複層ガラスパネル、障子、及び開口部装置
【課題】複数の板ガラス間に配置されるシール材(パネル間シール材)から発生する可燃性ガスによる発火を防止することが可能な複層ガラスパネルを提供する。
【解決手段】所定の間隔を有して対向する2枚以上の板ガラスと、間隔のうち板ガラスの外周端部に充填されるパネル間シール材と、板ガラスの外周端部及びパネル間シール材を覆うように設けられるグレージングチャンネルと、所定の温度で体積を膨張させ、前記2枚以上の板ガラス間に入り込み、該板ガラス間に存する気体を前記板ガラス間に封止可能な封止手段と、を備えるものとする。
【解決手段】所定の間隔を有して対向する2枚以上の板ガラスと、間隔のうち板ガラスの外周端部に充填されるパネル間シール材と、板ガラスの外周端部及びパネル間シール材を覆うように設けられるグレージングチャンネルと、所定の温度で体積を膨張させ、前記2枚以上の板ガラス間に入り込み、該板ガラス間に存する気体を前記板ガラス間に封止可能な封止手段と、を備えるものとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は住宅や公共施設等の建物開口部に用いられる開口部装置に具備される複層ガラスパネル、該複層ガラスパネルを備える障子、及び開口部装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建物開口部に備えられるサッシ窓等の開口部装置は、開閉可能なものについては室外との連通・遮断が自在であり、人や物の出入り、及び換気等をすることができる。また、開閉の可否にかかわらず、開口部装置には複層ガラスパネルが用いられるものが多く、断熱性や遮音性を向上しつつ、ガラスの光透過性の性質を利用して閉鎖の姿勢でも室内に光を取り入れることができ、室内を明るくして暖をとる等、室内環境の向上が図られる。
【0003】
このような複層ガラスパネルは、その外周部を金属、又は樹脂による枠や框により囲まれて構成される。その際には、枠又は框と複層ガラスパネルとの気密性、水密性を確保するために、枠又は框と複層ガラスパネルとの接触部には樹脂等によるシール部材が配置される。シール部材としては例えばグレージングチャンネル等を挙げることができる。
【0004】
ところが、火災等により開口部装置に大きな熱量が加わった場合、開口部装置に用いられる各種材料の性質上、初めにシール部材が溶けて消失してしまう傾向にある。シール部材が消失すると複層ガラスパネルが分解してしまう場合や、分解しなくてもシール部材が消失した部位において室内外の連通が生じる場合があり、煙や炎がここを通じて反対側に広がる虞がある。このような炎や煙の広がりを防止するための手段として特許文献1、2のような技術が開示されている。特許文献1、2によれば、発泡性コーキング材及び発泡性遮炎材(特許文献1)や熱膨張材(特許文献2)を用いて複層ガラスパネルの分解やシール部材消失による室内外の連通を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−6874号公報
【特許文献2】特開平9−184372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、複層ガラスパネルは複数の板ガラスを所定の間隔を有して配置し、その間隔を維持した状態で保持固定するために、スペーサー及びこれを固定するシール材が使用されている(以下このシール材を「パネル間シール材」と記載することがある。)。このパネル間シール材は複数の板ガラスを強固に固定する必要性から、比較的多くの分量が用いられるとともに、加熱により可燃性ガスを発生させる材質のものが適用されていることが多い。従って複層ガラスパネルが火災等により加熱されると、パネル間シール材が可燃性ガスを発生させて発火する虞がある。
【0007】
特許文献1、2に記載のような技術では、開口部装置の室内外の連通や複数のガラスパネルの分解を防止することはできるが、複層ガラスパネル間から発生する可燃性ガスの発火を必ずしも防止することができるとは限らなかった。また、パネル間シール材に可燃性ガスを発生しない材料を用いることも可能ではあるが、高価な材料であったり、シール材として固定する性能が不十分であったりすることにより困難がある。
【0008】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、複数の板ガラス間に配置されるシール材(パネル間シール材)から発生する可燃性ガスによる発火を防止することが可能な複層ガラスパネルを提供することを課題とする。また、当該複層ガラスパネルを備える障子、及び開口部装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、本発明について説明する。
【0010】
請求項1に記載の発明は、所定の間隔を有して対向する2枚以上の板ガラスと、間隔のうち板ガラスの外周端部に充填されるパネル間シール材と、板ガラスの外周端部及びパネル間シール材を覆うように設けられるグレージングチャンネルと、所定の温度で体積を膨張させて前記2枚以上の板ガラス間に入り込み、該板ガラス間に存する気体を前記板ガラス間に封止可能な封止手段と、を備える、複層ガラスパネルである。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の複層ガラスパネルにおいて、少なくとも2つの片を有し、そのうちの1つの片は板ガラスの板面に沿って配置され、他の1つの片は前記板ガラスの端面に沿って配置される、補強部材をさらに備えることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の複層ガラスパネルにおいて、2枚以上の板ガラスのうち少なくとも一方は網入りガラス、又は耐熱強化ガラスであることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の複層ガラスパネルにおいて、グレージングチャンネルは、板ガラスの外周端部及びパネル間シール材のうち、端面を覆う底片と、底片の両端から立設して板ガラスの板面の端部を覆う立設片とを有し、底片又は立設片の少なくとも一部が、板ガラス又はシール材に結合されるとともに、底片又は立設片には、板ガラス又はシール材に結合されていない部位に、その厚さ方向に貫通する孔が設けられているものである。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の複層ガラスパネルと、複層ガラスパネルの外周端部を挿入可能な溝部を有する框体と、を有し、複層ガラスパネルの外周端部が框体の溝部に挿入されて形成されている、障子c。
【0015】
請求項6に記載の発明は、建物開口部の縁に沿って配置される枠体と、枠体により区画される枠内に配置される請求項5に記載の障子と、を備える、開口部装置である。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の複層ガラスパネルと、複層ガラスパネルの外周端部を挿入可能な溝部を有し、建物開口部の縁に沿って該建物に取り付けられる枠体と、を有し、複層ガラスパネルの外周端部が枠体の溝部に挿入されて形成されている、開口部装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、パネル間シール材から発生する可燃性ガスを板ガラス間に封止することにより、可燃性ガスの発火を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第一実施形態を説明する図で、障子10の正面図である。
【図2】図1のII−II線に沿った断面図である。
【図3】図1のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】図4(a)は図2のうちその一端側に注目した図で、図4(b)は分解図である。
【図5】障子10を備えた開口部装置の水平方向断面図である。
【図6】障子10を備えた開口部装置の鉛直方向断面図である。
【図7】作用を説明する図である。
【図8】図8(a)が1つの変形例を説明する図、図8(b)が他の変形例を説明する図である。
【図9】第二実施形態を説明する図で、開口部装置40の水平方向断面図である。
【図10】開口部装置40の鉛直方向断面図である。
【図11】第三実施形態を説明する図で、障子60に関する図2に相当する図である。
【図12】障子60に関する図3に相当する図である。
【図13】図13(a)は図11のうちその一端側に注目した図で、図13(b)は分解図である。
【図14】図14(a)は変形例1に具備されるグレージングチャンネル166の形態を示した図で、図14(b)は変形例2に具備されるグレージングチャンネル266の形態を示した図である。
【図15】図15(a)は変形例3を説明する図であり、図15(b)は分解図である。
【図16】図16(a)は変形例4を説明する図であり、図16(b)は分解図である。
【図17】障子60が備えられた開口部装置80の水平方向断面図である。
【図18】障子60が備えられた開口部装置80の鉛直方向断面図である。
【図19】図19(a)は図17の一部に注目して示した図で、図19(b)は縦枠82の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のこのような作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。ただし、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。
【0020】
図1は、第一実施形態を説明する図で、障子10の正面図である。図2は、図1にII−IIで示した線に沿った断面図、図3は、図1にIII−IIIで示した線に沿った断面図である。また、図4には、図2のうち左側端部に注目して拡大した図(図4(a))及びこれを分解して示した図(図4(b))を表した。
【0021】
障子10は、複層ガラスパネル11、及び框体20を備えている。複層ガラスパネル11は、板ガラス12、13、スペーサー14、パネル間シール材15、グレージングチャンネル16、封止手段としての加熱膨張体17、及び補強部材18を備えている。また、框体20は、長尺の縦框21、22、上横框23、及び下横框24を有し、これらが矩形枠状に組み合わされている。以下各構成部材について説明する。
【0022】
初めに複層ガラスパネル11について説明する。
板ガラス12、13は、いずれも矩形板状のガラスパネルであり、その板面が対向するように所定の間隔を有して並べて配列されている。用いられる板ガラスの種類は特に限定されることはないが、防火性能の観点から本実施形態では、板ガラス12は、線状の金属が埋め込まれた網入りガラスとし、板ガラス13はLOW−Eガラスとした。また板ガラス12、13にはこれに代えて耐熱強化ガラスを用いることもできる。このように板ガラス12、13に防火性能の高いガラスを用いることにより、火災時等により複層ガラスパネル11に熱が加わった場合でも、より長い時間、ガラス自体の割れ、及び崩落を防止することが可能となる。
【0023】
スペーサー14は、板ガラス12と板ガラス13との間隙により形成される空間のうち、その外周端部よりやや内側に、板ガラス12、13の辺に沿って配置されている。従って、スペーサー14は、板ガラス12、13間に矩形枠状に形成されている。スペーサー14は公知のものを用いることができ、板ガラス12と板ガラス13との間隙を所定の大きさに維持することを主要な機能とする。ただし、スペーサー14に乾燥剤を含ませることにより、スペーサー14と板ガラス11、12とに囲まれる空間内側を適切な湿度に保つことが可能となる。
【0024】
パネル間シール材15は、板ガラス12と板ガラス13との間隙のうち、スペーサー14よりも外側となる当該間隙の外周端部に充填されている。パネル間シール材15は、板ガラス12と板ガラス13とを強固に接着固定しつつ、水密性(密封性)を保持することを主要な機能とする。かかる観点から、パネル間シール材15としてはシリコン系、ポリサルフィド系の接着剤が用いられることが好ましい。
【0025】
なお、本実施形態では、複層ガラスパネル11には2枚の板ガラス12、13を具備する例を示したが、これに限定されることはなく、3枚以上の板ガラスを備えるものであってもよい。
【0026】
グレージングチャンネル16は、配列された板ガラス12、13、及び板ガラス12、13による間隙の端部を覆うとともに、板ガラス12、13の周囲を囲むように設けられる長尺の部材で、長手方向に直交する断面が図2〜図4に表れている。ここで、「板ガラス12、13及び板ガラス12、13による間隙の端部」とは、板ガラス12、13の端面を含み、さらに板ガラス12、13の外側面(板ガラス12、13が対向しない面)の外周端部を含む概念である。本実施形態では公知のグレージングチャンネルを用いることができる。図2〜図4からわかるように、グレージングチャンネル16は断面略コ字状であり、底片と、この底片の両端から同じ方向に立設される2つの立設片と、を備えている。従って、立設片間に間隙ができ、底片が配置されない側には断面コ字状の内側に通じる開口部が形成される。そして当該開口部から立設片間に板ガラス12、13の端部が差し込まれるように配置される。
【0027】
グレージングチャンネル16の材質は、グレージングチャンネル用の材料として公知のものを用いることができ、例えば塩化ビニル系、シリコン系の材料を挙げることができる。また、これらについて硬質と軟質の材料を組み合わせたり、又は軟質のみにより構成することも可能である。
【0028】
加熱膨張体17は、本実施形態では通常時において図2〜図4に示すように断面が矩形であり、グレージングチャンネル16の長手方向に沿って延びる細長の板状の部材である。ただし加熱発泡体17は、難燃性であるとともに、所定の温度にまで加熱されると膨張して体積が増加するように構成されている。具体的な膨張開始温度は特に限定されることはないが、建築基準法及び同施工令の加熱曲線に合せ、150℃程度であることが好ましい。
また、膨張倍率も特に限定されることはないが、10倍〜40倍であることが好ましい。
加熱膨張体17の具体的な材料はこのような性能を有するものであれば特に限定されることはなく、公知のものを用いることができる。これには例えば黒鉛や炭素繊維等の熱発泡体を含有した材料であり、基材としては、エポキシ系、塩化ビニル、ブチル等を使用したものを挙げることができる。
【0029】
補強部材18は、配列された板ガラス12、13、板ガラス12、13による間隙の端部、及びグレージングチャンネル16を外側から覆うように、グレージングチャンネル16の長手方向に沿って延びる長尺の部材であり、当該長手方向に直交する断面が図2〜図4に表れている。図2〜図4からわかるように、補強部材18は断面が略コ字状であり、底片と、この底片の両端から同じ方向に立設される2つの立設片と、を備えている。従って、立設片間に間隙ができ、底片が配置されない側には断面コ字状の内側に通じる開口部が形成される。そして当該開口部から立設片間に板ガラス12、13の端部やグレージングチャンネル16が差し込まれるように配置される。これにより、障子10に火災等による熱が加わっても板ガラス12、13が框体20内に留まり、板ガラス12、13が框体20から外れて崩れることをより確実に防止することが可能となる。
【0030】
補強部材18の材質は、耐熱性が高く、板ガラス12、13を保持することができるものであれば特に限定されることはない。これには例えば金属を挙げることができる。その中でも軽量である観点からアルミニウムであることが好ましい。
【0031】
次に框体20について説明する。上記したように框体20は、長尺の縦框21、22、上横框23、及び下横框24を有し、これが矩形枠状に組み合わされている。縦框、上横框、及び下横框は框体を形成することができればよく、その具体的な断面形状は限定されることはない。すなわち、障子が適用される開口部装置の種類等により適切な断面形状が選択される。本実施形態の框体20は後述するように引き戸式の開口部装置30に用いられるので(図5、図6参照)、縦框21が戸先框、縦框22が召し合わせ框、上横框23及び下横框24が上枠34、下枠35にガイドされる框として機能する。
ただし、框体20を構成する縦框21、22、上横框23、及び下横框24はいずれも、上記補強部材18、加熱膨張体17、グレージングチャンネル16の少なくとも一部、及び板ガラス12、13の端部を挿入可能な溝部(例えば図4(b)の溝部21a)を具備している。
