説明

複層塗膜形成方法

本発明は、被塗物上に、水性第1着色塗料及び水性第2着色塗料を順次塗装し、得られる第1着色塗膜及び第2着色塗膜を同時に加熱硬化することを含んでなり、該水性第1着色塗料が、水酸基含有ポリエステル樹脂、硬化剤、ならびに炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー30〜100質量%及び該重合性不飽和モノマー以外の重合性不飽和モノマー0〜70質量%からなるモノマー成分を重合することにより得られる水分散性アクリル樹脂を含有する、平滑性、鮮映性、耐水性及び耐チッピング性に優れた複層塗膜を形成する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性塗料を塗り重ねることによって、優れた外観と塗膜性能を有する複層塗膜を形成せしめる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車車体における塗膜形成方法としては、被塗物に電着塗装を施し、加熱硬化せしめた後、中塗り塗料の塗装→焼き付け硬化→ベースコート塗料の塗装→プレヒート(予備加熱)→クリヤー塗料の塗装→焼き付け硬化を順次行なう3コート2ベーク方式、及び中塗り塗料の塗装→焼き付け硬化→上塗り塗料の塗装→焼き付け硬化を順次行なう2コート2ベーク方式により複層塗膜を形成せしめる方法が広く採用されている。
【0003】
一般に、上記3コート2ベーク方式は、光輝性顔料を含有するベースコート塗料を使用して、所謂メタリック色の塗膜を形成せしめる場合に採用され、上記2コート2ベーク方式は、着色顔料を含有する上塗り塗料を使用して、白色や黒色等の所謂ソリッド色の塗膜を形成せしめる場合に採用される。
【0004】
これに対し、近年、省エネルギーの観点から、中塗り塗料の塗装後の焼き付け硬化工程を省略し、中塗り塗料の塗装→プレヒート(予備加熱)→ベースコート塗料の塗装→プレヒート(予備加熱)→クリヤー塗料の塗装→焼き付け硬化を順次行なう3コート1ベーク方式、及び中塗り塗料の塗装→プレヒート(予備加熱)→上塗り塗料の塗装→焼き付け硬化を順次行なう2コート1ベーク方式が検討されている。なかでも、有機溶剤の揮散による環境汚染を抑制する観点から、上記中塗り塗料、ベースコート塗料及び上塗り塗料として水性塗料を用いた3コート1ベーク方式及び2コート1ベーク方式が特に求められている。
【0005】
しかしながら、上記水性中塗り塗料及び水性ベースコート塗料を用いた3コート1ベーク方式及び水性中塗り塗料及び水性上塗り塗料を用いた2コート1ベーク方式においては、水溶性もしくは水分散性の樹脂を使用することによる形成塗膜の耐水性の低下や、水性中塗り塗料と水性ベースコート塗料との層間又は水性中塗り塗料と水性上塗り塗料との層間における混層による形成塗膜の平滑性及び鮮映性の低下が生じる場合があり、課題とされている。
【0006】
例えば、特許文献1には、熱硬化型水性中塗塗料(A)、熱硬化型水性ベースコート(B)および熱硬化型クリヤーコート塗料(C)を用い、かつ水性中塗塗料(A)と水性ベースコート(B)をウエットオンウエット方式で塗装する方法において、水性中塗塗料(A)の基体樹脂の中和価を10〜40mgKOH/gとし、かつ水性ベースコート塗料(B)の基体樹脂の中和価を水性塗料(A)よりも10〜20大きくする場合に、ツヤや鮮映性等の仕上がり外観が低下しないことが記載されている。しかしながら、該塗装方法によって得られる複層塗膜は平滑性及び耐水性が不十分な場合がある。
【0007】
特許文献2には、電着塗膜を形成した基材上に、水性中塗り塗料により中塗り塗膜、水性メタリックベース塗料によりメタリックベース塗膜及びクリヤー塗料によりクリヤー塗膜を順次形成せしめる塗膜形成方法において、水性中塗り塗料が、アミド基含有エチレン性不飽和モノマーと他のエチレン性不飽和モノマーとを乳化重合して得られる、粒子径が0.01〜1.0μmのアミド基含有アクリル樹脂粒子の水分散体を含有する場合に、塗膜層間の界面でのなじみや反転が制御され、高外観を有する積層塗膜を形成できることが記載されている。しかしながら、該塗膜形成方法によって得られる複層塗膜は平滑性が不
十分な場合がある。
【0008】
特許文献3には、(1)電着塗膜が形成された被塗物を提供する工程;(2)電着塗膜の上に水性中塗り塗料を塗布して中塗り塗膜を形成せしめる工程;(3)中塗り塗膜を硬化させないで中塗り塗膜の上に水性ベース塗料及びクリヤー塗料をウェットオンウェットで順次塗布してベース塗膜及びクリヤー塗膜を形成せしめる工程;(4)中塗り塗膜、ベース塗膜及びクリヤー塗膜を同時に焼き付け硬化させる工程を含む複層塗膜形成方法において、上記水性中塗り塗料が特定のアクリル樹脂エマルション及びウレタン樹脂エマルションを含有し、かつ、該水性中塗り塗料によって形成される中塗り塗膜が特定の吸水率及び水溶出率を有する場合に、中塗り塗膜とベース塗膜との混層が有効に防止され、表面平滑性に優れる複層塗膜を形成できることが記載されている。しかしながら、該複層塗膜形成方法によって得られる複層塗膜においても、十分な平滑性や鮮映性が得られない場合がある。
【0009】
特許文献4には、3コート1ベーク方式における中塗り塗料として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルから選ばれる少なくとも1種のモノマーを含み、さらに必要に応じてスチレン系モノマー、(メタ)アクリロニトリル及び(メタ)アクリルアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーを含むモノマー(a)、酸基含有重合性不飽和モノマー(b)、水酸基含有重合性不飽和モノマー(c)及び架橋性モノマー(d)が乳化重合された共重合体樹脂エマルジョンであって、該樹脂のガラス転移温度が−50℃〜20℃、酸価が2〜60mgKOH/g及び水酸基価が10〜120mgKOH/gである共重合体樹脂エマルジョンと、硬化剤とを含有する水性中塗り塗料組成物を使用する場合に、上記共重合体樹脂エマルジョンと硬化剤の硬化反応性が高まるため、耐チッピング性及び耐水性が良く、仕上り外観の良い複層塗膜を形成できることが記載されている。しかしながら、該複層塗膜形成方法によって得られる複層塗膜においても、十分な平滑性や鮮映性が得られない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−290102号公報
【特許文献2】特開2001−205175号公報
【特許文献3】特開2004−358462号公報
【特許文献4】国際公開WO2004/061025号公報
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、水性塗料を塗り重ねることによって複層塗膜を形成せしめる場合に、水性塗料間の混層を抑制することにより、平滑性、鮮映性、耐水性及び耐チッピング性に優れた複層塗膜を形成することができる方法を提供することである。
【0012】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、今回、水酸基含有ポリエステル樹脂、硬化剤及び特定の水分散性アクリル樹脂を含有する水性塗料組成物を用いることにより上記の目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
かくして、本発明は、下記の工程(1)〜(4)、
工程(1):被塗物上に、水性第1着色塗料(X)を塗装して第1着色塗膜を形成せしめる工程、
工程(2):工程(1)で形成される未硬化の第1着色塗膜上に、水性第2着色塗料(Y)を塗装して第2着色塗膜を形成せしめる工程、
工程(3):工程(2)で形成される未硬化の第2着色塗膜上に、クリヤー塗料(Z)を塗装してクリヤー塗膜を形成せしめる工程、及び
工程(4):工程(1)〜(3)で形成される未硬化の第1着色塗膜、未硬化の第2着色塗膜及び未硬化のクリヤー塗膜を同時に加熱硬化させる工程
を順次行う複層塗膜形成方法であって、
水性第1着色塗料(X)が、(A)水酸基含有ポリエステル樹脂、(B)硬化剤、ならびに(C)炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)30〜100質量%及び重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)0〜70質量%からなるモノマー成分を重合することにより得られる水分散性アクリル樹脂を含有する
ことを特徴とする複層塗膜形成方法を提供するものである。
【0014】
本発明は、また、下記の工程(1)、(2)及び(5)、
工程(1):被塗物上に、水性第1着色塗料(X)を塗装して第1着色塗膜を形成せしめる工程、
工程(2):工程(1)で形成される未硬化の第1着色塗膜上に、水性第2着色塗料(Y)を塗装して第2着色塗膜を形成せしめる工程、及び
工程(5):工程(1)及び工程(2)で形成される未硬化の第1着色塗膜及び未硬化の第2着色塗膜を同時に加熱硬化させる工程
を順次行う複層塗膜形成方法であって、
水性第1着色塗料(X)が、(A)水酸基含有ポリエステル樹脂、(B)硬化剤、ならびに(C)炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)30〜100質量%及び重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)0〜70質量%からなるモノマー成分を重合することにより得られる水分散性アクリル樹脂を含有する
ことを特徴とする複層塗膜形成方法を提供するものである。
【0015】
本発明の方法に従えば、水性塗料を塗り重ねることにより、平滑性、鮮映性、耐水性及び耐チッピング性に優れた複層塗膜を形成せしめることができる。
【0016】
以下、本発明の複層塗膜形成方法について、さらに詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
工程(1)
本発明の複層塗膜形成方法によれば、まず、被塗物上に、(A)水酸基含有ポリエステル樹脂、(B)硬化剤、ならびに(C)炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)30〜100質量%及び重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)0〜70質量%からなるモノマー成分を重合することにより得られる水分散性アクリル樹脂を含有する水性第1着色塗料(X)が塗装される。
【0018】
被塗物
本発明に従い水性第1着色塗料(X)を適用することができる被塗物は、特に限定されるものではなく、例えば、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体の外板部;バンパー等の自動車部品;携帯電話、オーディオ機器等の家庭電気製品の外板部等を挙げることができる。これらのうち、自動車車体の外板部及び自動車部品が好ましい。
【0019】
これらの被塗物の材質としては、特に限定されるものではなく、例えば、鉄、アルミニウム、真鍮、銅、ブリキ、ステンレス鋼、亜鉛メッキ鋼、亜鉛合金(Zn−Al、Zn−Ni、Zn−Fe等)メッキ鋼等の金属材料;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂類、各種のFRP等のプラスチック材料;ガラス、セメント、コンクリート等の無機
材料;木材;紙、布等の繊維材料等を挙げることができる。これらのうち、金属材料及びプラスチック材料が好ましい。
【0020】
また、被塗物としては、自動車車体外板部、家庭電気製品、これらを構成する鋼板等の金属基材等の金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理が施されたものであってもよい。更に、被塗物は、該金属表面に、下塗り塗膜及び/又は中塗り塗膜が形成されたものであってもよい。なかでも、電着塗料によって下塗り塗膜が形成された車体が好ましく、カチオン電着塗料によって下塗り塗膜が形成された車体が特に好ましい。
【0021】
上記被塗物は、前記プラスチック材料やそれから成形された自動車部品等のプラスチック表面に、必要に応じて、表面処理、プライマー塗装等を行ったものであってもよい。また、該プラスチック材料と上記金属材料とが組み合わさったものであってもよい。
【0022】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A)
本発明に従う水性第1着色塗料(X)において使用される水酸基含有ポリエステル樹脂(A)としては、従来から水性塗料に使用されているそれ自体既知の水溶性又は水分散性の水酸基含有ポリエステル樹脂を使用することができる。また、上記水酸基含有ポリエステル樹脂(A)は、水酸基に加え、場合によりさらに、例えば、カルボキシル基、エポキシ基等の架橋性官能基を有することができる。
【0023】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A)は、通常、酸成分とアルコール成分とのエステル化反応又はエステル交換反応によって製造することができる。
【0024】
上記酸成分としては、ポリエステル樹脂の製造に際して、酸成分として通常使用される化合物を同様に使用することができる。かかる酸成分としては、例えば、脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸、芳香族多塩基酸等を挙げることができる。
【0025】
上記脂肪族多塩基酸は、一般に、1分子中に少なくとも2個のカルボキシル基を有する脂肪族化合物、該脂肪族化合物の酸無水物及び該脂肪族化合物のエステル化物を包含する。脂肪族多塩基酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸、クエン酸等の脂肪族多価カルボン酸;該脂肪族多価カルボン酸の無水物;該脂肪族多価カルボン酸の炭素数1〜4程度の低級アルキルのエステル化物等が挙げられる。上記脂肪族多塩基酸はそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0026】
上記脂肪族多塩基酸としては、得られる塗膜の平滑性の観点から、アジピン酸及び/又はアジピン酸無水物を用いることが特に好ましい。
【0027】
上記脂環族多塩基酸には、1分子中に少なくとも1個の脂環式構造と少なくとも2個のカルボキシル基を有する化合物、該化合物の酸無水物及び該化合物のエステル化物が包含される。脂環式構造は主として4〜6員環構造であることができる。脂環族多塩基酸としては、例えば、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、3−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;該脂環族多価カルボン酸の無水物;該脂環族多価カルボン酸の炭素数1〜4程度の低級アルキルのエステル化物等が挙げられる。上記脂環族多塩基酸はそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することが
できる。
【0028】
上記脂環族多塩基酸としては、得られる塗膜の平滑性の観点から、例えば、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物を用いることが好ましく、なかでも、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸及び/又は1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物を用いることがより好ましい。
【0029】
上記芳香族多塩基酸は、1分子中に少なくとも2個のカルボキシル基を有する芳香族化合物、該芳香族化合物の酸無水物及び該芳香族化合物のエステル化物を包含し、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸;該芳香族多価カルボン酸の無水物;該芳香族多価カルボン酸の炭素数1〜4程度の低級アルキルのエステル化物等が挙げられる。上記芳香族多塩基酸はそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0030】
上記芳香族多塩基酸としては、例えば、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸等を使用することが好ましい。
【0031】
また、上記脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸及び芳香族多塩基酸以外の酸成分を使用することもできる。かかる酸成分としては、特に限定されず、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等の脂肪酸;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、10−フェニルオクタデカン酸等のモノカルボン酸;乳酸、3−ヒドロキシブタン酸、3−ヒドロキシ−4−エトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。これらの酸成分はそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0032】
前記アルコール成分としては、1分子中に少なくとも2個の水酸基を有する多価アルコールを好適に使用することができる。該多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3−メチル−4,3−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ジメチロールプロピオン酸等の2価アルコール;これらの2価アルコールにε−カプロラクトン等のラクトン類を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のエステルジオール類;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルジオール類;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリ
スリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、ソルビトール、マンニット等の3価以上のアルコール;これらの3価以上のアルコールにε−カプロラクトン等のラクトン類を付加させたポリラクトンポリオール類等が挙げられる。
【0033】
また、上記多価アルコール以外のアルコール成分を使用することもできる。かかるアルコール成分としては、特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ステアリルアルコール、2−フェノキシエタノール等のモノアルコール;プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、「カージュラE10」(商品名、HEXION Specialty Chemicals社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)等のモノエポキシ化合物と酸を反応させて得られたアルコール化合物等が挙げられる。
【0034】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A)の製造は、特に制限されるものではなく、通常の方法に従って行なうことができる。例えば、前記酸成分とアルコール成分とを、窒素気流中、約150〜約250℃で、5〜10時間程度加熱し、該酸成分とアルコール成分のエステル化反応又はエステル交換反応を行なう方法により、水酸基含有ポリエステル樹脂を製造することができる。
【0035】
上記酸成分及びアルコール成分をエステル化反応又はエステル交換反応せしめる際、反応容器中に、これらを一度に添加してもよく、或いは一方又は両者を数回に分けて添加してもよい。また、先ず、水酸基含有ポリエステル樹脂を合成した後、得られる水酸基含有ポリエステル樹脂に酸無水物を反応させてハーフエステル化することによりカルボキシル基及び水酸基含有ポリエステル樹脂としてもよい。また、先ず、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂を合成した後、上記アルコール成分を付加させて水酸基含有ポリエステル樹脂としてもよい。
【0036】
前記エステル化又はエステル交換反応の際に、反応を促進させるため、触媒として、例えば、ジブチル錫オキサイド、三酸化アンチモン、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸カルシウム、酢酸鉛、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等のそれ自体既知の触媒を使用することもできる。
【0037】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A)は、該樹脂の調製中又は調製後に、例えば、脂肪酸、モノエポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物等で変性することができる。
【0038】
上記脂肪酸としては、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等が挙げられ、上記モノエポキシ化合物としては、例えば、「カージュラE10」(商品名、HEXION Specialty Chemicals社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)を好適に用いることができる。
【0039】
また、上記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、リジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類;水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,6−ジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類;リジントリイソシアネート等の3価以上のポリイソシアネート等の有機ポリイソシアネートそれ自体;これらの各有機ポリイソシアネートと多価アルコール
、低分子量ポリエステル樹脂、水等との付加物;これらの各有機ポリイソシアネート同士の環化重合体(例えば、イソシアヌレート)、ビウレット型付加物等が挙げられる。これらのポリイソシアネート化合物はそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0040】
また、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)としては、形成塗膜の平滑性、鮮映性及び耐チッピング性に優れるという観点から、原料の酸成分中の脂肪族多塩基酸及び脂環族多塩基酸の合計含有量が、該酸成分の合計量を基準として、一般に30〜100mol%、特に40〜97mol%、さらに特に50〜80mol%の範囲内にあるものが好ましい。特に、得られる塗膜の耐チッピング性に優れる観点から、上記脂肪族多塩基酸がアジピン酸及び/又はアジピン酸無水物であり、脂環族多塩基酸が1,2−シクロヘキサンジカルボン酸及び/又は1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物であることが好ましい。
