説明

複数の性フェロモン物質を含む徐放性製剤及び防除方法

【課題】複数の害虫を対象として制御された同時放出を可能とし、害虫の発生期間に適合させて性フェロモンを放出することができる性フェロモンの徐放性製剤及びその防除方法を提供する。
【解決手段】炭素数10〜20の脂肪族誘導体の性フェロモン物質を少なくも2つ以上含有する性フェロモン徐放性製剤であって、該脂肪族誘導体のうち、官能基の炭素数を含めない炭素数が最少の性フェロモン物質の一部又は全部が含まれる高分子材料の第1室と、残りの性フェロモン物質が含まれる高分子材料の第2室を備えてなる性フェロモン徐放性製剤を提供する。また、この性フェロモン徐放性製剤を用いる防除方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の性フェロモン物質について同時放出を可能とするための性フェロモンの徐放性製剤及び防除方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、害虫性フェロモンの最も有効な利用方法として、化学的に合成された性フェロモンのある一定濃度を圃場に滞留させることで、害虫の配偶行動を撹乱させ、その結果交尾阻害を引き起こさせる交信撹乱法が、実用化段階に進んできている。この際重要になってくるのが、合成した昆虫性フェロモン物質を長期間、一定速度以上で放出させるための放出制御製剤(ディスペンサー)の開発と対象の害虫の交信撹乱しなければならない期間の設定である。
【0003】
単一の害虫の性フェロモン成分をある期間、一定の速度で放出制御することは、性フェロモン物質も1種類か、もしくは化学構造的に類似の化合物であるから比較的容易である場合が多い。しかし、中には化学構造的に全く異なる化合物を性フェロモン物質として持つ害虫も存在し、それらを同一のディスペンサーに封入して放出制御することは、これまで困難であった。例えば、野菜の害虫であるコナガの性フェロモン物質は、(Z)−11−ヘキサデセナールと(Z)−ヘキサデセニルアセテートであり、同じく野菜の害虫であるシロイチモジヨトウの性フェロモン物質は、(Z,E)−9,12−テトラデカジエニルアセテートと(Z)−9−テトラデセノールで、それぞれ官能基が異なる化合物を性フェロモン物質として持っている。また、果樹やお茶の害虫であるハマキムシ類の性フェロモン物質の主成分は、(Z)−11−テトラデセニルアセテートであるが、マイナー成分の一部である(Z)−9−ドデセニルアセテートや11−ドデセニルアセテートは、各化合物の官能基は同じであるが、炭素数が異なる化合物を性フェロモン物質として持っている。それらを同一のディスペンサーに封入しても蒸気圧差が大きいため、両成分を一定に放出制御できない。更に、一般的には、ある種の作物での害虫相が単一であるケースは極めて稀であり、特に日本をはじめ害虫相が複雑な地域では、複数の害虫を同時に防除しなければならない場合がほとんどである。
【0004】
化学構造的に異なる化合物を同時に放出させる場合、徐放性製剤の設計において困難な点は、
(1)官能基の違いにより沸点差(蒸気圧差)が大きく異なり、放出制御できない、
(2)同一の官能基をもつ化合物であっても炭素数の違いにより沸点差(蒸気圧差)が大きく異なり、放出制御できない、
(3)バリアー性のない多孔質担体に担持させたような製剤では、蒸発面積を一定にしても、蒸気圧の大きな化合物が速く放出されてしまう、
等である。また、複数の害虫を同時に防御する場合においては、害虫毎にその発生期間が異なっていること等が設計上の困難な点として挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実願昭61-88375号(実開昭62-198201号)のマイクロフィルム
【特許文献2】実願昭63-149399号(実開平2-69902号)のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、一種類の害虫でも化学構造的に異なる性フェロモン物質を混合する場合や複数の害虫性フェロモン物質を混合した場合は、製剤内部に充填した組成そのままの比率で放出させることは困難であるばかりでなく、害虫の発生期間に適合させることは更に困難を極めた。