【0032】
障子10は、上記構成部材が例えば次のように組み合わされて形成されている。
すなわち、図2〜図4からわかるように、板ガラス12、13、該板ガラス12、13の間隙の端部、及びパネル間シール材15が、グレージングチャンネル16のコ字状の内側に挿入され、該グレージングチャンネル16に囲まれるように配置される。
【0033】
一方、縦框21、22、上横框23、及び下横框24に形成される溝部(例えば図4(b)に表した溝部21a)に補強部材18が配置される。このとき、補強部材18を構成する各片が各框(21、22、23、24)の溝の内面に沿うとともに、補強部材18の開口部にグレージングチャンネル16等が差し込めるように配置される。
また、補強部材18を配置する際には、各框(21、22、23、24)にネジやビス等の固定部材を用いて固定することが好ましい。
【0034】
補強部材18の断面コ字状の底部に加熱膨張材17が配置される。その際には加熱膨張体17は補強部材18にネジやビス等の固定部材により固定することが好ましい。
そして各框(21、22、23、24)の溝部(21a等)及び補強部材18の内側にグレージングチャンネル16及び板ガラス12、13の端部が差し込まれるように配置される。
【0035】
次に障子10が具備された開口部装置30について説明する。図5、図6は障子10を備える開口部装置30の断面図で、図5は水平方向断面、図6は鉛直方向断面を表している。図5では、紙面上が室外側、紙面下が室内側を示している。また、図6では紙面左が室外側、紙面右が室内側を表している。本実施形態において開口部装置30は、いわゆる引戸式のサッシ窓である。開口部装置30は、建物開口部の4辺の縁に沿って配置される枠体31、及び該枠体31の内側に具備されて引戸式に開閉する2枚の障子10を備えている。図5、図6を参照しつつ開口部装置30について説明する。
【0036】
枠体31は、左右に所定の間隔を有して平行に配列される縦枠32、33、及び、縦枠32、33の端部間を渡して、上下のそれぞれに水平に配置される長尺部材である上横枠34、下横枠35を備え、これらが枠状に組み合わされている。縦枠31、32、上横枠34、及び下横枠35は開口部装置の枠を形成することができればよく、その具体的な断面形状は限定されることはない。すなわち、障子が適用される開口部装置の種類等により適切な断面形状が形成される。本実施形態では引戸式のサッシであるため、上横枠34には障子10の上横框23に挿入され上横框23をガイドするガイド片34a、34bが備えられ、下横枠35には障子10の下横框24に備えられた戸車10aが載置されてレールとして機能するレール片35a、35bが設けられている。
また、断熱性を向上する観点から枠体31には樹脂により形成され、枠体31の内側面に具備されたカバー部材32a、33a、34c、35cが取り付けられていてもよい。
【0037】
障子10は上記説明したのでここでは説明を省略する。ただし、開口部装置30に備えられる2つの障子10は、室内側に配置される障子10と室外側に配置される障子10とでは、配置位置に基づいて框の断面形状は異なる。本実施形態では縦框21が戸先框、縦框22が召し合せ框として機能する。
【0038】
2枚の障子10が枠体31の枠内に引戸式に配置されることにより開口部装置30が形成されている。すなわち、上横枠34のガイド片34a、34bに障子10の上横框23がガイドされ、下横枠35のレール片35a、35bに障子10の下横框24に備えられた戸車10aが載置されてガイドされることにより、引戸式に障子10を開閉できる。
【0039】
次に複層ガラスパネル11による作用について説明する。図7に当該作用を説明する図で、図4(a)と同様の視点による図を示した。
複層ガラスパネル11を備える開口部装置30が火災等により加熱され、所定の温度に達すると複層ガラスパネル11に具備される樹脂材料により形成された部材が溶けて消失してしまうことがある。その際に特にパネル間シール材15はその性質上、可燃ガスを発生する。これに対して複層ガラスパネル11には加熱膨張体17が設けられており、封止手段として機能する加熱膨張体17が火災等の熱によって膨張し、図7に示したように板ガラス12と板ガラス13との間に進入する。これにより、発生した可燃性ガスを板ガラス12、13間に封止して閉じこめることができる。従って可燃性ガスが流出して発火することを防止することが可能となる。
このように、本発明によれば複層ガラス間に可燃性ガスを封じ込めてその発火を防止する。
【0040】
また、本実施形態のように補強部材18が具備された場合にはグレージングチャンネル16が消失した場合でも、複層ガラスパネル11を框体20内に、より確実に保持させることができる。
これに加えて、板ガラス12、13の少なくとも一方に網入りガラスや耐熱強化ガラスを適用すれば、さらに複層ガラスパネル11の框体20内への保持が確実に行われる。
【0041】
図8には変形例にかかる障子10’、10”のうち、図4(a)に相当する図を示した。図8(a)は障子10’、図8(b)は障子10”を表している。障子10’及び障子10”では、複層ガラスパネル11’、11”のうち、加熱膨張体及び補強部材の少なくとも一方が障子10と異なるのみであり、他の構成は障子10と共通するので、共通部分は同じ符号を付すとともに説明を省略する。
【0042】
障子10’は加熱膨張体17’が板ガラス12、13の端部とグレージングチャンネル16との間に配置されている。このような加熱膨張体17’の配置によっても上記と同様の効果を奏するものとなる。
【0043】
障子10”は、加熱膨張体17”及び補強部材18”を備えている。本実施形態では加熱膨張体17”は、膨張前(通常時)における幅(図8(b)の紙面上下方向の大きさ)が、加熱膨張体17、17’よりも短く形成され、複層ガラスパネル11”の厚さ(図8(b)の紙面上下方向の大きさ)方向中央よりも一方側に寄せられて配置されている。このように、加熱膨張体の配置形態は特に限定されることはなく、その膨張時に適切に板ガラス間に入り込み、可燃性ガスを封止できればよい。
【0044】
また、本例の補強部材18”は、図8(b)からわかるように、L字状の断面形状を有してグレージングチャンネル16の長手方向に沿って延びる長尺の部材である。補強部材18”はL字状である断面のうちの一片は板ガラス12、13の端面に沿った方向に、他の片は板ガラス12の板面に沿った方向に配置される。このように、補強部材が板ガラス12側又は板ガラス13側のみに配置されていても、障子10”に火災等による熱が加わっても板ガラス12、13が框体20内に留まり、板ガラス12、13が框体20から外れて崩れることをより確実に防止することが可能となる。
【0045】
補強部材18”の材質は、耐熱性が高く、板ガラス12、13を保持することができるものであれば特に限定されることはない。これには例えば金属を挙げることができる。その中でも軽量である観点からアルミニウムであることが好ましい。
【0046】
上記した変形例の他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて変形した形態を適用することは可能である。例えば、加熱膨張体の断面形状は必ずしも矩形に形成されている必要はなく、所定の断面形状に成形されていてもよい。例えば、加熱膨張体によりグレージングチャンネルを形成することも可能である。または、グレージングチャンネルに加熱膨張体を押成形し、一体化させることもできる。これらによれば2つの機能を兼ねることができるので部材点数を減らすこともできる。また、加熱膨張体の長手方向も連続している必要はなく、断続的に設けられていてもよい。
補強部材は上記効果を奏することから、設けられることが好ましいが、必ずしも具備されている必要はない。例えば、補強部材を設ける代わりに、框の片の少なくとも一部を厚くして框自体の強度向上を図っても同様の効果を奏するものとなる。
【0047】
図9、図10は第二実施形態を説明する図であり、図9が開口部装置40の水平方向断面図であり、図10が開口部装置40の鉛直方向断面図である。図9では紙面上が室外側、紙面下が室内側を表し、図10では紙面左が室外側、紙面右が室内側を表している。本実施形態は、開閉が禁止されたいわゆるはめごろしの開口部装置である。
【0048】
開口部装置40は、枠体41、板ガラス46、47、スペーサ−48、パネル間シール材49、シール材50、51、加熱膨張体52、及び補強部材53、54を備えている。
【0049】
枠体41は、左右に所定の間隔を有して平行に配列される縦枠42、43、及び、縦枠42、43の端部間を渡して、上下のそれぞれに水平に配置される長尺部材である上横枠44、下横枠45を備え、これらが枠状に組み合わされている。縦枠41、42、上横枠44、及び下横枠45は開口部装置の枠を形成することができればよく、その具体的な断面形状は限定されることはない。すなわち、本実施形態では、はめごろし窓を構成し得る断面形状であればよい。ただし、枠体41を構成する縦枠41、42、上横枠43、及び下横枠44はいずれも、補強部材53、54、加熱膨張体52、シール材50、51の少なくとも一部、及び板ガラス46、47の端部を挿入可能な溝部を具備している。
また、断熱性を向上する観点から枠体41には樹脂により形成され、枠体41の内側面に具備されたカバー部材42a、43a、44a、45aが取り付けられていてもよい。
【0050】
板ガラス46、47は上記説明した板ガラス12、13と共通し、スペーサ−48及びパネル間シール材49は上記説明したスペーサ−14及びパネル間シール材15とそれぞれ共通するのでここでは説明を省略する。
【0051】
シール材50は板ガラス46と枠体41の溝部の内面との間に配置され、シール材51は板ガラス47と枠体41の溝部との間に配置される長尺の部材で、長手方向に直交する断面が図9、図10に表れている。これにより、板ガラス46、47と枠体41との水密気密を確保している。このようなシール材は公知のものを用いることができ、ビード等と称される場合もある。
【0052】
加熱膨張体52は、上記した加熱膨張体17と共通するのでここでは説明を省略する。
【0053】
補強部材53は、図9からわかるように、断面略コ字状の部材であり、図9の紙面奥/手前方向に延びる部材である。一方、補強部材54は、図10からわかるように、断面L字状の部材であり、図10の紙面奥/手前方向に延びる部材である。このような補強部材53、54により、開口部装置40に火災等による熱が加わっても板ガラス46、47が枠体41内に留まり、板ガラス46、47が枠体41から外れて崩れることをより確実に防止することが可能となる。補強部材53、54の材質は、耐熱性が高く、板ガラス46、47を保持することができるものであれば特に限定されることはない。これには例えば金属を挙げることができる。その中でも軽量である観点からアルミニウムであることが好ましい。
【0054】
以上のような構成部材を備える開口部装置40は、該構成部材が例えば次のように組み合わされて形成されている。
すなわち、図9、図10からわかるように、板ガラス46と板ガラス47との間に間隙を形成するように該間隙の端部にスペーサ−48が配置され、その外側にパネル間シール材49が充填されている。これにより板ガラス46、47、スペーサー48及びパネル間シール材49が一体化されている。
【0055】
一方、枠体41のうち縦枠42、43、及び下横枠45に形成される溝部に補強部材53、54が配置される。補強部材53はその一片が板ガラス46、47の端面に沿う方向に配置され、対向する2つの片は板ガラス46、47のそれぞれの板面の外側で、該板面に沿う方向に配置される。一方、補強部材54は、一片が板ガラス46、47の端面に沿う方向に配置され、他の一片が板ガラス46の板面の外側で該板面に沿う方向に配置される。
また、補強部材53、54を配置する際には、枠体41にネジやビス等の固定部材を用いて固定されることが好ましい。
【0056】
枠体41の溝内に加熱膨張体52が配置される。ここで、補強部材53、54が配置されている溝部では、補強部材53、54と板ガラス46、47の端面との間に加熱膨張体52が設けられる。その際には加熱膨張体52は枠体41や補強部材53、54にネジやビス等の固定部材により固定することが好ましい。
そして枠体41の各溝部の内側に一体化された板ガラス46、47が差し込まれるとともに、板ガラス46、47と枠体41との間にシール材50、51が配置されて水密気密が図られている。
【0057】
このような開口部装置40でも、上記第一実施形態と同様の効果を奏するものとなる。
【0058】
次に第三実施形態について説明する。図11は第三実施形態に含まれる障子60における図2に相当する図、図12は図3に相当する図、図13は図4に相当する図である。
【0059】
障子60は、複層ガラスパネル61、及び框体70を備えている。複層ガラスパネル61は、板ガラス62、63、スペーサー64、パネル間シール材65、グレージングチャンネル66、封止手段としての加熱膨張体67、及び補強部材68を備えている。また、框体70は、長尺の縦框71、72、上横框73、及び下横框74を有し、これが矩形枠状に組み合わされている。以下各構成部材について説明する。
【0060】
初めに複層ガラスパネル61について説明する。
板ガラス62、63、スペーサー64、パネル間シール材65は、それぞれ第一実施形態で説明した板ガラス12、13、スペーサー14、及びパネル間シール材15と共通するのでここでは説明を省略する。
【0061】
グレージングチャンネル66は、配列された板ガラス62、63、及び板ガラス62、63による間隙の端部を覆うとともに、板ガラス62、63の周囲を囲むように設けられる長尺の部材で、長手方向に直交する断面が図11、図12に表れている。ここで、「板ガラス62、63及び板ガラス62、63による間隙の端部」とは、板ガラス62、63の端面を含み、さらに板ガラス62、63の外側面(板ガラス62、63が対向しない面)の外周端部を含む概念である。
【0062】
図13(b)からわかるように、グレージングチャンネル66は断面略コ字状であり、底片66aと、この底片66aの両端から同じ方向に立設される2つの立設片66bと、を備えている。従って、立設片66b間に間隙ができ、底片66aが配置されない側には断面コ字状の内側に通じる開口部が形成される。また、立設片66bの開口部側端部には、開口部を狭めるように対向して設けられるシール片66c、66cが配置されている。また、立設片66bの面のうち互いに対向する面には、ひれ状部66d、66eが形成されている。
これに加えて、立設片66bには、その厚さ方向に貫通する孔66fを具備している。孔66fは、立設片66bの長手方向に断続的に複数設けられている。
【0063】
本実施形態では、板ガラスの4周各辺に配置されるグレージングチャンネルの全てに孔を断続的に設ける態様を説明した。しかし、これに限定されることはなく、板ガラスの下辺に配置されるグレージングチャンネルに孔を多く設け、他の3つの辺に配置されるグレージングチャンネルには、そのいずれかに少なくとも1つの孔が設けられる態様であっても良い。これによれば、孔の数を減らすことができる。このときには、下辺に配置されたグレージングチャンネルに設けられた孔が水抜き孔、他の3つの辺に配置されたグレージングチャンネルのいずれかに設けられた孔が外気導入孔となり得る。
【0064】
さらに、底片66aの面のうち、その幅方向(図13の紙面上下方向)略中央には、立設片66bと同じ側に立設する突出部66gが具備されている。突出部66gの先端には膨らむように抜け止め部66hが設けられている。
突出部66gはグレージングチャンネル66の長手方向全長に亘って形成されていてもよいが、必ずしもこれに限定される必要はなく、一部でもよいし、断続的に複数形成されていてもよい。例えば、板ガラスの4辺の各辺に配置されて矩形枠状に形成されるグレージングチャンネルのうち、板ガラスの縦辺に配置されるグレージングチャンネルにのみ突出部を設けてもよい。また、逆に板ガラスの横辺に配置されるグレージングチャンネルにのみ突出部を設けてもよい。
グレージングチャンネル66の材質は、例えば塩化ビニル系、シリコン系の材料を挙げることができる。また、これらについて硬質と軟質の材料を組み合わせたり、又は軟質のみにより構成することも可能である。
【0065】
