説明

複数の排水シューを有するツインファブリック形成部

原料衝突後、2つのファブリックが原料を保持して挟み込む、ツインファブリック製紙機械用の形成部。ファブリックの一方又は双方に対して選択的に提供される離間した複数の排水シューが各ファブリックに対して機械方向に連続的な摺接支持を与え、各排水シューは、該排水シューの前縁及び後縁間の角変位を含む選択される巻付角度だけファブリックを撓ませる。排水シューの少なくとも1つが排水ボックスに固定され、ファブリック当接面から該シューの機械側の面を貫通して延在する複数の排水開口を設けている。本発明の配置により、改良された紙ウェブの排水及び形成が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ツインファブリック製紙機械の形成部に関し、詳細には、形成部の始端部分における2つ以上の排水シューの配置に関し、最も詳細には、改善されたウェブ(web:紙匹)排水及びウェブ形成を提供するための複数の排水シューの配置に関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本願は、米国特許出願第61/107,051号(その内容は参照により本明細書に援用される)の優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
[発明の背景]
本発明は、紙製品の排水特性及び保持特性を最適化するためのツインファブリック製紙機械の形成部の始端部分における幾つかの排水要素及び形成要素のうち選択した幾つかの要素の配置に関する。本発明は特に、2つのファブリックの巻付角度を調整することでウェブの排水特性、保持特性及び形成特性を最適化するために、バッキングファブリック及び/又は搬送ファブリックの一方又は双方と摺接状態で連続的に配設される2つ以上の排水シューの使用に関する。排水シューは、様々な坪量のセルロース製品の製造の際にウェブ排水速度及びシート形成の改善された制御を提供するように構成及び配置され、従来技術の配置では達成することがこれまで困難であったか又は不可能であった、ファブリックの巻付角度及び排水速度を提供することができる。
【0004】
本明細書で用いる場合、「排水シュー」という用語は具体的には、ウェブから出された流体の通過フロー排水部を有しているか又は有していない、ファブリック及びウェブの連続的な機械方向(MD)配向支持を提供するファブリック支持装置に関する。これらの排水シューは従来の「形成シュー」とは区別されるものとし、従来の「形成シュー」は、それぞれが形成部の幅を横断して(すなわち機械横断方向(CD)に)延在していると共にそれぞれが該シューにおける連続ブレードからMDに離間している、複数のブレードを含んでいる。本発明の形成部において用いられる排水シューは、該排水シューが接触する製紙用ファブリックに対して連続的なMD支持を提供し、該排水シューには、排水を行うことができるMD配向スロット、又は、複数の孔若しくは同様の開口が設けられていてもよく、それら孔、開口部の間には、ファブリックに対してMD支持を提供するランド領域(land areas)がある。代替的に、本発明の排水シューは中実であってもよく、通過フロー排水部に対して閉鎖されてもよい。排水シューは、好適な形成及び排水に十分な巻付角度でファブリック及び原料を撓ませる
【0005】
現代の製紙機械のツインファブリック形成部では、製紙原料がヘッドボックススライスリップから2つの収束形成ファブリック間のギャップへ高速かつ正確に送出される。ファブリックは通常、(ブレード形成におけるような)湾曲したブレード付き形成シュー又は(ロール形成におけるような)吸引成形ロールを第1のファブリックが摺接通過する際に該第1のファブリックに原料噴流が衝突するように配置され、第2のファブリックがシュー又はロール上で第1のファブリックとの間に原料を押さえ込む。これらのファブリックの一方は、シートを形成部の下流の押圧部に送る搬送ファブリックとして配置され、第2のファブリックは、原料を第1のファブリックとの間に挟み込んだまま保持するようにバッキングファブリックとして配設される。ロール形成プロセス及びブレード形成プロセスは双方とも様々な利点があるが、それぞれ、不都合な点もあり、それが本発明が解決しようとする課題に相当する。
【0006】
ブレード形成構成では、2つのファブリックが原料と共に、湾曲した形成シューに正確に配設された一連の機械横断方向(CD)配向ブレードに巻き付く。ヘッドボックスからの原料噴流は第1のブレードに先駆け、第1のファブリック(搬送ファブリック又はバッキングファブリック)に衝突し、ファブリックが収束する角度は概して小さく、約3度〜4度の範囲であり、製品をブレード形成配置とすることで、噴流衝突角度、つまりはシートの欠陥に対して非常に感度の高いものにする。ブレードに対するファブリックの張力及び撓みが、初期脱水の駆動時に原料に対して脈動圧力及びせん断を与える。現在のブレードフォーマー設計によっては、排水が制限されているものもあり、これはそれらの設計では形成の早期段階で原料を十分に排水しないことを意味する。ブレード形成は通常、CD配向ブレードにより複数の連続的周期的な圧力パルス及びせん断を原料に与えるため、良好に形成された紙製品を作り出す。しかしながら、これらの連続した圧力パルスは、初期マットに既に堆積している微細材料を乱す可能性があり、この微細材料がシートから損失し、その後、排水の際に濾液と共に再循環する場合がある。したがって、ブレードフォーマーは概して、良好な形成を提供するが、第1のパス(first pass:初回の通過)の保持及び排水が不十分であるという犠牲を払う。
【0007】
ロール形成配置では、2つのファブリックが原料と共に、回転吸引成形ロールの一部に巻き付き、ロールに対するファブリックの撓みにより、より一定の持続した初期排水を提供する。ロール形成は通常、ブレード形成配置にあるような複数の連続した圧力パルスがないことにより微細繊維のより良好に保持されるが、あまり満足のゆく形成は提供せず、通常、吸引ロールのエネルギー消費により動作コストがより高い。ロール形成は、ファブリック収束角がより大きい(概して約8度〜10度である)ことにより、噴流衝突角度の変化に対する感度がブレード形成よりも低い。
【0008】
