複数色模様食品の製造方法とその方法に用いるモールド
【課題】 複数色模様食品における2つの色彩の境界線をでき得る限り直線に近いものにすることができるようにすること。
【解決手段】充填装置の容器部と連設するノズル部から複数色流動状食品材料をモールドに注入して複数色模様食品を製造する方法において、前記ノズル部の複数のノズル片からモールドに設定した落下点に少なくとも2色の流動状食品材料を色別にしかも同時に注入する工程と、前記各別に注入した流動状食品材料がそれぞれ水輪状に広がって、前記モールド底部の前記落下点から等距離の位置に設けた前記モールドの側壁より背の低い直線状の突起線の上方で、前記水輪状の広がりによるせめぎ合いによって流動状食品を一体可能に形成したこと。
【選択図】 図8
【解決手段】充填装置の容器部と連設するノズル部から複数色流動状食品材料をモールドに注入して複数色模様食品を製造する方法において、前記ノズル部の複数のノズル片からモールドに設定した落下点に少なくとも2色の流動状食品材料を色別にしかも同時に注入する工程と、前記各別に注入した流動状食品材料がそれぞれ水輪状に広がって、前記モールド底部の前記落下点から等距離の位置に設けた前記モールドの側壁より背の低い直線状の突起線の上方で、前記水輪状の広がりによるせめぎ合いによって流動状食品を一体可能に形成したこと。
【選択図】 図8
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
複数色模様食品の製造方法とその方法に用いるモールドに関する。
【背景技術】
【0002】
各種模様をチョコレートに施こすものとして、板状のモールドの表面に各種形状を1乃至40個凹設したモールドが用いられている。
最近の食品は、装飾的な高級性と嗜好性の多様化などにより、例えば一個のチョコレートに複数色で多様な形態のチョコレートが提案され、その中の一つとして本特許出願人は、既に下記の特許出願をしている。
これらの発明は、いずれも褐色のチョコレート色とホワイトチョコレートの流動状食品材料をノズル部(ノズル取付基板とノズル片から成る)と内部に仕切りのないモールドを用いて、装飾食品や複数色模様食品を製造するものである。そして、これらのモールドは前記流動状の褐色やホワイトのチョコレート材料を、前記ノズル取付基板やノズル片にある上孔や下孔を、色別に通してから、各色ともにモールド内へ同時注入することにより、モールド内で水輪状に広がって隣接する褐色(チョコレート色)とホワイトのチョコレートの流動状食品材料が互いの最短距離の位置で当接し、その後両者がいわゆるせめぎあうことにより前記当接するまでの方向とは直角2方向へ一直線状に境界線を設けて充填し、さらにモールドごと冷却することで前記境界線部分の褐色とホワイトのチョコレートを一体成形して、モールドから離型するようにしたものである。
【特許文献1】特許第3663299号
【特許文献2】特願2004−291300
【0003】
しかしながら、これらの発明はいずれも、隣接する2色間の流動状チョコレート原料が、仕切りのないモールド内で、いわゆるせめぎ合いの理論によって互いの色の隣接部分(境界部分)を形成するために、直線状とは云え定規で線を引いたようにはいかず、特許文献1の図2で描いたように2色チョコレート間に多少の歪みが生じた。このことは、色違いの流動状チョコレート原料の粘度、モールド内への注入量、注入の同時性、或いはモールドの凹設部分円滑性などの微少の狂いにより生じるものと考えられる。
なお、上記特許文献の添付図面図10(b)の境界線14はモールド底部に突起があるが、これはあくまで同明細書「0018」に記載しているように、チョコレートからなる4つのクローバの境界線を他の箇所より低くするために、モールド側を高くしているものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題を解決せんとしたものであり、その目的は、隣接する流動状チョコレート間の直線状の狂いをできるだけ抑えて直線に近い境界線ができるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記問題点を解決したものであり、その要旨は充填装置の容器部と連設するノズル部から複数色流動状食品材料をモールドに注入して複数色模様食品を製造する方法において、前記ノズル部の複数のノズル片からモールドに設定した落下点に少なくとも2色の流動状食品材料を色別にしかも同時に注入する工程と、前記各別に注入した流動状食品材料がそれぞれ水輪状に広がって、前記モールド底部の前記落下点から等距離の位置に設けた前記モールドの側壁より背の低い直線状の突起線の上方で、前記水輪状の広がりによるせめぎ合いによって流動状食品を一体可能に形成する工程とを含むことを特徴とする複数色模様食品の製造方法にある。
【0006】
本発明の別の要旨として、充填装置の容器部と連設するノズル部から少なくとも2色の流動状食品材料をモールドに注入して複数色模様食品を製造する装置において、前記モールド内には、前記少なくとも2色の流動状食品材料を各別に注入する前記ノズル部の落下点から等距離の位置に仕切られたモールドの側壁より背の低い直線状の突起線を設けたことを特徴とする複数色模様食品の製造に用いるモールドがある。
【0007】
本発明の基本は、モールドの底部の仮想線としての境界線の両側から同一距離をおいたそれぞれの箇所に少なくとも2色の流動状食品材料を注入し、それらが互いにモールド内を水輪状に広がって行き、上記境界線上で最初は点として衝突し、その後流動状食品材料のいわゆるせめぎ合いの理論により、初めはモールドの底部付近で衝突した方向とはクロスする上下90度方向に広がりながら、しかもモールド内の少なくとも2箇所の流動性食品材料の占める面積が同じくなるところから次第に前記境界線上に流動状食品材料が積み上げられて、例えば図9(a)〜(c)の模様がモールド内に形成されることを前提にしている。そこで、本発明では比較的低い突起線を前記境界線に設けたことにより、この境界線を境にして前記所定の位置に落下した2色の流動状食品材料が前記突起線の両側に突き当たることで、従来単に仮想の境界線上で衝突してせめぎ合っていたものを、仮想の境界線を実際に存在する突起線とすることででき得るだけ直線状に複数色模様食品の境界を形成するよう改良したものである。
【0008】
また、本発明のモールドとしては、流動状食品材料を凹部内に充填するが、その凹部の側壁に各種模様の凹凸、例えば図12の花弁模様などの凹凸を形成することで、より多様な複数色模様食品を得ることができる。
さらに、モールドの底部に、各種模様の凹凸、例えば図8(c)、図9(c)、図10(c)、図11(b)、図12(b)及び図13の菊模様等の凹凸を設けて、食品の上面を各種凹凸模様とすることができる。
