説明

複数層の情報担体上に情報を記録するための方法及び装置

本発明は、複数セッションフォーマットを使用する多層光ディスク上に情報を記録する方法及び装置を開示するものである。複数セッションを用いることにより、ディスクの記憶容量が効率的に利用されるようになり、ファイナライズにかかる時間が短くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数層の情報担体上に情報を記録するための方法及び装置に関するものである。本発明は、特に、二重層DVD―ROMの標準規格に対応するように、二重層DVD+R又はDVD+R/Wディスク上に情報を記録するための方法及び装置に関するものである。
【0002】
DVD―ROMは、パーソナルコンピューター(PC)業界及び家庭用電子機器(CE)業界の双方において、成功をおさめている。二重層DVD―ROMは、映画やコンテンツを流通させるために多く用いられている。最近、記録可能(R)及び再書込可能(R/W)な単一層のDVDフォーマットが紹介された。しかし、これらフォーマットの記憶容量は、現在のところ4.7GBに限られている。CE及びPCの双方の用途において、より多くの記憶容量が必要とされている。このような容量の増加は、二重層DVD+Rにより得られる。この二重層DVD+Rとは、8.5GBの記憶容量を有する二重層追記型ディスクのことである。二重層DVD+Rのフォーマットは、単一層DVD+Rのフォーマットだけでなく、二重層DVD―ROMのフォーマットとも互換性を有するのが好ましい。このことは、既存のDVD―ROMプレーヤ及びPCドライブとの互換性の観点から重要である。
【0003】
これらの光学記録担体上には、一般にフォーマットと称される特定のルール及びレイアウトに従って情報が記憶される。これらのフォーマットは、文献中では一般に標準規格として記載されている。
【0004】
二重層DVD―ROMに関しては、DVD―ROMの標準規格(ECMA(欧州電子計算機工業会)標準規格の267,120mmのDVD読み取り専用ディスク)に規定される2つのトラックモードがある。すなわち、逆方向トラック経路(OTP)及び平行トラック経路(PTP)である。二重層DVDディスクに関しては、OTPトラックモード(図1に線図的に示す)が好ましい。その理由は、再生中の層ジャンプ(レイヤージャンプ)時間が少なくなる為である。
【0005】
二重層DVD―ROM標準規格によれば、ユーザデータに続いて、ディスクの終わりのリードアウトゾーンまでダミーデータを存在させる必要があることに注意すべきである。このようなダミーデータがないと、ドライブが破損するおそれがある。それ故、DVD―ROMとの互換性を得るためには、(ダミーデータを記録するために)ファイナライズに長時間を要すること、記憶スペースのロスが大きくなることを受け入れねばならない。
【0006】
多層ディスク上に複数(マルチ)セッションをレイアウトすることは、まだ規格化されていないし、既知でもないことに注意されたい。
【発明の開示】
【0007】
本発明の目的は、多層ディスクの多層構造を利用した、既存のDVD標準規格と互換性のある複数セッションのレイアウトを記録する方法及び装置を提供することにある。このような方法及び装置は、ファイナライズの時間が最小に維持されるようにするのが好ましい。
【0008】
本発明によれば、多層ディスクのための複数セッションフォーマットの物理定義が示される。この複数セッションのレイアウトにより、既存のDVD標準規格との互換性(すなわち未書込スペースを無くすこと)を維持しながら、情報の記録を効率的に行いうるようになる。本発明により、1つ以上の層ジャンプを有するスーパーセッションが導入される。
【0009】
DVD―ROMとの互換性を得るために、記録可能な複数セッションの多層DVDディスクの層上には、空(すなわち未書込)のゾーンが存在しないようにする。二重層DVDディスクは、一般に層0(L0)及び層1(L1)と称される2層を含み、L0層は、情報の読み込み及び記録の双方又はいずれか一方に使用するレーザ光線等の放射ビームがディスクに入射する側のディスク面の最も近くに位置する情報層である。ここで、DVD―ROMとの互換性を得るために、このような記録可能な二重層DVDディスクのL0層及びL1層上には、L0層のデータゾーンにおける最初のPSNから、中間ゾーンを通って、ディスクの終わり付近のL1層のデータゾーンにおける最後のPSNまでの間に、空のゾーンを許容しないようにする。ここで、PSNとは、物理セクタの番号、すなわち他のアドレス可能な部分と関係なくアクセスしうる、ディスクにおけるトラックのアドレス可能な最小部分の番号として規定される。