形成ロールの半径は排水速度、すなわち、水が初期の紙匹から除去される速度に直接影響することがよく知られている。段ボール用中芯、段ボール原紙等のようなより重量の重い製品について十分な排水を提供するようにファブリックの巻付量が多い排水ロールが必要とされる場合が多い。吸引成形ロールは非常に高価であり、設置されると、容易に移動、交換ができず、メンテナンスコストも高い。形成ロールはまた、衝突点近くの形成部の前半部分で大きなスペースを占める。操作の際、排水された流体はロールの巻付部分を通じて外側に搾水され、ロールシェルのキャビティに入る。ファブリックが形成ロールを出る際、ロール側の排水がロールから搾水される。ロール形成プロセスにおいて製造された紙製品は、ロール巻付きの終了時にロールとファブリックとの間の末広のニップ(diverging nip)にて生じる真空パルスにより、ロールから出るとファブリックが分離する欠陥を呈する可能性がある。この真空は2つのファブリックを引き離す可能性があり、紙製品に欠陥を生じさせる。さらに、排水が大気条件でファブリックループに搾水される際、吸引ロールの真空シールは、出口ニップで消失するため、連続的に再生成されねばならないが、これには高いエネルギーが求められる。さらに、不都合な湿気による曇りがこの排水に伴って発生する可能性があり、シートの再湿又は欠陥を引き起こす。したがって、ロールフォーマーは、ブレードフォーマーと比較して改善された保持特性及び低減された初期衝突感度を提供するが、形成に高額な動作コストがかかると共に他の動作上の問題を呈する。
【0009】
段ボール用中芯、段ボール原紙等の比較的重量の重い紙製品、並びに、新聞、雑誌及び広告用紙を意図した軽量の紙製品(多量の充填材料(例えば炭酸カルシウム、タルク、様々なクレー等)を含む)は、複数の連続した圧力パルスをもたらさないように急速な初期排水を要する。これらの種類の製造は、良好な形成特性及び第1のパスの高い保持特性(充填材の低損失)を提供しつつ迅速に排水されることができる場合に最適化することができる。これまで、これらの種類は多くの場合、ロールフォーマーの構成を用いて製造されていた。
【0010】
[従来技術の説明]
特許文献1(Buchanan他)は、単一ファブリック又はツインファブリックの形成部内の衝突点に、間に通過フロー排水孔が配設されているMD配向、形状のファブリック支持面を含む溝付き衝突シューを配設することによる、流体排水及び原料噴流からの同伴空気の除去の改善を開示している。衝突シューは複数の少なくとも第1と第2の薄肉の積層セグメントからなり、これらの積層セグメントは形成ファブリックが摺動するのに適した表面形状になるように形状決めされており、該セグメントの間には同伴空気及び水の除去のための通過フロー排水孔が配設されている。
【0011】
特許文献2(Buchanan他)は、原料噴流が形成ファブリックとその後縁で又は後縁近くで衝突するように単一ファブリック又はツインファブリック製紙機械に配設される排水孔付き前縁ブレードを開示している。ブレードは形成ファブリックが形成部に入る前にこれを曲げ、支持面間に配設されたMD配向スロットからかなりの割合の空気及び少なくとも一部の液体を排水する。
【0012】
特許文献3(Wildfong他)は、製紙原料噴流の衝突点の位置を調整し、形成を最適化できるように、枢動又は並進移動によって移動する調整可能な衝突シューを開示している。
【0013】
特許文献4(Poikolainen他)は、形成部において使用する脱水素子を開示しており、この脱水素子は穿孔した孔から形成される非脈動吸引ゾーンを含み、このゾーンの後に、原料に脈動を与えるCD配向出口溝が続いている。
【0014】
特許文献5(Poikolainen他)は、二つの連続した脱水ゾーンを有するツインファブリック型形成配置を開示している。第一ゾーンでは、2つのファブリックのうち一方は、固定した形成シューの曲面を通過する際に摺接支持されるが、他方のファブリックは支持されないままである。第二脱水ゾーンは、形成シューから下流に、かつ、形成シューの対向側に取り付けられた固定ブレードによって形成され、それらブレードの間には弾性的に取り付けられたCD配向ブレード(共に脈動的な脱水を起こす)が配設されている。
【0015】
特許文献6(Masuda他)は、それぞれ概してシュー面から離れるようにファブリック及びウェブの下側から流体を退ける及び方向付けするMD配向溝を備えている複数の凸状湾曲した形成シューを含む形成配置を開示している。
【0016】
特許文献7(Wildfong他)は、少なくとも1つのフォーミングシューを含むツインファブリック形成部を開示している。シューの紙側の面は複数の溝を含んでおり、これらの溝は、前縁には延在せず、シューを貫通して延在しない。
【0017】
本明細書に用いる場合、以下の用語は以下の意味が付与される:
巻付角度:後縁のシュー面に対する接線の向きに対する、前縁のシュー面に対する接線の向きの変化によって測定された場合の、シューの前縁及び後縁間の角変位。この巻付角度は方向値なしに特定され、そのため、本発明の形成部において、2つ以上の排水シューが、排水シューのそれぞれに対する巻付角度の正の値の和である、ファブリックに対しての巻付角度の総計を提供するように配置される。
圧力パルス:原料を保持しているファブリックが外側要素を通過する際の該原料中の流体圧力の変化。
曲率半径:曲率が排水シューの表面の一部の曲率に対応する仮想の円の中心までの直線距離。
ファブリック当接面:移動ファブリックが摺接通過する、ファブリック支持要素の一部の表面。
機械方向(MD):紙製品が乾燥部を介してヘッドボックスから抄紙機を通過する際の紙製品の移動方向に対して平行な方向。
機械横断方向(CD):MDの平面に対して横断するがMDの平面内にある方向。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第7,005,040号
【特許文献2】欧州特許第1315861号
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/0295468号
【特許文献4】米国特許第7,491,295号
【特許文献5】米国特許第7,364,643号
【特許文献6】米国特許第6,881,302号
【特許文献7】米国特許第6,372,091号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
上記に述べた従来技術の形成部配置は全て、異なっているが一定の成果をあげているが、これらの解決策はそれ自体ではいずれも、ロール形成の所望の態様、すなわち、良好な第1パスの保持及び噴流衝突位置に対する比較的低い感度を、ブレード形成の有益な圧力パルス活性及び初期排水特性と組み合わせることができない。したがって、1つ及び複数のより小型の装置であって、購入及び設置にあまり費用がかからず、以下:
(a)原料の特性及び生成すべき製品の特性の変化に応じた形成ファブリックの巻付角度の変化、及び
(b)吸引成形ロールの製造コストを必要としない形成ファブリックの大きな巻付角度
のいずれか又は双方を可能にする装置が、吸引成形ロールの代わりに利用可能であれば非常に望ましい。特に、そのような装置が大きな排水能力、すなわち、ウェブの排水のために大量の流体を扱う能力を備え、同時に、非脈動である場合、すなわち、これは紙製品における充填材及び微細繊維の保持を低減させる破壊的な圧力パルスを原料にもたらすことがない場合がさらにより有利であろう。広範の紙製品に対して上述の利点を持つ、複数のかかる装置が、比較的低いコストで形成部内に配置されることができるとすれば、さらに有益であろう。
