説明

視覚化の検査及び/又は訓練

被検者の視覚スキル及び/又は視覚化スキルは、本発明によるシステム及び方法を用いて、検査及び/又は訓練することができる。視覚刺激を、被検者に提示することができる。被検者に視覚刺激を与える場合と与えない場合とにおいて、例えば安定性情報、眼球運動データ、生理学的情報、その他の情報などの、被検者のパフォーマンスに関する測定を、行うことができる。同様の測定を、被検者が視覚刺激を視覚化している間に、行うことができる。収集されたデータどうしを比較して、被検者が視覚刺激を視覚化する能力を評価することができる。本プロセスの一環として、第2の刺激を被検者に与えることもできる。又は、被検者に精神活動を要求することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願のクロスリファレンス
本願は、発明の名称が「シミュレーション動作中の視覚能力を検査するシステム及び方法(System and Method for Testing Visual Ability During Simulated Activity)」であり、2007年4月13日に出願された、米国仮特許出願第60/923,434号と、発明の名称が「分離して視覚能力を検査するシステム及び方法(System and Method for Decoupled Visual Ability Testing)」であり、2007年6月4日に出願された、米国仮特許出願第60/941,915号とに基づいて、優先権を主張する、発明の名称が「一元的視覚検査センター(Unitary Vision Testing Center)」であり、2008年4月14日に出願された、国際特許出願第PCT/US2008/060229号の一部継続出願である、発明の名称が「視覚化の検査及び/又は訓練(Visualization Testing And/Or Training)」である、米国非仮特許出願第12/500,385号に基づいて、優先権を主張する。
【0002】
本発明は、視覚の検査に関する。より具体的に、本発明は、個人が視覚刺激を知覚及び視覚化する能力の検査及び訓練に関する。
【背景技術】
【0003】
視覚能力は、殆どの活動に携わる人たちにとって、明らかに重要なものである。個人の視覚スキルを要求する特定の活動の例として、スポーツ及びアスレチック活動がある。視覚スキル以外の部分が同等である複数のアスリートどうしを比較した場合、高い視覚スキルを有するアスリートは、低い視覚スキルを有するアスリートよりも、有利であるはずである。しかしながら、スポーツに携わるアスリートにとって、又は視覚処理を要する活動に携わるあらゆる個人にとっては、眼の身体的構造を用いて物をはっきり見るという単純な能力に加えて、視覚パフォーマンスに関連する神経学的能力も、重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
「視覚化」の概念は、運動競技の訓練において受け入られつつある。例えば、アスリートは、競技に向けた準備の一環として、特定のシナリオを想像又は「視覚化」するよう勧められる。アメリカンフットボールの試合におけるクォーターバックプレーヤーは、自身が試合中に遭遇しそうなディフェンスを、視覚化するように求められ得る。サッカーのゴールキーパーは、ペナルティーキックから防御しているところを、視覚化するように求められ得る。バスケットボールのプレーヤーは、フリースローラインからフリースローをシュートするところを、視覚化するように求められ得る。かかる視覚化の利用法は、個々のアスリートが競技に向けて準備するのを助ける効果があると、評価されることがよくある。しかし、アスリート、コーチ、トレーナー、及び他の者は、視覚化に携わるアスリートの能力を客観的に評価することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、概して、アスリート又は他の個人の視覚能力及び視覚化能力の検査及び/又は訓練に関する。より具体的に、本発明は、被検者に視覚刺激を提示しているときにおける被検者の客観的なパフォーマンスを測定し、当該パフォーマンスを、被検者が視覚刺激を視覚化しているときにおける被検者のパフォーマンスと比較する。被検者のパフォーマンスは、被検者に視覚刺激を提示せずに、被検者が視覚刺激を視覚化していないときに、測定することもできる。この測定結果を、比較のための基準とすることができる。このようにして、個々の被検者の視覚化能力を客観的に測定することができ、被検者の視覚化能力を向上させるためのコースを提案することができる。所定個人の視覚化能力を評価可能にすることにより、訓練及び/又は準備の一環として、より良好に又はより効果的に視覚化するための基準の作成と個人の訓練とを、大きく向上することができる。本発明によるシステム及び方法では、被検者が所定の視覚刺激を効果的に視覚化するのを妨げ得るような、被検者の視覚の欠如を、同定することもできる。本発明によるシステム及び方法は、被検者の視覚化能力の検査及び訓練の双方に、利用することができる。
【0006】
以下、図面を参照しながら、本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明による視覚化能力を検査及び/又は訓練するシステムを示す図である。
【図2】本発明による視覚化能力を検査及び/又は訓練する他のシステムを示す図である。
【図3】本発明による個人の視覚化能力を検査及び/又は訓練する方法を示すフローチャートである。
【図4】本発明による個人の視覚化能力を検査及び/又は訓練する他のシステムを示す図である。
【図5】本発明による個人の視覚化能力を検査及び/又は訓練する他の方法を示すフローチャートである。
【図6】本発明による個人の視覚化能力を検査及び/又は訓練する他のシステムを示す図である。
【図7】本発明による個人の視覚化能力を検査及び/又は訓練する他の方法を示すフローチャートである。
【図8】本発明による個人の視覚化能力を検査及び/又は訓練する他の方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、被検者の視覚能力及び視覚化能力を検査及び/又は訓練するシステム及び方法を提供する。本発明によるシステム及び方法では、被検者に視覚刺激を提示している間、被検者に視覚刺激を提示していない間、及び/又は被検者が視覚刺激を視覚化している間における、被検者のパフォーマンスを測定することができる。被検者に視覚刺激を提示する間に収集されるデータを、被検者に視覚刺激を提示していない間に収集されるデータ、及び/又は被検者が視覚刺激を視覚化している間に収集されるデータとの間で比較した結果を用いて、被検者の能力を評価し、及び/又は個人を訓練することができる。本発明によるシステム及び方法では、収集データを格納し、収集データの表現を格納し、収集データのグラフィカル又は数値的な表現を出力し、収集データを他の収集データとの間で比較し、及び/又は、収集データどうしの比較結果のグラフィカル又は数値的な表現を出力することができる。被検者が携わる視覚化は、投影的な視覚化(すなわち、被検者が映像を見ること)、操作的な視覚化(すなわち、被検者が映像とやりとりすること)、又は投影的視覚化と操作的視覚化との組み合わせとすることができる。投影的及び操作的な視覚化中に取得されるデータどうしを、比較することもできる。
【0009】
