説明

褥瘡防止マットレス用中綿素材の加工装置

【課題】三次元立体網状構造体のマットレス素材の切断面の尖った繊維を滑らかにし、切断部分の繊維同士の再融着を行う。
【解決手段】褥瘡防止マットレス用中綿素材の加工装置は、テーブル10、外枠20、曲げ性付与加工装置30及び切断面平滑加工装置40を備える。切断面平滑加工装置40は、左右ガイド装置41上を左右方向に走行する走行ベース42の上面に熱風噴射装置50、切断面押圧装置60及び冷却装置70を設置して構成される。熱風噴射装置50は、ヒータ付ブロワー51の吹き出し口に蟹のハサミの様な形状をした二股状ノズル52を装着し、中綿素材2の上面並びに下面から切断面に向けて熱風を噴射する。切断面押圧装置60は、鼓状ローラ61によって構成される。冷却装置70は、ブロワー71によって構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性弾性樹脂の連続複合線状体を曲がりくねらせ互いに接触させて接触部の大部分を融着せしめた三次元立体網状構造体のマットレス素材を中綿とする褥瘡防止マットレスを製造するための中綿素材の加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の中綿素材として、例えば、東洋紡績株式会社製の「ブレスエアー(商品名、商標名。以下、同じ。)」が知られている。同社の開設する当該製品を紹介したWEBサイト(http://www.toyobo.co.jp/seihin/breathair/index.htm)によれば、当該商品は、高弾発、清潔、通気性、軽量という特長を有し、用途例として、寝具、医療・介護、その他種々の用途例を有するものとされている。
【0003】
このため、褥瘡や床ずれを予防・軽減することのできる介護用マットレスとして、東洋紡績株式会社製のブレスエアーをマットレスの中綿素材として用いる提案が特許出願されている(例えば、特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−34392号公報
【特許文献2】特開2003−245317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この種の素材は、所定幅・所定厚さの長い板材として製造され、マットレスに適する長さに切断して提供されるため、長さ方向の両端において、繊維がマットレスカバーを突き抜けたり、融着していない繊維片がこぼれたり、使用中の異音の原因となったりするという問題がある。
【0006】
また、介護用マットレスは、介護用のギャッジベッドにて用いられる際にベッドのリクラインイングの状態に従って、頭部を持ち上げたり、脚部を下り傾斜にしたりすることがある。しかし、上述の様に、この種の製品は高弾発等の性質によってギャッジベッドのリクライニング状態に従って変形し難いという問題がある。特許文献2は、マットレスを三分割することによってこうした問題に対応しているが、マットレスが連続していないことにより、寝心地が悪くなったり、製造工程が多くなったりするという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、熱可塑性弾性樹脂の連続複合線状体を曲がりくねらせ互いに接触させて接触部の大部分を融着せしめた三次元立体網状構造体のマットレス素材を中綿とする褥瘡防止マットレスを製造するに当たり、上記問題を解決することのできる中綿素材の加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためになされた本発明の褥瘡防止マットレス用中綿素材の加工装置は、熱可塑性弾性樹脂の連続複合線状体を曲がりくねらせ互いに接触させて接触部の大部分を融着せしめた三次元立体網状構造体のマットレス素材を中綿とする褥瘡防止マットレスを製造するための中綿素材の加工装置であって、以下の構成を備えていることを特長とする。
(1)前記中綿素材を載置するテーブルを備えていること。
(2)前記テーブル上に載置された中綿素材を、テーブル先端縁からはみ出した状態に位置決めし、固定する中綿素材固定装置を備えていること。
(3)前記テーブルの載置面よりも低く、前記テーブル先端縁に沿って設置された左右ガイド装置と、該左右ガイド装置上を左右方向に走行する走行ベースとを備えていること。
