説明

視線認識に応じた自動処理装置、自動処理方法及び自動処理プログラム

【課題】利用者の視線の先を認識し、認識した視線に基づき利用者に注意を促す。
【解決手段】自動入出金機10は、利用者Uの顔画像を取得する顔画像取得部205と、顔画像に基づき利用者Uの目の状態を検出する目検出部210と、検出された目の状態に基づき視線の方向を認識する認識部220と、顔画像に基づき利用者の顔の状態を検出する顔検出部215と、検出された顔の状態と認識された視線の方向とに基づき利用者Uの視線の先が自動入出金機10に向けられているかを算出する算出部310と、自動入出金機10が動作する現工程と次に動作予定の次工程を記憶する記憶部315と、利用者の視線の先に基づき利用者Uに注意を促すかを判定する判定部320と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視線認識に応じた自動処理装置、自動処理方法及び自動処理プログラムに関する。特に、本発明は、自動処理装置を利用する利用者の視線に応じて利用者に注意を促しながら所望の処理を行う自動処理装置、自動処理方法及び自動処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から視線検出及び視線認識に関する種々の技術が考案されている(例えば、特許文献1、2を参照)。特許文献1には、視線の方向を検出し、検出された視線の方向によりディスプレイ上のカーソルを制御するシステムが開示されている。特許文献2には、表示手段を注視する操作者の視線を検出し、検出された視線の動きに基づいて所定の編集処理制御を行うシステムが開示されている。
【0003】
この視線検出及び視線認識技術をATM(Automatic Teller Machine:自動入出金機)に応用する技術も提案されている(例えば、特許文献3〜6を参照)。例えば、特許文献3には、顧客の視線方向を検出し、検出された視線方向のATM画面に3次元画像を表示するシステムが開示されている。特許文献4には、引き出した現金等を取り忘れてその場を離れる利用者に、現金を取り忘れた旨を伝えるATM現金取り忘れ警報システムが開示されている。特許文献5には、顧客が繰り返し操作する取引内容のパターンを学習し、学習結果に基づき顧客毎に取引内容を予測し、予測内容に即した取引内容の操作ガイダンス画面を表示するシステムが開示されている。特許文献6には、利用者の目周辺の画像から利用者の目が開いているかどうかを検出し、利用者の目が開いている場合に利用者の視線方向を検出する技術が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平05−298015号公報
【特許文献2】特開平07−191796号公報
【特許文献3】特開2005−301484号公報
【特許文献4】特開2002−117429号公報
【特許文献5】特開平09−062747号公報
【特許文献6】特開2003−015816号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ATMの利用者に注意を喚起する場合、上記技術では、利用者が現金や通帳等の媒体を忘れて初めてATM側から注意を促す動作が実行され、例えば取り忘れしないように予防的に注意を喚起する動作を行うことはできないという課題があった。
【0006】
また、顧客毎の取引パターンの学習結果に基づき操作ガイダンス画面を変えるという技術に関しては、必ずしも顧客が定期的に同一操作を行うとは限らないという課題があった。
【0007】
そこで、本発明では、利用者の視線の方向を検出及び認識し、認識した視線に基づき所定の場合に利用者に注意を促す自動処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様によれば、利用者の視線を認識し、認識した視線に基づき所望の自動処理を実行する自動処理装置であって、利用者の顔画像を取得する顔画像取得部と、前記顔画像取得部により取得された顔画像に基づき利用者の目の状態を検出する目検出部と、前記目検出部により検出された目の状態に基づき視線の方向を認識する認識部と、前記顔画像取得部により取得された顔画像に基づき利用者の顔の状態を検出する顔検出部と、前記顔検出部により検出された顔の状態と前記認識部により認識された視線の方向とに基づき、利用者の視線の先が前記自動処理装置に向けられているかを算出する算出部と、前記自動処理装置が動作している現工程及び次に動作予定の次工程を記憶する記憶部と、前記算出部により算出された利用者の視線の先と前記自動処理装置との関係に基づき利用者に注意を促すかを判定する判定部と、を有する視線認識に応じた自動処理装置が提案される。