【0020】
本発明は、ツインファブリック製紙機械の初期形成ゾーンにおいて、保持特性を損なわずに、又はシートの欠陥をもたらさずにウェブの排水及び形成の双方を最適化するように構成及び配置される少なくとも2つの排水シューの配置を提供することによって、従来技術のこれらの上述の欠点に対処しようとするものである。本発明の形成部における排水シューの配置は、ファブリックが装置を摺接しながら移動する際に、ロール又はブレードタイプ形成配置においてこれまで必要とされていたようにファブリックの巻付角度を制限することはない。本発明によって、各個々の排水シューに対して、また、組み合わせた排水シュー全てに対する巻付角度の総計として、形成ファブリックによって受ける巻付角度を、特定の状況に合わせて慎重に選択することができる、すなわち、ウェブ特性の最適化のために所要の排水及び形成を得るように巻付角度の総計を必要に応じて大きく又は小さくすることができる。
【0021】
ここで、紙形成を最適化するようにロール及びブレード形成の双方の重要かつ有利な態様を組み合わせることができることが分っており、これは特により重量の重い物に対してであるが、全ての坪量グレードに対して適用可能である。本発明の形成部配置は、早期形成時に、持続性があるが変化する機械方向圧力を提供することによって、優れた形成特性を提供しつつも、(ロール形成におけるような)噴流衝突角度に対する紙製品の感度を低減する。圧力が脈動するのではなく持続するため、微細繊維保持値が一般的には改善される。
【0022】
本発明から得られるさらなる利点は、形成ファブリックが複数のシューに巻き付く際に原料によって受ける持続圧力が、各シューのファブリック当接面の曲率半径の変化に伴いMD内で変化することである。これにより、原料中に非脈動MDせん断が生じ、それによって、同じ排水能力及びファブリック巻付総計を有する同程度の性能のロールフォーマーに比べて良好な保持及び優れた形成を提供しつつも、いかなる繊維フロックも分解する。1つの排水シューのファブリック当接面形状が形成部内の他のシューのいずれかと異なっていてもよく、それぞれの表面形状が一定である必要がなく、必要に応じてMD内で連続的に変わってもよいことも本発明の範囲内である。したがって、連続した下流の排水シューのファブリック当接面のMD形状は、原料噴流が衝突する初期シューのファブリック当接面のMDプロファイルと同じであっても、又は異なっていてもよいことになる。
【0023】
本発明の形成部における排水シューの新規の構成及び配置のさらなる利点は、ファブリック分離の欠陥の排除である。これまで、ロール形成では、多くの場合、ロールが出る前にシートを「完全乾燥」するように設計巻付角度を超える必要があった。形成部におけるシート分離の欠陥は、整合性の低いファブリックが吸引成形ロール等の回転ロールを通過することで引き起こされていた。ロール巻付きの終了時のロールとファブリックとの間の末広のニップにて生じる真空パルスが、2つのファブリックを引き離し、紙製品に損傷を与える可能性があった。本発明の形成部配置では、このシート分離の欠陥を引き起こす構成要素の幾何学形状又は配置は、採用されていない。さらに、排水シューのそれぞれの表面形状、及び、最適な製紙条件を得るのに必要な、各シューに対するファブリック巻付量は、ファブリック分離の欠陥を発生させることなく選択することができる。このことは、シュー又はロール等の持続圧力要素のファブリック巻付量が形成に著しく影響するため重要である。そのような要素の巻付角度が比較的大きいことにより、一般的に形成が不十分となるが、巻付角度がより小さければより良好な形成を得られる。重量の重い紙等の特定のレベルの用紙には、シートを十分に脱水するのに比較的多量の非脈動排水(すなわち大きな巻付角度)を要する。
【0024】
これまで記載してきたような従来技術の形成部配置のさらなる制限は、シューが大きいほど製造がより困難であると共にその費用が高いことである。本発明の教示に従って、ここで、ファブリックの片側又は両側に連続して複数の比較的小型の排水シューを配置してより良好な水処理制御及び均一な排水を得ることも可能である。複数のシューの使用により、特にスペースの制約が存在する場合に、より高い融通性が形成部設計に提供される。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、ツインファブリック製紙機械の形成部であって、それぞれが複数のロール及び支持要素によって支持される、第1のファブリック及び第2のファブリックを含む一対の形成ファブリックを受けるように構成及び配置され、該形成部は、
(i)ヘッドボックススライスを有するヘッドボックスであって、動作の際、
(a)該ヘッドボックスは前記ヘッドボックススライスを通じて前記第1のファブリック上の衝突点に原料噴流を送出し、
(b)前記第1のファブリックは前記衝突点の上流の第1の支持要素を通過し、前記衝突点の後に前記原料を層として保持し、
(c)前記第2のファブリックは第2の支持要素を通過すると共に該第2の支持要素によってガイドされて前記衝突点に近接して前記原料層と接触し、その後、前記第1のファブリックと協働して前記原料層を挟み込む、
ヘッドボックスと、
(ii)複数の排水シューであって、少なくとも、
(a)前記第1のファブリック及び前記第2のファブリックのうち選択した一方を摺接支持するように配設される第1の排水シュー、及び
(b)前記形成ファブリックのうち選択した一方が摺接通過する前記第1の排水シューの下流の、かつ該第1の排水シューから離間した、少なくとも第2の排水シューを含む、
複数の排水シューと、
を備え、
(1)前記排水シューはそれぞれ、
(A)前縁及び後縁、
(B)前記後縁まで延在すると共に所定の機械方向形状及び機械横断方向形状を有し、また、前記形成ファブリックのうち各選択した一方に接触すると共に機械方向に連続的な支持を提供し、かつ、前記排水シューの前記前縁及び前記後縁間の角変位を含む選択される巻付角度だけ、前記第1のファブリック及び前記第2のファブリックの双方と該ファブリック間の原料とを撓ませるように構成及び配置されるファブリック当接面であって、前記角変位は、前記後縁における該ファブリック当接面に対する接線に対する、前記前縁における該ファブリック当接面に対する接線の向きの変化によって測定される、ファブリック当接面、及び
(C)機械側の面、
を有し、
(2)前記排水シューの少なくとも1つは排水ボックスに固定され、複数の排水開口を設けられ、該排水開口は前記ファブリック当接面から前記シューの前記機械側の面を貫通して延在する、形成部を提供する。
【0026】
