説明

複屈折パターン部材およびその製造方法

【課題】識別時に顕在化される潜像が良好な識別性を有し、偽造防止効果が高い複屈折パターン部材を提供する。
【解決手段】光反射性層11上に、同一の層形成組成物から形成され、層内に複屈折性が異なる領域を二つ以上含んだ光学異方性層12が少なくとも一層形成されてなる複屈折パターン部材であって、前記光反射性層11の鏡面輝度反射率が8%以上である複屈折パターン部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学異方性を用いた複屈折パターン部材とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常の状態では知覚不能もしくは知覚困難であり、偏光を使用することで顕在化する画像(以降、潜像という)の視認状態や画像そのものの状態に影響を与える技術としては、偏光状態のパターニング(例えば、特許文献1)、光学異方性を示す分子の配向方向を制御する技術(例えば、特許文献2)などが知られている。特許文献2に記載された技術は重合性液晶を用い、光配向によってパターニングを行うもので、軸方向のパターニングは行えるが、位相差量のパターニングは行えない。特許文献1に記載された技術は高分子液晶を用い、熱現像によって位相差量のパターニングを行うものであるが、微細なパターニングが困難であるという課題がある。
これらの技術を使って得られた画像を有する媒体は、その画像が通常の状態では知覚不能もしくは知覚困難であることから、真贋識別等のために、例えば有価証券、クレジットカード類、書類等に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−39100号公報
【特許文献2】特表2001−525080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの潜像を利用した媒体には光学異方性層の視認側の対面側に光反射性層を備えている。しかし、この光反射性層での反射光量が不十分であれば光学異方性層によって作られる潜像が顕在化したパターンの鮮明度が低下してしまい認識できない恐れがある。
本発明は、識別時に顕在化される潜像が良好な識別性を有し、偽造防止効果が高い複屈折パターン部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題の解決のために鋭意検討の結果、潜像を離床するのに適した反射性層を用いることによって良好な潜像を得られることを見出し、この知見に基づき本発明をなすに到った。すなわち上記課題は、以下の発明により達成された。
【0006】
(1)光反射性層上に、実質的に同一の層形成組成物から形成され、層内に複屈折性が異なる領域を二つ以上含んだ光学異方性層が少なくとも一層形成されてなる複屈折パターン部材であって、前記光反射性層の鏡面輝度反射率が8%以上であることを特徴とする複屈折パターン部材。
(2)前記光反射性層の鏡面輝度反射率が13%以上であることを特徴とする(1)に記載の複屈折パターン部材。
(3)前記光反射性層が、拡散反射性を有することを特徴とする、(1)又は(2)に記載の複屈折パターン部材。
【0007】
(4)前記光反射性層が光反射性支持体であることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の複屈折パターン部材。
(5)前記光反射性層が金属箔または金属薄膜であることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれか1項に記載の複屈折パターン部材。
(6)前記光反射性層が金属フレークもしくは金属微粒子を含有してなることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれか1項に記載の複屈折パターン部材。
(7)前記光反射性層の視認側反対面に接着剤層を有し、該接着剤層中に金属フレークもしくは金属微粒子を含有してなることを特徴とする、(6)に記載の複屈折パターン部材。
(8)前記光反射性層表面が凸凹形状をしていることを特徴とする、(1)〜(7)のいずれか1項に記載の複屈折パターン部材。
(9)前記光学異方性層内に入射した偏光によって潜像パターンが顕在化することを特徴とする、(1)〜(8)のいずれか1項に記載の複屈折パターン部材。
(10)前記潜像が3色以上となるように複屈折率がパターニングされていることを特徴とする(9)に記載の複屈折パターン部材。
【0008】
(11)反応性基を有する液晶化合物を含む層形成組成物からなる層を形成し、該層内の複数領域に異なる反応条件下で反応させたのち、加熱して未反応領域を光学的等方性として反応性基を失活させパターニングした光学異方性層の製造工程を含む、(1)〜(10)のいずれか1項に記載の複屈折パターン部材の製造方法。
(12)前記層形成組成物からなる層を光反射性層上に形成し、前記光学異方性層の製造工程を行うことを特徴とする(11)に記載の複屈折パターン部材の製造方法。
(13)前記層形成組成物からなる層を仮支持体上に形成し、前記光学異方性層の製造工程を行った後に、該光学異方性層を光反射性層上に付与する工程を行うことを特徴とする(11)に記載の複屈折パターン部材の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、識別時に顕在化される潜像が良好な識別性を有し、偽造防止効果が高い複屈折パターン部材を提供できる。本発明の製造方法によれば、識別性が良好で、かつ、微細なパターンを形成することが可能であり、より偽造防止性に優れた複屈折パターン部材を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)〜(f)はそれぞれ本発明の複屈折パターン部材の一実施形態における積層状態を模式的に示す断面図である。
【図2】複屈折パターンの例を示す図であり、(a)はレターデーションについてパターニングされている例の説明図であり、(b)は光軸方向についてパターニングされている例の説明図である。
【図3】実施例におけるコントラストの測定方法を模式的に示す説明図である。
【図4】実施例で用いたフォトマスクVの形状を示す図である。
【図5】実施例で作製した複屈折パターンを、偏光板を介して観察した場合に観察されるパターンの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、レターデーション又はReは面内のレターデーションを表す。面内のレターデーション(Re(λ))はKOBRA 21ADHまたはWR(商品名、王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。本明細書におけるレターデーション又はReは、545±5nmまたは590±5nmの波長で測定されたものを意味する。
【0012】
本明細書において、複屈折パターンとは、複屈折性が異なる領域を複数含むパターンを意味する。複屈折パターンを有する物品は、通常シールなどシート状のものであればよく、又は、複屈折性が異なる領域を複数含むパターンをその一部に有する如何なる物品であってもよい。複屈折パターンを有する物品は、通常、パターニング光学異方性層、すなわち、複屈折性が異なる領域を複数含む層を有する。複屈折性が異なる領域はレターデーション及び/又は光軸方向が互いに異なる領域であればよい。なお、本明細書において「光軸」というとき、「遅相軸」又は「透過軸」を意味する。本明細書において「レターデーション及び/又は光軸方向が互いに異なる領域を2つ以上有する」ことを「レターデーション及び/又は光軸方向をパターン状に有する」又は「レターデーション及び/又は光軸方向がパターニングされている」という場合がある。複屈折パターンは複屈折性が異なる領域を3つ以上有することがさらに好ましい。上記の複屈折性が同一である個々の領域は連続的形状であっても非連続的形状であってもよい。また、パターニング光学異方性層は、単層であっても、複数の層が積層されていてもよい。複屈折パターンを有する物品は通常平面(膜又はシート)状の形状を有していればよい。また、上記領域は平面の法線方向から複屈折パターンを観察した場合に認識されるものであるため、この平面の法線と平行な面により分割された領域となっていればよい。
【0013】
本明細書において「潜像」とは、偏光子等を介しない通常の視認では像が認識されないが、偏光子を介することにより、より好ましくは、偏光子及びパターニング光学異方性層を有する複屈折パターン認証装置を用いることにより、顕在化(可視化)される像を意味する。可視化される像は互いに異なる色を示す領域を2つ以上含む限り特に限定されないが、黒以外の2種の色を示す領域を含むことが好ましい。互いに異なる色を示す領域は3つ以上であることも、好ましい。互いに異なる色を示す領域を3つ以上有するためには、反射スペクトルの異なる領域を3つ以上有していればよい。すなわち、入射偏光が各光学異方性層を通過した後、つまり、出射側の偏光板に入射する直前において、光の偏光状態の異なる領域が3種類以上あればよい。従って、必ずしも、各光学異方性層が、3種類以上の異なるレターデーションを有している必要はない。すなわち、例えば、互いに等しい光軸を有する2層の光学異方性が積層されている場合を考える。A、B、C、Dの4つの領域において、第一の光学異方性層のレターデーションが、0nm、0nm、100nm、100nm、第二の光学異方性層においては、0nm、200nm、0nm、200nmである場合を考えると、各領域におけるレターデーションの合計値は、0nm、200nm、100nm、300nmとなり、4色の互いに異なる色を表現することができる。可視化される像は、認証性の観点から文字又は絵を示す像であることが好ましい。
【0014】
本発明における「反応条件」とは、パターン形成において行わせる液晶性化合物の反応性基の付加重合または縮合重合の反応条件である。具体的には後述する「パターン露光」または「パターン状熱処理」における光照射もしくは温度の条件をいう。
【0015】
本明細書において、「認証」は、「識別」、「有無の確認」または「真偽判定」の意味を含む。複屈折パターンは、医薬品、家電製品、衣料品といった、各種商品のタグなどに設けられればよく、本発明を利用して複屈折パターンを元に物品を認証することでブランドプロテクションに用いることができる。あるいは、クレジットカード、入退室管理カードといったIDカード、紙幣、小切手、商品券等の有価証券に用いることで、偽造防止効果が期待される。複屈折パターンは、反射支持体上にパターニング光学異方性層を有するものであってもよく、透明支持体上にパターニング光学異方性層を有するものであってもよい。
【0016】
本発明の複屈折パターン部材の積層状態における実施形態のうちの6つの例を図1(a)〜(f)に示す。これらは本発明の複屈折パターン部材の積層状態を模式的に示す断面図である。いずれも光反射性層11が支持体を兼ねる形態のものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。また、いずれの形態も、別の仮支持体の上に積層して作製した複屈折パターン作製部材を、光反射性層11上に転写したものを示したため、転写層13を有するが、本発明の複屈折パターン部材は転写によらずに作製することもできる。
図1(a)は光反射性層11、転写層13、及び光学異方性層12からなる複屈折パターン部材である。図1(b)はさらに配向層14を有する構成である。本発明においては、他の機能性層を有してもよく、図1(c)の例では表面に力学特性制御層15が形成されている。図1(d)〜(f)にはさらに表面に表面保護層16を有する形態を示した。
【0017】
複屈折パターンの例としてはレターデーション及び/又は光軸方向が面内でパターニングされた光学異方性層を含む物品が挙げられる。複屈折パターンの例を図2に示す。
図2(a)はレターデーションについてパターニングされている例の説明図である。図2(a)に示す例においてはa nm、b nm、c nm、及びd nmで示されるレターデーションは互いに異なるものとする。図2(b)は光軸方向についてパターニングされている例の説明図である。図2(b)において矢印は光軸方向を示す。
光軸方向が面内でパターニングされた光学異方性層は、例えば、特表2001−525080号公報に記載の方法などで得ることができる。
また、レターデーションが面内でパターニングされた光学異方性層は、例えば、以下に詳細に説明する方法で作製することができる。
【0018】
[複屈折パターン部材]
(光学異方性層)
本発明の光学異方性層は実質的に同一の層形成組成物から形成される。ここで同一の層形成組成物とは、厳密には分子の電子状態が異なり、複屈折性が異なるが原材料が同一であることをいう。
本発明の複屈折パターン部材は少なくとも1層の光学異方性層を含む。この光学異方性層は、位相差を測定したときにReが実質的に0でない入射方向が一つでもある、即ち等方性でない光学特性を有する層である。
複屈折パターン部材(パターンが付与された物品)における光学異方性層は高分子を含む。高分子を含むことにより、複屈折性、透明性、耐溶媒性、強靭性および柔軟性といった異なった種類の要求を満たすことができる。パターン形成前の該光学異方性層中の高分子は未反応の反応性基を有することが好ましい。露光により未反応の反応性基が反応して高分子鎖の架橋が起こるが、露光条件の異なる露光によって高分子鎖の架橋の程度が異なり、その結果としてレターデーション値が変化して複屈折パターンが形成しやすくなると考えられるためである。
【0019】
光学異方性層は好ましくは20℃において、より好ましくは30℃において、さらに好ましくは40℃において固体であればよい。20℃において固体であると、他の機能性層の塗布や、支持体上への転写や貼合が容易であるからである。
【0020】
光学異方性層でレターデーションを付与した領域のレターデーションの値は20℃において、5nm以上であればよく、10nm以上2000nm以下であることが好ましく、20nm以上1000nm以下であることが最も好ましい。レターデーションが小さすぎると複屈折パターンの形成が困難である場合がある。レターデーションが大きすぎると、誤差が大きくなり実用できる精度を達成することが困難である場合がある。
【0021】
光学異方性層の製法としては特に限定されないが、少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含んでなる溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、熱または電離放射線照射して重合固定化して作製する方法;少なくとも2つ以上の反応性基を有するモノマーを重合固定化した層を延伸する方法;高分子からなる層にカップリング剤を用いて反応性基を導入した後に延伸する方法;または高分子からなる層を延伸した後にカップリング剤を用いて反応性基を導入する方法などの既知の方法が挙げられる。
また、後述するように、本発明の光学異方性層は転写により形成されたものであってもよい。
前記光学異方性層の厚さは、0.1〜20μmであることが好ましく、0.5〜10μmであることがさらに好ましい。
【0022】
(液晶性化合物を含有する層形成組成物を重合固定化してなる光学異方性層)
光学異方性層の製法として少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含んでなる溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、熱または電離放射線照射して重合固定化して作製する場合について以下に説明する。本製法は、後述する高分子を延伸して光学異方性層を得る製法と比較して、薄い膜厚で同等のレターデーションを有する光学異方性層を得ることや、緻密なパターン制御が容易となる。
【0023】
(液晶性化合物)
一般的に、液晶性化合物はその形状から、棒状タイプと円盤状タイプに分類できる。さらにそれぞれ低分子と高分子タイプがある。高分子とは一般に重合度が100以上のものを指す(高分子物理・相転移ダイナミクス,土井 正男 著,2頁,岩波書店,1992)。本発明では、いずれの液晶性化合物を用いることもできるが、棒状液晶性化合物または円盤状液晶性化合物を用いるのが好ましい。2種以上の棒状液晶性化合物、2種以上の円盤状液晶性化合物、又は棒状液晶性化合物と円盤状液晶性化合物との混合物を用いてもよい。温度変化や湿度変化を小さくできることから、反応性基を有する棒状液晶性化合物または円盤状液晶性化合物を用いて形成することがより好ましく、その場合少なくとも1種は1液晶分子中の反応性基が2以上あるものを用いることがさらに好ましい。液晶性化合物は二種類以上の混合物でもよく、その場合少なくとも1つが2以上の反応性基を有していることが好ましい。
【0024】
液晶性化合物が重合条件の異なる2種類以上の反応性基を有することもまた好ましい。この場合、後述するパターン形成工程における反応条件を選択して、複数種類の反応性基の一部種類のみを選択的に重合させることにより、未反応の反応性基を有する高分子を含む光学異方性層を作製することが可能となる。用いる重合条件としては重合固定化に用いる電離放射線の波長域や重合温度でもよいし、用いる重合機構の違いでもよいが、好ましくは用いる開始剤の種類によって制御可能な、ラジカル性の反応基とカチオン性の反応基の組み合わせが選択的な重合の制御の観点で好ましい。前記ラジカル性の反応性基がエチレン性不飽和基、特にアクリル基および/またはメタクリル基であり、かつ前記カチオン性基がビニルエーテル基、オキセタン基および/またはエポキシ基である組み合わせが反応性を制御しやすく特に好ましい。
また、本発明において液晶性化合物から形成したとは、最終的にできた物が液晶性を示す必要はなく、例えば、熱、光等で反応する基を有した低分子ディスコティック液晶が、捜査の過程で熱、光等の反応により重合または架橋し、高分子量化し液晶性を失ったものも含まれる。
【0025】
棒状液晶性化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。以上のような低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。上記高分子液晶性化合物は、低分子の反応性基を有する棒状液晶性化合物が重合した高分子化合物である。特に好ましく用いられる上記低分子の反応性基を有する棒状液晶性化合物としては、下記一般式(I)で表される棒状液晶性化合物である。
一般式(I):Q1−L1−A1−L3−M−L4−A2−L2−Q2
式中、Q1およびQ2はそれぞれ独立に、反応性基であり、L1、L2、L3およびL4はそれぞれ独立に、単結合または二価の連結基を表す。A1およびA2はそれぞれ独立に、炭素原子数2〜20のスペーサ基を表す。Mはメソゲン基を表す。
以下に、上記一般式(I)で表される反応性基を有する棒状液晶性化合物についてさらに詳細に説明する。式中、Q1およびQ2は、それぞれ独立に、反応性基である。反応性基の重合反応は、付加重合(開環重合を含む)または縮合重合であることが好ましい。換言すれば、反応性基は付加重合反応または縮合重合反応が可能な反応性基であることが好ましい。以下に反応性基の例を示す。式中、Etはエチル基、Prはプロピル基を表す。
【0026】
【化1】

