説明

複合酸化物微粒子及び光学材料

【課題】本発明は、高屈折率を維持しながら、耐光性を大幅に向上し、光学材料などに適用可能な複合酸化物、及びそれを用いた光学材料(光学レンズなど)を提供する。
【解決手段】BET換算粒径が100nm以下であるチタンとニオブ及び/又はタンタルとの複合酸化物微粒子に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合酸化物微粒子、それを用いた光学材料及び光学レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂などの樹脂は、可視光領域において優れた透明性を有し、耐衝撃性、可撓性などの性能も優れている。
【0003】
そのため、このような透明樹脂材料に高い屈折率を付与した透明光学用樹脂の開発が行われており、光学レンズ、光学プリズム、光導波路、光ファイバー、薄膜成形物、光学用接着剤、回折格子、導光板、液晶基板、光反射板、反射防止材などの高屈折光学材料への応用が期待されている。
【0004】
このような樹脂の高屈折率化を目的として酸化チタンなどの高屈折率金属酸化物を樹脂中に分散させ、樹脂の屈折率を調整する方法が検討されている。酸化チタンは特に屈折率が高く、透明性も高いため、他の無機酸化物微粒子に比べて少ない量で樹脂の高屈折率化が可能となる。
【0005】
しかしながら、樹脂に酸化チタン微粒子を分散した材料は、酸化チタンの光触媒作用により光吸収で発生した電子−ホールによる有機物分解が生じ、材料の耐光性などが低下するという欠点がある。
【0006】
酸化チタン粒子を分散した材料について、特許文献1には、酸化チタンゾル粒子が(a)ケイ素の水和酸化物、(b)ケイ素の水和酸化物とスズなどの水和酸化物、又は(c)ケイ素の水和酸化物と、スズなどの水和酸化物及びアンチモンの水和酸化物で被覆された高い透明性と耐光性を有する酸化チタンゾルが提案されている。しかし、表面被覆によって酸化チタン特有の高屈折率が維持されないという懸念があり、耐光性も充分ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2008/129693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記課題を解決し、高屈折率を維持しながら、耐光性を大幅に向上し、光学材料などに適用可能な複合酸化物、及びそれを用いた光学材料(光学レンズなど)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、BET換算粒径が100nm以下であるチタンとニオブ及び/又はタンタルとの複合酸化物微粒子に関する。
【0010】
前記複合酸化物微粒子は、前記チタンと前記ニオブ及び/又は前記タンタルとの含有比率が99.9/0.1〜0.1/99.9であることが好ましく、99.9/0.1〜70/30であることがより好ましく、99.9/0.1〜90/10であることが更に好ましい。
また、前記複合酸化物微粒子は、燃焼法で製造したものが好ましい。
【0011】
本発明は、有機チタン化合物溶液と有機ニオブ化合物溶液及び/又は有機タンタル化合物溶液とを酸化性物質の存在下に噴霧し、気相中で燃焼させる工程A、及び冷却工程Bを含む前記複合酸化物微粒子の製造方法に関する。
【0012】
前記製造方法において、窒素雰囲気下に設置された前記有機チタン化合物溶液と前記有機ニオブ化合物溶液及び/又は前記有機タンタル化合物溶液とを、前記工程Aの燃焼場に送液することが好ましい。
【0013】
本発明は、前記複合酸化物微粒子及び硬化性樹脂を含む光学材料に関する。ここで、前記硬化性樹脂がエポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エステル系樹脂、ウレタンアクリレート系樹脂、シリコーンアクリレート系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、エステルアクリレート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂及びフェノール系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
