説明

複室容器

【課題】薬剤の混合することを忘れたりすることがなく、しかも異物の混入を防止することができる複室容器を提供すること。
【解決手段】本発明の複室容器は、シール13により複数の充填室11,12に分けられており、それぞれの充填室11,12に薬剤が充填された容器本体1と、容器本体1の少なくとも一つの充填室11,12を覆うカバー2とを有する。カバー2は、シール部13を外側から挟持する一対の剛性部材21と、一対の剛性部材21を閉じるように設けられたシール部22とを含む。この複室容器においては、充填室11,12間が未開通状態の場合に、カバー2を保持し、充填室11,12間が開通状態になってシール部13の厚さが増加した場合に、容易にカバー2を脱落させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複室容器に関し、特に、2以上の薬剤を収容し、これらの薬剤を混合することができる複室容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2以上の薬剤を混合する場合、相互作用に起因する経時的変化によって薬剤が変質することを防止するために、医療現場において投与直前に各薬剤を混合して調製していた。しかしながら、このような投与直前の薬剤の混合は、微生物による汚染や異物の混入、過誤の混合、迅速な投与ができないなどの欠点があった。このため、現在、圧力の付加によって剥離可能なシールなどの仕切り手段を容器本体に設け、この仕切り手段で区画された複数の充填室に各未混合薬剤を個別に充填してなる複室型の容器が開発されている。この複室型の容器は、投与直前に仕切り手段を解除して各薬剤を混合するようになっている。
【0003】
このような複室型の容器において、仕切り手段を解除して各薬剤を混合する方法としては、充填室を手などで押圧して充填室の容積を小さくすることにより、充填室内の薬剤の圧力で仕切り手段を解除して薬剤を混合する方法や、一つの充填室から別の充填室に仕切り手段を通して延在する注入栓を設け、この注入栓を開けることにより薬剤を混合する方法などがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような混合方法においては、容器を所定の器具に装着して投与する際に、装着動作とは別に開通動作(押圧、開栓)が必要になる。このため、開通動作を行わずに薬剤を投与してしまう可能性がある。しかも、仕切り手段が解除されて薬剤が混合したかどうかを確認することが難しいので、開通動作がなされていないことを発見することが難しい。さらに、開栓して薬剤を混合するタイプのものにおいては、充填室内に開栓後の栓が残存することになるので、異物の混入が問題となる。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、薬剤の混合することを忘れたりすることがなく、しかも異物の混入を防止することができる複室容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の複室容器は、複数の薬剤を収容する複室容器であって、開通防止部により複数の充填室に分けられており、それぞれの充填室に薬剤が充填された容器本体と、前記容器本体の少なくとも一つの充填室を覆うカバー部材と、を具備し、前記カバー部材は、前記開通防止部を外側から挟持する一対の剛性部材と、前記一対の剛性部材を閉じるように設けられたシール部と、を含むことを特徴とする。
【0007】
本発明の複室容器においては、前記充填室間が未開通状態の場合に一方の充填室を前記カバー部材で覆い、前記充填室間が開通状態になって前記開通防止部の厚さが増加した場合に前記カバー部材が脱落することが好ましい。
【0008】
本発明の複室容器においては、前記一対の剛性部材がプレートであることが好ましい。
【0009】
本発明の複室容器においては、前記容器本体は、一方の端部側に口栓を有し、他方の端部側に前記容器本体を吊り下げる穴を有することが好ましい。この場合において、前記カバー部材は、少なくとも前記一方の端部を覆うことが好ましい。また、この場合において、前記カバー部材は、少なくとも前記他方の端部を覆うことが好ましい。
【0010】
本発明の複室容器においては、前記剛性部材の長さが前記カバー部材の幅よりも短いことが好ましい。
【0011】
本発明の複室容器においては、前記剛性部材の長さが前記カバー部材の幅よりも長いことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の複室容器は、複数の薬剤を収容するものであり、開通防止部により複数の充填室に分けられており、それぞれの充填室に薬剤が充填された容器本体と、前記容器本体の少なくとも一つの充填室を覆うカバー部材と、を具備し、前記カバー部材は、前記開通防止部を外側から挟持する一対の剛性部材と、前記一対の剛性部材を閉じるように設けられたシール部と、を含むので、薬剤の混合することを忘れたりすることがなく、しかも異物の混入を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る複室容器を示す正面図である。また、図2は、図1に示す複室容器の側面図であり、図3は、図1に示す複室容器のカバー取付部分を示す拡大図である。
【0014】
図1に示す複室容器は、容器本体1を有する。容器本体1は、複数(本実施の形態においては2つ)の充填室11,12を有する。充填室11,12との間には、充填室11,12内にそれぞれ充填された薬剤の開通を防止するシール部13が設けられている。したがって、容器本体1は、シール部13により2つの充填室11,12に分けられている。
【0015】
