観察ユニット
【課題】試料に影響を与えることなくインキュベータやアイソレータなどの保存庫内で使用することが可能な観察ユニットを提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態係る観察ユニットは、試料を観察するための観察装置5と、試料を載置する載置台4と、観察装置5によって試料を観察する観察位置まで載置台4を移動させる駆動装置9と、鉛直方向に拡がる第1空間11を密閉する筐体1とを具える観察ユニットであって、第1空間11と載置台4とが互いに水平方向にずれた状態で配置されており、該第1空間11内に駆動装置9が配備されている。又、第1空間11と載置台4との間には、第1空間11から載置台4への熱の移動を妨げる衝立部材7が介在し、観察装置5及び駆動装置9は、筐体1によって形成された密閉空間内に配備されている。
【解決手段】本発明の一実施形態係る観察ユニットは、試料を観察するための観察装置5と、試料を載置する載置台4と、観察装置5によって試料を観察する観察位置まで載置台4を移動させる駆動装置9と、鉛直方向に拡がる第1空間11を密閉する筐体1とを具える観察ユニットであって、第1空間11と載置台4とが互いに水平方向にずれた状態で配置されており、該第1空間11内に駆動装置9が配備されている。又、第1空間11と載置台4との間には、第1空間11から載置台4への熱の移動を妨げる衝立部材7が介在し、観察装置5及び駆動装置9は、筐体1によって形成された密閉空間内に配備されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インキュベータやアイソレータなどで使用される観察ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、細胞などの試料を培養するための装置として、インキュベータが用いられている。しかし、従来のインキュベータでは、培養中の試料の状態を観察するためには、試料をインキュベータから取り出す必要があった。しかし、細胞などの試料は温度の変化に敏感であるため、インキュベータから取り出すと、細胞が死滅するなど試料に影響を及ぼしてしまう虞があった。
【0003】
そこで、インキュベータに観察装置を配備して、試料の状態をインキュベータ内で観察可能にすることが提案されている。
例えば、特許文献1に開示のインキュベータでは、インキュベータを構成する筐体の外面に突起部が形成されている。該突起部の内部には、試料を観察する際に試料が配置される空間が形成されており、該空間は、インキュベータ内の空間に連通している。又、突出部には上下に1つずつ窓が形成されており、これにより、光は、上下2つの窓を通って突起部内の空間を通過することが可能となっている。又、筐体の外面には、突出部を上下から挟んだ状態で顕微鏡ユニットが配備されている。
【0004】
上記インキュベータによれば、インキュベータ内の空間から突出部内の空間に試料移動させることにより、インキュベータ内の環境下で試料を観察することが可能であり、従って、試料を観察する場合でも、試料をインキュベータから取り出す必要がない。
【特許文献1】特開2007−209256号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示のインキュベータでは、観察装置(顕微鏡ユニット)がインキュベータの外部に配備されているため、インキュベータが大型化していた。又、観察装置は、特許文献1に開示のインキュベータに固有のものであり、該観察装置を他のインキュベータに適用することが困難であり、汎用性が低かった。
【0006】
例えば、インキュベータ内に観察装置を配備することが考えられるが、従来の観察装置をそのままインキュベータ内に配備したのでは、該観察装置はインキュベータ内の環境に曝されることとなり、湿気等により観察装置の光学系や撮像系に不具合が生じてしまう虞がある。
【0007】
又、インキュベータ内に観察装置を配備する場合、観察装置を自動化する必要があり、観察装置には、焦点を合わせるための駆動モータ等を配備する必要がある。しかし、駆動モータを動作させると駆動モータからは大量の熱が発生するため、この熱が試料に伝わって試料に影響を及ぼす虞がある。
【0008】
そこで本発明の目的は、試料に影響を与えることなくインキュベータやアイソレータなどの保存庫内で使用することが可能な観察ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る観察ユニットは、試料を観察するための観察装置と、試料を載置する載置台と、前記観察装置によって試料を観察する観察位置まで前記載置台を移動させる駆動装置と、鉛直方向に拡がる第1空間を密閉する筐体とを具える観察ユニットであって、前記第1空間と載置台とが互いに水平方向にずれた状態で配置されており、該第1空間内に駆動装置が配備されている。
【0010】
上記観察ユニットによれば、駆動装置で発生した熱は、周囲の空気に伝わって空気と共に上昇するので、駆動装置に対して水平方向にずれた位置に配置されている載置台には、駆動装置の熱は伝達されにくい。従って、載置台に載置された試料にも熱は伝達されにくく、その結果、試料の温度上昇が抑制されることとなる。よって、試料の培養が妨げられたり、試料が死滅したりするなどの熱の影響を試料に与えることなく、該試料を観察することが可能である。
又、上記観察ユニットは小型化が容易であるので、インキュベータなどの保存庫への観察ユニットの出し入れが可能となり、観察ユニットの汎用性を高めることが出来る。
【0011】
具体的構成において、前記観察装置は光学系と撮像系から構成され、撮像系は、前記第1空間内に配置される一方、光学系は、前記載置台の下方に位置して前記筐体によって密閉された第2空間内に配置されており、前記第1空間と載置台及び第2空間との間には、第1空間から載置台及び第2空間への熱の移動を妨げる衝立部材が介在している。
又、前記筐体のうち第2空間の上部を構成する上面壁には、前記観察位置から下方に向けて観察装置の光学系まで光を通す光透過部が形成されている。
【0012】
上記具体的構成によれば、第1空間と載置台及び第2空間との間に衝立部材が介在しているので、第1空間内の駆動装置及び観察装置の撮像系で発生した熱が載置台及び第2空間に移動することが、衝立部材によって妨げられる。従って、駆動装置及び観察装置の撮像系で熱が発生した場合でも、試料の温度は殆ど上昇することがない。よって、熱の影響を試料に与えることなく、該試料を観察することが可能である。
【0013】
しかも、駆動装置及び観察装置は、筐体によって密閉された空間(第1及び第2空間)内に配備されているので、観察ユニットを保存庫内に設置した場合でも、駆動装置及び観察装置は、保存庫内の環境に曝されることがない。従って、湿気等による駆動装置及び観察装置の不具合が生じにくくなる。
又、観察装置は密閉空間内に配置されているが、筐体には光透過部が形成されているので、観察装置による試料の観察が筐体によって妨げられることがない。
【0014】
更に具体的な構成において、前記筐体のうち第2空間の上部を構成する上面壁と、前記載置台との間には断熱層が形成されている。より具体的には、前記断熱層の少なくとも一部が断熱部材によって構成されており、前記光透過部は前記断熱部材を貫通して該断熱部材の表面に露出している。
該具体的構成によれば、駆動装置及び観察装置の撮像系で発生した熱が、筐体を伝導して、第2空間の上部を構成する上面壁まで移動した場合でも、該上面壁と載置台との間に断熱層が形成されているので、熱は載置台までは伝達しにくく、その結果、試料の温度上昇が抑制されることとなる。よって、熱の影響を試料に与えることなく、該試料を観察することが可能である。
【0015】
他の具体的構成において、前記載置台は、前記観察位置と、前記第2空間の上方位置から離脱した離脱位置との間で往復移動が可能であり、該載置台の往復移動は、前記駆動装置によって実行される。
該具体的構成によれば、観察時以外は載置台を離脱位置に移動させることにより、駆動装置及び観察装置の撮像系などの熱源から試料への熱の移動を抑制することが可能となる。
【0016】
更に他の具体的構成において、前記載置台には、前記駆動装置の駆動力が伝達部材によって伝達され、該載置台は、前記伝達部材への着脱が可能であり、前記伝達部材には検知部が配備される一方、前記載置台には、検知部によって検知される被検知部が配備され、被検知部は、該被検知部が検知部によって検知されたときに載置台に載置されている試料の中心が所定位置に合致するように配置されている。
該具体的構成によれば、載置台を異なる形状のものに取り替えた場合でも、試料の中心を所定位置に容易に合致させることが出来る。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る観察ユニットは、試料に影響を与えることなくインキュベータやアイソレータなどの保存庫内で使用することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
1.観察ユニットの使用形態
図1は、本発明の一実施形態に係る観察ユニットの使用形態を示す図である。図1に示す様に、観察ユニットは、細胞などの試料を培養又は保存するための保存庫101、例えばインキュベータやアイソレータなどへの出し入れが可能である。保存庫101の内部には棚104が配備されており、観察ユニットは棚104上に設置して使用される。
尚、図1に示される保存庫101では棚104が1つ設けられているに過ぎないが、試料が収容された複数の容器の収納が可能となるように、保存庫101内に複数の棚を配備してもよい。
【0019】
観察ユニットは、保存庫101の外部に設置された制御装置102に、ケーブル105によって接続されている。制御装置102は、観察ユニットを制御するためのものであり、観察ユニットを駆動するためのドライバやコントローラなどが内蔵されている。
【0020】
又、制御装置102は、保存庫101の外部に設置されたパーソナルコンピュータ103に、ケーブル106によって接続されている。これにより、パーソナルコンピュータ103から制御装置102に指令を出すことによって観察ユニットを操作することや、観察した画像の取得・保存などが可能となっている。
【0021】
2.観察ユニットの構成
図2は、観察ユニットの外観を示す斜視図であり、図3〜図5はそれぞれ、該観察ユニットを示す側面図、正面図、背面図である。又、図6は、図4に示すVI−VI線に沿う観察ユニットの断面図である。
図2〜図5に示す様に、観察ユニットは筐体1を具え、筐体1の外部には、試料が収容された容器Aを載置する載置台4と、載置台4をX軸方向に移動させるためのX軸駆動機構2と、載置台4をY軸方向に移動させるためのY軸駆動機構3が配備されている。尚、X軸方向及びY軸方向は、水平面内で互いに直交する2つの方向である。
又、図6に示す様に、筐体1の内部には、容器A内の試料を観察するための観察装置5と、容器A内の試料を照明するための照明装置6が配備されると共に、X軸駆動機構2、Y軸駆動機構3、及び観察装置5を駆動するための駆動装置9が配備されている。
【0022】
図6に示す様に、筐体1には、背面側から前面側への熱の移動、特に背面側から前面側への熱伝達と熱放射を妨げる衝立部材7が配備され、衝立部材7の前面側には、載置台4が配置される一方、衝立部材7の背面側には、載置台4から水平方向にずれて位置すると共に駆動装置9を含んで鉛直方向に拡がる第1空間11が筐体1の内部に形成されている。又、衝立部材7の前面側には、載置台4の下方に位置する第2空間12と、載置台4の上方に位置する第3空間13とが筐体1の内部に形成されている。
【0023】
従って、背面側に位置する第1空間11と、前面側に位置する載置台4、第2空間12、及び第3空間13との間に衝立部材7が介在することとなり、その結果、背面側に位置する第1空間11から前面側に位置する載置台4、第2空間12、及び第3空間13への熱の移動が、衝立部材7によって妨げられることとなる。
