説明

複層ガラス

【課題】直射日光等の差し込みを回避し、拡散された適度の柔らかな採光を得ることができ、かつ良好な断熱性を備え、軽量であること。
【解決手段】平行に配した二枚の板ガラス1、1と、二枚の板ガラス1、1の間に配した二枚の透光性のポリカーボネート中空板2、2と、板ガラス1、1の間隔を保持すべく四辺に沿ってその間に配したスペーサ3a、3a、3b、3bとからなる。ポリカーボネート中空板2、2は、各々両面の膜状部2a、2aとその間を結合する多数のリブ2b、2b…からなり、それらの四辺を二つの係止溝6a、6bを備えた保持部材6x、6x、6y、6yで支持し、ポリカーボネート中空板2、2の間に隙間空間4をあけ、同時に両側の板ガラス1、1との間にも隙間空間5、5をあけるようにする。板ガラス1、1の四辺の間で、スペーサ3a、3a、3b、3bの外側には硬質シーリング材7を充填する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の天窓その他の種々の窓に用いることのできる複層ガラスであって、直射日光等の射し込みを回避し、拡散された柔らかな適度の採光を得ることができ、かつ良好な断熱性を備えた軽量の複層ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
天窓等の種々の窓に用いられる装置には従来より種々の提案がある。
例えば、特許文献1は、採光装置に関するもので、これは、太陽光を採光する採光口と、該採光口に取り付けられる採光カバーと、表面に微細なプリズム加工を施した透明材で形成した角度変更可能なルーバーとを備えたものである。なお、このルーバーは微細なプリズム加工を施したプリズムシートを透明材に被覆したものに代えることができる。
【0003】
この特許文献1の採光装置によれば、天窓からの直射日光を回避し、穏やかな光を室内に導入することが可能であると思われる。しかし常時直射日光を回避し、柔らかな光を導入するためにはやはり1日に何回かのルーバーの操作は必要であり、全く簡易であるとは言い難い。
【0004】
特許文献2は、光拡散反射型窓に関するものであり、これは、複数のガラス板からなる複層ガラスを備える光拡散反射型窓であって、前記複数のガラスの間に入射光の一部又は全部を反射させるとともに出射光を拡散させる拡散反射体を介在させたものである。該拡散反射体は、光を透過させる光透過性材料で構成し、内部に光反射層を備え、かつ両側の外表面に凹凸状の光拡散面を形成したもの等であり、該拡散反射体は、前記ガラス板から離間し、かつ該ガラス板と該拡散反射体との間を真空層に構成するか、または前記ガラス板と密着状態に配し、該ガラス板との間に真空層等を構成しないこととしたものである。
【0005】
この特許文献2の光拡散反射型窓によれば、前記拡散反射体を入射光の全部を反射させるものとした場合には、室内には、光は全く導入されなくなるので、窓の意味はほとんど無くなるように思われるが、それ以外であれば、該拡散反射体の作用により入射光を拡散させながら反射させ、外部環境に対する強い反射光による悪影響を減少させることが可能になり、同時に、このように入射光を反射させ、室内にはその余の光のみを導入することにしたので、外光の強い熱エネルギーを回避し、特に夏季における空調ロスを低減できることは確かであると思われる。更に強い直射日光が若干和らげられることになるとも思われる。
【0006】
特許文献3は、複層ガラスに関するものであり、これは、複層ガラスを構成する一対のガラス板が単板ガラスと樹脂中間層を有する合わせガラスとからなり、合わせガラスが単板ガラスより薄く、かつそれらの間の中空層に空気を封入してなるものである。
【0007】
この特許文献3の複層ガラスによれば、遮音性能に優れ、断熱性能に関しても若干の優れた効果があるものと推測できる。しかし直射日光の室内への導入回避については全く配慮されていない。
【0008】
特許文献4も複層ガラスに関するものであり、これは、対向する板状の一対のガラス間に空間が形成されるようにスペーサを介挿し、該空間が厚み方向に仕切られて複数の断熱層が形成されるように該一対のガラス間に一又は複数の中間パネルを配置し、該中間パネルをスペーサ側で支持する支持手段を設けた複層ガラスにおいて、該中間パネルが透光性を有する樹脂板からなり、該支持手段によって支持された中間パネルの周縁部側に該中間パネルの変形を許容するクリアランスが形成されるように該支持手段を構成したものである。
【0009】
この特許文献4の複層ガラスによれば、断熱性及び遮音性に一定の効果があるものと思われる。しかし直射日光の室内への導入回避については全く配慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−182413号公報