【0027】
1、L2、L3およびL4で表される二価の連結基としては、−O−、−S−、−CO−、−NR2−、−CO−O−、−O−CO−O−、−CH2−O−、−O−CH2−、−CO−NR2−、−NR2−CO−、−O−CO−、−O−CO−NR2−、−NR2−CO−O−、およびNR2−CO−NR2−からなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。上記R2は炭素原子数が1〜7のアルキル基または水素原子である。前記式(I)中、Q1−L1−および/またはQ2−L2−は、CH2=CH−CO−O−、CH2=C(CH3)−CO−O−、CH2=C(Cl)−CO−O−、および−CH2−を連結基として2位に持つ2-メチル-オキセタンが好ましく、CH2=CH−CO−O−、および−CH2−を連結基として2位に持つ2-メチル-オキセタンが最も好ましい。
【0028】
1およびA2は、炭素原子数2〜20を有するスペーサ基を表す。炭素原子数2〜12のアルキレン基、アルケニレン基、およびアルキニレン基が好ましく、特にアルキレン基が好ましい。スペーサ基は鎖状であることが好ましく、隣接していない酸素原子または硫黄原子を含んでいてもよい。また、前記スペーサ基は、置換基を有していてもよく、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、シアノ基、メチル基、エチル基が置換していてもよい。
Mで表されるメソゲン基としては、すべての公知のメソゲン基が挙げられる。特に下記一般式(II)で表される基が好ましい。
一般式(II):−(−W1−L5)n−W2
式中、W1およびW2は各々独立して、二価の環状アルキレン基もしくは環状アルケニレン基、二価のアリール基または二価のヘテロ環基を表し、L5は単結合または連結基を表し、連結基の具体例としては、前記式(I)中、L1〜L4で表される基の具体例が挙げられる。nは1、2または3を表す。
【0029】
1およびW2としては、1,4−シクロヘキサンジイル、1,4−フェニレン、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5ジイル、1,3,4−チアジアゾール−2,5−ジイル、1,3,4−オキサジアゾール−2,5−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、ナフタレン−1,5−ジイル、チオフェン−2,5−ジイル、ピリダジン−3,6−ジイルが挙げられる。1,4−シクロヘキサンジイルの場合、トランス体およびシス体の構造異性体があるが、どちらの異性体であってもよく、任意の割合の混合物でもよい。トランス体であることがより好ましい。W1およびW2は、それぞれ置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、シアノ基、炭素原子数1〜10のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基など)、炭素原子数1〜10のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基など)、炭素原子数1〜10のアシル基(ホルミル基、アセチル基など)、炭素原子数1〜10のアルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基など)、炭素原子数1〜10のアシルオキシ基(アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基など)、ニトロ基、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基などが挙げられる。
前記一般式(II)で表されるメソゲン基の基本骨格で好ましいものを、以下に例示する。これらに上記W1およびW2が有していてもよい置換基が置換していてもよい。
【0030】
【化2】

【0031】
以下に、前記一般式(I)で表される化合物の例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、一般式(I)で表される化合物は、特表平11−513019号公報(WO97/00600)に記載の方法に従って合成することができる。
【0032】
【化3】