さらにまた、モールドの開口部を除く側壁と底部の全体形状を、図1(e)の逆三角錐形、図8〜図10の四角形、図面には現わしていない楕円形、丸形及び星形等の各種各様形態にすることも考えられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の方法は、複数色模様食品を製造する方法において、複数のノズル片から少なくとも2色の流動状食品材料を色別に同時に注入し、そのモールド内の落下点から水輪状に広げ、しかも初め落下点から等距離にある直線状の突起線に当り前記広がりからさらに突起線上における前記各2色の流動状食品材料によるせめぎ合いによって生じる境界線上に流動食品を一体可能に形成したので、従来の複数色模様食品より直線に近い美麗な状態で2色の境界線が得られ商品価値を高めることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明では、モールドの底部に作られた2色の境界線を1本以上想定した箇所に比較的低い高さ、例えばモールドの凹部の深さにもよるが、例えばモールドの凹部の深さが20m/m以内のものであれば突起線を1〜2m/mに設けておくことで、せめぎ合いが始まる直前、すなわちモールド内に落下した流動状食品材料が一番抵抗を受ける水輪状の広がりと隣接する流動状食品同志の直線上の広がり初めの部分において、境界線が直線上に沿うので、その後の突起線上の隣接する流動状食品材料のせめぎ合いがスムースになり、直線状の模様形態が得られる。
【0011】
この発明における複数種の流動状食品材料からなる装飾食品の一つである装飾チョコレートは、普通のチョコレート色(褐色)とホワイト色、または各種食品用天然又は人工の食用着色料を入れた2色以上のチョコレートを組み合わせた表面凹凸または表面の平坦な模様からなる。チョコレートの流動状食品材料は、通常チョコレートと略同じ粘度と温度でテンパリングされるが、ノズル孔を通すある程度の粘度であれば支障ない。
【0012】
モールドは、ポリカーボネートなど熱に強く、軽くて成形性に優れ、強靭な樹脂から選ばれた上部開口部を有する面状のもので、そのモールド内はノズルから投入された流動状食品材料の量と位置及び数によって、全体としての複数色模様食品が形成され、模様際は互いの流動状食品材料同志の結晶により一体化が図れる。
【0013】
本発明のモールドで作られる複数色模様食品はノズルの押し出し方向に沿って多数区分されて吐出し、かつその押し出し方向とクロスする方向であれば、いずれの断面も略同一割合で一体に形成されているものであり、これら全体をモールドの開口部を除く内面の形状モールド凹部の底部と側壁に合わせ、鳥、動物、人物、種々のキャラクター、その他の形態に仕上げる。
【0014】
上記複数色模様食品の製造装置はモールド上に複数のノズル口を配置して、同時押し出しにより、複数の同一パターンの繰り返し模様をモールドの凹部内に作ることもできる。これらの場合、流動状食品材料の粘度等の性質は、いずれのノズルから押し出されるものも同一にすることが同一パターンの繰り返し模様を設けるといった設計上、あるいは充填装置にある流動状食品材料のモールド凹部を一つにできるといった設備の単純化と経済性の上でメリットがある。 なお、各ノズルから押し出される流動状食品材料の流体原料の粘度が異なるものであっても、定量で複数ノズルからモールド内に押し出すものであれば、モールド内の模様全体としては同一のものが成形できる。
【0015】
したがって、複数色模様食品はモールドに注入される少なくとも2種以上の流動状食品材料をモールド内の所定領域に常に一定の模様が現われるように配置しているもので、ノズルからの押し出し方向にクロスする交差断面において同一あるいは少なくとも同一の割合(縮尺又は拡大)で現われる。
【0016】
また、上記複数色模様食品の押し出し方向に略区分された模様際を暈すことは、流動状食品材料がモールドの所定領域に収まる前に各隣接する箇所における色の異なる流動状食品材料を混合させて色調を曖昧にしたことを示す。
【0017】
なお、モールド内の一部又は全部に食用印刷模様をシルク印刷などで直接印刷するか、フィルム製の転写紙として印刷したモールド底の模様を流動状食品材料に転写するなどして、さらに複雑な装飾模様を施すこともできる。
【0018】
この発明に用いる流動状性食品材料としては、チョコレートの他に、ようかん、キャンディー、アイスクリーム、チーズ、ゼリー、カステラなど初め流動性で、その後固化あるいは半固化状態で容器に収容される食品を含む。
【0019】
なお、本明細書中における「チョコレート」は、準チョコレート、チョコレート菓子、準チョコレート菓子等の製品を含む広義のチョコレートをいう。
【0020】
以下、この発明のモールドではないモールドを用いた複数色模様食品を、その代表的実施例として装飾チョコレートをもって添付図面に基づいて説明する。 しかし、この発明はチョコレートに限定されるものではない。
図1(a)〜(c)に示す充填装置の容器部(図示せず)と連設するノズル部は、モールド15(図1(e))に注入される少なくとも色調が異なる白と褐色(チョコレート色)の2種のチョコレート流体原料A,Bによって模様が施され、図2(a)(b)に示すような装飾チョコレート10を製造する。そして、このノズル部はノズル取付基板11と、その下部にビスで取り付けるようにした二枚のノズル片12,13とからなる。
【0021】
詳細には、このノズル取付部11は、上記容器部からのチョコレート流体原料A,Bを水平方向に各別に案内するための第1の通路11a,11bと、これらの通路にそれぞれ穿設された上孔11a',11b'を備える。また、ノズル片12は、上記上孔11a',11b'から送り出されたチョコレート流体原料A,Bを受け容れ、水平方向に案内する同心円状に区割りされた第2の通路12a(外側),12b(内側)と、これらの通路にそれぞれ穿設された下孔12a'(等間隔に位置する8個),12b'(相対向位置に各1個)とを備え、さらにノズル片13には上記下孔12a'の直下に穿設し、同孔から送り出されたチョコレート流体原料Aを直接通す8個の下孔13aと、上記下孔12b'から送り出されたチョコレート流体原料Bを受けて水平放射線方向に拡散する第3の通路13bと、その先部放射方向に穿設した8個の下孔13b'とを有する。
【0022】
このように、第1乃至第3の通路11a,11b,12a,12b,13a,13bは、チョコレート流体原料AとBを水平方向に個別に案内するための区画室としてそれぞれが機能し、上孔11a’,11b’と下孔12a’,12b’と13aと13b’は上記通路から下方へ送り出す機能を有し、この小孔を交互に配設したりすることで縞模様を作る。なお、図には示さないが、上記下孔の配置次第では例えば褐色の周囲に白色の模様を作ることもできる。
【0023】
ノズル片13のすぐ下方には、図1(d)に示す、漏斗状のホッパー14を配置し、さらにその下には略逆錐円のモールド15を別に設置した無端状自動コンベアで上記小孔13aと13b’から白と褐色の流動状食品材料を間欠的に送られてくるようにしている。なお、図の(f)に示すイとロは、装飾チョコレートとして予め想定した位置に縞模様を交互に配したチョコレート流体原料AとBの入る区分領域である。
【0024】
つぎに、上記装置を用いて、この発明の装飾模様チョコレートの製造方法を以下に説明する。
