説明

視覚表示システム及びビデオ信号の表示方法

ビデオ信号(V)を表示する表示パネル(DP)、周囲照明または周辺照明(LS)を提供するための少なくとも1つの光源装置(LU)、外部ユーザー較正信号を受信するためのユーザーインターフェース(UI)、及びユーザーインターフェース(UI)によって受信した較正信号に応じて光源装置(LU)の色及び/または輝度を制御する光源制御装置(LC)を備えたビデオ表示システム(100)を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視覚表示システム、及びビデオ信号を表示する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
視聴者に画像を提示する装置は周知であり、テレビ受信機及びコンピュータモニタを含む。テレビジョンは、現在の2、3例を挙げれば、陰極線管、画素アレイを用いた液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、発光ダイオード(LED)ディスプレイを用いて実現されている。テレビ受信機については、高精細テレビジョン(HDTV)番組コンテンツに適合した比較的広大なスクリーンに対する要望が増大している。しかし、比較的大型のテレビ受信機用ディスプレイは、特に陰極線管技術を用いて実現すると、製造するのが高価になり、大容積になりがちである。視聴者は、視野の周辺部では、視野の中心部に比べて微細なものを区別できにくいので、向上した視覚体験を視聴者に提供するために、スクリーン解像度及び表示サイズを共に増加させる必要はないものと考えられてきた。従って、視聴者にとっての向上した視覚体験は、周囲照明を用いることによって提供され、モニタ上に提示される画像に対して動的に相補的な照明の周囲ハローをモニタの周囲に与えることによって、提供することができる。
【0003】
こうした周囲照明は、図2に概略的に示すように、モニタ20の周囲に配置した光源10、あるいは、視聴者50に対してモニタ20の背後の領域40を照らすための後部照明30によって提供することができる。後部照明は、視聴者50が見ると、モニタ20の周囲に照明のハローを与えるように指向される。モニタ20の周囲に配置した光源10の使用は、全体の物理的サイズ、従ってモニタ20用の筐体全体の容積を増加させるのに対し、後部照明は、モニタのサイズを大幅に増加させることなしに実現することができる。しかし、周囲照明、即ち照明のハローを発生するための後部照明の使用は、光反射面をモニタ20の背後に配置することを必要とする。後部照明の表面は、モニタ20に装着した白色の反射パネル、例えば回転可能に装着した折り畳みパネルまたは着脱可能パネルとして、あるいは、より単純には、既存の壁または同様な既存の面に近接してモニタ20を据え付けまたは配置することによって、有益に実現することができる。しかし、こうした既存の面は、視聴者がモニタ20を配置すべく選定する場所次第では予測不能な色であり得るし、こうした予測不能な色は、後部照明30によって達成される周囲照明の色及び品質に悪影響する可能性がある。さらに、モニタ20周囲の環境照明、即ち室内照明及び/または太陽光から生じる環境照明は、視聴者50によって知覚される周囲照明の質に悪影響し得る。従来の解決法は、単に、モニタ20を白色面に近接して据え付けることを要求するか、あるいは、後部照明30を視聴者50に向けて反射させるための展開可能な白色面をモニタ20に設けることである。
【0004】
特許文献1(国際公開第2005/062608号パンフレット)は、画像表示領域を部分的に包囲する複数の照明光源を有する視覚表示システムを開示している。これらの照明光源は、画像表示スクリーン上に表示すべきビデオ信号により制御することができる。
【0005】
特許文献2(国際公開第2006/003624号パンフレット)は、周辺光源による放光用にレンダリングした色空間内で符号化したビデオコンテンツを抽出するための方法を開示している。
【0006】