本発明で用いる視覚刺激には、単純なものから複雑なもの、及び静的なものから動的なものがある。例えば、視覚刺激としては、静止し又は動いている単純なドット又は光を、用いることができる。文字、数字、矢印、ランドルト環などのような(静止し又は動いている)多少複雑な刺激を、用いることもできる。活動を録画したビデオシーケンス、又は活動のコンピュータアニメーションなどのような複雑な視覚刺激を、用いることもできる。バーチャルリアリティ技術を用いて、被検者に視覚刺激を提示することができる。音などの非視覚的な刺激を、被検者に与えることもできる。2次元表示装置及び/又は3次元表示装置を用いて、他の視覚刺激を提示することができる。例えば、個人に提示する視覚刺激は、被検者にとって関心のあるスポーツ又は活動を行う際に、当該活動の視覚背景内において、典型的に遭遇するような視覚刺激、例えばピッチングされた野球ボールなどを、表すことができる。本発明で用いる視覚刺激は、本明細書で説明する例と比べて、より単純又は複雑なものとすることができる。
【0010】
一般的に、視覚刺激を正確に視覚化している個人から収集されるパフォーマンスデータは、個人が当該刺激を受けているときに当該個人から収集されるパフォーマンスデータと一致するはずである。例えば、個人は、フットボールのプレーを描写する視覚刺激が提示されている間と、同じフットボールのプレーを視覚化している間とで、同様の生理学的反応を示しがちである。各場合において、個人から生理学的データを収集することができる。これら2つの場合における生理学的データどうしの相違は、当該プレーのなんらかの態様が正確に視覚化されていないことを示し得る。同様に、被検者が視覚刺激を受けているときに収集される生理学的データを、被検者が視覚刺激を受けていないときに収集される生理学的データとの間で比較した結果として、生理学的反応どうしの相違が無いことは、被検者が視覚刺激を知覚するのに苦戦したことを示し得る。本発明により収集されるパフォーマンスデータは、生理学的データ、安定性データ、及び/又は眼球運動データを含む、任意種のパフォーマンスデータとすることができる。当然ながら、収集されたパフォーマンスデータの適切な解析内容は、例えば収集されたパフォーマンスデータの種類や、提示及び/又は視覚化された視覚刺激の内容などの、様々なファクターに基づいて、変えることができる。
【0011】
本発明によるシステム及び方法を使用して収集し得るパフォーマンスデータの種類として、個人に関する安定性データがある。安定性データは、個人のバランスを表し得るものであり、様々な方法で収集することができる。例えば、加圧板、慣性センサー、動き検出器、その他の種類の器具を用いて、検査及び/又は訓練中における被検者のバランス、安定性、運動、及び/又は重量配分を、測定することができる。安定性データを収集するのに使用し得るシステム及び方法の例として、発明の名称が「センサーシステム及び汎用通信ポートを有するフットウェア(Footwear Having Sensor System and Universal Communication Port)」である、米国仮特許出願第61/061,427号、及び/又は、発明の名称が「コンピュータ入力及びインタフェース制御のための足ジェスチャー」である、米国特許出願第61/138,048号に開示されるような、センサーを有する靴がある。安定性データに加えて、又は安定性データの代わりに、収集し得る他の種類のパフォーマンスデータは、例えば血圧、呼吸速度、心拍数、発汗速度、脳波検査(EEG)データ、心電図(EKG)データ、及び他の種類の生理学的データなどの、生理学的データを含む。例えば表示された視覚刺激に対する応答などとして、例えばボタン、ジェスチャー認識、音声認識、ジョイスティック、及びタッチセンサー式スクリーンなどの入力装置を用いた入力など、他の種類のパフォーマンスデータを、収集することができる。本発明により収集されるパフォーマンスデータは、代替的又は付加的に、眼球運動データとすることができる。安定性データを併せて収集される眼球運動データを用いて、個人の均衡感覚が特定の眼球運動中に低下するか否かを、確かめることができる。眼球運動データを収集する場合、眼球運動データは、任意の方法で収集することができる。眼電図(EOG)を使用することにより、被検者が両眼を閉じていても、被検者による視覚化中に、眼球運動データを得ることができる。よって、眼球運動のモニタリングにEOGを使用することは、特に有利であり得る。
【0012】
図1は、本発明によるシステム100を例示している。システム100は、被検者110の視覚能力及び/又は視覚化能力を、検査及び/又は訓練するために使用することができる。システム100は、被検者110に視覚刺激を与える、視覚ゴーグル120などの表示装置を備えることができる。ゴーグル120の代わりに、又はゴーグル120に加えて、2次元又は3次元で視覚刺激を出力し得るようなモニター及び/又は投影スクリーンなどの他種の表示装置や、他の任意の装置を、使用することができる。1つ以上の安定性検出装置、例えば被検者110又は被検者110の服に貼ることができる慣性センサー130、132、134、136、138などにより、被検者110のパフォーマンスに関するパフォーマンスデータを、測定することができる。制御ユニット140は、ソフトウェアを実行して本発明に従って動作させる任意種のコンピュータデバイスを備えることができる。制御ユニット140は、ゴーグル120に視覚刺激を与え、センサー130、132、134、136、138から測定データを受信することができる。随意に、ゴーグル120は、眼球運動モニタリング装置(図示せず)を含むことができる。当該眼球運動モニタリング装置も、制御ユニット140に測定データを出力することができる。制御ユニット140は、無線リンク142を介して、システム100の他のコンポーネントと通信することができる。なお、無線リンク142の代わりに、及び/又は無線リンク142に加えて、ワイヤー、ケーブル、その他の任意種の接続手段を用いることができる。制御ユニット140は、ゴーグル120に表示させるための視覚刺激を出力し、被検者110に対して視覚刺激が表示される間に、慣性センサー130、132、134、136、138からの測定値を記録することができる。同様に、制御ユニット140は、被検者110がゴーグル120による視覚刺激を受けていないときに、慣性センサー130、132、134、136、138からデータを受信することができる。制御ユニット140がセンサー130、132、134、136、138からデータを収集し記録する間、被検者110は、ゴーグル120で表示されたことのある刺激の視覚化を行うこともできる。刺激の視覚化中に、制御ユニット140は、ゴーグル120をほぼ不透明にさせることができる。これにより、被検者100によって、不所望又は不用意な視覚刺激が知覚されるのを、抑制することができる。代替的に、刺激の視覚化中において、制御ユニット140は、ゴーグル120に視覚刺激を表示させて、被検者100による視覚化の困難性を高めることができる。次に、データどうしを比較して、被検者110が実際にゴーグル120を用いて視覚刺激を受ける場合と、被検者110が単に視覚刺激を視覚化する場合とで、被検者110がどの程度似た振る舞いをするかを判断することができる。なお、代替的に又は付加的に、収集された安定性データを用いて、他の種類の解析を行うことができる。収集されたデータは、制御ユニット140又は遠隔装置(図示せず)に格納することができる。同様に、収集されたデータの比較結果を、制御ユニット140又は遠隔装置(図示せず)に格納することができる。同様に、収集されたデータの比較を、遠隔装置(図示せず)で行うことができる。制御ユニット140は、任意種のネットワークを介して、遠隔装置にアクセスすることができる。この場合、いかなるプロトコル又は媒体をも使用することができる。遠隔装置は、サーバーや記憶装置などを備えることができる。さらに、収集されたデータ、及び/又は収集されたデータの比較結果を、例えば数値形式及び/又はグラフィカル形式で、出力装置(図示せず)に出力することができる。出力装置は、例えば、表示器、プリンター、ゴーグル120等の表示装置、又は、個人により知覚され得るデータの表現をレンダリングする他の任意種の装置を、備えることができる。被検者110の検査及び/又は訓練を補助するトレーナー、コーチ、医療専門家、その他の個人、及び/又は被検者110自身は、被検者110の視覚能力及び/又は視覚化能力の検査及び/又は訓練の一環として、収集されたデータ及び/又は収集されたデータの比較結果の表現を、使用することができる。本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書においてシステム100と併せて説明するプロセスを、様々な順番で行い得るとともに、任意の回数だけ反復し得ることは、当業者にとって明らかである。
