説明

親水性重合体の製造方法

【課題】親水性重合体のゲル状重合物を切断、細断した後、乾燥して得られる粉末の粉立ちを防止し、さらには粉体の流れを悪化させない親水性重合体の製造方法の提供。
【解決手段】親水性単量体を重合して得られるゲル状重合物を切断、細断した後、乾燥して得られる重合体粉末に対して、親水性シリコーンを添加する親水性重合体の製造方法。
前記親水性シリコーンは、重合体粉末に0.001〜5.0質量%の割合で添加するのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理、製紙、塗料、医薬品、化粧品、さらには育児又は介護用品等の幅広い分野で用いられている、親水性重合体の製造方法に関するもので、化学品製造技術に属するものである。
【背景技術】
【0002】
高分子凝集剤としては、カチオン性単量体とアクリルアミドの共重合体及びアニオン性単量体とアクリルアミドの共重合体等といった、水溶性の重合体が使用されている。又、吸水性樹脂としては、アクリル酸ナトリウム系共重合体等の親水性重合体が使用されている。
これら親水性重合体は、親水性単量体を重合して調製されるもので、重合方法としては、主として、水を媒体とする水溶液重合が採用されている。
【0003】
親水性重合体は、乾燥した粉末として使用される。
このため、水溶液重合で得られた水性ゲル状の親水性重合体を細断し、粉砕し、乾燥して、粉末状の製品する必要がある。
【0004】
しかしながら、親水性重合体の乾燥後の粉末は、粉立ちすることが多い。
例えば、乾燥後の工程としては、乾燥工程、粉砕工程及び篩分工程等があるが、乾燥後の粉立ちした粉末は、吸湿して固まったり、粘りついたりするため、作業者の顔面や衣類等に付着したり、吸い込んだ場合には気管に付着する恐れもあり、作業環境上好ましくない。又、粉立ちした粉末のうち、反応装置、その周辺装置、壁及び床等に付着したものは、吸湿して固まったり、粘りついたりし、特に床に付着したものは、漏水と混ざると滑り易くなるため、作業上も好ましいものではない。
【0005】
親水性重合体の粉立ち防止方法としては、ポリエチレングリコール及びソルビタン脂肪酸エステル等の界面活性剤を、重合体粉末に添加する方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【0006】
【特許文献1】特開昭62−27484号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記した界面活性剤を使用する方法は、粉立ち防止効果が不十分であるため、十分な粉立ち防止のためには添加量を多くする必要がある。この様に界面活性剤の添加量が多くなると、粉末同志がべたつき、特に連続操業する場合、粉末の流れが悪化してしまうという問題を有するものであった。又、この様にして得られた袋詰の粉末は、袋から粉末をホッパー等に投入する際、べとつくため投入に時間を要したり、最悪の場合には、袋から取り出せないという問題が発生するものであった。
本発明者らは、親水性重合体のゲル状重合物を切断、細断した後、乾燥して得られる粉末の粉立ちを防止し、さらには粉体の流れを悪化させない親水性重合体の製造方法を見出すため鋭意検討を行ったのである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者らは、前記課題を解決するため種々の検討を行った結果、親水性重合体の粉末に、特定の親水性シリコーンを添加することにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成したのである。
以下、本発明を詳細に説明する。
尚、本明細書において、アクリレート又はメタクリレートを(メタ)アクリレートと表し、アクリル酸又はメタクリル酸を(メタ)アクリル酸と表、アクリルアミド又はメタクリルアミドを(メタ)アクリルアミドと表す。
【0009】
本発明は、親水性単量体を重合し、親水性重合体を製造する方法に係わるもので、特に、水溶液重合方法等で、親水性単量体を重合して得られる親水性重合体の粉末の粉立ちを防止することができる製造方法に関するものである。
以下、親水性単量体、その重合方法、得られた水性ゲル状の親水性重合体の取扱方法について説明する。
【0010】
1.親水性単量体
親水性単量体としては、カチオン性単量体、アニオン性単量体及びノニオン性単量体等を挙げることができる。
【0011】