【0010】
図1は、L0層は完全に書き込まれているが、L1層には少量のデータしか存在していない二重層ディスクを示す。従って、L1層のデータの終わりから、L1層のリードアウトゾーンまでダミーデータを存在させる必要がある。このことは、最悪の場合(L0層が完全に記録されており、L1層上には極めて少量のデータしか存在しない場合)には、層の殆ど全体にわたり、ダミーデータを書き込む必要があることを意味する。この処理には時間がかかるおそれがあり(2.4倍速の記録速度で最大30分の記録時間になる)、また多くの記憶スペースが無駄になる。更に、L0層からL1層(或いはL1層からL0層)への層ジャンプの際に、常にL1層(或いはL0層)にデータが存在してDVD―ROMとの互換性が保証されるようにすべきである。
【0011】
本発明によれば、1つ以上の層ジャンプを含むスーパーセッションが規定される。本発明による方法は、少なくともこのようなスーパーセッションを有するものである。
【0012】
本発明の例によれば、ディスク上の物理アドレススペースを固定する。好適例においては、ディスク上の物理アドレススペースは、L0層上の最大PSNに中間ゾーンを位置させることにより固定する。この中間ゾーンのディスクスペース及び位置の双方又はいずれか一方は、ADIP情報部だけでなくリードイン及びリードアウトゾーンにも書き込むのが好ましい。
【0013】
本発明の他の例によれば、単一のスーパーセッションにおける空きスペースを可能な限り小さくする。このことは、データ及びファイルを両層上に対称に割り当てることを意味する。
【0014】
本発明の更に他の例によれば、セッションを閉じる際に、最新のセッション情報(しばしばファイルシステム情報と称される)を含ませる。この処理は、既存のDVD標準規格と互換性があるように行うのが好ましい。本発明の一例によれば、ダンピー(dumpy)データ(例えば全ての0のもの)を含む固定量のエラー訂正コード(ECC)ブロックの(中間ゾーンのような)ジャンプゾーンを書き込んで読出中のエラーを回避する。
【0015】
本発明の更に他の例によれば、イントロ、クロージャ及びジャンプゾーンセクタは、(第1セッションのリードイン及びリードアウトを除いて)これらがデータゾーンセクタとみなされるようになるビット設定を有する。
【0016】
記録データは、単一セッションの場合や、データを後で追加する必要がある場合でも、図2に示すように、二重層ディスクの両層に対称的に分けるのが好ましい。同時に係属している欧州特許出願公開第03102608.1号明細書も参照されたい。
【0017】
本発明により、融通性、使い勝手の良さ(例えば、第1セッションは、多くのDVDビデオプレーヤで再生される)、ファイナライズ時間の短縮化、記憶容量の効率的利用、(例えばDVD―ROM及び単一層DVD+Rのような)種々のDVD標準規格との互換性といった利点が得られる。
【0018】
本発明の上述した及び他の観点を、添付図面を参照して以下に説明する。
例として、OTP型の複数セッション多層DVD+Rディスクに関する本発明の実施例を説明する。
セッションのフォーマットは、DVD+Rに類似したものである。セッションでの層ジャンプは許容されている。
【0019】
データゾーンは以下のように規定される(図1参照)。L0層上のデータゾーンにおける最初の物理セクタ番号(PSN)は、アドレス(30000)hex に存在している。中間ゾーンの位置は、固定されている。すなわち、この中間ゾーンは、L0層上のデータゾーンの最後のPSNアドレス、つまりアドレス(22D7DF)hex の後に配置されている。L1層のデータゾーンにおける最初のPSNは、アドレス(DD2820)hex に存在している。L1層のデータゾーンの最後のPSNアドレスは、アドレス(FCFFFF)hex にある。イントロ、クロージャ及びジャンプゾーンの物理セクタは、所定値(例えばゼロ)にセットされたデータフレームの特定のビット(例えばビット26及び27)を有し、それにより、これらゾーンは、データゾーンであるかのように識別されるようになっている。
【0020】