本発明はまた、前記光学材料をコーティングして形成された高屈折率層を有する光学レンズに関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、BET換算粒径100nm以下のチタンとニオブ及び/又はタンタルとの複合酸化物微粒子であるので、光学材料などにおいて高屈折率を維持しながら、耐光性を大幅に向上し、また、優れた透明性を得ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例3で作製したTi0.90Nb0.10ナノ粒子のX線回折図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、BET換算粒径が100nm以下であるチタンとニオブ及び/又はタンタルとの複合酸化物微粒子である。例えば、酸化チタン表面をケイ素化合物などで被覆した複合粒子の場合、被覆により、光触媒作用が抑制されて耐光性の改善がみられる一方、酸化チタン特有の高屈折率を維持することは難しい。これに対し、本発明ではTiO結晶中にNbが固溶したTiとNb及び/又はTaとの複合酸化物ナノ粒子(TiOの結晶構造の中にNb及び/又はTaが入り込んでいるが、元の結晶構造の形を保って固体状態で混じり合っている状態の複合酸化物ナノ粒子)とすることにより、耐光性を大幅に改善でき、また、固溶させた複合酸化物粒子であるので、酸化チタン特有の高屈折率も維持できる。更に、樹脂などに分散させた複合材料においてナノ粒子状態を維持させることにより、該材料に透明性、耐光性を維持しつつ高屈折率を付与できる。従って、例えば、本発明の複合酸化物微粒子を硬化性樹脂中に分散させた光学材料において、高い屈折率、耐光性、透明性を同時に得ることができる。
【0017】
本発明の複合酸化物微粒子は、BET換算粒径が100nm以下、好ましくは5〜90nm、より好ましくは5〜50nmである。100nm以下にすることで、高い透明性が得られ、また、高い屈折率や耐光性も得られる。なお、本発明では、複合酸化物微粒子のBET換算粒径は、日本ベル製比表面積測定装置BELSORP mini IIによって測定される。
【0018】
上記複合酸化物微粒子において、チタンとニオブ及び/又はタンタルとの含有比率(Ti量/NbとTaの総量(モル比))は、好ましくは99.9/0.1〜0.1/99.9、より好ましくは99.9/0.1〜70/30、更に好ましくは99.9/0.1〜90/10である。上記範囲内の比率に調整することで、酸化チタン特有の高い屈折率を維持しながら、耐光性を大幅に改善できる。
【0019】
本発明の複合酸化物微粒子の製造方法は、上記BET換算粒径を有する複合酸化物を調製できるのであれば特に制限はないが、例えば、気相法の1種の燃焼法により好適に製造できる。燃焼法を用いると、多元酸化物の製造が容易である点、粉体採取が可能であるため粒子表面の不純物が少なく、精密材料用途に適する点、ドープ品の作製が容易である点、生産性が高い点、原料となる有機金属溶液を乾燥した窒素雰囲気下にセットし、空気中にさらさない環境で粒子を製造すると、加水分解が抑えられるため、安価な原料を使用できる点、などの利点がある。
【0020】
また、ナノ粒子を光学材料用途に応用する場合、ナノ粒子−樹脂複合材料の透明性や他の光学特性を損なわないことが要求され、透明性についてはナノ粒子の粒径とポリマー中でのナノ粒子の分散性が影響し、粒径が大きい場合や分散性が悪い場合には透明性が低下してしまう。これに対し、燃焼法により得られた本発明の複合酸化物微粒子はナノ粒子であり、また複合材料中でもナノ粒子の状態を維持できるため、複合材料に適用しても高い透明性が得られる。
【0021】
燃焼法による製造方法としては、例えば、有機チタン化合物溶液と有機ニオブ化合物溶液及び/又は有機タンタル化合物溶液とを酸化性物質の存在下に噴霧し、気相中で燃焼させる工程A、及び冷却工程Bを含む方法が挙げられる。工程A及びBを順次経ることにより、TiとNb及び/又はTaとの複合酸化物のナノ粒子を好適に製造できる。
なお、上記製造方法において、窒素雰囲気下に設置された有機チタン化合物溶液と有機ニオブ化合物溶液及び/又は有機タンタル化合物溶液とを、工程Aの燃焼場(酸化反応場)に送液することが好ましい。これにより、加水分解が抑えられるため、安価な原料を使用できる。
【0022】
(工程A)
工程Aで使用される有機チタン化合物溶液、有機ニオブ化合物溶液、有機タンタル化合物溶液において、有機金属化合物(有機チタン化合物、有機ニオブ化合物、有機タンタル化合物)としては、少なくとも各金属(Ti,Nb,Ta)、炭素及び水素原子を含む化合物を使用でき、例えば、各金属アルコキシド(金属のメトキシド、エトキシド、n−プロポキシド、i−プロポキシド、n−ブトキシド、sec−ブトキシド、tert−ブトキシド、t−アミロキシドなど)が挙げられる。具体的には、チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトラブトキシドなどのチタンアルコキシド;ニオブペンタメトキシド、ニオブペンタエトキシド、ニオブペンタプロポキシド、ニオブペンタブトキシドなどのニオブアルコキシド;タンタルペンタメトキシド、タンタルペンタエトキシド、タンタルペンタプロポキシド、タンタルペンタブトキシドなどのタンタルアルコキシドが挙げられる。なお、各金属アルコキシドを使用する場合、金属アルコキシドが容易に加水分解する場合があるので、金属アルコキシドを有機溶媒の溶液として安定化させて使用することが好ましい。