まず、充填装置のチョコレート流体原料AとBの2個設置された容器部から図示しないシリンダにより所定量づつAとB別にノズル部に送られ、ノズル取付基板11の第1の通路11a,11bに至り、それぞれ各1個宛有する上孔11a',11b'から下部のノズル片12に送り出される。つづいて、上孔11a'からノズル片12上へ送られたチョコレート流体原料Aは外側の第2の通路12aにおいて押し出された圧力で通路内を左回りと右回りに弧状に拡張し、等間隔に配した8個の下孔12a'からノズル片12と隙間なく密着している下部のノズル片13の同位置に対応した8個の下孔13aを通してホッパー14へと押し出される。一方、上孔11b'からノズル片12上へ送られたチョコレート流体原料Bは内側の第2の通路12bにおいて左及び右廻りに送られて2個の下孔12b'から下部のノズル片13にある略放射状の第3の通路13bより拡張して、さらに上記下孔13aに各隣り合せて設けた8個の小孔13b'よりホッパー14へと送り出させる。
【0025】
しかして、13aと13b'から白色と褐色の各8本の計16本で落下するチョコレート流体原料は、漏斗状のホッパー14において隣り同志が接触してからモールド15上に落下する(X方向)が、ペースト状であるために落下後は次第に膨らんでモールドの最底部では白と褐色のチョコレート流体原料AとBは接触状態にあり、上方に至るにつれて径が大きくなる逆円錐形と合致するように広がり、しかも上方のホッパーからモールド15内へ次々と供給されてくる各流体原料という条件(それぞれの流体原料AとBは略同粘度〈質量〉であれば、どちらもゆずらないせめぎ合いの理論による。)もあって、白と褐色間は幅が予め設定されたイとロの領域に沿うようにせき止めながら広がって互いの距離は等距離に広がるといった模様を呈する(図1(e),(f))。
【0026】
このようにして出たモールド内の装飾チョコレートは、モールド15に注入されたチョコレート原料A,Bをクーリングドンネルで冷却して固化することにより、視覚的にも味覚的にも所望の程度に調和させた模様を施してなる各チョコレート10が得られる(図2)。
【0027】
図2(a),(b)に示す各チョコレート10は、上記ノズル部とモールド15により得られたものであって、各チョコレート原料A,Bを略同形状に等分された夫々複数の所定立体領域に交互に放射状に略配している。尚、各所定立体領域は、モールド15内において略同形状に等分された上記図1(f)内で示す各注入領域イ,ロに対応している。
【0028】
上述した態様においては各チョコレート原料A,Bとホッパー14によって束ねてモールド15の中央部に注入することとしたが、ホッパー14を採用しないで各チョコレート原料A〜Cをモールド15に注入する態様とすることもでき、この場合はチョコレート原料A,Bがモールド15の凹部内の外周部に注入され、モールド15の傾斜に沿ってその中央部へ流動することとなる。
【0029】
この発明のモールドは、上記(イ)と(ロ)の仮想境界により低い突起線(図示せず)を用いるものであるが、モールド15の形態自体は上記実施例に限定されない。また、3種以上のチョコレート流体原料と容器部およびノズル片を用意することによって、3色以上の各種形態(モールドの内周面や各色の配合による)の装飾チョコレートが得られる。詳細には、ノズル取付基板11の上孔11a’,11b’とノズル片12,13の積層(第2と第3の通路)数をさらに増し、それに応じた下孔の配置を考慮することでより複雑な装飾チョコレートが得られる。
【0030】
また、各実施例には交互の縞模様を説明したが、これらの模様のパターンを単位体として、平面方向に複数のパターンを繰り返したものを製造することもできる。
【0031】
そこで、本発明の特徴を図3乃至図13により、以下に説明する。
図3から図7までは、本発明のモールドを用いた場合の複数色模様食品のチョコレートの製造方法の説明をするものである。そして、図8乃至図13は同様な製造方法を用いて出来たモールド内の各種模様形状の例である。なお、この実施例では便宜上1個のモールド内に1個の複数色食品としてのチョコレートを作る例を説明するが、実際には1個のモールド内に2〜40個の複数色食品がモールド内への流動状食品材料の同時注入で得られる。
【実施例1】
【0032】
図3は底部に2つの対角線(X形)状の低い高さの突起線50を設けた枡形の周壁51から成るモールド1の平面図であり、O,P,Q,及びRの4点は、各点の上部にあるノズル孔2からの流動状食品材料の注入位置を示すものであり、この注入位置はモールドが上方に固定されているノズル口との関係で決められた位置を示す印を便宜上記載したものであり、実際にはない。OとP,OとR,QとP,QとR間の距離を仮りに1(x)とするとそれぞれの中間地点までは1/2(x)となる。つまり、モールド内1の中心点から各コーナまでの4本の二本線は同質量である流動状食品材料を同じ粘度で注入したときの境界線6となるよう前記周壁51の内側の凹部の高さの約1/20〜1/10の高さの突起線50を設けている。
【0033】
図4は、図3のO,P,Q,及びR点を中心として、図5に示すノズル孔2(図4では中央横断面を示すためにノズル孔はモールド1の上方に2個ある)からモールド1内に投下・注入した初期状態の平面図である。この場合、流動状チョコレートの落下点からの水輪状の広がり3は、落下速度より広がり速度の方が遅い(広がり速度はモールド1の底部5との間で抵抗が生じ、その抵抗が連続して起こる)ので水輪状3に広がる。
【0034】
この場合、従来技術は、上記水輪状に広がった流動状チョコレートが4つの隣接点3’で衝突した直後に衝突方向とは90度方向を変えた矢印方向両側へ隣接したチョコレート同志がせめぎ合いながら直線状の境界線6で広がっていく。しかし、本発明は、図3乃至図13に示すように、突起線50を対角線状に設けたことが特徴である。この特徴により、上記衝突した流動状チョコレートは少なくてもモールドの底部付近の低い箇所では、衝突とともに図6に示すように、衝突方向に90度クロスして(矢印方向に)突起線50に沿って広がっていく。
【0035】
図7は、図6からさらに続けてノズル口2から注入される流動状チョコレートにより、上記突起線50に沿ってせめぎ合いによる各隣接する流動状チョコレートがモールド1のコーナ部まで広がり、その後の流動状チョコレートはモールド1の凹部を満たす高さまで注入される(図7)。
モールド1が流動状チョコレートで満たされると、充填工程は終了し、図示しないベルトコンベアにより、次工程のクーリングトンネルでの冷却工程に送られて固化し、製品として4箇所に区分された2色模様チョコレートが得られる。
図8(a),(b)は、上記実施例1により作られた複数色模様食品であり、この模様は対角線上にある上記した突起線50とその上の箇所の境界線6を境目にしてチョコレート色9と白色8とで2分したものである。なお、図8(c)はモールド1の底部に凹部菊模様7を設け、その中にチョコレート色のチョコレートを充填し、その上から流動状のホワイトチョコレート8とチョコレート色のチョコレート9を前記したように同時充填して全体を一体形状にしている。 この場合、流動状のホワイトチョコレートと流動状のチョコレート色チョコレートとは突起線50の真上にある境界線6と直角に交わる同距離の位置に注入して充填することで作れる。
【実施例2】
【0036】
上記実施例1と同じ原理で、しかもノズル2からモールド1の凹部への落し数と、落し場所による別の実施例を以下に説明する。