【0024】
又、図6に示す様に、衝立部材7と筐体1によって、第1乃至第3空間11〜13は密閉されている。
【0025】
図6に示す様に、筐体1のうち第2空間12の上部を構成する上面壁16の上面側には、中空の断熱部材8が配備されており、断熱部材8は、ケース81の内部に収納されている。断熱部材8は、上辺部分がケース81の上方内面に接触すると共に、下辺部分が上面壁16の上面に接触している。
尚、図8に示す様に、ケース81、断熱部材8の上辺部分及び下辺部分には、これらを上下に貫く貫通孔82〜84が形成されている。
【0026】
上面壁16の上面側に断熱部材8を配備することにより、上面壁16と載置台4との間には断熱層の一部が形成されることとなり、上面壁16から載置台4への熱伝達が抑制されることとなる。
又、中空の断熱部材8の上辺部分と下辺部分との間には、図6に示す様に隙間が形成されているので、該隙間に保存庫101内の空気が流れることにより、上面壁16と載置台4との間の断熱効果は更に高まることになる。
【0027】
図6に示す様に、第1空間11内には駆動装置9が配置されており、駆動装置9は、衝立部材7の背面に設置されている。
図7は、筐体1の背面壁を省略して示した観察ユニットの背面図である。図7に示す様に、駆動装置9は、X軸駆動機構2を駆動するX軸モータ91と、Y軸駆動機構を駆動するY軸モータ92と、観察装置5をZ軸方向(鉛直方向)に移動させるためのZ軸モータ93と、観察装置5のズームレンズ53を駆動する駆動モータ94とから構成されている。
【0028】
X軸モータ91及びY軸モータ92は何れも、回転軸がX軸方向に沿うように配置されている。又、Z軸モータ93及び駆動モータ94は何れも、回転軸がZ軸方向に沿うように配置されている。
尚、これらのモータは、回転することによって大量の熱を発生する。
【0029】
図6に示す様に、第3空間13内には照明装置6が配置されており、照明装置6は、光を発するLED(Light Emitting Diode)61と、LEDから発せられた光を鉛直下方へ反射する反射ミラー62とから構成されている。
【0030】
筐体1のうち第3空間13を構成する下面壁17には、反射ミラー62の下方位置に貫通孔171が形成され、貫通孔171には、光透過板172が隙間なく嵌め込まれている。これにより、第3空間13を密閉状態に維持したまま、反射ミラー62によって反射された光を、第3空間13から載置台4が配置される空間へ導くことが可能となっている。
そして、図6に示す様に、載置台4が配置される空間内の位置のうち、反射ミラー62で反射した光の通る位置が、観察装置5によって試料を観察するための観察点Mとなる。
【0031】
図6に示す様に、第1及び第2空間11,12内には観察装置5が配置されており、観察装置5は、衝立部材7を貫通している。
観察装置5は、位相差顕微鏡であって、観察対象となる試料の拡大像を形成する対物レンズ51と、対物レンズ51で形成された拡大像をズームレンズ52に導く反射ミラー52と、試料の拡大像を更に拡大するズームレンズ52と、ズームレンズ52によって拡大された観察像を撮像するCCD(Charge Coupled Device)カメラ51とを具え、対物レンズ51、反射ミラー52、及びズームレンズ52によって観察装置5の光学系が構成されると共に、CCDカメラ51によって観察装置5の撮像系が構成されている。
【0032】
そして、第1空間11には、観察装置5の撮像系を構成するCCDカメラ51が配置される一方、第2空間12には、観察装置5の光学系を構成する対物レンズ51、反射ミラー52、及びズームレンズ52が配置されている。対物レンズ51は、観察点Mの下方位置に配置されている。
尚、本実施の形態に係る観察ユニットでは、ズームレンズ52は、衝立部材7を貫通した状態で配置されているので、第1空間11内には、ズームレンズ5の一部が入り込んでいる。
【0033】
観察装置5による試料の観察倍率は、対物レンズ51の拡大倍率とズームレンズ52の拡大倍率とによって決定される。又、本実施の形態に係る観察装置5においては、駆動モータ94の駆動によってズームレンズ52の拡大倍率を変更することにより、試料の観察倍率を変更することが可能である。
【0034】
筐体1の上面壁16には、観察点Mの下方位置に、観察点Mから下方に向けて第2空間12内まで光を通す光透過部15が突設されている。具体的には図8に示す様に、光透過部15は、筒状部材151と、シールリング152と、光透過板153とから構成され、筐体1の上面壁16には、光透過部15を取り付けるための貫通孔161が形成されている。
【0035】
筒状部材151の上端には、光透過板153が隙間なく嵌め込まれている。筒状部材151の下端部には、貫通孔161に嵌合すべき嵌合部154が形成されており、嵌合部154は、その外周面にシールリング152が取り付けられた状態で、貫通孔161に嵌め込まれている。
そして、図6及び図8に示す様に、光透過部15は、ケース81及び断熱部材8の貫通孔82〜84を貫通して、光透過板153を断熱ケース81の上面に露出させている。
【0036】
これにより、上面壁16の上面側に断熱部材8を配備した場合でも、照明装置6の反射ミラー62で反射した光は、光透過部15の光透過板153を透過して、観察装置5の対物レンズ51に導かれることとなる。
尚、嵌合部154の外周面にシールリング152を取り付けることにより、貫通孔161を構成する内周面と嵌合部154の外周面との間に形成される隙間は、シールリング152によって塞がれ、その結果、第2空間12は密閉状態のまま維持されることとなる。
【0037】
又、図6に示す様に光透過部15の内部には、観察装置5の対物レンズ51が配置されている。これにより、対物レンズ51の焦点距離が小さい場合でも、観察点Mに配置された試料に焦点を合わせることが可能となっている。
尚、光透過部15の筒状部材151の内周面には環状の断熱部材85が配備され、断熱部材85と対物レンズ51との間には僅かな隙間が形成されている。これにより、対物レンズ51の上下方向への移動を可能にしつつ、熱が光透過部15内を通って下から上に伝達することを抑制している。
【0038】
図9は、X軸駆動機構2及びY軸駆動機構3を示す斜視図である。Y軸駆動機構3は、図9に示す様に、一対のプーリ31,32と、タイミングベルト33と、逆L字状のY軸スライド体34と、ガイド部材35とから構成されている。一対のプーリ31,32の内、一方のプーリ31はY軸モータ92の回転軸に固定されており、Y軸モータ9の回転に伴って一方のプーリ31はY軸モータ9の回転軸周りに回転する。
他方のプーリ32は、一方のプーリ31に対してY軸方向に並んだ位置に、回転自在な状態で配置されている。
【0039】
タイミングベルト33は、一対のプーリ31,32に跨って掛けられている。タイミングベルト33には、Y軸スライド体34が一対のプーリ31,32の間の位置に連結されており、図10に示す様にY軸スライド体34は、その上辺部分341が、載置台4が配置される空間内においてX軸方向に沿って位置するように配置されている。又、Y軸スライド体34は、ガイド部材35に摺動自在に連結されており、Y軸スライド体34の移動可能な経路がY軸方向に沿って規定されている。
【0040】
そして、一方のプーリ31が回転することによって、タイミングベルト33も回転する。このとき、タイミングベルト33のうち一対のプーリ31,32の間の部分が、Y軸方向に沿って移動することになるので、一方のプーリ31の回転運動は、タイミングベルト33によってY軸方向の並進運動に変換されることとなる。
【0041】
従って、Y軸モータ92の回転力は、Y軸駆動機構3によってY軸方向の並進力に変換されてY軸スライド体34に付与されることとなり、その結果、Y軸スライド体34はY軸方向に沿って移動することとなる。
【0042】
X軸駆動機構2は、図9に示す様に、歯車機構21と、Y軸方向に延びたシャフト22と、一対のプーリ23,24と、タイミングベルト25と、L字状のX軸スライド体26と、ガイド部材27とから構成されている。
歯車機構21は、X軸モータ91の回転力をシャフト22の中心軸周りの回転力に変換し、該回転力をシャフト22に付与する。シャフト22は、Y軸駆動機構3のY軸スライド体34の上辺部分341に回転自在に支持されており、歯車機構21から付与された回転力によって中心軸周りに回転する。尚、シャフト22は、歯車機構21に対してスライドすることが可能である
【0043】
一対のプーリ23,24の内、一方のプーリ23はシャフト22の一端に固定されており、シャフト22の回転に伴って一方のプーリ23は、シャフト22と同じ軸周りに回転する。
他方のプーリ24は、一方のプーリ23に対してX軸方向に並んだ位置にて、Y軸スライド体34の上辺部分341に回転自在に取り付けられている。
【0044】
タイミングベルト25は、一対のプーリ23,24に跨って掛けられている。タイミングベルト25には、X軸スライド体26が一対のプーリ23,24の間の位置に連結されている。又、X軸スライド体26は、ガイド部材27に摺動自在に連結されており、X軸スライド体26の移動可能な経路がX軸方向に沿って規定されている。
X軸スライド体26の下辺部分261には載置台4が固定されている。
【0045】
そして、一方のプーリ23が回転することによって、タイミングベルト25も回転する。このとき、タイミングベルト25のうち一対のプーリ23,24の間の部分が、X軸方向に沿って移動することになるので、一方のプーリ23の回転運動は、タイミングベルト25によってX軸方向の並進運動に変換されることとなる。
【0046】
従って、X軸モータ91の回転力は、X軸駆動機構2によってX軸方向の並進力に変換されてX軸スライド体26に付与されることとなり、その結果、X軸スライド体26はX軸方向に沿って移動することとなる。
【0047】
よって、X軸駆動機構2及びY軸駆動機構3によれば、X軸スライド体26に固定された載置台4は、X軸モータ91の回転によりX軸方向に沿って移動し、Y軸モータ92の回転により軸方向に移動することになる。即ち、X軸駆動機構2とY軸駆動機構3によって、X軸モータ91とY軸モータ92の駆動力を載置台4に伝達する伝達部材が構成されている。
【0048】
更に、図9に示す様に、X軸駆動機構2にはX軸センサ28とX軸遮蔽板29が配備され、Y軸駆動機構3にはY軸センサ36とY軸遮蔽板37が配備されている。
X軸遮蔽板29は、X軸スライド体26に固定されており、X軸スライド体26の移動に伴ってX軸方向に移動する。Y軸遮蔽板37は、Y軸スライド体34に固定されており、Y軸スライド体34の移動に伴ってY軸方向に移動する。
【0049】
X軸センサ28は、X軸遮蔽板28の近接/離間によってオン/オフが切り替えられるセンサであり、X軸センサ28にX軸遮蔽板29が対向したときにオンに切り替わる。即ち、X軸センサ28とX軸遮蔽板29によって、検知部と、該検知部により検知される被検知部が構成されている。
そして、X軸センサ28にX軸遮蔽板29が対向してX軸センサ28がオンになったときに、載置台4に載置されている容器Aの中心CがX軸方向において観察点Mに合致するように、X軸センサ28は配置されている。
【0050】
又、Y軸センサ36は、Y軸遮蔽板37の近接/離間によってオン/オフが切り替えられるセンサであり、Y軸センサ36にY軸遮蔽板37が対向したときにオンに切り替わる。即ち、Y軸センサ36とY軸遮蔽板37によって、検知部と、該検知部により検知される被検知部が構成されている。
そして、Y軸センサ36にY軸遮蔽板37が対向してY軸センサ36がオンになったときに、載置台4に載置されている容器Aの中心CがY軸方向において観察点Mに合致するように、Y軸センサ36は配置されている。
【0051】