【0033】
【化4】

【0034】
【化5】

【0035】
【化6】

【0036】
【化7】

【0037】
【化8】

【0038】
本発明の他の態様として、前記光学異方性層にディスコティック液晶を使用した態様がある。前記光学異方性層は、モノマー等の低分子量の液晶性ディスコティック化合物の層または重合性の液晶性ディスコティック化合物の重合(硬化)により得られるポリマーの層であるのが好ましい。前記ディスコティック(円盤状)化合物の例としては、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physicslett,A,78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体およびJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルなどを挙げることができる。上記ディスコティック(円盤状)化合物は、一般的にこれらを分子中心の円盤状の母核とし、直鎖のアルキル基やアルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基等の基(L)が放射線状に置換された構造であり、液晶性を示し、一般的にディスコティック液晶とよばれるものが含まれる。ただし、このような分子の集合体が一様に配向した場合は負の一軸性を示すが、この記載に限定されるものではない。
【0039】
本発明では、下記一般式(III)で表わされるディスコティック液晶性化合物を用いることができる。
一般式(III): D(−L−P)n
式中、Dは円盤状コアであり、Lは二価の連結基であり、Pは重合性基であり、nは4〜12の整数である。
前記式(III)中、円盤状コア(D)、二価の連結基(L)および重合性基(P)の好ましい具体例は、それぞれ、特開2001−4837号公報に記載の(D1)〜(D15)、(L1)〜(L25)、(P1)〜(P18)が挙げられ、同公報に記載される円盤状コア(D)、二価の連結基(L)および重合性基(P)に関する内容をここに好ましく適用することができる。
上記ディスコティック化合物の好ましい例としては特開2007−121986号公報の[0045]〜[0055]に記載の化合物を挙げることができる。
【0040】
光学異方性層は、液晶性化合物を含有する層形成組成物(例えば塗布液)を、後述する配向層の表面に塗布し、所望の液晶相を示す配向状態とした後、該配向状態を熱又は電離放射線の照射により固定することで作製された層であるのが好ましい。
液晶性化合物として、反応性基を有する円盤状液晶性化合物を用いる場合、水平配向、垂直配向、傾斜配向、およびねじれ配向のいずれの配向状態で固定されていてもよい。尚、本明細書において「水平配向」とは、棒状液晶の場合、分子長軸と透明支持体の水平面が平行であることをいい、円盤状液晶の場合、円盤状液晶性化合物のコアの円盤面と透明支持体の水平面が平行であることをいうが、厳密に平行であることを要求するものではなく、本明細書では、水平面とのなす傾斜角が10度未満の配向を意味するものとする。傾斜角は0〜5度が好ましく、0〜3度がより好ましく、0〜2度がさらに好ましく、0〜1度が最も好ましい。
以下に、面内の配向方向は同じで、レターデーションについてパターニングする事例について説明を行うが、光軸方向が面内でパターニングされた光学異方性層は、特開2008−256941号公報に記載の方法などで得ることができる。さらに、これらを組み合わせることにより、面内のレターデーションと配向方向が任意にパターニングされた光学異方性層を作製することができる。
【0041】
液晶性化合物を含む層形成組成物からなる光学異方性層を2層以上積層する場合、液晶性化合物の組み合わせについては特に限定されず、全て円盤状液晶性化合物からなる層の積層体、全て棒状性液晶性化合物からなる層の積層体、円盤状液晶性化合物を含む組成物からなる層と棒状性液晶性化合物を含む組成物からなる層の積層体であってもよい。また、各層の配向状態の組み合わせも特に限定されず、同じ配向状態の光学異方性層を積層してもよいし、異なる配向状態の光学異方性層を積層してもよい。
【0042】
光学異方性層は、液晶性化合物および下記の重合開始剤や他の添加剤を含む塗布液を、後述する配向層の上に塗布する方法などで形成することが好ましい。塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0043】
(液晶性化合物の配向状態の固定化)
配向させた液晶性化合物は、配向状態を維持して固定することが好ましい。固定化は、液晶性化合物に導入した反応性基の重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれるが、光重合反応がより好ましい。光重合反応としては、ラジカル重合、カチオン重合のいずれでも構わない。ラジカル光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。カチオン光重合開始剤の例には、有機スルフォニウム塩系、ヨードニウム塩系、フォスフォニウム塩系等を例示することができ、有機スルフォニウム塩系、が好ましく、トリフェニルスルフォニウム塩が特に好ましい。これら化合物の対イオンとしては、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロフォスフェートなどが好ましく用いられる。
【0044】
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。液晶性化合物の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、10mJ/cm2〜10J/cm2であることが好ましく、25〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。照度は10〜1000mW/cm2であることが好ましく、20〜500mW/cm2であることがより好ましく、40〜350mW/cm2であることがさらに好ましい。照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは加熱条件下で光照射を実施してもよい。
【0045】
(偏光照射による光配向)
前記光学異方性層は、偏光照射による光配向で面内のレターデーションが発現あるいは増加した層であってもよい。この偏光照射は上記配向固定化における光重合プロセスを兼ねてもよいし、先に偏光照射を行ってから非偏光照射でさらに固定化を行ってもよいし、非偏光照射で先に固定化してから偏光照射によって光配向を行ってもよいが、偏光照射のみを行うか先に偏光照射を行ってから非偏光照射でさらに固定化を行うことが望ましい。偏光照射が上記配向固定化における光重合プロセスを兼ねる場合であってかつ重合開始剤としてラジカル重合開始剤を用いる場合、偏光照射は酸素濃度0.5%以下の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm2〜10J/cm2であることが好ましく、100〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。照度は20〜1000mW/cm2であることが好ましく、50〜500mW/cm2であることがより好ましく、100〜350mW/cm2であることがさらに好ましい。偏光照射によって硬化する液晶性化合物の種類については特に制限はないが、反応性基としてエチレン不飽和基を有する液晶性化合物が好ましい。照射波長としては300〜450nmにピークを有することが好ましく、350〜400nmにピークを有することがさらに好ましい。
【0046】
(偏光照射後の紫外線照射による後硬化)
前記光学異方性層は、最初の偏光照射(光配向のための照射)の後に、偏光もしくは非偏光紫外線をさらに照射してもよい。最初の偏光照射の後に偏光もしくは非偏光紫外線をさらに照射することで反応性基の反応率を高め(後硬化)、密着性等を改良し、大きな搬送速度で生産できるようになる。後硬化は偏光でも非偏光でも構わないが、偏光であることが好ましい。また、2回以上の後硬化をすることが好ましく、偏光のみでも、非偏光のみでも、偏光と非偏光を組み合わせてもよいが、組み合わせる場合は非偏光より先に偏光を照射することが好ましい。紫外線照射は不活性ガス置換してもしなくてもよいが、特に重合開始剤としてラジカル重合開始剤を用いる場合は酸素濃度0.5%以下の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm2〜10J/cm2であることが好ましく、100〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。照度は20〜1000mW/cm2であることが好ましく、50〜500mW/cm2であることがより好ましく、100〜350mW/cm2であることがさらに好ましい。照射波長としては偏光照射の場合は300〜450nmにピークを有することが好ましく、350〜400nmにピークを有することがさらに好ましい。非偏光照射の場合は200〜450nmにピークを有することが好ましく、250〜400nmにピークを有することがさらに好ましい。
【0047】
(ラジカル性の反応性基とカチオン性の反応性基を有する液晶化合物の配向状態の固定化)
前述したように、液晶性化合物が重合条件の異なる2種類以上の反応性基を有することもまた好ましい。この場合、条件を選択して複数種類の反応性基の一部種類のみを重合させることにより、未反応の反応性基を有する高分子を含む光学異方性層を作製することが可能である。このような液晶性化合物として、ラジカル性の反応基とカチオン性の反応基を有する液晶性化合物(具体例としては例えば、前述のI−22〜I−25)を用いた場合に特に適した重合固定化の条件について以下に説明する。
【0048】
まず、重合開始剤としては重合させようと意図する反応性基に対して作用する光重合開始剤のみを用いることが好ましい。すなわち、ラジカル性の反応基を選択的に重合させる場合にはラジカル光重合開始剤のみを、カチオン性の反応基を選択的に重合させる場合にはカチオン光重合開始剤のみを用いることが好ましい。光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.1〜8質量%であることがより好ましく、0.5〜4質量%であることが特に好ましい。
【0049】
次に、重合のための光照射は紫外線を用いることが好ましい。この際、照射エネルギーおよび/または照度が強すぎるとラジカル性反応性基とカチオン性反応性基の両方が非選択的に反応してしまう恐れがある。したがって、照射エネルギーは、5mJ/cm2〜500mJ/cm2であることが好ましく、10〜400mJ/cm2であることがより好ましく、20mJ/cm2〜200mJ/cm2であることが特に好ましい。また照度は5〜500mW/cm2であることが好ましく、10〜300mW/cm2であることがより好ましく、20〜100mW/cm2であることが特に好ましい。照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。
【0050】
また光重合反応のうち、ラジカル光重合開始剤を用いた反応は酸素によって阻害され、カチオン光重合開始剤を用いた反応は酸素によって阻害されない。従って、液晶性化合物としてラジカル性の反応基とカチオン性の反応基を有する液晶化合物を用いてその反応性基の片方種類を選択的に重合させる場合、ラジカル性の反応基を選択的に重合させる場合には窒素などの不活性ガス雰囲気下で光照射を行うことが好ましく、カチオン性の反応基を選択的に重合させる場合には敢えて酸素を有する雰囲気下(例えば大気下)で光照射を行うことが好ましい。
【0051】
(水平配向剤)
前記光学異方性層の形成用組成物中に、下記一般式(1)〜(3)で表される化合物および一般式(4)のモノマーを用いた含フッ素ホモポリマーまたはコポリマーの少なくとも一種を含有させることで、液晶性化合物の分子を実質的に水平配向させることができる。
以下、下記一般式(1)〜(4)について、順に説明する。
【0052】
【化9】

【0053】
式中、R1、R2およびR3は各々独立して、水素原子又は置換基を表し、X1、X2およびX3は単結合又は二価の連結基を表す。R1〜R3で各々表される置換基としては、好ましくは置換もしくは無置換の、アルキル基(中でも、無置換のアルキル基またはフッ素置換アルキル基がより好ましい)、アリール基(中でもフッ素置換アルキル基を有するアリール基が好ましい)、置換もしくは無置換のアミノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子である。X1、X2およびX3で各々表される二価の連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、二価の芳香族基、二価のヘテロ環残基、−CO−、−NRa−(Raは炭素原子数が1〜5のアルキル基または水素原子)、−O−、−S−、−SO−、−SO2−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。二価の連結基は、アルキレン基、フェニレン基、−CO−、−NRa−、−O−、−S−およびSO2−からなる群より選ばれる二価の連結基又は該群より選ばれる基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基であることがより好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましい。アルケニレン基の炭素原子数は、2〜12であることが好ましい。二価の芳香族基の炭素原子数は、6〜10であることが好ましい。
【0054】
【化10】

【0055】
式中、Rは置換基を表し、mは0〜5の整数を表す。mが2以上の整数を表す場合、複数個のRは同一でも異なっていてもよい。Rとして好ましい置換基は、R1、R2、およびR3で表される置換基の好ましい範囲として挙げたものと同じである。mは、好ましくは1〜3の整数を表し、特に好ましくは2又は3である。
【0056】
【化11】

【0057】
式中、R4、R5、R6、R7、R8およびR9は各々独立して、水素原子又は置換基を表す。R4、R5、R6、R7、R8およびR9でそれぞれ表される置換基は、好ましくは一般式(1)におけるR1、R2およびR3で表される置換基の好ましいものとして挙げたものである。本発明に用いられる水平配向剤については、特開2005−99248号公報の段落番号[0092]〜[0096]に記載の化合物を用いることができ、それら化合物の合成法も該公報に記載されている。
【0058】
【化12】