上述したテレビジョン(TV)システムは一般に、リビングルーム内または会議室内に配置される。このシステムは、ビデオ信号を表示するためのLCD(液晶表示)パネルまたはプラズマパネルを有することができる。周辺光源または周囲光源を用いて、色を有する光を例えばリビングルーム内の壁面に投射する。壁面に投射する色は、表示パネル上に表示される色への延長を表現することを想定する。なお、リビングルームの壁面は塗装されることが多いので、壁面は必ずしも最適な白色を有しない。さらに、壁面上に色を投射するために使用する光源は、例えばLEDを用いると非常に狭いスペクトルしか有することができず、このため壁面から反射した色は、同じ色域を有するCCFL(冷陰極管)ランプとは異なる色を有することがあり、アーティファクトが強調され得る。TVシステムの光源に加えて、リビングルーム内に存在する他の光源も、テレビジョンシステムの背後の壁面の反射に寄与し得る。さらに、周辺光ランプの輝度並びに色は、時間と共にゆらぎ得る。さらに、表示パネルまたはバックライトパネルの輝度及び色も時間と共にゆらぎ得る。最後に、周辺光源を有するTVシステムの環境は、異なる修飾、壁面内の異なる装飾、角度/色、天井の高さ等により、対称に修飾されていない壁面の前に配置され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2005/062608号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2006/003624号パンフレット
【発明の概要】
【0008】
従って、本発明の目的は、視覚表示システムの異なる条件及び環境を考慮に入れることのできる視覚表示システムを提供することにある。
【0009】
この目的は、請求項1に記載の視覚表示システム及び請求項5に記載の方法により解決される。
【0010】
従って、ビデオ信号を表示する表示パネルと、周囲照明または周辺照明を提供するための少なくとも1つの光源装置と、外部ユーザー較正信号を受信するためのユーザーインターフェースと、このユーザーインターフェースによって受信した較正信号に応じて光源装置の色及び/または輝度を制御する光源制御装置とを備えたビデオ表示システムが提供される。
【0011】
本発明の1つの様態によれば、このビデオ表示システムはさらに、少なくとも1つのテストパッチを発生し、このテストパッチを表示パネルに転送して表示パネル上に表示させるテストパッチ発生器を備えている。上記ユーザーインターフェースは、少なくとも1つのテストパッチの表示に応答して、上記外部ユーザー較正信号を受信するように構成されている。
【0012】
本発明は、ビデオ信号をビデオ表示システム上に表示する方法にも関するものである。ビデオ信号は表示パネル上に表示される。少なくとも1つの光源装置が、周囲照明または周辺照明を提供する。外部ユーザー較正信号は、ユーザーインターフェースを経由して受信される。光源装置の色及び/または輝度は、ユーザーインターフェースによって受信した較正信号に応じて、光源制御装置によって制御される。
【0013】
本発明は、周辺光源の輝度及び色をユーザーが較正することのできる、表示装置及び周辺光源を有するビデオ表示システムを提供するための思想に関係する。ユーザーが、ビデオ表示システムの実際の環境に応じて周辺光源を調整することができるので、周辺光源の設置及び制御の最適な結果を達成することができる。ビデオ表示システムの表示装置及び周辺光源の知覚は、カーテンの開閉、壁面及び窓の位置、並びに周辺光源の色の変化及び反射、及びこの色の壁面上の反射のような環境条件に依存する。
【0014】
本発明の1つの様態によれば、対話型ユーザー・フィードバックを用いて、周辺光背景照明の色及び輝度設定を較正して、TVシステムの背後の壁に投射される光の最適に知覚される色反射を得る。この色反射は、表示パネルの知覚色と視覚的に調和する。色及び輝度設定の較正は、リモートコントローラ(遠隔操作器)、即ち周辺光源の色及び/または輝度制御をサポートするTVユーザーインターフェースによって実行することができる。この較正によって、周辺光源の色及び輝度を、表示パネルの知覚色に視覚的に調和するように調整することができる。
【0015】
以下、本発明の実施例及び利点を、図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施例によるビデオ表示システムの環境の例を示す図である。