【0009】
かかる構成によれば、利用者の顔の状態と視線の方向とに基づき利用者の視線の先が自動処理装置に向けられているかが算出される。また、算出の結果、利用者の視線の先が自動処理装置に向けられているか装置以外に向けられているかによって利用者に注意を促すかが判定される。これにより、利用者が現金や通帳等の媒体を忘れる等過去に生じた事柄に対して自動処理装置側から注意を促す動作が実行されるだけでなく、例えば、操作途中に利用者に注意を促したり、将来的に取り忘れしないように予防的に利用者に注意を喚起したり、次の操作の案内代わりといった利用者の操作の補助を事前に行うことが可能となる。この結果、自動処理装置に対する操作性の向上や取引時間の短縮といった効果を奏することができる。
【0010】
前記認識部は、前記目検出部により検出された目の状態から瞬きの有無を判定し、判定の結果、目が開いている場合には視線の方向を認識してもよい。
【0011】
前記算出部は、前記認識部により瞬きしていないと認識された場合、視線の方向と前記顔検出部により検出された顔の位置から前記自動処理装置までの距離とに基づき、利用者の視線の先が前記自動処理装置のどの部分に向けられているかを算出してもよい。
【0012】
前記判定部は、前記算出により利用者の視線の先が、前記記憶部により記憶された現工程又は次工程にて利用者に操作させたい前記自動処理装置の部分に向けられていないとされた場合、利用者に注意を促すと判定してもよい。
【0013】
前記判定部は、前記算出により利用者の視線の先が、前記記憶部により記憶された現工程又は次工程にて利用者に操作させたい前記自動処理装置の部分に向けられているとされた場合、前記記憶部により記憶された現工程又は次工程を通常通り処理すると判定してもよい。
【0014】
前記判定部は、前記利用者の視線の先に応じて利用者に促す注意の種類を特定してもよい。
【0015】
前記判定部により特定された注意の種類に応じて警告する警告部をさらに有していてもよい。
【0016】
前記警告部は、自動処理装置に取り付けられた画面の表示、音声の出力、警告灯の点灯又は警告灯の点滅の少なくともいずれかにより警告してもよい。
【0017】
前記警告部は、利用者の視線の先が自動処理装置に向けられていない場合、音声の出力又は画面の点滅の少なくともいずれかにより警告してもよい。
【0018】
前記警告部は、利用者の視線の先が自動処理装置に向けられている場合、利用者の視線の先の表示を拡大してもよい。
【0019】
前記自動処理装置は、自動入出金機であってもよい。
【0020】
前記顔画像取得部は、前記自動入出金機の上部に設置された複数台のカメラを用いて撮像された利用者の顔画像を取得してもよい。
【0021】
また、上記課題を解決するために、本発明の他の態様によれば、利用者の視線を認識し、認識した視線に基づき所望の自動処理を実行する自動処理方法であって、利用者の顔画像を取得するステップと、前記取得された顔画像に基づき利用者の目の状態を検出するステップと、前記検出された目の状態に基づき視線の方向を認識するステップと、前記取得された顔画像に基づき利用者の顔の状態を検出するステップと、前記検出された顔の状態と前記認識された視線の方向とに基づき、利用者の視線の先が前記自動処理装置に向けられているかを算出するステップと、前記自動処理装置が動作している現工程及び次に動作予定の次工程を記憶部に記憶するステップと、前記算出された利用者の視線の先と前記自動処理装置との関係に基づき、前記記憶部により記憶された現工程又は次工程を通常通り処理するか又は利用者に注意を促すかを判定するステップと、を含む視線認識に応じた自動処理方法が提供される。
【0022】