例えば、日本の梨では、一般に、Z−11−テトラデセニルアセテート(エステル基の炭素を含めないと炭素数14)を性フェロモンの主成分とするハマキムシ類、Z−8−ドデセニルアセテート(エステル基の炭素を含めないと炭素数12)を性フェロモンの主成分とするナシヒメシンクイ、Z−13−イコセン−10−オン(カルボニル基の炭素を含めないと炭素数20)を性フェロモンの主成分とするモモシンクイガの3種類の害虫を同時に防除することが必須とされている。特に、梨ではナシヒメシンクイの性フェロモンZ−8−ドデセニルアセテートは他の2種よりも蒸気圧が大きいにもかかわらず、その防除は秋の晩成品種でも重要であり、長期間の放出が望まれる。現在ではこれを満足する徐放性製剤は開発されていない。なお、アセテートはacetateを意味する。
【0007】
一方、複数の害虫を同時交信撹乱するためには、それぞれのディスペンサーを作成し、それぞれの害虫発生期間に合致するように設置して防除することも考えられるが、製剤化のコストが高くなり、ディスペンサーの設置にも多大の労力が必要となり、農業の省力化に逆行するものである。
【0008】
このように、現在、より省力化した形で複数の性フェロモンを首尾良く放出する徐放性製剤の開発が望まれていた。
本発明の目的は、一種類の害虫でも化学構造的に異なる性フェロモン物質を混合する場合や複数の害虫の性フェロモンを混合する場合の同時放出の制御を可能とし、後者においては害虫の発生期間に適合させて性フェロモンを放出することができる性フェロモンの徐放性製剤及びその防除方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、これらの問題を解決し、複数の性フェロモン物質の同時放出の制御を可能とし、害虫の発生期間に適合させて性フェロモンを放出する事ができる性フェロモンの徐放性製剤を検討した結果、官能基の炭素数を含めない炭素数が最少の性フェロモン物質の一部又は全部を一方の高分子材料に封入し、残りの性フェロモン物質を他方の高分子材料に封入し、好ましくは両者を平行に接合して一体化することにより、上記目的を達成できる事を見出して本発明を完成した。
【0010】
具体的には、炭素数10〜20の脂肪族誘導体の性フェロモン物質を少なくも2つ以上含有する性フェロモン徐放性製剤であって、該脂肪族誘導体のうち、炭素数が最短の性フェロモン物質の一部又は全部が含まれる高分子材料の第1室と、残りの性フェロモン物質が含まれる高分子材料の第2室を備えてなる性フェロモン徐放性製剤を提供する。また、この性フェロモン徐放性製剤を用いる防除方法を提供する。参考例として、炭素数10〜20の脂肪族誘導体の性フェロモン物質を少なくとも2つ以上含有する性フェロモン徐放製剤用容器であって、該脂肪族誘導体のうち、炭素数が最短の性フェロモン物質の一部又は全部を収納するための高分子材料の第1室と、残りの性フェロモン物質を収納するための高分子材料の第2室を備えてなる性フェロモン徐放性製剤用容器を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の徐放性製剤及び防除方法によれば、複数の害虫を対象として制御された同時放出を可能とし、害虫の発生期間に適合させて性フェロモンを放出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の徐放性製剤の製造工程を示し、図1(a)は2本の高分子材料のチューブ、図1(b)は設けられた接合部、図1(c)はヒートシール装置を用いるシール工程、図1(d)は徐放性製剤の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、これについて詳しく説明する。
本発明の害虫性フェロモンの例をその成分の化学構造と対象害虫での役割、炭素数をその一例として、日本の一般的な梨、モモの防除を対象として例示すると以下の表1のようになる。なお、蒸気圧は、「OECD化学品テストガイドライン追録第7〜8号」(1995年7月27日採択)に準拠して25℃における気体流動法で測定した。
【0014】
【表1】