【0059】
式中、R10は水素原子またはメチル基を表し、Xは酸素原子、硫黄原子を表し、Zは水素原子またはフッ素原子を表し、mは1以上6以下の整数、nは1以上12以下の整数を表す。一般式(4)を含む含フッ素ポリマー以外にも、塗布におけるムラ改良ポリマーとして特開2005−206638および特開2006−91205に記載の化合物を水平配向剤として用いることができ、それら化合物の合成法も該明細書に記載されている。
水平配向剤の添加量としては、液晶性化合物の質量の0.01〜20質量%が好ましく、0.01〜10質量%がより好ましく、0.02〜1質量%が特に好ましい。なお、前記一般式(1)〜(4)にて表される化合物は、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0060】
(延伸によって作製される光学異方性層)
光学異方性層は高分子の延伸によって作製されたものでもよい。光学異方性層は少なくとも1つの未反応の反応性基を持つことが好ましいが、このような高分子を作製する際にはあらかじめ反応性基を有する高分子を延伸してもよいし、延伸後の光学異方性層にカップリング剤などを用いて反応性基を導入してもよい。このときの反応性基としては、カルボキシル基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基、エポキシ基、オキセタン基、ビニル基、アクリル基、メタクリル基などが挙げられる。延伸法によって得られる光学異方性層の特長としては、コストが安いこと、及び自己支持性を持つ(光学異方性層の形成及び維持に支持体を要しない)ことなどが挙げられる。
【0061】
(光学異方性層の後処理)
作製された光学異方性層を改質するために、様々な後処理を行ってもよい。後処理としては例えば、密着性向上の為のコロナ処理や、柔軟性向上の為の可塑剤添加、保存性向上の為の熱重合禁止剤添加、反応性向上の為のカップリング処理などが挙げられる。また、光学異方性層中の高分子が未反応の反応性基を有する場合、該反応性基に対応する重合開始剤を添加することも有効な改質手段である。例えば、カチオン性の反応性基とラジカル性の反応性基を有する液晶性化合物をカチオン光重合開始剤を用いて重合固定化した光学異方性層に対してラジカル光重合開始剤を添加することで、後にパターン露光を行う際の未反応のラジカル性の反応性基の反応を促進することができる。可塑剤や光重合開始剤の添加手段としては、例えば、光学異方性層を該当する添加剤の溶液に浸漬する手段や、光学異方性層の上に該当する添加剤の溶液を塗布して浸透させる手段などが挙げられる。また、光学異方性層の上に他の層を塗布する際にその層の塗布液に添加剤を添加しておき、光学異方性層に浸漬させる方法もあげられる。本発明においては、この際に浸漬させる添加剤、特には光重合開始剤の種類や量により、後に述べる複屈折パターン作製材料へのパターン露光時の各領域への露光量と最終的に得られる各領域のレターデーションとの関係を調整し、所望する材料特性に近づけることが可能である。
【0062】
(光学異方性層以外の複屈折パターン部材の構成材料)
複屈折パターン部材を得るための光学異方性層を含む構造体(以降、「複屈折パターン作製材料」という。)は複屈折パターンを作製する為の材料であり、所定の工程を経ることで複屈折パターン部材を得ることができる材料である。複屈折パターン作製材料は製造適性などの観点から、通常、フィルム、またはシート形状であるとよい。複屈折パターン作製材料は前述の光学異方性層のほかに、様々な副次的機能を付与することが可能である機能性層を有していてもよい。機能性層としては、支持体、配向層、後粘着層などが挙げられる。
また、転写材料として用いられる複屈折パターン作製材料、又は転写材料を用いて作製された複屈折パターン作製材料などにおいて、仮支持体、転写接着層、または力学特性制御層を有していてもよい。
複屈折パターン部材を構成する光学異方性層以外の層は潜像の形成に影響を与えないレターデーション有するように構成されるか、それらの層が有するレターデーションを考慮して潜像形成のための光学異方性層のレターデーション値を設定することができる。
【0063】
[支持体]
複屈折パターン部材は、レターデーションを施していない基材を有する。基材のレターデーションは2000nm以下、好ましくは1000nm以下、より好ましくは500nm以下である。下限は好ましくは0nmであるがこれに制限されるものではない。この基材には以下の支持体が含まれる。
複屈折パターン部材は光反射性支持体を有するのが好ましい。支持体には特に限定はないが、反射光を用いて潜像を顕在化させる場合には後述する光反射性層を有する支持体または、反射機能を有する支持体を用いればよい。反射機能を有する支持体の例としてはアルミホイル、ステンレスのほか、光沢のある印刷を任意の支持体に設けることによって反射機能を付与してもよい。またホログラム加工を施した支持体を用いることもできる。支持体のそのほかの例としてはセルロースエステル(例、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート)、ポリオレフィン(例、ノルボルネン系ポリマー)、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(例、ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリエステルおよびポリスルホン、ノルボルネン系ポリマーなどのプラスチックフィルムや紙、布などが挙げられる。支持体の膜厚としては、ロールツーロールなどの連続製造に用いる場合などでは3〜500μmが好ましく、10〜200μmがより好ましいが、製造形態によって適宜選択できる。光学異方性層を支持体に直接形成する場合では、支持体は後に述べるベークで着色したり変形したりしないだけの耐熱性を有することが好ましい。複屈折パターン部材は着色支持体を含むものであってもよい。すなわち、複屈折パターン部材は認証装置を用いない目視でも視認可能なパターンが描かれていてもよい。特定の色で複屈折パターンを読み込む場合は、それ以外の色の影響を受けないのでそれ以外の色で着色支持体を用いることができる。
【0064】
[配向層]
支持体もしくは仮支持体上又は支持体もしくは仮支持体上に塗設された下塗層上に配向層を設けることができる。上記したように、光学異方性層の形成における液晶性化合物の配向は、光異方性層の下層に設けた配向層を用いて行うことができる。配向層は、その上に設けられる液晶性化合物の配向方向を規定するように機能する。配向層は、光学異方性層に配向性を付与できるものであれば、どのような層でもよい。配向層の好ましい例としては、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理された層、無機化合物の斜方蒸着層、およびマイクログルーブを有する層、さらにω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライドおよびステアリル酸メチル等のラングミュア・ブロジェット法(LB膜)により形成される累積膜、あるいは電場あるいは磁場の付与により誘電体を配向させた層を挙げることができる。
【0065】
配向層用の有機化合物の例としては、ポリメチルメタクリレート、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、スチレン/マレインイミド共重合体、ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、ポリビニルピロリドン、スチレン/ビニルトルエン共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリカーボネート等のポリマーおよびシランカップリング剤等の化合物を挙げることができる。好ましいポリマーの例としては、ポリイミド、ポリスチレン、スチレン誘導体のポリマー、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよびアルキル基(炭素原子数6以上が好ましい)を有するアルキル変性ポリビニルアルコールを挙げることができる。
【0066】
配向層の形成には、ポリマーを使用するのが好ましい。利用可能なポリマーの種類は、液晶性化合物の配向(特に平均傾斜角)に応じて決定することができる。例えば、液晶性化合物を水平に配向させるためには配向層の表面エネルギーを低下させないポリマー(通常の配向用ポリマー)を用いる。具体的なポリマーの種類については液晶セルまたは光学補償シートについて種々の文献に記載がある。例えば、ポリビニルアルコールもしくは変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸もしくはポリアクリル酸エステルとの共重合体、ポリビニルピロリドン、セルロースもしくは変性セルロース等が好ましく用いられる。
配向層用素材には液晶性化合物の反応性基と反応できる官能基を有してもよい。反応性基は、側鎖に反応性基を有する繰り返し単位を導入するか、あるいは、環状基の置換基として導入することができる。界面で液晶性化合物と化学結合を形成する配向層を用いてもよい。かかる配向層としては特開平9−152509号公報に記載されており、酸クロライドやカレンズMOI(商品名、昭和電工(株)製)を用いて側鎖にアクリル基を導入した変性ポリビニルアルコールが特に好ましい。配向層の厚さは0.01〜5μmであることが好ましく、0.05〜2μmであることがさらに好ましい。配向層は酸素遮断膜としての機能を有していてもよい。
【0067】
また、LCDの配向層として広く用いられているポリイミド膜(好ましくはフッ素原子含有ポリイミド)も有機配向層として好ましい。これはポリアミック酸(例えば、日立化成工業(株)製のLQ/LXシリーズ(商品名)、日産化学(株)製のSEシリーズ(商品名)等)を支持体面に塗布し、100〜300℃で0.5〜1時間焼成した後、ラビングすることにより得られる。
【0068】
また、前記ラビング処理は、LCDの液晶配向処理工程として広く採用されている処理方法を利用することができる。即ち、配向層の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリエステル繊維などを用いて一定方向に擦ることにより配向を得る方法を用いることができる。一般的には、長さおよび太さが均一な繊維を平均的に植毛した布などを用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。
【0069】
また、無機斜方蒸着膜の蒸着物質としては、SiO2を代表とし、TiO2、ZnO2等の金属酸化物、あるいやMgF2等のフッ化物、さらにAu、Al等の金属が挙げられる。尚、金属酸化物は、高誘電率のものであれば斜方蒸着物質として用いることができ、上記に限定されるものではない。無機斜方蒸着膜は、蒸着装置を用いて形成することができる。フィルム(支持体)を固定して蒸着するか、あるいは長尺フィルムを移動させて連続的に蒸着することにより無機斜方蒸着膜を形成することができる。
【0070】
[光反射性層]
本発明の複屈折パターン部材において光反射性層又は上記のような反射機能を有する支持体を用いると、パターニング光学異方性層から見て光反射性層又は支持体の反対側面から偏光板を介して観察することによって、複屈折パターンによる潜像を可視化することができる。
光反射性層はその鏡面輝度反射率が8%以上であり、13%以上が好ましく、25%以上であることが特に好ましい。
鏡面輝度反射率が小さすぎると、光反射性層によって反射されて光学異方性層より出射する光量が不足してしまい、その反射光によって形成される潜像は暗く写ってしまい十分なコントラストが得られないため、視認性が悪くなってしまう。
なお、反射率の上限については特に制限は無く、入射光量が効率良く出射して潜像を形成することから考えれば高い方が好ましい。ただし、水銀灯の近くのような強い光の下で潜像確認が想定される場合には、あえて反射率を抑えることによって適切な視認性を確保することができる。
【0071】
光反射性層の反射特性は前述の反射率により反射光量が確保されれば、鏡面反射性を有するだけでなく拡散反射性を有してもかまわない。光反射性層はその拡散輝度反射率が75%以下であることが好ましく、50%以下がより好ましく、25%以下であることが特に好ましい。
なお、本発明において「鏡面反射性を有する」とは鏡面輝度反射率が5%以上であることをいい、「拡散反射性を有する」とは拡散輝度反射率が5%以上であることをいう。
本発明において、鏡面反射性とは、試料の表面に光線を入射させたときに、入射角=反射角となる方向に、試料が光線を反射させる性質をいう。
拡散反射性とは、試料の表面に光線を入射させたときに、入射角=反射角となる方向以外のさまざまな方向に、試料が光線を反射させる性質をいう。
鏡面輝度反射率および拡散輝度反射率の測定は、JIS Z 8722の条件c(d−n)に記載の方法に準じて行う。すなわち、キセノンランプから照射した光を積分球内で散乱させ、試料に照明をあてる。鏡面反射の測定は、試料面の垂直な軸と8°の角度をなす方向の光量を受光器で測定することにより行い、拡散反射の測定は、積分球内の拡散光量を受光器で測定することにより行う。このJIS Z 8722によって規定された標準白色面によって目盛り定めされた常用標準白色面の鏡面反射と拡散反射を測定し、先の測定値と比較することにより、試料の波長ごとの鏡面輝度反射率および拡散輝度反射率を算出することができる。鏡面輝度反射率および拡散輝度反射率の算出は、JIS Z 8722中の三刺激値Yの重荷係数を波長ごとの鏡面輝度反射率および拡散輝度反射率に掛け合わせて和をとることにより、行うことができる。
本発明における鏡面輝度反射率、拡散輝度反射率測定は、以下のようにして行った。すなわち、分光測色計を用いて拡散輝度反射率と全輝度反射率を測定し、
鏡面輝度反射率=全輝度反射率−拡散輝度反射率
の計算式より、鏡面輝度反射率を見積もった。
【0072】
光反射性層を構成する素材は特に限定されない。例えば、アルミ箔、金箔、銀箔などの金属箔を積層、光学異方性層の片面に金属を蒸着源として金属薄膜の形成、積層誘電体の光学膜厚を調整した高反射率層などの一様な組成などからなる光反射性層を構成することができる。
また、金属フレークや金属微粒子をバインダ中に分散した塗料を用いて、反射層とすることもできる。このような塗料を用いると効率良く任意形状の反射層が形成できる。
また、素材に金属材料を用いる場合に金属元素を選択することにより、銀白色以外の有色の反射光を得ることができる。例えば、Ag,Al,Niであれば銀白色であるが、AuやCu−Sn合金では金色、銅では赤銅色の反射光を得ることができるため潜像に演色性を加えることができる。
【0073】
光反射性層は他の機能性層を兼ねても良い。例えば、接着剤層や前述の反射性支持体に金属フレークや金属微粒子を加えて、1層で反射層と支持体や接着剤層の2つの機能を発現しても良い。また、支持体に金属薄膜や光沢印刷を施して反射支持体として用いることができる。この場合、光学異方性層を積層する場合の光反射性層の位置は、各層の特性によって、「光学異方性層、支持体、光反射性層」や、「光学異方性層、光反射性層、支持体」を選択することができる。
また、反射率調整や加工性などの観点から光反射性層表面が凸凹形状を有していても良い。凹凸は型押しなどで賦形してもよいし、微粒子のマット材を含むマット層を設けてもよい。
反射層が凹凸を有していることで潜像の視感が変化して偽造の困難性が向上する。特に凹凸を微細化して反射光が画像を形成するように賦形することにより光反射性層がホログラムとなり、さらに偽造困難性が向上する。
【0074】
(複屈折パターン部材の反射率について)
なお、表面の反射率が高く、表面の反射光が強いと反射光によって潜像がマスキングされて視認性が低下する上、表面の映り込みが強くなるので潜像の視認性が低下するので、好ましくない。そのため、光反射性層の反射率と部材表面の反射率の比を1以上とすることが好ましい。
ここでいう反射率とは全輝度反射率を意味するものであり、拡散輝度反射率と鏡面輝度反射率を測定し、両者の和をとることで、その値を得ることができる。拡散輝度反射率と鏡面輝度反射率の測定方法は上述のとおりである。
反射率の比を1以上とするためには、前述の通りに光反射性層が反射率の高いものを選択し、さらに表面反射を抑えることが望ましい。表面反射を抑えるには積層誘電体膜を用いた反射防止層(AR[Anti-Reflection]層とも呼ばれることがある)や微粒子の添加や微小凹凸の付与による防眩層(AG[Anti-Glare]層とも呼ばれることがある)を設けることが好ましく、付与の簡便さからAG層を用いることがより好ましい。
また、潜像の顕在化を行うための偏光板表面についても、同様な理由により反射率の低減処理が必要である。
【0075】
[後粘着層]
複屈折パターン作製材料は、後述のパターン露光及びベーク後に作製される複屈折パターン部材をさらに他の物品に貼付するための後粘着層を有していてもよい。後粘着層の材料は特に限定されないが、ベーク前に積層する場合は複屈折パターン作製の為のベークの工程を経てた後でも粘着性を有する材料であることが好ましい。
【0076】
[2層以上の光学異方性層]
複屈折パターン作製材料は、光学異方性層を2層以上有してもよい。2層以上の光学異方性層は法線方向に互いに隣接していてもよいし、間に別の機能性層を挟んでいてもよい。2層以上の光学異方性層は互いにほぼ同等のレターデーションを有していてもよく、異なるレターデーションを有していてもよい。また遅相軸の方向が互いにほぼ同じ方向を向いていてもよく、異なる向きを向いていてもよい。
【0077】
遅相軸が同じ向きを向くように積層した2層以上の光学異方性層を有する複屈折パターン作製材料を用いる例として、大きなレターデーションを有するパターンを作製する場合が挙げられる。手持ちの光学異方性層では一層では必要とするレターデーションに足りない場合でも、二層三層と積層してからパターン露光することで大きなレターデーションや複雑なレターデーションの階調を有する領域を含むパターン化光学異方性層を容易に得ることができる。
また、遅相軸が異なる向きを向くように積層した2層以上の光学異方性層を有する複屈折パターン作製材料を用いる例として、遅相軸の向きごとに異なる潜像を配置することができる。
【0078】
(複屈折パターン作製材料の作製方法)
複屈折パターン作製材料を作製する方法としては特に限定されないが、例えば、支持体上に光学異方性層を直接形成する、複屈折パターン作製材料を転写材料として作成後に別の支持体上に転写する、自己支持性の光学異方性層として形成する、自己支持性の光学異方性層上に他の機能性層を形成する、自己支持性の光学異方性層に支持体に貼合する、などの方法が挙げられる。このうち光学異方性層の物性に制約を加えないという点からは支持体上に光学異方性層を直接形成する方法と転写材料を用いて支持体上に光学異方性層を転写する方法が好ましく、さらに支持体に対する制約が少ない点から転写材料を用いて支持体上に光学異方性層を転写する方法がより好ましく用いることができる。
【0079】
光学異方性層を2層以上含む複屈折パターン作製材料を作製する方法としては、すでに光学異方性層を含む複屈折パターン作製材料上に別の光学異方性層を直接形成する、別の複屈折パターン作製材料を転写材料として用いて光学異方性層を含む複屈折パターン作製材料上に別の光学異方性層を転写するなどの方法が挙げられる。このうち複屈折パターン作製材料を転写材料として用いて複屈折パターン作製材料上に光学異方性層を転写する方法がより好ましい。
以下に、転写材料として用いられる複屈折パターン作製材料について説明する。なお、転写材料として用いられる複屈折パターン作製材料は、後述の実施例などにおいて「複屈折パターン作製用転写材料」という場合がある。
【0080】
[仮支持体]