【0041】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A)は、一般に10〜300mgKOH/g、好ましくは50〜250mgKOH/g、さらに好ましくは80〜180mgKOH/gの範囲内の水酸基価を有することができる。また、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)は、更にカルボキシル基を有する場合は、一般に1〜200mgKOH/g、好ましくは15〜100mgKOH/g、さらに好ましくは20〜60mgKOH/gの範囲内の酸価を有することができる。水酸基含有ポリエステル樹脂(A)は、一般に500〜50,000、好ましくは1,000〜30,000、さらに好ましくは1,200〜10,000の範囲内の数平均分子量を有することができる。
【0042】
本明細書において、「数平均分子量」及び「重量平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した数平均分子量及び重量平均分子量を、標準ポリスチレンの分子量を基準にして換算した値である。
【0043】
硬化剤(B)
本発明に従う水性第1着色塗料(X)において使用される硬化剤(B)は、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)中に存在し得る水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等の架橋性官能基と反応して、水性第1着色塗料(X)を硬化させ得る化合物である。硬化剤(B)としては、例えば、アミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、エポキシ基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物等が挙げられる。なかでも、得られる塗膜の耐水性の観点から、水酸基と反応し得るアミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物及びブロック化ポリイソシアネート化合物、カルボキシル基と反応し得るカルボジイミド基含有化合物が好ましく、塗料の貯蔵安定性の観点から、アミノ樹脂が特に好ましい。硬化剤(B)はそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0044】
上記アミノ樹脂としては、アミノ成分とアルデヒド成分との反応によって得られる部分メチロール化アミノ樹脂又は完全メチロール化アミノ樹脂を使用することができる。該アミノ成分としては、例えば、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等が挙げられ、また、該アルデヒド成分としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。
【0045】
上記アミノ樹脂としては、上記メチロール化アミノ樹脂のメチロール基を、適当なアルコールによって、部分的に又は完全にエーテル化したものも使用することができる。エーテル化に用いられるアルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−エチル−1−ブタノール、2−エチル−1−ヘキサノール等が挙げら
れる。
【0046】
アミノ樹脂としては、メラミン樹脂が好ましい。特に、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したメチルエーテル化メラミン樹脂、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をブチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したブチルエーテル化メラミン樹脂、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコール及びブチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したメチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂が好ましく、メチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂が特に好ましい。
【0047】
なかでも、鮮映性及び耐水性に優れた複層塗膜を得られるため、水性第I着色塗料(X)が、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)として、原料の酸成分中の脂肪族多塩基酸及び脂環族多塩基酸の合計含有量が、該酸成分の合計量を基準として30〜97mol%であり、かつ芳香族多塩基酸の含有量が3〜70mol%である水酸基含有ポリエステル樹脂(A1)を使用し、かつ硬化剤(B)として、上記メチルエーテル化メラミン樹脂、ブチルエーテル化メラミン樹脂、メチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂のうちの少なくとも1種のアルキルエーテル化メラミン樹脂を使用することが、特に好適である。
【0048】
また、上記メラミン樹脂は、通常400〜6,000、特に500〜4,000、さらに特に600〜3,000の範囲内の重量平均分子量を有することが好ましい。
【0049】
メラミン樹脂としては市販品を使用でき、市販品の商品名としては、例えば、「サイメル202」、「サイメル203」、「サイメル204」、「サイメル211」、「サイメル238」、「サイメル251」、「サイメル303」、「サイメル323」、「サイメル324」、「サイメル325」、「サイメル327」、「サイメル350」、「サイメル385」、「サイメル1156」、「サイメル1158」、「サイメル1116」、「サイメル1130」(以上、日本サイテックインダストリーズ社製)、「ユーバン120」、「ユーバン20HS」、「ユーバン20SE60」、「ユーバン2021」、「ユーバン2028」、「ユーバン28−60」(以上、三井化学社製)等が挙げられる。
【0050】
硬化剤(B)として、メラミン樹脂を使用する場合は、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸等のスルホン酸;モノブチルリン酸、ジブチルリン酸、モノ−2−エチルヘキシルリン酸、ジ−2−エチルヘキシルリン酸等のアルキルリン酸エステル;これらの酸とアミンとの塩等を触媒として使用することができる。
【0051】
前記ポリイソシアネート化合物は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物であって、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、該ポリイソシアネートの誘導体等を挙げることができる。
【0052】
上記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−又は2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトヘキサン酸メチル(慣用名:リジンジイソシアネート)等の脂肪族ジイソシアネート;2,6−ジイソシアナトヘキサン酸2−イソシアナトエチル、1,6−ジイソシアナト−3−イソシアナトメチルヘキサン、1,4,8−トリイソシアナトオクタン、1,6,11−トリイソシアナトウンデカン、1,8−ジイソシア
ナト−4−イソシアナトメチルオクタン、1,3,6−トリイソシアナトヘキサン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアナト−5−イソシアナトメチルオクタン等の脂肪族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0053】
前記脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−もしくは1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート;1,3,5−トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,6−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)−ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン等の脂環族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0054】
前記芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−もしくは1,4−キシリレンジイソシアネート又はその混合物、ω,ω’−ジイソシアナト−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−又は1,4−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート;1,3,5−トリイソシアナトメチルベンゼン等の芳香脂肪族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0055】
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,4’−もしくは4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはその混合物、2,4−もしくは2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4’−トルイジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン等の芳香族トリイソシアネート;4,4’−ジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネート等の芳香族テトライソシアネート等を挙げることができる。
【0056】
前記ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネート化合物のダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)、クルードTDI等を挙げることができる。
【0057】
上記ポリイソシアネート及びその誘導体は、それぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。また、これらポリイソシアネートのうち、脂肪族ジイソシア
ネート、脂環族ジイソシアネート及びこれらの誘導体をそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することが好適である。
【0058】
また、前記ポリイソシアネート化合物として、上記ポリイソシアネート及びその誘導体と、多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂又は水とをイソシアネート基過剰の条件でウレタン化反応させてなるプレポリマーを使用することもできる。
【0059】
前記ポリイソシアネート化合物としては、得られる塗膜の平滑性等の観点から、水分散性ポリイソシアネート化合物を使用することが好ましく、該水分散性ポリイソシアネート化合物としては、水性媒体中に安定に分散可能なポリイソシアネート化合物であれば制限なく使用することができるが、なかでも、親水性に変性した親水化ポリイソシアネート化合物、ポリイソシアネート化合物と界面活性剤とを予め混合することにより水分散性を付与したポリイソシアネート化合物等を好適に使用することができる。
【0060】
上記親水化ポリイソシアネート化合物としては、例えば、アニオン性基を有する活性水素基含有化合物の活性水素基を、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応させて得られるアニオン性親水化ポリイソシアネート化合物、ポリオキシエチレンのモノアルコール等の親水性ポリエーテルアルコールとポリイソシアネート化合物とを反応させて得られるノニオン性親水化ポリイソシアネート化合物等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0061】
上記アニオン性基を有する活性水素基含有化合物には、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、べタイン構造含有基等のアニオン性基を有し、且つイソシアネート基と反応し得る、例えば、水酸基、アミノ基等の活性水素基を有する化合物が包含され、該化合物とポリイソシアネート化合物を反応させることにより、ポリイソシアネート化合物に親水性を付与することができる。
【0062】
上記アニオン性基を有する活性水素基含有化合物としては、特に制限されるものではなく、例えば、1個のアニオン性基と少なくとも2個の活性水素基を有する化合物が挙げられる。より具体的に、カルボキシル基を有する活性水素基含有化合物としては、例えば、2,2−ジメチロール酢酸、2,2−ジメチロール乳酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、ジメチロールヘプタン酸、ジメチロールノナン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸等のジヒドロキシカルボン酸;1−カルボキシ−1,5−ペンチレンジアミン、ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジアミノ安息香酸、リジン、アルギニン等のジアミノカルボン酸;ポリオキシプロピレントリオールと無水マレイン酸や無水フタル酸とのハーフエステル化合物等を挙げることができる。
【0063】
スルホン酸基を有する活性水素基含有化合物としては、例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸、1,3−フェニレンジアミン−4,6−ジスルホン酸、ジアミノブタンスルホン酸、3,6−ジアミノ−2−トルエンスルホン酸、2,4−ジアミノ−5−トルエンスルホン酸、2−(シクロヘキシルアミノ)−エタンスルホン酸、3−(シクロヘキシルアミノ)−プロパンスルホン酸等が挙げられる。
【0064】
リン酸基を有する活性水素基含有化合物としては、例えば、2,3−ジヒドロキシプロピルフェニルホスフェート等を挙げることができる。
【0065】
ベタイン構造含有基を有する活性水素基含有化合物としては、例えば、N−メチルジエタノールアミン等の3級アミンと1,3−プロパンスルトンとの反応によって得られるスルホベタイン基含有化合物等を挙げることができる。
【0066】
これらアニオン性基を有する活性水素基含有化合物は、例えば、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加させることによってアルキレンオキサイド変性体としてもよい。
【0067】
これらのアニオン性基を有する活性水素基含有化合物は、それぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0068】
アニオン性親水化ポリイソシアネート化合物としては、得られる塗膜の平滑性等の観点から、なかでも、スルホン酸基及び/又はリン酸基を有する活性水素基含有化合物の活性水素基をポリイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応させることにより得られるアニオン性親水化ポリイソシアネート化合物を用いることが特に好ましい。
【0069】
親水化変性ポリイソシアネート化合物において、親水化し得るポリイソシアネート化合物としては、前記したものと同様のポリイソシアネート化合物を用いることができる。なかでも、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート及びこれらの誘導体が好ましく、具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)の誘導体、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)の誘導体等を好適に使用することができる。
【0070】
また、ポリイソシアネート化合物と界面活性剤とを予め混合することにより水分散性を付与する場合、該界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤及び/又はノニオン性界面活性剤が好ましく、アニオン性界面活性剤がさらに好ましい。
【0071】
ポリイソシアネート化合物は、得られる塗膜の耐水性の観点から、該ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基と前記水性被膜形成性樹脂(A)中の水酸基との当量比(NCO/OH)が通常0.5〜2.0、特に0.8〜1.5の範囲内となる割合で使用することが好適である。
【0072】
前記ブロック化ポリイソシアネート化合物は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物のイソシアネート基を、ブロック剤でブロックした化合物である。
【0073】
1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類;水素添加キシリレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類;2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトカプロエート、3−イソシアナトメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、4−イソシアナトメチル−1,8−オクタメチレンジイソシアネート(通称、トリアミノノナントリイソシアネート)等の3価以上の有機ポリイソシアネート化合物;これらのポリイソシアネート化合物の2量体又は3量体(ビウレット、イソシアヌレート等);これらのポリイソシアネート化合物と多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂又は水とをイソシアネート基過剰の条件でウレタン化反応させてなるプレポリマー等が挙げられる。
【0074】
前記ブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、エチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、ブチルフェノール、イソプロピル
フェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸メチル等のフェノール系化合物;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピオラクタム等のラクタム系化合物;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ラウリルアルコール等の脂肪族アルコール系化合物;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノール等のエーテル系化合物;ベンジルアルコール、グリコール酸、グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチル、乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等のアルコール系化合物;ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム系化合物;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトン等の活性メチレン系化合物;ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール等のメルカプタン系化合物;アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、ベンズアミド等の酸アミド系化合物;コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミド等のイミド系化合物;ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N−フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルフェニルアミン等アミン系化合物;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、ジフェニル尿素等の尿素系化合物;N−フェニルカルバミン酸フェニル等のカルバミン酸エステル系化合物;エチレンイミン、プロピレンイミン等のイミン系化合物;重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリ等の亜硫酸塩系化合物;アゾール系の化合物等が挙げられる。上記アゾール系の化合物としては、ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチルピラゾール、4−ベンジル−3,5−ジメチルピラゾール、4−ニトロ−3,5−ジメチルピラゾール、4−ブロモ−3,5−ジメチルピラゾール、3−メチル−5−フェニルピラゾール等のピラゾール又はピラゾール誘導体;イミダゾール、ベンズイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾールまたはイミダゾール誘導体;2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン等のイミダゾリン誘導体等が挙げられる。
【0075】
なかでも、好ましいブロック剤としては、オキシム系のブロック剤、活性メチレン系のブロック剤、ピラゾール又はピラゾール誘導体が挙げられる。
【0076】
上記ブロック剤として、少なくとも1個のヒドロキシル基と少なくとも1個のカルボキシル基を有するヒドロキシカルボン酸、例えば、ヒドロキシピバリン酸、ジメチロールプロピオン酸等も使用することができる。特に、上記ヒドロキシカルボン酸を用いてイソシアネート基をブロックした後、該ヒドロキシカルボン酸のカルボキシル基を中和して水分散性を付与したブロック化ポリイソシアネート化合物を好適に用いることができる。
【0077】
前記カルボジイミド基含有化合物としては、例えば、上記ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基同士を脱二酸化炭素反応せしめたものを使用することができる。該カルボジイミド基含有化合物としては、1分子中に少なくとも2個のカルボジイミド基を有するポリカルボジイミド化合物を使用することが好ましい。