巻付角度は、機械条件に合わせて任意の適当な角度とすることができるが、各排水シューについて、好ましくは10度〜50度、より好ましくは15度〜35度、条件によっては15度〜25度である。
【0027】
好ましくは、多くの用途では、第1のシューは次のシューよりも比較的平坦であり、この第1のシューの下流に配設される単数又は複数の残りのシューよりも小さな巻付角度を有する。好ましくは、上流の第1の排水シューがなす巻付角度は約5度〜約45度である。より好ましくは、第1の排水シューの巻付角度は10度〜35度である。
【0028】
好ましくは、ファブリックが形成部における排水シューの全てを通過する際にファブリックがなす巻付角度の総計は10度〜100度である。より好ましくは、巻付角度の総計は30度〜70度であり、各排水シューは(通常、第1のシューにおいて)最小5度から50度もの大きさまでの巻付きを有する。好ましくは、排水シューは、約15度〜約35度のファブリックの巻付きを有するように配置される。
【0029】
本発明によれば、排水シューを、最終使用目的に従って選択されるように例えば重力排水ボックス又は吸引装置に取り付けることができる。シューのファブリック当接面は少なくとも中実の前面及び後面(すなわち、周辺空気又は吸引装置に対してアクセス可能な吸引開口を設けていない面)を含むため、シューが取り付けられる排水装置内に吸引を維持することができ、中実の前縁及び後縁により、ファブリックに同伴する空気及び水を取り除くことが容易となる。
【0030】
好ましくは、各シューの前縁及び後縁間のファブリック当接面は、ファブリック間に挟み込んだ原料中に連続的な持続圧力又はせん断を生じさせるように、形成ファブリックの一方に対して連続したMD支持を提供するように構成及び配置される。
【0031】
好ましくは、排水シューのファブリック当接面は、排水シューの中実の前縁及び後縁を除きファブリック当接面全体の70%〜0%の開口面積(open area:孔面積)を提供する。好ましくは、排水シューのファブリック当接面の開口面積は、シューの前縁面積及び後縁面積を除き約40%〜60%である。
【0032】
シュー面の開口面積は好ましくは、特許文献1においてBuchanan他によって記載されている方法で吸引アクセス可能なスロット又は排水孔によって提供され、これらのMD配向スロット及びファブリック支持面は、ファブリックが排水シュー面を通過する際に連続的なかつ可変の非脈動MD圧力を原料に提供する。しかしながら、例えば特許文献7においてWildfong他によって記載されているような方法で、表面が穿孔されているか又はその下の排水装置に至る同様の開口が設けられている排水シューが同様に有効であることが分る。Buchanan他によって開示されているシュー面及びWildfong他によって記載されている穿孔シュー面は、ファブリックに対して必要な連続したMD支持を提供する。
【0033】
本発明の形成部において用いられる排水シューは、ファブリック間に挟み込んだ原料中に間欠圧力脈動を引き起こす(形成シューに存在するような)CD配向開口を含まないことに留意することが重要である。
【0034】
本発明の代替的な実施形態では、形成部配置におけるシューのうち1つ又は複数のシューは完全に中実であり、周辺空気又は排水装置に至る開口を有さないものとすることができる。少なくとも1つのシューには、開口面積が0%である表面、すなわち該シューの前縁からその後縁にかけて中実である表面が備わっていることは本発明の範囲内である。
【0035】
本発明の形成部に用いられる排水シューのそれぞれのファブリック当接面のMD形状は単純なものとすることができ、その場合、表面の形状は単一の曲率半径を用いて表すことができる(すなわち、表面は円弧状に滑らかに湾曲している)か、又は複雑であり、複数の湾曲半径を有する。好ましくは、形成部の排水シューのそれぞれのファブリック当接面形状は互いとは異なり、各連続したシューは直前のシューにおけるよりも小さい曲率半径で終端している。
【0036】
本発明の形成部において使用される排水シューのMDサイズは最終使用目的に応じて選択されることができ、概して長さすなわちMD方向に約6インチ(15.24cm)〜最大約48インチ(121.92cm)の範囲であるが、好ましくは、より短い、概して6インチ〜24インチ(15.24cm〜60.96cm)の範囲内である。排水シューには、MD長が約1/2インチ(約1cm)〜最大約2インチ(約5cm)である中実の前縁(すなわち、排水を行わせるように開口してない縁)、及びおよそ同じサイズの下流側の中実の後縁が設けられている。上述したように、排水シューの少なくとも1つは好ましくは、特許文献1においてBuchanan他によって記載されている方法で構成されるか、又は代替的に所望の表面形状並びに前面及び後面の中間の開口面積を提供するように、特許文献7においてWildfong他によって記載されているように穿孔された排水シューである。
【0037】
特定の構成又は特徴の選択は主として、製紙プロセスに使用される原料タイプ、製紙機械の主流となる条件、及び形成されるシートの最終使用目的に応じて決まる。紙製品をより経済的に製造するために製紙機械速度が増大するにつれ、機械の走行性、シートの外観及び内部構造、製品の表面又は内部における微細繊維及び充填材の分布、並びに微細材料の第1パスの保持がますます重要となる。排水の実質的に一定の速度が、微細材料の第1パスの保持とシート形成という良好な組合せのために、紙製品の形成部を通じた移動経路に沿って種々の位置で維持されることも望ましい。ここで、排水シューの順及び配置の適切な選択によって、これらの可変数の全てではないにしても多くに対して同時の制御を行うことが可能である。
【0038】
第2の排水シューを2つのファブリックのうちの第2のファブリックに対して提供することができるか、又は2つ以上の排水シューを2つのファブリックのうち第1のファブリックに対して隣接順で提供することができ、任意選択的に、これらのシューの後に、第2のファブリック、すなわち、第1のファブリックに対して提供される複数の排水シューの下流に対して提供される少なくとも1つの排水シューが続くことができる。したがって、特定の条件で求められる数と同数まで、少なくとも4つ以上まで排水シューを設けることができる。
【0039】
各場合に所要のファブリック巻付角度の総計を提供しつつ、本発明の形成部において少なくとも2つの排水シューを相対的に配置することが重要である。少なくとも2つのシューが形成部の同じ側に同じファブリックと接触して配設される場合、連続したシュー間のMD距離は1インチ〜12インチ(25mm〜300mm)の範囲とすることができる。しかしながら、排水シューのうち2つが連続して一方が他方の後に、かつ互いにファブリックの対向側に配設される場合、MDにおける一方のシューの後縁と次のシューの前縁との間は少なくとも2インチ(50mm)あるものとし、それらは18インチ(457mm)以上も離間することができる。さらに、ドクタリングエッジ(doctoring edges)を排水シューのいずれかの前縁に設けることができる。