このシール部13は、紙面の法線方向の圧力(矢印A方向)に対して十分な耐圧性を有する。すなわち、矢印A方向からの圧力は、容器本体1全体に分散するのでシール部13が剥離しない。また、このシール部13は、紙面の上下方向の力(矢印B方向)に対して剥離し易い性質を有する。このようなシール部13を開通防止部とすることにより、充填室11,12の少なくとも一方に圧力を加えることにより、シール部13に矢印B方向の圧力が加わって、シール部13が剥れて充填室11,12間が開通状態となり、充填室11,12にそれぞれ充填された薬剤が混合される。
【0016】
容器本体1は、一方の端部(図中上方)に、薬剤投与の際にスタンドに吊り下げるための穴14を有する。また、容器本体1は、他方の端部(図中下方)に口栓15を有する。口栓15は、中空針が刺されるまでゴム栓により密封されている。なお、容器本体1の材質としては、通常使用されている材質を用いることができる。
【0017】
また、図1に示す複室容器は、充填室11,12の少なくとも一方(図1では、充填室12)を覆うカバー2を有する。このカバー2は、少なくとも端部(例えば、口栓15又は穴14)を覆っていれば良い。このカバー2は、シール部13を外側から挟持する一対の剛性部材21と、一対の剛性部材21を閉じるように設けられたシール部22とを含む。カバー2としては、紙やプラスチックなどで構成されたフィルムやシートなどを用いることができる。
【0018】
剛性部材21は、シール部13を外側から挟持してカバー2を容器本体1に装着できるために十分な剛性を有する。また、剛性部材21としては、シール部13に沿ってシール部13(容器本体1の薄肉部分)を挟むことができるプレートなどを用いることができる。また、剛性部材21としては、できるだけ軽量であることが好ましい。したがって、剛性部材の材質としては、例えば、紙やプラスチックなどを用いることができる。剛性部材21は、シール部13に当接するようにカバー2の内側に接着などにより取り付けられる。また、図1に示す態様においては、シール部22でカバー2を閉じているので、剛性部材21の長さLは、カバー2の幅Dよりも短く設定される。
【0019】
シール部22は、カバー2における剛性部材21の外側の領域に設けられる。シール部22は、シール部13が剥れて充填室11,12間が開通状態になった場合において、シール部13の厚さが厚くなったときに、その厚さの増加により剥れる程度の密着力を有する。すなわち、シール部22の密着力、シール部22の形状や、カバー2におけるシール部22の位置は、充填室11,12間が未開通状態の場合に、カバーを保持し、充填室11,12間が開通状態になってシール部13の厚さが増加した場合に、容易にカバー2を脱落させるように設定する。
【0020】
シール部22は、両面テープで構成しても良く、カバー2同士を溶着して構成しても良く、カバー2の当接部分(端部)に係合部を設けて両者を係合させて構成しても良い。
【0021】
容器本体1にカバー2を取り付ける場合には、まず図4Aに示すようなカバー2(例えば、フィルム又はシート)を準備する。このカバー2の一方の面の両端部に、それぞれ剛性部材21(例えば、プレート)を取り付ける。次いで、図4Bに示すように、剛性部材21が対面するようにしてカバー2を湾曲させる。この状態で、剛性部材21の位置が容器本体1のシール部13の位置になるように、容器本体1の一方の充填室(充填室12)を覆うように、湾曲したカバー2を容器本体1に被せる。次いで、図4Cに示すように、剛性部材21の外側の領域をシールしてシール部22を形成する。
【0022】
このように、上記の複室容器は、充填室11,12間が未開通状態の場合に充填室12をカバー2で覆い、充填室11,12間が開通状態になってシール部13の厚さが増加した場合にカバー2が脱落するように構成されている。このため、充填室11,12間が未開通状態の場合においては、容器本体1の口栓15がカバー2により覆われている。このため、この状態では、カバー2で口栓15が覆われているので、必然的に口栓15に中空針を刺せず、使用することができない。すなわち、充填室11,12が未開通状態では、使用できないことになる。このため、薬剤の混合し忘れという事態を確実に回避することが可能となる。しかも、この構成によれば、異物の混入を防止することができる。
【0023】
図1に示す態様においては、図4Cに示すように、カバー2の側部は開放されている場合について説明しているが、本発明においては、カバー2の側部をミシン目で切り離せるように閉じておき、充填室11,12間が開通状態になってシール部13の厚さが増加した場合に、ミシン目が切り離されてカバー2が脱落するように構成しても良い。この場合においては、シール部22は設けても良く、設けなくても良い。
【0024】
図5は、本発明の実施の形態に係る複室容器の他の例を示す正面図である。図5に示す複室容器においては、充填室11をカバー2で覆っている。カバー2の構成は、図1に示す複室容器と同じである。
【0025】
図5に示す複室容器は、充填室11,12間が未開通状態の場合に充填室11をカバー2で覆い、充填室11,12間が開通状態になってシール部13の厚さが増加した場合にカバー2が脱落するように構成されている。このため、充填室11,12間が未開通状態の場合においては、容器本体1の穴14がカバー2により覆われている。このため、この状態では、カバー2で穴14が覆われているので、必然的に複室容器をスタンド台に吊り下げることができず、使用することができない。すなわち、充填室11,12が未開通状態では、使用できないことになる。このため、薬剤の混合し忘れという事態を確実に回避することが可能となる。しかも、この構成によれば、異物の混入を防止することができる。
