうち紫外領域や赤外領域などの可視光以外の領域を効率よく電気エネルギーに変換することができない。また、結晶シリコン太陽電池には、紫外光吸収による温度上昇に伴って、光電変換効率が低下するという問題があった。さらに、有機系材料を含む光起電層を用いた有機太陽電池においては、紫外線による有機系材料の劣化に伴って、光電変換効率が低下するという問題があった。
【0004】
ここで、特許文献1には、波長変換物質としてCdSe、CdTe、GaN、Si、InP、ZnOなどの半導体微粒子やそれらをコアシェル型にした粒子(コアシェル粒子)で構成された量子ドットを用いることが提案されている。このような量子ドットを用いることにより、光電変換に用いることのできない波長領域の光を、光電変換可能な波長領域の光に変換し、太陽電池の光電変換効率を高め得るエネルギー変換膜が得られる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の量子ドットでは、発光特性が低く、太陽電池の光電変換効率を十分に高めるには至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−216560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、発光特性(発光量子収率)に優れるとともに、長期にわたる分散性および耐久性に優れた複合粒子を効率よく製造可能な複合粒子の製造方法、かかる複合粒子の製造方法により製造された複合粒子、およびこの複合粒子を有する樹脂組成物を提供することにある。
【0008】
また、本発明の目的は、高性能で信頼性に優れた波長変換層および光起電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、下記(1)〜(28)の本発明により達成される。
(1) 酸化亜鉛の半導体粒子と、無機化合物の粒子とを含む複合粒子の製造方法であって、
前記複合粒子を製造する工程中に少なくとも1回、前記複合粒子の中間体を還元処理する工程を有することを特徴とする複合粒子の製造方法。
【0010】
(2) 前記還元処理する工程は、還元能を有する気体、および還元能を有する気体と不活性気体との混合気体のいずれかで構成される還元雰囲気下で、前記複合粒子の中間体を加熱処理するものである上記(1)に記載の複合粒子の製造方法。
【0011】
(3) 前記還元能を有する気体は、水素ガスである上記(2)に記載の複合粒子の製造方法。
【0012】
(4) 前記混合気体中の前記還元能を有する気体の含有率は、1〜10体積%または85〜100体積%である上記(2)または(3)に記載の複合粒子の製造方法。
【0013】
(5) 前記複合粒子の中間体は、還元能を有する粒子を含むものであり、
前記還元処理する工程は、前記複合粒子の中間体を加熱処理するものである上記(1)に記載の複合粒子の製造方法。
【0014】
(6) 前記還元能を有する粒子は、炭素粒子である上記(5)に記載の複合粒子の製造方法。
【0015】
(7) 前記還元処理する工程は、同一の空間内に、前記複合粒子の中間体と、還元能を有する金属の単体または合金とを併存させ、これらを加熱処理するものである上記(1)に記載の複合粒子の製造方法。
【0016】
(8) 前記還元処理する工程は、少なくとも内面が、前記還元能を有する金属の単体または合金で構成された配管内に、前記複合粒子の中間体を設けた状態で、前記配管を加熱処理するものである上記(7)に記載の複合粒子の製造方法。
【0017】
(9) 還元能を有する金属は、銅である上記(7)または(8)に記載の複合粒子の製造方法。
【0018】
(10) 前記還元処理する工程は、200〜1,000℃で実施するものである上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の複合粒子の製造方法。
【0019】
(11) 前記半導体粒子と前記無機化合物の粒子とを複合化する工程を行いつつ、前記還元処理する工程を行う上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の複合粒子の製造方法。
【0020】
(12) 前記半導体粒子と前記無機化合物の粒子とを複合化する工程の後に、前記還元処理する工程を行う上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の複合粒子の製造方法。
【0021】
(13) 前記複合化する工程は、噴霧乾燥装置により行う上記(11)または(12)に記載の複合粒子の製造方法。
【0022】
(14) 前記半導体粒子の一次粒子の平均粒径は、1〜10nmである上記(1)ないし(13)のいずれかに記載の複合粒子の製造方法。
【0023】
(15) 前記無機化合物の粒子は、酸化物の粒子である上記(1)ないし(14)のいずれかに記載の複合粒子の製造方法。
【0024】
(16) 前記無機化合物の粒子は、シリカ(SiO2)の粒子およびジルコニア(ZrO2)の粒子の少なくとも一方である上記(15)に記載の複合粒子の製造方法。
【0025】
(17) 前記半導体粒子の含有量は、前記複合粒子全体の10〜90体積%である上記(1)ないし(16)のいずれかに記載の複合粒子の製造方法。
【0026】
(18) 上記(1)ないし(17)のいずれかに記載の複合粒子の製造方法により、得られることを特徴とする複合粒子。
【0027】
(19) 上記(18)に記載の複合粒子と、硬化性樹脂とを含むことを特徴とする樹脂組成物。
【0028】
(20) 前記複合粒子の含有量は、前記樹脂組成物全体の30〜70体積%である上記(19)に記載の樹脂組成物。
【0029】
(21) 上記(19)または(20)に記載の樹脂組成物で構成された層を硬化させてなることを特徴とする波長変換層。
【0030】
(22) 上記(21)に記載の波長変換層を有することを特徴とする光起電装置。
【0031】
(23) 前記波長変換層が、その面内に凹凸構造を有する上記(22)に記載の光起電装置。
【0032】
(24) 前記凹凸構造の高低差が300nm〜100μmである上記(23)に記載の光起電装置。
【0033】
(25) 前記凹凸構造の面内周期が300nm〜50μmである上記(23)または(24)に記載の光起電装置。
【0034】
(26) 前記凹凸構造は、前記凹凸構造より小さな微細凹凸形状を有する上記(23)ないし(25)のいずれかに記載の光起電装置。
【0035】
(27) 2層以上の前記波長変換層を積層してなる積層体を有するものであり、
前記2層の波長変換層の間で、前記凹凸構造の形状が異なっている上記(23)ないし(26)のいずれかに記載の光起電装置。
【0036】
(28) 前記波長変換層は、前記樹脂組成物をインクジェット法により供給し、供給された前記樹脂組成物を硬化させてなるものである上記(22)ないし(27)のいずれかに記載の光起電装置。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、複合粒子の発光特性(発光量子収率)に優れ、かつ、長期にわたる分散性および耐久性に優れた複合粒子を効率よく製造することができる。また、発光特性に優れた複合粒子を有する樹脂組成物が得られる。
【0038】
また、本発明によれば、前記樹脂組成物を用いることにより、高性能で信頼性に優れた波長変換層および光起電装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の複合粒子を含む本発明の波長変換層を備える本発明の光起電装置の第1実施形態を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の複合粒子を含む本発明の波長変換層の実施形態を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の複合粒子の製造方法の第1実施形態に用いられる噴霧乾燥装置の一例を示す概略図である。
【図4】本発明の光起電装置の第2実施形態を模式的に示す断面図である。
【図5】本発明の光起電装置の第3実施形態を模式的に示す断面図である。
【図6】本発明の光起電装置の第4実施形態を模式的に示す断面図および平面図である。
【図7】本発明の光起電装置の第4実施形態を模式的に示す断面図および平面図である。
【図8】本発明の光起電装置の第4実施形態を模式的に示す断面図および平面図である。
【図9】本発明の光起電装置の第4実施形態を模式的に示す断面図および平面図である。
【図10】本発明の光起電装置の第4実施形態を模式的に示す断面図および平面図である。
【図11】本発明の光起電装置の第4実施形態を模式的に示す断面図および平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の複合粒子の製造方法、複合粒子、樹脂組成物、波長変換層および光起電装置について、添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0041】
(複合粒子)
まず、本発明の複合粒子について説明する。
【0042】
図1は、本発明の複合粒子を含む本発明の波長変換層を備える本発明の光起電装置の第1実施形態を模式的に示す断面図、図2は、本発明の複合粒子を含む本発明の波長変換層の実施形態を模式的に示す断面図である。
【0043】
本発明の複合粒子は、酸化亜鉛の半導体粒子と、無機化合物の粒子とを含む粒子である。
【0044】
このような複合粒子は、吸収光波長に対して発光波長を変化させる機能を有することから、特に波長変換材料として用いられる。図1に示す光起電装置(本発明の光起電装置)1は、例えば太陽電池等に適用されるが、光の照射に伴って起電力を生じる光起電層2と、光起電層2の光の入射面側に設けられ、本発明の複合粒子を含む波長変換層(本発明の波長変換層)3とを有している。波長変換層3は、光電変換に適さない波長領域の光(電磁波)を光電変換可能な波長領域の光に変換し、光起電装置1の光電変換効率の向上を図ることができる。
【0045】
図2に示す波長変換層3は、複合粒子4(本発明の複合粒子)を硬化性樹脂5に分散させてなるものである。
【0046】
図2に示す複合粒子4は、半導体粒子6と無機化合物の粒子8とを含むものであるが、これらの粒子6、8の分布形態は、特に限定されるものではない。好ましい分布形態の一例としては、(a)無機化合物の粒子8により半導体粒子6が覆われている形態(図2(a)参照)が挙げられる。半導体粒子6には、その高い活性がゆえ、硬化性樹脂5の耐久性を低下させるが、半導体粒子6を覆うように無機化合物の粒子8が配置されていることにより、半導体粒子6の活性が抑制されることになり、硬化性樹脂5の耐久性をより高めることができる。その結果、本発明の複合粒子4を用いた波長変換層3は、耐久性の高いものとなる。
【0047】
さらにこの形態は、より詳しくは、半導体粒子6と無機化合物の粒子8とが互いに凝集(吸着)している形態であり、その凝集パターンから、いくつかの形態に分類される。
【0048】
各粒子6、8の凝集パターンに基づいて分類された複合粒子4の形態としては、例えば、(b−1)半導体粒子6と無機化合物の粒子8とがランダムに分布している形態(図2(b−1)参照)、(b−2)半導体粒子6が鎖状に繋がっており、その隙間を無機化合物の粒子8が充填している形態(図2(b−2)参照)、(b−3)半導体粒子6の周囲を覆うように無機化合物の粒子8が配置されている形態(図2(b−3)参照)等が挙げられる。なお、図2において、小さい円が半導体粒子6を示し、大きい円が無機化合物の粒子8を示している。
【0049】
このうち、(b−2)の形態および(b−3)の形態が好ましく、(b−2)の形態がより好ましい。これらの形態を有する複合粒子4は、複数の半導体粒子6同士が連結(凝集)することにより、より大きな半導体粒子を含んでいる場合と同等の優れた発光特性(特に、励起吸収帯域を広げたり、長波長側にシフトさせたりする特性)を有するものとなる。しかも、上記形態は、半導体粒子6の添加量をあまり増やさなくても、上記効果が得られるという観点で有用である。特に(b−2)の場合、鎖状に連結した半導体粒子6により、特に少ない添加量で、特に大きな半導体粒子と同等の優れた発光特性を有するものとなるため、大きな効果が得られる。
【0050】
なお、このような形態は、複合粒子4の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM、FE−TEM)のような各種電子顕微鏡、原子間力顕微鏡(AFM)、走査型トンネル顕微鏡(STM)、三次元アトムプローブ装置(3D−AP)、エネルギー分散型X線分析装置(EDX)等により観察することで確認、評価することができる。また、複合粒子4の断面は、例えば、集束イオンビーム加工観察装置(FIB)等により作製することができる。
【0051】
また、半導体粒子6の周囲を無機化合物の粒子8が覆っている場合、半導体粒子6の周囲が無機化合物の粒子8で完全に被覆されている必要はなく、一部に被覆されていない部分があってもよい。
【0052】
さらには、1個の半導体粒子6だけでなく、複数個の半導体粒子6の集合体の周囲を覆うように、無機化合物の粒子8が配置されていてもよく、その場合、無機化合物の粒子8の数は特に限定されない。
【0053】
以上のように、半導体粒子6と無機化合物の粒子8とが複合化していることにより、本発明の複合粒子4は、半導体粒子6の活性を制御するとともに、半導体粒子6同士の凝集を防止して、分散媒中に半導体粒子6を均一に分散させ得るものとなる。このため、吸収・発光特性が向上し、高性能の波長変換材料として用いることができる。
【0054】
以下、半導体粒子および無機化合物の粒子について順次説明する。
本発明に用いられる半導体粒子は、酸化亜鉛(ZnO)の粒子で構成される。酸化亜鉛は、資源枯渇のおそれが少なく、かつ毒性が低いため、製造コストおよび複合粒子製造の作業容易性の観点から有用である。
【0055】
また、半導体粒子としては、希土類元素を含むものが好ましく用いられる。半導体粒子に希土類元素を添加することにより、複合粒子において吸収波長等の吸収特性や発光波長等の発光特性の制御が可能になる。これにより、例えば、光電変換に使用されない紫外線、赤外線等を、光電変換可能な波長の光に変換することができるので、より光電変換効率の高い太陽電池を実現可能な波長変換材料が得られる。
【0056】
半導体粒子中に含まれる希土類元素には、原子番号57から71までのランタノイド元素と、スカンジウム(Sc)およびイットリウム(Y)とからなる17元素を、1種または2種以上組み合わせて用いることができるが、特にユーロピウム(Eu)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)およびイッテルビウム(Yb)の1種または2種以上を組み合わせたものが好ましい。
【0057】
このうち、特に希土類元素としてユーロピウム(Eu)を含むことにより、複合粒子は、紫外線を吸収し、可視光を発光する波長変換機能を有するものとなる。
【0058】
また、特に希土類元素としてエルビウム(Er)、ツリウム(Tm)およびイッテルビウム(Yb)のいずれかを含むことにより、複合粒子は、紫外線を吸収し、赤外線を発光する波長変換機能、または、赤外線を吸収し、可視光を発光する波長変換機能を有するものとなる。
【0059】
なお、前述した酸化亜鉛は、真空装置等の大掛かりな装置を用いることなく、希土類元素のドープが可能である。このため、半導体粒子として酸化亜鉛の粒子を用いることにより、複数の半導体粒子に対して希土類元素を均等に効率よくドープすることができ、その結果、吸収・発光特性に優れた複合粒子を得ることができる。
【0060】
複合粒子全体における希土類元素の含有量は、0.01〜20重量%であるのが好ましく、0.02〜10重量%であるのがより好ましい。希土類元素の含有量を前記範囲内とすることにより、発光量子収率等の吸収・発光特性に優れた複合粒子が得られる。
【0061】
このような半導体粒子は、その一次粒子の平均粒径が1〜10nmであるのが好ましく、1〜5nmであるのがより好ましい。平均粒径を前記範囲内とすることにより、半導体粒子において量子サイズ効果がより顕著に発現するため、半導体粒子の吸収・発光特性が特に向上することとなる。その結果、より光電変換効率の高い光起電装置を実現可能な波長変換材料が得られる。また、平均粒径を前記範囲内とすることにより、半導体粒子は、可視光の波長より小さいものとなるため、透過光に対する半導体粒子の影響が小さくなり、半導体粒子の分散体の透明性が向上する。
【0062】
なお、半導体粒子の一次粒子の平均粒径は、例えば、動的光散乱装置(マルバーン社製、ゼータサイザーナノZS)を用い、半導体粒子を分散媒に分散してなる透明分散液の状態で評価することができる。
【0063】
また、複合粒子全体における半導体粒子の含有量は、10〜90体積%であるのが好ましく、30〜80体積%であるのがより好ましく、50〜80体積%がさらに好ましい。半導体粒子の含有量を前記範囲内とすることにより、半導体粒子による吸収・発光特性を高めるとともに、半導体粒子の耐久性を高めることができる。
【0064】
なお、半導体粒子の含有量が前記下限値を下回ると、複合粒子において半導体粒子による波長変換機能が低下するおそれがある。一方、半導体粒子の含有量が前記上限値を上回ると、半導体粒子と無機化合物の粒子とが均一に分散しなくなるばかりか、半導体粒子の活性を制御する等の無機化合物の粒子の作用が低下するため、複合粒子の安定性および耐久性が低下するおそれがある。
【0065】
本発明に用いられる無機化合物の粒子としては、半導体粒子とは組成の異なるものが挙げられ、例えば、各種の金属や非金属の窒化物、酸化物、リン化物、硫化物等の粒子が挙げられるが、特に酸化物の粒子が好ましく用いられる。無機化合物の粒子として酸化物の粒子を用いることにより、特に大気中における複合粒子の化学的安定性が向上し、長期にわたる耐久性を高めることができる。
【0066】
ここで、無機化合物の粒子の具体例としては、ZnO、SiO2、ZnS、GaN、CdS、GaP、CdS、ZrO2、YVO4、およびY2O3からなる群より選択される少なくとも1種の粒子が好ましく用いられ、シリカ(SiO2)の粒子およびジルコニア(ZrO2)の粒子の少なくとも一方がより好ましく用いられる。これらの酸化物は、化学的安定性に特に優れていることから、半導体粒子の活性を制御し、樹脂組成物の耐久性を確実に高めることができる。その結果、複合粒子における発光量子収率等の吸収・発光特性を高めることができる。
【0067】
このような無機化合物の粒子の一次粒子の平均粒径は、特に限定されないが、半導体粒子の一次粒子の平均粒径の1.5〜10倍程度であるのが好ましく、2〜8倍程度であるのがより好ましい。無機化合物の粒子の平均粒径を前記範囲内とすることにより、半導体粒子および無機化合物の粒子の充填性が向上するため、より緻密な複合粒子が得られる。
【0068】
なお、本発明に用いられる無機化合物の粒子は、いかなる方法で製造されたものでもよく、公知のいずれの方法も用いることができる。一般的な製造方法としては、例えば、噴霧乾燥法、火炎噴霧法、プラズマ法、気相反応法、凍結乾燥法、沈殿法(共沈法)、加水分解法(塩水溶液法、アルコキシド法、ゾルゲル法等)、水熱法(沈殿法、結晶化法、水熱分解法、水熱酸化法等)などが挙げられる。
【0069】
また、本発明の複合粒子では、リチウム含有量を好ましくは3重量%以下、より好ましくは2重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下にすることにより、分散媒に対する分散性と耐久性の向上という課題を解決することができる。この理由は、詳しくは解明されていないものの、リチウムが、大気中の湿気を吸着させることにより、半導体粒子と無機化合物の粒子との吸着(凝集)を阻害しているためであると考えられる。
【0070】
すなわち、リチウムは複合微粒子に分布し、半導体粒子と無機化合物の粒子との円滑な吸着(凝集)を妨げるため、複合粒子はその粒子形状が球形にならず、異形状になり易くなると考えられる。さらには、異形状になった場合、半導体粒子が露出し易くなるため、露出した半導体粒子についてはその活性を制御することができなくなる。その結果、樹脂組成物の耐光性、長期安定性が低下するものと考えられる。
【0071】
これに対し、本発明によれば、リチウム含有量を前記範囲内に制御したことにより、上記のような課題を確実に解決することができる。また、リチウム含有量を前記範囲内とすることにより、発光量子収率をも高めることができる。
【0072】
リチウム含有量を前記範囲内にする方法としては、例えば、半導体粒子または複合粒子に洗浄処理を施す方法、半導体粒子の分散液をイオン交換樹脂(透過膜)に通す方法等が挙げられる。
【0073】
また、原料中にリチウムを用いない半導体粒子の製造方法(例えば、酸化亜鉛合成法等)を用いても、リチウム含有量を前記範囲内にすることができる。
【0074】
一方、リチウム含有量を前記上限値以下にすれば、上述したような効果が得られるが、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは0.5重量%以上という下限値が設定されてもよい。リチウム含有量をこの下限値以上とすることにより、上記の課題をより確実に解決することができる。これは、上記の課題を解決するという効果は、リチウム含有量の減少に伴って顕著になるものの、効果の大きさには極大値が存在しており、この極大値が前記下限値よりリチウム含有量が多い領域に位置しているからである。すなわち、リチウム含有量を前記下限値未満とした場合、発光特性が低下するおそれがある。
【0075】
また、本発明では、複合粒子中の酢酸の含有量が20重量%以下であるのが好ましく、10重量%以下であるのがより好ましく、9重量%以下であるのがさらに好ましく、8重量%以下であるのが最も好ましい。酢酸の含有量を前記範囲内とすることにより、耐熱性、耐候性が向上する。
【0076】
なお、酢酸についても、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上という下限値が設定されてもよい。酢酸の含有量をこの下限値以上とすることにより、上記の課題をより確実に解決するとともに、発光量子収率を高めることができる。
【0077】
さらに、本発明では、複合粒子中のその他のイオン性不純物について、その総含有量を0.5重量%以下とするのが好ましく、0.3重量%以下とするのがより好ましい。これらのイオン性不純物も、複合粒子の特性に影響を及ぼすため、その含有量を少なくすることで、本発明の効果がより顕著になる。
【0078】
なお、その他のイオン性不純物としては、例えば、F−、Cl−、NO2−、Br−、NO3−、PO43−、SO42−、(COO)22−、HCOO−、Na+、NH4+、K+、Mg2+、Ca2+等が挙げられる。
【0079】
このようなリチウム、酢酸、イオン性不純物の各含有量は、例えばイオンクロマト分析法により測定することができる。なお、リチウムクロマト分析の場合、前述したリチウム含有量、酢酸含有量は、それぞれリチウムイオン含有量、酢酸イオン含有量として測定される。
【0080】
イオンクロマト分析は、イオンクロマトグラフィーを用い、例えば以下のような手順で行われる。
【0081】
まず、分析に供する試料を容器にとり、超純水で希釈する。その後、容器を密閉した後、恒温器に投入し、例えば125℃×20時間で容器に熱水処理を施す。
【0082】
次いで、熱水処理を施した容器を室温まで徐冷する。そして、容器内の試料に遠心分離処理およびフィルターろ過処理を施し、各処理を経た試料をイオンクロマト分析の検液とする。
【0083】
次いで、イオンクロマトグラフィーに、得られた検液および既知の濃度のイオン類標準試料を導入し、検量線法により検液中の各イオンの含有量を定量する。
【0084】
