複雑な形状の、セル状構造を備える吸音処理被覆材の製作方法及びそのようにして得られる吸音処理被覆材
本発明の目的は、航空機の処理すべき表面の位置、特に、航空機のナセルの空気取り入れ口のような翼前縁の位置に関する吸音処理用被覆材の作製方法であって、吸音処理用の該被覆材は内側から外側に向かって反射層、セル状構造(30)及び音響抵抗層を備えており、セル状構造が処理すべき表面の位置に配置されるとき備えることになるセル状構造(30)の形状を数値化し、そこから、それらの幾何学的形状を決定するように、二連のストリップ(38、40)をバーチャルに位置決定して、それによって、一方は第一連の二つの隣接するストリップ(38)間に、もう一方は第二連の二つの隣接する第二のストリップ(40)間に管を形成し、前もって決定されたそれらの幾何学的形状に応じて、各ストリップ(38、40)を切断し、各ストリップ(38、40)に切り込みを形成して、該ストリップ(38、40)を組み立てることを可能にし、ストリップ(38、40)を組み立てて、処理すべき表面に適した形状を備えるセル状構造を形成することからなることを特徴とする方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複雑な形状の、セル状構造を備える吸音処理被覆材の製作方法に関するものであり、該被覆材は、さらに詳しく言えば、航空機の翼前縁、特に、ナセルの空気取り入れ口を被覆するのに適している。
【背景技術】
【0002】
空港の近隣でのよく響く騒音影響を制限するため、国際規格は、音響発生物質について、次第に厳しくなっている。
【0003】
管の壁の位置で、音響エネルギーの一部分を吸収することを目的とする被覆材を使用して、特に、ヘルムホルツ(Helmholtz)共鳴器の原理を使用して、航空機によって発生する騒音、特に、推進装置によって発生する騒音を減少させる技術が開発された。公知のように、音響パネルとも呼ばれる吸音処理被覆材は、内側から外側に向けて、音響抵抗性の多孔質層、少なくとも一つのセル状構造及び反射または不透過性層を備える。
【0004】
層とは、種類が同じまたは異なる、一つまたは複数の層を意味する。
【0005】
音響抵抗性多孔質層とは、その層を通過する音波の音響エネルギーの一部分を熱に変換する、多孔質構造である。多孔質層は、音波を通過させることができるいわゆる開いた区域と、音波は通過させないが、該層の機械抵抗を保証するための、いわゆる閉じたまたは詰まった他の区域を備える。この音響抵抗層は、特に、該層を構成する成分の開いた表面率によって特徴付けられ、その率は、主にモータに応じて変化する。
【0006】
セル状構造は、音響抵抗性多孔質層が直接または間接的に付加される位置の第一の架空の表面によって、及び、反射層が直接または間接的に付加される位置の第二の架空の表面によって境界が定められ、一方が第一の表面の位置に、もう一方が第二の表面の位置に開口する複数の管を備える。これらの管は、一方が音響抵抗性多孔質層によって、もう一方が反射層によって、細セルを形成するように閉じられている。
【0007】
蜂の巣状構造を利用して、吸音処理被覆材のセル状構造を形成する。蜂の巣状構造を形成するのに、様々な種類の材料を使用することができる。
【0008】
一実施態様によると、蜂の巣状構造は、第一の方向に延びる、鉛直面に配置した複数のストリップから形成することができ、各ストリップを隣接するストリップに、各接続区域の間隔をあけて交互に接続する。したがって、組み合わせたストリップ全体を第一の方向に垂直な方向に沿って膨張させると、セル状パネルが得られ、ストリップは、断面が六角形の管の側壁を形成する。この構造によって、圧縮及び屈曲に対する大きな機械抵抗が得られる。
【0009】
特許文献1に記載されたような別の実施例では、セル状構造は、第一連の長方形のストリップ及び第二連の長方形のストリップを備え、それらのストリップは各々切り込みを備え、それによって、組み合わされて、平坦なセル状構造を形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】英国特許第2024380号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
吸音処理被覆材の場合、複合体は平坦に作成され、すなわち、音響抵抗及び反射多孔質層は、平坦な形態でセル状構造に接続される。
【0012】
複合体は、処理すべき表面の位置に形成される。平坦な壁または直径の大きなナセルの円筒形の壁の場合、この形成を実現することができる。しかし、直径が小さい管、または、例えば、ナセルの空気取り入れ口のように、二つの曲率半径を有する複雑な表面の場合は、別である。
【0013】
これらの実現が困難であるのは、第一に、曲げ強さが大きいというセル状パネルの性質自体によるものである。したがって、セル状構造が上方に向かい、第一の平面内に配置された第一の曲率半径に沿って湾曲するとき、それによって、下方向きで、第一の平面にほぼ垂直な平面に配置された曲率半径を生じさせる傾向があり、セル状構造は乗馬鞍または双曲放物面の形状をとる。
【0014】
これらの実現の困難は、また、セル状構造と弾性ではない層との間の接続の性質から来るものである。そのように、蜂の巣状構造を応力がなく平坦に作製すると、その形状にすることによって、構造が脆弱化する。
【0015】
いずれにせよ、吸音処理用被覆材として使用される複合体の作製は、複雑で、高価な機械設備を必要とし、長いサイクル時間が要求される。
【0016】
別の問題によると、複合体を湾曲させることができたとしても、その作製はセル状構造の管の側壁のランダムな変形を引き起こすことがあり、その結果として、これらの管の側壁は反射層及び音響抵抗層によって隠されており、該管の側壁の位置決定は困難なので、現在の解決法は満足できるものではない。
【0017】
複合体の作製の困難を考慮すると、音響的に処理される表面の範囲はナセルの管の内部に限定されており、その処理された表面は、ナセルの空気取り入れ口の縁の位置まで延びていない。
【0018】
このように、本発明は、セル状構造を備える吸音処理被覆材の製作方法であって、その被覆材を複雑な表面に沿って、その機械的性質を変更することもなく、実現することができ、その被覆材は単純な概念を有し、製造コストが市場に適した方法を提案することによって、従来技術の不都合な点を解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
そのため、本発明は、航空機の処理すべき表面の位置、特に、航空機のナセルの空気取り入れ口のような翼前縁の位置に関する吸音処理用被覆材の作製方法であって、吸音処理用の該被覆材は内側から外側に向かって反射層、セル状構造及び音響抵抗層を備えており、
―セル状構造が処理すべき表面の位置に配置されるとき保有することになるセル状構造の形状を数値化し、
―そこから、それらの幾何学的形状を決定するために、その間では交わらず、互いに離れている第一連の第一のストリップ及びその間では交わらず、互いに離れている、少なくとも一つの第二連の第二のストリップをバーチャルに位置決定し、第一のストリップが第二のストリップと交わり、一方は二つの隣接する第一のストリップ間に、もう一方は二つの隣接する第二のストリップ間に管を形成し、