カチオン性単量体としては、ラジカル重合性を有するものであれば良く、具体的には、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びジエチルアミノ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの塩酸塩及び硫酸塩等の3級塩;ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの塩化メチル付加物等のハロゲン化アルキル付加物及び塩化ベンジル付加物等のハロゲン化アリール付加物等の4級塩;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等のジアルキル(メタ)アクリルアミド等の塩酸塩及び硫酸塩等の3級塩;ジアルキル(メタ)アクリルアミドの塩化メチル付加物等のハロゲン化アルキル付加物及び塩化ベンジル付加物等のハロゲン化アリール付加物等の4級塩等が挙げられる。
これらの中でも、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの4級塩が好ましく、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートのハロゲン化アルキル付加物がより好ましい。
【0012】
アニオン性単量体としては、ラジカル重合性を有するものであれば良く、(メタ)アクリル酸、及びそのナトリウム塩等のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩;マレイン酸、フマル酸及びイタコン酸等不飽和酸、及びそれらのアルカリ金属塩;アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のアクリルアミドアルキルアルカンスルホン酸、及びそのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩;ビニルスルホン酸及びそのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩等が挙げられる。
これらの中でも、(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0013】
ノニオン性単量体としては、ラジカル重合性を有するものであれば良く、例えば(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド等のジアルキル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
これらの中でも、(メタ)アクリルアミドが好ましい。
【0014】
これら親水性単量体は、単独で使用しても、又は2種以上を組合せて使用しても良い。
【0015】
親水性単量体には、得られる親水性重合体の親水性を大きく阻害しない範囲で、その他の疎水性単量体等と組合せ用いることもできる。
その他の疎水性単量体としては、スチレン、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、アルキル(メタ)アクリレート、ビニルピリジン、ビニルイミダノール及びアリルアミン等が挙げられる。
【0016】
2.重合方法
上記のような親水性単量体を重合する方法としては、ラジカル重合が一般的であり、熱重合開始剤又はレドックス重合開始剤の存在下に重合する方法、光重合開始剤の存在下に、光重合する方法が挙げられる。
これら重合反応は、バッチ式でも、ベルト状反応機を使用した連続式でも行うことができる。
又、重合形態としては、水溶液重合が一般的であり、以下、水溶液中でラジカル重合す
る場合について説明する。
【0017】
単量体濃度が10〜80質量%、好ましくは25〜60質量%の単量体水溶液を用い、酸素の非存在下に重合させるものであり、熱重合開始剤又はレドックス重合開始剤を使用する場合は、重合開始温度0〜35℃、重合温度100℃以下で、0.1〜10時間重合反応させ、重合体を得る。
【0018】
光重合開始剤を使用する場合は、強度0.5〜1000W/m2の光を照射して、同様に重合反応させて重合を開始する以外は、前記開始剤を用いた製造方法と同様の方法で重合体を得るのである。
【0019】
重合開始剤の使用割合は、目的とする重合体の重合度及び粘度等に応じて定められるが、通常、全単量体及び重合開始剤の合計量を基準にして5〜10,000質量ppm用いられる。
【0020】
