説明

複合高分子組成物、樹脂組成物、および樹脂成形体

【課題】樹脂組成物とした際に色素化合物が表面へ析出するブリードを抑制すること。
【解決手段】難溶性多糖類物質と、室温(25℃)以上100℃以下の何れかの温度において液状となり前記難溶性多糖類物質を溶解し得るイオン液体と、分子中に1つ以上の縮合多環炭化水素構造を有する色素化合物と、を含有する複合高分子組成物、該複合高分子組成物と、樹脂と、を有する樹脂組成物、該樹脂組成物を成形した樹脂成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合高分子組成物、樹脂組成物、および樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂組成物としては種々のものが提供され各種用途に使用されている。特に家電製品や自動車の各種部品、筐体等に使用されたり、また事務機器、電子電気機器の筐体などの部品にも樹脂組成物が使用されている。
【0003】
この樹脂組成物において、樹脂のほかに難溶性多糖類物質を含有したものが知られており、例えば、難溶性多糖類の溶解剤および該溶解剤と前記難溶性多糖類とを含有してなる樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−137677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、難溶性多糖類物質とイオン液体と分子中に1つ以上の縮合多環炭化水素構造を有する色素化合物とを含有しない場合に比べ、樹脂組成物とした際に色素化合物が表面へ析出するブリードを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の本発明によって達成される。
即ち、請求項1に係る発明は、
難溶性多糖類物質と、室温(25℃)以上100℃以下の何れかの温度において液状となり前記難溶性多糖類物質を溶解し得るイオン液体と、分子中に1つ以上の縮合多環炭化水素構造を有する色素化合物と、を含有する複合高分子組成物である。
【0007】
請求項2に係る発明は、
前記難溶性多糖類物質が、セルロース、セルロースファイバー、セルロースパウダー、キチンおよびキトサンから選択される少なくとも1種である請求項1に記載の複合高分子組成物である。
【0008】
請求項3に係る発明は、
樹脂と、
難溶性多糖類物質、室温(25℃)以上100℃以下の何れかの温度において液状となり前記難溶性多糖類物質を溶解し得るイオン液体、および分子中に1つ以上の縮合多環炭化水素構造を有する色素化合物を含有する複合高分子組成物と、
を有する樹脂組成物である。
【0009】
請求項4に係る発明は、
樹脂と、
難溶性多糖類物質、室温(25℃)以上100℃以下の何れかの温度において液状となり前記難溶性多糖類物質を溶解し得るイオン液体、および分子中に1つ以上の縮合多環炭化水素構造を有する色素化合物を含有する複合高分子組成物と、
を有する樹脂組成物を成形した樹脂成形体である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、難溶性多糖類物質とイオン液体と分子中に1つ以上の縮合多環炭化水素構造を有する色素化合物とを含有しない場合に比べ、樹脂組成物とした際に色素化合物が表面へ析出するブリードが抑制される。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、難溶性多糖類物質が、セルロース、セルロースファイバー、セルロースパウダー、キチンまたはキトサンでない場合に比べ、樹脂組成物とした際に色素化合物が表面へ析出するブリードが抑制される。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、複合高分子組成物が、難溶性多糖類物質とイオン液体と分子中に1つ以上の縮合多環炭化水素構造を有する色素化合物とを含有しない場合に比べ、色素化合物が表面へ析出するブリードが抑制される。
【0013】
請求項4に係る発明によれば、複合高分子組成物が、難溶性多糖類物質とイオン液体と分子中に1つ以上の縮合多環炭化水素構造を有する色素化合物とを含有しない場合に比べ、色素化合物が表面へ析出するブリードが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る樹脂成形体を備える電子・電気機器の部品の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の複合高分子組成物、樹脂組成物および樹脂成形体の実施形態について説明する。