(4)前記走行ベースの上面に、走行方向前側から、熱風噴射装置、切断面押圧装置及び冷却装置を設置してあること。
(5)前記熱風噴射装置は、ヒータ付ブロワーの吹き出し口に、前記中綿素材の上方並びに下方から熱風を噴出するために下向開口を有する上側ノズルと上向き開口を有する下側ノズルとを備えた二股状ノズルを装着したものとして構成されていること。
(6)前記切断面押圧装置は、軸部の上下に鍔部を備えた鼓状ローラによって構成されていること。
(7)前記冷却装置は、縦長開口の吹き出し口を有するブロワーによって構成されていること。
【0009】
本発明の褥瘡防止マットレス用中綿素材の加工装置によれば、テーブル上に中綿素材を載置し、中綿素材がテーブル先端縁からはみ出した状態に位置決めし、中綿素材固定装置で固定する。そして、熱風噴射装置のヒータ付ブロワー及び冷却装置のブロワーを駆動し、中綿素材の溶融・融着が可能な温度の熱風の噴出が可能な状態になったら、走行ベースを走行させる。これにより、テーブルからはみ出して固定された中綿素材の先端部分が熱風で溶融・融着可能な状態になり、そこを鼓状ローラで押圧することで切断面及び切断面付近の繊維を溶融・融着させる。そして、この鼓状ローラが通過した後の部分をブロワーで冷却することにより、溶融・融着した繊維を固化させて安定化させる。これにより、長さ方向の前後の切断部分の繊維の飛び出し等を防止することができる。ここで、熱風は、二股状ノズルによって中綿素材の上方並びに下方から噴出されるので、中綿素材の中心部まで的確に加熱することができ、テーブルからはみ出された部分の繊維・繊維片をローラによる押圧によって互いに融着させる作用が的確に発揮される。
【0010】
ここで、本発明の褥瘡防止マットレス用中綿素材の加工装置は、さらに、以下の構成をも備えたものとして構成することができる。
(2a)前記中綿素材固定装置は、前記テーブルの側面と平行に、該テーブル面から垂直に立設した側面定規と、前記テーブルの幅方向に渡され、昇降装置によって前記テーブル面上に載置された中綿素材の上面に接する高さまで下降可能に構成され、下面から複数の突起を突出させた押さえバーとを備えていること。
【0011】
かかる構成をも備えさせることにより、鼓状ローラによる適度な押圧力を加えることができる状態に、中綿素材を的確に位置決め固定することができる。
【0012】
また、これらの構成を備えた本発明の褥瘡防止マットレス用中綿素材の加工装置は、さらに、以下の構成をも備えたものとして構成することができる。
(5a)前記二股状ノズルは、前記ヒータ付ブロワーの吹き出し口に外嵌めする円筒部と、該円筒部の先端に固定されたノズル先端部とから構成され、該ノズル先端部の上側ノズルには、その先端下面に熱風噴出口が開口され、下側ノズルには、その先端上面に熱風噴出口が開口されていること。
(5b)前記上側ノズル及び下側ノズルは、先端側にいくほど互いに近づく方向に傾斜していること。
【0013】
かかる構成をも備えさせることにより、熱風を切断面に的確に吹き付け、特に切断面の繊維の尖った部分を滑らかにする作用を的確に発揮させることができる。
【0014】
さらに、これらの構成を備えた本発明の褥瘡防止マットレス用中綿素材の加工装置は、さらに、以下の構成をも備えたものとして構成することができる。
(6a)前記上下の鍔部は、上側の鍔部の下面は外へ向かって上り傾斜のテーパ面とされ、下側の鍔部の上面は外へ向かって下り傾斜のテーパ面とされていること。
【0015】
かかる構成をも備えさせることにより、鼓状ローラによる押圧力を、切断面及びその上下の角部に対して的確に加えることができる。
【0016】
加えて、これらの構成を備えた本発明の褥瘡防止マットレス用中綿素材の加工装置は、さらに、以下の構成をも備えたものとして構成することができる。
(8a)前記熱風噴射装置は、前記切断面押圧装置の鼓状ローラの軸部を前記テーブル上にはみ出す様に固定された中綿素材の前端を若干押圧する様に当接させた状態において、当該中綿素材の前端に前記二股状ノズルのノズル先端部の根元が接触せず、前記上側ノズル及び下側ノズルの各開口の先端が該中綿素材の前端から所定量だけ入り込んだ位置となる様に、前記走行ベース上に設置されていること。
(8b)前記冷却装置は、前記切断面押圧装置の鼓状ローラの軸部を前記テーブル上にはみ出す様に固定された中綿素材の前端を若干押圧する様に当接させた状態において、当該中綿素材の前端に前記縦長開口の吹き出し口が接触しない位置となる様に、前記走行ベース上に設置されていること。