従って、容器Aの中心Cが観察点Mからずれた位置にある場合であっても、容器Aの中心Cを観察点Mに容易に復帰させることが出来る。
【0052】
本実施の形態に係る観察ユニットにおいては、図3に示す様に、Y軸駆動機構3は、載置台4よりも下方位置に配置されているので、X軸方向についての載置台4の可動域を拡げることが可能となっている。又、サイズの大きな容器Aを載置台4に載置することが可能となっている。
【0053】
更に本実施の形態に係る観察ユニットにおいては、図9に示す様に、逆L字状のY軸スライド体34を用いることより、X軸駆動機構2に対して片側にY軸駆動機構3を配備するだけで、載置台4のX軸方向及びY軸方向への移動が可能になっている。従って、載置台4への容器Aの載置が行い易くなっている。
【0054】
図9に示す様に、載置台4の上面には、該上面に載置した容器Aの位置ずれを防止すべく、容器Aを嵌め込むための嵌合溝41が形成されており、嵌合溝41は、載置する容器の形状より僅かに大きな形状を有している。
又、嵌合溝41の底面には、中央の領域に貫通孔42が形成されている。これにより、図10に示す様に、照明装置6の反射ミラー62で反射した光は、貫通孔42を通って、観察装置5の対物レンズ51に入射することが可能となっている。従って、載置台4に載置した容器A内の試料の観察が、載置台4によって妨げられることがない。
【0055】
図11は、載置台4の設置状態を示した断面図である。図11に示す様に、載置台4は、その下面をケース81の上面から離間させた位置にて、X軸駆動機構2に連結されている。従って、載置台4の下面とケース81の上面との間には空気が介在し、該空気が断熱層として機能することになる。よって、ケース81から載置台4への熱伝達が抑制されることとなる。
【0056】
又、載置台4の下面をケース81の上面から僅かに離間させることにより、載置台4に載置された容器A内の試料に対物レンズ51の焦点を合わせることを可能にしつつ、載置台4を移動させた場合でも、載置台4とケース81との間に摺動による摩擦が生じないようにすることが出来る。従って、摩擦が原因となって生じる載置台4の振動が抑制されることとなる。
【0057】
図12は、載置台4が観察位置に配置された状態を示す側面図であり、図13は、載置台4が離脱位置に配置された状態を示す側面図である。載置台4は、Y軸駆動機構3の駆動によって、図12に示す如く容器A内の試料を観察する観察位置と、図13に示す如く第2空間12の上方位置からY軸方向に離脱した離脱位置との間で往復移動が可能である。
尚、本実施の形態に係る観察ユニットにおいては、第2空間12の上方位置に対して載置台4をY軸方向に離脱させているが、第2空間12の上方位置に対して載置台4をX軸方向に離脱させることが可能となるようにX軸駆動機構4の構成を変形してもよい。
【0058】
上述した観察ユニットは小型化が容易な構成であり、小型の保存庫101にも出し入れが可能なサイズにまで小さくすることが可能である。従って、上述した観察ユニットは、その汎用性が高くなっている。又、保存庫101への観察ユニットの出し入れが可能であるので、観察ユニットを取り出した状態で保存庫101内を洗浄することが可能である。
【0059】
上述した観察ユニットによれば、駆動装置9、観察装置5、及び照明装置6は、筐体1によって密閉された空間(第1乃至第3空間11〜13)内に配備されているので、観察ユニットを保存庫101内に設置した場合でも、駆動装置9、観察装置5、及び照明装置6は、保存庫101内の環境に曝されることがない。従って、保存庫101内にて観察ユニットを使用した場合でも、湿気等による駆動装置9、観察装置5、及び照明装置6の不具合が生じにくくなっている。
【0060】
しかも、駆動装置9で発生した熱は、周囲の空気に伝わって空気と共に上昇するので、駆動装置9に対して水平方向にずれた位置に配置されている載置台4には、駆動装置9の熱は伝達されにくい。従って、載置台4に載置された試料にも熱は伝達されにくく、その結果、熱伝達による試料の温度上昇が抑制されることとなる。よって、試料の培養が妨げられたり、試料が死滅したりするなどの熱の影響を試料に与えることなく、該試料を保存庫101内で観察することが可能である。
【0061】
尚、空気と共に上昇した熱は、筐体1の上部から発散されることとなる。従って、筐体1の上部には放熱フィンなどを配備することが好ましく、これにより筐体1内の熱は効率良く発散されることとなる。
観察ユニット1が保存庫101内に設置されている場合、筐体1内の熱は、筐体1の上部から保存庫101内に発散されて、保存庫101内の空気に伝わることになる。しかし、保存庫101内の空気の温度は、ヒータなどによって制御されているので、筐体1の上部から発散される熱による保存庫内101の温度の変化量は僅かであり、保存庫101内に保存されている試料は影響を受けることがない。
【0062】
更に、上述した観察ユニットにおいては、第1空間11と載置台4及び第2空間12との間に衝立部材7が介在しているので、第1空間11内の駆動装置9及び観察装置5の撮像系で発生した熱が載置台4及び第2空間12に移動すること、特に第1空間11から載置台4及び第2空間12への熱伝達と熱放射が、衝立部材7によって妨げられる。従って、駆動装置9及び観察装置5の撮像系で熱が発生した場合でも、試料の温度は殆ど上昇することがない。よって、熱の影響を試料に与えることなく、該試料を保存庫101内で観察することが可能である。
【0063】
又、観察する試料は、照明装置6のLED61から発せられた光によって照明されるが、LED561の点灯は、試料を探索するときや、後述するタイムラプス観察において試料を撮像するとき(シャッター時)にのみ行われるので、試料に与える熱の影響は殆どない。
【0064】
更に又、上述した観察ユニットにおいては、筐体1の上面壁16と載置台4との間には、断熱部材8や空気によって断熱層が形成されているので、駆動装置9、観察装置5の撮像系、及び照明装置6で発生した熱が、筐体1を伝導して上面壁16まで移動した場合でも、熱は載置台4までは伝達しにくく、その結果、熱伝導による試料の温度上昇が抑制されることとなる。よって、熱の影響を試料に与えることなく、該試料を保存庫101内で観察することが可能である。
【0065】
又、上述した観察ユニットにおいては、載置台4は、観察位置と離脱位置との間で往復移動が可能であるので、載置台4を離脱位置に配置することにより、載置台4を、駆動装置9、観察装置5の撮像系、及び照明装置6などの熱源から遠ざけることが出来る。従って、載置台4を離脱位置に移動させることにより、熱源から試料への熱の移動を抑制することが可能になると共に、試料を保存庫101内の環境下に配置することが可能になる。
【0066】
又、上述した観察ユニットにおいては、X軸モータ91を回転することによって載置台4をX軸方向に沿って移動させ、Y軸モータ92の回転によって載置台4をY軸方向に沿って移動させることが出来るので、X軸モータ91とY軸モータ92の回転速度や回転量を制御装置102によって制御することにより、載置台4の駆動を自動化することが可能である。
【0067】
3.観察ユニットによるタイムラプス観察
図14は、上述した観察ユニットを用いて試料をタイムラプス観察する場合のフローチャートである。ここで、タイムラプス観察とは、設定したインターバルΔTで試料の観察を複数回繰り返し行い、観察毎に試料の観察画像を取得する観察手法である。以下では、細胞が試料として容器A内に収容されている場合について説明する。
【0068】
まず、ステップS1において、容器Aに設定されるXY座標の原点Oの初期化を行う。具体的には、X軸センサ28とY軸センサ36の何れもがオンになった状態で、観察点Mが存在する位置を原点Oとして、容器Aに対してXY座標を設定する。
そして、ステップS2において載置台4に容器Aを載置する。その後、ステップS3において観察装置の電源をオンにし、ステップS4においてタイムラプス観察の対象とする細胞を探索する。ステップS4においては、パーソナルコンピュータ103の表示手段に表示された画像を見ながら、載置台4を移動させて細胞を探索する。
【0069】
観察対象とする細胞が見つかると、ステップS5において、XY座標内での細胞の位置及び観察倍率を、パーソナルコンピュータ103の入力手段を用いて入力する。これにより、観察対象とする細胞の座標及び観察倍率が設定される(タイムラプス設定1)。設定された座標及び観察倍率は、制御装置102に与えられる。
複数の細胞を観察対象とする場合には、ステップS6からテップS4に戻って、ステップS4とステップS5とを繰り返し実行する。
【0070】
観察対象とする全ての細胞の座標設定が完了すると、ステップS7において、タイムラプス観察を実行するインターバルΔTと観察回数Nを、パーソナルコンピュータ103の入力手段を用いて入力する。これにより、インターバルΔTと観察回数Nが設定される(タイムラプス設定2)。設定されたインターバルΔT及び観察回数Nは、制御装置102に与えられる。
【0071】
ステップS7でのタイムラプス設定が完了すると、ステップS8においてタイムラプス観察が開始される。このとき、制御装置102においてカウンタnの値が1に設定される。
そして、ステップS9において、観察開始時刻T(n)が制御装置102の記憶手段に記憶されると共に、ステップS5で設定した座標に存在する全ての細胞について、観察ユニットによる観察が制御装置102の制御によって自動的に実行される。具体的には、設定した各座標にある細胞が観察点Mに導かれ、そして観察装置5による該細胞の観察が、ステップS5で設定した観察倍率で実行される。観察された細胞の観察像は、観察装置5のCCDカメラ54によって撮像され、得られた画像は、パーソナルコンピュータ103の記憶手段に記憶される。
【0072】
ステップS9での細胞の観察が完了すると、制御装置102は、ステップS10においてX軸センサ28とY軸センサ36の何れもがオンになるように、容器Aの中心Cを観察点Mへ移動させる。そして、ステップS11においてカウンタnの値を1だけ増加させ、ステップS12において、カウンタnの値をステップS7で設定された観察回数Nを超えているか否かが、制御装置102によって判断される。
【0073】
ステップS12において、カウンタnの値が観察回数Nを超えていないと制御装置102によって判断された場合、制御装置102は、ステップS13において容器Aを離脱位置に移動させ、ステップS14において、前回の観察開始時刻T(n−1)から、ステップS14への移行時の時刻Tまでの経過時間(T−T(n−1))を算出すると共に、該経過時間が、ステップS7で設定したインターバルΔTに達しているか否かを判断する。
【0074】
ステップS14において、経過時間がインターバルΔTに達していないと制御装置102によって判断された場合、制御装置102は、ステップS15において容器Aを離脱位置で待機させる。
【0075】
一方、ステップS14において、経過時間がインターバルΔTに達していると制御装置102によって判断された場合、制御装置102は、ステップS16において容器Aに設定されるXY座標の原点Oの初期化をステップS11と同様に行って、ステップS9に戻って、再び細胞の観察を実行する。
そして、ステップS12において、カウンタnの値が観察回数Nを超えていると制御装置102によって判断されるまで、細胞の観察が繰り返し実行される。
【0076】
ステップS12において、カウンタnの値が観察回数Nを超えていると制御装置102によって判断された場合、制御装置102は、ステップS13において容器Aを離脱位置に移動させて、タイムラプス観察を終了する。
【0077】
上述したタイムラプス観察によって取得した細胞の画像を利用することにより、細胞の成育状態や形態を観察・分析することが出来る。
【0078】
4.変形例
4−1.変形例1
