説明

複合高ニトリルフィラメント

【課題】優れた特性、加工性を有する複合高ニトリルフィラメントを提供する
こと。
【解決手段】鞘/芯配置で配列した2種またはそれ以上の重合体を含有する複
合高ニトリルフィラメントであって、ここで、該鞘重合体組成物は、該芯重合体
組成物とは異なり、およびここで、該重合体の1種は、有機重合体を包含し、お
よび第二の重合体は、溶媒無し、水無しで溶融加工可能なアクリロニトリルオレ
フィン性不飽和重合体を包含し、該不飽和重合体は、約50重量%〜約95重量
%の重合可能なアクリロニトリルモノマーおよび約5重量%〜約50重量%の少
なくとも1種の重合可能なオレフィン性不飽和モノマーを含有し、およびここで、
該有機重合体および該アクリロニトリルオレフィン性不飽和重合体は、互いに関
して、熱的に安定である複合フィラメント。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なフィラメントおよびこのようなフィラメントの配置に関し、
さらに特定すると、複合高ニトリルフィラメントに関する。本明細書中でのフィ
ラメントとは、鞘芯(sheath core)型配置で配列した2種またはそ
れ以上の重合体から構成したフィラメントを意味し、ここで、この鞘は、この芯
を形成する重合体とは異なる重合体から構成されている。特に、1個の重合体は
、溶媒無し、水無しで溶融加工可能なアクリロニトリルオレフィン性不飽和重合
体を包含し、そして他の重合体は、有機重合体を包含する。
【0002】
この独特の複合高ニトリルフィラメントは、改良した染色能、および研磨、溶
媒、気体および紫外光に対する改良した耐性を与える。この高ニトリルフィラメ
ントは、高ニトリル複合繊維を形成するために使用され、この繊維は、次いで、
編物、織物または不織布として、使用できる。
【背景技術】
【0003】
当該技術分野で公知の2成分アクリル繊維は、米国特許第3,547,763号、
米国特許第4,020,139号、および特願平6−189,463号に例示され
ている。米国特許第3,547,763号は、変性螺旋状クリンプを有する2成分
アクリル繊維に関する。各成分は、(1)ポリアクリロニトリルおよび(2)少な
くとも88%のアクリロニトリルおよび12%の共重合体可能モノマーの共重合体
からなる群から選択される。
【0004】
米国特許第4,020,139号は、複数の偏心鞘芯フィラメントを溶融紡糸す
る方法に関する。この方法は、製造(conversion)中のフィラメントの
薄い鞘領域間の接触を回避するように、フィラメントが糸に収束されることを選択す
る。
【0005】
特願平6−189,463号は、溶液溶媒法により製造された鞘芯構造を有する
帯電防止アクリル繊維を開示している。この鞘成分は、アクリロニトリル系共重合
体からなり、そしてこの芯成分は、アクリロニトリル系共重合体および多成分ポリ
エーテルエステルからなる。
【0006】
複合高ニトリルフィラメントを開発する際の困難な点は、異なる組成タイプの
重合体が、しばしば、互いに非相溶性であるという事実を原因としている。2種
の異なる重合体を使用すると、たとえ類似の化学的特性を有していても、複合フ
ィラメント中で、しばしば、内部応力が発生し、それにより、この複合フィラメ
ントの分離を誘発する。従来の複合アクリルフィラメントは、繊維形成性に劣る
ために、限界がある。加えて、溶融紡糸複合フィラメントは、その重合体の多く
が熱劣化に対する耐性が低いために、問題がある。
【0007】
この鞘成分または芯成分として使用する重合体の1種が溶媒無し、水無しで溶
融加工可能なアクリロニトリルオレフィン性不飽和重合体である高ニトリル複合
繊維を製造することは、有利である。さらに、本発明の高ニトリル複合フィラメ
ントは、改良された加工性、特に、改良された紡糸性を有する。これらの利点お
よび他の利点は、本発明の説明を進めると共に、明らかとなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の点を解決しようとするもので、その目的は、優れた特性、加