【0017】
かかる構成をも備えさせることにより、熱風による軟化処理、鼓状ローラによる押圧、さらにはブロワーによる冷却を的確に実施することができる。
【0018】
また、これらの構成を備えた本発明の褥瘡防止マットレス用中綿素材の加工装置は、さらに、以下の構成をも備えたものとして構成することができる。
(9)前記熱風噴射装置及び冷却装置は、走行方向に対して斜め前方に向かって各ブロワーを傾斜させた取付状態とされていること。
【0019】
かかる構成をも備えさせることにより、鼓状ローラによる押圧前の的確な熱風軟化処理、鼓状ローラが通過した後の速やかな冷却固化を的確に実施することができる。
【0020】
そして、これらの構成を備えた本発明の褥瘡防止マットレス用中綿素材の加工装置は、さらに、以下の構成をも備えたものとして構成することができる。
(11)前記テーブルを取り囲む様に設置された外枠を備えていること。
(12)前記外枠の上部に前記テーブルの幅方向に掛け渡す様に固定された梁部材と、該梁部材から昇降可能に吊り下げられ、昇降装置によって前記テーブル面上に載置された中綿素材の上面に接する高さまで下降可能に構成され、底面に加熱管が取り付けられている押圧部を備えていること。
【0021】
(11),(12)の構成を備えることにより、切断面の平滑化、切断部分内部の再融着だけでなく、中綿素材の長手方向所定位置に幅方向の溝を形成し、ギャッジベッドなどに用いた場合の変形能力を容易に付与することができる。
【0022】
かかる(11),(12)の構成に加えて、さらに、以下の構成をも備えたものとして構成することができる。
(13)前記加熱管内を長さ方向に分割して温度管理が可能となる様に、管内に複数のヒータを挿入すると共に、各ヒータ毎に温度調整装置を設置したこと。
【0023】
(13)の構成をも備えることにより、幅方向の温度分布を的確に調整することができ、中綿素材の表面に対して所望の深さの溝を容易に形成することができるから、変形能力の付与を設計通りに実現するのに適した装置となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の褥瘡防止マットレス用中綿素材の加工装置によれば、連続的な素材として製造される三次元立体網状構造体のマットレス素材を所定長さに切断したときに生じる切断面の尖った繊維を滑らかにし、切断部分の繊維同士の再融着を行う処理を的確に実施することができる。また、追加の構成を採用することで、ギャッジベッド等に用いるのに適した変形能力を付与することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例1の褥瘡防止マットレス用中綿素材加工装置の斜視図である。
【図2】実施例1の褥瘡防止マットレス用中綿素材加工装置の主要部を示し、(A)は背面図、(B)は平面図、(C)は右側面図である。
【図3】実施例1の褥瘡防止マットレス用中綿素材加工装置の切断面平滑加工装置の構造を示す説明図である。
【図4】実施例1の褥瘡防止マットレス用中綿素材加工装置の切断面平滑加工装置の動作を示す説明図である。
【図5】実施例1の褥瘡防止マットレス用中綿素材加工装置の固定装置の構造を示す説明図である。
【図6】実施例1の褥瘡防止マットレス用中綿素材加工装置の曲げ性付与装置の構造を示す説明図である。
【図7】実施例1の褥瘡防止マットレス用中綿素材加工装置の蟹つめ状ノズル及び鼓状ローラの斜視図である。
【図8】実施例1の褥瘡防止マットレス用中綿素材加工装置の蟹つめ状ノズル及び鼓状ローラの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明を実施するための形態を実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0027】
実施例1の褥瘡防止マットレス用中綿素材の加工装置1は、図1に示す様に、マットレス用中綿素材2を載置するテーブル10と、このテーブル10を取り囲む様に設置された外枠20と、外枠20の上部に備えられた曲げ性付与加工装置30と、外枠20の前端側に設けられた切断面平滑加工装置40とを備えている。
【0028】