【0040】
排水シューを、上述した条件等の条件に応じて排水ボックスに固定することができる。例えば、搬送ファブリックに対して提供される少なくとも一対の隣接した排水シューのそれぞれの部材を、共通の排水ボックスに固定することができるか、又は、他のシューの配向に対して、別のシューの任意の調整が必要かどうかに応じて、別個の排水ボックスに取り付けることができる。
【0041】
排水シューの少なくとも1つ又は全てを、調整可能な排水ボックスに固定することができる、すなわち、Wildfong他の特許文献3に記載されている方法で、並進移動又は枢動によって所望位置に調整及び固定することができる。
【0042】
好ましくは、第1の支持要素はブレストロールを含むが、代替的には少なくとも1つの回転棒を含んでもよい。同様に、好ましくは、第2の支持要素は形成ロールを含むが、代替的には少なくとも1つの回転棒を含んでもよい。
【0043】
排水シューの上流又は下流に設けられる支持要素を、上述したように、機械条件に応じて既知の要素から、個々のケースについて選択することができる。好ましくは、形成部は、最後の排水シューの後縁の後に該後縁から離間して、複数のファブリック支持要素を含む少なくとも1つの形成シューをさらに含む。形成シューには、前縁の撓みブレードを含め、通常の特徴部を設けることができる。
【0044】
好ましくは、形成部は、第2のファブリックに対して提供される少なくとも1つの形成シューのうち第1の形成シューに実質的に対向する第1のファブリックに対して提供される少なくとも1つのカウンターブレードユニットをさらに含む。任意選択的に、それぞれWildfong他の米国特許第7,524,401号及び米国特許第7,524,402号に記載されている方法で、少なくとも1つの形成シューの少なくとも第1の形成シューにおける複数のファブリック支持要素の隣接したファブリック支持要素どうしが、機械方向に漸減する距離だけ互いから離間する。さらに任意選択的に、少なくとも1つの形成シューの少なくとも第1の形成シューにおける複数のファブリック支持要素の隣接したファブリック支持要素は、幅が機械方向に漸減する。
【0045】
形成部は、最後の排水シューの前縁又は最後の形成シューの後縁から下流にクーチロールをさらに含むことができる。任意選択的に、クーチロールは少なくとも1つの真空ゾーンを含む吸引ロールである。
【0046】
形成部は、単一プライヘッドボックス又は複数のプライヘッドボックスを有することができる。
【0047】
次に本発明を図面に関して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】搬送ファブリックとすることができると共に共通の仕切り排水ボックス上に取り付けることができる第1のファブリックの下に配設される2つの排水シューを有する、本発明による形成部の概略図である。
【図2】図1に示す初期衝突ゾーンの拡大図である。
【図3】本発明の第2の実施形態の初期衝突ゾーンの拡大図である。
【図4】本発明の第3の実施形態の初期衝突ゾーンの拡大図である。
【図5】本発明のさらなる実施形態による形成部の概略図である。
【図6】本発明のさらなる実施形態による形成部の概略図である。
【図7】本発明の幾つかの実施形態における排水シューに対する巻付角度の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
先に図7を参照すると、連続して通過していると共に2つの排水シュー710、720によって撓まされて示されているファブリック700に関して巻付角度の特徴が分る。ファブリック700が排水シュー710を通過する際、該排水シューの前縁712及び後縁714間のファブリック支持面の曲率がファブリック700に角変位を与える。巻付角度として知られるこの撓みは角度Aとして測定され、これは排水シュー700の前縁712に対する接線と排水シュー700の後縁714に対する接線との間の角度である。同様に、排水シュー720の巻付角度は角度Bとして測定され、これは排水シュー720の前縁722に対する接線と排水シュー720の後縁724に対する接線との間の角度である。図7に示す構成に関して、2つの排水シュー710、720によって与えられる巻付角度の総計は角度A及びBの正の値の和である。
【0050】
図1及び図2は、2つの排水シューを有するツインファブリック形成部を示す。形成部はギャップタイプのフォーマーである。この実施形態では、この場合は搬送ファブリック2である第1のファブリックがブレストロール5に巻き付き、排水シュー7の紙側の面に方向付けされる。原料噴流4がヘッドボックス1のスライスリップから、排水シュー7の上の衝突点I(図2を参照)においてファブリック2に射出される。衝突点Iの位置及び衝突点Iに対する原料噴流の角度は製紙要件に従って選択され、衝突角度は概して非常に小さく、概して0度〜5度であるが、必要に応じて、また、特許文献1に記載されているように変化をもたせることができる。代替的に、原料噴流はバッキングファブリック3に先に着地するように方向付けてもよい。
【0051】
第2のファブリックとしてこれらの図に示されるバッキングファブリック3は、第1の排水シュー7を通過する際に、搬送ファブリック2に形成されている原料層と接触するように形成ロール6によってガイドされる。バッキングファブリック3は、初期シートの両面における不具合を最小限にするように搬送ファブリック2との間に原料層を挟み込むように機能する。原料層は、第1の排水シュー7を通過する際に該排水シューのスロット又は穴(図示せず)を通じての流れによって初期排水を開始する。
【0052】
第2の排水シュー8が排水シュー7のすぐ下流に、僅かな距離だけ離れて配設されている。第1の排水シュー7と第2の排水シュー8との間の距離は、製紙要件、並びに形成部における利用可能なスペース及び幾何学形状によって決まるが、この構成の例では概ね、この距離は約1インチ〜12インチ(25mm〜300mm)である。排水シュー8は排水シュー7に対し、以下のように配設される。すなわち、両者の間に巻付き縁が存在するように配設される(これは、ファブリックが、排水シュー7の下流縁から進んで排水シュー8の前縁を摺動する際にこれらの排水シューの後縁及び前縁で曲がる)。又は、2つの排水シューが接しており、ファブリックが第1の排水シュー7から第2の排水シュー8に巻き付かずに続く(すなわち、ファブリックが第1の排水シューから第2の排水シューに移る際にファブリックの撓み又は曲がりがない)。上述したように、2つの排水シュー間のギャップ、及び、ファブリックが第1の排水シューを出て第2の排水シューを通過する際のファブリックの巻付き度合いは双方とも、製紙条件に従って選択される。
