説明

複合紐

【課題】廃棄処分の際に手間がかからず、手触り及び見栄えのよい複合紐を提供する。
【解決手段】被覆層20により芯材10の表面を被覆した複合紐1において、被覆層20及び芯材10は、廃棄物として処分する際に同一の処理区分となる素材により構成し、芯材10は、複数の原反(糸)12を接着させずに撚り合わせて構成する。例えば、被覆層20及び芯材10を構成する素材は、いずれもポリプロピレンである。なお、原反(糸)12は、1度撚った単糸撚りとすることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆層により芯材の表面を被覆した複合紐に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、丈夫さと見栄えの良さ、及び手触りの良さを兼ね備えた紐として、丈夫な芯材の表面を被覆層により被覆した複合紐が一般に知られている。このような複合紐について、例えば以下の特許文献が存在する。
【特許文献1】特開2003−082590号公報
【0003】
図6に示す芯材入りの複合紐は、発泡ポリエチレン製で正円筒形状の芯材10と、芯材10の外周面を覆って、複数のストランドにより組み上げられたストランド層20とからなる。芯材10の被覆層としてのストランド層20は、ストランドとして、いずれも扁平形状である再帰反射性ストリップ22と糸束24とから構成されており、再帰反射性ストリップ22と糸束24とを芯材10の外周面に密着するようにネット状に組編してなる。
【0004】
また、このような芯材として、ナイロンの嵩高連続長繊維であるBCFナイロンも、広く使用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1において提案されている複合紐によると、芯材が一本の棒状であるため、紐を曲げるとそのまま被覆層に寄りができてしまい、紐の表面が波打った状態になり、見栄えも手触りも悪くなる。また、芯材の表面が平坦であるため、芯材と外側の被覆層との融合性が悪く、芯材に対して被覆層が滑ってしまう。
【0006】
このほか、汚れ防止や外見上のつや・光沢を得るために外側の被覆層として合成樹脂繊維を使用するとともに、撚り合わせた紙を芯材として使用するものも知られており、この場合は、紐を曲げたことによる影響を、芯材である紙の撚りが締ったりほぐれたりすることによって吸収するため、外側のストランド層には寄り等の影響が現れず、見栄えも手触りも良好に保つことができるが、外側のストランド層と芯材との材質が異なるため、廃棄処分する際にはこれらを分離しなければならず、廃棄に手間がかかっていた。
【0007】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、廃棄処分の際に手間がかからず、手触り及び見栄えのよい複合紐を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、被覆層により芯材の表面を被覆した複合紐において、被覆層及び芯材は、廃棄物として処分する際に同一の処理区分となる素材により構成し、芯材は、複数の原反(糸)を接着させずに撚り合わせて構成することを要旨とするものである。
【0009】
請求項1記載の本発明によれば、外側の被覆層及び芯材は、いずれも廃棄物として処分する際に同一の処理区分となる素材により構成するようにしたから、廃棄処分の際に外側の被覆層と芯材とを分離する手間がかからない。また、複数の原反(糸)を撚り合わせることにより、芯材表面に適度な凹凸が形成され、この凹凸に被覆層がフィットして芯材と被覆層との間に一体感が生まれるから、芯材に対して被覆層が滑りにくい。また、芯材は、複数の原反(糸)を接着させずに撚って構成するようにしたから、紐を曲げた際の影響は、芯材の撚りが固定されずに自由に締ったりほぐれたりすることによって芯材が吸収するため、外側の被覆層に撚り等の影響が現れず、見栄えも手触りも良好に保つことができる。
【0010】
請求項2記載の発明は、被覆層により芯材の表面を被覆した複合紐において、被覆層及び芯材は、廃棄物として処分する際に同一の処理区分となる素材により構成し、芯材は、複数の原反(糸)を互いに接着して撚り合わせて構成することを要旨とするものである。
【0011】
請求項2記載の本発明によれば、外側の被覆層及び芯材は、いずれも廃棄物として処分する際に同一の処理区分となる素材により構成するようにしたから、廃棄処分の際に外側の被覆層と芯材とを分離する手間がかからない。また、複数の原反(糸)を撚り合わせることにより、芯材表面に適度な凹凸が形成され、この凹凸に被覆層がフィットして芯材と被覆層との間に一体感が生まれるから、芯材に対して被覆層が滑りにくい。また、芯材は、複数の原反(糸)を互いに接着して撚り合わせて構成するようにしたから、芯材が一体となって、複合紐の製作の際の取り扱い性が向上する。
【0012】
請求項3記載の発明は、被覆層及び芯材を構成する素材は、いずれもポリプロピレンであることを要旨とするものである。
【0013】
請求項3記載の本発明によれば、外側の被覆層としてポリプロピレン(以下、PP)を使用することにより、外からの汚れが付着しにくくなるとともに、外見上のつや・光沢を良好に得ることができる。また、外側の被覆層も芯材もいずれもPPを使用するからリサイクル性が良く、更に、紐を軽量にすることができるとともに製造時の材料費を低コストに抑えることができる。
【0014】
請求項4記載の発明は、原反(糸)は、1度撚った単糸撚りとすることを要旨とするものである。
【0015】
請求項4記載の本発明によれば、原反(糸)は、1度撚った単糸撚りとするようにしたから、個々の原反(糸)がまとまった束状となり、原反(糸)を撚り合わせて芯材を作った際に、芯材の表面に、被覆層とフィットし易い適度な凹凸が形成される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の複合紐は、廃棄処分の際に手間がかからず、手触り及び見栄えがよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面について本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明の複合紐の1実施形態を示す側面図である図1に示すように、複合紐1は芯材10と、これを覆う被覆層としてのストランド層20とからなる。