加熱膨張体67は、本実施形態では通常時において図11〜図13に示すように断面が矩形であり、グレージングチャンネル66の長手方向に沿って延びる細長の板状の部材である。ただし加熱発泡体67は、難燃性であるとともに、後で説明するように所定の温度にまで加熱されると膨張して体積が増加するように構成されている。具体的な膨張開始温度は特に限定されることはないが、建築基準法及び同施工令の加熱曲線に合せ、150℃程度であることが好ましい。
また、膨張倍率も特に限定されることはないが、10倍〜40倍であることが好ましい。
加熱膨張体67の具体的な材料はこのような性能を有するものであれば特に限定されることはなく、公知のものを用いることができる。これには例えば黒鉛や炭素繊維等の熱発泡体を含有した材料であり、基材としては、エポキシ系、塩化ビニル、ブチル等を使用したものを挙げることができる。
【0066】
補強部材68は、図11〜図13からわかるように、断面がL字状であり当該断面を有して紙面奥/手前方向に延びる部材であり、その一片が板ガラス62、63の端面に沿う方向であるとともに、他片が板ガラス62の外側で板面に沿う方向に配置される。
このような補強部材68により、障子60に火災等による熱が加わっても板ガラス62、63が框体70内に留まり、板ガラス62、63が框体70から外れて崩れることをより確実に防止することが可能となる。補強部材68の材質は、耐熱性が高く、板ガラス62、63を保持することができるものであれば特に限定されることはない。これには例えば金属を挙げることができる。その中でも軽量である観点からアルミニウムであることが好ましい。
【0067】
次に框体70について説明する。上記したように框体70は、長尺の縦框71、72、上横框73、及び下横框74を有し、これが矩形枠状に組み合わされている。
【0068】
縦框71は、後述するように本実施形態では戸先框として機能する縦框である。縦框71は、図11、図13に表われる断面において、見込み方向に延在する見込み片としての片71bを有している。そして該片71bの見込み方向両端部のそれぞれには見付方向に延在する室外側片としての片71c、及び室内側片である片71dが設けられている。片71c、71dの見付方向両端部では、該片71c、71dで挟まれる部分が開口部を形成している。これにより、見付方向内側には、片71bを底部とし、片71c、71dを側壁とした溝部71aが形成されている(図13(b)参照)。
【0069】
縦框72は、後述するように本実施形態では召し合わせ框として機能する縦框である。縦框72は、図11に表われる断面において、矩形中空状である中空部72bを有している。該中空部72bの見付方向内側面のうち、その見込み方向両端部のそれぞれからは見付方向内側に片72c、72dが延在する。これにより見付方向内側には、中空部72bの一つの片を底部とし、片72c及び片72dを側壁とした溝部72aが形成されている。
【0070】
上横框73は、図12に表われる断面において、見込み方向に延在する片73bを有している。さらに該片73bの見込み方向両端部のそれぞれには見付方向に延在する片73c、73dが設けられている。片73c、73dの見付方向両端部では、該片73c、73dで挟まれる部分が開口部を形成している。これにより、見付方向内側には、片73bを底部とし、片73c、73dを側壁とした溝部73aが形成されている。
【0071】
下横框74は、図12に表われる断面において、見込み方向に延在する片74bを有している。さらに該片74bの見込み方向両端部のそれぞれには見付方向に延在する片74c、74dが設けられている。片74c、74dの見付方向両端部では、該片74c、74dで挟まれる部分が開口部を形成している。これにより、見付方向内側には、片74bを底部とし、片74c、74dを側壁とした溝部74aが形成されている。
【0072】
以上のような構成部材を備える障子60は、該構成部材が例えば次のように組み合わされて形成されている。
すなわち、図11〜図13からわかるように、板ガラス62、63、該板ガラス62、63の間隙の端部、及びパネル間シール材65が、グレージングチャンネル66のコ字状の内側に挿入され、囲まれるように配置される。このとき、グレージングチャンネル66の突出部66gがパネル間シール材65の内側に包含されるように具備される。これによりグレージングチャンネル66が、パネル間シール材65を介して板ガラス62、63に固定される。また、突出部66gの先端に具備された抜け止め部66hによってその固定がより確実で強固なものとなる。このとき、底片66aの少なくとも一部もパネル間シール材65に接着されてもよい。これにより、さらに強く固定されることになる。
【0073】
立設片66bに備えられたシール部66c、及びひれ状部66d、66eは、板ガラス62、63の面に接触して水密気密の向上を図る。また、立設片66bに設けられた孔66fにより、板ガラス62、63と立設片66bとの間に侵入した水を排出することができる。具体的には、建物に取り付けられたときに、上部に配置されるグレージングチャンネルの孔は外気導入孔として機能し、下部に配置されるグレージングチャンネルの孔は排水孔として機能する。
【0074】
一方、縦框71、72、上横框73、及び下横框74に形成される溝部71a、72a、73a、74aに補強部材68が配置される。このとき、補強部材68を構成する各片が溝部71a、72a、73a、74aの内面に沿うように配置される。また、補強部材68の1つの片に沿って加熱膨張体67が配置される。そして各框の溝部71a、72a、73a、74aの内側に一体化されたグレージングチャンネル66及び板ガラス62、63の端部が差し込まれるように配置される。
【0075】
ここで、上記したグレージングチャンネル66の固定は例えば次のように行うことができる。すなわち、2枚の板ガラス62、63間にスペーサー64を挟持するように配置し、板ガラス62、63、スペーサー64で囲まれた空間にパネル間シール材65となる材料を充填する。次に、充填したパネル間シール材65が流動性を有しているうちにグレージングチャンネル66を、板ガラス62、63の端部に取り付ける。このとき、グレージングチャンネル66の突出部66gをパネル間シール材65内に挿入する。その後、パネル間シール材65が固まることにより、グレージングチャンネル66が板ガラス62、63の端部に固定される。
【0076】
このような障子60によれば、上記第一の実施形態と同様に、該障子60が火災等により加熱された際にも封止手段として機能する加熱膨張体67が火災等の熱によって膨張し、板ガラス62と板ガラス63との間に進入し、パネル間シール材65から発生した可燃性ガスを板ガラス62、63間に封止して閉じこめることができる。従って可燃性ガスが流出して発火することを防止することが可能となる。また、本実施形態のように補強部材68が具備された場合にはグレージングチャンネル66が消失した場合でも、板ガラス62、63の少なくとも一方を框体70内に、より確実に保持させることができる。これに加えて、板ガラス62、63の少なくとも一方に網入りガラスや耐熱強化ガラスを適用すれば、さらに板ガラス62、63の框体70内への保持が確実に行われる。
【0077】
また、複層ガラスパネル61によれば、これを框体70に嵌合して障子60としたときに、従来よりも水密気密に優れたものとすることができる。すなわち、従来は、障子の開閉時や室内外の圧力差により框が変形し、グレージングチャンネルと板ガラスとの水密気密に問題が生じることがあった。しかしながら、複層ガラスパネル61では、グレージングチャンネル66がパネル間シール材65を介して板ガラス62、63に強固に固定されているので、この固定が障子全体に対する強度を向上させ、上記変形及びこれによる水密気密の問題を解消することができる。従ってこのような問題があったときにもこれを解決することができる。
【0078】
ここで、グレージングチャンネルの固定に関する他の例である変形例1〜4について説明する。図14(a)に変形例1に用いられるグレージングチャンネル166の断面図、図14(b)変形例2に用いられるグレージングチャンネル266の断面図を示した。他の部位については上記した複層ガラスパネル61と共通するので、説明を省略する。
変形例1にかかるグレージングチャンネル166では、突出部が第一突出部166a、第二突出部166bの2本を有している点がグレージングチャンネル66と異なる。これによりさらにパネル間シール材65とグレージングチャンネル166との固定が強固なものとなる。
変形例2にかかるグレージングチャンネル266では、突出部266cが別体に設けられていることが特徴である。グレージングチャンネル266の底片266aには、スリット266bが設けられ、ここを貫通するように突出部266cをコ字状の内側に突出させることができる。これによれば、強度が必要な部分に、必要な分を過不足なく取り付けることができる。
【0079】
図15は、変形例3を説明する図である。図15(a)は変形例3における複層ガラスパネルの端部付近に注目した図、図15(b)はその分解図である。この例では、グレージングチャンネル366は、突出部を有しておらず、板ガラス62、63の外表面(板ガラスの面のうち互いに対向しない面)に係合突起366aを設けたことが特徴である。図15(a)からわかるように、グレージングチャンネル366のひれ状部66d、66eを係合突起366aに引っ掛けることができる。これによれば、グレージングチャンネル366を機械的に板ガラス62、63に結合することが可能となる。
このような係合突起はガラス板の面上に形成される突起であればよく、例えば突起物を両面テープ、接着剤等によりガラス板の面に接着したものであってもよい。また、係合突起はガラス板の面に沿って連続して設ける必要はなく、断続的に具備されていてもよい。
なお、このような連結の場合には、図15に示したように孔66fを立設片66bに設ける他、底辺66aとパネル間シール部材65との間に間隙を設けることもできるので、孔を底板66aに設けることも可能である。
【0080】
次に変形例4について説明する。図16に説明のための図を示した。図16(a)は変形例4における複層ガラスパネルの端部付近に注目した図、図16(b)はその分解図である。変形例4では、板ガラス62、63の端面とグレージングチャンネル66との間に外周テープ466が配置されている点で複層ガラスパネル61と異なる。
外周テープ466は、パネル間シール材65の上から、板ガラス62、63の端面及びパネル間シール材65の端面を覆うように、板ガラス62、63外周の周方向に沿ってに巻かれた帯状のテープ材である。これにより、後述するように、流動性のあるパネル間シール材65にグレージングチャンネル66を取り付けるに際に、パネル間シール材65によるグレージングチャンネル66の汚損を防止することができる。
【0081】
外周テープ466には後述するようにグレージングチャンネル66の突出部66gが貫通するスリット466aを具備している。外周テープ466の材質は、特に限定されることはないが、ポリエステル、ポリプロピレン、塩化ビニル、セロハンテープ又はアルミニウムを基材として片面に粘着剤が具備される粘着テープであることが好ましい。
外周テープ466は、必ずしも複層ガラスパネルの端面全周にわたって配置されている必要はなく、周方向に存する4つの角部のうち少なくとも2つの角部を含むように配置されていればよい。これは、シール材によるグレージングチャンネルの汚損が最も生じ易いのが角部であることに基づくものである。
【0082】
従って、板ガラス62、63、及びパネル間シール材65の端面は、図16からわかるように、外周テープ466により覆われている。また、板ガラス62、63、及びパネル間シール材65の端部は、外周テープ466を含めてグレージングチャンネル66のコ字状の内側に挿入され、囲まれるように配置される。このとき、グレージングチャンネル66の突出部66gは外周テープ466のスリット466aを貫通してパネル間シール材65の内側に包含されるように具備される。これによりグレージングチャンネル66がパネル間シール材65を介して板ガラス62、63に固定される。また、突出部66gの先端に具備された抜け止め部66hにより、その固定がさらに確実で強固なものとなる。
【0083】
外周テープ466のスリット466aは、いずれかの手段により最終的に形成される。そのための手段は特に限定されるものではない。これには例えば、外周テープ466を巻く前に予めカッター等によりスリット状の切り込みを入れておくことや、ミシン目状の切れ目を設けておくこと等の貫通手段を施しておくことを挙げることができる。または、外周テープ466を板ガラス62、63の端部に巻いた後に、外周テープ466にカッター等によりスリット状の切り込みを入れたり、ミシン目状の切れ目を設ける等の貫通手段を施してもよい。その他、外周テープにグレージングチャンネルの突出部を押し当てることにより、外周テープが破れる等して裂けて貫通するような材質のものを外周テープに適用してもよい。
【0084】
次に、障子60を備える開口部装置80について説明する。図17は開口部装置80の水平方向断面図、図18は開口部装置80の鉛直方向断面図である。図17では、紙面上が室外側、紙面下が室内側を示している。また、図18では紙面左が室外側、紙面右が室内側を表している。本実施形態において開口部装置80は、いわゆる引戸式のサッシ窓である。
【0085】
開口部装置80は、建物開口部の4辺の縁に沿って配置される枠体81、及び該枠体81の内側に具備されて引戸式に開閉する2つの障子60を備えている。
【0086】
枠体81は、左右に所定の間隔を有して鉛直方向に立設される縦枠82、83、及び、縦枠82、83の端部間を渡して、上下のそれぞれに水平に配置される長尺部材である上横枠84、下横枠85を備え、これらが枠状に組み合わされている。
【0087】
縦枠82は、枠体81の2つの縦枠のうち一方を構成する枠材で、開口部装置80が閉鎖されている姿勢で、室外側となる障子60の縦框71が配置される側の縦枠である。図19(a)には、図17のうち縦枠82の部位に注目した図を示し、図19(b)には、縦枠82の分解断面図を表した。
【0088】
縦枠82は、縦枠本体86とカバー部としてのカバー部材87、88とを備え、固定手段89によりカバー部材88が縦枠本体86に固定されている。
縦枠本体82は、図17、図19に表わされる断面において、見込み方向に延在する片86aを有している。片86aの室内側端部、及び室外側端部のそれぞれには、見付方向に延びる片86b、86eが設けられている。また、片86aの見付方向内側面には、片86c、片86dが立設されている(図19参照)。ここで、片86cの先端は、見込み方向外側に向けて折り曲げられるように形成されている。また、片86dは障子60の閉鎖の姿勢でその縦框71の内側に差し込まれる位置に設けられている。
さらに、片86aの見付方向外側面には片86fが立設されている。当該片86fが建物躯体に固定されることにより、縦枠82が建物に取り付けられる。
【0089】
縦枠本体86の材質は特に限定されることはないが、強度及び生産性の観点から金属が好ましく、通常のサッシに用いられるアルミニウムであることが最も好ましい。また、本実施形態では縦枠本体86は、一体に形成されているが、これに限定されることはなく、いくつかの金属部材が組み合わされて一体とされていてもよい。また、縦枠本体を室外側部材と室内側部材とに分け、これを断熱性の部材で連結する、いわゆるブリッジ構造としてもよい。これによりさらに断熱性を向上させることができる。
【0090】
カバー部材87は、縦枠本体86の長手方向に沿って配置される長尺の部材である。カバー部材87は図17、図19に表わされる断面において略矩形中空である矩形部87aを有している(図19参照)。矩形部87aのうちの1つの角部である見込み方向室外側では、見付方向外側の角部が切り欠かれており、ここにコ字状部87bが形成されている。コ字状部87bは、見付方向外側に開口している。そして、この開口部分には、開口部を狭めるように若干位置をずらされて対向する突起87c、87dが設けられている。
【0091】
また、矩形部87aの角部のうち上記コ字状部87bに対して対角の位置の角からは、見込み方向室内側に向けて片87eが延在する。片87eの先端からは、見付方向外側に向けて延びる片87fが具備されている。
【0092】
カバー部材88も、縦枠本体86の長手方向(図17、図19の紙面奥/手前方向)に沿って配置される長尺の部材である。カバー部材88は、図17、図19に表わされる断面において、見付方向に延びる片88a、及びその両端のそれぞれから見込み方向に延在する片88b、88cによりクランク状が形成されている。