また、上記課題を解決するために、本発明の他の態様によれば、利用者の視線を認識し、認識した視線に基づき所望の自動処理をコンピュータに実行させるための自動処理プログラムであって、利用者の顔画像を取得する処理と、前記取得された顔画像に基づき利用者の目の状態を検出する処理と、前記検出された目の状態に基づき視線の方向を認識する処理と、前記取得された顔画像に基づき利用者の顔の状態を検出する処理と、前記検出された顔の状態と前記認識された視線の方向とに基づき、利用者の視線の先が前記自動処理装置に向けられているかを算出する処理と、前記自動処理装置が動作している現工程及び次に動作予定の次工程を記憶部に記憶する処理と、前記算出された利用者の視線の先と前記自動処理装置との関係に基づき、前記記憶部により記憶された現工程又は次工程を通常通り処理するか又は利用者に注意を促すかを判定する処理と、をコンピュータに実行させるための自動処理プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、利用者の視線の方向を検出及び認識し、認識した視線に基づき所定の場合に利用者に注意を促すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に添付図面を参照しながら、発明を実施するための一実施形態について説明する。但し、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省略する。
【0025】
なお、以下に示す順序に従って、自動処理装置として自動入出金機を例に本実施形態について説明する。
〔1〕自動入出金機の全体構成
〔2〕自動入出金機の機能構成
〔3〕視線認識/自動入出金処理
【0026】
〔1〕自動入出金機の全体構成
まず、本発明の一実施形態に係る自動入出金機(ATM)について、図1を参照しながら説明する。図1は、自動入出金機10の全体構成を模式的に示した図である。自動入出金機10は、利用者Uの視線を認識し、認識した視線に基づき所望の自動処理を実行する自動処理装置の一例である。
【0027】
自動入出金機10の装置本体100には、カードリーダ部105、通帳プリンタ部110、紙幣入出金部115、硬貨入出金部120、フリッカ点灯部125a、125b、125c、125d、画面表示部130(ディスプレイ)及び音声出力部135(スピーカー)を有している。また、装置本体100には、2台のカメラ140a、140bが取り付けられている。
【0028】
カードリーダ部105は、利用者Uが挿入したキャッシュカードを読み込む。通帳プリンタ部110は、利用者Uが挿入した通帳に取引内容を印字する。紙幣入出金部115は、利用者Uの紙幣を入金及び出金する。硬貨入出金部120は、利用者Uの硬貨を入金及び出金する。フリッカ点灯部125a、125b、125c、125dは、カードリーダ部105、通帳プリンタ部110、紙幣入出金部115、硬貨入出金部120の上部にそれぞれ設けられ、各部の機能に応じて所定の場合に利用者Uに注意を喚起するために適当な色や点滅スピードにてフリッカランプを点灯又は点滅する。画面表示部130は、取引内容の操作ガイダンス画面を表示する。画面表示部130には、所定の場合に利用者Uに注意を喚起するメッセージ(文言)やイメージ(画像)が表示される。音声出力部135は、所定の場合に利用者Uに注意を喚起するために音声を出力する。カメラ140a、140bは、利用者Uの顔の位置及び眼球や視線を検出するために利用者Uを撮像する。カメラ140a、140bは、利用者Uの顔画像を撮像しやすいように装置本体100の上部に取り付けられている。
【0029】
〔2〕自動入出金機の機能構成
次に、自動入出金機10の機能構成について図2を参照しながら説明する。図2は、自動入出金機10の機能構成を示したブロック図である。自動入出金機10は、視線情報取得部200と自動入出金部300とを有する。視線情報取得部200は、カメラ140a、140bにより撮像された画像から利用者Uの視線の方向を検出及び認識する。自動入出金部300は、視線情報取得部200から視線に関する情報を取得し、利用者Uに対して通常の入出金処理を行うとともに、取得した視線に関する情報に基づき所定の場合には利用者Uに注意を促す処理を行う。
【0030】
視線情報取得部200は、顔画像取得部205、目検出部210、顔検出部215及び認識部220を有している。認識部220は、眼球認識部220a及び視線認識部220bを有している。
【0031】