以上のようにして、リチウム含有量、酢酸含有量、およびその他のイオン性不純物含有量を測定することができる。
【0085】
また、本発明の複合粒子は、熱重量分析において、以下の条件を満足することが好ましい。
【0086】
例えば、複合粒子について、室温から10℃/分で昇温させたときの250〜500℃の間における重量減少量(減少率)を測定する熱重量分析を行う。
【0087】
本発明の複合粒子では、この熱重量分析により測定された重量減少量が、20%以下であるのが好ましく、15%以下であるのがより好ましい。このような複合粒子は、熱重量分析において重量減少の測定対象となる物質、特に有機系の不純物の含有量が非常に小さいことを示すものであり、上記の課題をより確実に解決し得るものとなる。また、発光量子収率もより高いものとなる。
【0088】
また、本発明の複合粒子の平均粒径は、特に限定されないが、20〜100nmであるのが好ましく、45〜55nmであるのがより好ましい。平均粒径が前記範囲内であると、特に分散媒への分散性が向上し、分散媒中に複合粒子を高密度に充填することができる。これにより、複合粒子の分散体の発光特性が向上するとともに、可視光領域で透明な分散体(例えば後述する樹脂組成物)が得られる。
【0089】
なお、複合粒子の平均粒径についても、例えば、動的光散乱装置(マルバーン社製、ゼータサイザーナノZS)を用い、透明分散液の状態で評価することができる。
【0090】
以上のような複合粒子は、前述したように、吸収・発光特性が高く、高性能の波長変換材料として用いられる。このため、例えば、EL照明、光通信、EL表示体、LED照明、太陽電池、バイオイメージング等の各種デバイスが備える光学材料に用いることができる。特に、LED照明、太陽電池等が備える波長変換材料として好ましく用いられる。
【0091】
また、上述したような用途に用いられる場合には、特に本発明の複合粒子の発光量子収率が、可視光領域または近紫外領域の励起波長で30%以上であるのが好ましく、40%以上であるのがより好ましい。
【0092】
次に、本発明の複合粒子の製造方法について説明する。
(複合粒子の製造方法)
【0093】
<第1実施形態>
まず、本発明の複合粒子の製造方法の第1実施形態について説明する。
【0094】
[1]半導体粒子の製造
複合粒子の製造方法の説明に先立って、まず、半導体粒子の製造方法について説明する。半導体粒子の製造方法としては、例えば、ゾル−ゲル法、ソルボサーマル法(水熱合成法を含む)、硝酸亜鉛を用いた合成方法のような各種液相法、火炎法、スパッタリング法のような各種気相法等が挙げられる。
【0095】
ここでは、一例としてゾル−ゲル法について説明する。
まず、原料として酢酸亜鉛またはその水和物(例えば、酢酸亜鉛二水和物等)を用意し、これを溶媒中に溶解する。溶媒としては、例えば、エタノール、プロパノール等が挙げられる。
【0096】
次いで、必要に応じて、溶液に還流処理を行う。還流処理における加熱温度は、溶媒の揮発性や溶質の反応温度に応じて適宜設定されるが、60〜100℃程度であるのが好ましく、また、還流処理の時間は、30分〜10時間程度とされる。
【0097】
次いで、得られた溶液にアルカリ金属の水酸化物を添加し、低温下(例えば10℃以下)にて静置する。これにより、酸化亜鉛半導体粒子の分散液が得られる。アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム等が挙げられる。
【0098】
なお、希土類元素をドープした半導体粒子を製造する場合、酢酸亜鉛またはその水和物に加え、希土類元素の酢酸塩またはその水和物(例えば、酢酸エルビウム四水和物、酢酸ユーロピウム四水和物等)を添加するようにすればよい。
以上のようにして半導体粒子を製造することができる。
【0099】
また、得られた半導体粒子の分散液について、洗浄処理を施すのが好ましい。これにより、半導体粒子に付着したリチウム、酢酸、イオン性不純物、有機系不純物等の各種不純物を除去することができる。
【0100】
洗浄処理としては、例えば、半導体粒子の分散液に洗浄液を添加する方法等が挙げられる。必要に応じて、洗浄液に振動、超音波等を付加してもよい。
【0101】
洗浄液としては、例えば、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、アセトン等が挙げられる。
【0102】
このうち、洗浄液には、特にヘキサンが好ましく用いられる。ヘキサンによれば、極性が比較的低いため、半導体粒子の分散液の極性を大きく変化させることができる。その結果、半導体粒子とイオン性不純物、有機系不純物との分離性能、すなわち洗浄処理の効率が向上するという効果が得られる。
【0103】
なお、半導体粒子に付着したリチウム、酢酸、イオン性不純物、有機系不純物等の各種不純物を除去する方法としては、上記の洗浄処理の他に、(i)後述する複合粒子の製造段階で上記と同様の洗浄処理を施す方法、(ii)半導体粒子の分散液をイオン交換樹脂(透過膜)に通す方法等が挙げられる。
【0104】
さらには、リチウムを用いない半導体粒子の作製方法(例えば、酸化亜鉛合成法等)を用いることにより、リチウム含有量の少ない複合粒子を製造することもできる。
【0105】
また、洗浄液の添加量は、半導体粒子の体積を1としたとき、体積比で1〜10程度であるのが好ましく、2〜5程度であるのがより好ましい。洗浄液の添加量が前記下限値を下回った場合、前述した洗浄の効果が損なわれる。一方、洗浄液の添加量が前記上限値を上回った場合、それ以上、洗浄液の効果の向上が期待できない。
なお、洗浄処理の回数は、特に限定されず、複数回であってもよい。
【0106】
[2]複合粒子の製造
続いて、複合粒子の製造方法について説明する。本発明の複合粒子は、いかなる方法で製造されたものであってもよく、例えば、半導体粒子の分散液と無機化合物の粒子の分散液とを混合し、混合液を各種霧化法により微細な液滴にし、乾燥させる噴霧乾燥法が好ましく用いられる。
【0107】
以下、半導体粒子の分散液と無機化合物の粒子の分散液とを混合し、噴霧乾燥法により混合分散液を乾燥させる方法について、詳述する。
【0108】
この方法は、[2−1]半導体粒子の分散液と無機化合物の粒子の分散液とを混合する混合工程と、[2−2]半導体粒子と無機化合物の粒子とを複合化する複合化工程とを有する。以下、各工程について詳述する。
【0109】
[2−1]混合工程
まず、半導体粒子の分散液と無機化合物の粒子の分散液とを用意する。
【0110】
半導体粒子の分散液は、[1]の方法により製造された半導体粒子を分散媒に分散させてなるものであるが、この分散媒としては、エタノール、プロパノール等が挙げられる。
【0111】
半導体粒子の分散液の濃度は、特に限定されないが、0.01〜5M程度とするのが好ましく、0.05〜1M程度とするのがより好ましい。
【0112】
一方、無機化合物の粒子の分散液も、無機化合物の粒子を上述したような分散媒に分散してなるものである。
【0113】
無機化合物粒子の分散液の濃度は、特に限定されないが、0.01〜5M程度とするのが好ましく、0.05〜1M程度とするのがより好ましい。
【0114】
次いで、半導体粒子の分散液と無機化合物の粒子の分散液とを混合し、混合分散液(複合粒子の中間体)を調製する。
【0115】
[2−2]複合化工程
次に、得られた混合分散液(複合粒子の中間体)を粉末化しつつ、乾燥させる。これにより、複合粒子が得られる。
【0116】
乾燥法には、火炎乾燥法、減圧乾燥法等のいかなる乾燥法をも用いることができるが、特に噴霧乾燥法が好ましく用いられる。噴霧乾燥法によれば、粒径の揃った均質な複合粒子を効率よく製造することができる。また、微小な粒子状に粉末化しつつ、乾燥させることから、著しい高温を必要としない。このため、耐熱性の低い原料を用いることも可能である。
【0117】
図3は、本発明の複合粒子の製造方法の第1実施形態に用いられる噴霧乾燥装置の一例を示す概略図である。
【0118】
図3に示す噴霧乾燥装置100は、噴霧器110と、炉心管121とヒーター122とを備える電気炉120と、バグフィルター130とを有している。
【0119】
噴霧器110は、スラリー状の原料を液滴に霧化するとともに、高圧気体により噴霧するものである。
【0120】
各種霧化法には、混合分散液を微細な液滴にする方法ならばいかなる方法をも用いられるが、超音波霧化器や2流体ノズルを用いて霧化させる方法が好ましく用いられ、さらに超音波霧化器が好ましく用いられる。超音波霧化器は、混合分散液を加熱することなく、数ミクロンサイズの液滴を作製することができる。このことにより、熱により半導体粒子を劣化させることなく、混合分散液を霧化することができる。また、各種霧化法によって作製された液滴は、サイクロン等の分級装置により、より小さなサイズの液滴に分離される方が好ましい。分級装置を用いることにより、最終的に、粒径数十ナノメートル以下の均一な複合微粒子を作製することができる。
【0121】
液滴の乾燥方法には、液滴内の溶媒を乾燥できる方法であればいかなる方法でもよいが、ここで説明するような加熱した炉に通す方法の他に、レーザーやマイクロ波を照射する方法等が用いられる。
【0122】
また、電気炉120が備える炉心管121は、鉛直方向に細長い筒状をなしており、その外周面を覆うようにヒーター122が設けられている。このヒーター122により、炉心管121内が加熱できるようになっている。
【0123】
炉心管121の下端と噴霧器110とが配管140により接続されており、噴霧器110から噴霧された原料の液滴は、炉心管121の内部に供給されるようになっている。炉心管121内に噴霧された原料は、加熱により乾燥し、固体の粉末となる。
【0124】
一方、炉心管121の上端とバグフィルター130とは配管150により接続されている。乾燥により生じた固体の粉末は、配管150を介してバグフィルター130に送られ、バグフィルター130において粉末が回収される。粉末を搬送した気体は、バグフィルター130から図示しない排ガス装置等へ送られる。
【0125】
続いて、上記の噴霧乾燥装置100を用いて複合粒子を製造する手順について説明する。
【0126】
まず、噴霧器110に[2−1]で作製した混合分散液と、高圧気体とを供給する。
次いで、各種霧化法により混合分散液を微小な液滴に霧化するとともに、高圧気体を利用して炉心管121内に噴霧する。
【0127】
炉心管121内では、熱の影響で液滴が乾燥するとともに、液滴中に含まれる半導体粒子と無機化合物の粒子とが互いに吸着する。その結果、半導体粒子と無機化合物の粒子とを含む複合粒子が得られる。このように噴霧乾燥装置100によれば、2種類の粒子を含み、微小かつ粒径の揃った複合粒子を効率よく製造可能であるとともに、表面張力により自発的に球形の液滴となることから、球形の複合粒子の製造が可能になる。
【0128】
ここで、本発明では、このような複合粒子の製造過程で、少なくとも1回、混合分散液(複合粒子の中間体)に還元処理を施すことを特徴とするものである。
【0129】
この還元処理は、混合分散液中の半導体粒子を構成する酸化亜鉛を還元する処理であれば、いかなる処理であってもよいが、ここでは、噴霧乾燥を行いつつ、還元処理を施す方法について詳述する。
【0130】
ここで、噴霧器110に供給される高圧気体(キャリアガス)は、半導体粒子に対する還元能を有する気体を含むものである。
【0131】
このような還元能を有する気体(還元性気体)としては、例えば、水素、一酸化炭素等が挙げられる。このうち、還元能の大きさ、安全性等の観点から、水素が好ましく用いられる。
【0132】
また、高圧気体は、これらの還元性気体と不活性気体とを含む混合気体であってもよい。不活性気体としては、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン等が挙げられる。
【0133】
混合気体中の還元性気体の含有率は、還元性気体が含まれてさえいれば、特に限定されないものの、1〜10体積%であるのが好ましく、3〜8体積%であるのがより好ましい。このような混合気体は、必要かつ十分な還元能を有するとともに、過剰な還元処理を防止し得るものとなる。
【0134】
または、85〜100体積%であるのが好ましく、90〜100体積%であるのがより好ましい。このような混合気体は、水素濃度が高いため還元能が大きく、水素濃度が低い混合気体を用いた場合よりも短時間で還元処理を行うことができる。
【0135】
高圧気体として還元性気体が用いられると、電気炉120内において、複合粒子が形成されるとともに、半導体粒子に還元作用が働く。この還元作用により、半導体粒子中の酸化亜鉛が一部還元される。
【0136】
ところで、本発明の複合粒子は、酸化亜鉛の発光特性を利用して、種々の用途に応用されるものである。
【0137】
酸化亜鉛の発光メカニズムは、酸化亜鉛の結晶格子に存在する種々の点欠陥に起因すると考えられている。これらの点欠陥のうちの1つが酸素欠陥である。酸化亜鉛の半導体粒子における発光特性、特に発光量子収率を高めるためには、この酸素欠陥が含まれるように制御する必要がある。
【0138】
上述したように、本発明では、複合粒子の製造過程において、半導体粒子中の酸化亜鉛が一部還元されるため、これにより酸化亜鉛に酸素欠陥が形成される。その結果、半導体粒子における発光特性(発光量子収率)を高めることができる。したがって、このような半導体粒子を含む複合粒子は、発光特性に優れるとともに、前述したように、分散性および耐久性に優れたものとなる。
【0139】
また、還元処理を、複合粒子を形成しつつ施すことにより、複合粒子が完全に形成される前に、半導体粒子に対して還元作用が働くことになる。複合粒子が完全に形成されてしまうと、半導体粒子と無機化合物の粒子とが互いに吸着した状態となるため、半導体粒子と還元性気体に対する還元処理が十分に行えないおそれがあるのに対し、複合粒子が形成される途中であれば、半導体粒子に対する還元性気体の接触頻度が多くなるため、還元処理を十分に行うことができる。
【0140】
還元処理における温度(炉心管121内の温度)は、200〜1000℃であるのが好ましく、300〜950℃であるのがより好ましく、500〜900℃程度であるのがさらに好ましい。これにより、高速で移動している液滴に対して、乾燥処理と還元処理とを確実に施すことができる。なお、温度が前記下限値未満である場合、乾燥処理および還元処理が不十分になるおそれがある。一方、温度が前記上限値を上回る場合、還元処理が過剰になり、必要以上の酸化亜鉛が還元されてしまう。その結果、半導体粒子が半導体特性を失うおそれがある。
【0141】
また、還元処理は、1回に限らず、複数回行うようにしてもよい。また、複合粒子を形成しつつ還元処理を施した後、さらに別途、還元処理を施すようにしてもよい。
以上のようにして、発光特性に優れた複合粒子が得られる。
【0142】
なお、複合粒子を形成する際には還元処理を行わず、複合粒子を作製し終えてから別途、還元処理を行うようにしてもよい。この場合には、還元処理を行う時間に制限がないので、複合粒子の発光特性を考慮しつつ、時間をかけて十分な還元処理を行うことができる。よって、複合粒子が完全に形成されていても還元処理には差し支えない。なお、この場合、炉心管121内に供給される高圧気体は、還元能を有する気体を含んでいなくてもよく、不活性気体の他、空気、酸素等の酸化性気体等であってもよい。
【0143】
また、別途、還元処理を行う場合、連続式、バッチ式の加熱炉を用いて行うことができる。
【0144】
この場合、加熱温度は、前記温度範囲と同等であるのが好ましく、加熱時間は、5分〜5時間程度であるのが好ましい。
【0145】
また、必要に応じて、製造後の複合粒子を粉砕工程に供するようにしてもよい。粉砕方法としては、ボールミル、ビーズミル等の各種粉砕機、超音波分散装置等の各種分散機を用いる方法が挙げられる。
さらには、必要に応じて、分級処理を行うようにしてもよい。
【0146】
なお、還元処理を伴って製造された複合粒子は、処理前に比べて、より多くの酸素欠陥を含むものとなる。酸素欠陥量の増加の有無は、例えば、レーザーラマン分光法等により評価することができる。
【0147】
<第2実施形態>
次に、本発明の複合粒子の製造方法の第2実施形態について説明する。
【0148】
以下、第2実施形態について説明するが、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0149】
本実施形態では、還元能を有する気体を用いる代わりに、還元能を有する粒子を含む混合分散液(複合粒子の中間体)を用いるようにした以外は、前記第1実施形態と同様である。
【0150】
まず、混合工程において、半導体粒子と無機化合物の粒子とを含む混合分散液(複合粒子の中間体)に、還元能を有する粒子を加える。
【0151】
還元能を有する粒子としては、カーボンブラック、グラファイト粉末等の炭素粒子、または炭素材料を含む粒子が挙げられ、炭素粒子が好ましく用いられる。炭素粒子は、分散性および還元能に優れるとともに、還元処理後の生成物が気体(一酸化炭素)として容易に排出可能であることから、還元能を有する粒子として好適である。
【0152】
このような粒子の一次粒子の平均粒径は、1〜100nm程度であるのが好ましく、2〜80nm程度であるのがより好ましい。還元能を有する粒子の粒径を前記範囲内とすることにより、半導体粒子と還元能を有する粒子とが均一に分散し易く、両者の接触機会が高められる。その結果、半導体粒子に対して十分な還元処理を施すことができる。
【0153】
また、還元能を有する粒子の含有率は、その一次粒子の粒径に応じて適宜設定されるが、一例としては、半導体粒子の含有率の30〜500体積%程度であるのが好ましく、50〜400体積%程度であるのがより好ましい。これにより、半導体粒子と還元能を有する粒子との接触機会をより高めるとともに、還元能を有する粒子が過剰になるのを防ぐことができる。
【0154】
なお、還元能を有する粒子を加えた混合分散液には、必要に応じて、超音波や振動を付与することにより、各粒子の分散性を高めるようにすればよい。
【0155】
次いで、複合化工程において、得られた混合分散液を粉末化しつつ、乾燥させる。この際、加熱により、半導体粒子と還元能を有する粒子との間で還元反応が生じる。例えば、炭素粒子の場合、半導体粒子中の酸素と炭素粒子中の炭素とが反応し、一酸化炭素が生成される。この一酸化炭素は、高圧気体とともに排出されることから、効率よく複合粒子の形成と、半導体粒子の還元とを行うことができる。
【0156】
この場合、高圧気体は、還元性気体、不活性気体、酸化性気体等のいずれであってよいが、意図しない酸化や還元を防止するためには、不活性気体であるのが好ましい。
【0157】
なお、前述した還元処理は、マイクロ波処理、高周波超音波処理、レーザー照射処理等で代替することもできる。これらの処理は、いずれもマイクロ波、高周波超音波、レーザーのエネルギーにより、半導体粒子と還元能を有する粒子との反応を生じさせ、還元処理を施すことができる。
【0158】
特に炭素粒子は、マイクロ波、レーザー等の吸収し易いことから、少ないエネルギーで炭素粒子を直接自己発熱させることができる。その結果、外部から加熱するよりも効率的に還元処理を施すことができるとともに、炭素粒子の温度が均一に上昇するため、還元処理の均一性も向上する。その結果、還元処理の進度を厳密に制御することが可能になる。
【0159】
このような処理を行う場合、第1実施形態と同様、混合分散液の液滴に対して処理を施すようにすればよい。これにより、分散媒の揮発と還元処理とを行い、複合粒子を作製することができる。
マイクロ波の周波数は、例えば1〜30GHz程度とされる。
【0160】
以上のような本実施形態においても、第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。
それに加え、還元能を有する気体を用いる必要がないので、製造コストの削減を図ることができる。特に、マイクロ波処理、高周波超音波処理、レーザー照射処理等を用いることにより、還元能を有する粒子を直接加熱することができるので、エネルギー効率が高く、製造コストのさらなる削減を図ることができる。
【0161】
<第3実施形態>
次に、本発明の複合粒子の製造方法の第3実施形態について説明する。
【0162】
以下、第3実施形態について説明するが、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0163】
本実施形態では、還元能を有する気体を用いる代わりに、同一の空間内に、混合分散液(複合粒子の中間体)と、還元能を有する金属の単体または合金とを併存させ、これらを加熱するようにした以外は、前記第1実施形態と同様である。
【0164】
本実施形態では、噴霧乾燥装置100の炉心管121に、内壁面が還元能を有する金属または合金で構成された炉心管を用いる。このような炉心管121を用いることにより、複合化工程において、加熱下で混合分散液の液滴と炉心管121の内壁面とが接触することにより、半導体粒子に対して還元処理を施すことができる。これにより、単に炉心管121(またはそれに代わる配管)中に混合分散液を通すことにより、連続的に効率よく還元処理を施すことができ、複合粒子の量産性を高めることができる。
【0165】
還元能を有する金属としては、例えば、銅、チタン、アルミニウム等が挙げられる。また、これらの金属の合金としては、2種以上の上記金属または上記金属とそれ以外の金属とを含む金属間化合物等が挙げられる。
【0166】
このうち、還元能を有する金属として銅を用いることにより、特に効率よく還元処理を施すことができる。また、還元処理によって銅が酸化するものの、酸化銅は容易に還元させることが可能であることから、再利用が容易であるという利点もある。
【0167】
また、還元能を有する金属または合金は、炉心管121の内壁面以外の形態で用いられてもよい。かかる形態としては、例えば、炉心管121内を横断するように設けられた網状体、スリット状体、炉心管121の長手方向に沿って平行に並べられた板状体等の形態であってもよい。これらの形態は、いずれも、混合分散液の流れを妨げることなく、半導体粒子と還元能を有する金属または合金との接触機会が十分に得られるものであることから、確実な還元処理と高い量産性とを両立するものである。また、これらの形態の金属または合金は、いずれも交換が容易であることから、装置のメンテナンスの容易性の観点からも有用である。
【0168】
また、還元能を有する金属または合金の形態は、単なる塊状体、板状体、棒状体、粉末、フレーク状体等であってもよい。また、混合分散液は、必ずしも配管内で還元処理される必要はなく、単なる容器内に、還元能を有する金属または合金と併存させ、加熱処理が施されることにより、還元処理がなされる。この場合、設備に要するコストを削減することができる。
【0169】
なお、上記形態のうち、粉末、フレーク状体は、表面積が大きいため、還元処理の効率が高い。
【0170】
また、還元処理における雰囲気は、特に限定されず、還元性気体、不活性気体、酸化性気体のいずれであってもよいが、意図しない酸化や還元を防止するためには、不活性気体であるのが好ましい。
【0171】
以上のような装置を用いて、前記第1実施形態と同様にして複合粒子を製造する。
このような本実施形態においても、第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。
【0172】
それに加え、還元能を有する気体や、還元能を有する粒子等を用意する必要がないので、製造コストを大きく削減することができる。
【0173】
(樹脂組成物)
本発明の樹脂組成物は、本発明の複合粒子と、硬化性樹脂とを有するものである。このような樹脂組成物は、各種塗布法を用いることにより、高価な真空装置の使用や高温での熱処理を伴うことなく、各種デバイスに対して、本発明の複合粒子を容易に供給(塗布)し、固定することができる。これにより、各種デバイスに対して、前述した波長変換機能を付加することができ、各種デバイスの機能向上を図ることができる。