【図2】従来技術による周囲照明を有するビデオ表示システムの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に、第1実施例によるビデオ表示システムの環境の例を示す。第1実施例によるビデオ表示システム100は、ユーザーインターフェースUI、表示パネルDP、光源装置LU、テストパッチ発生器TPG、及び光源制御装置LCを備えている。表示パネルDPを用いてビデオ信号VS表示しながら、光源装置LUを用いて、周囲照明または周辺照明LSを発生し、周囲照明または周辺照明LSは壁面Wによって反射されてユーザー1000によって知覚される。リモートコントローラRCを設けて、表示システムのユーザーインターフェースとの(無線)通信を可能にすることができる。リモートコントローラRCに入力し、ユーザーインターフェースUIによって受信された命令により、表示パネルDP並びに光源装置LUをユーザー1000が制御または較正することができる。光源制御装置LCを用いて、光源装置LUの色及び輝度を制御する。
【0018】
従って、ユーザー1000は、表示パネルDP上に表示されたビデオ信号VS並びに壁Wから反射した周辺光または周囲光LSを知覚する。いくつかの周辺条件が、壁面W上の色及び輝度並びに反射に影響し得るので、壁面Wで反射した反射光LSの色並びに輝度は、光源装置LUの色彩及び輝度と異なり得る。ユーザー1000は、表示パネルDP上に表示された色及び輝度、並びに壁面から反射した光LSの色及び輝度を知覚し、その結果をリモートコントローラRCによって、ビデオ表示システム100内のユーザーインターフェースUIに転送することができる。
【0019】
表示パネルDPの色及び輝度と比べた光源装置LUの色及び輝度の較正を促進するために、テストパッチ発生器TPGをビデオ表示システム100内に設けることができ、テストパッチ生成器TPGは、テストパッチVを表示パネルDPに対して出力して、このテストパッチを表示させる。光源装置LUはこれに応じて、対応する周囲照明または周辺照明を表示する。リモートコントローラRC及びユーザーインターフェースUIによって、ユーザー1000は、表示パネルDP上に表示されたテストパッチに応じて、光源装置LUの輝度及び色を調整することができる。テストパッチは、赤色、緑色、青色及び白色のような均一色を有することができる。その代わりに、あるいはこれに加えて、テストパッチはいくつかの色を有することもでき、及び/または、異なる色を有するいくつかのテストパッチの列で構成することもできる。ユーザーは、リモートコントローラ及びユーザーインターフェースによって、光源装置LUの輝度及び色を、表示パネルDP上に表示されているテストパッチの色及び輝度に調和するように調整することができる。ユーザーは決定した光源装置LUの色及び輝度の設定は表示システム内に記憶することができ、これにより、ビデオ表示システムの通常動作中にこれらの設定を再利用できる。従って、これらのユーザー設定は通常動作の設定として用いることができ、これにより、光源装置LUの色及び輝度の較正を達成することができる。
【0020】
本発明によれば、周囲照明または周辺照明をサポートするための光源装置LUによって発生され壁面によって反射した光LSが、壁面の色または幾何学的形状により、あるいは他の何らかの条件により、不所望または誤った色または輝度を有しても、壁面Wによって反射した光LSが適正な色彩及び適正な輝度を有するまで、光源装置LUの色及び輝度を調整することができる。表示パネルDP上に表示されるテストパッチを生成することによって、ユーザーは光源装置LUの色及び輝度を調整するために基準を設定することができる。ユーザー特有の設定はビデオ表示システム内に記憶することができ、これにより、ビデオ表示システムの通常動作中にこれらの設定を再利用することができる。第1実施例による光源装置LUは、CCFLランプまたはLEDを備えることができる。上述したビデオ表示システムによって、ユーザー・フィードバックループ(光源装置LU、壁面W、ユーザー1000、リモートコントローラRC、ユーザーインターフェースUI、及び光源制御装置LC)を設けることができる。こうしたユーザー・フィードバックループは、光源装置LUの色及び輝度の制御を強化することができる。
【0021】
上述した本発明の基本的なアイデアを実装するために、ユーザーインターフェースUIを修正する必要がある。このことは例えば、ユーザーインターフェースUIのソフトウェアを修正することによって実行することができる。さらに、光源制御装置LCが光源装置LUを制御することができるように、光源装置LUの制御を修正する必要がある。
【0022】