テーブル10は、図1,図2,図5に示す様に、中綿素材2をテーブル面に押し付けて固定するための中綿素材固定装置11を備えている。この中綿素材固定装置11は、テーブル10の前端から若干入り込んだ位置において、テーブルの左右の幅を越える長さの押さえバー12と、この押さえバー12の両端にロッド先端を固定した左右のエアシリンダ13,13とから構成されている。押さえバー12は、C型鋼を開放部を上向きにセットしたものであり、幅方向に、ほぼ等間隔で4箇所に前後方向に間隔をあけた各2本の突起14を下面から突出させた状態に形成されている。なお、図2に示す様に、テーブル10の左側面と平行に、テーブル面から垂直に立設した側面定規10aも備えられている。
【0029】
外枠20は、図1に示す様に、4本の支柱の上端を長方形枠体で連結した鉄骨構造体として構成されている。曲げ性付与加工装置30は、図1,図6に示す様に、この長方形枠体の上に幅方向に掛け渡す様に取り付けられた梁部材31の中央に昇降用の油圧シリンダ32を設置し、この油圧シリンダ32のロッド先端に押圧部33が取り付けられている。押圧部33は、四隅をガイドロッド34でガイドされ、垂直方向に昇降可能となっている。また、押圧部33の下面には、3本の加熱管35,35,35が平行に設置されている。この加熱管35の内部には、長さ方向に6等分されたヒータがそれぞれ内蔵されていて、各ヒータに対応する温度設定装置36,36,…によって各加熱管35毎に、それぞれの長さ方向の温度分布を調整可能に構成されている。なお、この曲げ性付与加工装置30の動作は、外枠20の右後方の支柱の上部に取り付けられたコントロールボックス37のボタン操作によって制御する様に構成されている。
【0030】
切断面平滑加工装置40は、図1,図2,図4に示す様に、テーブル10の載置面よりも低く、テーブル10の左右幅よりも長い左右ガイド装置41と、この左右ガイド装置41上を左右方向に走行する走行ベース42と、この走行ベース42の上面に設置された熱風噴射装置50、切断面押圧装置60及び冷却装置70と、コントロールボックス43とを備えている。
【0031】
熱風噴射装置50は、図2〜図4,図7,図8に示す様に、ヒータ付ブロワー51の吹き出し口に、マットレス用中綿素材2の上方並びに下方から熱風を噴出するために蟹のハサミの様に先端部分が上下に二股に分かれた二股状ノズル52を装着したものとして構成されている。この二股状ノズル52は、ヒータ付ブロワー51の吹き出し口に外嵌めする円筒部53と、この円筒部53の先端にロウ付けによって固定されたノズル部54とから構成されている。ノズル部54の上側のノズル先端部54aには、その先端下面に熱風噴出口55aが開口されている。同じく、ノズル部54の下側のノズル先端部54bには、その先端上面に熱風噴出口55bが開口されている。また、各ノズル先端部54a,54bは、先端側にいくほど互いに近づく方向に傾斜している。また、この二股状ノズル52は、加工されるマットレス用中綿素材2の厚さに応じて取り換えられる。そのサイズは、上下のノズル先端部54a,54bの先端同士の間隔が、中綿素材2に対して上下に所定距離(実施例では、約10〜20mm)離れた位置となる様に設計されていて、マットレス用中綿素材2の切断面をノズル先端部54a,54bの間に設置し、熱風がマットレス用中綿素材2の切断面のやや後方から切断面に向かって噴出する状態となる様に設計されている。
【0032】
切断面押圧装置60は、図7,図8に示す様に、フッ素樹脂製の鼓状ローラ61によって構成されている。鼓状ローラ61は、軸部62の上下に鍔部63,64を備えている。上側鍔部63の下面は外へ向かって上り傾斜のテーパ面63aとされ、下側鍔部64の上面は外へ向かって下り傾斜のテーパ面64aとされている。この鼓状ローラ61も、加工されるマットレス用中綿素材2の厚さに応じて取り換えられる。その設計条件は、対象マットレスの厚さに対して軸部62の長さが若干短くなっており、マットレス前端に対して、軸部62及び上下鍔部63,64が同時に当接する寸法となる様に設計されている。
【0033】
冷却装置70は、図2〜図4に示す様に、ブロワー71によって構成されている。このブロワー71は、吹き出し口72でマットレス用中綿素材2の厚さ方向全体をカバーできる様に、加工対象素材の最大厚さよりも大きな上下方向に長い縦長開口を有する。なお、このブロワー71には、ヒータやクーラは付属しておらず、室温の空気を吹き出すだけの構造となっている。