【0174】
硬化性樹脂には、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等を用いることができるが、特に光透過性を有するものが好ましく用いられる。このような硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エチレンビニルアセテート(EVA)樹脂等が挙げられる。これらを用いることにより、樹脂組成物の光透過性をより高めることができる。
【0175】
このうちエポキシ系樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂またはこれらの水添化物、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート骨格を有するエポキシ樹脂、カルド骨格を有するエポキシ樹脂、ポリシロキサン構造を有するエポキシ樹脂等が挙げられる。直接アモルファスシリコンなどの光起電層や反射防止膜を形成するなど、樹脂組成物に耐熱性を必要とする場合は、脂環式構造を有するものが好ましい。脂環式エポキシ樹脂としては、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3’、4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1,2,8,9−ジエポキシリモネン、ε−カプロラクトンオリゴマーの両端にそれぞれ3,4−エポキシシクロヘキシルメタノールと3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸がエステル結合したもの、水添ビフェニル骨格、および水添ビスフェノールA骨格を有する脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0176】
また、アクリル系樹脂としては、2つ以上の官能基を有する(メタ)アクリレートであれば、特に限定されないが、直接アモルファスシリコンなどの光起電層や反射防止膜を形成するなど、樹脂組成物に耐熱性を必要とする場合は、脂環式構造を有するものが好ましい。脂環式構造を有する(メタ)アクリレートとしては、特に、以下の一般式(1)および一般式(2)より選ばれた少なくとも1種以上の(メタ)アクリレートを重合したアクリル樹脂が好ましい。
【0177】
【化1】
[一般式(1)中、R1およびR2は、互いに異なっていてもよく、水素原子またはメチル基である。また、aは1または2であり、bは0または1である。]
【0178】
【化2】
【0179】
より好ましくは、一般式(1)において、R1、R2が水素で、aが1、bが0である構造を有するジシクロペンタジエニルジアクリレート、一般式(2)において、Xが−CH2OCOCH=CH2で、R3、R4が水素で、Pが1である構造を有するパーヒドロ−1,4;5,8−ジメタノナフタレン−2,3,7−(オキシメチル)トリアクリレート、および、X、R3、R4がすべて水素で、Pが0または1である構造を有するアクリレートより選ばれた少なくとも1種のアクリレートが用いられ、粘度等の点を考慮すると、さらに好ましくは、X、R3、R4がすべて水素で、Pが0である構造を有するノルボルナンジメチロールジアクリレートが用いられる。
【0180】
また、アクリル樹脂として、水分散型アクリル樹脂を用いることができる。水分散型アクリル樹脂とは、水を主成分とする分散媒に分散したアクリルモノマー、オリゴマー、またはポリマーであり、水分散液のような希薄な状態では架橋反応がほとんど進行しないが、水を蒸発させると常温でも架橋反応が進行し固化するタイプ、または、自己架橋可能な官能基を有し、触媒や重合開始剤、反応促進剤などの添加剤を用いなくとも加熱のみで架橋し固化するタイプのアクリル樹脂である。
【0181】
前者のタイプでは水分散液のような希薄な状態では架橋反応がほとんど進行せず、水を蒸発させると常温でも架橋反応が進行し固化するものであれば特に制限されるものではなく、触媒や重合開始剤、反応促進剤などの添加剤を用いてもよいし、自己架橋可能な官能基を利用してもよい。また、反応を完結させる目的で加熱することは制限されない。自己架橋可能な官能基としては特に限定されないが、例えば、カルボキシル基同士、エポキシ基同士、メチロール基同士、ビニル基同士、一級アミド基同士、アルコキシシリル基同士、メチロール基とアルコキシメチル基、カルボニル基とヒドラジド基、カルボジイミド基とカルボキシル基などが挙げられる。水分散型アクリル樹脂は、波長変換物質を含有する複合粒子が水に親和性がある場合に好適に用いられる。
【0182】
一方、シリコーン系樹脂としては、市販のLED用シリコーン樹脂等が挙げられる。
また、架橋性を有するエチレンビニルアセテート樹脂には、酢酸ビニル含有率(VA含有量)が25重量%以上のものが好ましく用いられ、例えば、三井化学ファブロ株式会社のソーラーエバ(商標)等を好適に用いることができる。
【0183】
なお、上述したような硬化性樹脂とは、最終的にネットワーク構造を形成するものであればよく、イオンを媒体としてネットワークを形成するアイオノマー樹脂なども使用することができる。
【0184】
硬化性樹脂の含有量(体積分率)は、特に限定されないが、樹脂組成物全体の20〜65体積%であるのが好ましく、特に30〜55体積%であるのがより好ましい。含有量が前記範囲内であると、特に発光特性、耐久性に優れる。
【0185】
一方、複合粒子の含有量(体積分率)は、特に限定されないが、樹脂組成物全体の30〜70体積%であるのが好ましく、特に40〜60体積%であるのがより好ましい。含有量が前記範囲内であると、特に樹脂組成物の成形性を確保することができ、かつ、樹脂組成物中において複合粒子の充填性が確保されるため、複合粒子が規則的に均一に配列し易くなる。その結果、樹脂組成物を層状に成形した場合、層の透明性が高くなる。
【0186】
また、本発明の樹脂組成物には、上述した硬化性樹脂および複合粒子以外に、架橋を促進させるための触媒、架橋剤、他の波長変換物質、複合粒子と樹脂との親和性を向上し、複合粒子の分散性を向上させるためのアルコキシ基を有する化合物、カップリング剤、界面活性剤等の各種添加物を含有していてもよい。
【0187】
このような添加物としては、例えば、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン等のケイ素のアルコキシド化合物、アミノシラン、エポキシシラン、アクリルシラン等のケイ素を含有する各種カップリング剤、アルミニウム、チタンなどのケイ素以外の元素を含むアルコキシ基含有化合物等が挙げられる。
【0188】
また、酸化亜鉛の半導体粒子を含有する複合粒子を硬化性樹脂に分散させるときには、ケイ素を含有するシランカップリング剤を分散剤として使用することが好ましい。シランカップリング剤としては、窒素またはアミノ基を有するものが好ましく用いられ、アミノシランやアザシラン等が好ましく用いられる。アミノシランを使用する場合、アルコキシ基が2官能であるジシランやアルコキシ基が1官能であるモノシランが好ましく、コストと性能のバランスからN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等が好ましく用いられる。アザシランを使用する場合、環状アザシラン等が好ましく用いられ、コストと性能のバランスから2,2−ジメトキシ−1,6−ジアザ−2−シラシクロオクタン、またはN−メチル−アザ−2,2,4−トリメチルシラシクロペンタン等が好ましく用いられる。
【0189】
(波長変換層および光起電装置)
本発明の波長変換層は、本発明の樹脂組成物を、所定の形状に成形し、硬化させてなるものである。このような波長変換層は、吸収光波長に対して発光波長を変化させることにより、特定波長の光を各種デバイスに入射させることができる。
【0190】
また、本発明の光起電装置は、本発明の波長変換層を有するものである。このため、光起電装置における光電変換特性に応じて、波長変換層における発光波長を適宜選択することにより、光電変換効率に優れた光起電装置が得られる。
【0191】
<第1実施形態>
まず、本発明の波長変換層および本発明の光起電装置の第1実施形態について説明する。
【0192】
図1に示す光起電装置(本発明の光起電装置)1は、前述したように、光の照射に伴って起電力を生じる光起電層2と、光起電層2の光の入射面側に設けられ、本発明の樹脂組成物の硬化物で構成された波長変換層(本発明の波長変換層)3とを有している。
【0193】
光起電層2は、光により起電力を生じるものであり、p型半導体層、真性半導体層、n型半導体層からなる半導体層と、EVA樹脂組成物などの封止材、半導体層の片面または両側の面に設けられた透明電極層を備えている。
【0194】
半導体層を構成する材料としては、半導体材料であれば特に限定はされないが、例えば、単結晶シリコン、多結晶シリコン、球状シリコン、アモルファスシリコン、化合物半導体、有機半導体、量子ドット半導体等が挙げられる。
【0195】
透明電極は、特に限定されないが、例えばITOの膜や酸化錫の膜などにより構成される。なお、光起電装置1の構成はこれに限定されるものではなく、種々の光起電装置1に適用することができる。特に市販の光起電層2を用意して、これに波長変換層3を取り付ける場合、光起電層2の上にさらにガラス、透明電極、無反射層、保護層等が形成されるのが好ましい。この場合、ガラス、透明電極、無反射層、保護層等の上または下に波長変換層3を取り付ければよい。波長変換層3は、紫外領域の太陽光線を可視光領域あるいは近赤外領域に変換する。または、赤外領域の太陽光線を可視光領域あるいは近赤外領域に変換する。変換後の太陽光線は、光起電層2に入射する。したがって、波長変換層3を備えない場合に比べて、光起電層2における光電変換効率が高められるとともに、光起電層2に有機材料が用いられている場合、その劣化を抑制することができる。その結果、例えば太陽電池における光電変換層のような光起電層2の寿命の向上が図られる。
【0196】
この実施形態において、波長変換層3は、図2に示すように、硬化性樹脂5と、硬化性樹脂5内に分散された複合粒子4を備える。複合粒子4は、前述したように、半導体粒子の活性を制御するとともに、硬化性樹脂5中に均一に分散し得るものであるため、波長変換層3において、複合粒子4は、硬化性樹脂5内に均一に分散している。したがって、波長変換層3は、波長変換した光を、光起電層2全体に対して均等に入射させることができる。
【0197】
このような波長変換層3は、前述した樹脂組成物を、例えば、光起電層2の表面に塗布して光硬化させることにより形成される。このため、例えば、市販の光起電層2に樹脂組成物を塗布して光硬化させるだけで波長変換層3を形成することができる。
【0198】
塗布法としては、例えば、ドクターブレード法、スピンコート法、ディッピング法、テーブルコート法、スプレー法、アプリケーター法、カーテンコート法、ダイコート法、インクジェット法、ディスペンサー法等の方法が挙げられる。
【0199】
なお、光起電装置1は、例えば、EL照明、光通信、EL表示体、LED照明、太陽電池、バイオイメージング等の各種デバイスに適用することができる。
【0200】
<第2実施形態>
次に、本発明の光起電装置の第2実施形態について説明する。
図4は、本発明の光起電装置の第2実施形態を模式的に示す断面図である。
【0201】
以下、第2実施形態について説明するが、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。なお、本実施形態において第1実施形態と同様の構成部分については、先に説明した構成部分と同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0202】
本実施形態では、光起電装置1が2層の波長変換層3を有する以外は、第1実施形態と同様である。
【0203】
図4に示す光起電装置1は、波長変換層3として、紫外領域の太陽光線を可視光領域あるいは近赤外領域に変換する第1波長変換層31と、赤外領域の太陽光線を可視光領域あるいは近赤外領域に変換する第2波長変換層32とを有している。この第2実施形態では、図4に示すように、光起電層2の上方に、光の入射側から第1波長変換層31および第2波長変換層32がこの順で設けられている。
【0204】
一般に、光は、その波長が長いほど物体を透過し易くなるので、相対的に波長の短い紫外領域を可視光領域に変換する第1波長変換層31を、光起電層2の入射光の上流側に設け、相対的に波長の長い赤外領域を可視光領域に変換する第2波長変換層32を、入射光の下流側に設けることにより、各波長変換層31、32に入射する光量をより多く確保することができる。そして、第1波長変換層31では、紫外領域の太陽光線が可視光領域あるいは近赤外領域に変換され、第2波長変換層32では、赤外領域の太陽光線が可視光領域あるいは近赤外領域に変換されることにより、光起電層2に入射する可視光(あるいは近赤外領域)の光量が増大する。その結果、光起電層2における光電変換効率を高めることができる。
【0205】
なお、第2波長変換層32は、赤外領域の太陽光線を可視光領域に変換する層に限定されず、第1波長変換層31と同様、紫外領域の太陽光線を可視光領域に変換する波長変換層であって、第1波長変換層31とは組成の異なるものであってもよい。
【0206】
また、波長変換層3の積層数は、2層に限らず3層以上であってもよい。
また、波長変換層3の屈折率は、入射光の最も上流に位置する層の屈折率を最も小さくし、光起電層2に近い層ほど屈折率が大きくなるようにすれば、各層の界面における光の反射に伴う損失を抑制することができ、波長変換層3の光透過率を高めることができる。その結果、光起電層2に入射する光量を増大させ、光電変換効率の高い光起電装置1が得られる。
【0207】
また、第1波長変換層31および第2波長変換層32は、光起電層2の上方に順次成膜することで形成されるが、その他、別途、本発明の樹脂組成物をフィルム状に成形、硬化してなるフィルムを、接着剤等により光起電層2に対して接着することによっても形成されてもよい。
【0208】
なお、以上のような本実施形態においても、第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。
【0209】
<第3実施形態>
次に、本発明の光起電装置の第3実施形態について説明する。
図5は、本発明の光起電装置の第3実施形態を模式的に示す断面図である。
【0210】
以下、第3実施形態について説明するが、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。なお、本実施形態において第1、2実施形態と同様の構成部分については、先に説明した構成部分と同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0211】
本実施形態では、2層の波長変換層3の配置が異なる以外は、第2実施形態と同様である。
【0212】
図5に示す光起電装置1は、光起電層2の上方に設けられた第1波長変換層31と、光起電層2の下方に設けられた第2波長変換層32とを有している。
【0213】
前述したように、光は、その波長が長いほど透過し易くなるので、相対的に波長の長い赤外領域は、光起電層2をも十分に透過する透過力を有する。このため、赤外領域を可視光領域に変換する第2波長変換層32を、光起電層2の下方に設けたとしても、第2波長変換層32は、十分な量の赤外領域の太陽光線を受けることができる。
【0214】
また、図5に示す光起電装置1は、第2波長変換層32の下方に設けられた反射層7を有している。反射層7は、第1波長変換層31、光起電層2および第2波長変換層32を順次透過してきた光を上方に反射する。これにより、反射層7がなければ光電変換に寄与しなかったはずの光を、再び光起電層2に入射させることができる。その結果、光起電層2に入射する光量が増加し、光電変換効率の高い光起電装置1が得られる。
【0215】
さらに、本実施形態では、光起電層2の下方に第2波長変換層32を設け、さらにその下方に反射層7を設けているため、第2波長変換層32では、反射層7で反射する前の光と、反射層7で反射した後の光とがそれぞれ透過する。このため、本実施形態では、第2波長変換層32における波長変換の機会が2回になり、波長変換効率がより高くなる。かかる観点からも、光起電装置1の光電変換効率のさらなる向上が図られる。
【0216】
なお、第1波長変換層31および第2波長変換層32は、光起電層2の各面にそれぞれ成膜することで形成されるが、その他、別途、本発明の樹脂組成物をフィルム状に成形、硬化してなるフィルムを、接着剤等により光起電層2に対して接着することによっても形成されてもよい。
【0217】
また、以上のような本実施形態においても、第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。
【0218】
<第4実施形態>
次に、本発明の光起電装置の第4実施形態について説明する。
【0219】
図6〜11は、それぞれ、本発明の光起電装置の第4実施形態を模式的に示す断面図および平面図である。
【0220】
以下、第4実施形態について説明するが、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。なお、本実施形態において第1実施形態と同様の構成部分については、先に説明した構成部分と同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0221】
本実施形態では、光起電装置が、規則的に分布した点状の樹脂組成物の硬化物を有する以外は、前記第1実施形態と同様である。
【0222】
図6(a)に示す光起電装置1は、光起電層2の上方に設けられ、点状の形態をなす樹脂組成物の硬化物を複数個有している。これら複数の樹脂組成物の硬化物は、互いの離間距離がほぼ等間隔になっており、光起電層2の上面に規則的に配列している。換言すれば、波長変換層3は、光起電装置1の上面に形成された、本発明の樹脂組成物の硬化物で構成された凹凸構造を有するものとなる。なお、図6(b)に示す波長変換層3の場合、点状の形態をなす樹脂組成物の硬化物が点在していることから、波長変換層3は途切れ途切れの構造になっているが、このような構造であっても、本明細書では、波長変換層というものとする。
【0223】
波長変換層3が凹凸構造を有していることにより、1つの樹脂組成物の硬化物に入射した光は、反射する場合、図6(a)の上方ではなく、左右方向に反射する確率が高くなる。左右方向に反射した光は、隣り合う硬化物に再び入射し、屈折を伴って光起電層2に入射することとなる。その結果、波長変換層3が凹凸構造を有していない場合には、反射により光起電層2に入射する光が失われていたのに対し、図6(a)に示す波長変換層3の場合、凹凸構造がなければ失われていたはずの光の一部を光起電層2に入射させることができる。すなわち、図6に示す波長変換層3は、上述したような波長変換機能に加え、反射防止機能を有するものとなる。その結果、光起電装置1における光電変換効率をより高めることができる。
【0224】
凹凸構造の高低差は、斜め方向からの太陽光の吸収とコストとのバランスから、300nm〜100μmであるのが好ましく、1〜50μmであるのがより好ましく、10〜50μmであるのがさらに好ましい。なお、凹凸構造の高低差は、原子間力顕微鏡、共焦点顕微鏡、レーザー顕微鏡等の各種顕微鏡を用いて測定することができる。
【0225】
また、凹凸構造の面内周期は、300nm〜50μmであるのが好ましい。凹凸構造の面内周期を前記範囲内とすることにより、凹凸構造の表面で光が反射される確率を特に低下させ、凹凸構造の反射防止機能を特に高めることができる。
【0226】
さらには、波長変換層3の吸収波長領域とほぼ同程度またはそれ以下の周期にするのが好ましい。これにより、波長変換層3に光が入射するとき、フレネル反射が起こり難くなる。そして、凹凸構造の形状によらず、波長変換層3による光の反射が減少し、波長変換層3に入射する光量がより増加することとなる。その結果、光起電層2に入射する光量も増加する。
【0227】
また、面内直角方向(X方向、Y方向)の凹凸周期は同じであっても異なっていてもよい。また、同じ方向における面内周期のばらつきがあってもよい。凹凸構造の面内周期は、原子間力顕微鏡、共焦点顕微鏡、レーザー顕微鏡、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)等の各種顕微鏡を用いて取得した画像情報をフーリエ変換することにより求めることができる。
【0228】
凹凸構造の形状としては、例えば、ドット、マイクロレンズ、ライン・アンド・スペース(L&S)、ハニカム、セル、四角錐、モスアイ、円錐形など、さまざまな形状が挙げられる。コストと効率の観点から、ドット、マイクロレンズ、L&S、セル、四角錐の形状が好ましく、より好ましくは、ドット、マイクロレンズの形状である。
【0229】
なお、図6〜8および図11に示す凹凸構造は、ドットまたはマイクロレンズの形状をなす凹凸構造の例である。これらの凹凸構造は、平面視形状が略円形をなしており、一方、縦断面形状は略半円形をなしている。
【0230】
また、波長変換層3が備える凹凸構造は、図6に示すような途切れ途切れの構造以外に、図7に示すように、光起電層2の上面を覆う平板状の形態をなす樹脂組成物の硬化物と、その上に設けられ、規則的に分布した点状の形態をなす樹脂組成物の硬化物との積層体の構造であってもよい。このような構造であれば、点状の形態をなす樹脂組成物の硬化物以外の領域に入射した光も、波長変換層3に入射し、その波長を変換することができる。換言すれば、図7に示す波長変換層3によれば、図6に示す波長変換層3では波長変換することができなかった光についても、波長変換することができるので、光起電層2において光電変換可能な波長領域の光の割合を増やすことができる。
【0231】
なお、凹凸構造は、点状の形態をなす樹脂組成物の硬化物の分布は、規則的であっても、不規則的であってもよい。規則的である場合、分布のパターンは特に限定されない。
【0232】
また、凹凸構造は、図8(a)に示すように、光が照射される側(上流側)が凸であっても、図8(b)に示すように、光起電層2側が凸であってもどちらでもよいが、光起電層2に多くの光を入射させるという観点では、光起電層2側が凸であるのが好ましい。この場合、凹凸構造は、図8(b)に示すように、光起電層2に埋め込まれた状態になっていてもよい。また、この場合の凹凸構造の面内周期は、300nm〜1μmの範囲にすることが好ましい。
【0233】
また、凹凸構造は、隣り合う凹凸が同じ樹脂組成物で構成されていても、異なる樹脂組成物で構成されていてもよい。樹脂組成物の光吸収波長範囲が比較的狭い場合は、光吸収波長範囲を広げるなどの目的で、隣り合う凹凸の樹脂組成物を異なるものに設定することにより、光起電装置1の発電効率を容易に向上させることができる。
【0234】
さらに、凹凸構造は、図8(c)に示すように、それぞれの凸部に、より小さな微細凹凸形状を有していてもよい。これにより、微細凹凸形状によって光閉じ込め効果が生じ、波長変換層3による光の反射をより減少させることができる。微細凹凸形状の高低差は、100〜500nmが好ましい。
【0235】
なお、凹凸構造は、図8(a)の凹凸構造と図8(b)の凹凸構造とを組み合わせた構造、すなわち、光が照射される側と光起電層2側の双方に凸があるような構造であってもよい(図8(d)参照)。この場合、光起電層2側が凸である凹凸構造の面内周期を、光が照射される側が凸である凹凸構造の面内周期より小さくすることが好ましい。これにより、光起電層2に入射する光量を増やすことができる。
【0236】