工性を有する複合高ニトリルフィラメントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、鞘/芯配置で配列した2種またはそれ以上の重合体を含有する複合
高ニトリルフィラメントであって、ここで、該鞘重合体組成物は、該芯重合体組
成物とは異なり、およびここで、該重合体の1種は、有機重合体を包含し、およ
び第二の重合体は、溶媒無し、水無しで溶融加工可能なアクリロニトリルオレフ
ィン性不飽和重合体を包含し、該不飽和重合体は、約50重量%〜約95重量%
の重合可能なアクリロニトリルモノマーおよび約5重量%〜約50重量%の少な
くとも1種の重合可能なオレフィン性不飽和モノマーを含有し、およびここで、
該有機重合体および該アクリロニトリルオレフィン性不飽和重合体は、互いに関
して、熱的に安定である複合フィラメントに関するものである。そのことにより
上記課題が達成される。
【0010】
1実施態様としては、前記鞘重合体が、前記アクリロニトリルオレフィン性不
飽和重合体、前記有機重合体およびそれらの組合せからなる群から選択され、そ
してここで、該鞘成分が、前記フィラメントの約99重量%〜約1重量%の範囲
内であり、好ましくは、前記フィラメントの約95重量%〜約5重量%の範囲内
であり、さらに好ましくは、前記フィラメントの約90重量%〜約10重量%の
範囲内である。
【0011】
1実施態様としては、前記芯重合体が、前記アクリロニトリルオレフィン性不
飽和重合体、前記有機重合体およびそれらの組合せからなる群から選択され、そ
してここで、該芯成分が、前記フィラメントの約1重量%〜約99重量%の範囲
内であり、好ましくは、前記フィラメントの約5重量%〜約95重量%の範囲内
であり、さらに好ましくは、前記フィラメントの約10重量%〜約90重量%の
範囲内である。
【0012】
1実施態様としては、前記オレフィン性不飽和モノマーが、メタクリル酸メチ
ル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−
ジメチルアクリルアミド、N−フェニルマレイミド、酢酸ビニル、エチルビニル
エーテルおよびブチルビニルエーテル、ビニルピロリドン、エチルビニルケトン、
ブチルビニルケトン、メチルスチレン、スチレン、インデン、塩化ビニル、臭化
ビニル、塩化ビニリデン、ビニルスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸ナ
トリウム、メチルスルホン酸ナトリウム、イタコン酸、スチレンスルホン酸、ビ
ニルスルホン酸、ビニルピリジン、2−アミノエチル−N−アクリルアミド、3
−アミノプロピル−N−アクリルアミド、アクリル酸2−アミノエチル、メタク
リル酸2−アミノエチル、プロピレン、エチレン、イソブチレンならびにそれら
の組合せからなる群から選択される。
【0013】
1実施態様としては、前記有機重合体が、ポリオレフィン、ポリエステル、ポ
リイミド、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイ
ミド、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、
ポリケトン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、アクリロニトリル含有重
合体、液晶性重合体、セルロース化合物、木材、絹、綿およびそれらの組合せか
らなる群から選択される。
【0014】
1実施態様としては、前記有機重合体が、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポ
リ(4−メチルペンテン−1)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテ
レフタレート、ポリエチレンナフタレート、ナイロン、ポリビスフェノール−A
カーボネート、ポリエーテルイミド、ヒドロキシ安息香酸と2,6−ナフトエ酸
とのコポリエステル、溶媒無し、水無しで溶融加工可能なアクリロニトリル含有
重合体およびそれらの組合せからなる群から選択される。
【0015】
また、本発明は、鞘成分内に芯成分を配置させた高ニトリル複合フィラメント