【0016】
<複合高分子組成物>
本実施形態に係る複合高分子組成物は、難溶性多糖類物質と、室温(25℃)以上100℃以下の何れかの温度において液状となり前記難溶性多糖類物質を溶解し得るイオン液体と、分子中に1つ以上の縮合多環炭化水素構造を有する色素化合物と、を含有する。
【0017】
色素化合物を添加した高分子組成物を用いて樹脂成形体を成形した場合、該色素の成形体表面へのブリード(染み出し)が生じることがあった。
これに対し、難溶性多糖類物質とイオン液体と色素化合物とを混合した本実施形態に係る複合高分子組成物では、前記難溶性多糖類物質が前記イオン液体に溶解され、この難溶性多糖類物質と色素化合物とに相互作用が働くことで、色素化合物が難溶性多糖類物質へ固定される。これは、縮合多環炭化水素構造を有する色素化合物の分子構造が平面性や直線性を保つため、難溶性多糖類物質の層状構造に入り込むことによって相互作用が生じ、上記の通り固定されるものと考えられる。またより好ましくは、更に縮合多環炭化水素構造を有する色素化合物と難溶性多糖類物質とが水素結合を形成することで相互作用が生じ、上記の通り固定されるものと考えられる。その結果、まずこの複合高分子組成物を混合した後、これと樹脂を混練分散することで、前記色素化合物は自由に樹脂中を移行することなく、耐移行性が向上して、表面へのブリードが抑制されるものと推察される。
【0018】
(難溶性多糖類物質)
難溶性多糖類物質における「難溶性」とは、一般的な溶媒としての以下の溶媒に溶解しないことをさす。該溶媒とは、水、エタノール、メタノール、アセトン、トルエン、キシレン、ヘキサン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸、ブタノール、プロパノールである。
尚、「溶解しない」とは、25℃の条件で、上記溶媒100質量部に対する溶解量が1質量部未満であることを指し、更には0.1質量部以下であることが好ましい。
【0019】
難溶性多糖類物質は前述の通り層状構造を有する物質であり、また、樹脂成形体とした際に耐衝撃性を付与し得る物質である。
【0020】
難溶性多糖類物質としては、例えば、セルロース、セルロースファイバー、セルロースパウダー、キチンまたはキトサン等が挙げられる。
【0021】
難溶性多糖類物質の含有量としては、複合高分子組成物中において30質量%以上69.9質量%以下であることが好ましい。
【0022】
(イオン液体)
イオン液体は、室温(25℃)以上100℃以下の何れかの温度において液状となるイオンのみ(アニオンおよびカチオン)から構成される溶融塩であり、前記難溶性多糖類物質を溶解し得る物質である。尚、イオン液体は、蒸気圧がない(不揮発性)こと、高耐熱性であること、不燃性であること、化学的安定である等の特徴を有する。
【0023】
尚、イオン液体が「難溶性多糖類物質を溶解し得る」とは、イオン液体が液状である温度において、該イオン液体100質量部に対する難溶性多糖類物質の溶解量が1質量部以上であることを指し、更には10質量部以上であることが好ましい。
【0024】
尚、難溶性多糖類物質の分子中の水素結合を断ち切る効果を得る点で、上記イオン液体が効果的である。
【0025】
イオン液体の具体例としては、カチオン(陽イオン)として、イミダゾリウムイオンなどの環状アミジンイオン、ピリジニウムイオン、アンモニウムイオン、スルホニウムイオン、ホスホニウムイオンなどの有機カチオンが挙げられる。
これらカチオンに組み合わせるアニオン(陰イオン)としては、Cl、Br、AlCl、AlCl、NO、BF、PF、CHCOO、CFCOO、CFSO、(CFSO、(CFSO、AsF、SbF、F(HF)n、CFCFCFCFSO、(CFCFSO、CFCFCFCOO、CHCOO、CHSO、SCN、CHCHSO、HOSO、HCO等が挙げられる。
【0026】
イオン液体の極性は高いほど好ましく、より具体的には、セルロース等の前記難燃性多糖類物質分子中または難燃性多糖類物質分子間の水素結合を断ち切る効果を有するKamlet−Taftβ値で0.9以上の物質が好ましい。
【0027】
上記Kamlet−Taftβ値を満たすイオン液体としては、例えばクロライド系イオン液体、アセテート系イオン液体、およびアルキルフォスフェート系イオン液体等が挙げられる。
【0028】
尚、上記に挙げたイオン液体と、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等との混合液体を用いてもよい。