【0093】
ここで、本実施形態では、カバー部材87とカバー部材88とは片87fと片88aとにより係合されている。カバー部材は、必ずしも2つの部材を係合させることにより一体とする必要はなく、1つの部材により形成されていてもよい。本実施形態では、カバー部材88をもう一方の縦枠である縦枠83にもそのままの形状で用いることができるため、部品種類の抑制の観点からこのような構成とした。
【0094】
カバー部材87、88の材質は、熱伝導率の低い材料により形成されていることが好ましい。これにより断熱性を高めることができる。熱伝導率が低いほど断熱性を高めることができるが、熱伝導率が10W/m・K以下であることが好ましい。そのため、具体的には樹脂材料を用いてカバー部材を形成することが好ましい。熱伝導率が低いことに加えて、成型性にも優れるからである。これには例えばPVCを用いることができ、その熱伝導率は0.17W/m・K程度である。
【0095】
このような縦枠本体86、カバー部材87、88は次のように組み合わせられる。すなわち、縦枠本体86の見込み方向室内側において、片86aにカバー部材88の片88bが重ねられるとともに、片86bにカバー部材88の片88aが重ねられるように配置する。そして固定部材89により片88bと片86aとが固定される。本実施形態では、片86bの先端が片88aに係合することによりさらに確実に固定される。
カバー部材87は、そのコ字状部87bの内側に縦枠本体86の片86cを差し込むように配置する。上記したように片86cはL字状に形成されており、一方、コ字状部87bの開口部にはその開口を狭めるように突起87c、87dが設けられている。これにより、カバー部材87が縦枠本体86から抜け難いとともに、ここを中心にカバー部材87を回動させることもできる。そして当該回動をさせて、カバー部材87の片87fとカバー部材88の片88aとを係合させる。
これにより、カバー部材87、88は、縦枠本体86の見付方向内側面のうち見込方向室内側の一部を覆うことができる。
【0096】
カバー部材87、88の図19(b)にEで示した大きさは、後で説明する他の部材との関係により決めることができる。従って、これらについては、他の部材を説明した後にまとめて詳しく説明する。
【0097】
ここでは一つの好ましい実施形態として、上記態様を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、縦枠、及びカバー部を金属、又は樹脂で一体に形成してもよいし、室外側の半分を金属の枠とし、室内側の半分を樹脂で枠とカバー部とを一体に形成し、これらを室内外方向に配列させて連結してもよい。
【0098】
引き続き、枠体81について説明する。縦枠83は枠体81の2つの縦枠のうち一方を構成する枠材で、開口部装置80が閉鎖されている姿勢で、室内側に配置される障子60の縦框71が配置される側の縦枠である。図17を参照しつつ説明する。
【0099】
縦枠83は、縦枠本体90とカバー部としてのカバー部材91とを備え、固定手段92によりカバー部材91が縦枠本体90に固定されている。
縦枠本体90は、図17に表わされる断面において、見込み方向に延在する片90aを有している。片90aの室内側端部、及び室外側端部のそれぞれには、見付方向に延びる片90b、90eが設けられている。また、片90aの見付け方向内側面には、片90dが立設されている。ここで、片90dは、室内側に配置される障子60の閉鎖の姿勢でその縦框71の内側に差し込まれる位置に設けられている。さらに、片90aの見付方向外側面には片90fが立設されている。当該片90fが建物躯体に固定されることにより、縦枠83が建物に取り付けられる。
【0100】
縦枠本体90の材質は特に限定されることはないが、強度及び生産性の観点から金属が好ましく、通常のサッシに用いられるアルミニウムであることが最も好ましい。また、本実施形態では縦枠本体90は、一体に形成されているが、これに限定されることはなく、いくつかの金属部材が組み合わされて一体とされていてもよい。また、縦枠本体を室外側部材と室内側部材とに分け、これを断熱性の部材で連結する、いわゆるブリッジ構造としてもよい。これによりさらに断熱性を向上させることができる。
【0101】
カバー部材91はカバー部材88と同様の形状を有している。すなわち、カバー部材91は、縦枠本体90の長手方向に沿って配置される長尺の部材である。そして、カバー部材91は、図17に表わされる断面において、見付方向に延びる片91a、及びその両端のそれぞれから見込み方向に延在する片91b、91cによりクランク状が形成されている。
【0102】
カバー部材91の材質は、熱伝導率の低い材料により形成されていることが好ましい。これにより断熱性を高めることができる。熱伝導率が低いほど断熱性を高めることができるが、熱伝導率が10W/m・K以下であることが好ましい。そのためには具体的には樹脂材料を用いてカバー部材を形成することが好ましい。熱伝導率が低いことに加えて、成型性にも優れるからである。これには例えばPVCを用いることができ、その熱伝導率は0.17W/m・K程度である。
【0103】
このような縦枠本体90、カバー部材91は次のように組み合わせられる。すなわち、縦枠本体90の見込み方向室内側において、片90aにカバー部材91の片91bが重ねられるように配置される。そして固定部材92により片91bと片90aとが固定される。本実施形態では、片90bの先端が片91aに係合することによりさらに確実に固定される。
これにより、カバー部材91は、縦枠本体90の見付方向内側面のうち見込方向室内側の一部を覆うことができる。
【0104】
ここでは一つの好ましい実施形態として、上記態様を説明したが、カバー部が形成されるものであればこれに限定されるものではない。例えば、縦枠、及びカバー部を金属、又は樹脂で一体に形成してもよいし、室外側の半分を金属の枠とし、室内側の半分を樹脂で枠とカバー部とを一体に形成し、これらを室内外に配列させて連結してもよい。
【0105】
図18を参照しつつ、上横枠84について説明する。上横枠84は、枠体81のうち、上側横枠を構成する枠材であり、上横枠本体93と被覆材94とを備えている。
上横枠本体93は、図18に表われる断面において、見込み方向に延在する片93aを有している。片93aの見付方向内側面には、片93b、93c、93d、93eが立設されている。片93bは網戸(不図示)の上レールとなる片、片93cは室外側に配置される障子60の上レールとなる片、及び片93dは室内側となる障子60の上レールとなる片である。また、片93aの見付方向外側面には、片93fが立設されている。当該片93fを建物躯体に取り付けることにより上横枠84が建物躯体に固定される。
【0106】
上横枠本体93の材質は特に限定されることはないが、強度及び生産性の観点から金属が好ましく、通常のサッシに用いられるアルミニウムであることが最も好ましい。また、本実施形態では上横枠本体93は、一体に形成されているが、これに限定されることはなく、いくつかの金属部材が組み合わされて一体とされていてもよい。
【0107】
被覆材94は、上横枠本体93の片93d、片93a、及び片93eで囲まれるコ字状の内側に沿って配置される略コ字状の部材である。当該被覆材の材質は、熱伝導率の低い材料により形成されていることが好ましい。これにより断熱性を高めることができる。熱伝導率が低いほど断熱性を高めることができるが、熱伝導率が10W/m・K以下であることがよい。そのためには具体的には樹脂材料を用いて形成することが好ましい。熱伝導率が低いことに加えて、成型性にも優れるからである。これには例えばPVCを用いることができ、その熱伝導率は0.17W/m・K程度である。
【0108】
下横枠85は、枠体81の下側横枠を構成する枠材である。下横枠85は、下横枠本体95、被覆材96、及び排水弁97を備えている。
下横枠本体95は、図18に表わされる断面において、矩形中空に形成された中空部95aが設けられ、該矩形部95aの見込み方向室内側からは、室内側に延びる片95bが配置されている。
矩形部95a、及び片95bの見付方向内側面には、片95c、95d、95e、95fが立設されている。片95cは網戸の下レールとなる片であり、該網戸の戸車が載置される。片95dは室外側となる障子60の下レールとなる片、及び片95eは室内側となる障子60の上レールとなる片であり、それぞれの障子の戸車が載置される。また、中空部95aの見付方向外側面には、片95gが立設されている。当該片95gを建物躯体に取り付けることにより下横枠85が建物躯体に固定される。
【0109】
下横枠本体95の材質は特に限定されることはないが、強度及び生産性の観点から金属が好ましく、通常のサッシに用いられるアルミニウムであることが最も好ましい。また、本実施形態では下横枠本体95は、一体に形成されているが、これに限定されることはなく、いくつかの金属部材が組み合わされて一体とされていてもよい。
【0110】
被覆材96は、下横枠本体95の片95b、及び片95fの内側に沿って配置される部材である。当該被覆材96の材質は、熱伝導率の低い材料により形成されていることが好ましい。これにより断熱性を高めることができる。熱伝導率が低いほど断熱性を高めることができるが、熱伝導率が10W/m・K以下であることがよい。そのためには具体的には樹脂材料を用いて形成することが好ましい。熱伝導率が低いことに加えて、成型性にも優れるからである。これには例えばPVCを用いることができ、その熱伝導率は0.17W/m・K程度である。
【0111】
排水弁97は、中空部95aを形成する片のうち、室外側に面する片に設けられた排水口に具備される。このとき、中空部95aを形成する片のうち見付方向内側を形成する片の所定の位置には不図示の貫通孔が設けられている。これにより、片95cと片95dとの間、又は片95dと片95eとの間に侵入した水を中空部95a内に導入して、排水弁97から排出することが可能となる。
【0112】
障子60は上記説明したのでここでは説明を省略する。ただし、開口部装置80に備えられる2つの障子60は、室内側に配置される障子60と室外側に配置される障子60とでは、配置位置に基づいて框の断面形状は異なる。本実施形態では縦框71が戸先框、縦框72が召し合せ框として機能する。
【0113】
2枚の障子60が枠体81の枠内に引戸式に配置されることにより開口部装置80が形成されている。すなわち、上横枠84の片93c、93dに障子60の上横框73がガイドされ、下横枠95の片95d、95eに障子60の下横框74に備えられた戸車が載置されてガイドされることにより、引戸式に障子60を開閉できる。
【0114】
以上説明した開口部装置80は、上記した各機能に加えてさらに次のような特徴を備えている。図17、図19を参照しつつ説明する。
開口部装置80の閉鎖の姿勢で図17、図19にBで示した位置と、Aで示した位置とを対比する。Bで示した位置は、障子60が閉鎖した姿勢において、縦框71の見付方向内側端部が配置される位置である。一方、Aで示した位置は、縦枠82、83において、カバー部材88、91の見付方向内側端部が配置される位置である。
【0115】
開口部装置80では、Bで示した位置が、Aで示した位置よりも見付方向外側に配置される。これにより、開口部装置80の閉鎖の姿勢で縦框82、83が室内側正面視から隠蔽される。ここでは、Bの位置がAの位置よりも見付方向外側となるようにしたが、これが面一(同じ位置)、または、Bの位置は、若干であればAの位置よりも見付方向内側に配置されていてもよい。具体的には戸先框の見付方向大きさのうち、90%以上が隠蔽されていることが好ましい。
【0116】
開口部装置80では、上記したように、框が細く形成されている。従って、框を通じての熱移動を抑制することができる。複層ガラスパネル61を適用すれば框を細くすることも可能である。すなわち、従来は、框の開閉時や室内外の圧力差により框が変形し、グレージングチャンネルと板ガラスとの水密気密に問題が生じることから、框を細くすることができないという課題があった。このような課題があったときでも、複層ガラスパネル61を用いれば、グレージングチャンネル66がパネル間シール材65を介する等して板ガラス62、63に強固に固定されているので、この固定が障子全体に対する強度を向上させ、上記変形及びこれによる水密気密の問題を解消することができる。そして、係る形態であっても、グレージングチャンネル66の立設部66bに設けられた孔66fにより水抜きも可能である。
【0117】
これに加えて、このように熱移動が抑制された縦框71がカバー部材により室内視から隠蔽されている。これにより框と室内との熱伝達を抑制することができ、断熱性能をさらに向上させることが可能となる。すなわち、さらに断熱性向上の課題があった場合にはこれを解決することができる。
【0118】
かかる構成により、枠、及び框ともに、従来における断熱サッシのようなブリッジ材方式(枠や框を室内側部材と室外側部材とに分け、これを樹脂等により連結する方式)を用いなくても、断熱性能を向上させることが可能となる。すなわち、簡易な構成により断熱性能を向上させることができる。ただし、ブリッジ方式を適用することを妨げるものではなく、ブリッジ構造を用いてもよい。さらなる断熱性向上を期待できるからである。
このような構成により、ある大きさの開口部に従来の開口部装置を設置したときに、H−3等級(JIS A 4706、JIS A 4702、熱貫流抵抗0.287m2・K/W以上)の断熱性能を得ることができなかった場合であっても、開口部装置100によれば、H−3等級の断熱性能を得ることが可能となる。
【0119】
また、上記した複層ガラスパネル61により框を細く形成することができ、該框が室内視で隠蔽されるので、外観にも優れたものとなる。ここで、カバー材88、91も、細い框を隠蔽する程度に形成されれば良いので、図19(b)にEで示した寸法も小さく抑えることができる。
【符号の説明】
【0120】
10 障子
11 複層ガラスパネル
12、13 板ガラス
14 スペーサー
15 パネル間シール材
16 グレージングチャンネル
17 加熱膨張体(封止手段)
18 補強部材
20 框体
30 開口部装置
31 枠体
【技術分野】
【0001】
本発明は住宅や公共施設等の建物開口部に用いられる開口部装置に具備される複層ガラスパネル、該複層ガラスパネルを備える障子、及び開口部装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建物開口部に備えられるサッシ窓等の開口部装置は、開閉可能なものについては室外との連通・遮断が自在であり、人や物の出入り、及び換気等をすることができる。また、開閉の可否にかかわらず、開口部装置には複層ガラスパネルが用いられるものが多く、断熱性や遮音性を向上しつつ、ガラスの光透過性の性質を利用して閉鎖の姿勢でも室内に光を取り入れることができ、室内を明るくして暖をとる等、室内環境の向上が図られる。
【0003】
このような複層ガラスパネルは、その外周部を金属、又は樹脂による枠や框により囲まれて構成される。その際には、枠又は框と複層ガラスパネルとの気密性、水密性を確保するために、枠又は框と複層ガラスパネルとの接触部には樹脂等によるシール部材が配置される。シール部材としては例えばグレージングチャンネル等を挙げることができる。
【0004】
ところが、火災等により開口部装置に大きな熱量が加わった場合、開口部装置に用いられる各種材料の性質上、初めにシール部材が溶けて消失してしまう傾向にある。シール部材が消失すると複層ガラスパネルが分解してしまう場合や、分解しなくてもシール部材が消失した部位において室内外の連通が生じる場合があり、煙や炎がここを通じて反対側に広がる虞がある。このような炎や煙の広がりを防止するための手段として特許文献1、2のような技術が開示されている。特許文献1、2によれば、発泡性コーキング材及び発泡性遮炎材(特許文献1)や熱膨張材(特許文献2)を用いて複層ガラスパネルの分解やシール部材消失による室内外の連通を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−6874号公報