―前もって決定されたそれらの幾何学的形状に応じて、各ストリップを切断し、
―各ストリップに切り込みを形成して、該ストリップを組み立てることを可能にし、
―ストリップを組み立てて、処理すべき表面に適した形状を備えるセル状構造を形成し、
―反射層及び音響抵抗層(32)を配置する、
ことからなることを特徴とする方法を目的とする。
【0020】
本発明によると、第一及び第二のストリップの形状及び切り込みによって、そのストリップを組み立てると、処理される表面の形状に適した複雑な輪郭を備える、平坦ではない幾何学的形状に沿った構造が得られる。したがって、従来技術のセル状構造とは反対に、本発明のセル状構造は、一度組み立てられると、変形することがない。
【0021】
その他の特徴及び利点は、下記の添付図面を参照しておこなう本発明の記載から明らかになるであろう。但し、その記載は、単に例示するものにすぎない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、航空機の推進装置の斜視図である。
【図2】図2は、本発明による吸音処理被覆材を備えるナセルの空気取り入れ口を図示した縦断面図である。
【図3】図3は、半径平面に配置された縦方向のストリップを図示した立面図である。
【図4A】図4Aは、半径平面に交わる第一の表面に沿って配置された横方向の第一のストリップを図示した立面図である。
【図4B】図4Bは、図4Aに図示した第一のストリップを図示した斜視図である。
【図5A】図5Aは、半径平面に交わる第二の表面に沿って配置された横方向の第二のストリップを図示した立面図であり、その第二の表面はナセルの空気取り入れ口の縁の頂部を辿っている。
【図5B】図5Bは、湾曲させて、第一のストリップ内に重ねることができる図5Aに図示した第二のストリップを示す斜視図である。
【図6】図6は、空気取り入れ口の角の部分に合わせることができる本発明によるセル状構造を示す斜視図である。
【図7】図7は、縦方向のストリップと横方向のストリップとの接続を詳細に示す斜視図である。
【図8】図8は、本発明による被覆材を示す上方から見た図である。
【図9】図9は、本発明による被覆材を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
ここでは、本発明を航空機の推進装置の空気取り入れ口に適用して、記載する。しかし、本発明は、航空機の各種翼前縁またはその位置で吸音処理が実行される航空機の様々な表面に適用できる。
【実施例】
【0024】
図1には、マスト12を介して翼の下に接続された航空機の推進装置10を図示した。しかしながら、この推進装置は、航空機の他の区域に接続することができる。
【0025】
この推進装置は、ナセル14を備え、その内部には、そのシャフト16に取り付けられた送風装置を駆動する動力化装置がほぼ同心に配置されている。ナセルの縦方向の軸線には参照番号18を付した。
【0026】
ナセル14は、前部に空気取り入れ口22を備える管を区画する内側壁20を備え、一次流と呼ばれる、入る空気流の第一の部分は動力化装置を通過して、燃焼に参加し、二次流と呼ばれる空気流の第二の部分は送風装置によって運ばれて、ナセルの内側壁20及び動力化装置の外側壁によって区画された環状管内を流れる。
【0027】
空気取り入れ口22の頂部24は、ほぼ円形の形状を描き、図2に示したように、縦方向の軸線18にほぼ垂直であるか、または、わずかに前進した12時の位置に頂部を備え、垂直ではない平面内に延びている。しかし、別の形状の空気取り入れ口も考えることができる。
【0028】
以下の説明では、空気力学表面とは、空気力学流と接触する航空機の外皮を意味する。
【0029】
騒音影響を制限するため、特にヘルムホルツ共鳴器の原理を使用して、音響エネルギーの一部を吸収することを目的とする被覆材26が、特に空気力学表面に備えられる。公知のように、音響パネルとも呼ばれるこの音響被覆材は、内側から外側に向かって、反射層28、セル状構造30及び音響抵抗層32を備える。
【0030】
別の実施例では、音響被覆材は、隔壁と呼ばれる音響抵抗性の層によって分離された複数のセル状構造30を備えることがある。
【0031】
層とは、同じ種類、または、異なる種類の一つまたは複数の層を意味する。
【0032】
一実施態様によると、反射層28は、シートメタルまたは樹脂基体に含浸された織繊維または不織繊維の少なくとも一つの層によって構成された外皮の形状をとることがある。
【0033】
音響抵抗層32は、織繊維または不織繊維の少なくとも一つの層の形状をとることがあり、その繊維は、好ましくは樹脂によって被覆されており、それによって、繊維の様々な方向で応力の回収を確実にする。
【0034】
別の実施態様によると、音響抵抗構造32は、例えば、金網のような金属組織または非金属組織の形状の、少なくとも一つの多孔質層、及び、例えば、楕円形の孔またはミクロ穿孔を有するシートメタルまたは複合材料による、少なくとも一つの構造層を備える。
【0035】
反射層及び音響抵抗層は、当業者には公知なので、これ以上詳細に説明することはない。
【0036】
セル状構造30は、図6に示したように、一方が、反射層24が上に付加される架空の第一の表面34によって、もう一方が、音響抵抗層32が上に付加される架空の第二の表面36によって区画される空間に対応する。
【0037】
架空の第一の表面34及び架空の第二の表面36を隔てる距離は、一定でないこともある。したがって、この距離は、上記構造に特により大きな圧縮強さを付与するために、空気の入口の縁部の位置でより重要になる。
【0038】
セル状構造30は、一方では、縦方向の軸線18を含む半径平面との空間の交点に対応する、いわゆる縦方向のストリップである、複数の第一のストリップ38、及び、もう一方では、半径平面と交わる表面を有する空間の交点に対応する、いわゆる横方向のストリップである、複数の第二のストリップ40を備える。好ましくは、架空の第二の表面36との各交点の位置で、横方向の各ストリップ40は、その観察点での架空の第二の表面36の接線にほぼ垂直である。
【0039】
好ましくは、横方向のストリップ40との各交点の位置で、縦方向の各ストリップ38は、その観察点での横方向の各ストリップ40の接線にほぼ垂直である。
【0040】
交わる表面とは、架空の第一の表面34及び架空の第二の表面36と交わる平面または表面を意味する。
【0041】
より一般的には、セル状構造は、交わる表面の位置に配置された一連の第一のストリップ38を備えており、該第一のストリップ38は、そのストリップ間では交わらず、互いに離れており、また、交わる表面の位置に配置された少なくとも一つの第二連の第二のストリップ40を備えており、該第二のストリップ40は、そのストリップ間では交わらず、互いに離れている。第一のストリップ38は、第二のストリップと交わっており、それによって、一方では二つの隣接する第一のストリップと、もう一方では二つの隣接する第二のストリップとの間に管を区画する。
【0042】
二連以上のストリップを使用することができる。
【0043】
しかしながら、概念を単純化するために、二連のストリップを選択した。したがって、四つの側面を備える管が得られる。