転写材料として用いられる複屈折パターン作製材料は仮支持体上に形成されることが好ましい。仮支持体は、透明でも不透明でもよく特に限定はない。仮支持体を構成するポリマーの例には、セルロースエステル(例、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート)、ポリオレフィン(例、ノルボルネン系ポリマー)、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(例、ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリエステルおよびポリスルホン、ノルボルネン系ポリマーが含まれる。製造工程において光学特性を検査する目的には、透明支持体は透明で低複屈折の材料が好ましく、低複屈折性の観点からはセルロースエステルおよびノルボルネン系が好ましい。市販のノルボルネン系ポリマーとしては、アートン(商品名、JSR(株)製)、ゼオネックス、ゼオノア(以上、商品名、日本ゼオン(株)製)などを用いることができる。また安価なポリカーボネートやポリエチレンテレフタレート等も好ましく用いられる。
【0081】
[転写用接着層]
転写材料は転写接着層を有することが好ましい。転写接着層としては、透明で着色がなく、十分な転写性を有していれば特に制限はなく、粘着剤による粘着層、感圧性樹脂層、感熱性樹脂層、感光性樹脂層などが挙げられるが、一括積層で形成される場合には必要な耐ベーク性から感光性もしくは感熱性樹脂層が望ましい。
ただし、潜像を顕在化させる場合に、偏光が転写用接着層を経由する場合には、転写用接着層の光学特性として、支持体の項で述べたように潜像に影響を与えない、即ち等方性か、潜像の顕在化に影響を与えないレターデーション値を有することが好ましい。
【0082】
粘着剤としては、例えば、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性や接着性の粘着特性を示すものが好ましい。具体的な例としては、アクリル系ポリマーやシリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、合成ゴム等のポリマーを適宜ベースポリマーとして調製された粘着剤等が挙げられる。粘着剤層の粘着特性の制御は、例えば、粘着剤層を形成するベースポリマーの組成や分子量、架橋方式、架橋性官能基の含有割合、架橋剤の配合割合等によって、その架橋度や分子量を調節するというような、従来公知の方法によって適宜行うことができる。
【0083】
感圧性樹脂層としては、圧力をかけることによって接着性を発現すれば特に限定はなく、感圧性接着剤には、ゴム系,アクリル系,ビニルエーテル系,シリコーン系の各粘着剤が使用できる。粘着剤の製造段階,塗工段階の形態では、溶剤型粘着剤,非水系エマルジョン型粘着剤,水系エマルジョン型粘着剤,水溶性型粘着剤,ホットメルト型粘着剤,液状硬化型粘着剤,ディレードタック型粘着剤等が使用できる。ゴム系粘着剤は、新高分子文庫13「粘着技術」(株)高分子刊行会P.41(1987)に記述されている。ビニルエーテル系粘着剤は、炭素数2〜4のアルキルビニルエーテル重合物を主剤としたもの、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体,酢酸ビニル重合体,ポリビニルブチラール等に可塑剤を混合したものがある。シリコーン系粘着剤は、フィルム形成と膜の凝縮力を与えるためゴム状シロキサンを使い、粘着性や接着性を与えるために樹脂状シロキサンを使ったものが使用できる。
【0084】
感熱性樹脂層としては、熱をかけることによって接着性を発現すれば特に限定はなく、感熱性接着剤としては、熱溶融性化合物、熱可塑性樹脂などを挙げることができる。前記熱溶融性化合物としては、例えば、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱可塑性樹脂の低分子量物、カルナバワックス、モクロウ、キャンデリラワックス、ライスワックス、及び、オウリキュリーワックス等の植物系ワックス類、蜜ロウ、昆虫ロウ、セラック、及び、鯨ワックスなどの動物系ワックス類、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、エステルワックス、及び、酸化ワックスなどの石油系ワックス類、モンタンロウ、オゾケライト、及びセレシンワックスなどの鉱物系ワックス類等の各種ワックス類を挙げることができる。さらに、ロジン、水添ロジン、重合ロジン、ロジン変性グリセリン、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性ポリエステル樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、及びエステルガム等のロジン誘導体、フェノール樹脂、テルペン樹脂、ケトン樹脂、シクロペンタジエン樹脂、芳香族炭化水素樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂、及び脂環族系炭化水素樹脂などを挙げることができる。
【0085】
なお、これらの熱溶融性化合物は、分子量が通常10,000以下、特に5,000以下で融点もしくは軟化点が50〜150℃の範囲にあるものが好ましい。これらの熱溶融性化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、前記熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン系共重合体、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、及びセルロース系樹脂などを挙げることができる。これらのなかでも、特に、エチレン系共重合体等が好適に使用される。
【0086】
感光性接着剤には、光照射によって接着性を発現すれば特に限定はなく、感光性接着剤には、は少なくとも(1)ポリマーと、(2)モノマー又はオリゴマーと、(3)光重合開始剤又は光重合開始剤系とを含む樹脂組成物から形成するのが好ましい。また、感光性接着剤組成物としては、接着性能や製造適性の観点から界面活性剤等の添加物を適宜加えて使うことができる。
なお、(1)ポリマーとしては、側鎖にカルボン酸基やカルボン酸塩基などの極性基を有するポリマーからなるアルカリ可溶性樹脂が好ましい。その例としては、特開昭59−71048号公報に記載されているようなメタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等、および、側鎖にカルボン酸基を有するセルロース誘導体、水酸基を有するポリマーに環状酸無水物、米国特許第4139391号明細書に記載のベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体や、ベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸とモノマーとの多元共重合体などを挙げることができる。
(2)モノマー又はオリゴマーとしては、エチレン性不飽和二重結合を2個以上有し、光の照射によって付加重合するモノマー又はオリゴマーであることが好ましい。そのようなモノマーおよびオリゴマーとしては、分子中に少なくともエチレン性不飽和基を有し、沸点が常圧で100℃以上の化合物を挙げることができる。その例としては、単官能メタクリレートやトリメチロールプロパンやグリセリン等の多官能アルコールにエチレンオキシド又はプロピレンオキシドを付加した後(メタ)アクリレート化したもの等の多官能アクリレートや多官能メタクリレートや、ウレタンアクリレート類、ポリエステルアクリレート類;エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能アクリレー卜やメタクリレート、特開平11−133600号公報に「重合性化合物[B]」として記載されているものを好適なものとして挙げることができる。これらを単独もしくは複数組み合わせて用いても良い。
(3)光重合開始剤又は光重合開始剤系としては、前述の(2)モノマー又はオリゴマーとの組み合わせが適切な開始剤(系)を選択すればよい。開始剤(系)としては、ビシナルポリケタルドニル化合物、アシロインエーテル化合物、α−炭化水素で置換された芳香族アシロイン化合物、多核キノン化合物、トリアリールイミダゾール2量体とp−アミノケトンの組み合わせ、ベンゾチアゾール化合物とトリハロメチル−s−トリアジン化合物、トリハロメチル−トリアジン化合物、トリハロメチルオキサジアゾール化合物特開平11−133600号公報に記載の「重合開始剤C」等を好適なものとして挙げることができる。これらを単独もしくは複数組み合わせて用いても良い。
【0087】
(力学特性制御層)
転写材料の、仮支持体と光学異方性層の間には、力学特性や凹凸追従性をコントロールするために力学特性制御層を形成することが好ましい。力学特性制御層としては、柔軟な弾性を示すもの、熱により軟化するもの、熱により流動性を呈するものなどが好ましく、熱可塑性樹脂層が特に好ましい。熱可塑性樹脂層に用いる成分としては、特開平5−72724号公報に記載されている有機高分子物質が好ましく、ヴイカーVicat法(具体的にはアメリカ材料試験法エーエステーエムデーASTMD1235によるポリマー軟化点測定法)による軟化点が約80℃以下の有機高分子物質より選ばれることが特に好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、エチレンと酢酸ビニル或いはそのケン化物のようなエチレン共重合体、エチレンとアクリル酸エステル或いはそのケン化物、ポリ塩化ビニル、塩化ビニルと酢酸ビニルおよびそのケン化物のような塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン共重合体、ポリスチレン、スチレンと(メタ)アクリル酸エステル或いはそのケン化物のようなスチレン共重合体、ポリビニルトルエン、ビニルトルエンと(メタ)アクリル酸エステル或いはそのケン化物のようなビニルトルエン共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸ブチルと酢酸ビニル等の(メタ)アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル共重合体ナイロン、共重合ナイロン、N−アルコキシメチル化ナイロン、N−ジメチルアミノ化ナイロンのようなポリアミド樹脂等の有機高分子が挙げられる。
【0088】
[中間層]
転写材料においては、複数の塗布層の塗布時、および塗布後の保存時における成分の混合を防止する目的から、中間層を設けることが好ましい。該中間層としては、特開平5−72724号公報に「分離層」として記載されている、酸素遮断機能のある酸素遮断膜や、前記光学異方性形成用の配向層を用いることが好ましい。これらの内、特に好ましいのは、ポリビニルアルコールもしくはポリビニルピロリドンとそれらの変性物の一つもしくは複数を混合してなる層である。前記熱可塑性樹脂層や前記酸素遮断膜、前記配向層を兼用することもできる。
【0089】
[剥離層]
転写材料として用いられる複屈折パターン作製材料は仮支持体の上に剥離層を有してもよい。剥離層は仮支持体と剥離層間の、あるいは剥離層とその直上層の間の密着力を制御し、光学異方性層を転写した後の仮支持体の剥離を助ける役目を負う。また前述の他の機能層、例えば配向層、力学特性制御層、中間層などが剥離層としての機能を有してもよい。
【0090】
[表面保護層]
複屈折パターン部材の表面には、汚染や損傷から保護する為に防汚性やハードコート性を有する表面保護層を設けることが好ましい。表面保護層の性質は特に限定されず既知の素材を用いることができ、前述の(仮)支持体や他の機能性層と同じか又は類似の材料からなってもよい。
表面保護層の材料としては例えば、ポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素樹脂からなる防汚層や多官能アクリレートを含んでなるアクリル樹脂で形成されるハードコート層などが挙げられる。なお、ハードコート層上に防汚層を配置したり、光学異方性層やその他の機能性層上に保護層を配置したりしても良い。
【0091】
[その他の機能性層]
上記の機能性層以外にも例えば、複屈折パターン部材を剥離して再利用する行為を不可能とするため、破壊もしくは光学特性を変化させる機能層や、非可視光で顕在化する潜像技術など他のセキュリティ技術を組み合わせるための潜像層などの多様な機能性層と組み合わせることができる。
【0092】
光学異方性層、感光性樹脂層、転写接着層および所望により形成される配向層、熱可塑性樹脂層、力学特性制御層および中間層等の各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、スリットコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書)により、塗布により形成することができる。二以上の層を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許2761791号、同2941898号、同3508947号、同3526528号の各明細書および原崎勇次著、コーティング工学、253頁、朝倉書店(1973)に記載がある。
また、光学異方性層上に塗布する層(例えば転写接着層)の塗布の際には、その塗布液に可塑剤や光重合開始剤を添加することにより、それらの添加剤の浸漬による光学異方性層の改質を同時に行ってもよい。
【0093】
(転写材料を被転写材料上に転写する方法)
転写材料を支持体等の被転写材料上に転写する方法については特に制限されず、被転写材料上に上記光学異方性層を転写できれば特に方法は限定されない。例えば、フィルム状に形成した転写材料を、転写接着層面を被転写材料表面側にして、ラミネータを用いて加熱および/又は加圧したローラー又は平板で圧着又は加熱圧着して、貼り付けることができる。具体的には、特開平7−110575号公報、特開平11−77942号公報、特開2000−334836号公報、特開2002−148794号公報に記載のラミネータおよびラミネート方法が挙げられるが、低異物の観点で、特開平7−110575号公報に記載の方法を用いるのが好ましい。
被転写材料としては、支持体、支持体及び他の機能性層を含む積層体、又は複屈折パターン作製材料が挙げられる。
【0094】
(転写に伴う工程)
複屈折パターン作製用転写材料を被転写材料上に転写した後、仮支持体は剥離してもよく、しなくともよい。ただし剥離しない場合には仮支持体がその後のパターン露光に適した透明性やベークに耐え得る耐熱性などを有していることが好ましい。また、光学異方性層と一緒に転写される不要の層を除去する工程があってもよい。例えば配向層としてポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンの共重合体を用いた場合には、弱アルカリ性の水系現像液での現像により配向層より上の層の除去が可能である。現像の方式としては、パドル現像、シャワー現像、シャワー&スピン現像、ディップ現像等、公知の方法を用いることができる。現像液の液温度は20℃〜40℃が好ましく、また、現像液のpHは8〜13が好ましい。
【0095】
また転写後、必要に応じて仮支持体の剥離や不要層の除去を行った後の表面に他の層を形成してもよい。あるいは必要に応じて仮支持体の剥離や不要層の除去を行った後の表面に転写材料を転写してもよい。この際に用いる転写材料は先に転写した転写材料と同じでもよく、異なってもよい。また、先に転写した転写材料の光学異方性層の遅相軸と新たに転写する転写材料の光学異方性層と遅相軸は互いに同じ向きでもよく、異なる向きでもよい。前述のように、複数層の光学異方性層を転写することは遅相軸の向きを揃えた複数層の光学異方性層を積層した大きなレターデーションを持つ複屈折パターンや遅相軸の向きの異なる複数層を積層した特殊な複屈折パターンの作製などに有用である。
【0096】
[複屈折パターン部材の作製]
本発明の複屈折パターン作製材料を用いて、パターン状の熱処理または電離放射線照射を行う工程、及び光学異方性層中の残りの未反応の反応性基を反応もしくは失活させる工程を行うことによって、複屈折パターン部材を作製することができる。特に光学異方性層がレターデーション消失温度を有し、かつ該レターデーション消失温度が電離放射線照射(あるいはレターデーション消失温度以下の熱処理)によって上昇する場合、容易に複屈折パターン部材を作製することができる。
以下に、電離放射線照射や熱処理による複屈折パターン作製工程を例示する。
【0097】
パターン状の電離放射線照射としては、例えば、露光(パターン露光)が挙げられる。パターン露光によって光学異方性層中の未反応の反応性基を反応させて露光部のレターデーション消失温度を上昇させ、その後に未露光部のレターデーション消失温度より高く露光部のレターデーション消失温度より低い温度において光学異方性層中の残りの未反応の反応性基を反応もしくは失活させる工程を行うことにより、未露光部のレターデーションのみを選択的に消失させて複屈折パターンを形成することができる。光学異方性層中の残りの未反応の反応性基を反応もしくは失活させる工程としては全面露光でもよいし、反応性基が熱によっても反応できるのなら全面熱処理(ベーク)でもよい。省コスト化の為には、未露光部のレターデーション消失温度より高く露光部のレターデーション消失温度より低い温度への加熱がそのまま反応の為の熱処理も兼ねられることが好ましい。
【0098】
一方で、逆に、先に一部領域の加熱(パターン状の熱処理)をレターデーション消失温度近くの温度で行ってレターデーションを低下ないしは消失させ、その後にレターデーション消失温度より低い温度で光学異方性層中の残りの未反応の反応性基を反応もしくは失活させる工程(全面露光ないしは全面加熱)を行って複屈折パターンを得る手法もある。この場合には先に加熱された部分のみがレターデーションを失ったパターンを得ることが可能である。
パターン露光およびパターン状熱処理の詳細については後述する。
【0099】
[転写のタイミング]
本発明の複屈折パターンの作製において転写を行う場合、そのタイミングは任意である。すなわち、例えば、少なくとも以下の工程:
・液晶性化合物を含む溶液を塗布乾燥させる工程;
・熱処理または電離放射線照射によって前記反応性基のうちの一種を反応させる工程;
・再度熱処理または電離放射線照射を行い前記相異なる反応性基のうち前記工程で反応させたものと異なる反応性基も含めて反応させる工程;及び
・光学異方性層中に残存する未反応の反応性基を反応もしくは失活させる工程(例えば50℃以上400℃以下のベーク)
をこの順に含む複屈折パターンの作製において転写を行う場合、転写は液晶性化合物を含む溶液を塗布乾燥させる工程の直後に行ってもよいし、熱処理または電離放射線照射によって前記反応性基のうちの一種を反応させる工程の後に行ってもよいし、残存する未反応の反応性基を反応もしくは失活させる工程の直前もしくは直後に行ってもよい。
【0100】
この場合、タイミングによっては使用する材料に制約がかかることもある。例えば、塗布乾燥の直後に転写を行う場合には未反応の状態で転写に耐えるような液晶性化合物でなければならない。また他に例えば、残存する未反応の反応性基を反応もしくは失活させる工程としてベークを用いてかつその後に転写を行う場合には、転写までの仮支持体として用いている材料がベークに耐える材料でなければならない。広範な材料の使用を可能にする観点からは、転写は熱処理または電離放射線照射によって前記反応性基のうちの一種を反応させる工程より後であることが好ましい。
【0101】
[パターン形成のタイミング]
本発明の複屈折パターンの作製においてパターン状の熱処理または電離放射線照射を行うタイミングは、熱処理または電離放射線照射を行う工程のいずれであってもよい。すなわち、例えば、少なくとも以下の工程:
・液晶性化合物を含む溶液を塗布乾燥させる工程;