また、光起電層2側が凸である凹凸構造の面内位置と、光が照射される側が凸である凹凸構造の面内位置とは、互いにずれているのが好ましい。これにより、平面視における波長変換層3の面積をより大きく確保することができ、波長変換層3に入射する光量を増やすことができる。
【0237】
また、図9に示す凹凸構造は、L&Sの形状をなす凹凸構造の例である。具体的には、図9に示す凹凸構造は、図9(b)に示すように、Y方向に沿って延伸する細長い平面視形状をなしており、一方、縦断面形状は略半円形をなしている。
【0238】
さらには、図10に示す凹凸構造も、L&Sの形状をなす凹凸構造の例であるが、図10に示す凹凸構造は、図10(b)に示すように、Y方向に沿って延伸する細長い平面視形状をなし、等間隔に設けられた複数の樹脂組成物の硬化物と、X方向に沿って延伸する細長い平面視形状をなし、等間隔に設けられた複数の樹脂組成物の硬化物とが、それぞれ直交するように配列している。これにより、図10に示す凹凸構造は、平面視にて格子状をなしている。
【0239】
また、図11に示す凹凸構造は、規則的に分布した点状の形態をなす樹脂組成物の硬化物で構成されているが、各硬化物は、2層構造になっており、下層と上層とで構成する樹脂組成物の種類が異なっている。
【0240】
樹脂組成物の種類の組み合わせは、特に限定されないが、例えば、上層を構成する樹脂組成物を、第2実施形態において第1波長変換層31を構成する樹脂組成物と同じにするとともに、下層を構成する樹脂組成物を、第2実施形態において第2波長変換層32を構成する樹脂組成物と同じにすればよい。すなわち、上層(第1波長変換層31)では、紫外領域の太陽光線が可視光領域あるいは近赤外領域に変換され、下層(第2波長変換層32)では、赤外領域の太陽光線が可視光領域あるいは近赤外領域に変換される。これにより、光起電層2に入射する可視光(あるいは近赤外領域)の光量が増大する。その結果、光起電層2における光電変換効率を高めることができる。
なお、図11に示す凹凸構造は、3層以上の積層体で構成されていてもよい。
【0241】
以上のような凹凸構造を有する波長変換層3は、本発明の樹脂組成物を前述したような各種塗布法により塗布した後、塗布物を硬化することにより形成されるが、特に樹脂組成物をインクジェット法により塗布するのが好ましい。インクジェット法によれば、所望の領域に所定の量の樹脂組成物を正確に塗布することができる。このため、凹凸構造の形状を正確に再現することができる。
【0242】
また、塗布面にあらかじめ樹脂組成物に対して撥液性を制御するように表面処理を施しておくのが好ましい。これにより、インクジェット法により吐出された樹脂組成物が、表面張力により自ずと半球状に成形される。その結果、図6に示すような波長変換層3をより簡単に形成することができる。
【0243】
なお、インクジェット装置には、ピエゾ方式、静電方式、サーマル方式等の各種吐出方式があるが、比較的高粘度の樹脂組成物を吐出可能であるという観点から、ピエゾ方式または静電方式のインクジェット装置が好ましく用いられる。
【0244】
また、凹凸構造を形成した後、凹凸構造の上にさらに別の樹脂組成物をオーバーコートするようにしてもよい。これにより、光起電装置1における耐汚性、耐久性などの低下を抑制できる。
【0245】
なお、以上のような本実施形態においても、第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。
【0246】
以上、本発明の複合粒子の製造方法、複合粒子、樹脂組成物、波長変換層および光起電装置の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば光起電装置には、任意の構成物が付加されていてもよい。
【実施例】
【0247】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
(実施例1)
【0248】
1.複合粒子、樹脂組成物および波長変換層の作製
<1>まず、酢酸亜鉛二水和物(Zn(CH3COO)2・2H2O)の濃度が0.1Mとなるようにエタノールを加え、酢酸亜鉛二水和物のエタノール溶液400mlを調製した。このエタノール溶液を約80℃で約3時間加熱撹拌しながら全溶液の量が120mlになるまで濃縮した。濃縮後、エタノールを120mlを加え、室温まで冷却した。次いで、得られたエタノール溶液に、水酸化リチウム一水和物(LiOH・H2O)の濃度が0.14Mになるように加え、23℃以下の温度で20分間超音波処理を行った。これにより、エタノール分散液400mlを得た。このエタノール分散液は、紫外線照射により緑色に発光し、エタノール中に半導体粒子を含んでいることを確認した。
【0249】
その後、得られたエタノール溶液400mlにヘキサンを添加し、10,000Gで1分間の遠心分離処理を施した。ヘキサンは、半導体粒子のエタノール溶液の体積を1としたとき、体積比で3程度になる量(1200ml)を添加した。その後、上澄みを除去し、ペースト状の残留物4.9gを得た。次いで、エタノール400mlをペースト状の残留物に加え、再分散させた。これにより、洗浄された半導体粒子のエタノール分散液を得た。
【0250】
<2>次に、日産化学工業(株)製のオルガノシリカゾル(品番:IPA−ST、シリカ粒子の平均粒径:約12nm、シリカ粒子の濃度:30重量%、分散媒:2−プロパノール)をエタノールで約34倍に希釈し、シリカ粒子濃度0.15Mの分散液を調製した。次に、この分散液10mlと、<1>で作製した半導体粒子のエタノール分散液40mlとを混合し、混合分散液を調製した。
【0251】
次いで、得られた混合分散液を、噴霧乾燥法により乾燥させ、酸化亜鉛を主とする半導体粒子とシリカ粒子(無機化合物の粒子)との複合粒子を得た。噴霧乾燥時の炉の温度は400℃とし、キャリアガスには水素100%を使用した。なお、噴霧乾燥装置の炉心管の内壁面は、ステンレス鋼製である。
【0252】
<3>上記の操作の繰り返しで得た複合粒子3.0gをエタノール100gに混合し、ジルコニアビーズを用いて分散処理を行い、複合粒子が分散した透明な分散液を得た。
【0253】
<4>前記一般式(2)において、X、R3、R4がすべて水素で、Pが0である構造を持つノルボルナンジメチロールジアクリレート(試作品番 TO−2111;東亞合成(株)製)0.30g、N−メチル−アザ−2,2,4−トリメチルシラシクロペンタン(Gelest社製、SIM6501.4)0.24g、および<3>で作製した複合粒子の透明分散液60gを混合した。その後、透明分散液を撹拌しながら40℃で30hPaの条件下で3時間処理を行い、揮発分を除去した。
【0254】
その後、透明分散液中に、光重合開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(チバ・ジャパン製、ダロキュア1173)0.003gを溶解させた。これにより、樹脂組成物を得た。
【0255】
<5>上記で得た樹脂組成物を厚み50μmの表面処理を施したETFE(テトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体)フィルム上に塗布した。乾燥後の厚みは約20μmであった。そして、両面から約500mJ/cm2のUV光を照射して樹脂組成物を硬化させ、さらに真空オーブン中で、真空下約180℃で1時間加熱処理を行い、溶媒を除去した。これにより、樹脂組成物のシート状硬化物(波長変換層)を形成した。
【0256】
<6>次いで、CIGS太陽電池セルの上に太陽電池用封止材EVA(VA含有量28%、架橋型)シートを敷き、さらにその上に上記で得られた樹脂組成物の波長変換層を形成したETFEフィルムを、波長変換層が下向き(EVAシート側)となるように配置した。これを真空加熱処理し、光起電装置を作製した。
【0257】
2.半導体粒子、複合粒子、樹脂組成物および光起電装置の評価
<1>粒径評価
オルガノシリカゾル中のシリカ粒子、得られた半導体粒子のエタノール分散液および複合粒子について以下の粒径評価を行った。
【0258】
1)動的光散乱装置(マルバーン社製、ゼータサイザーナノZS)により、半導体粒子の一次粒子のZ平均粒径を測定した。
【0259】
2)電界放射型透過型電子顕微鏡(FE−TEM、日立製作所製、HF−2200)により、半導体粒子の粒径を観察した。観察方法は、適切な倍率の画像を撮影し、画像中に含まれる30個の粒子をランダムに選定しその粒径を測定し平均粒径を算出した。必要に応じ上記微粒子は樹脂に埋設しその断面を観察した。
【0260】
<2>発光特性の評価
得られた複合粒子のエタノール分散液と波長変換層について以下の発光特性の評価を行った。
【0261】
1)蛍光分光光度計(日立製作所製、F−2500)により、励起吸収波長360nm照射下、おおよその発光ピーク波長を観測した。
【0262】
2)絶対PL量子収率測定装置(浜松ホトニクス(株)製、C9920−02G)を用いて、波長350nm、360nmおよび370nmの近紫外光を照射した時の蛍光量子収率を測定した。
【0263】
<3>不純物等の評価
得られた複合粒子について、イオンクロマト装置(日本ダイオネクス(株)製、ICS−2000型イオンクロマトグラフ)を用い、イオンの含有量を測定した。測定試料は、複合粒子0.014gをポリカーボネート容器に精秤し、超純水15mlを加え、125℃×20時間の熱水処理を行ない、室温まで放冷後、内溶液を遠心分離およびフィルターろ過した溶液である。イオンクロマト装置にこの溶液およびイオン類標準溶液を導入し、検量線法により各イオンを定量した。
【0264】
<4>熱重量変化の評価
得られたペースト状の残留物、複合粒子、波長変換層について、以下の熱重量変化の評価を行った。
【0265】
示差熱・熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製、TG/DTA6200R)を用い、重量減少量を測定した。具体的には、室温から10℃/分の昇温速度で温度を500℃まで上昇させ、35〜250℃(a)と250〜500℃(b)の重量減少および残留物(c)の重量%を測定した。その結果と各種比重データから、複合粒子中の半導体粒子とシリカ粒子のおよその体積比および波長変換層中の複合粒子と樹脂成分のおよその体積比を算出した。
【0266】
<5>透明性の評価
波長変換層を形成したETFEフィルムに関して、以下の透明性の評価を行った。
【0267】
ヘイズメーター(日本電色工業株式会社製、NDH2000)を用いて全光線透過率とヘイズを測定した。なお、ETFEフィルム単体の全光線透過率は94.2%、ヘイズは2.4であった。
【0268】
<6>耐光性評価
波長変換層を形成したETFEフィルムに関して、アイスーパーUVテスター(岩崎電気株式会社製、SUV−W151)を用いてブラックパネル温度63℃、湿度50%RH、放射照度100mW/cm2(波長300〜400nm)、処理時間48時間の条件で耐光性試験を行った。耐光性試験前後において透明性、発光特性の劣化が10%未満であるものを○、透明性、発光特性の少なくとも一方の劣化が10%超であるものを×とした。
【0269】
<7>発電効率の評価
光起電装置の短絡電流密度Jsc(mA/cm2)、光電変換効率測定について説明する。擬似太陽光照射装置(分光計器(株)製、OTENTO−SUNV型ソーラシミュレータ)を用いて1kW/m2の光を照射し、そのとき生じた電流と電圧をI−Vテスタ(ケースレーインスツルメンツ(株)製、2400型ソースメータ)を用いて、JIS C 8913に準じて測定した。
【0270】
また、別途、波長変換層を形成しない以外は、すべて上記と同様にして作製した光起電装置を比較用光起電装置として用意した。そして、実施例1で得られた光起電装置について測定された短絡電流密度Jscから、比較用光起電装置について測定された短絡電流密度Jscを引いた値を、短絡電流密度差ΔJscとした。
【0271】
また、得られた光起電装置を屋外に1ヵ月間設置した後、上記同様の評価を行い、Jscおよび光電変換効率の低下がほとんど見られなかった場合は耐候性が○、顕著な低下が見られた場合は耐候性が×とした。
以上の評価結果を表1に示す。
【0272】
(実施例2)
1.複合粒子、樹脂組成物および波長変換層の作製
複合粒子の調製において、噴霧乾燥時の炉の温度を800℃に変更した以外は、前記実施例1と同様にして複合粒子、樹脂組成物および波長変換層を得た。
【0273】
2.半導体粒子、複合粒子、樹脂組成物および光起電装置の評価
実施例1と同様にして各種評価を行った。
以上の評価結果を表1に示す。
【0274】
(実施例3)
1.複合粒子、樹脂組成物および波長変換層の作製
複合粒子の調製において、キャリアガスを水素と窒素の混合ガス(水素濃度5%)に変更するとともに、噴霧乾燥時の炉の温度を800℃に変更した以外は、前記実施例1と同様にして複合粒子、樹脂組成物および波長変換層を得た。
【0275】
2.半導体粒子、複合粒子、樹脂組成物および光起電装置の評価
実施例1と同様にして各種評価を行った。
以上の評価結果を表1に示す。
【0276】
(実施例4)
1.複合粒子、樹脂組成物および波長変換層の作製
複合粒子の調製において、噴霧乾燥時のキャリアガスを窒素として複合粒子を作製し、得られた複合粒子を、バッチ式電気炉((株)モトヤマ製、雰囲気式電気炉、SKM2030D)に入れ、600℃で2時間の加熱処理を施した以外は、前記実施例1と同様にして複合粒子、樹脂組成物および波長変換層を得た。なお、バッチ式電気炉の炉内雰囲気は、水素100%とした。
【0277】
2.半導体粒子、複合粒子、樹脂組成物および光起電装置の評価
実施例1と同様にして各種評価を行った。
以上の評価結果を表1に示す。
【0278】
(実施例5)
1.複合粒子、樹脂組成物および波長変換層の作製
複合粒子の調製において、キャリアガスを水素と窒素の混合ガス(水素濃度5%)に変更するとともに、噴霧乾燥時の炉の温度を800℃にして複合粒子を作製し、得られた複合粒子を、バッチ式電気炉((株)モトヤマ製、雰囲気式電気炉、SKM2030D)に入れ、600℃で2時間の加熱処理を施した以外は、前記実施例1と同様にして複合粒子、樹脂組成物および波長変換層を得た。なお、バッチ式電気炉の炉内雰囲気は、水素100%とした。
【0279】
2.半導体粒子、複合粒子、樹脂組成物および光起電装置の評価
実施例1と同様にして各種評価を行った。
以上の評価結果を表1に示す。
【0280】
(実施例6)
1.複合粒子、樹脂組成物および波長変換層の作製
複合粒子の調製を以下のようにした以外は、前記実施例1と同様にして複合粒子、樹脂組成物および波長変換層を得た。
【0281】
まず、半導体粒子および無機化合物の粒子を含む混合分散液に、さらに平均粒径5nmの炭素粒子を1.0g添加した。
【0282】
次いで、得られた混合分散液を、噴霧乾燥法により乾燥させ、酸化亜鉛を主とする半導体粒子とシリカ粒子(無機化合物の粒子)との複合粒子を得た。噴霧乾燥時の炉の温度は800℃とし、キャリアガスには窒素を使用した。なお、噴霧乾燥装置の炉心管の内壁面は、ステンレス鋼製である。
【0283】
2.半導体粒子、複合粒子、樹脂組成物および光起電装置の評価
実施例1と同様にして各種評価を行った。
以上の評価結果を表1に示す。
【0284】
(実施例7)
1.複合粒子、樹脂組成物および波長変換層の作製
複合粒子の調製において、噴霧乾燥時の炉の温度を800℃とし、かつ、噴霧乾燥装置の炉心管を、内壁面に銅板を貼り付けたステンレス鋼製のものに変更した以外は、前記実施例1と同様にして複合粒子、樹脂組成物および波長変換層を得た。
【0285】
2.半導体粒子、複合粒子、樹脂組成物および光起電装置の評価
実施例1と同様にして各種評価を行った。
以上の評価結果を表1に示す。
【0286】
(実施例8)
1.複合粒子、樹脂組成物および波長変換層の作製
実施例1と同様にして複合粒子、樹脂組成物および波長変換層を得た。
【0287】
2.半導体粒子、複合粒子、樹脂組成物および光起電装置の評価
以下のようにした以外は、実施例1と同様にして光起電装置を作製し、得られた光起電装置について発電効率の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0288】
得られた樹脂組成物を、ETFEフィルムの表面に、市販のインクジェット装置(静電方式)を用いてマイクロレンズ形状(ドット形状)になるよう塗布した。そして、両面から約500mJ/cm2のUV光を照射して樹脂組成物を硬化させ、さらに真空オーブン中で、約180℃で1時間加熱処理を行った。これにより、樹脂組成物のマイクロレンズ形状の硬化物を形成した。得られた硬化物の形状について、レーザー顕微鏡((株)キーエンス製、VK−9700)により、平面視直径、凹凸構造の高低差、x軸方向の周期、y軸方向の周期を測定したところ、それぞれ、約30μm、約20μm、約35μm、約30μmであった。
【0289】
その後、実施例1と同様にして各種評価を行った。
以上の評価結果を表1に示す。
【0290】
(比較例1)
1.複合粒子、樹脂組成物および波長変換層の作製
半導体粒子の調製において、ヘキサンによる洗浄を省略し、複合粒子の調製において、キャリアガスを窒素に変更した以外は、前記実施例1と同様にして複合粒子、樹脂組成物および波長変換層を得た。
【0291】
2.半導体粒子、複合粒子、樹脂組成物および光起電装置の評価
実施例1と同様にして各種評価を行った。
以上の評価結果を表1に示す。
【0292】
(比較例2)
1.複合粒子、樹脂組成物および波長変換層の作製
半導体粒子の調製において、ヘキサンによる洗浄を省略し、複合粒子の調製において、キャリアガスを窒素に変更するとともに、オルガノシリカゾルの添加を省略した以外は、前記実施例1と同様にして複合粒子、樹脂組成物および波長変換層を得た。
【0293】
2.半導体粒子、複合粒子、樹脂組成物および光起電装置の評価
実施例1と同様にして各種評価を行った。
以上の評価結果を表1に示す。
【0294】
【表1】
【0295】
表1から明らかなように、各実施例で得られた光起電装置では、波長変換層を設けたことにより光電変換効率の向上が認められた。
【0296】
また、各実施例で得られた光電変換層では、比較例に比べ、耐光性や耐候性に優れることが認められた。
【符号の説明】
【0297】
1 光起電装置
2 光起電層
3 波長変換層
31 第1波長変換層
32 第2波長変換層
4 複合粒子
5 硬化性樹脂
6 半導体粒子
7 反射層
8 無機化合物の粒子
100 噴霧乾燥装置
110 噴霧器
120 電気炉
121 炉心管
122 ヒーター
130 バグフィルター
140 配管
150 配管
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合粒子の製造方法、複合粒子、樹脂組成物、波長変換層および光起電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光起電装置は、太陽光を光電変換して電気エネルギーを取り出す太陽電池として用いられる。この種の光起電装置としては、現在、光を起電力に変換する光起電層に単結晶シリコン、多結晶シリコン、球状シリコンやアモルファスシリコン、CdTe、CIGSを用いたものが主流である。最近では、色素増感型太陽電池などの有機太陽電池なども開発されており、有機系材料を含む様々な光起電層が用いられるようになってきた。
【0003】
これらの光起電装置の場合、分光感度が略可視光領域に限られているため、太陽光線のうち紫外領域や赤外領域などの可視光以外の領域を効率よく電気エネルギーに変換することができない。また、結晶シリコン太陽電池には、紫外光吸収による温度上昇に伴って、光電変換効率が低下するという問題があった。さらに、有機系材料を含む光起電層を用いた有機太陽電池においては、紫外線による有機系材料の劣化に伴って、光電変換効率が低下するという問題があった。
【0004】
ここで、特許文献1には、波長変換物質としてCdSe、CdTe、GaN、Si、InP、ZnOなどの半導体微粒子やそれらをコアシェル型にした粒子(コアシェル粒子)で構成された量子ドットを用いることが提案されている。このような量子ドットを用いることにより、光電変換に用いることのできない波長領域の光を、光電変換可能な波長領域の光に変換し、太陽電池の光電変換効率を高め得るエネルギー変換膜が得られる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の量子ドットでは、発光特性が低く、太陽電池の光電変換効率を十分に高めるには至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−216560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、発光特性(発光量子収率)に優れるとともに、長期にわたる分散性および耐久性に優れた複合粒子を効率よく製造可能な複合粒子の製造方法、かかる複合粒子の製造方法により製造された複合粒子、およびこの複合粒子を有する樹脂組成物を提供することにある。
【0008】
また、本発明の目的は、高性能で信頼性に優れた波長変換層および光起電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、下記(1)〜(28)の本発明により達成される。
(1) 酸化亜鉛の半導体粒子と、無機化合物の粒子とを含む複合粒子の製造方法であって、
前記複合粒子を製造する工程中に少なくとも1回、前記複合粒子の中間体を還元処理する工程を有することを特徴とする複合粒子の製造方法。
【0010】
(2) 前記還元処理する工程は、還元能を有する気体、および還元能を有する気体と不活性気体との混合気体のいずれかで構成される還元雰囲気下で、前記複合粒子の中間体を加熱処理するものである上記(1)に記載の複合粒子の製造方法。
【0011】
(3) 前記還元能を有する気体は、水素ガスである上記(2)に記載の複合粒子の製造方法。
【0012】
(4) 前記混合気体中の前記還元能を有する気体の含有率は、1〜10体積%または85〜100体積%である上記(2)または(3)に記載の複合粒子の製造方法。
【0013】
(5) 前記複合粒子の中間体は、還元能を有する粒子を含むものであり、
前記還元処理する工程は、前記複合粒子の中間体を加熱処理するものである上記(1)に記載の複合粒子の製造方法。
【0014】
(6) 前記還元能を有する粒子は、炭素粒子である上記(5)に記載の複合粒子の製造方法。
【0015】
(7) 前記還元処理する工程は、同一の空間内に、前記複合粒子の中間体と、還元能を有する金属の単体または合金とを併存させ、これらを加熱処理するものである上記(1)に記載の複合粒子の製造方法。
【0016】
(8) 前記還元処理する工程は、少なくとも内面が、前記還元能を有する金属の単体または合金で構成された配管内に、前記複合粒子の中間体を設けた状態で、前記配管を加熱処理するものである上記(7)に記載の複合粒子の製造方法。
【0017】
(9) 還元能を有する金属は、銅である上記(7)または(8)に記載の複合粒子の製造方法。
【0018】
(10) 前記還元処理する工程は、200〜1,000℃で実施するものである上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の複合粒子の製造方法。
【0019】
(11) 前記半導体粒子と前記無機化合物の粒子とを複合化する工程を行いつつ、前記還元処理する工程を行う上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の複合粒子の製造方法。
【0020】
(12) 前記半導体粒子と前記無機化合物の粒子とを複合化する工程の後に、前記還元処理する工程を行う上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の複合粒子の製造方法。