【0015】
上記化合物を高分子材料製の膜からなるチューブ細管、カプセル、ラミネート等で包み、この膜をバリアーとして放出制御しようとすると、その放出制御因子としては、(1)封入された性フェロモン物質の蒸気圧、(2)性フェロモン物質の官能基と高分子材料の親和性(溶解パラメーター)の2点が重要になってくる。
【0016】
上記表の例では、微量成分はその含有量が小さいので主成分に着目すると、各エステルと高分子材料の親和性の差は極めて小さく、エステルとケトンの差も比較的小さいと考えられる。従って、上記表の化合物を全て混合した均一な溶液をある種の高分子材料に封入した場合、各成分の放出速度はその蒸気圧に大きく依存する。即ち、蒸気圧の大きいエステル、11−ドデセニルアセテート、Z−8−ドデセニルアセテート、Z−9−ドデセニルアセテート等の官能基の炭素数を含まない炭素数が12の化合物が優先的に放出されてしまい、蒸気圧の小さいZ−11−テトラデセニルアセテートやZ−13−イコセン−10−オン等の放出は抑えられてしまう。また、放出の速い化合物は、均一な放出ができない結果、徐放性製剤としてのライフ(有効な放出期間)が著しく短くなってしまう。
【0017】
そこで、本発明者らは、種々の検討の結果、一種類の害虫でも化学構造的に異なる性フェロモン物質を混合する場合や、複数害虫の性フェロモン物質を混合する場合には、その複数の性フェロモン物質のうち、官能基の炭素数を含まない炭素数が最も少なく、蒸気圧の大きい性フェロモン物質(表中、Z−8−ドデセニルアセテート、Z−8−ドデセン−1−オール)の混合物の全部又はその一部を独立した高分子性材料の第1室に封入し、残りの性フェロモン物質を高分子材料の第2室に封入したものが、好ましくは平行に接合され一体化した製剤とすることで、互いに他の成分の放出を抑えることなく、最も蒸気圧の高いナシヒメシンクイ性フェロモン成分をはじめ、ハマキムシ性フェロモン、モモシンクイガ性フェロモンを同時に長期間放出させることが出来ることを見出し、本発明を完成した。
【0018】
本発明に用いられる性フェロモン物質は、炭素数10〜20の脂肪族誘導体であり、好ましくは、鱗翅目の脂肪族直鎖状アルコール及びそのエステル、ケトンであり、その2種類以上を同時に放出させる場合である。脂肪族誘導体は、好ましくは、炭素数10〜18の脂肪族直鎖状アルコールと炭素数12〜20の脂肪族直鎖状アセテートと炭素数10〜20の脂肪族直鎖状ケトンとからなる一群から選ばれる。なお、脂肪族直鎖状アセテート及び脂肪族直鎖状ケトンの官能基の炭素数は、それぞれ2及び1であることから、官能基の炭素数を含まない炭素数は脂肪族直鎖状アセテートで10〜18、脂肪族直鎖状ケトンで9〜19である。
脂肪族誘導体の二種類以上は、同類に属する性フェロモン物質の二種類以上であっても、異なる類に属する性フェロモン物質の二種類以上であってもよい。なお、これら物質に、抗酸化剤、紫外線吸収剤等の安定剤や着色剤を10重量%以下であれば混合することもできる。
【0019】
例えば、日本の梨、モモを対象とした複数の種類の害虫を対象とした交信撹乱剤の場合、表2に示すように3種の害虫が対象となる。
ナシヒメシンクイは、Z−8−ドデセニルアセテートを主成分とし、Z−8−ドデセン−1−オールを微量成分とする性フェロモンを有し、発生期間は4月下旬から9月下旬である。ハマキムシ類は、Z−11−テトラデセニルアセテートを主成分とし、 Z−9−テトラデセニルアセテートとZ−9−ドデセニルアセテートと11−ドデセニルアセテートと10−メチル−ドデシルアセテートとZ−11−テトラデセン−1−オールを微量成分とする性フェロモンを有し、発生期間は5月中旬から9月上旬である。モモシンクイガは、Z−13−イコセン−10−オンを成分とする性フェロモンを有し、発生期間は5月下旬から9月中旬である。
なお、主成分とは、各害虫の性フェロモンの構成成分のうち、含有量の最も多いものをいう。微成分とは、各害虫の性フェロモンの構成成分のうち、主成分以外の成分をいう。
【0020】
【表2】