顔画像取得部205は、利用者Uの顔画像を取得する。目検出部210は、顔画像取得部205により取得された顔画像に基づき利用者の目の状態を検出する。目検出部210は、たとえば取得された顔画像の目周辺の画像領域から利用者Uの目の位置、向きと目が開いているかどうかを検出する。顔検出部215は、顔画像取得部205により取得された顔画像に基づき利用者の顔の状態を検出する。顔検出部215は、たとえば取得された顔画像から顔の向きや位置を検出する。
【0032】
認識部220は、目検出部210により検出された目の状態に基づき視線の方向を認識する。具体的には、眼球認識部220aは、瞬き等による誤認識が生じないように眼球(目)の特徴を取得する。視線認識部220bは、目検出部210により検出された目の状態から瞬きの有無を判定し、判定の結果、目が開いている場合には視線の方向を認識する。たとえば、視線認識部220bは、取得された目(眼球)周辺の画像の明暗から瞳孔の位置を検出し、検出された瞳孔の中心位置と眼球の中心位置から視線方向を検出する。
【0033】
視線情報連携部305は、自動入出金部300側にて利用者Uの視線の方向に応じた処理を判定及び実行するため、視線情報取得部200から取得された視線に関する情報を自動入出金部300に受け渡すためのインターフェースである。
【0034】
自動入出金部300では、視線情報連携部305を通して得られた情報をその時点の自動入出金機10の処理動作(現工程)と比較して、次に行われる自動入出金機10の処理動作(次工程)と利用者Uの視線の先が一致しているかどうかを判断し、一致していない場合、利用者Uの視線を促すための動作を行うように自動入出金機10を制御する。
【0035】
自動入出金部300は、算出部310、記憶部315、判定部320、処理実行部325及び警告部330を有している。自動入出金部300の各機能について以下に説明する。
【0036】
算出部310は、顔検出部215により検出された顔の状態と認識部220により認識された視線の方向とに基づき、利用者Uの視線の先が自動入出金機10に向けられているかを算出する。より詳しくは、算出部310は、顔検出部215により検出された顔の位置及び向き、認識部220により認識された瞬きの有無及び視線の方向及び顔検出部215により検出された顔の位置から自動入出金機10までの距離に基づき、利用者Uの視線の先が自動入出金機10のどの部分に向けられているかを算出する。
【0037】
記憶部315は、自動入出金機10が動作する全工程を記憶するとともに自動入出金機10が動作している現工程と次に動作予定の次工程とを記憶及び管理する。
【0038】
判定部320は、算出部310により算出された利用者Uの視線の先と自動入出金機10との関係に基づき、利用者Uに注意を促すかを判定する。たとえば、判定部320は、利用者Uの視線の先が現工程又は次工程にて利用者Uに操作させたい自動入出金機10の部分に向けられていない場合、利用者に注意を促すと判定する。一方、判定部320は、利用者Uの視線の先が、現工程又は次工程にて利用者Uに操作させたい自動入出金機10の部分に向けられている場合、現工程又は次工程を通常通り処理すると判定する。判定部320はまた、利用者Uの視線の先に応じて利用者Uに促す注意の種類を特定する。
【0039】
処理実行部325は、通常の自動入出金処理を行う。たとえば、利用者Uが預け入れを要求する場合には、紙幣入出金部115又は硬貨入出金部120への現金の投入を促し、投入された現金の入金処理を実行する。また、たとえば、利用者Uが通帳記入を要求する場合には、通帳プリンタ部110への通帳の投入を促し、投入された通帳の印字処理を実行する。
【0040】
警告部330は、判定部320により特定された注意の種類に応じて警告する。警告部は、自動入出金機10に取り付けられた画面表示部(ディスプレイ)130へメッセージ(文言)やイメージ(画像)を表示したり、音声出力部(スピーカ)135に音声を出力したり、フリッカ点灯部125a〜125d(警告灯)を点灯又は点滅する等の少なくともいずれかにより利用者Uに対して警告する。
【0041】
警告の具体的方法としては、たとえば、画面表示内にて必要データの入力を利用者Uに促す場合、警告部330は、利用者Uが画面外を見ているときは音声出力や画面の点滅により利用者Uの視線を画面に向けさせ、利用者Uが画面上を見ているときは、視線の先の表示を拡大してもよい。その際、文言を見ているときには文言を拡大し、ボタンを見ているときにはボタンを拡大する。
【0042】