【0078】
上記ポリカルボジイミド化合物としては、得られる塗膜の平滑性等の観点から、水溶性又は水分散性のポリカルボジイミド化合物を使用することが好ましい。該水溶性又は水分
散性のポリカルボジイミド化合物としては、水性媒体中に安定に溶解又は分散し得るポリカルボジイミド化合物であれば、特に制限なく使用することができる。
【0079】
上記水溶性ポリカルボジイミド化合物としては、具体的には、例えば、「カルボジライトSV−02」、「カルボジライトV−02」、「カルボジライトV−02−L2」「カルボジライトV−04」(以上、いずれも日清紡社製、商品名)等を使用することができる。また、上記水分散性ポリカルボジイミド化合物としては、例えば、「カルボジライトE−01」、「カルボジライトE−02」(以上、いずれも日清紡社製、商品名)等を使用することができる。
【0080】
上記ポリカルボジイミド化合物は、それぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0081】
水分散性アクリル樹脂(C)
本発明に従う水性第1着色塗料(X)において使用される水分散性アクリル樹脂(C)は、炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)30〜100質量%及び重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)0〜70質量%からなるモノマー成分を重合することにより得ることができる。
【0082】
炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)としては、例えば、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらのモノマーは、それぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0083】
上記炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)としては、特に、炭素数6〜18のアルキル基を有する重合性不飽和モノマーが好ましく、炭素数8〜13のアルキル基を有する重合性不飽和モノマーがさらに好ましい。得られる塗膜の平滑性の観点から、なかでも、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルメタクリレート、トリデシルメタクリレートが好ましく、2−エチルヘキシルアクリレートがさらに好ましい。
【0084】
水分散性アクリル樹脂(C)における上記炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)の使用割合は、得られる塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)及び重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)の合計量を基準として、30〜100質量%、特に45〜100質量%、さらに特に60〜100質量%の範囲内であることが好適である。
【0085】
前記重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香環含有重合
性不飽和モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等のフッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー;マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー;N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等のビニル化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物、該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、アリルアルコ−ル、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテレフタレート、ジビニルベンゼン等の重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物等の含窒素重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等のイソシアナト基含有重合性不飽和モノマー;分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート;アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等のカルボニル基含有重合性不飽和モノマー等が挙げられる。これらのモノマーはそれぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0086】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸又はメタクリル酸」を意味する。また、「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイル又はメタクリロイル」を意味する。また、「(メタ)アクリルアミド」は、「アクリルアミド又はメタクリルアミド」を意味する。
【0087】
上記重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)は、少なくともその一部として、水酸基含有重合性不飽和モノマー(c−5)を含有することが好ましい。
【0088】
水酸基含有重合性不飽和モノマー(c−5)は、得られる水分散性アクリル樹脂(C)に、硬化剤(B)と架橋反応する水酸基を付与し、それによって形成塗膜の耐水性等を向上させると共に、水分散性アクリル樹脂(C)の水性媒体中における安定性を向上せしめる機能を有する。
【0089】
水酸基含有重合性不飽和モノマー(c−5)としては、例えば、前記重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)の説明で例示した水酸基含有重合性不飽和モノマーの中から適宜選択して、それぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0090】
水酸基含有重合性不飽和モノマー(c−5)としては、形成塗膜の平滑性、鮮映性及び耐水性の観点から、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましく、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
【0091】
重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)が、水酸基含有重合性不飽和モノマー(c−5)を含有する場合、水酸基含有重合性不飽和モノマー(c−5)の使用割合は、水分散性アクリル樹脂(C)の水性媒体中における安定性及び形成塗膜の耐水性の観点から、炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)及び重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)の合計質量を基準として、一般に1〜50質量%、特に2〜30質量%、さらに特に3〜20質量%の範囲内であることが好ましい。
【0092】
また、上記重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)は、少なくともその一部として、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(c−6)を含有することができる。
【0093】
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(c−6)としては、例えば、前記重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)の説明で例示したカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーの中から適宜選択して、それぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を用いることが好ましい。
【0094】
重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)が、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(c−6)を含有する場合、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(c−6)の使用割合は、水分散性アクリル樹脂(C)の水性媒体中における安定性に優れる観点から、炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)及び重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)の合計質量を基準として、一般に0.1〜30質量%、特に0.5〜20質量%、さらに特に1〜15質量%の範囲内であることが好ましい。
【0095】
また、形成塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、水分散性アクリル樹脂(C)は架橋構造を有することが好ましい。水分散性アクリル樹脂(C)に架橋構造を導入する方法としては、例えば、重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)の一部として重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー(c−7
)を使用する方法;重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)の一部として後記の官能基を有する重合性不飽和モノマー(c−8)及び重合性不飽和モノマー(c−8)中の該官能基と相補的に反応可能な官能基を有する重合性不飽和モノマー(c−9)を使用する方法等が挙げられる。なかでも、重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)の一部として、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー(c−7)を使用することにより架橋構造を導入する方法が好ましい。
【0096】
重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー(c−7)としては、例えば、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテレフタレート、ジビニルベンゼン、メチレンビスアクリルアミド、エチレンビスアクリルアミド等が挙げられる。これらのモノマーはそれぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー(c−7)としては、なかでも、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートを好適に使用することができる。
【0097】
重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)の一部として、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー(c−7)を使用する場合、その使用割合は、形成塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)及び重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)の合計質量を基準として、一般に約0.1〜約30質量%、特に約0.5〜約15質量%、さらに特に約1〜約8質量%の範囲内であることが好ましい。
【0098】
前記官能基を有する重合性不飽和モノマー(c−8)としては、例えば、エポキシ基含有重合性不飽和モノマー、メチロール基含有重合性不飽和モノマー、アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー、イソシアナト基含有重合性不飽和モノマー等を好適に使用することができる。
【0099】
上記エポキシ基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、グリシジルメタクリレートを使用することが好ましい。
【0100】
前記メチロール基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、N−(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N−(n−ブトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N−(iso−ブトキシメチル)(メタ)アクリルアミド等が挙げられ、これらはそれぞれ
単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。なお、本発明において、上記メチロール基含有重合性不飽和モノマーは、メチロール基を有する重合性不飽和モノマー及びエーテル化されたメチロール基を有する重合性不飽和モノマーを包含するものとする。上記メチロール基含有重合性不飽和モノマーとしては、N−(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N−(n−ブトキシメチル)(メタ)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
【0101】
前記アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン及びγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランを好適に使用することができる。
【0102】
前記イソシアナト基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネートを好適に使用することができる。
【0103】
官能基を有する重合性不飽和モノマー(c−8)の使用割合は、形成塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)及び重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)の合計質量を基準として、一般に0.1〜60質量%、特に1〜30質量%、さらに特に2〜20質量%の範囲内であることが好適である。
【0104】
重合性不飽和モノマー(c−9)は、重合性不飽和モノマー(c−8)中の官能基と相補的に反応可能な官能基を有する重合性不飽和モノマーであり、具体的には、例えば、重合性不飽和モノマー(c−8)としてエポキシ基含有重合性不飽和モノマーを使用する場合には、重合性不飽和モノマー(c−9)として、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを使用することができる。該カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、アクリル酸又はメタクリル酸を使用することが好ましい。
【0105】
また、重合性不飽和モノマー(c−8)としてメチロール基含有重合性不飽和モノマーを使用する場合には、重合性不飽和モノマー(c−9)として、例えば、水酸基含有重合性不飽和モノマーを使用することができる。該水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、4−ヒドロキシブチルアクリレートを使用することが好ましい。
【0106】
また、重合性不飽和モノマー(c−8)としてアルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマーを使用する場合には、重合性不飽和モノマー(c−9)として、例えば、水酸基含有重合性不飽和モノマーを使用することができる。該水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、上述の水酸基含有重合性不飽和モノマーが挙げられ、これらはそれぞれ
単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、4−ヒドロキシブチルアクリレートを使用することが好ましい。
【0107】
また、重合性不飽和モノマー(c−8)としてイソシアナト基含有重合性不飽和モノマーを使用する場合には、重合性不飽和モノマー(c−9)として、例えば、水酸基含有重合性不飽和モノマーを使用することができる。該水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、上述の水酸基含有重合性不飽和モノマーが挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、4−ヒドロキシブチルアクリレートを使用することが好ましい。
【0108】
また、本発明において、官能基を有し且つ該官能基が互いに反応し自己架橋する重合性不飽和モノマーは、上記官能基を有する重合性不飽和モノマー(c−8)に含まれるものとする。このような重合性不飽和モノマーとしては、例えば、前記メチロール基含有重合性不飽和モノマーを挙げられる。例えば、官能基を有する重合性不飽和モノマー(c−8)として、該メチロール基含有重合性不飽和モノマーを使用した場合、該メチロール基含有重合性不飽和モノマー中のメチロール基が互いに反応し、自己架橋して、架橋構造を有するシェル部が形成される。この場合、重合性不飽和モノマー(c−8)中の該官能基と相補的に反応可能な官能基を有する重合性不飽和モノマー(c−9)がなくても、架橋構造を有するシェル部を形成せしめることができる。
【0109】
重合性不飽和モノマー(c−8)中の官能基と相補的に反応可能な官能基を有する重合性不飽和モノマー(c−9)の使用割合は、形成塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、重合性不飽和モノマー(c−8)が、前記官能基を有し且つ該官能基が互いに反応し自己架橋する重合性不飽和モノマーを含有する場合は、炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)及び重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)の合計質量を基準として、一般に0〜60質量%、特に1〜30質量%、さらに特に2〜20質量%の範囲内であることが好適である。
【0110】
また、重合性不飽和モノマー(c−8)が、前記官能基を有し且つ官能基が互いに反応し自己架橋する重合性不飽和モノマーを含有しない場合は、重合性不飽和モノマー(c−9)の使用割合は、炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)及び重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)の合計質量を基準として、一般に0.1〜60質量%、特に1〜30質量%、さらに特に2〜20質量%の範囲内であることが好適である。
【0111】
水分散性アクリル樹脂(C)は、上記例示のモノマー成分の全量を反応させて得られる単層型であってもよいし、異なる組成のモノマー成分を段階的に反応させて得られる複層型、例えばコア/シェル型であってもよい。
【0112】
水分散性アクリル樹脂(C)の製造方法としては、特に制限されるものではなく、例えば、乳化剤及び/又は保護コロイドを分散又は溶解した水性媒体中で重合性不飽和モノマーを重合する方法;予め反応器内にて適当な量の重合性不飽和モノマーを重合してシード粒子を形成して、ついで残りの重合性不飽和モノマーを添加して重合するシード重合法;溶剤中でカルボキシル基等の親水性基を含有する重合性不飽和モノマーを必須成分とする重合性不飽和モノマーを溶液重合し、転相乳化した後、必要に応じて脱溶剤する方法;重合中に添加する重合性不飽和モノマーの組成を連続的に変化させるパワーフィード重合法;モノマー分散系に高圧ホモジナイザーや超音波等による強い剪断力を加え、モノマー滴を500nm程度以下に細分化した後、重合によりモノマー滴一粒一粒をポリマー粒子に変えるミニエマルション重合法等を挙げることができる。なかでも、製造安定性の観点から、シード重合法又はミニエマルション重合法を用いることが好ましい。
【0113】
水分散性アクリル樹脂(C)は、一般に10〜5,000nm、好ましくは50〜3,000nm、さらに好ましくは100〜1,000nmの範囲内の平均粒子径を有することが好適である。
【0114】
本明細書において、水分散性アクリル樹脂(C)の平均粒子径は、サブミクロン粒度分布測定装置を用いて、常法により脱イオン水で希釈してから20℃で測定した値である。サブミクロン粒度分布測定装置としては、例えば、「COULTER N4型」(商品名、ベックマン・コールター社製)を用いることができる。
【0115】
水分散性アクリル樹脂(C)が、カルボキシル基等の酸性基を有する場合は、水分散性アクリル樹脂(C)の粒子の機械的安定性を向上させるために、該酸性基を中和剤により中和することが望ましい。該中和剤としては、酸性基を中和できるものであれば特に制限はなく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン、2−(ジメチルアミノ)エタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、トリエチルアミン、アンモニア水等が挙げられる。これらの中和剤は、中和後の水分散性アクリル樹脂(C)の水分散液のpHが約6〜約9の範囲内となるような量で用いることが望ましい。
【0116】
水分散性アクリル樹脂(C)としては、形成塗膜の平滑性、鮮映性、耐水性及び耐チッピング性の観点から、なかでも、炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)60〜100質量%及び重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)0〜40質量%からなるモノマー成分を重合することにより得られる重合体(I)のコア部と、炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−3)45〜100質量%及び重合性不飽和モノマー(c−3)以外の重合性不飽和モノマー(c−4)0〜55質量%からなるモノマー成分を重合することにより得られる重合体(II)のシェル部から構成されるコア/シェル型構造を有する水分散性アクリル樹脂(C1)を使用することが、好ましい。
【0117】