図15は、本変形例に係る観察ユニットおいて、四角形の嵌合溝41が形成された載置台4の取付け状態を示す斜視図である。図16は、該観察ユニットにおいて、円形の嵌合溝41が形成された載置台4の取付け状態を示す斜視図である。図15及び図16に示す様に、載置台4は、X軸スライド体27の下辺部分271にネジ部材262によって着脱可能に取り付けられてもよい。これにより、嵌合溝41の形状が異なった複数の載置台4を用意しておくことによって、使用する容器Aの形状に応じた載置台4を選択して取り付けることが可能である。
本変形例では、図15に示す様に、四角形の容器Aを嵌め込むべき四角形の嵌合溝41が形成された載置台4と、図16に示す様に、円形の容器Aを嵌め込むべき円形の嵌合溝41が形成された載置台4とが用意されている。
【0079】
尚、嵌合溝41の形状が異なる複数の載置台4毎に、載置台4と該載置台4に載置される容器Aとの総重量が異なると、載置台4を移動させた際にモータにかかる慣性モーメントが変化するので、載置台4の加速度が変化したり、目標位置からの位置ずれが生じたりする虞がある。
従って、嵌合溝41の形状が異なる複数の載置台4について、載置台4と該載置台4に載置される容器Aとの総重量を略一致させておくことが好ましい。
【0080】
又、容器Aが載置された状態での載置台4の重心を、X軸スライド体27が連結される位置にX軸方向において合致させることが好ましい。これにより、載置台4をネジ部材262によってX軸スライド体27に取り付ける場合であっても、取り付けられた載置台4は安定し易くなる。
【0081】
4−2.変形例2
図17は、本変形例に係る観察ユニットおいて、四角形の嵌合溝41が形成された載置台4の取付け状態を示す斜視図であり、図19は、該載置台4に載置されている容器Aの中心Cが観察点Mに合致した状態を示す平面図である。図18は、該観察ユニットにおいて、円形の嵌合溝41が形成された載置台4の取付け状態を示す斜視図であり、図20は、該載置台4に載置されている容器Aの中心Cが観察点Mに合致した状態を示す平面図である。
【0082】
上記変形例1の如く載置台4の取替えを可能にした場合、嵌合溝41の形状が異なる載置台4において、容器Aが載置された状態での載置台4の重心と、容器Aの中心Cとは必ずしも一致しない。このため、上記変形例1で説明したように、容器Aが載置された状態での載置台4の重心を、X軸スライド体27が連結される位置にX軸方向において合致させた場合には、嵌合溝41の形状が異なる載置台4毎に、容器Aの中心Cが観察点Mに合致するときのX軸スライド体27の位置が異なることとなる。
【0083】
従って、図15に示す載置台4について、該載置台4に載置される四角形の容器Aの中心Cが観察点Mに合致するように、X軸駆動機構2のX軸センサ28及びX軸遮蔽板29を配置した場合、図16に示す載置台4に取り替えたときには、該載置台4に載置される円形の容器Aの中心Cが観察点Mからずれてしまう。
このため、図16に示す載置台4について改めて、円形の容器Aの中心Cが観察点Mに合致するように、X軸駆動機構2のX軸センサ28及びX軸遮蔽板29を配置し直す必要があった。
尚、Y軸方向については、嵌合溝41の形状が異なる載置台4において、容器Aが載置された状態での載置台4の重心と、容器Aの中心Cとが合致するように設計されているので、載置台4を取り替えた場合でも、Y軸駆動機構3のY軸センサ36とY軸遮蔽板37を配置し直す必要はない。
【0084】
そこで本変形例では、図17及び図18に示す様に、載置台4にX軸遮蔽板29が取り付けられている。又、嵌合溝41の形状が異なる載置台4毎に、図19及び図20に示す様にX軸遮蔽板29は、X軸センサ28と対向したときに各載置台4に載置されている容器Aの中心Cが観察点Mに合致するように配置されている。
【0085】
従って、載置台4を、嵌合溝41の形状が異なるものに取り替えた場合でも、容器Aの中心Cを観察点Mに容易に合致させることが出来る。
【0086】
4−3.変形例3
図21は、本変形例に係る観察ユニットを示す分解斜視図である。図21に示す様に、X軸駆動機構2は、観察ユニットに着脱可能に配備されてもよい。具体的には、Y軸駆動機構3のY軸スライド体34は、上辺部分341が、ねじ部材343によって立設部分342に着脱可能に連結されており、上辺部分341を立設部分342から離脱させることにより、上辺部分341に配備されているX軸駆動機構2のシャフト22、一対のプーリ23,24、タイミングベルト25、X軸スライド体26、ガイド部材27、X軸センサ28、及びX軸遮蔽板29、並びにX軸スライド体26に取り付けられている載置台4が、観察ユニットから取り外されることとなる。
【0087】
本変形例に係る観察ユニットによれば、X軸駆動機構2を取り外すことにより、X軸駆動機構2によって覆われていた部分の洗浄が容易となる。
【0088】
4−4.変形例4
図22は、本変形例に係る観察ユニットを示す断面図であり、図23は、該観察ユニットの前面図である。図22及び図23に示す様に、互いに離間した載置台4の下面とケース81の上面との間には、空気を流してもよい。具体的には、図22に示す様に、Y軸スライド体34の上辺部分341の背面側及び下面側に、X軸に対する断面形状がL字状の通気路38が形成されており、通気路38は、側方端381(図23参照)及び下辺部分382の前方端383に開口を有している。そして、図23に示す様に、通気路38の側方端381側に、通気路38内に空気を送り込む送風ファン39が配備されている。
【0089】
本変形例に係る観察ユニットによれば、送風ファン39によって通気路38内に空気を送り込むことにより、空気は、通気路38内を通って下辺部分382の前方端383から吹き出し、そして載置台4の下面とケース81の上面との間を前方(Y軸方向)に向かって流れることとなる。
載置台4の下面とケース81の上面との間に空気が流れることにより、載置台4の下面とケース81の上面との間に空気が滞留している場合よりも、ケース81から載置台4への熱伝達が抑制され易くなる。
【0090】
又、本変形例において、断熱ケース81の上面にY軸方向に延びた複数の溝を形成することにより、載置台4の下面とケース81の上面との間に空気が流れやすくなり、ケース81から載置台4への熱伝達が更に抑制され易くなる。
【0091】
4−5.変形例5
図24は、本変形例に係る観察ユニットを示す断面図である。図24に示す様に、観察ユニットを、断熱部材8及びケース81のない構成としてもよい。具体的には、第2空間12の上部を構成する筐体1の上面壁16が、観察装置5の対物レンズ51の上方に配置され、上面壁16に形成されている貫通孔161には、光透過板162が隙間なく嵌め込まれている。そして、載置台4は、筐体1の上面壁16の直上に、上面壁16から離間した状態で設置されている。
本変形例4に係る観察ユニットも、保存庫101内での使用が可能であると共に、熱源から試料への熱の移動を抑制することが出来る
【0092】
勿論、図6に示す観察ユニットにおいて、断熱部材8及びケース81のない構成とした場合でも、筒状部材151をそのまま配備しておいて、載置台4を筒状部材151の上面側に配置してもよい。
【0093】
尚、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
又、載置台4を移動させるための機構が配備されていない観察ユニット、即ちX軸モータ91及びX軸駆動機構2と、Y軸モータ92及びY軸駆動機構3とが配備されていない観察ユニットに対しても、上述した筐体1によって内部の空間を密閉する構成、衝立部材7によって熱の移動を妨げる構成、及び断熱部材8を配備する構成などについては適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の一実施形態に係る観察ユニットの使用形態を示す図である。
【図2】該観察ユニットの外観を示す斜視図である。
【図3】該観察ユニットの側面図である。
【図4】該観察ユニットの正面図である。
【図5】該観察ユニットの背面図である。
【図6】該観察ユニットの、図4に示すVI−VI線に沿う断面図である。
【図7】筐体の背面壁を省略して示した上記観察ユニットの背面図である。
【図8】断熱部材に関連する観察ユニットの要部を示した分解斜視図である。
【図9】X軸駆動機構及びY軸駆動機構を示す斜視図である。
【図10】Y軸駆動機構を構成するY軸スライド体の配置状態を示した斜視図である。
【図11】載置台の設置状態を示した断面図である。
【図12】載置台が観察位置に配置された状態を示す側面図である。
【図13】載置台が離脱位置に配置された状態を示す側面図である。
【図14】上記観察ユニットによるタイムラプス観察の流れを示すフローチャートである。
【図15】変形例1に係る観察ユニットおいて、四角形の嵌合溝が形成された載置台の取付け状態を示す斜視図である。
【図16】該観察ユニットにおいて、円形の嵌合溝が形成された載置台の取付け状態を示す斜視図である。
【図17】変形例2に係る観察ユニットにおいて、四角形の嵌合溝が形成された載置台へのX軸遮蔽板の取付け状態を示す斜視図である。
【図18】該観察ユニットにおいて、円形の嵌合溝が形成された載置台へのX軸遮蔽板の取付け状態を示す斜視図である。
【図19】四角形の嵌合溝が形成された載置台について、該載置台に載置されている容器の中心が観察点に合致した状態を示す平面図である。
【図20】円形の嵌合溝が形成された載置台について、該載置台に載置されている容器の中心が観察点に合致した状態を示す平面図である。
【図21】変形例3に係る観察ユニットを示す分解斜視図である。
【図22】変形例4に係る観察ユニットの要部を示す断面図である。
【図23】該観察ユニットの前面図である。
【図24】変形例5に係る観察ユニットを示す断面図である。
【符号の説明】
【0095】
1 筐体
11 第1空間
12 第2空間
13 第3空間
15 光透過部
16 上面壁
2 X軸駆動機構
28 X軸センサ(検知部)
29 X軸遮蔽板(被検知部)
3 Y軸駆動機構
36 Y軸センサ
37 Y軸遮蔽板
38 通気路
39 送風ファン
4 載置台
5 観察装置
51 対物レンズ(光学系)
54 CCDカメラ(撮像系)
6 照明装置
7 衝立部材
8 断熱部材
9 駆動装置
91 X軸モータ
92 Y軸モータ
93 Z軸モータ
94 駆動モータ
A 容器
C 容器の中心
M 観察点
O 容器に設定されたXY座標の原点
【技術分野】
【0001】
本発明は、インキュベータやアイソレータなどで使用される観察ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、細胞などの試料を培養するための装置として、インキュベータが用いられている。しかし、従来のインキュベータでは、培養中の試料の状態を観察するためには、試料をインキュベータから取り出す必要があった。しかし、細胞などの試料は温度の変化に敏感であるため、インキュベータから取り出すと、細胞が死滅するなど試料に影響を及ぼしてしまう虞があった。
【0003】
そこで、インキュベータに観察装置を配備して、試料の状態をインキュベータ内で観察可能にすることが提案されている。
例えば、特許文献1に開示のインキュベータでは、インキュベータを構成する筐体の外面に突起部が形成されている。該突起部の内部には、試料を観察する際に試料が配置される空間が形成されており、該空間は、インキュベータ内の空間に連通している。又、突出部には上下に1つずつ窓が形成されており、これにより、光は、上下2つの窓を通って突起部内の空間を通過することが可能となっている。又、筐体の外面には、突出部を上下から挟んだ状態で顕微鏡ユニットが配備されている。
【0004】
上記インキュベータによれば、インキュベータ内の空間から突出部内の空間に試料移動させることにより、インキュベータ内の環境下で試料を観察することが可能であり、従って、試料を観察する場合でも、試料をインキュベータから取り出す必要がない。