・熱処理または電離放射線照射によって前記反応性基のうちの一種を反応させる工程;及び
・再度熱処理または電離放射線照射を行い前記相異なる反応性基のうち前記工程で反応させたものと異なる反応性基も含めて反応させる工程
をこの順に含む複屈折パターンの作製において、熱処理または電離放射線照射によって前記反応性基のうちの一種を反応させる工程がパターン状に行われてもよいし、再度熱処理または電離放射線照射を行い前記相異なる反応性基のうち前記工程で反応させたものと異なる反応性基も含めて反応させる工程がパターン状に行われてもよいし、その両方の工程がパターン状に行われてもよい。
【0102】
一方で複屈折パターンの作製において転写を行う場合、パターン状の熱処理または電離放射線照射を行うタイミングによっては使用する材料に制約がかかることもある。例えば、熱処理または電離放射線照射によって前記反応性基のうちの一種を反応させる工程をパターン状に行いかつその直後に転写を行う場合には未反応の領域が存在する状態で転写に耐えるような液晶性化合物で無ければならない。広範な材料の使用を可能にする観点からは、複屈折パターンの作製において途中に転写を伴う場合、転写を行うより前に一度はパターン状でない熱処理または電離放射線照射が行われていることが好ましい。
【0103】
さらに一方で、転写をした上で転写後の基材の形状や下地に合わせてパターン形成を行いたい場合には、先に熱処理または電離放射線照射によって前記反応性基のうちの一種を反応させる工程を非パターン状に(=全面に)行った後に転写を行い、その後に再度熱処理または電離放射線照射を行い前記相異なる反応性基のうち前記工程で反応させたものと異なる反応性基も含めて反応させる工程をパターン状に行うことが好ましい。以下はそのような場合を例に説明する。
【0104】
先に、パターン状の露光とレターデーション消失温度以上での全面熱処理ないしは全面露光による複屈折パターン作製について詳細を述べる。
【0105】
[パターン露光]
複屈折パターンを作製するためのパターン露光は、複屈折パターン作製材料につき、複屈折性を残したい領域を露光するように、露光部と未露光部のみを形成するように行ってもよく、露光条件の異なる露光をパターン状に行ってもよい。
パターン露光の手法としてはマスクを用いたコンタクト露光、プロキシ露光、投影露光などでもよいし、レーザーや電子線などを用いてマスクなしに決められた位置にフォーカスして直接描画してもよい。前記露光の光源の照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。感光性樹脂層により同時に段差を形成する場合には樹脂層を硬化しうる波長域の光(例えば、365nm、405nmなど)を照射することも好ましい。具体的には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、青色レーザー等が挙げられる。好ましい露光量としては通常3〜2000mJ/cm2程度であり、より好ましくは5〜1000mJ/cm2程度、さらに好ましくは10〜500mJ/cm2程度、最も好ましくは10〜100mJ/cm2程度である。
【0106】
露光条件としては、特に限定はされないが、露光ピーク波長、露光照度、露光時間、露光量、露光時の温度、露光時の雰囲気等が挙げられる。この中で、条件調整の容易性の観点から、露光ピーク波長、露光照度、露光時間、および露光量が好ましく、露光照度、露光時間および露光量がさらに好ましい。
露光条件の異なる露光は複数回の露光によって行われてもよく、もしくは、例えば領域によって異なる透過スペクトルを示す2つ以上の領域を有するマスク等を用いて1回の露光によって行われていてもよく、又は両者が組み合わされていてもよい。露光条件の異なる露光をパターン状に行うとはすなわち、異なる露光条件で露光された2つ以上の露光領域を生ずるような形で露光が行われていることを意味とする。
パターン露光時に相異なる露光条件で露光された領域はその後、焼成を経て相異なる、かつ露光条件によって制御された複屈折性を示す。特に異なるレターデーション値を与える。すなわち、パターン露光の際に領域ごとに露光条件を調整することにより、焼成を経た後に領域ごとに異なる、かつ所望のレターデーションを有する複屈折パターンを作製することが可能である。なお、異なる露光条件で露光された2つ以上の露光領域間の露光条件は不連続に変化させてもよいし、連続的に変化させてもよい。
【0107】
(マスク露光)
露光条件の異なる露光領域を生じる手段として、露光マスクを用いた露光は有用である。例えば1つの領域のみを露光するような露光マスクを用いて露光を行った後に、温度、雰囲気、露光照度、露光時間、露光波長を変えて別のマスクを用いた露光や全面露光を行うことで、先に露光された領域と後に露光された領域の露光条件は容易に変更することができる。また、露光照度、あるいは露光波長を変えるためのマスクとして領域によって異なる透過スペクトルを示す2つ以上の領域を有するマスクは特に有用である。この場合、ただ一度の露光を行うだけで複数の領域に対して異なる露光照度、あるいは露光波長での露光を行うことができる。異なる露光照度の元で同一時間の露光を行うことで異なる露光量を与えることができることは言うまでもない。
またレーザーなどを用いた走査露光を用いる場合には、露光領域によって光源強度を変える、走査速度を変えるなどの手法で領域ごとに露光条件を変えることが可能である。
【0108】
また、複屈折パターン作製材料にパターン露光を行って得られた積層体の上に新たな複屈折パターン作製用転写材料を転写し、その後に新たにパターン露光を行う手法を併用してもよい。この場合、一度目及び二度目ともに未露光部である領域(通常レターデーション値が一番低い)、一度目に露光部であり二度目に未露光部である領域、及び、一度目及び二度目ともに露光部である領域(通常レターデーション値が一番高い)でベーク後に残るレターデーションの値を効果的に変えることができる。なお、一度目に未露光部であり二度目に露光部である領域は、二度目の露光により一度目及び二度目ともに露光部である領域と同様となると考えられる。同様にして転写とパターン露光を交互に三度、四度と行うことにより、四つ以上の領域を作ることも容易にできる。この手法は、異なる領域の間で、露光条件だけでは与え得ないような差異(光学軸の方向の違いや非常に大きなレターデーションの差異など)を持たせたい時に有用である。
【0109】
[レターデーション消失温度以上での全面熱処理(ベーク)ないしは全面露光による反応処理]
パターン露光された複屈折パターン作製材料に対して露光部のレターデーションを残しつつ未露光部のレターデーションを低下させ、さらにその状態で残りの未反応の反応性基を反応もしくは失活させて安定な複屈折パターンを得るために、未露光部のレターデーション消失温度以上での全面熱処理ないしは全面露光を行うことが好ましい。
処理を全面熱処理で行う場合、温度条件は材料によって変わるが未露光部のレターデーション消失温度以上で露光部のレターデーション消失温度以下が好ましい。またその上で未反応の反応性基の反応もしくは失活が効率よく進む温度であることが好ましい。具体的には特に限定されないが50℃〜400℃程度の熱処理が好ましく、100〜260℃程度の熱処理がより好ましく、150〜250℃がさらに好ましく、180〜230℃が特に好ましいが、必要とされる複屈折性(レターデーション)や用いる光学異方性層の熱硬化反応性によって適した温度は異なる。また熱処理には材料中の不要な成分を気化あるいは燃焼させて除く効果も期待できる。熱処理の時間は特に限定されないが、1分以上5時間以内が好ましく、3分以上3時間以内がより好ましく、5分以上2時間以内が特に好ましい。
露光部のレターデーション消失温度以下の温度では未反応の反応性基の反応性が十分でなく反応処理が十分に進まない場合などには、未露光部のレターデーション消失温度以上の温度を保ちつつ全面露光を行うことも有用である。この際の好ましい光源は前記パターン露光において上げたものと同一であり、好ましい露光量としては通常3〜2000mJ/cm2程度であり、より好ましくは5〜1000mJ/cm2程度、さらに好ましくは10〜500mJ/cm2程度、最も好ましくは10〜300mJ/cm2程度である。
【0110】
次に、パターン状熱処理によるパターン状レターデーション低下とレターデーション消失温度以下での全面熱処理ないしは全面露光による複屈折パターン作製について詳細を述べる。
【0111】
[パターン状熱処理(熱パターン書き込み)]
パターン状熱処理の際の加熱温度は、加熱部と非加熱部のレターデーションに差異を生じさせる温度であればよく、特に限定されない。特に加熱部のレターデーションを実質的に0nmとしたい場合には、用いられる複屈折パターン作製材料の光学異方性層のレターデーション消失温度以上の温度で加熱することが好ましい。また一方で、加熱温度は光学異方性層の燃焼や着色の生じる温度未満であることが好ましい。一般的には120℃〜260℃程度の加熱を行えばよく、150℃〜250℃がより好ましく、180℃〜230℃がさらに好ましい。
【0112】
複屈折パターン作製材料の一部を加熱する方法は特に限定されないが、加熱体を複屈折パターン作製材料に接触させて行う方法、加熱体を複屈折パターン作製材料のごく近傍に位置させて行う方法、ヒートモード露光を用いて複屈折パターン作製材料を部分加熱する方法などが挙げられる。
【0113】
[レターデーション消失温度以下での全面熱処理(ベーク)ないしは全面露光による反応処理]
前記パターン状熱処理が行われた光学異方性層において熱処理が行われなかった領域は、レターデーションを有しつつも未反応の反応性基を残しており、未だ不安定な状態である。未処理領域に残存する未反応の反応性基を反応もしくは失活させるために、全面熱処理ないしは全面露光による反応処理を行うことが好ましい。
【0114】
全面熱処理による反応処理は、用いられる複屈折パターン作製材料の光学異方性層のレターデーション消失温度より低い温度で、かつ未反応の反応性基の反応もしくは失活が効率よく進む温度であることが好ましい。
【0115】
パターン露光された複屈折パターン作製材料に対して50℃以上400℃以下、好ましくは80℃以上400℃以下に加熱を行うことにより複屈折パターンを作製することができる。複屈折パターン作製に用いる複屈折パターン作製材料の有する光学異方性層の露光前のレターデーション消失温度をT1[℃]、露光後のレターデーション消失温度をT2[℃]とした場合(レターデーション消失温度が250℃以下の温度域にない場合はT2=250とする)、ベーク時の温度はT1℃以上T2℃以下が好ましく、(T1+10)℃以上(T2−5)℃以下がより好ましく、(T1+20)℃以上(T2−10)℃以下が最も好ましい。
一般的に120〜180℃程度の加熱を行えばよく、130〜170℃がより好ましく、140〜160℃がさらに好ましいが、必要とされる複屈折性(レターデーション)や用いる光学異方性層の熱硬化反応性によって適した温度は異なる。熱処理の時間は特に限定されないが、1分以上5時間以内が好ましく、3分以上3時間以内がより好ましく、5分以上2時間以内が特に好ましい。
【0116】
ベークによって複屈折パターン作製材料中の未露光部のレターデーションが低下し、一方で先のパターン露光でレターデーション消失温度が上昇した露光部はレターデーションの低下が小さく、もしくは全く低下しないかあるいは上昇し、結果として未露光部のレターデーションが露光部のレターデーションに比較して小さくなり複屈折パターン(パターン化光学異方性層)が作製される。
光学上の効果を発揮するため、ベーク後の露光部のレターデーションは5nm以上であることが好ましく、10nm以上5000nm以下であることがより好ましく、20nm以上2000nm以下であることが最も好ましい。5nm以下では作製された複屈折パターンの目視による識別が困難となる。
【0117】
また、光学上の効果を発揮するため、複屈折パターン作製材料中の未露光部のベーク後のレターデーションはベーク前の80%以下となることが好ましく、ベーク前の60%以下となることがより好ましく、ベーク前の20%以下となることがさらに好ましく、5nm未満となることが最も好ましい。特にベーク後のレターデーションが5nm未満となった場合、そこは目視の上ではあたかも複屈折性が全く無かったかのような印象を与える。すなわち、クロスニコル下では黒が、パラニコル下あるいは偏光板+反射板の上では無色が表現できる。このようにベーク後の未露光部のレターデーションが5nm未満となる複屈折パターン作製材料は、複屈折パターンでカラー画像を表現する際、あるいは複数層の異なるパターンを積層して使用する際に有用である。
【0118】
全面熱処理の代わりに、全面露光によっても反応処理を行うことができる。この際の光源の照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。感光性樹脂層により同時に段差を形成する場合には樹脂層を硬化しうる波長域の光(例えば、365nm、405nmなど)を照射することも好ましい。具体的には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、青色レーザー等が挙げられる。好ましい露光量としては通常3〜2000mJ/cm2程度であり、より好ましくは5〜1000mJ/cm2程度、さらに好ましくは10〜500mJ/cm2程度、最も好ましくは10〜300mJ/cm2程度である。
【0119】
また、ベークもしくは全面露光を行った複屈折パターン作製材料の上に新たな複屈折パターン作製用転写材料を転写し、その後に新たにパターン露光とベーク(または全面露光)を行ってもよい。この場合、一度目及び二度目ともに未露光部である領域、一度目に露光部であり二度目に未露光部である領域、一度目に未露光部であり二度目に露光部である領域(1度目の未露光部のレターデーションはベークによりすでに消失)、一度目及び二度目ともに露光部である領域で、二度目のベーク後に残るレターデーションの値を効果的に変えることができる。この手法は、例えば互いに遅相軸の方向が異なる複屈折性を持つ二つの領域を互いに重ならない形で作りたい時に有用である。
【0120】
[仕上げ熱処理]
前節までの工程で作製された複屈折パターンの安定性をさらに高めたい場合、固定化された後にまだ残存している未反応の反応性基をさらに反応させて耐久性を増したり、材料中の不要な成分を気化あるいは燃焼させて除いたりする目的の為に仕上げ熱処理を行ってもよい。特にパターン露光と加熱全面露光、あるいはパターン状熱処理と全面露光で複屈折パターンを作製した場合には効果的である。仕上げ熱処理の温度としては180〜300℃程度の加熱を行えばよく、190〜260℃がより好ましく、200〜240℃がさらに好ましい。熱処理の時間は特に限定されないが、1分以上5時間以内が好ましく、3分以上3時間以内がより好ましく、5分以上2時間以内が特に好ましい。
【0121】
[複屈折パターン部材を用いた物品]
複屈折パターン作製材料に上述のように露光及びベークを行って得られる物品は通常はほぼ無色透明である一方で、光反射性層と偏光板とで挟まれた場合においては特徴的な明暗、あるいは調整されたレターデーションから干渉によって得られる所望の色を示し容易に目視で認識できる。この性質を生かして、上記の製造方法により得られる複屈折パターン部材は、例えば偽造防止手段として利用することができる。すなわち、本発明の作製方法で作製された複屈折パターン部材、特に光反射性層を含む複屈折パターン部材は通常は目視ではほぼ不可視な一方で、偏光板を介することで容易に多色の画像が識別可能となる。複屈折パターンは偏光板を介さずにコピーしても何も映らず、逆に偏光板を介してコピーすると永続的な、つまりは偏光板無しでも目視可能なパターンとして残る。従って複屈折パターンの複製は困難である。このような複屈折パターンの作製法は広まっておらず、材料も特殊であることから、偽造防止手段として用いるに適していると考えられる。
また、偽造防止手段以外に緻密及びまたは多色を示すことができる潜像を利用した情報や画像の表示媒体などの活用が考えられる。
【実施例】
【0122】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の具体例に限定されるものではない。
【0123】
実施例1〜4及び比較例1、2
[複屈折パターン作成材料の作製]
(力学特性制御層用塗布液CU−1の調製)
下記の組成物を調製し、孔径30μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、力学特性制御層用塗布液CU−1として用いた。
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力学特性制御層用塗布液組成(質量%)
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メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体
(共重合組成比(モル比)=55/30/10/5、質量平均分子量=10万、Tg≒70℃) 5.89
スチレン/アクリル酸共重合体(共重合組成比(モル比)=65/35、質量平均分子量=1万、Tg≒100℃) 13.74
BPE−500(新中村化学(株)製) 9.20
メガファックF−780−F(大日本インキ化学工業(株)社製) 0.55
メタノール 11.22
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 6.43
メチルエチルケトン 52.97
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【0124】
(配向層用塗布液AL−1の調製)
下記の組成物を調製し、孔径30μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、配向層用塗布液AL−1として用いた。
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配向層用塗布液組成(質量%)
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ポリビニルアルコール(PVA205、クラレ(株)製) 3.21
ポリビニルピロリドン(Luvitec K30、BASF社製) 1.48
蒸留水 52.10
メタノール 43.21
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【0125】
(光学異方性層用塗布液LC−1の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、光学異方性層用塗布液LC−1として用いた。
LC−1−1は2つの反応性基を有する液晶化合物であり、2つの反応性基の片方はラジカル性の反応性基であるアクリル基、他方はカチオン性の反応性基であるオキセタン基である。
LC−1−2は配向制御の目的で添加する円盤状の化合物である。Tetrahedron Lett.誌、第43巻、6793頁(2002)に記載の方法に準じて合成した。
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光学異方性層用塗布液組成(質量%)
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棒状液晶(LC−1−1) 32.59
水平配向剤(LC−1−2) 0.02
カチオン系光重合開始剤
(CPI100−P、サンアプロ株式会社製) 0.66
重合制御剤(IRGANOX1076、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
0.07
メチルエチルケトン 66.66
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【0126】
【化13】

