複屈折パターン認証用ビューワ、複屈折パターン認証用キット、真正性認証媒体、および真正性認証方法
【課題】偽造防止ラベルなどに用いられる複屈折パターンを確実かつ簡便に認証するビューワを提供する。
【解決手段】 複屈折性の異なる少なくとも2つの領域を有する複屈折パターン認証用ビューワであって、偏光板1に、少なくとも一層の光学異方性層2が積層され、光学異方性層2の正面レタデーションが5nm以上であり、かつ、光学異方性層2の正面レタデーションと前記複屈折パターンの正面レタデーションの最大値の和がλ/2より大きいビューワ。
【解決手段】 複屈折性の異なる少なくとも2つの領域を有する複屈折パターン認証用ビューワであって、偏光板1に、少なくとも一層の光学異方性層2が積層され、光学異方性層2の正面レタデーションが5nm以上であり、かつ、光学異方性層2の正面レタデーションと前記複屈折パターンの正面レタデーションの最大値の和がλ/2より大きいビューワ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複屈折パターンを認証するためのビューワおよびキット、並びに、真正性認証媒体および真正性認証方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製品の偽造防止の手段としては、製品そのものを複製不能とする手段か、偽造防止手段として複製不能の標識を製品に取り付けることで真正な製品(真正品)と判定させる手段に大きく分けられる。特に後者の場合は個別な対応が必要な前者に比べて汎用性が高いので、多く用いられている。
後者の手段はさらに、2つに分けられる。ひとつは、偽造防止手段の存在が常に誰にでも識別できるもので、良く知られている技術としてホログラムがある。もうひとつは、偽造防止手段が通常は検出不能な状態であり、偽造防止手段の存在を知る者のみが特別な手段によって偽造防止手段を検出し、真正品かどうかを識別するもので、光軸のパターニングされた位相差媒体による潜像を、偏光板を用いて観察し、真偽を判別する技術が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。しかし、このようにして可視化される潜像は、正面から見たときは単色であるし、偏光板を回転させないと真正性が確認できないことから、認証が面倒であるという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−137232号公報
【特許文献2】特開2008−129421号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
偽造防止ラベル等に用いられる複屈折パターンを簡便かつ確実に認証することのできるビューワを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
(1)複屈折性の異なる少なくとも2つの領域を有する複屈折パターン認証用ビューワであって、偏光板に、少なくとも一層の光学異方性層が積層され、該光学異方性層の正面レタデーションが5nm以上であり、かつ、該光学異方性層の正面レタデーションと前記複屈折パターンの正面レタデーションの最大値の和がλ/2より大きいことを特徴とするビューワ、
(2)光軸がパターニングされた複屈折パターンを識別するためのビューワであることを特徴とする(1)項に記載のビューワ、
(3)複屈折パターンの位相差が(n1/2+1/8)λ〜(n1/2+3/8)λ(n1:0以上の整数)であることを特徴とする(2)項に記載のビューワ、
(4)ビューワの光学異方性層の位相差が(n2/2−1/8)λ〜(n2/2+1/8)λ(n2:自然数)であることを特徴とする(2)または(3)項に記載のビューワ、
(5)レタデーションがパターニングされた複屈折パターンを識別するためのビューワであることを特徴とする(1)項に記載のビューワ、
(6)ビューワを複数有する複屈折パターン認証用キットであって、少なくとも1つのビューワが(1)〜(5)のいずれか1項に記載のビューワからなることを特徴とする複屈折パターン認証用キット、
(7)前記複数のビューワは、互いに光軸、及び/または、被認証体側の光学異方性層のレタデーションが異なることを特徴とする(6)項に記載の複屈折パターン認証用キット、
(8)被認証体の一部に、(1)〜(5)のいずれか1項に記載のビューワを有することを特徴とする真正性認証媒体、
(9)(1)〜(5)のいずれか1項に記載のビューワ、または(6)または(7)項に記載の複屈折パターン認証用キットを用いたことを特徴とする真正性認証方法、および
(10)真性品には前記複屈折パターンが形成されている被認証体を、前記ビューワ、または前記キットを介して観察し、3色以上からなる潜像を確認することにより該被認証体の真性品を認証することを特徴とする(9)項記載の真正性認証方法
を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
また、本発明のビューワにより、複屈折パターンの複数の色の潜像を表現できる。また、軸パターンの施された潜像を、正面から見たときにも多色に認識できる。よって、ビューワを回転しなくても、ビューワをかざしたときの潜像の色によって真偽判定が可能であり、認証にかかる時間を短縮することができる。
したがって、本発明のビューワおよびそれを用いたキットにより、複屈折パターンを用いた偽造防止ラベル等の被認証体の真偽を判別する真正性の認証を確実かつ簡単な操作により行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の好ましい実施態様のビューワの概略断面図である。
【図2】本発明の本発明のビューワによって認証される被認証体の一実施形態の概略断面図である。
【図3】本発明のビューワにより識別される複屈折パターンの例を示す説明図であって、図3(a)はレタデーションに関してパターニングした例の説明図であり、図3(b)は光軸方向に関してパターニングした例の説明図である。
【図4】実施例に用いられたフォトマスクの平面図である。
【図5】実施例における複屈折パターンの平面図である。
【図6】比較例1のビューワの概略断面図である。
【図7】実施例1のビューワの概略断面図である。
【図8】実施例2のビューワの概略断面図である。
【図9】実施例4の複屈折パターン認証用キットの平面図である。
【図10】実施例6のビューワ一体型複屈折パターンの平面図である。
【図11】実施例6に用いられたフォトマスクの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のビューワは、複屈折性の異なる少なくとも2つの領域を有する複屈折パターン認証用ビューワであって、偏光板に、少なくとも一層の光学異方性層が積層され、該光学異方性層の正面レタデーションが5nm以上であり、かつ、光学異方性層の正面レタデーションと複屈折パターンの正面レタデーションの最大値の和がλ/2より大きいものである。
【0009】
図1は本発明の好ましい実施態様のビューワ(光学フィルタ)の概略断面図であり、偏光板1に光学異方性層2が積層されたものである。
【0010】
偏光板1は自然光を直線偏光に変換する性質を有する板で、例えば、ヨウ素系偏光板、染料系偏光板、ワイヤグリッド偏光板、金属ナノ粒子を用いた偏光板などが挙げられるが、一般的にはヨウ素系偏光板(ポリビニルアルコールフィルムからなる偏光膜をヨウ素にて染色、延伸を行った後、その両面に保護フィルムを積層して作製されたもの)を用いることが好ましい。偏光板1の厚さは、特に限定するものではないが、保護フィルムを含み、80〜500μmが好ましい。
【0011】
光学異方性層2は、正面レタデーションが実質的に0ではない、5nm以上の正面レタデーションを有する層である。正面レタデーションは、50nm以上であることが好ましく、100nm以上であることがより好ましい。特に、光軸のパターニングされた複屈折パターンを識別する際には、(n2/2−1/8)λ〜(n2/2+1/8)λ(n2:自然数)であることが好ましい。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、レタデーションまたはReまたは位相差は面内レタデーションを表す。面内のレタデーション(Re(λ))はKOBRA WR(商品名、王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定された値である。
また、本明細書および特許請求の範囲において、波長を特に規定しないレタデーションは、550nmの波長で測定されたものを意味する。
【0012】
光学異方性層2は、例えば、透明支持体に、配合層を介して、液晶性化合物を含む組成物(塗布液)を塗布、乾燥して液晶相状態とした後、配合状態を固定化して形成して、光学異方性層を形成したフィルム状ものが挙げられる。液晶化合物としては、例えば、UV硬化型サーモトロピック・ネマティック液晶を用いることができる。このような液晶は市販品として入手することができ、例えばPaliocolor LC242(商品名、BASFジャパン株式会社)を挙げることができる。
また、光学異方性層2は、所望のレタデーションを有する市販の一軸延伸フィルムや二軸延伸フィルムを用いることもできる。
光学異方性層2は、好ましくは、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエーテル系粘着剤、及びポリエステル系粘着剤などの感圧系の粘着剤により、偏光板1に貼り付けられて、積層され、ビューワを形成する。
【0013】
本発明のビューワは、複屈折性の異なる少なくとも2つの領域を有する複屈折パターンを認証するために用いられる。
【0014】
また、本明細書および特許請求の範囲において、「認証」は、「識別」、「判別」、「有無の確認」などにより、被認証体の真偽を証明することを含む。
【0015】
本発明においては、ビューワの光学異方性層の正面レタデーションと、複屈折パターンの正面レタデーションの最大値との和がλ/2より大きいものである。前記の和の値を上記の範囲に設定することで潜像の色相を大きく変化させるという作用効果を奏する。ビューワの光学異方性層の正面レタデーションと、複屈折パターンパターニング光学異方性層の正面レタデーションの最大値との和はλ/2〜3λであることが好ましく、λ〜2λであることがより好ましい。偏光板の光学異方性層の正面レタデーションと複屈折パターンの正面レタデーションの最大値の和をλ/2より大きいものとすることは、例えば、複屈折パターンのパターニング光学異方性層の正面レタデーションの最大値を大きくする、あるいは、ビューワの光学異方性層の正面レタデーションを大きくする、あるいは、その両者をかけあわせることにより行うことができる。液晶性化合物を硬化して作製した光学異方性層は、膜厚を大きくする、あるいは、異方性の大きい液晶性材料を使うことによって、正面レタデーションを大きくすることができる。あるいは、延伸フィルムにおいては、その延伸倍率を大きくすることによって、正面レタデーションを大きくすることができる。
【0016】
本発明のビューワが認証する複屈折パターンは、上記のように、複屈折性が異なる領域を複数含む層、すなわち、パターニング光学異方性層を有している。
本発明において、複屈折パターンは複屈折性が異なる領域を3つ以上有することがさらに好ましい。上記の複屈折性が同一である個々の領域は連続的形状であっても非連続的形状であってもよい。また、パターニング光学異方性層は、複数の層が積層されていてもよい。複屈折パターンを有する物品は通常平面(膜又はシート)状の形状を有していればよい。
【0017】
本発明のビューワによって認証される、一つの好ましい複屈折パターンは、光軸方向のパターニングされている複屈折パターン、すなわち、複屈折性が異なる領域が、光軸方向が互いに異なる領域を2つ以上有するものである。なお、本明細書において「光軸」というとき、「遅相軸」又は「透過軸」を意味する。
光軸がパターニングされている場合、光軸の向きが好ましくは5度以上、より好ましくは10度以上、さらに好ましくは15度以上異なることをいう。光軸がパターニングされている複屈折パターンの光学異方性層は、例えば、特表2001−525080号公報に記載の方法などで得ることができ、さらにこの液晶化合物の層内配向方向制御と後述のレタデーション値制御を組み合わせることにより、層内のレタデーションと配向方向が任意にパターニングされた光学異方性層を作製することができる。
【0018】
光軸がパターニングされている場合、複屈折パターンの位相差が(n1/2+1/8)〜(n1/2+3/8)λ(n1:0以上の整数)であることが好ましい。複屈折パターンの位相差がこの範囲にあることで潜像の色相を大きく変化させることができる。複屈折パターンの位相差を上記範囲とすることは、例えば、パターニング光学異方性層の膜厚を調整する、あるいは液晶の固有複屈折を調整することにより行うことができる。
【0019】
光軸方向のパターニングされている複屈折パターンの認証においては、ビューワの光学異方性層層の位相差が(n2/2−1/8)〜(n2/2+1/8)λ(n2:自然数)であることが好ましい。ビューワの光学異方性層の位相差がこの範囲にあることで潜像の色相を大きく変化させることができる。ビューワの光学異方性層の位相差を上記範囲とすることは、例えば、液晶性化合物を硬化した光学異方性層を用いる場合には、その膜厚を調整する、あるいは液晶の固有複屈折を調整することによって、あるいは、延伸フィルムを用いる場合には、その延伸倍率を変えることにより行うことができる。
【0020】
本発明のビューワによって認証される、別の好ましい複屈折パターンは、レタデーションのパターニングされた複屈折パターンである。「レタデーションのパターニングされた」とは、レタデーションが互いに異なる領域を2つ以上有することをいうレタデーションがパターニングされている場合には、好ましくは20nm以上、より好ましくは30nm以上、さらに好ましくは50nm以上レタデーションが異なることをいう。
【0021】
図2は本発明のビューワによって認証される被認証体の一実施形態の概略断面図を示す。図2に示す被認証体は、支持体101上に反射層102を介して光学異方性層103を有する。光学異方性層103は領域AとBを有し、これらは互いに複屈折性が異なる領域である。複屈折パターン及び光学異方性層、ならびに必要に応じて設けられる各層について、以下に詳述する。
複屈折パターンの例としてはレタデーション及び/又は光軸方向が面内でパターニングされた光学異方性層を含む物品が挙げられる。複屈折パターンの例を図3に示す。
図3(a)はレタデーションの相違によってパターニングされている例の模式的な説明図である。図3(a)に示す例においてはanm、bnm、cnm、及びdnmで示されるレタデーションは互いに異なるものとする。図3(b)は光軸方向の相違によってパターニングされている例の模式的な説明図である。図3(b)において矢印は光軸方向を示す。
光軸方向が面内でパターニングされた光学異方性層は、例えば、特表2001−525080号公報に記載の方法などで得ることができる。
また、レタデーションが面内でパターニングされた光学異方性層は、例えば、以下に詳細に説明する方法で作製することができる。
なお、以下の光学異方性層についての記載は、パターニングに関する記載以外に関しては、上記のビューワの光学異方性層に適用することができる。
【0022】
[複屈折パターン部材]
(光学異方性層)
パターニング光学異方性層は実質的に同一の層形成組成物から形成されることが好ましい。ここで同一の層形成組成物とは、厳密には分子の電子状態が異なり、複屈折性が異なるが原材料が同一であることをいう。
複屈折パターンは少なくとも1層のパターニング光学異方性層を含む。
パターニング光学異方性層は高分子を含む。高分子を含むことにより、複屈折性、透明性、耐溶媒性、強靭性および柔軟性といった異なった種類の要求を満たすことができる。
【0023】
光学異方性層は好ましくは20℃において、より好ましくは30℃において、さらに好ましくは40℃において固体であればよい。20℃において固体であると、他の機能性層の塗布や、支持体上への転写や貼合が容易であるからである。
他の機能性層の塗布を行う場合、本発明の光学異方性層は耐溶媒性を有することが好ましい。本明細書において、「耐溶媒性を有する」とは対象の溶媒に2分間浸漬した後のレタデーションが浸漬前のレタデーションの30%から170%の範囲内に、より好ましくは50%から150%の範囲内に、最も好ましくは80%から120%の範囲内にあることを意味する。対象の溶媒としては水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N−メチルピロリドン、ヘキサン、クロロホルム、酢酸エチルの中から、好ましくはアセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N−メチルピロリドンの中から、最も好ましくはメチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、またはこれらの混合溶媒等があげられる。
【0024】
光学異方性層でレタデーションを付与した領域のレタデーションの値は20℃においてレタデーションが5nm以上であればよく、20nm以上1000nm以下であることがより好ましい。レタデーションが5nm未満では複屈折パターンの形成が困難となったり、潜像の鮮明性が低下する場合がある。レタデーションが1000nmを越えると、誤差が大きくなり実用できる精度を達成することが困難である場合がある。
また、被認証体の潜像形成を考慮して、あるいは被認証体を構成するその他の層のレタデーションを考慮して、光学異方性層のレタデーション値を制御することができる。
【0025】
光学異方性層の製法としては特に限定されないが、少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含んでなる溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、熱または電離放射線照射して重合固定化して作製する方法;少なくとも2つ以上の反応性基を有するモノマーを重合固定化した層を延伸する方法;高分子からなる層にカップリング剤を用いて反応性基を導入した後に延伸する方法;または高分子からなる層を延伸した後にカップリング剤を用いて反応性基を導入する方法などが挙げられる。
また、後述するように、本発明の光学異方性層は転写により形成されたものであってもよい。
パターニング光学異方性層の厚さは、0.1〜20μmであることが好ましく、0.5〜10μmであることがさらに好ましい。
【0026】
《光学異方性層(材料)》
(液晶性化合物を含有する組成物を重合固定化してなる光学異方性層)
光学異方性層の製法として少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含んでなる溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、熱または電離放射線照射して重合固定化して作製する場合について以下に説明する。本製法は、後述する高分子を延伸して光学異方性層を得る製法と比較して、薄い膜厚で同等のレタデーションを有する光学異方性層を得ることや、緻密なパターン制御が容易となる。
【0027】
(液晶性化合物)
一般的に、液晶性化合物はその形状から、棒状タイプと円盤状タイプに分類できる。さらにそれぞれ低分子と高分子タイプがある。高分子とは一般に重合度が100以上のものを指す(高分子物理・相転移ダイナミクス,土井 正男 著,2頁,岩波書店,1992)。複屈折パターンの光学異方性層では、いずれの液晶性化合物を用いることもできるが、棒状液晶性化合物または円盤状液晶性化合物を用いるのが好ましい。大きなレタデーションを発現させるためには、棒状タイプを用いるのが好ましい。2種以上の棒状液晶性化合物、2種以上の円盤状液晶性化合物、又は棒状液晶性化合物と円盤状液晶性化合物との混合物を用いてもよい。本発明においては、上記ビューワにおける光学異方性層に用いられる液晶化合物と同様の液晶化合物を好ましく用いることができ、また、温度変化や湿度変化を小さくできることから、反応性基を有する棒状液晶性化合物または円盤状液晶性化合物を用いて形成することがより好ましく、その場合少なくとも1種の2以上の反応性基を有するものを用いることが好ましい。
【0028】
液晶性化合物が重合条件の異なる2種類以上の反応性基を有することもまた好ましい。この場合、条件を選択して複数種類の反応性基の一部種類のみを選択的に重合させることにより、未反応の反応性基を有する高分子を含む光学異方性層を作製することが可能となる。用いる重合条件としては重合固定化に用いる電離放射線の波長域や重合温度でもよいし、用いる重合機構の違いでもよいが、好ましくは用いる開始剤の種類によって制御可能な、ラジカル性の反応基とカチオン性の反応基の組み合わせが選択的な重合の制御の観点で好ましい。前記ラジカル性の反応性基がエチレン性不飽和基、特にアクリル基および/またはメタクリル基であり、かつ前記カチオン性基がビニルエーテル基、オキセタン基および/またはエポキシ基である組み合わせが反応性を制御しやすく特に好ましい。
また、本発明において液晶性化合物から形成したとは、最終的にできた物が液晶性を示す必要はなく、例えば、熱、光等で反応する基を有した低分子ディスコティック液晶が、捜査の過程で熱、光等の反応により重合または架橋し、高分子量化し液晶性を失ったものも含まれる。
【0029】
棒状液晶性化合物としては、例えば、特開2008−281989号公報の段落[0043]〜[0060]に記載の化合物を用いることができる。
【0030】
本発明の他の態様として、前記光学異方性層にディスコティック液晶を使用した態様がある。前記光学異方性層は、モノマー等の低分子量の液晶性ディスコティック化合物の層または重合性の液晶性ディスコティック(円盤状)化合物の重合(硬化)により得られるポリマーの層であるのが好ましい。ディスコティック化合物としては、例えば、特開2008−281989号公報の段落[0061]〜[0075]に記載の化合物を用いることができる。
【0031】
光学異方性層は、液晶性化合物を含有する組成物(例えば塗布液)を、後述する配向層の表面に塗布し、所望の液晶相を示す配向状態とした後、該配向状態を熱又は電離放射線の照射により固定することで作製された層であるのが好ましい。
液晶性化合物として、反応性基を有する円盤状液晶性化合物を用いる場合、水平配向、垂直配向、傾斜配向、およびねじれ配向のいずれの配向状態で固定されていてもよい。尚、本明細書において「水平配向」とは、棒状液晶の場合、分子長軸と透明支持体の水平面が平行であることをいい、円盤状液晶の場合、円盤状液晶性化合物のコアの円盤面と透明支持体の水平面が平行であることをいうが、厳密に平行であることを要求するものではなく、本明細書では、水平面とのなす傾斜角が10度未満の配向を意味するものとする。傾斜角は0〜5度が好ましく、0〜3度がより好ましく、0〜2度がさらに好ましく、0〜1度が最も好ましい。
【0032】
(水平配向剤)
液晶性化合物の分子を実質的に水平配向させるために、例えば、特開2008−281989号公報の段落[0084]〜[0093]の記載を参考に、水平配向剤を添加してもよい。
【0033】
液晶性化合物を含む組成物からなる光学異方性層を2層以上積層する場合、液晶性化合物の組み合わせについては特に限定されず、全て円盤状液晶性化合物からなる層の積層体、全て棒状性液晶性化合物からなる層の積層体、円盤状液晶性化合物を含む組成物からなる層と棒状性液晶性化合物を含む組成物からなる層の積層体であってもよい。また、各層の配向状態の組み合わせも特に限定されず、同じ配向状態の光学異方性層を積層してもよいし、異なる配向状態の光学異方性層を積層してもよい。
【0034】