【特許文献2】特開2007−247315号公報
【特許文献3】特開2010−138027号公報
【特許文献4】特開2010−270444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、以上の従来技術の問題点を解決し、直射日光の射し込みを回避し、適度の柔らかな採光を得ることができ、かつ良好な断熱性を備えた、天窓その他の窓に用いることのできる軽量の複層ガラスを提供することを解決の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の1は、平行に配した二枚の板ガラスと、
該二枚の板ガラスの間に配した二枚の透光性のプラスチック中空板であって、各々両面の膜状部及び該両面の膜状部を繋ぐ平行な多数の膜状のリブからなり、相互の膜状のリブを交差させた状態で対面状態に組み合わせてなる二枚のプラスチック中空板と、
該プラスチック中空板の四辺の外側かつ該二枚の板ガラスの間の空間に介在させ、該板ガラスの間隔を一定に保持するスペーサ部材と、
で構成した複層ガラスである。
【0013】
本発明の2は、本発明の1の複層ガラスにおいて、
前記二枚のプラスチック中空板の四辺に、該二枚のプラスチック中空板の相互の間隔及びその各外側の板ガラスとの間の間隔を各々一定間隔に保持すべく抱える保持部材を配したものである。
【0014】
本発明の3は、本発明の1又は2の複層ガラスにおいて、
前記プラスチック中空板をポリカーボネート中空板で構成したものである。
【0015】
本発明の4は、本発明の1、2又は3の複層ガラスにおいて、
該複層ガラスを天窓の外光取り入れ用のガラスとして用いることとしたものである。
【発明の効果】
【0016】
したがって本発明の1の複層ガラスによれば、これを天窓等の建築物の窓に適用した場合は、入射する太陽光は、該複層ガラス中の二枚のプラスチック中空板の各両面の若干波打っている膜状部及び該二枚のプラスチック中空板の相互に交差状態に配してある膜状のリブで拡散され、穏やかな明かりとなって導入されることになる。それ故、室内には強烈な強さを持った直射日光が直接に入射することはない。なお、該プラスチック中空板の両面の膜状部は、上記のように、薄い膜状であるため、自ずと、僅かに波打つものとなっている。
【0017】
また本発明の1の複層ガラスによれば、二枚の板ガラスの間の空間は厚さ方向にはその間に配された二枚のプラスチック中空板によって複数に区画され、更に二枚のプラスチック中空板の中では、該厚さ方向に直交する方向にも多数に区画され、それらの各区画は空気の容易に移動しない小寸法区画となるため、高い断熱性能が発揮されることになる。更に二枚の板ガラスの間には、基本的に、軽量のプラスチック中空板が配されているだけであるから極めて軽量なものとなっている。
【0018】
本発明の2の複層ガラスによれば、板ガラスの間のプラスチック中空板相互の間隔及びそれらとその外側の板ガラスの間の間隔を正確に一定間隔に保持し得、安定した断熱性及び直射日光の回避性能を確保することができることになる。
【0019】
本発明の3の複層ガラスによれば、適切なプラスチック中空板を容易に構成することができる。
【0020】
本発明の4の複層ガラスによれば、天窓の外光取り入れ用として用いた場合に本発明の1に述べた良好な効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(a)は実施例の複層ガラスの正面部分図、(b)は(a)のA−A線断面図、(c)は(a)のB−B線断面図。
【図2】(a)は実施例の複層ガラスを構成する板ガラス及びスペーサを示す正面部分図、(b)は実施例の複層ガラスを構成する板ガラス及びスペーサを示す縦断面部分図。
【図3】(a)は実施例の二枚のポリカーボネート中空板の正面部分図、(b)は実施例の二枚のポリカーボネート中空板の縦断面部分図。
【図4】(a)は実施例の保持部材を示す正面部分図、(b)は実施例の保持部材を示す縦断面部分図。
【図5】(a)は保持部材で保持した二枚のポリカーボネート中空板を示す正面部分図、(b)は保持部材で保持した二枚のポリカーボネート中空板の縦断面部分図。
【図6】(a)は保持部材で保持した二枚のポリカーボネート中空板をスペーサにより一定間隔で配置する板ガラス間に装入する状態を示す正面説明部分図、(b)は保持部材で保持した二枚のポリカーボネート中空板をスペーサにより一定間隔で配置する板ガラス間に装入する状態を示す縦断面説明図。
