説明

角型被覆電線の接続方法

【課題】角型電線の変形を抑制し、且つ、製造工程を簡素化できる角型被覆電線の接続方法を提供する。
【解決手段】導電部材と、絶縁被膜によって角型電線が被覆された角型被覆電線とを、導電部材が絶縁被膜の一部と接するように加圧すると共に、導電部材に電流を流して発熱させることにより、導電部材と角型被覆電線の角型電線とを接続する接続方法であって、加圧・通電条件を絶縁被膜が昇華する条件とする。これにより、絶縁被膜における導電部材と接する部位を昇華により除去し、且つ、角型電線と導電部材とを接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電部材と角型被覆電線を接続する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に示されるように、断面略U字形状の導電部材と絶縁被膜によって電線が被覆された絶縁被覆電線とを、加圧しつつ通電することで接続する方法が提案されている。特許文献1では、導電部材が基部と該基部に対面する折り返し部とを屈曲部によって連結してなり、基部と折り返し部との間に絶縁被覆電線を挟みこんだ状態で、基部と折り返し部とを対をなす電極によって加圧する。また、この加圧状態で、対をなす電極によって導電部材に電流を流し、これにより導電部材を発熱させ、この熱を導電部材に挟持されている絶縁被覆電線の絶縁被膜に伝達させる。そして、この熱と加圧力によって軟化させた絶縁被膜を導電部材との接触部から流動させ、導電部材と剥き出し状態の電線とを接続するようにしている。
【特許文献1】特開平11−114674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、断面矩形状の電線(以下、角型電線と示す)が絶縁被膜によって被覆された絶縁被覆電線(以下、角型被覆電線と示す)の場合、特許文献1に示される接続方法では、断面円形状を有する絶縁被覆電線に比べて、導電部材と角型被覆電線の接触面積が広いため、導電部材を介して角型被覆電線に作用する圧力が小さくなってしまう。したがって、絶縁被膜を流動させるためにはより強い力を印加しなければならない。このため、角型電線が変形してしまい、その断面積が減少し、機械的強度が低下するという問題がある。
【0004】
そこで、従来は、角型被覆電線における絶縁被膜の一部を機械的または化学的手法によって予め除去し、その後、絶縁被膜が除去されて電線が剥き出し状態となった部位と導電部材とを接続する方法が一般的に採用されている。しかしながら、この方法では、予め角型被覆電線における絶縁被膜の一部を除去するという工程が増えてしまう。さらには、角型電線も絶縁被膜とともに一部除去されるため、導電部材と接続される角型電線の断面積が減少してしまい、機械的強度が低下するという問題が生じる。
【0005】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、角型電線の変形を抑制し、且つ、製造工程を簡素化できる角型被覆電線の接続方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、導電部材と、絶縁被膜によって角型電線が被覆された角型被覆電線とを、導電部材が絶縁被膜の一部と接するように加圧すると共に、導電部材に電流を流して発熱させることにより、導電部材と角型電線とを接続する角型被覆電線の接続方法であって、加圧・通電条件を絶縁被膜が昇華する条件とすることで、絶縁被膜における導電部材と接する部位を昇華により除去し、且つ、角型電線と導電部材とを接続することを特徴する。
【0007】
このように本発明によれば、加圧・通電条件を絶縁被膜が昇華する条件とすることで、絶縁被膜を昇華により除去する。すなわち、熱によって軟化した絶縁被膜が、加圧によって流動するほどの力を印加しなくとも良い。したがって、印加する力を従来の方法に比べて小さくすることができ、加圧による角型電線の変形を抑制することができる。また、印加する力が従来に比べて小さいので、導電部材に電流を流す電極と導電部材との接触抵抗が高まり、これにより発熱量を大きくすることができる。すなわち、導電部材から伝達された熱により、絶縁被膜を効率よく昇華させることができる。また、絶縁被膜の一部を予め除去しなくてもよいので、導電部材と接続される角型電線の一部が絶縁被膜とともに除去されず、導電部材と接続される角型電線の機械的強度が確保される。これによっても、角型電線の変形を抑制することができる。さらには、絶縁被膜の一部を予め除去しなくてもよいので、製造工程を簡素化することができる。