熱重合開始剤としては、過硫酸ナトリウム、及び過硫酸カリウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキシド等の有機過酸化物;2,2’−アゾビス−(アミジノプロパン)ハイドロクロライド、アゾビスシアノバレリン酸、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル及び2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド〕等のアゾ系化合物等が挙げられ、レドックス重合開始剤としては、過酸化水素、過硫酸ナトリウムと亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄等の組み合わせからなるものが挙げられる。尚、これらの重合開始剤を単独で使用しても幾つかを併用することもできる。
【0021】
光重合開始剤としては、ベンジルジメチルケタール等のケタール型;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン及びジエトキシアセトフェノン等のアセトフェノン型;ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル、ベンゾイン等のベンゾイン型;ベンゾフェノン型;並びにチオキサントン型等が挙げられる。これらは必要に応じて、ジエタノールアミン等の光増感剤等と併用して使用することもできる。
尚、吸水性樹脂の製造においては、単量体水溶液中に架橋剤を添加しておくことが好ましい。
【0022】
3.後処理方法
親水性単量体を重合して得られた水性ゲル状の重合体は、重合装置から取出され、搬送され、裁断され、さらに粉砕されて、小塊粒子とされる。当該粒子は、高温度下に、水分を除去するために乾燥され、乾燥後、更に必要に応じて、粉砕され粉末状の親水性重合体とされる。
【0023】
親水性単量体を重合して得られた水性ゲル状重合体は、重合がバッチ式の場合は、重合容器から一括して取出され、重合が連続式の場合は、重合装置から連続的に排出され、ギロチンカッター等で細断されて取出される。
【0024】
重合装置より取出された水性ゲル状重合体は、粗チョッパー等のゲル粗砕機を使用して粗めに裁断し、さらに細チョッパー等のゲル粉砕機を使用し、細かく粉砕される。
【0025】
高分子凝集剤で使用する水溶性重合体を例に挙げ、さらに詳細に説明する。
水性ゲル状重合体は、重合がバッチ式の場合は、1〜10cm程度に裁断される。又、重合が連続式の場合は、重合装置から連続的に排出されたシート状重合体を、2〜3cm程度に裁断される。
裁断された重合体は、細チョッパー等により2〜10mm程度に細断される。
細断された重合体は、その後乾燥工程に送られる。
【0026】
4.親水性重合体の製造方法
本発明は、上記のようにして細粒化された水性ゲル状重合体を乾燥して得られる粉末に対して、親水性シリコーンを添加するものである。
具体的には、粗チョッパーから得られる小塊粒子の乾燥工程後、乾燥後に得られる粉末の粉砕機による粉砕工程後、又は粉砕後の粉末の粒度を調整する篩分工程後に得られる重合体粉末に対して、親水性シリコーンを添加する方法等が挙げられる。
本発明では、重合体粉末の粉立ちを効果的に低減できるという理由で、篩分工程後に得られる重合体粉末に親水性シリコーンを添加する方法が好ましい。
以下、各工程、親水性シリコーン及びその添加方法等について説明する。
【0027】
4−1.各工程
乾燥工程、粉砕工程及び篩分工程は、常法に従えば良い。
乾燥工程としては、例えばバンド式乾燥機、回転式乾燥機、遠赤外線式乾燥機等で、温度50〜200℃程度の温度で乾燥する。乾燥時間としてはゲル粒径、乾燥温度、乾燥機様式、乾燥させる度合いに応じて適宜設定すれば良く、例えばゲル粒径が5〜10mm程度で回転式乾燥機を用い乾燥温度が60℃の場合は、10時間程度であり、ゲル粒径が1mm程度で乾燥温度が150℃の場合は10分程度である。
【0028】
粉砕工程としては、例えば、ロールミル粉砕機等が挙げられる。
粉砕工程で得られる重合体粉末の粒径としては、目的に応じて適宜設定すれば良い。高分子凝集剤で使用する水溶性重合体の場合は、0.1〜2mm程度が好ましい。
又、必要に応じて、次工程の篩分工程で発生する粗粒を再粉砕することもできる。
【0029】
篩分工程としては、例えば、振動式篩機及び回転式篩機等が挙げられ、回転式篩機が好ましい。回転式篩機としては、ロータリーシフター等が挙げられる。