【特許文献1】特開2007−209256号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示のインキュベータでは、観察装置(顕微鏡ユニット)がインキュベータの外部に配備されているため、インキュベータが大型化していた。又、観察装置は、特許文献1に開示のインキュベータに固有のものであり、該観察装置を他のインキュベータに適用することが困難であり、汎用性が低かった。
【0006】
例えば、インキュベータ内に観察装置を配備することが考えられるが、従来の観察装置をそのままインキュベータ内に配備したのでは、該観察装置はインキュベータ内の環境に曝されることとなり、湿気等により観察装置の光学系や撮像系に不具合が生じてしまう虞がある。
【0007】
又、インキュベータ内に観察装置を配備する場合、観察装置を自動化する必要があり、観察装置には、焦点を合わせるための駆動モータ等を配備する必要がある。しかし、駆動モータを動作させると駆動モータからは大量の熱が発生するため、この熱が試料に伝わって試料に影響を及ぼす虞がある。
【0008】
そこで本発明の目的は、試料に影響を与えることなくインキュベータやアイソレータなどの保存庫内で使用することが可能な観察ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る観察ユニットは、試料を観察するための観察装置と、試料を載置する載置台と、前記観察装置によって試料を観察する観察位置まで前記載置台を移動させる駆動装置と、鉛直方向に拡がる第1空間を密閉する筐体とを具える観察ユニットであって、前記第1空間と載置台とが互いに水平方向にずれた状態で配置されており、該第1空間内に駆動装置が配備されている。
【0010】
上記観察ユニットによれば、駆動装置で発生した熱は、周囲の空気に伝わって空気と共に上昇するので、駆動装置に対して水平方向にずれた位置に配置されている載置台には、駆動装置の熱は伝達されにくい。従って、載置台に載置された試料にも熱は伝達されにくく、その結果、試料の温度上昇が抑制されることとなる。よって、試料の培養が妨げられたり、試料が死滅したりするなどの熱の影響を試料に与えることなく、該試料を観察することが可能である。
又、上記観察ユニットは小型化が容易であるので、インキュベータなどの保存庫への観察ユニットの出し入れが可能となり、観察ユニットの汎用性を高めることが出来る。
【0011】
具体的構成において、前記観察装置は光学系と撮像系から構成され、撮像系は、前記第1空間内に配置される一方、光学系は、前記載置台の下方に位置して前記筐体によって密閉された第2空間内に配置されており、前記第1空間と載置台及び第2空間との間には、第1空間から載置台及び第2空間への熱の移動を妨げる衝立部材が介在している。
又、前記筐体のうち第2空間の上部を構成する上面壁には、前記観察位置から下方に向けて観察装置の光学系まで光を通す光透過部が形成されている。
【0012】
上記具体的構成によれば、第1空間と載置台及び第2空間との間に衝立部材が介在しているので、第1空間内の駆動装置及び観察装置の撮像系で発生した熱が載置台及び第2空間に移動することが、衝立部材によって妨げられる。従って、駆動装置及び観察装置の撮像系で熱が発生した場合でも、試料の温度は殆ど上昇することがない。よって、熱の影響を試料に与えることなく、該試料を観察することが可能である。
【0013】
しかも、駆動装置及び観察装置は、筐体によって密閉された空間(第1及び第2空間)内に配備されているので、観察ユニットを保存庫内に設置した場合でも、駆動装置及び観察装置は、保存庫内の環境に曝されることがない。従って、湿気等による駆動装置及び観察装置の不具合が生じにくくなる。
又、観察装置は密閉空間内に配置されているが、筐体には光透過部が形成されているので、観察装置による試料の観察が筐体によって妨げられることがない。
【0014】
更に具体的な構成において、前記筐体のうち第2空間の上部を構成する上面壁と、前記載置台との間には断熱層が形成されている。より具体的には、前記断熱層の少なくとも一部が断熱部材によって構成されており、前記光透過部は前記断熱部材を貫通して該断熱部材の表面に露出している。
該具体的構成によれば、駆動装置及び観察装置の撮像系で発生した熱が、筐体を伝導して、第2空間の上部を構成する上面壁まで移動した場合でも、該上面壁と載置台との間に断熱層が形成されているので、熱は載置台までは伝達しにくく、その結果、試料の温度上昇が抑制されることとなる。よって、熱の影響を試料に与えることなく、該試料を観察することが可能である。
【0015】
他の具体的構成において、前記載置台は、前記観察位置と、前記第2空間の上方位置から離脱した離脱位置との間で往復移動が可能であり、該載置台の往復移動は、前記駆動装置によって実行される。
該具体的構成によれば、観察時以外は載置台を離脱位置に移動させることにより、駆動装置及び観察装置の撮像系などの熱源から試料への熱の移動を抑制することが可能となる。
【0016】
更に他の具体的構成において、前記載置台には、前記駆動装置の駆動力が伝達部材によって伝達され、該載置台は、前記伝達部材への着脱が可能であり、前記伝達部材には検知部が配備される一方、前記載置台には、検知部によって検知される被検知部が配備され、被検知部は、該被検知部が検知部によって検知されたときに載置台に載置されている試料の中心が所定位置に合致するように配置されている。
該具体的構成によれば、載置台を異なる形状のものに取り替えた場合でも、試料の中心を所定位置に容易に合致させることが出来る。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る観察ユニットは、試料に影響を与えることなくインキュベータやアイソレータなどの保存庫内で使用することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
1.観察ユニットの使用形態
図1は、本発明の一実施形態に係る観察ユニットの使用形態を示す図である。図1に示す様に、観察ユニットは、細胞などの試料を培養又は保存するための保存庫101、例えばインキュベータやアイソレータなどへの出し入れが可能である。保存庫101の内部には棚104が配備されており、観察ユニットは棚104上に設置して使用される。
尚、図1に示される保存庫101では棚104が1つ設けられているに過ぎないが、試料が収容された複数の容器の収納が可能となるように、保存庫101内に複数の棚を配備してもよい。
【0019】
観察ユニットは、保存庫101の外部に設置された制御装置102に、ケーブル105によって接続されている。制御装置102は、観察ユニットを制御するためのものであり、観察ユニットを駆動するためのドライバやコントローラなどが内蔵されている。
【0020】
又、制御装置102は、保存庫101の外部に設置されたパーソナルコンピュータ103に、ケーブル106によって接続されている。これにより、パーソナルコンピュータ103から制御装置102に指令を出すことによって観察ユニットを操作することや、観察した画像の取得・保存などが可能となっている。
【0021】
2.観察ユニットの構成
図2は、観察ユニットの外観を示す斜視図であり、図3〜図5はそれぞれ、該観察ユニットを示す側面図、正面図、背面図である。又、図6は、図4に示すVI−VI線に沿う観察ユニットの断面図である。
図2〜図5に示す様に、観察ユニットは筐体1を具え、筐体1の外部には、試料が収容された容器Aを載置する載置台4と、載置台4をX軸方向に移動させるためのX軸駆動機構2と、載置台4をY軸方向に移動させるためのY軸駆動機構3が配備されている。尚、X軸方向及びY軸方向は、水平面内で互いに直交する2つの方向である。
又、図6に示す様に、筐体1の内部には、容器A内の試料を観察するための観察装置5と、容器A内の試料を照明するための照明装置6が配備されると共に、X軸駆動機構2、Y軸駆動機構3、及び観察装置5を駆動するための駆動装置9が配備されている。
【0022】
図6に示す様に、筐体1には、背面側から前面側への熱の移動、特に背面側から前面側への熱伝達と熱放射を妨げる衝立部材7が配備され、衝立部材7の前面側には、載置台4が配置される一方、衝立部材7の背面側には、載置台4から水平方向にずれて位置すると共に駆動装置9を含んで鉛直方向に拡がる第1空間11が筐体1の内部に形成されている。又、衝立部材7の前面側には、載置台4の下方に位置する第2空間12と、載置台4の上方に位置する第3空間13とが筐体1の内部に形成されている。
【0023】
従って、背面側に位置する第1空間11と、前面側に位置する載置台4、第2空間12、及び第3空間13との間に衝立部材7が介在することとなり、その結果、背面側に位置する第1空間11から前面側に位置する載置台4、第2空間12、及び第3空間13への熱の移動が、衝立部材7によって妨げられることとなる。
【0024】
又、図6に示す様に、衝立部材7と筐体1によって、第1乃至第3空間11〜13は密閉されている。
【0025】
図6に示す様に、筐体1のうち第2空間12の上部を構成する上面壁16の上面側には、中空の断熱部材8が配備されており、断熱部材8は、ケース81の内部に収納されている。断熱部材8は、上辺部分がケース81の上方内面に接触すると共に、下辺部分が上面壁16の上面に接触している。
尚、図8に示す様に、ケース81、断熱部材8の上辺部分及び下辺部分には、これらを上下に貫く貫通孔82〜84が形成されている。
【0026】
上面壁16の上面側に断熱部材8を配備することにより、上面壁16と載置台4との間には断熱層の一部が形成されることとなり、上面壁16から載置台4への熱伝達が抑制されることとなる。
又、中空の断熱部材8の上辺部分と下辺部分との間には、図6に示す様に隙間が形成されているので、該隙間に保存庫101内の空気が流れることにより、上面壁16と載置台4との間の断熱効果は更に高まることになる。
【0027】
図6に示す様に、第1空間11内には駆動装置9が配置されており、駆動装置9は、衝立部材7の背面に設置されている。
図7は、筐体1の背面壁を省略して示した観察ユニットの背面図である。図7に示す様に、駆動装置9は、X軸駆動機構2を駆動するX軸モータ91と、Y軸駆動機構を駆動するY軸モータ92と、観察装置5をZ軸方向(鉛直方向)に移動させるためのZ軸モータ93と、観察装置5のズームレンズ53を駆動する駆動モータ94とから構成されている。
【0028】
X軸モータ91及びY軸モータ92は何れも、回転軸がX軸方向に沿うように配置されている。又、Z軸モータ93及び駆動モータ94は何れも、回転軸がZ軸方向に沿うように配置されている。
尚、これらのモータは、回転することによって大量の熱を発生する。
【0029】
図6に示す様に、第3空間13内には照明装置6が配置されており、照明装置6は、光を発するLED(Light Emitting Diode)61と、LEDから発せられた光を鉛直下方へ反射する反射ミラー62とから構成されている。
【0030】
筐体1のうち第3空間13を構成する下面壁17には、反射ミラー62の下方位置に貫通孔171が形成され、貫通孔171には、光透過板172が隙間なく嵌め込まれている。これにより、第3空間13を密閉状態に維持したまま、反射ミラー62によって反射された光を、第3空間13から載置台4が配置される空間へ導くことが可能となっている。
そして、図6に示す様に、載置台4が配置される空間内の位置のうち、反射ミラー62で反射した光の通る位置が、観察装置5によって試料を観察するための観察点Mとなる。
【0031】
図6に示す様に、第1及び第2空間11,12内には観察装置5が配置されており、観察装置5は、衝立部材7を貫通している。