【図7】(a)は従来の複層ガラスの一例を示す正面部分図、(b)は(a)の複層ガラスの縦断面部分図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を実施するための形態を実施例に基づき図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
実施例の複層ガラスは、図1(a)〜(c)に示すように、基本的に、平行に配した二枚の板ガラス1、1と、該二枚の板ガラス1、1の間に配した二枚の透光性のポリカーボネート中空板(プラスチック中空板)2、2と、該二枚のポリカーボネート中空板2、2をその四辺で保持する保持部材6x、6x、6y、6yと、前記板ガラス1、1の間隔を保持すべくそれらの四辺に沿ってその間に配したスペーサ(スペーサ部材)3a、3a、3b、3bとで構成したものである。
【0024】
前記板ガラス1は、この実施例では、一般的な四辺形のフロートガラスを用いている。各々の厚さ5mmの長方形のそれを採用した。なお、この板ガラス1は、これに限定されず、種々のガラスを採用可能である。例えば、それ自体でも断熱性や光の拡散性能を有するガラスを採用することも可能であり、好ましくもある。
【0025】
前記ポリカーボネート中空板2は、この実施例では、図1(a)〜(c)及び図3(a)、(b)等に示すように、両面の膜状部2a、2a間を定間隔で平行に配した複数の膜状のリブ2b、2b…で結合した態様の押し出し成形部材を採用した。該ポリカーボネート中空板2は、詳細には、厚さ6mm、両面の膜状部2a、2aの間の空間の厚さ5.8mm、隣接するリブ2b、2b間の中心間間隔6mm、膜状部2a、2aの厚さ0.1mm、リブ2b、2bの厚さ0.05mmのそれを採用した。なお、この実施例では、膜状部2a、2aの厚さが0.1mmのポリカーボネート中空板2を採用したが、例えば、該膜状部2a、2aの厚さは0.04〜0.15mm等でも良い。このように薄いものであることが、それ自体が適度に波打つものとなり、後述するように、これを透過する光の拡散を生じさせることができるため好ましい。
【0026】
なお、このポリカーボネート中空板2はこのようなサイズの物に限定されない。もっとも上記膜状部2a、2aの間の空間の厚さはその間の空気の対流が容易に生じない寸法であるべきではある。また隣接するリブ2b、2bの間隔も、該ポリカーボネート中空板2の一面から他面に通過する光を拡散させる趣旨から比較的狭いものであることが好ましく、例えば、前記実施例の寸法を含む4〜8mm程度としたものが適当である。またこのポリカーボネート中空板2は、この実施例では、文字通り、ポリカーボネートで成形したそれを採用しているが、他のプラスチック中空板を採用することも当然可能である。
【0027】
また二枚のポリカーボネート中空板2、2は、図1(a)〜(c)及び図3(a)、(b)等に示すように、各々のリブ2b、2b…が交差状態になるように相互を対面させる。これは両ポリカーボネート中空板2、2を通過する光を良好に拡散させる趣旨からである。このとき、これらの二枚のポリカーボネート中空板2、2の間には若干の隙間空間4をあけるのが適当である。断熱性を高める趣旨である。この実施例では、両者の間の隙間空間4は4mmの厚さに設定した。また二枚のポリカーボネート中空板2、2の各々とその外側の板ガラス1、1との間にも同様に隙間空間5、5を形成するのが適当である。これも断熱性を高める趣旨である。この実施例では、該隙間空間5、5の厚さも各々4mmに設定した。
【0028】
前記保持部材6x、6x、6y、6yは、特に図1(b)、(c)、図5(b)及び図6(b)に示すように、それらに構成した二つの係止溝6a、6bにより、以上のポリカーボネート中空板2、2の四辺を支持するようになっている。以上の各々の係止溝6a、6bは、該ポリカーボネート中空板2、2の間の空間である前記隙間空間4の厚さ寸法である4mmの間隔をあけて該保持部材6x、6x、6y、6yの内面に開口するように形成してあり、各々の溝幅は、各ポリカーボネート中空板2、2の厚さである6mmを僅かに越える寸法に構成してある。またこの保持部材6x、6x、6y、6yは、各々の係止溝6a、6bの外側の厚さを、該係止溝6a、6bにその辺を装入したそれぞれのポリカーボネート中空板2、2と対応する板ガラス1、1との間の隙間空間5の厚さ寸法である4mmとしてある。なお、保持部材6x、6x、6y、6yには、図示しない複数の小通気孔が内端と外端の間に開口してある。
【0029】