【0021】
(13) 前記複合化する工程は、噴霧乾燥装置により行う上記(11)または(12)に記載の複合粒子の製造方法。
【0022】
(14) 前記半導体粒子の一次粒子の平均粒径は、1〜10nmである上記(1)ないし(13)のいずれかに記載の複合粒子の製造方法。
【0023】
(15) 前記無機化合物の粒子は、酸化物の粒子である上記(1)ないし(14)のいずれかに記載の複合粒子の製造方法。
【0024】
(16) 前記無機化合物の粒子は、シリカ(SiO2)の粒子およびジルコニア(ZrO2)の粒子の少なくとも一方である上記(15)に記載の複合粒子の製造方法。
【0025】
(17) 前記半導体粒子の含有量は、前記複合粒子全体の10〜90体積%である上記(1)ないし(16)のいずれかに記載の複合粒子の製造方法。
【0026】
(18) 上記(1)ないし(17)のいずれかに記載の複合粒子の製造方法により、得られることを特徴とする複合粒子。
【0027】
(19) 上記(18)に記載の複合粒子と、硬化性樹脂とを含むことを特徴とする樹脂組成物。
【0028】
(20) 前記複合粒子の含有量は、前記樹脂組成物全体の30〜70体積%である上記(19)に記載の樹脂組成物。
【0029】
(21) 上記(19)または(20)に記載の樹脂組成物で構成された層を硬化させてなることを特徴とする波長変換層。
【0030】
(22) 上記(21)に記載の波長変換層を有することを特徴とする光起電装置。
【0031】
(23) 前記波長変換層が、その面内に凹凸構造を有する上記(22)に記載の光起電装置。
【0032】
(24) 前記凹凸構造の高低差が300nm〜100μmである上記(23)に記載の光起電装置。
【0033】
(25) 前記凹凸構造の面内周期が300nm〜50μmである上記(23)または(24)に記載の光起電装置。
【0034】
(26) 前記凹凸構造は、前記凹凸構造より小さな微細凹凸形状を有する上記(23)ないし(25)のいずれかに記載の光起電装置。
【0035】
(27) 2層以上の前記波長変換層を積層してなる積層体を有するものであり、
前記2層の波長変換層の間で、前記凹凸構造の形状が異なっている上記(23)ないし(26)のいずれかに記載の光起電装置。
【0036】
(28) 前記波長変換層は、前記樹脂組成物をインクジェット法により供給し、供給された前記樹脂組成物を硬化させてなるものである上記(22)ないし(27)のいずれかに記載の光起電装置。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、複合粒子の発光特性(発光量子収率)に優れ、かつ、長期にわたる分散性および耐久性に優れた複合粒子を効率よく製造することができる。また、発光特性に優れた複合粒子を有する樹脂組成物が得られる。
【0038】
また、本発明によれば、前記樹脂組成物を用いることにより、高性能で信頼性に優れた波長変換層および光起電装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の複合粒子を含む本発明の波長変換層を備える本発明の光起電装置の第1実施形態を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の複合粒子を含む本発明の波長変換層の実施形態を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の複合粒子の製造方法の第1実施形態に用いられる噴霧乾燥装置の一例を示す概略図である。
【図4】本発明の光起電装置の第2実施形態を模式的に示す断面図である。
【図5】本発明の光起電装置の第3実施形態を模式的に示す断面図である。
【図6】本発明の光起電装置の第4実施形態を模式的に示す断面図および平面図である。
【図7】本発明の光起電装置の第4実施形態を模式的に示す断面図および平面図である。
【図8】本発明の光起電装置の第4実施形態を模式的に示す断面図および平面図である。
【図9】本発明の光起電装置の第4実施形態を模式的に示す断面図および平面図である。
【図10】本発明の光起電装置の第4実施形態を模式的に示す断面図および平面図である。
【図11】本発明の光起電装置の第4実施形態を模式的に示す断面図および平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の複合粒子の製造方法、複合粒子、樹脂組成物、波長変換層および光起電装置について、添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0041】
(複合粒子)
まず、本発明の複合粒子について説明する。
【0042】
図1は、本発明の複合粒子を含む本発明の波長変換層を備える本発明の光起電装置の第1実施形態を模式的に示す断面図、図2は、本発明の複合粒子を含む本発明の波長変換層の実施形態を模式的に示す断面図である。
【0043】
本発明の複合粒子は、酸化亜鉛の半導体粒子と、無機化合物の粒子とを含む粒子である。
【0044】
このような複合粒子は、吸収光波長に対して発光波長を変化させる機能を有することから、特に波長変換材料として用いられる。図1に示す光起電装置(本発明の光起電装置)1は、例えば太陽電池等に適用されるが、光の照射に伴って起電力を生じる光起電層2と、光起電層2の光の入射面側に設けられ、本発明の複合粒子を含む波長変換層(本発明の波長変換層)3とを有している。波長変換層3は、光電変換に適さない波長領域の光(電磁波)を光電変換可能な波長領域の光に変換し、光起電装置1の光電変換効率の向上を図ることができる。
【0045】
図2に示す波長変換層3は、複合粒子4(本発明の複合粒子)を硬化性樹脂5に分散させてなるものである。
【0046】
図2に示す複合粒子4は、半導体粒子6と無機化合物の粒子8とを含むものであるが、これらの粒子6、8の分布形態は、特に限定されるものではない。好ましい分布形態の一例としては、(a)無機化合物の粒子8により半導体粒子6が覆われている形態(図2(a)参照)が挙げられる。半導体粒子6には、その高い活性がゆえ、硬化性樹脂5の耐久性を低下させるが、半導体粒子6を覆うように無機化合物の粒子8が配置されていることにより、半導体粒子6の活性が抑制されることになり、硬化性樹脂5の耐久性をより高めることができる。その結果、本発明の複合粒子4を用いた波長変換層3は、耐久性の高いものとなる。
【0047】
さらにこの形態は、より詳しくは、半導体粒子6と無機化合物の粒子8とが互いに凝集(吸着)している形態であり、その凝集パターンから、いくつかの形態に分類される。
【0048】
各粒子6、8の凝集パターンに基づいて分類された複合粒子4の形態としては、例えば、(b−1)半導体粒子6と無機化合物の粒子8とがランダムに分布している形態(図2(b−1)参照)、(b−2)半導体粒子6が鎖状に繋がっており、その隙間を無機化合物の粒子8が充填している形態(図2(b−2)参照)、(b−3)半導体粒子6の周囲を覆うように無機化合物の粒子8が配置されている形態(図2(b−3)参照)等が挙げられる。なお、図2において、小さい円が半導体粒子6を示し、大きい円が無機化合物の粒子8を示している。
【0049】
このうち、(b−2)の形態および(b−3)の形態が好ましく、(b−2)の形態がより好ましい。これらの形態を有する複合粒子4は、複数の半導体粒子6同士が連結(凝集)することにより、より大きな半導体粒子を含んでいる場合と同等の優れた発光特性(特に、励起吸収帯域を広げたり、長波長側にシフトさせたりする特性)を有するものとなる。しかも、上記形態は、半導体粒子6の添加量をあまり増やさなくても、上記効果が得られるという観点で有用である。特に(b−2)の場合、鎖状に連結した半導体粒子6により、特に少ない添加量で、特に大きな半導体粒子と同等の優れた発光特性を有するものとなるため、大きな効果が得られる。
【0050】
なお、このような形態は、複合粒子4の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM、FE−TEM)のような各種電子顕微鏡、原子間力顕微鏡(AFM)、走査型トンネル顕微鏡(STM)、三次元アトムプローブ装置(3D−AP)、エネルギー分散型X線分析装置(EDX)等により観察することで確認、評価することができる。また、複合粒子4の断面は、例えば、集束イオンビーム加工観察装置(FIB)等により作製することができる。
【0051】
また、半導体粒子6の周囲を無機化合物の粒子8が覆っている場合、半導体粒子6の周囲が無機化合物の粒子8で完全に被覆されている必要はなく、一部に被覆されていない部分があってもよい。
【0052】
さらには、1個の半導体粒子6だけでなく、複数個の半導体粒子6の集合体の周囲を覆うように、無機化合物の粒子8が配置されていてもよく、その場合、無機化合物の粒子8の数は特に限定されない。
【0053】
以上のように、半導体粒子6と無機化合物の粒子8とが複合化していることにより、本発明の複合粒子4は、半導体粒子6の活性を制御するとともに、半導体粒子6同士の凝集を防止して、分散媒中に半導体粒子6を均一に分散させ得るものとなる。このため、吸収・発光特性が向上し、高性能の波長変換材料として用いることができる。
【0054】
以下、半導体粒子および無機化合物の粒子について順次説明する。
本発明に用いられる半導体粒子は、酸化亜鉛(ZnO)の粒子で構成される。酸化亜鉛は、資源枯渇のおそれが少なく、かつ毒性が低いため、製造コストおよび複合粒子製造の作業容易性の観点から有用である。
【0055】
また、半導体粒子としては、希土類元素を含むものが好ましく用いられる。半導体粒子に希土類元素を添加することにより、複合粒子において吸収波長等の吸収特性や発光波長等の発光特性の制御が可能になる。これにより、例えば、光電変換に使用されない紫外線、赤外線等を、光電変換可能な波長の光に変換することができるので、より光電変換効率の高い太陽電池を実現可能な波長変換材料が得られる。
【0056】
半導体粒子中に含まれる希土類元素には、原子番号57から71までのランタノイド元素と、スカンジウム(Sc)およびイットリウム(Y)とからなる17元素を、1種または2種以上組み合わせて用いることができるが、特にユーロピウム(Eu)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)およびイッテルビウム(Yb)の1種または2種以上を組み合わせたものが好ましい。
【0057】
このうち、特に希土類元素としてユーロピウム(Eu)を含むことにより、複合粒子は、紫外線を吸収し、可視光を発光する波長変換機能を有するものとなる。
【0058】
また、特に希土類元素としてエルビウム(Er)、ツリウム(Tm)およびイッテルビウム(Yb)のいずれかを含むことにより、複合粒子は、紫外線を吸収し、赤外線を発光する波長変換機能、または、赤外線を吸収し、可視光を発光する波長変換機能を有するものとなる。
【0059】
なお、前述した酸化亜鉛は、真空装置等の大掛かりな装置を用いることなく、希土類元素のドープが可能である。このため、半導体粒子として酸化亜鉛の粒子を用いることにより、複数の半導体粒子に対して希土類元素を均等に効率よくドープすることができ、その結果、吸収・発光特性に優れた複合粒子を得ることができる。
【0060】
複合粒子全体における希土類元素の含有量は、0.01〜20重量%であるのが好ましく、0.02〜10重量%であるのがより好ましい。希土類元素の含有量を前記範囲内とすることにより、発光量子収率等の吸収・発光特性に優れた複合粒子が得られる。
【0061】
このような半導体粒子は、その一次粒子の平均粒径が1〜10nmであるのが好ましく、1〜5nmであるのがより好ましい。平均粒径を前記範囲内とすることにより、半導体粒子において量子サイズ効果がより顕著に発現するため、半導体粒子の吸収・発光特性が特に向上することとなる。その結果、より光電変換効率の高い光起電装置を実現可能な波長変換材料が得られる。また、平均粒径を前記範囲内とすることにより、半導体粒子は、可視光の波長より小さいものとなるため、透過光に対する半導体粒子の影響が小さくなり、半導体粒子の分散体の透明性が向上する。
【0062】
なお、半導体粒子の一次粒子の平均粒径は、例えば、動的光散乱装置(マルバーン社製、ゼータサイザーナノZS)を用い、半導体粒子を分散媒に分散してなる透明分散液の状態で評価することができる。
【0063】
また、複合粒子全体における半導体粒子の含有量は、10〜90体積%であるのが好ましく、30〜80体積%であるのがより好ましく、50〜80体積%がさらに好ましい。半導体粒子の含有量を前記範囲内とすることにより、半導体粒子による吸収・発光特性を高めるとともに、半導体粒子の耐久性を高めることができる。
【0064】
なお、半導体粒子の含有量が前記下限値を下回ると、複合粒子において半導体粒子による波長変換機能が低下するおそれがある。一方、半導体粒子の含有量が前記上限値を上回ると、半導体粒子と無機化合物の粒子とが均一に分散しなくなるばかりか、半導体粒子の活性を制御する等の無機化合物の粒子の作用が低下するため、複合粒子の安定性および耐久性が低下するおそれがある。
【0065】
本発明に用いられる無機化合物の粒子としては、半導体粒子とは組成の異なるものが挙げられ、例えば、各種の金属や非金属の窒化物、酸化物、リン化物、硫化物等の粒子が挙げられるが、特に酸化物の粒子が好ましく用いられる。無機化合物の粒子として酸化物の粒子を用いることにより、特に大気中における複合粒子の化学的安定性が向上し、長期にわたる耐久性を高めることができる。
【0066】
ここで、無機化合物の粒子の具体例としては、ZnO、SiO2、ZnS、GaN、CdS、GaP、CdS、ZrO2、YVO4、およびY2O3からなる群より選択される少なくとも1種の粒子が好ましく用いられ、シリカ(SiO2)の粒子およびジルコニア(ZrO2)の粒子の少なくとも一方がより好ましく用いられる。これらの酸化物は、化学的安定性に特に優れていることから、半導体粒子の活性を制御し、樹脂組成物の耐久性を確実に高めることができる。その結果、複合粒子における発光量子収率等の吸収・発光特性を高めることができる。
【0067】
このような無機化合物の粒子の一次粒子の平均粒径は、特に限定されないが、半導体粒子の一次粒子の平均粒径の1.5〜10倍程度であるのが好ましく、2〜8倍程度であるのがより好ましい。無機化合物の粒子の平均粒径を前記範囲内とすることにより、半導体粒子および無機化合物の粒子の充填性が向上するため、より緻密な複合粒子が得られる。
【0068】
なお、本発明に用いられる無機化合物の粒子は、いかなる方法で製造されたものでもよく、公知のいずれの方法も用いることができる。一般的な製造方法としては、例えば、噴霧乾燥法、火炎噴霧法、プラズマ法、気相反応法、凍結乾燥法、沈殿法(共沈法)、加水分解法(塩水溶液法、アルコキシド法、ゾルゲル法等)、水熱法(沈殿法、結晶化法、水熱分解法、水熱酸化法等)などが挙げられる。
【0069】
また、本発明の複合粒子では、リチウム含有量を好ましくは3重量%以下、より好ましくは2重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下にすることにより、分散媒に対する分散性と耐久性の向上という課題を解決することができる。この理由は、詳しくは解明されていないものの、リチウムが、大気中の湿気を吸着させることにより、半導体粒子と無機化合物の粒子との吸着(凝集)を阻害しているためであると考えられる。
【0070】
すなわち、リチウムは複合微粒子に分布し、半導体粒子と無機化合物の粒子との円滑な吸着(凝集)を妨げるため、複合粒子はその粒子形状が球形にならず、異形状になり易くなると考えられる。さらには、異形状になった場合、半導体粒子が露出し易くなるため、露出した半導体粒子についてはその活性を制御することができなくなる。その結果、樹脂組成物の耐光性、長期安定性が低下するものと考えられる。
【0071】
これに対し、本発明によれば、リチウム含有量を前記範囲内に制御したことにより、上記のような課題を確実に解決することができる。また、リチウム含有量を前記範囲内とすることにより、発光量子収率をも高めることができる。
【0072】
リチウム含有量を前記範囲内にする方法としては、例えば、半導体粒子または複合粒子に洗浄処理を施す方法、半導体粒子の分散液をイオン交換樹脂(透過膜)に通す方法等が挙げられる。
【0073】
また、原料中にリチウムを用いない半導体粒子の製造方法(例えば、酸化亜鉛合成法等)を用いても、リチウム含有量を前記範囲内にすることができる。
【0074】
一方、リチウム含有量を前記上限値以下にすれば、上述したような効果が得られるが、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは0.5重量%以上という下限値が設定されてもよい。リチウム含有量をこの下限値以上とすることにより、上記の課題をより確実に解決することができる。これは、上記の課題を解決するという効果は、リチウム含有量の減少に伴って顕著になるものの、効果の大きさには極大値が存在しており、この極大値が前記下限値よりリチウム含有量が多い領域に位置しているからである。すなわち、リチウム含有量を前記下限値未満とした場合、発光特性が低下するおそれがある。
【0075】
また、本発明では、複合粒子中の酢酸の含有量が20重量%以下であるのが好ましく、10重量%以下であるのがより好ましく、9重量%以下であるのがさらに好ましく、8重量%以下であるのが最も好ましい。酢酸の含有量を前記範囲内とすることにより、耐熱性、耐候性が向上する。
【0076】
なお、酢酸についても、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上という下限値が設定されてもよい。酢酸の含有量をこの下限値以上とすることにより、上記の課題をより確実に解決するとともに、発光量子収率を高めることができる。
【0077】
さらに、本発明では、複合粒子中のその他のイオン性不純物について、その総含有量を0.5重量%以下とするのが好ましく、0.3重量%以下とするのがより好ましい。これらのイオン性不純物も、複合粒子の特性に影響を及ぼすため、その含有量を少なくすることで、本発明の効果がより顕著になる。
【0078】
なお、その他のイオン性不純物としては、例えば、F−、Cl−、NO2−、Br−、NO3−、PO43−、SO42−、(COO)22−、HCOO−、Na+、NH4+、K+、Mg2+、Ca2+等が挙げられる。
【0079】
このようなリチウム、酢酸、イオン性不純物の各含有量は、例えばイオンクロマト分析法により測定することができる。なお、リチウムクロマト分析の場合、前述したリチウム含有量、酢酸含有量は、それぞれリチウムイオン含有量、酢酸イオン含有量として測定される。
【0080】
イオンクロマト分析は、イオンクロマトグラフィーを用い、例えば以下のような手順で行われる。
【0081】
まず、分析に供する試料を容器にとり、超純水で希釈する。その後、容器を密閉した後、恒温器に投入し、例えば125℃×20時間で容器に熱水処理を施す。
【0082】
次いで、熱水処理を施した容器を室温まで徐冷する。そして、容器内の試料に遠心分離処理およびフィルターろ過処理を施し、各処理を経た試料をイオンクロマト分析の検液とする。
【0083】
次いで、イオンクロマトグラフィーに、得られた検液および既知の濃度のイオン類標準試料を導入し、検量線法により検液中の各イオンの含有量を定量する。
【0084】
以上のようにして、リチウム含有量、酢酸含有量、およびその他のイオン性不純物含有量を測定することができる。
【0085】
また、本発明の複合粒子は、熱重量分析において、以下の条件を満足することが好ましい。
【0086】
例えば、複合粒子について、室温から10℃/分で昇温させたときの250〜500℃の間における重量減少量(減少率)を測定する熱重量分析を行う。
【0087】
本発明の複合粒子では、この熱重量分析により測定された重量減少量が、20%以下であるのが好ましく、15%以下であるのがより好ましい。このような複合粒子は、熱重量分析において重量減少の測定対象となる物質、特に有機系の不純物の含有量が非常に小さいことを示すものであり、上記の課題をより確実に解決し得るものとなる。また、発光量子収率もより高いものとなる。
【0088】
また、本発明の複合粒子の平均粒径は、特に限定されないが、20〜100nmであるのが好ましく、45〜55nmであるのがより好ましい。平均粒径が前記範囲内であると、特に分散媒への分散性が向上し、分散媒中に複合粒子を高密度に充填することができる。これにより、複合粒子の分散体の発光特性が向上するとともに、可視光領域で透明な分散体(例えば後述する樹脂組成物)が得られる。
【0089】
なお、複合粒子の平均粒径についても、例えば、動的光散乱装置(マルバーン社製、ゼータサイザーナノZS)を用い、透明分散液の状態で評価することができる。
【0090】
以上のような複合粒子は、前述したように、吸収・発光特性が高く、高性能の波長変換材料として用いられる。このため、例えば、EL照明、光通信、EL表示体、LED照明、太陽電池、バイオイメージング等の各種デバイスが備える光学材料に用いることができる。特に、LED照明、太陽電池等が備える波長変換材料として好ましく用いられる。
【0091】
また、上述したような用途に用いられる場合には、特に本発明の複合粒子の発光量子収率が、可視光領域または近紫外領域の励起波長で30%以上であるのが好ましく、40%以上であるのがより好ましい。
【0092】
次に、本発明の複合粒子の製造方法について説明する。
(複合粒子の製造方法)
【0093】
<第1実施形態>
まず、本発明の複合粒子の製造方法の第1実施形態について説明する。
【0094】
[1]半導体粒子の製造
複合粒子の製造方法の説明に先立って、まず、半導体粒子の製造方法について説明する。半導体粒子の製造方法としては、例えば、ゾル−ゲル法、ソルボサーマル法(水熱合成法を含む)、硝酸亜鉛を用いた合成方法のような各種液相法、火炎法、スパッタリング法のような各種気相法等が挙げられる。
【0095】
ここでは、一例としてゾル−ゲル法について説明する。
まず、原料として酢酸亜鉛またはその水和物(例えば、酢酸亜鉛二水和物等)を用意し、これを溶媒中に溶解する。溶媒としては、例えば、エタノール、プロパノール等が挙げられる。
【0096】
次いで、必要に応じて、溶液に還流処理を行う。還流処理における加熱温度は、溶媒の揮発性や溶質の反応温度に応じて適宜設定されるが、60〜100℃程度であるのが好ましく、また、還流処理の時間は、30分〜10時間程度とされる。
【0097】
次いで、得られた溶液にアルカリ金属の水酸化物を添加し、低温下(例えば10℃以下)にて静置する。これにより、酸化亜鉛半導体粒子の分散液が得られる。アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム等が挙げられる。
【0098】
なお、希土類元素をドープした半導体粒子を製造する場合、酢酸亜鉛またはその水和物に加え、希土類元素の酢酸塩またはその水和物(例えば、酢酸エルビウム四水和物、酢酸ユーロピウム四水和物等)を添加するようにすればよい。
以上のようにして半導体粒子を製造することができる。
【0099】
また、得られた半導体粒子の分散液について、洗浄処理を施すのが好ましい。これにより、半導体粒子に付着したリチウム、酢酸、イオン性不純物、有機系不純物等の各種不純物を除去することができる。
【0100】
洗浄処理としては、例えば、半導体粒子の分散液に洗浄液を添加する方法等が挙げられる。必要に応じて、洗浄液に振動、超音波等を付加してもよい。
【0101】
洗浄液としては、例えば、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、アセトン等が挙げられる。
【0102】