観察装置5は、位相差顕微鏡であって、観察対象となる試料の拡大像を形成する対物レンズ51と、対物レンズ51で形成された拡大像をズームレンズ52に導く反射ミラー52と、試料の拡大像を更に拡大するズームレンズ52と、ズームレンズ52によって拡大された観察像を撮像するCCD(Charge Coupled Device)カメラ51とを具え、対物レンズ51、反射ミラー52、及びズームレンズ52によって観察装置5の光学系が構成されると共に、CCDカメラ51によって観察装置5の撮像系が構成されている。
【0032】
そして、第1空間11には、観察装置5の撮像系を構成するCCDカメラ51が配置される一方、第2空間12には、観察装置5の光学系を構成する対物レンズ51、反射ミラー52、及びズームレンズ52が配置されている。対物レンズ51は、観察点Mの下方位置に配置されている。
尚、本実施の形態に係る観察ユニットでは、ズームレンズ52は、衝立部材7を貫通した状態で配置されているので、第1空間11内には、ズームレンズ5の一部が入り込んでいる。
【0033】
観察装置5による試料の観察倍率は、対物レンズ51の拡大倍率とズームレンズ52の拡大倍率とによって決定される。又、本実施の形態に係る観察装置5においては、駆動モータ94の駆動によってズームレンズ52の拡大倍率を変更することにより、試料の観察倍率を変更することが可能である。
【0034】
筐体1の上面壁16には、観察点Mの下方位置に、観察点Mから下方に向けて第2空間12内まで光を通す光透過部15が突設されている。具体的には図8に示す様に、光透過部15は、筒状部材151と、シールリング152と、光透過板153とから構成され、筐体1の上面壁16には、光透過部15を取り付けるための貫通孔161が形成されている。
【0035】
筒状部材151の上端には、光透過板153が隙間なく嵌め込まれている。筒状部材151の下端部には、貫通孔161に嵌合すべき嵌合部154が形成されており、嵌合部154は、その外周面にシールリング152が取り付けられた状態で、貫通孔161に嵌め込まれている。
そして、図6及び図8に示す様に、光透過部15は、ケース81及び断熱部材8の貫通孔82〜84を貫通して、光透過板153を断熱ケース81の上面に露出させている。
【0036】
これにより、上面壁16の上面側に断熱部材8を配備した場合でも、照明装置6の反射ミラー62で反射した光は、光透過部15の光透過板153を透過して、観察装置5の対物レンズ51に導かれることとなる。
尚、嵌合部154の外周面にシールリング152を取り付けることにより、貫通孔161を構成する内周面と嵌合部154の外周面との間に形成される隙間は、シールリング152によって塞がれ、その結果、第2空間12は密閉状態のまま維持されることとなる。
【0037】
又、図6に示す様に光透過部15の内部には、観察装置5の対物レンズ51が配置されている。これにより、対物レンズ51の焦点距離が小さい場合でも、観察点Mに配置された試料に焦点を合わせることが可能となっている。
尚、光透過部15の筒状部材151の内周面には環状の断熱部材85が配備され、断熱部材85と対物レンズ51との間には僅かな隙間が形成されている。これにより、対物レンズ51の上下方向への移動を可能にしつつ、熱が光透過部15内を通って下から上に伝達することを抑制している。
【0038】
図9は、X軸駆動機構2及びY軸駆動機構3を示す斜視図である。Y軸駆動機構3は、図9に示す様に、一対のプーリ31,32と、タイミングベルト33と、逆L字状のY軸スライド体34と、ガイド部材35とから構成されている。一対のプーリ31,32の内、一方のプーリ31はY軸モータ92の回転軸に固定されており、Y軸モータ9の回転に伴って一方のプーリ31はY軸モータ9の回転軸周りに回転する。
他方のプーリ32は、一方のプーリ31に対してY軸方向に並んだ位置に、回転自在な状態で配置されている。
【0039】
タイミングベルト33は、一対のプーリ31,32に跨って掛けられている。タイミングベルト33には、Y軸スライド体34が一対のプーリ31,32の間の位置に連結されており、図10に示す様にY軸スライド体34は、その上辺部分341が、載置台4が配置される空間内においてX軸方向に沿って位置するように配置されている。又、Y軸スライド体34は、ガイド部材35に摺動自在に連結されており、Y軸スライド体34の移動可能な経路がY軸方向に沿って規定されている。
【0040】
そして、一方のプーリ31が回転することによって、タイミングベルト33も回転する。このとき、タイミングベルト33のうち一対のプーリ31,32の間の部分が、Y軸方向に沿って移動することになるので、一方のプーリ31の回転運動は、タイミングベルト33によってY軸方向の並進運動に変換されることとなる。
【0041】
従って、Y軸モータ92の回転力は、Y軸駆動機構3によってY軸方向の並進力に変換されてY軸スライド体34に付与されることとなり、その結果、Y軸スライド体34はY軸方向に沿って移動することとなる。
【0042】
X軸駆動機構2は、図9に示す様に、歯車機構21と、Y軸方向に延びたシャフト22と、一対のプーリ23,24と、タイミングベルト25と、L字状のX軸スライド体26と、ガイド部材27とから構成されている。
歯車機構21は、X軸モータ91の回転力をシャフト22の中心軸周りの回転力に変換し、該回転力をシャフト22に付与する。シャフト22は、Y軸駆動機構3のY軸スライド体34の上辺部分341に回転自在に支持されており、歯車機構21から付与された回転力によって中心軸周りに回転する。尚、シャフト22は、歯車機構21に対してスライドすることが可能である
【0043】
一対のプーリ23,24の内、一方のプーリ23はシャフト22の一端に固定されており、シャフト22の回転に伴って一方のプーリ23は、シャフト22と同じ軸周りに回転する。
他方のプーリ24は、一方のプーリ23に対してX軸方向に並んだ位置にて、Y軸スライド体34の上辺部分341に回転自在に取り付けられている。
【0044】
タイミングベルト25は、一対のプーリ23,24に跨って掛けられている。タイミングベルト25には、X軸スライド体26が一対のプーリ23,24の間の位置に連結されている。又、X軸スライド体26は、ガイド部材27に摺動自在に連結されており、X軸スライド体26の移動可能な経路がX軸方向に沿って規定されている。
X軸スライド体26の下辺部分261には載置台4が固定されている。
【0045】
そして、一方のプーリ23が回転することによって、タイミングベルト25も回転する。このとき、タイミングベルト25のうち一対のプーリ23,24の間の部分が、X軸方向に沿って移動することになるので、一方のプーリ23の回転運動は、タイミングベルト25によってX軸方向の並進運動に変換されることとなる。
【0046】
従って、X軸モータ91の回転力は、X軸駆動機構2によってX軸方向の並進力に変換されてX軸スライド体26に付与されることとなり、その結果、X軸スライド体26はX軸方向に沿って移動することとなる。
【0047】
よって、X軸駆動機構2及びY軸駆動機構3によれば、X軸スライド体26に固定された載置台4は、X軸モータ91の回転によりX軸方向に沿って移動し、Y軸モータ92の回転により軸方向に移動することになる。即ち、X軸駆動機構2とY軸駆動機構3によって、X軸モータ91とY軸モータ92の駆動力を載置台4に伝達する伝達部材が構成されている。
【0048】
更に、図9に示す様に、X軸駆動機構2にはX軸センサ28とX軸遮蔽板29が配備され、Y軸駆動機構3にはY軸センサ36とY軸遮蔽板37が配備されている。
X軸遮蔽板29は、X軸スライド体26に固定されており、X軸スライド体26の移動に伴ってX軸方向に移動する。Y軸遮蔽板37は、Y軸スライド体34に固定されており、Y軸スライド体34の移動に伴ってY軸方向に移動する。
【0049】
X軸センサ28は、X軸遮蔽板28の近接/離間によってオン/オフが切り替えられるセンサであり、X軸センサ28にX軸遮蔽板29が対向したときにオンに切り替わる。即ち、X軸センサ28とX軸遮蔽板29によって、検知部と、該検知部により検知される被検知部が構成されている。
そして、X軸センサ28にX軸遮蔽板29が対向してX軸センサ28がオンになったときに、載置台4に載置されている容器Aの中心CがX軸方向において観察点Mに合致するように、X軸センサ28は配置されている。
【0050】
又、Y軸センサ36は、Y軸遮蔽板37の近接/離間によってオン/オフが切り替えられるセンサであり、Y軸センサ36にY軸遮蔽板37が対向したときにオンに切り替わる。即ち、Y軸センサ36とY軸遮蔽板37によって、検知部と、該検知部により検知される被検知部が構成されている。
そして、Y軸センサ36にY軸遮蔽板37が対向してY軸センサ36がオンになったときに、載置台4に載置されている容器Aの中心CがY軸方向において観察点Mに合致するように、Y軸センサ36は配置されている。
【0051】
従って、容器Aの中心Cが観察点Mからずれた位置にある場合であっても、容器Aの中心Cを観察点Mに容易に復帰させることが出来る。
【0052】
本実施の形態に係る観察ユニットにおいては、図3に示す様に、Y軸駆動機構3は、載置台4よりも下方位置に配置されているので、X軸方向についての載置台4の可動域を拡げることが可能となっている。又、サイズの大きな容器Aを載置台4に載置することが可能となっている。
【0053】
更に本実施の形態に係る観察ユニットにおいては、図9に示す様に、逆L字状のY軸スライド体34を用いることより、X軸駆動機構2に対して片側にY軸駆動機構3を配備するだけで、載置台4のX軸方向及びY軸方向への移動が可能になっている。従って、載置台4への容器Aの載置が行い易くなっている。
【0054】
図9に示す様に、載置台4の上面には、該上面に載置した容器Aの位置ずれを防止すべく、容器Aを嵌め込むための嵌合溝41が形成されており、嵌合溝41は、載置する容器の形状より僅かに大きな形状を有している。
又、嵌合溝41の底面には、中央の領域に貫通孔42が形成されている。これにより、図10に示す様に、照明装置6の反射ミラー62で反射した光は、貫通孔42を通って、観察装置5の対物レンズ51に入射することが可能となっている。従って、載置台4に載置した容器A内の試料の観察が、載置台4によって妨げられることがない。
【0055】
図11は、載置台4の設置状態を示した断面図である。図11に示す様に、載置台4は、その下面をケース81の上面から離間させた位置にて、X軸駆動機構2に連結されている。従って、載置台4の下面とケース81の上面との間には空気が介在し、該空気が断熱層として機能することになる。よって、ケース81から載置台4への熱伝達が抑制されることとなる。
【0056】
又、載置台4の下面をケース81の上面から僅かに離間させることにより、載置台4に載置された容器A内の試料に対物レンズ51の焦点を合わせることを可能にしつつ、載置台4を移動させた場合でも、載置台4とケース81との間に摺動による摩擦が生じないようにすることが出来る。従って、摩擦が原因となって生じる載置台4の振動が抑制されることとなる。
【0057】
図12は、載置台4が観察位置に配置された状態を示す側面図であり、図13は、載置台4が離脱位置に配置された状態を示す側面図である。載置台4は、Y軸駆動機構3の駆動によって、図12に示す如く容器A内の試料を観察する観察位置と、図13に示す如く第2空間12の上方位置からY軸方向に離脱した離脱位置との間で往復移動が可能である。
尚、本実施の形態に係る観察ユニットにおいては、第2空間12の上方位置に対して載置台4をY軸方向に離脱させているが、第2空間12の上方位置に対して載置台4をX軸方向に離脱させることが可能となるようにX軸駆動機構4の構成を変形してもよい。
【0058】
上述した観察ユニットは小型化が容易な構成であり、小型の保存庫101にも出し入れが可能なサイズにまで小さくすることが可能である。従って、上述した観察ユニットは、その汎用性が高くなっている。又、保存庫101への観察ユニットの出し入れが可能であるので、観察ユニットを取り出した状態で保存庫101内を洗浄することが可能である。
