説明

複層フィルター

【課題】 本発明は、厚みが厚くて高目付であってもエレクトレット化が可能であり且つ使用中に繊維の脱落が少なく、長期間の使用にあっても圧損が少ない複層フィルターを提供する。
【解決手段】 本発明の複層フィルターは、融点が異なる二種以上の熱可塑性樹脂成分を有し且つこれらの熱可塑性樹脂成分のうちで相対的に低い融点を有する熱可塑性樹脂成分が熱接着成分として表面の一部を占めてなる複合繊維を構成繊維として含有し、複数本の複合繊維同士を部分的に凝集一体化させて繊維塊が形成され、この繊維塊によって表面に凸部が形成されてなるメルトブローン不織布Aと、このメルトブローン不織布の一面に積層一体化され且つ繊維径が15μm以上の繊維を構成繊維として含む不織布Bとからなる積層不織布を複数枚、剥離可能に積層一体化してなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複層フィルターに関するものであり、特に、エレクトレット加工により、ビル空調のフィルター、吸塵カーテン、マスク素材などのエアフィルター用素材として好適に用いることができる複層フィルターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
二種類の異なる成分からなる複合繊維で構成されたメルトブローン不織布が、特許文献1乃至4に開示されており、具体的には、融点が異なる二つの熱可塑性樹脂成分を有する複合繊維を用いてメルトブローン法によって不織布を製造する技術に関するものである。
【0003】
しかしながら、上述した従来技術で得られるメルトブローン不織布は、ノズルから吐出された連続繊維をコンベアベルト上にできるだけ均一に積層させて製造されるものであるから、厚みが薄く平滑でありペーパーライクなものとなっていた。
【0004】
そして、このようなメルトブローン不織布は、厚みが薄いことからプリーツ折り機のギアロールに掛かりにくく作業性が悪いといった問題点があった。又、上記メルトブローン不織布は、上述のように、その厚みが薄いためにフィルターの捕集効率を向上させるためには目付を大きくする必要があるが、メルトブローン不織布の目付を大きくすると、空気の流通が悪くなり圧損が大きくなるといった問題点を有していた。
【0005】
更に、全ての成分をポリオレフィン樹脂とした繊維から構成されたエレクトレット不織布では、その絶縁抵抗が大きく、厚みを大きくするために不織布の目付を90g/m2 を超えたものとすると、エレクトレット不織布における電解の貫通性が急激に低下してしまうといった問題点を有していた。
【0006】
【特許文献1】特開平5−179511号公報
【特許文献2】特開平5−214655号公報
【特許文献3】特開平5−263307号公報
【特許文献4】特開2001−98453号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、厚みが厚くて高目付であってもエレクトレット化が可能であり且つ使用中に繊維の脱落が少なく、長期間の使用にあっても圧損が少ない複層フィルターを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の複層フィルターFは、融点が異なる二種以上の熱可塑性樹脂成分を有し且つこれらの熱可塑性樹脂成分のうちで相対的に低い融点を有する熱可塑性樹脂成分が熱接着成分として表面の一部を占めてなる複合繊維1を構成繊維として含有し、複数本の複合繊維1、1・・・同士を部分的に凝集一体化させて繊維塊2を形成し、この繊維塊2によって表面に凸部3を形成してなるメルトブローン不織布Aと、このメルトブローン不織布Aの一面に積層一体化され且つ繊維径が15μm以上の繊維を構成繊維として含む不織布Bとからなる積層不織布Cを複数枚、剥離可能に積層一体化してなる。
【0009】
ここで、二種以上の熱可塑性樹脂成分のうち相対的に低い融点を有する熱可塑性樹脂成分とは、二種の熱可塑性樹脂成分の場合は、融点が低い熱可塑性樹脂成分をいい、三種以上の熱可塑性樹脂成分の場合は、最も融点の高い熱可塑性樹脂成分を除いた残余の熱可塑性樹脂成分のうちの何れか一の熱可塑性樹脂成分をいう。なお、熱可塑性樹脂の融点とは、JIS K7121に規定されたプラスチックの転移温度測定法において、昇温速度10℃/分の条件下にて示差走査熱量(DSC)測定した際のピーク温度をいう。
【0010】
本発明の複層フィルターを構成する複合繊維1は、融点が異なる二種以上の熱可塑性樹脂成分を有し且つこれらの熱可塑性樹脂成分のうちで相対的に低い融点を有する熱可塑性樹脂成分が熱接着成分11として表面の一部を占めてなるものであるが、具体的には、図1に示したような、融点が異なる二種の熱可塑性樹脂成分が鞘芯型〔図1の(a)〕、猫目型〔図1の(b)〕或いは一方の成分が他方の成分によって二つに分離された三層型〔図1の(c)〕のような断面構造を有し、二種の熱可塑性樹脂成分のうちの低い融点を有する熱可塑性樹脂成分が熱接着成分11として複合繊維の表面の大半を占めている繊維である。
【0011】
更に、上記複合繊維1としては、融点が異なる二種の熱可塑性樹脂成分を有しており、熱可塑性樹脂成分のうちの低い融点を有する熱可塑性樹脂成分中に他方の熱可塑性樹脂成分が島状に分散してなる断面形状を有する多芯型や、融点が異なる二種の熱可塑性樹脂成分を有しており、中心から放射状に区画され、二種の熱可塑性樹脂成分が互いに交互に配されてなる断面形状を有する繊維であってもよい。なお、複合繊維の断面形状は、円や楕円などの円型を基本とするが、角の取れた異型形状や中空繊維であってもよい。
【0012】
そして、上記複合繊維1を構成する熱可塑性樹脂成分としては、特に限定されず、例えば、エチレン−オクテン共重合体、低密度ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂、ホモポリプロピレン、プロピレンを50質量%以上含有するエチレン−プロピレン共重合体などのポリプロピレン系樹脂、ポリ(ブテン−1)などのポリオレフィン系樹脂;低融点エステル共重合体や脂肪族ポリエステル樹脂などのポリエステル樹脂;ポリアミド樹脂;熱可塑性ポリイミド樹脂;ポリカーボネート樹脂;熱可塑性エラストマーなどが挙げられ、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、結晶化速度が遅いことから熱融着性に優れ、ノズルから噴射されてコレクター部にて積層される際に粘接着的に繊維同士が熱融着し、結晶化が進むと熱溶融接着と同じ状態となり、繊維間の熱融着性が高いことから、ポリ(ブテン−1)、ポリプロピレン系樹脂がより好ましく、ポリ(ブテン−1)とポリプロピレン系樹脂とを併用することが好ましい。なお、熱可塑性樹脂は、ポリマーアロイ、グラフト重合、低温プラズマ処理などによる改質樹脂でもよく、例えば、微生物によって分解可能なポリエステル樹脂であってもよい。このような分解可能なポリエステル樹脂は、UCC社から商品名「TONE」にて市販されている。
【0013】
更に、ポリ(ブテン−1)の密度は、低いと、柔らかくて粘性が増すために溶融紡糸が困難となることがある一方、高いと、曳糸性が低下して溶融紡糸できなくなることがあるので、0.905g/cm3 以上で且つ0.930g/cm3 未満が好ましい。なお、ポリ(ブテン−1)の密度は、JIS L1015−7.14.1に規定された浮沈法に準拠して測定されたものをいう。
【0014】
そして、複合繊維1の表面の一部を占め、熱接着成分となる熱可塑性樹脂の融点は、低いと、複合繊維同士が熱融着し過ぎて制御が困難となることがある一方、高いと、複合繊維における他の熱可塑性樹脂成分との組合せに制限を受けることがあるので、60℃以上で且つ270℃未満が好ましい。