篩分工程で得られる重合体粉末の粒径としては、目的に応じて適宜設定すれば良く、篩網も粒径に合わせて選択すれば良い。高分子凝集剤で使用する水溶性重合体の場合は、0.1〜2.0mm程度が好ましく、用いる篩網は、粗粒除去の網は8〜42メッシュ、微粉除去の網は60〜200メッシュが好ましい。
【0030】
本発明においては、親水性シリコーンの添加を効果的に行うことができるため、前記いずれかの工程で得られた重合体粉末を攪拌装置に導入し、攪拌下に親水性シリコーンを重合体粉末に滴下又は噴霧により添加する方法が好ましい。
攪拌装置としては、例えばナウターミキサー、Vブレンダー及びエアブレンダー等が挙げられる。攪拌装置の回転速度としては、目的に応じて適宜設定すれば良いが、0.1〜1000rpm等が挙げられる。ナウターミキサーの場合は、公転回転数は0.1〜100rpm、自転回転数は10〜1000rpm等が挙げられる。
攪拌装置としては、ナウターミキサーを使用することが、重合体粉体の処理を連続的に運転することが可能となるため好ましい。この場合の重合体粉末の供給割合としては、目的に応じて適宜設定すれば良いが、滞留時間が30分〜2時間であることが好ましい。
【0031】
4−2.親水性シリコーン
本発明で使用する親水性シリコーンは、親水性を有するシリコーンであれば種々の化合物を使用することができる。尚、本発明において、親水性とは、水に添加して透明又は乳濁するものをいい、水に添加して透明性を有するもの(以下、この性状を便宜上「水溶性」「溶解」という)が好ましい。水溶性の程度としては、水中に5質量%以上溶解するものが好ましい。
親水性シリコーンとしては、ポリシロキサンのシロキサン結合から成る主鎖に、親水性基を付加したグラフト共重合体が好ましい。
【0032】
親水性基としてはポリエーテル基が好ましく、ポリエーテル基としては、ポリオキシエチレン基や、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンからなる基等が挙げられる。
親水性シリコーンとしては、上記のようなポリエーテル基を側鎖に有する、いわゆるグラフト状の重合体が好ましい。親水性シリコーンの具体例としては、下記式(1)で表される化合物が好ましい。
【0033】
【化1】

【0034】
上記式(1)において、R1 は炭素数1〜6のアルキル基又はアリール基、R2 は酸素原子により中断されても良い炭素数1〜12のアルキレン基、R3 は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基である。m=0〜30、n=1〜40、m+n=3〜40、a=5〜30、b=0〜30である。
【0035】
特には、R1 のアルキル基又はアリール基としてメチル基、R2 のアルキレン基としては−CH2 −や−(CH23 −等の炭素数1〜3のもの及び−CH2CH2OC36−、R3としてはメチル基やt−ブチル基等の炭素数1〜4のもの挙げられ、m+n=3〜10、a=6〜12、b=0であって、且つ、n/(m+n)=0.3〜0.5のものが挙げられる。
【0036】
親水性シリコーンとしては、各種のものが市販され、市販品を用いることができる。具体的な商品としては、信越化学工業(株)製のポリエーテル変性シリコーン「KF−355A」、「KF−352A」等が挙げられる。
【0037】
4−3.添加方法
親水性シリコーンの添加方法としては、粉末に親水性シリコーンを添加する方法、親水性シリコーンを噴霧する方法が挙げられる。
親水性シリコーンの添加する箇所としては、乾燥工程、粉砕工程及び篩分工程いずれの場合にも、粉末の供給時に添加する方法が挙げられる。乾燥工程、粉砕工程又は篩分工程後に得られる粉末を攪拌装置に導入して処理する場合には、粉末の攪拌装置供給時に添加する方法が挙げられる。
【0038】
粉末に添加する親水性シリコーンの量としては、目的に応じて適宜設定すれば良いが、通常は、粉末に対して0.001〜5質量%の割合であり、好ましくは0.005〜1質量%である。
【0039】
本発明により得られる親水性重合体の粉末は、粉立ちが少ないものとなる。その割合としては、目的に応じて設定すれば良いが、100cpm以下であることが好ましい。
【0040】
5.用途
粉末状の親水性重合体は、水溶性のものは高分子凝集剤として、汚泥脱水剤、歩留まり向上剤、紙力増強剤、ピッチコントロール剤及びサイジング剤等の製紙工程における抄紙用薬剤として、塗料用等の増粘剤として、さらには膏体用基材等に用いられ、水膨潤性のものは吸水性樹脂として、オムツを始めとして各種の用途に用いられる。
