説明

視野角向上フィルム、視野角向上フィルム積層体及び液晶表示装置

【課題】 色調変化を抑制した視野角改善効果と正面輝度低下の抑制を高度なレベルで両立させた、液晶表示装置の液晶層より観察者側に設置される視野角向上フィルムを提供すること。
【解決手段】 主として二種の非相溶性のポリオレフィン系樹脂よりなる光拡散層の少なくとも片面に、主として極性基を含有したポリオレフィン樹脂よりなる接着改良層が最表面になるように積層された多層光拡散フィルムであって、以下の特性を同時に満たすことを特徴とする視野角向上フィルム。
(1)明細書中で記載した方法で測定される波長440nmの光の主拡散方向の配光分
布パターンの半値幅が18度以下である。
(2)明細書中で記載した方法で測定される主拡散方向の波長440nmの光の出射角
0度における透過度(I0)と出射角30度における透過度(I30)の割合(I30/
I0×100)が0.25〜5.5%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、見る角度による色調変化を抑制した視野角改善効果と正面輝度低下の抑制を高度なレベルで両立させた、液晶表示装置の液晶層より観察者側に設置される視野角向上フィルム、該視野角向上フィルムと偏光板との積層体及び該積層体を用いた視野角改善効果と正面輝度低下の抑制を高度なレベルで両立させた液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、薄型、軽量、低消費電力等の特徴を活かしてフラットパネルディスプレイとして多用され、その用途は携帯電話、携帯情報端末(PDA)、パーソナルコンピュータ、テレビなどの情報用表示デバイスとして年々拡大している。
【0003】
しかしながら、液晶表示装置は、CRTに比べて視野角が狭いという問題がある。
視野角とは、液晶表示装置の画面を観察する角度を変化させた場合に、画面の垂線に対する角度を大きくして行く、すなわちより斜めの方向になるに従い正面より観察した場合よりも画面の画像の画質が低下する現象を指している。該画質としては、カラー画像の色合い、画像のコントラスト、白表示画像の輝度及び黒表示画像の光の漏れによる白ボケ等の現象が上げられる。該画質の低下の中で、カラー画像の色合いの変化は特に重要である。
【0004】
上記色調変化は、例えば、白色の画像を、角度を変えて観察した場合に、正面観察では白色に見えた画像が斜めから観察すると黄色味を帯びた色調に変化する現象の色調変化の度合いで判定される。以下、該色調変化の度合いをカラーシフト度と、また、該カラーシフトを抑制する効果を視野角改善効果と称する。
【0005】
上記の視野角改善効果を発現する方法として、液晶表示装置の液晶セルの視認側に光拡散フィルムを設置する方法が知られている。該方法は液晶層内部の液晶配向や電極構造等の変更なしで改善効果がだせるので、液晶表示装置の製造工程においては工程の増加等がなく簡便ではあり有用である。しかし、画面より出光する光が拡散フィルムを通過する事により透過する光が散乱されるために正面から見た場合の画面の明るさ、すなわち輝度が低下して画像が黒っぽくなるという課題を有する。以下、正面輝度低下と称する。即ち、視野角改善効果と正面輝度低下の抑制は二律背反事象となり両立が困難である。そのために、正面輝度低下をできるだけ小さくした形で大きな視野角改善効果が発現できる視野角向上フィルムが嘱望されている。
【0006】
例えば、特許文献1において、入射光を散乱透過させる機能を有する光拡散性フィルムを液晶表示画面上に設けることが提案されている。このフィルムは、屈折率の異なる透明樹脂を海島構造とした組成物を溶融押出してシート状にし、さらに延伸することによって得られるが、特許文献1の図3及び4に示すフィルムの拡散透過光の強度分布(以下、配光分布パターンとも称する)から、以下の点が示唆されている。
図3の方向の視野角改善効果は優れているが、正面輝度低下が大きくなる。一方、図4の方向は、正面輝度の低下は抑制されるが、視野角改善効果が劣る。このような光の拡散性がフィルム方向で異なる、いわゆる異方性拡散フィルムの場合は、正面輝度低下は拡散度の大きい方の支配を受けるので正面輝度低下は大きい。
即ち、どちらの方向においても、視野角改善効果と正面輝度低下の抑制の両立ができていない。
【0007】
また、特許文献2では、波長により異なる散乱角度分布を有し、かつフィルム面に対し方位角が90度異なる2方向で拡散光分布が異なる分光異方性散乱フィルムが提案されている。このフィルムは、特許文献2の図3(a)及び(b)に示されているフィルムの配光分布パターンから、左右及び上下のどちら側についても特許文献1と同様に視野角改善効果は優れているが正面輝度低下が大きく視野角改善効果視と正面輝度低下の抑制の両立ができていないことが示唆されている。
【0008】
さらに、特許文献3では、単一の熱可塑性樹脂からなり、内部に微細な多数の空孔を含有する部分を有する透過光散乱制御フィルムが提案されている。このフィルムは、溶融製膜したポリカーボネートを延伸処理し、溝状の亀裂による光の散乱を利用したものであるが、特許文献3の図13のフィルムの配光分布パターンから、α=±90°方位及びα=0、180度方位のいずれもが正面輝度低下は少なく良好であるが、視野角向上効果が十分でないことが示唆されている。
【0009】
さらに、特許文献4では、レンズフィルムを用いた方法が提案されている。特許文献4の図8(左右方向)及び9(上下方向)に示されているフィルムの配光分布パターンから、図8の左右方向については、視野角向上は良好であるが正面輝度低下が大きく、一方、図7の上下方向については、視野角改善効果が十分でないことが示唆されている。上記のごとくこのように異方性のある拡散フィルムを用いた場合は、正面輝度低下は拡散度の大きい方の支配を受けるので本開示技術においては、フィルムの使用方向に関係なく、正面輝度低下は大きい。
【0010】
さらに、特許文献5では、基材フィルムの表面に透光性粒子と透光性樹脂からなる光拡散層が形成されてなる透過光散乱制御フィルムが提案されている。特許文献5の図2に示されているフィルムの配光分布パターンから、正面輝度低下は少なく良好であるが、視野角向上効果が十分でない。
【0011】
上記のように、従来の光拡散フィルムにより視野角向上を図る方法においては、視野角改善効果と正面輝度低下の抑制のいずれか一方の特性を満足したものはあるが、両特性をともに高度なレベルで両立できたものは未だ存在しないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平7−114013号公報
【特許文献2】特開2004−341309号公報
【特許文献3】特開平10−206836号公報
【特許文献4】特開平09−179113号公報
【特許文献5】特開2003−270409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、かかる従来技術の現状に鑑み創案されたものであり、その目的は、色調変化を抑制した視野角改善効果と正面輝度低下の抑制を高度なレベルで両立させた、液晶表示装置の液晶層より観察者側に設置される偏光板との接着性に優れた視野角向上フィルムを提供することにある。また、本発明は上記視野角向上フィルムと偏光板との積層体及び該積層体を組み込むことにより視野角改善効果と正面輝度低下の抑制を高度なレベルで両立させた液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、かかる目的を達成するために鋭意検討した結果、特定の組成の樹脂混合物を溶融成形することにより得られた光拡散フィルムの光学特性を特定の範囲に制御することにより、二律背反事象である視野角改善効果と正面輝度低下の抑制を高度なレベルで両立できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0015】
即ち、本願発明は下記のとおりである。
1.主として二種の非相溶性のポリオレフィン系樹脂よりなる光拡散層の少なくとも片面に、主として極性基を含有したポリオレフィン樹脂よりなる接着改良層が最表面になるように積層された多層光拡散フィルムであって、以下の特性を同時に満たすことを特徴とする視野角向上フィルム。
(1)明細書中で記載した方法で測定される波長440nmの光の主拡散方向の配光分
布パターンの半値幅が18度以下である;
(2)明細書中で記載した方法で測定される主拡散方向の波長440nmの光の出射角
0度における透過度(I0)と出射角30度における透過度(I30)の割合(I30/
I0×100)が0.25〜5.5%である。
【0016】
2.明細書中で記載した方法で測定される異方性度が2.0以上であることを特徴とする前記1に記載の視野角向上フィルム。
【0017】
3.非相溶性の樹脂の少なくとも一種がポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする前記1又は2のいずれかに記載の視野角向上フィルム。
【0018】
4.非相溶性の樹脂の二種がポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする前記3に記載
の視野角向上フィルム。
【0019】
5.ポリオレフィン系樹脂がポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂及び環状ポリオレフィン系樹脂のいずれかより選ばれてなることを特徴とする前記3又は5に記載の視野
角向上フィルム。
【0020】
6.前記1〜5のいずれかに記載の視野角向上フィルムを偏光板表面に積層してなることを特徴とする視野角向上フィルム積層体。
【0021】
7.上記積層が接着剤を介して行われてなることを特徴とする前記6に記載の視野角向上フィルム積層体。
【0022】
8.少なくともバックライト装置と液晶セルよりなる液晶表示装置において、液晶セルの偏光子として前記6又は7記載の視野角向上フィルム積層体を用いてなることを特徴とする液晶表示装置。
【発明の効果】
【0023】
本発明の視野角向上フィルムは、直進透過性と拡散透過性の両方の特徴のある特性を兼
備した配光分布パターンを有し、出射光の角度により出射される光の波長依存性が視野角
改善効果や正面輝度低下抑制に有効に働くように制御されているので、液晶表示装置の液
晶セルの視認側に設置することにより、視野角改善効果と正面輝度低下の抑制という二律