【0029】
イオン液体の含有量としては、複合高分子組成物中において30質量%以上69.9質量%以下であることが好ましい。
【0030】
(色素化合物)
色素化合物は、分子中に1つ以上の縮合多環炭化水素構造を有する。
尚、「縮合多環炭化水素構造」とは、2つ以上の芳香族の単環がそれぞれの環の辺を互いに1辺だけ供給し縮合してできている縮合環の炭化水素構造を指す。
【0031】
分子中に1つ以上の縮合多環炭化水素構造を有する色素化合物としては、特に染料が好ましく、直接染料、ナフトール染料、バット染料、分散染料、反応染料といった、高分子の側鎖(ヒドロキシル基など)などと強く相互作用する染料が望ましい。
こうした色素化合物としては、例えば、アントラキノン系(下記構造式(i))、ペリレン系(下記構造式(ii))、キノフタロン系(下記構造式(iii))等が挙げられる。
【0032】
【化1】



【0033】
尚、上記構造式(i)で示すアントラキノン系、構造式(ii)で示すペリレン系、上記構造式(iii)で示すキノフタロン系の色素化合物は、以下の置換基で置換されているものを含む。
−置換基−
−NH、−OH、−Br、−Cl、−NHCH、−CONH、−NHC、−CN、−NH−phenyl、−[(2,4,6−trimethylphenyl)amino、−NHC、−p−Acetamidophenyl、−2,6−diethyl−4−methylphenyl、−2−methylphenylamino、−OCH、−2,6−bromophenylamino、−3−methylphenyl)amino]−、−Isopropylamino、−phenoxy、−Cyclohexylamino、−methoxy、−4−methyl−benzenesulfonamino、−phenylthio
【0034】
色素化合物の具体例としては、例えば以下のものが挙げられる。
Solvent Yellow16,93,33,114,157,163,98
Disperse Yellow232,42
Solvent Orange60,63,86
Solvent Red24,111,168,207,179,135,149,168,169,172,196,197,207,41,43,52,179
Disperse Red4,11,15,53,55,9,60,86,92
Solvent Violet13,14,47,8,9,36
Disperse Violet1,4,8,28,26,23,18,30,37,17
Solvent Blue11,12,36,55,78,94,63,97,101,104,122,35,4,5,59,6,68,87
Disperse Blue1,3,5,6,7,27,52,26,56,60,81,14,359,77
Solvent Green3,20,28,5
【0035】
色素化合物の含有量としては、複合高分子組成物中において0.1質量%以上1質量%以下であることが好ましく、更に0.5質量%以上0.8質量%以下であることがより好ましい。
【0036】
(複合高分子組成物の作製)
前記難溶性多糖類物質、イオン液体、および色素化合物を、該イオン液体が液状である温度にて攪拌混合することで複合高分子組成物が作製される。
【0037】
<樹脂組成物>
本実施形態に係る樹脂組成物は、前記難溶性多糖類物質、イオン液体、および色素化合物が混合された複合高分子組成物と、樹脂とを含有する。
【0038】
(樹脂)
樹脂としては、PS、PMMA、PE、PP、PLA、ABS、ポリヒドロキシブチレート、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)、ポリ(ブチレンサクシネート/カーボネート)、ポリエチレンサクシネート、ポリビニルアルコール、酢酸セルロース、デンプン変性樹脂、ポリヒドロキシブチレート、ポリカプロラクトン、セルロース変性樹脂などに代表される、熱可塑性樹脂が挙げられる。尚、加工温度が230℃を超えないものが特に好ましい。
【0039】
樹脂組成物中における樹脂の含有量は、樹脂組成物の全組成中69.9質量%以上99.9質量%以下であることが好ましく、80質量%以上99質量%以下であることが好ましい。
【0040】
(添加剤)
また、樹脂組成物には、添加剤(例えば、難燃剤、酸化防止剤、加水分解防止剤、耐衝撃改質剤、無機フィラー、有機フィラー、相溶化剤、エラストマーなど)を混合してもよい。
【0041】