【0023】
上記有機金属化合物溶液の溶媒(希釈溶剤)としては、ミネラルスピリット、ミネラルシンナー、ペトロリウムスピリット、ホワイトスピリット、ミネラルターペン、灯油(ケロシン)、n−ヘキサン、ヘキサン酸、2−エチルヘキサン酸、シクロヘキサン、イソヘプタン、エタノール、メタノール、1−プロパノール、酢酸、1−ペンタノール、吉草酸、トルエン、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、イソブチルアルコール、n−ブチルアルコール、ベンゼン、キシレン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキサイド、ジメチルホルムアミド、メチルシクロヘキサン、ジオキサン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルイソブチリルケトン、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、アセチルアセトン、ジイソブチリルメタン、ジピバロイルメタン、オクチル酸、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、溶液の濃度は特に限定されない。
【0024】
工程Aで用いられる酸化性物質としては、有機金属化合物を燃焼(酸化)する性質を持つものであれば特に限定されず、酸素、酸素と他の気体(例えば、窒素、アルゴンなど不活性ガスと酸素を任意の割合で混合した混合ガス)、空気、水、亜酸化窒素などが挙げられる。これらの酸化性物質は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
工程Aにおいて、噴霧方法(スプレー方法)としては、二流体ノズル、超音波ノズル、ピエゾ式ノズル、サーマルヘッド式ノズル、静電噴霧ノズルなど、従来公知のものが利用できる。噴霧の条件は特に制限はなく、目的に応じてその噴霧量、噴霧する霧粒子の大きさ、噴霧時間などを適宜選択でき、ノズル種(口径d・孔数・パターン)、入力圧力(リキッド・エアー)なども適宜選択できる。
【0026】
工程Aにおける気相中の燃焼反応(酸化反応)では、有機金属化合物溶液を高温雰囲気の反応空間に噴出し気化させるとともに、該反応空間に噴出した酸化性物質により、該有機金属化合物が燃焼する(酸化される)。反応条件は、有機金属酸化物の酸化(燃焼)が進行する範囲であれば特に制限はない。また、有機金属化合物溶液と酸化性物質は燃焼前に混合してもよいし、有機金属化合物溶液を該化合物の分解温度以上に加熱した後に酸化性物質中に放出して、酸化性物質と混合しながら燃焼してもよい。
【0027】
有機金属化合物と酸化性物質の混合は、完全混合状態になるような条件で混合するのが望ましい。混合が不十分であると、得られる複合酸化物微粒子の組成が不均一になるおそれがある。また、混合が不十分で有機金属化合物が完全に燃焼(酸化)しない場合は、未反応物の残存や反応時間の長時間化による微粒子の融着などにより、品質や粒径が安定せず、粒子径も大きくなるおそれがある。
【0028】
酸化性物質の使用量は、有機金属化合物を完全燃焼(完全酸化)する酸素量の0.5〜40倍モルが好ましく、1〜30倍モルがより好ましく、1〜20倍モルが更に好ましい。0.5倍モル未満であると、微粒子が凝集するおそれがある。40倍モルを超えると、燃焼(酸化)反応が不安定になるおそれがある。また、酸化性物質に冷却用のガスの役割を担わせる場合や装置が大型の場合はこの限りではない。
【0029】
工程Aの燃焼温度(酸化反応温度)は、好ましくは400℃以上、特に好ましくは500〜10,000℃の範囲である。400℃未満であると、未反応原料が残存するおそれがある。また、燃焼温度が高すぎると、生成粒子径の巨大化、装置材質の劣化、不純物の混入などの問題が生じるおそれがある。反応時間は燃焼(酸化)が進行し、所望の微粒子が生成する範囲で適宜調整すればよい。
【0030】
高温雰囲気の反応空間を作り出す熱源(加熱手段)として、プラズマ発生装置を好適に使用でき、例えば、放電用のガス(アルゴンガス、及びこれとヘリウムガス、水素ガス、窒素ガスの混合ガスなど)が供給される装置を使用できる。供給するガスの組成の変更により、プラズマの温度をコントロールできる。また、他に燃焼バーナ、高周波加熱装置、赤外線加熱装置、電気ヒータ、熱媒加熱装置なども加熱手段として使用でき、燃焼反応を進行させることができる。