背反事象を高度なレベルで両立させることができる。さらに、本発明の視野角向上フィルムは偏光板との接着性に優れているので偏光板との積層が容易であり、偏光板との積層体として液晶表示装置に組み込むことができる。そのために、視野角改善効果と正面輝度低下抑制とが両立した液晶表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】高拡散性の光拡散フィルムで視野角改善を図った場合の、観察角度による輝 度変化の一例を示す図である。
【図2】本発明の視野角向上フィルムの好ましい配光分布パターンの一例を示す図で ある。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(視野角向上フィルムの基本特性)
本発明の視野角向上フィルムは、主として二種の非相溶性のポリオレフィン系樹脂よりなる光拡散層の少なくとも片面に、主として極性基を含有したポリオレフィン樹脂よりなる接着改良層が最表面になるように積層された多層光拡散フィルムであって、以下の特性を同時に満たすことを特徴とする:
(1)明細書中で記載した方法で測定される波長440nmの光の主拡散方向の配光分
布パターンの半値幅が18度以下である;
(2)明細書中で記載した方法で測定される主拡散方向の波長440nmの光の出射角
0度における透過度(I0)と出射角30度における透過度(I30)の割合(I30/
I0×100)が0.25〜5.5%である。
【0026】
(半値幅拡散度)
本発明の視野角向上フィルムは、実施例において記載される方法で測定される波長44
0nmの光の主拡散方向の配光分布パターンの半値幅が18度以下であることが重要であ
る。
該半値幅が18度を超える場合は、本発明の視野角特性改善方法に用いた場合に液晶表
示装置の正面輝度低下が増大し、本発明所期の効果を得ることができない。
前記半値幅の好ましい上限は16度、更に好ましい上限は14度である。また、前記半値
幅の下限は特に制限されないが、好ましくは3度であり、更に好ましくは4度である。
一般に拡散性は、半値幅(配光分布パターンのピークトップの半分の高さにおける角度
)で評価され、半値幅が大きい程拡散性が強く、半値幅が小さければ拡散性は乏しいとさ
れている。上記の半値幅は実施例において記載される方法で測定される。従来から広く用
いられている拡散性の尺度である。以下、該測定値を半値幅拡散度と称することもある。
しかしながら、半値幅拡散度を指標とするだけでは、後述する視野角改善効果及び正面輝
度低下抑制を両立させるに適した配光分布パターンにおける拡散性を適確に示すことはで
きない。
前述のごとく、光拡散フィルムで視野角改善効果を発現できることは公知である。実際
に図1に示すごとく、半値幅が57度である高拡散性フィルムを本発明方法で用いた場合
は、斜め方向(高角度)から観察した時の輝度を向上させることができ、いわゆる視野角
向上効果が発現できるが、同時に正面の輝度が大幅に低下する。従って、視野角改善効果
と正面輝度低下とは、二律背反事象となる。
図1の輝度の角度依存性は、以下の方法で測定した。
【0027】
〔輝度の角度依存性の測定方法〕
RISA−COLOR/ONE−II(ハイランド社製)を用いて測定を行った。市販の
VA型液晶表示装置試を料台上に水平に設置し、このパネルの中央部に131×
131mmの大きさで白の画像(Nokia monitor test for wi
ndows V 1.0(Nokia 社製)のFarbeモード)を表示し、その白画
像の上にスポイトにて水を3滴落とし、さらにその上に光拡散フィルムを置き、パネルと
フィルムの間の水を均一に広げて密着させ、CCDカメラとディスプレイ間の距離を垂直
状態で1mとして、CCDカメラを液晶表示装置のパネル表面に対して−70°から+7
0°までの間の赤道上を移動させて以下の条件で輝度を測定し、輝度の角度依存性のプロ
ファイルを求めた。
ブランク測定は視野角向上フィルムを貼り付ける事なしに同様測定を行った。
輝度は上記の白の画像を5×5の25個の部分に分割し、その中心部の3×3の9個の
部分の全ピクセルの輝度を測定してその平均値で表示した。
【0028】
従って、この視野角改善効果と正面輝度低下の抑制の二律背反事象を打ち破り、両特性
を高度なレベルで両立させるには、半値幅拡散度は上記のごとくむしろ低い範囲に設定す
る必要がある。その上で視野角改善効果を発現できる拡散性を付与する必要がある。
【0029】
(好ましい配光分布パターン)
本発明者等は、上記の一見矛盾する課題を解決する方法について鋭意検討をして、視野
角改善効果は、半値幅拡散度を上記範囲としても配光分布パターンの裾の広がりで評価さ
れる拡散性を高めることで発現でき、かつ該拡散性が出射角30度の透過率で評価できる
ことを見出した。
【0030】
上記の光学特性を満たすのに好ましい配光分布パターンの一例を図2に示す。即ち、直
進透過性と拡散透過性の両方の透過性を兼ね備えた特徴のある特性の配光分布パターンで
ある。
本配光分布パターンは以下の方法で測定して得たものである。
〔配光分布パターンの測定方法〕
自動変角光度計(GP−200:株式会社村上色彩研究所製)を用いて測定を行った。
透過測定モード、光線入射角:0°(試料面に対して上下、左右共に直角になる角度)、
受光角度:−90°〜90°(赤道線面上の角度)、フィルター:ND10使用、光束絞
り:10.5mm(VS−1 3.0)、受光絞り:9.1mm(VS−3 4.0)の
条件で、主拡散方向が水平方向になるように試料台に固定し、透過光の変角光度曲線のピ
ークトップの値がフルスケールに対して約80%の範囲になるようにSENSITIVI
TY及びHIGH VOLTONの設定を調整し、透過光の変角光度曲線を求めた。
【0031】
(裾広がり拡散度)
本発明に用いられる視野角向上フィルムは、実施例において記載される方法で測定され
る主拡散方向の出射角度30度における波長440nmの光の透過度が0.7〜10であ
ることが好ましく、0.8〜9がより好ましく、1.0〜8がさらに好ましい。上限はさ
らには7以下が好ましく、6以下が特に好ましく、5.5以下が最も好ましい。
該出射角度30度における波長440nmの相対透過度はフィルム面に直行する方向に
光を入光させた時の出射光の配光分布パターンの裾の広がりに注目した拡散性の尺度であ
り、該値が大きい程、裾の広がり、即ち、出射光が0になるまでの角度が大きくなる。以
下、本特性を裾広がり拡散度と称する。
該裾広がり拡散度が0.7未満では、拡散性が不足するために視野角改善効果が不足す
るので好ましくない。
一方、該裾広がり拡散度が10を越えた場合は、視野角改善効果が過剰となり、斜めよ
り観察した時に青味をおびた色調になるので好ましくない。また、正面輝度低下の抑制効
果が低下することもある。
なお、該裾広がり拡散度は本発明者等が本発明において新たに創出した新規な拡散性の
評価尺度である。
【0032】
(裾広がり拡散度比率)
上記の裾広がり拡散度は視野角改善効果に対しては重要であるが、視野角改善効果と正
面輝度低下の抑制の二律背反事象を打ち破り、両特性を高度なレベルで両立させるには充
分な特性とは言えない。
上記の好ましい配光分布パターンにおいては、正面輝度低下の抑制の点では直進透過性が
高いことが好ましい。即ち、出射角0度における透過度が高いことが好ましい。それ故、
上記両特性を高度なレベルで両立させるには出射角0度における透過度と裾広がり拡散度
比率のバランスが重要となる。このバランスは出射角0度における透過度(I0)と出射
角30度における透過度(I30)の割合(I30/I0×100)で表示できることを
見出し、本発明を完成した。
即ち、実施例において記載される方法で測定される主拡散方向の波長440nmの光の出射角0度における透過度(I0)と出射角30度における透過度(I30)の割合(I30/I0×100)が0.25〜5.5%であることが重要である。
該裾広がり拡散度比率は、0.30〜5.0%がより好ましく、0.35〜4.5%が
さらに好ましい。
以下上記特性を裾広がり拡散度比率と称する。
該裾広がり拡散度比率を上記範囲で満たすことにより初めて二律背反事象の上記の両特
性を高度なレベルで両立させるができる。即ち、裾広がり拡散度が0.25%未満では正
面輝度低下抑制は良好であるが、視野角改善効果が不足するので好ましくない。逆に、裾
広がり拡散度比率が5.5%を超えた場合は、正面輝度低下が大きくなるので好ましくな
い。また、カラーシフトの補正効果が過剰となり青味をおびた色調になる場合もある。
前記裾広がり拡散度比率は、0.30〜5.0%がより好ましく、0.35〜4.5%が
さらに好ましい。
例えば、前述の特許文献に記載された図より、本裾広がり拡散度比率を求めると、特許
文献1の高拡散度側、特許文献2の図3の(b)及び特許文献4の高拡散度側の拡散度比
率はそれぞれ88%、60%及び78%となる。従って、上記の好ましい裾広がり拡散度
比率は、これらの特許文献で開示されているフィルムに比べて著しく低い範囲にあると言
える。
【0033】
(波長分散性)
前記裾広がり拡散度や裾広がり拡散度比率の規定において、波長「440nm」に注目
した事も重要である。前述のごとく視野角特性が低いという現象は正面から観察して時に
白く見える色調が高角度より観察した時に黄色味を帯びた色調になることにより引き起こ
されている。本発明者等は、視野角改善効果を発現させるための1つの手段として、そう
いった色調変化を打ち消すことためには、高角度において青色の光がより透過し易くなる
ことが重要であると考え、440nmの波長に注目した。
従って、上記の裾広がり拡散度や裾広がり拡散度比率は拡散性と波長分散性の二つの要
因を合体した新規な特性値であると言える。
即ち、本発明の視野角向上フィルムは、従来公知の拡散フィルムとは、光学設計が全く異
なるのである。
なお、本発明においては、前記の半値幅拡散度についても波長440nmに注目してい
る。後述のごとく正面輝度低下に関しては550nmの波長が重要である。半値幅拡散度
に関しては光の波長の影響は小さいので、波長550nmで評価しても大差はない。
(異方性度)
本発明に用いられる視野角向上フィルムは、実施例において記載される方法で測定され
る異方性度が2.0以上であることが好ましい。5.0以上がより好ましいく、10以上
がさらに好ましい。
上記下限未満では、異方性付与の効果が低下するので好ましくない。
一方、上限は限定されないが200以上は技術的に困難であり、かつ異方性付与の効果
も飽和してくるので200未満が好ましい。
上記範囲を満たすことにより、視野角改善効果と正面輝度低下の抑制効果をより好まし