を製造する方法であって、以下の工程を包含する方法である:(1)有機重合体お
よび溶媒無し、水無しで溶融加工可能なアクリロニトリルオレフィン性不飽和重
合体を調製する工程;(2)該有機重合体および該アクリロニトリルオレフィン性
不飽和重合体のそれぞれを押出す工程;および(3)各重合体押出物を紡糸して、
該複合フィラメントを形成する工程、ここで、該押出工程および該紡糸工程の温
度は、該鞘重合体および該芯重合体の組成に依存する。
【0016】
1実施態様としては、さらに、前記押出機に、熱安定剤、加工助剤、重合体担
体を含む色濃縮物、顔料、界面活性剤およびそれらの組合せを添加して、着色フ
ィラメントを得る工程、または前記押出工程前に、前記重合体の少なくとも1種
に、顔料を添加して、着色複合フィラメントを得る工程を包含し、ここで、該色
濃縮物が、最終繊維重量の5%未満で添加される。
【0017】
1実施態様としては、前記紡糸工程が、前記押出物が紡糸口金に入ることを包
含し、ここで、該紡糸口金が、1個〜数千個の穴を有し、およびここで、該紡糸
口金穴は、特定の形状を有し、次いで、前記複合フィラメントが、その口金輪郭
の形状で、該紡糸口金を出る。
【0018】
1実施態様としては、さらに、前記鞘重合体および前記芯重合体を、共混合物
として調製し、次いで、該重合体共混合物を、芯/鞘配置の複合フィラメントを
形成する紡糸口金に押し出す工程、または該鞘重合体および該芯重合体組成物を
別個の混合物として調製し、次いで、各重合体流を別個に紡糸口金に押し出し、
次いで、各別個の流れを芯/鞘配置の複合フィラメントに紡糸する工程のいずれ
かを包含する。
【0019】
1実施態様としては、さらに、巻取機にて、一定速度で、前記複合フィラメン
トを巻き取って、同一紡糸繊維を得る工程を包含する。
【0020】
1実施態様としては、さらに、前記複合繊維の最終用途に望ましいように、延
伸、加熱、冷却、緩和、添加仕上げおよびそれらの組合せの工程、次いで、該複
合繊維を集める工程を包含し、このような選択的工程が、連続的または断続的に
行われることができる。
【0021】
1実施態様としては、さらに、前記複合フィラメントを、糸、織物材料、編物
、不織ウエブ、布およびそれらの組合せからなる群から選択した材料に変換する
工程を包含する。
【0022】
鞘重合体および芯重合体は、フィラメントの長さに沿って、連続的である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、優れた特性、加工性を有する複合高ニトリルフィラメントが
得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明に従って、この高ニトリル複合フィラメントは、芯鞘(core sh
eath)配置にて、有機重合体および溶媒無し、水無しで溶融加工可能なアク
リロニトリルオレフィン性不飽和重合体を含有する。
【0025】
有機重合体には、合成重合体および天然重合体が挙げられるが、これらに限定
されない。この合成重合体には、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポ
リエチレンおよびポリ(4−メチルペンテン−1));ポリエステル(例えば、
ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT
)、およびポリエチレンナフタレート(PEN));ポリアミド(PA)(脂肪
族および芳香族を含めて;例えば、ナイロン類);ポリカーボネート(例えば、
ポリビスフェノール−Aカーボネート(PC));ポリイミド(PI)(例えば、
脂肪族および芳香族ポリエーテルイミド);ポリ(アミドイミド);ポリ(エス
テルイミド);ポリスチレン(PS);ポリウレタン;ポリ塩化ビニル(PVC)
;ポリケトン;ポリフェニレンオキシド(PPO);ポリビニルアルコール(P
VA);ポリスルホン;液状結晶性重合体(例えば、ヒドロキシ安息香酸と2,
6−ナフトエ酸とのコポリエステル(Vectra));Kevlar(登録商
標)(DuPont)から入手できる);アクリロニトリル含有重合体(溶媒無
し、水無しで溶融加工可能なアクリロニトリルオレフィン性不飽和重合体または