水分散性アクリル樹脂(C1)において、重合体(I)のコア部を形成せしめるために使用される炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)としては、炭素数6〜18、特に炭素数8〜13のアルキル基を有する重合性不飽和モノマーが好ましい。なかでも、得られる塗膜の平滑性の観点から、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルメタクリレート、トリデシルメタクリレートが好ましく、2−エチルヘキシルアクリレートがさらに好ましい。
【0118】
また、水分散性アクリル樹脂(C1)において、炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)の使用割合は、形成塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)及び重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)の合計質量を基準として、一般に60〜100質量%、特に80〜100質量%、さらに特に90〜100質量%の範囲内であることが好適である。
【0119】
水分散性アクリル樹脂(C1)において、重合体(I)のコア部を形成せしめるために使用される、炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)としては、前記水分散性アクリル樹脂(C)の説明において記載した重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)の中から適宜選択して使用することができる。
【0120】
水分散性アクリル樹脂(C1)において、重合体(II)のシェル部を形成せしめるために使用される炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−3)と
しては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートを挙げることができる。これらの重合性不飽和モノマーは、それぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、形成塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、メチルメタクリレート及び/又はエチルメタクリレートを用いるのが好ましく、メチルメタクリレートを用いることが特に好ましい。
【0121】
また、水分散性アクリル樹脂(C1)において、炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−3)の使用割合は、形成塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−3)及び重合性不飽和モノマー(c−3)以外の重合性不飽和モノマー(c−4)の合計質量を基準として、一般に45〜100質量%、特に60〜98質量%、さらに特に70〜95質量%の範囲内であることが好適である。
【0122】
重合体(II)のシェル部を形成せしめるために使用される、炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−3)以外の重合性不飽和モノマー(c−4)としては、例えば、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート等のイソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー;アダマンチル(メタ)アクリレート等のアダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー;トリシクロデセニル(メタ)アクリレート等のトリシクロデセニル基を有する重合性不飽和モノマー;ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香環含有重合性不飽和モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等のフッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー;マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー;N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等のビニル化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物、該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、アリルアルコ−ル、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等の重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリル
アミド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物等の含窒素重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの重合性不飽和モノマーは、それぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0123】
重合性不飽和モノマー(c−3)以外の重合性不飽和モノマー(c−4)は、少なくともその一部として、水酸基含有重合性不飽和モノマー(c−10)を含有することが好ましい。
【0124】
水酸基含有重合性不飽和モノマー(c−10)は、得られる水分散性アクリル樹脂(C1)に、硬化剤(B)と架橋反応する水酸基を付与し、それによって形成塗膜の耐水性等を向上させると共に、水分散性アクリル樹脂(C1)の水性媒体中における安定性を向上せしめる機能を有する。
【0125】
水酸基含有重合性不飽和モノマー(c−10)としては、例えば、前記重合性不飽和モノマー(c−3)以外の重合性不飽和モノマー(c−4)の説明で例示した水酸基含有重合性不飽和モノマーの中から適宜選択して使用することができる。これらのモノマーは、それぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0126】
水酸基含有重合性不飽和モノマー(c−10)としては、形成塗膜の平滑性、鮮映性及び耐水性の観点から、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましく、特に2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0127】
重合性不飽和モノマー(c−3)以外の重合性不飽和モノマー(c−4)が水酸基含有重合性不飽和モノマー(c−10)を含有する場合、水酸基含有重合性不飽和モノマー(c−10)の使用割合は、水分散性アクリル樹脂(C1)の水性媒体中における安定性及び形成塗膜の耐水性の観点から、炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−3)及び重合性不飽和モノマー(c−3)以外の重合性不飽和モノマー(c−4)の合計質量を基準として、一般に1〜60質量%、特に2〜50質量%、さらに特に3〜40質量%の範囲内であることが好ましい。
【0128】
また、重合性不飽和モノマー(c−3)以外の重合性不飽和モノマー(c−4)は、少なくともその一部として、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(c−11)を含有することができる。
【0129】
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(c−11)としては、例えば、重合性不飽和モノマー(c−3)以外の重合性不飽和モノマー(c−4)の説明で例示したカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーの中から適宜選択して使用することができる。これらのモノマーは、それぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を用いることが好ましい。
【0130】
重合性不飽和モノマー(c−3)以外の重合性不飽和モノマー(c−4)がカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(c−11)を含有する場合、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(c−11)の使用割合は、水分散性アクリル樹脂(C1)の水性媒体中
における安定性の観点から、炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−3)及び重合性不飽和モノマー(c−3)以外の重合性不飽和モノマー(c−4)の合計質量を基準として、一般に1〜30質量%、特に2〜20質量%、さらに特に3〜15質量%であることが好ましい。
【0131】
また、水分散性アクリル樹脂(C1)は、形成塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、重合体(I)のコア部及び/又は重合体(II)のシェル部が架橋構造を有することが好ましい。
【0132】
重合体(I)のコア部に架橋構造を導入する方法としては、例えば、重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)の一部として重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー(c−7)を使用する方法;重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)の一部として官能基を有する重合性不飽和モノマー(c−8)及び該重合性不飽和モノマー(c−8)中の該官能基と相補的に反応可能な官能基を有する重合性不飽和モノマー(c−9)を使用する方法等が挙げられる。なかでも、重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)の一部として、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー(c−7)を使用することにより架橋構造を導入することが好ましい。
【0133】
水分散性アクリル樹脂(C1)において、重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)の一部として、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー(c−7)を使用する場合、その使用割合は、形成塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)及び重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)の合計質量を基準として、一般に0.1〜30質量%、特に0.5〜15質量%、さらに特に1〜8質量%の範囲内であることが好ましい。
【0134】
水分散性アクリル樹脂(C1)において、重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)の一部として、官能基を有する重合性不飽和モノマー(c−8)を使用する場合、その使用割合は、得られる塗膜の平滑性及び鮮映性を向上させる観点から、炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)及び重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)の合計質量を基準として、一般に0.1〜60質量%、特に1〜30質量%、さらに特に2〜20質量%の範囲内であることが好適である。
【0135】
水分散性アクリル樹脂(C1)において、重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)の一部として、重合性不飽和モノマー(c−8)中の官能基と相補的に反応可能な官能基を有する重合性不飽和モノマー(c−9)を使用する場合、その使用割合は、形成塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、重合性不飽和モノマー(c−8)が、前記の官能基を有し且つ該官能基が互いに反応し自己架橋する重合性不飽和モノマーを含有する場合は、炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)及び重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)の合計質量を基準として、一般に0〜60質量%、特に1〜30質量%、さらに特に2〜20質量%の範囲内であることが好適である。
【0136】
また、重合性不飽和モノマー(c−8)が、前記官能基を有し且つ官能基が互いに反応し自己架橋する重合性不飽和モノマーを含有しない場合、上記重合性不飽和モノマー(c−9)の使用割合は、形成塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)及び重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)の合計質量を基準として、一般に0.1〜60質量%
、特に1〜30質量%、さらに特に2〜20質量%の範囲内であることが好適である。
【0137】
また、重合体(II)のシェル部に架橋構造を導入する方法としては、例えば、重合性不飽和モノマー(c−3)以外の重合性不飽和モノマー(c−4)の一部として重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー(c−7)を使用する方法;重合性不飽和モノマー(c−3)以外の重合性不飽和モノマー(c−4)の一部として前記官能基を有する重合性不飽和モノマー(c−8)及び該重合性不飽和モノマー(c−8)中の該官能基と相補的に反応可能な官能基を有する重合性不飽和モノマー(c−9)を使用する方法等が挙げられる。なかでも、重合性不飽和モノマー(c−3)以外の重合性不飽和モノマー(c−4)の一部として、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー(c−7)を使用することにより架橋構造を導入することが好ましい。
【0138】
水分散性アクリル樹脂(C1)において、重合性不飽和モノマー(c−3)以外の重合性不飽和モノマー(c−4)の一部として、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー(c−7)を使用する場合、その使用割合は、形成塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−3)及び重合性不飽和モノマー(c−3)以外の重合性不飽和モノマー(c−4)の合計質量を基準として、一般に0.1〜30質量%、特に0.5〜15質量%、特に1〜8質量%の範囲内であることが好ましい。
【0139】
水分散性アクリル樹脂(C1)において、重合性不飽和モノマー(c−3)以外の重合性不飽和モノマー(c−4)の一部として、官能基を有する重合性不飽和モノマー(c−8)を使用する場合、その使用割合は、形成塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−3)及び重合性不飽和モノマー(c−3)以外の重合性不飽和モノマー(c−4)の合計質量を基準として、一般に0.1〜55質量%、特に1〜30質量%、さらに特に2〜20質量%の範囲内であることが好適である。
【0140】
水分散性アクリル樹脂(C1)において、重合性不飽和モノマー(c−3)以外の重合性不飽和モノマー(c−4)の一部として、重合性不飽和モノマー(c−8)中の官能基と相補的に反応可能な官能基を有する重合性不飽和モノマー(c−9)を使用する場合、その使用割合は、得られる塗膜の平滑性及び鮮映性を向上させる観点から、重合性不飽和モノマー(c−8)が、前記の官能基を有し且つ該官能基が互いに反応し自己架橋する重合性不飽和モノマーを含有する場合は、炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−3)及び重合性不飽和モノマー(c−3)以外の重合性不飽和モノマー(c−4)の合計質量を基準として、一般に0〜54.9質量%、特に1〜30質量%、さらに特に2〜20質量%の範囲内であることが好適である。また、上記重合性不飽和モノマー(c−8)が、前記の官能基を有し且つ官能基が互いに反応し自己架橋する重合性不飽和モノマーを含有しない場合、重合性不飽和モノマー(c−9)の使用割合は、炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−3)及び重合性不飽和モノマー(c−3)以外の重合性不飽和モノマー(c−4)の合計質量を基準として、一般に0.1〜54.9質量%、特に1〜30質量%、さらに特に2〜20質量%の範囲内であることが好適である。
【0141】
水分散性アクリル樹脂(C1)における重合体(I)/重合体(II)の割合は、塗膜の平滑性の観点から、固形分質量比で、一般に5/95〜95/5、特に50/50〜90/10、さらに特に65/35〜85/15の範囲内であることが好ましい。
【0142】
水分散性アクリル樹脂(C1)は、形成塗膜の耐水性等の観点から、一般に1〜150mgKOH/g、特に2〜100mgKOH/g、さらに特に5〜60mgKOH/g、
なかでも特に10〜40mgKOH/gの範囲内の水酸基価を有することが好ましい。
【0143】
水分散性アクリル樹脂(C1)は、また、形成塗膜の平滑性及び鮮映性等の観点から、一般に0〜50mgKOH/g、特に0〜20mgKOH/gの範囲内、なかでも特に0mgKOH/g以上でかつ10mgKOH/g未満の酸価を有することが好ましい。
【0144】
本発明の方法においては、形成塗膜の平滑性及び鮮映性等の観点から、炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)及び重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)を重合することにより得られる重合体(I)は、一般に−65〜−10℃、特に−60〜−20℃、さらに特に−55〜−40℃の範囲内のガラス転移温度(Tg)を有することが好適である。また、炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−3)及び重合性不飽和モノマー(c−3)以外の重合性不飽和モノマー(c−4)を重合することにより得られる重合体(II)は、一般に−55〜150℃、特に−10〜120℃、さらに特に10〜110℃の範囲内のガラス転移温度(Tg)を有することが好適である。そして、TgがTgよりも高く、且つTgとTgの差が、一般に5〜200℃、特に30〜180℃、さらに特に50〜160℃の範囲内にあることが好適である。
【0145】
本発明において、ガラス転移温度T(絶対温度)は、下記式により算出される値である。
1/Tg=W/T+W/T+・・・W/T
式中、W、W、・・・Wは各モノマーの質量分率であり、T、T・・・T
は各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度(絶対温度)である。
なお、各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度は、POLYMER HANDBOOK Fourth Edition,J.Brandrup,E.h.Immergut,E.A.Grulke編(1999年)による値であり、該文献に記載されていないモノマーのガラス転移温度は、該モノマーのホモポリマーを重量平均分子量が50,000程度になるようにして合成し、そのガラス転移温度を示差走査型熱量計により測定したときの値を使用する。
【0146】
水分散性アクリル樹脂(C1)は、例えば、炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)60〜100質量%及び重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)0〜40質量%を含有するモノマー混合物を乳化重合し、得られる重合体(I)を含むエマルション中に、炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−3)45〜100質量%及び重合性不飽和モノマー(c−3)以外の重合性不飽和モノマー(c−4)0〜55質量%を含有するモノマー混合物を添加し、さらに乳化重合することにより重合体(II)を生成せしめることによって調製することができる。
【0147】
重合体(I)のエマルションを調製するための乳化重合は、例えば、シード重合法、ミニエマルション重合法等のそれ自体既知の方法により行うことができ、例えば、乳化剤の存在下で、重合開始剤を使用してモノマー混合物を乳化重合することにより行うことができる。
【0148】
上記乳化剤としてはアニオン系乳化剤又はノニオン系乳化剤が好適であり、該アニオン系乳化剤としては、例えば、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルリン酸等のナトリウム塩やアンモニウム塩が挙げられ、ノニオン系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキ
シエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等が挙げられる。また、1分子中にアニオン性基とポリオキシエチレン基やポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基を有するポリオキシアルキレン基含有アニオン性乳化剤や、1分子中に該アニオン性基と重合性不飽和基とを有する反応性アニオン性乳化剤を使用することもできる。
【0149】
上記乳化剤の使用量は、使用される全モノマーの合計質量を基準にして、通常0.1〜15質量%、特に0.5〜10質量%、さらに特に1〜5質量%の範囲内が好ましい。
【0150】
前記重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキシド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキシド、ステアロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert−ブチルパーオキシアセテート、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビス(2−メチルプロピオンニトリル)、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、4、4’−アゾビス(4−シアノブタン酸)、ジメチルアゾビス(2−メチルプロピオネート)、アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]−プロピオンアミド}等のアゾ化合物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩等が挙げられる。これらの重合開始剤はそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて用いることができる。また、上記重合開始剤に、必要に応じて、例えば、糖、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、鉄錯体等の還元剤を併用して、レドックス開始剤としてもよい。