【0053】
この実施形態では、排水シュー7及び8は双方とも排水ボックス9に配設される。ボックス9は、原料から該ボックスに排水される流体に対処するのに吸引補助(suction assisted)されてもよく又は重力に依存してもよい。しかしながら、好ましくは、ボックス9は吸引補助されると共に各排水シュー7及び8に個々の真空制御を可能にするように仕切られる。間に原料層を挟み込んだファブリック2及び3が排水シュー7及び8を進む際、流体が排水シュー中の通過フロースロット又は穴を通じて原料層から排水される。さらに、ファブリック間に挟み込まれた原料層は、ファブリックが排水シュー7及び8の表面を摺接通過する際に連続的な持続圧力又はせん断を受ける。排水シューのMD面形状が、持続圧力の大きさ(すなわち、曲線の曲率程度及び形状、それが単純であるか又は複合的であるかにかかわらず)を決定するにあたり重要な役割を果たす。ファブリックの巻付角度は各排水シューにおける排水量に重要な役割を果たし、また、例えば、特許文献3においてWildfong他によって記載されているような方法でヘッドボックスに対して接離するようにボックス9を枢動させることによって調整可能とすることができる。
【0054】
排水シュー8に続き、ファブリック2及び3は間に挟み込んだ原料層と共に、脱水ボックス10に取り付けられた一連の固定ブレード13に対して摺接通過する。ボックス11に配設される弾性的に取り付けられたブレード12が、ファブリック2及び3並びに原料層がブレード13を通過する際にファブリック2及び3並びに原料層に押し当たるように離間している。この配置は、形成に改善を与えるように原料層をさらに脈動させると共にシートをさらに排水させる役割を果たす。図1に示すように、ファブリックは次に、上に静止脱水ブレードが取り付けられている、さらに下流の吸引脱水ボックス14及び15を通過し、次に、吸引クーチロール16を通過し、この吸引クーチロール16には、シートから水をさらに除去する1つ又は複数の吸引チャンバを設けることができる。そこから、シートは、さらなる水除去のために押圧部及び乾燥部(図示せず)に送られる。
【0055】
当業者は、ボックス14及び15に関する位置、サイズ並びにブレードのタイプ並びに間隔は、最終使用目的に基づき、必要に応じて選択することができることを認識するであろう。ボックス10及び11に関するブレードの構成及び間隔は、例えばWildfong他への共に譲渡された米国特許第7,524,401号又は米国特許第7,524,402号に記載されているように形成及び他のシート特性を最適化するために支配的な製紙条件に従って調整することができる。
【0056】
次に図3を参照すると、図3は本発明の代替的な実施形態によるツインファブリック形成部を示し、ここでは、2つの排水シュー27及び28が順次、かつ対向した配向で配設され、ファブリック22及び23のそれぞれに対して提供されている。この実施形態では、ファブリック22及び23は、ヘッドボックス21から送出される原料24を挟み込み、第1の排水シュー27を通過し、この第1の排水シュー27は、必要に応じてファブリック22及び23の巻付角度を変更するように位置調整可能である。排水シュー27から、ファブリックは共に排水シュー28の表面を通過し、この排水シュー28もまた、ファブリックの巻付角度を変えるように調整可能である。巻付角度が大きいほどより多くの脱水をもたらし、これはより高い坪量の紙グレードに適する。排水シュー28は、ファブリックが排水シュー27の後縁及び排水シュー28の前縁の双方に巻き付いて原料中に比較的強い連続的な持続圧力パルスを与えるようにファブリックに押し付けられる。排水シュー28に続き、ファブリックは、脱水ボックス34に取り付けられた固定ブレード33を通過する。ボックス31に取り付けられた弾性的に取り付けられたブレード32が、ファブリック及び原料がボックス34のブレード33を通過する際にファブリック及び原料に対して圧力を加えるように配設される。排水シュー27はボックス29に配設され、排水シュー28はボックス30に配設され、ボックス29及び30の双方には別個に制御可能な真空部が設けられており、排水シュー27及び28のそれぞれに適用される真空レベルの独立した制御を可能にする。
【0057】
また、引込みシューとして排水シュー28を排水ボックス34に取り付け、ボックス30を完全に省くことも可能である。その場合、排水シュー28は、ファブリック22及び23が間の原料層と共に、図3に示すのと同様にして排水シュー28の表面に巻き付くように配設される。排水ボックス34は、ファブリック22及び23の巻付角度を例えばボックス29と同様に製紙要件に従って調整することができるように、枢動可能であると共に位置調整可能であるように取り付けることができる。例えば図1にボックス10及び11に続けて示すようにボックス31及び34の下流のさらなる要素を動作環境及び最終使用に応じて選択することができる。
【0058】
図4は、本発明のさらなる実施形態による形成部の図であり、形成部は3つの排水シューを有する。この実施形態では、2つの排水シュー47及び48が共通の脱水ボックス50に取り付けられる。ボックス50は2つの独立した排水領域及び真空部を有し、支配的な製紙条件に従って必要に応じてファブリック42及び43の巻付角度を増減するように枢動又は調整することができる。第3の排水シュー49が下流に吸引補助排水ボックス51に配設される。ボックス51は、製紙条件の変更(例えば作製される紙グレードの変更)に応じてファブリックの巻付角度を変えるように調整可能である。排水シュー47、48及び49のそれぞれの間に機械方向ギャップが存在し、形成部の幾何学形状、空間的制約及び他の要因に応じて、排水シュー47及び48間のギャップは1インチ〜12インチ(25mm〜300mm)であり、排水シュー48及び49間のギャップは2インチ〜18インチ(50mm〜457mm)である。それぞれ、ボックス53に設けられた下流ブレード52及びボックス54に設けられた下流ブレード55は、図3における、ボックス31に設けられたブレード32及びボックス34に設けられたブレード33に対応する。
【0059】
図5及び図6は、図4に提示した形態の代替的な形態として、さらなる実施形態を示し、各実施形態は、それぞれが第1のファブリック62と接触して配設される3つの排水シュー67、68、69を有する形成部を含む。図5において、ヘッドボックス61は、第1のファブリック62と第2のファブリック63が形成ロール66及びブレストロール65の周りをそれぞれ通過する際にそれらのファブリック間に二層構造原料噴流を射出する。次に、ファブリック62及び63が原料と共に、排水ボックス70に取り付けられた連続した3つの排水シュー67、68及び69を通過する。原料噴流64は、2つの原料送出チューブのそれぞれからの2つの原料供給を含む。2つのファブリックが排水シュー67、68及び69を通過する際のこれらのファブリックの巻付角度はおよそ60度であるが、この巻付角度は製紙要件に応じて調整することができ、100度もの大きさとすることができる。