・難燃剤
難燃剤とは、単独では難燃性を示さず、且つUL−94で規定される難燃性がHB未満の樹脂に添加して得られる樹脂組成物の、UL−94で規定される難燃性がHB以上となる化合物を表す。
【0042】
上記難燃剤としては、例えば、リン系、シリコーン系、含窒素系、硫酸系、無機水酸化物系等の難燃剤が用いられる。
上記リン系難燃剤としては、縮合リン酸エステル、リン酸メラミン、リン酸アンモニウム、リン酸アルミニウムなどが、上記シリコーン系難燃剤としては、ジメチルシロキサン、ナノシリカ、シリコーン変性ポリカボーネートなどが、上記含窒素系難燃剤としては、メラミン化合物、トリアジン化合物などが、上記硫酸系難燃剤としては、硫酸メラミン、硫酸グアニジンなどが、上記無機水酸化物系難燃剤としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。これらの中でもリン系難燃剤がより好ましい。
【0043】
尚、前記難燃剤としては合成したものを用いてもよいし市販品を用いてもよい。
リン系難燃剤の市販品としては、大八化学工業製のPX−200、PX−202、ブーテンハイム製のTERRAJU C80、クラリアント製のEXOLIT AP422、EXOLIT OP930等が挙げられる。シリコーン系難燃剤の市販品としては、東レダウシリコーン製のZ6018、DC4−7081等が挙げられる。含窒素系難燃剤の市販品としては、ADEKA製のFP2200等が挙げられる。硫酸系難燃剤の市販品としては、三和ケミカル製のアピノン901、下関三井化学製のピロリンサンメラミン、ADEKA製のFP2100等が挙げられる。無機水酸化物系難燃剤の市販品としては、タテホ化学工業製のエコーマグPZ−1、堺化学工業製のMGZ3、MGZ300、日本軽金属製B103ST等が挙げられる。
【0044】
樹脂組成物において前記難燃剤を添加する場合には、その含有量として、樹脂組成物の全量に対し5質量%以上30質量%以下であることが好ましく、10質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。
【0045】
(樹脂組成物の作製)
本実施形態に係る樹脂組成物は、まず、少なくとも前記難溶性多糖類物質、イオン液体、および色素化合物を混合して複合高分子組成物を調製し、次いで該複合高分子組成物と樹脂とを溶融混練することにより製造される。尚、更にその他の成分を添加してもよい。
ここで、溶融混練の手段としては公知の手段を用いることができ、例えば、二軸押出し機、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機、コニーダ等が挙げられる。
【0046】
≪樹脂成形体≫
本実施形態に係る樹脂成形体は、前述の本実施形態に係る樹脂組成物を成形することにより得られる。例えば、射出成形、押し出し成形、ブロー成形、熱プレス成形、カレンダ成形、コーテイング成形、キャスト成形、ディッピング成形、真空成形、トランスファ成形などの成形方法により本実施形態に係る樹脂組成物を成形し、本実施形態に係る樹脂成形体が得られる。
【0047】
前記射出成形は、例えば、日精樹脂工業製NEX150、日精樹脂工業製NEX70000、東芝機械製SE50D等の市販の装置を用いて行ってもよい。
この際、シリンダ温度としては、170℃以上280℃以下とすることが望ましく、180℃以上270℃以下とすることがより望ましい。また、金型温度としては、40℃以上110℃以下とすることが望ましく、50℃以上110℃以下とすることがより望ましい。
【0048】
本実施形態に係る樹脂成形体は、電子・電気機器、家電製品、容器、自動車内装材などの用途に好適に用いられる。より具体的には、家電製品や電子・電気機器などの筐体、各種部品など、ラッピングフィルム、CD−ROMやDVDなどの収納ケース、食器類、食品トレイ、飲料ボトル、薬品ラップ材などであり、中でも、電子・電気機器の部品に好適である。
【0049】
図1は、本実施形態に係る成形体を備える電子・電気機器の部品の一例である画像形成装置を、前側から見た外観斜視図である。
図1の画像形成装置100は、本体装置110の前面にフロントカバー120a,120bを備えている。これらのフロントカバー120a,120bは、操作者が装置内を操作するよう開閉自在となっている。これにより、操作者は、トナーが消耗したときにトナーを補充したり、消耗したプロセスカートリッジを交換したり、装置内で紙詰まりが発生したときに詰まった用紙を取り除いたりする。図1には、フロントカバー120a,120bが開かれた状態の装置が示されている。