【0008】
請求項1に記載の発明においては、請求項2に記載のように、加圧・通電条件を、導電部材の温度が絶縁被膜の昇華温度以上となる条件とすることが好ましい。昇華してしまう絶縁被膜の温度を測定することは困難であるが、これに代えて、絶縁被膜と隣接しており、絶縁被膜への熱源でもある導電部材の温度を測定することで、絶縁被膜が昇華したとみなす(保証する)ことができる。
【0009】
特に、請求項3に記載のように、加圧・通電条件を、導電部材の温度が絶縁被膜の昇華温度より大きくなる条件とすると、導電部材を昇華温度以上で確実に所定時間維持することができる。すなわち、絶縁被膜が昇華し易くなる。したがって、絶縁被膜が昇華したことに対する保証の信頼性を向上することができる。
【0010】
請求項2又は請求項3いずれかに記載の発明においては、請求項4に記載のように、加圧・通電条件を、導電部材の温度が導電部材を構成する材料の融点未満となる条件とすることが好ましい。
【0011】
これによれば、熱による導電部材の変形を抑制することができる。また、一般に角型電線を構成する材料は、導電部材を構成する材料よりも融点の高い材料を用いて構成されているので、熱による角型電線の変形も抑制することができる。
【0012】
請求項1〜4いずれかに記載の発明においては、請求項5に記載のように、導電部材が、基部と該基部に対面する折り返し部とを屈曲部によって連結してなり、基部と折り返し部との間に角型被覆電線を挟みこんだ状態で、基部と折り返し部とを加圧することにより、導電部材が絶縁被膜の一部と接するようにしても良い。
【0013】
これによれば、導電部材が屈曲部を有しているので、該屈曲部に電流が集中し、局所的に発熱する。これにより、導電部材と接触している絶縁被膜に効率よく熱を伝達することができる。
【0014】
請求項1〜5いずれかに記載の発明においては、請求項6に記載のように、導電部材に電流を流すための対をなす電極により、導電部材と角型被覆電線を加圧しても良い。これによれば、対をなす電極によって導電部材と角型被覆電線を加圧するとともに、導電部材に電流を流すことができる。したがって、導電部材と角型電線とを接続するための装置構成を簡素化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る接続方法によって得られた角型被覆電線の接続構造を示す斜視図である。図2は、図1のII−II線に沿う断面図である。
【0016】
図1及び図2に示すように、角型被覆電線10は、断面矩形状の電線11(以下、角型電線11と示す)の周囲が、絶縁被膜12によって被覆されたものであり、導電部材20と接続されて一体化されている。
【0017】
角型電線11は、導電材料からなり、その一部が導電部材20と直接的に接続(接合)されている。本実施形態では、角型電線11が、絶縁被膜12を構成する材料の昇華温度よりも融点温度が高い材料(例えば、融点温度が1083℃の銅)を用いて形成されている。また、角型電線11は、その断面積が0.001〜0.08mm程度、縦横比が、1:1〜1:5程度の断面矩形状(本実施形態では、断面長方形を例示)の細線となっている。
【0018】
絶縁被膜12は、合成樹脂からなり、角型電線11の表面のうち、導電部材20との接続部位を除く部位を被覆している。本実施形態では、絶縁被膜12が、角型電線11の構成材料及び導電部材20の構成材料の各融点温度よりも昇華温度の低い材料(例えば、昇華温度が580℃程度のポリアミドイミド)を用いて形成されている。また、絶縁被膜12は、その厚さが角型電線11の周囲で略均一であって、具体的には5〜15μm程度となっている。また、角型電線11において、断面長方形の長手辺を含む長手面11aの一部と、長手面11aの裏面11bの一部を除く部位が、絶縁被膜12によって被覆されている。
【0019】