ユーザーインターフェースは(随意的に)、較正動作中のみに、即ちテストパッチを発生して表示パネル上に表示する際のみに動作させることができる。較正処理を終了した後に、光源装置の設定をビデオ表示システム内の不揮発性メモリーに記憶することができ、これにより、これらの設定を再利用することができる。この較正動作は例えば、ユーザーがリモートコントローラ及びユーザーインターフェースを介して開始することができる。あるいはまた、この較正処理は、ビデオ表示システムによって規則的間隔で起動することができる。
【0023】
本発明によれば、少量の追加的ハードウェア/ソフトウェアで、改善されたビデオ表示システムを提供することができる。
【0024】
なお、上述した実施例は、本発明を限定するものではなく例示するものであり、当業者は、特許請求の範囲を逸脱することなしに、多くの他の実施形態を設計することが可能である。「備える」等は、請求項中に記載した以外の要素またはステップの存在を排除するものではない。各要素は複数存在し得る。複数の手段を挙げた装置の請求項では、これらの手段のいくつかは、ハードウェアの同一アイテムによって実現することができる。単に、互いに異なる従属請求項中に特定方策が挙げられていることは、これらの方策の組合せを有利に用いることができないことを示すものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビデオ信号を表示する表示パネルと、
周囲照明または周辺照明を提供するための少なくとも1つの光源装置と、
外部ユーザー較正信号を受信するためのユーザーインターフェースと、
前記ユーザーインターフェースによって受信した前記較正信号に応じて、前記光源装置の色彩及び/または輝度を制御する光源制御装置と
を備えていることを特徴とするビデオ表示システム。
【請求項2】
請求項1に記載のビデオ表示システムにおいて、
さらに、
少なくとも1つのテストパッチを発生し、このテストパッチを前記表示パネルに転送して前記表示パネル上に表示させるためのテストパッチ発生器を備え、
前記ユーザーインターフェースが、前記少なくとも1つのテストパッチの表示に応答して、前記外部ユーザー較正信号を受信するように構成されていることを特徴とするビデオ表示システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載のビデオ表示システムにおいて、
較正動作中に、前記ユーザーインターフェースを動作させて前記外部ユーザー較正信号を受信し、前記較正動作中に、前記テストパッチ発生器を起動して少なくとも1つのテストパッチを発生し、このテストパッチを前記表示パネルに転送することを特徴とするビデオ表示システム。
【請求項4】
請求項1、2または3のいずれかに記載のビデオ表示システムにおいて、
前記受信した外部ユーザー較正信号に基づく前記光源装置の設定を、不揮発性メモリーに記憶することを特徴とするビデオ表示システム。
【請求項5】
ビデオ信号をビデオ表示システム上に表示する方法において、
ビデオ信号を表示パネル上に表示するステップと、
少なくとも1つの光源装置によって周囲照明または周辺照明を提供するステップと、
ユーザーインターフェースによって外部ユーザー較正信号を受信するステップと、
前記ユーザーインターフェースによって受信した前記外部ユーザー較正信号に応じて、前記光源装置の色及び/または輝度を制御するステップと
を備えていることを特徴とするビデオ信号の表示方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−519816(P2010−519816A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549875(P2009−549875)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【国際出願番号】PCT/IB2008/050466
【国際公開番号】WO2008/099318
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(507219491)エヌエックスピー ビー ヴィ (657)
【氏名又は名称原語表記】NXP B.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 60, NL−5656 AG Eindhoven, Netherlands
【Fターム(参考)】