【0034】
これら熱風噴射装置50、図2〜図4に示す様に、切断面押圧装置60及び冷却装置70は、走行ベース42に対して、その走行方向(コントロールボックス43から反対側へ向かう方向)に沿って、熱風装置50が一番前、次に、切断面押圧装置60、一番後に冷却装置70が位置する様に設置されている。
【0035】
また、熱風噴射装置50は、切断面押圧装置60に設置される鼓状ローラ61の軸部62がマットレス用中綿素材2の前端を若干押圧する様に当接させた状態において、図8に示す様に、中綿素材2の前端にノズル部54の根元が接触せず(約5〜10mm程度離れる)、上下のノズル先端部54a,54bが中綿素材2の前端から約5〜30mm程度入り込んだ位置となる様に走行ベース42上に設置されている。また、冷却装置70は、図3に示す様に、切断面押圧装置60に設置される鼓状ローラ61の軸部62がマットレス用中綿素材2の前端を若干押圧する様に当接させた状態において、ブロワー71の吹き出し口72が、中綿素材2の前端に接触しない様に走行ベース42に対して設置されている。
【0036】
なお、本実施例では、図2〜図4に示す様に、熱風噴射装置50及び冷却装置70は、走行方向に対して斜め前方に向かってブロワーを傾斜させた取付状態としている。
【0037】
本実施例の褥瘡防止マットレス用中綿素材の加工装置1においては、図2に示す様に、マットレス用中綿素材2を、側面定規10aに押し当てた状態で、切断面である前端をテーブル10から所定距離はみ出す様にセットし、コントロールパネル43の押さえ下降ボタンを押して、エアシリンダ13,13を駆動させる。これにより、固定装置11の押さえバー12が下降し、その突起14を中綿素材2に突き刺さらせて中綿素材2を上下方向に押圧固定した状態となる。なお、本実施例では、中綿素材として、東洋紡績株式会社製の「ブレスエアー」の厚さ80mm、60mm、40mm及び20mmのものを加工することを想定しており、図7,図8に示したもの以外に、交換用ノズル及び交換用ローラとして、60mm用、80mm用のノズル及びローラも備えることとしている。押さえバー12が中綿素材2の上面に当接して押圧した状態において、突起14は、中綿素材を構成する三次元立体構造の網状体の網目に刺し通される様な状態で中綿素材2を構成する繊維に引っ掛かる。この突起14の引っ掛かりと、押さえバー12の上下方向の押圧力とにより、中綿素材2は前後方向に移動しない状態となる。
【0038】
こうして中綿素材2のセットが完了したら、コントロールパネル43のスタートボタンを押す。すると、ヒータ付ブロワ51及びブロワー71が駆動される。このとき、走行ベース42はまだ走行動作を開始しない。ヒータ付ブロワ51が駆動されてヒータが十分に発熱したら、走行ベース42の走行を開始する。これにより、走行ベース42が左右ガイド装置41に沿って走行し、中綿素材2の切断面に対して、まず、熱風噴射装置50による熱風噴射が実行され、この熱風によって融着可能な状態となった繊維が、鼓状ローラ61によって前面及び上下角部を押圧されることで、素材内部において繊維同士の接触部分が融着されると共に、ローラ61に接触している部分が熱溶融されて切断によって鋭く尖った状態となっていた繊維の端が滑らかな状態となる。そして、ローラ61が通過した部分にはブロワー71により冷却風が送風され、速やかに固化が行われる。
【0039】
これにより、中綿素材2の前端の切断面が滑らかに加工されると共に、切断面近くの内部に存在していた繊維片が接触している繊維と融着して固定される。
【0040】
前端についてこの処理を実行したら、固定装置11を上昇させて中綿素材2を移動可能にし、前後反転して同様にセット・固定して平滑加工を実行する。
【0041】
また、本実施例の加工装置1は、曲げ性付与加工装置30を備えているので、次の様な加工も実行することができる。テーブル10の上に、側面を定規10aに当接させる様にして中綿素材2をセットし、コントロールボックス37を操作して、油圧シリンダ32を駆動し、押圧部33の加熱管35,35,35を、中綿素材2に対して押し付ける。加熱管35,35,35は、各6個の温度設定装置36によって温度調整されている。この過熱管35,35,35の当接・押圧により、中綿素材2の上面所望の位置を溶融させ、幅方向に渡る3本の溝部を形成することができる。この溝部の形成により、ギャッジベッドにおいて頭部を持ち上げたり、脚部を下げたりする動作をした際に、マットレスがこの動きにスムーズに対応して変形することができる様になる。