導電部材20は、角型被覆電線10(角型電線11)と他の部材とを電気的に接続するための端子であり、その一部が、絶縁被膜12が除去されて剥き出し状態となった角型電線11の一部と直接的に接続(接合)されている。本実施形態では、導電部材20が、絶縁被膜12を構成する材料の昇華温度よりも融点温度が高く、角型電線11を構成する材料の融点温度よりも融点温度が低い材料(例えば、融点温度が905℃の黄銅)を用いて形成されている。また、図1及び図2に示すように、導電部材20として、基部21と該基部21に対向する折り返し部22とを、屈曲部23によって連結してなる断面略U字形状の導電部材を採用している。この断面略U字形状の導電部材20に対し、角型電線11において断面長方形の長手辺を含む長手面11aが基部21と対向し、長手面11bが折り返し部22と対向するように、角型被覆電線10が屈曲部23の近傍に配置されている。そして、基部21と折り返し部22によって角型被覆電線10が挟持され、この挟持部位にて、角型電線11の長手面11aが基部21と接続(接合)され、長手面11bが折り返し部22と接続(接合)されている。
【0020】
次に、本実施形態の特徴点である、導電部材20に対する角型被覆電線10の接続方法について説明する。なお、図3は、接続方法を説明するためのフロー図である。図4は、接続方法を説明するための断面図であり、(a)は加圧した状態、(b)は加圧・通電状態であって、絶縁被膜が昇華される前の状態、(c)は加圧・通電状態であって絶縁被膜が昇華した状態を示している。図5は、導電部材への通電と、導電部材の温度変化との関係を示す図である。
【0021】
導電部材20に角型被覆電線10を接続するに当たり、先ず、対をなす電極30,31の一方の電極30上に、断面略U字形状の導電部材20を、基部21の外面を当接面として配置する。この電極30は、電極31とともに、導電部材20に対して電流を流すだけでなく、導電部材20の支持台としての役割も果たす。そして、基部21の内面(折り返し部22との対向面)上に、長手面11aが対向するように角型被覆電線10を配置する。この時点で、絶縁被膜12は角型電線11全体を被覆しており、角型電線11に剥き出し状態となった部位は存在しない。以上が準備工程である。
【0022】
準備工程終了後、図3に示すように、加圧を実施する(ステップ10)。この加圧では、図4(a)に示すように、折り返し部22の外面側に電極31を当接させ、電極31により、電極30側へ向けて折り返し部22に力(図4(a)中の白抜き矢印)を加える。これにより、折り返し部22が基部21へ接近(変位)し、基部21と折り返し部22とによって角型被覆電線10が挟持された状態となる。本実施形態では、折り返し部22に一定の力を印加し、その加圧する力を、導電部材20と角型被覆電線10(絶縁被膜12)とが接触する程度の弱い力(例えば、3kgf程度)とする。
【0023】
そして、加圧した状態で、図3に示すように、通電を実施する(ステップ20)。この通電では、加圧状態を維持しつつ、対をなす電極30,31間に電圧を印加し、図4(b)に示すように、導電部材20を介して、電極30,31間に電流を流す。これにより、導電部材20が発熱する。本実施形態では、電極31から、導電部材20の折り返し部22、屈曲部23、基部21を介して、電極30に電流(図4(b)中の実線矢印参照)が流れるようになっている。したがって、基部21と折り返し部22との間の電流経路が屈曲部23のみであるので、電流が集中する屈曲部23を局所的に発熱させることができる。また、上記したように、加圧力が弱く、導電部材20と電極30,31との接触抵抗が大きくなっているので、導電部材20と電極30,31との接触部において、効果的に発熱させることができる。したがって、導電部材20は、図5に示すように、通電開始から温度が上昇し、導電部材20から角型被覆電線10の絶縁被膜12に熱が伝わるので、絶縁被膜12の温度も上昇する。
【0024】
なお、本実施形態においては、図5に示すように、導電部材20に対して、初めから大電流を流すのではなく、徐々に電流値を大きくしている。これは、電極30,31と導電部材20との接触状態が局所的であると、電流が集中して導電部材20などが損傷する恐れがあるからである。
【0025】
本実施形態では、上記した加圧・通電状態で、導電部材20の温度を測定する。そして、図3に示すように、導電部材20の温度が、絶縁被膜12の昇華温度以上となったか否かにより、絶縁被膜12が昇華したか否かを判定する(ステップ30)。このステップ30において、測定温度が昇華温度以上であれば、絶縁被膜12が昇華したものとして通電を終了する(ステップ40)。本実施形態では、図5に示すように、導電部材20の温度が昇華温度となった時点で、通電を終了するようにしている。
【0026】