【0151】
上記重合開始剤の使用量は、使用される全モノマーの合計質量を基準にして、通常0.1〜5質量%程度、好ましくは0.2〜3質量%程度とすることができる。該重合開始剤の添加方法は、特に制限されるものではなく、その種類及び量等に応じて適宜選択することができる。例えば、予めモノマー混合物又は水性媒体に含ませてもよく、或いは重合時に一括して添加してもよく又は滴下してもよい。
【0152】
また、前記モノマー混合物は、得られる水分散性アクリル樹脂(C1)の分子量を調整する目的で、連鎖移動剤を含んでいてもよい。該連鎖移動剤としては、メルカプト基を有する化合物が包含され、具体的には例えば、ラウリルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、2−メチル−5−tert−ブチルチオフェノール、メルカプトエタノール、チオグリセロール、メルカプト酢酸(チオグリコール酸)、メルカプトプロピオネート、n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート等が挙げられる。該連鎖移動剤を使用する場合、その使用量は、使用される全モノマーの合計質量を基準にして、通常0.05〜10質量%、特に0.1〜5質量%の範囲内が好適である。
【0153】
前記モノマー混合物には、必要に応じて、例えば、ヘキサデカン等の長鎖飽和炭化水素系溶剤、ヘキサデカノール等の長鎖アルコール系溶剤等の有機溶剤を配合してもよい。
【0154】
水分散性アクリル樹脂(C1)は、上記で得られる重合体(I)のエマルションに、炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−3)及び重合性不飽和モノマー(c−3)以外の重合性不飽和モノマー(c−4)からなるモノマー混合物を添加し、さらに重合させて重合体(II)を形成せしめることによって得ることができる。
【0155】
上記重合体(II)を形成せしめるためのモノマー混合物は、必要に応じて、前記乳化剤、重合開始剤、還元剤、連鎖移動剤等の成分を適宜含有することができる。また、当該モノマー混合物は、そのまま滴下することもできるが、該モノマー混合物を水性媒体に分散して得られるモノマー乳化物として滴下することが望ましい。この場合におけるモノマー乳化物の粒子径は特に制限されるものではない。
【0156】
重合体(II)を形成せしめるためのモノマー混合物の重合方法としては、例えば、該モノマー混合物又はその乳化物を、上記重合体(I)のエマルションに一括で又は徐々に添加し、攪拌しながら適当な温度に加熱する方法が挙げられる。
【0157】
かくして得られる水分散性アクリル樹脂(C1)は、通常、炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)及び重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)からなるモノマー混合物の重合体(I)をコア部とし、炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−3)及び重合性不飽和モノマー(c−3)以外の重合性不飽和モノマー(c−4)からなるモノマー混合物の重合体(II)をシェル部とする複層構造を有する。
【0158】
また、水分散性アクリル樹脂(C1)は、上記重合体(I)を得る工程と重合体(II)を得る工程の間に、他の樹脂層を形成せしめる重合性不飽和モノマー(1種または2種以上の混合物)を供給して乳化重合を行なう工程を追加することによって、3層またはそれ以上の層からなる水分散性アクリル樹脂としてもよい。
【0159】
なお、本発明において、水分散性アクリル樹脂(C1)の「シェル部」は樹脂粒子の最外層に存在する重合体層を意味し、「コア部」は上記シェル部を除く樹脂粒子内層の重合体層を意味し、「コア/シェル型構造」は上記コア部とシェル部を有する構造を意味するものである。上記コア/シェル型構造は、通常、コア部がシェル部に完全に被覆された層構造が一般的であるが、コア部とシェル部の質量比率等によっては、シェル部のモノマー量が層構造を形成せしめるのに不十分な場合もあり得る。そのような場合は、上記のような完全な層構造である必要はなく、コア部の一部をシェル部が被覆した構造であってもよく、あるいはコア部の一部にシェル部の構成要素である重合性不飽和モノマーがグラフト重合した構造であってもよい。また、上記コア/シェル型構造における多層構造の概念は、本発明の水分散性アクリル樹脂(C1)においてコア部に多層構造が形成される場合にも同様に当てはまるものとする。
【0160】
本発明の複層塗膜形成方法において、水性第1着色塗料(X)が上記コア/シェル型構造を有する水分散性アクリル樹脂(C1)を含有することにより、平滑性、鮮映性、耐水性及び耐チッピング性に優れた塗膜を形成できる理由は、正確にはわからないが、水性第1着色塗料(X)中の上記水分散性アクリル樹脂(C1)が、コア部に比較的長鎖のアルキル基を有することにより、適度な疎水性を有する未硬化の第1着色塗膜が形成されるため、該第1着色塗膜上に水性第2着色塗料を塗装した際の両塗膜間の混層が抑制されて塗膜の平滑性及び鮮映性が向上し、また、該アルキル基によって、形成される複層塗膜への水の浸透が抑制されて塗膜の耐水性が向上し、さらに、該アルキル基によって、水分散性アクリル樹脂(C1)が適度な柔軟性を有することにより、形成塗膜に加えられる衝撃が吸収されるため、塗膜の耐チッピング性が向上することが推察される。また、水分散性アクリル樹脂(C1)がシェル部に比較的短鎖のアルキル基を有することにより、水分散性アクリル樹脂(C1)が水性第1着色塗料(X)中に均一に分散されるため、塗膜の平滑性が向上することが推察される。
【0161】
水性第1着色塗料(X)
本発明の複層塗膜形成方法において使用される水性第1着色塗料(X)は、以上に述べ
た水酸基含有ポリエステル樹脂(A)、硬化剤(B)及び水分散性アクリル樹脂(C)を含有する水性塗料組成物である。
【0162】
水性第1着色塗料(X)における水酸基含有ポリエステル樹脂(A)、硬化剤(B)及び水分散性アクリル樹脂(C)の配合割合は、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)及び硬化剤(B)の合計100質量部を基準として、下記の範囲内であることができる。
水酸基含有ポリエステル樹脂(A):一般に20〜95質量部、好ましくは40〜90質量部、さらに好ましくは50〜80質量部、
硬化剤(B):一般に5〜80質量部、好ましくは10〜60質量部、さらに好ましくは20〜50質量部、
水分散性アクリル樹脂(C):一般に1〜100質量部、好ましくは5〜70質量部、さらに好ましくは10〜50質量部。
【0163】
水性第1着色塗料(X)は、上記水酸基含有ポリエステル樹脂(A)の他に、水溶性もしくは水分散性のアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等の改質用樹脂を含有することができる。これらの改質用樹脂は、例えば、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等の架橋性官能基を有することが好ましい。
【0164】
上記改質用樹脂としては、鮮映性、耐水性及び耐チッピング性向上の点から、アクリル樹脂及び/又はポリウレタン樹脂を使用することが好ましい。
【0165】
上記アクリル樹脂としては、水酸基含有アクリル樹脂を好適に使用することができる。該水酸基含有アクリル樹脂は、通常、水酸基含有重合性不飽和モノマー及び該水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーを、それ自体既知の方法、例えば、有機溶媒中での溶液重合法、水中でのエマルション重合法等の方法により共重合せしめることによって製造することができる。
【0166】
上記水酸基含有重合性不飽和モノマーは、1分子中に水酸基及び重合性不飽和結合をそれぞれ少なくとも1個有する化合物であって、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物;該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド;アリルアルコール、さらに、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0167】
前記水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーとしては、水酸基含有アクリル樹脂に望まれる特性に応じて適宜選択して使用することができる。該モノマーの具体例を以下に列挙する。これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
(i) アルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート: 例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等。
(ii) イソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー: 例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート等。
(iii) アダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー: 例えば、アダマンチル(メタ)アクリレート等。
(iv) トリシクロデセニル基を有する重合性不飽和モノマー: 例えば、トリシクロデセニル(メタ)アクリレート等。
(v) 芳香環含有重合性不飽和モノマー: 例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等。
(vi) アルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー: 例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等。
(vii) フッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー: 例えば、パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等。
(viii) マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー。
(ix) ビニル化合物: 例えば、N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等。
(x) リン酸基含有重合性不飽和モノマー: 例えば、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート等。
(xi) カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー: 例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等。
(xii) 含窒素重合性不飽和モノマー: 例えば、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物等。
(xiii) 重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する重合性不飽和モノマー: 例えば、アリル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等。
(xiv) エポキシ基含有重合性不飽和モノマー: 例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等。
(xv) 分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート。
(xvi) スルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー: 例えば、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、アリルスルホン酸、4−スチレンスルホン酸等;これらスルホン酸のナトリウム塩及びアンモニウム塩等。
(xvii) 紫外線吸収性官能基を有する重合性不飽和モノマー: 例えば、2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2' −ジヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2' −ジヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−(2' −ヒドロキシ−5' −メタク
リロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等。
(xviii) 光安定性重合性不飽和モノマー: 例えば、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等。
(xix) カルボニル基を有する重合性不飽和モノマー: 例えば、アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等。
【0168】
水酸基含有アクリル樹脂としては、その一部として、該樹脂中の水酸基の一部にポリイソシアネート化合物をウレタン化反応により伸長させ高分子量化した、いわゆるウレタン変性アクリル樹脂を併用することもできる。
【0169】
水酸基含有アクリル樹脂は、貯蔵安定性や形成塗膜の耐水性等の観点から、一般に1〜200mgKOH/g、特に2〜100mgKOH/g、さらに特に5〜60mgKOH/gの範囲内の水酸基価を有することが好適である。また、水酸基含有アクリル樹脂は、形成塗膜の耐水性等の観点から、一般に1〜200mgKOH/g、特に2〜150mgKOH/g、さらに特に5〜80mgKOH/gの範囲内の酸価を有することが好適である。
【0170】
さらに、水酸基含有アクリル樹脂は、形成塗膜の外観、耐水性等の観点から、一般に2,000〜5,000,000、特に10,000〜3,500,000、さらに特に100,000〜2,000,000の範囲内の重量平均分子量を有することが好適である。
【0171】
水性第1着色塗料(X)が、上記水酸基含有アクリル樹脂を含有する場合、該水酸基含有アクリル樹脂の含有量は、水性第1着色塗料(X)中の、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)、硬化剤(B)及び水分散性アクリル樹脂(C)の合計100質量部を基準として、一般に1〜80質量部、好ましくは5〜70質量部、さらに好ましくは10〜50質量部の範囲内であることができる。
【0172】
前記ポリウレタン樹脂としては、例えば、脂肪族および/又は脂環式ジイソシアネート、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール及びポリカーボネートジオールから選ばれる少なくとも1種のジオール、低分子量ポリヒドロキシ化合物及びジメタノールアルカン酸を反応させてウレタンプレポリマーを作製し、これを第3級アミンで中和し、水中に乳化分散させた後、必要に応じてポリアミン等の鎖伸長剤、架橋剤及び/又は停止剤を含む水性媒体と混合して、イソシアネート基が実質的に無くなるまで反応させてなるものを挙げることができる。上記方法により、通常、平均粒径が約0.001〜約3μmの自己乳化型のポリウレタン樹脂を得ることができる。また、上記ポリウレタン樹脂の市販品としては、例えば、「ユーコートUX−5000」、「ユーコートUX−8100」(以上商品名、三洋化成工業社製)等を挙げることができる。
【0173】
水性第1着色塗料(X)が、上記ポリウレタン樹脂を含有する場合、該ポリウレタン樹脂の含有量は、水性第1着色塗料(X)中の、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)、硬化剤(B)及び水分散性アクリル樹脂(C)の合計100質量部を基準として、一般に1〜
80質量部、好ましくは5〜70質量部、さらに好ましくは10〜50質量部の範囲内であることができる。
【0174】
水性第1着色塗料(X)は、さらに、顔料(D)を含有することが好ましい。顔料(D)としては、例えば、着色顔料、体質顔料、光輝性顔料等を挙げることができ、顔料(D)はそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0175】
水性第1着色塗料(X)が、顔料(D)を含有する場合、顔料(D)の含有量は、水性第1着色塗料(X)中の、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)、硬化剤(B)及び水分散性アクリル樹脂(C)の合計100質量部を基準として、一般に1〜200質量部、好ましくは20〜150質量部、さらに好ましくは50〜120質量部の範囲内であることができる。なかでも、水性第1着色塗料(X)が着色顔料及び/又は体質顔料を含有し、該着色顔料及び体質顔料の合計含有量が、水性第1着色塗料(X)中の水酸基含有ポリエステル樹脂(A)、硬化剤(B)及び水分散性アクリル樹脂(C)の合計100質量部を基準として、一般に40〜150質量部、特に50〜130質量部、さらに特に65〜110質量部の範囲内であることが好適である。
【0176】
上記着色顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサジン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料等が挙げられ、なかでも、酸化チタン、カーボンブラックを好適に使用することができる。
【0177】
水性第1着色塗料(X)が上記着色顔料を含有する場合、該着色顔料の含有量は、水性第1着色塗料(X)中の水酸基含有ポリエステル樹脂(A)、硬化剤(B)及び水分散性アクリル樹脂(C)の合計100質量部を基準として、通常1〜120質量部、好ましくは3〜100質量部、さらに好ましくは5〜90質量部の範囲内であることができる。
【0178】
また、前記体質顔料としては、例えば、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナホワイト等が挙げられ、なかでも、硫酸バリウム及び/又はタルクを使用することが好ましい。平滑性に優れ、水性第2着色塗料(Y)として光輝性顔料を含有する塗料を使用する場合に、フリップフロップ性が高く、メタリックムラの少ない優れた外観を有する複層塗膜を得られるため、上記体質顔料として、平均一次粒子径が1μm以下の硫酸バリウム、特に平均一次粒子径が0.01〜0.8μmの範囲内である硫酸バリウムを含有することが好適である。
【0179】
なお、本発明における硫酸バリウムの平均一次粒子径は、硫酸バリウムを走査型電子顕微鏡で観察し、電子顕微鏡写真上に無作為に引いた直線上にある硫酸バリウム粒子20個の最大径を平均した値である。
【0180】
水性第1着色塗料(X)が上記体質顔料を含有する場合、該体質顔料の含有量は、水性第1着色塗料(X)中の水酸基含有ポリエステル樹脂(A)、硬化剤(B)及び水分散性アクリル樹脂(C)の合計100質量部を基準として、通常1〜120質量部、好ましくは5〜100質量部、さらに好ましくは10〜80質量部の範囲内であることができる。
【0181】
また、前記光輝性顔料としては、例えば、アルミニウム(蒸着アルミニウムを含む)、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタンや酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタンや酸化鉄で被覆された雲母、ガラスフレーク、ホログラム顔料等を挙げることができ、これらの光輝性顔料は、それぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。アルミニウム顔料には、ノンリーフィング型アル
ミニウムとリーフィング型アルミニウムがあるが、いずれも使用できる。
【0182】
水性第1着色塗料(X)が上記光輝性顔料を含有する場合、該光輝性顔料の含有量は、水性第1着色塗料(X)中の水酸基含有ポリエステル樹脂(A)、硬化剤(B)及び水分散性アクリル樹脂(C)の合計100質量部を基準として、通常1〜50質量部、好ましくは2〜30質量部、さらに好ましくは3〜20質量部の範囲内であることができる。
【0183】
水性第1着色塗料(X)は、形成塗膜の平滑性及び鮮映性向上の観点から、さらに、疎水性溶媒(E)を含有することが好ましい。
【0184】
該疎水性溶媒(E)としては、20℃において、100gの水に溶解する質量が10g以下、好ましくは5g以下、より好ましくは1g以下の有機溶媒であるのが望ましい。かかる有機溶媒としては、例えば、ゴム揮発油、ミネラルスピリット、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の炭化水素系溶媒;1−ヘキサノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−デカノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等のアルコール系溶媒;酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、酢酸メチルアミル、酢酸エチレングリコールモノブチルエーテル等のエステル系溶媒;メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エチルn−アミルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶媒を挙げることができる。これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0185】
疎水性溶媒(E)としては、アルコール系疎水性溶媒を用いることが好ましい。なかでも、炭素数7〜14のアルコール系疎水性溶媒が好ましく、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルコール系疎水性溶媒がさらに好ましい。
【0186】
水性第1着色塗料(X)が、疎水性溶媒(E)を含有する場合、その含有量は、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)、硬化剤(B)及び水分散性アクリル樹脂(C)の合計固形分100質量部を基準にして、一般に2〜50質量部、特に5〜40質量部、さらに特に8〜30質量部の範囲内であることが好ましい。
【0187】