このうち、洗浄液には、特にヘキサンが好ましく用いられる。ヘキサンによれば、極性が比較的低いため、半導体粒子の分散液の極性を大きく変化させることができる。その結果、半導体粒子とイオン性不純物、有機系不純物との分離性能、すなわち洗浄処理の効率が向上するという効果が得られる。
【0103】
なお、半導体粒子に付着したリチウム、酢酸、イオン性不純物、有機系不純物等の各種不純物を除去する方法としては、上記の洗浄処理の他に、(i)後述する複合粒子の製造段階で上記と同様の洗浄処理を施す方法、(ii)半導体粒子の分散液をイオン交換樹脂(透過膜)に通す方法等が挙げられる。
【0104】
さらには、リチウムを用いない半導体粒子の作製方法(例えば、酸化亜鉛合成法等)を用いることにより、リチウム含有量の少ない複合粒子を製造することもできる。
【0105】
また、洗浄液の添加量は、半導体粒子の体積を1としたとき、体積比で1〜10程度であるのが好ましく、2〜5程度であるのがより好ましい。洗浄液の添加量が前記下限値を下回った場合、前述した洗浄の効果が損なわれる。一方、洗浄液の添加量が前記上限値を上回った場合、それ以上、洗浄液の効果の向上が期待できない。
なお、洗浄処理の回数は、特に限定されず、複数回であってもよい。
【0106】
[2]複合粒子の製造
続いて、複合粒子の製造方法について説明する。本発明の複合粒子は、いかなる方法で製造されたものであってもよく、例えば、半導体粒子の分散液と無機化合物の粒子の分散液とを混合し、混合液を各種霧化法により微細な液滴にし、乾燥させる噴霧乾燥法が好ましく用いられる。
【0107】
以下、半導体粒子の分散液と無機化合物の粒子の分散液とを混合し、噴霧乾燥法により混合分散液を乾燥させる方法について、詳述する。
【0108】
この方法は、[2−1]半導体粒子の分散液と無機化合物の粒子の分散液とを混合する混合工程と、[2−2]半導体粒子と無機化合物の粒子とを複合化する複合化工程とを有する。以下、各工程について詳述する。
【0109】
[2−1]混合工程
まず、半導体粒子の分散液と無機化合物の粒子の分散液とを用意する。
【0110】
半導体粒子の分散液は、[1]の方法により製造された半導体粒子を分散媒に分散させてなるものであるが、この分散媒としては、エタノール、プロパノール等が挙げられる。
【0111】
半導体粒子の分散液の濃度は、特に限定されないが、0.01〜5M程度とするのが好ましく、0.05〜1M程度とするのがより好ましい。
【0112】
一方、無機化合物の粒子の分散液も、無機化合物の粒子を上述したような分散媒に分散してなるものである。
【0113】
無機化合物粒子の分散液の濃度は、特に限定されないが、0.01〜5M程度とするのが好ましく、0.05〜1M程度とするのがより好ましい。
【0114】
次いで、半導体粒子の分散液と無機化合物の粒子の分散液とを混合し、混合分散液(複合粒子の中間体)を調製する。
【0115】
[2−2]複合化工程
次に、得られた混合分散液(複合粒子の中間体)を粉末化しつつ、乾燥させる。これにより、複合粒子が得られる。
【0116】
乾燥法には、火炎乾燥法、減圧乾燥法等のいかなる乾燥法をも用いることができるが、特に噴霧乾燥法が好ましく用いられる。噴霧乾燥法によれば、粒径の揃った均質な複合粒子を効率よく製造することができる。また、微小な粒子状に粉末化しつつ、乾燥させることから、著しい高温を必要としない。このため、耐熱性の低い原料を用いることも可能である。
【0117】
図3は、本発明の複合粒子の製造方法の第1実施形態に用いられる噴霧乾燥装置の一例を示す概略図である。
【0118】
図3に示す噴霧乾燥装置100は、噴霧器110と、炉心管121とヒーター122とを備える電気炉120と、バグフィルター130とを有している。
【0119】
噴霧器110は、スラリー状の原料を液滴に霧化するとともに、高圧気体により噴霧するものである。
【0120】
各種霧化法には、混合分散液を微細な液滴にする方法ならばいかなる方法をも用いられるが、超音波霧化器や2流体ノズルを用いて霧化させる方法が好ましく用いられ、さらに超音波霧化器が好ましく用いられる。超音波霧化器は、混合分散液を加熱することなく、数ミクロンサイズの液滴を作製することができる。このことにより、熱により半導体粒子を劣化させることなく、混合分散液を霧化することができる。また、各種霧化法によって作製された液滴は、サイクロン等の分級装置により、より小さなサイズの液滴に分離される方が好ましい。分級装置を用いることにより、最終的に、粒径数十ナノメートル以下の均一な複合微粒子を作製することができる。
【0121】
液滴の乾燥方法には、液滴内の溶媒を乾燥できる方法であればいかなる方法でもよいが、ここで説明するような加熱した炉に通す方法の他に、レーザーやマイクロ波を照射する方法等が用いられる。
【0122】
また、電気炉120が備える炉心管121は、鉛直方向に細長い筒状をなしており、その外周面を覆うようにヒーター122が設けられている。このヒーター122により、炉心管121内が加熱できるようになっている。
【0123】
炉心管121の下端と噴霧器110とが配管140により接続されており、噴霧器110から噴霧された原料の液滴は、炉心管121の内部に供給されるようになっている。炉心管121内に噴霧された原料は、加熱により乾燥し、固体の粉末となる。
【0124】
一方、炉心管121の上端とバグフィルター130とは配管150により接続されている。乾燥により生じた固体の粉末は、配管150を介してバグフィルター130に送られ、バグフィルター130において粉末が回収される。粉末を搬送した気体は、バグフィルター130から図示しない排ガス装置等へ送られる。
【0125】
続いて、上記の噴霧乾燥装置100を用いて複合粒子を製造する手順について説明する。
【0126】
まず、噴霧器110に[2−1]で作製した混合分散液と、高圧気体とを供給する。
次いで、各種霧化法により混合分散液を微小な液滴に霧化するとともに、高圧気体を利用して炉心管121内に噴霧する。
【0127】
炉心管121内では、熱の影響で液滴が乾燥するとともに、液滴中に含まれる半導体粒子と無機化合物の粒子とが互いに吸着する。その結果、半導体粒子と無機化合物の粒子とを含む複合粒子が得られる。このように噴霧乾燥装置100によれば、2種類の粒子を含み、微小かつ粒径の揃った複合粒子を効率よく製造可能であるとともに、表面張力により自発的に球形の液滴となることから、球形の複合粒子の製造が可能になる。
【0128】
ここで、本発明では、このような複合粒子の製造過程で、少なくとも1回、混合分散液(複合粒子の中間体)に還元処理を施すことを特徴とするものである。
【0129】
この還元処理は、混合分散液中の半導体粒子を構成する酸化亜鉛を還元する処理であれば、いかなる処理であってもよいが、ここでは、噴霧乾燥を行いつつ、還元処理を施す方法について詳述する。
【0130】
ここで、噴霧器110に供給される高圧気体(キャリアガス)は、半導体粒子に対する還元能を有する気体を含むものである。
【0131】
このような還元能を有する気体(還元性気体)としては、例えば、水素、一酸化炭素等が挙げられる。このうち、還元能の大きさ、安全性等の観点から、水素が好ましく用いられる。
【0132】
また、高圧気体は、これらの還元性気体と不活性気体とを含む混合気体であってもよい。不活性気体としては、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン等が挙げられる。
【0133】
混合気体中の還元性気体の含有率は、還元性気体が含まれてさえいれば、特に限定されないものの、1〜10体積%であるのが好ましく、3〜8体積%であるのがより好ましい。このような混合気体は、必要かつ十分な還元能を有するとともに、過剰な還元処理を防止し得るものとなる。
【0134】
または、85〜100体積%であるのが好ましく、90〜100体積%であるのがより好ましい。このような混合気体は、水素濃度が高いため還元能が大きく、水素濃度が低い混合気体を用いた場合よりも短時間で還元処理を行うことができる。
【0135】
高圧気体として還元性気体が用いられると、電気炉120内において、複合粒子が形成されるとともに、半導体粒子に還元作用が働く。この還元作用により、半導体粒子中の酸化亜鉛が一部還元される。
【0136】
ところで、本発明の複合粒子は、酸化亜鉛の発光特性を利用して、種々の用途に応用されるものである。
【0137】
酸化亜鉛の発光メカニズムは、酸化亜鉛の結晶格子に存在する種々の点欠陥に起因すると考えられている。これらの点欠陥のうちの1つが酸素欠陥である。酸化亜鉛の半導体粒子における発光特性、特に発光量子収率を高めるためには、この酸素欠陥が含まれるように制御する必要がある。
【0138】
上述したように、本発明では、複合粒子の製造過程において、半導体粒子中の酸化亜鉛が一部還元されるため、これにより酸化亜鉛に酸素欠陥が形成される。その結果、半導体粒子における発光特性(発光量子収率)を高めることができる。したがって、このような半導体粒子を含む複合粒子は、発光特性に優れるとともに、前述したように、分散性および耐久性に優れたものとなる。
【0139】
また、還元処理を、複合粒子を形成しつつ施すことにより、複合粒子が完全に形成される前に、半導体粒子に対して還元作用が働くことになる。複合粒子が完全に形成されてしまうと、半導体粒子と無機化合物の粒子とが互いに吸着した状態となるため、半導体粒子と還元性気体に対する還元処理が十分に行えないおそれがあるのに対し、複合粒子が形成される途中であれば、半導体粒子に対する還元性気体の接触頻度が多くなるため、還元処理を十分に行うことができる。
【0140】
還元処理における温度(炉心管121内の温度)は、200〜1000℃であるのが好ましく、300〜950℃であるのがより好ましく、500〜900℃程度であるのがさらに好ましい。これにより、高速で移動している液滴に対して、乾燥処理と還元処理とを確実に施すことができる。なお、温度が前記下限値未満である場合、乾燥処理および還元処理が不十分になるおそれがある。一方、温度が前記上限値を上回る場合、還元処理が過剰になり、必要以上の酸化亜鉛が還元されてしまう。その結果、半導体粒子が半導体特性を失うおそれがある。
【0141】
また、還元処理は、1回に限らず、複数回行うようにしてもよい。また、複合粒子を形成しつつ還元処理を施した後、さらに別途、還元処理を施すようにしてもよい。
以上のようにして、発光特性に優れた複合粒子が得られる。
【0142】
なお、複合粒子を形成する際には還元処理を行わず、複合粒子を作製し終えてから別途、還元処理を行うようにしてもよい。この場合には、還元処理を行う時間に制限がないので、複合粒子の発光特性を考慮しつつ、時間をかけて十分な還元処理を行うことができる。よって、複合粒子が完全に形成されていても還元処理には差し支えない。なお、この場合、炉心管121内に供給される高圧気体は、還元能を有する気体を含んでいなくてもよく、不活性気体の他、空気、酸素等の酸化性気体等であってもよい。
【0143】
また、別途、還元処理を行う場合、連続式、バッチ式の加熱炉を用いて行うことができる。
【0144】
この場合、加熱温度は、前記温度範囲と同等であるのが好ましく、加熱時間は、5分〜5時間程度であるのが好ましい。
【0145】
また、必要に応じて、製造後の複合粒子を粉砕工程に供するようにしてもよい。粉砕方法としては、ボールミル、ビーズミル等の各種粉砕機、超音波分散装置等の各種分散機を用いる方法が挙げられる。
さらには、必要に応じて、分級処理を行うようにしてもよい。
【0146】
なお、還元処理を伴って製造された複合粒子は、処理前に比べて、より多くの酸素欠陥を含むものとなる。酸素欠陥量の増加の有無は、例えば、レーザーラマン分光法等により評価することができる。
【0147】
<第2実施形態>
次に、本発明の複合粒子の製造方法の第2実施形態について説明する。
【0148】
以下、第2実施形態について説明するが、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0149】
本実施形態では、還元能を有する気体を用いる代わりに、還元能を有する粒子を含む混合分散液(複合粒子の中間体)を用いるようにした以外は、前記第1実施形態と同様である。
【0150】
まず、混合工程において、半導体粒子と無機化合物の粒子とを含む混合分散液(複合粒子の中間体)に、還元能を有する粒子を加える。
【0151】
還元能を有する粒子としては、カーボンブラック、グラファイト粉末等の炭素粒子、または炭素材料を含む粒子が挙げられ、炭素粒子が好ましく用いられる。炭素粒子は、分散性および還元能に優れるとともに、還元処理後の生成物が気体(一酸化炭素)として容易に排出可能であることから、還元能を有する粒子として好適である。
【0152】
このような粒子の一次粒子の平均粒径は、1〜100nm程度であるのが好ましく、2〜80nm程度であるのがより好ましい。還元能を有する粒子の粒径を前記範囲内とすることにより、半導体粒子と還元能を有する粒子とが均一に分散し易く、両者の接触機会が高められる。その結果、半導体粒子に対して十分な還元処理を施すことができる。
【0153】
また、還元能を有する粒子の含有率は、その一次粒子の粒径に応じて適宜設定されるが、一例としては、半導体粒子の含有率の30〜500体積%程度であるのが好ましく、50〜400体積%程度であるのがより好ましい。これにより、半導体粒子と還元能を有する粒子との接触機会をより高めるとともに、還元能を有する粒子が過剰になるのを防ぐことができる。
【0154】
なお、還元能を有する粒子を加えた混合分散液には、必要に応じて、超音波や振動を付与することにより、各粒子の分散性を高めるようにすればよい。
【0155】
次いで、複合化工程において、得られた混合分散液を粉末化しつつ、乾燥させる。この際、加熱により、半導体粒子と還元能を有する粒子との間で還元反応が生じる。例えば、炭素粒子の場合、半導体粒子中の酸素と炭素粒子中の炭素とが反応し、一酸化炭素が生成される。この一酸化炭素は、高圧気体とともに排出されることから、効率よく複合粒子の形成と、半導体粒子の還元とを行うことができる。
【0156】
この場合、高圧気体は、還元性気体、不活性気体、酸化性気体等のいずれであってよいが、意図しない酸化や還元を防止するためには、不活性気体であるのが好ましい。
【0157】
なお、前述した還元処理は、マイクロ波処理、高周波超音波処理、レーザー照射処理等で代替することもできる。これらの処理は、いずれもマイクロ波、高周波超音波、レーザーのエネルギーにより、半導体粒子と還元能を有する粒子との反応を生じさせ、還元処理を施すことができる。
【0158】
特に炭素粒子は、マイクロ波、レーザー等の吸収し易いことから、少ないエネルギーで炭素粒子を直接自己発熱させることができる。その結果、外部から加熱するよりも効率的に還元処理を施すことができるとともに、炭素粒子の温度が均一に上昇するため、還元処理の均一性も向上する。その結果、還元処理の進度を厳密に制御することが可能になる。
【0159】
このような処理を行う場合、第1実施形態と同様、混合分散液の液滴に対して処理を施すようにすればよい。これにより、分散媒の揮発と還元処理とを行い、複合粒子を作製することができる。
マイクロ波の周波数は、例えば1〜30GHz程度とされる。
【0160】
以上のような本実施形態においても、第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。
それに加え、還元能を有する気体を用いる必要がないので、製造コストの削減を図ることができる。特に、マイクロ波処理、高周波超音波処理、レーザー照射処理等を用いることにより、還元能を有する粒子を直接加熱することができるので、エネルギー効率が高く、製造コストのさらなる削減を図ることができる。
【0161】
<第3実施形態>
次に、本発明の複合粒子の製造方法の第3実施形態について説明する。
【0162】
以下、第3実施形態について説明するが、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0163】
本実施形態では、還元能を有する気体を用いる代わりに、同一の空間内に、混合分散液(複合粒子の中間体)と、還元能を有する金属の単体または合金とを併存させ、これらを加熱するようにした以外は、前記第1実施形態と同様である。
【0164】
本実施形態では、噴霧乾燥装置100の炉心管121に、内壁面が還元能を有する金属または合金で構成された炉心管を用いる。このような炉心管121を用いることにより、複合化工程において、加熱下で混合分散液の液滴と炉心管121の内壁面とが接触することにより、半導体粒子に対して還元処理を施すことができる。これにより、単に炉心管121(またはそれに代わる配管)中に混合分散液を通すことにより、連続的に効率よく還元処理を施すことができ、複合粒子の量産性を高めることができる。
【0165】
還元能を有する金属としては、例えば、銅、チタン、アルミニウム等が挙げられる。また、これらの金属の合金としては、2種以上の上記金属または上記金属とそれ以外の金属とを含む金属間化合物等が挙げられる。
【0166】
このうち、還元能を有する金属として銅を用いることにより、特に効率よく還元処理を施すことができる。また、還元処理によって銅が酸化するものの、酸化銅は容易に還元させることが可能であることから、再利用が容易であるという利点もある。
【0167】
また、還元能を有する金属または合金は、炉心管121の内壁面以外の形態で用いられてもよい。かかる形態としては、例えば、炉心管121内を横断するように設けられた網状体、スリット状体、炉心管121の長手方向に沿って平行に並べられた板状体等の形態であってもよい。これらの形態は、いずれも、混合分散液の流れを妨げることなく、半導体粒子と還元能を有する金属または合金との接触機会が十分に得られるものであることから、確実な還元処理と高い量産性とを両立するものである。また、これらの形態の金属または合金は、いずれも交換が容易であることから、装置のメンテナンスの容易性の観点からも有用である。
【0168】
また、還元能を有する金属または合金の形態は、単なる塊状体、板状体、棒状体、粉末、フレーク状体等であってもよい。また、混合分散液は、必ずしも配管内で還元処理される必要はなく、単なる容器内に、還元能を有する金属または合金と併存させ、加熱処理が施されることにより、還元処理がなされる。この場合、設備に要するコストを削減することができる。
【0169】
なお、上記形態のうち、粉末、フレーク状体は、表面積が大きいため、還元処理の効率が高い。
【0170】
また、還元処理における雰囲気は、特に限定されず、還元性気体、不活性気体、酸化性気体のいずれであってもよいが、意図しない酸化や還元を防止するためには、不活性気体であるのが好ましい。
【0171】
以上のような装置を用いて、前記第1実施形態と同様にして複合粒子を製造する。
このような本実施形態においても、第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。
【0172】
それに加え、還元能を有する気体や、還元能を有する粒子等を用意する必要がないので、製造コストを大きく削減することができる。
【0173】
(樹脂組成物)
本発明の樹脂組成物は、本発明の複合粒子と、硬化性樹脂とを有するものである。このような樹脂組成物は、各種塗布法を用いることにより、高価な真空装置の使用や高温での熱処理を伴うことなく、各種デバイスに対して、本発明の複合粒子を容易に供給(塗布)し、固定することができる。これにより、各種デバイスに対して、前述した波長変換機能を付加することができ、各種デバイスの機能向上を図ることができる。
【0174】
硬化性樹脂には、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等を用いることができるが、特に光透過性を有するものが好ましく用いられる。このような硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エチレンビニルアセテート(EVA)樹脂等が挙げられる。これらを用いることにより、樹脂組成物の光透過性をより高めることができる。
【0175】
このうちエポキシ系樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂またはこれらの水添化物、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート骨格を有するエポキシ樹脂、カルド骨格を有するエポキシ樹脂、ポリシロキサン構造を有するエポキシ樹脂等が挙げられる。直接アモルファスシリコンなどの光起電層や反射防止膜を形成するなど、樹脂組成物に耐熱性を必要とする場合は、脂環式構造を有するものが好ましい。脂環式エポキシ樹脂としては、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3’、4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1,2,8,9−ジエポキシリモネン、ε−カプロラクトンオリゴマーの両端にそれぞれ3,4−エポキシシクロヘキシルメタノールと3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸がエステル結合したもの、水添ビフェニル骨格、および水添ビスフェノールA骨格を有する脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0176】
また、アクリル系樹脂としては、2つ以上の官能基を有する(メタ)アクリレートであれば、特に限定されないが、直接アモルファスシリコンなどの光起電層や反射防止膜を形成するなど、樹脂組成物に耐熱性を必要とする場合は、脂環式構造を有するものが好ましい。脂環式構造を有する(メタ)アクリレートとしては、特に、以下の一般式(1)および一般式(2)より選ばれた少なくとも1種以上の(メタ)アクリレートを重合したアクリル樹脂が好ましい。
【0177】
【化1】
[一般式(1)中、R1およびR2は、互いに異なっていてもよく、水素原子またはメチル基である。また、aは1または2であり、bは0または1である。]
【0178】
【化2】
【0179】
より好ましくは、一般式(1)において、R1、R2が水素で、aが1、bが0である構造を有するジシクロペンタジエニルジアクリレート、一般式(2)において、Xが−CH2OCOCH=CH2で、R3、R4が水素で、Pが1である構造を有するパーヒドロ−1,4;5,8−ジメタノナフタレン−2,3,7−(オキシメチル)トリアクリレート、および、X、R3、R4がすべて水素で、Pが0または1である構造を有するアクリレートより選ばれた少なくとも1種のアクリレートが用いられ、粘度等の点を考慮すると、さらに好ましくは、X、R3、R4がすべて水素で、Pが0である構造を有するノルボルナンジメチロールジアクリレートが用いられる。
【0180】
また、アクリル樹脂として、水分散型アクリル樹脂を用いることができる。水分散型アクリル樹脂とは、水を主成分とする分散媒に分散したアクリルモノマー、オリゴマー、またはポリマーであり、水分散液のような希薄な状態では架橋反応がほとんど進行しないが、水を蒸発させると常温でも架橋反応が進行し固化するタイプ、または、自己架橋可能な官能基を有し、触媒や重合開始剤、反応促進剤などの添加剤を用いなくとも加熱のみで架橋し固化するタイプのアクリル樹脂である。
【0181】
前者のタイプでは水分散液のような希薄な状態では架橋反応がほとんど進行せず、水を蒸発させると常温でも架橋反応が進行し固化するものであれば特に制限されるものではなく、触媒や重合開始剤、反応促進剤などの添加剤を用いてもよいし、自己架橋可能な官能基を利用してもよい。また、反応を完結させる目的で加熱することは制限されない。自己架橋可能な官能基としては特に限定されないが、例えば、カルボキシル基同士、エポキシ基同士、メチロール基同士、ビニル基同士、一級アミド基同士、アルコキシシリル基同士、メチロール基とアルコキシメチル基、カルボニル基とヒドラジド基、カルボジイミド基とカルボキシル基などが挙げられる。水分散型アクリル樹脂は、波長変換物質を含有する複合粒子が水に親和性がある場合に好適に用いられる。