【0050】
本体装置110の上面には、用紙サイズや部数等の画像形成に関わる諸条件が操作者からの操作によって入力される操作パネル130、および、読み取られる原稿が配置されるコピーガラス132が設けられている。また、本体装置110は、その上部に、コピーガラス132上に原稿を搬送する自動原稿搬送装置134を備えている。更に、本体装置110は、コピーガラス132上に配置された原稿画像を走査して、その原稿画像を表わす画像データを得る画像読取装置を備えている。この画像読取装置によって得られた画像データは、制御部を介して画像形成ユニットに送られる。なお、画像読取装置および制御部は、本体装置110の一部を構成する筐体150の内部に収容されている。また、画像形成ユニットは、着脱自在なプロセスカートリッジ142として筐体150に備えられている。プロセスカートリッジ142の着脱は、操作レバー144を回すことによって行われる。
【0051】
本体装置110の筐体150には、トナー収容部146が取り付けられており、トナー供給口148からトナーが補充される。トナー収容部146に収容されたトナーは現像装置に供給されるようになっている。
【0052】
一方、本体装置110の下部には、用紙収納カセット140a,140b,140cが備えられている。また、本体装置110には、一対のローラで構成される搬送ローラが装置内に複数個配列されることによって、用紙収納カセットの用紙が上部にある画像形成ユニットまで搬送される搬送経路が形成されている。なお、各用紙収納カセットの用紙は、搬送経路の端部近傍に配置された用紙取出し機構によって1枚ずつ取り出されて、搬送経路へと送り出される。また、本体装置110の側面には、手差しの用紙供給部136が備えられており、ここからも用紙が供給される。
【0053】
画像形成ユニットによって画像が形成された用紙は、本体装置110の一部を構成する筐体152によって支持された相互に接触する2個の定着ロールの間に順次移送された後、本体装置110の外部に排紙される。本体装置110には、用紙供給部136が設けられている側と反対側に用紙排出部138が複数備えられており、これらの用紙排出部に画像形成後の用紙が排出される。
【0054】
画像形成装置100において、例えば、フロントカバー120a,120b、プロセスカートリッジ142の外装、筐体150、および筐体152に、本実施形態に係る樹脂成形体が用いられている。
【実施例】
【0055】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。尚、以下において「部」は特に断りのない限り質量基準である。
【0056】
<複合高分子組成物(A−1)の作製>
・イオン液体a(シグマアルドリッチ製、1−butyl−3−
methylimidazolium acetate) 0.5部
・難溶性多糖類物質c(セルロースパウダー、
東亜化成製、VIVAPUR101) 1部
・色素e(有本化学工業製、Plast Red) 0.01部
上記組成物を、上記イオン液体aが液状である温度にて、24h攪拌混合し静置した。
尚、上記イオン液体aは難溶性多糖類物質cを溶解する液体であった。また、上記イオン液体aのKamlet−Taftβ値は0.9以上であった。
【0057】
<複合高分子組成物(A−2)の作製>
・イオン液体a(シグマアルドリッチ製、1−butyl−3−
methylimidazolium acetate) 1部
・難溶性多糖類物質c(セルロースパウダー、
東亜化成製、VIVAPUR101) 0.5部
・色素e(有本化学工業製、Plast Red) 0.01部
上記組成物を、上記イオン液体aが液状である温度にて、24h攪拌混合し静置した。
尚、上記イオン液体aは難溶性多糖類物質cを溶解する液体であった。
【0058】
<複合高分子組成物(A−3)の作製>
・イオン液体b(シグマアルドリッチ製、1−butyl−3−
methylimidazolium chloride) 0.5部
・難溶性多糖類物質d(セルロースファイバー、東亜化成製、
ARBOCEL BWW40) 1部
・色素f(有本化学工業製、Plast Yellow) 0.01部
上記組成物を、上記イオン液体bが液状である温度にて、24h攪拌混合し静置した。
尚、上記イオン液体bは難溶性多糖類物質dを溶解する液体であった。また、上記イオン液体bのKamlet−Taftβ値は0.9以上であった。
【0059】
<複合高分子組成物(A−4)の作製>