【特許文献2】特開平9−184372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、複層ガラスパネルは複数の板ガラスを所定の間隔を有して配置し、その間隔を維持した状態で保持固定するために、スペーサー及びこれを固定するシール材が使用されている(以下このシール材を「パネル間シール材」と記載することがある。)。このパネル間シール材は複数の板ガラスを強固に固定する必要性から、比較的多くの分量が用いられるとともに、加熱により可燃性ガスを発生させる材質のものが適用されていることが多い。従って複層ガラスパネルが火災等により加熱されると、パネル間シール材が可燃性ガスを発生させて発火する虞がある。
【0007】
特許文献1、2に記載のような技術では、開口部装置の室内外の連通や複数のガラスパネルの分解を防止することはできるが、複層ガラスパネル間から発生する可燃性ガスの発火を必ずしも防止することができるとは限らなかった。また、パネル間シール材に可燃性ガスを発生しない材料を用いることも可能ではあるが、高価な材料であったり、シール材として固定する性能が不十分であったりすることにより困難がある。
【0008】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、複数の板ガラス間に配置されるシール材(パネル間シール材)から発生する可燃性ガスによる発火を防止することが可能な複層ガラスパネルを提供することを課題とする。また、当該複層ガラスパネルを備える障子、及び開口部装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、本発明について説明する。
【0010】
請求項1に記載の発明は、所定の間隔を有して対向する2枚以上の板ガラスと、間隔のうち板ガラスの外周端部に充填されるパネル間シール材と、板ガラスの外周端部及びパネル間シール材を覆うように設けられるグレージングチャンネルと、所定の温度で体積を膨張させて前記2枚以上の板ガラス間に入り込み、該板ガラス間に存する気体を前記板ガラス間に封止可能な封止手段と、を備える、複層ガラスパネルである。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の複層ガラスパネルにおいて、少なくとも2つの片を有し、そのうちの1つの片は板ガラスの板面に沿って配置され、他の1つの片は前記板ガラスの端面に沿って配置される、補強部材をさらに備えることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の複層ガラスパネルにおいて、2枚以上の板ガラスのうち少なくとも一方は網入りガラス、又は耐熱強化ガラスであることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の複層ガラスパネルにおいて、グレージングチャンネルは、板ガラスの外周端部及びパネル間シール材のうち、端面を覆う底片と、底片の両端から立設して板ガラスの板面の端部を覆う立設片とを有し、底片又は立設片の少なくとも一部が、板ガラス又はシール材に結合されるとともに、底片又は立設片には、板ガラス又はシール材に結合されていない部位に、その厚さ方向に貫通する孔が設けられているものである。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の複層ガラスパネルと、複層ガラスパネルの外周端部を挿入可能な溝部を有する框体と、を有し、複層ガラスパネルの外周端部が框体の溝部に挿入されて形成されている、障子c。
【0015】
請求項6に記載の発明は、建物開口部の縁に沿って配置される枠体と、枠体により区画される枠内に配置される請求項5に記載の障子と、を備える、開口部装置である。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の複層ガラスパネルと、複層ガラスパネルの外周端部を挿入可能な溝部を有し、建物開口部の縁に沿って該建物に取り付けられる枠体と、を有し、複層ガラスパネルの外周端部が枠体の溝部に挿入されて形成されている、開口部装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、パネル間シール材から発生する可燃性ガスを板ガラス間に封止することにより、可燃性ガスの発火を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第一実施形態を説明する図で、障子10の正面図である。
【図2】図1のII−II線に沿った断面図である。
【図3】図1のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】図4(a)は図2のうちその一端側に注目した図で、図4(b)は分解図である。
【図5】障子10を備えた開口部装置の水平方向断面図である。
【図6】障子10を備えた開口部装置の鉛直方向断面図である。
【図7】作用を説明する図である。
【図8】図8(a)が1つの変形例を説明する図、図8(b)が他の変形例を説明する図である。
【図9】第二実施形態を説明する図で、開口部装置40の水平方向断面図である。
【図10】開口部装置40の鉛直方向断面図である。
【図11】第三実施形態を説明する図で、障子60に関する図2に相当する図である。
【図12】障子60に関する図3に相当する図である。
【図13】図13(a)は図11のうちその一端側に注目した図で、図13(b)は分解図である。
【図14】図14(a)は変形例1に具備されるグレージングチャンネル166の形態を示した図で、図14(b)は変形例2に具備されるグレージングチャンネル266の形態を示した図である。
【図15】図15(a)は変形例3を説明する図であり、図15(b)は分解図である。
【図16】図16(a)は変形例4を説明する図であり、図16(b)は分解図である。
【図17】障子60が備えられた開口部装置80の水平方向断面図である。
【図18】障子60が備えられた開口部装置80の鉛直方向断面図である。
【図19】図19(a)は図17の一部に注目して示した図で、図19(b)は縦枠82の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のこのような作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。ただし、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。
【0020】
図1は、第一実施形態を説明する図で、障子10の正面図である。図2は、図1にII−IIで示した線に沿った断面図、図3は、図1にIII−IIIで示した線に沿った断面図である。また、図4には、図2のうち左側端部に注目して拡大した図(図4(a))及びこれを分解して示した図(図4(b))を表した。
【0021】
障子10は、複層ガラスパネル11、及び框体20を備えている。複層ガラスパネル11は、板ガラス12、13、スペーサー14、パネル間シール材15、グレージングチャンネル16、封止手段としての加熱膨張体17、及び補強部材18を備えている。また、框体20は、長尺の縦框21、22、上横框23、及び下横框24を有し、これらが矩形枠状に組み合わされている。以下各構成部材について説明する。
【0022】
初めに複層ガラスパネル11について説明する。
板ガラス12、13は、いずれも矩形板状のガラスパネルであり、その板面が対向するように所定の間隔を有して並べて配列されている。用いられる板ガラスの種類は特に限定されることはないが、防火性能の観点から本実施形態では、板ガラス12は、線状の金属が埋め込まれた網入りガラスとし、板ガラス13はLOW−Eガラスとした。また板ガラス12、13にはこれに代えて耐熱強化ガラスを用いることもできる。このように板ガラス12、13に防火性能の高いガラスを用いることにより、火災時等により複層ガラスパネル11に熱が加わった場合でも、より長い時間、ガラス自体の割れ、及び崩落を防止することが可能となる。
【0023】
スペーサー14は、板ガラス12と板ガラス13との間隙により形成される空間のうち、その外周端部よりやや内側に、板ガラス12、13の辺に沿って配置されている。従って、スペーサー14は、板ガラス12、13間に矩形枠状に形成されている。スペーサー14は公知のものを用いることができ、板ガラス12と板ガラス13との間隙を所定の大きさに維持することを主要な機能とする。ただし、スペーサー14に乾燥剤を含ませることにより、スペーサー14と板ガラス11、12とに囲まれる空間内側を適切な湿度に保つことが可能となる。
【0024】
パネル間シール材15は、板ガラス12と板ガラス13との間隙のうち、スペーサー14よりも外側となる当該間隙の外周端部に充填されている。パネル間シール材15は、板ガラス12と板ガラス13とを強固に接着固定しつつ、水密性(密封性)を保持することを主要な機能とする。かかる観点から、パネル間シール材15としてはシリコン系、ポリサルフィド系の接着剤が用いられることが好ましい。
【0025】
なお、本実施形態では、複層ガラスパネル11には2枚の板ガラス12、13を具備する例を示したが、これに限定されることはなく、3枚以上の板ガラスを備えるものであってもよい。
【0026】
グレージングチャンネル16は、配列された板ガラス12、13、及び板ガラス12、13による間隙の端部を覆うとともに、板ガラス12、13の周囲を囲むように設けられる長尺の部材で、長手方向に直交する断面が図2〜図4に表れている。ここで、「板ガラス12、13及び板ガラス12、13による間隙の端部」とは、板ガラス12、13の端面を含み、さらに板ガラス12、13の外側面(板ガラス12、13が対向しない面)の外周端部を含む概念である。本実施形態では公知のグレージングチャンネルを用いることができる。図2〜図4からわかるように、グレージングチャンネル16は断面略コ字状であり、底片と、この底片の両端から同じ方向に立設される2つの立設片と、を備えている。従って、立設片間に間隙ができ、底片が配置されない側には断面コ字状の内側に通じる開口部が形成される。そして当該開口部から立設片間に板ガラス12、13の端部が差し込まれるように配置される。
【0027】
グレージングチャンネル16の材質は、グレージングチャンネル用の材料として公知のものを用いることができ、例えば塩化ビニル系、シリコン系の材料を挙げることができる。また、これらについて硬質と軟質の材料を組み合わせたり、又は軟質のみにより構成することも可能である。
【0028】
加熱膨張体17は、本実施形態では通常時において図2〜図4に示すように断面が矩形であり、グレージングチャンネル16の長手方向に沿って延びる細長の板状の部材である。ただし加熱発泡体17は、難燃性であるとともに、所定の温度にまで加熱されると膨張して体積が増加するように構成されている。具体的な膨張開始温度は特に限定されることはないが、建築基準法及び同施工令の加熱曲線に合せ、150℃程度であることが好ましい。
また、膨張倍率も特に限定されることはないが、10倍〜40倍であることが好ましい。
加熱膨張体17の具体的な材料はこのような性能を有するものであれば特に限定されることはなく、公知のものを用いることができる。これには例えば黒鉛や炭素繊維等の熱発泡体を含有した材料であり、基材としては、エポキシ系、塩化ビニル、ブチル等を使用したものを挙げることができる。
【0029】
補強部材18は、配列された板ガラス12、13、板ガラス12、13による間隙の端部、及びグレージングチャンネル16を外側から覆うように、グレージングチャンネル16の長手方向に沿って延びる長尺の部材であり、当該長手方向に直交する断面が図2〜図4に表れている。図2〜図4からわかるように、補強部材18は断面が略コ字状であり、底片と、この底片の両端から同じ方向に立設される2つの立設片と、を備えている。従って、立設片間に間隙ができ、底片が配置されない側には断面コ字状の内側に通じる開口部が形成される。そして当該開口部から立設片間に板ガラス12、13の端部やグレージングチャンネル16が差し込まれるように配置される。これにより、障子10に火災等による熱が加わっても板ガラス12、13が框体20内に留まり、板ガラス12、13が框体20から外れて崩れることをより確実に防止することが可能となる。
【0030】
補強部材18の材質は、耐熱性が高く、板ガラス12、13を保持することができるものであれば特に限定されることはない。これには例えば金属を挙げることができる。その中でも軽量である観点からアルミニウムであることが好ましい。
【0031】
次に框体20について説明する。上記したように框体20は、長尺の縦框21、22、上横框23、及び下横框24を有し、これが矩形枠状に組み合わされている。縦框、上横框、及び下横框は框体を形成することができればよく、その具体的な断面形状は限定されることはない。すなわち、障子が適用される開口部装置の種類等により適切な断面形状が選択される。本実施形態の框体20は後述するように引き戸式の開口部装置30に用いられるので(図5、図6参照)、縦框21が戸先框、縦框22が召し合わせ框、上横框23及び下横框24が上枠34、下枠35にガイドされる框として機能する。
ただし、框体20を構成する縦框21、22、上横框23、及び下横框24はいずれも、上記補強部材18、加熱膨張体17、グレージングチャンネル16の少なくとも一部、及び板ガラス12、13の端部を挿入可能な溝部(例えば図4(b)の溝部21a)を具備している。
【0032】
障子10は、上記構成部材が例えば次のように組み合わされて形成されている。
すなわち、図2〜図4からわかるように、板ガラス12、13、該板ガラス12、13の間隙の端部、及びパネル間シール材15が、グレージングチャンネル16のコ字状の内側に挿入され、該グレージングチャンネル16に囲まれるように配置される。
【0033】
一方、縦框21、22、上横框23、及び下横框24に形成される溝部(例えば図4(b)に表した溝部21a)に補強部材18が配置される。このとき、補強部材18を構成する各片が各框(21、22、23、24)の溝の内面に沿うとともに、補強部材18の開口部にグレージングチャンネル16等が差し込めるように配置される。
また、補強部材18を配置する際には、各框(21、22、23、24)にネジやビス等の固定部材を用いて固定することが好ましい。
【0034】
補強部材18の断面コ字状の底部に加熱膨張材17が配置される。その際には加熱膨張体17は補強部材18にネジやビス等の固定部材により固定することが好ましい。
そして各框(21、22、23、24)の溝部(21a等)及び補強部材18の内側にグレージングチャンネル16及び板ガラス12、13の端部が差し込まれるように配置される。
【0035】
次に障子10が具備された開口部装置30について説明する。図5、図6は障子10を備える開口部装置30の断面図で、図5は水平方向断面、図6は鉛直方向断面を表している。図5では、紙面上が室外側、紙面下が室内側を示している。また、図6では紙面左が室外側、紙面右が室内側を表している。本実施形態において開口部装置30は、いわゆる引戸式のサッシ窓である。開口部装置30は、建物開口部の4辺の縁に沿って配置される枠体31、及び該枠体31の内側に具備されて引戸式に開閉する2枚の障子10を備えている。図5、図6を参照しつつ開口部装置30について説明する。
【0036】
枠体31は、左右に所定の間隔を有して平行に配列される縦枠32、33、及び、縦枠32、33の端部間を渡して、上下のそれぞれに水平に配置される長尺部材である上横枠34、下横枠35を備え、これらが枠状に組み合わされている。縦枠31、32、上横枠34、及び下横枠35は開口部装置の枠を形成することができればよく、その具体的な断面形状は限定されることはない。すなわち、障子が適用される開口部装置の種類等により適切な断面形状が形成される。本実施形態では引戸式のサッシであるため、上横枠34には障子10の上横框23に挿入され上横框23をガイドするガイド片34a、34bが備えられ、下横枠35には障子10の下横框24に備えられた戸車10aが載置されてレールとして機能するレール片35a、35bが設けられている。
また、断熱性を向上する観点から枠体31には樹脂により形成され、枠体31の内側面に具備されたカバー部材32a、33a、34c、35cが取り付けられていてもよい。
【0037】
障子10は上記説明したのでここでは説明を省略する。ただし、開口部装置30に備えられる2つの障子10は、室内側に配置される障子10と室外側に配置される障子10とでは、配置位置に基づいて框の断面形状は異なる。本実施形態では縦框21が戸先框、縦框22が召し合せ框として機能する。
【0038】