【0015】
又、ポリ(ブテン−1)の融点は、低いと、柔らかくて粘性が増すために溶融紡糸が困難となることがある一方、高いと、曳糸性が低下して溶融紡糸できなくなることがあるので、115℃を越え且つ130℃未満が好ましい。
【0016】
そして、メルトブローン不織布Aの複合繊維1を構成する熱可塑性樹脂は、ステープル繊維と同様の腰や固さを具備させるために、ステープル繊維で用いられる熱可塑性樹脂のメルトフローレイトと同程度のメルトフローレイトを有していることが好ましい。
【0017】
具体的には、複合繊維1を構成する熱可塑性樹脂のメルトフローレイトは、小さいと、繊維径が細い複合繊維の製造が困難となることがある一方、大きいと、繊維径が太い複合繊維の製造が困難となることがある。繊維塊2を形成させるために用いられる10〜200μmの太い複合繊維の場合には5〜200g/10分が好ましい。単に0.3〜20μmの細い複合繊維を形成させる場合には50〜1000g/10分が好ましい。なお、熱可塑性樹脂のメルトフローレイトは、JIS K−6767に準拠して荷重2.169Kgにて測定されたものをいう。但し、測定温度は、熱可塑性樹脂の融点が200℃以下の場合は230℃、熱可塑性樹脂の融点が200℃を越える場合は290℃とする。
【0018】
又、複合繊維1の平均繊維径は、細いと、コレクター部に捕集され難くなり浮遊繊維となることがある一方、太いと、コレクター部に到達する前に繊維同士が融着し簾状となってしまうことがあるので、0.3μmを越え且つ200μm未満が好ましい。
【0019】
そして、メルトブローン不織布Aの構成繊維中、融点が異なる二種以上の熱可塑性樹脂成分を有し且つこれらの熱可塑性樹脂成分のうちで相対的に低い融点を有する熱可塑性樹脂成分が熱接着成分として表面の一部を占めてなる複合繊維1の含有量は、少ないと、構成繊維同士の熱融着が不充分となることがあるので、20質量%以上が好ましく、30〜100質量%がより好ましく、100質量%が特に好ましい。
【0020】
更に、上記メルトブローン不織布Aには、図2に示したように、複数本の複合繊維1、1・・・同士を部分的に凝集一体化させることにより形成された繊維塊2が多数、散在しており、この繊維塊2の存在によってメルトブローン不織布Aの表面には多数の凸部3が形成されている。
【0021】
ここで、上記繊維塊2とは、複数の複合繊維1、1・・・同士が互いに部分的に熱融着することによって凝集一体化して塊状となったものであるが、熱融着温度が低い場合には複合繊維1の形態を一部に保持したまま複合繊維1、1・・・同士が凝集一体化して繊維塊2が形成され、又、熱融着温度が高い場合には熱融着部分において複合繊維の形態が完全に消失した状態に複合繊維1、1・・・同士が凝集一体化して繊維塊2が形成されるが、繊維塊2は何れの形態であってもよい。
【0022】
しかも、メルトブローン不織布A内における繊維塊2の周辺部は、この繊維塊2の存在によって空隙部がメルトブローン不織布内の他の部分よりも大きく形成されており、繊維塊2の存在している部分は、メルトブローン不織布Aの厚みが厚くなっていると共に繊維密度も低く、流体の通過性に優れており、よって、メルトブローン不織布Aは、その圧損を下げることができる上に嵩高いものとなっている。
【0023】
そして、メルトブローン不織布Aは、上述のように、繊維塊2の存在によって部分的に空隙を形成して密度を低下させた構成を有していることから、電界の通過性を向上させてエレクトレット加工を施し易いものとなっている。
【0024】
又、上記メルトブローン不織布Aにおける厚み(μm)と目付(g/m2 )との比(厚み/目付)は、小さいと、繊維塊の分布密度が小さくなり、積層不織布同士の熱接着による一体化が困難となる場合があるので、8以上が好ましい。
【0025】
更に、上記では、メルトブローン不織布Aが単層の場合を説明したが、互いに異種類の複合繊維を構成繊維とする複数枚のメルトブローン不織布A,A・・・を積層一体化させた場合であってもよいし、或いは、互いに平均繊維径の異なる複合繊維を構成繊維とする複数枚のメルトブローン不織布A,A・・・を積層一体化させた場合であってもよく、これらの組合せであってもよい。
【0026】
そして、上記メルトブローン不織布Aの一面に、繊維径が15μm以上の繊維を構成繊維として含む不織布Bが積層一体化されて積層不織布Cが形成されている。この不織布Bは、メルトブローン不織布Aの強度不足を補い、積層不織布Cの固さ及び腰の強さを向上させる役割を果たしており、メルトブローン不織布Aと不織布Bとは、メルトブローン不織布Aを構成している複合繊維1の熱接着成分11による熱接着力によって積層一体化されている。
【0027】
このような不織布Bとしては、上述の作用を奏すれば、特に限定されず、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布、熱接着不織布、ニードルパンチ不織布、樹脂含浸接着不織布などが挙げられ、複層フィルターをエレクトレット化する場合には、スパンボンド不織布が好ましい。
【0028】
上記不織布Bの構成繊維を構成する熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、例えば、エチレン−オクテン共重合体、低密度ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂、ホモポリプロピレン、プロピレンを50質量%以上含有するエチレン−プロピレン共重合体などのポリプロピレン系樹脂、ポリ(ブテン−1)などのポリオレフィン系樹脂、低融点エステル共重合体や脂肪族ポリエステル樹脂などのポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性エラストマーなどが挙げられ、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、ホモポリプロピレン、プロピレンを50質量%以上含有するエチレン−プロピレン共重合体がより好ましい。
【0029】
そして、不織布Bは、複層フィルターの圧損化の低減を目的として、繊維径が15μm以上の繊維が構成繊維として含有されている。不織布Bの構成繊維中における、繊維径が15μm以上の繊維の含有量としては、少ないと、複層フィルターの圧損が大きくなるおそれがあるので、30質量%以上が好ましく、50〜100質量%がより好ましい。
【0030】
更に、不織布Bの構成繊維の表面には、複層フィルターのエレクトレット化を阻害する虞れがあることから、界面活性剤などの親水性化学物質が付着されていないことが好ましい。このような親水性化学物質としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩などの陰イオン界面活性剤、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩などの陽イオン界面活性剤、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタインなどの両性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどの非イオン界面活性剤などが挙げられる。
【0031】