い方向でバランスを取ることができる。
【0034】
該異方性度の高いフィルムの場合は、拡散度が高い方向である主拡散方向の視野角改善
効果が大きくなる。従って、視野角の改善を必要とする方向により、視野角向上フィルム
の設置方向を変える必要がある。即ち、液晶表示装置の左右方向の視野角向上を図る時は
、主拡散方向がパネルの左右方向に平行になるように、逆に、上下方向の視野角向上を図
る時は、主拡散方向が上下方向に平行になるように設置するのが好ましい。
該対応により、必要な方向のみの視野角改善効果を発現させることが可能であるという
メリットもある。
【0035】
(全光線透過率)
本発明の視野角向上フィルムは、実施例において記載される方法で測定される波長55
0nmの光の全光線透過率が79〜95%である。
該全光線透過率が79%未満では、フィルム設置による液晶表示装置の輝度低下が著しく
大きく、視野角改善効果の如何によらず正面輝度が大きく低下するので好ましくない。概
全光線透過率の上限値は100%である。
なお、波長550nmの光の全光線透過率に注目したのは、人間の目に対して波長55
0nm付近の光が分光視感効率が最も高いとされている事による。
【0036】
(作用機構)
光拡散フィルムで視野角改善効果を発現できることは公知である。確かに、前述のごと
く、従来公知の半値幅法拡散度で評価される高拡散性フィルムの使用で斜め方向(高角度
)から観察した時の輝度を向上させることができるが、同時に正面の輝度が大幅に低下す
る。従って、視野角改善効果と正面輝度低下とは、二律背反事象となる。
この視野角改善効果と正面輝度低下抑制の二律背反事象を打破するためには、前記した
図2に示した配光分布パターンにすることが重要である。即ち、裾広がり拡散度比率を特
定範囲にすることが重要である。さらに、視野角向上フィルムを透過してきた出射光の波
長分散性も重要である。即ち、視野角改善効果に寄与するフィルム面の垂線よりの角度が
高い方向に出射する光は青色に近い440nmの波長の光の相対透過度が高くなるように
設計することが重要であり、これらの要因の相乗効果により視野角改善効果と正面輝度の
両立が高度なレベルで図れたと推察している。
上記の個々の要因の一部については従来技術でもその重要性が開示されているが、上記
の全要因を同時に満たすことによる作用機構により、視野角改善効果と正面輝度低下の二
律背反事象を打破した異方性光拡散フィルムは本発明において初めて成し得たものである。
【0037】
異方性度を上げることにより、視野角改善効果と正面輝度低下の抑制効果をより好まし
い方向でバランスが取れる理由は定かでないが、異方性度を高める事により出射光が特定
方向に集光されることが寄与しており、視野角改善効果と正面輝度低下とではこの集光効
果の寄与度に差があるにより引き起こされているものと推察している。
【0038】
(好ましい正面輝度低下の範囲)
本発明の正面輝度低下の度合いは限定されないが、バックライト装置の輝度向上等の液
晶表示装置全体のシステムの構成を変えることなく正面輝度低下の許容範囲で視野角改善
効果を図れる点よりして、視野角向上フィルムを設置しない場合の輝度を100%とした
時の視野角向上フィルムを設置した時の輝度の低下率を%で表示した輝度の低下率(以下
、該正面輝度低下率を含めて正面輝度低下の語句を統一する)が20%以下である事が好
ましい。18%以下がより好ましく、15%以下がさらに好ましい。
なお、正面輝度はパネルの方式や種類によりその絶対値は異なるが、上記の正面輝度低
下で評価するとパネルの方式や種類が変わってもほぼ一定の値になることの確認をしてい
る。
前記の全光線透過率を満たすことで上記の正面輝度低下を好ましい範囲とすることがで
きる。
【0039】
(好ましい視野角改善効果の範囲)
本発明においては、視野角改善効果は、実施例において記載する方法で評価した。すな
わち、市販の液晶表示装置のパネルに白の画像を映し出し、CCDカメラを該画像の赤道
上を移動させ、CIE表色系のYxy系のx値の角度依存性を測定し、垂線に対して0度
の時のx値(x0)及び70度の時のx値(x70)を求めて、Δx(70度)=x0−
x70を算出した値で評価した。以下、該値(Δx(70度))をカラーシフト度と称す
る。一般に液晶表示装置のパネルは、該カラーシフト度がプラスになる。y値もx値とほ
ぼ同じ挙動をしており、緑色及び赤色方向に変位するので、結果として黄色味を帯びるこ
とになる。x値及びy値共に殆ど類似した挙動を示すので、本発明においては、x値を代
表値とした。
このカラーシフト度のプラス側へのずれを打ち消すことにより視野角改善効果が発現す
る。それ故、視野角向上フィルムのカラーシフト度はマイナス方向に色座標がずれるのが
好ましい。該カラーシフト度は、パネルの方式や種類により異なるが、例えば、VA方式
の場合は、−0.006〜−0.02が好ましい。−0.008〜−0.018がより好
ましい。
−0.006を超えた場合は、カラーシフト度が不足し視野角改善効果が少なくなるの
で好ましくない。逆に、−0.02未満の場合は、カラーシフト度が高すぎるので、視野
角改善効果が過剰となり、斜めから観察した時の白の画像が青味をおびた色調になるので
好ましくない。
【0040】
(視野角向上フィルムの構成)
本発明の視野角向上フィルムは、主として二種の非相溶性のポリオレフィン系樹脂よりなる光拡散層の少なくとも片面に、主として極性基を含有したポリオレフィン樹脂よりなる接着改良層が最表面になるように積層された多層構造よりなることが重要である。
【0041】
(光拡散層)
本発明の光拡散層は、主として二種の非相溶性のポリオレフィン系樹脂よりなることが好ましい。通常、ポリオレフィン系樹脂は、芳香環を有していないので、紫外線照射による劣化を受けにくいという特長を有している。そのため、紫外線照射による黄化が抑制されるという特長を有しているので光拡散フィルムの構成材料としては好適である。
【0042】
上記二種の非相溶性のポリオレフィン系樹脂は、お互いに相溶しない樹脂の組み合わせであれば限定されないが、ポリプロピレン系樹脂とエチレン及び/又はブテンが含まれたポリオレフィン樹脂よりなることが好ましい実施態様である。
【0043】
また、上記二種の非相溶性のポリオレフィン系樹脂が、環状ポリオレフィン系樹脂とポリエチレン系樹脂よりなることが好ましい実施態様である。
【0044】
上記組み合わせにより、後述の光拡散層による光学特性の制御が広い範囲で、かつ安定して実施することができる。また、耐光性や経済性の点からも好ましいと言える。
上記組み合わせに、さらにナノ結晶構造制御型ポリオレフィン系エラストマー樹脂を組み合わせても良い。
【0045】
上記ポリオレフィン系樹脂は、その70モル%が、オレフィン系モノマーよりなれば限定されない。90%以上がオレフィン系モノマーよりなることが好ましい。95%以上がオレフィン系モノマーよりなることがより好ましく、98%以上がオレフィン系モノマーよりなることがさらに好ましい。
該ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂及びポリメチルペンテン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂あるいはこれらの共重合体等が挙げられる。また、これらの樹脂にカルボキシル基、エステル基及びヒドロキシル基等の官能基が導入された変性ポリオレフィン系樹脂も好適に使用される。
また、アクリル酸やメタクリル酸及びこれらのエステル誘導体等の芳香環を有しないモノマーの共重合体であっても構わない。
【0046】
ポリエチレン系樹脂としては、単一重合体であってもよいし、共重合体であってもよい。共重合体の場合は50モル%以上がエチレン成分であるのが好ましい。該ポリエチレン樹脂の密度や重合方法等も限定されないが、密度が0.909以下の共重合体の使用が好ましい。例えば、オクテンとの共重合体が挙げられる。重合方法はメタロセン触媒法及び非メタロセン触媒法のいずれでも構わない。
【0047】
ポリプロピレン系樹脂としては、単一重合体であってもよいし、共重合体であってもよい。共重合体の場合は、50モル%以上がプロピレン成分であるのが好ましい。該樹脂の製造方法、分子量等は、特に限定されないが、耐熱性等の点から結晶性の高いものが好ましい。具体的には、結晶性は、示差走査熱量計(DSC)による融解熱で判断され、融解熱が65J/g以上のものが好ましい。
【0048】
エチレン及び/又はブテンが含まれたポリオレフィン系樹脂としては、ホモポリエチレン樹脂、ホモポリブテン樹脂、及びこれらの樹脂の他のオレフィン系モノマーとの共重合体、アクリル酸やメタクリル酸及びこれらのエステル誘導体との共重合体等が挙げられる。他のオレフィン系モノマーとの共重合体の場合は、ランダム、ブロック及びグラフト共重合体のいずれでもよい。また、EPラバー等の分散体でも構わない。該樹脂の製造方法や分子量等も特に限定されない。例えば、上記したポリエチレン系樹脂やエチレンとブテンの共重合体の使用が好ましい。
【0049】
環状ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ノルボルネンやテトラシクロドデセン等の環状のポリオレフィン構造を有したものが挙げられる。例えば、(1)ノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体を、必要に応じてマレイン酸付加、シクロペンタジエン付加のごときポリマー変性を行なった後に、水素添加した樹脂、(2)ノルボルネン系モノマーを付加型重合させた樹脂、(3)ノルボルネン系モノマーとエチレンやα−オレフィンなどのオレフィン系モノマーと付加型共重合させた樹脂などを挙げることができる。重合方法及び水素添加方法は、常法により行なうことができる。
【0050】
ナノ結晶構造制御型ポリオレフィン系エラストマー樹脂は、ポリマーの結晶/非晶構造がナノオーダーで制御され、該結晶がナノオーダーで網目構造を有する熱可塑性のポリオレフィン系エラストマーであり、例えば、三井化学社製のノティオ(商標登録)が挙げられる。従来のポリオレフィン系エラストマー樹脂は結晶サイズがミクロンオーダーであるのに対して、ナノ結晶構造制御型ポリオレフィン系エラストマー樹脂は、結晶サイズがナノオーダーで制御されているという特徴を有する。このため、従来のポリオレフィン系エラストマー樹脂に比べて、透明性、耐熱性、柔軟性、ゴム弾性などに優れている場合が多い。従って、該ナノ結晶構造制御型ポリオレフィン系エラストマー樹脂を配合することによって、得られるフィルムの外観を向上できる場合がある。