前記スペーサ3a、3bは、その一方のスペーサ3aが板ガラス1、1の長辺に対応する長さ寸法を有し、他方のスペーサ3bが板ガラス1、1の短辺に対応する長さ寸法を有刷るように構成した外観視ほぼ角柱状の長尺部材である。該スペーサ3a、3bは、それぞれ内部に乾燥剤3a1、3b1を充填した中空部材であり、内端側に、図示しない複数の小開口が形成してあるものである。
【0030】
この実施例の複層ガラスは、様々な手順で作成することができる。例えば、図2(a)、(b)に示すように、まず、先に述べた二枚の板ガラス1、1を用意し、その間に配する長さのみ異なる二種類二本ずつのスペーサ3a、3a、3b、3bを四辺形に配置しておく。長い方のスペーサ3a、3aは、該板ガラス1、1の長辺に対応する長さであり、短い方のスペーサ3b、3bは、板ガラス1、1の短辺に対応する長さである。
【0031】
次に、二枚のポリカーボネート中空板2、2を用意し、図3(a)、(b)に示すように、相互のリブ2b、2b…が直交する向きになるように、それらを平行対面状態にし、この状態で、これらの四辺を前記保持部材6x、6x、6y、6yで支持する。
【0032】
該保持部材6x、6x、6y、6yは、ポリカーボネート中空板2、2の長辺側を保持する保持部材6x、6xと、短辺側を保持する保持部材6y、6yとからなり、図4(a)、(b)に示すように、最終的には(ポリカーボネート中空板2、2を保持した状態では)四辺形に接続する。
【0033】
前記のように用意してある二つのポリカーボネート中空板2、2は、その四辺を、図5(a)、(b)に示すように、順次、上記保持部材6x、6x、6y、6yの係止溝6a、6bに装入する。こうして、該二つのポリカーボネート中空板2、2の四辺を以上の係止溝6a、6bに装入すると、この状態で、相互の間に前記隙間空間4をあけた状態の係合関係ができることになる。また、このとき、該二つのポリカーボネート中空板2、2の四辺は、その端部が、前記保持部材6x、6x、6y、6yの係止溝6a、6bの底面から一定の間隔をあけた状態に装入することとする。更に、このように保持部材6x、6x、6y、6yで支持したポリカーボネート中空板2、2を、図6(a)、(b)に示すように、前記板ガラス1、1の間に装入する。該保持部材6x、6x、6y、6yの外端側にスペーサ3a、3a、3b、3bを装入し、該保持部材6x、6x、6y、6yの外端が、同図に示すように、該スペーサ3a、3a、3b、3bの内端に接合する状態とする。
【0034】
こうして、保持部材6x、6x、6y、6yで支持したポリカーボネート中空板2、2を板ガラス1、1の間に装入すると、この状態で、該ポリカーボネート中空板2、2は、それぞれ対面する板ガラス1、1との間に前記隙間空間5、5をあけた状態となる。またこのとき、前記のように、二つのポリカーボネート中空板2、2の四辺の端部が、前記保持部材6x、6x、6y、6yの係止溝6a、6bの底面から一定の間隔をあけた状態になっていることで、ガラス板1、1の温度による伸縮とポリカーボネート中空板2、2のそれとの違いが吸収できるようになっている。
【0035】
以上の板ガラス1、1の四辺のスペーサ3a、3a、3b、3bの両側面は該板ガラス1、1に接着剤で接着固定する。なお、これは、云うまでもなく、ブチルテープ等の両面接着テープで接合することも可である。前記保持部材6x、6x、6y、6yは板ガラス1、1の前記部位に嵌め込むことで固定する。また該スペーサ3a、3a、3b、3bの外端外の該板ガラス1、1の間の部位には硬質シーリング材7を充填する。
【0036】
この実施例の複層ガラスは、以上のように構成したので、例えば、建築物の外光取り入れ用の天窓に採用することができる。その取り付け方は一般の技法による。
【0037】
これを、以上のように、建築物の天窓に使用した場合は、晴天時で太陽が天窓の上方にあれば、太陽光は、そのときの仰角に対応する角度で該複層ガラス中に入射し、外側の板ガラス1、内側の二枚のポリカーボネート中空板2、2及び内側の板ガラス1を通じて室内に照射されることになる。この太陽光は、このとき、外側の板ガラス1ではほぼストレートにこれを通過し、次の二枚のポリカーボネート中空板2、2で拡散され、これが内側の板ガラス1を通じて室内に照射されることになる。
【0038】
該二枚のポリカーボネート中空板2、2では、その外側のポリカーボネート中空板2に入射した太陽光は、まず微妙に波打つ上側の膜状部2aで拡散されつつ通過し、拡散した光の一部は下方の同様に微妙に波打つ膜状部2aに入射し、同様に拡散して下方のポリカーボネート中空板2に入射することになる。上方の膜状部2aを拡散されて通過した他の一部の光は両面の膜状部2a、2aの間に配したやはり微妙に波打つリブ2b、2b…に入射し、ここで更に複雑に屈折して多方向に拡散された上で、下方の同様に微妙に波打つ膜状部2aに入射し、該下方の膜状部2aで同様に複雑に屈折し、拡散状態となって下方のポリカーボネート中空板2に入射することになる。