【0044】
同様に、概念を単純化するために、ナセルの縦方向の軸線を含む半径平面内に第一のストリップを配置する。
【0045】
より堅固な構造を得るために、第二のストリップを、第一のストリップとほぼ垂直になるように配置して、断面が正方形または長方形の管を形成する。この解決法によって、また、概念を単純化することができる。しかし、別の形状の断面、例えば、ひし形を考えることもできる。
【0046】
湾曲区域の位置では、管の断面は、変化する。したがって、架空の第二の表面36の位置での大きな断面と架空の第一の表面34の位置のより小さな断面の間で変化する。
【0047】
交差する異なる連のストリップを組み合わせるために、縦方向のストリップ38の位置に第一の切り込み42が備えられており、その切り込みは、横方向のストリップ40の位置で、第二の切り込み44と協働する。
【0048】
第一の切り込み42及び第二の切り込み44は、一方の端部からもう一方の端部までは延びておらず、それによって、組立てが容易である。
【0049】
第一の切り込み42の長さと第二の切り込み44の長さは、縦方向及び横方向のストリップの縁部が架空の表面34及び36の位置に配置されるように、調節される。
【0050】
一実施態様によると、第一の切り込み42は、架空の第二の表面36の位置に配置された縦方向のストリップの縁部から延びている。補足として、第二の切り込み44は、架空の第一の表面34の位置に配置された横方向のストリップの縁部から延びている。
【0051】
一実施態様によると、セル状構造30が処理すべき表面の位置に配置されたとき保有することになる形状を数値化する。そのとき、縦方向及び横方向のストリップをバーチャルに位置決定し、各々について、幾何学的形状を決定する。網掛けソフトウェアと同様な方法によって表面を離散させることができる。その表面の離散は、幾何学投射によって実行される。
【0052】
したがって、図3に図示したように、空気取り入れ口の場合、縦方向のストリップ38は、C字型であり、架空の第一の表面34と一致することができる第一の縁部46と、架空の第二の表面36と一致することができる第二の縁部48を有する。別の実施例によると、縁部46及び48を隔てる距離は、一つのストリップから他のストリップへ、または、同一ストリップの輪郭に沿って変化する。縦方向のストリップ38は、ほぼ平坦なプレート内で切断される。この平坦な切断によって、製造が単純になる。また、架空の表面34及び36の形状は、変形ではなく、切断によって形成された縁部46及び48の形状から由来し、これによって、該架空の表面のサイズの精度の向上を保証する。
【0053】
縦方向のストリップ38が半径平面に配置されている限り、横方向のストリップ40との組立てのときに、湾曲することはない。
【0054】
図4A、4B、5A及び5Bに図示したように、空気取り入れ口の場合、横方向のストリップ40は、輪の形状をとり、架空の第一の表面34と一致することができる第一の縁部50と、架空の第二の表面36と一致することができる第二の縁部52を有する。縁部50及び52は、図4Aに示したように、横方向ストリップ40用のナセルを形成する管の曲率半径にほぼ一致する値Rから、頂部24と離れるのにつれて、徐々に変動することができる曲率半径及び無限半径を保有し、空気取り入れ口の頂部24の位置に配置された横方向のストリップ40では、図5Aに図示したように、縁部50及び52はほぼ直線である。
【0055】
横方向のストリップ40は、ほぼ平坦なプレート内で切断される。
【0056】
本発明の利点は、横方向及び縦方向のストリップを平坦に切断し、それによって、製造が単純化されることと、成形作業を全く受けないので、反射層及び音響抵抗層上のセルの調整が保証されることにある。
【0057】
横方向のストリップは、その位置に応じて、十分に可撓性であり、場合によっては湾曲させて、縦方向のストリップに重なることができる。図4Bに図示したように、単一の曲率半径を有するセル状構造の区域に配置された横方向のストリップ40、特に、ほぼ円筒形の部分は、一度組み立てられた複数の平面内に配置されている。
【0058】
横方向のストリップ40の大部分は、セル状構造の位置でのその配置に応じて、図5Bに図示したように、場合によっては、ストリップの表面に垂直な曲率半径rによって湾曲することができるように十分に可撓性である。したがって、頂部24から離れた横方向のストリップ40は、湾曲せず、この横方向のストリップ40は、頂部24から、頂部24の位置に配置された、図5A及び5Bに図示した、横方向のストリップ40の頂部の半径にほぼ等しい半径rまで、該横方向のストリップを隔てる距離に応じて徐々に小さくなる曲率半径rを有するので、これは無限曲率半径rに一致する。
【0059】
本発明の重要な利点によると、ストリップは、いったん組み立てられると、または、反射または音響抵抗層が配置されると、その後変形することはない。
【0060】
このように構成された音響被覆材は、処理すべき表面の形状に適合した形状を備えるので、該処理される表面の位置に配置されると、変形することがなくなる。その結果、従来技術とは異なり、セル状構造と反射層、または音響抵抗層との接続は損傷する危険性がなくなり、ストリップに対応する管の壁の位置は、完全に公知であり、数値化のとき所望の位置に一致する。
【0061】
一実施態様によると、ストリップ38及び40は、ボール紙、金属(チタン、アルミニウム合金)、複合材料(例えば、グラスファイバ)製であることがある。場合によっては、使用する材料を混ぜることもでき、例えば、縦方向のストリップにグラスファイバを、横方向のストリップにチタンを使用することもできる。
【0062】
好ましくは、金属を選択して、良好な衝突抵抗、特に鳥の衝突に対する抵抗を構造に付与する。
【0063】
様々な実施例によると、ストリップの組立ては、手作業または自動機械化されていることもある。
【0064】
図7に図示したように、縦方向のストリップ38及び横方向のストリップ40を、組み合わせて、はんだ付け、例えば、ろう付け、または糊付けによって、その間を接合する。しかしながら、ストリップ間を確実に接合するその他の解決法も考えられる。
【0065】
本発明の利点によると、セル状構造の厚さを変化させることができる。したがって、縁部の真横に配置されたセル状構造の部分の厚さは、その縁部から離れたセル状構造の部分より大きい。
【0066】
別の実施例によると、ストリップの縁部は、より複雑な形状を有し、複数の曲率半径を備えることがあり、それによって、さらに複雑な表面が得られる。
【0067】
場合によっては、同じ連なりのストリップ間での間隔を変化させることができる。
【0068】
したがって、連続した第一の切り込み42’及び42”の間隔をより小さくして、図6に図示したように、連続した横方向のストリップ42’及び42”の間隔を小さくすることができる。同様に、連続した第二の切り込み44’及び44”の間隔をより小さくして、図6に図示したように、連続した縦方向のストリップ38’及び38”の間隔を小さくすることができる。
【0069】
この配置によって、断面が変化するセルを得ることができる。
【0070】