光学異方性層は、液晶性化合物および下記の重合開始剤や他の添加剤を含む塗布液を、後述する配向層の上に塗布する方法などで形成することが好ましい。塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0035】
(液晶性化合物の配向状態の固定化)
配向させた液晶性化合物は、例えば、特開2008−281989号公報の段落[0080]〜[0081]に記載の方法で、配向状態を維持して固定することが好ましい。
【0036】
(偏光照射による光配向)
前記光学異方性層は、特開2008−281989号公報の段落[0082]〜[0083]に記載されているように、偏光照射による光配向で面内のレタデーションが発現あるいは増加した層であってもよい。
【0037】
光軸方向が層内でパターニングされた光学異方性層は、前述のように特表2001−525080号公報に記載の方法などで得ることができる。
【0038】
液晶化合物の層内配向方向が実質的に一定である複屈折パターンを施した光学異方性層について説明を行う。これは、層内の液晶性化合物の配向方向は同じでレタデーション値を制御したパターニングの事例である。さらに前述の液晶化合物の層内配向方向制御と組み合わせることにより、配向方向とレタデーションを任意にパターニングされた光学異方性層を作製することもできる。
パターン形成前の該光学異方性層中の高分子は未反応の反応性基を有することが好ましい。露光により未反応の反応性基が反応して高分子鎖の架橋が起こるが、露光条件の異なる露光によって高分子鎖の架橋の程度が異なり、その結果としてレタデーション値が変化して複屈折パターンが形成しやすくなる。
【0039】
(ラジカル性の反応性基とカチオン性の反応性基を有する液晶化合物の配向状態の固定化)
前述したように、液晶性化合物が重合条件の異なる2種類以上の反応性基を有することもまた好ましい。この場合、条件を選択して複数種類の反応性基の一部種類のみを重合させることにより、未反応の反応性基を有する高分子を含む光学異方性層を作製することが可能である。このような液晶性化合物として、ラジカル性の反応基とカチオン性の反応基を有する液晶性化合物(具体例としては例えば、前述のI−22〜I−25)を用いた場合に特に適した重合固定化の条件について以下に説明する。
【0040】
まず、重合開始剤としては重合させようと意図する反応性基に対して作用する光重合開始剤のみを用いることが好ましい。すなわち、ラジカル性の反応基を選択的に重合させる場合にはラジカル光重合開始剤のみを、カチオン性の反応基を選択的に重合させる場合にはカチオン光重合開始剤のみを用いることが好ましい。光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.1〜8質量%であることがより好ましく、0.5〜4質量%であることが特に好ましい。
【0041】
次に、重合のための光照射は紫外線を用いることが好ましい。この際、照射エネルギーおよび/または照度が強すぎるとラジカル性反応性基とカチオン性反応性基の両方が非選択的に反応してしまう恐れがある。したがって、照射エネルギーは、5mJ/cm2〜500mJ/cm2であることが好ましく、10〜400mJ/cm2であることがより好ましく、20mJ/cm2〜200mJ/cm2であることが特に好ましい。また照度は5〜500mW/cm2であることが好ましく、10〜300mW/cm2であることがより好ましく、20〜100mW/cm2であることが特に好ましい。照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。
【0042】
また光重合反応のうち、ラジカル光重合開始剤を用いた反応は酸素によって阻害され、カチオン光重合開始剤を用いた反応は酸素によって阻害されない。従って、液晶性化合物としてラジカル性の反応基とカチオン性の反応基を有する液晶化合物を用いてその反応性基の片方種類を選択的に重合させる場合、ラジカル性の反応基を選択的に重合させる場合には窒素などの不活性ガス雰囲気下で光照射を行うことが好ましく、カチオン性の反応基を選択的に重合させる場合には敢えて酸素を有する雰囲気下(例えば大気下)で光照射を行うことが好ましい。
【0043】
[複屈折パターン部材の作製]
本発明の複屈折パターン作製材料を用いて、パターン状の熱処理または電離放射線照射を行う工程、及び光学異方性層中の残りの未反応の反応性基を反応もしくは失活させる工程を行う事によって、複屈折パターン部材を作製することができる。特に光学異方性層がレタデーション消失温度を有し、かつ該レタデーション消失温度が電離放射線照射(あるいはレタデーション消失温度以下の熱処理)によって上昇する場合、容易に複屈折パターン部材を作製することができる。
以下に、電離放射線照射や熱処理による複屈折パターン作製工程を例示する。
【0044】
パターン状の電離放射線照射としては、例えば、露光(パターン露光)が挙げられる。パターン露光によって光学異方性層中の未反応の反応性基を反応させて露光部のレタデーション消失温度を上昇させ、その後に未露光部のレタデーション消失温度より高く露光部のレタデーション消失温度より低い温度において光学異方性層中の残りの未反応の反応性基を反応もしくは失活させる工程を行う事により、未露光部のレタデーションのみを選択的に消失させて複屈折パターンを形成する事ができる。光学異方性層中の残りの未反応の反応性基を反応もしくは失活させる工程としては全面露光でもよいし、反応性基が熱によっても反応できるのなら全面熱処理(ベーク)でもよい。省コスト化の為には、未露光部のレタデーション消失温度より高く露光部のレタデーション消失温度より低い温度への加熱がそのまま反応の為の熱処理も兼ねられることが好ましい。
一方で、逆に、先に一部領域の加熱(パターン状の熱処理)をレタデーション消失温度近くの温度で行ってレタデーションを低下ないしは消失させ、その後にレタデーション消失温度より低い温度で光学異方性層中の残りの未反応の反応性基を反応もしくは失活させる工程(全面露光ないしは全面加熱)を行って複屈折パターンを得る手法もある。この場合には先に加熱された部分のみがレタデーションを失ったパターンを得る事が可能である。
パターン露光およびパターン状熱処理の詳細については後述する。
【0045】
本発明における「反応条件」とは、以下に述べる「パターン露光」または「パターン状熱処理」の条件をいう。
先に、パターン状の露光とレタデーション消失温度以上での全面熱処理ないしは全面露光による複屈折パターン作製について詳細を述べる。
【0046】
[パターン露光]
複屈折パターンを作製するためのパターン露光は、複屈折パターン作製材料につき、複屈折性を残したい領域を露光するように、露光部と未露光部のみを形成するように行ってもよく、露光条件の異なる露光をパターン状に行ってもよい。
パターン露光の手法としてはマスクを用いたコンタクト露光、プロキシ露光、投影露光などでもよいし、レーザーや電子線などを用いてマスクなしに決められた位置にフォーカスして直接描画してもよい。前記露光の光源の照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。感光性樹脂層により同時に段差を形成する場合には樹脂層を硬化しうる波長域の光(例えば、365nm、405nmなど)を照射することも好ましい。具体的には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、青色レーザー等が挙げられる。好ましい露光量としては通常3〜2000mJ/cm2程度であり、より好ましくは5〜1000mJ/cm2程度、さらに好ましくは10〜500mJ/cm2程度、最も好ましくは10〜100mJ/cm2程度である。
【0047】
露光条件としては、特に限定はされないが、露光ピーク波長、露光照度、露光時間、露光量、露光時の温度、露光時の雰囲気等が挙げられる。この中で、条件調整の容易性の観点から、露光ピーク波長、露光照度、露光時間、および露光量が好ましく、露光照度、露光時間および露光量がさらに好ましい。
露光条件の異なる露光は複数回の露光によって行われてもよく、もしくは、例えば領域によって異なる透過スペクトルを示す2つ以上の領域を有するマスク等を用いて1回の露光によって行われていてもよく、又は両者が組み合わされていてもよい。露光条件の異なる露光をパターン状に行うとはすなわち、異なる露光条件で露光された2つ以上の露光領域を生ずるような形で露光が行われていることを意味とする。
パターン露光時に相異なる露光条件で露光された領域はその後、焼成を経て相異なる、かつ露光条件によって制御された複屈折性を示す。特に異なるレタデーション値を与える。すなわち、パターン露光の際に領域ごとに露光条件を調整することにより、焼成を経た後に領域ごとに異なる、かつ所望のレタデーションを有する複屈折パターンを作製することが可能である。なお、異なる露光条件で露光された2つ以上の露光領域間の露光条件は不連続に変化させてもよいし、連続的に変化させてもよい。
【0048】
(マスク露光)
露光条件の異なる露光領域を生じる手段として、露光マスクを用いた露光は有用である。例えば1つの領域のみを露光するような露光マスクを用いて露光を行った後に、温度、雰囲気、露光照度、露光時間、露光波長を変えて別のマスクを用いた露光や全面露光を行うことで、先に露光された領域と後に露光された領域の露光条件は容易に変更することができる。また、露光照度、あるいは露光波長を変えるためのマスクとして領域によって異なる透過スペクトルを示す2つ以上の領域を有するマスクは特に有用である。この場合、ただ一度の露光を行うだけで複数の領域に対して異なる露光照度、あるいは露光波長での露光を行うことができる。異なる露光照度の元で同一時間の露光を行う事で異なる露光量を与えることができることは言うまでもない。
またレーザーなどを用いた走査露光を用いる場合には、露光領域によって光源強度を変える、走査速度を変えるなどの手法で領域ごとに露光条件を変えることが可能である。
【0049】
また、複屈折パターン作製材料にパターン露光を行って得られた積層体の上に新たな複屈折パターン作製用転写材料を転写し、その後に新たにパターン露光を行う手法を併用してもよい。この場合、一度目及び二度目ともに未露光部である領域(通常レタデーション値が一番低い)、一度目に露光部であり二度目に未露光部である領域、及び、一度目及び二度目ともに露光部である領域(通常レタデーション値が一番高い)でベーク後に残るレタデーションの値を効果的に変えることができる。なお、一度目に未露光部であり二度目に露光部である領域は、二度目の露光により一度目及び二度目ともに露光部である領域と同様となると考えられる。同様にして転写とパターン露光を交互に三度、四度と行うことにより、四つ以上の領域を作ることも容易にできる。この手法は、異なる領域の間で、露光条件だけでは与え得ないような差異(光学軸の方向の違いや非常に大きなレタデーションの差異など)を持たせたい時に有用である。
【0050】
[レタデーション消失温度以上での全面熱処理(ベーク)ないしは全面露光による反応処理]
パターン露光された複屈折パターン作製材料に対して露光部のレタデーションを残しつつ未露光部のレタデーションを低下させ、さらにその状態で残りの未反応の反応性基を反応もしくは失活させて安定な複屈折パターンを得るために、未露光部のレタデーション消失温度以上での全面熱処理ないしは全面露光を行うことが好ましい。
処理を全面熱処理で行う場合、温度条件は材料によって変わるが未露光部のレタデーション消失温度以上で露光部のレタデーション消失温度以下が好ましい。またその上で未反応の反応性基の反応もしくは失活が効率よく進む温度であることが好ましい。具体的には特に限定されないが50℃〜400℃程度の熱処理が好ましく、100〜260℃程度の熱処理がより好ましく、150〜250℃がさらに好ましく、180〜230℃が特に好ましいが、必要とされる複屈折性(レタデーション)や用いる光学異方性層の熱硬化反応性によって適した温度は異なる。また熱処理には材料中の不要な成分を気化あるいは燃焼させて除く効果も期待できる。熱処理の時間は特に限定されないが、1分以上5時間以内が好ましく、3分以上3時間以内がより好ましく、5分以上2時間以内が特に好ましい。
露光部のレタデーション消失温度以下の温度では未反応の反応性基の反応性が十分でなく反応処理が十分に進まない場合などには、未露光部のレタデーション消失温度以上の温度を保ちつつ全面露光を行うことも有用である。この際の好ましい光源は前記パターン露光において上げたものと同一であり、好ましい露光量としては通常3〜2000mJ/cm2程度であり、より好ましくは5〜1000mJ/cm2程度、さらに好ましくは10〜500mJ/cm2程度、最も好ましくは10〜300mJ/cm2程度である。
【0051】
次に、パターン状熱処理によるパターン状レタデーション低下とレタデーション消失温度以下での全面熱処理ないしは全面露光による複屈折パターン作製について詳細を述べる。
【0052】
[パターン状熱処理(熱パターン書き込み)]
パターン状熱処理の際の加熱温度は、加熱部と非加熱部のレタデーションに差異を生じさせる温度であればよく、特に限定されない。特に加熱部のレタデーションを実質的に0nmとしたい場合には、用いられる複屈折パターン作製材料の光学異方性層のレタデーション消失温度以上の温度で加熱することが好ましい。また一方で、加熱温度は光学異方性層の燃焼や着色の生じる温度未満であることが好ましい。一般的には120℃〜260℃程度の加熱を行えばよく、150℃〜250℃がより好ましく、180℃〜230℃がさらに好ましい。
【0053】
複屈折パターン作製材料の一部を加熱する方法は特に限定されないが、加熱体を複屈折パターン作製材料に接触させて行う方法、加熱体を複屈折パターン作製材料のごく近傍に位置させて行う方法、ヒートモード露光を用いて複屈折パターン作製材料を部分加熱する方法などが挙げられる。
【0054】
[レタデーション消失温度以下での全面熱処理(ベーク)ないしは全面露光による反応処理]
前記パターン状熱処理が行われた光学異方性層において熱処理が行われなかった領域は、レタデーションを有しつつも未反応の反応性基を残しており、未だ不安定な状態である。未処理領域に残存する未反応の反応性基を反応もしくは失活させるために、全面熱処理ないしは全面露光による反応処理を行うことが好ましい。
【0055】
全面熱処理による反応処理は、用いられる複屈折パターン作製材料の光学異方性層のレタデーション消失温度より低い温度で、かつ未反応の反応性基の反応もしくは失活が効率よく進む温度であることが好ましい。
パターン露光された複屈折パターン作製材料に対して50℃以上400℃以下、好ましくは80℃以上400℃以下に加熱を行うことにより複屈折パターンを作製することができる。複屈折パターン作製に用いる複屈折パターン作製材料の有する光学異方性層の露光前のレタデーション消失温度をT1[℃]、露光後のレタデーション消失温度をT2[℃]とした場合(レタデーション消失温度が250℃以下の温度域にない場合はT2=250とする)、ベーク時の温度はT1℃以上T2℃以下が好ましく、(T1+10)℃以上(T2−5)℃以下がより好ましく、(T1+20)℃以上(T2−10)℃以下が最も好ましい。
一般的に120〜180℃程度の加熱を行えばよく、130〜170℃がより好ましく、140〜160℃がさらに好ましいが、必要とされる複屈折性(レタデーション)や用いる光学異方性層の熱硬化反応性によって適した温度は異なる。熱処理の時間は特に限定されないが、1分以上5時間以内が好ましく、3分以上3時間以内がより好ましく、5分以上2時間以内が特に好ましい。
【0056】
ベークによって複屈折パターン作製材料中の未露光部のレタデーションが低下し、一方で先のパターン露光でレタデーション消失温度が上昇した露光部はレタデーションの低下が小さく、もしくは全く低下しないかあるいは上昇し、結果として未露光部のレタデーションが露光部のレタデーションに比較して小さくなり複屈折パターン(パターン化光学異方性層)が作製される。
光学上の効果を発揮するため、ベーク後の露光部のレタデーションは5nm以上であることが好ましく、10nm以上5000nm以下であることがより好ましく、20nm以上2000nm以下であることが最も好ましい。5nm以下では作製された複屈折パターンの目視による識別が困難となる。
【0057】
また、光学上の効果を発揮するため、複屈折パターン作製材料中の未露光部のベーク後のレタデーションはベーク前の80%以下となることが好ましく、ベーク前の60%以下となることがより好ましく、ベーク前の20%以下となることがさらに好ましく、5nm未満となることが最も好ましい。特にベーク後のレタデーションが5nm未満となった場合、そこは目視の上ではあたかも複屈折性が全く無かったかのような印象を与える。すなわち、クロスニコル下では黒が、パラニコル下あるいは偏光板+反射板の上では無色が表現できる。このようにベーク後の未露光部のレタデーションが5nm未満となる複屈折パターン作製材料は、複屈折パターンでカラー画像を表現する際、あるいは複数層の異なるパターンを積層して使用する際に有用である。
【0058】
全面熱処理の代わりに、全面露光によっても反応処理を行うことができる。この際の光源の照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。感光性樹脂層により同時に段差を形成する場合には樹脂層を硬化しうる波長域の光(例えば、365nm、405nmなど)を照射することも好ましい。具体的には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、青色レーザー等が挙げられる。好ましい露光量としては通常3〜2000mJ/cm2程度であり、より好ましくは5〜1000mJ/cm2程度、さらに好ましくは10〜500mJ/cm2程度、最も好ましくは10〜300mJ/cm2程度である。
【0059】
また、ベークもしくは全面露光を行った複屈折パターン作製材料の上に新たな複屈折パターン作製用転写材料を転写し、その後に新たにパターン露光とベーク(または全面露光)を行ってもよい。この場合、一度目及び二度目ともに未露光部である領域、一度目に露光部であり二度目に未露光部である領域、一度目に未露光部であり二度目に露光部である領域(1度目の未露光部のレタデーションはベークによりすでに消失)、一度目及び二度目ともに露光部である領域で、二度目のベーク後に残るレタデーションの値を効果的に変えることができる。この手法は、例えば互いに遅相軸の方向が異なる複屈折性を持つ二つの領域を互いに重ならない形で作りたい時に有用である。
【0060】
[仕上げ熱処理]
前節までの工程で作製された複屈折パターンの安定性をさらに高めたい場合、固定化された後にまだ残存している未反応の反応性基をさらに反応させて耐久性を増したり、材料中の不要な成分を気化あるいは燃焼させて除いたりする目的の為に仕上げ熱処理を行ってもよい。特にパターン露光と加熱全面露光、あるいはパターン状熱処理と全面露光で複屈折パターンを作製した場合には効果的である。仕上げ熱処理の温度としては180〜300℃程度の加熱を行えばよく、190〜260℃がより好ましく、200〜240℃がさらに好ましい。熱処理の時間は特に限定されないが、1分以上5時間以内が好ましく、3分以上3時間以内がより好ましく、5分以上2時間以内が特に好ましい。
【0061】
(延伸によって作製される光学異方性層)
光学異方性層は高分子の延伸によって作製されたものでもよい。光学異方性層は少なくとも1つの未反応の反応性基を持つ事が好ましいが、このような高分子を作製する際にはあらかじめ反応性基を有する高分子を延伸してもよいし、延伸後の光学異方性層にカップリング剤などを用いて反応性基を導入してもよい。延伸法によって得られる光学異方性層の特長としては、コストが安いこと、及び自己支持性を持つ(光学異方性層の形成及び維持に支持体を要しない)ことなどが挙げられる。
【0062】
(光学異方性層の後処理)
作製された光学異方性層を改質するために、様々な後処理を行ってもよい。後処理としては例えば、密着性向上の為のコロナ処理や、柔軟性向上の為の可塑剤添加、保存性向上の為の熱重合禁止剤添加、反応性向上の為のカップリング処理などが挙げられる。また、光学異方性層中の高分子が未反応の反応性基を有する場合、該反応性基に対応する重合開始剤を添加することも有効な改質手段である。例えば、カチオン性の反応性基とラジカル性の反応性基を有する液晶性化合物を、カチオン光重合開始剤を用いて重合固定化した光学異方性層に対してラジカル光重合開始剤を添加することで、後にパターン露光を行う際の未反応のラジカル性の反応性基の反応を促進することができる。可塑剤や光重合開始剤の添加手段としては、例えば、光学異方性層を該当する添加剤の溶液に浸漬する手段や、光学異方性層の上に該当する添加剤の溶液を塗布して浸透させる手段などが挙げられる。また、光学異方性層の上に他の層を塗布する際にその層の塗布液に添加剤を添加しておき、光学異方性層に浸漬させる方法もあげられる。本発明においては、この際に浸漬させる添加剤、特には光重合開始剤の種類や量により、後に述べる複屈折パターン作製材料へのパターン露光時の各領域への露光量と最終的に得られる各領域のレタデーションとの関係を調整し、所望する材料特性に近づけることが可能である。
【0063】
(光学異方性層以外の複屈折パターン部材の構成材料)
複屈折パターン部材を得るための光学異方性層を含む構造体(以降、「複屈折パターン作製材料」という。)は複屈折パターンを作製する為の材料であり、所定の工程を経る事で複屈折パターン部材を得る事ができる材料である。複屈折パターン作製材料は製造適性などの観点から、通常、フィルム、またはシート形状であるとよい。複屈折パターン作製材料は前述の光学異方性層のほかに、様々な副次的機能を付与することが可能である機能性層を有していてもよい。機能性層としては、支持体、配向層、後粘着層などが挙げられる。あるいは、複屈折パターン部材は、転写箔の形態であってもよい。
被認証体を構成する光学異方性層以外の層は潜像の形成に影響を与えないレタデーションを有するように構成されるか、それらの層が有するレタデーションを考慮して潜像形成のための光学異方性層のレタデーション値を設定することができる。
【0064】
[支持体]
複屈折パターン部材は透明支持体又は反射支持体を有していることが好ましい。支持体には特に限定はないが、反射光を用いて潜像を顕在化させる場合には後述する反射層を有する支持体または、反射機能を有する支持体を用いればよく、透過光を用いて潜像を顕在化させる場合には、潜像に影響を与えない光学特性を有する透明支持体を用いればよい。この場合、基材のレタデーションは200nm以下、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下である。
支持体の例としてはセルロースエステル(例、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート)、ポリオレフィン(例、ノルボルネン系ポリマー)、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(例、ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリエステルおよびポリスルホン、ノルボルネン系ポリマーなどのプラスチックフィルムなどが挙げられる。支持体の膜厚としては、ロールツーロールなどの連続製造に用いる場合などでは3〜500μmが好ましく、10〜200μmがより好ましいが、製造形態によって適宜選択できる。
【0065】
複屈折パターン部材は偏光板を用いない目視でも視認可能なパターンが描かれていてもよい。
また、光学異方性層を支持体中に埋め込むように作成してもよい。本発明の光学異方性は各種耐性が高いので、たとえば流延装置のエンドレスベルトまたはドラム上に光学異方性層を転写し、その上に溶融状態の支持体用素材を流延して通常のポリマーフィルムのように、賦形、圧延、延伸などの所望の工程を経てフィルム上に成形することもできる。また、2枚の支持体を用いその間に光学異方性層をはさんで被認証体を形成しても良い。