そして、本発明の複層フィルターFは、上述の構成を有する積層不織布Cが複数枚、剥離可能に積層一体化されている。複数枚の積層不織布C,C・・・の積層形態としては、図3に示したように、複数枚の積層不織布C,C・・・が、メルトブローン不織布Aと不織布Bとが互いに交互になるように積層されても、或いは、複数枚の積層不織布C,C・・・が、そのメルトブローン不織布Aと不織布Bとが厚み方向に不規則に並んだ状態に積層されてもよい。後者の形態の具体例としては、隣接する積層不織布C,C同士をそれらのメルトブローン不織布A,A同士が互いに対向した状態に積層一体化させる積層形態(イ)の他に、隣接する積層不織布C,C同士をそれらの不織布B,B同士が対向した状態に積層一体化させる積層形態(ロ)が挙げられ、積層形態(イ)と積層形態(ロ)とが不規則に組み合わせられた積層形態であってもよい。なお、積層不織布C,C同士は、メルトブローン不織布Aの複合繊維1の熱接着成分11、或いは、不織布Bの構成繊維の熱接着成分によって剥離可能に熱接着一体化される。
【0032】
上記複層フィルターFは、その最外層の一の複層不織布Cをメインフィルター層Mとし、このメインフィルター層M以外の残余の積層不織布C,C・・・をそれぞれ、サブフィルター層Sとしており、メインフィルター層Mの目付をサブフィルター層Sの目付と同一か或いはそれ以上となるように構成し、目付の大きなメインフィルター層Mによって複層フィルターFに腰を持たせて、複層フィルターFにプリーツ加工を容易に施せるように構成している一方、目付の小さなサブフィルター層Sの優れたフィルター作用によって、空気中の微粒子を効果的に捕捉できると共に電界の通過性を向上させて複層フィルターFのエレクトレット化を容易に行うことができる。
【0033】
具体的には、上記メインフィルター層Mの目付は、小さいと、複層フィルターFの腰が弱くなって複層フィルターFにプリーツ加工を施しにくくなることがある一方、大きいと、複層フィルターのエレクトレット化が難しくなることがあるので、50〜200g/m2 が好ましく、60〜120g/m2 がより好ましい。なお、メインフィルター層M中に複合ストランドDを含む場合、メインフィルター層Mの目付とは、複合ストランドDを除いたメインフィルター層Mの目付をいう。
【0034】
そして、メインフィルター層Mを構成しているメルトブローン不織布Aの目付は、小さいと、メルトブローン不織布Aと不織布Bとの接着性が低下することがある一方、大きいと、複層フィルターを製造する際に不織布Bがフィルム化し易くなるので、30〜110g/m2 が好ましい。
【0035】
更に、メインフィルター層Mを構成しているメルトブローン不織布Aの複合繊維1の平均繊維径は、0.8μm以上で且つサブフィルター層Sを構成しているメルトブローン不織布Aの複合繊維1の平均繊維径よりも小さいことが好ましい。これは、メルトブローン不織布Aの複合繊維1の平均繊維径が細いと、積層不織布の製造時において、不織布B上に溶融樹脂を吹き付ける際、溶融樹脂の熱接着成分以外の熱可塑性樹脂成分が固化した場合、熱接着成分も固化してしまい、複合繊維と不織布Bとの熱融着が不充分となることがあり、又、噴出ノズルを不織布Bに近づけることも考えられるが、このようにすると、溶融樹脂の熱接着成分の軟化は充分となるものの、熱接着成分以外の熱可塑性樹脂成分も固化が不充分となって繊維形態を保持することができなくなることがあるからである。一方、メルトブローン不織布Aの複合繊維1の平均繊維径が太いと、積層不織布の製造時において、不織布Bの繊維を溶融してしまい、不織布Bに孔が生じる虞れがあるからである。
【0036】
なお、本発明において繊維の平均繊維径は、数平均の繊維径をいい、具体的には、繊維断面を顕微鏡にて拡大して顕微鏡写真を得、この顕微鏡写真に写っている各繊維の繊維径を測定し、これら繊維の繊維径の相加平均を繊維の平均繊維径とした。なお、複数本の繊維が融着一体化したものは、融着一体化したものを一本の繊維とみなす。
【0037】
又、上記サブフィルター層Sを構成している不織布Bの目付は、小さいと、サブフィルター層Sを剥離する際に、サブフィルター層Sが破断することがあるので、10g/m2 以上が好ましく、10〜50g/m2 がより好ましい。
【0038】
更に、上記サブフィルター層Sを構成しているメルトブローン不織布Aの目付は、小さいと、メルトブローン不織布Aと不織布Bとの熱融着による接着が不充分となることがあるので、10g/m2 以上が好ましく、10〜50g/m2 がより好ましい。
【0039】
そして、上記サブフィルター層Sの目付は、サブフィルター層の層数にもよるが、20〜100g/m2 が好ましく、30〜70g/m2 がより好ましい。なお、サブフィルター層S中に複合ストランドDを含む場合、サブフィルター層Sの目付とは、複合ストランドDを除いたサブフィルター層Sの目付をいう。
【0040】
更に、サブフィルター層Sを構成しているメルトブローン不織布Aの複合繊維1の平均繊維径は、20〜75μmが好ましい。これは、メルトブローン不織布Aの複合繊維1の平均繊維径が細いと、積層不織布の製造時において、不織布B上に溶融樹脂を吹き付ける際、溶融樹脂の熱接着成分以外の熱可塑性樹脂成分が固化した場合、熱接着成分も固化してしまい、複合繊維と不織布Bとの熱融着が不充分となることがあり、又、噴出ノズルを不織布Bに近づけることも考えられるが、このようにすると、溶融樹脂の熱接着成分の軟化は充分となるものの、熱接着成分以外の熱可塑性樹脂成分も固化が不充分となって繊維形態を保持することができなくなることがあるからである。一方、メルトブローン不織布Aの複合繊維1の平均繊維径が太いと、積層不織布の製造時において、不織布Bの繊維を溶融してしまい、不織布Bに孔が生じる虞れがあるからである。
【0041】
又、サブフィルター層Sのメルトブローン不織布Aは、サブフィルター層Sのフィルター作用を向上させるために、メルトブローン不織布を複数枚、積層一体化させたものであってもよい。
【0042】
このような場合、複数枚のメルトブローン不織布のうち、不織布B上に直接、積層されたメルトブローン不織布を構成している複合繊維1が最も太くなるようにすることが好ましい。
【0043】
一方、上述したように、サブフィルター層Sにおいて、メルトブローン不織布を複数枚、積層一体化させた場合において、サブフィルター層Sの圧損を低下させるために、メルトブローン不織布Aを構成している複合繊維1の繊維径を太くし且つメルトブローン不織布の積層枚数を増加させる時は、不織布Bに直接、積層一体化されているメルトブローン不織布の目付をできるだけ小さくすると共に繊維塊を多量に発生させ、このメルトブローン不織布上に、更にこのメルトブローン不織布を構成している複合繊維よりも太い複合繊維からなるメルトブローン不織布を積層一体化させる。不織布Bに直接、積層一体化されているメルトブローン不織布上に更に積層一体化されるメルトブローン不織布の複合繊維の繊維径は0.3〜100μmが好ましい。
【0044】
そして、図4及び図5に示したように、積層不織布Cにおけるメルトブローン不織布Aと不織布Bとの間に、少なくとも、メインフィルター層Mを構成している積層不織布Cにおけるメルトブローン不織布Aと不織布Bとの間に、複合ストランドD,D・・・を複数本、所定間隔毎に互いに平行に配設し、この複合ストランドDの後述する熱接着成分によって、複合ストランドDと、メルトブローン不織布A及び不織布Bとを熱接着一体化させていてもよい。
【0045】
なお、図5は、全ての積層不織布Cにおけるメルトブローン不織布Aと不織布Bとの間に複合ストランドDを介在させてなる複層フィルターFを示したが、上記複層フィルターFのメインフィルター層Mを構成するメルトブローン不織布Aと不織布Bとの間にのみ複合ストランドD,D・・・を介在させてもよい。
【0046】