こうして、実施例2として仕上がったモールド1内の白色8とチョコレート色9の色模様チョコレートを図9(a)に示す。図9(b)は図9(a)のB−B断面図である。なお、図9(c)は図7(a)と(b)の製造工程前に、モールド1の底面5の一部に設けた凹部菊模様7を設けたもので最初にその内へチョコレート色のチョコレートを充填して境界線6を境にして装飾性を全体的に高めたものである。この図9(a)の右上はチョコレート色9で左下はホワイト(白色)チョコレート8でできている。
【実施例3】
【0037】
図10(a),(b)は、さらに別の実施例であり、この場合には、流動状のホワイトチョコレート8とチョコレート色のチョコレート9は斜め方向に各2箇所を突起線50とその上の境界線6を境にして各2色の四角形模様が得られる。なお、図10(c)はモールド1の底部に図9(c)や図8(c)と同じ菊花の凹部7にチョコレート色のチョコレートを充填したものである。
【実施例4】
【0038】
図11のモールドの凹部は、上述のものとは違う実施例であって、凹部の内側壁に無数の縦縞の凹凸16を設けたもので、図3乃至図7の順序で2色模様のチョコレート8,9をモールドの凹部の底部にある突起線50でモールド1内に白色とチョコレート色の模様を仕上げたものである。また、モールド1の底部には菊花の凹凸7を設けることで、モールド1から脱型したチョコレート表面に前記凹凸と逆の凸凹ができるようにした。
【実施例5】
【0039】
図12は、図11のモールドの内側壁の凹凸16に代わって4葉のクローバ状の凹凸4をモールド1の側壁に設けたものであり、ホワイトチョコレート8とチョコレート色チョコレート9を境界線6でモールド1内に仕上げたものである。モールド1の底部には、出き上がったチョコレートの4つのクローバの境界線6とその下に位置するモールド側底部の突起線50である。
【実施例6】
【0040】
図13は、図11(b)のモールド1を用いて、ホワイトチョコレート8とチョコレート色チョコレート9をモールド1の上方部を少し空けて同時充填した後、その空けた箇所にさらに別のチョコレート色チョコレート9’をモールド1の上部全面に充填したものである。また、他のモールド底部に設けた突起線50とその上にあるホワイトチョコレート8とチョコレート色チョコレートとの境界線6があることについては全て上記実施例と同じである。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明では、チョコレート、チーズ、ゼリー、水ようかんなど2色以上の流動状食品材料を用い、流動状食品材料をモールドに注入・充填する際に境界線がせめぎ合いにより形成されるがそのせめぎ合いの直前に境界線の真下となる位置のモールド底部に突起線を設けることにより、各色を突起線の箇所はもちろん、その上の境界線をできる限り直線状の色分れ模様ができるようにする。 したがって、流動性材料が水のような粘度の小さいものや、粘度が大きすぎるものでは、せめぎ合いは起こらない。そのために粘度は材質にもよるがチョコレートにおいては500cp〜20,000cpのものが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1(a)〜(c)は本発明の装飾食品の製造装置のうちの充填装置としてのノズル取付基板の一部とその下に重ねて設置される2枚のノズル片の分解斜視図である。(d)はノズル片の下部に配したホッパーの斜視図、(e)はホッパーとは僅かな間隔をあけて流動状食品材料が順次間欠的に送られてくるモールドのうちの1つである逆三角錐の凹部を示す斜視図、(f)は(e)の平面図である。(イ)(ロ)の点線はモールド内に押し出された2種の流動性食品材料の各領域を示す境界線であり、実際には存在しない。
【図2】(a)は図1により出来たチョコレートの斜視図と(b)その平面図である。
【図3】図1とは異なるモールドの凹部、すなわち四角板形を示す、本発明のモールドの底面に突起線を現わした平面図である。
【図4】図3のものを用いて、充填位置に流動性食品材料を一部注入した状態の説明図である。
【図5】図4のモールドの中央横断面図である。
【図6】図4からさらに流動状食品材料を続けて注入していく状態の説明図である。
【図7】図6からさらに流動状食品材料を充填してモールド内を満した説明図である。
【図8】(a)は2色の流動状食品材料を対角線を境界線として上下と左右にそれぞれ充填した状態の平面図である。(b)は(a)のA−A断面図である。(c)は(b)のモールド底部に凹部模様を設けて、この部分に前記(b)とは別の色の流動状食品材料を充填した断面図である。
【図9】上記図8とはモールドは同じであるが、流動状食品材料の充填位置を右上中央と左下中央を境界にして2色の複数色模様食品が出来上がったモールドの平面図である。(b)は(a)のB−B断面図である。(c)は(b)のモールド底部に凹部模様を設けてこの模様部分に前記(b)とは別の流動状食品材料を充填した断面図である。
【図10】上記図8や図9とはモールドは同じであるが、流動状食品材料の充填位置を上方左右と下方左右の中央に流動状食品材料を充填してできた複数色模様食品の平面図である。(b)は(a)のC−C断面図である。(c)は(b)の底部に凹部模様を設けて流動状食品材料を充填した断面図である。
【図11】(a)は図8,図9,図10とモールドの平面を丸形にして凹部側壁に細かい凹凸模様をした平面図である。(b)は(a)のD−D断面図である。
【図12】(a)は図8,図9,図10,図11とは別のモールドの平面図である。(b)は(a)のE−E断面図である。
【図13】図12(b)のモールド底部に凹部模様を設け、これに下部と上部の充填空白部に各別の流動状食品材料を充填した断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 モールド
5 モールドの底面
8 ホワイトチョコレート
9 チョコレート色(褐色)のチョコレート
50 突起線
【技術分野】
【0001】
複数色模様食品の製造方法とその方法に用いるモールドに関する。
【背景技術】
【0002】
各種模様をチョコレートに施こすものとして、板状のモールドの表面に各種形状を1乃至40個凹設したモールドが用いられている。
最近の食品は、装飾的な高級性と嗜好性の多様化などにより、例えば一個のチョコレートに複数色で多様な形態のチョコレートが提案され、その中の一つとして本特許出願人は、既に下記の特許出願をしている。
これらの発明は、いずれも褐色のチョコレート色とホワイトチョコレートの流動状食品材料をノズル部(ノズル取付基板とノズル片から成る)と内部に仕切りのないモールドを用いて、装飾食品や複数色模様食品を製造するものである。そして、これらのモールドは前記流動状の褐色やホワイトのチョコレート材料を、前記ノズル取付基板やノズル片にある上孔や下孔を、色別に通してから、各色ともにモールド内へ同時注入することにより、モールド内で水輪状に広がって隣接する褐色(チョコレート色)とホワイトのチョコレートの流動状食品材料が互いの最短距離の位置で当接し、その後両者がいわゆるせめぎあうことにより前記当接するまでの方向とは直角2方向へ一直線状に境界線を設けて充填し、さらにモールドごと冷却することで前記境界線部分の褐色とホワイトのチョコレートを一体成形して、モールドから離型するようにしたものである。