別の改良例によると、ストリップ38及び40は、切り込み56を備え、いくつかのセルをそのセル間で連通させ、管の網を形成することができる。この解決法によって、近づけられて連続したストリップ38及び40間に備えられる管の網を形成することができ、熱風を送り、霧の処理機能を得るために使用できる。
【0071】
連通していないセルは、吸音処理機能に使用される。
【0072】
この形状では、被覆材のいくつかのセル、すなわち、セル間で連通していないセルは吸音処理専用に備えられ、他のセル、すなわち、セル間で連通しているセルは霧の処理専用に備えられているので、霧の処理機能と吸音処理機能を両立させることができる。
【0073】
図8及び9に図示した実施態様によると、音響抵抗層32は、音波を通過させる開いた区域58と音波を通過させない詰った区域60を有する少なくとも一つの外皮を備える。開いた区域58の形、サイズ、数、配置は、音響抵抗層の表面に流れる空気力学流の位置での妨害を最小にして、吸音処理を最適化するように調節される。
【0074】
例として、開いた区域58は、楕円形の形状で、その最大のサイズが空気力学流の流れの方向に沿って配置されることがある。
【0075】
別の実施例によると、開いた区域58は、形状が開いた区域の形状に一致する単一の孔か、複数の孔、または、該開いた区域を覆う、わずかに間隔をあけたミクロ穿孔を備える。
【0076】
別の実施態様によると、音響抵抗構造32は、例えば、金網のような金属組織または非金属組織の形状の、少なくとも一つの多孔質層、及び、例えば、開いた区域58を有するシートメタルまたは複合材料による、少なくとも一つの構造層を備える。
【0077】
音響抵抗層は、例えば、熱風による霧の処理用に、他の孔、穿孔、またはミクロ穿孔を備えることがある。
【0078】
本発明の特徴によると、セル状構造30の側壁38及び40の位置に応じて、開いた区域58を配置して、音響抵抗層を作製する。
【0079】
場合によっては、開いた区域58の製作のとき、音響抵抗層32を、該音響抵抗層32をその上に配置するセル状構造30の表面に形状が一致する予備成形物上に堆積させ、それによって、開いた区域の配置58をより良好にすることができる。
【0080】
音響抵抗層32及びセル状構造30を作製するとき、それらは適切な手段であれば、いずれの手段によっても組み立てられる。例としては、セル状構造は金属であり、音響抵抗層32は二つの金属構造層64間に配置された金網62を備え、二つの構造層64のうちの一つは、はんだ付けまたは糊付けによって、セル状構造に接続されている。別の実施例では、音響抵抗層は、開いた区域58の位置にミクロ穿孔を備えるシートメタルによって構成されている。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明によると、セル状構造30の側壁38及び40に関して開いた区域58の完全な位置決定が得られ、該開いた区域58は、側壁の真横に配置されることは全くなく、セルの真横に配置される。そのようにして、開口部の機能は、常に吸音処理に最適である。その結果、開いた表面率はまさしくちょうどに決定され、側壁に対する開いた区域の位置決定の不良を理由とする許容誤差は備えていない。したがって、本発明の音響抵抗層は、開いた区域が側壁の真横に全く備えられておらず、備えられた開いた区域が吸音処理に関して最適な機能を保証しているので、空気力学的特性に関しても同様に最適である。
【符号の説明】
【0082】
28 反射層
30 セル状構造
32 音響抵抗層
38 第一のストリップ
40 第二のストリップ
42、44 切り込み
56 孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、複雑な形状の、セル状構造を備える吸音処理被覆材の製作方法に関するものであり、該被覆材は、さらに詳しく言えば、航空機の翼前縁、特に、ナセルの空気取り入れ口を被覆するのに適している。
【背景技術】
【0002】
空港の近隣でのよく響く騒音影響を制限するため、国際規格は、音響発生物質について、次第に厳しくなっている。
【0003】
管の壁の位置で、音響エネルギーの一部分を吸収することを目的とする被覆材を使用して、特に、ヘルムホルツ(Helmholtz)共鳴器の原理を使用して、航空機によって発生する騒音、特に、推進装置によって発生する騒音を減少させる技術が開発された。公知のように、音響パネルとも呼ばれる吸音処理被覆材は、内側から外側に向けて、音響抵抗性の多孔質層、少なくとも一つのセル状構造及び反射または不透過性層を備える。
【0004】
層とは、種類が同じまたは異なる、一つまたは複数の層を意味する。
【0005】
音響抵抗性多孔質層とは、その層を通過する音波の音響エネルギーの一部分を熱に変換する、多孔質構造である。多孔質層は、音波を通過させることができるいわゆる開いた区域と、音波は通過させないが、該層の機械抵抗を保証するための、いわゆる閉じたまたは詰まった他の区域を備える。この音響抵抗層は、特に、該層を構成する成分の開いた表面率によって特徴付けられ、その率は、主にモータに応じて変化する。
【0006】
セル状構造は、音響抵抗性多孔質層が直接または間接的に付加される位置の第一の架空の表面によって、及び、反射層が直接または間接的に付加される位置の第二の架空の表面によって境界が定められ、一方が第一の表面の位置に、もう一方が第二の表面の位置に開口する複数の管を備える。これらの管は、一方が音響抵抗性多孔質層によって、もう一方が反射層によって、細セルを形成するように閉じられている。
【0007】
蜂の巣状構造を利用して、吸音処理被覆材のセル状構造を形成する。蜂の巣状構造を形成するのに、様々な種類の材料を使用することができる。
【0008】
一実施態様によると、蜂の巣状構造は、第一の方向に延びる、鉛直面に配置した複数のストリップから形成することができ、各ストリップを隣接するストリップに、各接続区域の間隔をあけて交互に接続する。したがって、組み合わせたストリップ全体を第一の方向に垂直な方向に沿って膨張させると、セル状パネルが得られ、ストリップは、断面が六角形の管の側壁を形成する。この構造によって、圧縮及び屈曲に対する大きな機械抵抗が得られる。
【0009】
特許文献1に記載されたような別の実施例では、セル状構造は、第一連の長方形のストリップ及び第二連の長方形のストリップを備え、それらのストリップは各々切り込みを備え、それによって、組み合わされて、平坦なセル状構造を形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】英国特許第2024380号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
吸音処理被覆材の場合、複合体は平坦に作成され、すなわち、音響抵抗及び反射多孔質層は、平坦な形態でセル状構造に接続される。
【0012】
複合体は、処理すべき表面の位置に形成される。平坦な壁または直径の大きなナセルの円筒形の壁の場合、この形成を実現することができる。しかし、直径が小さい管、または、例えば、ナセルの空気取り入れ口のように、二つの曲率半径を有する複雑な表面の場合は、別である。
【0013】