溶媒に溶解性のアクリロニトリル含有重合体を含む)などが挙げられるが、これ
らに限定されない。天然重合体には、羊毛、絹、綿、セルロース繊維などが挙げ
られるが、これらに限定されない。
【0026】
この有機重合体で使用するモノマーは、この複合フィラメントの最終用途に与
えるのが望ましい特性に依存して、1種のモノマーまたはモノマーの組合せであ
り得る。この有機重合体は、この複合フィラメントの鞘成分または芯成分のいず
れかとして使用されるが、その両方として使用されるわけではない。
【0027】
使用される他の重合体には、少なくとも1種のオレフィン性不飽和モノマーと
重合されるアクリロニトリルモノマーを含む溶媒無し、水無しで溶融加工可能な
アクリロニトリルオレフィン性不飽和重合体(以下、「アクリロニトリルオレフ
ィン性不飽和重合体」という)がある。このアクリロニトリルオレフィン性不飽
和重合体は、この芯または鞘またはその両方として使用されるが、しかしながら
、それが、この芯重合体および鞘重合体の両方として使用されるなら、この芯お
よび鞘として、異なる組成の重合体が使用されねばならない。このアクリロニト
リルオレフィン性不飽和重合体は、好ましくは、約50重量%〜約95重量%、
さらに好ましくは、約75重量%〜約93重量%、そして最も好ましくは、約8
5重量%〜約92重量%の重合されたアクリロニトリルモノマー、および約5重
量%〜約50重量%、好ましくは、約7重量%〜約25重量%、そして最も好ま
しくは、約8重量%〜約15重量%の少なくとも1種の重合されたオレフィン性
不飽和モノマーから形成される。
【0028】
使用されるオレフィン性不飽和モノマーは、アクリロニトリルモノマーと重合
可能なC=C二重結合を有する1種またはそれ以上のオレフィン性不飽和モノマー
である。このオレフィン性不飽和モノマーは、共重合体を生じる単一の重合可能
なモノマー、またはマルチポリマー(multi−polymer)を生じる重
合可能なモノマーの組合せであり得る。オレフィン性不飽和モノマーまたはモノ
マーの組合せの選択は、得られるフィラメントおよびその繊維最終用途に与える
のが望ましい特性に依存する。
【0029】
このオレフィン性不飽和モノマーには、一般に、アクリル酸エステル(例えば
、アクリル酸メチルおよびアクリル酸エチル);メタクリル酸エステル(例えば、
メタクリル酸メチル);アクリルアミド類およびメタクリルアミド類およびそれ
らのN−置換アルキル誘導体およびアリール誘導体(例えば、アクリルアミド、メ
タクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド);マ
レイン酸およびその誘導体(例えば、N−フェニルマレイミド);ビニルエステル(
例えば、酢酸ビニル);ビニルエーテル(例えば、エチルビニルエーテルおよびブ
チルビニルエーテル);ビニルアミド(例えば、ビニルピロリドン);ビニルケト
ン(例えば、エチルビニルケトンおよびブチルビニルケトン);スチレン類(例え
ば、メチルスチレン、スチレンおよびインデン);ハロゲン含有モノマー(例えば
、塩化ビニル、臭化ビニルおよび塩化ビニリデン);イオン性モノマー(例えば、
ビニルスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸ナトリウムおよびメチルスル
ホン酸ナトリウム);酸含有モノマー(例えば、イタコン酸、スチレンスルホン酸
およびビニルスルホン酸);塩基含有モノマー(例えば、ビニルピリジン、2−アミ
ノエチル−N−アクリルアミド、3−アミノプロピル−N−アクリルアミド、アクリル酸
2−アミノエチル、メタクリル酸2−アミノエチル);およびオレフィン(例えば、プ
ロピレン、エチレン、イソブチレン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
この溶融加工可能な高ニトリルマルチポリマーを製造する代表的な方法は、「
アクリロニトリル/メタクリロニトリル/オレフィン性不飽和モノマーのポリマー
を製造する方法」の表題の米国特許第560222号および「アクリロニトリルおよび
オレフィン性不飽和モノマーから調製した高ニトリル多元重合体を製造する方法