【0127】
(転写接着層用塗布液AD−1の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、転写接着層用塗布液AD−1として用いた。
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転写接着層用塗布液組成(質量%)
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ベンジルメタクリレート/メタクリル酸/メタクリル酸メチル
=35.9/22.4/41.7モル比のランダム共重合物
(重量平均分子量3.8万) 8.05
KAYARAD DPHA(日本化薬(株)製) 4.83
ラジカル光重合開始剤(2−トリクロロメチル−5−(p−スチリルスチリル)
1,3,4−オキサジアゾール) 0.12
ハイドロキノンモノメチルエーテル 0.002
メガファックF−176PF(大日本インキ化学工業(株)製) 0.05
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 34.80
メチルエチルケトン 50.538
メタノール 1.61
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【0128】
(光学異方性層塗布サンプルTRC−1および複屈折パターン作製用転写材料TR−1の作製)
厚さ100μmの易接着ポリエチレンテレフタレートフィルム(コスモシャインA4100、東洋紡績(株)製)の仮支持体の上に、ワイヤーバーを用いて順に、力学特性制御層用塗布液CU−1、配向層用塗布液AL−1を塗布、乾燥した。乾燥膜厚はそれぞれ14.6μm、1.6μmであった。次いで、配向層をMD方向にラビングし、ワイヤーバーを用いて光学異方性層用塗布液LC−1を塗布、膜面温度105℃で2分間乾燥して液晶相状態とした後、空気下にて160mW/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を照射してその配向状態を固定化して厚さ4.3μmの光学異方性層を形成して光学異方性層塗布サンプルTRC−1を作製した。この際用いた紫外線の照度はUV−A領域(波長320nm〜400nmの積算)において100mW/cm2、照射量はUV−A領域において80mJ/cm2であった。TRC−1の光学異方性層は20℃で固体の高分子で、耐MEK(メチルエチルケトン)性を示した。
最後に、光学異方性層塗布サンプルTRC−1の上に転写接着層用塗布液AD−1を塗布、乾燥して1.2μmの転写接着層を形成し、複屈折パターン作製用転写材料TR−1を作製した。
(複屈折パターニングフィルムBP−1の作成)
この複屈折パターン作製用転写材料TR−1に対してM−3LマスクアライナーとフォトマスクV(いずれも商品名、ミカサ社製)(図4参照。露光部領域aの紫外光(λ=365nm)透過率=0.01%、露光部領域bの紫外光(λ=365nm)透過率=32%、露光部領域cの紫外光(λ=365nm)透過率=75%)を用いて露光量50mJ/cmでパターン露光を行った。さらに230℃のクリーンオーブンで1時間のベークを行って、複屈折パターニングフィルムBP−1を作製した。このフィルムBP−1は、レターデーションが波長550nmで各々0nm、140nm、290nmである3つの領域を有する。
【0129】
(複屈折パターン部材の作製)
表1に示す反射層を被転写支持体として、ラミネータ((株)日立インダストリイズ製、商品名:LamicII型)を用い、前記100℃で2分間加熱した延伸フィルムに、複屈折パターニングフィルムBP−1をゴムローラー温度130℃、線圧100N/cm、搬送速度1.4m/分でラミネートした。ラミネート後、仮支持体を剥離して、6種類の複屈折パターン部材を作製した。
【0130】
上記複屈折パターン部材の鏡面反射率、拡散反射率、コントラストを以下のようにして測定した。結果を表1に併せて示す。
(拡散反射率)
支持体上に分光測色計CM−700d(商品名、コニカミノルタ社製)を設置し、拡散輝度反射率および全輝度反射率を測定した。
(鏡面反射率)
鏡面輝度反射率=全輝度反射率−拡散輝度反射率を計算することにより、鏡面輝度反射率を見積もった。
【0131】
(コントラスト)
図3に示すように、支持体/位相差層からなる上記複屈折パターン部材上に偏光板をのせ、法線から5°を成す角に白色光を照射した白紙をおき、反対側の法線から5°を成す角に、分光放射計SR−3(商品名、トプコン社製)を設置し、支持体/位相差層/偏光板に写った拡散反射板の輝度を測定した。位相差層のReが0nmの場合と140nmの場合の輝度を測定した。輝度(Re=0nm)/輝度(Re=140nm)をコントラストとした。
【0132】
【表1】