このように、本実施形態においては、導電部材20の温度が絶縁被膜12の昇華温度以上となるように、加圧・通電する。これにより、導電部材20に隣接する絶縁被膜12の挟持部位の温度も、導電部材20からの熱伝達によって絶縁被膜12が昇華する温度まで上昇する。したがって、絶縁被膜12のうち、角型電線11の長手面11aと基部21との間に挟まれた部分と、長手面11bと折り返し部22との間に挟まれた部分が、昇華によって除去される。すなわち、角型電線11のうち、長手面11aにおける基部21との対向部分と、長手面11bにおける折り返し部22との対向部分が剥き出し状態となる。また、電極30,31による加圧状態は維持されているので、電極30,31と角型電線11における剥き出し状態となった部分が接触する。これにより、図4(c)に示すように、電流が、電極31から導電部材20の折り返し部22、角型電線11、基部21を介して、電極30にも流れる。したがって、角型電線11の長手面11aと基部21、長手面11bと折り返し部22が、抵抗溶接(ジュール熱)によってそれぞれ接続(拡散接合)される。
【0027】
ここで、絶縁被膜12の昇華は、その昇華温度よりも少し低い温度から始まる。したがって、導電部材20の温度が絶縁被膜12の昇華温度となった時点で通電を終了する場合でも、昇華温度となった時点を含む前後所定時間の範囲内で、絶縁被膜12を昇華させることができる。したがって、特に角型被膜電線10が細線の場合には、角型電線11の一部を剥き出し状態として、角型電線11と導電部材20を接続させることができる。このように、本実施形態では、ステップ30にて、絶縁被膜12が昇華し、角型電線11と導電部材20が接続されたか否かの判定を行うようになっている。
【0028】
なお、上記したように、通電終了後も絶縁被膜12を昇華させることができる。また、絶縁被膜12の昇華直後に、角型電線11と導電部材20が接合される。したがって、ステップ40にて通電を終了した後、加圧を終了する(ステップ50)。以上により、図1及び図2に示した角型被覆電線10と導電部材20との接続構造を得ることができる。
【0029】
このように、本実施形態に係る角型被覆電線10の接続方法によれば、絶縁被膜12を昇華により除去するので、印加する力は導電部材20と角型被覆電線10(絶縁被膜12)とが接触する程度の弱い力でよい。すなわち、従来の接続方法に示されるように、熱によって軟化した導電部材を加圧によって流動させるほどの力(10kgf程度)を印加しなくとも良い。したがって、加圧による角型電線11の変形を抑制することができる。また、絶縁被膜12の一部を予め除去しなくてもよいので、導電部材20と接続される角型電線11の一部が絶縁被膜12とともに除去されず、導電部材20と接続される角型電線11の機械的強度が確保される。これによっても、加圧による角型電線11の変形を抑制することができる。特に、角型電線11が、本実施形態に示したような断面矩形状の細線の場合、効果的に変形を抑制することができる。なお、印加する力が従来に比べて小さいので、導電部材20における屈曲部23の曲がりも抑えることができる。すなわち、屈曲部23の破損を抑制することができる。
【0030】
また、印加する力が従来に比べて小さいので、上記したように、導電部材20と電極30,31との接触抵抗を高め、その接触部における発熱量を大きくすることができる。すなわち、導電部材20から伝達された熱により、絶縁被膜12を効率よく昇華させることができる。同じく、印加する力が従来に比べて小さいので、絶縁被膜12が昇華されて剥き出し状態となった角型電線11と導電部材20との接触抵抗を高め、角型電線11と導電部材20との接触部におけるジュール熱を大きくすることができる。すなわち、角型電線11と導電部材20とを抵抗溶接する時間を短縮することもできる。また、従来の方法のように、絶縁被膜12の一部を予め除去しなくてもよいので、接続工程を簡素化することができる。
【0031】
また、本実施形態においては、絶縁被膜12と隣接する導電部材20の温度が、絶縁被膜12の昇華温度になった時点で、導電部材20への通電を終了する。これにより、導電部材20の温度が過剰に上昇することが抑制され、熱による導電部材20及び角型電線11の変形を抑制することができる。また、導電部材20の温度が、絶縁被膜12の昇華温度となった時点で通電を終了しても、角型被覆電線10が細線であり、絶縁被膜12の厚さが薄いので、絶縁被膜12を昇華させることができる。
【0032】