【0031】
(工程B)
続いて、工程Aにより生成した微粒子に対し、冷却工程が行われる。冷却工程は公知の間接冷却手段、直接冷却手段などの冷却手段により実施できる。上記間接冷却手段としては、冷媒(水など)用のジャケットを配置して反応容器外部から冷却する冷媒冷却装置、上記直接冷却手段としては、冷却用のガス(酸素ガスなど)を反応容器の内部に吹き込む冷却用ガス吹付け装置、液体(水など)を反応容器の内部に噴霧する冷却用液体噴霧装置が挙げられる。
【0032】
上記複合酸化物微粒子の製造方法として、具体的には瞬間気相生成法(Flash Creation Method(FCM))を用いた方法が挙げられる。FCMは、プラズマなどの高エネルギー化で気化した原料(有機金属化合物溶液)と冷却ガスを含む反応ガスとを高温雰囲気の反応空間に流入させ、熱処理により、燃焼反応(酸化反応)を進行させ、粒子を生成させるとともに、生成粒子を瞬間的に冷却して微粒子(ナノ粒子)を製造する方法である。
【0033】
瞬間気相生成法による複合酸化物微粒子の製造は、例えば、ホソカワミクロン製のFCM装置(FCM−MINIなど)を用いて実施できる。具体的には、FCM装置を用いて、有機金属化合物の溶液と酸化性物質との混合物を、管状電気炉等の燃焼装置に定量的に供給(スプレー法など)し、該混合物が燃焼装置内で加熱され、気体状となり、該気体状の混合物が燃焼すること、などにより複合酸化物微粒子が生成する。生成した複合酸化物微粒子は、捕集器などで捕集される。FCM装置としては、特開2005−218937号公報、特開2008−208195号公報に記載されているものなどが挙げられる。
【0034】
本発明の複合酸化物微粒子は各種用途への応用が期待できるが、なかでも、光学材料に好適に使用できる。光学材料としては、例えば、上記複合酸化物微粒子及び硬化性樹脂(硬化性官能基を有する樹脂)を含むものが挙げられる。複合酸化物微粒子の配合量は、硬化性樹脂100質量部に対して、複合酸化物微粒子10〜900質量部が好ましく、40〜250質量部がより好ましい。900質量部を超えると、硬化不良膜となり、10質量部未満であれば、屈折率低下となる傾向がある。
【0035】
光学材料に適用した場合の材料の屈折率は、とくに限定されないが1.60以上であることが好ましく、1.65以上であることがより好ましい。
【0036】
硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂などがあり、具体的には、エポキシ系、シリコーン系、アクリル系、ウレタン系、エステル系、ウレタンアクリレート系、シリコーンアクリレート系、エポキシアクリレート系、エステルアクリレート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリカーボネート系、フェノール系などの樹脂が挙げられる。
【0037】
エポキシ系樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂などを用いることができる。
【0038】
シリコーン系樹脂としては、縮合反応系、付加反応系、ラジカル反応系、紫外線又は電子線硬化系のものなどが挙げられる。上記縮合反応系のシリコーン樹脂としては、末端OH基を持つポリジメチルシロキサンと末端に−H基をもつポリジメチルシロキサンを有機錫触媒を用いて縮合反応させ、3次元架橋構造をつくるものが挙げられる。付加反応系のシリコーン樹脂としては、末端にビニル基を導入したポリジメチルシロキサンとヒドロキシポリジメチルシロキサンを白金触媒を用い付加反応させ、3次元架橋構造をつくるものが挙げられる。紫外線硬化系のシリコーン樹脂としては、例えば、シリコーンゴム架橋と同じラジカル反応を利用するもの、アクリル基を導入して光硬化させるもの等が挙げられる。
【0039】
アクリル系樹脂としては、従来公知のものを使用でき、例えば、ポリオールアクリレート系樹脂などを好適に使用できる。ポリオールアクリレート系樹脂としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等の樹脂を挙げることができる。これらの樹脂には従来から公知の光反応開始剤及び/又は光増感剤が添加され得る。
【0040】
ウレタン系樹脂としては、ジイソシアネート化合物と、ポリエーテルジオール類、ポリエステルジオール類、ポリカーボネートジオール類などのジオール化合物とを反応して得られる各種ウレタン樹脂(エステル系ウレタン樹脂、エーテル系ウレタン樹脂、カーボネート系ウレタン樹脂など)などが挙げられる。
【0041】