【0042】
本実施例の加工装置1によれば、ブレスエアーの様な褥瘡防止等に効果の高い素材を中綿とする介護用マットレスを製造する場合に、中綿の切断面から繊維が飛び出してカバーを突き抜けたり、切断面近くで繊維片同士がガサガサと音を立てるといったことがなく、また、ギャッジベッドに用いた場合の変形能力が高く、しかも分割タイプとしないマットレスを提供することができる。
【0043】
なお、スタート後の走行ベース42の待機時間は、タイマーによって設定する様にしてもよいし、ヒータ付ブロワーに温度センサを設けておいて熱風の温度が所定温度以上になったら走行開始する様にしてもよい。
【0044】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々に実施することができる。
【0045】
例えば、曲げ性付与加工装置30を備えないものとすることもできる。また、実施例の加工装置1で、分割型マットレス用の中綿素材の加工を行うこともできる。即ち、長さ方向に3分割したマットレスでは、切断面が6箇所となるが、これら6箇所の切断面に対して切断面平滑加工装置40による加工を施すことにより、端部の繊維同士を融着させ、端面を平滑化することにより、使用中のガサガサという音の発生を抑制し、カバー材から繊維の先端が飛び出すのを防止することができるという第1に解決すべき課題を解決することができるからである。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は褥瘡防止マットレスの製造に利用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1・・・褥瘡防止マットレス用中綿素材の加工装置
2・・・マットレス用中綿素材
10・・・テーブル
10a・・・側面定規
11・・・中綿素材固定装置
12・・・押さえバー
13・・・エアシリンダ
14・・・突起
20・・・外枠
30・・・曲げ性付与加工装置
31・・・梁部材
32・・・油圧シリンダ
33・・・押圧部
34・・・ガイドロッド
35・・・加熱管
36・・・温度設定装置
37・・・コントロールボックス
40・・・切断面平滑加工装置
41・・・左右ガイド装置
42・・・走行ベース
43・・・コントロールボックス
50・・・熱風噴射装置
51・・・ヒータ付ブロワー
52・・・二股状ノズル52
53・・・円筒部
54・・・ノズル部
54a・・・上側ノズル先端部
54b・・・下側ノズル先端部
55a,55b・・・熱風噴出口
60・・・切断面押圧装置
61・・・鼓状ローラ
62・・・軸部
63,64・・・鍔部
63a・・・上り傾斜のテーパ面
64a・・・下り傾斜のテーパ面
70・・・冷却装置
71・・・ブロワー
72・・・吹き出し口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性弾性樹脂の連続複合線状体を曲がりくねらせ互いに接触させて接触部の大部分を融着せしめた三次元立体網状構造体のマットレス素材を中綿とする褥瘡防止マットレスを製造するための中綿素材の加工装置であって、以下の構成を備えていることを特長とする褥瘡防止マットレス用中綿素材の加工装置。
(1)前記中綿素材を載置するテーブルを備えていること。
(2)前記テーブル上に載置された中綿素材を、テーブル先端縁からはみ出した状態に位置決めし、固定する中綿素材固定装置を備えていること。
(3)前記テーブルの載置面よりも低く、前記テーブル先端縁に沿って設置された左右ガイド装置と、該左右ガイド装置上を左右方向に走行する走行ベースとを備えていること。
(4)前記走行ベースの上面に、走行方向前側から、熱風噴射装置、切断面押圧装置及び冷却装置を設置してあること。
(5)前記熱風噴射装置は、ヒータ付ブロワーの吹き出し口に、前記中綿素材の上方並びに下方から熱風を噴出するために下向開口を有する上側ノズルと上向き開口を有する下側ノズルとを備えた二股状ノズルを装着したものとして構成されていること。
(6)前記切断面押圧装置は、軸部の上下に鍔部を備えた鼓状ローラによって構成されていること。