また、たとえば、利用者Uがカード、通帳及び現金のいずれかを挿入又は排出する場合、利用者Uの視線の先がカード、通帳及び現金のいずれかの挿入口に向けられていない場合、警告部330は、音声の出力又はフリッカの点灯又は点滅により利用者Uの視線を画面に向けさせるようにしてもよい。また、たとえば、利用者Uの視線の先が自動入出金機10に向けられていない場合、警告部330は、記憶部315に記憶された次工程(たとえば、吸入を行う旨)の動作及び前記カード、通帳及び現金のいずれかの吸入口の場所を音声の出力又はフリッカの点灯又は点滅により利用者Uに知らせるようにしてもよい。
【0043】
また、たとえば、利用者Uが画面を見ている場合、警告部330は、画面上に文言を表示することにより吸入口の場所の案内やイメージ動画による案内をしつつ、音声による案内も同時に行うようにしてもよい。警告部330は、これらの具体的動作を工程毎に組み合わせて適宜使うことができる。
【0044】
なお、利用者Uの視線の先を認識し、利用者Uがどこを見ているかに基づき所定の場合には利用者Uに注意を喚起したり、利用者Uの利便性を向上させるようにガイド表示しながら所望の自動処理を実行する自動処理装置は、本実施形態に係る自動入出金機10に限られず、たとえば、視線情報取得部200及び視線情報連携部305を有するとともに、自動入出金部300に替わる所望の自動処理部を有した装置であればよい。具体的には、前記自動処理装置は、自動販売機や各種発券機(航空券、電車の乗車券等)であってもよい。また、自動処理装置は、自動車においてドライバーに余所見を防止させる装置として応用することもできる。
【0045】
〔3〕視線認識/自動入出金処理
次に、本実施形態に係る自動入出金機10が実行する視線認識/自動入出金処理について、図3を参照しながら説明する。図3は、視線認識/自動入出金処理の手順を示したフローチャートである。
【0046】
まず初めに、利用者Uが自動入出金機10に近づいて操作を行うと予想される時点、つまり、常時、カメラ140a、140bにて自動入出金機10の前の画像を取得し続け、取得した画像の中に利用者Uの顔が認識できた時点で、視線認識/自動入出金処理がステップS300から開始される。
【0047】
開始後、ステップS305にて顔画像取得部205は、利用者Uの顔画像を取得する。次に、顔検出部215は、ステップS310にて、顔画像取得部205により取得された顔画像から顔の位置や向きを検出する。ついで、目検出部210は、ステップS315にて、取得された顔画像に基づき利用者Uの目の位置や向きを検出する。眼球認識部220aは、ステップS320にて眼球(目)の特徴を取得し、視線認識部220bは、目検出部210により検出された目の位置や向きの検出結果に基づき、取得された顔画像の目周辺の画像領域から利用者Uの目が開いているかどうかを判定する。
【0048】
判定の結果、目が開いていない(瞬きしている)と判定された場合、直ちにステップS395に進み、本処理を終了し、瞬き等による誤認識が生じないように処理を終える。一方、判定の結果、目が開いている(瞬きしていない)と判定された場合、ステップS325に進み、視線認識部220bは、取得された目(眼球)周辺の画像の明暗から瞳孔の方向を検出し、検出された瞳孔の中心位置と眼球の中心位置から視線方向を検出する。
【0049】
続いて、ステップS330に進み、算出部310は、利用者Uから自動入出金機10までの距離を計算し、計算された距離と顔検出部215により検出された顔の位置とに基づき、利用者Uの視線の先が自動入出金機10に向けられているかを算出する。利用者Uの視線の先が自動入出金機10に向けられている場合には、さらに、算出部310は、利用者Uの視線の先が自動入出金機10のどの部分に向けられているかを算出する。
【0050】
視線情報取得部200にて取得された視線に関する情報は、視線情報連携部305を介して自動入出金部300に送られ、ステップS335にて記憶部315に格納される。これにより、記憶部315には、利用者Uの視線に関する情報として、顔の位置、向き、目(眼球)の位置、瞬きの有無、視線の方向、画像内の顔の位置から算出された自動入出金機10と利用者Uとの距離、利用者Uの視線が自動入出金機10のどの部分に向けられているかの情報等が格納される。なお、記憶部315には、予め自動入出金機10が動作する全工程が記憶されている。また、記憶部315は、自動入出金機10が動作している現工程と次に動作予定の次工程とを管理している。