【0013】
図2は、本発明による他のシステム200を例示している。被検者210は、システム200を使用して、自身の視覚能力及び/又は視覚化能力を検査及び/又は訓練することができる。システム200は、パフォーマンスデータを収集する任意数のデータ収集装置を備えることができる。データ収集装置は、安定性測定装置、生理学的データ収集装置、眼球運動データ収集装置、ユーザにより操作可能な入力装置、及び本明細書で説明するような他種のデータ収集装置を備えることができる。例えば、被検者210は、第1の感圧板232及び第2の感圧板234の上に被検者210の両足を乗せた状態で、台230の上に立つことができる。台230、第1の感圧板232、及び第2の感圧板234を、個別に、又は組み合わせて、データ収集装置として動作させて、被検者210の重量配分及び/又は他の安定性データを測定することができる。モニター220などの表示装置は、被検者210に視覚刺激を提示することができる。表示装置は、例えば、刺激が投影され得るスクリーン、1つ以上の光源、(図1に示すような)表示ゴーグル、組み合わせて使用される任意数の表示装置、又は被検者210に視覚刺激を与え得る他の任意の装置を備えることもできる。制御ユニット240は、ソフトウェアを実行して本発明に従って動作させる任意のコンピュータデバイスを備えることができる。制御ユニット240は、モニター220に表示される視覚刺激を制御するとともに、例えば台230、第1の感圧板232、及び/又は第2の感圧板234から安定性データを受信するなど、データ収集装置からのデータの受信を行うことができる。制御ユニット240を、ケーブル242を介してモニター220に接続し、ケーブル244を介して台230、第1の感圧板232、及び第2の感圧板234に接続することができる。なお、より多数又は少数のケーブルを用いることができる。ケーブル242及び/又はケーブル244を、無線接続手段などの1つ以上の他の接続手段に置き換えることができ、検査(制御)ユニット240を、任意のケーブル、ワイヤー、無線リンク、又は他種の接続手段又は通信手段を介して、システム200における他の器具に接続し得ることは、当業者にとって明らかである。制御ユニット240は、モニター220に視覚刺激を表示させない間に、台230、第1の感圧板232、及び/又は第2の感圧板234から受信する被検者210の安定性データを、記録することができる。検査ユニット240は、さらに、モニター220に1つ以上の視覚刺激を表示させる間に、台230、第1の感圧板232、及び第2の感圧板234から受信する被検者210の安定性データを、記録することができる。検査ユニット240は、被検者210が1つ以上の視覚刺激、例えばモニター220に既に表示された視覚刺激などを視覚化する間に、台230、第1の感圧板232、及び第2の感圧板234から、被検者210の安定性データを収集することもできる。刺激の視覚化中において、制御ユニット240は、モニター220に何も表示させないようにすることができる。これにより、被検者210により視覚刺激が知覚されるのを抑制することができる。代替的に、刺激の視覚化中において、制御ユニット240は、モニター220に視覚刺激を表示させて、被検者210による視覚化の困難性を高めることができる。本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書においてシステム200と併せて説明するプロセスを、様々な順番で行い得るとともに、任意の回数だけ反復し得ることは、当業者にとって明らかである。
【0014】
図3は、本発明による個人の視覚化能力を検査及び/又は訓練する方法300を示す。方法300のステップどうしを、本明細書で説明し図3に示す順番とは異なる順番で行うことができる。方法300の各ステップを、それぞれ任意の回数だけ反復し、又は省略することができる。ステップ310では、所定期間、被検者に視覚刺激を提示せずに、安定性データを収集することができる。ステップ320では、所定期間、被検者に視覚刺激を提示し、かつ被検者が視覚刺激を想像していない間、安定性データを収集することができる。ステップ310で収集されるデータは、個人に視覚刺激を提示せず、かつ個人が視覚刺激を想像しない場合における、個人の安定性の測定値を表すことから、基準値として用いることができる。随意に、個人に頭の中を空にするように要求し、又は、それ以前の思考プロセスや映像等を頭から消すように被検者にエクササイズ(例えば、人の名前のスペルを後ろから言わせるエクササイズなど)をさせることができる。ステップ330では、所定期間、被検者が視覚刺激を視覚化する間、安定性データを収集することができる。ステップ330では、例えば被検者による視覚化の困難性を高めるために、視覚刺激を被検者に提示することができ、又は、代替的に、被検者による視覚化の邪魔を回避するために、被検者に視覚刺激を提示しないようにすることができる。視覚刺激を提示する間に安定性データを収集するステップの次に、視覚刺激を提示しない間に安定性データを収集するステップを行う場合、又はその逆の場合、被検者からの驚愕反射反応を回避するために、視覚刺激を徐々に提示及び/又は除去することができ、又は、被検者のための訓練及び/又は検査の困難性を高めるために、視覚刺激を急に提示及び/又は除去することができる。方法300では、付加的又は代替的に、データ収集ステップ310、320、及び/又は330どうしの間に、遅延を設けることができる。これにより、例えば、各ステップ間の遷移期間に、被検者からデータを収集するのを回避することができる。
【0015】
ステップ310、320、及び330で収集する安定性データは、本明細書で説明するセンサーやシステムを含む、任意種のセンサー又はシステムにより、収集することができる。収集された安定性データを、ステップ340で比較することができる。ステップ340における比較結果は、例えば、ステップ330において被検者が視覚刺激を視覚化する間に収集された被検者の安定性データが、ステップ320において視覚刺激を提示する間に収集された安定性データよりも、ステップ310において視覚刺激を提示しない間に収集された安定性データのほうに、より似ていることを示し得る。この相違は、被検者が視覚化プロセスで苦戦していることを示し得る。かかる場合、より軽度の視覚刺激や被検者にとってより身近なシナリオを用いるなどして、付加的な視覚化練習を行うことができる。他の例では、ステップ310、320、及び330の全てにおいて収集されるデータどうしが、類似し得る。このことは、まず、被検者が刺激を視覚的に知覚することに苦戦したことを示し得るとともに、それゆえに、被検者が視覚刺激を正確に視覚化することに苦戦したことも示し得る。この場合、被検者にとって視力矯正装置及び/又は視力エクササイズなどの視力矯正アプローチが有利であるか否かを決定するために、さらなる調査を行うことができる。