被認証体としては、光学異方性層の特性劣化を起こさない温度以下に溶融温度を有する樹脂を用いることができる。
また、延伸処理を行うと引き裂き性が出て開封性を向上させることができるなどの各種機械特性の付与が期待できるので、製品形態を考慮して既知の各種工程を製造工程に加えることができる。
【0066】
[配向層]
上記したように、光学異方性層の形成には、配向層を利用してもよい。配向層は、一般に支持体もしくは仮支持体上又は支持体もしくは仮支持体上に塗設された下塗層上に設けられる。配向層は、その上に設けられる液晶性化合物の配向方向を規定するように機能する。配向層は、光学異方性層に配向性を付与できるものであれば、どのような層でもよく、例えば、特開2008−281989号公報の段落[0094]〜[0099]の記載を参考にして形成することができる。
【0067】
[反射層]
本発明における被認証体において反射層又は反射機能を有する支持体を用いることができる。反射機能を有する支持体とは、アルミ箔など、支持体としたときに該支持体そのものに反射機能があるものをいう。反射層又は前記支持体のパターニング光学異方性層側から偏光板を介して観察することによって、複屈折パターンによる潜像を可視化することができる。
反射層としては特に限定されないが、例えばアルミや銀などの金属層が挙げられる。このような金属層を支持体や複屈折パターニング作成材料に蒸着してもよいし、金属箔を箔押ししてもよい。このように金属層を設けた被認証体は帯電防止性能やガスバリア性が向上するので、精密機器の包装材などの被認証体に好ましく用いることができる。金属層以外にはゴールドやシルバー等のインキで印刷した支持体を用いることもできる。完全鏡面である必要はなく、表面にマット加工が施されていてもよい。
また、透明な被認証体で光沢面を有する物品(箱や商品など)を包装して、反射層を設けたのと同じ効果を得ることもできる。
【0068】
[後粘着層]
複屈折パターン作製材料は、複屈折パターン部材をさらに他の物品に貼付するための後粘着層を有していてもよい。
【0069】
[2層以上の光学異方性層]
複屈折パターン作製材料は、光学異方性層を2層以上有してもよい。2層以上の光学異方性層は法線方向に互いに隣接していてもよいし、間に別の機能性層を挟んでいてもよい。2層以上の光学異方性層は互いにほぼ同等のレタデーションを有していてもよく、異なるレタデーションを有していてもよい。また遅相軸の方向が互いにほぼ同じ方向を向いていてもよく、異なる向きを向いていてもよい。
【0070】
遅相軸が同じ向きを向くように積層した2層以上の光学異方性層を有する複屈折パターン作製材料を用いる例として、大きなレタデーションを有するパターンを作製する場合が挙げられる。手持ちの光学異方性層では一層では必要とするレタデーションに足りない場合でも、二層三層と積層してからパターン露光することで大きなレタデーションや複雑なレタデーションの階調を有する領域を含むパターン化光学異方性層を容易に得ることができる。
また、遅相軸が異なる向きを向くように積層した2層以上の光学異方性層を有する複屈折パターン作製材料を用いる例として、遅相軸の向きごとに異なる潜像を配置することができる。
【0071】
(複屈折パターン作製材料の作製方法)
複屈折パターン作製材料を作製する方法としては特に限定されないが、例えば、支持体上に光学異方性層を直接形成する、複屈折パターン作製材料を転写材料として作成後に別の支持体上に転写する、自己支持性の光学異方性層として形成する、自己支持性の光学異方性層上に他の機能性層を形成する、自己支持性の光学異方性層に支持体に貼合する、などの方法が挙げられる。このうち光学異方性層の物性に制約を加えないという点からは支持体上に光学異方性層を直接形成する方法と転写材料を用いて支持体上に光学異方性層を転写する方法が好ましく、さらに支持体に対する制約が少ない点から転写材料を用いて支持体上に光学異方性層を転写する方法がより好ましく用いることができる。
【0072】
光学異方性層を2層以上含む複屈折パターン作製材料を作製する方法としては、複屈折パターン作製材料上に光学異方性層を直接形成する、別の複屈折パターン作製材料を転写材料として用いて複屈折パターン作製材料上に光学異方性層を転写するなどの方法が挙げられる。
【0073】
以下に、転写材料として用いられる複屈折パターン作製材料について説明する。なお、転写材料として用いられる複屈折パターン作製材料は、後述の実施例などにおいて「複屈折パターン作製用転写材料」という場合がある。
【0074】
[仮支持体]
転写材料として用いられる複屈折パターン作製材料は仮支持体上に形成されることが好ましい。仮支持体は、透明でも不透明でもよく特に限定はない。仮支持体を構成するポリマーの例には、セルロースエステル(例、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート)、ポリオレフィン(例、ノルボルネン系ポリマー)、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(例、ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリエステルおよびポリスルホン、ノルボルネン系ポリマーが含まれる。製造工程において光学特性を検査する目的には、透明支持体は透明で低複屈折の材料が好ましく、低複屈折性の観点からはセルロースエステルおよびノルボルネン系が好ましい。市販のノルボルネン系ポリマーとしては、アートン(商品名、JSR(株)製)、ゼオネックス、ゼオノア(いずれも商品名、日本ゼオン(株)製)などを用いることができる。また安価なポリカーボネートやポリエチレンテレフタレート等も好ましく用いられる。
【0075】
[転写用接着層]
転写材料は転写接着層を有しても良い。転写接着層としては、透明で着色がなく、十分な転写性を有していれば特に制限はなく、粘着剤による粘着層、感圧性樹脂層、感熱性樹脂層、感光性樹脂層などが挙げられる。例えば、特開2008−281989号公報の段落[0100]〜[0119]に記載の粘着剤、感圧性樹脂層、感光性樹脂層を用いることができる。
ただし、潜像を顕在化させる場合に、偏光が転写用接着層を経由する場合には、転写用接着層の光学特性として、支持体の項で述べたように潜像に影響を与えない、即ち等方性か、潜像の顕在化に影響を与えないレタデーション値を有することが好ましい。
【0076】
(力学特性制御層)
転写材料の、仮支持体と光学異方性層の間には、力学特性や凹凸追従性をコントロールするために力学特性制御層を形成することが好ましい。力学特性制御層としては、例えば、特開2008−281989号公報の[0120]に記載のものを用いることができる。
【0077】
[中間層]
転写材料においては、複数の塗布層の塗布時、および塗布後の保存時における成分の混合を防止する目的から、中間層を設けることが好ましい。該中間層としては、特開平5−72724号公報に「分離層」として記載されている、酸素遮断機能のある酸素遮断膜や、前記光学異方性形成用の配向層を用いることが好ましい。これらの内、特に好ましいのは、ポリビニルアルコールもしくはポリビニルピロリドンとそれらの変性物の一つもしくは複数を混合してなる層である。前記熱可塑性樹脂層や前記酸素遮断膜、前記配向層を兼用することもできる。
【0078】
[剥離層]
転写材料として用いられる複屈折パターン作製材料は仮支持体の上に剥離層を有してもよい。剥離層は仮支持体と剥離層間の、あるいは剥離層とその直上層の間の密着力を制御し、光学異方性層を転写した後の仮支持体の剥離を助ける役目を負う。また前述の他の機能層、例えば配向層、力学特性制御層、中間層などが剥離層としての機能を有してもよい。
【0079】
[表面保護層]
複屈折パターン部材の表面には、汚染や損傷から保護する為に防汚性やハードコート性を有する表面保護層を設けることが好ましい。表面保護層の性質は特に限定されず既知の素材を用いることができ、前述の(仮)支持体や他の機能性層と同じか又は類似の材料からなってもよい。
表面保護層の材料としては例えば、ポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素樹脂からなる防汚層や多官能アクリレートを含んでなるアクリル樹脂で形成されるハードコート層などが挙げられる。なお、ハードコート層上に防汚層を配置したり、光学異方性層やその他の機能性層上に保護層を配置しても良い。
【0080】
[その他の機能性層]
上記の機能性層以外にも例えば、複屈折パターン部材を剥離して再利用する行為を不可能とするため、破壊もしくは光学特性を変化させる機能層や、非可視光で顕在化する潜像技術など他のセキュリティ技術を組み合わせるための潜像層などの多様な機能性層と組み合わせることができる。被認証体を構成するその他の層は潜像の形成に影響を与えないレタデーション有するように構成されるか、前述のようにそれらの層のレタデーションを考慮して、あるいは光学異方性層の潜像形成ためのレタデーション値を考慮して設定することができる。
【0081】
光学異方性層、感光性樹脂層、転写接着層および所望により形成される配向層、熱可塑性樹脂層、力学特性制御層および中間層等の各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、スリットコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書)により、塗布により形成することができる。二以上の層を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許2761791号、同2941898号、同3508947号、同3526528号の各明細書および原崎勇次著、コーティング工学、253頁、朝倉書店(1973)に記載がある。
また、光学異方性層上に塗布する層(例えば転写接着層)の塗布の際には、その塗布液に可塑剤や光重合開始剤を添加することにより、それらの添加剤の浸漬による光学異方性層の改質を同時に行ってもよい。
【0082】
(転写材料を被転写材料上に転写する方法)
転写材料を支持体等の被転写材料上に転写する方法については特に制限されず、被転写材料上に上記光学異方性層を転写できれば特に方法は限定されない。例えば、フィルム状に形成した転写材料を、転写接着層面を被転写材料表面側にして、ラミネータを用いて加熱および/又は加圧したローラー又は平板で圧着又は加熱圧着して、貼り付けることができる。例えば、特開平7−110575号公報、特開平11−77942号公報、特開2000−334836号公報、特開2002−148794号公報に記載のラミネータおよびラミネート方法が挙げられるが、低異物の観点で、特開平7−110575号公報に記載の方法を用いるのが好ましい。
被転写材料としては、支持体、支持体及び他の機能性層を含む積層体、又は複屈折パターン作製材料が挙げられる。
【0083】
(転写に伴う工程)
複屈折パターン作製用転写材料を被転写材料上に転写した後、仮支持体は剥離してもよく、しなくともよい。ただし剥離しない場合には仮支持体がその後のパターン露光に適した透明性やベークに耐え得る耐熱性などを有していることが好ましい。また、光学異方性層と一緒に転写される不要の層を除去する工程があってもよい。例えば配向層としてポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンの共重合体を用いた場合には、弱アルカリ性の水系現像液での現像により配向層より上の層の除去が可能である。現像の方式としては、パドル現像、シャワー現像、シャワー&スピン現像、ディップ現像等、公知の方法を用いることができる。現像液の液温度は20℃〜40℃が好ましく、また、現像液のpHは8〜13が好ましい。
【0084】
また転写後、必要に応じて仮支持体の剥離や不要層の除去を行った後の表面に他の層を形成してもよい。あるいは必要に応じて仮支持体の剥離や不要層の除去を行った後の表面に転写材料を転写してもよい。この際に用いる転写材料は先に転写した転写材料と同じでもよく、異なってもよい。また、先に転写した転写材料の光学異方性層の遅相軸と新たに転写する転写材料の光学異方性層と遅相軸は互いに同じ向きでもよく、異なる向きでもよい。前述のように、複数層の光学異方性層を転写する事は遅相軸の向きを揃えた複数層の光学異方性層を積層した大きなレタデーションを持つ複屈折パターンや遅相軸の向きの異なる複数層を積層した特殊な複屈折パターンの作製などに有用である。
【0085】
[転写のタイミング]
複屈折パターンの作製において転写を行う場合、そのタイミングは任意である。すなわち、例えば、少なくとも以下の工程:
・液晶性化合物を含む溶液を塗布乾燥させる工程;
・熱処理または電離放射線照射によって前記反応性基のうちの一種を反応させる工程;
・再度熱処理または電離放射線照射を行い前記相異なる反応性基のうち前記工程で反応させたものと異なる反応性基も含めて反応させる工程;及び
・光学異方性層中に残存する未反応の反応性基を反応もしくは失活させる工程(例えば50℃以上400℃以下のベーク)
をこの順に含む複屈折パターンの作製において転写を行う場合、転写は液晶性化合物を含む溶液を塗布乾燥させる工程の直後に行ってもよいし、熱処理または電離放射線照射によって前記反応性基のうちの一種を反応させる工程の後に行ってもよいし、残存する未反応の反応性基を反応もしくは失活させる工程の直前もしくは直後に行ってもよい。
【0086】
この場合、タイミングによっては使用する材料に制約がかかることもある。例えば、塗布乾燥の直後に転写を行う場合には未反応の状態で転写に耐えるような液晶性化合物でなければならない。また他に例えば、残存する未反応の反応性基を反応もしくは失活させる工程としてベークを用いてかつその後に転写を行う場合には、転写までの仮支持体として用いている材料がベークに耐える材料でなければならない。広範な材料の使用を可能にする観点からは、転写は熱処理または電離放射線照射によって前記反応性基のうちの一種を反応させる工程より後であることが好ましい。
【0087】
[パターン形成のタイミング]
複屈折パターンの作製においてパターン状の熱処理または電離放射線照射を行うタイミングは、熱処理または電離放射線照射を行う工程のいずれであってもよい。すなわち、例えば、少なくとも以下の工程:
・液晶性化合物を含む溶液を塗布乾燥させる工程;
・熱処理または電離放射線照射によって前記反応性基のうちの一種を反応させる工程;及び
・再度熱処理または電離放射線照射を行い前記相異なる反応性基のうち前記工程で反応させたものと異なる反応性基も含めて反応させる工程
をこの順に含む複屈折パターンの作製において、熱処理または電離放射線照射によって前記反応性基のうちの一種を反応させる工程がパターン状に行われてもよいし、再度熱処理または電離放射線照射を行い前記相異なる反応性基のうち前記工程で反応させたものと異なる反応性基も含めて反応させる工程がパターン状に行われてもよいし、その両方の工程がパターン状に行われてもよい。
【0088】
一方で複屈折パターンの作製において転写を行う場合、パターン状の熱処理または電離放射線照射を行うタイミングによっては使用する材料に制約がかかることもある。例えば、熱処理または電離放射線照射によって前記反応性基のうちの一種を反応させる工程をパターン状に行いかつその直後に転写を行う場合には未反応の領域が存在する状態で転写に耐えるような液晶性化合物で無ければならない。広範な材料の使用を可能にする観点からは、複屈折パターンの作製において途中に転写を伴う場合、転写を行うより前に一度はパターン状でない熱処理または電離放射線照射が行われている事が好ましい。
【0089】
さらに一方で、転写をした上で転写後の基材の形状や下地に合わせてパターン形成を行いたい場合には、先に熱処理または電離放射線照射によって前記反応性基のうちの一種を反応させる工程を非パターン状に(全面に)行った後に転写を行い、その後に再度熱処理または電離放射線照射を行い前記相異なる反応性基のうち前記工程で反応させたものと異なる反応性基も含めて反応させる工程をパターン状に行うことが好ましい。以下はそのような場合を例に説明する。
【0090】
[複屈折パターン部材を用いた物品]
複屈折パターン作製材料に上述のように露光及びベークを行って得られる本発明における被認証体は通常はほぼ無色透明である一方で、二枚の偏光板で挟まれた場合、あるいは反射層と偏光板とで挟まれた場合においては特徴的な明暗、あるいは調整されたレタデーションから干渉によって得られる所望の色を示し容易に目視で認識できる。この性質を生かして、上記の製造方法により得られる被認証体は、例えば偽造防止手段として利用することができる。すなわち、本発明における被認証体、特に反射層を含む被認証体は通常は目視ではほぼ不可視な一方で、偏光板を介することで容易に多色の画像が識別可能となる。複屈折パターンは偏光板を介さずにコピーしても何も映らず、逆に偏光板を介してコピーすると永続的な、つまりは偏光板無しでも目視可能なパターンとして残る。従って複屈折パターンの複製は困難である。このような複屈折パターンの作製法は広まっておらず、材料も特殊であることから、偽造防止手段として用いるに適していると考えられる。
また、偽造防止手段以外に緻密及びまたは多色を示すことができる潜像を利用した情報や画像の表示媒体などの活用が考えられる。
【0091】
本発明のビューワを用いる複屈折パターンの認証方法の具体的態様を以下に説明する。
本発明のビューワは、複屈折パターンの上に概ね平行になるように配置させる。このとき、重ねてもよいし、パターンの視認性を損なわない範囲で、間隔をあけてもよい。この状態で、概ね法線方向から、複屈折パターンを視認する。
【0092】
本発明の別の好ましい実施態様は、異なるビューワを複数有する複屈折パターン認証用キットであって、前記複数のビューワの少なくとも1枚が上記の本発明のビューワである複屈折パターン認証用キットである。例えば、厚紙に左右の窓を設け、その窓の少なくとも一方に上記の本発明のビューワを貼り付けることにより形成することができる。この場合、本発明のビューワの光学異方性層を、認証する被認証体側にくるように形成する。また、一つのビューワを上記の本発明のビューワにより形成した場合、他のビューワは、上記の本発明のビューワで形成しても良いし、従来の偏光板をそのまま用いてもよい。複数のビューワを有するキットを用いることで、異なるカラーパターンを連続的に認証できるので、1枚のビューワにより真偽判定を行うよりも、確実に真偽判定を行うことができるようになる。
【0093】
本発明の複屈折パターン認証用キットは、ビューワが、互いに光軸、及び/または、被認証体側の光学異方性層のレタデーションが異なることが好ましい。例えば、一方のビューワの偏光板の吸収軸の方向と、他方のビューワの偏光板の吸収軸の方向が異なるように貼り付けることで異なるビューワが互いに光軸が異なるものとすることができる。
このように、複数のビューワは、互いに光軸、及び/または、被認証体側の光学異方性層のレタデーションが異なることで、それぞれ色の異なる潜像を可視化させることができる。
複屈折パターン認証用キットの異なるビューワの数は、特に限定はないが2〜4であることが好ましい。
【0094】
本発明の別の好ましい実施態様は、被認証体の一部に、上記のビューワを有する真正性認証媒体である。例えば、商品券などの被認証体の一部領域を上記の複屈折パターンを設け、被認証体の他の領域に上記の本発明のビューワを設けたものが挙げられる。このようなビューワ一体型複屈折パターンは、例えば、被認証体を折り曲げ、複屈折パターンとビューワを、ビューワの光学異方性層が複屈折パターン側になるように重ねることで、被認証体内の複屈折パターンに認識することができ、いつでも、どこでも、誰でも、例えば、被認証体の真正性を判定することが可能である。
【0095】
本発明の別の実施態様は、上記のビューワ、または複屈折パターン認証用キットを用いた、真正性認証方法である。例えば、位相差フィルムを複屈折パターン側にして、ビューワまたは認証用キットを複屈折パターンにかざして観察する。このように観察することで、軸パターニングされた複屈折パターンが多色に見える。偏光板を回転させるという面倒な作業なく、真正性を認証し、確認できる。例えば、真性品には前記複屈折パターンが形成されている被認証体を、上記のビューワ、または上記のキットを介して観察し、3色以上からなる潜像を確認した場合に、該被認証体を真性品と認証することができる。
【実施例】
【0096】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、本実施例において、レタデーションはKOBRA WR(商品名、王子計測機器(株)製)において波長550nmの光をフィルム法線方向に入射させて測定された値である。
【0097】
参考例1
[複屈折パターンの作製]
(配向層用塗布液AL−1の調製)
下記の組成物を調製し、孔径30μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、配向層用塗布液AL−1として用いた。
──────────────────────────────────―
配向層用塗布液AL−1組成(質量%)
──────────────────────────────────―
液晶配向剤(AL−1−1) 1.0
テトラヒドラフラン 99.0
──────────────────────────────────―
【0098】
【化1】
【0099】
(配向層用塗布液AL−2の調製)
下記の組成物を調製し、孔径30μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、配向層用塗布液AL−2として用いた。
──────────────────────────────────―
配向層用塗布液AL−2組成(質量%)
──────────────────────────────────―
ポリビニルアルコール(PVA205(商品名)、クラレ(株)製)
3.21
ポリビニルピロリドン(Luvitec K30(商品名)、BASF社製)
1.48
蒸留水 52.10
メタノール 43.21
──────────────────────────────────―
【0100】
(光学異方性層用塗布液LC−1の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、光学異方性層用塗布液LC−1として用いた。
──────────────────────────────────―――――
光学異方性層用塗布液LC−1組成(質量%)
──────────────────────────────────―――――
Paliocolor LC242(BASF社製) 31.53
IRGACURE907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製) 0.99
カヤキュアDETX−S(日本化薬(株)製) 0.33
メガファックF−176PF(商品名、大日本インキ化学工業(株)製) 0.15
メチルエチルケトン 67.00
──────────────────────────────────―――――
【0101】
(光学異方性層用塗布液LC−2の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、光学異方性層用塗布液LC−2として用いた。
LC−1−1は2つの反応性基を有する液晶化合物であり、2つの反応性基の片方はラジカル性の反応性基であるアクリル基、他方はカチオン性の反応性基であるオキセタン基である。
LC−1−2は配向制御の目的で添加する円盤状の化合物である。Tetrahedron Lett.誌、第43巻、6793頁(2002)に記載の方法に準じて合成した。
──────────────────────────────────―――――
光学異方性層用塗布液LC−2組成(質量%)
──────────────────────────────────―――――
棒状液晶(LC−1−1) 32.59