2枚の障子10が枠体31の枠内に引戸式に配置されることにより開口部装置30が形成されている。すなわち、上横枠34のガイド片34a、34bに障子10の上横框23がガイドされ、下横枠35のレール片35a、35bに障子10の下横框24に備えられた戸車10aが載置されてガイドされることにより、引戸式に障子10を開閉できる。
【0039】
次に複層ガラスパネル11による作用について説明する。図7に当該作用を説明する図で、図4(a)と同様の視点による図を示した。
複層ガラスパネル11を備える開口部装置30が火災等により加熱され、所定の温度に達すると複層ガラスパネル11に具備される樹脂材料により形成された部材が溶けて消失してしまうことがある。その際に特にパネル間シール材15はその性質上、可燃ガスを発生する。これに対して複層ガラスパネル11には加熱膨張体17が設けられており、封止手段として機能する加熱膨張体17が火災等の熱によって膨張し、図7に示したように板ガラス12と板ガラス13との間に進入する。これにより、発生した可燃性ガスを板ガラス12、13間に封止して閉じこめることができる。従って可燃性ガスが流出して発火することを防止することが可能となる。
このように、本発明によれば複層ガラス間に可燃性ガスを封じ込めてその発火を防止する。
【0040】
また、本実施形態のように補強部材18が具備された場合にはグレージングチャンネル16が消失した場合でも、複層ガラスパネル11を框体20内に、より確実に保持させることができる。
これに加えて、板ガラス12、13の少なくとも一方に網入りガラスや耐熱強化ガラスを適用すれば、さらに複層ガラスパネル11の框体20内への保持が確実に行われる。
【0041】
図8には変形例にかかる障子10’、10”のうち、図4(a)に相当する図を示した。図8(a)は障子10’、図8(b)は障子10”を表している。障子10’及び障子10”では、複層ガラスパネル11’、11”のうち、加熱膨張体及び補強部材の少なくとも一方が障子10と異なるのみであり、他の構成は障子10と共通するので、共通部分は同じ符号を付すとともに説明を省略する。
【0042】
障子10’は加熱膨張体17’が板ガラス12、13の端部とグレージングチャンネル16との間に配置されている。このような加熱膨張体17’の配置によっても上記と同様の効果を奏するものとなる。
【0043】
障子10”は、加熱膨張体17”及び補強部材18”を備えている。本実施形態では加熱膨張体17”は、膨張前(通常時)における幅(図8(b)の紙面上下方向の大きさ)が、加熱膨張体17、17’よりも短く形成され、複層ガラスパネル11”の厚さ(図8(b)の紙面上下方向の大きさ)方向中央よりも一方側に寄せられて配置されている。このように、加熱膨張体の配置形態は特に限定されることはなく、その膨張時に適切に板ガラス間に入り込み、可燃性ガスを封止できればよい。
【0044】
また、本例の補強部材18”は、図8(b)からわかるように、L字状の断面形状を有してグレージングチャンネル16の長手方向に沿って延びる長尺の部材である。補強部材18”はL字状である断面のうちの一片は板ガラス12、13の端面に沿った方向に、他の片は板ガラス12の板面に沿った方向に配置される。このように、補強部材が板ガラス12側又は板ガラス13側のみに配置されていても、障子10”に火災等による熱が加わっても板ガラス12、13が框体20内に留まり、板ガラス12、13が框体20から外れて崩れることをより確実に防止することが可能となる。
【0045】
補強部材18”の材質は、耐熱性が高く、板ガラス12、13を保持することができるものであれば特に限定されることはない。これには例えば金属を挙げることができる。その中でも軽量である観点からアルミニウムであることが好ましい。
【0046】
上記した変形例の他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて変形した形態を適用することは可能である。例えば、加熱膨張体の断面形状は必ずしも矩形に形成されている必要はなく、所定の断面形状に成形されていてもよい。例えば、加熱膨張体によりグレージングチャンネルを形成することも可能である。または、グレージングチャンネルに加熱膨張体を押成形し、一体化させることもできる。これらによれば2つの機能を兼ねることができるので部材点数を減らすこともできる。また、加熱膨張体の長手方向も連続している必要はなく、断続的に設けられていてもよい。
補強部材は上記効果を奏することから、設けられることが好ましいが、必ずしも具備されている必要はない。例えば、補強部材を設ける代わりに、框の片の少なくとも一部を厚くして框自体の強度向上を図っても同様の効果を奏するものとなる。
【0047】
図9、図10は第二実施形態を説明する図であり、図9が開口部装置40の水平方向断面図であり、図10が開口部装置40の鉛直方向断面図である。図9では紙面上が室外側、紙面下が室内側を表し、図10では紙面左が室外側、紙面右が室内側を表している。本実施形態は、開閉が禁止されたいわゆるはめごろしの開口部装置である。
【0048】
開口部装置40は、枠体41、板ガラス46、47、スペーサ−48、パネル間シール材49、シール材50、51、加熱膨張体52、及び補強部材53、54を備えている。
【0049】
枠体41は、左右に所定の間隔を有して平行に配列される縦枠42、43、及び、縦枠42、43の端部間を渡して、上下のそれぞれに水平に配置される長尺部材である上横枠44、下横枠45を備え、これらが枠状に組み合わされている。縦枠41、42、上横枠44、及び下横枠45は開口部装置の枠を形成することができればよく、その具体的な断面形状は限定されることはない。すなわち、本実施形態では、はめごろし窓を構成し得る断面形状であればよい。ただし、枠体41を構成する縦枠41、42、上横枠43、及び下横枠44はいずれも、補強部材53、54、加熱膨張体52、シール材50、51の少なくとも一部、及び板ガラス46、47の端部を挿入可能な溝部を具備している。
また、断熱性を向上する観点から枠体41には樹脂により形成され、枠体41の内側面に具備されたカバー部材42a、43a、44a、45aが取り付けられていてもよい。
【0050】
板ガラス46、47は上記説明した板ガラス12、13と共通し、スペーサ−48及びパネル間シール材49は上記説明したスペーサ−14及びパネル間シール材15とそれぞれ共通するのでここでは説明を省略する。
【0051】
シール材50は板ガラス46と枠体41の溝部の内面との間に配置され、シール材51は板ガラス47と枠体41の溝部との間に配置される長尺の部材で、長手方向に直交する断面が図9、図10に表れている。これにより、板ガラス46、47と枠体41との水密気密を確保している。このようなシール材は公知のものを用いることができ、ビード等と称される場合もある。
【0052】
加熱膨張体52は、上記した加熱膨張体17と共通するのでここでは説明を省略する。
【0053】
補強部材53は、図9からわかるように、断面略コ字状の部材であり、図9の紙面奥/手前方向に延びる部材である。一方、補強部材54は、図10からわかるように、断面L字状の部材であり、図10の紙面奥/手前方向に延びる部材である。このような補強部材53、54により、開口部装置40に火災等による熱が加わっても板ガラス46、47が枠体41内に留まり、板ガラス46、47が枠体41から外れて崩れることをより確実に防止することが可能となる。補強部材53、54の材質は、耐熱性が高く、板ガラス46、47を保持することができるものであれば特に限定されることはない。これには例えば金属を挙げることができる。その中でも軽量である観点からアルミニウムであることが好ましい。
【0054】
以上のような構成部材を備える開口部装置40は、該構成部材が例えば次のように組み合わされて形成されている。
すなわち、図9、図10からわかるように、板ガラス46と板ガラス47との間に間隙を形成するように該間隙の端部にスペーサ−48が配置され、その外側にパネル間シール材49が充填されている。これにより板ガラス46、47、スペーサー48及びパネル間シール材49が一体化されている。
【0055】
一方、枠体41のうち縦枠42、43、及び下横枠45に形成される溝部に補強部材53、54が配置される。補強部材53はその一片が板ガラス46、47の端面に沿う方向に配置され、対向する2つの片は板ガラス46、47のそれぞれの板面の外側で、該板面に沿う方向に配置される。一方、補強部材54は、一片が板ガラス46、47の端面に沿う方向に配置され、他の一片が板ガラス46の板面の外側で該板面に沿う方向に配置される。
また、補強部材53、54を配置する際には、枠体41にネジやビス等の固定部材を用いて固定されることが好ましい。
【0056】
枠体41の溝内に加熱膨張体52が配置される。ここで、補強部材53、54が配置されている溝部では、補強部材53、54と板ガラス46、47の端面との間に加熱膨張体52が設けられる。その際には加熱膨張体52は枠体41や補強部材53、54にネジやビス等の固定部材により固定することが好ましい。
そして枠体41の各溝部の内側に一体化された板ガラス46、47が差し込まれるとともに、板ガラス46、47と枠体41との間にシール材50、51が配置されて水密気密が図られている。
【0057】
このような開口部装置40でも、上記第一実施形態と同様の効果を奏するものとなる。
【0058】
次に第三実施形態について説明する。図11は第三実施形態に含まれる障子60における図2に相当する図、図12は図3に相当する図、図13は図4に相当する図である。
【0059】
障子60は、複層ガラスパネル61、及び框体70を備えている。複層ガラスパネル61は、板ガラス62、63、スペーサー64、パネル間シール材65、グレージングチャンネル66、封止手段としての加熱膨張体67、及び補強部材68を備えている。また、框体70は、長尺の縦框71、72、上横框73、及び下横框74を有し、これが矩形枠状に組み合わされている。以下各構成部材について説明する。
【0060】
初めに複層ガラスパネル61について説明する。
板ガラス62、63、スペーサー64、パネル間シール材65は、それぞれ第一実施形態で説明した板ガラス12、13、スペーサー14、及びパネル間シール材15と共通するのでここでは説明を省略する。
【0061】
グレージングチャンネル66は、配列された板ガラス62、63、及び板ガラス62、63による間隙の端部を覆うとともに、板ガラス62、63の周囲を囲むように設けられる長尺の部材で、長手方向に直交する断面が図11、図12に表れている。ここで、「板ガラス62、63及び板ガラス62、63による間隙の端部」とは、板ガラス62、63の端面を含み、さらに板ガラス62、63の外側面(板ガラス62、63が対向しない面)の外周端部を含む概念である。
【0062】
図13(b)からわかるように、グレージングチャンネル66は断面略コ字状であり、底片66aと、この底片66aの両端から同じ方向に立設される2つの立設片66bと、を備えている。従って、立設片66b間に間隙ができ、底片66aが配置されない側には断面コ字状の内側に通じる開口部が形成される。また、立設片66bの開口部側端部には、開口部を狭めるように対向して設けられるシール片66c、66cが配置されている。また、立設片66bの面のうち互いに対向する面には、ひれ状部66d、66eが形成されている。
これに加えて、立設片66bには、その厚さ方向に貫通する孔66fを具備している。孔66fは、立設片66bの長手方向に断続的に複数設けられている。
【0063】
本実施形態では、板ガラスの4周各辺に配置されるグレージングチャンネルの全てに孔を断続的に設ける態様を説明した。しかし、これに限定されることはなく、板ガラスの下辺に配置されるグレージングチャンネルに孔を多く設け、他の3つの辺に配置されるグレージングチャンネルには、そのいずれかに少なくとも1つの孔が設けられる態様であっても良い。これによれば、孔の数を減らすことができる。このときには、下辺に配置されたグレージングチャンネルに設けられた孔が水抜き孔、他の3つの辺に配置されたグレージングチャンネルのいずれかに設けられた孔が外気導入孔となり得る。
【0064】
さらに、底片66aの面のうち、その幅方向(図13の紙面上下方向)略中央には、立設片66bと同じ側に立設する突出部66gが具備されている。突出部66gの先端には膨らむように抜け止め部66hが設けられている。
突出部66gはグレージングチャンネル66の長手方向全長に亘って形成されていてもよいが、必ずしもこれに限定される必要はなく、一部でもよいし、断続的に複数形成されていてもよい。例えば、板ガラスの4辺の各辺に配置されて矩形枠状に形成されるグレージングチャンネルのうち、板ガラスの縦辺に配置されるグレージングチャンネルにのみ突出部を設けてもよい。また、逆に板ガラスの横辺に配置されるグレージングチャンネルにのみ突出部を設けてもよい。
グレージングチャンネル66の材質は、例えば塩化ビニル系、シリコン系の材料を挙げることができる。また、これらについて硬質と軟質の材料を組み合わせたり、又は軟質のみにより構成することも可能である。
【0065】
加熱膨張体67は、本実施形態では通常時において図11〜図13に示すように断面が矩形であり、グレージングチャンネル66の長手方向に沿って延びる細長の板状の部材である。ただし加熱発泡体67は、難燃性であるとともに、後で説明するように所定の温度にまで加熱されると膨張して体積が増加するように構成されている。具体的な膨張開始温度は特に限定されることはないが、建築基準法及び同施工令の加熱曲線に合せ、150℃程度であることが好ましい。
また、膨張倍率も特に限定されることはないが、10倍〜40倍であることが好ましい。
加熱膨張体67の具体的な材料はこのような性能を有するものであれば特に限定されることはなく、公知のものを用いることができる。これには例えば黒鉛や炭素繊維等の熱発泡体を含有した材料であり、基材としては、エポキシ系、塩化ビニル、ブチル等を使用したものを挙げることができる。
【0066】
補強部材68は、図11〜図13からわかるように、断面がL字状であり当該断面を有して紙面奥/手前方向に延びる部材であり、その一片が板ガラス62、63の端面に沿う方向であるとともに、他片が板ガラス62の外側で板面に沿う方向に配置される。
このような補強部材68により、障子60に火災等による熱が加わっても板ガラス62、63が框体70内に留まり、板ガラス62、63が框体70から外れて崩れることをより確実に防止することが可能となる。補強部材68の材質は、耐熱性が高く、板ガラス62、63を保持することができるものであれば特に限定されることはない。これには例えば金属を挙げることができる。その中でも軽量である観点からアルミニウムであることが好ましい。
【0067】
次に框体70について説明する。上記したように框体70は、長尺の縦框71、72、上横框73、及び下横框74を有し、これが矩形枠状に組み合わされている。
【0068】
縦框71は、後述するように本実施形態では戸先框として機能する縦框である。縦框71は、図11、図13に表われる断面において、見込み方向に延在する見込み片としての片71bを有している。そして該片71bの見込み方向両端部のそれぞれには見付方向に延在する室外側片としての片71c、及び室内側片である片71dが設けられている。片71c、71dの見付方向両端部では、該片71c、71dで挟まれる部分が開口部を形成している。これにより、見付方向内側には、片71bを底部とし、片71c、71dを側壁とした溝部71aが形成されている(図13(b)参照)。
【0069】
縦框72は、後述するように本実施形態では召し合わせ框として機能する縦框である。縦框72は、図11に表われる断面において、矩形中空状である中空部72bを有している。該中空部72bの見付方向内側面のうち、その見込み方向両端部のそれぞれからは見付方向内側に片72c、72dが延在する。これにより見付方向内側には、中空部72bの一つの片を底部とし、片72c及び片72dを側壁とした溝部72aが形成されている。
【0070】
上横框73は、図12に表われる断面において、見込み方向に延在する片73bを有している。さらに該片73bの見込み方向両端部のそれぞれには見付方向に延在する片73c、73dが設けられている。片73c、73dの見付方向両端部では、該片73c、73dで挟まれる部分が開口部を形成している。これにより、見付方向内側には、片73bを底部とし、片73c、73dを側壁とした溝部73aが形成されている。
【0071】