【0060】
図6は、図5に示す実施形態と同様の実施形態を示し、ここでは、ブレストロール65の代わりに、ボックス80に取り付けられた回転棒81及び82が用いられる。この変形形態によりこの点でファブリック回転装置のサイズが減り(ワイドな抄紙機では、ロール直径は、抄紙機の幅全域にわたって必要な剛性を提供するために増大せざるを得ず、抄紙機がワイドになるほどロール直径が増す)、スライスリップから衝突点にかけての距離を減らすことが可能となるか、又は幅狭の抄紙機に対して少なくとも維持される。
【0061】
図5及び図6のそれぞれにおいて、下流の要素は、動作環境及び最終使用に応じて、例えばボックス71及び72を含むように選択される。
【0062】
図1〜図4のいずれかに示した配置において、ブレストロール(図1における5等)又は形成ロール(図1)の代わりに、図6において81及び82として示すものと同様の一組の回転棒を用いることも可能である。例えば米国特許第5,084,138号においてEwaldによって記載されている回転棒が当該技術分野においてよく知られている。これらの回転棒は通常、アブレシブ摩耗に耐えるようにセラミック等の耐摩耗性材料でコーティングされる。形成の改善のために、この場所での回転棒の使用により、衝突点のより近くへのヘッドボックスの位置決めを可能にすることができる。それらの使用を可能にする主な要件は、ファブリックの加熱及び劣化を防止するのに十分な潤滑が提供されることである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ツインファブリック製紙機械の形成部であって、それぞれが複数のロール及び支持要素によって支持される、第1のファブリック及び第2のファブリックを含む一対の形成ファブリックを受けるように構成及び配置され、該形成部は、
(i)ヘッドボックススライスを有するヘッドボックスであって、動作の際、
(a)該ヘッドボックスは前記ヘッドボックススライスを通じて前記第1のファブリック上の衝突点に原料噴流を送出し、
(b)前記第1のファブリックは前記衝突点の上流の第1の支持要素を通り越し、前記衝突点の後に前記原料を層として保持し、
(c)前記第2のファブリックは第2の支持要素を通り越すと共に該第2の支持要素によってガイドされて前記衝突点に近接して前記原料層と接触し、その後、前記第1のファブリックと協働して前記原料層を挟み込む、
ヘッドボックスと、
(ii)複数の排水シューであって、少なくとも、
(a)前記第1のファブリック及び前記第2のファブリックのうち選択した一方を摺接支持するように配設される第1の排水シュー、及び
(b)前記形成ファブリックのうち選択した一方が摺接通過する前記第1の排水シューの下流の、かつ該第1の排水シューから離間した、少なくとも第2の排水シューを含む、
複数の排水シューと、
を備え、
(1)前記排水シューはそれぞれ、前記形成ファブリックのうち各選択した一方に接触すると共に機械方向に連続的な支持を提供するように構成及び配置され、また、
(A)前縁及び後縁、
(B)前記後縁まで延在すると共に所定の機械方向形状及び機械横断方向形状を有し、また、前記排水シューの前記前縁及び前記後縁間の角変位を含む選択される巻付角度だけ、前記第1のファブリック及び前記第2のファブリックの双方と該ファブリック間の原料とを撓ませるように構成及び配置されるファブリック当接面であって、前記角変位は、前記後縁における該ファブリック当接面に対する接線に対する、前記前縁における該ファブリック当接面に対する接線の向きの変化によって測定される、ファブリック当接面、及び
(C)機械側の面、
を有し、
(2)前記排水シューの少なくとも1つは排水ボックスに固定され、複数の排水開口を設けられ、該排水開口は前記ファブリック当接面から前記シューの前記機械側の面を貫通して延在する、形成部。
【請求項2】
前記第1の排水シューは前記第1のファブリックに対して提供される、請求項1に記載の形成部。
【請求項3】
前記第1の排水シューは前記第2のファブリックに対して提供される、請求項1に記載の形成部。
【請求項4】
前記複数の排水シューのそれぞれの前記ファブリック当接面は0%〜70%の開口面積を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の形成部。
【請求項5】
前記複数の排水シューの少なくとも1つの前記ファブリック当接面は40%〜70%の開口面積を有する、請求項4に記載の形成部。
【請求項6】
前記排水シューのそれぞれは排水ボックスに固定され、複数の排水開口を設けられ、該排水開口は前記ファブリック当接面から前記排水シューの前記機械側の面を貫通して延在し、前記排水シューのそれぞれについて、前記ファブリック当接面の形状、前記巻付角度、並びに前記排水開口の形状及びサイズのそれぞれは同じである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の形成部。
【請求項7】
前記排水シューの少なくとも1つについて、前記ファブリック当接面の形状、前記巻付角度、並びに前記排水開口の形状及びサイズから選択される少なくとも1つの特性は、前記排水シューの少なくとも他のもう1つの排水シューの対応する特性とは異なる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の形成部。
【請求項8】
前記第1の排水シューは衝突シューである、請求項1又は2に記載の形成部。
【請求項9】
前記第2の排水シューは前記第2のファブリックに対して提供される、請求項1又は2に記載の形成部。
【請求項10】
前記排水シューの少なくとも2つは前記第1のファブリックに対して隣接順で提供される、請求項1に記載の形成部。
【請求項11】
少なくとも1つの排水シューが、前記第1のファブリックに対して提供される前記少なくとも2つの排水シューの下流に第2のファブリックに対して提供される、請求項10に記載の形成部。
【請求項12】
前記第1のファブリックに対して提供される少なくとも一対の隣接した排水シューの各部材が、共通の排水ボックスに固定される、請求項10又は請求項11に記載の形成部。
【請求項13】
同じファブリックに対して提供される各対の隣接した排水シューについて、前記対のうち前記第1の排水シューの前記後縁が前記対のうち前記第2の排水シューの前記前縁から1インチ〜12インチ(約2.54センチメートル〜約30.48センチメートル)の距離だけ離間する、請求項1に記載の形成部。
【請求項14】