【0059】
上述した観察ユニットによれば、駆動装置9、観察装置5、及び照明装置6は、筐体1によって密閉された空間(第1乃至第3空間11〜13)内に配備されているので、観察ユニットを保存庫101内に設置した場合でも、駆動装置9、観察装置5、及び照明装置6は、保存庫101内の環境に曝されることがない。従って、保存庫101内にて観察ユニットを使用した場合でも、湿気等による駆動装置9、観察装置5、及び照明装置6の不具合が生じにくくなっている。
【0060】
しかも、駆動装置9で発生した熱は、周囲の空気に伝わって空気と共に上昇するので、駆動装置9に対して水平方向にずれた位置に配置されている載置台4には、駆動装置9の熱は伝達されにくい。従って、載置台4に載置された試料にも熱は伝達されにくく、その結果、熱伝達による試料の温度上昇が抑制されることとなる。よって、試料の培養が妨げられたり、試料が死滅したりするなどの熱の影響を試料に与えることなく、該試料を保存庫101内で観察することが可能である。
【0061】
尚、空気と共に上昇した熱は、筐体1の上部から発散されることとなる。従って、筐体1の上部には放熱フィンなどを配備することが好ましく、これにより筐体1内の熱は効率良く発散されることとなる。
観察ユニット1が保存庫101内に設置されている場合、筐体1内の熱は、筐体1の上部から保存庫101内に発散されて、保存庫101内の空気に伝わることになる。しかし、保存庫101内の空気の温度は、ヒータなどによって制御されているので、筐体1の上部から発散される熱による保存庫内101の温度の変化量は僅かであり、保存庫101内に保存されている試料は影響を受けることがない。
【0062】
更に、上述した観察ユニットにおいては、第1空間11と載置台4及び第2空間12との間に衝立部材7が介在しているので、第1空間11内の駆動装置9及び観察装置5の撮像系で発生した熱が載置台4及び第2空間12に移動すること、特に第1空間11から載置台4及び第2空間12への熱伝達と熱放射が、衝立部材7によって妨げられる。従って、駆動装置9及び観察装置5の撮像系で熱が発生した場合でも、試料の温度は殆ど上昇することがない。よって、熱の影響を試料に与えることなく、該試料を保存庫101内で観察することが可能である。
【0063】
又、観察する試料は、照明装置6のLED61から発せられた光によって照明されるが、LED561の点灯は、試料を探索するときや、後述するタイムラプス観察において試料を撮像するとき(シャッター時)にのみ行われるので、試料に与える熱の影響は殆どない。
【0064】
更に又、上述した観察ユニットにおいては、筐体1の上面壁16と載置台4との間には、断熱部材8や空気によって断熱層が形成されているので、駆動装置9、観察装置5の撮像系、及び照明装置6で発生した熱が、筐体1を伝導して上面壁16まで移動した場合でも、熱は載置台4までは伝達しにくく、その結果、熱伝導による試料の温度上昇が抑制されることとなる。よって、熱の影響を試料に与えることなく、該試料を保存庫101内で観察することが可能である。
【0065】
又、上述した観察ユニットにおいては、載置台4は、観察位置と離脱位置との間で往復移動が可能であるので、載置台4を離脱位置に配置することにより、載置台4を、駆動装置9、観察装置5の撮像系、及び照明装置6などの熱源から遠ざけることが出来る。従って、載置台4を離脱位置に移動させることにより、熱源から試料への熱の移動を抑制することが可能になると共に、試料を保存庫101内の環境下に配置することが可能になる。
【0066】
又、上述した観察ユニットにおいては、X軸モータ91を回転することによって載置台4をX軸方向に沿って移動させ、Y軸モータ92の回転によって載置台4をY軸方向に沿って移動させることが出来るので、X軸モータ91とY軸モータ92の回転速度や回転量を制御装置102によって制御することにより、載置台4の駆動を自動化することが可能である。
【0067】
3.観察ユニットによるタイムラプス観察
図14は、上述した観察ユニットを用いて試料をタイムラプス観察する場合のフローチャートである。ここで、タイムラプス観察とは、設定したインターバルΔTで試料の観察を複数回繰り返し行い、観察毎に試料の観察画像を取得する観察手法である。以下では、細胞が試料として容器A内に収容されている場合について説明する。
【0068】
まず、ステップS1において、容器Aに設定されるXY座標の原点Oの初期化を行う。具体的には、X軸センサ28とY軸センサ36の何れもがオンになった状態で、観察点Mが存在する位置を原点Oとして、容器Aに対してXY座標を設定する。
そして、ステップS2において載置台4に容器Aを載置する。その後、ステップS3において観察装置の電源をオンにし、ステップS4においてタイムラプス観察の対象とする細胞を探索する。ステップS4においては、パーソナルコンピュータ103の表示手段に表示された画像を見ながら、載置台4を移動させて細胞を探索する。
【0069】
観察対象とする細胞が見つかると、ステップS5において、XY座標内での細胞の位置及び観察倍率を、パーソナルコンピュータ103の入力手段を用いて入力する。これにより、観察対象とする細胞の座標及び観察倍率が設定される(タイムラプス設定1)。設定された座標及び観察倍率は、制御装置102に与えられる。
複数の細胞を観察対象とする場合には、ステップS6からテップS4に戻って、ステップS4とステップS5とを繰り返し実行する。
【0070】
観察対象とする全ての細胞の座標設定が完了すると、ステップS7において、タイムラプス観察を実行するインターバルΔTと観察回数Nを、パーソナルコンピュータ103の入力手段を用いて入力する。これにより、インターバルΔTと観察回数Nが設定される(タイムラプス設定2)。設定されたインターバルΔT及び観察回数Nは、制御装置102に与えられる。
【0071】
ステップS7でのタイムラプス設定が完了すると、ステップS8においてタイムラプス観察が開始される。このとき、制御装置102においてカウンタnの値が1に設定される。
そして、ステップS9において、観察開始時刻T(n)が制御装置102の記憶手段に記憶されると共に、ステップS5で設定した座標に存在する全ての細胞について、観察ユニットによる観察が制御装置102の制御によって自動的に実行される。具体的には、設定した各座標にある細胞が観察点Mに導かれ、そして観察装置5による該細胞の観察が、ステップS5で設定した観察倍率で実行される。観察された細胞の観察像は、観察装置5のCCDカメラ54によって撮像され、得られた画像は、パーソナルコンピュータ103の記憶手段に記憶される。
【0072】
ステップS9での細胞の観察が完了すると、制御装置102は、ステップS10においてX軸センサ28とY軸センサ36の何れもがオンになるように、容器Aの中心Cを観察点Mへ移動させる。そして、ステップS11においてカウンタnの値を1だけ増加させ、ステップS12において、カウンタnの値をステップS7で設定された観察回数Nを超えているか否かが、制御装置102によって判断される。
【0073】
ステップS12において、カウンタnの値が観察回数Nを超えていないと制御装置102によって判断された場合、制御装置102は、ステップS13において容器Aを離脱位置に移動させ、ステップS14において、前回の観察開始時刻T(n−1)から、ステップS14への移行時の時刻Tまでの経過時間(T−T(n−1))を算出すると共に、該経過時間が、ステップS7で設定したインターバルΔTに達しているか否かを判断する。
【0074】
ステップS14において、経過時間がインターバルΔTに達していないと制御装置102によって判断された場合、制御装置102は、ステップS15において容器Aを離脱位置で待機させる。
【0075】
一方、ステップS14において、経過時間がインターバルΔTに達していると制御装置102によって判断された場合、制御装置102は、ステップS16において容器Aに設定されるXY座標の原点Oの初期化をステップS11と同様に行って、ステップS9に戻って、再び細胞の観察を実行する。
そして、ステップS12において、カウンタnの値が観察回数Nを超えていると制御装置102によって判断されるまで、細胞の観察が繰り返し実行される。
【0076】
ステップS12において、カウンタnの値が観察回数Nを超えていると制御装置102によって判断された場合、制御装置102は、ステップS13において容器Aを離脱位置に移動させて、タイムラプス観察を終了する。
【0077】
上述したタイムラプス観察によって取得した細胞の画像を利用することにより、細胞の成育状態や形態を観察・分析することが出来る。
【0078】
4.変形例
4−1.変形例1
図15は、本変形例に係る観察ユニットおいて、四角形の嵌合溝41が形成された載置台4の取付け状態を示す斜視図である。図16は、該観察ユニットにおいて、円形の嵌合溝41が形成された載置台4の取付け状態を示す斜視図である。図15及び図16に示す様に、載置台4は、X軸スライド体27の下辺部分271にネジ部材262によって着脱可能に取り付けられてもよい。これにより、嵌合溝41の形状が異なった複数の載置台4を用意しておくことによって、使用する容器Aの形状に応じた載置台4を選択して取り付けることが可能である。
本変形例では、図15に示す様に、四角形の容器Aを嵌め込むべき四角形の嵌合溝41が形成された載置台4と、図16に示す様に、円形の容器Aを嵌め込むべき円形の嵌合溝41が形成された載置台4とが用意されている。
【0079】
尚、嵌合溝41の形状が異なる複数の載置台4毎に、載置台4と該載置台4に載置される容器Aとの総重量が異なると、載置台4を移動させた際にモータにかかる慣性モーメントが変化するので、載置台4の加速度が変化したり、目標位置からの位置ずれが生じたりする虞がある。
従って、嵌合溝41の形状が異なる複数の載置台4について、載置台4と該載置台4に載置される容器Aとの総重量を略一致させておくことが好ましい。
【0080】
又、容器Aが載置された状態での載置台4の重心を、X軸スライド体27が連結される位置にX軸方向において合致させることが好ましい。これにより、載置台4をネジ部材262によってX軸スライド体27に取り付ける場合であっても、取り付けられた載置台4は安定し易くなる。
【0081】
4−2.変形例2
図17は、本変形例に係る観察ユニットおいて、四角形の嵌合溝41が形成された載置台4の取付け状態を示す斜視図であり、図19は、該載置台4に載置されている容器Aの中心Cが観察点Mに合致した状態を示す平面図である。図18は、該観察ユニットにおいて、円形の嵌合溝41が形成された載置台4の取付け状態を示す斜視図であり、図20は、該載置台4に載置されている容器Aの中心Cが観察点Mに合致した状態を示す平面図である。
【0082】
上記変形例1の如く載置台4の取替えを可能にした場合、嵌合溝41の形状が異なる載置台4において、容器Aが載置された状態での載置台4の重心と、容器Aの中心Cとは必ずしも一致しない。このため、上記変形例1で説明したように、容器Aが載置された状態での載置台4の重心を、X軸スライド体27が連結される位置にX軸方向において合致させた場合には、嵌合溝41の形状が異なる載置台4毎に、容器Aの中心Cが観察点Mに合致するときのX軸スライド体27の位置が異なることとなる。
【0083】
従って、図15に示す載置台4について、該載置台4に載置される四角形の容器Aの中心Cが観察点Mに合致するように、X軸駆動機構2のX軸センサ28及びX軸遮蔽板29を配置した場合、図16に示す載置台4に取り替えたときには、該載置台4に載置される円形の容器Aの中心Cが観察点Mからずれてしまう。
このため、図16に示す載置台4について改めて、円形の容器Aの中心Cが観察点Mに合致するように、X軸駆動機構2のX軸センサ28及びX軸遮蔽板29を配置し直す必要があった。