【0051】
上記の少なくとも二種の非相溶性のポリオレフィン系樹脂の配合割合は、それぞれ質量比で10/90〜90/10であることが好ましく、20/80〜80/20がより好ましく、30/70〜70/30の割合が更に好ましい。上記の少なくとも二種の非相溶性のポリオレフィン系樹脂は、それぞれの樹脂を製膜工程で配合してもよいし、予め混練法等で事前に配合した形で用いてもよい。
【0052】
本発明においては、三種以上の樹脂を配合してもよいし、それぞれの樹脂の馴染み性向上のための相溶化剤や分散径調整剤等の添加剤を併用しても構わない。また、酸化防止剤や紫外線吸収剤等の安定剤や帯電防止剤等の添加剤を配合してもよい。また、上記の光学特性を阻害しない範囲であれば、無機粒子やポリマービーズ等の微粒子を添加してもよい。
【0053】
上記の少なくとも二種の非相溶性のポリオレフィン系樹脂のメルトフローレートは、上記の光学特性を満たせば特に限定されない。それぞれの熱可塑性樹脂は、230℃で測定したメルトフローレートが0.1〜100、好ましくは0.2〜50の範囲で適宜選択される。
【0054】
上記樹脂のメルトフローレートは、樹脂の組成、組成比、どちらの樹脂を海にするか及
び所望する光学特性等を考慮して適宜選択される。
その指針は組成割合の方が多くて、かつメルトフローレートが低い方が海になる。同量
の場合は、メルトフローレートが高い方が海になり易い。組成割合の高い方のメルトフロ
ーレートが高い場合は、単純な海/島構造ではなく、例えば共連続相といった形成される
場合もある。
【0055】
本発明においては、前述のごとく拡散度に異方性を付与するのが好ましい。該特性を付
与するには島構造に異方性を持たせるのが好ましい。このような形状の島構造を形成する
ためには、海成分樹脂と島成分樹脂の溶融粘度に差を付けるのが好ましい。特に、海成分
よりも島成分の溶融粘度を低くするのが好ましい。このためには、例えば、メルトフロー
レートの差を付けるのが好ましく、海成分より、島成分の方のメルトフローレートを高く
するのが好ましい。また、海成分樹脂と島成分樹脂の剛性に差を付けるのも好ましい。特
に、海成分よりも島成分の剛性を低くするのが好ましい。
【0056】
また、島成分のメルトフローレートが低い場合には、ダイ内でのシェアやドラフトによ
り島成分が細くなる力がかかりにくくなり、異方性が低下することがある。質量比が50
/50から離れるほどこの傾向は強くなる。これらの傾向を考慮して、各特性の調整を行
う。
【0057】
二種の樹脂が共にポリオレフィン系樹脂の場合は、環状ポリオレフィン系樹脂とポリエ
チレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂との組み合わせや、該三種の組み合わせが前述の特
性のフィルムが得られ易い点や経済性の点で好ましい。
【0058】
環状ポリオレフィン系樹脂とポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂との組み合
わせの場合は、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂を海相として、かつ該海相のポ
リエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂のメルトフローレートを島相の環状ポリオレフ
ィン系樹脂のメルトフローレートよりも高くするが好ましい。
【0059】
環状ポリオレフィン系樹脂とポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂の組み合わせ
の場合は、全樹脂量中に環状ポリオレフィン系樹脂が10〜60質量%配合されているの
が好ましく、さらに好ましくは10〜50質量%である。
上記範囲が、後述のポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂を海相とする好ましい
実施態様の実現に対して好ましい。
上記構成と逆の構成である環状ポリオレフィン系樹脂を海相とした場合は、ダイス内で
のシェア、海相の柔軟性や流動性が関係して、所望した光学特性、特に、異方性度の高い
視野角向上フィルムが得にくい。
【0060】
上記実施態様により、製膜装置を変えた場合においても、所望した光学特性を有する光
拡散フィルムが安定して得ることができるという効果もでる。この理由は定かでないが、
製膜装置を変えた場合に発生する押し出し条件の差異やダイス形状の相違によりシェア等
の変化があっても、海相の樹脂を島相樹脂より柔らかくして、かつその流動性を高めるこ
とにより、その影響が緩和されるためと推察している。
【0061】
二種共にポリオレフィン系樹脂よりなる場合の島相のサイズは特に限定されないが、レ
ーザ散乱法で求められる短径の平均サイズが0.1〜2μmが好ましい。0.1μm未満
では拡散度が不足するので好ましくない。逆に、2μmと超えた場合は、後方散乱の度合
いが増加して、全光線透過率が低下するので好ましくない。
【0062】
(接着改良層)
本発明における極性基を含有したポリオレフィン樹脂は、その骨格としてエチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン、オクテン、メチルペンテンおよび環状オレフィンのうち少なくとも1種のモノマーを含んでいること好ましい。
上記モノマーを一種類用いたホモポリマーであっても二種以上モノマーを用いた共重合体であっても構わない。
【0063】
本発明における上記極性基を含有したポリオレフィン樹脂は、少なくとも1種類の極性基を含有していることが好ましい。極性基としては、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、水酸基、グリシジル基、イソシアネート基、アミノ基、イミド基、オキサゾリン基、エステル基、エーテル基、カルボン酸金属塩基、スルホン酸金属塩基、ホスホン酸金属塩基、3級アミン塩基または4級アミン塩基等があげられる。該極性基は一種であってもよいし、二種以上を含んでもよい。
光拡散層を構成するポリオレフィン系樹脂の組成や密着対象の部材の種類や必要とする密着力等により適宜選択すれば良い少なくともカルボキシル基を含むことが、好ましい実施態様である。
【0064】
また、本発明における極性基を含有したポリオレフィン樹脂は、極性基がポリオレフィン樹脂の高分子鎖中に直接導入されていても、また、他の樹脂に導入し、添加、混合されている状態であっても構わない。また、場合により本発明のポリオレフィン樹脂は、分子鎖の末端や内部に導入された、例えば、カルボン酸基や水酸基にこれらと反応しえる化合物を反応させて変性して使用することも可能である。
【0065】
本発明においては、上記極性基を含有ポリオレフィン樹脂は、一種の単独使用であってもよいし、二種以上を配合した配合組成物であってもよい。また、極性基を含有しないポリオレフィン樹脂や他の種類の樹脂を配合した配合組成物であってもよい。該配合組成物の場合は、上記の極性基を含有したポリオレフィン樹脂は10質量%以上で含まれてなることが好ましい。さらに好ましくは30質量%以上である。
【0066】
上記の接着改良層は、片面積層及び両面積層のいずれでも構わない。総厚みは限定されないが、10〜500μmが好ましい。厚み構成比も限定されないが、密着層厚みが片面の厚みで2〜100μmであることが好ましい。
【0067】
上記の光拡散層/接着改良層の厚み構成比は100/1〜3/1であることが好ましく、10/1〜4/1がより好ましい。このようにすることによって、視野角向上効果と接着性改良効果のバランスがとれる。
【0068】
(視野角向上フィルムの製造方法)
本発明の視野角向上フィルムの製造方法も前述の光学特性を満たせば特に限定されない
が、経済性の点で溶融押し出し成型により製膜する方法が好ましい。
本発明においては、光拡散性を付与するために、非溶融性微粒子を含有させる必要がな
いので、溶融押し出し成型法で実施しても、製膜工程における溶融樹脂の濾過フィルタの
目詰まりが低減でき、生産性が優れるとともに得られるフィルムの清澄度も高いという特
長を有する。
【0069】
上記溶融押し出し成型法による製膜方法としては、特に制限されず、例えば、Tダイ法
及びインフレーション法のいずれでもよい。また、未延伸のままのフィルムでもよく、延
伸処理を行ってもよい。
【0070】
上記溶融押し出し成型法は、一般に、押し出し機で溶融した樹脂をダイからシート状に
押し出してし、該シートを冷却ロールに密着させ冷却固化させて製膜される。冷却ロール
への密着は、一般に広く用いられている押し圧ロールで押さえ付けて行っても良いが、異
方性を付与するという点においては、上記の冷却ロールへの密着時に、該密着部の入り口
部分に液溜りゾーン(バンクと称されることもある)が形成されないことが好ましい。該
液溜りゾーンの形成は、冷却ロールへの密着時に圧接された場合、即ち、強い圧力で押さ
えられた時に発生するので、該密着時の密着圧力を低くするのが好ましい。例えば、一般
に広く用いられている押し圧ロールで圧接して密着させるという方法は避けた方がよい。
弱い圧力で密着させる方法であれば限定されないが、例えば、押し出し機で溶融した樹
脂をダイからシート状に押し出して、該シートをガス圧による押さえ方法及び/又は吸引
法及び/又は静電気密着法で密着させ冷却固化させて製膜されてなることが好ましい。該
方法により、異方性を有した視野角向上フィルムを安定して得ることができる。
【0071】
上記のガス圧による押さえ方法及び/又は吸引法及び/又は静電気密着法で密着させ冷
却固化させる方法は限定されない。例えば、ガス圧による押さえ方法としては、例えば、
空気等のガス圧で押さえ付ける、いわゆるエアーナイフ法等の方法、減圧ノズルで吸引し
て密着させるバキュームチャンバー法、静電気力で密着させる静電気密着法等が挙げられ
る。該方法は単独で用いてもよいし、複数の方法を併用しても良い。得られるフィルムの
厚み精度を高めることができる点で、後者で実施するのが好ましい実施態様である。
【0072】
本発明の視野角向上フィルムは、無延伸法及び延伸法のいずれで製造しても良い。例え
ば、光拡散層にポリエステル系樹脂を用いた場合は、一軸延伸をするのが好ましい。延伸
倍率は2倍以上が好ましい。上限は限定されないが、10倍未満が好ましい。該対応によ
り、島相が延伸方向に引き伸ばされ細長い構造になり、該島相の配向方向と直行した方向