【0051】
次に、ステップS340に進み、判定部320は、記憶部315に格納された利用者Uの視線に関する各種情報に基づき、利用者Uの視線の先が利用者に行わせたい現工程又は次工程の操作部分に向けられているかを判定する。具体的には、判定部320は、視線の先が自動入出金機10に向けられているか、又は自動入出金機10以外に向けられているかを判定する。視線の先が自動入出金機10に向けられている場合、判定部320は、視線の先が向けられている自動入出金機10内の部分が、自動入出金機10のその時点での動作(現工程)から次の動作(次工程)まで含めて利用者Uに行わせたい操作部分と一致するかを比較する。
【0052】
この結果、利用者Uの視線の先が、現工程又は次工程にて利用者Uに操作させたい自動入出金機10の部分に向けられていると判定された場合(すなわち、視線の先と利用者Uに行わせたい操作部又は動作部とが一致すると判定された場合)、処理実行部325は、ステップS345にて、利用者Uの要求に応じた通常の自動入出金処理を行い、ステップS395に進んで本処理を終了する。
【0053】
一方、利用者Uの視線の先が、現工程又は次工程にて利用者Uに操作させたい自動入出金機10の部分に向けられていないと判定された場合、警告部330は、ステップS350にて利用者Uに注意を喚起した後、ステップS395に進んで本処理を終了する。なお、利用者Uに注意を喚起した後、ステップS345に進んで通常の自動入出金処理を行ってもよい。
【0054】
ステップS350にて実行される注意喚起の具体的方法の一例を図4〜図6に示す。たとえば、図4に示したように、自動入出金機10の現在の動作(現工程)が「取引選択中」であり、次の動作(次工程)が「カード吸入」の場合について説明する。視線の先が自動入出金機以外に向けられているとき、警告部330は、画面の出力と音声の出力を行いフリッカは点灯及び点滅させない。具体的には、警告部330は、画面の背景を点滅させ、「画面をご覧になり、取引を選択してください」と音声出力する。これにより、利用者Uの視線を画面上に向ける。
【0055】
一方、視線の先が自動入出金機の画面又は吸入排出口に向けられているとき、警告部330は、視線の先により警告の方法を変える。たとえば、視線の先が画面の背景に向けられているとき、警告部330は、画面上の全ボタンを拡大し、「表示されているボタンから取引を選択してください」と音声出力する。視線の先が画面の文言にあるとき、警告部330は、画面上のボタンを拡大するとともに画面上の全ボタンを拡大し、「表示されているボタンから取引を選択してください」と音声出力する。視線の先が画面のボタンにあるとき、警告部330は、画面上の視線先のボタンを拡大し、「“お引出し”ボタン押下後はカードをお入れください」と音声出力し、更に、カードリーダ部105の近傍のフリッカ125aを点灯させる。視線の先が画面の動画にあるとき、警告部330は、画面上の全ボタンを拡大し、「表示されているボタンから取引を選択してください」と音声出力する。
【0056】
視線の先が自動入出金機内であって吸入排出口(カードリーダ部105、通帳プリンタ部110、紙幣入出金部115、硬貨入出金部120のいずれか)にあるとき、警告部330は、画面の背景を点滅させ、画面の全ボタンを拡大し、「画面をご覧になり、取引を選択してください」と音声出力する。なお、視線の先が自動入出金機内であって後方確認ミラーにあるときも、警告部330は、画面の背景を点滅させ、画面の全ボタンを拡大し、「画面をご覧になり、取引を選択してください」と音声出力する。
【0057】
図4には、利用者Uに注意を喚起する方法として、(1)現工程が取引選択中、次工程がカード吸入の場合の他に、(2)現工程がカード吸入中、次工程が暗証入力の場合が具体的に示されている。また、図5には、(3)現工程が暗証入力中、次工程が金額入力の場合、(4)現工程が金額入力中、次工程が通信処理中の場合、(5)現工程が通信処理中、次工程がカード排出の場合が示されている。さらに、図6には、(6)現工程がカード受取、次工程が紙幣・明細票排出の場合、(7)現工程が紙幣・明細票受取、次工程がありがとう画面の場合が示されている。
【0058】