親水性重合体を高分子凝集剤として使用する場合には、硫酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウム及びスルファミン酸等、脱水処理に悪影響がでない限り公知の添加剤と混合して使用しても良い。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、親水性単量体を水系で重合して得られる重合体粉末の粉立ち及び粉末の流動性の悪化を、簡便な方法で防止することができる。これにより、親水性重合体の製造を、作業上好ましいものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
本発明は、親水性単量体を重合して得られるゲル状重合物を切断、細断した後、乾燥して得られる重合体粉末に対して、親水性シリコーンを添加する親水性重合体の製造方法に関する。
重合体粉末に対する親水性シリコーンの添加割合としては、0.001〜5.0質量%が好ましい。親水性シリコーンとしては、側鎖にポリエーテル基を有する化合物が好ましい。
親水性シリコーンの添加方法としては、乾燥後に得られる重合体粉末を攪拌装置に導入し、攪拌下で前記粉末に親水性シリコーンを添加する方法が好ましい。
又、乾燥工程後、粉砕工程後又は篩分工程後に得られる重合体粉末を攪拌装置に導入し、攪拌下で前記粉末に親水性シリコーンを添加する方法が好ましく、さらに篩分工程後に得られる重合体粉末を攪拌装置に導入し、攪拌下で前記粉末に親水性シリコーンを添加する方法が好ましい。
【実施例】
【0043】
以下に、実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。
尚、以下において「%」とは、質量%を意味する。
<実施例1>
ジメチルアミノエチルアクリレート塩化メチル四級塩水溶液(以下、DACと表す)10モル%と、アクリルアミド水溶液(以下AMと表す)90モル%の単量体混合物に、全質量1100g、単量体濃度30質量%となるように蒸留水を加えた。
これを、内径146mmの円筒型ガラス容器(反応器)に仕込み、pHを4.0に調製した後、水溶液を温度5℃に保ちながら、30分間窒素バブリングして単量体水溶液を得た。このとき液深は70mmであった。
ついで、この単量体水溶液に、単量体純分に対して質量基準で、開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩〔和光純薬(株)商品名V−50〕を500ppm、亜硫酸水素ナトリウムを15ppm添加し、さらに2分間窒素バブリングした。その後、反応器の上方から、10Wブラックライト蛍光ランプ(株式会社東芝製、商品名「FL10BLB」)4本を用いて、0.4mW/cm2の照射強度で20分間照射し、続いて100Wブラックライト(株式会社東芝製、商品名「H100BL」)を用いて、11.6mW/cm2の照射強度で30分間照射して水性ゲル状の重合物を得た。
ついで、この水性ゲルをハサミでおよそ3cm角に裁断した後、水性ゲルをチョッパーに投入して挽き肉状に細断した。
ついで、細断されたゲルを、常法により温度80℃の熱風乾燥機中で5時間乾燥した後、粉砕機で粉砕して粉末状で0.1〜2.0mmの水溶性重合体(固形分95%)を得た。
得られた水溶性重合体粉末400gを使用した。(株)入江商会製卓上ニーダー(PN−1)を使用し、回転数66rpmで重合体粉末を添加した。これに親水性シリコーン〔ポリエーテル(ポリオキシエチレン)変性シリコーン、信越化学工業(株)製シリコングラフト系界面活性剤、商品名KF−355A、以下KF−355Aという〕を添加して5分間混合した。得られた粉末の流動性、嵩比重及び発塵濃度を、以下の方法に従い測定した。
【0044】
・流動性
JIS K 6720−2−1999(プラスチック−塩化ビニルホモポリマー及びコポリマー(PVC)−第2部:試験片の作り方及び諸性質の求め方)に従い、当該JISの基準を満たす様に製造したカサ比重測定器を使用し、試料100gをカサ比重測定器から落下する時間を測定して求めた。
【0045】
・嵩比重
JIS K 6720−2−1999に従い、試料100gを流動性試験と同様のカサ比重測定器から落下させ、受器100ml中の試料重量から嵩比重を求めた。
【0046】
・発塵濃度
試料50gを内容積3Lのベルジャー内に落下させ、そこで発生する粉塵を粉塵計に3L/分で吸引させて1分間計測し、そのカウント数を計測した。尚、ベルジャー内はドライエア(露点温度5℃以下)とした。
【0047】
<実施例2、比較例1〜同4>