」の表題の米国特許第5618901号に記述されており、両方の内容は、本明細書中
で参考として援用されている。
【0031】
この芯重合体は、この鞘重合体と比較して、異なった組成である。この有機重
合体およびアクリロニトリルオレフィン性不飽和重合体は、互いに関して、熱的
に安定である。この有機重合体またはアクリロニトリルオレフィン性不飽和重合
体は、これらの重合体の用途および化学的性質および物理的性質(例えば、メル
トフロー特性、分子量、組成など)に依存して、この複合フィラメントの芯成分
または鞘成分のいずれかである。本発明では、このフィラメント中の芯重合体は
、このフィラメントの約1重量%〜約99重量%の範囲、好ましくは、約5重量%
〜約95重量%の範囲、さらに好ましくは、約10重量%〜約90重量%の範囲である
。このフィラメント中の鞘重合体は、このフィラメントの約99重量%〜約1重量
%の範囲、好ましくは、約95重量%〜約5重量%の範囲、さらに好ましくは、約
90重量%〜約10重量%の範囲である。この鞘重合体の最小量は、この芯重合体が
このフィラメント表面に露出しないような量である。この芯重合体および鞘重合
体の分布は、この複合フィラメント全体にわたって、均一でかつ均質である。
【0032】
この鞘に使用する重合体の組成物およびこの芯に使用する重合体の組成物は、
別個に調製される。このアクリロニトリルオレフィン性不飽和重合体は、公知の
重合法により、調製される。この有機重合体は、公知の重合法により、調製され
る。
【0033】
このアクリロニトリルオレフィン性不飽和重合体は、溶媒無し、水無しの系に
て、溶融加工される。しかしながら、不純物としての痕跡量の水は、3%まで、
好ましくは、1%以下で存在し得る。本発明の高ニトリル複合フィラメントを製
造する方法は、この有機重合体およびアクリロニトリルオレフィン性不飽和重合
体のそれぞれを押出すことを包含する。この有機重合体およびアクリロニトリル
オレフィン性不飽和重合体は、共混合または別個の混合のいずれかとして、押出
される。このことは、各重合体の組成により、決定される。例えば、この鞘の重
合体組成および芯の重合体組成が、分子量、溶融粘度または化学的性質または物
理的性質のために、混和性でないなら、この鞘重合体および芯重合体は、共混合
され、そして芯/鞘配置が形成する紡糸口金に押出される。この鞘重合体および
芯重合体組成物が、分子量、溶融粘度または化学的性質または物理的性質によっ
て、相互作用するほど充分に相溶性であるなら、これらの重合体は、別個の押出
機で加工される。次いで、各重合体流は、各別個の流れを受ける紡糸口金に別個
に押し出されて、芯/鞘配置を形成する。他の実施態様では、この芯重合体が、
予め成形された繊維であるなら、この鞘重合体は、予め成形されたフィラメント
芯を覆う紡糸口金を使用することにより、この予め成形された繊維上に押し出さ
れて、紡糸される。これらの紡糸口金は、1個から数千個の穴を有し、これらの
穴は、さらに、出来た芯/鞘フィラメントが、口金輪郭の形状を有するように、
特定の形状に成形され得る。
【0034】
押出および紡糸の各ゾーンの温度は、この鞘重合体および芯重合体の組成物の
熱分解温度に依存する。この複合フィラメントは、使用する紡糸口金およびその
繊維の最終用途に依存して、任意の所望の断面を有し得る。
【0035】
この紡糸口金からの複合フィラメントは、次いで、一定速度で、繊維束として
集められる。この複合繊維束は、この複合繊維の最終製品用途に望まれるような
、他の通常の加工工程(例えば、延伸、加熱、冷却、緩和、仕上げなど)に進む。
このような加工工程は、連続的または断続的に行なうことができる。この複合フ
ィラメントは、この複合フィラメントを加速した速度で、1個またはそれ以上の
ロール上で、延伸して配向され得る。この複合フィラメントは、重力、または高
速度ガス、空気などの送風によって、どちらかで配向できる。この複合フィラメ
ントは、このフィラメントの内部応力を軽減するために、ヒートセットされ得る
。この複合フィラメントは、配向後、ヒートセットと同時にまたはヒートセット
後のいずれかで、緩和できる。この複合フィラメントには、従来の織物化法が使