・イオン液体b(シグマアルドリッチ製、1−butyl−3−
methylimidazolium chloride) 1部
・難溶性多糖類物質d(セルロースファイバー、東亜化成製、
ARBOCEL BWW40) 0.5部
・色素f(有本化学工業製、Plast Yellow) 0.01部
上記組成物を、上記イオン液体bが液状である温度にて、24h攪拌混合し静置した。
尚、上記イオン液体bは難溶性多糖類物質dを溶解する液体であった。
【0060】
〔実施例A−1〜A−12およびB−1〜B−6〕
<樹脂組成物の作製方法>
表1に記載の種類および量の樹脂、複合高分子組成物を、二軸押出機(東洋精機ラボプラストミル、Φ25mm)を用いて、該押出機の根元供給口から供給し、バレル温度180℃、スクリュー回転数30rpmの条件で、押出しを実施した。押出機先端から吐出された配合樹脂組成物をペレット状にカッティングしてペレットを得た。
【0061】
〔比較例A−1〜A−2およびB−1〜B−2〕
<樹脂組成物の作製方法>
表2に記載の種類および量の樹脂、イオン液体、難溶性多糖類物質、色素を、二軸押出機(東洋精機ラボプラストミル、Φ25mm)にいっぺんに投入し、該押出機の根元供給口から供給し、バレル温度180℃、スクリュー回転数30rpmの条件で、押出しを実施した。押出機先端から吐出された配合樹脂組成物をペレット状にカッティングしてペレットを得た。
【0062】
<評価>
−耐ブリード性−
前記より得たペレットを、60℃/95%RHの環境下に96hr放置後、色素がブリードしているか否かを目視にて判断した。判断項目として、表面に液状物質の付着(正しくは染み出し)があるか、変色・退色がないかを確認した。
【0063】
【表1】



【0064】
【表2】



【0065】
尚、上記にて用いている組成物はそれぞれ以下の通りである。
・PP :日本ポリプロ製、ノバテックPP
・PS :PSジャパン製、GPPS
・PLA:ユニチカ株式会社製、テラマックTE4000
・イオン液体a:シグマアルドリッチ製、
1−butyl−3−methylimidazolium acetate
・イオン液体b:シグマアルドリッチ製、
1−butyl−3−methylimidazolium chloride
・難溶性多糖類物質c:セルロースパウダー、東亜化成製、VIVAPUR101
・難溶性多糖類物質d:セルロースファイバー、
東亜化成製、ARBOCEL BWW40
・色素(染料)e :有本化学工業製、Plast Red
・色素(染料)f :有本化学工業製、Plast Yellow
【符号の説明】
【0066】
100 画像形成装置
110 本体装置
120a、120b フロントカバー
136 用紙供給部
138 用紙排出部
142 プロセスカートリッジ
150、152 筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
難溶性多糖類物質と、室温(25℃)以上100℃以下の何れかの温度において液状となり前記難溶性多糖類物質を溶解し得るイオン液体と、分子中に1つ以上の縮合多環炭化水素構造を有する色素化合物と、を含有する複合高分子組成物。
【請求項2】
前記難溶性多糖類物質が、セルロース、セルロースファイバー、セルロースパウダー、キチンおよびキトサンから選択される少なくとも1種である請求項1に記載の複合高分子組成物。
【請求項3】
樹脂と、
難溶性多糖類物質、室温(25℃)以上100℃以下の何れかの温度において液状となり前記難溶性多糖類物質を溶解し得るイオン液体、および分子中に1つ以上の縮合多環炭化水素構造を有する色素化合物を含有する複合高分子組成物と、
を有する樹脂組成物。
【請求項4】
樹脂と、
難溶性多糖類物質、室温(25℃)以上100℃以下の何れかの温度において液状となり前記難溶性多糖類物質を溶解し得るイオン液体、および分子中に1つ以上の縮合多環炭化水素構造を有する色素化合物を含有する複合高分子組成物と、
を有する樹脂組成物を成形した樹脂成形体。

【図1】
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【公開番号】特開2012−207063(P2012−207063A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71659(P2011−71659)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】