水平配向剤(LC−1−2) 0.02
カチオン系光重合開始剤
(CPI100−P(商品名)、サンアプロ株式会社製) 0.66
重合制御剤
(IRGANOX1076(商品名)、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
0.07
メチルエチルケトン 66.66
──────────────────────────────────―――――
【0102】
【化2】
【0103】
(保護層用塗布液PL−1の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、保護層用塗布液PL−1として用いた。
──────────────────────────────────――
保護層用塗布液PL−1組成(質量%)
──────────────────────────────────――
ベンジルメタクリレート/メタクリル酸/メタクリル酸メチル
=35.9/22.4/41.7モル比のランダム共重合物
(重量平均分子量3.8万) 8.05
KAYARAD DPHA(商品名、日本化薬(株)製) 4.83
ラジカル光重合開始剤(2−トリクロロメチル−5−(p−スチリルスチリル)
1,3,4−オキサジアゾール) 0.12
ハイドロキノンモノメチルエーテル 0.002
メガファックF−176PF(商品名、大日本インキ化学工業(株)製)
0.05
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 34.80
メチルエチルケトン 50.538
メタノール 1.61
──────────────────────────────────――
【0104】
(パターン露光用フォトマスク)
図4(A)〜(E)および(A´)〜(D´)の平面図に示す、フォトマスク11を本実施例に用いた。図4(A)はフォトマスクA、図4(B)はフォトマスクB、図4(C)はフォトマスクC、図4(D)はフォトマスクD、図4(E)はフォトマスクE、図4(A´)はフォトマスクA´、図4(B´)はフォトマスクB´、図4(C´)はフォトマスクC´、および図4(D´)はフォトマスクD´をそれぞれ示す。各フォトマスクは厚さ2.1mmの、基材が石英ガラスからなるエマルジョンマスクで、図4(A)〜(D)および(A´)〜(D´)では、黒く塗られた領域の365nmの透過率が0%、白い部分の365nmの透過率が92%である。
また、フォトマスクEは、文字「A」、文字「B」、文字「C」、背景の4つのエリアからなる濃度マスクである。各々の領域のλ=365nmの紫外光に対する透過率を表Aに示す。
表A
――――――――――――
領域 透過率
――――――――――――
文字A 20%
文字B 33%
文字C 92%
背景 0%
――――――――――――
【0105】
(複屈折パターンBP−1の作製)
厚さ50μmのポリエチレンテレフタラートフィルム(ルミラーL−25T60(商品名)、東レ(株)製)の上にアルミニウムを60nm蒸着した。次いで、アルミニウムの上に、ワイヤーバーを用いて配向層用塗布液AL−1を塗布、乾燥した。乾燥膜厚は0.1μmであった。
得られた有機膜の上にフォトマスクAを配置し、紫外線照射器(HOYA CANDEO OPTRONICS社製、EXECURE3000)より出射される紫外光より出射される光を、直線偏光板を介して、支持体に対して垂直の方向から100mW/cm2(365nm)の強度で1秒間照射した。このとき、直線偏光板の吸収軸の方位角がフォトマスクの長辺に対して0°となるように偏光板を配置した。
続いて、フォトマスクをB、C、Dと順に変更し、直線偏光板の吸収軸がそれぞれフォトマスクの長辺に対して45°、90°、135°となるように偏光板を配置した上で、同様に紫外線を照射した。
次いで、ワイヤーバーを用いて、光学異方性層用塗布液LC−1を塗布、膜面温度105℃で2分間乾燥して液晶相状態とした後、空気下にて160mW/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて照度400mW/cm2、照射量400mJ/cm2の紫外線を照射してその配向状態を固定化して厚さ0.9μmの光学異方性層を形成することで、図5の平面図に示すパターンの、BP−1を作製した。
BP−1の文字A12、文字B13、文字C14、背景15の遅相軸はそれぞれ、BP−1の長辺に対して0°、45°、90°、135°であった。また、これらの領域のレタデーションはいずれも135nm(λ/4)であった。
【0106】
(複屈折パターン作製用材料TR−1の作製)
厚さ100μmの易接着ポリエチレンテレフタレートフィルム(コスモシャインA4100、東洋紡績(株)製)の仮支持体の上に、ワイヤーバーを用いて順に、配向層用塗布液AL−2を塗布、乾燥した。乾燥膜厚は0.5μmであった。次いで、配向層をMD方向にラビングし、ワイヤーバーを用いて光学異方性層用塗布液LC−2を塗布、膜面温度105℃で2分間乾燥して液晶相状態とした後、空気下にて160mW/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を照射してその配向状態を固定化して厚さ3.1μmの光学異方性層を形成して光学異方性層塗布サンプルTRC−1を作製した。この際用いた紫外線の照度はUV−A領域(波長320nm〜400nmの積算)において100mW/cm2、照射量はUV−A領域において80mJ/cm2であった。光学異方性層は20℃で固体の高分子で、耐MEK(メチルエチルケトン)性を示した。
次いで、光学異方性層の上に保護層用塗布液PL−1を塗布、乾燥して1.2μmの保護層を形成し、複屈折パターン作製用転写材料TR−1を作製した。
【0107】
(複屈折パターン転写材料TR−A、B、C、Dの作製)
フォトマスクA´、B´、C´、D´はいずれも同じ大きさである。TR−1を、フォトマスクと同じ大きさに4枚切り出した。このとき、それぞれ、長辺がMD方向、長辺がMD方向から135度方向、長辺がMD方向から90度方向、長辺がMD方向から45度方向となるように切り出した。長辺がMD方向となるように切り出したTR−1の上にフォトマスクA´を重ねた状態で、ミカサ社製M−3Lマスクアライナーを用いてピーク波長が365nmの光を露光照度6.25mW/cm2で10秒間照射して、複屈折パターン転写材料TR−Aを作製した。
同様に、長辺がMD方向から135度方向となるように切り出したTR−1、長辺がMD方向から90度方向となるように切り出したTR−1、長辺がMD方向から45度方向となるように切り出したTR−1の上に、それぞれ、フォトマスクB´、C´、D´を用いて露光して、複屈折パターン転写材料TR−B、C、Dを作製した。
【0108】
(複屈折パターンBP−2の作製)
アルミニウムを60nm蒸着した、厚さ25μmのポリイミドフィルム(カプトン200H、東レ・デュポン(株)製)を用意した。複屈折パターン転写材料TR−Aをラミネータ((株)日立インダストリイズ製(LamicII型))を用い、100℃で2分間加熱した上記ポリイミドフィルムのアルミ蒸着面に、ゴムローラー温度130℃、線圧100N/cm、搬送速度1.4m/分でラミネートした。ラミネート後、仮支持体を剥離した。この上に、同様の手法で複屈折パターン転写材料TR−B、C、Dをラミネートした。
その後、さらに200℃のクリーンオーブンで30分間のベークを行って、図5の平面図に示すのと同様のパターンの、複屈折パターンBP−2を作製した。
BP−2の文字A12、文字B13、文字C14、背景15の遅相軸はそれぞれ、BP−2の長辺に対して0°、45°、90°、135°であった。また、これらの領域のレタデーションはいずれも270nm(λ/2)であった。
【0109】
(複屈折パターンBP−3の作製)
支持体を、サンドブラスト処理した厚さ50μmのポリエチレンテレフタラートフィルム(ルミラーL−25T60(商品名)、東レ(株)製)にアルミニウムを60nm蒸着したものとし、光学異方性層の膜厚を2.8μmとする以外は、複屈折パターンBP−1と同様にして、図5の平面図に示すのと同様のパターンの、複屈折パターンBP−3を作製した。
BP−3の文字A12、文字B13、文字C14、背景15の遅相軸はそれぞれ、BP−3の長辺に対して0°、45°、90°、135°であった。また、これらの領域のレタデーションはいずれも420nm(3λ/4)であった。
【0110】
(複屈折パターンBP−4の作製)
厚さ50μmのポリイミドフィルム(カプトン200H、東レ・デュポン(株)製)の上にアルミニウムを60nm蒸着し、その上に、ワイヤーバーを用いて順に、配向層用塗布液AL−2を塗布、乾燥した。乾燥膜厚は0.5μmであった。次いで、配向層をMD方向にラビングし、ワイヤーバーを用いて光学異方性層用塗布液LC−2を塗布、膜面温度105℃で2分間乾燥して液晶相状態とした後、空気下にて160mW/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を照射してその配向状態を固定化して厚さ3.5μmの光学異方性層を形成して光学異方性層塗布サンプルTRC−2を作製した。この際用いた紫外線の照度はUV−A領域(波長320nm〜400nmの積算)において100mW/cm2、照射量はUV−A領域において80mJ/cm2であった。光学異方性層は20℃で固体の高分子で、耐MEK(メチルエチルケトン)性を示した。
次いで、光学異方性層の上に保護層用塗布液PL−1を塗布、乾燥して1.2μmの保護層を形成した。このフィルムに対して、ミカサ社製M−3LマスクアライナーとフォトマスクEを用いて露光照度6.25mW/cm2で8.2秒間の露光を行った。このとき、フィルムのMD方向がフォトマスクの横軸に対し、45°となるように配置した。
その後、さらに200℃のクリーンオーブンで30分間のベークを行い、最後に通常の印刷を行った上で、図5の平面図に示すのと同様のパターンの、複屈折パターンBP−4を作製した。
BP−4の文字A12、文字B13、文字C14、背景15のレタデーションはそれぞれ、143nm、202nm、297nm、3nmであった。また、これらの領域の遅相軸はいずれも45°方向であった。
【0111】
比較例1
(ビューワ1)
図6の概略断面図に示す偏光板21(サンリッツ社製、スーパーハイコントラスト直線偏光板)をビューワ1とした。ビューワ1の位相差(レタデーション)は0である。
【0112】
実施例1
(ビューワ2)
厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士フイルム製、フジタックTD80)の上に、ワイヤーバーを用いて配向層用塗布液AL−2を塗布、乾燥した。乾燥膜厚は0.5μmであった。次いで、配向層をMD方向にラビングし、ワイヤーバーを用いて、光学異方性層用塗布液LC−1を塗布、膜面温度105℃で2分間乾燥して液晶相状態とした後、空気下にて160mW/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて照度400mW/cm2、照射量400mJ/cm2の紫外線を照射してその配向状態を固定化して厚さ0.9μmの光学異方性層を形成することで、位相差フィルムを作製した。
位相差フィルムの遅相軸はMD方向であり、レタデーションは135nm(λ/4)であった。
図7の概略断面図に示すように、サンリッツ社製、スーパーハイコントラスト直線偏光板21の上に、位相差フィルム22を、その遅相軸を偏光板の吸収軸から反時計回りに45度回転させるようにして、粘着剤を用いて貼り合わせ、これをビューワ2とした。
【0113】
実施例2
(ビューワ3)
図8の概略断面図に示すように、サンリッツ社製、スーパーハイコントラスト直線偏光板21の上に、レタデーションが275nm(λ/2)の一軸延伸フィルム23を、その遅相軸を偏光板の吸収軸から反時計回りに45度回転させるようにして、粘着剤を用いて貼り合わせ、これをビューワ3とした。
【0114】
実施例3
(ビューワ4)
ビューワ2において、光学異方性層の膜厚を2.8μmとする以外は、ビューワ2と同様にして、ビューワ4を作製した。このとき、位相差フィルムのレタデーションは420nm(3λ/4)であった。
【0115】
実施例4
(複屈折パターン認証用キット1)
図9の平面図に示すように、2×2cmの窓31,32を2つ開けた縦4cm、横7.5の板紙33(OKボール(商品名)、王子製紙製、310g/m2)を用意した。左側の窓31には、図8に示す実施例2のビューワ3を、一軸延伸フィルム23側が下になるように、かつ、偏光板21の吸収軸が板紙33の長辺に対して90°方向となるように貼り付けた。また、右側の窓32には、ビューワ3を、一軸延伸フィルム23側が下になるように、かつ、偏光板31の吸収軸が、板紙33の長辺に対して45°方向となるように貼り付け、複屈折パターン認証用キット1を得た。
【0116】
実施例5
(複屈折パターン認証用キット2)
実施例4と同様に、2×2cmの窓31,32を2つ開けた縦4cm、横7.5cmの板紙33を用意した。その内、左側の窓31には、図8に示す実施例2のビューワ3を、一軸延伸フィルム23側が下になるように、かつ、偏光板21の吸収軸が板紙33に対して90°方向となるように貼り付けた。また、右側の窓には、図6に示す比較例1のビューワ1を、偏光板21の吸収軸が板紙33の長辺に対して90°方向となるように貼り付けた。
【0117】
試験例1
通常の目視では、反射性の銀色のフィルムである複屈折パターンBP−1を、比較例1のビューワ1を、その吸収軸が複屈折パターンBP−1の長辺に対して90°方向となるように配置して観察した。その結果文字「A」と「C」が明るく、それ以外の部分は暗く見えた。ビューワ1を45°回転させると、明暗が反転した。偏光板を回転させることによって、真偽判定が可能であるが、大量に真偽判定をする際には、効率的ではない。
【0118】
試験例2
通常の目視では、反射性の銀色のフィルムである複屈折パターンBP−2を、比較例1のビューワ1を用いて観察した。その結果、文字「A」と「C」が明るく、それ以外の部分は緑色に見えた。ビューワ1を45°回転させると、色が反転した。偏光板を回転させることによって、真偽判定が可能であるが、大量に真偽判定をする際には、効率的ではない。
【0119】
試験例3
複屈折パターンBP−3は、これを比較例1のビューワ1を用いて観察した。その結果、文字「A」と「C」が明るく、それ以外の部分は紫色に見えた。ビューワ1を45°回転させると、色が反転した。偏光板を回転させることによって、真偽判定が可能であるが、大量に真偽判定をする際には、効率的ではない。
【0120】
試験例4
複屈折パターンBP−1を、実施例1のビューワ2を用いて、位相差フィルムを複屈折パターンBP−1側にして観察した。その結果、文字「A」と文字「C」は薄緑色、文字「B」は緑色、背景は灰色に見え、3色のパターンを視認することができた。
【0121】
試験例5
複屈折パターンBP−1を、実施例2ビューワ3を用いて、位相差フィルムを複屈折パターンBP−1側にして観察した。その結果、文字「A」と文字「C」は灰色、文字「B」は紫色、背景は紺色に見え、3色のパターンをはっきりと視認することができた。
【0122】
試験例6
複屈折パターンBP−2を、実施例2のビューワ3を用いて、位相差フィルムを複屈折パターンBP−2側にして観察した。その結果、文字「A」と文字「C」は薄黄緑色、文字「B」は緑色、背景は灰色に見え、3色のパターンを視認することができた。
【0123】
試験例7
複屈折パターンBP−3を、ビューワ3を用いて、位相差フィルムを複屈折パターンBP−3側にして観察した。その結果、文字「A」と文字「C」は薄黄緑色、文字「B」は緑色、背景は灰色に見え、3色のパターンをはっきりと視認することができた。
【0124】
試験例8
複屈折パターンBP−1を、実施例3のビューワ4を用いて、位相差フィルムを複屈折パターンBP−1側にして観察した。その結果すると、文字「A」と文字「C」は灰色、文字「B」は緑色、背景は黄緑色に見え、3色のパターンを視認することができた。
【0125】
試験例1〜8の結果をまとめて、表1に示す。
【0126】
【表1】
【0127】
表1中、識別性の×は「潜像が2色からなるため、識別性が低い」を意味し、○は「潜像が3色からなり識別性が高いが、その内二色は色相が近い」を意味し、◎は「潜像が3色からなり、その3色いずれも色相が異なるため識別性に非常に優れる」を意味する。
表1に示されるように、比較例1のビューワ1では、2色のパターンしか視認できず、ビューワを回転させなければ真偽判定ができないが、実施例1〜3のビューワ2〜4を用いると偏光板を回転しなくても、3色のパターンを視認でき、真偽判定が可能となる。特に、ビューワ3を用いた場合は、3色の色相が大きく異なるため、視認性が更に優れる。
【0128】
試験例9
実施例4の複屈折パターン認証用キット1を用いて、BP−1を観察した。左側のビューワで観察した場合には、紺色の背景に、灰色の文字「A」、「C」が、紫色の「B」の文字が観察されるが、右側のビューワで観察した場合には、透明の背景に、紫色の文字「A」、及び、紺色の文字「C」が観察された。
【0129】
試験例10
実施例5の複屈折パターン認証用キット2を用いて、BP−1を観察した。左側のビューワで観察した場合には、紺色の背景に、灰色の文字「A」、「C」が、紫色の「B」の文字が観察されるが、右側のビューワで観察した場合には、紺色の背景に、灰色の文字「A」、及び「C」が観察された。
【0130】
試験例9および10に示されるように、複数のビューワを有するキットを用いることで、さらに確実に真偽判定を行うことができるようになる。
【0131】
試験例11
通常の目視では、印刷の施された反射性の銀色のフィルムである複屈折パターンBP−4を、比較例1のビューワ1を用い、その吸収軸がBP−4の長辺に対し90°方向となるように配置して観察した。その結果、文字「A」は紺色、文字「B」は黄緑色、文字「C」は黄色、背景は灰色に見えた。
【0132】
試験例12
複屈折パターンBP−4を、ビューワとして実施例1のビューワ2を用いた以外は、試験例11と同様に観察した。その結果、文字「A」、文字「B」、文字「C」、背景のそれぞれの領域は、黄緑色、橙色、紫色、紺色と色が変化した。
【0133】
試験例13
複屈折パターンBP−4を、実施例2のビューワ3を用いた以外は、試験例11と同様に観察した。その結果、文字「A」、文字「B」、文字「C」、背景のそれぞれの領域は、紫色、青緑色、黄色、緑色となった。
【0134】
試験例11〜13に示されるように、ビューワ1でもある程度の識別性を有しているが、ビューワ2〜3を用いると、更に、多彩な色表現が可能となり、より、識別性が向上した。
【0135】
実施例6
(ビューワ一体型複屈折パターン)
板紙41に、図10の平面図に示すように、印刷を行った。図中、42で示された領域の背景は銀インキで印刷されており、金額の部分「¥10,000」は赤色で印刷されている。
次いで、領域42の上に、配向層用塗布液AL−1を塗布、乾燥した。この上に、図11(a)の平面図に示すフォトマスク44(石英ガラスエマルジョンマスクに、「genuine」の文字を透過部としたもの)を配置し、紫外線照射器(HOYA CANDEO OPTRONICS社製、EXECURE3000)より出射される紫外光より出射される光を、直線偏光板を介して、支持体に対して垂直の方向から100mW/cm2(365nm)の強度で1秒間照射した。このとき、直線偏光板の吸収軸の方位角が板紙41の長辺に対し45°となるように偏光板を配置した。
続いて、フォトマスクを図11(b)に示すフォトマスク45(石英ガラスエマルジョンマスクに、「壱万円」の文字を透過部としたもの)、図11(c)に示すフォトマスク46(石英ガラスエマルジョンマスクに、「genuine」および「壱万円」の文字を透過部としたもの)と順に変更し、直線偏光板の吸収軸が板紙41の長辺に対しそれぞれ90°、135°となるように偏光板を配置した上で、同様に紫外線を照射した。なお、フォトマスク44〜46の平面外形は、領域42の外形とほぼ同一である。
更に、その上に、光学異方性層用塗布液LC−1を塗布、膜面温度105℃で2分間乾燥して液晶相状態とした後、空気下にて160mW/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて照度400mW/cm2、照射量400mJ/cm2の紫外線を照射してその配向状態を固定化して厚さ0.9μmの光学異方性層を形成した。
得られたパターニンにおける、文字「genuine」、文字「壱万円」、背景の遅相軸はそれぞれ、板紙41の長辺に対し45°、90°、135°であった。また、これらの領域のレタデーションはいずれも135nmであった。
その後、図10に示す領域43を打ち抜いた。その部分に、図8に示す実施例2のビューワ3を、一軸延伸フィルム23が手前側に、また、偏光板の吸収軸が90°方向となるように貼り付けた。このようにして、ビューワ一体型複屈折パターンBP−5を作製した。
【0136】
試験例14
図10に示す商品券の領域42は、通常の目視では、銀色の下地印刷の上に赤い文字で「¥10,000」と書かれているように見える。しかし、商品券の右下の部分をつまみ、窓の部分、すなわち、領域43を、領域42に重ねてみると、「¥10,000」の上に、紫色の文字で「genuine」、「¥10,000」の下には、灰色の文字で、「壱万円」という文字が浮かび上がった、このとき、背景の部分は紺色であった。ビューワ一体型複屈折パターンBP−5は、別途、ビューワを用意しなくても、商品券内にビューワが埋め込まれているため、いつでも、どこでも、誰でも、商品券の真正性を判定することが可能である。
【符号の説明】
【0137】
1 偏光板
2 光学異方性層
11 フォトマスク
12 文字A
13 文字B
14 文字C
15 背景
21 偏光板
22 位相差フィルム
23 一軸延伸フィルム
31,32 窓
33 板紙
41 板紙
42,43 領域
44,45,46 フォトマスク
101 支持体
102 反射層
103 光学異方性層
【技術分野】
【0001】
本発明は複屈折パターンを認証するためのビューワおよびキット、並びに、真正性認証媒体および真正性認証方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製品の偽造防止の手段としては、製品そのものを複製不能とする手段か、偽造防止手段として複製不能の標識を製品に取り付けることで真正な製品(真正品)と判定させる手段に大きく分けられる。特に後者の場合は個別な対応が必要な前者に比べて汎用性が高いので、多く用いられている。
後者の手段はさらに、2つに分けられる。ひとつは、偽造防止手段の存在が常に誰にでも識別できるもので、良く知られている技術としてホログラムがある。もうひとつは、偽造防止手段が通常は検出不能な状態であり、偽造防止手段の存在を知る者のみが特別な手段によって偽造防止手段を検出し、真正品かどうかを識別するもので、光軸のパターニングされた位相差媒体による潜像を、偏光板を用いて観察し、真偽を判別する技術が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。しかし、このようにして可視化される潜像は、正面から見たときは単色であるし、偏光板を回転させないと真正性が確認できないことから、認証が面倒であるという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−137232号公報
【特許文献2】特開2008−129421号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
偽造防止ラベル等に用いられる複屈折パターンを簡便かつ確実に認証することのできるビューワを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