エステル系樹脂としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のホモポリエステルの他、ポリエチレンテレフタレート・イソフタレート、ポリエチレンテレフタレート・セバケート、ポリエチレンテレフタレート・アジペート、ポリテトラメチレンテレフタレート・イソフタレート、その他のコポリエステル等を挙げることができる。
【0042】
ウレタンアクリレート系樹脂としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、エポキシポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ウレタンポリオール等のポリオール樹脂と、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のイソシアネートモノマー又はプレポリマーとを反応させて得られた生成物に、更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系モノマーを反応させて得られたものを挙げることができる。
【0043】
シリコーンアクリレート系樹脂としては、例えば、アクリレート化合物とアルコキシ基含有シラン化合物との反応生成物が挙げられる。ここで、アクリレート化合物としては、アクリロキシ基及びメタクリロキシ基から選ばれる官能基を2個以上含むモノマー又はポリマーがあり、具体的には、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、ポリ(ブタンジオール)ジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレートなどが挙げられる。また、アルコキシ基含有シラン化合物としては、モノメトキシトリメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、トリメトキシメチルシラン、モノエトキシトリエチルシラン、ジエトキシジエチルシラン、トリエトキシエチルシラン、モノプロポキシトリプロポキシシラン、ジプロポキシジプロピルシランなどが挙げられる。
【0044】
エポキシアクリレート系樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させたものが挙げられる。具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させたビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させたクレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、グリセロールポリグリシジルエーテルに(メタ)アクリル酸を反応させたグリセロール型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂等が挙げられる。
【0045】
エステルアクリレート系樹脂としては、例えば、ポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させて得たものなどが挙げられる。
【0046】
ポリアミド系樹脂としては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミドMXD6、ポリアミド6T系共重合体、ポリアミド9T、ポリアミド612やこれらの共重合体などが挙げられる。
【0047】
ポリイミド系樹脂としては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリイミドエステル、ポリエーテルイミド、ポリシロキサンイミド等の構造中にイミド基を有するポリマーなどが挙げられる。
【0048】
ポリカーボネート系樹脂としては、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂などのビスフェノール類をベースとする芳香族ポリカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートなどの脂肪族ポリカーボネートなどが挙げられる。
【0049】
フェノール系樹脂としては、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、レゾール型キシレン樹脂などを挙げることができる。具体的には、アルキル化(メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル)フェノール、p−tert−アミルフェノール、4,4′−sec−ブチリデンフェノール、p−tert−ブチルフェノール、o−,m−又はp−クレゾール、p−シクロヘキシルフェノール、4,4′−イソプロピリデンフェノール、p−ノニルフェノール、p−オクチルフェノール、3−ペンタデシルフェノール、フェノール、フェニル−o−クレゾール、p−フェニルフェノール、キシレノールなどのホルムアルデヒド縮合物が挙げられる。