【0018】
ストランド層20は一層であり、扁平形状である糸束24を、芯材10の外周面に密着するように、ネット状に組編してなる。糸束24はPP繊維の糸を束ねて形成する。
【0019】
芯材10はPP製のシート12を1度撚ったもの(単糸撚り)を、接着せずに複数本撚り合わせて構成する。つまり、複数本の原反により構成する。
【0020】
なお、心材10を構成するPP製のシート12の単糸撚りは、例えば図2に示すように、1枚のPP製シート12の端から撚りをかけていくことにより実現する。
【0021】
また、図示はしないが、芯材10の構成単位として、シート状のPPではなく、糸状のPPを使用して原糸としても良い。この場合においても、原糸を1度撚って、それらを接着せずに撚って芯材10を構成するようにする。
【0022】
また、ストランド層20及び芯材10を構成するPPとして、再製PPを使用すれば、リサイクルの観点からも好ましい。
【0023】
次に、複合紐1を曲げたときの芯材10の状態を示す図3を参照して、本実施例にかかる複合紐の動作について説明する。
【0024】
芯材10を複数本の原反により構成した場合には図3に示すように、原反同士が解けるようにして複合紐の曲げによる影響を分散・吸収する。このとき、原反同士が互いに接着されておらず、更に、各原反は1度だけ下撚りされているため、容易に解けることが出来る。
【0025】
なお、原反同士が解けることにより芯材10表面に凸凹が大きく生じているように見えるが、PP製シート12を束ねただけの原反は柔らかく、更にストランド層20により覆われるため、その凹凸は複合紐1の表面にはほとんど現れず、複合紐1の外見を損なうことはない。
【0026】
更に、このようにして、ストランド層20及び芯材10をいずれもPPにより構成すれば、廃棄物として処分する際にいずれも同一の処理区分となるから、廃棄の際に分離する手間が省ける。
【0027】
そして芯材10の表面の凹凸を被覆層であるストランド層20が覆って外見を良好に保ちつつも、ストランド層20の内側が芯材10の表面の凹凸にフィットして、芯材10に対してストランド層20が滑り難くなり、手提げ紐として使用した場合に被覆層がずれずに持ち易いものとなる。
【0028】
次に、他の実施形態として、図4に示すように、先の実施形態と同様に原反としてのPP製シート12を1度撚った後、複数のPP製シート12の束を撚り合わせながら、その中心を加熱することにより互いに接着するようにして心材10を構成するようにしてもよい。そして、このようにして得られた芯材10を先の実施例と同様に、PP製のストランド層20で被覆する。
【0029】
このように、下撚りした複数のPP製シート12を撚り合わせることにより、先の実施例と同様に、芯材10の表面に適度な凹凸が形成され、この凹凸に被覆層としてのストランド層20がフィットして芯材10とストランド層20との間に一体感が生まれるから、芯材10に対してストランド層20が滑りにくい。また、芯材10は、原反(糸)であるPP製シート12を複数使用して互いに接着して撚り合わせて構成するようにしたから、芯材10が一体となって、複合紐1の製作の際の取り扱い性が向上する。
【0030】
なお、芯材10を単一のPP製シート12により構成した場合に複合紐1を曲げたときの芯材10の状態を図5に示すが、この場合も原反の撚りそのものが解れることにより、複合紐の曲げによる影響をある程度分散・吸収するが、複数のPP製シート12を用いて構成した場合に比べると、その自由度は小さい。また、複合紐1を曲げた場合でももとに戻した場合でも、表面にまとまった凹凸が現れないため、芯材10表面の凹凸とストランド層20内側との融合による滑り止め効果は得られない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の複合紐の1実施形態を示す一部分解した側面図である。
【図2】芯材を構成する個々のPP製シートを撚る状態を示す斜視図である。
【図3】芯材を複数本の原反により構成した場合の動作を示す側面図である。
【図4】芯材の他の作成方法を示す側面図である。
【図5】芯材を1本の原反により構成した場合の動作を示す側面図である。
【図6】従来の複合紐の一例を一部分解して示す側面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 複合紐 10 芯材
12 シート 20 ストランド層
22 再帰反射性ストリップ 24 糸束

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆層により芯材の表面を被覆した複合紐において、被覆層及び芯材は、廃棄物として処分する際に同一の処理区分となる素材により構成し、芯材は、複数の原反(糸)を接着させずに撚り合わせて構成することを特徴とする複合紐。
【請求項2】
被覆層により芯材の表面を被覆した複合紐において、被覆層及び芯材は、廃棄物として処分する際に同一の処理区分となる素材により構成し、芯材は、複数の原反(糸)を互いに接着して撚り合わせて構成することを特徴とする複合紐。
【請求項3】
被覆層及び芯材を構成する素材は、いずれもポリプロピレンである請求項1または請求項2記載の複合紐。
【請求項4】
原反(糸)は、1度撚った単糸撚りとする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の複合紐。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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