このように、積層不織布Cにおけるメルトブローン不織布Aと不織布Bとの間に複合ストランドDを介在させることによって、積層不織布Cの機械的強度の補強を図ることができると共に、複層フィルターFにプリーツ加工を施した場合、複層フィルターFのプリーツ形状をより確実に保持させることができ、更に、メルトブローン不織布Aと不織布Bとの接着一体化をより強固なものとすることができる。
【0047】
複合ストランドDを詳細に説明すると、この複合ストランドDは、融点が異なる二種以上の熱可塑性樹脂成分を有し且つこれらの熱可塑性樹脂成分のうちで相対的に低い融点を有する熱可塑性樹脂成分が熱接着成分として表面の一部を占めてなる。
【0048】
上記複合ストランドDの構造としては、上述したメルトブローン不織布Aを構成している複合繊維と同様の構造を有している。又、複合ストランドDを構成する熱可塑性樹脂も、上述したメルトブローン不織布Aの複合繊維を構成している熱可塑性樹脂と同様の熱可塑性樹脂が用いられるが、ポリ(ブテン−1)及び高密度ポリエチレンからなる群から選ばれた少なくとも一種の熱可塑性樹脂と、ポリプロピレン系樹脂とを併用することが好ましく、塑性変形し易くて複層フィルターFのプリーツ形状の保持性に優れていることから、高密度ポリエチレンとポリプロピレン系樹脂とを併用することがより好ましい。
【0049】
そして、ポリ(ブテン−1)の密度は、低いと、柔らかくて粘性が増すために溶融紡糸が困難となることがある一方、高いと、曳糸性が低下して溶融紡糸できなくなることがあるので、0.905g/cm3 以上で且つ0.930g/cm3 未満が好ましい。なお、ポリ(ブテン−1)の密度は、JIS L1015−7.14.1に規定された浮沈法に準拠して測定されたものをいう。
【0050】
又、ポリ(ブテン−1)の融点は、低いと、柔らかくて粘性が増すために溶融紡糸が困難となることがある一方、高いと、曳糸性が低下して溶融紡糸できなくなることがあるので、115℃を越え且つ130℃未満が好ましい。
【0051】
そして、複合ストランドDを構成する熱可塑性樹脂は、ステープル繊維と同様の腰や固さを具備させるために、ステープル繊維で用いられる熱可塑性樹脂のメルトフローレイトと同程度のメルトフローレイトを有していることが好ましい。
【0052】
具体的には、複合ストランドDを構成する熱可塑性樹脂のメルトフローレイトは、小さいと、押出機からの押出圧が大きくなり過ぎる虞れがある一方、大きいと、溶融樹脂の流動性が大きくなり過ぎて所望太さの複合ストランドを得ることができないことがあるので、5〜200g/10分が好ましい。
【0053】
そして、複合ストランドDの平均径は、細いと、複層フィルターの機械的強度が不充分となったり或いは複層フィルターをプリーツ形状とした際の形状保持性が低下することがある一方、大きいと、複層フィルターのフィルター性能が低下することがあるので、100μmを越え且つ2000μm未満が好ましい。
【0054】
更に、複合ストランドDの目付は、小さいと、複層フィルターの機械的強度が不充分となったり或いは複層フィルターをプリーツ形状とした際の形状保持性が低下することがある一方、大きいと、複層フィルターのフィルター性能が低下することがあるので、50〜1000g/m2 が好ましい。なお、複合ストランドDの目付とは、複層フィルターF1m2 当たりに存在する複合ストランドDの重量(g)をいう。
【0055】
又、複層フィルターFの目付は、小さいと、フィルター性能が低下する傾向がある一方、大きいと、エレクトレット加工する際の電界貫通が困難となる場合があるので、50〜500g/m2 が好ましい。なお、複層フィルターFの目付において、複層フィルターF中に複合ストランドDを含む場合は、この複合ストランドDを除いた複層フィルターFの目付をいう。
【0056】
なお、メインフィルター層Mを構成している不織布B上に活性炭素繊維からなる不織布を積層一体化して複層フィルターFにガス吸着性能を付与してもよい。このような活性炭素繊維からなる不織布は、熱可塑性樹脂繊維からなる不織布を650〜700℃の無酸素下で焼成することにより得ることができる。
【0057】
又、メインフィルター層Mを構成している不織布B上に光触媒が塗布されていてもよい。このように不織布B上に光触媒を塗布しておくことによって、複層フィルターFを通過する空気中に含まれる細菌を殺菌又は不活性化することができ、環境衛生を向上させることができる。
【0058】
そして、複層フィルターFを構成している不織布Bを構成している繊維及び/又は複合ストランドに難燃剤を含有させて、不織布B及び/又は複合ストランドDを難燃化することによって、複層フィルターFの難燃化を図ることができる。
【0059】
なお、本発明において、繊維径の単位が「dtex」で表示されている場合、下記式1に基づいて繊維径の単位を「μm」に換算することができる。但し、式1中、Dは、繊維の繊度(dtex)、ρは、繊維を構成している合成樹脂の密度(g/cm3 )である。なお、繊維断面が異形断面の場合は同一面積からなる円形断面の繊維に換算する。
【0060】
【数1】

【0061】
次に、複層フィルターFの製造方法について説明する。先ず、複層フィルターFの製造装置Eを説明する。複層フィルターFの製造装置Eは、図6に示したように、一定速度で一定方向に搬送される網状のコンベアE1と、このコンベアE1の後方に配設されて巻回状態の不織布Bを巻き出してコンベアE1上に供給する不織布巻き出し装置E2と、上記コンベアE2の搬送始端の上方に配設され且つコンベアE1の幅方向(コンベアE1の搬送方向に直交する方向)に所定間隔、好ましくは等間隔毎に配設されて複合ストランドDを複数本、上記不織布B上に連続的に押出すための複数個のストランド押出ノズルE3と、上記コンベアE1の上方であってストランド押出ノズルE3の前方に配設され且つコンベアE1の搬送方向及び幅方向のそれぞれに所定間隔、好ましくは等間隔ごとに配設されて複合繊維を形成する溶融樹脂を噴出させる複数個の噴出ノズルE4とからなる。なお、図6では、噴出ノズルE4は、コンベアE1の搬送方向に一列だけ配設した場合を示したが、噴出ノズルE4は、コンベアE1の搬送方向に複数列、配設されていてもよい。又、網状のコンベアE1には、その上方から下方に向かって吸引する吸引装置(図示せず)が配設されている。
【0062】
先ず、一定方向に一定速度で搬送されるコンベアE1上に、不織布巻き出し装置E2から不織布Bを連続的に供給する。次に、各ストランド押出ノズルE3,E3・・・から不織布B上に複合ストランドD,D・・・を複数本、連続的に押出して、不織布B上にその幅方向に所定間隔毎に複合ストランドD,D・・・を互いに平行に配設する。なお、メルトブローン不織布Aと不織布Bとの間に複合ストランドDを介在させない場合は、ストランド押出ノズルE3からの複合ストランドDの押出工程を省略すればよい。
【0063】
しかる後、複数個の噴出ノズルE4のそれぞれから連続した繊維状の溶融樹脂を上記不織布Bに向かって吹き付け、溶融樹脂が冷却されて形成された複合繊維を、不織布B上にて堆積させると共に複合繊維同士を交絡させ、更に、複合繊維同士をそれらの熱接着成分の熱接着力によって交絡部分において一体化させてメルトブローン不織布Aを形成する。
【0064】
そして、上記メルトブローン不織布Aを構成している複合繊維11の熱接着成分1の熱接着力によって、メルトブローン不織布Aと不織布Bとは積層一体化されて積層不織布Cが形成される。
【0065】
ここで、本発明の複層フィルターFでは、そのメルトブローン不織布A中に繊維塊2を形成するために、互いに隣接する噴出ノズルE4,E4同士を近接させ、互いに隣接する噴出ノズルE4,E4から噴出された繊維状の溶融樹脂同士を不織布B上に落下するまでの間に不規則に接触、凝集一体化させて繊維塊2を形成しており、この繊維塊2はメルトブローン不織布Aの全体に不規則に且つ均一に分散した状態で存在している。