の光拡散性が著しく向上し、異方性で、かつ高拡散性が確保できる。
【0073】
無延伸法で製造する場合に、溶融押し出しされたシートを冷却個化する前に伸長する方
法、即ち、ドラフト率を高める方法で製造しても良い。
【0074】
また、本発明の視野角向上フィルムは単層であってもよいし、2層以上の多層構成であ
っても構わない。多層構成の場合は、少なくとも一層が上記の構成よりなる光拡散フィル
ムからなる層であれば、他の層は、光拡散性を有しない単なる透明層であってもよい。ま
た、全層が光拡散層の構成であってもよい。
上記多層構成の場合は、多層共押出し法で製造してもよいし、押出しラミネート法やド
ライラミネート法で実施してもよい。
【0075】
上記の少なくとも二種の非相溶性の熱可塑性樹脂の混合物は、それぞれの熱可塑性樹脂
を製膜工程の押出し機などで配合してもよいし、予め混練法等で事前に混合物とした形で
用いてもよい。
【0076】
本発明の視野角向上フィルムの厚みは10〜500μmが好ましく、20〜500μm
がより好ましく、20〜200μmがさらに好ましいと言えるが、光拡散層の樹脂成分の
種類、配合比、層構成及び製造方法等により大きく変化する。
なお、厚みを調整する場合、ドラフト比、押し出し流量、リップ幅等の変更により海島
構造が大きく変化した場合には、上記の傾向が逆転したり極端に大きくなったり
することもある。
【0077】
(偏光板)
本発明にける偏光板は、偏光機能を有したフィルムやシートがよりなれば検定されない。例えば、PVAなどにヨウ素あるいは二色性色素を染着させたのが挙げられる。また、偏光板単体であってもよいし、例えば、各種保護フィルムとの複合体であっても良い。
【0078】
(視野角向上フィルム積層体及び接着剤)
本発明の視野角向上フィルム積層体は上記の視野角向上フィルムと偏光板とを接着剤で貼り合わせてなる積層体である。
上記接着剤は透明で、かつ視野角向上フィルムと偏光板との両方と接着性を有するものであれば限定されない。例えば、熱やUV等の活性線等で架橋性を有するものが挙げられる。例えば、視野角向上フィルムと偏光板の両方に馴染みがあり、透明なモノマー、オリゴマー及びポリマーと架橋剤の配合体が挙げられる。また、上記透明なモノマー、オリゴマー及びポリマーの分子中に上記方法で架橋反応を引き起こす官能基を有するものあるいは該成分と架橋剤との配合体であっても良い。
偏光板はPVA系のポリマーを主成分としたものが多いので、上記接着剤はPVA系ポリマーよりなるものが好ましい。例えば、ポリ酢酸ビニルをけん化して得られたポリビニルアルコール;その誘導体;更に酢酸ビニルと共重合性を有する単量体との共重合体のけん化物;ポリビニルアルコールをアセタール化、ウレタン化、エーテル化、グラフト化、リン酸エステル化等した変性ポリビニルアルコール;などが挙げられる。前記単量体としては、(無水)マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸及びそのエステル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン、(メタ)アリルスルホン酸(ソーダ)、スルホン酸ソーダ(モノアルキルマレート)、ジスルホン酸ソーダアルキルマレート、N−メチロールアクリルアミド、アクリルアミドアルキルスルホン酸アルカリ塩、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリドン誘導体等が挙げられる。これらポリビニルアルコール系樹脂は1種のみ用いても良いし2種以上を併用しても良い。
PVA系ポリマーのケン価度は限定されないが60〜85%のものが好ましい。
該PVA系ポリマーを用いた場合の架橋剤としては特に限定されないが水溶性や水分散性のものが好ましい。例えば、水酸基と架橋性を有するものであれば特に限定されないが、メラミン系、イソシアネート系、カルボジイミド系、オキサゾリン系、エポキシ系等の化合物が挙げられる。塗布液の経時安定性の点からメラミン系、イソシアネート系、カルボジイミド系、オキサゾリン系の化合物が挙げられる。さらに、架橋剤はポリビニルアルコール系メラミン系化合物もしくはイソシアネート系化合物ものが好ましい。また、架橋反応を促進させるため、触媒等を必要に応じて適宜使用しても良い。
【0079】
(視野角特性改善方法)
本発明における視野角特性改善方法は、上記視野角向上フィルムあるいは視野角向上フィルム積層体をバックライト光源と、液晶セルと、液晶セルの視認側に配した偏光板とを少なくとも有する液晶表示装置において、前記偏光板の視認側に上記視野角向上フィルムを設置するあるいは視認側に配した偏光板として上記の視野角向上フィルム積層体を使用することにより実施される。従って、液晶表示装置製造工程の工程数を増やすことなく改善ができ、また、あらゆる液晶表示装置に適用可能であることから非常に経済性の高く、かつ適用範囲の広い方法である。
【0080】
上記の偏光板や偏光板と偏光板保護フィルムを貼り合せた構成のものと積層して液晶表示装置に組み込む場合は、液晶表示装置のモードの違いによる視認側に用いられる偏光板の吸収軸の方向の違いを配慮して対応するのが好ましい。
【0081】
上記視野角特性改善方法における前記偏光板の視認側に上記視野角向上フィルムを設置する場合は、例えば反射損失の少ない接着剤や粘着剤等によって液晶セルの視認側に配した偏光板の視認側に貼着することが好ましい。
接着剤や粘着剤は視野角向上フィルムと対象物とが固定できれば限定されないが、光学用の製品を用いるのが好ましい。
【0082】
(液晶表示装置)
本発明が適用できる液晶表示装置は、バックライト光源と液晶セルと、液層セルの視認
側に配した偏光子とを少なくとも有する液晶表示装置であれば限定されない。例えば、T
N、VA、OCB、IPS及びECBモードの液晶表示装置が挙げられる。
【0083】
(ハードコート層等の機能性層の複合使用)
本発明の液晶表示装置では、視野角向上フィルムの観察者側の表面に、ハードコート層
層、反射低減層および防眩層より選ばれた機能性層が少なくとも一層複合されてなること
が好ましい。上記機能層はそれぞれ単独の構成でも良いし、複数の機能を複合して用いて
も良い。
ハードコート層の複合により視野角向上フィルム表面の耐傷付き性が向上する。また、
反射低減層及び/または防眩層の複合により、液晶表示装置を外光が映り込む環境で使用
しても、外光の映り込みが低減され、画像の視認性が向上する。また、明るい環境で使用
しても、視野角向上効果の低減が見られなくなる。反射低減層や防眩層は、その表面が反
射防止機能を持てばよく、例えば、アンチグレアータイプ、アンチリフレクションタイプ
及びその両機能を併有したタイプ等が使用できる。特に、後二者の使用が好ましい。
上記機能層の複合は、視野角向上フィルムの表面に直接積層して複合しても良いし、上
記機能層を有する、TACやPET等のプラスチックフィルムと複合して用いても良い。
後者の方が広く市場に流通している製品を使用して実施できるので好ましい場合がある。
後者の機能性層を有したフィルムの複合方法は、粘着剤あるいは接着剤で固定するのが好
ましいが、単に重ね合わせて治具で固定しても良い。
接着剤や粘着剤は視野角向上フィルムと機能性層を有したフィルムとが固定できれば限
定されないが、光学用の製品を用いるのが好ましい。
【0084】
(視野角向上フィルムの貼り付け方向)
本発明の視野角向上フィルムは、前記の異方性度を高めることにより液晶表示装置の視
野角改善効果が発現される方向を変えることができる。
例えば、TVにおいては水平方向の視野角改善効果が求められるが、パソコンや各種装
置用のモニターやデジタルサイネージ用の表示装置においては、垂直方向の視野角改善効
果も求められることもある。
該要求に答えるには、視野角向上フィルムの設置方向を変更することで達成することが
できる。
すなわち、視野角向上フィルムの主拡散方向の視野角が改善されるので、例えば、横(水平)方向の視野角改善を図りたい時は、視野角向上フィルムの主拡散方向が液晶表示装置の略横(水平)方向に設置するのが好ましい。一方、縦(垂直)方向の視野角改善を図りたい時は、視野角向上フィルムの主拡散方向が液晶表示装置の略縦(垂直)方向に設置するのが好ましい。
なお、上記設置方向は液晶表示装置を縦方向に立てて設置した場合の方向で表示してい
る。従って、横(水平)方向は左右方向と、また、縦(垂直)方向は上下方向と表現することもできる。
【実施例】
【0085】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によっ
て制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更を加えて実施す
ることも可能であり、それらは、いずれも本発明の技術的範囲に含まれる。なお、実施例
で採用した測定・評価方法は次の通りである。また、実施例中で「部」とあるのは断りの
ない限り「質量部」を意味し、「%」とあるのは断りのない限り「質量%」を意味する。
なお、本実施例においては、本発明の特性を満たさない比較例のフィルムも便宜上、視野
角向上フィルムと称する。
【0086】
1.半値幅拡散度(波長440nmの光の主拡散方向の配光分布パターンの半値幅)
変角分光測色システムGCMS−4型(GSP−2型:株式会社村上色彩研究所製、変
角分光光度計GPS−2型)を用いて測定を行った。透過測定モード、光線入射角:0°
(フィルム法線方向)、受光角度:−80°〜80°(フィルム法線からの極角。方位角
は水平)、光源:D65、視野:2°の条件で、試料の主拡散方向が水平方向になるよう
に試料台に固定し、透過光の変角分光光度曲線を求めた。あおり角は0°とした。
実際に使用する場合には、試料台の軸と主拡散方向の軸とのずれは20度程度までは許
容される。
5°ピッチで測定した。
上記測定により得られた配光分布パターンのピークトップの半分の高さにおける角度を
求め半値幅拡散度とした。
測定に先立ち株式会社村上色彩研究所製のGCMS−4用の透過拡散標準板(オパール
ガラス)を用いて装置の校正を行い、該透過拡散標準板の受光角度0度における透過光強
度を基準(1.000)として、相対透過度を測定した。なお、前記透過拡散標準板は、
積分球式分光計測で空気層を1.000とした時の440nmの透過率が0.3069で
あった。
本測定は、各試料とも3回測定しその平均値で表示した。
試料の両面で表面粗度が異なる場合は、視野角向上フィルムとして使用する場合の光の
透過方向が一致する向きで試料を固定して測定するのが良い。本発明においては、表面粗