【0016】
ステップ350では、ステップ310、320、及び/又は330で収集されたデータ、及び/又はステップ340における安定性データの比較結果を、記憶することができる。ステップ350では、任意種の記憶媒体、例えばハードドライブ、フラッシュメモリ、コンパクトディスク、DVD(登録商標)、テープ、及び他の任意種の媒体などにより、記憶することができる。ステップ350では、制御ユニット上で、又は遠隔に設けられたサーバー等の他の装置上で、記憶することができる。ステップ360では、ステップ310、320、及び/又は330において収集された安定性データ、及び/又はステップ340における安定性データの比較結果を、出力装置に出力することができる。ステップ360において用いる出力装置は、例えば、表示器、プリンター、被検者に視覚刺激を提示する表示装置、又は、個人により知覚されるデータの表現をレンダリングし得る他の任意種の装置を、備えることができる。
【0017】
ステップ370では、視覚化訓練プラン及び/又は視覚化改善プランを設計することができる。ステップ370では、ステップ310、320、及び/又は330で収集された安定性データ、及び/又はステップ340における安定性データの比較結果であって、ステップ350で記憶され又はステップ360で出力されたものを、使用することができる。ステップ370は、個人の検査及び/又は訓練を補助するトレーナー、コーチ、医療専門家、その他の個人により、又は被検者自身により、行うことができる。さらに、ステップ370の全部又は一部を、ステップ350で記憶され又はステップ360で出力されたデータを用いて、コンピュータデバイスにより行うことができる。ステップ370において用いるコンピュータデバイスは、本明細書で説明する制御ユニットと一体又は別体で構成することができる。個人が正確に知覚できない刺激を、当該個人は視覚化することができないことから、ステップ370で作成する視覚化訓練プランは、被検者の視覚能力を向上させるための装置及び/又は訓練を含むことができる。ステップ370で作成する視覚化訓練プランは、複雑性及び/又は困難性が徐々に高まる視覚化エクササイズを含むこともできる。
【0018】
図4は、本発明による他のシステム400を例示している。システム400は、被検者410の視覚能力及び/又は視覚化能力を検査及び/又は訓練するために、被検者410により使用することができる。図示するシステム400は、被検者410の挙動及び/又は応答を測定するために使用し得る様々な種類のデータ収集装置のうち一部を備えている。なお、図4に示すデータ収集装置は、本発明によるシステム及び方法に使用し得るデータ収集装置の一例に過ぎない。図2を参照して上述したように、台430、第1の感圧板432、及び第2の感圧板434を、データ収集装置として使用して、安定性データを記録することができる。同様に、図1を参照して上述したように、第1の慣性センサー450及び第2の慣性センサー452を、データ収集装置として使用して、安定性データを収集することができる。
【0019】
図4に示すように、図1及び図2を参照して上述したデータ収集装置に加えて、システム400における付加的なデータ収集装置を用いて、付加的なデータを収集することができる。例えば、第1の動き検知マーカー460及び第2の動き検知マーカー462などの動き検知マーカーを、動き検出カメラ480と併せて使用して、被検者410又は被検者410の部位の動きパターンを検出及び記録することができる。EEG検出器470又は同様の装置を用いて、被検者410の脳活動を、測定することができる。図示しないが、脳活動を測定するための他の装置及び方法、例えばポジトロン放射断層(PET: Positron Emission Tomography)スキャンなどを用いることができる。血圧モニタリング装置472は、被検者410の血圧を測定し、及び/又は、随意に、被検者410の心拍数を測定することができる。発汗モニタリング装置474は、被検者410の発汗速度及び発汗の種類に関するデータを記録することができる。EKG検出器476は、被検者410の心臓及び循環系の機能に関するデータを収集することができる。眼球運動モニタリング装置478は、例えば両眼がモニター420に表示される視覚刺激を追跡しているか否かを判断するために、被検者410の両眼の動きを記録することができる。図面では、眼球運動モニタリング装置478を被検者410から離れた位置に設けているが、本発明では、EOGや、眼鏡フレーム及び/又はゴーグル表示装置に設けられたモニタリング装置を含む、任意種の眼球運動モニタリング装置を、用いることができる。当然ながら、本発明の範囲を逸脱することなく、本明細書で説明するデータ収集装置以外のデータ収集装置を、用いることができる。
【0020】
図4は、被検者410に対して視覚刺激を表示する表示装置として使用し得る、モニター420をさらに示している。上述したように、表示装置は、図示するモニター420の代わりに、又はモニター420に加えて、他の任意種の表示装置、例えばモニター、スクリーン、ゴーグル、又は被検者410により知覚される視覚刺激を与え得る他の任意の装置などを、備えることができる。
【0021】
任意数のスポーツ関連のシナリオを、視覚刺激として個人に提示し、個人に想像させて、安定性データ及び眼球運動データなどのデータを取得することができる。例えば、サッカーゴールキーパーは、シュートされた防御すべき(実際の、又はシミュレートされた)ボールが向かってくるという視覚刺激が提示される間における安定性データ及び/又は眼球運動データと、ゴールキーパーがシュートを想像する間に収集されたデータとを比較することにより、自身のパフォーマンスを向上することができる。他の例において、バスケットボールのガードプレーヤーにとって、ボールをミッドコートラインの反対側に運び、他のプレーヤーの位置及び動きを評価し、パスをするというシナリオにおいて、例えば、ガードプレーヤーが早めにパスの終点地へ視線又は体を向けることにより、ディフェンスの合図を行っているか否かを評価するために、本発明を使用することは、有利となり得る。当然ながら、本発明では、スポーツでは一般的なシナリオ、スポーツでは稀なシナリオ、スポーツでは起こらないようなシナリオ、又は検査のためだけに考案されたシナリオの如何にかかわらず、他の任意種のシナリオを使用することができる。
【0022】
制御ユニット440は、ソフトウェアを実行して本発明を実現させる任意種のコンピュータデバイスを備えることができる。制御ユニット440は、モニター420などの表示装置と、上述したデータ収集装置などの様々なデータ収集装置との間で、1つ以上の無線リンク441を介して通信することができる。無線リンク441は、Bluetooth(登録商標)などの任意の無線通信プロトコルを使用することができる。互いに異なる装置が、それぞれ異なる無線通信プロトコルを使用することができる。当然ながら、本発明において、検査ユニット440と、データの収集又は刺激の表示に用いる様々な装置との間で、通信を可能にするために、ケーブル、ワイヤー、その他の任意種のリンクを使用し得ることは、当業者にとって明らかである。互いに異なる種類の接続手段を、それぞれ異なる装置又は表示器に使用することができる。
【0023】