【特許文献1】特許第3663299号
【特許文献2】特願2004−291300
【0003】
しかしながら、これらの発明はいずれも、隣接する2色間の流動状チョコレート原料が、仕切りのないモールド内で、いわゆるせめぎ合いの理論によって互いの色の隣接部分(境界部分)を形成するために、直線状とは云え定規で線を引いたようにはいかず、特許文献1の図2で描いたように2色チョコレート間に多少の歪みが生じた。このことは、色違いの流動状チョコレート原料の粘度、モールド内への注入量、注入の同時性、或いはモールドの凹設部分円滑性などの微少の狂いにより生じるものと考えられる。
なお、上記特許文献の添付図面図10(b)の境界線14はモールド底部に突起があるが、これはあくまで同明細書「0018」に記載しているように、チョコレートからなる4つのクローバの境界線を他の箇所より低くするために、モールド側を高くしているものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題を解決せんとしたものであり、その目的は、隣接する流動状チョコレート間の直線状の狂いをできるだけ抑えて直線に近い境界線ができるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記問題点を解決したものであり、その要旨は充填装置の容器部と連設するノズル部から複数色流動状食品材料をモールドに注入して複数色模様食品を製造する方法において、前記ノズル部の複数のノズル片からモールドに設定した落下点に少なくとも2色の流動状食品材料を色別にしかも同時に注入する工程と、前記各別に注入した流動状食品材料がそれぞれ水輪状に広がって、前記モールド底部の前記落下点から等距離の位置に設けた前記モールドの側壁より背の低い直線状の突起線の上方で、前記水輪状の広がりによるせめぎ合いによって流動状食品を一体可能に形成する工程とを含むことを特徴とする複数色模様食品の製造方法にある。
【0006】
本発明の別の要旨として、充填装置の容器部と連設するノズル部から少なくとも2色の流動状食品材料をモールドに注入して複数色模様食品を製造する装置において、前記モールド内には、前記少なくとも2色の流動状食品材料を各別に注入する前記ノズル部の落下点から等距離の位置に仕切られたモールドの側壁より背の低い直線状の突起線を設けたことを特徴とする複数色模様食品の製造に用いるモールドがある。
【0007】
本発明の基本は、モールドの底部の仮想線としての境界線の両側から同一距離をおいたそれぞれの箇所に少なくとも2色の流動状食品材料を注入し、それらが互いにモールド内を水輪状に広がって行き、上記境界線上で最初は点として衝突し、その後流動状食品材料のいわゆるせめぎ合いの理論により、初めはモールドの底部付近で衝突した方向とはクロスする上下90度方向に広がりながら、しかもモールド内の少なくとも2箇所の流動性食品材料の占める面積が同じくなるところから次第に前記境界線上に流動状食品材料が積み上げられて、例えば図9(a)〜(c)の模様がモールド内に形成されることを前提にしている。そこで、本発明では比較的低い突起線を前記境界線に設けたことにより、この境界線を境にして前記所定の位置に落下した2色の流動状食品材料が前記突起線の両側に突き当たることで、従来単に仮想の境界線上で衝突してせめぎ合っていたものを、仮想の境界線を実際に存在する突起線とすることででき得るだけ直線状に複数色模様食品の境界を形成するよう改良したものである。
【0008】
また、本発明のモールドとしては、流動状食品材料を凹部内に充填するが、その凹部の側壁に各種模様の凹凸、例えば図12の花弁模様などの凹凸を形成することで、より多様な複数色模様食品を得ることができる。
さらに、モールドの底部に、各種模様の凹凸、例えば図8(c)、図9(c)、図10(c)、図11(b)、図12(b)及び図13の菊模様等の凹凸を設けて、食品の上面を各種凹凸模様とすることができる。
さらにまた、モールドの開口部を除く側壁と底部の全体形状を、図1(e)の逆三角錐形、図8〜図10の四角形、図面には現わしていない楕円形、丸形及び星形等の各種各様形態にすることも考えられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の方法は、複数色模様食品を製造する方法において、複数のノズル片から少なくとも2色の流動状食品材料を色別に同時に注入し、そのモールド内の落下点から水輪状に広げ、しかも初め落下点から等距離にある直線状の突起線に当り前記広がりからさらに突起線上における前記各2色の流動状食品材料によるせめぎ合いによって生じる境界線上に流動食品を一体可能に形成したので、従来の複数色模様食品より直線に近い美麗な状態で2色の境界線が得られ商品価値を高めることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明では、モールドの底部に作られた2色の境界線を1本以上想定した箇所に比較的低い高さ、例えばモールドの凹部の深さにもよるが、例えばモールドの凹部の深さが20m/m以内のものであれば突起線を1〜2m/mに設けておくことで、せめぎ合いが始まる直前、すなわちモールド内に落下した流動状食品材料が一番抵抗を受ける水輪状の広がりと隣接する流動状食品同志の直線上の広がり初めの部分において、境界線が直線上に沿うので、その後の突起線上の隣接する流動状食品材料のせめぎ合いがスムースになり、直線状の模様形態が得られる。
【0011】
この発明における複数種の流動状食品材料からなる装飾食品の一つである装飾チョコレートは、普通のチョコレート色(褐色)とホワイト色、または各種食品用天然又は人工の食用着色料を入れた2色以上のチョコレートを組み合わせた表面凹凸または表面の平坦な模様からなる。チョコレートの流動状食品材料は、通常チョコレートと略同じ粘度と温度でテンパリングされるが、ノズル孔を通すある程度の粘度であれば支障ない。
【0012】
モールドは、ポリカーボネートなど熱に強く、軽くて成形性に優れ、強靭な樹脂から選ばれた上部開口部を有する面状のもので、そのモールド内はノズルから投入された流動状食品材料の量と位置及び数によって、全体としての複数色模様食品が形成され、模様際は互いの流動状食品材料同志の結晶により一体化が図れる。
【0013】
本発明のモールドで作られる複数色模様食品はノズルの押し出し方向に沿って多数区分されて吐出し、かつその押し出し方向とクロスする方向であれば、いずれの断面も略同一割合で一体に形成されているものであり、これら全体をモールドの開口部を除く内面の形状モールド凹部の底部と側壁に合わせ、鳥、動物、人物、種々のキャラクター、その他の形態に仕上げる。
【0014】
上記複数色模様食品の製造装置はモールド上に複数のノズル口を配置して、同時押し出しにより、複数の同一パターンの繰り返し模様をモールドの凹部内に作ることもできる。これらの場合、流動状食品材料の粘度等の性質は、いずれのノズルから押し出されるものも同一にすることが同一パターンの繰り返し模様を設けるといった設計上、あるいは充填装置にある流動状食品材料のモールド凹部を一つにできるといった設備の単純化と経済性の上でメリットがある。 なお、各ノズルから押し出される流動状食品材料の流体原料の粘度が異なるものであっても、定量で複数ノズルからモールド内に押し出すものであれば、モールド内の模様全体としては同一のものが成形できる。