度が低い方から入光する向きで固定して測定した。
なお、主拡散方向とは最大の光拡散性が得られるフィルム面内の方向であり、レーザー
ポインター等を用いて簡単に決定することが出来る。
【0087】
2.裾広がり拡散度(主拡散方向の出射角度30度における波長440nmの光の相対透
過度)
変角分光測色システムGCMS−4型(GSP−2型:株式会社村上色彩研究所製、変
角分光光度計GPS−2型)を用いて測定を行った。透過測定モード、光線入射角:0°
(フィルム法線方向)、受光角度:0°〜80°(フィルム法線からの極角。方位角は水
平)、光源:D65、視野:2°の条件で、試料の主拡散方向が水平方向になるように試
料台に固定(試料台の軸と主拡散方向の軸とのずれは20度程度までは許容される)し、
透過光の変角分光光度曲線を求めた。あおり角は0°とした。
受光角0°から10°までは、1°ピッチで、10°から80°までは5°ピッチで測
定した。
測定に先立ち株式会社村上色彩研究所製のGCMS−4用の透過拡散標準板(オパール
ガラス)を用いて装置の校正を行い、該透過拡散標準板の受光角度0度における透過光強
度を基準(1.000)として、相対透過度を測定した。なお、前記透過拡散標準板は、
積分球式分光計測で空気層を1.000とした時の440nmの透過率が0.3069で
あった。
本測定は、各試料とも3回測定しその平均値で表示した。受光角(以下、出射角と称す
る)30度における波長440nmの透過度で表示した。
試料の両面で表面粗度が異なる場合は、視野角向上フィルムとして使用する場合の光の
透過方向が一致する向きで試料を固定して測定するのが良い。本発明においては、表面粗
度が低い方から入光する向きで固定して測定した。
なお、主拡散方向とは最大の光拡散性が得られるフィルム面内の方向であり、レーザー
ポインター等を用いて簡単に決定することが出来る。
【0088】
3.裾広がり拡散度比率(主拡散方向の波長440nmの光の出射角0度における透過度
(I0)と出射角30度における透過度(I30)の割合(I30/I0×100))
上記の裾広がり拡散度と同じ方法で、波長440nmの出射角0°及び30°の透過度
を測定して、出射角0度における透過度(I0)と出射角30度における透過度(I30
)の割合(I30/I0×100)を求めて%表示した。
試料の両面で表面粗度が異なる場合は、実際に使用する場合の光の透過方向が一致する
向きで試料を固定して測定する。本発明においては、表面粗度が低い方から入光する向き
で固定して測定した。
【0089】
4.異方性度
上記の裾広がり拡散度測定法で得られた裾広がり拡散度を(I30)Hとした。
また、上記の裾広がり拡散度測定法において、試料の主拡散方向が垂直方向になるよう
に試料台に固定し、上記と同様の方法で、上記の(I30)Hと直行する方向の裾広がり
拡散度である(I30)Vを求めた。
異方性度は下記(1)で算出した。
(I30)H/(I30)V (1)
【0090】
5.全光線透過率
自記分光光度計(UV−3150;島津製作所社製)に積分球付属装置(ISR−31
00;島津製作所社製)をセットして、スリット幅12nmで波長300〜800nmの
範囲を高速でスキャンし分光スペクトルの測定を行い、550nmにおける透過率で表示
した。
該測定においては、試料の主拡散方向が水平方向になるように試料固定器具に固定して
測定をした時の値を用いた。主拡散方向は、試料にレーザーマーカーで光を当てで、出射
光の拡散方向を検知して決定した。
実際に使用する場合には、試料台の軸と主拡散方向の軸とのずれは20度程度までは許
容される。
試料の両面で表面粗度が異なる場合は、実際に使用する場合の光の透過方向が一致する
向きで試料を固定して測定するのが良い。本発明においては、表面粗度が低い方から入光
する向きで固定して測定した。
【0091】
6.正面輝度低下
RISA−COLOR/ONE−II(ハイランド社製)を用いて測定を行った。市販の
VA型液晶表示装置を料台上に水平に設置し、このパネルの中央部に131×131mm
の大きさで白の画像(Nokia monitor test for windows
V 1.0(Nokia 社製)のFarbeモード)を表示し、その白画像の上にス
ポイトにて水を3滴落とし、さらにその上に試料フィルムを置き、パネルとフィルムの間
の水を均一に広げて密着させ、CCDカメラはディスプレイ表面から垂直方向1mの位置
に固定し、以下の条件で輝度測定をした。求められた輝度をIsとした。
一方、試料フィルムを密着させないパネル自体の輝度を同様な方法で輝度測定をした。
求められた輝度をIbとし、下記(1)式で正面輝度低下を算出し、正面輝度低下を%で
表示した。
輝度の低下=(Ib−Is/Ib)×100(%) (1)
輝度は上記の白の画像を5×5の25個の部分に分割し、その中心部の3×3の9個の
部分の全ピクセルの輝度を測定してその平均値で表示した。
また、試料フィルムは主拡散方向がパネルの横(水平)方向と略平行になるように設置して測定した。
【0092】
7.視野角改善効果
RISA−COLOR/ONE−II(ハイランド社製)を用いて測定を行った。市販の
VA型液晶表示装置を水平に設置し、このパネルの中央部に131×131mmの大きさ
で白の画像(Nokia monitor test for windows V 1
.0(Nokia 社製)のFarbeモード)を表示し、その白画像の上にスポイトに
て水を3滴落とし、さらにその上に視野角向上フィルムを置き、パネルとフィルムの間の水を均一に広げて密着させ、CCDカメラとディスプレイ間の距離を垂直状態で1mとして、CCDカメラを液晶表示装置のパネル表面に対して−70°から+70°までの間の赤道上を移動させて以下の条件でCIE表色系のYxy系のx値の角度依存性を測定し、垂線に対して0度の時のx値(x0)より70度の時のx値(x70)を求めて、Δx(70度)=x0−x70を算出した値で表示した。
x値は上記の白の画像を5×5の25個の部分に分割し、その中心部の3×3の9個の
部分の全ピクセルの輝度を測定してその平均値で表示した。
また、試料フィルムは主拡散方向がパネルの横(水平)方向と略平行になるように設置して測定した。
なお、液晶表示装置の画面横(水平)方向の視野角改善効果を評価する場合は、液晶画面の横方向が上記の赤道方向になるように設置して測定をした。一方、液晶表示装置の画面縦(垂直)方向の視野角改善効果を評価する場合は、液晶画面の縦(垂直)方向が上記の赤道方向になるように設置して測定をした。
【0093】
8.接着性
視野角向上フィルムの表面に、固形分濃度5質量%に調整したけん化度が74モル%であるポリビニルアルコールポリマー水溶液に下記方法で重合処理をしたブロックポリイソシアネート架橋剤及び有機スズ系化合物よりなる触媒をポリビニルアルコールポリマーに対してそれぞれ固形分比で0.04及び0.02になるように添加した配合溶液を、乾燥後のポリビニルアルコールポリマー層の厚みが、5μmになるようにワイヤーバーで塗布し、70℃で5分間乾燥した。ポリビニルアルコールポリマー水溶液には、判定が容易となるよう赤色染料を加えたものを使用した。作成した評価用試料を、両面テープを貼り付けた厚さ5mmのガラス板に、評価用試料のポリビニルアルコールポリマー層が形成された面の反対面を上記両面テープに貼り付けた。次いで、ポリビニルアルコールポリマー層を貫通して、基材フィルムに達する100個の升目状の切り傷を、隙間間隔2mmのカッターガイドを用いて付けた。次いで、粘着テープ(ニチバン社製セロテープ(登録商標)CT−24;24mm幅)を升目状の切り傷面に貼り付けた。貼り付け時に界面に残った空気を消しゴムで押して、完全に密着させた後、粘着テープを勢いよく垂直に引き剥がす作業を1回実施した。ポリビニルアルコールポリマー層が剥がれていない升目の個数を数え接着性を評価した。ポリビニルアルコールポリマー層が剥がれた升目の数が20個以下の場合を良、20個を超える場合を不良とした。
【0094】
(ブロックポリイソシアネート架橋剤の重合)
攪拌機、温度計、還流冷却管を備えたフラスコにヘキサメチレンジイソシアネートを原料としたイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート化合物水溶液(旭化成ケミカルズ製、デュラネートTPA)100質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート55質量部、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(平均分子量750)30質量部を仕込み、窒素雰囲気下、70℃で4時間保持した。その後、反応液温度を50℃に下げ、メチルエチルケトオキシム47質量部を滴下した。反応液の赤外スペクトルを測定し、イソシアネート基の吸収が消失したことを確認し、固形分75質量%のブロックポリイソシアネート水分散液を得た。
【0095】
(実施例1)
2台の溶融押し出し機を用い、基層として第1の押し出し機にて、環状ポリオレフィン系樹脂(TOPAS(TM)6013F−04 Topas Advanced Polymers社製 メルトフローレート:2.0(230℃))10質量部とポリプロピレン樹脂2011D(住友化学社製、住友ノーブレン メルトフローレート:2.5(230℃))90質量部とを事前に混練をして供給し、表層として第2の押し出し機にて、ポリプロピレン系の接着性樹脂(アドマー(TM)QF570 三井化学社製 メルトフローレート:3.7(190℃))とポリプロピレン系の接着性樹脂(アドマー(TM)QE870 三井化学社製 メルトフローレート:9.2(190℃))とを等量を事前に混練をして供給し、Tダイ方式にて溶融共押出し後、梨地の冷却ロールで冷却することにより総厚み110μmの視野角向上フィルムを得た。出口温度はそれぞれ245及び250℃とした。また、上記冷却時の冷却ロールへのフィルムの密着は静電気密着法で行った。冷却ロールの表面温度は20℃に設定した。フィルムは3m/分の速度で巻き取った。巻き取り直前で両面にコロナ処理を行った。層厚み構成は10/90/10(μm)であった。
得られた視野角向上フィルムの特性を表1に示す。
本実施例で得られた視野角向上フィルムは、正面輝度低下が20%以内に抑制され、かつ顕著な視野角改善効果が発現しており、かつPVA系の接着剤との接着性も優れており高品質であった。
なお、視野角向上フィルムを貼り付けない場合のパネル自体のΔx(70度)は+0.