(1)複屈折性の異なる少なくとも2つの領域を有する複屈折パターン認証用ビューワであって、偏光板に、少なくとも一層の光学異方性層が積層され、該光学異方性層の正面レタデーションが5nm以上であり、かつ、該光学異方性層の正面レタデーションと前記複屈折パターンの正面レタデーションの最大値の和がλ/2より大きいことを特徴とするビューワ、
(2)光軸がパターニングされた複屈折パターンを識別するためのビューワであることを特徴とする(1)項に記載のビューワ、
(3)複屈折パターンの位相差が(n1/2+1/8)λ〜(n1/2+3/8)λ(n1:0以上の整数)であることを特徴とする(2)項に記載のビューワ、
(4)ビューワの光学異方性層の位相差が(n2/2−1/8)λ〜(n2/2+1/8)λ(n2:自然数)であることを特徴とする(2)または(3)項に記載のビューワ、
(5)レタデーションがパターニングされた複屈折パターンを識別するためのビューワであることを特徴とする(1)項に記載のビューワ、
(6)ビューワを複数有する複屈折パターン認証用キットであって、少なくとも1つのビューワが(1)〜(5)のいずれか1項に記載のビューワからなることを特徴とする複屈折パターン認証用キット、
(7)前記複数のビューワは、互いに光軸、及び/または、被認証体側の光学異方性層のレタデーションが異なることを特徴とする(6)項に記載の複屈折パターン認証用キット、
(8)被認証体の一部に、(1)〜(5)のいずれか1項に記載のビューワを有することを特徴とする真正性認証媒体、
(9)(1)〜(5)のいずれか1項に記載のビューワ、または(6)または(7)項に記載の複屈折パターン認証用キットを用いたことを特徴とする真正性認証方法、および
(10)真性品には前記複屈折パターンが形成されている被認証体を、前記ビューワ、または前記キットを介して観察し、3色以上からなる潜像を確認することにより該被認証体の真性品を認証することを特徴とする(9)項記載の真正性認証方法
を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
また、本発明のビューワにより、複屈折パターンの複数の色の潜像を表現できる。また、軸パターンの施された潜像を、正面から見たときにも多色に認識できる。よって、ビューワを回転しなくても、ビューワをかざしたときの潜像の色によって真偽判定が可能であり、認証にかかる時間を短縮することができる。
したがって、本発明のビューワおよびそれを用いたキットにより、複屈折パターンを用いた偽造防止ラベル等の被認証体の真偽を判別する真正性の認証を確実かつ簡単な操作により行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の好ましい実施態様のビューワの概略断面図である。
【図2】本発明の本発明のビューワによって認証される被認証体の一実施形態の概略断面図である。
【図3】本発明のビューワにより識別される複屈折パターンの例を示す説明図であって、図3(a)はレタデーションに関してパターニングした例の説明図であり、図3(b)は光軸方向に関してパターニングした例の説明図である。
【図4】実施例に用いられたフォトマスクの平面図である。
【図5】実施例における複屈折パターンの平面図である。
【図6】比較例1のビューワの概略断面図である。
【図7】実施例1のビューワの概略断面図である。
【図8】実施例2のビューワの概略断面図である。
【図9】実施例4の複屈折パターン認証用キットの平面図である。
【図10】実施例6のビューワ一体型複屈折パターンの平面図である。
【図11】実施例6に用いられたフォトマスクの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のビューワは、複屈折性の異なる少なくとも2つの領域を有する複屈折パターン認証用ビューワであって、偏光板に、少なくとも一層の光学異方性層が積層され、該光学異方性層の正面レタデーションが5nm以上であり、かつ、光学異方性層の正面レタデーションと複屈折パターンの正面レタデーションの最大値の和がλ/2より大きいものである。
【0009】
図1は本発明の好ましい実施態様のビューワ(光学フィルタ)の概略断面図であり、偏光板1に光学異方性層2が積層されたものである。
【0010】
偏光板1は自然光を直線偏光に変換する性質を有する板で、例えば、ヨウ素系偏光板、染料系偏光板、ワイヤグリッド偏光板、金属ナノ粒子を用いた偏光板などが挙げられるが、一般的にはヨウ素系偏光板(ポリビニルアルコールフィルムからなる偏光膜をヨウ素にて染色、延伸を行った後、その両面に保護フィルムを積層して作製されたもの)を用いることが好ましい。偏光板1の厚さは、特に限定するものではないが、保護フィルムを含み、80〜500μmが好ましい。
【0011】
光学異方性層2は、正面レタデーションが実質的に0ではない、5nm以上の正面レタデーションを有する層である。正面レタデーションは、50nm以上であることが好ましく、100nm以上であることがより好ましい。特に、光軸のパターニングされた複屈折パターンを識別する際には、(n2/2−1/8)λ〜(n2/2+1/8)λ(n2:自然数)であることが好ましい。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、レタデーションまたはReまたは位相差は面内レタデーションを表す。面内のレタデーション(Re(λ))はKOBRA WR(商品名、王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定された値である。
また、本明細書および特許請求の範囲において、波長を特に規定しないレタデーションは、550nmの波長で測定されたものを意味する。
【0012】
光学異方性層2は、例えば、透明支持体に、配合層を介して、液晶性化合物を含む組成物(塗布液)を塗布、乾燥して液晶相状態とした後、配合状態を固定化して形成して、光学異方性層を形成したフィルム状ものが挙げられる。液晶化合物としては、例えば、UV硬化型サーモトロピック・ネマティック液晶を用いることができる。このような液晶は市販品として入手することができ、例えばPaliocolor LC242(商品名、BASFジャパン株式会社)を挙げることができる。
また、光学異方性層2は、所望のレタデーションを有する市販の一軸延伸フィルムや二軸延伸フィルムを用いることもできる。
光学異方性層2は、好ましくは、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエーテル系粘着剤、及びポリエステル系粘着剤などの感圧系の粘着剤により、偏光板1に貼り付けられて、積層され、ビューワを形成する。
【0013】
本発明のビューワは、複屈折性の異なる少なくとも2つの領域を有する複屈折パターンを認証するために用いられる。
【0014】
また、本明細書および特許請求の範囲において、「認証」は、「識別」、「判別」、「有無の確認」などにより、被認証体の真偽を証明することを含む。
【0015】
本発明においては、ビューワの光学異方性層の正面レタデーションと、複屈折パターンの正面レタデーションの最大値との和がλ/2より大きいものである。前記の和の値を上記の範囲に設定することで潜像の色相を大きく変化させるという作用効果を奏する。ビューワの光学異方性層の正面レタデーションと、複屈折パターンパターニング光学異方性層の正面レタデーションの最大値との和はλ/2〜3λであることが好ましく、λ〜2λであることがより好ましい。偏光板の光学異方性層の正面レタデーションと複屈折パターンの正面レタデーションの最大値の和をλ/2より大きいものとすることは、例えば、複屈折パターンのパターニング光学異方性層の正面レタデーションの最大値を大きくする、あるいは、ビューワの光学異方性層の正面レタデーションを大きくする、あるいは、その両者をかけあわせることにより行うことができる。液晶性化合物を硬化して作製した光学異方性層は、膜厚を大きくする、あるいは、異方性の大きい液晶性材料を使うことによって、正面レタデーションを大きくすることができる。あるいは、延伸フィルムにおいては、その延伸倍率を大きくすることによって、正面レタデーションを大きくすることができる。
【0016】
本発明のビューワが認証する複屈折パターンは、上記のように、複屈折性が異なる領域を複数含む層、すなわち、パターニング光学異方性層を有している。
本発明において、複屈折パターンは複屈折性が異なる領域を3つ以上有することがさらに好ましい。上記の複屈折性が同一である個々の領域は連続的形状であっても非連続的形状であってもよい。また、パターニング光学異方性層は、複数の層が積層されていてもよい。複屈折パターンを有する物品は通常平面(膜又はシート)状の形状を有していればよい。
【0017】
本発明のビューワによって認証される、一つの好ましい複屈折パターンは、光軸方向のパターニングされている複屈折パターン、すなわち、複屈折性が異なる領域が、光軸方向が互いに異なる領域を2つ以上有するものである。なお、本明細書において「光軸」というとき、「遅相軸」又は「透過軸」を意味する。
光軸がパターニングされている場合、光軸の向きが好ましくは5度以上、より好ましくは10度以上、さらに好ましくは15度以上異なることをいう。光軸がパターニングされている複屈折パターンの光学異方性層は、例えば、特表2001−525080号公報に記載の方法などで得ることができ、さらにこの液晶化合物の層内配向方向制御と後述のレタデーション値制御を組み合わせることにより、層内のレタデーションと配向方向が任意にパターニングされた光学異方性層を作製することができる。
【0018】
光軸がパターニングされている場合、複屈折パターンの位相差が(n1/2+1/8)〜(n1/2+3/8)λ(n1:0以上の整数)であることが好ましい。複屈折パターンの位相差がこの範囲にあることで潜像の色相を大きく変化させることができる。複屈折パターンの位相差を上記範囲とすることは、例えば、パターニング光学異方性層の膜厚を調整する、あるいは液晶の固有複屈折を調整することにより行うことができる。
【0019】
光軸方向のパターニングされている複屈折パターンの認証においては、ビューワの光学異方性層層の位相差が(n2/2−1/8)〜(n2/2+1/8)λ(n2:自然数)であることが好ましい。ビューワの光学異方性層の位相差がこの範囲にあることで潜像の色相を大きく変化させることができる。ビューワの光学異方性層の位相差を上記範囲とすることは、例えば、液晶性化合物を硬化した光学異方性層を用いる場合には、その膜厚を調整する、あるいは液晶の固有複屈折を調整することによって、あるいは、延伸フィルムを用いる場合には、その延伸倍率を変えることにより行うことができる。
【0020】
本発明のビューワによって認証される、別の好ましい複屈折パターンは、レタデーションのパターニングされた複屈折パターンである。「レタデーションのパターニングされた」とは、レタデーションが互いに異なる領域を2つ以上有することをいうレタデーションがパターニングされている場合には、好ましくは20nm以上、より好ましくは30nm以上、さらに好ましくは50nm以上レタデーションが異なることをいう。
【0021】
図2は本発明のビューワによって認証される被認証体の一実施形態の概略断面図を示す。図2に示す被認証体は、支持体101上に反射層102を介して光学異方性層103を有する。光学異方性層103は領域AとBを有し、これらは互いに複屈折性が異なる領域である。複屈折パターン及び光学異方性層、ならびに必要に応じて設けられる各層について、以下に詳述する。
複屈折パターンの例としてはレタデーション及び/又は光軸方向が面内でパターニングされた光学異方性層を含む物品が挙げられる。複屈折パターンの例を図3に示す。
図3(a)はレタデーションの相違によってパターニングされている例の模式的な説明図である。図3(a)に示す例においてはanm、bnm、cnm、及びdnmで示されるレタデーションは互いに異なるものとする。図3(b)は光軸方向の相違によってパターニングされている例の模式的な説明図である。図3(b)において矢印は光軸方向を示す。
光軸方向が面内でパターニングされた光学異方性層は、例えば、特表2001−525080号公報に記載の方法などで得ることができる。
また、レタデーションが面内でパターニングされた光学異方性層は、例えば、以下に詳細に説明する方法で作製することができる。
なお、以下の光学異方性層についての記載は、パターニングに関する記載以外に関しては、上記のビューワの光学異方性層に適用することができる。
【0022】
[複屈折パターン部材]
(光学異方性層)
パターニング光学異方性層は実質的に同一の層形成組成物から形成されることが好ましい。ここで同一の層形成組成物とは、厳密には分子の電子状態が異なり、複屈折性が異なるが原材料が同一であることをいう。
複屈折パターンは少なくとも1層のパターニング光学異方性層を含む。
パターニング光学異方性層は高分子を含む。高分子を含むことにより、複屈折性、透明性、耐溶媒性、強靭性および柔軟性といった異なった種類の要求を満たすことができる。
【0023】
光学異方性層は好ましくは20℃において、より好ましくは30℃において、さらに好ましくは40℃において固体であればよい。20℃において固体であると、他の機能性層の塗布や、支持体上への転写や貼合が容易であるからである。
他の機能性層の塗布を行う場合、本発明の光学異方性層は耐溶媒性を有することが好ましい。本明細書において、「耐溶媒性を有する」とは対象の溶媒に2分間浸漬した後のレタデーションが浸漬前のレタデーションの30%から170%の範囲内に、より好ましくは50%から150%の範囲内に、最も好ましくは80%から120%の範囲内にあることを意味する。対象の溶媒としては水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N−メチルピロリドン、ヘキサン、クロロホルム、酢酸エチルの中から、好ましくはアセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N−メチルピロリドンの中から、最も好ましくはメチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、またはこれらの混合溶媒等があげられる。
【0024】
光学異方性層でレタデーションを付与した領域のレタデーションの値は20℃においてレタデーションが5nm以上であればよく、20nm以上1000nm以下であることがより好ましい。レタデーションが5nm未満では複屈折パターンの形成が困難となったり、潜像の鮮明性が低下する場合がある。レタデーションが1000nmを越えると、誤差が大きくなり実用できる精度を達成することが困難である場合がある。
また、被認証体の潜像形成を考慮して、あるいは被認証体を構成するその他の層のレタデーションを考慮して、光学異方性層のレタデーション値を制御することができる。
【0025】
光学異方性層の製法としては特に限定されないが、少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含んでなる溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、熱または電離放射線照射して重合固定化して作製する方法;少なくとも2つ以上の反応性基を有するモノマーを重合固定化した層を延伸する方法;高分子からなる層にカップリング剤を用いて反応性基を導入した後に延伸する方法;または高分子からなる層を延伸した後にカップリング剤を用いて反応性基を導入する方法などが挙げられる。
また、後述するように、本発明の光学異方性層は転写により形成されたものであってもよい。
パターニング光学異方性層の厚さは、0.1〜20μmであることが好ましく、0.5〜10μmであることがさらに好ましい。
【0026】
《光学異方性層(材料)》
(液晶性化合物を含有する組成物を重合固定化してなる光学異方性層)
光学異方性層の製法として少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含んでなる溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、熱または電離放射線照射して重合固定化して作製する場合について以下に説明する。本製法は、後述する高分子を延伸して光学異方性層を得る製法と比較して、薄い膜厚で同等のレタデーションを有する光学異方性層を得ることや、緻密なパターン制御が容易となる。
【0027】
(液晶性化合物)
一般的に、液晶性化合物はその形状から、棒状タイプと円盤状タイプに分類できる。さらにそれぞれ低分子と高分子タイプがある。高分子とは一般に重合度が100以上のものを指す(高分子物理・相転移ダイナミクス,土井 正男 著,2頁,岩波書店,1992)。複屈折パターンの光学異方性層では、いずれの液晶性化合物を用いることもできるが、棒状液晶性化合物または円盤状液晶性化合物を用いるのが好ましい。大きなレタデーションを発現させるためには、棒状タイプを用いるのが好ましい。2種以上の棒状液晶性化合物、2種以上の円盤状液晶性化合物、又は棒状液晶性化合物と円盤状液晶性化合物との混合物を用いてもよい。本発明においては、上記ビューワにおける光学異方性層に用いられる液晶化合物と同様の液晶化合物を好ましく用いることができ、また、温度変化や湿度変化を小さくできることから、反応性基を有する棒状液晶性化合物または円盤状液晶性化合物を用いて形成することがより好ましく、その場合少なくとも1種の2以上の反応性基を有するものを用いることが好ましい。
【0028】
液晶性化合物が重合条件の異なる2種類以上の反応性基を有することもまた好ましい。この場合、条件を選択して複数種類の反応性基の一部種類のみを選択的に重合させることにより、未反応の反応性基を有する高分子を含む光学異方性層を作製することが可能となる。用いる重合条件としては重合固定化に用いる電離放射線の波長域や重合温度でもよいし、用いる重合機構の違いでもよいが、好ましくは用いる開始剤の種類によって制御可能な、ラジカル性の反応基とカチオン性の反応基の組み合わせが選択的な重合の制御の観点で好ましい。前記ラジカル性の反応性基がエチレン性不飽和基、特にアクリル基および/またはメタクリル基であり、かつ前記カチオン性基がビニルエーテル基、オキセタン基および/またはエポキシ基である組み合わせが反応性を制御しやすく特に好ましい。
また、本発明において液晶性化合物から形成したとは、最終的にできた物が液晶性を示す必要はなく、例えば、熱、光等で反応する基を有した低分子ディスコティック液晶が、捜査の過程で熱、光等の反応により重合または架橋し、高分子量化し液晶性を失ったものも含まれる。
【0029】
棒状液晶性化合物としては、例えば、特開2008−281989号公報の段落[0043]〜[0060]に記載の化合物を用いることができる。
【0030】
本発明の他の態様として、前記光学異方性層にディスコティック液晶を使用した態様がある。前記光学異方性層は、モノマー等の低分子量の液晶性ディスコティック化合物の層または重合性の液晶性ディスコティック(円盤状)化合物の重合(硬化)により得られるポリマーの層であるのが好ましい。ディスコティック化合物としては、例えば、特開2008−281989号公報の段落[0061]〜[0075]に記載の化合物を用いることができる。
【0031】
光学異方性層は、液晶性化合物を含有する組成物(例えば塗布液)を、後述する配向層の表面に塗布し、所望の液晶相を示す配向状態とした後、該配向状態を熱又は電離放射線の照射により固定することで作製された層であるのが好ましい。
液晶性化合物として、反応性基を有する円盤状液晶性化合物を用いる場合、水平配向、垂直配向、傾斜配向、およびねじれ配向のいずれの配向状態で固定されていてもよい。尚、本明細書において「水平配向」とは、棒状液晶の場合、分子長軸と透明支持体の水平面が平行であることをいい、円盤状液晶の場合、円盤状液晶性化合物のコアの円盤面と透明支持体の水平面が平行であることをいうが、厳密に平行であることを要求するものではなく、本明細書では、水平面とのなす傾斜角が10度未満の配向を意味するものとする。傾斜角は0〜5度が好ましく、0〜3度がより好ましく、0〜2度がさらに好ましく、0〜1度が最も好ましい。
【0032】
(水平配向剤)
液晶性化合物の分子を実質的に水平配向させるために、例えば、特開2008−281989号公報の段落[0084]〜[0093]の記載を参考に、水平配向剤を添加してもよい。
【0033】
液晶性化合物を含む組成物からなる光学異方性層を2層以上積層する場合、液晶性化合物の組み合わせについては特に限定されず、全て円盤状液晶性化合物からなる層の積層体、全て棒状性液晶性化合物からなる層の積層体、円盤状液晶性化合物を含む組成物からなる層と棒状性液晶性化合物を含む組成物からなる層の積層体であってもよい。また、各層の配向状態の組み合わせも特に限定されず、同じ配向状態の光学異方性層を積層してもよいし、異なる配向状態の光学異方性層を積層してもよい。
【0034】
光学異方性層は、液晶性化合物および下記の重合開始剤や他の添加剤を含む塗布液を、後述する配向層の上に塗布する方法などで形成することが好ましい。塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0035】
(液晶性化合物の配向状態の固定化)
配向させた液晶性化合物は、例えば、特開2008−281989号公報の段落[0080]〜[0081]に記載の方法で、配向状態を維持して固定することが好ましい。
【0036】
(偏光照射による光配向)
前記光学異方性層は、特開2008−281989号公報の段落[0082]〜[0083]に記載されているように、偏光照射による光配向で面内のレタデーションが発現あるいは増加した層であってもよい。
【0037】
光軸方向が層内でパターニングされた光学異方性層は、前述のように特表2001−525080号公報に記載の方法などで得ることができる。
【0038】
液晶化合物の層内配向方向が実質的に一定である複屈折パターンを施した光学異方性層について説明を行う。これは、層内の液晶性化合物の配向方向は同じでレタデーション値を制御したパターニングの事例である。さらに前述の液晶化合物の層内配向方向制御と組み合わせることにより、配向方向とレタデーションを任意にパターニングされた光学異方性層を作製することもできる。
パターン形成前の該光学異方性層中の高分子は未反応の反応性基を有することが好ましい。露光により未反応の反応性基が反応して高分子鎖の架橋が起こるが、露光条件の異なる露光によって高分子鎖の架橋の程度が異なり、その結果としてレタデーション値が変化して複屈折パターンが形成しやすくなる。
【0039】
(ラジカル性の反応性基とカチオン性の反応性基を有する液晶化合物の配向状態の固定化)
前述したように、液晶性化合物が重合条件の異なる2種類以上の反応性基を有することもまた好ましい。この場合、条件を選択して複数種類の反応性基の一部種類のみを重合させることにより、未反応の反応性基を有する高分子を含む光学異方性層を作製することが可能である。このような液晶性化合物として、ラジカル性の反応基とカチオン性の反応基を有する液晶性化合物(具体例としては例えば、前述のI−22〜I−25)を用いた場合に特に適した重合固定化の条件について以下に説明する。
【0040】
まず、重合開始剤としては重合させようと意図する反応性基に対して作用する光重合開始剤のみを用いることが好ましい。すなわち、ラジカル性の反応基を選択的に重合させる場合にはラジカル光重合開始剤のみを、カチオン性の反応基を選択的に重合させる場合にはカチオン光重合開始剤のみを用いることが好ましい。光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.1〜8質量%であることがより好ましく、0.5〜4質量%であることが特に好ましい。
【0041】