実施例1において、KF−355Aを表1に示す添加剤に変更する以外は、実施例1と同様の方法に従い、添加した。
実施例1と同様に評価した結果を、表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
表1における略号は、以下を意味する。
・KF−352A:親水性シリコーン(ポリエーテル(ポリオキシエチレン)変性シリコーン)、信越化学工業(株)製シリコングラフト系界面活性剤、商品名KF−352A
・PEG:ポリエチレングリコール、日本油脂(株)製、商品名#300
・サニゾール:花王(株)製第四級アンモニウム塩系界面活性剤、商品名サニゾールB−50
・潤滑油:昭和シェル石油(株)製潤滑油、商品名シェルテラスオイル#100
【0050】
実施例1及び同2の製造方法では、得られる粉体の流動性及び粉立ち防止性に優れるものであった。
これに対して、無添加の場合(比較例1)、他の添加剤を使用した場合(比較例2〜同4)では、得られる粉体の流動性が低下しなかったものの、粉立ち防止性が不十分なものであった。
【0051】
<実施例3〜同4、比較例5〜同8>
実施例1において、DACを55モル%、AMを45モル%に変更する以外は、実施例1と同様の条件で重合を行い裁断、細断及び乾燥を行った。
得られた水溶性重合体粉末に対して、実施例1におけるKF−355を表2に示す添加剤に変更する以外は、実施例1と同様の方法に従い、添加した。
実施例1と同様に評価した結果を、表2に示す。
【0052】
【表2】

【0053】
表2における略号は、表1と同様の意味である。
【0054】
実施例4及び同5の製造方法では、得られる粉体の流動性及び粉立ち防止性に優れるものであった。
これに対して、無添加の場合(比較例5)、PEG以外の他の添加剤を使用した場合(比較例7及び同8)では、得られる粉体の流動性が低下しなかったものの、粉立ち防止性が不十分なものであった。一方、PEGを使用した場合(比較例6)は、得られる粉体の粉立ち防止性には優れるものの、無添加の場合(比較例5)と比較すれば明らかな通り、流動性が不十分なものとなってしまった。
【0055】
<実施例5>
ナウターミキサーとして、神鋼ファウドラー(株)製ミキサー、商品名SVミキサー(SV050RT−3)型、容積5mを使用した。
実施例4と同様の重合体粉末をナウターミキサーに、500kg/時間、滞留時間2時間という条件で連続供給し、KF−355Aを連続して0.04%添加した。この場合、ナウターミキサーは、自転60rpm、公転1rpmという条件で攪拌を行った。
得られた重合体粉末は、発塵濃度は24CPM、嵩比重は0.63g/cc、流動性は354g/minであり、流動性が良く粉立ちの少ないものであった。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、親水性重合体の製造方法として有用なものであり、得られる重合体は、高分子凝集剤、歩留り向上剤、紙力増強剤、増粘剤、貼付剤及び吸水性樹脂等として有用なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性単量体を重合して得られるゲル状重合物を切断、細断した後、乾燥して得られる重合体粉末に対して、親水性シリコーンを添加する親水性重合体の製造方法。
【請求項2】
前記親水性シリコーンを重合体粉末に0.001〜5.0質量%の割合で添加する請求項1記載の親水性重合体の製造方法。
【請求項3】
前記親水性シリコーンが側鎖にポリエーテル基を有する化合物である請求項1又は請求項2記載の親水性重合体の製造方法。
【請求項4】
乾燥後に得られる重合体粉末を攪拌装置に導入し、攪拌下で前記粉末に親水性シリコーンを添加する請求項1〜請求項3のいずれかに記載の親水性重合体の製造方法。
【請求項5】
乾燥工程後、粉砕工程後又は篩分工程後に得られる重合体粉末を攪拌装置に導入し、攪拌下で前記粉末に親水性シリコーンを添加する請求項1〜請求項4のいずれかに記載の親水性重合体の製造方法。
【請求項6】
篩分工程後に得られる重合体粉末を攪拌装置に導入し、攪拌下で前記粉末に親水性シリコーンを添加する請求項5に記載の親水性重合体の製造方法。


【公開番号】特開2006−335846(P2006−335846A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−161229(P2005−161229)
【出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】