016であった。
【0096】
(実施例2)
2台の溶融押し出し機を用い、基層として第1の押し出し機にて、環状ポリオレフィン系樹脂(TOPAS(TM)6013S−04 Topas Advanced
Polymers社製 メルトフローレート:2.0(230℃))35質量部とエチレンとオクテンよりなるブロック共重合樹脂(ダウ・ケミカル社製 INFUSE(TM) D9817.15 メルトフローレート:26(230℃))65質量部を事前に混練をして供給し、表層として第2の押し出し機にて、ポリプロピレン系の接着性樹脂(アドマー(TM)QF551 三井化学社製 メルトフローレート:5.7(190℃))を供給して、Tダイ方式にて溶融共押出し後、梨地の冷却ロールで冷却することにより厚み56μmの視野角向上フィルムを得た。上記冷却時の冷却ロールへのフィルムの密着はバキュームチャンバーを用いて行った。第1押し出し機および第2押し出し機共に一軸方式であり、出口温度はそれぞれ230及び250℃とした。また、冷却ロールの表面温度は50℃に設定した。フィルムは21m/分の速度で巻き取った。層厚み構成は8/40/8(μm)であった。
得られた視野角向上フィルムの特性を表1に示す。
本実施例で得られた視野角向上フィルムは、実施例1で得られた視野角向上フィルムよりもさらに正面輝度低下が少なく高品質であった。
【0097】
(実施例3)
実施例2の方法において、フィルム厚み及び層厚み構成を40μm及び6/28/6(
μm)として、押し出し機の出口温度を両方共に270℃に、巻き取り速度を18m/分
に変更する以外は、実施例2と同様の方法で視野角向上フィルムを得た。
得られた視野角向上フィルムの特性を表1に示す。
本実施例で得られた視野角向上フィルムは、視野角改善効果及び正面輝度低下共に優れ
ており高品質であった。
【0098】
(実施例4)
2台の溶融押し出し機を用い、基層として第1の押し出し機にて、環状ポリオレフィン
系樹脂(TOPAS(TM)5013S−04 Topas Advanced
Polymers社製 メルトフローレート:8.6(230℃))50質量部とエチ
レンとオクテンよりなるブロック共重合樹脂(ダウ・ケミカル社製 INFUSE(TM
) D9100.15 メルトフローレート:2.4(230℃))50質量部を供給し
、表層として、第2の押し出し機にてポリプロピレン樹脂2011D(住友化学社製、住
友ノーブレン メルトフローレート:2.5(230℃)供給し、Tダイ方式にて溶融共
押出し後、鏡面の冷却ロールで冷却することにより厚み115μm、層厚み構成30/5
5/30(μm)の視野角向上フィルムを得た。上記冷却時の冷却ロールへのフィルムの
密着はバキュームチャンバーを用いて行った。第1押し出し機は二軸方式であり、第2押
し出し機共は一軸方式であった。出口温度は両押し出し機共に250℃とした。また、冷
却ロールの表面温度は20℃に設定した。フィルムは3.0m/分の速度で巻き取った。
得られた視野角向上フィルムの特性を表1に示す。
本実施例で得られた視野角向上フィルムは、実施例1で得られた視野角向上フィルムよ
りは、視野角改善効果がやや劣るが、正面輝度低下が小さく高品質であった。
【0099】
(実施例5)
実施例2の方法において、第1押し出し機および第2押し出し機の出口温度はそれぞれ
250及び230℃に、冷却ロールの表面を梨地に、巻き取り速度を15m/分に変更す
る以外は、実施例2と同様の方法で視野角向上フィルムを得た。
得られた視野角向上フィルムの特性を表1に示す。
本実施例で得られた視野角向上フィルムは、実施例2で得られた視野角向上フィルムよ
り正面輝度低下が若干悪化するが、視野角改善効果が向上した。
【0100】
(実施例6)
実施例2の方法において、第1の押し出し機に供給する樹脂配合物組成を環状ポリオレフィン系樹脂(TOPAS(TM)6013F−04 Topas Advanced Polymers社製 メルトフローレート:2.0(230℃))とポリプロピレン樹脂2011D(住友化学社製、住友ノーブレン メルトフローレート:2.5(230℃))の配合割合をそれぞれ35質量部及び65質量部とし、さらに基層の厚みを30μmに変更する以外は、実施例1と同様の方法で視野角向上フィルムを得た。
得られた視野角向上フィルムの特性を表1に示す。
本実施例で得られた視野角向上フィルムは、実施例1で得られた視野角向上フィルムに
比べて視野角改善効果が低下するが正面輝度低下が良化する。
【0101】
(実施例7)
実施例1の方法で、基層の厚みを60μmに変更する以外は、実施例1と同様の方法
で視野角向上フィルムを得た。
得られた視野角向上フィルムの特性を表1に示す。
本実施例で得られた視野角向上フィルムは、実施例1で得られた視野角向上フィルムよ
りは正面輝度低下は良くなるが、視野角改善効果が少なくなった。
【0102】
(実施例8)
実施例2において、第1の押し出し機に供給する樹脂組成を環状ポリオレフィン系樹脂
(TOPAS(TM)6013S−04 Topas Advanced Polyme
rs社製 メルトフローレート:2.0(230℃))20質量部とエチレンとオクテン
よりなるブロック共重合樹脂(ダウ・ケミカル社製 INFUSE(TM) D9817
.15 メルトフローレート:26(230℃))80質量部に、フィルム厚み及び層厚
み構成を108μm及び24/60/24(μm)変更する以外は、実施例2と同様の方
法で視野角向上フィルムを得た。
得られた視野角向上フィルムの特性を表1に示す。
本実施例で得られた視野角向上フィルムは、視野角改善効果及び正面輝度低下共に
優れており高品質であった。
【0103】
(実施例9)
実施例2の方法において、第1の押し出し機に供給する樹脂組成を環状ポリオレフィン
系樹脂(TOPAS(TM)6013S−04 Topas Advanced
Polymers社製 メルトフローレート:2.0(230℃))10質量部とエチ
レンとオクテンよりなるブロック共重合樹脂(ダウ・ケミカル社製 INFUSE(TM
) D9817.15 メルトフローレート:26(230℃))90質量部に、厚みを
108μm、層厚み構成を24/60/24(μm)に変更する以外は、実施例2と同様
の方法で視野角向上フィルムを得た。
得られた視野角向上フィルムの特性を表1に示す。
本実施例で得られた視野角向上フィルムは、実施例2で得られた視野角向上フィルムと
同等の特性を有しており高品質であった。
【0104】
(実施例10)
実施例2の方法において、厚みを84μm、層厚み構成を12/60/12(μm)に
変更する以外は、実施例2と同様の方法で視野角向上フィルムを得た。
得られた視野角向上フィルムの特性を表1に示す。
本実施例で得られた視野角向上フィルムは、実施例2で得られた視野角向上フィルムよ
り正面輝度低下が大きくなるが、視野角改善効果が良くなり高品質であった。
【0105】
(比較例1)
実施例1の方法において、基層の厚みを30μmとする以外は、実施例1と同様の方法
で視野角向上フィルムを得た。
得られた視野角向上フィルムの特性を表1に示す。
本比較例で得られた視野角向上フィルムは、正面輝度低下は少ないが視野角向上効果が少なく視野角向上特性が劣っていた。
【0106】
(比較例2)
実施例6の方法において、基層の厚みを150μmに変更する以外は、実施例6と同様の方法で視野角向上フィルムを得た。
得られた視野角向上フィルムの特性を表1に示す。
本比較例で得られた視野角向上フィルムは、視野角改善効果は良好であるが、正面輝度
低下が大きく視野角向上特性が劣っていた。
【0107】
(比較例3)
環状ポリオレフィン系樹脂(TOPAS(TM)6013F−04 Topas Advanced Polymers社製 メルトフローレート:2.0(230℃))10質量部とポリプロピレン樹脂2011D(住友化学社製、住友ノーブレン メルトフローレート:2.5(230℃))90質量部とを、池貝鉄工社製PCM45押出機を用いて樹脂温度250℃にて溶融混合してTダイで押出し、鏡面の冷却ロールで冷却することにより厚み90μmの視野角向上フィルムを得た。上記冷却時の冷却ロールへのフィルムの密着は静電気密着法で行った。冷却ロールの表面温度は20℃に設定した。フィルムは3m/分の速度で巻き取った。巻き取り直前で両面にコロナ処理を行った。
得られた視野角向上フィルムの特性を表1に示す。
本比較例で得られた視野角向上フィルムは視野角向上特性は実施例1と同等であるが、PVA系接着剤に対する接着性に劣っていた。
【0108】
(比較例4)
実施例1の方法において、第2の押し出し機に供給する樹脂をポリプロピレン樹脂(住友化学社製、住友ノーブレン FS2011DG3)に変更する以外は、実施例1と同様の方法で視野角向上フィルムを得た。
得られた視野角向上フィルムの特性を表1に示す。
本比較例で得られた視野角向上フィルムは、PVA系接着剤に対する品質がも劣っており低品質であった。
【0109】
(比較例5)
実施例2の方法において、第2押し出し機に供給する樹脂を第1押し出し機に供給する樹脂配合物と同じ配合物に変更する以外は、実施例1と同様の方法で視野角向上フィルムを得た。
得られた視野角向上フィルムの特性を表1に示す。
本比較例で得られた視野角向上フィルムは、PVA系接着剤に対する品質が劣っており低品質であった。
【0110】
(比較例6)
実施例9の方法において、厚みを28μmに、層厚み構成を6/16/6(μm)に変更する以外は、実施例9と同様の方法で視野角向上フィルムを得た。
得られた視野角向上フィルムの特性を表1に示す。
本比較例で得られた視野角向上フィルムは、正面輝度低下は小さいが、視野角改善効果が劣っており低品質であった。
【0111】
(比較例7)
実施例2の方法で、厚みを175μmに、層厚み構成を25/125/25(μm)に変更する以外は、実施例5と同様の方法で視野角向上フィルムを得た。
得られた視野角向上フィルムの特性を表1に示す。
本比較例で得られた視野角向上フィルムは、視野角改善効果は良好であるが、正面輝度低下が大きく低品質であった。
【0112】
(比較例8)
実施例9の方法において、フィルム総厚みを216μmに、層厚み構成を48/120/48(μm)に変更する以外は、実施例9と同様の方法で視野角向上フィルムを得た。
得られた視野角向上フィルムの特性を表1に示す。
本比較例で得られた視野角向上フィルムは、視野角改善効果は良好であるが、正面輝度低下が大きく低品質であった。
【0113】
(比較例9)
ポリプロピレン樹脂(住友化学社製、住友ノーブレン FS2011DG3)50質量
部、エチレン・ブテン共重合体(三井化学社製、タフマー A0585X)30質量部及
びナノ結晶構造制御型ポリオレフィン系エラストマー樹脂(三井化学社製、ノティオ P
N3560)20質量部を予め2軸の押し出し機で溶融押し出しすることにより得た混練
されたポリオレフィン系樹脂組成物を、60mmφ単軸押出機(L/D;22)内で樹脂
温度240℃にて溶融混合してTダイで押出した後、20℃のキャスティングロールで冷
却することにより未延伸シートを得た。次いでこの未延伸シートを縦延伸機のロール周速
差を利用して延伸温度118℃で4.5倍に延伸し、更に横方向に145℃で8.2倍に
延伸をし、158度で熱セットをした。引き続きその片面にコロナ処理をして厚み25μ