【0066】
具体的には、コンベアE1の搬送方向及びコンベアE1の幅方向に互いに隣接する噴出ノズルE4,E4の吐出孔間の間隔は、1.5mm未満とすることが好ましく、1mm以下とすることがより好ましい。
【0067】
そして、メルトブローン不織布A中に繊維塊2を多く形成する場合には、噴出ノズルE4からの溶融樹脂の吐出量を多くする共に熱風流速を低くすればよく、逆に、メルトブローン不織布A中に繊維塊2を少なく形成する場合には、噴出ノズルE4からの溶融樹脂の吐出量を少なくする共に熱風流速を高くすればよい。
【0068】
更に、噴出ノズルE4の吐出孔とこれに対向する不織布Bとの間の距離は、近いと、噴出ノズルE4から噴出される溶融樹脂の温度で不織布Bを構成している構成繊維の一部が溶融し、不織布Bがフィルム化してしまう虞れがある一方、遠いと、噴出ノズルE4から噴出された溶融樹脂から形成された複合繊維と、不織布Bとの熱融着が不充分となり、メルトブローン不織布Aと不織布Bとの間の一体化が不充分となることがあるので、5〜25cmが好ましい。
【0069】
このように、メルトブローン不織布A中に繊維塊2を散在させ、この繊維塊2によって繊維塊2が存在するメルトブローン不織布A部分の厚みを厚くしてメルトブローン不織布A全体を嵩高く形成している。
【0070】
そして、メルトブローン不織布Aにおける繊維塊2の周辺部は、繊維塊2が複合繊維1,1同士が凝集して形成されたこともあって、繊維塊2が存在していない部分に比して空隙部が大きく形成されており、メルトブローン不織布Aは、その繊維塊2が存在する部分において嵩高く且つ繊維密度(目付)が小さく形成されており、更に、表面には繊維塊2に起因した凸部3が不規則に且つ全面的に形成されている。
【0071】
このように、メルトブローン不織布Aには、その繊維塊2によって繊維密度が小さな低密度部分が全面的に且つ不規則に形成されており、この低密度部分の存在によって流体の通過性を向上させ、圧損を低下させている。
【0072】
そして、メルトブローン不織布Aの繊維塊2に起因した低密度部分の存在によって電界の通過を良好なものとし、積層不織布Cは、その全体の目付が高くて嵩高いにもかかわらず、エレクトレット加工に適したものとなっている。
【0073】
次に、上記の如くして製造された積層不織布Cを複数枚、その厚み方向に重ね合わせて加熱、押圧することにより、複数枚の積層不織布C,C・・・を剥離可能に積層一体化させて複層フィルターFを得ることができる。なお、積層不織布C,C同士の一体化は、積層不織布Cのメルトブローン不織布Aを構成している複合繊維の熱接着成分の熱接着力、或いは、積層不織布Cの不織布Bの構成繊維の熱接着力による。
【0074】
この際、複数枚の積層不織布C,C・・・の積層形態としては、特に限定されるものではなく、積層不織布C,C・・・のメルトブローン不織布Aと不織布Bとが互いに交互になるように積層してもよく、或いは、複数枚の積層不織布C,C・・・をそのメルトブローン不織布Aと不織布Bとが厚み方向に不規則に並んだ状態に積層させてもよい。
【0075】
上述のように、複数枚の積層不織布C,C・・・を重ね合わせ、これら積層不織布C,C・・・を厚み方向に加熱、押圧した際において、積層不織布C,Cの何れか一方或いは双方のメルトブローン不織布Aが積層不織布C,C同士の重ね合わせ面を構成している場合には、積層不織布Cのメルトブローン不織布Aの表面に形成された凸部3,3・・・に押圧力が特に大きく加わり、互いに隣接する積層不織布C,C・・・は、そのメルトブローン不織布Aの凸部3,3・・・において主に熱融着一体化し、積層不織布Cの凸部3における熱融着部分を分離させるだけで、互いに隣接する積層不織布C,C同士を容易に剥離して分離させることができる。
【0076】
上記複層フィルターFは、その使用にあたって、単位面積当たりのフィルター面積を増加させるためにプリーツ加工が施されることがあるが、上記複層フィルターFは、その複層不織布Cを構成しているメルトブローン不織布A内に繊維塊2を形成していると共に該繊維塊2の存在によってメルトブローン不織布Aの高目付化を図っているので、腰が強くて機械的強度にも優れており、プリーツ形状に形成された複層フィルターFの形態を安定的に保持することができる。
【0077】
しかも、上記複層フィルターFは、その厚みが厚く形成されているので、プリーツ折り機のギアロールに掛かり易く、複層フィルターFを所望のプリーツ形状に形成することができる。
【0078】
そして、上記複層フィルターFの積層不織布C,C同士は、積層不織布Cのメルトブローン不織布Aの凸部3において強固に熱融着一体化しているので、上述のように、複層フィルターFをプリーツ形状に折り曲げ加工した場合にあっても、積層不織布C,C同士が互いに完全に剥離してしまうことはない。
【0079】
更に、上記複層フィルターFは、最外層の一の積層不織布Cをメインフィルター層Mとし、残余の積層不織布Cをサブフィルター層Sとして用いられ、上述の複層フィルターFでは、全ての積層不織布Cを同一の積層不織布から構成した場合を説明したが、サブフィルター層Sを構成している積層不織布Cの目付を、メインフィルター層Mを構成している積層不織布の目付よりも小さくしてもよい。
【0080】
このような場合、メインフィルター層Mを構成している積層不織布Cを製造する際、不織布B上に複合繊維を堆積させてメルトブローン不織布Aを製造した後、このメルトブローン不織布Aを構成する複合繊維とは異種類の或いは平均繊維径の異なる複合繊維を、先に不織布B上に堆積させたメルトブローン不織布A上に堆積させることによって、不織布B上にメルトブローン不織布Aを複数層に亘って積層一体化させることが好ましい。
【0081】
このように、メインフィルター層Mの目付を高く、サブフィルター層Sの目付をメインフィルター層Mの目付と同一か或いは小さくすることにより、サブフィルター層Sによって流体の通過性を確保しながら微粒子の捕捉を図っていると共に、サブフィルター層Sでは捕捉しきれなかった微粒子をメインフィルター層Mによって捕捉することができ、複層フィルターFの流体の通過性を保持しつつフィルター性能の向上を図ることができる。
【0082】
更に、上記複層フィルターFは、その積層不織布C、好ましくは、積層不織布Cのメルトブローン不織布Aの複合繊維1にコロナ放電処理などを施すことによって、エレクトレット化を容易に行うことができ、複層フィルターFをエレクトレット化することによって、タバコの煙などの帯電した微粒子の捕捉をより効果的に行うことができる。
【発明の効果】
【0083】
本発明の複層フィルターは、融点が異なる二種以上の熱可塑性樹脂成分を有し且つこれらの熱可塑性樹脂成分のうちで相対的に低い融点を有する熱可塑性樹脂成分が熱接着成分として表面の一部を占めてなる複合繊維を構成繊維として含有し、複数本の複合繊維同士を部分的に凝集一体化させて繊維塊が形成され、この繊維塊によって表面に凸部が形成されてなるメルトブローン不織布Aと、このメルトブローン不織布の一面に積層一体化され且つ繊維径が15μm以上の繊維を構成繊維として含む不織布Bとからなる積層不織布を複数枚、剥離可能に積層一体化してなることを特徴とするので、嵩高くて腰が強く補強材などを用いることなくプリーツ加工を容易に施すことができ、プリーツ形状に加工した複層フィルターの形態を安定的に保持することができ、更に、使用中における繊維の脱落も少なく長期間の使用によっても圧損が小さい。
【0084】