【0015】
したがって、複数色模様食品はモールドに注入される少なくとも2種以上の流動状食品材料をモールド内の所定領域に常に一定の模様が現われるように配置しているもので、ノズルからの押し出し方向にクロスする交差断面において同一あるいは少なくとも同一の割合(縮尺又は拡大)で現われる。
【0016】
また、上記複数色模様食品の押し出し方向に略区分された模様際を暈すことは、流動状食品材料がモールドの所定領域に収まる前に各隣接する箇所における色の異なる流動状食品材料を混合させて色調を曖昧にしたことを示す。
【0017】
なお、モールド内の一部又は全部に食用印刷模様をシルク印刷などで直接印刷するか、フィルム製の転写紙として印刷したモールド底の模様を流動状食品材料に転写するなどして、さらに複雑な装飾模様を施すこともできる。
【0018】
この発明に用いる流動状性食品材料としては、チョコレートの他に、ようかん、キャンディー、アイスクリーム、チーズ、ゼリー、カステラなど初め流動性で、その後固化あるいは半固化状態で容器に収容される食品を含む。
【0019】
なお、本明細書中における「チョコレート」は、準チョコレート、チョコレート菓子、準チョコレート菓子等の製品を含む広義のチョコレートをいう。
【0020】
以下、この発明のモールドではないモールドを用いた複数色模様食品を、その代表的実施例として装飾チョコレートをもって添付図面に基づいて説明する。 しかし、この発明はチョコレートに限定されるものではない。
図1(a)〜(c)に示す充填装置の容器部(図示せず)と連設するノズル部は、モールド15(図1(e))に注入される少なくとも色調が異なる白と褐色(チョコレート色)の2種のチョコレート流体原料A,Bによって模様が施され、図2(a)(b)に示すような装飾チョコレート10を製造する。そして、このノズル部はノズル取付基板11と、その下部にビスで取り付けるようにした二枚のノズル片12,13とからなる。
【0021】
詳細には、このノズル取付部11は、上記容器部からのチョコレート流体原料A,Bを水平方向に各別に案内するための第1の通路11a,11bと、これらの通路にそれぞれ穿設された上孔11a',11b'を備える。また、ノズル片12は、上記上孔11a',11b'から送り出されたチョコレート流体原料A,Bを受け容れ、水平方向に案内する同心円状に区割りされた第2の通路12a(外側),12b(内側)と、これらの通路にそれぞれ穿設された下孔12a'(等間隔に位置する8個),12b'(相対向位置に各1個)とを備え、さらにノズル片13には上記下孔12a'の直下に穿設し、同孔から送り出されたチョコレート流体原料Aを直接通す8個の下孔13aと、上記下孔12b'から送り出されたチョコレート流体原料Bを受けて水平放射線方向に拡散する第3の通路13bと、その先部放射方向に穿設した8個の下孔13b'とを有する。
【0022】
このように、第1乃至第3の通路11a,11b,12a,12b,13a,13bは、チョコレート流体原料AとBを水平方向に個別に案内するための区画室としてそれぞれが機能し、上孔11a’,11b’と下孔12a’,12b’と13aと13b’は上記通路から下方へ送り出す機能を有し、この小孔を交互に配設したりすることで縞模様を作る。なお、図には示さないが、上記下孔の配置次第では例えば褐色の周囲に白色の模様を作ることもできる。
【0023】
ノズル片13のすぐ下方には、図1(d)に示す、漏斗状のホッパー14を配置し、さらにその下には略逆錐円のモールド15を別に設置した無端状自動コンベアで上記小孔13aと13b’から白と褐色の流動状食品材料を間欠的に送られてくるようにしている。なお、図の(f)に示すイとロは、装飾チョコレートとして予め想定した位置に縞模様を交互に配したチョコレート流体原料AとBの入る区分領域である。
【0024】
つぎに、上記装置を用いて、この発明の装飾模様チョコレートの製造方法を以下に説明する。
まず、充填装置のチョコレート流体原料AとBの2個設置された容器部から図示しないシリンダにより所定量づつAとB別にノズル部に送られ、ノズル取付基板11の第1の通路11a,11bに至り、それぞれ各1個宛有する上孔11a',11b'から下部のノズル片12に送り出される。つづいて、上孔11a'からノズル片12上へ送られたチョコレート流体原料Aは外側の第2の通路12aにおいて押し出された圧力で通路内を左回りと右回りに弧状に拡張し、等間隔に配した8個の下孔12a'からノズル片12と隙間なく密着している下部のノズル片13の同位置に対応した8個の下孔13aを通してホッパー14へと押し出される。一方、上孔11b'からノズル片12上へ送られたチョコレート流体原料Bは内側の第2の通路12bにおいて左及び右廻りに送られて2個の下孔12b'から下部のノズル片13にある略放射状の第3の通路13bより拡張して、さらに上記下孔13aに各隣り合せて設けた8個の小孔13b'よりホッパー14へと送り出させる。
【0025】
しかして、13aと13b'から白色と褐色の各8本の計16本で落下するチョコレート流体原料は、漏斗状のホッパー14において隣り同志が接触してからモールド15上に落下する(X方向)が、ペースト状であるために落下後は次第に膨らんでモールドの最底部では白と褐色のチョコレート流体原料AとBは接触状態にあり、上方に至るにつれて径が大きくなる逆円錐形と合致するように広がり、しかも上方のホッパーからモールド15内へ次々と供給されてくる各流体原料という条件(それぞれの流体原料AとBは略同粘度〈質量〉であれば、どちらもゆずらないせめぎ合いの理論による。)もあって、白と褐色間は幅が予め設定されたイとロの領域に沿うようにせき止めながら広がって互いの距離は等距離に広がるといった模様を呈する(図1(e),(f))。
【0026】
このようにして出たモールド内の装飾チョコレートは、モールド15に注入されたチョコレート原料A,Bをクーリングドンネルで冷却して固化することにより、視覚的にも味覚的にも所望の程度に調和させた模様を施してなる各チョコレート10が得られる(図2)。
【0027】
図2(a),(b)に示す各チョコレート10は、上記ノズル部とモールド15により得られたものであって、各チョコレート原料A,Bを略同形状に等分された夫々複数の所定立体領域に交互に放射状に略配している。尚、各所定立体領域は、モールド15内において略同形状に等分された上記図1(f)内で示す各注入領域イ,ロに対応している。
【0028】
上述した態様においては各チョコレート原料A,Bとホッパー14によって束ねてモールド15の中央部に注入することとしたが、ホッパー14を採用しないで各チョコレート原料A〜Cをモールド15に注入する態様とすることもでき、この場合はチョコレート原料A,Bがモールド15の凹部内の外周部に注入され、モールド15の傾斜に沿ってその中央部へ流動することとなる。
【0029】