mの光拡散フィルムを得た。
本比較例で得られた視野角向上フィルムは、正面輝度低下は小さいが、視野角改善効果
が劣っており低品質であった。
【0114】
(比較例10)
2台の溶融押し出し機を用い、基材層のA層として、第1の押し出し機にてポリプロピ
レン樹脂WF836DG3(住友化学社製、住友ノーブレン)100質量部を供給し、拡
散層のB層として、第2の押し出し機にてポリプロピレン樹脂WF836DG3(住友化
学社製、住友ノーブレン)17質量部とプロピレン・エチレン共重合体 HF3101C(日本ポリプロ社製)83質量部を供給し、ダイス内にてA/Bとなる
ように、Tダイ方式にて溶融共押出し後、20℃のキャスティングロールで冷却すること
により未延伸シートを得た。次いでこの未延伸シートを縦延伸機のロール周速差を利用し
て延伸温度120℃で4.8倍に延伸し、引き続いてテンタ―式延伸機により、165℃
で加熱後、155℃の延伸温度で横方向に9倍延伸した。次いで166℃で熱固定を行っ
て、A層及びB層の厚みはそれぞれ22.2μm及び2.8μmである視野角向上フィル
ムを得た。巻き取り直前において基層A表面にコロナ処理を行った。
得られた視野角向上フィルムの特性を表1に示す。
本比較例で得られた視野角向上フィルムは、正面輝度低下は小さいが、視野角改善効果
が劣っており低品質であった。
【0115】
(比較例11)
厚み100μmの高透明性ポリエステルフィルム(東洋紡績社製 コスモシャインA4
300)の片面に、平均粒径が3μmの真球状のアクリル樹脂粒子(東洋紡績社製 タフ
チック(TM)FHーS300)50質量部とポリウレタン樹脂50質量部の混合部が乾
燥後厚みで30μmになるように、塗工機を用いて、塗布および乾燥をすることにより視
野角向上フィルムを得た。
得られた視野角向上フィルムの特性を表1に示す。
本比較例で得られた視野角向上フィルムは、視野角改善効果は良好であるが、正面輝度
低下が大きく低品質であった。
【0116】
(実施例11及び実施例12)
実施例1及び2で用いた視野角向上フィルムの片面に、クレハエラストマー社製のアンチリフレクションタイプのディスプレイ用保護フィルムを貼着して反射低減層が複合された視野角向上フィルム複合体を得た。該視野角向上フィルム複合体を反射低減層が視認側になるように光学用の両面粘着テープで実施例1〜10において用いたと同じ形式の市販のVA方式液晶表示装置の表面に主拡散方向が液晶表示装置の略横(水平)方向になるように貼り付けて、視野角改善効果及び正面輝度低下の評価を行った。
実施例1及び2と同等の結果が得られた。さらに、反射防止効果が付加されるので、上記液晶パネルを明るい環境において観察しても視野角向上効果の低下が見られなかった。また、外光の映り込む場所で使用しても外光の映り込みが抑制されるので画像の視認性が向上した。
【0117】
(実施例13及び実施例14)
実施例1及び2で用いた視野角向上フィルムの片面に、クレハエラストマー社製のアンチグレアータイプのディスプレイ用保護フィルムを貼着して反射低減層が複合され視野角向上フィルム複合体を得た。該視野角向上フィルム複合体を反射低減層が視認側になるように光学用の両面粘着テープで実施例1〜10において用いたと同じ形式の市販のVA方式液晶表示装置の表面に主拡散方向が液晶表示装置の略横(水平)方向になるように貼り付けて、視野角改善効果及び正面輝度低下の評価を行った。
実施例1及び2と同等の結果が得られた。さらに、反射防止効果が付加されるので、上記液晶パネルを明るい環境において観察しても視野角向上効果の低下が見られなかった。また、外光の映り込む場所で使用しても外光の映り込みが抑制されるので画像の視認性が向上した。
【0118】
(実施例15及び実施例16)
実施例11及び12において、主拡散方向フィルムの貼着方向を視野角向上フィルムの主拡散方向がパネルの略縦(垂直)方向になるように変更した。パネル画像の上下方向の視野角改善効果が発現した。
【0119】
(実施例17及び実施例18)
実施例1及び実施例2の方法において得られた視野角向上フィルムを用いて液晶表示装置をTNタイプに変更して、視野角向上フィルムの貼り付け方向をそれぞれ主拡散方向が液晶表示装置の略横(水平)方向になるように光学用の両面粘着テープで貼着して横(水平)方向の視野角改善効果及び正面輝度低下の評価をした。
結果を表2に示す。
【0120】
(実施例19及実施例20)
実施例17及び18の方法において、視野角向上フィルムの貼り付け方向をそれぞれ略縦(垂直)方向に貼着して縦方向(垂直)の視野角改善効果及び正面輝度低下の評価をした。
結果を表2に示す。
【0121】
(比較例12及び比較例13)
実施例17及び実施例18の方法において、液晶表示装置に貼着するフィルムをそれぞれ比較例1及び比較例7で得られたフィルムを用いるように変更する以外は、実施例17及び実施例18と同様にして評価した結果を表2に示す。
【0122】
(比較例14及び比較例15)
実施例19及び実施例20の方法において、液晶表示装置に貼着するフィルムをそれぞれ比較例1及び比較例7で得られたフィルムを用いるように変更する以外は、実施例19及び、実施例20と同様にして評価した結果を表2に示す。
【0123】
(参考例1)
異方性光拡散フィルムを貼着しないTNタイプの液晶表示装置自体のx値(x70)を
表2に示す。
【0124】
表2より以下の事が言える。
横(水平)方向に関しては、本発明の視野角向上フィルムの使用により、VAタイプの液晶表示装置と同様に正面輝度低下を抑制した形で視野角特性が改善できる。
縦(垂直)方向は上側からの観察と下側からの観察とで改善効果が異なる。下方向よりの観察では横(水平)方向よりはその効果が小さいが視野角特性が改善できる。しかし、上側からの観察での視野角特性の改善効果は極僅かである。上側からの観察においては、液晶表示装置自体の視野角特性が下側からの観察や横(水平)方向の観察に比べて優れていることが該挙動差の原因になっていると推察している。
TNタイプの液晶表示装置は、色調反転の大きさが重要であるとされている。上記のカ
ラーシフトでの上方向の効果は僅かであるが、色調反転特性では本発明の視野角向上フィルムにおいて上方向を含めていずれの方向においても顕著な改善が見られる。従って、本発明の視野角特性改善方法はTNタイプの液晶表示装置についても有効であると言える。
【0125】
(実施例21及び実施例22)
それぞれPVAとヨウ素からなる偏光板の片側にそれぞれ実施例1及び2で得た視野角向上フィルムを偏光膜の吸収軸と視野角向上フィルムの主拡散方向配が直行するように接着性評価法において記載したPVA系接着剤にて貼り合わせて視野角向上フィルム積層体を得た。該積層体の視野角向上フィルムとの反対の面にTACフィルム(富士フイルム(株)社製、厚み80μm)を貼り付けて偏光板を作成した。
市販のVAタイプの液晶表示装置のパネルの上面側の偏光板を剥がして、上記偏光板に変更して、視野角改善効果及び正面輝度低下を評価した。
実施例1及び2と同等の結果が得られた。
【0126】
(実施例23及び実施例24)
それぞれPVAとヨウ素からなる偏光子の片側にフィルムそれぞれ実施例1及び2で得た視野角向上フィルムを偏光膜の吸収軸と視野角向上フィルムの主拡散方向配が45度になるように接着性評価法において記載したPVA系接着剤にて貼り合わせて視野角向上フィルム積層体を得た。該積層体の視野角向上フィルムとの反対の面にTACフィルム(富士フイルム(株)社製、厚み80μm)を貼り付けて偏光板を作成した。
市販のTNタイプの液晶表示装置のパネルの上面側の偏光板を剥がして、上記偏光板に変更して、視野角改善効果及び正面輝度低下を評価した。
実施例17〜20と同等の結果が得られた。
【0127】
【表1】

【0128】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明の視野角向上フィルムは、直進透過性と拡散透過性の両方の特徴のある特性を兼
備した配光分布パターンを有し、出射光の角度により出射される光の波長依存性が視野角
改善効果や正面輝度低下抑制に有効に働くように制御されているので、液晶表示装置の液
晶セルの視認側に設置することにより、視野角改善効果と正面輝度低下の抑制という二律
背反事象を高度なレベルで両立させることができる。さらに、本発明の視野角向上フィルムは偏光板との接着性に優れているので偏光板との積層が容易であり、偏光板との積層体として液晶表示装置に組み込むことができる。そのために、視野角改善効果と正面輝度低下抑制とが両立した液晶表示装置を提供することができる。従って、産業界への寄与は大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主として二種の非相溶性のポリオレフィン系樹脂よりなる光拡散層の少なくとも片面に、主として極性基を含有したポリオレフィン樹脂よりなる接着改良層が最表面になるように積層された多層光拡散フィルムであって、以下の特性を同時に満たすことを特徴とする視野角向上フィルム。
(1)明細書中で記載した方法で測定される波長440nmの光の主拡散方向の配光分
布パターンの半値幅が18度以下である;
(2)明細書中で記載した方法で測定される主拡散方向の波長440nmの光の出射角
0度における透過度(I0)と出射角30度における透過度(I30)の割合(I30/
I0×100)が0.25〜5.5%である。
【請求項2】
明細書中で記載した方法で測定される異方性度が2.0以上であることを特徴とする請求項1に記載の視野角向上フィルム。
【請求項3】
非相溶性の樹脂の少なくとも一種がポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求
項1又は2のいずれかに記載の視野角向上フィルム。
【請求項4】
非相溶性の樹脂の二種がポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項3に記載
の視野角向上フィルム。
【請求項5】
ポリオレフィン系樹脂がポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂及び環状ポリオレ
フィン系樹脂のいずれかより選ばれてなることを特徴とする請求項3又は5に記載の視野
角向上フィルム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の視野角向上フィルムを偏光板表面に積層してなることを特徴とする視野角向上フィルム積層体。
【請求項7】
上記積層が接着剤を介して行われてなることを特徴とする請求項6に記載の視野角向上フィルム積層体。
【請求項8】
少なくともバックライト装置と液晶セルよりなる液晶表示装置において、液晶セルの偏光子として請求項6又は7記載の視野角向上フィルム積層体を用いてなることを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−226158(P2012−226158A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94248(P2011−94248)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】