更に、本発明の複層フィルターは、その使用に伴って表面に露出しているサブフィルター層が汚染された場合にあっても、表面に露出しているサブフィルター層を剥離、除去することによって、複層フィルターのフィルター性能を回復させて長期間に亘って優れたフィルター機能を発揮し得る。
【0085】
そして、本発明の複層フィルターを構成している積層不織布は、エレクトレット加工を施し易いので、複層フィルターをエレクトレット化させて、タバコの煙などの帯電した微粒子を効果的に捕捉、除去することができる。
【0086】
更に、上記複層フィルターにおいて、複層フィルターのうちの最外層の一の積層不織布をメインフィルター層とし、残余の積層不織布をサブフィルター層としており、上記メインフィルター層の目付が50〜200g/m2 であると共に、上記サブフィルター層の目付が上記メインフィルター層の目付と同一か或いはそれ以下である場合には、サブフィルター層によって流体の通過性を担保しつつも微粒子の捕捉を図る一方、サブフィルター層では捕捉できなかった微粒子をメインフィルター層で確実に捕捉することができる。
【0087】
上記複層フィルターにおいて、メインフィルター層を構成する積層不織布のメルトブローン不織布Aと不織布Bとの間に、融点が異なる二種以上の熱可塑性樹脂成分を有し且つこれらの熱可塑性樹脂成分のうちで相対的に低い融点を有する熱可塑性樹脂成分が熱接着成分として表面の一部を占めてなる複合ストランドが複数本、所定間隔毎に配設されており、上記複合ストランドは上記メルトブローン不織布A及び上記不織布Bと一体化されている場合には、複合ストランドによってメインフィルター層の腰を強くして複層フィルター全体を腰の強いものとして取扱性を向上させていると共に、複層フィルターのプリーツ加工性を向上させて、プリーツ状に折り曲げた複層フィルターの形態を長期間に亘って安定的に保持し、複層フィルターに優れたフィルター性能を長期間に亘って発揮させることができる。
【0088】
上記複層フィルターにおいて、複合繊維が、その熱可塑性樹脂成分として、密度が0.905g/cm3 以上で且つ0.930g/cm3 未満で、融点が115℃を越え且つ130℃未満であるポリ(ブテン−1)と、ポリプロピレン系樹脂とを含有している一方、複合ストランドが、その熱可塑性樹脂成分として、密度が0.905g/cm3 以上で且つ0.930g/cm3 未満で、融点が115℃を越え且つ130℃未満であるポリ(ブテン−1)及び高密度ポリエチレンからなる群から選ばれた少なくとも一種の熱可塑性樹脂成分と、ポリプロピレン系樹脂とを含有する場合には、複合繊維のエレクトレット化を容易にして、複層フィルターのフィルター性能をより向上させることができる一方、複合繊維と複合ストランドの熱接着成分を相溶性のあるものとしてメルトブローン不織布と複合ストランドとの熱融着性を向上させ、全体としてメルトブローン不織布A、不織布B及び複合ストランドの一体化を強固なものとして複層フィルターの腰を強いものとし、複層フィルターのプリーツ加工性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0089】
(実施例1〜8、比較例1,2)
ストランド押出ノズルを備えていない以外は図6に示した製造装置と同一の製造装置を用い、先ず、不織布巻き出し装置E2から、表1に示した繊維径を有するポリプロピレン繊維からなるスパンボンド不織布B1を巻き出して140℃に加熱した後にコンベアE1上に連続的に供給した。なお、スパンボンド不織布B1の目付は表1に示した通りであった。
【0090】
次に、複合繊維を形成できる70cm弱の幅を有する850個の噴出孔を有する噴出ノズルE4の各噴出孔から、噴出ノズルE4の温度を表1に示した温度に保持しつつ、溶融樹脂を高速加熱気流中に吐出すると同時にこの高速加熱気流によって連続繊維状に形成して、芯成分がポリプロピレン系樹脂で且つ鞘成分がポリ(ブテン−1)である芯鞘型の複合繊維をスパンボンド不織布B1上に堆積させてメルトブローン不織布A1を形成し、スパンボンド不織布B1上にメルトブローン不織布A1が積層一体化されてなる積層不織布C1を得た。なお、メルトブローン不織布A1を構成している複合繊維の一部が、スパンボンド不織布B1を構成するポリプロピレン繊維内に入り込んでいた。
【0091】
メルトブローン不織布A1内には、複合繊維同士が部分的に凝集一体化してなる繊維塊2が不規則に形成されており、この繊維塊2によって表面に複数個の凸部3が不規則に且つ全面的に形成されていた。
【0092】
噴出ノズルE4の複数個の噴出孔は、コンベアE1の搬送方向に直交する方向に並んだ噴出孔の列が複数列、互いに平行に搬送方向に配設されることによって、格子状に配列されており、噴出ノズルE4における互いに隣接する噴出孔間の距離(表1では「噴出孔間隔」と表記した)、及び、コンベアE1から噴出ノズルE4の噴出孔までの高さ(表1では「噴出孔高さ」と表記した)は表1に示した通りであった。又、メルトブローン不織布A1を構成している複合繊維の平均繊維径並びにメルトブローン不織布A1の目付及び厚みは表1に示した通りであった。なお、本発明において不織布の厚みは、JIS L−1913−6.1.2A法に準拠して測定した。
【0093】
一方、ストランド押出ノズルを備えていない以外は図6に示した製造装置と同一の製造装置を用い、先ず、不織布巻き出し装置E2から、表1に示した繊維径を有するポリプロピレン繊維からなるスパンボンド不織布B2を巻き出して140℃に加熱した後にコンベアE1上に連続的に供給した。なお、スパンボンド不織布B2の目付は、表1に示した通りであった。
【0094】
次に、スパンボンド不織布B2上に、複合繊維を形成できる70cm弱の幅を有する850個の噴出孔を有する噴出ノズルE4の各噴出孔から、噴出ノズルE4の温度を表1に示した温度に保持しつつ、溶融樹脂を高速加熱気流中に吐出すると同時にこの高速加熱気流によって連続繊維状に形成して、表1に示した芯成分及び鞘成分からなる芯鞘型の複合繊維をスパンボンド不織布B2上に堆積させてメルトブローン不織布A2を一体的に形成し、スパンボンド不織布B2上にメルトブローン不織布A2が積層一体化されてなる積層シートG1を得、この積層シートG1を巻き取った。なお、メルトブローン不織布A2を構成している複合繊維の一部が、スパンボンド不織布B2を構成するポリプロピレン繊維内に入り込んでいた。
【0095】
メルトブローン不織布A2内には、複合繊維同士が部分的に凝集一体化してなる繊維塊2が不規則に且つ全面的に形成されていた。噴出ノズルE4の噴出孔は、コンベアE1の搬送方向に直交する方向に対して30°だけ斜行した方向に並んだ噴出孔の列が複数列、互いに平行に搬送方向に配列されることによって、格子状に配列されており、噴出ノズルE4における互いに隣接する噴出孔間の距離(表1では「噴出孔間隔」と表記した)、及び、コンベアE1から噴出ノズルE4の噴出孔までの高さ(表1では「噴出孔高さ」と表記した)は表1に示した通りであった。又、メルトブローン不織布A2を構成している複合繊維の平均繊維径並びにメルトブローン不織布A3の目付及び厚みは表1に示した通りであった。
【0096】
更に、ストランド押出ノズルを備えていない以外は図6に示した製造装置と同一の製造装置を用い、不織布巻き出し装置E2から積層シートG1をコンベアE1上に連続的に供給し、この積層シートG1のメルトブローン不織布A2上に、複合繊維を形成できる70cm弱の幅を有する850個の噴出孔を有する噴出ノズルE4の各噴出孔から、噴出ノズルE4の温度を表1に示した温度に保持しつつ、溶融樹脂を高速加熱気流中に吐出すると同時にこの高速加熱気流によって連続繊維状に形成して、表1に示した芯成分及び鞘成分からなる芯鞘型の複合繊維をメルトブローン不織布A2上に堆積させてメルトブローン不織布A3を一体的に形成して、スパンボンド不織布B2上に、メルトブローン不織布A2及びメルトブローン不織布A3がこの順序で積層一体化されてなる表1に示した厚みを有する積層不織布C2を得た。