【0050】
上記複合酸化物微粒子を用いた光学材料用途としては、光学レンズ(メガネレンズ、フレネルレンズ、CD、DVDなどの情報記録機器のピックアップレンズ、デジタルカメラなどの撮影機器用レンズなど)、光学プリズム、光導波路、光ファイバー、薄膜成形物、光学用接着剤、回折格子、導光板、液晶基板、光反射板、反射防止材などの高屈折率光学部材などが挙げられる。具体的には、上記光学材料をコーティングして形成した高屈折率層を有する光学レンズとして好適に使用できる。また、各種ディスプレイ材料、イメージセンサ、発光ダイオードなどの光半導体素子などの用途にも使用できる。
【実施例】
【0051】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。なお、以下の実施例では、ホソカワミクロン製のFCM−MINIを用いて複合酸化物微粒子を作製した。また、BET換算粒径は、日本ベル製比表面積測定装置BELSORP mini IIを用いて測定したBET比表面積から算出した値である。
【0052】
(実施例1)
チタンテトラ−2−エチルヘキソキシド9.9gとニオブエトキシド5.6gの混合液を24.5gのミネラルスピリットで希釈し金属濃度を6.2%とした原料溶液を窒素雰囲気下に設置し、2.4g/分の速度で2,000℃のバーナ炎中に送液し、9.0L/分の酸素で噴霧した。700秒間燃焼反応(酸化反応)させ、瞬間的に冷却し、収率98質量%のチタンニオブ複合酸化物(Ti0.50Nb0.50)を得た。BET法により測定したBET換算粒径(一次粒径)は12nmであった。
【0053】
(実施例2〜5)
Ti及びNbの含有比率が70/30、90/10、94/6、98/2となるようにチタン溶液とニオブ溶液を調整した以外は、実施例1と同様にしてチタンニオブ複合酸化物(Ti0.70Nb0.30、Ti0.90Nb0.10、Ti0.94Nb0.06、Ti0.98Nb0.02)を得た。BET法により測定したBET換算粒径(一次粒径)は、それぞれ12nm、16nm、16nm、20nmであった。
【0054】
(実施例6)
チタンテトラ−2−エチルヘキソキシド48.1gとタンタルブトキシド4.1gの混合液を27.8gのミネラルスピリットで希釈し金属濃度を6.9%とした原料溶液を窒素雰囲気下に設置し、2.8g/分の速度で2,000℃のバーナ炎中に送液し、9.0L/分の酸素で噴霧した。1,320秒間燃焼反応(酸化反応)させ、瞬間的に冷却し、収率78質量%のチタンタンタル複合酸化物(Ti0.92Ta0.08)を得た。BET法により測定したBET換算粒径(一次粒径)は19nmであった。
【0055】
各実施例で調製した複合酸化物微粒子のX線回折を測定し、Nb又はTaがTiO結晶中に固溶していることを確認できた。なお、実施例3で作製したTi0.90Nb0.10ナノ粒子のX線回折図を図1に示した。
【0056】
〔評価〕
実施例で得られた各複合酸化物微粒子について以下の評価を行った。なお、比較例1として燃焼法で得られた市販の酸化チタン微粒子(BET換算粒径25nm)を用いた評価も行い、結果を表1〜3に示した。
【0057】
(耐光性試験(粒子))
各微粒子5mgを20ppmメチレンブルー水溶液50.0g中に加え、5分間撹拌した後、液をシャーレに移し、カバーをした。液を撹拌しながら、ウシオ電機(株)製「UVL−1500M2−N1」により40mW/cmの強度のUV光を照射し、10分間照射後にサンプリングし、分光光度計にて波長667nmの吸光度を測定した。照射前を100%としたときの吸光度の残存率(メチレンブルーの色素残存率)を計算し、減少幅が小さいほど、光活性が低い(耐光性が良い)と判断した。
○:色素残存率が50%以上
△:色素残存率が30%以上、50%未満
×:色素残存率が30%未満
【0058】
(屈折率測定)
各微粒子、アクリル系樹脂(TMPTA(トリメチロールプロパントリアクリレート):東亜合成(株)製「M−309」)またはウレタンアクリレート系樹脂(新中村化学工業(株)製「NKオリゴU−15HA」)を、表2および3に記載の配合比で混合し、更に開始剤としてチバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製「イルガキュア907」をアクリル樹脂またはウレタンアクリレート系樹脂量に対して5質量%添加した配合液を、Siウエハ基盤に1,000rpmの速度でスピンコーティングし、90℃2分間のプリベーク後、約1,000mJのUV照射により膜厚約0.1μmの硬化膜を作製した。その硬化膜を用いて、(株)溝尻光学工業所製の自動エリプソメーター「DHA−XA2/S6」により、波長633nmの光を照射して、屈折率を測定した。
