説明

複輪用ホイール

【課題】複輪用ホイールのディスク表面におけるボルト穴周辺に浅い凹部を形成することにより、ディスク環状平坦面相互間の密着性を良好にするとともに、フレッティング疲労を軽減し、しかもハブ取り付け部の耐蝕性をも向上させる。
【解決手段】ディスク外側の環状平坦面における各ボルト穴の周辺に、放射外方にのみ開放する凹部を形成した。これにより取り付けに際してのナット締結時の負荷応力が緩和され、走行時における繰り返し応力による面圧の上昇がきわめて少なく、その結果ホイールに対するフレッティング疲労によるホイ−ルの耐久強度を大幅に増大でき、またハブ取り付け部における水平に突出したフランジの外周面とホイールのハブ穴の縁部との接触部に生じやすい著しい腐蝕を防止して車輪の着脱作業が容易となり、また再度の取り付けに際して平面精度が十分に維持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラックやバスなど特に大型車両の複輪として用いられるホイールに関し、複輪における各対のディスク環状平坦面相互間の密着性を良好にするとともに、フレッティング疲労を軽減して耐久性を向上させ、しかもハブ取り付け部の耐蝕性をも向上させることを目的とする。
【背景技術】
【0002】
特に大型車両に用いられるホイールにおけるディスクの環状平坦面に凹部を形成するようにしたものについては、例えば特公平2−9961号公報に開示されたものが知られる。 これはディスクの環状平坦面に形成したところの、ボルト穴付近のみ広幅とした周方向に連続する環状の凹部6により外側環状当接面7(あるいは島状領域17)と内側環状当接面8(あるいは島状領域18)とに分離され、これらの外側環状当接面7(あるいは島状領域17)と内側環状当接面8(あるいは島状領域18)をブレーキドラム3aのフランジ4a表面、すなわちハブ取り付け面に当接させて取り付けた場合における外側当接面の当接面間隔が変化しないようにして耐久性の向上と所謂ブレーキジャダー音の抑制をはかるようにしたものである。
【特許文献1】特公平2−9961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の特許文献1に記載のものは、ディスクの環状平坦面に形成したところの周方向に連続する凹部が、ブレーキドラムのフランジ表面、すなわちハブ取り付け面と対面する面である内側に形成されるものであり、本願発明が目的とする複輪用のホイールとして、一対の車輪相互のディスク突出側における環状の平坦部同士を重合した場合の面圧上昇緩和やハブ取り付け部における水平に突出したフランジの外周面とハブ穴の縁部との錆び付きを防止することには貢献しない。
【0004】
またそればかりでなく、特許文献1の図3にあらわされた実施例に示すホイールを用いた車輪をブレーキドラムのハブ取り付け部に取り付けて長期間使用した場合には、内側環状当接面が島状領域18となっているところから環状凹部6を介して導入された湿気がブレーキドラムのフランジ4表面に達し、両当接面間に錆びを生じて車輪を取り外す際に作業に困難を来たすことが多く、しかも再度車輪を取り付ける際に平面精度に狂いを生じやすいという問題もある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明は上記の課題を解決し、特に複輪車輪での一対のホイールディスクにおける突出した外側の環状平坦面相互間の密着性を良好にするとともに、フレッティング疲労を軽減して耐久性を向上させ、しかもハブ取り付け部の耐蝕性をも向上させることを目的とするものであり、具体的には周面に環状のリムを一体に有するディスク型ホイールであって、ディスク外側の環状平坦面における各ボルト穴の周辺に、放射外方にのみ開放する凹部を形成してなることを特徴とする複輪用ホイールに関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明は上記した通り、ディスク外側の環状平坦面における各ボルト穴の周辺に、放射外方にのみ開放する凹部を形成してなるものであるために、既述した特許文献1(特公平2−9961号公報)に記載されたホイールの環状当接面に、周方向に連続する広い面積の環状の凹部を形成する場合に比べると、出力の比較的小さなプレス機による加工作業でよいために、大幅なコストダウンが可能となる。
【0007】
また本発明は一対の車輪におけるホイールディスク同士の接触面積が大きいために、取り付けに際してのナット締結時の負荷応力や、走行時における繰り返し応力による面圧の上昇がきわめて少なく、その結果ホイールに対するフレッティング疲労によるホイ−ルの耐久強度を大幅に増大することができる。
【0008】
さらに本願発明に係るホイールを用いた車輪を車両に取り付けて長期間使用した場合においても、各ボルト穴の周辺に形成された凹部が放射外方にのみ開放するものであるために、上記凹部内に生じた湿気が中心のハブ穴側に流れ込むことがなく、そのためにハブ取り付け部における水平に突出したフランジの外周面とホイールのハブ穴の縁部との接触部に生じやすい著しい腐蝕を防止することができ、車輪の着脱作業が容易となり、また再度の取り付けに際して平面精度が十分に維持される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下において本発明の具体的な内容を図1〜4の実施例をもとに説明する。 なお各図において同一又は相当部分には同一符号を付して説明する。 図において1は大型車両の複輪として用いられるディスク型のホイールをあらわし、該ホイール1は金属板を加工して環状に成形されたリム2と該リム2の内周側に溶接により一体に取り付けられたところの片面中央部を中心に開設されたハブ穴6を中心にその周りをリム2の側面外方に凸出させて環状平坦面5を形成したディスク4とにより構成される。