【0097】
メルトブローン不織布A3の表面には、メルトブローン不織布A2内、又は、メルトブローン不織布A2,A3内に形成された繊維塊2によって複数個の凸部3が不規則に且つ全面的に形成されていた。
【0098】
噴出ノズルE4の噴出孔は、コンベアE1の搬送方向に対して30°だけ斜行した方向に並んだ噴出孔の列が複数列、互いに平行に搬送方向に配列されることによって、格子状に配列されており、噴出ノズルE4における互いに隣接する噴出孔間の距離(表1では「噴出孔間隔」と表記した)、及び、コンベアE1から噴出ノズルE4の噴出孔までの高さ(表1では「噴出孔高さ」と表記した)は表1に示した通りであった。又、メルトブローン不織布A3を構成している複合繊維の平均繊維径並びにメルトブローン不織布A3の目付及び厚みは表1に示した通りであった。なお、メルトブローン不織布A2,A3を製造する際に用いた噴出ノズルE4は、互いに交差する方向に斜行していた。
【0099】
又、表1中、PP1、PP2、PB1、PB2、PM及びPTは下記に示した熱可塑性樹脂を意味している。
PP1:ポリプロピレン(融点:163℃、メルトフローレイト:40g/10分、Q
値(重量平均分子量/数平均分子量=4)
PP2:ポリプロピレン(融点:163℃、メルトフローレイト:300g/10分、
Q値(重量平均分子量/数平均分子量)=4)
PB1:ポリ(ブテン−1)(三井化学社製 商品名「タフマーBL700」、融点:
123℃、密度:0.917g/cm3 、メルトフローレイト:28g/10
分、Q値(重量平均分子量/数平均分子量)=2)
PB2:ポリ(ブテン−1)(三井化学社製 商品名「タフマーPB0800」、融点
:123℃、密度:0.915g/cm3 、メルトフローレイト:約200g
/10分、Q値(重量平均分子量/数平均分子量)=2)
PM :ポリメチルペンテン(三井化学社製 商品名「TPX」、融点:240℃、メ
ルトフローレイト:120g/10分)
PT :ポリエチレンテレフタレート(融点:260℃、メルトフローレイト:110
g/10分、常法の限界粘度IV値:0.64)
【0100】
次に、積層不織布C1と積層不織布C2とを、積層不織布C2のメルトブローン不織布A3と積層不織布C1のスパンボンド不織布B1とが対向した状態となるように重ね合わせた上で、厚み方向に表1に示した押圧温度にて押圧して、積層不織布C1,C2を、メルトブローン不織布A3を構成している複合繊維の熱接着成分の熱接着力によって剥離可能に積層一体化して、積層不織布C2をメインフィルター層Mとし且つ積層不織布C1をサブフィルター層Sとした複層フィルターFを得た。なお、複層フィルターFの厚みを表1に示した。
【0101】
次に、得られた複層フィルターFを120℃の乾燥機中に供給して乾燥させた。この乾燥機中及び乾燥機から出た直後において、針を一定間隔で埋め込んだ印加電極間に表1に示した温度、加熱槽内電圧(表1では単に「槽内電圧」と表記した)及び加熱槽外冷却部電圧(表1では単に「冷却部電圧」と表記した)の条件下にて直流高電界を発生させて、複層フィルターFの積層不織布C1,C2のメルトブローン不織布A1〜A3を構成している複合繊維にエレクトレット加工を施した。
【0102】
なお、実施例8についてはメルトブローン不織布A3をメルトブローン不織布A2上に積層一体化させなかった。又、比較例1は、互いに隣接する噴出孔間の距離を大きくしたため、複合繊維同士は凝集一体化せず、繊維塊は形成されていなかった。比較例1,2では、積層不織布C1と積層不織布C2とを一体化することができなかったので、エレクトレット加工、捕集効率及び圧損は、積層不織布C1と積層不織布C2とを重ね合わせた状態で測定した。
【0103】
(実施例9)
図6に示した製造装置を用い、芯成分がポリプロピレンで且つ鞘成分がポリ(ブテン−1)である芯鞘型の複合ストランドをストランド押出ノズルE3,E3・・・から押出し、スパンボンド不織布B2上にその幅方向に5mm間隔毎に複合ストランドを配設し、この複合ストランドを配設したスパンボンド不織布B2上にメルトブローン不織布A2を積層一体化させて複層不織布C2を製造したこと以外は実施例8と同様にして複層フィルターを製造した。なお、複合ストランドDの目付は、300g/m2 であった。
【0104】
(実施例10)
実施例1で得られた複層フィルターFのサブフィルター層Sの表面に、平均繊維径が2dtexのポリプロピレン繊維からなる目付が40g/m2 のスパンボンド不織布を積層一体化して複層フィルターFを製造した。
【0105】
(実施例11)
実施例8で得られた積層不織布C2をサブフィルター層Sとし、実施例1で得られた積層不織布C2をメインフィルター層Mとして、実施例9と同様の要領で複層フィルターFを得た。
【0106】
得られた複層フィルターFを120℃の乾燥機中に供給して乾燥させた。この乾燥機中及び乾燥機から出た直後において、針を一定間隔で埋め込んだ印加電極間に表1に示した温度、加熱槽内電圧及び加熱槽外冷却部電圧の条件下にて直流高電界を発生させて、複層フィルターFの積層不織布C2,C2のメルトブローン不織布を構成している複合繊維にエレクトレット加工を施した。
【0107】
(実施例12)
目付が15g/m2 で且つ平均繊維径が7dtexのポリプロピレン繊維からなるスパンボンド不織布上に、平均繊維径が2dtexのレーヨン繊維からなるカードウェブを積層した上でスパンレース加工を施して、レーヨン繊維をスパンボンド不織布に交絡させることによってスパンボンド不織布とカードウェブとを積層一体化させて不織布Bを製造した。そして、スパンボンド不織布B2の代わりに上記不織布Bを用い、この不織布Bのスパンボンド不織布上に実施例1と同様の要領でメルトブローン不織布A2,A3を積層一体化させて積層不織布C2を製造した。
【0108】
次に、粒子径が約25nmのアパタイトで被覆された酸化チタン光触媒微粒子を水に分散、懸濁させてなり且つ酸化チタン光触媒微粒子濃度が1重量%である懸濁液を用意し、この懸濁液を金属ロール表面に薄く塗布し、この金属ロールからゴム被覆ロールの表面に懸濁液を転写させた後、このゴム被覆ロールを用いて積層不織布C2の不織布Bの表面に懸濁液を全面的に塗布した。
【0109】
そして、実施例1と同様の要領で作製された積層不織布C1と、上記積層不織布C2とを、積層不織布C2のメルトブローン不織布A3と積層不織布C1のスパンボンド不織布B1とが対向した状態となるように重ね合わせた上で、厚み方向に表1に示した押圧温度にて押圧して、積層不織布C1,C2を、メルトブローン不織布A3を構成している複合繊維の熱接着成分の熱接着力によって剥離可能に積層一体化して、積層不織布C2をメインフィルター層Mとし且つ積層不織布C1をサブフィルター層Sとした複層フィルターFを得た。なお、複層フィルターFの厚みを表1に示した。
【0110】
次に、得られた複層フィルターFを120℃の乾燥機中に供給して乾燥させた。この乾燥機中及び乾燥機から出た直後において、針を一定間隔で埋め込んだ印加電極間に表1に示した温度、加熱槽内電圧(表1では単に「槽内電圧」と表記した)及び加熱槽外冷却部電圧(表1では単に「冷却部電圧」と表記した)の条件下にて直流高電界を発生させて、複層フィルターFの積層不織布C1,C2のメルトブローン不織布A1〜A3を構成している複合繊維にエレクトレット加工を施した。
【0111】