これらの実現が困難であるのは、第一に、曲げ強さが大きいというセル状パネルの性質自体によるものである。したがって、セル状構造が上方に向かい、第一の平面内に配置された第一の曲率半径に沿って湾曲するとき、それによって、下方向きで、第一の平面にほぼ垂直な平面に配置された曲率半径を生じさせる傾向があり、セル状構造は乗馬鞍または双曲放物面の形状をとる。
【0014】
これらの実現の困難は、また、セル状構造と弾性ではない層との間の接続の性質から来るものである。そのように、蜂の巣状構造を応力がなく平坦に作製すると、その形状にすることによって、構造が脆弱化する。
【0015】
いずれにせよ、吸音処理用被覆材として使用される複合体の作製は、複雑で、高価な機械設備を必要とし、長いサイクル時間が要求される。
【0016】
別の問題によると、複合体を湾曲させることができたとしても、その作製はセル状構造の管の側壁のランダムな変形を引き起こすことがあり、その結果として、これらの管の側壁は反射層及び音響抵抗層によって隠されており、該管の側壁の位置決定は困難なので、現在の解決法は満足できるものではない。
【0017】
複合体の作製の困難を考慮すると、音響的に処理される表面の範囲はナセルの管の内部に限定されており、その処理された表面は、ナセルの空気取り入れ口の縁の位置まで延びていない。
【0018】
このように、本発明は、セル状構造を備える吸音処理被覆材の製作方法であって、その被覆材を複雑な表面に沿って、その機械的性質を変更することもなく、実現することができ、その被覆材は単純な概念を有し、製造コストが市場に適した方法を提案することによって、従来技術の不都合な点を解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
そのため、本発明は、航空機の処理すべき表面の位置、特に、航空機のナセルの空気取り入れ口のような翼前縁の位置に関する吸音処理用被覆材の作製方法であって、吸音処理用の該被覆材は内側から外側に向かって反射層、セル状構造及び音響抵抗層を備えており、
―セル状構造が処理すべき表面の位置に配置されるとき保有することになるセル状構造の形状を数値化し、
―そこから、それらの幾何学的形状を決定するために、その間では交わらず、互いに離れている第一連の第一のストリップ及びその間では交わらず、互いに離れている、少なくとも一つの第二連の第二のストリップをバーチャルに位置決定し、第一のストリップが第二のストリップと交わり、一方は二つの隣接する第一のストリップ間に、もう一方は二つの隣接する第二のストリップ間に管を形成し、
―前もって決定されたそれらの幾何学的形状に応じて、各ストリップを切断し、
―各ストリップに切り込みを形成して、該ストリップを組み立てることを可能にし、
―ストリップを組み立てて、処理すべき表面に適した形状を備えるセル状構造を形成し、
―反射層及び音響抵抗層(32)を配置する、
ことからなることを特徴とする方法を目的とする。
【0020】
本発明によると、第一及び第二のストリップの形状及び切り込みによって、そのストリップを組み立てると、処理される表面の形状に適した複雑な輪郭を備える、平坦ではない幾何学的形状に沿った構造が得られる。したがって、従来技術のセル状構造とは反対に、本発明のセル状構造は、一度組み立てられると、変形することがない。
【0021】
その他の特徴及び利点は、下記の添付図面を参照しておこなう本発明の記載から明らかになるであろう。但し、その記載は、単に例示するものにすぎない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、航空機の推進装置の斜視図である。
【図2】図2は、本発明による吸音処理被覆材を備えるナセルの空気取り入れ口を図示した縦断面図である。
【図3】図3は、半径平面に配置された縦方向のストリップを図示した立面図である。
【図4A】図4Aは、半径平面に交わる第一の表面に沿って配置された横方向の第一のストリップを図示した立面図である。
【図4B】図4Bは、図4Aに図示した第一のストリップを図示した斜視図である。
【図5A】図5Aは、半径平面に交わる第二の表面に沿って配置された横方向の第二のストリップを図示した立面図であり、その第二の表面はナセルの空気取り入れ口の縁の頂部を辿っている。
【図5B】図5Bは、湾曲させて、第一のストリップ内に重ねることができる図5Aに図示した第二のストリップを示す斜視図である。
【図6】図6は、空気取り入れ口の角の部分に合わせることができる本発明によるセル状構造を示す斜視図である。
【図7】図7は、縦方向のストリップと横方向のストリップとの接続を詳細に示す斜視図である。
【図8】図8は、本発明による被覆材を示す上方から見た図である。
【図9】図9は、本発明による被覆材を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
ここでは、本発明を航空機の推進装置の空気取り入れ口に適用して、記載する。しかし、本発明は、航空機の各種翼前縁またはその位置で吸音処理が実行される航空機の様々な表面に適用できる。
【実施例】
【0024】
図1には、マスト12を介して翼の下に接続された航空機の推進装置10を図示した。しかしながら、この推進装置は、航空機の他の区域に接続することができる。
【0025】
この推進装置は、ナセル14を備え、その内部には、そのシャフト16に取り付けられた送風装置を駆動する動力化装置がほぼ同心に配置されている。ナセルの縦方向の軸線には参照番号18を付した。
【0026】
ナセル14は、前部に空気取り入れ口22を備える管を区画する内側壁20を備え、一次流と呼ばれる、入る空気流の第一の部分は動力化装置を通過して、燃焼に参加し、二次流と呼ばれる空気流の第二の部分は送風装置によって運ばれて、ナセルの内側壁20及び動力化装置の外側壁によって区画された環状管内を流れる。
【0027】
空気取り入れ口22の頂部24は、ほぼ円形の形状を描き、図2に示したように、縦方向の軸線18にほぼ垂直であるか、または、わずかに前進した12時の位置に頂部を備え、垂直ではない平面内に延びている。しかし、別の形状の空気取り入れ口も考えることができる。
【0028】
以下の説明では、空気力学表面とは、空気力学流と接触する航空機の外皮を意味する。
【0029】
騒音影響を制限するため、特にヘルムホルツ共鳴器の原理を使用して、音響エネルギーの一部を吸収することを目的とする被覆材26が、特に空気力学表面に備えられる。公知のように、音響パネルとも呼ばれるこの音響被覆材は、内側から外側に向かって、反射層28、セル状構造30及び音響抵抗層32を備える。
【0030】
別の実施例では、音響被覆材は、隔壁と呼ばれる音響抵抗性の層によって分離された複数のセル状構造30を備えることがある。
【0031】
層とは、同じ種類、または、異なる種類の一つまたは複数の層を意味する。
【0032】
一実施態様によると、反射層28は、シートメタルまたは樹脂基体に含浸された織繊維または不織繊維の少なくとも一つの層によって構成された外皮の形状をとることがある。
【0033】
音響抵抗層32は、織繊維または不織繊維の少なくとも一つの層の形状をとることがあり、その繊維は、好ましくは樹脂によって被覆されており、それによって、繊維の様々な方向で応力の回収を確実にする。