多層ディスク用の複数セッションフォーマットにより、第1のスーパーセッションをディスク上に記録した後でも、新規セッションを追加することができる。セッションのファイルは、両層にわたって対称的に分散させることができる。その結果、空のスペースは存在しないか又は僅かしか存在しなくなり、ディスクは、セッションを閉じた後(すなわち、全てのスペースをダミーデータで満たした後)で、殆どのDVD―ROMプレーヤ上で再生することができる。複数セッションDVDプレーヤ及びPCドライブにおいて、全てのセッションを読み込むことができる。セッションは、0以上の層ジャンプを有してもよい。
【0021】
本発明によるファイナライズした二重層DVD複数セッションディスクを、図3に示す。図3は、4つのセッションを有するDVDディスクを示す。セッションは、セッション番号の順に書き込まれている。セッション1、2及び4は、各々層ジャンプを有するのに対し、セッション3は層ジャンプを有していない(セッション3は、例えば層ジャンプを行うには小さいものとしうる)。ユーザが(4つのセッションを記録した後で)、ディスクをファイナライズする場合、ファイナライズに要する時間が限られたものになり(セッション4の部分にのみダミーデータが書き込まれる)、ディスクの容量が効率的に利用されるようになる。
【0022】
各々のセッションは、(図4に示されるように)それ自体のイントロゾーンと、(一時)ファイルシステム情報と、データゾーンと、ジャンプゾーンと、クロージャゾーンとを有する。ジャンプゾーンの寸法は、十分に大きくするのが好ましい。L0層のデータゾーンが終了してL0層からL1層へ層ジャンプする際に、L1層上に書き込まれたデータが存在するのが好ましい。実施例においては、層ジャンプ後のエラーを排除するために、ジャンプゾーンの寸法は固定されている。ジャンプゾーン寸法は、約0.2mmにするのが好ましい。このような寸法にすることにより、層ジャンプは、常に(ユーザ情報又はダミーデータの)情報を有する領域に到達するよう行われることになる。
【0023】
各々のセッションは、そのセッション自体の及び全ての先行セッションのファイルシステム情報を含む。第1のセッションは、イントロ及びクロージャのためにリードイン及びリードアウトゾーンを使用する。セッションを閉じる際に、ファイルシステムを更新するのが好ましい。スペースは、ダミーデータで満たす必要がある。
【0024】
DVD―ROMドライブでデータを取出しうるようにするために、ディスクは、リードインゾーンと、データゾーンと、中間ゾーンと、リードアウトゾーンとを有し、データゾーンには何も記録されてない領域が存在しないようにする必要がある。ディスクをファイナライズすると、全ての記録されていない領域が満たされ、リードイン及びリードアウトゾーンが書き込まれ、ファイルシステムが更新される。
【0025】
単一層DVD+Rの標準規格との互換性を維持するために、本発明では以下の方策を用いる。内側ドライブゾーン(図2を参照)は、最適パワー校正(OPC)領域と、OPCカウントゾーンと、管理ゾーンと、テーブルオブコンテンツゾーン(TOCゾーン)とを有する。TOCゾーンは、ディスク上のセッション情報及び記録領域のインジケータを含む。TOCブロックのフォーマットは、DVD+R標準規格(バージョン1.11の48ページ)に説明されている。TOCのエラー訂正コード(ECC)ブロックには、いわゆる16バイトのTOC項目が存在している。これらのTOC項目を表1に記載する。
【0026】
本発明によれば、スーパーセッションに対応するために、TOCブロックに以下の修正を行っている。層0上の最後のPSNは、従来使用されなかったバイトB13〜B15に記憶される。このようにして、既存のTOCブロックのフォーマットに大きな修正を加えることなく、スーパーセッションの物理アドレスを規定することができる。
【0027】
全てのセッションには、(イントロ部に)内側セッション識別ゾーン及びセッション制御データゾーンが存在する。セッションディスク制御ブロック(SDCB)は、現在の及び先行するセッションに関する重要な情報を含んでいる。このSDCBのフォーマットは、DVD+R標準規格(バージョン1.11の64ページ)に説明されている。このSDCBで(本発明の目的に対して)最も関連する部分は、セッション項目が、フラグメント項目及び先行セッション項目から成ることである。これらの項目を表2及び表3に記載する。
【0028】