このようにして、警告部330は、判定部320により特定された注意の種類に応じて画面表示部130、音声出力部135、フリッカ点灯部125a〜125dを利用して利用者Uに注意を喚起したり、次の処理がしやすいように案内表示したりする。
【0059】
以上に説明したように、本実施形態に係る自動入出金機10によれば、利用者Uの顔の状態と視線の方向とに基づき利用者Uの視線の先が自動入出金機10に向けられているかが算出される。算出の結果、利用者Uの視線の先が自動入出金機10に向けられているか装置以外に向けられているかによって、現工程又は次工程を通常通り処理するか又は利用者に注意を促すかが判定される。これにより、利用者Uが現金や通帳等の媒体を忘れる等過去に生じた事柄に対して自動処理装置側から注意を促す動作が実行されるだけでなく、例えば、操作途中に利用者に注意を促したり、将来的に取り忘れしないように予防的に利用者に注意を喚起したり、次の操作の案内代わりといった利用者の操作の補助を事前に行うことが可能となる。この結果、操作性の向上や取引時間の短縮といった効果を奏することができる。
【0060】
上記実施形態において、各部の動作は互いに関連しており、互いの関連を考慮しながら、一連の動作として置き換えることができる。これにより、自動処理装置の実施形態を、自動処理方法の実施形態及びその自動処理装置が有する機能をコンピュータに実現させるための自動処理プログラムの実施形態とすることができる。
【0061】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動入出金機の全体構成図である。
【図2】同実施形態に係る自動入出金機の機能構成図である。
【図3】同実施形態に係る視線認識/自動入出金処理の手順を示したフローチャートである。
【図4】同実施形態に係る自動入出金機の動作と視線の先と注意喚起方法との組合せの一例を示した図である。
【図5】同実施形態に係る自動入出金機の動作と視線の先と注意喚起方法との組合せの一例を示した図である。
【図6】同実施形態に係る自動入出金機の動作と視線の先と注意喚起方法との組合せの一例を示した図である。
【符号の説明】
【0063】
10 自動入出金機
100 装置本体
105 カードリーダ部
110 通帳プリンタ部
115 紙幣入出金部
120 硬貨入出金部
125a、125b、125c、125d フリッカ点灯部
130 画面表示部
135 音声出力部
140a、140b カメラ
200 視線情報取得部
205 顔画像取得部
210 目検出部
215 顔検出部
220 認識部
220a 眼球認識部
220b 視線認識部
300 自動入出金部
310 算出部
315 記憶部
320 判定部
325 処理実行部
330 警告部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の視線を認識し、認識した視線に基づき所望の自動処理を実行する自動処理装置であって、
利用者の顔画像を取得する顔画像取得部と、
前記顔画像取得部により取得された顔画像に基づき利用者の目の状態を検出する目検出部と、
前記目検出部により検出された目の状態に基づき視線の方向を認識する認識部と、
前記顔画像取得部により取得された顔画像に基づき利用者の顔の状態を検出する顔検出部と、
前記顔検出部により検出された顔の状態と前記認識部により認識された視線の方向とに基づき、利用者の視線の先が前記自動処理装置に向けられているかを算出する算出部と、
前記自動処理装置が動作している現工程及び次に動作予定の次工程を記憶する記憶部と、
前記算出部により算出された利用者の視線の先と前記自動処理装置との関係に基づき利用者に注意を促すかを判定する判定部と、を備える視線認識に応じた自動処理装置。
【請求項2】
前記認識部は、前記目検出部により検出された目の状態から瞬きの有無を判定し、判定の結果、目が開いている場合には視線の方向を認識する請求項1に記載の視線認識に応じた自動処理装置。
【請求項3】