(7)前記冷却装置は、縦長開口の吹き出し口を有するブロワーによって構成されていること。
【請求項2】
さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とする請求項1記載の褥瘡防止マットレス用中綿素材の加工装置。
(2a)前記中綿素材固定装置は、前記テーブルの側面と平行に、該テーブル面から垂直に立設した側面定規と、前記テーブルの幅方向に渡され、昇降装置によって前記テーブル面上に載置された中綿素材の上面に接する高さまで下降可能に構成され、下面から複数の突起を突出させた押さえバーとを備えていること。
【請求項3】
さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の褥瘡防止マットレス用中綿素材の加工装置。
(5a)前記二股状ノズルは、前記ヒータ付ブロワーの吹き出し口に外嵌めする円筒部と、該円筒部の先端に固定されたノズル先端部とから構成され、該ノズル先端部の上側ノズルには、その先端下面に熱風噴出口が開口され、下側ノズルには、その先端上面に熱風噴出口が開口されていること。
(5b)前記上側ノズル及び下側ノズルは、先端側にいくほど互いに近づく方向に傾斜していること。
【請求項4】
さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の褥瘡防止マットレス用中綿素材の加工装置。
(6a)前記上下の鍔部は、上側の鍔部の下面は外へ向かって上り傾斜のテーパ面とされ、下側の鍔部の上面は外へ向かって下り傾斜のテーパ面とされていること。
【請求項5】
さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の褥瘡防止マットレス用中綿素材の加工装置。
(8a)前記熱風噴射装置は、前記切断面押圧装置の鼓状ローラの軸部を前記テーブル上にはみ出す様に固定された中綿素材の前端を若干押圧する様に当接させた状態において、当該中綿素材の前端に前記二股状ノズルのノズル先端部の根元が接触せず、前記上側ノズル及び下側ノズルの各開口の先端が該中綿素材の前端から所定量だけ入り込んだ位置となる様に、前記走行ベース上に設置されていること。
(8b)前記冷却装置は、前記切断面押圧装置の鼓状ローラの軸部を前記テーブル上にはみ出す様に固定された中綿素材の前端を若干押圧する様に当接させた状態において、当該中綿素材の前端に前記縦長開口の吹き出し口が接触しない位置となる様に、前記走行ベース上に設置されていること。
【請求項6】
さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の褥瘡防止マットレス用中綿素材の加工装置。
(9)前記熱風噴射装置及び冷却装置は、走行方向に対して斜め前方に向かって各ブロワーを傾斜させた取付状態とされていること。
【請求項7】
さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の褥瘡防止マットレス用中綿素材の加工装置。
(11)前記テーブルを取り囲む様に設置された外枠を備えていること。
(12)前記外枠の上部に前記テーブルの幅方向に掛け渡す様に固定された梁部材と、該梁部材から昇降可能に吊り下げられ、昇降装置によって前記テーブル面上に載置された中綿素材の上面に接する高さまで下降可能に構成され、底面に加熱管が取り付けられている押圧部を備えていること。
【請求項8】
さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とする請求項7記載の褥瘡防止マットレス用中綿素材の加工装置。
(13)前記加熱管内を長さ方向に分割して温度管理が可能となる様に、管内に複数のヒータを挿入すると共に、各ヒータ毎に温度調整装置を設置したこと。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−252241(P2011−252241A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125411(P2010−125411)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(594075318)大木産業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】