また、水性第1着色塗料(X)は、形成塗膜の平滑性及び鮮映性向上の観点から、さらに、下記一般式(1)
【0188】
【化1】

【0189】
式中、R及びRは独立して炭素数4〜18の炭化水素基を表し、Rは炭素数2〜
4のアルキレン基を表し、mは3〜25の整数を表し、m個のRは同一でも異なって
いてもよい、
で示されるジエステル化合物(F)を含有することができる。
【0190】
上記炭化水素基としては、炭素数5〜11のアルキル基が好ましく、炭素数5〜9のアルキル基がより好ましく、炭素数6〜8のアルキル基がさらに好ましい。特に、上記R及びRが炭素数6〜8の分岐状のアルキル基である場合、塗料を比較的長期間貯蔵した後に塗装した場合にも、形成塗膜に優れた平滑性及び鮮映性を付与することができる。
【0191】
上記ジエステル化合物(F)は、例えば、2個の末端水酸基を有するポリオキシアルキレングリコールと、炭素数4〜18の炭化水素基を有するモノカルボン酸をジエステル化反応させることにより得ることができる。
【0192】
上記ポリオキシアルキレングリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体、ポリブチレングリコール等を挙げることができる。この中でも特に、ポリエチレングリコールを用いることが好ましい。これらのポリオキシアルキレングリコールは一般に100〜1,200、特に150〜600、さらに特に200〜400の範囲内の数平均分子量を有することが好適である。
【0193】
また、前記炭素数4〜18の炭化水素基を有するモノカルボン酸としては、例えば、ペンタン酸、ヘキサン酸、2−エチルブタン酸、3−メチルペンタン酸、安息香酸、シクロヘキサンカルボン酸、ヘプタン酸、2−エチルペンタン酸、3−エチルペンタン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、4−エチルヘキサン酸、ノナン酸、2−エチルヘプタン酸、デカン酸、2−エチルオクタン酸、4−エチルオクタン酸、ドデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸等を挙げることができる。なかでも、ヘキサン酸、ヘプタン酸、2−エチルペンタン酸、3−エチルペンタン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、4−エチルヘキサン酸、ノナン酸、2−エチルヘプタン酸、デカン酸、2−エチルオクタン酸、4−エチルオクタン酸等の炭素数5〜9のアルキル基を有するモノカルボン酸が好ましく、ヘプタン酸、2−エチルペンタン酸、3−エチルペンタン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、4−エチルヘキサン酸、ノナン酸、2−エチルヘプタン酸等の炭素数6〜8のアルキル基を有するモノカルボン酸がより好ましく、2−エチルペンタン酸、3−エチルペンタン酸、2−エチルヘキサン酸、4−エチルヘキサン酸、2−エチルヘプタン酸等の炭素数6〜8の分岐状のアルキル基を有するモノカルボン酸がさらに好ましい。
【0194】
上記ポリオキシアルキレングリコールと炭素数4〜18の炭化水素基を有するモノカルボン酸とのジエステル化反応はそれ自体既知の方法で行なうことができる。上記ポリオキシアルキレングリコール及び炭素数4〜18の炭化水素基を有するモノカルボン酸はそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。得られるジエステル化合物(F)は、一般に320〜1,400、特に450〜1,000、さらに特に500〜800、より一層特に500〜700の範囲内の分子量を有することが好適である。
【0195】
水性第1着色塗料(X)が、ジエステル化合物(F)を含有する場合、その含有量は、水性被膜形成性樹脂(A)、硬化剤(B)及び架橋樹脂粒子(C)の合計固形分100質量部を基準にして、一般に1〜30質量部、特に3〜20質量部、さらに特に5〜15質量部の範囲内にあることが好ましい。
【0196】
また、水性第1着色塗料(X)は、必要に応じて、増粘剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、上記疎水性溶媒(E)以外の有機溶剤、表面調整剤、沈降防止剤等の塗料用添加剤を含有することが出来る。
【0197】
上記増粘剤としては、例えば、ケイ酸塩、金属ケイ酸塩、モンモリロナイト、コロイド状アルミナ等の無機系増粘剤;(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、ポリアクリル酸ソーダ等のポリアクリル酸系増粘剤;1分子中に親水性部分と疎
水性部分を有し、水性媒体中において、該疎水性部分が塗料中の顔料やエマルション粒子の表面に吸着したり、該疎水性部分同士が会合したりすることにより効果的に増粘作用を示す会合型増粘剤;カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の繊維素誘導体系増粘剤;カゼイン、カゼイン酸ソーダ、カゼイン酸アンモニウム等のタンパク質系増粘剤;アルギン酸ソーダ等のアルギン酸系増粘剤;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルベンジルエーテル共重合体等のポリビニル系増粘剤;プルロニックポリエーテル、ポリエーテルジアルキルエステル、ポリエーテルジアルキルエーテル、ポリエーテルエポキシ変性物等のポリエーテル系増粘剤;ビニルメチルエーテル−無水マレイン酸共重合体の部分エステル等の無水マレイン酸共重合体系増粘剤;ポリアマイドアミン塩等のポリアマイド系増粘剤等が挙げられる。これらの増粘剤は、それぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0198】
上記ポリアクリル酸系増粘剤としては、市販品を使用することができ、市販品の商品名として、例えば、ロームアンドハース社製の「プライマルASE−60」、「プライマルTT−615」、「プライマルRM−5」(以上、商品名)、サンノプコ社製の「SNシックナー613」、「SNシックナー618」、「SNシックナー630」、「SNシックナー634」、「SNシックナー636」(以上、商品名)等が挙げられる。また、上記会合型増粘剤としては、市販品を使用することができ、市販品の商品名として、例えば、ADEKA社製の「UH−420」、「UH−450」、「UH−462」、「UH−472」、「UH−540」、「UH−752」、「UH−756VF」、「UH−814N」(以上、商品名)、ロームアンドハース社製の「プライマルRM−8W」、「プライマルRM−825」、「プライマルRM−2020NPR」、「プライマルRM−12W」、「プライマルSCT−275」(以上、商品名)、サンノプコ社製の「SNシックナー612」、「SNシックナー621N」、「SNシックナー625N」、「SNシックナー627N」、「SNシックナー660T」(以上、商品名)等が挙げられる。
【0199】
上記増粘剤としては、ポリアクリル酸系増粘剤及び/又は会合型増粘剤を用いるのが好ましく、会合型増粘剤を用いるのがより好ましく、末端に疎水基を有し、分子鎖中にウレタン結合を含有するウレタン会合型増粘剤を用いることが更に好ましい。該ウレタン会合型増粘剤としては、市販品を使用することができ、市販品の商品名として、例えば、ADEKA社製の「UH−420」、「UH−462」、「UH−472」、「UH−540」、「UH−752」、「UH−756VF」、「UH−814N」(以上、商品名)、サンノプコ社製の「SNシックナー612」、「SNシックナー621N」、「SNシックナー625N」、「SNシックナー627N」、「SNシックナー660T」(以上、商品名)等が挙げられる。
【0200】
水性第1着色塗料(X)が、上記増粘剤を含有する場合、該増粘剤の含有量は、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)、硬化剤(B)及び水分散性アクリル樹脂(C)の合計固形分100質量部を基準にして、通常0.01〜10質量部、特に0.05〜3質量部、さらに特に0.1〜2質量部の範囲内であることが好ましい。
【0201】
水性第1着色塗料(X)は、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)、硬化剤(B)及び水分散性アクリル樹脂(C)、ならびに、必要に応じて、顔料(D)、疎水性溶媒(E)、ジエステル化合物(F)及びその他の塗料用添加剤を、それ自体既知の方法により、水性媒体中で、混合、分散することによって調製することができる。また、水性媒体としては、脱イオン水又は脱イオン水と親水性有機溶媒の混合物を使用することができる。親水性有機溶媒としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル等を挙げることができる。
【0202】
水性第1着色塗料(X)は、一般に30〜80質量%、好ましくは40〜70質量%、
さらに好ましくは45〜60質量%の範囲内の固形分濃度を有することができる。
【0203】
水性第1着色塗料(X)は、それ自体既知の方法、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装等により被塗物上に塗装することができ、塗装の際、静電印加を行ってもよい。これらのうち、エアスプレー塗装、回転霧化塗装等の方法が好ましい。
【0204】
水性第1着色塗料(X)の塗布量は、硬化膜厚として、通常5〜70μm、好ましくは10〜50μm、さらに好ましくは約15〜約40μmの範囲内となる量とすることができる。
【0205】
本発明の複層塗膜形成方法において、上記水性第1着色塗料(X)を使用することにより、平滑性、鮮映性、耐水性及び耐チッピング性に優れた塗膜を形成できる理由は、正確にはわからないが、水性第1着色塗料(X)中の水分散性アクリル樹脂(C)が、比較的長鎖のアルキル基を有することにより、適度な疎水性を有する未硬化の第1着色塗膜が形成されるため、該第1着色塗膜上に水性第2着色塗料を塗装した際の両塗膜間の混層が抑制されて平滑性及び鮮映性が向上し、さらに、該アルキル基によって、形成される複層塗膜への水の浸透が抑制されるため耐水性が向上することが推察される。また、水分散性アクリル樹脂(C)が、比較的長鎖のアルキル基を有することにより、適度な柔軟性を有するため、形成塗膜に加えられる衝撃を吸収し、耐チッピング性が向上することが推察される。さらに、形成される塗膜において、上記水分散性アクリル樹脂(C)のすき間に、前記水酸基含有ポリエステル樹脂(A)及び硬化剤(B)による連続層が形成されるため、平滑性及び耐水性が向上することが推察される。
【0206】
工程(2)
以上に述べた工程(1)で形成される水性第1着色塗料(X)の塗膜(以下、「第1着色塗膜」という場合がある)上には、次いで、水性第2着色塗料(Y)が塗装される。
【0207】
ワキ等の塗膜欠陥の発生を防止する観点から、第1着色塗膜は、水性第2着色塗料(Y)を塗装する前に、塗膜が実質的に硬化しない加熱条件でプレヒート(予備加熱)、エアブロー等を行うことが好ましい。プレヒートの温度は、約40〜約100℃、特に約50〜約90℃、さらに特に約60〜約80℃の範囲内が好ましい。プレヒートの時間は、通常30秒間〜15分間程度、特に1〜10分間程度、さらに特に2〜5分間程度が好ましい。また、上記エアブローは、被塗物の塗装面に、通常常温又は25℃〜約80℃の温度に加熱された空気を、30秒間〜15分間程度吹き付けることにより行うことができる。なお、本発明において、未硬化塗膜には、指触乾燥状態の塗膜及び半硬化乾燥状態の塗膜の両者が含まれる。
【0208】
第1着色塗膜は、水性第2着色塗料(Y)を塗装する前に、必要に応じて、上記プレヒート、エアブロー等を行なうことにより、塗膜の固形分含有率が通常60〜100質量%、特に80〜100質量%、さらに特に90〜100質量%の範囲内となるように調整することが好ましい。
【0209】
ここで、塗膜の固形分含有率は以下の方法により測定することができる:
まず、被塗物上に水性第1着色塗料(X)を塗装すると同時に、予め質量(W)を測定しておいたアルミホイル上にも水性第1着色塗料(X)を塗装する。続いて、塗装後、プレヒート等がされた該アルミホイルを水性第2着色塗料(Y)が塗装される直前に回収し、その質量(W)を測定する。次に、回収したアルミホイルを110℃で60分間乾燥し、デシケーター内で室温まで放冷した後、該アルミホイルの質量(W)を測定し、以下の式に従って固形分含有率を求める。
固形分含有率(質量%)={(W−W)/(W−W)}×100
【0210】
第1着色塗膜上に塗装される水性第2着色塗料(Y)は、一般に、被塗物に優れた外観を付与することを目的とするものであって、例えば、カルボキシル基、水酸基等の架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の基体樹脂と、ブロックされていてもよいポリイソシアネート化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂等の硬化剤からなる樹脂成分を、顔料、その他の添加剤と共に水に溶解ないし分散させて塗料化したものを使用することができる。なかでも、基体樹脂として、前記の水酸基含有ポリエステル樹脂(A)及び/又は水酸基含有アクリル樹脂を使用し、硬化剤としてメラミン樹脂を使用する熱硬化型水性塗料を好適に用いることができる。
【0211】
また、上記顔料としては、前記着色顔料、体質顔料、光輝性顔料等を使用することができる。なかでも、水性第2着色塗料(Y)が、上記顔料の少なくとも1種として着色顔料及び/又は光輝性顔料を含有することが好ましい。
【0212】
上記着色顔料としては、例えば、水性第1着色塗料(X)の説明において例示したような、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサジン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料等が挙げられる。
【0213】
水性第2着色塗料(Y)が上記着色顔料を含有する場合、該着色顔料の含有量は、水性第2着色塗料(Y)中の樹脂固形分100質量部を基準として、通常1〜150質量部、特に3〜130質量部、さらに特に5〜110質量部の範囲内であることが好適である。
【0214】
上記光輝性顔料としては、例えば、前記水性第1着色塗料(X)の説明において例示したような、アルミニウム(蒸着アルミニウムを含む)、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタンや酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタンや酸化鉄で被覆された雲母、ガラスフレーク、ホログラム顔料等を挙げることができる。なかでも、アルミニウム、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタンや酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタンや酸化鉄で被覆された雲母を用いることが好ましく、アルミニウムを用いることが特に好ましい。上記光輝性顔料はそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0215】
また、上記光輝性顔料はりん片状であることが好ましい。また、該光輝性顔料としては、長手方向寸法が通常1〜100μm、特に5〜40μmの範囲内、そして厚さが通常0.001〜5μm、特に0.01〜2μmの範囲内にあるものが適している。
【0216】
水性第2着色塗料(Y)が上記光輝性顔料を含有する場合、該光輝性顔料の含有量は、水性第2着色塗料(Y)中の樹脂固形分100質量部を基準として、通常1〜50質量部、特に2〜30質量部、さらに特に3〜20質量部の範囲内であることが好適である。
【0217】
また、水性第2着色塗料(Y)は、前記の疎水性溶媒(E)を含有することが好ましい。疎水性溶媒(E)としては、形成塗膜の光輝感に優れる観点から、アルコール系疎水性溶媒を用いることが好ましい。なかでも、炭素数7〜14のアルコール系疎水性溶媒、例えば、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルコール系疎水性溶媒がさらに好ましい。
【0218】
水性第2着色塗料(Y)が、疎水性溶媒(E)を含有する場合、その含有量は、得られる塗膜の光輝感に優れる観点から、水性第2着色塗料(Y)中の樹脂固形分100質量部を基準として、通常2〜70質量部、特に11〜60質量部、さらに特に16〜50質量部の範囲内であることが好適である。
【0219】
また、水性第2着色塗料(Y)は、さらに必要に応じて、硬化触媒、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、有機溶剤、表面調整剤、沈降防止剤等の通常の塗料用添加剤をそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0220】
水性第2着色塗料(Y)は、それ自体既知の方法、例えば、エアスプレー、エアレススプレー、回転霧化塗装機等により塗装することができ、塗装の際、静電印加を行ってもよい。塗装膜厚は、硬化膜厚で、通常5〜80μm、好ましくは8〜60μm、さらに好ましくは10〜50μmの範囲内とすることができる。
【0221】
工程(3)
本発明の第一の複層塗膜形成方法においては、上記工程(2)で形成される水性第2着色塗料(Y)の塗膜(以下、「第2着色塗膜」という場合がある)上に、クリヤー塗料(Z)が塗装される。
【0222】
ワキ等の塗膜欠陥の発生を防止する観点から、第2着色塗膜は、クリヤー塗料(Z)を塗装する前に、塗膜が実質的に硬化しない加熱条件でプレヒート(予備加熱)、エアブロー等を行うことが好ましい。プレヒートの温度は、通常約40〜約100℃、特に約50〜約90℃、さらに特に約60〜約80℃の範囲内が好ましい。プレヒートの時間は、通常30秒間〜15分間程度、特に1〜10分間程度、さらに特に2〜5分間程度が好ましい。また、上記エアブローは、被塗物の塗装面に、通常、常温又は25℃〜約80℃の温度に加熱された空気を30秒間〜15分間程度吹き付けることにより行うことができる。
【0223】
第2着色塗膜は、クリヤー塗料(Z)を塗装する前に、必要に応じて、上記プレヒート、エアブロー等を行うことにより、塗膜の固形分含有率が通常70〜100質量%、特に80〜100質量%、さらに特に90〜100質量%の範囲内となるように調整することが好ましい。
【0224】
クリヤー塗料(Z)としては、自動車車体等の塗装用としてそれ自体既知の熱硬化性クリヤー塗料組成物をいずれも使用することができる。例えば、架橋性官能基を有する基体樹脂及び架橋剤を含有する有機溶剤型熱硬化性塗料組成物、水性熱硬化性塗料組成物、粉体熱硬化性塗料組成物等を挙げることができる。
【0225】
上記基体樹脂が有する架橋性官能基としては、例えば、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、シラノール基等を挙げることができる。基体樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂等を挙げることができる。架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、カルボキシル基含有化合物、カルボキシル基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、エポキシ基含有化合物等を挙げることができる。
【0226】
クリヤー塗料組成物の基体樹脂/架橋剤の組み合わせとしては、カルボキシル基含有樹脂/エポキシ基含有樹脂、水酸基含有樹脂/ポリイソシアネート化合物、水酸基含有樹脂/ブロック化ポリイソシアネート化合物、水酸基含有樹脂/メラミン樹脂等が好ましい。
【0227】
また、上記クリヤー塗料(Z)は、一液型塗料であってもよいし、二液型ウレタン樹脂
塗料等の多液型塗料であってもよい。
【0228】
また、上記クリヤー塗料(Z)には、必要に応じて、透明性を阻害しない程度に着色顔料、光輝性顔料、染料等を含有させることができ、さらに、体質顔料、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、表面調整剤等を適宜含有せしめることができる。
【0229】
クリヤー塗料(Z)は、水性第2着色塗料(Y)の塗膜面に、それ自体既知の方法、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装等の方法によって塗装することができ、塗装の際、静電印加を行ってもよい。クリヤー塗料(Z)は、硬化膜厚で、通常10〜80μm、好ましくは15〜60μm、より好ましくは20〜50μmの範囲内になるように塗装することができる。
【0230】
また、クリヤー塗料(Z)の塗装後は、必要に応じて、室温で1〜60分間程度のインターバルをおいたり、約40〜約80℃の温度で1〜60分間程度プレヒートすることができる。
【0231】
工程(4)
本発明の第一の複層塗膜形成方法においては、以上に述べた工程(1)〜(3)で形成される未硬化の第1着色塗膜、未硬化の第2着色塗膜及び未硬化のクリヤー塗膜が同時に加熱硬化せしめられる。
【0232】
上記第1着色塗膜、第2着色塗膜及びクリヤー塗膜の硬化は、通常の塗膜の焼付け手段、例えば、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱等により行うことができる。加熱温度は、通常約80〜約180℃、好ましくは約100〜約170℃、さらに好ましくは約120〜約160℃の範囲内とすることができる。加熱時間は、特に制限されるものではないが、通常10〜60分間程度、特に15〜40分間程度が好ましい。この加熱により、第1着色塗膜、第2着色塗膜及びクリヤー塗膜の3層からなる複層塗膜を同時に硬化させることできる。
【0233】
上記工程(1)〜(4)からなる本発明の第一の複層塗膜形成方法は、具体的には、自動車車体等の被塗物に、中塗り塗膜、ベースコート塗膜及びクリヤー塗膜からなる複層塗膜を、3コート1ベーク方式で形成せしめる場合に、好適に用いることができる。この場合の複層塗膜の形成は、下記方法Iに従って行うことができる。
【0234】
方法I
(1)被塗物に、水性第1着色塗料(X)を塗装して中塗り塗膜を形成せしめる工程、
(2)上記の未硬化の中塗り塗膜上に、水性第2着色塗料(Y)を塗装してベースコート塗膜を形成せしめる工程、
(3)上記の未硬化のベースコート塗膜上に、クリヤー塗料(Z)を塗装してクリヤー塗膜を形成せしめる工程、ならびに
(4)上記の未硬化の中塗り塗膜、未硬化のベースコート塗膜及び未硬化のクリヤー塗膜を同時に加熱硬化させる工程
を含む複層塗膜形成方法。
【0235】
上記方法Iにおける被塗物としては、カチオン電着塗料により下塗り塗膜が形成された自動車車体等であることが好ましい。
【0236】
方法Iにおいて、水性第1着色塗料(X)の塗装膜厚は、硬化膜厚で、通常5〜70μm、特に10〜50μm、さらに特に15〜40μmの範囲内が好ましい。また、水性第2着色塗料(Y)の塗装膜厚は、硬化膜厚として、通常5〜30μm、特に8〜25μm