得られた複層フィルターFのメインフィルターMの表面、即ち、酸化チタン光触媒微粒子を塗布した面に紫外線ランプを用いて紫外線照射すると共に、サブフィルターS側から室内空気を通過させたところ、圧損は7Pasと大きくなったものの、捕集効率は実施例1と同じく45%であった。
【0112】
室内において数人による強度の喫煙を実施したところ、複層フィルターFのサブフィルターSが僅かに黄色く着色したものの、メインフィルターFは全く変色していなかった。
【0113】
又、実施例1の複層フィルターFを通過した空気と、実施例12の複層フィルターFを通過した空気のそれぞれをメンブレンフィルターで濾過して細菌を濃縮し、一般細菌を寒天培地でコロニー計数法に基づいて測定したところ、実施例1では多数のコロニーが観測されたが、実施例12ではコロニーが観測されず、紫外線を照射した酸化チタン光触媒微粒子によって殺菌又は細菌が不活性化されていた。
【0114】
更に、メルトブローン不織布A2,A3を積層一体化させる前に、不織布Bに酸化チタン光触媒微粒子を塗布したこと以外は、上述と同様の要領で複層フィルターFを製造し、上記と同様の要領で一般細菌を寒天培地でコロニー計数法に基づいて測定したところ、コロニーは観測されなかった。
【0115】
得られた複層フィルターFの捕集効率、圧損、剥がし性及びプリーツ性を下記に示した要領で測定し、その結果を表1に示した。
【0116】
(捕集効率及び圧損)
JIS B−9909に準拠してフィルターユニットの代わりに複層フィルターを装着し、測定流速5.3cm/秒及び濾過面100mmφの条件下にて、粒子径が0.5μmの大気塵の捕集効率及びその測定時の圧損を測定した。捕集効率を測定する際の空気の流入方向を表1に「流入方向」として示した。なお、メインフィルター層M側から流入させた場合を「逆」とし、空気をサブフィルター層S側から流入させた場合を「正」とした。
【0117】
(剥がし性)
複層フィルターFのメインフィルター層とサブフィルター層とを手で剥離し、下記基準に基づいて判断した。
優・・・サブフィルター層の腰が充分であり、両フィルター層を互いに容易に分離する
ことができた。
良・・・サブフィルター層が破損することなく、両フィルター層を互いに分離すること
ができた。
不可・・両フィルターを互いに分離する際にサブフィルター層が破損した。
【0118】
(プリーツ性)
実施例1〜7,9,10〜12及び比較例1,2で得られた複層フィルターをロータリー式プリーツ折り機でプリーツ加工する一方、実施例8で得られた複層フィルターは、レシプロ式プリーツ折り機でプリーツ加工し、下記基準に基づいて判断した。
【0119】
優・・・綺麗にプリーツ加工することができた。
良・・・プリーツ加工の折れ目がやや乱れた。
不可・・ プリーツ加工時にサブフィルター層がメインフィルター層から剥離してしま
ってプリーツ加工が上手くできなかった。
【0120】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】複合繊維の一例を示した断面図である。
【図2】積層不織布を示した模式断面図である。
【図3】本発明の複層フィルターを示した模式断面図である。
【図4】積層不織布の他の一例を示した模式断面図である。
【図5】本発明の複層フィルターの他の一例を示した模式断面図である。
【図6】複層不織布の製造装置の一例を示した模式側面図である。
【符号の説明】
【0122】
1 複合繊維
2 繊維塊
3 凸部
11 熱接着成分
A,A1〜A4 メルトブローン不織布
B 不織布
B1,B2 スパンボンド不織布
C,C1,C2 複層不織布
D 複合ストランド
E4 噴出ノズル
F 複層フィルター
M メインフィルター層
S サブフィルター層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点が異なる二種以上の熱可塑性樹脂成分を有し且つこれらの熱可塑性樹脂成分のうちで相対的に低い融点を有する熱可塑性樹脂成分が熱接着成分として表面の一部を占めてなる複合繊維を構成繊維として含有し、複数本の複合繊維同士を部分的に凝集一体化させて繊維塊が形成され、この繊維塊によって表面に凸部が形成されてなるメルトブローン不織布Aと、このメルトブローン不織布Aの一面に積層一体化され且つ繊維径が15μm以上の繊維を構成繊維として含む不織布Bとからなる積層不織布を複数枚、剥離可能に積層一体化してなることを特徴とする複層フィルター。
【請求項2】
複数枚の積層不織布が、メルトブローン不織布Aと不織布Bとが互いに交互になるように剥離可能に積層一体化されてなることを特徴とする請求項1に記載の複層フィルター。
【請求項3】
複層フィルターのうちの最外層の一の積層不織布をメインフィルター層とし、残余の積層不織布をサブフィルター層としており、上記メインフィルター層の目付が50〜200g/m2 であると共に、上記サブフィルター層の目付が上記メインフィルター層の目付と同一か或いはそれ以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の複層フィルター。
【請求項4】
メインフィルター層を構成する積層不織布のメルトブローン不織布Aと不織布Bとの間に、融点が異なる二種以上の熱可塑性樹脂成分を有し且つこれらの熱可塑性樹脂成分のうちで相対的に低い融点を有する熱可塑性樹脂成分が熱接着成分として表面の一部を占めてなる複合ストランドが複数本、所定間隔毎に配設されており、上記複合ストランドは上記メルトブローン不織布A及び上記不織布Bと一体化されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の複層フィルター。
【請求項5】
複合繊維が、その熱可塑性樹脂成分として、密度が0.905g/cm3 以上且つ0.930g/cm3 未満で、融点が115℃を越え且つ130℃未満であるポリ(ブテン−1)と、ポリプロピレン系樹脂とを含有している一方、複合ストランドが、その熱可塑性樹脂成分として、密度が0.905g/cm3 以上且つ0.930g/cm3 未満で、融点が115℃を越え且つ130℃未満であるポリ(ブテン−1)及び高密度ポリエチレンからなる群から選ばれた少なくとも一種の熱可塑性樹脂成分と、ポリプロピレン系樹脂とを含有することを特徴とする請求項4に記載の複層フィルター。
【請求項6】
メインフィルター層とサブフィルター層の合計目付が50〜500g/m2 であると共に、複合ストランドの目付が50〜1000g/m2 であることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の複層フィルター。
【請求項7】
メルトブローン不織布Aの複合繊維がエレクトレット化されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の複層フィルター。
【請求項8】
表面に光触媒が塗布されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の複層フィルター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−98370(P2007−98370A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−295717(P2005−295717)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(000002923)大和紡績株式会社 (173)
【出願人】(300049578)ダイワボウポリテック株式会社 (120)
【Fターム(参考)】