制御ユニット440は、表示器420に視覚刺激を表示させない間、表示器420に視覚刺激を表示させる間、及び/又は被検者410が視覚刺激を視覚化する間、データ収集装置から、被検者410のパフォーマンスに関するデータを収集することができる。制御ユニット440は、一部又は全てのデータ収集装置により収集されたデータを、解析することができる。例えば、互いに異なる期間の間に収集されたデータどうしを比較することにより、データを解析することができる。代替的に(又は付加的に)、収集されたデータを、解析のために、制御ユニット440から、リンク443又は他の任意種の接続手段を介して、サーバー442又は他の遠隔装置に送信することができる。サーバー442、その他の遠隔装置は、任意の場所に設けることができ、制御ユニット440から遠く離れた場所に設けることができる。サーバー442は、制御ユニット440の代わりに、又は制御ユニット440に加えて、収集されたデータの比較及び/又は他の解析を行うことができる。トレーナー、コーチ、医療専門家、被検者410の検査及び/又は訓練を補助する他の第三者、又は被検者410自身に、収集されたデータ及び/又は収集されたデータの解析結果を、提示することができる。収集されたデータ、収集されたデータの比較結果、及び/又は収集されたデータの他の解析結果を、数値形式又はグラフィカル形式などの様々な形式で、提示することができ、任意の出力装置を用いて提示することができる。出力装置の例として、接続手段445を介して制御ユニット440に動作可能に接続された出力モニター444、接続手段447を介して制御ユニット440に動作可能に接続されたプリンター446、及び無線リンク441を介して制御ユニット440に動作可能に接続されたモニター420(又は他の任意の表示装置)があるが、これらに限られない。さらに、収集されたデータ及び/又は収集されたデータの解析結果を、後の表示及び/又は解析のために、任意種の記憶媒体(図示せず)に格納することができる。記憶媒体は、例えば、ハードドライブ、フラッシュドライブ、コンパクトディスク、DVD(登録商標)、フロッピー(登録商標)ディスク、テープドライブ、その他の任意種の記憶媒体を備えることができる。記憶媒体は、制御ユニット440、サーバー442、その他の任意の装置に設けることができ、別個の装置、他の装置と一体に設けられた装置、その他の装置に取り外し自在に装着された装置とすることができる。
【0024】
図5は、被検者の視覚能力及び/又は視覚化能力を検査及び/又は訓練する方法500を示す。ステップ510では、所定期間、視覚刺激を提示しない間、被検者からパフォーマンスデータを収集する。随意に、被検者が思考や映像などを頭から消すためのエクササイズを行った後に、ステップ510を行うことができる。ステップ520では、所定期間、視覚刺激を提示する間、被検者からパフォーマンスデータを収集する。ステップ520で提示する視覚刺激の強度は、場合によって変化させることができる。ステップ530では、所定期間、被検者が視覚刺激を視覚化する間、被検者からパフォーマンスデータを収集する。ステップ530では、例えば被検者による視覚化の困難性を高めるために、被検者に視覚刺激を提示することができ、又は、代替的に、被検者による視覚化の邪魔を回避するために、被検者に視覚刺激を提示しないようにすることができる。方法500は、任意の回数だけ繰り返し反復することができる。方法500を繰り返し行う場合、ステップ520で提示する視覚刺激の複雑性及び/又は強度を、方法500の反復時におけるステップ510、ステップ520、及び/又はステップ530で収集されたパフォーマンスデータに基づいて、変化させることができる。ステップ510、ステップ520、及び/又はステップ530で収集されるパフォーマンスデータは、例えば、安定性データ、生理学的データ、眼球運動データ、及び/又は本明細書で説明するような他の任意種のデータとすることができる。視覚刺激を提示する間にパフォーマンスデータを収集するステップの次に、視覚刺激を提示しない間にパフォーマンスデータを収集するステップを行う場合、又はその逆の場合、被検者からの驚愕反射反応を回避するために、視覚刺激を徐々に提示及び/又は除去することができ、又は、被検者のための検査及び/又は訓練の困難性を高めるために、視覚刺激を急に提示及び/又は除去することができる。方法500では、付加的に又は代替的に、データ収集ステップ510、520、及び/又は530どうしの間に、遅延を設けることができる。これにより、例えば、各ステップ間の遷移期間に、被検者からデータを収集することを回避することができる。
【0025】
ステップ540では、収集されたパフォーマンスデータを解析する。このステップは、ステップ510、ステップ520、及び/又はステップ530で収集されたパフォーマンスデータどうしを比較して、相違を同定することを、含むことができる。当該相違は、個人の視覚能力及び/又は視覚化能力の強み及び/弱みを表し得る。ステップ540における解析は、異なる種類の収集されたパフォーマンスデータどうしの比較を含むことができる。当該比較結果は、所定の被検者の視覚スキル及び/又は視覚化スキルが向上されたか否かを表し、又は被検者による当該スキルの訓練に関するフィードバックを提供し得る。ステップ550において、収集されたパフォーマンスデータ、及び/又は収集されたパフォーマンスデータの解析結果を、記憶することができる。ステップ550では、任意種の記憶媒体を用いることができる。ステップ550で用いる記憶媒体は、検査又は訓練中の被検者に近接して、又は当該被検者から遠隔に、設けることができる。ステップ560では、収集されたパフォーマンスデータ、収集されたパフォーマンスデータの比較結果、及び/又は収集されたパフォーマンスデータの他の解析結果を、出力することができる。ステップ560では、任意種の出力装置を用いることができ、任意の形式で出力することができる。ステップ570では、視覚化訓練プラン及び/又は視覚化改善プランを開発することができる。ステップ560は、(例えばトレーナー、コーチ、医療専門家、被検者自身などの)個人、コンピュータデバイス、又は、個人及び/又はコンピュータデバイスの任意の組み合わせにより、行うことができる。
【0026】
図6は、本発明による他のシステム600を示す。システム600は、被検者610の視覚能力及び/又は視覚化能力を検査及び/又は訓練するために使用することができる。図示するシステム600は、台630、第1の感圧板632、及び第2の感圧板634を用いて、被検者610から安定性データを収集する。ただし、システム600は、上述したあらゆるパフォーマンスデータ収集装置を用いて、安定性データ、生理学的データ、眼球運動データ、及び/又は他の任意種のデータを収集することができる。システム600は、表示装置としてモニター620をさらに備えることができる。上で詳述したように、表示装置は、任意種のモニター、スクリーン、ゴーグル、その他の表示装置とすることができる。検査ユニット640は、ソフトウェアを実行して本発明を実現する任意種のコンピュータデバイスを備えることができる。検査ユニット640は、モニター620などの表示装置に視覚刺激を表示させ、台630、第1の感圧板632、及び/又は第2の感圧板634などのデータ収集装置に安定性データなどのデータを収集させることができる。
【0027】