また、本実施形態においては、導電部材20を構成する材料として黄銅を採用し、絶縁被膜12を構成する材料としてポリアミドイミドを採用している。そして、導電部材20の温度が絶縁被膜12の昇華温度となった時点で通電を終了する。したがって、導電部材20の融点温度(905℃)が、ポリアミドイミドの昇華温度(およそ580℃)よりも十分に高いので、熱による導電部材20の変形を抑制することができる。また、本実施形態においては、角型電線11を構成する材料として、黄銅よりも融点温度が高い銅を採用している。これにより、熱による角型電線11の変形も抑制することができる。
【0033】
また、本実施形態においては、導電部材20として断面略U字形状のものを採用している。したがって、電流が集中する屈曲部23を局所的に発熱させて、導電部材20と接触している絶縁被膜12に効率よく熱を伝達することができる。
また、本実施形態においては、対をなす電極30,31によって、導電部材20と角型被覆電線10を加圧しつつ、導電部材20に通電を行う。したがって、導電部材20と角型電線11を接続するための装置構成を簡素化することができる。
【0034】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0035】
本実施形態においては、図3に示すステップ30で、導電部材20の温度が絶縁被膜12の昇華温度となった時点で、ステップ40に移行して通電を終了する例を示した。しかしながら、図6に示すように、導電部材20の温度が絶縁被膜12の昇華温度よりも大きく、且つ、導電部材20の融点温度よりも低い温度に達した時点で通電を終了するようにしてもよい。これにより、絶縁被膜12を昇華可能な時間の範囲を広げることができる。すなわち、導電部材20の温度が昇華温度となった時点で通電を終了する方法に比べて、絶縁被膜12を確実に昇華させることができる。すなわち、角型電線11と導電部材20との接続信頼性を向上することができる。なお、導電部材20の温度が導電部材20の融点温度に達する前に、導電部材20への通電を終了するので、熱による導電部材20の変形は抑制される。図6は、接続方法の変形例において、導電部材への通電と、導電部材の温度変化との関係を示す図である。
【0036】
また、本実施形態においては、絶縁被膜12と隣接する導電部材20の温度を測定することにより、絶縁被膜12が昇華したか否かを判定する例を示した。しかしながら、絶縁被膜12が昇華したか否かを判定する方法は、上記例に限定されない。例えば、絶縁被膜12の温度を、放射温度計などによって測定することにより、絶縁被膜12の昇華を判定しても良い。それ以外にも、他の条件から絶縁被膜12の昇華を判定するようにしても良い。
【0037】
また、本実施形態においては、電極31により、電極30側へ向けて折り返し部22に加圧する力の強さとして、3kgf程度である例を示した。しかしながら、加圧する力の強さとしては、導電部材20と角型被覆電線10(絶縁被膜12)との接触を保つ程度の力であればよく、上記例に限定されない。
【0038】
また、本実施形態においては、導電部材20と接続される角型被覆電線10の本数が1本である例を示した。しかしながら、導電部材20と接続される角型被覆電線10の本数は、複数でもよい。
【0039】
また、本実施形態においては、角型電線11の構成材料として、絶縁被膜12の昇華温度よりも融点温度が高い材料を採用する例を示した。しかしながら、導電性を有し、導電部材20と直接的に接続される材料であれば、上記した例に限定されず、適宜採用することができる。しかしながら、熱による角型電線11の変形を抑制するために、角型電線11の構成材料として、絶縁被膜12の昇華温度よりも融点温度が十分に高い材料を採用することが好ましい。
【0040】
また、本実施形態においては、角型電線11として、断面積が0.001〜0.08mm程度であり、縦横比が、1:1〜1:5程度の断面矩形状の細線を採用する例を示した。しかしながら、角型電線11としては、断面矩形状であれば、上記した例に限定されず、適宜採用することができる。
【0041】
また、本実施形態においては、導電部材20の構成材料として、融点温度が絶縁被膜12の昇華温度よりも高く、且つ、角型電線11の融点温度以下の材料を採用する例を示した。しかしながら、導電性を有し、角型電線11と直接的に接続される材料であれば、上記した例に限定されず、適宜採用することができる。しかしながら、熱による導電部材20の変形を抑制するために、導電部材20の構成材料として、絶縁被膜12の昇華温度よりも融点温度が十分に高い材料を採用することが好ましい。