前記算出部は、前記認識部により瞬きしていないと認識された場合、視線の方向と前記顔検出部により検出された顔の位置から前記自動処理装置までの距離とに基づき、利用者の視線の先が前記自動処理装置のどの部分に向けられているかを算出する請求項2に記載の視線認識に応じた自動処理装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記算出により利用者の視線の先が、前記記憶部により記憶された現工程又は次工程にて利用者に操作させたい前記自動処理装置の部分に向けられていないとされた場合、利用者に注意を促すと判定する請求項3に記載の視線認識に応じた自動処理装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記算出により利用者の視線の先が、前記記憶部により記憶された現工程又は次工程にて利用者に操作させたい前記自動処理装置の部分に向けられているとされた場合、前記記憶部により記憶された現工程又は次工程を通常通り処理すると判定する請求項3又は請求項4のいずれかに記載の視線認識に応じた自動処理装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記利用者の視線の先に応じて利用者に促す注意の種類を特定する請求項1〜5のいずれかに記載の視線認識に応じた自動処理装置。
【請求項7】
前記判定部により特定された注意の種類に応じて警告する警告部をさらに備える請求項6に記載の視線認識に応じた自動処理装置。
【請求項8】
前記警告部は、自動処理装置に取り付けられた画面の表示、音声の出力、警告灯の点灯又は警告灯の点滅の少なくともいずれかにより警告する請求項7に記載の自動処理装置。
【請求項9】
前記警告部は、利用者の視線の先が自動処理装置に向けられていない場合、音声の出力又は画面の点滅の少なくともいずれかにより警告する請求項7又は請求項8のいずれかに記載の自動処理装置。
【請求項10】
前記警告部は、利用者の視線の先が自動処理装置に向けられている場合、利用者の視線の先の表示を拡大する請求項7〜9のいずれかに記載の自動処理装置。
【請求項11】
前記自動処理装置は、自動入出金機である請求項1〜10のいずれかに記載の視線認識に応じた自動処理装置。
【請求項12】
前記顔画像取得部は、前記自動入出金機の上部に設置された複数台のカメラを用いて撮像された利用者の顔画像を取得する請求項11に記載の視線認識に応じた自動処理装置。
【請求項13】
利用者の視線を認識し、認識した視線に基づき所望の自動処理を実行する自動処理方法であって、
利用者の顔画像を取得するステップと、
前記取得された顔画像に基づき利用者の目の状態を検出するステップと、
前記検出された目の状態に基づき視線の方向を認識するステップと、
前記取得された顔画像に基づき利用者の顔の状態を検出するステップと、
前記検出された顔の状態と前記認識された視線の方向とに基づき、利用者の視線の先が前記自動処理装置に向けられているかを算出するステップと、
前記自動処理装置が動作する現工程と次に動作予定の次工程を記憶部に記憶するステップと、
前記算出された利用者の視線の先と前記自動処理装置との関係に基づき、前記記憶部により記憶された現工程又は次工程を通常通り処理するか又は利用者に注意を促すかを判定するステップと、を含む視線認識に応じた自動処理方法。
【請求項14】
利用者の視線を認識し、認識した視線に基づき所望の自動処理をコンピュータに実行させるための自動処理プログラムであって、
利用者の顔画像を取得する処理と、
前記取得された顔画像に基づき利用者の目の状態を検出する処理と、
前記検出された目の状態に基づき視線の方向を認識する処理と、
前記取得された顔画像に基づき利用者の顔の状態を検出する処理と、
前記検出された顔の状態と前記認識された視線の方向とに基づき、利用者の視線の先が前記自動処理装置に向けられているかを算出する処理と、
前記自動処理装置が動作する現工程と次に動作予定の次工程を記憶部に記憶する処理と、
前記算出された利用者の視線の先と前記自動処理装置との関係に基づき、前記記憶部により記憶された現工程又は次工程を通常通り処理するか又は利用者に注意を促すかを判定する処理と、をコンピュータに実行させるための自動処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−152798(P2010−152798A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−332276(P2008−332276)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【出願人】(591051645)沖ソフトウェア株式会社 (173)
【Fターム(参考)】