【0059】
(耐光性試験(薄膜))
上記屈折率測定と同様の方法で作製した硬化膜(薄膜)を20ppmのメチレンブルー水溶液25.0g中に沈め、液を撹拌しながら、ウシオ電機(株)製「UVL−1500M2−N1」により40mW/cmの強度のUV光を照射し、30分間照射後にサンプリングし、分光光度計にて波長667nmの吸光度を測定した。照射前を100%としたときの吸光度の残存率(メチレンブルーの色素残存率)を計算し、減少幅が小さいほど、光活性が低い(耐光性が良い)と判断した。
○:色素残存率が80%以上
△:色素残存率が70%以上、80%未満
×:色素残存率が70%未満
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
【表3】

【0063】
表1の微粒子の耐光性評価から、TiO2結晶にNb又はTaを固溶したナノ粒子は、酸化チタンナノ粒子に比べて耐光性を大幅に向上できることが明らかとなった。また、樹脂にナノ粒子を分散させた複合材料でも優れた耐光性が得られると同時に、酸化チタン特有の高い屈折率も充分に維持できた。更に表2の耐光性試験の結果は、NbやTaの複合酸化物とすることでTiOの結晶形を維持しながら(高屈折率を維持しながら)、光活性が抑制できることを示していた。これは、純粋なTiO結晶ではなく、NbやTaが結晶構造中に入り込んでいることによる効果が奏していると考えられ、TiO結晶にNb又はTaが固溶していることを示唆している。
【0064】
また、実施例で作製した複合材料は高い透明性も有しているので、光学材料への応用が充分に期待できるものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
BET換算粒径が100nm以下であるチタンとニオブ及び/又はタンタルとの複合酸化物微粒子。
【請求項2】
前記チタンと前記ニオブ及び/又は前記タンタルとの含有比率が99.9/0.1〜0.1/99.9である請求項1記載の複合酸化物微粒子。
【請求項3】
前記チタンと前記ニオブ及び/又は前記タンタルとの含有比率が99.9/0.1〜70/30である請求項1記載の複合酸化物微粒子。
【請求項4】
前記チタンと前記ニオブ及び/又は前記タンタルとの含有比率が99.9/0.1〜90/10である請求項1記載の複合酸化物微粒子。
【請求項5】
燃焼法で製造した請求項1〜4のいずれかに記載の複合酸化物微粒子。
【請求項6】
有機チタン化合物溶液と有機ニオブ化合物溶液及び/又は有機タンタル化合物溶液とを酸化性物質の存在下に噴霧し、気相中で燃焼させる工程A、及び冷却工程Bを含む請求項1〜4のいずれかに記載の複合酸化物微粒子の製造方法。
【請求項7】
窒素雰囲気下に設置された前記有機チタン化合物溶液と前記有機ニオブ化合物溶液及び/又は前記有機タンタル化合物溶液とを、前記工程Aの燃焼場に送液する請求項6記載の複合酸化物微粒子の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の複合酸化物微粒子及び硬化性樹脂を含む光学材料。
【請求項9】
前記硬化性樹脂がエポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エステル系樹脂、ウレタンアクリレート系樹脂、シリコーンアクリレート系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、エステルアクリレート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂及びフェノール系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である請求項8記載の光学材料。
【請求項10】
請求項8又は9記載の光学材料をコーティングして形成された高屈折率層を有する光学レンズ。

【図1】
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【公開番号】特開2012−62242(P2012−62242A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178501(P2011−178501)
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(000214250)ナガセケムテックス株式会社 (173)
【Fターム(参考)】