下横框74は、図12に表われる断面において、見込み方向に延在する片74bを有している。さらに該片74bの見込み方向両端部のそれぞれには見付方向に延在する片74c、74dが設けられている。片74c、74dの見付方向両端部では、該片74c、74dで挟まれる部分が開口部を形成している。これにより、見付方向内側には、片74bを底部とし、片74c、74dを側壁とした溝部74aが形成されている。
【0072】
以上のような構成部材を備える障子60は、該構成部材が例えば次のように組み合わされて形成されている。
すなわち、図11〜図13からわかるように、板ガラス62、63、該板ガラス62、63の間隙の端部、及びパネル間シール材65が、グレージングチャンネル66のコ字状の内側に挿入され、囲まれるように配置される。このとき、グレージングチャンネル66の突出部66gがパネル間シール材65の内側に包含されるように具備される。これによりグレージングチャンネル66が、パネル間シール材65を介して板ガラス62、63に固定される。また、突出部66gの先端に具備された抜け止め部66hによってその固定がより確実で強固なものとなる。このとき、底片66aの少なくとも一部もパネル間シール材65に接着されてもよい。これにより、さらに強く固定されることになる。
【0073】
立設片66bに備えられたシール部66c、及びひれ状部66d、66eは、板ガラス62、63の面に接触して水密気密の向上を図る。また、立設片66bに設けられた孔66fにより、板ガラス62、63と立設片66bとの間に侵入した水を排出することができる。具体的には、建物に取り付けられたときに、上部に配置されるグレージングチャンネルの孔は外気導入孔として機能し、下部に配置されるグレージングチャンネルの孔は排水孔として機能する。
【0074】
一方、縦框71、72、上横框73、及び下横框74に形成される溝部71a、72a、73a、74aに補強部材68が配置される。このとき、補強部材68を構成する各片が溝部71a、72a、73a、74aの内面に沿うように配置される。また、補強部材68の1つの片に沿って加熱膨張体67が配置される。そして各框の溝部71a、72a、73a、74aの内側に一体化されたグレージングチャンネル66及び板ガラス62、63の端部が差し込まれるように配置される。
【0075】
ここで、上記したグレージングチャンネル66の固定は例えば次のように行うことができる。すなわち、2枚の板ガラス62、63間にスペーサー64を挟持するように配置し、板ガラス62、63、スペーサー64で囲まれた空間にパネル間シール材65となる材料を充填する。次に、充填したパネル間シール材65が流動性を有しているうちにグレージングチャンネル66を、板ガラス62、63の端部に取り付ける。このとき、グレージングチャンネル66の突出部66gをパネル間シール材65内に挿入する。その後、パネル間シール材65が固まることにより、グレージングチャンネル66が板ガラス62、63の端部に固定される。
【0076】
このような障子60によれば、上記第一の実施形態と同様に、該障子60が火災等により加熱された際にも封止手段として機能する加熱膨張体67が火災等の熱によって膨張し、板ガラス62と板ガラス63との間に進入し、パネル間シール材65から発生した可燃性ガスを板ガラス62、63間に封止して閉じこめることができる。従って可燃性ガスが流出して発火することを防止することが可能となる。また、本実施形態のように補強部材68が具備された場合にはグレージングチャンネル66が消失した場合でも、板ガラス62、63の少なくとも一方を框体70内に、より確実に保持させることができる。これに加えて、板ガラス62、63の少なくとも一方に網入りガラスや耐熱強化ガラスを適用すれば、さらに板ガラス62、63の框体70内への保持が確実に行われる。
【0077】
また、複層ガラスパネル61によれば、これを框体70に嵌合して障子60としたときに、従来よりも水密気密に優れたものとすることができる。すなわち、従来は、障子の開閉時や室内外の圧力差により框が変形し、グレージングチャンネルと板ガラスとの水密気密に問題が生じることがあった。しかしながら、複層ガラスパネル61では、グレージングチャンネル66がパネル間シール材65を介して板ガラス62、63に強固に固定されているので、この固定が障子全体に対する強度を向上させ、上記変形及びこれによる水密気密の問題を解消することができる。従ってこのような問題があったときにもこれを解決することができる。
【0078】
ここで、グレージングチャンネルの固定に関する他の例である変形例1〜4について説明する。図14(a)に変形例1に用いられるグレージングチャンネル166の断面図、図14(b)変形例2に用いられるグレージングチャンネル266の断面図を示した。他の部位については上記した複層ガラスパネル61と共通するので、説明を省略する。
変形例1にかかるグレージングチャンネル166では、突出部が第一突出部166a、第二突出部166bの2本を有している点がグレージングチャンネル66と異なる。これによりさらにパネル間シール材65とグレージングチャンネル166との固定が強固なものとなる。
変形例2にかかるグレージングチャンネル266では、突出部266cが別体に設けられていることが特徴である。グレージングチャンネル266の底片266aには、スリット266bが設けられ、ここを貫通するように突出部266cをコ字状の内側に突出させることができる。これによれば、強度が必要な部分に、必要な分を過不足なく取り付けることができる。
【0079】
図15は、変形例3を説明する図である。図15(a)は変形例3における複層ガラスパネルの端部付近に注目した図、図15(b)はその分解図である。この例では、グレージングチャンネル366は、突出部を有しておらず、板ガラス62、63の外表面(板ガラスの面のうち互いに対向しない面)に係合突起366aを設けたことが特徴である。図15(a)からわかるように、グレージングチャンネル366のひれ状部66d、66eを係合突起366aに引っ掛けることができる。これによれば、グレージングチャンネル366を機械的に板ガラス62、63に結合することが可能となる。
このような係合突起はガラス板の面上に形成される突起であればよく、例えば突起物を両面テープ、接着剤等によりガラス板の面に接着したものであってもよい。また、係合突起はガラス板の面に沿って連続して設ける必要はなく、断続的に具備されていてもよい。
なお、このような連結の場合には、図15に示したように孔66fを立設片66bに設ける他、底辺66aとパネル間シール部材65との間に間隙を設けることもできるので、孔を底板66aに設けることも可能である。
【0080】
次に変形例4について説明する。図16に説明のための図を示した。図16(a)は変形例4における複層ガラスパネルの端部付近に注目した図、図16(b)はその分解図である。変形例4では、板ガラス62、63の端面とグレージングチャンネル66との間に外周テープ466が配置されている点で複層ガラスパネル61と異なる。
外周テープ466は、パネル間シール材65の上から、板ガラス62、63の端面及びパネル間シール材65の端面を覆うように、板ガラス62、63外周の周方向に沿ってに巻かれた帯状のテープ材である。これにより、後述するように、流動性のあるパネル間シール材65にグレージングチャンネル66を取り付けるに際に、パネル間シール材65によるグレージングチャンネル66の汚損を防止することができる。
【0081】
外周テープ466には後述するようにグレージングチャンネル66の突出部66gが貫通するスリット466aを具備している。外周テープ466の材質は、特に限定されることはないが、ポリエステル、ポリプロピレン、塩化ビニル、セロハンテープ又はアルミニウムを基材として片面に粘着剤が具備される粘着テープであることが好ましい。
外周テープ466は、必ずしも複層ガラスパネルの端面全周にわたって配置されている必要はなく、周方向に存する4つの角部のうち少なくとも2つの角部を含むように配置されていればよい。これは、シール材によるグレージングチャンネルの汚損が最も生じ易いのが角部であることに基づくものである。
【0082】
従って、板ガラス62、63、及びパネル間シール材65の端面は、図16からわかるように、外周テープ466により覆われている。また、板ガラス62、63、及びパネル間シール材65の端部は、外周テープ466を含めてグレージングチャンネル66のコ字状の内側に挿入され、囲まれるように配置される。このとき、グレージングチャンネル66の突出部66gは外周テープ466のスリット466aを貫通してパネル間シール材65の内側に包含されるように具備される。これによりグレージングチャンネル66がパネル間シール材65を介して板ガラス62、63に固定される。また、突出部66gの先端に具備された抜け止め部66hにより、その固定がさらに確実で強固なものとなる。
【0083】
外周テープ466のスリット466aは、いずれかの手段により最終的に形成される。そのための手段は特に限定されるものではない。これには例えば、外周テープ466を巻く前に予めカッター等によりスリット状の切り込みを入れておくことや、ミシン目状の切れ目を設けておくこと等の貫通手段を施しておくことを挙げることができる。または、外周テープ466を板ガラス62、63の端部に巻いた後に、外周テープ466にカッター等によりスリット状の切り込みを入れたり、ミシン目状の切れ目を設ける等の貫通手段を施してもよい。その他、外周テープにグレージングチャンネルの突出部を押し当てることにより、外周テープが破れる等して裂けて貫通するような材質のものを外周テープに適用してもよい。
【0084】
次に、障子60を備える開口部装置80について説明する。図17は開口部装置80の水平方向断面図、図18は開口部装置80の鉛直方向断面図である。図17では、紙面上が室外側、紙面下が室内側を示している。また、図18では紙面左が室外側、紙面右が室内側を表している。本実施形態において開口部装置80は、いわゆる引戸式のサッシ窓である。
【0085】
開口部装置80は、建物開口部の4辺の縁に沿って配置される枠体81、及び該枠体81の内側に具備されて引戸式に開閉する2つの障子60を備えている。
【0086】
枠体81は、左右に所定の間隔を有して鉛直方向に立設される縦枠82、83、及び、縦枠82、83の端部間を渡して、上下のそれぞれに水平に配置される長尺部材である上横枠84、下横枠85を備え、これらが枠状に組み合わされている。
【0087】
縦枠82は、枠体81の2つの縦枠のうち一方を構成する枠材で、開口部装置80が閉鎖されている姿勢で、室外側となる障子60の縦框71が配置される側の縦枠である。図19(a)には、図17のうち縦枠82の部位に注目した図を示し、図19(b)には、縦枠82の分解断面図を表した。
【0088】
縦枠82は、縦枠本体86とカバー部としてのカバー部材87、88とを備え、固定手段89によりカバー部材88が縦枠本体86に固定されている。
縦枠本体82は、図17、図19に表わされる断面において、見込み方向に延在する片86aを有している。片86aの室内側端部、及び室外側端部のそれぞれには、見付方向に延びる片86b、86eが設けられている。また、片86aの見付方向内側面には、片86c、片86dが立設されている(図19参照)。ここで、片86cの先端は、見込み方向外側に向けて折り曲げられるように形成されている。また、片86dは障子60の閉鎖の姿勢でその縦框71の内側に差し込まれる位置に設けられている。
さらに、片86aの見付方向外側面には片86fが立設されている。当該片86fが建物躯体に固定されることにより、縦枠82が建物に取り付けられる。
【0089】
縦枠本体86の材質は特に限定されることはないが、強度及び生産性の観点から金属が好ましく、通常のサッシに用いられるアルミニウムであることが最も好ましい。また、本実施形態では縦枠本体86は、一体に形成されているが、これに限定されることはなく、いくつかの金属部材が組み合わされて一体とされていてもよい。また、縦枠本体を室外側部材と室内側部材とに分け、これを断熱性の部材で連結する、いわゆるブリッジ構造としてもよい。これによりさらに断熱性を向上させることができる。
【0090】
カバー部材87は、縦枠本体86の長手方向に沿って配置される長尺の部材である。カバー部材87は図17、図19に表わされる断面において略矩形中空である矩形部87aを有している(図19参照)。矩形部87aのうちの1つの角部である見込み方向室外側では、見付方向外側の角部が切り欠かれており、ここにコ字状部87bが形成されている。コ字状部87bは、見付方向外側に開口している。そして、この開口部分には、開口部を狭めるように若干位置をずらされて対向する突起87c、87dが設けられている。
【0091】
また、矩形部87aの角部のうち上記コ字状部87bに対して対角の位置の角からは、見込み方向室内側に向けて片87eが延在する。片87eの先端からは、見付方向外側に向けて延びる片87fが具備されている。
【0092】
カバー部材88も、縦枠本体86の長手方向(図17、図19の紙面奥/手前方向)に沿って配置される長尺の部材である。カバー部材88は、図17、図19に表わされる断面において、見付方向に延びる片88a、及びその両端のそれぞれから見込み方向に延在する片88b、88cによりクランク状が形成されている。
【0093】
ここで、本実施形態では、カバー部材87とカバー部材88とは片87fと片88aとにより係合されている。カバー部材は、必ずしも2つの部材を係合させることにより一体とする必要はなく、1つの部材により形成されていてもよい。本実施形態では、カバー部材88をもう一方の縦枠である縦枠83にもそのままの形状で用いることができるため、部品種類の抑制の観点からこのような構成とした。
【0094】
カバー部材87、88の材質は、熱伝導率の低い材料により形成されていることが好ましい。これにより断熱性を高めることができる。熱伝導率が低いほど断熱性を高めることができるが、熱伝導率が10W/m・K以下であることが好ましい。そのため、具体的には樹脂材料を用いてカバー部材を形成することが好ましい。熱伝導率が低いことに加えて、成型性にも優れるからである。これには例えばPVCを用いることができ、その熱伝導率は0.17W/m・K程度である。
【0095】
このような縦枠本体86、カバー部材87、88は次のように組み合わせられる。すなわち、縦枠本体86の見込み方向室内側において、片86aにカバー部材88の片88bが重ねられるとともに、片86bにカバー部材88の片88aが重ねられるように配置する。そして固定部材89により片88bと片86aとが固定される。本実施形態では、片86bの先端が片88aに係合することによりさらに確実に固定される。
カバー部材87は、そのコ字状部87bの内側に縦枠本体86の片86cを差し込むように配置する。上記したように片86cはL字状に形成されており、一方、コ字状部87bの開口部にはその開口を狭めるように突起87c、87dが設けられている。これにより、カバー部材87が縦枠本体86から抜け難いとともに、ここを中心にカバー部材87を回動させることもできる。そして当該回動をさせて、カバー部材87の片87fとカバー部材88の片88aとを係合させる。
これにより、カバー部材87、88は、縦枠本体86の見付方向内側面のうち見込方向室内側の一部を覆うことができる。
【0096】
カバー部材87、88の図19(b)にEで示した大きさは、後で説明する他の部材との関係により決めることができる。従って、これらについては、他の部材を説明した後にまとめて詳しく説明する。
【0097】
ここでは一つの好ましい実施形態として、上記態様を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、縦枠、及びカバー部を金属、又は樹脂で一体に形成してもよいし、室外側の半分を金属の枠とし、室内側の半分を樹脂で枠とカバー部とを一体に形成し、これらを室内外方向に配列させて連結してもよい。
【0098】
引き続き、枠体81について説明する。縦枠83は枠体81の2つの縦枠のうち一方を構成する枠材で、開口部装置80が閉鎖されている姿勢で、室内側に配置される障子60の縦框71が配置される側の縦枠である。図17を参照しつつ説明する。
【0099】
縦枠83は、縦枠本体90とカバー部としてのカバー部材91とを備え、固定手段92によりカバー部材91が縦枠本体90に固定されている。