システム600は、1つ以上の第2の出力装置を用いて、被検者610に第2の刺激を与えることができる。第2の出力装置は、例えば、第1のスピーカー650及び/又は第2のスピーカー655などである。第2の刺激は、例えば、(明るい光、匂い、又は被検者610に与え得る他の任意の第2の刺激などの)音、身体的感覚、付加的な視覚刺激とすることができる。例えば、視覚的プロセス及び/又は視覚化プロセス中に、被検者610に第2の音の刺激与えて、被検者610のパフォーマンスに関する付加的なデータを得ることができる。第2の刺激は、被検者610にとって単なる邪魔として機能することができる。第2の刺激は、ユーザにより操作可能な入力装置を介した、被検者による付加的な入力を、要求し得る。当該付加的な入力は、例えば、ボタンの押下、音声認識システムにより検出される音声応答、ジェスチャー認識システムにより検出されるジェスチャー、又は入力装置により受信する他の任意の身体的応答などである。システム600は、被検者による第2の刺激に対する応答、及び/又は応答が適切であるか否かの情報を、安定性データ、生理学的データ、その他のデータの一部として、収集することができる。
【0028】
システム600により与える第2の刺激に対して適切な応答は、刺激自体に依って異なることができる。例えば、被検者610に対して、音が発生する方向に向けて前屈するように指示し、及び/又は特定の音のみに応答して他の音には応答しないように指示することができる。音に加えて、第2の刺激は、図6に示すように、例えば、台630、第1の感圧板632、及び/又は第2の感圧板634を傾動させることにより、被検者610に向けて空気を吹くことにより、様々な物理的装置を被検者610に接触させることにより、被検者610により知覚され得る光を点滅させることにより、被検者610により知覚され得る匂いを発生させることにより、又は被検者610により知覚され得る他の任意種の刺激を発生させることにより、与えることができる。第2の刺激は、被検者610に視覚刺激を提示しない間、被検者610に視覚刺激を提示する間、及び/又は被検者610が視覚刺激を視覚化する間に、与えることができる。本発明では、表示装置、データ収集装置、出力装置、入力装置、第2の刺激出力装置、記憶装置、コンピュータデバイス、及び様々なコンポーネント間の接続手段を、図6に示すものと異ならせることができる。
【0029】
図7は、本発明による個人の視覚化能力を検査及び/又は訓練する他の方法700を示す。ステップ710において、所定期間に視覚刺激を提示しない間、被検者からパフォーマンスデータを収集することができる。随意に、被検者が思考や映像などを頭から消すためのエクササイズを行った後に、ステップ710を行うことができる。ステップ720では、所定期間、被検者に視覚刺激を提示し、当該所定期間のうち少なくとも一部の期間、被検者に第2の刺激を与える間に、被検者からパフォーマンスデータを収集する。ステップ730では、所定期間、被検者に視覚刺激を提示する間、被検者からパフォーマンスデータを収集する。ステップ740では、所定期間、被検者に視覚刺激を提示し、当該所定期間のうち少なくとも一部の期間、被検者に第2の刺激を与える間、被検者からパフォーマンスデータを収集する。ステップ750では、所定期間、被検者が視覚刺激を視覚化する間、被検者からパフォーマンスデータを収集する。ステップ760では、所定期間、被検者が視覚刺激を視覚化する間、当該所定期間のうち少なくとも一部の期間、被検者に第2の刺激を与える間、被検者からパフォーマンスデータを収集する。ステップ710、ステップ720、ステップ730、ステップ740、ステップ750、及び/又はステップ760で収集するパフォーマンスデータは、任意種の安定性データ、生理学的データ、眼球運動データ、刺激に対する1つ以上のユーザにより操作可能な入力装置を用いた応答、及び/又は他種のデータ、例えば本明細書で説明する種類のデータなどを、含むことができる。視覚刺激を提示する間にパフォーマンスデータを収集するステップの次に、視覚刺激を提示しない間にパフォーマンスデータを収集するステップを行う場合、又はその逆の場合、被検者からの驚愕反射反応を回避するために、視覚刺激を徐々に提示及び/又は除去することができ、又は、被検者のための訓練及び/又は検査の困難性を高めるために、視覚刺激を急に提示及び/又は除去することができる。方法700では、付加的に又は代替的に、データ収集ステップどうしの間に、遅延を設けることができる。これにより、例えば、各ステップ間の遷移期間に、被検者からデータを収集することを回避することができる。
【0030】
ステップ770では、収集されたパフォーマンスデータを解析することができる。ステップ770における解析は、互いに異なる期間及び/又は期間の一部において収集されたパフォーマンスデータどうしを比較して、個人の視覚スキル及び/又は視覚化スキルの相対的な強み及び/又は弱みを同定することを、含むことができる。ステップ770の解析結果を用いて、後で方法700を反復する際に提示する視覚刺激の複雑性及び/又は強度を、調節することができる。ステップ780では、収集されたパフォーマンスデータ、及び/又は収集されたパフォーマンスデータの解析結果を、記憶することができる。ステップ780では、任意種の記憶媒体を用いることができる。ステップ790では、収集されたパフォーマンスデータ、及び/又は収集されたパフォーマンスデータの解析結果を、出力することができる。ステップ790では、任意種の出力装置を用いることができ、任意の形式で出力することができる。ステップ795では、(トレーナー、コーチ、医療専門家、被検者自身などの)個人、コンピュータデバイス、又は、個人及び/又はコンピュータデバイスの任意の組み合わせにより、視覚化訓練プラン及び/又は視覚化改善プランを、設計することができる。視覚化訓練プラン及び/又は視覚化改善プランは、個人の視覚能力を向上させるための装置及び/又は訓練を含むことができる。さらに、視覚化訓練プラン及び/又は視覚化改善プランは、困難性及び/又は複雑性が徐々に高まる視覚化課題を含むことができる。当然ながら、方法700のステップどうしを、様々な順番で、様々な回数だけ行うことができ、方法700の各ステップを、部分的又は全体的に省略することができる。
【0031】
図8は、本発明による個人の視覚化スキルを検査及び/又は訓練する他の方法800を示す。ステップ810では、所定期間、視覚刺激を提示しない間に、被検者からパフォーマンスデータを収集する。随意に、被検者が思考や映像などを頭から消すためのエクササイズを行った後、ステップ810を行うことができる。ステップ820では、所定期間、視覚刺激を提示せず、当該所定期間のうち少なくとも一部の期間、被検者が精神活動を行う間、被検者からパフォーマンスデータを収集することができる。ステップ830では、所定期間、被検者に視覚刺激を提示する間、被検者からパフォーマンスデータを収集することができる。ステップ840では、所定期間、被検者に視覚刺激を提示し、当該所定時間のうち少なくとも一部の期間、被検者が精神活動を行う間、被検者からパフォーマンスデータを収集することができる。ステップ850では、所定期間、被検者が視覚刺激を視覚化する間、被検者からパフォーマンスデータを収集することができる。ステップ860では、所定期間、被検者が視覚刺激を視覚化し、当該所定期間のうち少なくとも一部の期間、被検者が精神活動を行う間、被検者からパフォーマンスデータを収集することができる。ステップ820、ステップ840、及び/又はステップ860で行われる精神活動は、例えば、数学問題を解くこと、質問に回答すること、又は、被検者による精神的努力を要する他の任意の活動とすることができる。視覚刺激を提示する間にパフォーマンスデータを収集するステップの次に、視覚刺激を提示しない間にパフォーマンスデータを収集するステップを行う場合、又はその逆の場合、被検者からの驚愕反射反応を回避するために、視覚刺激を徐々に提示及び/又は除去することができ、又は、訓練及び/又は検査の困難性を高めるために、視覚刺激を急に提示及び/又は除去することができる。方法800では、付加的又は代替的に、パフォーマンスデータ収集ステップどうしの間に、遅延を設けることができる。これにより、各ステップ間の遷移期間に、被検者からパフォーマンスデータを収集することを回避することができる。