【0133】
実施例1〜4の複屈折パターン部材上に偏光板を配置して観察されるパターンの拡大図を図5に示す。図中、地が灰色であるのに対し、格子部は紺色、斜線部は黄色を呈する多色のパターンが観察された。
比較例1、2の複屈折パターン部材では、コントラストが低く潜像も視認できないのに対し、実施例1〜4の複屈折パターン部材はいずれも潜像が視認でき、コントラストも良好である。
【符号の説明】
【0134】
1 複屈折パターン部材
2 光学異方性層
3 光反射性層(支持体)
4 偏光板
5 分光放射計
6 白紙
11 光反射性層(支持体)
12 光学異方性層
13 転写層
14 配向層
15 力学特性制御層
16 表面保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光反射性層上に、実質的に同一の層形成組成物から形成され、層内に複屈折性が異なる領域を二つ以上含んだ光学異方性層が少なくとも一層形成されてなる複屈折パターン部材であって、前記光反射性層の鏡面輝度反射率が8%以上であることを特徴とする複屈折パターン部材。
【請求項2】
前記光反射性層の鏡面輝度反射率が13%以上であることを特徴とする請求項1に記載の複屈折パターン部材。
【請求項3】
前記光反射性層が、拡散反射性を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の複屈折パターン部材。
【請求項4】
前記光反射性層が光反射性支持体であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の複屈折パターン部材。
【請求項5】
前記光反射性層が金属箔または金属薄膜であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の複屈折パターン部材。
【請求項6】
前記光反射性層が金属フレークもしくは金属微粒子を含有してなることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の複屈折パターン部材。
【請求項7】
前記光反射性層の視認側反対面に接着剤層を有し、該接着剤層中に金属フレークもしくは金属微粒子を含有してなることを特徴とする、請求項6に記載の複屈折パターン部材。
【請求項8】
前記光反射性層表面が凸凹形状をしていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の複屈折パターン部材。
【請求項9】
前記光学異方性層内に入射した偏光によって潜像パターンが顕在化することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の複屈折パターン部材。
【請求項10】
前記潜像が3色以上となるように複屈折率がパターニングされていることを特徴とする請求項9に記載の複屈折パターン部材。
【請求項11】
反応性基を有する液晶化合物を含む層形成組成物からなる層を形成し、該層内の複数領域に異なる反応条件下で反応させたのち、加熱して未反応領域を光学的等方性として反応性基を失活させパターニングした光学異方性層の製造工程を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の複屈折パターン部材の製造方法。
【請求項12】
前記層形成組成物からなる層を光反射性層上に形成し、前記光学異方性層の製造工程を行うことを特徴とする請求項11に記載の複屈折パターン部材の製造方法。
【請求項13】
前記層形成組成物からなる層を仮支持体上に形成し、前記光学異方性層の製造工程を行った後に、該光学異方性層を光反射性層上に付与する工程を行うことを特徴とする請求項11に記載の複屈折パターン部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−211063(P2010−211063A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58548(P2009−58548)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】