【0182】
一方、シリコーン系樹脂としては、市販のLED用シリコーン樹脂等が挙げられる。
また、架橋性を有するエチレンビニルアセテート樹脂には、酢酸ビニル含有率(VA含有量)が25重量%以上のものが好ましく用いられ、例えば、三井化学ファブロ株式会社のソーラーエバ(商標)等を好適に用いることができる。
【0183】
なお、上述したような硬化性樹脂とは、最終的にネットワーク構造を形成するものであればよく、イオンを媒体としてネットワークを形成するアイオノマー樹脂なども使用することができる。
【0184】
硬化性樹脂の含有量(体積分率)は、特に限定されないが、樹脂組成物全体の20〜65体積%であるのが好ましく、特に30〜55体積%であるのがより好ましい。含有量が前記範囲内であると、特に発光特性、耐久性に優れる。
【0185】
一方、複合粒子の含有量(体積分率)は、特に限定されないが、樹脂組成物全体の30〜70体積%であるのが好ましく、特に40〜60体積%であるのがより好ましい。含有量が前記範囲内であると、特に樹脂組成物の成形性を確保することができ、かつ、樹脂組成物中において複合粒子の充填性が確保されるため、複合粒子が規則的に均一に配列し易くなる。その結果、樹脂組成物を層状に成形した場合、層の透明性が高くなる。
【0186】
また、本発明の樹脂組成物には、上述した硬化性樹脂および複合粒子以外に、架橋を促進させるための触媒、架橋剤、他の波長変換物質、複合粒子と樹脂との親和性を向上し、複合粒子の分散性を向上させるためのアルコキシ基を有する化合物、カップリング剤、界面活性剤等の各種添加物を含有していてもよい。
【0187】
このような添加物としては、例えば、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン等のケイ素のアルコキシド化合物、アミノシラン、エポキシシラン、アクリルシラン等のケイ素を含有する各種カップリング剤、アルミニウム、チタンなどのケイ素以外の元素を含むアルコキシ基含有化合物等が挙げられる。
【0188】
また、酸化亜鉛の半導体粒子を含有する複合粒子を硬化性樹脂に分散させるときには、ケイ素を含有するシランカップリング剤を分散剤として使用することが好ましい。シランカップリング剤としては、窒素またはアミノ基を有するものが好ましく用いられ、アミノシランやアザシラン等が好ましく用いられる。アミノシランを使用する場合、アルコキシ基が2官能であるジシランやアルコキシ基が1官能であるモノシランが好ましく、コストと性能のバランスからN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等が好ましく用いられる。アザシランを使用する場合、環状アザシラン等が好ましく用いられ、コストと性能のバランスから2,2−ジメトキシ−1,6−ジアザ−2−シラシクロオクタン、またはN−メチル−アザ−2,2,4−トリメチルシラシクロペンタン等が好ましく用いられる。
【0189】
(波長変換層および光起電装置)
本発明の波長変換層は、本発明の樹脂組成物を、所定の形状に成形し、硬化させてなるものである。このような波長変換層は、吸収光波長に対して発光波長を変化させることにより、特定波長の光を各種デバイスに入射させることができる。
【0190】
また、本発明の光起電装置は、本発明の波長変換層を有するものである。このため、光起電装置における光電変換特性に応じて、波長変換層における発光波長を適宜選択することにより、光電変換効率に優れた光起電装置が得られる。
【0191】
<第1実施形態>
まず、本発明の波長変換層および本発明の光起電装置の第1実施形態について説明する。
【0192】
図1に示す光起電装置(本発明の光起電装置)1は、前述したように、光の照射に伴って起電力を生じる光起電層2と、光起電層2の光の入射面側に設けられ、本発明の樹脂組成物の硬化物で構成された波長変換層(本発明の波長変換層)3とを有している。
【0193】
光起電層2は、光により起電力を生じるものであり、p型半導体層、真性半導体層、n型半導体層からなる半導体層と、EVA樹脂組成物などの封止材、半導体層の片面または両側の面に設けられた透明電極層を備えている。
【0194】
半導体層を構成する材料としては、半導体材料であれば特に限定はされないが、例えば、単結晶シリコン、多結晶シリコン、球状シリコン、アモルファスシリコン、化合物半導体、有機半導体、量子ドット半導体等が挙げられる。
【0195】
透明電極は、特に限定されないが、例えばITOの膜や酸化錫の膜などにより構成される。なお、光起電装置1の構成はこれに限定されるものではなく、種々の光起電装置1に適用することができる。特に市販の光起電層2を用意して、これに波長変換層3を取り付ける場合、光起電層2の上にさらにガラス、透明電極、無反射層、保護層等が形成されるのが好ましい。この場合、ガラス、透明電極、無反射層、保護層等の上または下に波長変換層3を取り付ければよい。波長変換層3は、紫外領域の太陽光線を可視光領域あるいは近赤外領域に変換する。または、赤外領域の太陽光線を可視光領域あるいは近赤外領域に変換する。変換後の太陽光線は、光起電層2に入射する。したがって、波長変換層3を備えない場合に比べて、光起電層2における光電変換効率が高められるとともに、光起電層2に有機材料が用いられている場合、その劣化を抑制することができる。その結果、例えば太陽電池における光電変換層のような光起電層2の寿命の向上が図られる。
【0196】
この実施形態において、波長変換層3は、図2に示すように、硬化性樹脂5と、硬化性樹脂5内に分散された複合粒子4を備える。複合粒子4は、前述したように、半導体粒子の活性を制御するとともに、硬化性樹脂5中に均一に分散し得るものであるため、波長変換層3において、複合粒子4は、硬化性樹脂5内に均一に分散している。したがって、波長変換層3は、波長変換した光を、光起電層2全体に対して均等に入射させることができる。
【0197】
このような波長変換層3は、前述した樹脂組成物を、例えば、光起電層2の表面に塗布して光硬化させることにより形成される。このため、例えば、市販の光起電層2に樹脂組成物を塗布して光硬化させるだけで波長変換層3を形成することができる。
【0198】
塗布法としては、例えば、ドクターブレード法、スピンコート法、ディッピング法、テーブルコート法、スプレー法、アプリケーター法、カーテンコート法、ダイコート法、インクジェット法、ディスペンサー法等の方法が挙げられる。
【0199】
なお、光起電装置1は、例えば、EL照明、光通信、EL表示体、LED照明、太陽電池、バイオイメージング等の各種デバイスに適用することができる。
【0200】
<第2実施形態>
次に、本発明の光起電装置の第2実施形態について説明する。
図4は、本発明の光起電装置の第2実施形態を模式的に示す断面図である。
【0201】
以下、第2実施形態について説明するが、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。なお、本実施形態において第1実施形態と同様の構成部分については、先に説明した構成部分と同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0202】
本実施形態では、光起電装置1が2層の波長変換層3を有する以外は、第1実施形態と同様である。
【0203】
図4に示す光起電装置1は、波長変換層3として、紫外領域の太陽光線を可視光領域あるいは近赤外領域に変換する第1波長変換層31と、赤外領域の太陽光線を可視光領域あるいは近赤外領域に変換する第2波長変換層32とを有している。この第2実施形態では、図4に示すように、光起電層2の上方に、光の入射側から第1波長変換層31および第2波長変換層32がこの順で設けられている。
【0204】
一般に、光は、その波長が長いほど物体を透過し易くなるので、相対的に波長の短い紫外領域を可視光領域に変換する第1波長変換層31を、光起電層2の入射光の上流側に設け、相対的に波長の長い赤外領域を可視光領域に変換する第2波長変換層32を、入射光の下流側に設けることにより、各波長変換層31、32に入射する光量をより多く確保することができる。そして、第1波長変換層31では、紫外領域の太陽光線が可視光領域あるいは近赤外領域に変換され、第2波長変換層32では、赤外領域の太陽光線が可視光領域あるいは近赤外領域に変換されることにより、光起電層2に入射する可視光(あるいは近赤外領域)の光量が増大する。その結果、光起電層2における光電変換効率を高めることができる。
【0205】
なお、第2波長変換層32は、赤外領域の太陽光線を可視光領域に変換する層に限定されず、第1波長変換層31と同様、紫外領域の太陽光線を可視光領域に変換する波長変換層であって、第1波長変換層31とは組成の異なるものであってもよい。
【0206】
また、波長変換層3の積層数は、2層に限らず3層以上であってもよい。
また、波長変換層3の屈折率は、入射光の最も上流に位置する層の屈折率を最も小さくし、光起電層2に近い層ほど屈折率が大きくなるようにすれば、各層の界面における光の反射に伴う損失を抑制することができ、波長変換層3の光透過率を高めることができる。その結果、光起電層2に入射する光量を増大させ、光電変換効率の高い光起電装置1が得られる。
【0207】
また、第1波長変換層31および第2波長変換層32は、光起電層2の上方に順次成膜することで形成されるが、その他、別途、本発明の樹脂組成物をフィルム状に成形、硬化してなるフィルムを、接着剤等により光起電層2に対して接着することによっても形成されてもよい。
【0208】
なお、以上のような本実施形態においても、第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。
【0209】
<第3実施形態>
次に、本発明の光起電装置の第3実施形態について説明する。
図5は、本発明の光起電装置の第3実施形態を模式的に示す断面図である。
【0210】
以下、第3実施形態について説明するが、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。なお、本実施形態において第1、2実施形態と同様の構成部分については、先に説明した構成部分と同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0211】
本実施形態では、2層の波長変換層3の配置が異なる以外は、第2実施形態と同様である。
【0212】
図5に示す光起電装置1は、光起電層2の上方に設けられた第1波長変換層31と、光起電層2の下方に設けられた第2波長変換層32とを有している。
【0213】
前述したように、光は、その波長が長いほど透過し易くなるので、相対的に波長の長い赤外領域は、光起電層2をも十分に透過する透過力を有する。このため、赤外領域を可視光領域に変換する第2波長変換層32を、光起電層2の下方に設けたとしても、第2波長変換層32は、十分な量の赤外領域の太陽光線を受けることができる。
【0214】
また、図5に示す光起電装置1は、第2波長変換層32の下方に設けられた反射層7を有している。反射層7は、第1波長変換層31、光起電層2および第2波長変換層32を順次透過してきた光を上方に反射する。これにより、反射層7がなければ光電変換に寄与しなかったはずの光を、再び光起電層2に入射させることができる。その結果、光起電層2に入射する光量が増加し、光電変換効率の高い光起電装置1が得られる。
【0215】
さらに、本実施形態では、光起電層2の下方に第2波長変換層32を設け、さらにその下方に反射層7を設けているため、第2波長変換層32では、反射層7で反射する前の光と、反射層7で反射した後の光とがそれぞれ透過する。このため、本実施形態では、第2波長変換層32における波長変換の機会が2回になり、波長変換効率がより高くなる。かかる観点からも、光起電装置1の光電変換効率のさらなる向上が図られる。
【0216】
なお、第1波長変換層31および第2波長変換層32は、光起電層2の各面にそれぞれ成膜することで形成されるが、その他、別途、本発明の樹脂組成物をフィルム状に成形、硬化してなるフィルムを、接着剤等により光起電層2に対して接着することによっても形成されてもよい。
【0217】
また、以上のような本実施形態においても、第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。
【0218】
<第4実施形態>
次に、本発明の光起電装置の第4実施形態について説明する。
【0219】
図6〜11は、それぞれ、本発明の光起電装置の第4実施形態を模式的に示す断面図および平面図である。
【0220】
以下、第4実施形態について説明するが、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。なお、本実施形態において第1実施形態と同様の構成部分については、先に説明した構成部分と同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0221】
本実施形態では、光起電装置が、規則的に分布した点状の樹脂組成物の硬化物を有する以外は、前記第1実施形態と同様である。
【0222】
図6(a)に示す光起電装置1は、光起電層2の上方に設けられ、点状の形態をなす樹脂組成物の硬化物を複数個有している。これら複数の樹脂組成物の硬化物は、互いの離間距離がほぼ等間隔になっており、光起電層2の上面に規則的に配列している。換言すれば、波長変換層3は、光起電装置1の上面に形成された、本発明の樹脂組成物の硬化物で構成された凹凸構造を有するものとなる。なお、図6(b)に示す波長変換層3の場合、点状の形態をなす樹脂組成物の硬化物が点在していることから、波長変換層3は途切れ途切れの構造になっているが、このような構造であっても、本明細書では、波長変換層というものとする。
【0223】
波長変換層3が凹凸構造を有していることにより、1つの樹脂組成物の硬化物に入射した光は、反射する場合、図6(a)の上方ではなく、左右方向に反射する確率が高くなる。左右方向に反射した光は、隣り合う硬化物に再び入射し、屈折を伴って光起電層2に入射することとなる。その結果、波長変換層3が凹凸構造を有していない場合には、反射により光起電層2に入射する光が失われていたのに対し、図6(a)に示す波長変換層3の場合、凹凸構造がなければ失われていたはずの光の一部を光起電層2に入射させることができる。すなわち、図6に示す波長変換層3は、上述したような波長変換機能に加え、反射防止機能を有するものとなる。その結果、光起電装置1における光電変換効率をより高めることができる。
【0224】
凹凸構造の高低差は、斜め方向からの太陽光の吸収とコストとのバランスから、300nm〜100μmであるのが好ましく、1〜50μmであるのがより好ましく、10〜50μmであるのがさらに好ましい。なお、凹凸構造の高低差は、原子間力顕微鏡、共焦点顕微鏡、レーザー顕微鏡等の各種顕微鏡を用いて測定することができる。
【0225】
また、凹凸構造の面内周期は、300nm〜50μmであるのが好ましい。凹凸構造の面内周期を前記範囲内とすることにより、凹凸構造の表面で光が反射される確率を特に低下させ、凹凸構造の反射防止機能を特に高めることができる。
【0226】
さらには、波長変換層3の吸収波長領域とほぼ同程度またはそれ以下の周期にするのが好ましい。これにより、波長変換層3に光が入射するとき、フレネル反射が起こり難くなる。そして、凹凸構造の形状によらず、波長変換層3による光の反射が減少し、波長変換層3に入射する光量がより増加することとなる。その結果、光起電層2に入射する光量も増加する。
【0227】
また、面内直角方向(X方向、Y方向)の凹凸周期は同じであっても異なっていてもよい。また、同じ方向における面内周期のばらつきがあってもよい。凹凸構造の面内周期は、原子間力顕微鏡、共焦点顕微鏡、レーザー顕微鏡、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)等の各種顕微鏡を用いて取得した画像情報をフーリエ変換することにより求めることができる。
【0228】
凹凸構造の形状としては、例えば、ドット、マイクロレンズ、ライン・アンド・スペース(L&S)、ハニカム、セル、四角錐、モスアイ、円錐形など、さまざまな形状が挙げられる。コストと効率の観点から、ドット、マイクロレンズ、L&S、セル、四角錐の形状が好ましく、より好ましくは、ドット、マイクロレンズの形状である。
【0229】
なお、図6〜8および図11に示す凹凸構造は、ドットまたはマイクロレンズの形状をなす凹凸構造の例である。これらの凹凸構造は、平面視形状が略円形をなしており、一方、縦断面形状は略半円形をなしている。
【0230】
また、波長変換層3が備える凹凸構造は、図6に示すような途切れ途切れの構造以外に、図7に示すように、光起電層2の上面を覆う平板状の形態をなす樹脂組成物の硬化物と、その上に設けられ、規則的に分布した点状の形態をなす樹脂組成物の硬化物との積層体の構造であってもよい。このような構造であれば、点状の形態をなす樹脂組成物の硬化物以外の領域に入射した光も、波長変換層3に入射し、その波長を変換することができる。換言すれば、図7に示す波長変換層3によれば、図6に示す波長変換層3では波長変換することができなかった光についても、波長変換することができるので、光起電層2において光電変換可能な波長領域の光の割合を増やすことができる。
【0231】
なお、凹凸構造は、点状の形態をなす樹脂組成物の硬化物の分布は、規則的であっても、不規則的であってもよい。規則的である場合、分布のパターンは特に限定されない。
【0232】
また、凹凸構造は、図8(a)に示すように、光が照射される側(上流側)が凸であっても、図8(b)に示すように、光起電層2側が凸であってもどちらでもよいが、光起電層2に多くの光を入射させるという観点では、光起電層2側が凸であるのが好ましい。この場合、凹凸構造は、図8(b)に示すように、光起電層2に埋め込まれた状態になっていてもよい。また、この場合の凹凸構造の面内周期は、300nm〜1μmの範囲にすることが好ましい。
【0233】
また、凹凸構造は、隣り合う凹凸が同じ樹脂組成物で構成されていても、異なる樹脂組成物で構成されていてもよい。樹脂組成物の光吸収波長範囲が比較的狭い場合は、光吸収波長範囲を広げるなどの目的で、隣り合う凹凸の樹脂組成物を異なるものに設定することにより、光起電装置1の発電効率を容易に向上させることができる。
【0234】
さらに、凹凸構造は、図8(c)に示すように、それぞれの凸部に、より小さな微細凹凸形状を有していてもよい。これにより、微細凹凸形状によって光閉じ込め効果が生じ、波長変換層3による光の反射をより減少させることができる。微細凹凸形状の高低差は、100〜500nmが好ましい。
【0235】
なお、凹凸構造は、図8(a)の凹凸構造と図8(b)の凹凸構造とを組み合わせた構造、すなわち、光が照射される側と光起電層2側の双方に凸があるような構造であってもよい(図8(d)参照)。この場合、光起電層2側が凸である凹凸構造の面内周期を、光が照射される側が凸である凹凸構造の面内周期より小さくすることが好ましい。これにより、光起電層2に入射する光量を増やすことができる。
【0236】
また、光起電層2側が凸である凹凸構造の面内位置と、光が照射される側が凸である凹凸構造の面内位置とは、互いにずれているのが好ましい。これにより、平面視における波長変換層3の面積をより大きく確保することができ、波長変換層3に入射する光量を増やすことができる。
【0237】
また、図9に示す凹凸構造は、L&Sの形状をなす凹凸構造の例である。具体的には、図9に示す凹凸構造は、図9(b)に示すように、Y方向に沿って延伸する細長い平面視形状をなしており、一方、縦断面形状は略半円形をなしている。
【0238】
さらには、図10に示す凹凸構造も、L&Sの形状をなす凹凸構造の例であるが、図10に示す凹凸構造は、図10(b)に示すように、Y方向に沿って延伸する細長い平面視形状をなし、等間隔に設けられた複数の樹脂組成物の硬化物と、X方向に沿って延伸する細長い平面視形状をなし、等間隔に設けられた複数の樹脂組成物の硬化物とが、それぞれ直交するように配列している。これにより、図10に示す凹凸構造は、平面視にて格子状をなしている。
【0239】
また、図11に示す凹凸構造は、規則的に分布した点状の形態をなす樹脂組成物の硬化物で構成されているが、各硬化物は、2層構造になっており、下層と上層とで構成する樹脂組成物の種類が異なっている。
【0240】
樹脂組成物の種類の組み合わせは、特に限定されないが、例えば、上層を構成する樹脂組成物を、第2実施形態において第1波長変換層31を構成する樹脂組成物と同じにするとともに、下層を構成する樹脂組成物を、第2実施形態において第2波長変換層32を構成する樹脂組成物と同じにすればよい。すなわち、上層(第1波長変換層31)では、紫外領域の太陽光線が可視光領域あるいは近赤外領域に変換され、下層(第2波長変換層32)では、赤外領域の太陽光線が可視光領域あるいは近赤外領域に変換される。これにより、光起電層2に入射する可視光(あるいは近赤外領域)の光量が増大する。その結果、光起電層2における光電変換効率を高めることができる。
なお、図11に示す凹凸構造は、3層以上の積層体で構成されていてもよい。
【0241】
以上のような凹凸構造を有する波長変換層3は、本発明の樹脂組成物を前述したような各種塗布法により塗布した後、塗布物を硬化することにより形成されるが、特に樹脂組成物をインクジェット法により塗布するのが好ましい。インクジェット法によれば、所望の領域に所定の量の樹脂組成物を正確に塗布することができる。このため、凹凸構造の形状を正確に再現することができる。
【0242】
また、塗布面にあらかじめ樹脂組成物に対して撥液性を制御するように表面処理を施しておくのが好ましい。これにより、インクジェット法により吐出された樹脂組成物が、表面張力により自ずと半球状に成形される。その結果、図6に示すような波長変換層3をより簡単に形成することができる。
【0243】
なお、インクジェット装置には、ピエゾ方式、静電方式、サーマル方式等の各種吐出方式があるが、比較的高粘度の樹脂組成物を吐出可能であるという観点から、ピエゾ方式または静電方式のインクジェット装置が好ましく用いられる。
【0244】
また、凹凸構造を形成した後、凹凸構造の上にさらに別の樹脂組成物をオーバーコートするようにしてもよい。これにより、光起電装置1における耐汚性、耐久性などの低下を抑制できる。
【0245】
なお、以上のような本実施形態においても、第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。
【0246】
以上、本発明の複合粒子の製造方法、複合粒子、樹脂組成物、波長変換層および光起電装置の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば光起電装置には、任意の構成物が付加されていてもよい。
【実施例】
【0247】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
(実施例1)
【0248】
1.複合粒子、樹脂組成物および波長変換層の作製
<1>まず、酢酸亜鉛二水和物(Zn(CH3COO)2・2H2O)の濃度が0.1Mとなるようにエタノールを加え、酢酸亜鉛二水和物のエタノール溶液400mlを調製した。このエタノール溶液を約80℃で約3時間加熱撹拌しながら全溶液の量が120mlになるまで濃縮した。濃縮後、エタノールを120mlを加え、室温まで冷却した。次いで、得られたエタノール溶液に、水酸化リチウム一水和物(LiOH・H2O)の濃度が0.14Mになるように加え、23℃以下の温度で20分間超音波処理を行った。これにより、エタノール分散液400mlを得た。このエタノール分散液は、紫外線照射により緑色に発光し、エタノール中に半導体粒子を含んでいることを確認した。