【0032】
ステップ810、ステップ820、ステップ830、ステップ840、ステップ850、及び/又はステップ860で収集するパフォーマンスデータは、例えば、安定性データ、生理学的データ、眼球運動データ、(数学問題の解や質問に対する回答などの)精神活動の結果、被検者による1つ以上のユーザが操作可能な入力装置を用いた入力、及び/又は本明細書で説明するような他の任意のデータとすることができる。ステップ870では、収集されたデータを解析する。ステップ870における解析は、例えば、互いに異なる期間又は期間の部分において収集されたパフォーマンスデータどうしを比較することを含むことができる。ステップ820、840、及び860で行われる精神活動は、被検者が、視覚刺激の知覚及び/又は視覚化を越える付加的な精神的処理をすることを要する、任意の活動とすることができる。例えば、被検者に対して、所定の数から逆方向にカウントするように指示し、算数問題を解くように指示し、任意種のトピックに関する質問に対して回答するように指示し、又は、ステップ820、840、及び860の一環として精神活動を行うように指示することができる。
【0033】
ステップ880では、収集されたパフォーマンスデータ、及び/又は収集されたデータの解析結果を、記憶することができる。ステップ880では、任意種の記憶媒体を用いることができる。ステップ880での解析結果を用いて、その後に方法800を反復する際に提示する視覚刺激の複雑性及び/又は強度を、調節することができる。ステップ890では、収集されたパフォーマンスデータ、及び/又は収集されたパフォーマンスデータの解析結果を、出力することができる。ステップ890では、任意種の出力装置を用いることができ、任意の形式で出力することができる。ステップ895では、(トレーナー、コーチ、医療専門家、被検者自身などの)個人、コンピュータデバイス、又は、個人及び/又はコンピュータデバイスの任意の組み合わせにより、視覚化訓練プラン及び/又は視覚化改善プランを、設計することができる。視覚化訓練プラン及び/又は視覚化改善プランは、個人の視覚能力を向上させるための装置及び/又は訓練を含むことができる。さらに、視覚化訓練プラン及び/又は視覚化改善プランは、困難性及び/又は複雑性が徐々に高まる視覚化課題を含むことができる。
【0034】
本明細書で説明し図面に示したシステム及び方法に対して、様々な変形例が可能である。例えば、検査及び/又は訓練中に、被検者のパフォーマンスに関するあらゆる種類のデータを収集することができる。収集されるデータの種類や、かかるデータの収集に用いる装置は、本明細書で説明するものに必ずしも限られない。本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書で説明する方法の各ステップを、省略することができる。例えば、本発明の範囲から逸脱することなく、視覚刺激を提示しない間にパフォーマンスデータを収集するステップを、省略することができる。本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書で説明する様々な方法のステップどうしを、異なる順番で行うことができる。本明細書で説明する様々な方法におけるステップどうしを組み合わせて、単一の方法で行うことができる。例えば、方法700における第2の刺激を使用するステップと、方法800における精神活動を行うステップとを、組み合わせることができる。同様に、本明細書で説明する様々なシステムを組み合わせて、本明細書で説明するシステムとは異なるシステムを構成することができる。本明細書で説明する検査ユニットが、1つ以上の装置を備え得ることは、明らかである。例えば、検査及び/又は訓練中に被検者に対して行う1つ以上の測定において、データを個別に収集することができる。また、その後に、当該データをコンピュータ又は他の装置に入力したり、当該データをトレーナー又は臨床医により評価させることができる。かかる変形例及び他の変形例は、当業者にとって明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個人の安定性を検査又は訓練するシステムにおいて、
第1の期間の間、前記個人に視覚刺激を与える、表示装置と、
前記表示装置が前記個人に視覚刺激を与える前記第1の期間と、前記第1の期間とは同じ広がりを持たない第2の期間とにおいて、前記個人のバランスを測定する、少なくとも1つの安定性測定装置と、
を備えたシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の個人の安定性を検査又は訓練するシステムにおいて、
前記少なくとも1つの安定性測定装置は、少なくとも1つの感圧面を備え、
前記第1の期間と前記第2の期間とにおいて、前記個人が、前記少なくとも1つの感圧面の上に立つ、システム。
【請求項3】
請求項1に記載の個人の安定性を検査又は訓練するシステムにおいて、
前記少なくとも1つの安定性測定装置は、複数の慣性センサーを備え、
前記第1の期間と前記第2の期間とにおいて、前記複数の慣性センサーが、前記個人に取り付けられる、システム。
【請求項4】
請求項1に記載の個人の安定性を検査又は訓練するシステムにおいて、
前記第2の期間の間、前記表示装置は、前記個人に視覚刺激を与えず、
前記第2の期間は、前記第1の期間の後にある、システム。
【請求項5】
請求項4に記載の個人の安定性を検査又は訓練するシステムにおいて、
前記少なくとも1つの安定性測定装置は、さらに、前記第1の期間とは同じ広がりを持たず、前記第2の期間とも同じ広がりを持たない第3の期間の間、前記個人の安定性を測定し、
前記第3の期間は、前記第1の期間の前にあり、
前記表示装置は、前記第3の期間の間、前記個人に視覚刺激を与えない、システム。
【請求項6】
請求項1に記載の個人の安定性を検査又は訓練するシステムにおいて、
前記表示装置は、表示スクリーンを備えている、システム。
【請求項7】
請求項1に記載の個人の安定性を検査又は訓練するシステムにおいて、
前記表示装置は、表示ゴーグルを備えている、システム。
【請求項8】
請求項1に記載の個人の安定性を検査又は訓練するシステムにおいて、
前記表示装置により表示される視覚刺激は、活動をシミュレートする、システム。
【請求項9】
個人の視覚化能力を検査又は訓練する方法において、
前記個人が表示装置による視覚刺激を受けている間に、前記個人のパフォーマンスを測定して、第1組のパフォーマンスデータを取得するステップと、
前記個人が表示装置による前記視覚刺激を受けることなく、前記個人が前記視覚刺激を視覚化している間に、前記個人のパフォーマンスを測定して、第2組のパフォーマンスデータを取得するステップと、
前記第1組のパフォーマンスデータと前記第2組のパフォーマンスデータとを比較するステップとを含む、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の個人の視覚化能力を検査又は訓練する方法において、
前記パフォーマンスデータは、安定性データを含む、方法。
【請求項11】
請求項9に記載の個人の視覚化能力を検査又は訓練する方法において、
前記パフォーマンスデータは、眼球運動データを含む、方法。
【請求項12】
請求項9に記載の個人の視覚化能力を検査又は訓練する方法において、