縦枠本体90は、図17に表わされる断面において、見込み方向に延在する片90aを有している。片90aの室内側端部、及び室外側端部のそれぞれには、見付方向に延びる片90b、90eが設けられている。また、片90aの見付け方向内側面には、片90dが立設されている。ここで、片90dは、室内側に配置される障子60の閉鎖の姿勢でその縦框71の内側に差し込まれる位置に設けられている。さらに、片90aの見付方向外側面には片90fが立設されている。当該片90fが建物躯体に固定されることにより、縦枠83が建物に取り付けられる。
【0100】
縦枠本体90の材質は特に限定されることはないが、強度及び生産性の観点から金属が好ましく、通常のサッシに用いられるアルミニウムであることが最も好ましい。また、本実施形態では縦枠本体90は、一体に形成されているが、これに限定されることはなく、いくつかの金属部材が組み合わされて一体とされていてもよい。また、縦枠本体を室外側部材と室内側部材とに分け、これを断熱性の部材で連結する、いわゆるブリッジ構造としてもよい。これによりさらに断熱性を向上させることができる。
【0101】
カバー部材91はカバー部材88と同様の形状を有している。すなわち、カバー部材91は、縦枠本体90の長手方向に沿って配置される長尺の部材である。そして、カバー部材91は、図17に表わされる断面において、見付方向に延びる片91a、及びその両端のそれぞれから見込み方向に延在する片91b、91cによりクランク状が形成されている。
【0102】
カバー部材91の材質は、熱伝導率の低い材料により形成されていることが好ましい。これにより断熱性を高めることができる。熱伝導率が低いほど断熱性を高めることができるが、熱伝導率が10W/m・K以下であることが好ましい。そのためには具体的には樹脂材料を用いてカバー部材を形成することが好ましい。熱伝導率が低いことに加えて、成型性にも優れるからである。これには例えばPVCを用いることができ、その熱伝導率は0.17W/m・K程度である。
【0103】
このような縦枠本体90、カバー部材91は次のように組み合わせられる。すなわち、縦枠本体90の見込み方向室内側において、片90aにカバー部材91の片91bが重ねられるように配置される。そして固定部材92により片91bと片90aとが固定される。本実施形態では、片90bの先端が片91aに係合することによりさらに確実に固定される。
これにより、カバー部材91は、縦枠本体90の見付方向内側面のうち見込方向室内側の一部を覆うことができる。
【0104】
ここでは一つの好ましい実施形態として、上記態様を説明したが、カバー部が形成されるものであればこれに限定されるものではない。例えば、縦枠、及びカバー部を金属、又は樹脂で一体に形成してもよいし、室外側の半分を金属の枠とし、室内側の半分を樹脂で枠とカバー部とを一体に形成し、これらを室内外に配列させて連結してもよい。
【0105】
図18を参照しつつ、上横枠84について説明する。上横枠84は、枠体81のうち、上側横枠を構成する枠材であり、上横枠本体93と被覆材94とを備えている。
上横枠本体93は、図18に表われる断面において、見込み方向に延在する片93aを有している。片93aの見付方向内側面には、片93b、93c、93d、93eが立設されている。片93bは網戸(不図示)の上レールとなる片、片93cは室外側に配置される障子60の上レールとなる片、及び片93dは室内側となる障子60の上レールとなる片である。また、片93aの見付方向外側面には、片93fが立設されている。当該片93fを建物躯体に取り付けることにより上横枠84が建物躯体に固定される。
【0106】
上横枠本体93の材質は特に限定されることはないが、強度及び生産性の観点から金属が好ましく、通常のサッシに用いられるアルミニウムであることが最も好ましい。また、本実施形態では上横枠本体93は、一体に形成されているが、これに限定されることはなく、いくつかの金属部材が組み合わされて一体とされていてもよい。
【0107】
被覆材94は、上横枠本体93の片93d、片93a、及び片93eで囲まれるコ字状の内側に沿って配置される略コ字状の部材である。当該被覆材の材質は、熱伝導率の低い材料により形成されていることが好ましい。これにより断熱性を高めることができる。熱伝導率が低いほど断熱性を高めることができるが、熱伝導率が10W/m・K以下であることがよい。そのためには具体的には樹脂材料を用いて形成することが好ましい。熱伝導率が低いことに加えて、成型性にも優れるからである。これには例えばPVCを用いることができ、その熱伝導率は0.17W/m・K程度である。
【0108】
下横枠85は、枠体81の下側横枠を構成する枠材である。下横枠85は、下横枠本体95、被覆材96、及び排水弁97を備えている。
下横枠本体95は、図18に表わされる断面において、矩形中空に形成された中空部95aが設けられ、該矩形部95aの見込み方向室内側からは、室内側に延びる片95bが配置されている。
矩形部95a、及び片95bの見付方向内側面には、片95c、95d、95e、95fが立設されている。片95cは網戸の下レールとなる片であり、該網戸の戸車が載置される。片95dは室外側となる障子60の下レールとなる片、及び片95eは室内側となる障子60の上レールとなる片であり、それぞれの障子の戸車が載置される。また、中空部95aの見付方向外側面には、片95gが立設されている。当該片95gを建物躯体に取り付けることにより下横枠85が建物躯体に固定される。
【0109】
下横枠本体95の材質は特に限定されることはないが、強度及び生産性の観点から金属が好ましく、通常のサッシに用いられるアルミニウムであることが最も好ましい。また、本実施形態では下横枠本体95は、一体に形成されているが、これに限定されることはなく、いくつかの金属部材が組み合わされて一体とされていてもよい。
【0110】
被覆材96は、下横枠本体95の片95b、及び片95fの内側に沿って配置される部材である。当該被覆材96の材質は、熱伝導率の低い材料により形成されていることが好ましい。これにより断熱性を高めることができる。熱伝導率が低いほど断熱性を高めることができるが、熱伝導率が10W/m・K以下であることがよい。そのためには具体的には樹脂材料を用いて形成することが好ましい。熱伝導率が低いことに加えて、成型性にも優れるからである。これには例えばPVCを用いることができ、その熱伝導率は0.17W/m・K程度である。
【0111】
排水弁97は、中空部95aを形成する片のうち、室外側に面する片に設けられた排水口に具備される。このとき、中空部95aを形成する片のうち見付方向内側を形成する片の所定の位置には不図示の貫通孔が設けられている。これにより、片95cと片95dとの間、又は片95dと片95eとの間に侵入した水を中空部95a内に導入して、排水弁97から排出することが可能となる。
【0112】
障子60は上記説明したのでここでは説明を省略する。ただし、開口部装置80に備えられる2つの障子60は、室内側に配置される障子60と室外側に配置される障子60とでは、配置位置に基づいて框の断面形状は異なる。本実施形態では縦框71が戸先框、縦框72が召し合せ框として機能する。
【0113】
2枚の障子60が枠体81の枠内に引戸式に配置されることにより開口部装置80が形成されている。すなわち、上横枠84の片93c、93dに障子60の上横框73がガイドされ、下横枠95の片95d、95eに障子60の下横框74に備えられた戸車が載置されてガイドされることにより、引戸式に障子60を開閉できる。
【0114】
以上説明した開口部装置80は、上記した各機能に加えてさらに次のような特徴を備えている。図17、図19を参照しつつ説明する。
開口部装置80の閉鎖の姿勢で図17、図19にBで示した位置と、Aで示した位置とを対比する。Bで示した位置は、障子60が閉鎖した姿勢において、縦框71の見付方向内側端部が配置される位置である。一方、Aで示した位置は、縦枠82、83において、カバー部材88、91の見付方向内側端部が配置される位置である。
【0115】
開口部装置80では、Bで示した位置が、Aで示した位置よりも見付方向外側に配置される。これにより、開口部装置80の閉鎖の姿勢で縦框82、83が室内側正面視から隠蔽される。ここでは、Bの位置がAの位置よりも見付方向外側となるようにしたが、これが面一(同じ位置)、または、Bの位置は、若干であればAの位置よりも見付方向内側に配置されていてもよい。具体的には戸先框の見付方向大きさのうち、90%以上が隠蔽されていることが好ましい。
【0116】
開口部装置80では、上記したように、框が細く形成されている。従って、框を通じての熱移動を抑制することができる。複層ガラスパネル61を適用すれば框を細くすることも可能である。すなわち、従来は、框の開閉時や室内外の圧力差により框が変形し、グレージングチャンネルと板ガラスとの水密気密に問題が生じることから、框を細くすることができないという課題があった。このような課題があったときでも、複層ガラスパネル61を用いれば、グレージングチャンネル66がパネル間シール材65を介する等して板ガラス62、63に強固に固定されているので、この固定が障子全体に対する強度を向上させ、上記変形及びこれによる水密気密の問題を解消することができる。そして、係る形態であっても、グレージングチャンネル66の立設部66bに設けられた孔66fにより水抜きも可能である。
【0117】
これに加えて、このように熱移動が抑制された縦框71がカバー部材により室内視から隠蔽されている。これにより框と室内との熱伝達を抑制することができ、断熱性能をさらに向上させることが可能となる。すなわち、さらに断熱性向上の課題があった場合にはこれを解決することができる。
【0118】
かかる構成により、枠、及び框ともに、従来における断熱サッシのようなブリッジ材方式(枠や框を室内側部材と室外側部材とに分け、これを樹脂等により連結する方式)を用いなくても、断熱性能を向上させることが可能となる。すなわち、簡易な構成により断熱性能を向上させることができる。ただし、ブリッジ方式を適用することを妨げるものではなく、ブリッジ構造を用いてもよい。さらなる断熱性向上を期待できるからである。
このような構成により、ある大きさの開口部に従来の開口部装置を設置したときに、H−3等級(JIS A 4706、JIS A 4702、熱貫流抵抗0.287m2・K/W以上)の断熱性能を得ることができなかった場合であっても、開口部装置100によれば、H−3等級の断熱性能を得ることが可能となる。
【0119】
また、上記した複層ガラスパネル61により框を細く形成することができ、該框が室内視で隠蔽されるので、外観にも優れたものとなる。ここで、カバー材88、91も、細い框を隠蔽する程度に形成されれば良いので、図19(b)にEで示した寸法も小さく抑えることができる。
【符号の説明】
【0120】
10 障子
11 複層ガラスパネル
12、13 板ガラス
14 スペーサー
15 パネル間シール材
16 グレージングチャンネル
17 加熱膨張体(封止手段)
18 補強部材
20 框体
30 開口部装置
31 枠体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔を有して対向する2枚以上の板ガラスと、
前記間隔のうち前記板ガラスの外周端部に充填されるパネル間シール材と、
前記板ガラスの外周端部及び前記パネル間シール材を覆うように設けられるグレージングチャンネルと、
所定の温度で体積を膨張させて前記2枚以上の板ガラス間に入り込み、該板ガラス間に存する気体を前記板ガラス間に封止可能な封止手段と、を備える、
複層ガラスパネル。
【請求項2】
少なくとも2つの片を有し、そのうちの1つの片は前記板ガラスの板面に沿って配置され、他の1つの片は前記板ガラスの端面に沿って配置される、補強部材をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の複層ガラスパネル。
【請求項3】
前記2枚以上の板ガラスのうち少なくとも一方は網入りガラス、又は耐熱強化ガラスであることを特徴とする請求項1又は2に記載の複層ガラスパネル。
【請求項4】
前記グレージングチャンネルは、前記板ガラスの外周端部及び前記パネル間シール材のうち、端面を覆う底片と、前記底片の両端から立設して前記板ガラスの板面の端部を覆う立設片とを有し、
前記底片又は前記立設片の少なくとも一部が、前記板ガラス又は前記シール材に結合されるとともに、前記底片又は前記立設片には、前記板ガラス又は前記シール材に結合されていない部位に、その厚さ方向に貫通する孔が設けられている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の複層ガラスパネル。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の複層ガラスパネルと、
前記複層ガラスパネルの外周端部を挿入可能な溝部を有する框体と、を有し、
前記複層ガラスパネルの外周端部が前記框体の前記溝部に挿入されて形成されている、
障子。
【請求項6】
建物開口部の縁に沿って配置される枠体と、
前記枠体により区画される枠内に配置される請求項5に記載の障子と、を備える、
開口部装置。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の複層ガラスパネルと、
前記複層ガラスパネルの外周端部を挿入可能な溝部を有し、建物開口部の縁に沿って該建物に取り付けられる枠体と、を有し、
前記複層ガラスパネルの外周端部が前記枠体の前記溝部に挿入されて形成されている、開口部装置。
【請求項1】
所定の間隔を有して対向する2枚以上の板ガラスと、
前記間隔のうち前記板ガラスの外周端部に充填されるパネル間シール材と、
前記板ガラスの外周端部及び前記パネル間シール材を覆うように設けられるグレージングチャンネルと、
所定の温度で体積を膨張させて前記2枚以上の板ガラス間に入り込み、該板ガラス間に存する気体を前記板ガラス間に封止可能な封止手段と、を備える、
複層ガラスパネル。
【請求項2】
少なくとも2つの片を有し、そのうちの1つの片は前記板ガラスの板面に沿って配置され、他の1つの片は前記板ガラスの端面に沿って配置される、補強部材をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の複層ガラスパネル。
【請求項3】
前記2枚以上の板ガラスのうち少なくとも一方は網入りガラス、又は耐熱強化ガラスであることを特徴とする請求項1又は2に記載の複層ガラスパネル。
【請求項4】
前記グレージングチャンネルは、前記板ガラスの外周端部及び前記パネル間シール材のうち、端面を覆う底片と、前記底片の両端から立設して前記板ガラスの板面の端部を覆う立設片とを有し、
前記底片又は前記立設片の少なくとも一部が、前記板ガラス又は前記シール材に結合されるとともに、前記底片又は前記立設片には、前記板ガラス又は前記シール材に結合されていない部位に、その厚さ方向に貫通する孔が設けられている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の複層ガラスパネル。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の複層ガラスパネルと、
前記複層ガラスパネルの外周端部を挿入可能な溝部を有する框体と、を有し、
前記複層ガラスパネルの外周端部が前記框体の前記溝部に挿入されて形成されている、
障子。
【請求項6】
建物開口部の縁に沿って配置される枠体と、
前記枠体により区画される枠内に配置される請求項5に記載の障子と、を備える、
開口部装置。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の複層ガラスパネルと、
前記複層ガラスパネルの外周端部を挿入可能な溝部を有し、建物開口部の縁に沿って該建物に取り付けられる枠体と、を有し、
前記複層ガラスパネルの外周端部が前記枠体の前記溝部に挿入されて形成されている、開口部装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2013−19116(P2013−19116A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151200(P2011−151200)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】
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