、さらに特に10〜20μmの範囲内が好ましい。また、クリヤー塗料(Z)の塗装膜厚は、硬化膜厚で、通常10〜80μm、特に5〜60μm、さらに特に20〜50μmの範囲内が好ましい。
【0237】
工程(5)
本発明の第二の複層塗膜形成方法は、上記第一の複層塗膜形成方法における工程(3)及び(4)を省略し、前記工程(1)及び(2)に続いて、工程(5)を行なう複層塗膜形成方法である。
【0238】
上記工程(5)は、前記工程(1)及び(2)で形成される第1着色塗膜及び第2着色塗膜を同時に加熱硬化させる工程である。
【0239】
上記第1着色塗膜及び第2着色塗膜の硬化は、通常の塗膜の焼付け手段、例えば、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱等により行うことができる。加熱温度は、通常80〜180℃、特に100〜170℃、さらに特に120〜160℃の範囲内が好ましい。また加熱時間は、通常10〜60分間程度、特に15〜40分間程度が好ましい。この加熱により、第1着色塗膜及び第2着色塗膜からなる複層塗膜を同時に硬化させることできる。
【0240】
また、第2着色塗膜は、加熱硬化を行なう前に、塗膜が実質的に硬化しない加熱条件で前述の如くしてプレヒート、エアブロー等を行うことが好ましい。プレヒートの温度は、通常40〜100℃特に50〜90℃、さらに特に60〜80℃の範囲内が好ましい。プレヒートの時間は、通常30秒間〜15分間程度、特に1〜10分間程度、さらに特に2〜5分間程度が好ましい。また、上記エアブローは、被塗物の塗装面に、通常、常温又は25℃〜80℃の温度に加熱された空気を30秒間〜15分間吹き付けることにより行うことができる。
【0241】
第2着色塗膜は、上記プレヒート、エアブロー等を行うことにより、塗膜の固形分含有率が通常70〜100質量%、特に80〜100質量%、さらに特に90〜100質量%の範囲内となるように調整することが好適である。
【0242】
上記工程(1)、(2)及び(5)からなる本発明の第二の複層塗膜形成方法は、具体的には、自動車車体等の被塗物に、中塗り塗膜及び上塗り塗膜からなる複層塗膜を2コート1ベーク方式で形成せしめる場合に、好適に用いることができる。この場合の複層塗膜の形成は、下記方法IIに従って行うことができる。
【0243】
方法II
(1)被塗物に、水性第1着色塗料(X)を塗装して中塗り塗膜を形成せしめる工程、
(2)上記の未硬化の中塗り塗膜上に、水性第2着色塗料(Y)を塗装して上塗り塗膜を形成せしめる工程、ならびに
(3)上記の未硬化の中塗り塗膜及び未硬化の上塗り塗膜を同時に加熱硬化させる工程
を含む複層塗膜形成方法。
【0244】
上記方法IIにおける被塗物は、カチオン電着塗料により下塗り塗膜が形成された自動車車体等であることが好ましい。
【0245】
上記方法IIにおいて、水性第1着色塗料(X)の塗装膜厚は、硬化膜厚で、通常5〜70μm、特に10〜50μm、さらに特に15〜40μmの範囲内が好ましい。また、水性第2着色塗料(Y)の塗装膜厚は、硬化膜厚で、通常10〜80μm、特に15〜60μm、さらに特に20〜50μmの範囲内が好ましい。
【実施例】
【0246】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものである。
【0247】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A)の製造
製造例1
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、トリメチロールプロパン174部、ネオペンチルグリコール327部、アジピン酸352部、イソフタル酸109部及び1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物101部を仕込み、160℃から230℃まで3時間かけて昇温させた後、生成した縮合水を水分離器により留去させながら230℃で保持し、酸価が3mgKOH/g以下となるまで反応させた。この反応生成物に、無水トリメリット酸59部を添加し、170℃で30分間付加反応を行った後、50℃以下に冷却し、2−(ジメチルアミノ)エタノールを酸基に対して当量添加し中和してから、脱イオン水を徐々に添加することにより、固形分濃度45%、pH7.2の水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(A−1)を得た。得られた水酸基含有ポリエステル樹脂の酸成分の合計量を基準とした脂肪族多塩基酸及び脂環族多塩基酸の合計含有量は76mol%、芳香族多塩基酸の含有量は24mol%であり、酸価が35mgKOH/g、水酸基価が128mgKOH/g、数平均分子量が1,480であった。
【0248】
製造例2
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、トリメチロールプロパン168部、ネオペンチルグリコール316部、アジピン酸93部、イソフタル酸211部、無水フタル酸188部及び1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物65部を仕込み、160℃から230℃まで3時間かけて昇温させた後、生成した縮合水を水分離器により留去させながら230℃で保持し、酸価が3mgKOH/g以下となるまで反応させた。この反応生成物に、無水トリメリット酸59部を添加し、170℃で30分間付加反応を行った後、50℃以下に冷却し、2−(ジメチルアミノ)エタノールを酸基に対して当量添加し中和してから、脱イオン水を徐々に添加することにより、固形分濃度45%、pH7.2の水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(A−2)を得た。得られた水酸基含有ポリエステル樹脂の酸成分の合計量を基準とした脂肪族多塩基酸及び脂環族多塩基酸の合計含有量は27mol%、芳香族多塩基酸の含有量は73mol%であり、酸価が35mgKOH/g、水酸基価が124mgKOH/g、数平均分子量が1,530であった。
【0249】
製造例3
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、トリメチロールプロパン166部、ネオペンチルグリコール314部、アジピン酸338部及び1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物194部を仕込み、160℃から230℃まで3時間かけて昇温させた後、生成した縮合水を水分離器により留去させながら230℃で保持し、酸価が3mgKOH/g以下となるまで反応させた。この反応生成物に、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物94部を添加し、170℃で30分間付加反応を行った後、50℃以下に冷却し、2−(ジメチルアミノ)エタノールを酸基に対して当量添加し中和してから、脱イオン水を徐々に添加することにより、固形分濃度45%、pH7.2の水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(A−3)を得た。得られた水酸基含有ポリエステル樹脂の酸成分の合計量を基準とした脂肪族多塩基酸及び脂環族多塩基酸の合計含有量は100mol%、芳香族多塩基酸の含有量は0mol%であり、酸価が35mgKOH/g、水酸基価が106mgKOH/g、数平均分子量が1,540であった。
【0250】
製造例4
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、トリメチロールプロパン51.3部、ネオペンチルグリコール355部、アジピン酸165部、イソフタル酸187部及び1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物174部を仕込み、160℃から230℃まで5時間かけて昇温させた後、生成した縮合水を水分離器により留去させながら230℃で保持し、酸価が2.5mgKOH/g以下となるまで反応させた。この反応生成物に、無水トリメリット酸170部を添加し、170℃で1時間付加反応を行った後、85℃以下に冷却し、2−(ジメチルアミノ)エタノールを酸基に対して当量添加し中和してから、脱イオン水を徐々に添加することにより、固形分濃度45%、pH7.1の水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(A−4)を得た。得られた水酸基含有ポリエステル樹脂の酸成分の合計量を基準とした脂肪族多塩基酸及び脂環族多塩基酸の合計含有量は53mol%、芳香族多塩基酸の含有量は47mol%であり、酸価が100mgKOH/g、水酸基価が15mgKOH/g、数平均分子量が2,450であった。
【0251】
水分散性アクリル樹脂(C)の製造
製造例5
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水130部、「アクアロンKH−10」(商品名、第一工業製薬株式会社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩エステルアンモニウム塩、有効成分97%)0.52部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温した。次いで下記のモノマー乳化物(1)のうちの全量の1%量及び6%過硫酸アンモニウム水溶液5.3部とを反応容器内に導入し80℃で15分間保持した。その後、残りのモノマー乳化物(1)を3時間かけて、同温度に保持した反応容器内に滴下し、滴下終了後1時間熟成を行なった。その後、下記のモノマー乳化物(2)を1時間かけて滴下し、1時間熟成した後、5%2−(ジメチルアミノ)エタノール水溶液40部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、平均粒子径195nm(サブミクロン粒度分布測定装置「COULTER N4型」(ベックマン・コールター社製)を用いて、脱イオン水で希釈し20℃で測定した。)、固形分濃度30%の水分散性アクリル樹脂分散液(C−1)を得た。得られた水分散性アクリル樹脂は、水酸基価が20mgKOH/g、酸価が0mgKOH/g、モノマー成分中の炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)の割合が33.6質量%、重合体(I)中の炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)の割合が48質量%、重合体(II)中の炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−3)の割合が84質量%、重合体(I)のガラス転移温度(Tg)が−28℃、重合体(II)のガラス転移温度(Tg)が63℃であった。
【0252】
モノマー乳化物(1): 脱イオン水42部、「アクアロンKH−10」0.72部、2−エチルヘキシルアクリレート33.6部、アリルメタクリレート2.8部及びエチルアクリレート33.6部を混合攪拌して、モノマー乳化物(1)を得た。
【0253】
モノマー乳化物(2): 脱イオン水18部、「アクアロンKH−10」0.31部、過硫酸アンモニウム0.03部、メチルメタクリレート25.2部、2−ヒドロキシエチルアクリレート1.2部及び4−ヒドロキシブチルアクリレート3.6部を混合攪拌して、モノマー乳化物(2)を得た。
【0254】
製造例6〜11、14〜33
モノマー乳化物(1)及び(2)におけるモノマー組成を下記表1に示すように変更する以外は、製造例4と同様に操作して、水分散性アクリル樹脂分散液(C−2)〜(C−7)及び(C−10)〜(C−29)を得た。製造例5と併せて、得られた水分散性アクリル樹脂分散液(C−1)〜(C−7)及び(C−10)〜(C−29)の固形分濃度、
酸価、水酸基価、モノマー成分中の炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)の割合、重合体(I)中の炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)の割合、重合体(II)中の炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−3)の割合、ガラス転移温度及び平均粒子径を下記表1に示す。
【0255】
製造例12
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に下記のモノマー乳化物(1)を仕込み、その後85℃まで昇温させ、6%過硫酸アンモニウム水溶液16部を反応容器内に導入し、温度を保持しながら2時間攪拌し、平均粒子径が150nmの樹脂分散液を得た。その後、下記のモノマー乳化物(2)を1時間かけて滴下し、1時間熟成した後、40℃まで冷却し、脱イオン水及び2−(ジメチルアミノ)エタノールを導入して、pH8.0、固形分濃度30%、平均粒子径が165nmの水分散性アクリル樹脂分散液(C−8)を得た。得られた水分散性アクリル樹脂は、水酸基価が19mgKOH/g、酸価が0mgKOH/g、モノマー成分中の炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)の割合が67.2質量%、重合体(I)中の炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)の割合が96質量%、重合体(II)中の炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−3)の割合が84質量%、重合体(I)のガラス転移温度(Tg)が−63℃、重合体(II)のガラス転移温度(Tg)が63℃であった。
【0256】
モノマー乳化物(1): 脱イオン水70部、「NEWCOL707SF」(商品名、日本乳化剤社製、ポリオキシエチレンアルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム、有効成分30%)7部、ドデシルメタクリレート33.6部、トリデシルメタクリレート33.6部及びアリルメタクリレート2.8部を混合攪拌し、さらに高圧乳化装置(吉田機械興業社製、ナノマイザー)にて100MPaで高圧処理することにより平均粒子径が160nmのモノマー乳化物(1)を得た。
【0257】
モノマー乳化物(2): 脱イオン水14部、「NEWCOL707SF」3部、メチルメタクリレート25.2部及び4−ヒドロキシブチルアクリレート4.8部を混合攪拌して、モノマー乳化物(2)を得た。
【0258】
製造例13
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に下記のモノマー乳化物(1)を仕込み、その後85℃まで昇温させ、6%過硫酸アンモニウム水溶液16部を反応容器内に導入し、温度を保持しながら2時間攪拌し、平均粒子径が155nmの樹脂分散液を得た。その後、下記のモノマー乳化物(2)を1時間かけて滴下し、1時間熟成した後、40℃まで冷却し、脱イオン水及び2−(ジメチルアミノ)エタノールを導入して、pH8.0、固形分濃度30%、平均粒子径が167nmの水分散性アクリル樹脂分散液(C−9)を得た。得られた水分散性アクリル樹脂は、水酸基価が19mgKOH/g、酸価が0mgKOH/g、モノマー成分中の炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)の割合が67.2質量%、重合体(I)中の炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)の割合が96質量%、重合体(II)中の炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−3)の割合が84質量%、重合体(I)のガラス転移温度(Tg)が−29℃、重合体(II)のガラス転移温度(Tg)が63℃であった。
【0259】
モノマー乳化物(1): 脱イオン水70部、「NEWCOL707SF」7部、2−エチルヘキシルアクリレート46.2部、イソステアリルアクリレート21部及びアリルメタクリレート2.8部を混合攪拌し、さらに高圧乳化装置(吉田機械興業社製、ナノマ
イザー)にて100MPaで高圧処理することにより平均粒子径が162nmのモノマー乳化物(1)を得た。
【0260】
モノマー乳化物(2): 脱イオン水14部、「NEWCOL707SF」3部、メチルメタクリレート25.2部及び4−ヒドロキシブチルアクリレート4.8部を混合攪拌して、モノマー乳化物(2)を得た。
【0261】
【表1−1】

【0262】
【表1−2】

【0263】
【表1−3】

【0264】
水酸基含有アクリル樹脂の製造
製造例34
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えたフラスコに、プロピレングリコールモノプロピルエーテル30部を仕込み85℃に昇温後、スチレン6部、メチルメタクリレート30部、n−ブチルアクリレート25部、2−エチルヘキシルアクリレート20部、4−ヒドロキシブチルアクリレート13部、アクリル酸6部、プロピレングリコールモノプロピルエーテル10部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2部の混合物を4時間かけてフラスコに滴下し、滴下終了後1時間熟成した。その後さらにプロピレングリコールモノプロピルエーテル5部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1部の混合物を1時間かけてフラスコに滴下し、滴下終了後1時間熟成した。さらに2−(ジメチルアミノ)エタノール7.4部を添加して中和し、脱イオン水を徐々に添加することにより、固形分濃度40%の水酸基含有アクリル樹脂溶液(Ac−1)を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂の酸価は47mgKOH/g、水酸基価は51mgKOH/g、重量平均分子量は50,000であった。
【0265】
製造例35
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、脱イオン水100部、「アデカリアソープSR−1025」(商品名、ADE
KA社製、α−スルホ−ω−(1−(アルコキシ)メチル−2−(2−プロペニルオキシ)エトキシ)−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)のアンモニウム塩、有効成分25%)1部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、75℃に昇温した。次いで下記のモノマー乳化物の全量のうちの3%量及び0.5%過硫酸アンモニウム水溶液10部とを反応容器内に導入し75℃で2時間保持した。その後、残りのモノマー乳化物を5時間かけて反応容器内に滴下し、滴下終了後6時間熟成を行なった。その後、30℃まで冷却し、5%2−(ジメチルアミノ)エタノール水溶液と脱イオン水を用いて固形分40%、pHが6.8となるように調整した。ついで、200メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、固形分40%の水酸基含有アクリル樹脂分散液(Ac−2)を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂の酸価は11mgKOH/g、水酸基価は24mgKOH/g、重量平均分子量は1,800,000であった。
【0266】
モノマー乳化物: 脱イオン水55部、「ラテムルE−118B」(商品名、花王社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、有効成分26%)4部、スチレン10部、メチルメタクリレート53.5部、n−ブチルアクリレート30部、2−ヒドロキシエチルアクリレート5部、アクリル酸1.5部及び2,2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕0.2部を混合攪拌して、モノマー乳化物を得た。
【0267】
水性第1着色塗料(X)の製造
製造例36
製造例1で得た水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(A−1)56部(樹脂固形分25部)、「JR−806」(商品名、テイカ社製、ルチル型二酸化チタン)60部、「カーボンMA−100」(商品名、三菱化学社製、カーボンブラック)1部、「バリエースB−35」(商品名、堺化学工業社製、硫酸バリウム粉末、平均一次粒子径0.5μm)15部、「MICRO ACE S−3」(商品名、日本タルク社製、タルク粉末、平均一次粒子径4.8μm)3部及び脱イオン水5部を混合し、2−(ジメチルアミノ)エタノールでpH8.0に調整した後、ペイントシェーカーで30分間分散して顔料分散ペーストを得た。
【0268】
次に、得られた顔料分散ペースト140部、製造例1で得た水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(A−1)29部、メラミン樹脂(B−1)(メチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂、固形分80%、重量平均分子量800)33部、「バイヒジュールVPLS2310」(住化バイエルウレタン社製、商品名、ブロック化ポリイソシアネート化合物、固形分38%)15部、製造例5で得た水分散性アクリル樹脂分散液(C−1)33部、製造例33で得た水酸基含有アクリル樹脂溶液(Ac−1)25部、「ユーコートUX−8100」(商品名、三洋化成工業社製、ウレタンエマルション、固形分35%)28部及び2−エチル−1−ヘキサノール(20℃において100gの水に溶解する質量:0.1g)10部を均一に混合した。
【0269】
次いで、得られた混合物に、「UH−752」(商品名、ADEKA社製、ウレタン会合型増粘剤)、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を添加し、pH8.0、固形分濃度48%、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度30秒の水性第1着色塗料(X−1)を得た。
【0270】
製造例37〜79、82〜85
製造例36において、配合組成を下記表2に示す通りとする以外は、製造例36と同様にして、pH8.0、固形分濃度48%、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度30秒である水性第1着色塗料(X−2)〜(X−44)及び(X−47)〜(X−50)を得た。
【0271】
製造例80
製造例1で得た水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(A−1)56部(樹脂固形分25部)、「JR−806」60部、「カーボンMA−100」1部、「バリエースB−35」15部、「MICRO ACE S−3」3部及び脱イオン水5部を混合し、2−(ジメチルアミノ)エタノールでpH8.0に調整した後、ペイントシェーカーで30分間分散して顔料分散ペーストを得た。