表2に記載されるフラグメント項目を参照する。SDCBのフラグメント項目において、バイト11〜13は従来使用されていなかった。本発明の実施例においては、L0層上のセッションの最大PSNの位置を記憶させるために、これらのバイトを使用する。次に、表3に記載される先行セッション項目を参照する。この場合も、バイト11〜13は従来使用されていなかったが、本発明の実施例では、L0層上のセッションの最大PSNを特定するために、これらのバイト11〜13を使用する。
【0029】
2つのジャンプゾーンは、充分な寸法にし、少なくとも1つの1 ECCブロックを含むようにするのが好ましい。少なくとも1つのダミーECCブロックは、ランアウト及びランイン用にL0層及びL1層にそれぞれ書き込むべきであるが、この書き込み処理は、層ジャンプの直前及び直後に行うのが好ましい。セッションを閉じた後、全てのオープン領域にダミーデータを満たし、最新のファイルシステムを書き込む必要がある。更に、L0層及びL1層上のジャンプゾーン(例えば中間ゾーン)は、好ましくは0により満たす必要がある。
【0030】
ジャンプゾーンの寸法は十分大きくして、L0層の最大データのPSNにおける層ジャンプ中に、データが他方の層(すなわちL1層)に存在することが保証されるようにする必要がある。
【0031】
異なるブロックを有するOTPセッションの線図を図4に示す。新規セッションを開始する際には、(例えば、64 ECCブロックの寸法を有する)イントロ及びクロージャゾーンを、先行セッションのジャンプゾーンに隣接して書き込むことになる。以降のセッションに対する手順は、第1セッションのものと同様である。
【0032】
本発明を、OTP型の二重層DVD+Rディスクを参照して説明したが、本発明は、平行トラック経路(PTP)のフォーマットを含むその他の多層光ディスクのフォーマットにも使用しうることに注意されたい。
【0033】
【表1】

【表2】

【表3】

【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、単一セッションのOTP型DVD−ROM互換ディスクの線図である。
【図2】図2は、部分的に記録されファイナライズされたOTP型二重層DVDディスクの線図である。
【図3】図3は、4つのセッションを有するファイナライズされたOTP型二重層DVDディスクであって、セッション4にダミーデータ領域が示されている当該DVDディスクの線図である。
【図4】図4は、スーパーセッションの線図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を記憶するための少なくとも2層の情報層を有する多層記録担体上に情報を記録する方法であって、
この方法は、複数セッションに情報を記録するように構成されている多層記録担体上に情報を記録する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の多層記録担体上に情報を記録する方法において、
少なくとも1つのセッションの情報が、少なくとも2層の情報層にわたって割り当てられている多層記録担体上に情報を記録する方法。
【請求項3】
請求項2に記載の多層記録担体上に情報を記録する方法において、
少なくとも2層の情報層にわたって情報が均一に割り当てられている多層記録担体上に情報を記録する方法。
【請求項4】
情報を記憶するための少なくとも2層の情報層を有する多層記録担体上に情報を記録するための装置であって、
この装置は、複数セッションで情報を記録するように動作する多層記録担体上に情報を記録するための装置。
【請求項5】
請求項4に記載の多層記録担体上に情報を記録する装置において、
この装置は、少なくとも1つのセッションに記録処理を行う際に、情報の記録中に層ジャンプを実行するよう動作する多層記録担体上に情報を記録するための装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−503073(P2007−503073A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523744(P2006−523744)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【国際出願番号】PCT/IB2004/051508
【国際公開番号】WO2005/020231
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】