前記ファブリックの対向したそれぞれに対して提供される各対の連続した排水シューについて、前記対のうち前記第1の排水シューの前記後縁が前記対の前記第2の排水シューの前記前縁から2インチ〜18インチ(約5.08センチメートル〜約45.72センチメートル)の距離だけ離間する、請求項1に記載の形成部。
【請求項15】
前記排水シューの少なくとも1つは調整可能な排水ボックスに固定される、請求項1〜14のいずれか一項に記載の形成部。
【請求項16】
前記排水シューはそれぞれ調整可能な排水ボックスに固定される、請求項15に記載の形成部。
【請求項17】
前記調整可能な排水ボックスは、並進移動及び枢動の少なくとも一方によって確実に選択的に調整されるように構成及び配置される、請求項1〜16のいずれか一項に記載の形成部。
【請求項18】
前記第1の支持要素はブレストロールを含む、請求項1〜17のいずれか一項に記載の形成部。
【請求項19】
前記第1の支持要素は少なくとも1つの回転棒を含む、請求項1〜17のいずれか一項に記載の形成部。
【請求項20】
前記第2の支持要素は形成ロールを含む、請求項1〜19のいずれか一項に記載の形成部。
【請求項21】
前記第2の支持要素は少なくとも1つの回転棒を含む、請求項1〜19のいずれか一項に記載の形成部。
【請求項22】
最後の排水シューの前記後縁の下流に、かつ該最後の排水シューの該後縁から離間した、複数のファブリック支持要素を含む少なくとも1つの形成シューをさらに備える、請求項1〜21のいずれか一項に記載の形成部。
【請求項23】
前記少なくとも1つの形成シューは前記第2のファブリックに対して提供され、前記形成部は、前記少なくとも1つの形成シューの第1の形成シューと実質的に対向する、前記第1のファブリックに対して提供される少なくとも1つのカウンターブレードユニットをさらに備える、請求項22に記載の形成部。
【請求項24】
前記少なくとも1つの形成シューの少なくとも前記第1の形成シューにおける前記複数のファブリック支持要素の隣接したファブリック支持要素どうしが、機械方向に漸減する距離だけ互いに離間する、請求項22又は23に記載の形成部。
【請求項25】
前記少なくとも1つの形成シューの少なくとも前記第1の形成シューにおける前記複数のファブリック支持要素の隣接したファブリック支持要素は、幅が機械方向に漸減する、請求項22〜24のいずれか一項に記載の形成部。
【請求項26】
前記最後の排水シューの前記後縁から下流にクーチロールをさらに備える、請求項1〜21のいずれか一項に記載の形成部。
【請求項27】
前記最後の形成シューの前記後縁から下流にクーチロールをさらに備える、請求項22〜25のいずれか一項に記載の形成部。
【請求項28】
前記クーチロールは少なくとも1つの真空ゾーンを含むサクションロールである、請求項26又は請求項27に記載の形成部。
【請求項29】
前記排水シューそれぞれについて選択される巻付角度は5度〜50度である、請求項1〜28のいずれか一項に記載の形成部。
【請求項30】
前記第1の排水シューについて前記選択される巻付角度は5度〜45度である、請求項29に記載の形成部。
【請求項31】
前記第1の排水シューについて前記選択される巻付角度は10度〜35度である、請求項30に記載の形成部。
【請求項32】
前記排水シューの少なくとも1つの前記選択される巻付角度は15度〜35度である、請求項29に記載の形成部。
【請求項33】
前記排水シューの少なくとも1つの前記選択される巻付角度は15度〜25度である、請求項32に記載の形成部。
【請求項34】
前記排水シューの全てについて前記選択される巻付角度の総計は10度〜100度である、請求項1〜33のいずれか一項に記載の形成部。
【請求項35】
前記選択される巻付角度の総計は30度〜70度である、請求項34に記載の形成部。
【請求項36】
前記ヘッドボックスは二層構造ヘッドボックスを含む、請求項1〜35のいずれか一項に記載の形成部。
【請求項37】
ツインファブリック製紙機械の形成部であって、
(i)ヘッドボックススライスを有するヘッドボックスと、
(ii)第1のファブリック及び第2のファブリックを含み、それぞれが複数のロール及び支持要素によって支持される、一対の形成ファブリックであって、
(a)前記ヘッドボックスは前記ヘッドボックススライスを通じて前記第1のファブリック上の衝突点に原料噴流を送出するように構成及び配置され、
(b)前記第1のファブリックは前記衝突点の上流の第1の支持要素を通り越し、前記衝突点の後に前記原料を層として保持し、
(c)前記第2のファブリックは第2の支持要素を通過すると共に該第2の支持要素によってガイドされて前記衝突点に近接して前記原料層と接触し、その後、前記第1のファブリックと協働して前記原料層を挟み込む、
一対の形成ファブリックと、
(ii)複数の排水シューであって、少なくとも、
(a)前記第1のファブリック及び前記第2のファブリックのうち選択した一方を摺接支持するように配設される第1の排水シュー、及び
(b)前記形成ファブリックのうち選択した一方が摺接通過する前記第1の排水シューの下流の、かつ該第1の排水シューから離間した、少なくとも第2の排水シューを含む、
複数の排水シューと、
を備え、
(1)前記排水シューはそれぞれ、前記形成ファブリックのうち各選択した一方に接触すると共に機械方向に連続的な支持を提供するように構成及び配置され、また、
(A)前縁及び後縁、
(B)前記後縁まで延在すると共に所定の機械方向形状及び機械横断方向形状を有し、また、前記排水シューの前記前縁及び前記後縁間の角変位を含む選択される巻付角度だけ、前記第1のファブリック及び前記第2のファブリックの双方と該ファブリック間の原料とを撓ませるように構成及び配置されるファブリック当接面であって、前記角変位は、前記後縁における該ファブリック当接面に対する接線に対する、前記前縁における該ファブリック当接面に対する接線の向きの変化によって測定される、ファブリック当接面、及び
(C)機械側の面、
を有し、
(2)前記排水シューの少なくとも1つは排水ボックスに固定され、複数の排水開口を設けられ、該排水開口は前記ファブリック当接面から前記シューの前記機械側の面を貫通して延在する、形成部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−506503(P2012−506503A)
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533283(P2011−533283)
【出願日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【国際出願番号】PCT/US2009/061398
【国際公開番号】WO2010/048240
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(598029210)アステンジョンソン・インコーポレーテッド (3)
【Fターム(参考)】