【0034】
別の実施態様によると、音響抵抗構造32は、例えば、金網のような金属組織または非金属組織の形状の、少なくとも一つの多孔質層、及び、例えば、楕円形の孔またはミクロ穿孔を有するシートメタルまたは複合材料による、少なくとも一つの構造層を備える。
【0035】
反射層及び音響抵抗層は、当業者には公知なので、これ以上詳細に説明することはない。
【0036】
セル状構造30は、図6に示したように、一方が、反射層24が上に付加される架空の第一の表面34によって、もう一方が、音響抵抗層32が上に付加される架空の第二の表面36によって区画される空間に対応する。
【0037】
架空の第一の表面34及び架空の第二の表面36を隔てる距離は、一定でないこともある。したがって、この距離は、上記構造に特により大きな圧縮強さを付与するために、空気の入口の縁部の位置でより重要になる。
【0038】
セル状構造30は、一方では、縦方向の軸線18を含む半径平面との空間の交点に対応する、いわゆる縦方向のストリップである、複数の第一のストリップ38、及び、もう一方では、半径平面と交わる表面を有する空間の交点に対応する、いわゆる横方向のストリップである、複数の第二のストリップ40を備える。好ましくは、架空の第二の表面36との各交点の位置で、横方向の各ストリップ40は、その観察点での架空の第二の表面36の接線にほぼ垂直である。
【0039】
好ましくは、横方向のストリップ40との各交点の位置で、縦方向の各ストリップ38は、その観察点での横方向の各ストリップ40の接線にほぼ垂直である。
【0040】
交わる表面とは、架空の第一の表面34及び架空の第二の表面36と交わる平面または表面を意味する。
【0041】
より一般的には、セル状構造は、交わる表面の位置に配置された一連の第一のストリップ38を備えており、該第一のストリップ38は、そのストリップ間では交わらず、互いに離れており、また、交わる表面の位置に配置された少なくとも一つの第二連の第二のストリップ40を備えており、該第二のストリップ40は、そのストリップ間では交わらず、互いに離れている。第一のストリップ38は、第二のストリップと交わっており、それによって、一方では二つの隣接する第一のストリップと、もう一方では二つの隣接する第二のストリップとの間に管を区画する。
【0042】
二連以上のストリップを使用することができる。
【0043】
しかしながら、概念を単純化するために、二連のストリップを選択した。したがって、四つの側面を備える管が得られる。
【0044】
同様に、概念を単純化するために、ナセルの縦方向の軸線を含む半径平面内に第一のストリップを配置する。
【0045】
より堅固な構造を得るために、第二のストリップを、第一のストリップとほぼ垂直になるように配置して、断面が正方形または長方形の管を形成する。この解決法によって、また、概念を単純化することができる。しかし、別の形状の断面、例えば、ひし形を考えることもできる。
【0046】
湾曲区域の位置では、管の断面は、変化する。したがって、架空の第二の表面36の位置での大きな断面と架空の第一の表面34の位置のより小さな断面の間で変化する。
【0047】
交差する異なる連のストリップを組み合わせるために、縦方向のストリップ38の位置に第一の切り込み42が備えられており、その切り込みは、横方向のストリップ40の位置で、第二の切り込み44と協働する。
【0048】
第一の切り込み42及び第二の切り込み44は、一方の端部からもう一方の端部までは延びておらず、それによって、組立てが容易である。
【0049】
第一の切り込み42の長さと第二の切り込み44の長さは、縦方向及び横方向のストリップの縁部が架空の表面34及び36の位置に配置されるように、調節される。
【0050】
一実施態様によると、第一の切り込み42は、架空の第二の表面36の位置に配置された縦方向のストリップの縁部から延びている。補足として、第二の切り込み44は、架空の第一の表面34の位置に配置された横方向のストリップの縁部から延びている。
【0051】
一実施態様によると、セル状構造30が処理すべき表面の位置に配置されたとき保有することになる形状を数値化する。そのとき、縦方向及び横方向のストリップをバーチャルに位置決定し、各々について、幾何学的形状を決定する。網掛けソフトウェアと同様な方法によって表面を離散させることができる。その表面の離散は、幾何学投射によって実行される。
【0052】
したがって、図3に図示したように、空気取り入れ口の場合、縦方向のストリップ38は、C字型であり、架空の第一の表面34と一致することができる第一の縁部46と、架空の第二の表面36と一致することができる第二の縁部48を有する。別の実施例によると、縁部46及び48を隔てる距離は、一つのストリップから他のストリップへ、または、同一ストリップの輪郭に沿って変化する。縦方向のストリップ38は、ほぼ平坦なプレート内で切断される。この平坦な切断によって、製造が単純になる。また、架空の表面34及び36の形状は、変形ではなく、切断によって形成された縁部46及び48の形状から由来し、これによって、該架空の表面のサイズの精度の向上を保証する。
【0053】
縦方向のストリップ38が半径平面に配置されている限り、横方向のストリップ40との組立てのときに、湾曲することはない。
【0054】
図4A、4B、5A及び5Bに図示したように、空気取り入れ口の場合、横方向のストリップ40は、輪の形状をとり、架空の第一の表面34と一致することができる第一の縁部50と、架空の第二の表面36と一致することができる第二の縁部52を有する。縁部50及び52は、図4Aに示したように、横方向ストリップ40用のナセルを形成する管の曲率半径にほぼ一致する値Rから、頂部24と離れるのにつれて、徐々に変動することができる曲率半径及び無限半径を保有し、空気取り入れ口の頂部24の位置に配置された横方向のストリップ40では、図5Aに図示したように、縁部50及び52はほぼ直線である。
【0055】
横方向のストリップ40は、ほぼ平坦なプレート内で切断される。
【0056】
本発明の利点は、横方向及び縦方向のストリップを平坦に切断し、それによって、製造が単純化されることと、成形作業を全く受けないので、反射層及び音響抵抗層上のセルの調整が保証されることにある。
【0057】
横方向のストリップは、その位置に応じて、十分に可撓性であり、場合によっては湾曲させて、縦方向のストリップに重なることができる。図4Bに図示したように、単一の曲率半径を有するセル状構造の区域に配置された横方向のストリップ40、特に、ほぼ円筒形の部分は、一度組み立てられた複数の平面内に配置されている。
【0058】
横方向のストリップ40の大部分は、セル状構造の位置でのその配置に応じて、図5Bに図示したように、場合によっては、ストリップの表面に垂直な曲率半径rによって湾曲することができるように十分に可撓性である。したがって、頂部24から離れた横方向のストリップ40は、湾曲せず、この横方向のストリップ40は、頂部24から、頂部24の位置に配置された、図5A及び5Bに図示した、横方向のストリップ40の頂部の半径にほぼ等しい半径rまで、該横方向のストリップを隔てる距離に応じて徐々に小さくなる曲率半径rを有するので、これは無限曲率半径rに一致する。