【0021】
このうち、主成分としては最も炭素数の短いナシヒメシンクイ性フェロモン物質の全部又は一部を独立した高分子材料の第1室に封入し、それ以外のモモシンクイガ、ハマキムシ類の性フェロモンを高分子材料の第2室に封入する。このとき、第2室にはナシヒメシンクイの主成分と同じ炭素数の微量成分が存在するが、微量成分はその生物的機能が充分解明されているとはいえない場合があるので、主成分と同じ高分子材料部分に混ぜることで、微量ながらも同じ高分子材料部分から放出させることが望ましい。
なお、各室への性フェロモン物質の収納量は、徐放性製剤の放出期間、性フェロモン物質の揮発性及び容器の高分子材料との親和性等によって異なるが、第1室には50〜150mg、好ましくは100mg、第2室には200〜300mg、好ましくは230mgである。
【0022】
本発明に用いられる高分子材料は、ポリオレフィン、ポリアクリル、ポリエステル、ポリアミド、ポリメタクリル、ポリオレフィン−ビニルアルコールエステル共重合体等であり、その膜をバリアーとして用いているものであれば、一般の押出成形法による管状に加工したチューブ状やカプセル、バッグ、ラミネート等が挙げられ、その加工上、可塑剤、滑剤、安定剤、着色剤等、適宜混合は可能である。本発明では、何らかの形で連結、好ましくは一体化することが可能であれば、2つの封入した高分子材料は互いに同質であっても、異なる材質であっても適応できる。
【0023】
本発明に用いられる高分子材料製の収納室は、性フェロモン物質を収納できるものであれば特に限定されないが、例えば、高分子材料性の膜からなるチューブ細管、カプセル、ラミネート等で包み、この膜をバリアーとして放出制御できるものである。
用いられる高分子膜の寸法は、中に封入する性フェロモン物質の物性によって適宜選択することが出来、また肉厚や内外径は2つの高分子材料の第1室と第2室で同一でも、異なるものであっても良い。特に肉厚は性フェロモン成分の蒸発速度に大きく影響されるので、必要な放出期間と性フェロモン成分の蒸気圧、溶解パラメーターによってそれに適した厚みを選定できるが、高分子材料の第1室と第2室とで極端に肉厚に差があれば、実用上封入時のシール加工等がしにくくなるので、実用的に可能な範囲を選択するのに注意を要する。
【0024】
本発明では、高分子材料の第1室と第2室の構造は、特に限定されないが、好ましくは、ヒートシールや接着剤を用いて化学的に連結できるものである。また、テープや針金等を用いて物理的に連結してもよい。その際、高分子材料の第1室と第2室となるチューブ1と2は、図1(a)に示すように独立していても、図1(b)に示すように接合部3により平行に一体化してもよい。また、図1(c)に示すようにチューブの先端をヒートシール装置4を用いて化学的又は物理的に接合して連結させることで、最終的に図1(d)の断面図に示すように性フェロモンA1とA2を有する徐放性製剤としてもよい。図なる。但し、この形状に限られるものではない。
【実施例】
【0025】
以下、実施例と参考例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
[実施例1]
ナシヒメシンクイモモシンクイガ−ハマキムシ類の3種複合徐放性製剤
下記チューブ(A)と(B)が図1のように平行に一体化した20cmチューブ状製剤を調製し、千葉梨園において10aあたり180本の製剤を2ha分を図4に示すように5月9日に設置した。その結果、10月中旬の収穫まで、果実にはハマキムシ類、モモシンクイガ、ナシヒメシンクイのいずれにも被害は認められなかった。製剤設置後の各虫別フェロモン成分の残存率を表3に示す。
(A)内径1.4mm、外径2.5mm(肉厚0.55mm)の高密度ポリエチレンチューブに以下の成分が封入されたもの
(ハマキムシ成分)
Z−11−テトラデセニルアセテート 88mg
Z−9−テトラデセニルアセテート 17mg
10−メチル−ドデシルアセテート 2mg
Z−9−ドデセニルアセテート 5mg
11−ドデセニルアセテート 2mg
Z−11−テトラデセン−1−オール 1mg
(モモシンクイガ成分)
Z−13−イコセン−10−オン 80mg
(ナシヒメシンクイ成分)
Z−8−ドデセニルアセテート 34mg
Z−8−ドデセン−1−オール 0.3mg
(B)内径0.90mm、外径2.30mm(肉厚0.70mm)の高密度ポリエチレンチューブに以下の成分が封入されたもの
(ナシヒメシンクイ成分)
Z−8−ドデセニルアセテート 95mg
Z−8−ドデセン−1−オール 1mg
【0026】
【表3】