【0026】
図6は、本発明の実施の形態に係る複室容器の他の例を示す正面図である。図6に示す複室容器においては、図1、図5に示す複室容器は、カバー2同士をシールしてシール部22を形成した場合について説明している。図6に示す複室容器は、剛性部材21同士をシールしてシール部22を形成している。したがって、図6に示す態様においては、剛性部材21でカバー2を閉じているので、剛性部材21の長さLは、カバー2の幅Dよりも長く設定される。なお、剛性部材21については図1、図5に示す複室容器と同じである。
【0027】
図6に示す複室容器は、充填室11,12間が未開通状態の場合に充填室12をカバー2で覆い、充填室11,12間が開通状態になってシール部13の厚さが増加した場合にカバー2が脱落するように構成されている。このため、充填室11,12間が未開通状態の場合においては、容器本体1の口栓15がカバー2により覆われている。このため、この状態では、カバー2で口栓15が覆われているので、必然的に口栓15に中空針を刺せず、使用することができない。すなわち、充填室11,12が未開通状態では、使用できないことになる。このため、薬剤の混合し忘れという事態を確実に回避することが可能となる。しかも、この構成によれば、異物の混入を防止することができる。
【0028】
図6に示す複室容器は、充填室12をカバー2で覆っているが、図6に示すカバー2を用いて、図5に示す複室容器のように、充填室11をカバー2で覆っても良い。
【0029】
本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することができる。例えば、上記実施の形態においては、充填室が2つである場合について説明しているが、本発明は充填室が3つ以上である場合にも適用することができる。また、上記実施の形態においては、充填室に液状の薬剤を充填する場合について説明しているが、本発明においては、充填室に粉末状の薬剤を充填する場合にも適用することができる。また、上記実施の形態における材質、大きさ、形状などは一例であり、これに限定されない。その他、本発明の範囲を逸脱しない範囲において、本発明を種々変更して実施することができることは当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態に係る複室容器を示す正面図である。
【図2】図1に示す複室容器の側面図である。
【図3】図1に示す複室容器のカバー取付部分を示す拡大図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る複室容器にカバーを取り付ける態様を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る複室容器の他の例を示す正面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る複室容器の他の例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 容器本体
2 カバー
11,12 充填室
13,22 シール部
14 穴
15 口栓
21 剛性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の薬剤を収容する複室容器であって、開通防止部により複数の充填室に分けられており、それぞれの充填室に薬剤が充填された容器本体と、前記容器本体の少なくとも一つの充填室を覆うカバー部材と、を具備し、前記カバー部材は、前記開通防止部を外側から挟持する一対の剛性部材と、前記一対の剛性部材を閉じるように設けられたシール部と、を含むことを特徴とする複室容器。
【請求項2】
前記充填室間が未開通状態の場合に一方の充填室を前記カバー部材で覆い、前記充填室間が開通状態になって前記開通防止部の厚さが増加した場合に前記カバー部材が脱落することを特徴とする請求項1記載の複室容器。
【請求項3】
前記一対の剛性部材がプレートであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の複室容器。
【請求項4】
前記容器本体は、一方の端部側に口栓を有し、他方の端部側に前記容器本体を吊り下げる穴を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の複室容器。
【請求項5】
前記カバー部材は、少なくとも前記一方の端部を覆うことを特徴とする請求項4記載の複室容器。
【請求項6】
前記カバー部材は、少なくとも前記他方の端部を覆うことを特徴とする請求項4記載の複室容器。
【請求項7】
前記剛性部材の長さが前記カバー部材の幅よりも短いことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の複室容器。
【請求項8】
前記剛性部材の長さが前記カバー部材の幅よりも長いことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の複室容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−244864(P2007−244864A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−59655(P2007−59655)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(593209736)ベイラー カレッジ オブ メディスィン (6)
【氏名又は名称原語表記】Baylor College of Medicine
【Fターム(参考)】