【0059】
本発明の重要な利点によると、ストリップは、いったん組み立てられると、または、反射または音響抵抗層が配置されると、その後変形することはない。
【0060】
このように構成された音響被覆材は、処理すべき表面の形状に適合した形状を備えるので、該処理される表面の位置に配置されると、変形することがなくなる。その結果、従来技術とは異なり、セル状構造と反射層、または音響抵抗層との接続は損傷する危険性がなくなり、ストリップに対応する管の壁の位置は、完全に公知であり、数値化のとき所望の位置に一致する。
【0061】
一実施態様によると、ストリップ38及び40は、ボール紙、金属(チタン、アルミニウム合金)、複合材料(例えば、グラスファイバ)製であることがある。場合によっては、使用する材料を混ぜることもでき、例えば、縦方向のストリップにグラスファイバを、横方向のストリップにチタンを使用することもできる。
【0062】
好ましくは、金属を選択して、良好な衝突抵抗、特に鳥の衝突に対する抵抗を構造に付与する。
【0063】
様々な実施例によると、ストリップの組立ては、手作業または自動機械化されていることもある。
【0064】
図7に図示したように、縦方向のストリップ38及び横方向のストリップ40を、組み合わせて、はんだ付け、例えば、ろう付け、または糊付けによって、その間を接合する。しかしながら、ストリップ間を確実に接合するその他の解決法も考えられる。
【0065】
本発明の利点によると、セル状構造の厚さを変化させることができる。したがって、縁部の真横に配置されたセル状構造の部分の厚さは、その縁部から離れたセル状構造の部分より大きい。
【0066】
別の実施例によると、ストリップの縁部は、より複雑な形状を有し、複数の曲率半径を備えることがあり、それによって、さらに複雑な表面が得られる。
【0067】
場合によっては、同じ連なりのストリップ間での間隔を変化させることができる。
【0068】
したがって、連続した第一の切り込み42’及び42”の間隔をより小さくして、図6に図示したように、連続した横方向のストリップ42’及び42”の間隔を小さくすることができる。同様に、連続した第二の切り込み44’及び44”の間隔をより小さくして、図6に図示したように、連続した縦方向のストリップ38’及び38”の間隔を小さくすることができる。
【0069】
この配置によって、断面が変化するセルを得ることができる。
【0070】
別の改良例によると、ストリップ38及び40は、切り込み56を備え、いくつかのセルをそのセル間で連通させ、管の網を形成することができる。この解決法によって、近づけられて連続したストリップ38及び40間に備えられる管の網を形成することができ、熱風を送り、霧の処理機能を得るために使用できる。
【0071】
連通していないセルは、吸音処理機能に使用される。
【0072】
この形状では、被覆材のいくつかのセル、すなわち、セル間で連通していないセルは吸音処理専用に備えられ、他のセル、すなわち、セル間で連通しているセルは霧の処理専用に備えられているので、霧の処理機能と吸音処理機能を両立させることができる。
【0073】
図8及び9に図示した実施態様によると、音響抵抗層32は、音波を通過させる開いた区域58と音波を通過させない詰った区域60を有する少なくとも一つの外皮を備える。開いた区域58の形、サイズ、数、配置は、音響抵抗層の表面に流れる空気力学流の位置での妨害を最小にして、吸音処理を最適化するように調節される。
【0074】
例として、開いた区域58は、楕円形の形状で、その最大のサイズが空気力学流の流れの方向に沿って配置されることがある。
【0075】
別の実施例によると、開いた区域58は、形状が開いた区域の形状に一致する単一の孔か、複数の孔、または、該開いた区域を覆う、わずかに間隔をあけたミクロ穿孔を備える。
【0076】
別の実施態様によると、音響抵抗構造32は、例えば、金網のような金属組織または非金属組織の形状の、少なくとも一つの多孔質層、及び、例えば、開いた区域58を有するシートメタルまたは複合材料による、少なくとも一つの構造層を備える。
【0077】
音響抵抗層は、例えば、熱風による霧の処理用に、他の孔、穿孔、またはミクロ穿孔を備えることがある。
【0078】
本発明の特徴によると、セル状構造30の側壁38及び40の位置に応じて、開いた区域58を配置して、音響抵抗層を作製する。
【0079】
場合によっては、開いた区域58の製作のとき、音響抵抗層32を、該音響抵抗層32をその上に配置するセル状構造30の表面に形状が一致する予備成形物上に堆積させ、それによって、開いた区域の配置58をより良好にすることができる。
【0080】
音響抵抗層32及びセル状構造30を作製するとき、それらは適切な手段であれば、いずれの手段によっても組み立てられる。例としては、セル状構造は金属であり、音響抵抗層32は二つの金属構造層64間に配置された金網62を備え、二つの構造層64のうちの一つは、はんだ付けまたは糊付けによって、セル状構造に接続されている。別の実施例では、音響抵抗層は、開いた区域58の位置にミクロ穿孔を備えるシートメタルによって構成されている。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明によると、セル状構造30の側壁38及び40に関して開いた区域58の完全な位置決定が得られ、該開いた区域58は、側壁の真横に配置されることは全くなく、セルの真横に配置される。そのようにして、開口部の機能は、常に吸音処理に最適である。その結果、開いた表面率はまさしくちょうどに決定され、側壁に対する開いた区域の位置決定の不良を理由とする許容誤差は備えていない。したがって、本発明の音響抵抗層は、開いた区域が側壁の真横に全く備えられておらず、備えられた開いた区域が吸音処理に関して最適な機能を保証しているので、空気力学的特性に関しても同様に最適である。
【符号の説明】
【0082】
28 反射層
30 セル状構造
32 音響抵抗層
38 第一のストリップ
40 第二のストリップ
42、44 切り込み
56 孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機の処理すべき表面の位置、特に、航空機のナセルの空気取り入れ口のような翼前縁の位置に関する吸音処理用被覆材の作製方法であって、吸音処理用の該被覆材は内側から外側に向かって反射層(28)、セル状構造(30)及び音響抵抗層(32)を備えており、
―セル状構造が処理すべき表面の位置に配置されるとき備えことのなるセル状構造(30)の形状を数値化し、
―そこから、それらの幾何学的形状を決定するために、その間では交わらず、互いに離れている第一連の第一のストリップ(38)及びその間では交わらず、互いに離れている、少なくとも一つの第二連の第二のストリップ(40)をバーチャルに位置決定し、第一のストリップ(38)が第二のストリップ(40)と交わり、一方は二つの隣接する第一のストリップ(38)間に、もう一方は二つの隣接する第二のストリップ(40)間に管を形成し、
―前もって決定されたそれらの幾何学的形状に応じて、各ストリップ(38、40)を切断し、