前記パフォーマンスデータは、生理学的データを含む、方法。
【請求項13】
請求項9に記載の個人の視覚化能力を検査又は訓練する方法において、
前記パフォーマンスデータは、安定性データ及び眼球運動データを含む、方法。
【請求項14】
請求項9に記載の個人の視覚化能力を検査又は訓練する方法において、
前記パフォーマンスデータは、安定性データ及び生理学的データを含む、方法。
【請求項15】
請求項9に記載の個人の視覚化能力を検査又は訓練する方法において、
前記パフォーマンスデータは、眼球運動データ及び生理学的データを含む、方法。
【請求項16】
請求項9に記載の個人の視覚化能力を検査又は訓練する方法において、
前記パフォーマンスデータは、安定性データ、眼球運動データ、及び生理学的データを含む、方法。
【請求項17】
請求項9に記載の個人の視覚化能力を検査又は訓練する方法において、
前記個人に視覚刺激を与える前記表示装置は、表示スクリーンを備えている、方法。
【請求項18】
請求項9に記載の個人の視覚化能力を検査又は訓練する方法において、
前記個人に視覚刺激を与える前記表示装置は、表示ゴーグルを備えている、方法。
【請求項19】
請求項9に記載の個人の視覚化能力を検査又は訓練する方法において、
前記個人が受ける前記視覚刺激は、シミュレートされた活動を含む、方法。
【請求項20】
請求項9に記載の個人の視覚化能力を検査又は訓練する方法において、
前記個人のパフォーマンスは、少なくとも1つの感圧面を用いて、前記個人が前記感圧面上に立っている間に、前記個人により加えられる圧力を検出することにより、測定する、方法。
【請求項21】
請求項9に記載の個人の視覚化能力を検査又は訓練する方法において、
前記個人のパフォーマンスは、少なくとも1つの慣性センサーを用いて、前記慣性センサーを前記個人に取り付けた状態で、前記個人が立っている間に、前記個人の動きを測定することにより、測定する、方法。
【請求項22】
請求項9に記載の個人の視覚化能力を検査又は訓練する方法において、
前記個人のパフォーマンスは、眼球運動モニタリングシステムを用いて、前記個人の眼球運動を検出することにより、測定する、方法。
【請求項23】
請求項9に記載の個人の視覚化能力を検査又は訓練する方法において、
前記個人のパフォーマンスは、眼電図を用いて、前記個人の眼球運動を検出することにより、測定する、方法。
【請求項24】
個人の視覚化を検査又は訓練するシステムにおいて、
制御ユニットと、
前記制御ユニットに動作可能に接続され、前記制御ユニットによる指示の通りに、前記個人に視覚刺激を提示する、表示装置と、
前記制御ユニットに動作可能に接続され、前記制御ユニットによる指示の通りに、前記個人からデータを収集する、少なくとも1つのデータ収集装置とを備え、
前記制御ユニットは、
前記表示装置に視覚刺激を表示させている間に、前記少なくとも1つのデータ収集装置に第1組のデータを収集させ、
前記表示装置に視覚刺激を表示させていない間に、前記少なくとも1つのデータ収集装置に第2組のデータを収集させる、システム。
【請求項25】
請求項24に記載の個人の視覚化を検査又は訓練するシステムにおいて、
前記制御ユニットは、さらに、前記個人が視覚刺激を視覚化している間に、前記少なくとも1つのデータ収集装置にデータを収集させる、システム。
【請求項26】
請求項24に記載の個人の視覚化を検査又は訓練するシステムにおいて、
前記制御ユニットに動作可能に接続され、前記制御ユニットによる指示の通りに、前記個人に第2の刺激を与える、第2の出力装置をさらに備えている、システム。
【請求項27】
請求項26に記載の個人の視覚化を検査又は訓練するシステムにおいて、
前記制御ユニットに動作可能に接続され、前記第2の刺激に応じた前記個人からの入力を受け取る、入力装置をさらに備えている、システム。
【請求項28】
請求項26に記載の個人の視覚化を検査又は訓練するシステムにおいて、
前記制御ユニットは、さらに、前記個人が視覚刺激を視覚化している間に、前記少なくとも1つのデータ収集装置にデータを収集させる、システム。
【請求項29】
請求項26に記載の個人の視覚化を検査又は訓練するシステムにおいて、
前記制御ユニットは、さらに、
前記第2の出力装置によって前記第2の刺激を与えている間に、前記少なくとも1つのデータ収集装置に第3組のデータを収集させ、
前記第2の出力装置によって前記第2の刺激を与えていない間に、前記少なくとも1つのデータ収集装置に第4組のデータを収集させる、システム。
【請求項30】
請求項24に記載の個人の視覚化を検査又は訓練するシステムにおいて、
前記少なくとも1つのデータ収集装置は、少なくとも1つの安定性データ収集装置を備えている、システム。
【請求項31】
請求項24に記載の個人の視覚化を検査又は訓練するシステムにおいて、
前記少なくとも1つのデータ収集装置は、少なくとも1つの生理学的データ収集装置を備えている、システム。
【請求項32】
請求項24に記載の個人の視覚化を検査又は訓練するシステムにおいて、
前記少なくとも1つのデータ収集装置は、
少なくとも1つの安定性データ収集装置と、
少なくとも1つの生理学的データ収集装置と、
を備えている、システム。
【請求項33】
被検者の視覚化を検査又は訓練する方法において、
第1の期間の間、前記個人が視覚刺激を受けている間に、前記個人からデータを収集するステップと、
第2の期間の間、前記個人が視覚刺激を視覚化している間に、前記個人からデータを収集するステップと、
前記収集されたデータを解析するステップと、
を含む方法。
【請求項34】
請求項33に記載の被検者の視覚化を検査又は訓練する方法において、
前記収集されたデータを、少なくとも1つの出力装置に出力するステップをさらに含む、方法。
【請求項35】
請求項33に記載の被検者の視覚化を検査又は訓練する方法において、
前記収集されたデータを、記憶媒体に記憶するステップをさらに含む、方法。
【請求項36】
請求項33に記載の被検者の視覚化を検査又は訓練する方法において、
前記収集されたデータの解析結果を、少なくとも1つの出力装置に出力するステップをさらに含む、方法。
【請求項37】
請求項33に記載の被検者の視覚化を検査又は訓練する方法において、
前記収集されたデータの解析結果を、記憶媒体に記憶するステップをさらに含む、方法。
【請求項38】
請求項33に記載の被検者の視覚化を検査又は訓練する方法において、
前記第1の期間のうち少なくとも一部の期間、前記個人に第2の刺激を与えるステップと、
前記第2の期間のうち少なくとも一部の期間、前記個人に第2の刺激を与えるステップと、
を含む方法。
【請求項39】
請求項33に記載の被検者の視覚化を検査又は訓練する方法において、
前記第1の期間のうち少なくとも一部の期間、前記個人による精神活動を要求するステップと、
前記第2の期間のうち少なくとも一部の期間、前記個人による精神活動を要求するステップと、
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−532695(P2012−532695A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519772(P2012−519772)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/041564
【国際公開番号】WO2011/006090
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(505424859)ナイキ インターナショナル リミテッド (249)
【Fターム(参考)】