次に、得られた顔料分散ペースト140部、製造例1で得た水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(A−1)29部、メラミン樹脂(B−1)33部、「バイヒジュールVPLS2310」15部、製造例10で得た水分散性アクリル樹脂分散液(C−7)33部、製造例34で得た水酸基含有アクリル樹脂溶液(Ac−1)25部、「ユーコートUX−8100」28部及び2−エチル−1−ヘキサノール10部を均一に混合した。
【0272】
次いで、得られた混合物に、「プライマルASE−60」(商品名、ロームアンドハース社製、ポリアクリル酸系増粘剤)、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を添加し、pH8.0、固形分濃度48%、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度30秒の水性第1着色塗料(X−45)を得た。
【0273】
製造例81
製造例1で得た水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(A−1)56部(樹脂固形分25部)、「JR−806」60部、「カーボンMA−100」1部、「バリエースB−35」15部、「MICRO ACE S−3」3部及び脱イオン水5部を混合し、2−(ジメチルアミノ)エタノールでpH8.0に調整した後、ペイントシェーカーで30分間分散して顔料分散ペーストを得た。
【0274】
次に、得られた顔料分散ペースト140部、製造例1で得た水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(A−1)29部、メラミン樹脂(B−1)33部、「バイヒジュールVPLS2310」15部、製造例10で得た水分散性アクリル樹脂分散液(C−7)33部、製造例34で得た水酸基含有アクリル樹脂溶液(Ac−1)25部、「ユーコートUX−8100」28部及び2−エチル−1−ヘキサノール10部を均一に混合した。
【0275】
次いで、得られた混合物に、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を添加し、pH8.0、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度30秒の水性第1着色塗料(X−46)を得た。
【0276】
【表2−1】

【0277】
【表2−2】

【0278】
【表2−3】

【0279】
【表2−4】

【0280】
【表2−5】

【0281】
(注1)「SPARWITE W−5HB」: 商品名、ウィルバーエリス社製、硫酸バリウム粉末、平均一次粒子径1.6μm
(注2)メラミン樹脂(B−2): メチルエーテル化メラミン樹脂、固形分80%、重量平均分子量800
(注3)「バイヒジュールXP2570」: 商品名、住化バイエルウレタン社製、アニオン性親水化ポリイソシアネート化合物、固形分100%。
(注4)「バイヒジュールVPLS2319」: 商品名、住化バイエルウレタン社製、ノニオン性親水化ポリイソシアネート化合物、固形分100%。
(注5)「カルボジライトV−02」: 商品名、日清紡社製、カルボジイミド基含有化合物、固形分40%。
(注6)「エポクロスWS−500」: 商品名、日本触媒社製、オキサゾリン基含有化合物、固形分40%。
(注7)エチレングリコールモノn−ブチルエーテル: 20℃において100gの水に溶解する質量は無限。
(注8)ジエステル化合物(F−1): ポリオキシエチレングリコールと2−エチルヘキサン酸のジエステル化合物。前記一般式(1)で、R及びRが2−エチルへプチル基であり、Rがエチレン基であり、mが7である。分子量578。
【0282】
水性第2着色塗料(Y)用アクリル樹脂エマルションの製造
製造例86
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水130部、「アクアロンKH−10」0.52部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温した。次いで下記のモノマー乳化物(1)のうちの全量の1%量及び6%過硫酸アンモニウム水溶液5.3部とを反応容器内に導入し80℃で15分
間保持した。その後、残りのモノマー乳化物(1)を3時間かけて、同温度に保持した反応容器内に滴下し、滴下終了後1時間熟成を行なった。その後、下記のモノマー乳化物(2)を1時間かけて滴下し、1時間熟成した後、5%ジメチルエタノールアミン水溶液40部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、100メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、平均粒子径100nm(サブミクロン粒度分布測定装置「COULTER N4型」(ベックマン・コールター社製)を用いて、脱イオン水で希釈し20℃で測定した。)、固形分濃度30%のアクリル樹脂エマルション(AC)を得た。得られたアクリル樹脂は、酸価が33mgKOH/g、水酸基価が25mgKOH/gであった。
【0283】
モノマー乳化物(1): 脱イオン水42部、「アクアロンKH−10」0.72部、メチレンビスアクリルアミド2.1部、スチレン2.8部、メチルメタクリレート16.1部、エチルアクリレート28部及びn−ブチルアクリレート21部を混合攪拌して、モノマー乳化物(1)を得た。
【0284】
モノマー乳化物(2): 脱イオン水18部、「アクアロンKH−10」0.31部、過硫酸アンモニウム0.03部、メタクリル酸5.1部、2−ヒドロキシエチルアクリレート5.1部、スチレン3部、メチルメタクリレート6部、エチルアクリレート1.8部及びn−ブチルアクリレート9部を混合攪拌して、モノマー乳化物(2)を得た。
【0285】
水性第2着色塗料(Y)用ポリエステル樹脂の製造
製造例87
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、トリメチロールプロパン109部、1,6−ヘキサンジオール141部、ヘキサヒドロ無水フタル酸126部及びアジピン酸120部を仕込み、160℃〜230℃の間を3時間かけて昇温させた後、230℃で4時間縮合反応させた。次いで、得られた縮合反応生成物にカルボキシル基を付加するために、さらに無水トリメリット酸38.3部を加え、170℃で30分間反応させた後、2−エチル−1−ヘキサノールで希釈し、固形分濃度70%であるポリエステル樹脂溶液(PE1)を得た。得られたポリエステル樹脂は、酸価が46mgKOH/g、水酸基価が150mgKOH/g、固形分濃度70%、重量平均分子量が6,400であった。
【0286】
製造例88
希釈溶剤の2−エチル−1−ヘキサノールを、エチレングリコールモノn−ブチルエーテルに変更する以外は、製造例87と同様にして、ポリエステル樹脂溶液(PE2)を得た。
【0287】
水性第2着色塗料(Y)用顔料分散ペーストの製造
製造例89
製造例1で得た水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(A−1)56部(樹脂固形分25部)、JR−806(商品名、テイカ社製、ルチル型二酸化チタン)60部及び脱イオン水5部を混合し、2−(ジメチルアミノ)エタノールでpH8.0に調整した後、ペイントシェーカーで30分間分散して顔料分散ペーストを得た。
【0288】
水性第2着色塗料(Y)用光輝性顔料分散液の製造
製造例90
攪拌混合容器内において、アルミニウム顔料ペースト「GX−180A」(商品名、旭化成メタルズ社製、金属含有量74%)19部、2−エチル−1−ヘキサノール35部、リン酸基含有樹脂溶液(注9)8部及び2−(ジメチルアミノ)エタノール0.2部を均一に混合して、光輝性顔料分散液(P1)を得た。
【0289】
(注9)リン酸基含有樹脂溶液: 温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器にメトキシプロパノール27.5部、イソブタノール27.5部の混合溶剤を入れ、110℃に加熱し、スチレン25部、n−ブチルメタクリレート27.5部、「イソステアリルアクリレート」(商品名、大阪有機化学工業社製、分岐高級アルキルアクリレート)20部、4−ヒドロキシブチルアクリレート7.5部、リン酸基含有重合性不飽和モノマー(注10)15部、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート12.5部、イソブタノール10部、t−ブチルパーオキシオクタノエート4部からなる混合物121.5部を4時間かけて上記混合溶剤に加え、さらにt−ブチルパーオキシオクタノエート0.5部とイソプロパノール20部からなる混合物を1時間滴下した。その後、1時間攪拌熟成して固形分濃度50%のリン酸基含有樹脂溶液を得た。本樹脂のリン酸基による酸価は83mgKOH/g、水酸基価は29mgKOH/g、重量平均分子量は10,000であった。
(注10)リン酸基含有重合性不飽和モノマー: 温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器にモノブチルリン酸57.5部、イソブタノール41部を入れ、90℃に昇温後、グリシジルメタクリレート42.5部を2時間かけて滴下した後、さらに1時間攪拌熟成した。その後、イソプロパノ−ル59部を加えて、固形分濃度50%のリン酸基含有重合性不飽和モノマー溶液を得た。得られたモノマーのリン酸基による酸価は285mgKOH/gであった。
【0290】
製造例91
2−エチル−1−ヘキサノール35部を、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル35部に変更する以外は、製造例90と同様にして、光輝性顔料分散液(P2)を得た。
【0291】
水性第2着色塗料(Y)の製造
製造例92
製造例86で得たアクリル樹脂エマルション(AC)100部、製造例87で得たポリエステル樹脂溶液(PE1)21部、製造例89で得た顔料分散ペースト121部、2−エチル−1−ヘキサノール35部及び「サイメル325」(商品名、日本サイテックインダストリーズ社製、メラミン樹脂、固形分80%)37.5部を均一に混合し、更に、「プライマルASE−60」、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を加えてpH8.0、固形分濃度48%、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度60秒の水性第2着色塗料(Y−1)を得た。
【0292】
製造例93
製造例86で得たアクリル樹脂エマルション(AC)100部、製造例87で得たポリエステル樹脂溶液(PE1)57部、製造例90で得た光輝性顔料分散液(P1)62部及び「サイメル325」37.5部を均一に混合し、更に、「プライマルASE−60」、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を加えてpH8.0、固形分濃度25%、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度40秒の水性第2着色塗料(Y−2)を得た。
【0293】
製造例94
製造例86で得たアクリル樹脂エマルション(AC)100部、製造例88で得たポリエステル樹脂溶液(PE2)57部、製造例91で得た光輝性顔料分散液(P2)62部及び「サイメル325」37.5部を均一に混合し、更に、「プライマルASE−60」、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を加えてpH8.0、固形分濃度25%、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度40秒の水性第2着色塗料(Y−3)を得た。
【0294】
塗膜形成方法
製造例36〜85で得た水性第1着色塗料(X−1)〜(X−50)、製造例92〜94で得た水性第2着色塗料(Y−1)〜(Y−3)を用いて、以下のようにしてそれぞれ試験板を作製し、評価試験を行なった。
【0295】
(試験用被塗物の作製)
リン酸亜鉛化成処理を施した冷延鋼板に、「エレクロンGT−10」(商品名、関西ペイント社製、カチオン電着塗料)を乾燥膜厚20μmとなるように電着塗装し、170℃で30分間加熱して硬化させて試験用被塗物とした。
【0296】
実施例1
上記試験用被塗物に、製造例36で得た水性第1着色塗料(X−1)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、硬化膜厚20μmとなるように静電塗装し、中塗り塗膜を形成した。3分間放置後、80℃で3分間プレヒートを行なった後、該未硬化の中塗り塗膜上に製造例92で得た水性第2着色塗料(Y−1)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、硬化膜厚35μmとなるように静電塗装し、上塗り塗膜を形成した。3分間放置後、80℃で3分間プレヒートを行なった後、140℃で30分間加熱して、上記中塗り塗膜及び上塗り塗膜を同時に硬化させることにより試験塗板を作製した。
【0297】
実施例2〜46、比較例1〜4
実施例1において、製造例36で得た水性第1着色塗料(X−1)を、下記表3に示した水性第1着色塗料(X−2)〜(X−50)のいずれかとする以外は、実施例1と同様にして試験塗板を作製した。
【0298】
実施例47
前記試験用被塗物に、製造例36で得た水性第1着色塗料(X−1)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、硬化膜厚20μmとなるように静電塗装し、中塗り塗膜を形成した。3分間放置後、80℃で3分間プレヒートを行なった後、該未硬化の中塗り塗膜上に製造例93で得た水性第2着色塗料(Y−2)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、硬化膜厚15μmとなるように静電塗装し、ベースコート塗膜を形成した。3分間放置後、80℃で3分間プレヒートを行なった後、該未硬化のベースコート塗膜上に、「マジクロンKINO−1210」(商品名、関西ペイント社製、アクリル樹脂系溶剤型上塗りクリヤー塗料、以下「クリヤー塗料(Z−1)」ということがある)を硬化膜厚が35μmとなるように静電塗装し、クリヤー塗膜を形成した。7分間放置した後、140℃で30分間加熱して、上記中塗り塗膜、ベースコート塗膜及びクリヤー塗膜を同時に硬化させ、試験塗板を作製した。
【0299】
実施例48〜93、比較例5〜8
実施例47において、製造例36で得た水性第1着色塗料(X−1)を、下記表4に示す水性第1着色塗料(X−2)〜(X−50)のいずれかに変更し、製造例93で得た水性第2着色塗料(Y−2)を実施例93の場合水性第2着色塗料(Y−3)に変更する以外は、実施例47と同様にして試験塗板を作製した。
【0300】
評価試験
上記実施例1〜93及び比較例1〜8で得られた各試験塗板について、下記の試験方法により評価を行なった。評価結果を下記表3及び表4に示す。
【0301】
(試験方法)
平滑性: 「Wave Scan DOI」(商品名、BYK Gardner社製)
によって測定されるWc値を用いて評価した。Wc値が小さいほど塗面の平滑性が高いことを示す。
鮮映性: 「Wave Scan DOI」(商品名、BYK Gardner社製)によって測定されるWb値を用いて評価した。Wb値が小さいほど塗面の鮮映性が高いことを示す。
耐水性: 試験板を40℃の温水に240時間浸漬し、引き上げ、20℃で12時間乾燥した後、試験板の複層塗膜を素地に達するようにカッターで格子状に切り込み、大きさ2mm×2mmのゴバン目を100個作る。続いて、その表面に粘着セロハンテープを貼着し、20℃においてそのテープを急激に剥離した後のゴバン目塗膜の残存状態を調べた。
◎:ゴバン目塗膜が100個残存し、カッターの切り込みの縁において塗膜の小さな
フチカケが生じていない。
○:ゴバン目塗膜が100個残存するが、カッターの切り込みの縁において塗膜の小
さなフチカケが生じている。
△:ゴバン目塗膜が90〜99個残存する。
×:ゴバン目塗膜の残存数が89個以下である。
耐チッピング性: スガ試験機社製の飛石試験機JA−400型(商品名、チッピング試験装置)の試片保持台に試験板を設置し、−20℃において、30cmの距離から0.392MPa(4kgf/cm)の圧縮空気により、粒度7号の花崗岩砕石50gを試験板に45度の角度で衝突させた。その後、得られた試験板を水洗して、乾燥し、塗面に布粘着テープ(ニチバン社製)を貼着して、それを剥離した後、塗膜のキズの発生程度等を目視で観察し、下記基準により評価した。
◎:キズの大きさが極めて小さく、電着面や素地の鋼板が露出していない。
○:キズの大きさが小さく、電着面や素地の鋼板が露出していない。
△:キズの大きさは小さいが、電着面や素地の鋼板が露出している。
×:キズの大きさはかなり大きく、素地の鋼板も大きく露出している。
【0302】
【表3】

【0303】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程(1)〜(4)、
工程(1):被塗物上に、水性第1着色塗料(X)を塗装して第1着色塗膜を形成せしめる工程、
工程(2):工程(1)で形成される未硬化の第1着色塗膜上に、水性第2着色塗料(Y)を塗装して第2着色塗膜を形成せしめる工程、
工程(3):工程(2)で形成される未硬化の第2着色塗膜上に、クリヤー塗料(Z)を塗装してクリヤー塗膜を形成せしめる工程、及び
工程(4):工程(1)〜(3)で形成される未硬化の第1着色塗膜、未硬化の第2着色塗膜及び未硬化のクリヤー塗膜を同時に加熱硬化させる工程
を順次行う複層塗膜形成方法であって、
水性第1着色塗料(X)が、(A)水酸基含有ポリエステル樹脂、(B)硬化剤、ならびに(C)炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)30〜100質量%及び重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)0〜70質量%からなるモノマー成分を重合することにより得られる水分散性アクリル樹脂を含有する
ことを特徴とする複層塗膜形成方法。
【請求項2】
下記の工程(1)、(2)及び(5)、
工程(1):被塗物上に、水性第1着色塗料(X)を塗装して第1着色塗膜を形成せしめる工程、
工程(2):工程(1)で形成される未硬化の第1着色塗膜上に、水性第2着色塗料(Y)を塗装して第2着色塗膜を形成せしめる工程、及び
工程(5):工程(1)及び工程(2)で形成される未硬化の第1着色塗膜及び未硬化の第2着色塗膜を同時に加熱硬化させる工程
を順次行う複層塗膜形成方法であって、
水性第1着色塗料(X)が、(A)水酸基含有ポリエステル樹脂、(B)硬化剤、ならびに(C)炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)30〜100質量%及び重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)0〜70質量%からなるモノマー成分を重合することにより得られる水分散性アクリル樹脂を含有する
ことを特徴とする複層塗膜形成方法。
【請求項3】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A)が、原料の酸成分中の脂肪族多塩基酸及び脂環族多塩基酸の合計含有量が該酸成分の合計量を基準として30〜97mol%であり且つ芳香族多塩基酸の含有量が該酸成分の合計量を基準として3〜70mol%である水酸基含有ポリエステル樹脂(A1)であり、そして硬化剤(B)がメチルエーテル化メラミン樹脂、ブチルエーテル化メラミン樹脂、メチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種のアルキルエーテル化メラミン樹脂である請求の範囲第1又は2項に記載の方法。
【請求項4】
重合性不飽和モノマー(c−1)が2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルメタクリレート及びトリデシルメタクリレートよりなる群から選ばれる少なくとも1種の重合性不飽和モノマーである請求の範囲第1又は2項に記載の方法。
【請求項5】
水分散性アクリル樹脂(C)が、炭素数5〜22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c−1)60〜100質量%及び重合性不飽和モノマー(c−1)以外の重合性不飽和モノマー(c−2)0〜40質量%からなるモノマー成分を重合することにより得られる重合体(I)のコア部と、炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノ
マー(c−3)45〜100質量%及び重合性不飽和モノマー(c−3)以外の重合性不飽和モノマー(c−4)0〜55質量%からなるモノマー成分を重合することにより得られる重合体(II)のシェル部とから構成されるコア/シェル型構造を有する水分散性アクリル樹脂(C1)である請求の範囲第1又は2項に記載の方法。
【請求項6】
重合性不飽和モノマー(c−4)が、少なくともその一部として、重合性不飽和モノマー(c−3)及び重合性不飽和モノマー(c−4)の合計質量を基準として、水酸基含有重合性不飽和モノマーを1〜55質量%含んでなる請求の範囲第5項に記載の方法。
【請求項7】
重合体(I)のコア部が架橋構造を有する請求の範囲第5項に記載の方法。
【請求項8】
重合体(I)が−65〜−10℃の範囲内のガラス転移温度(Tg)を有する請求の範囲第5項に記載の方法。
【請求項9】
水分散性アクリル樹脂(C1)が、重合体(I)及び重合体(II)を、重合体(I)の固形分質量/重合体(II)の固形分質量比で、5/95〜95/5の範囲内の割合で含んでなる請求の範囲第5項に記載の方法。
【請求項10】
水性第1着色塗料(X)が水酸基含有ポリエステル樹脂(A)及び硬化剤(B)の合計100質量部を基準として、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)を20〜95質量部、硬化剤(B)を5〜80質量部、及び水分散性アクリル樹脂(C)を1〜100質量部含有する請求の範囲第1又は2項に記載の方法。
【請求項11】
水性第1着色塗料(X)が、さらに、疎水性溶媒(E)を含有する請求の範囲第1又は2項に記載の方法。
【請求項12】
被塗物が電着塗料によって下塗り塗膜が形成された車体である請求の範囲第1又は2項に記載の方法。
【請求項13】
複層塗膜の形成に用いるための請求の範囲第1又は2項に記載の水性第1着色塗料。
【請求項14】
請求の範囲第1〜12項のいずれか1項に記載の方法により塗装された物品。

【公表番号】特表2011−525415(P2011−525415A)
【公表日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−548979(P2010−548979)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【国際出願番号】PCT/JP2009/062022
【国際公開番号】WO2009/157588
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】