次に、重合のための光照射は紫外線を用いることが好ましい。この際、照射エネルギーおよび/または照度が強すぎるとラジカル性反応性基とカチオン性反応性基の両方が非選択的に反応してしまう恐れがある。したがって、照射エネルギーは、5mJ/cm2〜500mJ/cm2であることが好ましく、10〜400mJ/cm2であることがより好ましく、20mJ/cm2〜200mJ/cm2であることが特に好ましい。また照度は5〜500mW/cm2であることが好ましく、10〜300mW/cm2であることがより好ましく、20〜100mW/cm2であることが特に好ましい。照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。
【0042】
また光重合反応のうち、ラジカル光重合開始剤を用いた反応は酸素によって阻害され、カチオン光重合開始剤を用いた反応は酸素によって阻害されない。従って、液晶性化合物としてラジカル性の反応基とカチオン性の反応基を有する液晶化合物を用いてその反応性基の片方種類を選択的に重合させる場合、ラジカル性の反応基を選択的に重合させる場合には窒素などの不活性ガス雰囲気下で光照射を行うことが好ましく、カチオン性の反応基を選択的に重合させる場合には敢えて酸素を有する雰囲気下(例えば大気下)で光照射を行うことが好ましい。
【0043】
[複屈折パターン部材の作製]
本発明の複屈折パターン作製材料を用いて、パターン状の熱処理または電離放射線照射を行う工程、及び光学異方性層中の残りの未反応の反応性基を反応もしくは失活させる工程を行う事によって、複屈折パターン部材を作製することができる。特に光学異方性層がレタデーション消失温度を有し、かつ該レタデーション消失温度が電離放射線照射(あるいはレタデーション消失温度以下の熱処理)によって上昇する場合、容易に複屈折パターン部材を作製することができる。
以下に、電離放射線照射や熱処理による複屈折パターン作製工程を例示する。
【0044】
パターン状の電離放射線照射としては、例えば、露光(パターン露光)が挙げられる。パターン露光によって光学異方性層中の未反応の反応性基を反応させて露光部のレタデーション消失温度を上昇させ、その後に未露光部のレタデーション消失温度より高く露光部のレタデーション消失温度より低い温度において光学異方性層中の残りの未反応の反応性基を反応もしくは失活させる工程を行う事により、未露光部のレタデーションのみを選択的に消失させて複屈折パターンを形成する事ができる。光学異方性層中の残りの未反応の反応性基を反応もしくは失活させる工程としては全面露光でもよいし、反応性基が熱によっても反応できるのなら全面熱処理(ベーク)でもよい。省コスト化の為には、未露光部のレタデーション消失温度より高く露光部のレタデーション消失温度より低い温度への加熱がそのまま反応の為の熱処理も兼ねられることが好ましい。
一方で、逆に、先に一部領域の加熱(パターン状の熱処理)をレタデーション消失温度近くの温度で行ってレタデーションを低下ないしは消失させ、その後にレタデーション消失温度より低い温度で光学異方性層中の残りの未反応の反応性基を反応もしくは失活させる工程(全面露光ないしは全面加熱)を行って複屈折パターンを得る手法もある。この場合には先に加熱された部分のみがレタデーションを失ったパターンを得る事が可能である。
パターン露光およびパターン状熱処理の詳細については後述する。
【0045】
本発明における「反応条件」とは、以下に述べる「パターン露光」または「パターン状熱処理」の条件をいう。
先に、パターン状の露光とレタデーション消失温度以上での全面熱処理ないしは全面露光による複屈折パターン作製について詳細を述べる。
【0046】
[パターン露光]
複屈折パターンを作製するためのパターン露光は、複屈折パターン作製材料につき、複屈折性を残したい領域を露光するように、露光部と未露光部のみを形成するように行ってもよく、露光条件の異なる露光をパターン状に行ってもよい。
パターン露光の手法としてはマスクを用いたコンタクト露光、プロキシ露光、投影露光などでもよいし、レーザーや電子線などを用いてマスクなしに決められた位置にフォーカスして直接描画してもよい。前記露光の光源の照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。感光性樹脂層により同時に段差を形成する場合には樹脂層を硬化しうる波長域の光(例えば、365nm、405nmなど)を照射することも好ましい。具体的には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、青色レーザー等が挙げられる。好ましい露光量としては通常3〜2000mJ/cm2程度であり、より好ましくは5〜1000mJ/cm2程度、さらに好ましくは10〜500mJ/cm2程度、最も好ましくは10〜100mJ/cm2程度である。
【0047】
露光条件としては、特に限定はされないが、露光ピーク波長、露光照度、露光時間、露光量、露光時の温度、露光時の雰囲気等が挙げられる。この中で、条件調整の容易性の観点から、露光ピーク波長、露光照度、露光時間、および露光量が好ましく、露光照度、露光時間および露光量がさらに好ましい。
露光条件の異なる露光は複数回の露光によって行われてもよく、もしくは、例えば領域によって異なる透過スペクトルを示す2つ以上の領域を有するマスク等を用いて1回の露光によって行われていてもよく、又は両者が組み合わされていてもよい。露光条件の異なる露光をパターン状に行うとはすなわち、異なる露光条件で露光された2つ以上の露光領域を生ずるような形で露光が行われていることを意味とする。
パターン露光時に相異なる露光条件で露光された領域はその後、焼成を経て相異なる、かつ露光条件によって制御された複屈折性を示す。特に異なるレタデーション値を与える。すなわち、パターン露光の際に領域ごとに露光条件を調整することにより、焼成を経た後に領域ごとに異なる、かつ所望のレタデーションを有する複屈折パターンを作製することが可能である。なお、異なる露光条件で露光された2つ以上の露光領域間の露光条件は不連続に変化させてもよいし、連続的に変化させてもよい。
【0048】
(マスク露光)
露光条件の異なる露光領域を生じる手段として、露光マスクを用いた露光は有用である。例えば1つの領域のみを露光するような露光マスクを用いて露光を行った後に、温度、雰囲気、露光照度、露光時間、露光波長を変えて別のマスクを用いた露光や全面露光を行うことで、先に露光された領域と後に露光された領域の露光条件は容易に変更することができる。また、露光照度、あるいは露光波長を変えるためのマスクとして領域によって異なる透過スペクトルを示す2つ以上の領域を有するマスクは特に有用である。この場合、ただ一度の露光を行うだけで複数の領域に対して異なる露光照度、あるいは露光波長での露光を行うことができる。異なる露光照度の元で同一時間の露光を行う事で異なる露光量を与えることができることは言うまでもない。
またレーザーなどを用いた走査露光を用いる場合には、露光領域によって光源強度を変える、走査速度を変えるなどの手法で領域ごとに露光条件を変えることが可能である。
【0049】
また、複屈折パターン作製材料にパターン露光を行って得られた積層体の上に新たな複屈折パターン作製用転写材料を転写し、その後に新たにパターン露光を行う手法を併用してもよい。この場合、一度目及び二度目ともに未露光部である領域(通常レタデーション値が一番低い)、一度目に露光部であり二度目に未露光部である領域、及び、一度目及び二度目ともに露光部である領域(通常レタデーション値が一番高い)でベーク後に残るレタデーションの値を効果的に変えることができる。なお、一度目に未露光部であり二度目に露光部である領域は、二度目の露光により一度目及び二度目ともに露光部である領域と同様となると考えられる。同様にして転写とパターン露光を交互に三度、四度と行うことにより、四つ以上の領域を作ることも容易にできる。この手法は、異なる領域の間で、露光条件だけでは与え得ないような差異(光学軸の方向の違いや非常に大きなレタデーションの差異など)を持たせたい時に有用である。
【0050】
[レタデーション消失温度以上での全面熱処理(ベーク)ないしは全面露光による反応処理]
パターン露光された複屈折パターン作製材料に対して露光部のレタデーションを残しつつ未露光部のレタデーションを低下させ、さらにその状態で残りの未反応の反応性基を反応もしくは失活させて安定な複屈折パターンを得るために、未露光部のレタデーション消失温度以上での全面熱処理ないしは全面露光を行うことが好ましい。
処理を全面熱処理で行う場合、温度条件は材料によって変わるが未露光部のレタデーション消失温度以上で露光部のレタデーション消失温度以下が好ましい。またその上で未反応の反応性基の反応もしくは失活が効率よく進む温度であることが好ましい。具体的には特に限定されないが50℃〜400℃程度の熱処理が好ましく、100〜260℃程度の熱処理がより好ましく、150〜250℃がさらに好ましく、180〜230℃が特に好ましいが、必要とされる複屈折性(レタデーション)や用いる光学異方性層の熱硬化反応性によって適した温度は異なる。また熱処理には材料中の不要な成分を気化あるいは燃焼させて除く効果も期待できる。熱処理の時間は特に限定されないが、1分以上5時間以内が好ましく、3分以上3時間以内がより好ましく、5分以上2時間以内が特に好ましい。
露光部のレタデーション消失温度以下の温度では未反応の反応性基の反応性が十分でなく反応処理が十分に進まない場合などには、未露光部のレタデーション消失温度以上の温度を保ちつつ全面露光を行うことも有用である。この際の好ましい光源は前記パターン露光において上げたものと同一であり、好ましい露光量としては通常3〜2000mJ/cm2程度であり、より好ましくは5〜1000mJ/cm2程度、さらに好ましくは10〜500mJ/cm2程度、最も好ましくは10〜300mJ/cm2程度である。
【0051】
次に、パターン状熱処理によるパターン状レタデーション低下とレタデーション消失温度以下での全面熱処理ないしは全面露光による複屈折パターン作製について詳細を述べる。
【0052】
[パターン状熱処理(熱パターン書き込み)]
パターン状熱処理の際の加熱温度は、加熱部と非加熱部のレタデーションに差異を生じさせる温度であればよく、特に限定されない。特に加熱部のレタデーションを実質的に0nmとしたい場合には、用いられる複屈折パターン作製材料の光学異方性層のレタデーション消失温度以上の温度で加熱することが好ましい。また一方で、加熱温度は光学異方性層の燃焼や着色の生じる温度未満であることが好ましい。一般的には120℃〜260℃程度の加熱を行えばよく、150℃〜250℃がより好ましく、180℃〜230℃がさらに好ましい。
【0053】
複屈折パターン作製材料の一部を加熱する方法は特に限定されないが、加熱体を複屈折パターン作製材料に接触させて行う方法、加熱体を複屈折パターン作製材料のごく近傍に位置させて行う方法、ヒートモード露光を用いて複屈折パターン作製材料を部分加熱する方法などが挙げられる。
【0054】
[レタデーション消失温度以下での全面熱処理(ベーク)ないしは全面露光による反応処理]
前記パターン状熱処理が行われた光学異方性層において熱処理が行われなかった領域は、レタデーションを有しつつも未反応の反応性基を残しており、未だ不安定な状態である。未処理領域に残存する未反応の反応性基を反応もしくは失活させるために、全面熱処理ないしは全面露光による反応処理を行うことが好ましい。
【0055】
全面熱処理による反応処理は、用いられる複屈折パターン作製材料の光学異方性層のレタデーション消失温度より低い温度で、かつ未反応の反応性基の反応もしくは失活が効率よく進む温度であることが好ましい。
パターン露光された複屈折パターン作製材料に対して50℃以上400℃以下、好ましくは80℃以上400℃以下に加熱を行うことにより複屈折パターンを作製することができる。複屈折パターン作製に用いる複屈折パターン作製材料の有する光学異方性層の露光前のレタデーション消失温度をT1[℃]、露光後のレタデーション消失温度をT2[℃]とした場合(レタデーション消失温度が250℃以下の温度域にない場合はT2=250とする)、ベーク時の温度はT1℃以上T2℃以下が好ましく、(T1+10)℃以上(T2−5)℃以下がより好ましく、(T1+20)℃以上(T2−10)℃以下が最も好ましい。
一般的に120〜180℃程度の加熱を行えばよく、130〜170℃がより好ましく、140〜160℃がさらに好ましいが、必要とされる複屈折性(レタデーション)や用いる光学異方性層の熱硬化反応性によって適した温度は異なる。熱処理の時間は特に限定されないが、1分以上5時間以内が好ましく、3分以上3時間以内がより好ましく、5分以上2時間以内が特に好ましい。
【0056】
ベークによって複屈折パターン作製材料中の未露光部のレタデーションが低下し、一方で先のパターン露光でレタデーション消失温度が上昇した露光部はレタデーションの低下が小さく、もしくは全く低下しないかあるいは上昇し、結果として未露光部のレタデーションが露光部のレタデーションに比較して小さくなり複屈折パターン(パターン化光学異方性層)が作製される。
光学上の効果を発揮するため、ベーク後の露光部のレタデーションは5nm以上であることが好ましく、10nm以上5000nm以下であることがより好ましく、20nm以上2000nm以下であることが最も好ましい。5nm以下では作製された複屈折パターンの目視による識別が困難となる。
【0057】
また、光学上の効果を発揮するため、複屈折パターン作製材料中の未露光部のベーク後のレタデーションはベーク前の80%以下となることが好ましく、ベーク前の60%以下となることがより好ましく、ベーク前の20%以下となることがさらに好ましく、5nm未満となることが最も好ましい。特にベーク後のレタデーションが5nm未満となった場合、そこは目視の上ではあたかも複屈折性が全く無かったかのような印象を与える。すなわち、クロスニコル下では黒が、パラニコル下あるいは偏光板+反射板の上では無色が表現できる。このようにベーク後の未露光部のレタデーションが5nm未満となる複屈折パターン作製材料は、複屈折パターンでカラー画像を表現する際、あるいは複数層の異なるパターンを積層して使用する際に有用である。
【0058】
全面熱処理の代わりに、全面露光によっても反応処理を行うことができる。この際の光源の照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。感光性樹脂層により同時に段差を形成する場合には樹脂層を硬化しうる波長域の光(例えば、365nm、405nmなど)を照射することも好ましい。具体的には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、青色レーザー等が挙げられる。好ましい露光量としては通常3〜2000mJ/cm2程度であり、より好ましくは5〜1000mJ/cm2程度、さらに好ましくは10〜500mJ/cm2程度、最も好ましくは10〜300mJ/cm2程度である。
【0059】
また、ベークもしくは全面露光を行った複屈折パターン作製材料の上に新たな複屈折パターン作製用転写材料を転写し、その後に新たにパターン露光とベーク(または全面露光)を行ってもよい。この場合、一度目及び二度目ともに未露光部である領域、一度目に露光部であり二度目に未露光部である領域、一度目に未露光部であり二度目に露光部である領域(1度目の未露光部のレタデーションはベークによりすでに消失)、一度目及び二度目ともに露光部である領域で、二度目のベーク後に残るレタデーションの値を効果的に変えることができる。この手法は、例えば互いに遅相軸の方向が異なる複屈折性を持つ二つの領域を互いに重ならない形で作りたい時に有用である。
【0060】
[仕上げ熱処理]
前節までの工程で作製された複屈折パターンの安定性をさらに高めたい場合、固定化された後にまだ残存している未反応の反応性基をさらに反応させて耐久性を増したり、材料中の不要な成分を気化あるいは燃焼させて除いたりする目的の為に仕上げ熱処理を行ってもよい。特にパターン露光と加熱全面露光、あるいはパターン状熱処理と全面露光で複屈折パターンを作製した場合には効果的である。仕上げ熱処理の温度としては180〜300℃程度の加熱を行えばよく、190〜260℃がより好ましく、200〜240℃がさらに好ましい。熱処理の時間は特に限定されないが、1分以上5時間以内が好ましく、3分以上3時間以内がより好ましく、5分以上2時間以内が特に好ましい。
【0061】
(延伸によって作製される光学異方性層)
光学異方性層は高分子の延伸によって作製されたものでもよい。光学異方性層は少なくとも1つの未反応の反応性基を持つ事が好ましいが、このような高分子を作製する際にはあらかじめ反応性基を有する高分子を延伸してもよいし、延伸後の光学異方性層にカップリング剤などを用いて反応性基を導入してもよい。延伸法によって得られる光学異方性層の特長としては、コストが安いこと、及び自己支持性を持つ(光学異方性層の形成及び維持に支持体を要しない)ことなどが挙げられる。
【0062】
(光学異方性層の後処理)
作製された光学異方性層を改質するために、様々な後処理を行ってもよい。後処理としては例えば、密着性向上の為のコロナ処理や、柔軟性向上の為の可塑剤添加、保存性向上の為の熱重合禁止剤添加、反応性向上の為のカップリング処理などが挙げられる。また、光学異方性層中の高分子が未反応の反応性基を有する場合、該反応性基に対応する重合開始剤を添加することも有効な改質手段である。例えば、カチオン性の反応性基とラジカル性の反応性基を有する液晶性化合物を、カチオン光重合開始剤を用いて重合固定化した光学異方性層に対してラジカル光重合開始剤を添加することで、後にパターン露光を行う際の未反応のラジカル性の反応性基の反応を促進することができる。可塑剤や光重合開始剤の添加手段としては、例えば、光学異方性層を該当する添加剤の溶液に浸漬する手段や、光学異方性層の上に該当する添加剤の溶液を塗布して浸透させる手段などが挙げられる。また、光学異方性層の上に他の層を塗布する際にその層の塗布液に添加剤を添加しておき、光学異方性層に浸漬させる方法もあげられる。本発明においては、この際に浸漬させる添加剤、特には光重合開始剤の種類や量により、後に述べる複屈折パターン作製材料へのパターン露光時の各領域への露光量と最終的に得られる各領域のレタデーションとの関係を調整し、所望する材料特性に近づけることが可能である。
【0063】
(光学異方性層以外の複屈折パターン部材の構成材料)
複屈折パターン部材を得るための光学異方性層を含む構造体(以降、「複屈折パターン作製材料」という。)は複屈折パターンを作製する為の材料であり、所定の工程を経る事で複屈折パターン部材を得る事ができる材料である。複屈折パターン作製材料は製造適性などの観点から、通常、フィルム、またはシート形状であるとよい。複屈折パターン作製材料は前述の光学異方性層のほかに、様々な副次的機能を付与することが可能である機能性層を有していてもよい。機能性層としては、支持体、配向層、後粘着層などが挙げられる。あるいは、複屈折パターン部材は、転写箔の形態であってもよい。
被認証体を構成する光学異方性層以外の層は潜像の形成に影響を与えないレタデーションを有するように構成されるか、それらの層が有するレタデーションを考慮して潜像形成のための光学異方性層のレタデーション値を設定することができる。
【0064】
[支持体]
複屈折パターン部材は透明支持体又は反射支持体を有していることが好ましい。支持体には特に限定はないが、反射光を用いて潜像を顕在化させる場合には後述する反射層を有する支持体または、反射機能を有する支持体を用いればよく、透過光を用いて潜像を顕在化させる場合には、潜像に影響を与えない光学特性を有する透明支持体を用いればよい。この場合、基材のレタデーションは200nm以下、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下である。
支持体の例としてはセルロースエステル(例、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート)、ポリオレフィン(例、ノルボルネン系ポリマー)、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(例、ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリエステルおよびポリスルホン、ノルボルネン系ポリマーなどのプラスチックフィルムなどが挙げられる。支持体の膜厚としては、ロールツーロールなどの連続製造に用いる場合などでは3〜500μmが好ましく、10〜200μmがより好ましいが、製造形態によって適宜選択できる。
【0065】
複屈折パターン部材は偏光板を用いない目視でも視認可能なパターンが描かれていてもよい。
また、光学異方性層を支持体中に埋め込むように作成してもよい。本発明の光学異方性は各種耐性が高いので、たとえば流延装置のエンドレスベルトまたはドラム上に光学異方性層を転写し、その上に溶融状態の支持体用素材を流延して通常のポリマーフィルムのように、賦形、圧延、延伸などの所望の工程を経てフィルム上に成形することもできる。また、2枚の支持体を用いその間に光学異方性層をはさんで被認証体を形成しても良い。
被認証体としては、光学異方性層の特性劣化を起こさない温度以下に溶融温度を有する樹脂を用いることができる。
また、延伸処理を行うと引き裂き性が出て開封性を向上させることができるなどの各種機械特性の付与が期待できるので、製品形態を考慮して既知の各種工程を製造工程に加えることができる。
【0066】
[配向層]
上記したように、光学異方性層の形成には、配向層を利用してもよい。配向層は、一般に支持体もしくは仮支持体上又は支持体もしくは仮支持体上に塗設された下塗層上に設けられる。配向層は、その上に設けられる液晶性化合物の配向方向を規定するように機能する。配向層は、光学異方性層に配向性を付与できるものであれば、どのような層でもよく、例えば、特開2008−281989号公報の段落[0094]〜[0099]の記載を参考にして形成することができる。
【0067】
[反射層]
本発明における被認証体において反射層又は反射機能を有する支持体を用いることができる。反射機能を有する支持体とは、アルミ箔など、支持体としたときに該支持体そのものに反射機能があるものをいう。反射層又は前記支持体のパターニング光学異方性層側から偏光板を介して観察することによって、複屈折パターンによる潜像を可視化することができる。
反射層としては特に限定されないが、例えばアルミや銀などの金属層が挙げられる。このような金属層を支持体や複屈折パターニング作成材料に蒸着してもよいし、金属箔を箔押ししてもよい。このように金属層を設けた被認証体は帯電防止性能やガスバリア性が向上するので、精密機器の包装材などの被認証体に好ましく用いることができる。金属層以外にはゴールドやシルバー等のインキで印刷した支持体を用いることもできる。完全鏡面である必要はなく、表面にマット加工が施されていてもよい。
また、透明な被認証体で光沢面を有する物品(箱や商品など)を包装して、反射層を設けたのと同じ効果を得ることもできる。
【0068】
[後粘着層]
複屈折パターン作製材料は、複屈折パターン部材をさらに他の物品に貼付するための後粘着層を有していてもよい。
【0069】
[2層以上の光学異方性層]
複屈折パターン作製材料は、光学異方性層を2層以上有してもよい。2層以上の光学異方性層は法線方向に互いに隣接していてもよいし、間に別の機能性層を挟んでいてもよい。2層以上の光学異方性層は互いにほぼ同等のレタデーションを有していてもよく、異なるレタデーションを有していてもよい。また遅相軸の方向が互いにほぼ同じ方向を向いていてもよく、異なる向きを向いていてもよい。
【0070】
遅相軸が同じ向きを向くように積層した2層以上の光学異方性層を有する複屈折パターン作製材料を用いる例として、大きなレタデーションを有するパターンを作製する場合が挙げられる。手持ちの光学異方性層では一層では必要とするレタデーションに足りない場合でも、二層三層と積層してからパターン露光することで大きなレタデーションや複雑なレタデーションの階調を有する領域を含むパターン化光学異方性層を容易に得ることができる。