【0249】
その後、得られたエタノール溶液400mlにヘキサンを添加し、10,000Gで1分間の遠心分離処理を施した。ヘキサンは、半導体粒子のエタノール溶液の体積を1としたとき、体積比で3程度になる量(1200ml)を添加した。その後、上澄みを除去し、ペースト状の残留物4.9gを得た。次いで、エタノール400mlをペースト状の残留物に加え、再分散させた。これにより、洗浄された半導体粒子のエタノール分散液を得た。
【0250】
<2>次に、日産化学工業(株)製のオルガノシリカゾル(品番:IPA−ST、シリカ粒子の平均粒径:約12nm、シリカ粒子の濃度:30重量%、分散媒:2−プロパノール)をエタノールで約34倍に希釈し、シリカ粒子濃度0.15Mの分散液を調製した。次に、この分散液10mlと、<1>で作製した半導体粒子のエタノール分散液40mlとを混合し、混合分散液を調製した。
【0251】
次いで、得られた混合分散液を、噴霧乾燥法により乾燥させ、酸化亜鉛を主とする半導体粒子とシリカ粒子(無機化合物の粒子)との複合粒子を得た。噴霧乾燥時の炉の温度は400℃とし、キャリアガスには水素100%を使用した。なお、噴霧乾燥装置の炉心管の内壁面は、ステンレス鋼製である。
【0252】
<3>上記の操作の繰り返しで得た複合粒子3.0gをエタノール100gに混合し、ジルコニアビーズを用いて分散処理を行い、複合粒子が分散した透明な分散液を得た。
【0253】
<4>前記一般式(2)において、X、R3、R4がすべて水素で、Pが0である構造を持つノルボルナンジメチロールジアクリレート(試作品番 TO−2111;東亞合成(株)製)0.30g、N−メチル−アザ−2,2,4−トリメチルシラシクロペンタン(Gelest社製、SIM6501.4)0.24g、および<3>で作製した複合粒子の透明分散液60gを混合した。その後、透明分散液を撹拌しながら40℃で30hPaの条件下で3時間処理を行い、揮発分を除去した。
【0254】
その後、透明分散液中に、光重合開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(チバ・ジャパン製、ダロキュア1173)0.003gを溶解させた。これにより、樹脂組成物を得た。
【0255】
<5>上記で得た樹脂組成物を厚み50μmの表面処理を施したETFE(テトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体)フィルム上に塗布した。乾燥後の厚みは約20μmであった。そして、両面から約500mJ/cm2のUV光を照射して樹脂組成物を硬化させ、さらに真空オーブン中で、真空下約180℃で1時間加熱処理を行い、溶媒を除去した。これにより、樹脂組成物のシート状硬化物(波長変換層)を形成した。
【0256】
<6>次いで、CIGS太陽電池セルの上に太陽電池用封止材EVA(VA含有量28%、架橋型)シートを敷き、さらにその上に上記で得られた樹脂組成物の波長変換層を形成したETFEフィルムを、波長変換層が下向き(EVAシート側)となるように配置した。これを真空加熱処理し、光起電装置を作製した。
【0257】
2.半導体粒子、複合粒子、樹脂組成物および光起電装置の評価
<1>粒径評価
オルガノシリカゾル中のシリカ粒子、得られた半導体粒子のエタノール分散液および複合粒子について以下の粒径評価を行った。
【0258】
1)動的光散乱装置(マルバーン社製、ゼータサイザーナノZS)により、半導体粒子の一次粒子のZ平均粒径を測定した。
【0259】
2)電界放射型透過型電子顕微鏡(FE−TEM、日立製作所製、HF−2200)により、半導体粒子の粒径を観察した。観察方法は、適切な倍率の画像を撮影し、画像中に含まれる30個の粒子をランダムに選定しその粒径を測定し平均粒径を算出した。必要に応じ上記微粒子は樹脂に埋設しその断面を観察した。
【0260】
<2>発光特性の評価
得られた複合粒子のエタノール分散液と波長変換層について以下の発光特性の評価を行った。
【0261】
1)蛍光分光光度計(日立製作所製、F−2500)により、励起吸収波長360nm照射下、おおよその発光ピーク波長を観測した。
【0262】
2)絶対PL量子収率測定装置(浜松ホトニクス(株)製、C9920−02G)を用いて、波長350nm、360nmおよび370nmの近紫外光を照射した時の蛍光量子収率を測定した。
【0263】
<3>不純物等の評価
得られた複合粒子について、イオンクロマト装置(日本ダイオネクス(株)製、ICS−2000型イオンクロマトグラフ)を用い、イオンの含有量を測定した。測定試料は、複合粒子0.014gをポリカーボネート容器に精秤し、超純水15mlを加え、125℃×20時間の熱水処理を行ない、室温まで放冷後、内溶液を遠心分離およびフィルターろ過した溶液である。イオンクロマト装置にこの溶液およびイオン類標準溶液を導入し、検量線法により各イオンを定量した。
【0264】
<4>熱重量変化の評価
得られたペースト状の残留物、複合粒子、波長変換層について、以下の熱重量変化の評価を行った。
【0265】
示差熱・熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製、TG/DTA6200R)を用い、重量減少量を測定した。具体的には、室温から10℃/分の昇温速度で温度を500℃まで上昇させ、35〜250℃(a)と250〜500℃(b)の重量減少および残留物(c)の重量%を測定した。その結果と各種比重データから、複合粒子中の半導体粒子とシリカ粒子のおよその体積比および波長変換層中の複合粒子と樹脂成分のおよその体積比を算出した。
【0266】
<5>透明性の評価
波長変換層を形成したETFEフィルムに関して、以下の透明性の評価を行った。
【0267】
ヘイズメーター(日本電色工業株式会社製、NDH2000)を用いて全光線透過率とヘイズを測定した。なお、ETFEフィルム単体の全光線透過率は94.2%、ヘイズは2.4であった。
【0268】
<6>耐光性評価
波長変換層を形成したETFEフィルムに関して、アイスーパーUVテスター(岩崎電気株式会社製、SUV−W151)を用いてブラックパネル温度63℃、湿度50%RH、放射照度100mW/cm2(波長300〜400nm)、処理時間48時間の条件で耐光性試験を行った。耐光性試験前後において透明性、発光特性の劣化が10%未満であるものを○、透明性、発光特性の少なくとも一方の劣化が10%超であるものを×とした。
【0269】
<7>発電効率の評価
光起電装置の短絡電流密度Jsc(mA/cm2)、光電変換効率測定について説明する。擬似太陽光照射装置(分光計器(株)製、OTENTO−SUNV型ソーラシミュレータ)を用いて1kW/m2の光を照射し、そのとき生じた電流と電圧をI−Vテスタ(ケースレーインスツルメンツ(株)製、2400型ソースメータ)を用いて、JIS C 8913に準じて測定した。
【0270】
また、別途、波長変換層を形成しない以外は、すべて上記と同様にして作製した光起電装置を比較用光起電装置として用意した。そして、実施例1で得られた光起電装置について測定された短絡電流密度Jscから、比較用光起電装置について測定された短絡電流密度Jscを引いた値を、短絡電流密度差ΔJscとした。
【0271】
また、得られた光起電装置を屋外に1ヵ月間設置した後、上記同様の評価を行い、Jscおよび光電変換効率の低下がほとんど見られなかった場合は耐候性が○、顕著な低下が見られた場合は耐候性が×とした。
以上の評価結果を表1に示す。
【0272】
(実施例2)
1.複合粒子、樹脂組成物および波長変換層の作製
複合粒子の調製において、噴霧乾燥時の炉の温度を800℃に変更した以外は、前記実施例1と同様にして複合粒子、樹脂組成物および波長変換層を得た。
【0273】
2.半導体粒子、複合粒子、樹脂組成物および光起電装置の評価
実施例1と同様にして各種評価を行った。
以上の評価結果を表1に示す。
【0274】
(実施例3)
1.複合粒子、樹脂組成物および波長変換層の作製
複合粒子の調製において、キャリアガスを水素と窒素の混合ガス(水素濃度5%)に変更するとともに、噴霧乾燥時の炉の温度を800℃に変更した以外は、前記実施例1と同様にして複合粒子、樹脂組成物および波長変換層を得た。
【0275】
2.半導体粒子、複合粒子、樹脂組成物および光起電装置の評価
実施例1と同様にして各種評価を行った。
以上の評価結果を表1に示す。
【0276】
(実施例4)
1.複合粒子、樹脂組成物および波長変換層の作製
複合粒子の調製において、噴霧乾燥時のキャリアガスを窒素として複合粒子を作製し、得られた複合粒子を、バッチ式電気炉((株)モトヤマ製、雰囲気式電気炉、SKM2030D)に入れ、600℃で2時間の加熱処理を施した以外は、前記実施例1と同様にして複合粒子、樹脂組成物および波長変換層を得た。なお、バッチ式電気炉の炉内雰囲気は、水素100%とした。
【0277】
2.半導体粒子、複合粒子、樹脂組成物および光起電装置の評価
実施例1と同様にして各種評価を行った。
以上の評価結果を表1に示す。
【0278】
(実施例5)
1.複合粒子、樹脂組成物および波長変換層の作製
複合粒子の調製において、キャリアガスを水素と窒素の混合ガス(水素濃度5%)に変更するとともに、噴霧乾燥時の炉の温度を800℃にして複合粒子を作製し、得られた複合粒子を、バッチ式電気炉((株)モトヤマ製、雰囲気式電気炉、SKM2030D)に入れ、600℃で2時間の加熱処理を施した以外は、前記実施例1と同様にして複合粒子、樹脂組成物および波長変換層を得た。なお、バッチ式電気炉の炉内雰囲気は、水素100%とした。
【0279】
2.半導体粒子、複合粒子、樹脂組成物および光起電装置の評価
実施例1と同様にして各種評価を行った。
以上の評価結果を表1に示す。
【0280】
(実施例6)
1.複合粒子、樹脂組成物および波長変換層の作製
複合粒子の調製を以下のようにした以外は、前記実施例1と同様にして複合粒子、樹脂組成物および波長変換層を得た。
【0281】
まず、半導体粒子および無機化合物の粒子を含む混合分散液に、さらに平均粒径5nmの炭素粒子を1.0g添加した。
【0282】
次いで、得られた混合分散液を、噴霧乾燥法により乾燥させ、酸化亜鉛を主とする半導体粒子とシリカ粒子(無機化合物の粒子)との複合粒子を得た。噴霧乾燥時の炉の温度は800℃とし、キャリアガスには窒素を使用した。なお、噴霧乾燥装置の炉心管の内壁面は、ステンレス鋼製である。
【0283】
2.半導体粒子、複合粒子、樹脂組成物および光起電装置の評価
実施例1と同様にして各種評価を行った。
以上の評価結果を表1に示す。
【0284】
(実施例7)
1.複合粒子、樹脂組成物および波長変換層の作製
複合粒子の調製において、噴霧乾燥時の炉の温度を800℃とし、かつ、噴霧乾燥装置の炉心管を、内壁面に銅板を貼り付けたステンレス鋼製のものに変更した以外は、前記実施例1と同様にして複合粒子、樹脂組成物および波長変換層を得た。
【0285】
2.半導体粒子、複合粒子、樹脂組成物および光起電装置の評価
実施例1と同様にして各種評価を行った。
以上の評価結果を表1に示す。
【0286】
(実施例8)
1.複合粒子、樹脂組成物および波長変換層の作製
実施例1と同様にして複合粒子、樹脂組成物および波長変換層を得た。
【0287】
2.半導体粒子、複合粒子、樹脂組成物および光起電装置の評価
以下のようにした以外は、実施例1と同様にして光起電装置を作製し、得られた光起電装置について発電効率の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0288】
得られた樹脂組成物を、ETFEフィルムの表面に、市販のインクジェット装置(静電方式)を用いてマイクロレンズ形状(ドット形状)になるよう塗布した。そして、両面から約500mJ/cm2のUV光を照射して樹脂組成物を硬化させ、さらに真空オーブン中で、約180℃で1時間加熱処理を行った。これにより、樹脂組成物のマイクロレンズ形状の硬化物を形成した。得られた硬化物の形状について、レーザー顕微鏡((株)キーエンス製、VK−9700)により、平面視直径、凹凸構造の高低差、x軸方向の周期、y軸方向の周期を測定したところ、それぞれ、約30μm、約20μm、約35μm、約30μmであった。
【0289】
その後、実施例1と同様にして各種評価を行った。
以上の評価結果を表1に示す。
【0290】
(比較例1)
1.複合粒子、樹脂組成物および波長変換層の作製
半導体粒子の調製において、ヘキサンによる洗浄を省略し、複合粒子の調製において、キャリアガスを窒素に変更した以外は、前記実施例1と同様にして複合粒子、樹脂組成物および波長変換層を得た。
【0291】
2.半導体粒子、複合粒子、樹脂組成物および光起電装置の評価
実施例1と同様にして各種評価を行った。
以上の評価結果を表1に示す。
【0292】
(比較例2)
1.複合粒子、樹脂組成物および波長変換層の作製
半導体粒子の調製において、ヘキサンによる洗浄を省略し、複合粒子の調製において、キャリアガスを窒素に変更するとともに、オルガノシリカゾルの添加を省略した以外は、前記実施例1と同様にして複合粒子、樹脂組成物および波長変換層を得た。
【0293】
2.半導体粒子、複合粒子、樹脂組成物および光起電装置の評価
実施例1と同様にして各種評価を行った。
以上の評価結果を表1に示す。
【0294】
【表1】
【0295】
表1から明らかなように、各実施例で得られた光起電装置では、波長変換層を設けたことにより光電変換効率の向上が認められた。
【0296】
また、各実施例で得られた光電変換層では、比較例に比べ、耐光性や耐候性に優れることが認められた。
【符号の説明】
【0297】
1 光起電装置
2 光起電層
3 波長変換層
31 第1波長変換層
32 第2波長変換層
4 複合粒子
5 硬化性樹脂
6 半導体粒子
7 反射層
8 無機化合物の粒子
100 噴霧乾燥装置
110 噴霧器
120 電気炉
121 炉心管
122 ヒーター
130 バグフィルター
140 配管
150 配管
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化亜鉛の半導体粒子と、無機化合物の粒子とを含む複合粒子の製造方法であって、
前記複合粒子を製造する工程中に少なくとも1回、前記複合粒子の中間体を還元処理する工程を有することを特徴とする複合粒子の製造方法。
【請求項2】
前記還元処理する工程は、還元能を有する気体、および還元能を有する気体と不活性気体との混合気体のいずれかで構成される還元雰囲気下で、前記複合粒子の中間体を加熱処理するものである請求項1に記載の複合粒子の製造方法。
【請求項3】
前記還元能を有する気体は、水素ガスである請求項2に記載の複合粒子の製造方法。
【請求項4】
前記混合気体中の前記還元能を有する気体の含有率は、1〜10体積%または85〜100体積%である請求項2または3に記載の複合粒子の製造方法。
【請求項5】
前記複合粒子の中間体は、還元能を有する粒子を含むものであり、
前記還元処理する工程は、前記複合粒子の中間体を加熱処理するものである請求項1に記載の複合粒子の製造方法。
【請求項6】
前記還元能を有する粒子は、炭素粒子である請求項5に記載の複合粒子の製造方法。
【請求項7】
前記還元処理する工程は、同一の空間内に、前記複合粒子の中間体と、還元能を有する金属の単体または合金とを併存させ、これらを加熱処理するものである請求項1に記載の複合粒子の製造方法。
【請求項8】
前記還元処理する工程は、少なくとも内面が、前記還元能を有する金属の単体または合金で構成された配管内に、前記複合粒子の中間体を設けた状態で、前記配管を加熱処理するものである請求項7に記載の複合粒子の製造方法。
【請求項9】
還元能を有する金属は、銅である請求項7または8に記載の複合粒子の製造方法。
【請求項10】
前記還元処理する工程は、200〜1,000℃で実施するものである請求項1ないし9のいずれかに記載の複合粒子の製造方法。
【請求項11】
前記半導体粒子と前記無機化合物の粒子とを複合化する工程を行いつつ、前記還元処理する工程を行う請求項1ないし10のいずれかに記載の複合粒子の製造方法。
【請求項12】
前記半導体粒子と前記無機化合物の粒子とを複合化する工程の後に、前記還元処理する工程を行う請求項1ないし10のいずれかに記載の複合粒子の製造方法。
【請求項13】
前記複合化する工程は、噴霧乾燥装置により行う請求項11または12に記載の複合粒子の製造方法。
【請求項14】
前記半導体粒子の一次粒子の平均粒径は、1〜10nmである請求項1ないし13のいずれかに記載の複合粒子の製造方法。
【請求項15】
前記無機化合物の粒子は、酸化物の粒子である請求項1ないし14のいずれかに記載の複合粒子の製造方法。
【請求項16】
前記無機化合物の粒子は、シリカ(SiO2)の粒子およびジルコニア(ZrO2)の粒子の少なくとも一方である請求項15に記載の複合粒子の製造方法。
【請求項17】
前記半導体粒子の含有量は、前記複合粒子全体の10〜90体積%である請求項1ないし16のいずれかに記載の複合粒子の製造方法。
【請求項18】
請求項1ないし17のいずれかに記載の複合粒子の製造方法により、得られることを特徴とする複合粒子。
【請求項19】
請求項18に記載の複合粒子と、硬化性樹脂とを含むことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項20】
前記複合粒子の含有量は、前記樹脂組成物全体の30〜70体積%である請求項19に記載の樹脂組成物。
【請求項21】
請求項19または20に記載の樹脂組成物で構成された層を硬化させてなることを特徴とする波長変換層。
【請求項22】
請求項21に記載の波長変換層を有することを特徴とする光起電装置。
【請求項23】
前記波長変換層が、その面内に凹凸構造を有する請求項22に記載の光起電装置。
【請求項24】
前記凹凸構造の高低差が300nm〜100μmである請求項23に記載の光起電装置。
【請求項25】
前記凹凸構造の面内周期が300nm〜50μmである請求項23または24に記載の光起電装置。
【請求項26】
前記凹凸構造は、前記凹凸構造より小さな微細凹凸形状を有する請求項23ないし25のいずれかに記載の光起電装置。
【請求項27】
2層以上の前記波長変換層を積層してなる積層体を有するものであり、
前記2層の波長変換層の間で、前記凹凸構造の形状が異なっている請求項23ないし26のいずれかに記載の光起電装置。
【請求項28】
前記波長変換層は、前記樹脂組成物をインクジェット法により供給し、供給された前記樹脂組成物を硬化させてなるものである請求項22ないし27のいずれかに記載の光起電装置。
【請求項1】
酸化亜鉛の半導体粒子と、無機化合物の粒子とを含む複合粒子の製造方法であって、
前記複合粒子を製造する工程中に少なくとも1回、前記複合粒子の中間体を還元処理する工程を有することを特徴とする複合粒子の製造方法。
【請求項2】
前記還元処理する工程は、還元能を有する気体、および還元能を有する気体と不活性気体との混合気体のいずれかで構成される還元雰囲気下で、前記複合粒子の中間体を加熱処理するものである請求項1に記載の複合粒子の製造方法。
【請求項3】
前記還元能を有する気体は、水素ガスである請求項2に記載の複合粒子の製造方法。
【請求項4】
前記混合気体中の前記還元能を有する気体の含有率は、1〜10体積%または85〜100体積%である請求項2または3に記載の複合粒子の製造方法。
【請求項5】
前記複合粒子の中間体は、還元能を有する粒子を含むものであり、
前記還元処理する工程は、前記複合粒子の中間体を加熱処理するものである請求項1に記載の複合粒子の製造方法。
【請求項6】
前記還元能を有する粒子は、炭素粒子である請求項5に記載の複合粒子の製造方法。
【請求項7】
前記還元処理する工程は、同一の空間内に、前記複合粒子の中間体と、還元能を有する金属の単体または合金とを併存させ、これらを加熱処理するものである請求項1に記載の複合粒子の製造方法。
【請求項8】
前記還元処理する工程は、少なくとも内面が、前記還元能を有する金属の単体または合金で構成された配管内に、前記複合粒子の中間体を設けた状態で、前記配管を加熱処理するものである請求項7に記載の複合粒子の製造方法。
【請求項9】
還元能を有する金属は、銅である請求項7または8に記載の複合粒子の製造方法。
【請求項10】
前記還元処理する工程は、200〜1,000℃で実施するものである請求項1ないし9のいずれかに記載の複合粒子の製造方法。
【請求項11】
前記半導体粒子と前記無機化合物の粒子とを複合化する工程を行いつつ、前記還元処理する工程を行う請求項1ないし10のいずれかに記載の複合粒子の製造方法。
【請求項12】
前記半導体粒子と前記無機化合物の粒子とを複合化する工程の後に、前記還元処理する工程を行う請求項1ないし10のいずれかに記載の複合粒子の製造方法。
【請求項13】
前記複合化する工程は、噴霧乾燥装置により行う請求項11または12に記載の複合粒子の製造方法。
【請求項14】
前記半導体粒子の一次粒子の平均粒径は、1〜10nmである請求項1ないし13のいずれかに記載の複合粒子の製造方法。
【請求項15】
前記無機化合物の粒子は、酸化物の粒子である請求項1ないし14のいずれかに記載の複合粒子の製造方法。
【請求項16】
前記無機化合物の粒子は、シリカ(SiO2)の粒子およびジルコニア(ZrO2)の粒子の少なくとも一方である請求項15に記載の複合粒子の製造方法。
【請求項17】
前記半導体粒子の含有量は、前記複合粒子全体の10〜90体積%である請求項1ないし16のいずれかに記載の複合粒子の製造方法。
【請求項18】
請求項1ないし17のいずれかに記載の複合粒子の製造方法により、得られることを特徴とする複合粒子。
【請求項19】
請求項18に記載の複合粒子と、硬化性樹脂とを含むことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項20】
前記複合粒子の含有量は、前記樹脂組成物全体の30〜70体積%である請求項19に記載の樹脂組成物。
【請求項21】
請求項19または20に記載の樹脂組成物で構成された層を硬化させてなることを特徴とする波長変換層。
【請求項22】
請求項21に記載の波長変換層を有することを特徴とする光起電装置。
【請求項23】
前記波長変換層が、その面内に凹凸構造を有する請求項22に記載の光起電装置。
【請求項24】
前記凹凸構造の高低差が300nm〜100μmである請求項23に記載の光起電装置。
【請求項25】
前記凹凸構造の面内周期が300nm〜50μmである請求項23または24に記載の光起電装置。
【請求項26】
前記凹凸構造は、前記凹凸構造より小さな微細凹凸形状を有する請求項23ないし25のいずれかに記載の光起電装置。
【請求項27】
2層以上の前記波長変換層を積層してなる積層体を有するものであり、
前記2層の波長変換層の間で、前記凹凸構造の形状が異なっている請求項23ないし26のいずれかに記載の光起電装置。
【請求項28】
前記波長変換層は、前記樹脂組成物をインクジェット法により供給し、供給された前記樹脂組成物を硬化させてなるものである請求項22ないし27のいずれかに記載の光起電装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−116904(P2011−116904A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277053(P2009−277053)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】
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