【0027】
[比較例1]
内径1.5mm、外径2.6mm(肉厚0.55mm)の20cm高密度ポリエチレンチューブで、賦形性を持たせるためにアルミニウム線が接合されたものに、実施例で用いた性フェロモン成分全てを均一に混合した溶液を封入したものを調製し、この製剤を一部,上記実施例と同じ梨園に設置して、その放出による残存フェロモン量の経時変化を測定した。
その結果を下記表4に示す。
【0028】
【表4】

【0029】
この結果より、ナシヒメシンクイのライフは約90日と考えられる。
【0030】
[参考例2]
海外の果樹の害虫であるPeach Twig Borer (Anarsia lineatella)の性フェロモン製剤として、以下の(A)と(B)のチューブが図1のように平行に一体化した20cmチューブ状製剤を調製し、25℃、0.3m/sの恒温槽中で放出を確認した。経過日数に対する各性フェロモン成分の残存率の変化を表5に示す。
(A)内径1.07mm、外径2.07mm(肉厚0.50mm)の高密度ポリエチレンチューブにE−5−ドデセニルアセテートが140mg封入されたもの。
(B)内径0.70mm、外径1.10mm(肉厚0.20mm)の高密度ポリエチレンチューブにE−5−ドデセノールが60mg封入されたもの。
【0031】
【表5】

【0032】
[比較例2]
内径1.28mm、外径2.48mm(肉厚0.60mm)の20cm高密度ポリエチレンチューブで、賦形性を持たせるためにアルミニウム線が接合されたものに、参考例2で用いた性フェロモン成分全てを均一に混合した溶液を封入したものを調製し、この製剤を上記参考例2と同じ条件で各性フェロモン成分の残存率の経時変化を測定した。その結果を表6に示す。
【0033】
【表6】

【0034】
本願の原出願の出願時の特許請求の範囲は、以下である。
[請求項1]
炭素数10〜20の脂肪族誘導体の性フェロモン物質を少なくも2つ以上含有する性フェロモン徐放性製剤であって、該脂肪族誘導体のうち、官能基の炭素数を含めない炭素数が最少の性フェロモン物質の一部又は全部が含まれる高分子材料の第1室と、残りの性フェロモン物質が含まれる高分子材料の第2室を備えてなる性フェロモン徐放性製剤。
[請求項2]
上記脂肪族誘導体が、炭素数10〜18の脂肪族直鎖状アルコールと炭素数12〜20の脂肪族直鎖状アセテートと炭素数10〜20の脂肪族直鎖状ケトンとからなる一群から選ばれる請求項1に記載の性フェロモン徐放性製剤。
[請求項3]
上記性フェロモン徐放性製剤が、複数の種類の害虫を対象とする請求項1又は請求項2に記載の性フェロモン徐放性製剤。
[請求項4]
請求項1〜3のいずれかに記載の性フェロモン徐放性製剤を用いる防除方法。
[請求項5]
性フェロモン物質を少なくとも2つ以上含有する性フェロモン徐放性製剤用容器であって、官能基の炭素数を含めない炭素数が最少の性フェロモン物質の一部又は全部を収納するための高分子材料の第1室と、残りの性フェロモン物質を収納するための高分子材料の第2室を少なくとも1つ以上備えてなる性フェロモン徐放性製剤用容器。
【符号の説明】
【0035】
1 チューブ
2 チューブ
3 接合部
4 ヒートシール装置
A1 性フェロモン物質
A2 性フェロモン物質

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数10〜20の脂肪族誘導体の性フェロモン物質を少なくも2つ以上含有し、一種類の害虫の化学構造的に異なる性フェロモンの混合物又は複数の害虫の性フェロモン物質の混合物を用いる性フェロモン徐放性製剤であって、上記脂肪族誘導体が、炭素数10〜18の脂肪族直鎖状アルコールと炭素数12〜20の脂肪族直鎖状アセテートと炭素数10〜20の脂肪族直鎖状ケトンとからなる一群から選ばれ、該脂肪族誘導体のうち、官能基の炭素数を含めない炭素数が最少の性フェロモン物質の一部又は全部が含まれる高分子材料の第1室と、残りの性フェロモン物質が含まれる高分子材料の第2室を備え、上記官能基の炭素数を含めない炭素数が最少の性フェロモン物質が官能基の炭素数を含めない炭素数10〜12の脂肪族直鎖状アセテートである性フェロモン徐放性製剤。
【請求項2】
上記性フェロモン徐放性製剤が、複数の種類の害虫を対象とする請求項1に記載の性フェロモン徐放性製剤。
【請求項3】
上記第1室と上記第2室の高分子材料が、同質である請求項1又は2に記載の性フェロモン徐放性製剤。
【請求項4】
上記第1室の肉厚が、上記第2室の肉厚よりも厚い請求項1〜3のいずれかに記載の性フェロモン徐放性製剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の性フェロモン徐放性製剤を用いる防除方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2011−46739(P2011−46739A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259965(P2010−259965)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【分割の表示】特願2003−71168(P2003−71168)の分割
【原出願日】平成15年3月17日(2003.3.17)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】