この発明のモールドは、上記(イ)と(ロ)の仮想境界により低い突起線(図示せず)を用いるものであるが、モールド15の形態自体は上記実施例に限定されない。また、3種以上のチョコレート流体原料と容器部およびノズル片を用意することによって、3色以上の各種形態(モールドの内周面や各色の配合による)の装飾チョコレートが得られる。詳細には、ノズル取付基板11の上孔11a’,11b’とノズル片12,13の積層(第2と第3の通路)数をさらに増し、それに応じた下孔の配置を考慮することでより複雑な装飾チョコレートが得られる。
【0030】
また、各実施例には交互の縞模様を説明したが、これらの模様のパターンを単位体として、平面方向に複数のパターンを繰り返したものを製造することもできる。
【0031】
そこで、本発明の特徴を図3乃至図13により、以下に説明する。
図3から図7までは、本発明のモールドを用いた場合の複数色模様食品のチョコレートの製造方法の説明をするものである。そして、図8乃至図13は同様な製造方法を用いて出来たモールド内の各種模様形状の例である。なお、この実施例では便宜上1個のモールド内に1個の複数色食品としてのチョコレートを作る例を説明するが、実際には1個のモールド内に2〜40個の複数色食品がモールド内への流動状食品材料の同時注入で得られる。
【実施例1】
【0032】
図3は底部に2つの対角線(X形)状の低い高さの突起線50を設けた枡形の周壁51から成るモールド1の平面図であり、O,P,Q,及びRの4点は、各点の上部にあるノズル孔2からの流動状食品材料の注入位置を示すものであり、この注入位置はモールドが上方に固定されているノズル口との関係で決められた位置を示す印を便宜上記載したものであり、実際にはない。OとP,OとR,QとP,QとR間の距離を仮りに1(x)とするとそれぞれの中間地点までは1/2(x)となる。つまり、モールド内1の中心点から各コーナまでの4本の二本線は同質量である流動状食品材料を同じ粘度で注入したときの境界線6となるよう前記周壁51の内側の凹部の高さの約1/20〜1/10の高さの突起線50を設けている。
【0033】
図4は、図3のO,P,Q,及びR点を中心として、図5に示すノズル孔2(図4では中央横断面を示すためにノズル孔はモールド1の上方に2個ある)からモールド1内に投下・注入した初期状態の平面図である。この場合、流動状チョコレートの落下点からの水輪状の広がり3は、落下速度より広がり速度の方が遅い(広がり速度はモールド1の底部5との間で抵抗が生じ、その抵抗が連続して起こる)ので水輪状3に広がる。
【0034】
この場合、従来技術は、上記水輪状に広がった流動状チョコレートが4つの隣接点3’で衝突した直後に衝突方向とは90度方向を変えた矢印方向両側へ隣接したチョコレート同志がせめぎ合いながら直線状の境界線6で広がっていく。しかし、本発明は、図3乃至図13に示すように、突起線50を対角線状に設けたことが特徴である。この特徴により、上記衝突した流動状チョコレートは少なくてもモールドの底部付近の低い箇所では、衝突とともに図6に示すように、衝突方向に90度クロスして(矢印方向に)突起線50に沿って広がっていく。
【0035】
図7は、図6からさらに続けてノズル口2から注入される流動状チョコレートにより、上記突起線50に沿ってせめぎ合いによる各隣接する流動状チョコレートがモールド1のコーナ部まで広がり、その後の流動状チョコレートはモールド1の凹部を満たす高さまで注入される(図7)。
モールド1が流動状チョコレートで満たされると、充填工程は終了し、図示しないベルトコンベアにより、次工程のクーリングトンネルでの冷却工程に送られて固化し、製品として4箇所に区分された2色模様チョコレートが得られる。
図8(a),(b)は、上記実施例1により作られた複数色模様食品であり、この模様は対角線上にある上記した突起線50とその上の箇所の境界線6を境目にしてチョコレート色9と白色8とで2分したものである。なお、図8(c)はモールド1の底部に凹部菊模様7を設け、その中にチョコレート色のチョコレートを充填し、その上から流動状のホワイトチョコレート8とチョコレート色のチョコレート9を前記したように同時充填して全体を一体形状にしている。 この場合、流動状のホワイトチョコレートと流動状のチョコレート色チョコレートとは突起線50の真上にある境界線6と直角に交わる同距離の位置に注入して充填することで作れる。
【実施例2】
【0036】
上記実施例1と同じ原理で、しかもノズル2からモールド1の凹部への落し数と、落し場所による別の実施例を以下に説明する。
こうして、実施例2として仕上がったモールド1内の白色8とチョコレート色9の色模様チョコレートを図9(a)に示す。図9(b)は図9(a)のB−B断面図である。なお、図9(c)は図7(a)と(b)の製造工程前に、モールド1の底面5の一部に設けた凹部菊模様7を設けたもので最初にその内へチョコレート色のチョコレートを充填して境界線6を境にして装飾性を全体的に高めたものである。この図9(a)の右上はチョコレート色9で左下はホワイト(白色)チョコレート8でできている。
【実施例3】
【0037】
図10(a),(b)は、さらに別の実施例であり、この場合には、流動状のホワイトチョコレート8とチョコレート色のチョコレート9は斜め方向に各2箇所を突起線50とその上の境界線6を境にして各2色の四角形模様が得られる。なお、図10(c)はモールド1の底部に図9(c)や図8(c)と同じ菊花の凹部7にチョコレート色のチョコレートを充填したものである。
【実施例4】
【0038】
図11のモールドの凹部は、上述のものとは違う実施例であって、凹部の内側壁に無数の縦縞の凹凸16を設けたもので、図3乃至図7の順序で2色模様のチョコレート8,9をモールドの凹部の底部にある突起線50でモールド1内に白色とチョコレート色の模様を仕上げたものである。また、モールド1の底部には菊花の凹凸7を設けることで、モールド1から脱型したチョコレート表面に前記凹凸と逆の凸凹ができるようにした。
【実施例5】
【0039】
図12は、図11のモールドの内側壁の凹凸16に代わって4葉のクローバ状の凹凸4をモールド1の側壁に設けたものであり、ホワイトチョコレート8とチョコレート色チョコレート9を境界線6でモールド1内に仕上げたものである。モールド1の底部には、出き上がったチョコレートの4つのクローバの境界線6とその下に位置するモールド側底部の突起線50である。
【実施例6】
【0040】