尚、Y軸方向については、嵌合溝41の形状が異なる載置台4において、容器Aが載置された状態での載置台4の重心と、容器Aの中心Cとが合致するように設計されているので、載置台4を取り替えた場合でも、Y軸駆動機構3のY軸センサ36とY軸遮蔽板37を配置し直す必要はない。
【0084】
そこで本変形例では、図17及び図18に示す様に、載置台4にX軸遮蔽板29が取り付けられている。又、嵌合溝41の形状が異なる載置台4毎に、図19及び図20に示す様にX軸遮蔽板29は、X軸センサ28と対向したときに各載置台4に載置されている容器Aの中心Cが観察点Mに合致するように配置されている。
【0085】
従って、載置台4を、嵌合溝41の形状が異なるものに取り替えた場合でも、容器Aの中心Cを観察点Mに容易に合致させることが出来る。
【0086】
4−3.変形例3
図21は、本変形例に係る観察ユニットを示す分解斜視図である。図21に示す様に、X軸駆動機構2は、観察ユニットに着脱可能に配備されてもよい。具体的には、Y軸駆動機構3のY軸スライド体34は、上辺部分341が、ねじ部材343によって立設部分342に着脱可能に連結されており、上辺部分341を立設部分342から離脱させることにより、上辺部分341に配備されているX軸駆動機構2のシャフト22、一対のプーリ23,24、タイミングベルト25、X軸スライド体26、ガイド部材27、X軸センサ28、及びX軸遮蔽板29、並びにX軸スライド体26に取り付けられている載置台4が、観察ユニットから取り外されることとなる。
【0087】
本変形例に係る観察ユニットによれば、X軸駆動機構2を取り外すことにより、X軸駆動機構2によって覆われていた部分の洗浄が容易となる。
【0088】
4−4.変形例4
図22は、本変形例に係る観察ユニットを示す断面図であり、図23は、該観察ユニットの前面図である。図22及び図23に示す様に、互いに離間した載置台4の下面とケース81の上面との間には、空気を流してもよい。具体的には、図22に示す様に、Y軸スライド体34の上辺部分341の背面側及び下面側に、X軸に対する断面形状がL字状の通気路38が形成されており、通気路38は、側方端381(図23参照)及び下辺部分382の前方端383に開口を有している。そして、図23に示す様に、通気路38の側方端381側に、通気路38内に空気を送り込む送風ファン39が配備されている。
【0089】
本変形例に係る観察ユニットによれば、送風ファン39によって通気路38内に空気を送り込むことにより、空気は、通気路38内を通って下辺部分382の前方端383から吹き出し、そして載置台4の下面とケース81の上面との間を前方(Y軸方向)に向かって流れることとなる。
載置台4の下面とケース81の上面との間に空気が流れることにより、載置台4の下面とケース81の上面との間に空気が滞留している場合よりも、ケース81から載置台4への熱伝達が抑制され易くなる。
【0090】
又、本変形例において、断熱ケース81の上面にY軸方向に延びた複数の溝を形成することにより、載置台4の下面とケース81の上面との間に空気が流れやすくなり、ケース81から載置台4への熱伝達が更に抑制され易くなる。
【0091】
4−5.変形例5
図24は、本変形例に係る観察ユニットを示す断面図である。図24に示す様に、観察ユニットを、断熱部材8及びケース81のない構成としてもよい。具体的には、第2空間12の上部を構成する筐体1の上面壁16が、観察装置5の対物レンズ51の上方に配置され、上面壁16に形成されている貫通孔161には、光透過板162が隙間なく嵌め込まれている。そして、載置台4は、筐体1の上面壁16の直上に、上面壁16から離間した状態で設置されている。
本変形例4に係る観察ユニットも、保存庫101内での使用が可能であると共に、熱源から試料への熱の移動を抑制することが出来る
【0092】
勿論、図6に示す観察ユニットにおいて、断熱部材8及びケース81のない構成とした場合でも、筒状部材151をそのまま配備しておいて、載置台4を筒状部材151の上面側に配置してもよい。
【0093】
尚、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
又、載置台4を移動させるための機構が配備されていない観察ユニット、即ちX軸モータ91及びX軸駆動機構2と、Y軸モータ92及びY軸駆動機構3とが配備されていない観察ユニットに対しても、上述した筐体1によって内部の空間を密閉する構成、衝立部材7によって熱の移動を妨げる構成、及び断熱部材8を配備する構成などについては適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の一実施形態に係る観察ユニットの使用形態を示す図である。
【図2】該観察ユニットの外観を示す斜視図である。
【図3】該観察ユニットの側面図である。
【図4】該観察ユニットの正面図である。
【図5】該観察ユニットの背面図である。
【図6】該観察ユニットの、図4に示すVI−VI線に沿う断面図である。
【図7】筐体の背面壁を省略して示した上記観察ユニットの背面図である。
【図8】断熱部材に関連する観察ユニットの要部を示した分解斜視図である。
【図9】X軸駆動機構及びY軸駆動機構を示す斜視図である。
【図10】Y軸駆動機構を構成するY軸スライド体の配置状態を示した斜視図である。
【図11】載置台の設置状態を示した断面図である。
【図12】載置台が観察位置に配置された状態を示す側面図である。
【図13】載置台が離脱位置に配置された状態を示す側面図である。
【図14】上記観察ユニットによるタイムラプス観察の流れを示すフローチャートである。
【図15】変形例1に係る観察ユニットおいて、四角形の嵌合溝が形成された載置台の取付け状態を示す斜視図である。
【図16】該観察ユニットにおいて、円形の嵌合溝が形成された載置台の取付け状態を示す斜視図である。
【図17】変形例2に係る観察ユニットにおいて、四角形の嵌合溝が形成された載置台へのX軸遮蔽板の取付け状態を示す斜視図である。
【図18】該観察ユニットにおいて、円形の嵌合溝が形成された載置台へのX軸遮蔽板の取付け状態を示す斜視図である。
【図19】四角形の嵌合溝が形成された載置台について、該載置台に載置されている容器の中心が観察点に合致した状態を示す平面図である。
【図20】円形の嵌合溝が形成された載置台について、該載置台に載置されている容器の中心が観察点に合致した状態を示す平面図である。
【図21】変形例3に係る観察ユニットを示す分解斜視図である。
【図22】変形例4に係る観察ユニットの要部を示す断面図である。
【図23】該観察ユニットの前面図である。
【図24】変形例5に係る観察ユニットを示す断面図である。
【符号の説明】
【0095】
1 筐体
11 第1空間
12 第2空間
13 第3空間
15 光透過部
16 上面壁
2 X軸駆動機構
28 X軸センサ(検知部)
29 X軸遮蔽板(被検知部)
3 Y軸駆動機構
36 Y軸センサ
37 Y軸遮蔽板
38 通気路
39 送風ファン
4 載置台
5 観察装置
51 対物レンズ(光学系)
54 CCDカメラ(撮像系)
6 照明装置
7 衝立部材
8 断熱部材
9 駆動装置
91 X軸モータ
92 Y軸モータ
93 Z軸モータ
94 駆動モータ
A 容器
C 容器の中心
M 観察点
O 容器に設定されたXY座標の原点
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を観察するための観察装置と、試料を載置する載置台と、前記観察装置によって試料を観察する観察位置まで前記載置台を移動させる駆動装置と、鉛直方向に拡がる第1空間を密閉する筐体とを具える観察ユニットであって、前記第1空間と載置台とが互いに水平方向にずれた状態で配置されており、該第1空間内に駆動装置が配備されている観察ユニット。
【請求項2】
前記観察装置は光学系と撮像系から構成され、撮像系は、前記第1空間内に配置される一方、光学系は、前記載置台の下方に位置して前記筐体によって密閉された第2空間内に配置されており、前記第1空間と載置台及び第2空間との間には、第1空間から載置台及び第2空間への熱の移動を妨げる衝立部材が介在し、
前記筐体のうち第2空間の上部を構成する上面壁には、前記観察位置から下方に向けて観察装置の光学系まで光を通す光透過部が形成されている請求項1に記載の観察ユニット。
【請求項3】
前記筐体のうち第2空間の上部を構成する上面壁と、前記載置台との間には断熱層が形成されている請求項2に記載の観察ユニット。
【請求項4】
前記断熱層の少なくとも一部が断熱部材によって構成されており、前記光透過部は前記断熱部材を貫通して該断熱部材の表面に露出している請求項3に記載の観察ユニット。
【請求項5】
前記載置台は、前記観察位置と、前記第2空間の上方位置から離脱した離脱位置との間で往復移動が可能であり、該載置台の往復移動は、前記駆動装置によって実行される請求項2乃至請求項4の何れかに記載の観察ユニット。
【請求項6】
前記載置台には、前記駆動装置の駆動力が伝達部材によって伝達され、該載置台は、前記伝達部材への着脱が可能であり、前記伝達部材には検知部が配備される一方、前記載置台には、検知部によって検知される被検知部が配備され、被検知部は、該被検知部が検知部によって検知されたときに載置台に載置されている試料の中心が所定位置に合致するように配置されている請求項1乃至請求項5の何れかに記載の観察ユニット。
【請求項1】
試料を観察するための観察装置と、試料を載置する載置台と、前記観察装置によって試料を観察する観察位置まで前記載置台を移動させる駆動装置と、鉛直方向に拡がる第1空間を密閉する筐体とを具える観察ユニットであって、前記第1空間と載置台とが互いに水平方向にずれた状態で配置されており、該第1空間内に駆動装置が配備されている観察ユニット。
【請求項2】
前記観察装置は光学系と撮像系から構成され、撮像系は、前記第1空間内に配置される一方、光学系は、前記載置台の下方に位置して前記筐体によって密閉された第2空間内に配置されており、前記第1空間と載置台及び第2空間との間には、第1空間から載置台及び第2空間への熱の移動を妨げる衝立部材が介在し、
前記筐体のうち第2空間の上部を構成する上面壁には、前記観察位置から下方に向けて観察装置の光学系まで光を通す光透過部が形成されている請求項1に記載の観察ユニット。
【請求項3】
前記筐体のうち第2空間の上部を構成する上面壁と、前記載置台との間には断熱層が形成されている請求項2に記載の観察ユニット。
【請求項4】
前記断熱層の少なくとも一部が断熱部材によって構成されており、前記光透過部は前記断熱部材を貫通して該断熱部材の表面に露出している請求項3に記載の観察ユニット。
【請求項5】
前記載置台は、前記観察位置と、前記第2空間の上方位置から離脱した離脱位置との間で往復移動が可能であり、該載置台の往復移動は、前記駆動装置によって実行される請求項2乃至請求項4の何れかに記載の観察ユニット。
【請求項6】
前記載置台には、前記駆動装置の駆動力が伝達部材によって伝達され、該載置台は、前記伝達部材への着脱が可能であり、前記伝達部材には検知部が配備される一方、前記載置台には、検知部によって検知される被検知部が配備され、被検知部は、該被検知部が検知部によって検知されたときに載置台に載置されている試料の中心が所定位置に合致するように配置されている請求項1乃至請求項5の何れかに記載の観察ユニット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2010−145863(P2010−145863A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−324661(P2008−324661)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
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