【0042】
また、本実施形態においては、導電部材20として、断面略U字形状のものを採用する例を示した。しかしながら、導電部材20の形状としては、上記例に限定されるものではなく、例えば平板状のものを採用することもできる。
【0043】
また、本実施形態においては、導電部材20と角型被覆電線10を加圧し、且つ、導電部材20に電流を流す部材として、対をなす電極30,31を採用する例を示した。しかしながら、加圧し、通電を行う部材としては、上記例に限定されず、加圧と通電を行う操作を、異なる部材によってそれぞれ行っても良い。しかしながら、この場合、導電部材20と角型電線11を接続するための装置構成が複雑化してしまう。したがって、上記例に示すように、対をなす電極30,31によって加圧と通電を行うほうが好ましい。
【0044】
また、本実施形態においては、電極31から、導電部材20の折り返し部22、屈曲部23、基部21を介して、電極30に電流が流れるようになっている例を示した。しかしながら、電極30から、導電部材20の基部21、屈曲部23、折り返し部22を介して、電極31に電流が流れるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】第1実施形態に係る接続方法によって得られた角型被覆電線の接続構造を示す斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】接続方法を説明するためのフロー図である。
【図4】接続方法を説明するための断面図であり、(a)は加圧した状態、(b)は加圧・通電状態であって、絶縁被膜が昇華される前の状態、(c)は加圧・通電状態であって絶縁被膜が昇華した状態を示している。
【図5】導電部材への通電と、導電部材の温度変化との関係を示す図である。
【図6】接続方法の変形例において、導電部材への通電と、導電部材の温度変化との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
10・・・角型被覆電線
11・・・角型電線
12・・・絶縁被膜
20・・・導電部材
23・・・屈曲部
30,31・・・電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電部材と、絶縁被膜によって角型電線が被覆された角型被覆電線とを、前記導電部材が前記絶縁被膜の一部と接するように加圧すると共に、前記導電部材に電流を流して発熱させることにより、前記導電部材と前記角型電線とを接続する角型被覆電線の接続方法であって、
前記加圧・通電条件を前記絶縁被膜が昇華する条件とすることで、前記絶縁被膜における前記導電部材と接する部位を昇華により除去し、且つ、前記角型電線と前記導電部材とを接続することを特徴とする角型被覆電線の接続方法。
【請求項2】
前記加圧・通電条件を、前記導電部材の温度が前記絶縁被膜の昇華温度以上となる条件とすることを特徴とする請求項1に記載の角型被覆電線の接続方法。
【請求項3】
前記加圧・通電条件を、前記導電部材の温度が前記絶縁被膜の昇華温度より大きくなる条件とすることを特徴とする請求項2に記載の角型被覆電線の接続方法。
【請求項4】
前記加圧・通電条件を、前記導電部材の温度が前記導電部材を構成する材料の融点未満となる条件とすることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の角型被覆電線の接続方法。
【請求項5】
前記導電部材は、基部と該基部に対面する折り返し部とを屈曲部によって連結してなり、
前記基部と前記折り返し部との間に前記角型被覆電線を挟みこんだ状態で、前記基部と前記折り返し部とを加圧することにより、前記導電部材が前記絶縁被膜の一部と接することを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載の角型被覆電線の接続方法。
【請求項6】
前記導電部材に電流を流すための対をなす電極により、前記導電部材と前記角型被覆電線とを加圧することを特徴とする請求項1〜5いずれか1項に記載の角型被覆電線の接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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