用できる。この複合高ニトリルフィラメントは、種々の染料、顔料、つや消し剤
、潤滑剤、接着剤、添加剤、安定剤などの使用により、さらに変性してもよい。
追加処理は、このような工程が、この複合高ニトリルフィラメントの特性に好ま
しくない影響を与えない限りにおいて、この複合フィラメントの特性をさらに変
えるために、使用できる。
【実施例】
【0036】
以下の実施例は、本発明の利点を立証する。
【0037】
約85%のアクリロニトリルおよび約15%のアクリル酸メチルの樹脂断片お
よびポリプロピレンペレット(メルトフローインデックス18で、Finaによ
り製造されたもの)を使用したアクリロニトリルオレフィン性不飽和重合体を、
共混合物として、4個のゾーンおよびダイスを有する約1.25インチ押出機を
通して、押出した。これらのゾーンの温度およびダイス温度は、約185℃/1
85℃/185℃/185℃/185℃に設定した。得られた押出物は、アクリ
ロニトリルオレフィン性不飽和重合体鞘によりカプセル化されたポリプロピレン
芯を生じた。
【0038】
この複合フィラメントを、Mettlerホットステージを備えたLeitz
クロス(cross)偏光光学顕微鏡(Laborlux 12 pol)を用
いて、光学顕微鏡検査により、検査した。光学顕微鏡検査により、この複合フィ
ラメントは、芯/鞘配置を有することが確認された。この鞘重合体は、この芯重
合体をカプセル化している連続層として、現れた。この鞘は、僅かに退色してお
り、削り取ると、白色のポリプロピレン芯が現れた。
【0039】
この鞘の組成を、コンピューター化データステーションを備えたPerkin
Elmer DSC7を使用する示差走査熱量測定によって、確認した。この鞘の
熱分析曲線は、それが、約84.3℃のガラス転移温度、約226℃の融解温度お
よび約186.9℃の結晶化温度(これらは、この重合したアクリロニトリル−ア
クリル酸メチル重合体の特性である)を示すことを表わした。
【0040】
この芯の示差走査熱量分析は、その物質が、約165.1℃で融解し、そして
約107.4℃で結晶化する(これらは、このポリプロピレンの特性である)こ
とを示した。
【0041】
これらの結果は、この芯重合体をカプセル化した鞘重合体の連続層を示した。
さらに、これらの結果は、この鞘重合体は、アクリロニトリル−アクリル酸メチ
ル重合体であり、この芯重合体は、ポリプロピレンであることを示した。さらに
、これらの結果は、各重合体は、鞘/芯配置中で、均一に分布されていることを
示した。
【0042】
本発明の上記記述および実施例から、当業者は、本発明の改良、変更および修
正を認めるだろう。当該技術分野の範囲内のこのような改良、変更および修正は
、添付の請求の範囲に含まれることを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞘/芯配置で配列した2種またはそれ以上の重合体を含有す
る複合高ニトリルフィラメントであって、ここで、該鞘重合体組成物は、該芯重
合体組成物とは異なり、およびここで、該重合体の1種は、有機重合体を包含し
、および第二の重合体は、溶媒無し、水無しで溶融加工可能なアクリロニトリル
オレフィン性不飽和重合体を包含し、該不飽和重合体は、約50重量%〜約95重
量%の重合可能なアクリロニトリルモノマーおよび約5重量%〜約50重量%の少
なくとも1種の重合可能なオレフィン性不飽和モノマーを含有し、およびここで、
該有機重合体および該アクリロニトリルオレフィン性不飽和重合体は、互いに関
して、熱的に安定である複合フィラメント。

【公開番号】特開2006−124904(P2006−124904A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−350037(P2005−350037)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【分割の表示】特願平10−353588の分割
【原出願日】平成10年12月11日(1998.12.11)
【出願人】(502389021)インスティテュート オブ テキスタイル テクノロジー (4)
【Fターム(参考)】