【0039】
下方のポリカーボネート中空板2では、その上方の膜状部2a、上下の膜状部2a、2a間に配された多数のリブ2b、2b…及び下方の膜状部2aで、上方のポリカーボネート中空板2で行われたのと同様に入射した光が拡散され、このような拡散光が、下方の板ガラス1を通じて室内に導入されることになる。なお、下方のポリカーボネート中空板2のリブ2b、2b…は上方のポリカーボネート中空板2のリブ2b、2b…と直交する向きに配されているため、これら双方によって生じる光の拡散は相互に概略直交する向きとなり、全体として偏りのない拡散光を得ることができることになる。
【0040】
こうして、太陽光は十分拡散させられてこの複層ガラスを通過し、室内には、直射日光ではなく、これが拡散された柔らかな光が導入されることになる。
【0041】
また、前記のように、この複層ガラスは、二枚の板ガラス1、1の間に24mmの隙間が形成され、その隙間に6mmの厚さの二枚のポリカーボネート中空板2、2が、それら相互及び該板ガラス1、1との間に4mmずつの隙間空間4、5、5をあけた上で配してあり、更に該二枚のポリカーボネート中空板2、2内にはリブ2b、2b…で仕切られた厚さ5.8mmの空間が構成してある。それ故、この複層ガラスは、全部で実質的に5層の断熱層を備えたこととなるため、十分な断熱性を有するものとなっている。なお、該二つのポリカーボネート中空板2、2の両面の膜状部2a、2a間は、リブ2b、2b…で繋がっているが、該リブ2b、2b…は、この実施例では、厚さが0.05mmの非常に薄いそれを採用しており、更にその長さが5.8mmと長いので、断熱性に与える影響は非常に小さいものとなっている。
【0042】
この実施例の複層ガラスについて熱貫流率を実測すると、その値は1.4W/m・Kであった。
一方、図7(a)、(b)に示すように、実施例の複層ガラスに用いている板ガラス1、1、スペーサ3a、3b及び硬質シーリング材7と全く同様の板ガラス11、11、スペーサ13a、13b及び硬質シーリング材17を用いて、該二枚の板ガラス11、11間に、実施例の複層ガラスの板ガラス1、1間の間隔と同様の間隔である24mmの空気層14を備えた比較例の複層ガラスを想定し、その熱貫流率の理論値を算出すると、その値は、2.72W/m・Kとなった。
【0043】
従って実施例の複層ガラスは、その二枚の板ガラス1、1の間に同一の間隔の空気層14を有する比較例の複層ガラスと比較して約二倍の熱貫流率性能を有することが分かる。
【0044】
またこの実施例の複層ガラスは、主として、二枚の板ガラス1、1とその間の軽量の二枚のポリカーボネート中空板2、2とで構成したものであり、極めて軽量で扱いやすい構成となっている。
【符号の説明】
【0045】
1 板ガラス
2 ポリカーボネート中空板(プラスチック中空板)
2a 膜状部
2b リブ
3a、3b スペーサ(スペーサ部材)
3a1、3b1 乾燥剤
4 二枚のポリカーボネート中空板の間の隙間空間
5 ポリカーボネート中空板と板ガラスとの間の隙間空間
6x、6y 保持部材
6a、6b 保持部材の係止溝
7 硬質シーリング材
11 板ガラス
13a、13b スペーサ
13a1、13b1 乾燥剤
14 空気層
17 硬質シーリング材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行に配した二枚の板ガラスと、
該二枚の板ガラスの間に配した二枚の透光性のプラスチック中空板であって、各々両面の膜状部及び該両面の膜状部を繋ぐ平行な多数の膜状のリブからなり、相互の膜状のリブを交差させた状態で対面状態に組み合わせてなる二枚のプラスチック中空板と、
該プラスチック中空板の四辺の外側かつ該二枚の板ガラスの間の空間に介在させ、該板ガラスの間隔を一定に保持するスペーサ部材と、
で構成した複層ガラス。
【請求項2】
前記二枚のプラスチック中空板の四辺に、該二枚のプラスチック中空板の相互の間隔及びその各外側の板ガラスとの間の間隔を各々一定間隔に保持すべく抱える保持部材を配した請求項1の複層ガラス。
【請求項3】
前記プラスチック中空板をポリカーボネート中空板で構成した請求項1又は2の複層ガラス。
【請求項4】
天窓の外光取り入れ用のガラスとして用いる請求項1、2又は3の複層ガラス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate