説明

複数のローラを備えたレベリング機械

材料のストリップをレベリングするための機械は、固定された下部バックプレート(1)を有し、この下部バックプレートから複数の鉛直ビーム(2a,2b)が延びており、ビームが、材料のストリップの移動の長手方向軸線のそれぞれの側に配置されており、固定された下部レベリングカセット(5b)を有しており、レベリング機械の運転中に、固定されたレベリングカセット(5b)は固定されたバックプレート(1)に対して支持されており、上部レベリングカセット(5a)を有しており、それぞれのカセットが、材料の移動の長手方向軸線に対して垂直な軸線(P)上で軸受(52)に回転可能に取り付けられている形式のものにおいて、レベリング機械が、鉛直ビーム(2a,2b)に堅く結合されておりかつそれぞれのビーム(2a,2b)の上端部に堅く取り付けられた、固定された上部バックプレート(11)を有し、上部レベリングカセットの移動を可能にする、上部レベリングカセット(5a)を上部バックプレート(11)に連結するための可動な手段(9)を有し、上部レベリングカセット(5a)のローラが下部レベリングカセット(5b)のローラ(51b)に近くない休止位置と、ストリップが蛇行状経路を辿るように上部レベリングカセットが下部レベリングカセットのローラに近くなるレベリング位置との間で上部レベリングカセット(5a)を固定された上部バックプレート(11)に対して鉛直方向に並進移動させるための手段(10)を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、以下で概略的に「ストリップ」と呼ぶ厚い金属プレート又はストリップをレベリングするための機械に関する。
【0002】
レベラとして知られるレベリング装置は、熱間圧延又は冷間圧延の後にストリップの平坦度の欠陥を排除するために使用される。実際には、例えば熱間圧延、冷却及びコンディショニング段階の後、圧延された製品は、エッジ波打ち又は中央座屈として知られる欠陥のような、発現不能な(non-developable)平坦度欠陥、又は反り欠陥のような発現可能な(developable)平坦度欠陥を生じることがある。これらの幾何学的欠陥は、圧延された製品に目に見える影響を与える。
【0003】
このような圧延された金属ストリップをレベリングするために、複数のローラを有するレベラが配置されている。このレベラは、ローラが互いに重なり合い、ストリップのための蛇行状の経路を形成するように配置されている。したがって、ストリップは交互に反対方向に曲げ作用を受ける。
【0004】
金属プレート又はストリップレベリング装置は、一般的に下部レベリングカセットと上部レベリングカセットとを有する。それぞれのレベリングカセットには複数のレベリングローラが取り付けられている。ローラはストリップと直接に接触する。これらのレベリングローラは通常、支持ローラによって支持されている。
【0005】
これらの2つのレベリングカセットは、レベラの構造体に設けられている。レベラは、鉛直ビームを有しており、鉛直ビームの底部は、概して固定されたバックプレートによって堅く結合されており、鉛直ビームの上部は、水平方向上部ビームによって堅く結合されている。
【0006】
下部カセットは下部バックプレートによって支持されており、上部カセットは圧力フレームによって支持されており、この圧力フレームに上部カセットがボルト留めされている。
【0007】
最も一般的には、下部カセットは固定されており、上部カセットは、レベリングローラの間の間隙を調節しこれによりストリップの蛇行状経路を決定するために鉛直方向に移動することができる。ストリップの抵抗に起因する、この間隙と、カセット分離応力の受渡しとは、液圧式閉鎖シリンダによって行われる。この液圧式閉鎖シリンダは、一方の側においては上部ビームに対して支持されており、他方の側においては圧力フレームに対して支持されている。
【0008】
電動駆動システムは、ローラを駆動して回転させることができ、摩擦によってストリップを所定の速度で前方へ移動させることができる。これは、少なくとも1つの減速歯車を駆動する少なくとも1つのモータを利用する。減速歯車は、少なくとも1つのギヤボックスを所要の速度で作動させ、ギヤボックスは、回転トルクをスピンドルによって異なる下部及び上部のレベリングローラへ分配する。スピンドルは、一方の端部においてギヤボックスの出力部に結合されており、他方の端部においてローラの端部トラニオンに結合されている。
【0009】
図1は、従来技術のレベリング機械の概略図である。この場合、上部カセット5aは圧力フレーム4によって支持されている。圧力フレーム4は、液圧式シリンダを利用して鉛直方向に可動である。液圧式シリンダは、鉛直ビームに堅く結合された上部水平方向クロスメンバ3a,3bに対して支持されている。レベリング機械は、固定された下部バックプレート1を有する。下部バックプレート1は、下部レベリングカセット5bを支持しており、この下部レベリングカセット5bは、2対の鉛直ビーム2a,2bに堅く結合されている。それぞれのビーム2a,2bの上部は、水平方向クロスメンバ3a,3bに結合されている。ビーム2の間で鉛直方向に並進するように案内される圧力フレーム4は、4つの閉鎖シリンダによって上部カセット5a上に押し付けられる。それぞれのカセット5a,5bは、軸受52a,52bによって支持されかつ支持ローラ53a,53bによって支持された複数のレベリングローラ51,51bを有している。支持ローラ53a,53b自体は軸受54a,54bによって支持されている。レベリング機械は、戻しシリンダ8も有している。戻しシリンダ8は、圧力フレーム4、ひいては上部カセット5aを上方へ移動させることができる。
【0010】
ストリップの通過に起因する分離応力によって発生されるカセットの曲がりを相殺するために、少なくとも上部カセットと、上部カセットの圧力フレームとの間の曲がり修正シリンダを用いるような、複数のシステムが発明されている。つまり、図1に示されたレベリング機械には修正シリンダ7が取り付けられており、これらの修正シリンダは、圧力フレーム4と上部レベリングカセット5aとの間に配置されている。カップリング装置9は上部レベリングカセット5aを圧力フレームに取り付ける一方で、修正シリンダ7の作用により上部レベリングカセット5aの移動を可能にする。
【0011】
ストリップの通過によって発生される分離応力によるカセット、下部バックプレート及び上部圧力フレームの曲がりを修正するための別の手段が発明されている。したがって、欧州特許第0570770号明細書は、レベリング機械の上部レベリングローラと上部圧力フレームとの間に配置されたシリンダの利用を開示している。これらのシリンダは、ローラの間の材料のストリップの通過の間に生じるレベリングローラの曲がりがオフセット(相殺)されることを可能にする。これらのオフセットローラは、シリンダに関連して作用し、堅く結合された上部レベリングカセットを備えた上部フレームを移動させることができる。レベリング機械には、複数のセンサも取り付けられている。センサは、ローラの変形を測定し、プロセッサに情報を提供する。プロセッサは、オフセットシリンダと、フレームを移動させることができるシリンダとを制御する。
【0012】
特開2000−326012号公報も、レベリング機械の上部フレームと上部ローラとの間に取り付けられた複数のオフセットシリンダを有するレベリング機械を開示している。水平方向クロスメンバに対して支持された他のシリンダは、レベリング機械の上部バックプレートに作用することによって上部レベリングローラの位置を変化させる。
【0013】
米国特許第5461895号明細書は、レベリングローラの長手方向曲がりを相殺するために、上部カセットの中央に作用する圧力シリンダと、上部カセットの端部に作用する牽引シリンダとの組合せを有するレベリング機械を開示している。
【0014】
より多くの閉鎖シリンダ及び修正シリンダを使用することは、レベリング機械を複雑にし、これらのシリンダの複数の階層が積層されるので前記機械の高さを増大する。したがって、公知のレベリング機械は、上部カセットと、曲がり修正シリンダと、圧力フレームと、主閉鎖シリンダと、上部水平方向クロスメンバとによって形成された重なった層の積層を有する。極めて幅広で厚いストリップ用のレベリング機械は、600トンを超える重量と、10メートルを超える高さとを有する場合がある。圧力フレーム自体が、70トンを超える重量を有する場合がある。したがって、レベリング機械の質量及び寸法をできるだけ減じることが重要である。
【0015】
本発明は、上記で特定した問題を解決し、特に機械の高さ、特に鉛直ビームの長さを制限するために構造的部材及びシリンダの積層を制限することを目的とする。本発明はまた、同様の機能を満たしながら、特にレベリングされる材料の通過によって発生されたレベリングカセットの曲がりが相殺されることを可能にしながら、公知のレベリング機械よりも小さな体積及び質量を有するレベリング機械を提供することを目的とする。
【0016】
これらの目的を考慮して、本発明の第1の目的は、
固定された下部バックプレートを有し、この下部バックプレートから複数の鉛直ビームが延びており、ビームが材料のストリップの移動の長手方向軸線のそれぞれの側に配置されており、
上部レベリングカセットと、固定された下部レベリングカセットとを有し、レベリング機械の運転中、固定された下部レベリングカセットが、固定されたバックプレートに対して支持され、それぞれのカセットが、互いに間隔を置いた、材料の移動の長手方向軸線に対して垂直な軸線に沿って軸受に回転可能に取り付けられた複数のローラを有する、材料のストリップをレベリングするための機械において、
レベリング機械がさらに、
固定された上部バックプレートを有し、この上部バックプレートが、鉛直ビームに堅く結合されかつそれぞれのビームの上端部に堅く取り付けられており、
上部レベリングカセットを上部バックプレートに連結して上部レベリングカセットの移動を可能にする可動な手段を有し、
上部レベリングカセットのローラが下部レベリングカセットのローラに近くない休止位置と、ストリップが蛇行状の経路を辿るように上部レベリングカセットのローラが下部レベリングカセットのローラに近いレベリング位置との間で、上部レベリングカセットを、固定された上部バックプレートに対して鉛直方向に並進させるための手段を有することを特徴とする、材料のストリップをレベリングするための機械を得ることである。
【0017】
別の有利な特徴によれば、
可動なカップリング手段は、
材料のストリップの移動の長手方向軸線を通過する仮想鉛直平面の一方の側に配置されたシリンダの第1のセットを有し、第1のセットのそれぞれのシリンダは、第1に、固定された上部バックプレートのフランジに固定されており、第2に、上部レベリングカセットの保持フックに固定されており、
前記仮想鉛直平面の他方の側に配置されたシリンダの第2のセットを有し、第2のセットのそれぞれのシリンダは、第1に、固定された上部バックプレートに対して可動な部分に固定されており、第2に、上部レベリングカセットの保持フック(56b)に固定されており、
それぞれの可動部分が、固定された上部バックプレートのフランジに固定されており、可動部分のうちの少なくとも1つが駆動手段によって駆動されて回転し、
回転駆動手段が、少なくとも1つのシリンダを有し、それぞれのシリンダが、第1に、少なくとも1つの可動な部分に連結されており、第2に、レベリング機械の上部バックプレートのフランジに連結されており、
駆動シリンダが作動させられて回転すると、可動部分と、第2のセットのうちの1つのシリンダとを含む少なくとも1つのセットが、鉛直位置から引込み位置へ回転移動させられ、引込み位置は上部レベリングカセットがレベリング機械から取り出されることを可能にし、
下部レベリングカセットが、レベリングカセットのベースから上方へ延びた複数の直立部を有し、
それぞれの鉛直ビームが、レベリング機械の少なくとも1つのレベリングカセットを並進させるように案内するために、別の接触面と協働するための内部鉛直接触面を有し、
下部レベリングカセットが、鉛直ビームの内部鉛直接触面と協働するための、例えば下部レベリングカセットを並進させるように案内するための、少なくとも1つの外部鉛直接触面を有し、
下部レベリングカセットの少なくとも1つの内部鉛直接触面が、レベリングカセットのベースから上方へ延びた下部レベリングカセットの直立部に設けられており、
下部レベリングカセットが、上部レベリングカセットを並進させるように案内するための内部接触面を有し、
上部レベリングカセットが、上部レベリングカセットを並進させるように案内するための少なくとも1つの外部接触面を有し、この外部接触面は、レベリング機械のエレメントの別の接触面と協働するためのものであり、
上部レベリングカセットのそれぞれの外部接触面が凸面状であり、
上部レベリングカセットのそれぞれの外部接触面が、ビームの内部鉛直接触面と協働し、
上部レベリングカセットのそれぞれの外部接触面が、下部レベリングカセットの内部鉛直接触面と協働し、
上部レベリングカセットを並進させるように移動させるための手段が、固定された上部バックプレートと上部レベリングカセットとに堅く結合された複数の閉鎖シリンダ(10)を有する。
【0018】
本発明は、フレキシブルなレベリングカセットにも関し、このフレキシブルなレベリングカセットの厚さは最大値と最小値との間で変化しており、上記に定義したようにレベリング機械と協働するためのものである。
【0019】
有利には、レベリングカセットは、レベリング機械の閉鎖シリンダと協働するための複数の最大厚さゾーンを有し、この最大厚さゾーンは、最小厚さゾーンによって互いに分離されている。
【0020】
さらに、最大厚さ値は、最小厚さ値の1.5〜4倍であってよく、好適にはこの値の2〜2.5倍であってよい。
【0021】
したがって、本発明によるレベリング機械の全高は、公知の機械よりも小さく、従来のレベリング機械とは異なり、本発明のレベリング機械は、慣用の圧力フレーム又は水平クロスメンバを有さず、これは、構造体から数十トンを節約し、本発明によるレベリング機械を軽量化する。
【0022】
さらに、従来のレベリング機械に関して、本発明は、引っ込めシリンダが圧力フレーム及び上部カセットから取り外されることをも可能にし、これは著しい節約を提供する。なぜならば、これらのシリンダは、通常は4つ設けられているが、ほぼ100トンに達する質量を持ち上げるのに十分なパワーを有さなければならないからである。さらに、シリンダは、閉鎖シリンダが分解されることを可能にするために、大きな行程を有する。したがって、これらのシリンダは極めて重く、高圧油圧回路の形成と、大量の油とを必要とする。これらの装置の全ての取外しは、レベリング機械の質量を数十トン減じるという付加的な効果を有する。
【0023】
本発明のその他の特徴及び利点は、図面に関連して提供される詳細な非制限的な実施形態に表される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】既に述べたような、従来のレベリング機械を示す概略的な正面図である。
【図2】本発明によるレベリング機械を示す概略的な正面図である。
【図3】本発明によるレベリング機械の上部バックプレートに結合されたレベリングカセットを示す詳細な図である。
【図4】図1の断面図である。
【図5】本発明によるレベリング機械において使用されるフレキシブルな上部レベリングカセットの断面図である。
【0025】
図面は発明を理解するために必要とされる要素だけを示していることに注意すべきであり、レベリング機械は、レベリングローラを駆動して回転させるために必要とされる要素(図示せず)の全てを有するものと理解される。
【0026】
図2に示された、本発明によるレベリング機械は、下部バックプレート1を有する。下部バックプレート1は、レベリング機械の使用中は固定されており、下部レベリングカセット5bを支持している。2対の鉛直ビーム2a,2bは、下部バックプレート1から上方へ延びており、下部バックプレート1に堅く固定されている。さらに、鉛直ビーム2a,2bのそれぞれの対は、材料のストリップの移動の長手方向軸線P(図4に示している)を通過する仮想鉛直平面の一方の側に配置されている。固定された上側バックプレート11は、それぞれの鉛直ビーム2a,2bの上端部に堅く取り付けられている。
【0027】
レベリング機械は閉鎖シリンダ10も有する。閉鎖シリンダ10は、第1に、固定された上部バックプレート11に取り付けられており、第2に、上部レベリングカセット5aの上面と接触している。延伸されたとき、閉鎖シリンダ10はバックプレート11に対して支持され、上部レベリングカセット5aのローラ51aを、レベリングされる材料に対して押し付ける。したがって、閉鎖シリンダは、第1に、上部レベリングカセットのローラ51aと、下部レベリングカセット5bのローラ51bとを互いに接近させ、第2に、その相対的な鉛直方向移動に関して、レベリングされるストリップの通過によって発生される分離応力によって生じた上部レベリングカセット5aの曲がりを相殺する。
【0028】
カップリング手段9は、閉鎖シリンダ7の作用による上部レベリングカセット5aの鉛直方向移動を可能にしながら、上部レベリングカセット5aをバックプレート11に取り付けている。
【0029】
図3は、カップリング手段の実施形態を示している。レベリングローラ51aと、レベリングローラ51aの軸受52aとを支持した上部レベリングカセット5aは、上部バックプレート11のフランジ113によってローラ駆動側に支持された2つのシリンダ111によって上部バックプレート11に連結されている。シリンダ111のそれぞれのヘッドは、上部レベリングカセット5aの保持フック56aに係合させられている。この目的のために、シリンダ111のそれぞれのヘッドは、円筒形の保持部分111bを有してよく、この保持部分の軸線は、シリンダ111のロッド111aの軸線に対して垂直である。上部レベリングカセット5aは、ローラ駆動側とは反対側において、固定された上部バックプレート11に対して回転移動可能なL字形部分114によって支持された2つ以上のシリンダ112によっても上部バックプレート11に連結されている。シリンダ112のそれぞれのヘッドは、上部レベリングカセット5aの保持フック56bに係合させられている。この目的のために、シリンダ112のそれぞれのヘッドは、円筒形の保持部分112bを有しており、この保持部分112bの軸線は、シリンダ112のロッド112aの軸線に対して垂直である。さらに、それぞれの円筒形の保持部分111b,112bは、上部レベリングカセット5aの水平方向での並進を停止させるための、それぞれの保持フック56aのそれぞれの側に配置された2つの鉛直方向ストッパを有していてよい。したがって、シリンダ111,112は、シリンダ10の作用による上部レベリングカセット5aと上部バックプレート11との相対移動を補助しながら、上部レベリングカセット5aを支持している。
【0030】
それぞれの可動部分114は、バックプレート11の軸に固定されており、この軸を中心に回動することができ、それぞれの軸はバックプレートのフランジ1100によって支持されている。少なくとも1つの可動部分114を回転させることができる少なくとも1つの付加的なシリンダ115は、可動部分114の一方の端部と、バックプレート11の1つの他のフランジ1200との間に延びている。
【0031】
レベリング機器5a及び5bを取り外すために、閉鎖シリンダ10のロッドが、上部レベリングカセット5aが下部レベリングカセット5bに載置されるようになるまで延伸する。保持シリンダ111,112のロッド111a及び112aは、下方への上部レベリングカセット5aの移動に追従する。上部レベリングカセット5aが下部レベリングカセット5bに載置させられると、保持シリンダ111,112のロッド111a及び112aは、それぞれの保持フック56aが解放されるまで下方移動を継続する。収縮することにより、付加的なシリンダ115は支持エレメント114を回転させ、この支持エレメント114はシリンダ112を引っ込め、上部レベリングカセットを矢印1300の方向に、レベリングローラ51aの駆動側と反対側から取り外すことができる。
【0032】
前述のように、従来のレベリング機械においては、圧力フレームが鉛直ビームの間で案内され、上部レベリングカセットは、曲がり修正シリンダの移動に追従する装置を用いて圧力フレームに連結されている。突き当たり及び引っ掛かりを生じる場合がある、圧力フレーム及びカセットの二重鉛直方向案内を回避するために、上部カセットは、鉛直ビームの間又は下部カセットの直立部の間において案内されない。本発明による機械において、圧力フレームの不在により、カセット自体が鉛直ビームの間又は下部カセットの直立部の間で案内されることができ、このことは、カセットの移動の精度を著しく高める。
【0033】
図4は、レベリング機械をビーム2a及び2bの間で案内するためのシステムの実施形態を示している。図4は、材料のストリップの移動の長手方向軸線を通過する仮想鉛直平面に対して平行な平面に沿って軸受52a及び52bを切断した、レベリング機械の概略的な断面図である。
【0034】
概して、それぞれの鉛直ビーム2a,2bは、レベリング機械の少なくとも1つのレベリングカセット5a,5bを並進するように案内するために別の接触面と協働するための内部鉛直接触面21aを有する。
【0035】
より具体的には、下部レベリングカセット5bは、組み立て作業及び分解作業の間にレベリング機械の外部から下部カセットを案内するために、下部カセット5bのベースから上方へ延びた鉛直直立部55bを有する。それぞれの直立部55bは、例えば正確な位置決めを保証しかつ下部レベリングカセット5bを並進するように案内するために、ビーム2a,2bのうちの一方の内部鉛直面21aと接触する外部鉛直面59を有する。したがって、直立部55b及び下部レベリングカセット5bは、滑りジョイントによって結合されている。2つの接触面59及び21aは少なくとも部分的に互いに対面するように延びている。
【0036】
さらに、下部レベリングカセット5bのそれぞれの直立部55bは、例えば上部レベリングカセット5aのための並進ガイドとして働くために位置決めされている。その結果、下部レベリングカセット5bのそれぞれの直立部は、上部レベリングカセットの外面55aと接触した内部鉛直面57bも有する。接触面55a及び57bは、レベリング機械が完全に組み立てられた時に少なくとも部分的に互いに対面して延びており、上部レベリングカセット5aを下部レベリングカセット5bに対して並進するように案内するために協働する。上部レベリングカセット5aは直立部55bによって包囲されているので、上部及び下部のレベリングカセットは滑りジョイントによって連結されており、この滑りジョイントは、高い精度でのこれらの相対的な位置決めを保証する。さらに、上部レベリングカセットのそれぞれの外部接触面55aは僅かに凸面状であってよい。これは、レベリングローラの間のストリップ進入側と、走出側との間において、下部カセット5bに対する上部カセット5aの傾斜した位置を可能にする。
【0037】
さらに、レベリングカセット5bのそれぞれの直立部55bの上部は、上部レベリングカセット5aの支持エレメント57aを受け止めるための位置決めコンタクト58bを有する。レベリング機械におけるカセット取外し及び交換段階の間、それぞれの位置決めコンタクト58bは支持エレメント57aを受け止め、これは、2つのカセットの堅い取付けを保証する。
【0038】
図示されていない別の実施形態において、下部レベリングカセット5bは直立部55bを有さず、上部レベリングカセットは、直接にレベリング機械のビーム2a,2bによって鉛直方向に並進するように案内される。つまり、上部レベリングカセット5aのそれぞれの外部接触面55aは、ビーム2a,2bのうちの一方の内部鉛直接触面21aと協働する。したがって、上部レベリングカセット5aは、滑りジョイントによってレベリング機械の直立部2a,2bに結合されている。
【0039】
レベリング機械におけるそれぞれのエレメントを並進するように案内するときに摩擦によって発生させられる摩耗を制限するために、接触面21a,56b,57b及び55aは、表面硬化させられた鋼板等の部材を互いに接しながら摺動させることができるようにする磨損可能な材料でコーティングされていてよい。
【0040】
閉鎖シリンダ10がレベリングローラの曲がりを修正するという機能を正確に行うことができることを保証するために、上部バックプレート11と上部カセット5aとの間で働く少なくとも6つの閉鎖シリンダが好適には設けられているべきである。図2から図5までに示したように、閉鎖シリンダ10はローラの長手方向軸線と同じ方向に一列に配置されている。図示の実施形態において、レベリング機械は、それぞれが3つの閉鎖シリンダ10から成る2つの列を有する。図4に概略的に示したように、3つの閉鎖シリンダ10の第1の列は、ストリップが上部レベリングカセット5aに進入する側に作用するのに対し、閉鎖シリンダの別のラインは、レベリングカセットの走出側に作用する。
【0041】
ローラ曲がり修正の正確な働きのための付加的な条件は、ローラの長手方向軸線と同じ方向での上部レベリングカセットの変形能力である。この条件は、極めて高いレベルの上部カセット及び下部カセット分離応力を伴うような、厚いストリップをレベリングする場合に、容易に満たされる。より薄いストリップの場合、上部レベリングカセットの曲げ慣性を減じるために上部レベリングカセットの形状を変化させる必要がある場合がある。
【0042】
図5は、従来の上部レベリングカセットよりも高い曲げ変形能力を有する上部レベリングカセットの例を示している。図5に示された上部レベリングカセット5aは、従来の上部レベリングカセットよりも低い変形慣性を有する。本発明によるレベリング機械の一部のこの断面図において、上部レベリングカセット5aの厚さeは、最大値e1と最小値e2との間で変化している。閉鎖シリンダ10の支持面はゾーンz1に配置されており、このゾーンz1において、上部レベリングカセット5aの厚さeは、曲がり修正に対する上部レベリングカセット5aの最大抵抗と、閉鎖シリンダ10によって伝達される閉鎖応力とを保証するために最大になっている。好適には、最大厚さz1のそれぞれのゾーンの長さl1は、少なくとも、このゾーンが接触しているシリンダ10の端部10aの直径と等しい。さらに、最大厚さのゾーンz1の間の最小厚さe2のゾーンz2は、上部カセット5aの変形慣性を減じることを助け、これにより、迅速かつ効率的な曲がり修正を達成することを助ける。これらのゾーンz2は、長さl1よりも小さな長さl2を有する。
【0043】
図5に示した実施形態は、最大厚さの5つのゾーンz1を有しており、そのうちの2つは、上部レベリングカセット5aの端部に位置し、3つは、閉鎖シリンダ10と協働する上部レベリングカセット5aの支持部分に位置する。一定の最大厚さe1のこれらのゾーンz1は、一定の最小厚さe2の3つのゾーンz2によって分離されており、上部レベリングカセット5aの全体の曲がりを容易にする。したがって、上部レベリングカセットは、上部及び下部において先端が切り取られた鋸歯状の断面を有する。
【0044】
例えば、最大厚さ値は、最小厚さ値の1.5倍から4倍であってよく、好適にはこの値の2倍から2.5倍であってよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料のストリップをレベリングするための機械であって、
固定された下部バックプレート(1)を有し、該下部バックプレートから複数の鉛直ビーム(2a,2b)が延びており、該ビームが、材料のストリップの移動の長手方向軸線のそれぞれの側に配置されており、
固定された下部レベリングカセット(5b)を有し、レベリング機械の運転中、固定された下部レベリングカセット(5b)が、固定されたバックプレート(1)に対して支持されており、
上部レベリングカセット(5a)を有し、
それぞれのカセットが、複数のローラ(51a,51b)を有し、該ローラが、間隔を置いて配置されておりかつ材料の移動の長手方向軸線(P)に対して垂直な軸線上で軸受(52)に回転可能に取り付けられている形式のものにおいて、レベリング機械がさらに、
固定された上部バックプレート(11)を有し、該上部バックプレートが、鉛直ビーム(2a,2b)に堅く結合されておりかつそれぞれのビーム(2a,2b)の上端部に堅く取り付けられており、
上部レベリングカセットの移動を可能にする、上部バックプレート(11)に上部レベリングカセット(5a)を連結するための可動な連結手段(9)を有し、
上部レベリングカセット(5a)のローラ(51a)が下部レベリングカセット(5b)のローラ(51b)に近くない休止位置と、ストリップが蛇行状の経路を辿るように上部レベリングカセットのローラが下部レベリングカセットのローラに近くなるレベリング位置との間で、固定された上部バックプレート(11)に対して上部レベリングカセット(5a)を鉛直方向に並進するように移動させるための手段(10)を有し、移動手段が、レベリングされるストリップの通過に起因する分離応力によって発生される上部レベリングカセット(5a)の曲がりを相殺することができることを特徴とする、材料のストリップをレベリングするための機械。
【請求項2】
可動な連結手段(9)が、
材料のストリップの移動の長手方向軸線(P)を通過する仮想鉛直平面の一方の側に配置されたシリンダ(111)の第1のセットを有し、第1のセットのそれぞれのシリンダが、第1に、固定された上部バックプレート(11)のフランジ(113)に固定されており、第2に、上部レベリングカセット(5a)の保持フック(56a)に固定されており、
仮想鉛直平面の他方の側に配置されたシリンダ(112)の第2のセットを有し、第2のセットにおけるそれぞれのシリンダ(112)が、第1に、固定された上部バックプレート(11)に対して可動な部分(114)に固定されており、第2に、上部レベリングカセット(5a)の保持フック(56b)に固定されている、請求項1記載のレベリング機械。
【請求項3】
それぞれの可動な部分(114)が、固定された上部バックプレート(11)のフランジ(1100)に固定されており、可動な部分(114)のうちの少なくとも1つが駆動手段によって駆動されて回転するようになっている、請求項1又は2記載のレベリング機械。
【請求項4】
駆動手段が、少なくとも1つのシリンダ(115)であり、それぞれのシリンダが、第1に、少なくとも1つの可動な部分(114)に連結されており、第2に、レベリング機械の上部バックプレートのフランジ(1200)に連結されている、請求項1から3までのいずれか1項記載のレベリング機械。
【請求項5】
駆動シリンダ(115)が作動させられると、可動な部分(114)と、シリンダの第2のセットのうちの1つのシリンダ(112)とを含む少なくとも1つのセットが、鉛直位置から引込み位置へ回転移動させられ、引込み位置において上部レベリングカセット(5a)をレベリング機械から取り外すことができる、請求項1から4までのいずれか1項記載のレベリング機械。
【請求項6】
下部レベリングカセット(5b)が、レベリングカセットのベースから上方へ延びた複数の直立部(55b)を有する、請求項1から5までのいずれか1項記載のレベリング機械。
【請求項7】
それぞれの鉛直ビーム(2a,2b)が、レベリング機械の少なくとも1つのレベリングカセット(5a,5b)を並進するように案内するために別の接触面と協働するための内部鉛直接触面(21a)を有する、請求項1から6までのいずれか1項記載のレベリング機械。
【請求項8】
下部レベリングカセット(5b)が、下部レベリングカセットを並進するように案内するために鉛直ビーム(2a,2b)の内部鉛直接触面(21a)と協働するための少なくとも1つの外部鉛直接触面(59)を有する、請求項1から7までのいずれか1項記載のレベリング機械。
【請求項9】
下部レベリングカセット(5b)の少なくとも1つの内部鉛直接触面(59)が、レベリングカセットのベースから上方へ延びた下部レベリングカセット(5b)の直立部(55b)に設けられている、請求項1から8までのいずれか1項記載のレベリング機械。
【請求項10】
下部レベリングカセット(5b)が、上部レベリングカセット(5a)を並進するように案内するための内部接触面(57b)を有する、請求項1から9までのいずれか1項記載のレベリング機械。
【請求項11】
上部レベリングカセット(5a)が、レベリング機械のエレメント(2a,2b,5b)の別の接触面と協働するための、上部レベリングカセットを並進するように案内するための少なくとも1つの外部接触面(55a)を有する、請求項1から10までのいずれか1項記載のレベリング機械。
【請求項12】
上部レベリングカセット(5a)のそれぞれの外部接触面(55a)が、凸面状である、請求項1から11までのいずれか1項記載のレベリング機械。
【請求項13】
上部レベリングカセット(5a)のそれぞれの外部接触面(55a)が、ビーム(2a,2b)の内部鉛直接触面(21a)と協働する、請求項7を引用する請求項11及び12のうちのいずれか1項記載のレベリング機械。
【請求項14】
上部レベリングカセット(5a)のそれぞれの外部接触面(55a)が、下部レベリングカセット(5b)の内部鉛直接触面(21a)と協働する、請求項10を引用する請求項11及び12のうちのいずれか1項記載のレベリング機械。
【請求項15】
上部レベリングカセット(5a)を鉛直方向に並進するように移動させるための手段が、固定された上部バックプレート(11)及び上部レベリングカセット(5a)に堅く結合された複数の閉鎖シリンダ(10)である、請求項1から14までのいずれか1項記載のレベリング機械。
【請求項16】
請求項1から15までのいずれか1項記載のレベリング機械と協働するためのフレキシブルなレベリングカセットにおいて、上部レベリングカセット(5a)の厚さ(e)が、最大値(e1)と最小値(e2)との間で変化しており、レベリング機械の閉鎖シリンダ(10)と協働するための、最大厚さ(e1)の複数のゾーン(Z1)を有し、最大厚さ(e1)のゾーンが、最小厚さ(e2)のゾーン(Z2)によって互いに分離されており、これにより、カセット(5a)の変形慣性を減じることを助けることを特徴とする、フレキシブルなレベリングカセット。
【請求項17】
最大厚さ値(e1)が、最小厚さ値(e2)の1.5倍から4倍であり、好適にはこの値の2倍から2.5倍である、請求項16又は17記載のレベリングカセット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2013−503752(P2013−503752A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528232(P2012−528232)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【国際出願番号】PCT/EP2009/062659
【国際公開番号】WO2011/029485
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(503087245)シーメンス ヴェ メタルス テクノロジーズ エスアーエス (19)
【氏名又は名称原語表記】Siemens VAI Metals Technologies SAS
【住所又は居所原語表記】51 rue Sibert, F−42400 Saint−Chamond, France
【Fターム(参考)】