―各ストリップ(38、40)に切り込み(42、44)を形成して、該ストリップ(38、40)を組み立てることを可能にし、
―ストリップ(38、40)を組み立てて、処理すべき表面に適した形状を備えるセル状構造を形成し、
―反射層(28)及び音響抵抗層(32)を配置する、
ことからなることを特徴とする方法。
【請求項2】
ナセルの縦方向の軸線(18)を含む半径平面内にいわゆる縦方向の第一のストリップを配置することからなることを特徴とする請求項1に記載の作製方法。
【請求項3】
音響抵抗層(32)が上に付加される架空の表面(36)の接線にほぼ垂直な、いわゆる横方向のストリップである、第二の各ストリップ(40)を配置することからなることを特徴とする請求項1または2に記載の作製方法。
【請求項4】
横方向の各ストリップ(40)の接線にほぼ垂直な縦方向の各ストリップ(38)を配置することからなることを特徴とする請求項3に記載の作製方法。
【請求項5】
いわゆる縦方向の第一のストリップ(38)及びいわゆる横方向の第二のストリップ(40)内に切り込みまたは孔(56)を作製して、いくつかの管をその中で連通させることからなり、それによって、霧の処理用に備えられた管の網を得ることができ、連通していない管は吸音処理用に備えられていることを特徴とする請求項1に記載の作製方法。
【請求項6】
ストリップ(38、40)の配置に応じて、音響抵抗層(32)の位置で、開いた区域(58)を作製することからなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の作製方法。
【請求項7】
請求項1〜7のいずれか一つに記載の方法から得られる吸音処理用被覆材であって、該被覆材は、その間では交わらず、互いに離れている一連の第一のストリップ(38)及びその間では交わらず、互いに離れている少なくとも一つの第二連の第二のストリップ(40)を備え、第一のストリップ(38)は第二のストリップ(40)と交わり、それによって、一方では、隣接する二つの第一のストリップ(38)と、もう一方では隣接する二つの第二のストリップ(40)との間に管を区画し、第一及び第二のストリップ(38、40)は、処理すべき表面の位置に配置されるセル状構造の形状に合った、平坦ではない幾何学的形状に沿って該ストリップの組立てを可能にする形状及び切り込み(42、44)を備えることを特徴とする被覆材。
【請求項8】
請求項7に記載の吸音処理被覆材を備える航空機のナセル。
【請求項1】
航空機の処理すべき表面の位置、特に、航空機のナセルの空気取り入れ口のような翼前縁の位置に関する吸音処理用被覆材の作製方法であって、吸音処理用の該被覆材は内側から外側に向かって反射層(28)、セル状構造(30)及び音響抵抗層(32)を備えており、
―セル状構造が処理すべき表面の位置に配置されるとき備えことのなるセル状構造(30)の形状を数値化し、
―そこから、それらの幾何学的形状を決定するために、その間では交わらず、互いに離れている第一連の第一のストリップ(38)及びその間では交わらず、互いに離れている、少なくとも一つの第二連の第二のストリップ(40)をバーチャルに位置決定し、第一のストリップ(38)が第二のストリップ(40)と交わり、一方は二つの隣接する第一のストリップ(38)間に、もう一方は二つの隣接する第二のストリップ(40)間に管を形成し、
―前もって決定されたそれらの幾何学的形状に応じて、各ストリップ(38、40)を切断し、
―各ストリップ(38、40)に切り込み(42、44)を形成して、該ストリップ(38、40)を組み立てることを可能にし、
―ストリップ(38、40)を組み立てて、処理すべき表面に適した形状を備えるセル状構造を形成し、
―反射層(28)及び音響抵抗層(32)を配置する、
ことからなることを特徴とする方法。
【請求項2】
ナセルの縦方向の軸線(18)を含む半径平面内にいわゆる縦方向の第一のストリップを配置することからなることを特徴とする請求項1に記載の作製方法。
【請求項3】
音響抵抗層(32)が上に付加される架空の表面(36)の接線にほぼ垂直な、いわゆる横方向のストリップである、第二の各ストリップ(40)を配置することからなることを特徴とする請求項1または2に記載の作製方法。
【請求項4】
横方向の各ストリップ(40)の接線にほぼ垂直な縦方向の各ストリップ(38)を配置することからなることを特徴とする請求項3に記載の作製方法。
【請求項5】
いわゆる縦方向の第一のストリップ(38)及びいわゆる横方向の第二のストリップ(40)内に切り込みまたは孔(56)を作製して、いくつかの管をその中で連通させることからなり、それによって、霧の処理用に備えられた管の網を得ることができ、連通していない管は吸音処理用に備えられていることを特徴とする請求項1に記載の作製方法。
【請求項6】
ストリップ(38、40)の配置に応じて、音響抵抗層(32)の位置で、開いた区域(58)を作製することからなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の作製方法。
【請求項7】
請求項1〜7のいずれか一つに記載の方法から得られる吸音処理用被覆材であって、該被覆材は、その間では交わらず、互いに離れている一連の第一のストリップ(38)及びその間では交わらず、互いに離れている少なくとも一つの第二連の第二のストリップ(40)を備え、第一のストリップ(38)は第二のストリップ(40)と交わり、それによって、一方では、隣接する二つの第一のストリップ(38)と、もう一方では隣接する二つの第二のストリップ(40)との間に管を区画し、第一及び第二のストリップ(38、40)は、処理すべき表面の位置に配置されるセル状構造の形状に合った、平坦ではない幾何学的形状に沿って該ストリップの組立てを可能にする形状及び切り込み(42、44)を備えることを特徴とする被覆材。
【請求項8】
請求項7に記載の吸音処理被覆材を備える航空機のナセル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公表番号】特表2010−519445(P2010−519445A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549456(P2009−549456)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際出願番号】PCT/FR2008/050248
【国際公開番号】WO2008/104716
【国際公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(508009851)エアバス フランス (19)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際出願番号】PCT/FR2008/050248
【国際公開番号】WO2008/104716
【国際公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(508009851)エアバス フランス (19)
【Fターム(参考)】
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