【0010】
なお上記したリム2は両端部にフランジ2a・2bを有するとともにエアバルブ3が取り付けられ、またディスク4は、上記したハブ穴6の周りの環状平坦面5に8箇所のボルト穴7が均等間隔毎に形成され、また環状平坦面5の周りには6箇所の飾り穴9が同じく均等間隔毎に形成されている。
【0011】
さらに、ディスク4外側の環状平坦面5における各ボルト7穴の周辺には、放射外方にのみ開放する凹部8が形成されている。 この凹部8はボルト穴7に挿通されるボルトに対するナット締め付け時の応力や、車両走行時のおける繰り返し応力による一対の複輪相互の環状平坦面5・5間における面圧上昇を緩和させることによりホイールに対するフレッティング疲労強度の向上をはかるとともに、ホイールとバブとの接触部の腐蝕を防止することを目的として施されるものであり、そのような目的からして凹部8は環状平坦面5の内周側に開口するものであってはならず、放射外方にのみ開放させるものでなければならない。
【0012】
またナットによる締め付け強度を十分に維持するためには、凹部8が環状平坦面5の周方向に連続するものであってはならず、各ボルト穴7毎にその周辺部のみに形成する必要がある。 このような条件からみて環状平坦面5における各ボルト7穴の周辺に施されるべき凹部8は図1に示されているように各ボルト穴7周辺を起点として放射外方に向けて拡開し、あるいは放射外方に向けて次第に拡開するようにした略扇型をなすものであるのが理想的である。
【0013】
さらに凹部8の深さについて図3の部分拡大図をもとに説明をすると、ボルト穴7の開口縁には深さc−cのナット座7aが施されている。 このナット座7aの深さcーcは通常3.0mm〜3.7mm程度であり、このナット座7aを含めたボルト穴7の周辺を起点として深さbーbの凹部8が形成される。
【0014】
この凹部8の深さbーbについては、0.2mm未満であると、ナット締め付け時に環状平坦面5における凹部8までもが対向するホイール1の環状平坦面5に接してしまう結果、在来品ホイールを用いる場合との差異が殆どなくなって、フレッティング疲労を十分に解消することができなくなり、またホイールとバブとの接触部の腐蝕を防止するには不十分となる。 反対に0.5mmを超えるとディスク4の板厚が減少して環状平坦面5の平面強度を損なうので0.2〜0.5mmの範囲内である必要がある。 なおこのような凹部8の形成には既知のプレス機により、上記した凹部8に相応する治具を取り付けて容易にプレス成形することができる。
【0015】
なお、上記した本発明の複輪用ホイール1を用いた車輪T1・T2を車両のハブ軸HSのハブドラムHDに取り付けた場合の一例を図4に示すと、先ずハブドラムHDに対し車輪T1を、ディスク4外側に突出する環状平坦面5を外側にして、ホイールの内側をハブドラムHDに被せるように装入し、各ボルト穴7をハブドラムHD側に植立させたハブボルトBに位置合わせしつつ取り付けた後、別の車輪T2をディスク4外側に突出する環状平坦面5を先頭に、その各ボルト穴7を上記したハブボルトBに位置合わせしつつ装入し、2つの車輪T1・T2のそれぞれの突出した側の環状平坦面5・5を重ね合わせた後、それそれのハブボルトBに締め付けナットNを螺入して車輪T1・T2を共締めにより強固に締め付け固定して使用する。
【0016】
本発明は上記した通り、ディスク外側の環状平坦面における各ボルト穴の周辺に、放射外方にのみ開放する略扇型形状などの一定深さの凹部を形成してなるものであるために、これを大型車両の複輪車輪に組み付けて使用した場合には特にフレッティング強度が改善され、したがってこれを同種の在来品ホイールと比較した場合、少なくとも3倍以上の耐久強度を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例であるホイールの正面図。
【図2】図1におけるAーA線矢視方向の断面図。
【図3】図2におけるP部分の拡大図。
【図4】本発明に係るホイールを用いた車輪を車両のハブに複輪として取り付けた状態をあらわした断面図。
【符号の説明】
【0018】
1 ホイール
2 リム
2a フランジ
2b フランジ
3 エアバルブ
4 ディスク
5 環状平坦面
6 ハブ穴
7 ボルト穴
7a ナット座
8 凹部
T 車輪
HS ハブ軸
HD ハブドラム
B ハブボルト
N 締め付けナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周面に環状のリムを一体に有するディスク型ホイールであって、ディスク外側の環状平坦面における各ボルト穴の周辺に、放射外方にのみ開放する凹部を形成してなることを特徴とする複輪用ホイール。
【請求項2】
各ボルト穴の周辺に形成した凹部は、深さが0.2〜0.5mmの範囲内であるところの請求項1に記載の複輪用ホイール。
【請求項3】
各ボルト穴の周辺に形成した凹部は、各ボルト穴周辺を起点として放射外方に向けて次第に拡開するようにした略扇型をなすものであるところの請求項1に記載の複輪用ホイール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−256525(P2006−256525A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−78393(P2005−78393)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(000110251)トピー工業株式会社 (255)