また、遅相軸が異なる向きを向くように積層した2層以上の光学異方性層を有する複屈折パターン作製材料を用いる例として、遅相軸の向きごとに異なる潜像を配置することができる。
【0071】
(複屈折パターン作製材料の作製方法)
複屈折パターン作製材料を作製する方法としては特に限定されないが、例えば、支持体上に光学異方性層を直接形成する、複屈折パターン作製材料を転写材料として作成後に別の支持体上に転写する、自己支持性の光学異方性層として形成する、自己支持性の光学異方性層上に他の機能性層を形成する、自己支持性の光学異方性層に支持体に貼合する、などの方法が挙げられる。このうち光学異方性層の物性に制約を加えないという点からは支持体上に光学異方性層を直接形成する方法と転写材料を用いて支持体上に光学異方性層を転写する方法が好ましく、さらに支持体に対する制約が少ない点から転写材料を用いて支持体上に光学異方性層を転写する方法がより好ましく用いることができる。
【0072】
光学異方性層を2層以上含む複屈折パターン作製材料を作製する方法としては、複屈折パターン作製材料上に光学異方性層を直接形成する、別の複屈折パターン作製材料を転写材料として用いて複屈折パターン作製材料上に光学異方性層を転写するなどの方法が挙げられる。
【0073】
以下に、転写材料として用いられる複屈折パターン作製材料について説明する。なお、転写材料として用いられる複屈折パターン作製材料は、後述の実施例などにおいて「複屈折パターン作製用転写材料」という場合がある。
【0074】
[仮支持体]
転写材料として用いられる複屈折パターン作製材料は仮支持体上に形成されることが好ましい。仮支持体は、透明でも不透明でもよく特に限定はない。仮支持体を構成するポリマーの例には、セルロースエステル(例、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート)、ポリオレフィン(例、ノルボルネン系ポリマー)、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(例、ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリエステルおよびポリスルホン、ノルボルネン系ポリマーが含まれる。製造工程において光学特性を検査する目的には、透明支持体は透明で低複屈折の材料が好ましく、低複屈折性の観点からはセルロースエステルおよびノルボルネン系が好ましい。市販のノルボルネン系ポリマーとしては、アートン(商品名、JSR(株)製)、ゼオネックス、ゼオノア(いずれも商品名、日本ゼオン(株)製)などを用いることができる。また安価なポリカーボネートやポリエチレンテレフタレート等も好ましく用いられる。
【0075】
[転写用接着層]
転写材料は転写接着層を有しても良い。転写接着層としては、透明で着色がなく、十分な転写性を有していれば特に制限はなく、粘着剤による粘着層、感圧性樹脂層、感熱性樹脂層、感光性樹脂層などが挙げられる。例えば、特開2008−281989号公報の段落[0100]〜[0119]に記載の粘着剤、感圧性樹脂層、感光性樹脂層を用いることができる。
ただし、潜像を顕在化させる場合に、偏光が転写用接着層を経由する場合には、転写用接着層の光学特性として、支持体の項で述べたように潜像に影響を与えない、即ち等方性か、潜像の顕在化に影響を与えないレタデーション値を有することが好ましい。
【0076】
(力学特性制御層)
転写材料の、仮支持体と光学異方性層の間には、力学特性や凹凸追従性をコントロールするために力学特性制御層を形成することが好ましい。力学特性制御層としては、例えば、特開2008−281989号公報の[0120]に記載のものを用いることができる。
【0077】
[中間層]
転写材料においては、複数の塗布層の塗布時、および塗布後の保存時における成分の混合を防止する目的から、中間層を設けることが好ましい。該中間層としては、特開平5−72724号公報に「分離層」として記載されている、酸素遮断機能のある酸素遮断膜や、前記光学異方性形成用の配向層を用いることが好ましい。これらの内、特に好ましいのは、ポリビニルアルコールもしくはポリビニルピロリドンとそれらの変性物の一つもしくは複数を混合してなる層である。前記熱可塑性樹脂層や前記酸素遮断膜、前記配向層を兼用することもできる。
【0078】
[剥離層]
転写材料として用いられる複屈折パターン作製材料は仮支持体の上に剥離層を有してもよい。剥離層は仮支持体と剥離層間の、あるいは剥離層とその直上層の間の密着力を制御し、光学異方性層を転写した後の仮支持体の剥離を助ける役目を負う。また前述の他の機能層、例えば配向層、力学特性制御層、中間層などが剥離層としての機能を有してもよい。
【0079】
[表面保護層]
複屈折パターン部材の表面には、汚染や損傷から保護する為に防汚性やハードコート性を有する表面保護層を設けることが好ましい。表面保護層の性質は特に限定されず既知の素材を用いることができ、前述の(仮)支持体や他の機能性層と同じか又は類似の材料からなってもよい。
表面保護層の材料としては例えば、ポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素樹脂からなる防汚層や多官能アクリレートを含んでなるアクリル樹脂で形成されるハードコート層などが挙げられる。なお、ハードコート層上に防汚層を配置したり、光学異方性層やその他の機能性層上に保護層を配置しても良い。
【0080】
[その他の機能性層]
上記の機能性層以外にも例えば、複屈折パターン部材を剥離して再利用する行為を不可能とするため、破壊もしくは光学特性を変化させる機能層や、非可視光で顕在化する潜像技術など他のセキュリティ技術を組み合わせるための潜像層などの多様な機能性層と組み合わせることができる。被認証体を構成するその他の層は潜像の形成に影響を与えないレタデーション有するように構成されるか、前述のようにそれらの層のレタデーションを考慮して、あるいは光学異方性層の潜像形成ためのレタデーション値を考慮して設定することができる。
【0081】
光学異方性層、感光性樹脂層、転写接着層および所望により形成される配向層、熱可塑性樹脂層、力学特性制御層および中間層等の各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、スリットコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書)により、塗布により形成することができる。二以上の層を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許2761791号、同2941898号、同3508947号、同3526528号の各明細書および原崎勇次著、コーティング工学、253頁、朝倉書店(1973)に記載がある。
また、光学異方性層上に塗布する層(例えば転写接着層)の塗布の際には、その塗布液に可塑剤や光重合開始剤を添加することにより、それらの添加剤の浸漬による光学異方性層の改質を同時に行ってもよい。
【0082】
(転写材料を被転写材料上に転写する方法)
転写材料を支持体等の被転写材料上に転写する方法については特に制限されず、被転写材料上に上記光学異方性層を転写できれば特に方法は限定されない。例えば、フィルム状に形成した転写材料を、転写接着層面を被転写材料表面側にして、ラミネータを用いて加熱および/又は加圧したローラー又は平板で圧着又は加熱圧着して、貼り付けることができる。例えば、特開平7−110575号公報、特開平11−77942号公報、特開2000−334836号公報、特開2002−148794号公報に記載のラミネータおよびラミネート方法が挙げられるが、低異物の観点で、特開平7−110575号公報に記載の方法を用いるのが好ましい。
被転写材料としては、支持体、支持体及び他の機能性層を含む積層体、又は複屈折パターン作製材料が挙げられる。
【0083】
(転写に伴う工程)
複屈折パターン作製用転写材料を被転写材料上に転写した後、仮支持体は剥離してもよく、しなくともよい。ただし剥離しない場合には仮支持体がその後のパターン露光に適した透明性やベークに耐え得る耐熱性などを有していることが好ましい。また、光学異方性層と一緒に転写される不要の層を除去する工程があってもよい。例えば配向層としてポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンの共重合体を用いた場合には、弱アルカリ性の水系現像液での現像により配向層より上の層の除去が可能である。現像の方式としては、パドル現像、シャワー現像、シャワー&スピン現像、ディップ現像等、公知の方法を用いることができる。現像液の液温度は20℃〜40℃が好ましく、また、現像液のpHは8〜13が好ましい。
【0084】
また転写後、必要に応じて仮支持体の剥離や不要層の除去を行った後の表面に他の層を形成してもよい。あるいは必要に応じて仮支持体の剥離や不要層の除去を行った後の表面に転写材料を転写してもよい。この際に用いる転写材料は先に転写した転写材料と同じでもよく、異なってもよい。また、先に転写した転写材料の光学異方性層の遅相軸と新たに転写する転写材料の光学異方性層と遅相軸は互いに同じ向きでもよく、異なる向きでもよい。前述のように、複数層の光学異方性層を転写する事は遅相軸の向きを揃えた複数層の光学異方性層を積層した大きなレタデーションを持つ複屈折パターンや遅相軸の向きの異なる複数層を積層した特殊な複屈折パターンの作製などに有用である。
【0085】
[転写のタイミング]
複屈折パターンの作製において転写を行う場合、そのタイミングは任意である。すなわち、例えば、少なくとも以下の工程:
・液晶性化合物を含む溶液を塗布乾燥させる工程;
・熱処理または電離放射線照射によって前記反応性基のうちの一種を反応させる工程;
・再度熱処理または電離放射線照射を行い前記相異なる反応性基のうち前記工程で反応させたものと異なる反応性基も含めて反応させる工程;及び
・光学異方性層中に残存する未反応の反応性基を反応もしくは失活させる工程(例えば50℃以上400℃以下のベーク)
をこの順に含む複屈折パターンの作製において転写を行う場合、転写は液晶性化合物を含む溶液を塗布乾燥させる工程の直後に行ってもよいし、熱処理または電離放射線照射によって前記反応性基のうちの一種を反応させる工程の後に行ってもよいし、残存する未反応の反応性基を反応もしくは失活させる工程の直前もしくは直後に行ってもよい。
【0086】
この場合、タイミングによっては使用する材料に制約がかかることもある。例えば、塗布乾燥の直後に転写を行う場合には未反応の状態で転写に耐えるような液晶性化合物でなければならない。また他に例えば、残存する未反応の反応性基を反応もしくは失活させる工程としてベークを用いてかつその後に転写を行う場合には、転写までの仮支持体として用いている材料がベークに耐える材料でなければならない。広範な材料の使用を可能にする観点からは、転写は熱処理または電離放射線照射によって前記反応性基のうちの一種を反応させる工程より後であることが好ましい。
【0087】
[パターン形成のタイミング]
複屈折パターンの作製においてパターン状の熱処理または電離放射線照射を行うタイミングは、熱処理または電離放射線照射を行う工程のいずれであってもよい。すなわち、例えば、少なくとも以下の工程:
・液晶性化合物を含む溶液を塗布乾燥させる工程;
・熱処理または電離放射線照射によって前記反応性基のうちの一種を反応させる工程;及び
・再度熱処理または電離放射線照射を行い前記相異なる反応性基のうち前記工程で反応させたものと異なる反応性基も含めて反応させる工程
をこの順に含む複屈折パターンの作製において、熱処理または電離放射線照射によって前記反応性基のうちの一種を反応させる工程がパターン状に行われてもよいし、再度熱処理または電離放射線照射を行い前記相異なる反応性基のうち前記工程で反応させたものと異なる反応性基も含めて反応させる工程がパターン状に行われてもよいし、その両方の工程がパターン状に行われてもよい。
【0088】
一方で複屈折パターンの作製において転写を行う場合、パターン状の熱処理または電離放射線照射を行うタイミングによっては使用する材料に制約がかかることもある。例えば、熱処理または電離放射線照射によって前記反応性基のうちの一種を反応させる工程をパターン状に行いかつその直後に転写を行う場合には未反応の領域が存在する状態で転写に耐えるような液晶性化合物で無ければならない。広範な材料の使用を可能にする観点からは、複屈折パターンの作製において途中に転写を伴う場合、転写を行うより前に一度はパターン状でない熱処理または電離放射線照射が行われている事が好ましい。
【0089】
さらに一方で、転写をした上で転写後の基材の形状や下地に合わせてパターン形成を行いたい場合には、先に熱処理または電離放射線照射によって前記反応性基のうちの一種を反応させる工程を非パターン状に(全面に)行った後に転写を行い、その後に再度熱処理または電離放射線照射を行い前記相異なる反応性基のうち前記工程で反応させたものと異なる反応性基も含めて反応させる工程をパターン状に行うことが好ましい。以下はそのような場合を例に説明する。
【0090】
[複屈折パターン部材を用いた物品]
複屈折パターン作製材料に上述のように露光及びベークを行って得られる本発明における被認証体は通常はほぼ無色透明である一方で、二枚の偏光板で挟まれた場合、あるいは反射層と偏光板とで挟まれた場合においては特徴的な明暗、あるいは調整されたレタデーションから干渉によって得られる所望の色を示し容易に目視で認識できる。この性質を生かして、上記の製造方法により得られる被認証体は、例えば偽造防止手段として利用することができる。すなわち、本発明における被認証体、特に反射層を含む被認証体は通常は目視ではほぼ不可視な一方で、偏光板を介することで容易に多色の画像が識別可能となる。複屈折パターンは偏光板を介さずにコピーしても何も映らず、逆に偏光板を介してコピーすると永続的な、つまりは偏光板無しでも目視可能なパターンとして残る。従って複屈折パターンの複製は困難である。このような複屈折パターンの作製法は広まっておらず、材料も特殊であることから、偽造防止手段として用いるに適していると考えられる。
また、偽造防止手段以外に緻密及びまたは多色を示すことができる潜像を利用した情報や画像の表示媒体などの活用が考えられる。
【0091】
本発明のビューワを用いる複屈折パターンの認証方法の具体的態様を以下に説明する。
本発明のビューワは、複屈折パターンの上に概ね平行になるように配置させる。このとき、重ねてもよいし、パターンの視認性を損なわない範囲で、間隔をあけてもよい。この状態で、概ね法線方向から、複屈折パターンを視認する。
【0092】
本発明の別の好ましい実施態様は、異なるビューワを複数有する複屈折パターン認証用キットであって、前記複数のビューワの少なくとも1枚が上記の本発明のビューワである複屈折パターン認証用キットである。例えば、厚紙に左右の窓を設け、その窓の少なくとも一方に上記の本発明のビューワを貼り付けることにより形成することができる。この場合、本発明のビューワの光学異方性層を、認証する被認証体側にくるように形成する。また、一つのビューワを上記の本発明のビューワにより形成した場合、他のビューワは、上記の本発明のビューワで形成しても良いし、従来の偏光板をそのまま用いてもよい。複数のビューワを有するキットを用いることで、異なるカラーパターンを連続的に認証できるので、1枚のビューワにより真偽判定を行うよりも、確実に真偽判定を行うことができるようになる。
【0093】
本発明の複屈折パターン認証用キットは、ビューワが、互いに光軸、及び/または、被認証体側の光学異方性層のレタデーションが異なることが好ましい。例えば、一方のビューワの偏光板の吸収軸の方向と、他方のビューワの偏光板の吸収軸の方向が異なるように貼り付けることで異なるビューワが互いに光軸が異なるものとすることができる。
このように、複数のビューワは、互いに光軸、及び/または、被認証体側の光学異方性層のレタデーションが異なることで、それぞれ色の異なる潜像を可視化させることができる。
複屈折パターン認証用キットの異なるビューワの数は、特に限定はないが2〜4であることが好ましい。
【0094】
本発明の別の好ましい実施態様は、被認証体の一部に、上記のビューワを有する真正性認証媒体である。例えば、商品券などの被認証体の一部領域を上記の複屈折パターンを設け、被認証体の他の領域に上記の本発明のビューワを設けたものが挙げられる。このようなビューワ一体型複屈折パターンは、例えば、被認証体を折り曲げ、複屈折パターンとビューワを、ビューワの光学異方性層が複屈折パターン側になるように重ねることで、被認証体内の複屈折パターンに認識することができ、いつでも、どこでも、誰でも、例えば、被認証体の真正性を判定することが可能である。
【0095】
本発明の別の実施態様は、上記のビューワ、または複屈折パターン認証用キットを用いた、真正性認証方法である。例えば、位相差フィルムを複屈折パターン側にして、ビューワまたは認証用キットを複屈折パターンにかざして観察する。このように観察することで、軸パターニングされた複屈折パターンが多色に見える。偏光板を回転させるという面倒な作業なく、真正性を認証し、確認できる。例えば、真性品には前記複屈折パターンが形成されている被認証体を、上記のビューワ、または上記のキットを介して観察し、3色以上からなる潜像を確認した場合に、該被認証体を真性品と認証することができる。
【実施例】
【0096】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、本実施例において、レタデーションはKOBRA WR(商品名、王子計測機器(株)製)において波長550nmの光をフィルム法線方向に入射させて測定された値である。
【0097】
参考例1
[複屈折パターンの作製]
(配向層用塗布液AL−1の調製)
下記の組成物を調製し、孔径30μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、配向層用塗布液AL−1として用いた。
──────────────────────────────────―
配向層用塗布液AL−1組成(質量%)
──────────────────────────────────―
液晶配向剤(AL−1−1) 1.0
テトラヒドラフラン 99.0
──────────────────────────────────―
【0098】
【化1】
【0099】
(配向層用塗布液AL−2の調製)
下記の組成物を調製し、孔径30μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、配向層用塗布液AL−2として用いた。
──────────────────────────────────―
配向層用塗布液AL−2組成(質量%)
──────────────────────────────────―
ポリビニルアルコール(PVA205(商品名)、クラレ(株)製)
3.21
ポリビニルピロリドン(Luvitec K30(商品名)、BASF社製)
1.48
蒸留水 52.10
メタノール 43.21
──────────────────────────────────―
【0100】
(光学異方性層用塗布液LC−1の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、光学異方性層用塗布液LC−1として用いた。
──────────────────────────────────―――――
光学異方性層用塗布液LC−1組成(質量%)
──────────────────────────────────―――――
Paliocolor LC242(BASF社製) 31.53
IRGACURE907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製) 0.99
カヤキュアDETX−S(日本化薬(株)製) 0.33
メガファックF−176PF(商品名、大日本インキ化学工業(株)製) 0.15
メチルエチルケトン 67.00
──────────────────────────────────―――――
【0101】
(光学異方性層用塗布液LC−2の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、光学異方性層用塗布液LC−2として用いた。
LC−1−1は2つの反応性基を有する液晶化合物であり、2つの反応性基の片方はラジカル性の反応性基であるアクリル基、他方はカチオン性の反応性基であるオキセタン基である。
LC−1−2は配向制御の目的で添加する円盤状の化合物である。Tetrahedron Lett.誌、第43巻、6793頁(2002)に記載の方法に準じて合成した。
──────────────────────────────────―――――
光学異方性層用塗布液LC−2組成(質量%)
──────────────────────────────────―――――
棒状液晶(LC−1−1) 32.59
水平配向剤(LC−1−2) 0.02
カチオン系光重合開始剤
(CPI100−P(商品名)、サンアプロ株式会社製) 0.66
重合制御剤
(IRGANOX1076(商品名)、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
0.07
メチルエチルケトン 66.66
──────────────────────────────────―――――
【0102】
【化2】
【0103】
(保護層用塗布液PL−1の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、保護層用塗布液PL−1として用いた。
──────────────────────────────────――
保護層用塗布液PL−1組成(質量%)
──────────────────────────────────――
ベンジルメタクリレート/メタクリル酸/メタクリル酸メチル
=35.9/22.4/41.7モル比のランダム共重合物
(重量平均分子量3.8万) 8.05
KAYARAD DPHA(商品名、日本化薬(株)製) 4.83
ラジカル光重合開始剤(2−トリクロロメチル−5−(p−スチリルスチリル)
1,3,4−オキサジアゾール) 0.12
ハイドロキノンモノメチルエーテル 0.002
メガファックF−176PF(商品名、大日本インキ化学工業(株)製)
0.05
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 34.80
メチルエチルケトン 50.538
メタノール 1.61
──────────────────────────────────――
【0104】
(パターン露光用フォトマスク)
図4(A)〜(E)および(A´)〜(D´)の平面図に示す、フォトマスク11を本実施例に用いた。図4(A)はフォトマスクA、図4(B)はフォトマスクB、図4(C)はフォトマスクC、図4(D)はフォトマスクD、図4(E)はフォトマスクE、図4(A´)はフォトマスクA´、図4(B´)はフォトマスクB´、図4(C´)はフォトマスクC´、および図4(D´)はフォトマスクD´をそれぞれ示す。各フォトマスクは厚さ2.1mmの、基材が石英ガラスからなるエマルジョンマスクで、図4(A)〜(D)および(A´)〜(D´)では、黒く塗られた領域の365nmの透過率が0%、白い部分の365nmの透過率が92%である。
また、フォトマスクEは、文字「A」、文字「B」、文字「C」、背景の4つのエリアからなる濃度マスクである。各々の領域のλ=365nmの紫外光に対する透過率を表Aに示す。
表A
――――――――――――
領域 透過率
――――――――――――
文字A 20%
文字B 33%
文字C 92%
背景 0%
――――――――――――
【0105】
(複屈折パターンBP−1の作製)