図13は、図11(b)のモールド1を用いて、ホワイトチョコレート8とチョコレート色チョコレート9をモールド1の上方部を少し空けて同時充填した後、その空けた箇所にさらに別のチョコレート色チョコレート9’をモールド1の上部全面に充填したものである。また、他のモールド底部に設けた突起線50とその上にあるホワイトチョコレート8とチョコレート色チョコレートとの境界線6があることについては全て上記実施例と同じである。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明では、チョコレート、チーズ、ゼリー、水ようかんなど2色以上の流動状食品材料を用い、流動状食品材料をモールドに注入・充填する際に境界線がせめぎ合いにより形成されるがそのせめぎ合いの直前に境界線の真下となる位置のモールド底部に突起線を設けることにより、各色を突起線の箇所はもちろん、その上の境界線をできる限り直線状の色分れ模様ができるようにする。 したがって、流動性材料が水のような粘度の小さいものや、粘度が大きすぎるものでは、せめぎ合いは起こらない。そのために粘度は材質にもよるがチョコレートにおいては500cp〜20,000cpのものが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1(a)〜(c)は本発明の装飾食品の製造装置のうちの充填装置としてのノズル取付基板の一部とその下に重ねて設置される2枚のノズル片の分解斜視図である。(d)はノズル片の下部に配したホッパーの斜視図、(e)はホッパーとは僅かな間隔をあけて流動状食品材料が順次間欠的に送られてくるモールドのうちの1つである逆三角錐の凹部を示す斜視図、(f)は(e)の平面図である。(イ)(ロ)の点線はモールド内に押し出された2種の流動性食品材料の各領域を示す境界線であり、実際には存在しない。
【図2】(a)は図1により出来たチョコレートの斜視図と(b)その平面図である。
【図3】図1とは異なるモールドの凹部、すなわち四角板形を示す、本発明のモールドの底面に突起線を現わした平面図である。
【図4】図3のものを用いて、充填位置に流動性食品材料を一部注入した状態の説明図である。
【図5】図4のモールドの中央横断面図である。
【図6】図4からさらに流動状食品材料を続けて注入していく状態の説明図である。
【図7】図6からさらに流動状食品材料を充填してモールド内を満した説明図である。
【図8】(a)は2色の流動状食品材料を対角線を境界線として上下と左右にそれぞれ充填した状態の平面図である。(b)は(a)のA−A断面図である。(c)は(b)のモールド底部に凹部模様を設けて、この部分に前記(b)とは別の色の流動状食品材料を充填した断面図である。
【図9】上記図8とはモールドは同じであるが、流動状食品材料の充填位置を右上中央と左下中央を境界にして2色の複数色模様食品が出来上がったモールドの平面図である。(b)は(a)のB−B断面図である。(c)は(b)のモールド底部に凹部模様を設けてこの模様部分に前記(b)とは別の流動状食品材料を充填した断面図である。
【図10】上記図8や図9とはモールドは同じであるが、流動状食品材料の充填位置を上方左右と下方左右の中央に流動状食品材料を充填してできた複数色模様食品の平面図である。(b)は(a)のC−C断面図である。(c)は(b)の底部に凹部模様を設けて流動状食品材料を充填した断面図である。
【図11】(a)は図8,図9,図10とモールドの平面を丸形にして凹部側壁に細かい凹凸模様をした平面図である。(b)は(a)のD−D断面図である。
【図12】(a)は図8,図9,図10,図11とは別のモールドの平面図である。(b)は(a)のE−E断面図である。
【図13】図12(b)のモールド底部に凹部模様を設け、これに下部と上部の充填空白部に各別の流動状食品材料を充填した断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 モールド
5 モールドの底面
8 ホワイトチョコレート
9 チョコレート色(褐色)のチョコレート
50 突起線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填装置の容器部と連設するノズル部から複数色流動状食品材料をモールドに注入して複数色模様食品を製造する方法において、
前記ノズル部の複数のノズル片からモールドに設定した落下点に少なくとも2色の流動状食品材料を色別にしかも同時に注入する工程と、
前記各別に注入した流動状食品材料がそれぞれ水輪状に広がって、前記モールド底部の前記落下点から等距離の位置に設けた前記モールドの側壁より背の低い直線状の突起線の上方で、前記水輪状の広がりによるせめぎ合いによって流動状食品を一体可能に形成する工程とを含むことを特徴とする複数色模様食品の製造方法。
【請求項2】
前記流動状食品材料が、500cp〜20,000cpの粘度範囲であることを特徴とする請求項1に記載の複数色模様食品の製造方法。
【請求項3】
充填装置の容器部と連設するノズル部から少なくとも2色の流動状食品材料をモールドに注入して複数色模様食品を製造する装置において、前記モールド内には、前記少なくとも2色の流動状食品材料を各別に注入する前記ノズル部の落下点から等距離の位置に仕切られたモールドの側壁より背の低い直線状の突起線を設けたことを特徴とする複数色模様食品の製造に用いるモールド。
【請求項4】
前記境界線となる突起線の高さを前記側壁の高さの1/20〜1/10としたことを特徴とする請求項3に記載の複数色模様食品の製造に用いるモールド。
【請求項1】
充填装置の容器部と連設するノズル部から複数色流動状食品材料をモールドに注入して複数色模様食品を製造する方法において、
前記ノズル部の複数のノズル片からモールドに設定した落下点に少なくとも2色の流動状食品材料を色別にしかも同時に注入する工程と、
前記各別に注入した流動状食品材料がそれぞれ水輪状に広がって、前記モールド底部の前記落下点から等距離の位置に設けた前記モールドの側壁より背の低い直線状の突起線の上方で、前記水輪状の広がりによるせめぎ合いによって流動状食品を一体可能に形成する工程とを含むことを特徴とする複数色模様食品の製造方法。
【請求項2】
前記流動状食品材料が、500cp〜20,000cpの粘度範囲であることを特徴とする請求項1に記載の複数色模様食品の製造方法。
【請求項3】
充填装置の容器部と連設するノズル部から少なくとも2色の流動状食品材料をモールドに注入して複数色模様食品を製造する装置において、前記モールド内には、前記少なくとも2色の流動状食品材料を各別に注入する前記ノズル部の落下点から等距離の位置に仕切られたモールドの側壁より背の低い直線状の突起線を設けたことを特徴とする複数色模様食品の製造に用いるモールド。
【請求項4】
前記境界線となる突起線の高さを前記側壁の高さの1/20〜1/10としたことを特徴とする請求項3に記載の複数色模様食品の製造に用いるモールド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−227121(P2010−227121A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157717(P2010−157717)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【分割の表示】特願2005−321750(P2005−321750)の分割
【原出願日】平成17年11月7日(2005.11.7)
【出願人】(390008671)芥川製菓株式会社 (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【分割の表示】特願2005−321750(P2005−321750)の分割
【原出願日】平成17年11月7日(2005.11.7)
【出願人】(390008671)芥川製菓株式会社 (5)
【Fターム(参考)】
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