厚さ50μmのポリエチレンテレフタラートフィルム(ルミラーL−25T60(商品名)、東レ(株)製)の上にアルミニウムを60nm蒸着した。次いで、アルミニウムの上に、ワイヤーバーを用いて配向層用塗布液AL−1を塗布、乾燥した。乾燥膜厚は0.1μmであった。
得られた有機膜の上にフォトマスクAを配置し、紫外線照射器(HOYA CANDEO OPTRONICS社製、EXECURE3000)より出射される紫外光より出射される光を、直線偏光板を介して、支持体に対して垂直の方向から100mW/cm2(365nm)の強度で1秒間照射した。このとき、直線偏光板の吸収軸の方位角がフォトマスクの長辺に対して0°となるように偏光板を配置した。
続いて、フォトマスクをB、C、Dと順に変更し、直線偏光板の吸収軸がそれぞれフォトマスクの長辺に対して45°、90°、135°となるように偏光板を配置した上で、同様に紫外線を照射した。
次いで、ワイヤーバーを用いて、光学異方性層用塗布液LC−1を塗布、膜面温度105℃で2分間乾燥して液晶相状態とした後、空気下にて160mW/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて照度400mW/cm2、照射量400mJ/cm2の紫外線を照射してその配向状態を固定化して厚さ0.9μmの光学異方性層を形成することで、図5の平面図に示すパターンの、BP−1を作製した。
BP−1の文字A12、文字B13、文字C14、背景15の遅相軸はそれぞれ、BP−1の長辺に対して0°、45°、90°、135°であった。また、これらの領域のレタデーションはいずれも135nm(λ/4)であった。
【0106】
(複屈折パターン作製用材料TR−1の作製)
厚さ100μmの易接着ポリエチレンテレフタレートフィルム(コスモシャインA4100、東洋紡績(株)製)の仮支持体の上に、ワイヤーバーを用いて順に、配向層用塗布液AL−2を塗布、乾燥した。乾燥膜厚は0.5μmであった。次いで、配向層をMD方向にラビングし、ワイヤーバーを用いて光学異方性層用塗布液LC−2を塗布、膜面温度105℃で2分間乾燥して液晶相状態とした後、空気下にて160mW/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を照射してその配向状態を固定化して厚さ3.1μmの光学異方性層を形成して光学異方性層塗布サンプルTRC−1を作製した。この際用いた紫外線の照度はUV−A領域(波長320nm〜400nmの積算)において100mW/cm2、照射量はUV−A領域において80mJ/cm2であった。光学異方性層は20℃で固体の高分子で、耐MEK(メチルエチルケトン)性を示した。
次いで、光学異方性層の上に保護層用塗布液PL−1を塗布、乾燥して1.2μmの保護層を形成し、複屈折パターン作製用転写材料TR−1を作製した。
【0107】
(複屈折パターン転写材料TR−A、B、C、Dの作製)
フォトマスクA´、B´、C´、D´はいずれも同じ大きさである。TR−1を、フォトマスクと同じ大きさに4枚切り出した。このとき、それぞれ、長辺がMD方向、長辺がMD方向から135度方向、長辺がMD方向から90度方向、長辺がMD方向から45度方向となるように切り出した。長辺がMD方向となるように切り出したTR−1の上にフォトマスクA´を重ねた状態で、ミカサ社製M−3Lマスクアライナーを用いてピーク波長が365nmの光を露光照度6.25mW/cm2で10秒間照射して、複屈折パターン転写材料TR−Aを作製した。
同様に、長辺がMD方向から135度方向となるように切り出したTR−1、長辺がMD方向から90度方向となるように切り出したTR−1、長辺がMD方向から45度方向となるように切り出したTR−1の上に、それぞれ、フォトマスクB´、C´、D´を用いて露光して、複屈折パターン転写材料TR−B、C、Dを作製した。
【0108】
(複屈折パターンBP−2の作製)
アルミニウムを60nm蒸着した、厚さ25μmのポリイミドフィルム(カプトン200H、東レ・デュポン(株)製)を用意した。複屈折パターン転写材料TR−Aをラミネータ((株)日立インダストリイズ製(LamicII型))を用い、100℃で2分間加熱した上記ポリイミドフィルムのアルミ蒸着面に、ゴムローラー温度130℃、線圧100N/cm、搬送速度1.4m/分でラミネートした。ラミネート後、仮支持体を剥離した。この上に、同様の手法で複屈折パターン転写材料TR−B、C、Dをラミネートした。
その後、さらに200℃のクリーンオーブンで30分間のベークを行って、図5の平面図に示すのと同様のパターンの、複屈折パターンBP−2を作製した。
BP−2の文字A12、文字B13、文字C14、背景15の遅相軸はそれぞれ、BP−2の長辺に対して0°、45°、90°、135°であった。また、これらの領域のレタデーションはいずれも270nm(λ/2)であった。
【0109】
(複屈折パターンBP−3の作製)
支持体を、サンドブラスト処理した厚さ50μmのポリエチレンテレフタラートフィルム(ルミラーL−25T60(商品名)、東レ(株)製)にアルミニウムを60nm蒸着したものとし、光学異方性層の膜厚を2.8μmとする以外は、複屈折パターンBP−1と同様にして、図5の平面図に示すのと同様のパターンの、複屈折パターンBP−3を作製した。
BP−3の文字A12、文字B13、文字C14、背景15の遅相軸はそれぞれ、BP−3の長辺に対して0°、45°、90°、135°であった。また、これらの領域のレタデーションはいずれも420nm(3λ/4)であった。
【0110】
(複屈折パターンBP−4の作製)
厚さ50μmのポリイミドフィルム(カプトン200H、東レ・デュポン(株)製)の上にアルミニウムを60nm蒸着し、その上に、ワイヤーバーを用いて順に、配向層用塗布液AL−2を塗布、乾燥した。乾燥膜厚は0.5μmであった。次いで、配向層をMD方向にラビングし、ワイヤーバーを用いて光学異方性層用塗布液LC−2を塗布、膜面温度105℃で2分間乾燥して液晶相状態とした後、空気下にて160mW/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を照射してその配向状態を固定化して厚さ3.5μmの光学異方性層を形成して光学異方性層塗布サンプルTRC−2を作製した。この際用いた紫外線の照度はUV−A領域(波長320nm〜400nmの積算)において100mW/cm2、照射量はUV−A領域において80mJ/cm2であった。光学異方性層は20℃で固体の高分子で、耐MEK(メチルエチルケトン)性を示した。
次いで、光学異方性層の上に保護層用塗布液PL−1を塗布、乾燥して1.2μmの保護層を形成した。このフィルムに対して、ミカサ社製M−3LマスクアライナーとフォトマスクEを用いて露光照度6.25mW/cm2で8.2秒間の露光を行った。このとき、フィルムのMD方向がフォトマスクの横軸に対し、45°となるように配置した。
その後、さらに200℃のクリーンオーブンで30分間のベークを行い、最後に通常の印刷を行った上で、図5の平面図に示すのと同様のパターンの、複屈折パターンBP−4を作製した。
BP−4の文字A12、文字B13、文字C14、背景15のレタデーションはそれぞれ、143nm、202nm、297nm、3nmであった。また、これらの領域の遅相軸はいずれも45°方向であった。
【0111】
比較例1
(ビューワ1)
図6の概略断面図に示す偏光板21(サンリッツ社製、スーパーハイコントラスト直線偏光板)をビューワ1とした。ビューワ1の位相差(レタデーション)は0である。
【0112】
実施例1
(ビューワ2)
厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士フイルム製、フジタックTD80)の上に、ワイヤーバーを用いて配向層用塗布液AL−2を塗布、乾燥した。乾燥膜厚は0.5μmであった。次いで、配向層をMD方向にラビングし、ワイヤーバーを用いて、光学異方性層用塗布液LC−1を塗布、膜面温度105℃で2分間乾燥して液晶相状態とした後、空気下にて160mW/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて照度400mW/cm2、照射量400mJ/cm2の紫外線を照射してその配向状態を固定化して厚さ0.9μmの光学異方性層を形成することで、位相差フィルムを作製した。
位相差フィルムの遅相軸はMD方向であり、レタデーションは135nm(λ/4)であった。
図7の概略断面図に示すように、サンリッツ社製、スーパーハイコントラスト直線偏光板21の上に、位相差フィルム22を、その遅相軸を偏光板の吸収軸から反時計回りに45度回転させるようにして、粘着剤を用いて貼り合わせ、これをビューワ2とした。
【0113】
実施例2
(ビューワ3)
図8の概略断面図に示すように、サンリッツ社製、スーパーハイコントラスト直線偏光板21の上に、レタデーションが275nm(λ/2)の一軸延伸フィルム23を、その遅相軸を偏光板の吸収軸から反時計回りに45度回転させるようにして、粘着剤を用いて貼り合わせ、これをビューワ3とした。
【0114】
実施例3
(ビューワ4)
ビューワ2において、光学異方性層の膜厚を2.8μmとする以外は、ビューワ2と同様にして、ビューワ4を作製した。このとき、位相差フィルムのレタデーションは420nm(3λ/4)であった。
【0115】
実施例4
(複屈折パターン認証用キット1)
図9の平面図に示すように、2×2cmの窓31,32を2つ開けた縦4cm、横7.5の板紙33(OKボール(商品名)、王子製紙製、310g/m2)を用意した。左側の窓31には、図8に示す実施例2のビューワ3を、一軸延伸フィルム23側が下になるように、かつ、偏光板21の吸収軸が板紙33の長辺に対して90°方向となるように貼り付けた。また、右側の窓32には、ビューワ3を、一軸延伸フィルム23側が下になるように、かつ、偏光板31の吸収軸が、板紙33の長辺に対して45°方向となるように貼り付け、複屈折パターン認証用キット1を得た。
【0116】
実施例5
(複屈折パターン認証用キット2)
実施例4と同様に、2×2cmの窓31,32を2つ開けた縦4cm、横7.5cmの板紙33を用意した。その内、左側の窓31には、図8に示す実施例2のビューワ3を、一軸延伸フィルム23側が下になるように、かつ、偏光板21の吸収軸が板紙33に対して90°方向となるように貼り付けた。また、右側の窓には、図6に示す比較例1のビューワ1を、偏光板21の吸収軸が板紙33の長辺に対して90°方向となるように貼り付けた。
【0117】
試験例1
通常の目視では、反射性の銀色のフィルムである複屈折パターンBP−1を、比較例1のビューワ1を、その吸収軸が複屈折パターンBP−1の長辺に対して90°方向となるように配置して観察した。その結果文字「A」と「C」が明るく、それ以外の部分は暗く見えた。ビューワ1を45°回転させると、明暗が反転した。偏光板を回転させることによって、真偽判定が可能であるが、大量に真偽判定をする際には、効率的ではない。
【0118】
試験例2
通常の目視では、反射性の銀色のフィルムである複屈折パターンBP−2を、比較例1のビューワ1を用いて観察した。その結果、文字「A」と「C」が明るく、それ以外の部分は緑色に見えた。ビューワ1を45°回転させると、色が反転した。偏光板を回転させることによって、真偽判定が可能であるが、大量に真偽判定をする際には、効率的ではない。
【0119】
試験例3
複屈折パターンBP−3は、これを比較例1のビューワ1を用いて観察した。その結果、文字「A」と「C」が明るく、それ以外の部分は紫色に見えた。ビューワ1を45°回転させると、色が反転した。偏光板を回転させることによって、真偽判定が可能であるが、大量に真偽判定をする際には、効率的ではない。
【0120】
試験例4
複屈折パターンBP−1を、実施例1のビューワ2を用いて、位相差フィルムを複屈折パターンBP−1側にして観察した。その結果、文字「A」と文字「C」は薄緑色、文字「B」は緑色、背景は灰色に見え、3色のパターンを視認することができた。
【0121】
試験例5
複屈折パターンBP−1を、実施例2ビューワ3を用いて、位相差フィルムを複屈折パターンBP−1側にして観察した。その結果、文字「A」と文字「C」は灰色、文字「B」は紫色、背景は紺色に見え、3色のパターンをはっきりと視認することができた。
【0122】
試験例6
複屈折パターンBP−2を、実施例2のビューワ3を用いて、位相差フィルムを複屈折パターンBP−2側にして観察した。その結果、文字「A」と文字「C」は薄黄緑色、文字「B」は緑色、背景は灰色に見え、3色のパターンを視認することができた。
【0123】
試験例7
複屈折パターンBP−3を、ビューワ3を用いて、位相差フィルムを複屈折パターンBP−3側にして観察した。その結果、文字「A」と文字「C」は薄黄緑色、文字「B」は緑色、背景は灰色に見え、3色のパターンをはっきりと視認することができた。
【0124】
試験例8
複屈折パターンBP−1を、実施例3のビューワ4を用いて、位相差フィルムを複屈折パターンBP−1側にして観察した。その結果すると、文字「A」と文字「C」は灰色、文字「B」は緑色、背景は黄緑色に見え、3色のパターンを視認することができた。
【0125】
試験例1〜8の結果をまとめて、表1に示す。
【0126】
【表1】
【0127】
表1中、識別性の×は「潜像が2色からなるため、識別性が低い」を意味し、○は「潜像が3色からなり識別性が高いが、その内二色は色相が近い」を意味し、◎は「潜像が3色からなり、その3色いずれも色相が異なるため識別性に非常に優れる」を意味する。
表1に示されるように、比較例1のビューワ1では、2色のパターンしか視認できず、ビューワを回転させなければ真偽判定ができないが、実施例1〜3のビューワ2〜4を用いると偏光板を回転しなくても、3色のパターンを視認でき、真偽判定が可能となる。特に、ビューワ3を用いた場合は、3色の色相が大きく異なるため、視認性が更に優れる。
【0128】
試験例9
実施例4の複屈折パターン認証用キット1を用いて、BP−1を観察した。左側のビューワで観察した場合には、紺色の背景に、灰色の文字「A」、「C」が、紫色の「B」の文字が観察されるが、右側のビューワで観察した場合には、透明の背景に、紫色の文字「A」、及び、紺色の文字「C」が観察された。
【0129】
試験例10
実施例5の複屈折パターン認証用キット2を用いて、BP−1を観察した。左側のビューワで観察した場合には、紺色の背景に、灰色の文字「A」、「C」が、紫色の「B」の文字が観察されるが、右側のビューワで観察した場合には、紺色の背景に、灰色の文字「A」、及び「C」が観察された。
【0130】
試験例9および10に示されるように、複数のビューワを有するキットを用いることで、さらに確実に真偽判定を行うことができるようになる。
【0131】
試験例11
通常の目視では、印刷の施された反射性の銀色のフィルムである複屈折パターンBP−4を、比較例1のビューワ1を用い、その吸収軸がBP−4の長辺に対し90°方向となるように配置して観察した。その結果、文字「A」は紺色、文字「B」は黄緑色、文字「C」は黄色、背景は灰色に見えた。
【0132】
試験例12
複屈折パターンBP−4を、ビューワとして実施例1のビューワ2を用いた以外は、試験例11と同様に観察した。その結果、文字「A」、文字「B」、文字「C」、背景のそれぞれの領域は、黄緑色、橙色、紫色、紺色と色が変化した。
【0133】
試験例13
複屈折パターンBP−4を、実施例2のビューワ3を用いた以外は、試験例11と同様に観察した。その結果、文字「A」、文字「B」、文字「C」、背景のそれぞれの領域は、紫色、青緑色、黄色、緑色となった。
【0134】
試験例11〜13に示されるように、ビューワ1でもある程度の識別性を有しているが、ビューワ2〜3を用いると、更に、多彩な色表現が可能となり、より、識別性が向上した。
【0135】
実施例6
(ビューワ一体型複屈折パターン)
板紙41に、図10の平面図に示すように、印刷を行った。図中、42で示された領域の背景は銀インキで印刷されており、金額の部分「¥10,000」は赤色で印刷されている。
次いで、領域42の上に、配向層用塗布液AL−1を塗布、乾燥した。この上に、図11(a)の平面図に示すフォトマスク44(石英ガラスエマルジョンマスクに、「genuine」の文字を透過部としたもの)を配置し、紫外線照射器(HOYA CANDEO OPTRONICS社製、EXECURE3000)より出射される紫外光より出射される光を、直線偏光板を介して、支持体に対して垂直の方向から100mW/cm2(365nm)の強度で1秒間照射した。このとき、直線偏光板の吸収軸の方位角が板紙41の長辺に対し45°となるように偏光板を配置した。
続いて、フォトマスクを図11(b)に示すフォトマスク45(石英ガラスエマルジョンマスクに、「壱万円」の文字を透過部としたもの)、図11(c)に示すフォトマスク46(石英ガラスエマルジョンマスクに、「genuine」および「壱万円」の文字を透過部としたもの)と順に変更し、直線偏光板の吸収軸が板紙41の長辺に対しそれぞれ90°、135°となるように偏光板を配置した上で、同様に紫外線を照射した。なお、フォトマスク44〜46の平面外形は、領域42の外形とほぼ同一である。
更に、その上に、光学異方性層用塗布液LC−1を塗布、膜面温度105℃で2分間乾燥して液晶相状態とした後、空気下にて160mW/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて照度400mW/cm2、照射量400mJ/cm2の紫外線を照射してその配向状態を固定化して厚さ0.9μmの光学異方性層を形成した。
得られたパターニンにおける、文字「genuine」、文字「壱万円」、背景の遅相軸はそれぞれ、板紙41の長辺に対し45°、90°、135°であった。また、これらの領域のレタデーションはいずれも135nmであった。
その後、図10に示す領域43を打ち抜いた。その部分に、図8に示す実施例2のビューワ3を、一軸延伸フィルム23が手前側に、また、偏光板の吸収軸が90°方向となるように貼り付けた。このようにして、ビューワ一体型複屈折パターンBP−5を作製した。
【0136】
試験例14
図10に示す商品券の領域42は、通常の目視では、銀色の下地印刷の上に赤い文字で「¥10,000」と書かれているように見える。しかし、商品券の右下の部分をつまみ、窓の部分、すなわち、領域43を、領域42に重ねてみると、「¥10,000」の上に、紫色の文字で「genuine」、「¥10,000」の下には、灰色の文字で、「壱万円」という文字が浮かび上がった、このとき、背景の部分は紺色であった。ビューワ一体型複屈折パターンBP−5は、別途、ビューワを用意しなくても、商品券内にビューワが埋め込まれているため、いつでも、どこでも、誰でも、商品券の真正性を判定することが可能である。
【符号の説明】
【0137】
1 偏光板
2 光学異方性層
11 フォトマスク
12 文字A
13 文字B
14 文字C
15 背景
21 偏光板
22 位相差フィルム
23 一軸延伸フィルム
31,32 窓
33 板紙
41 板紙
42,43 領域
44,45,46 フォトマスク
101 支持体
102 反射層
103 光学異方性層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複屈折性の異なる少なくとも2つの領域を有する複屈折パターン認証用ビューワであって、偏光板に、少なくとも一層の光学異方性層が積層され、該光学異方性層の正面レタデーションが5nm以上であり、かつ、該光学異方性層の正面レタデーションと前記複屈折パターンの正面レタデーションの最大値の和がλ/2より大きいことを特徴とするビューワ。
【請求項2】
光軸のパターニングされた複屈折パターンを識別するためのビューワであることを特徴とする請求項1に記載のビューワ。
【請求項3】
複屈折パターンの位相差が(n1/2+1/8)λ〜(n1/2+3/8)λ(n1:0以上の整数)であることを特徴とする請求項2に記載のビューワ。
【請求項4】
ビューワの光学異方性層の位相差が(n2/2−1/8)λ〜(n2/2+1/8)λ(n2:自然数)であることを特徴とする請求項2または3に記載のビューワ。
【請求項5】
レタデーションのパターニングされた複屈折パターンを識別するためのビューワであることを特徴とする請求項1に記載のビューワ。
【請求項6】
ビューワを複数有する複屈折パターン認証用キットであって、少なくとも1つのビューワが請求項1〜5のいずれか1項に記載のビューワからなることを特徴とする複屈折パターン認証用キット。
【請求項7】
前記複数のビューワは、互いに光軸、及び/または、被認証体側の光学異方性層のレタデーションが異なることを特徴とする請求項6に記載の複屈折パターン認証用キット。
【請求項8】
被認証体の一部に、請求項1〜5のいずれか1項に記載のビューワを有することを特徴とする真正性認証媒体。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のビューワ、または請求項6または7に記載の複屈折パターン認証用キットを用いたことを特徴とする真正性認証方法。
【請求項10】
真性品には前記複屈折パターンが形成されている被認証体を、前記ビューワ、または前記キットを介して観察し、3色以上からなる潜像を確認することにより該被認証体の真性品を認証することを特徴とする請求項9記載の真正性認証方法。
【請求項1】
複屈折性の異なる少なくとも2つの領域を有する複屈折パターン認証用ビューワであって、偏光板に、少なくとも一層の光学異方性層が積層され、該光学異方性層の正面レタデーションが5nm以上であり、かつ、該光学異方性層の正面レタデーションと前記複屈折パターンの正面レタデーションの最大値の和がλ/2より大きいことを特徴とするビューワ。
【請求項2】
光軸のパターニングされた複屈折パターンを識別するためのビューワであることを特徴とする請求項1に記載のビューワ。
【請求項3】
複屈折パターンの位相差が(n1/2+1/8)λ〜(n1/2+3/8)λ(n1:0以上の整数)であることを特徴とする請求項2に記載のビューワ。
【請求項4】
ビューワの光学異方性層の位相差が(n2/2−1/8)λ〜(n2/2+1/8)λ(n2:自然数)であることを特徴とする請求項2または3に記載のビューワ。
【請求項5】
レタデーションのパターニングされた複屈折パターンを識別するためのビューワであることを特徴とする請求項1に記載のビューワ。
【請求項6】
ビューワを複数有する複屈折パターン認証用キットであって、少なくとも1つのビューワが請求項1〜5のいずれか1項に記載のビューワからなることを特徴とする複屈折パターン認証用キット。
【請求項7】
前記複数のビューワは、互いに光軸、及び/または、被認証体側の光学異方性層のレタデーションが異なることを特徴とする請求項6に記載の複屈折パターン認証用キット。
【請求項8】
被認証体の一部に、請求項1〜5のいずれか1項に記載のビューワを有することを特徴とする真正性認証媒体。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のビューワ、または請求項6または7に記載の複屈折パターン認証用キットを用いたことを特徴とする真正性認証方法。
【請求項10】
真性品には前記複屈折パターンが形成されている被認証体を、前記ビューワ、または前記キットを介して観察し、3色以上からなる潜像を確認することにより該被認証体の真性品を認証することを特徴とする請求項9記載の真正性認証方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−276713(P2010−276713A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−126829(P2009−126829)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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