説明

角形非水電解液二次電池

【課題】角形非水電解液二次電池の内部でのガス発生等内圧の上昇を伴う異常発生時に、不安全な現象が発生する。
【解決手段】セパレータを介して正極電極及び負極電極を扁平に捲回した捲回群6と、捲回群6を収納する電池容器5とを有する角形非水電解液二次電池であって、捲回群6は、扁平形状を形成する平面部と湾曲部とを有し、電池容器5は、捲回群6の湾曲部に対向する内壁に突起部8を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角形容器を有する非水電解液二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解液二次電池では、安全性の確保が重要な課題となっている。特に、過充電されたときには内圧や温度の急激な上昇を伴う不安全な現象が発生し、電池容器の破裂に至る場合があるので、このような現象を避けるための様々な工夫がされている。過充電による不安全現象を防止する手段として、様々な方法が提案されている。例えば、保護回路により過充電そのものが起きないようにする方法、特許文献1に開示されているように過充電により内圧が上昇することを利用して電流回路を遮断する機構を設ける方法、及び特許文献2に開示されているように捲回群の変形を利用してソフトショート(ある程度の抵抗を持って短絡状態になること)を起こさせる方法等による対策が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4590856号公報
【特許文献2】特開平11−73941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
保護回路のような制御回路により過充電を防止する方法は、回路の故障などの場合にリスクを有する。このため、電池の構造で安全性を確保すると、本質的に安全な電池システムとすることができる。
【0005】
本発明は、角形容器を有する非水電解液二次電池において、過充電により内圧が上昇したときに起こりうる不安全な現象(例えば、電池容器の破裂)を防止し、安全性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に対して、本発明による角形非水電解液二次電池は、以下のような特徴を有する。セパレータを介して正極電極及び負極電極を扁平に捲回した捲回群と、前記捲回群を収納する電池容器とを有する角形非水電解液二次電池であって、前記捲回群は、扁平形状を形成する平面部と湾曲部とを有し、前記電池容器は、前記捲回群の前記湾曲部に対向する内壁に突起部を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明による角形非水電解液二次電池は、過充電により内圧が上昇したときに起こりうる、電池容器の破裂等の不安全な現象を防止することができ、安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施例における角形非水電解液二次電池の外観斜視図である。
【図2】本実施例における角形非水電解液二次電池の内部に収められている捲回群と集電部品の構造を示す切断模式図である
【図3】本実施例における角形非水電解液二次電池の電池容器の横断面図である。
【図4】図3の線A−A’における角形非水電解液二次電池の断面図である。
【図5】電池容器が厚さ方向に膨張した場合に、幅方向に収縮する様子を示す模式図である。
【図6】電池容器が幅方向に収縮して、突起部が捲回群に押し込まれた状態を示す模式図である。
【図7】図3の線A−A’における角形非水電解液二次電池の断面図であり、突起部を高さ方向に点在させた場合の図である。
【図8】図3の線A−A’における角形非水電解液二次電池の断面図であり、突起部を高さ方向で3つに分割した場合の図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明による角形非水電解液二次電池の実施例について説明する。本実施例では、非水電解液二次電池としてリチウムイオン電池を用いた例について説明する。ただし、リチウムイオン電池以外の非水電解液二次電池について、本発明の適用を制限するものではない。
【0010】
非水電解液二次電池の1種であるリチウムイオン電池の外装形状には種々あるが、近年では、装置への実装の観点から角形形状ものが多く利用されている。本実施例は、こうした角形形状のリチウムイオン電池の安全性を向上させるものである。本実施例では、断面形状がオーバル型の角形電池(扁平角形電池)について説明するが、これに類する種々の角形電池においても本発明の適用を制限するものでないことは言うまでもない。
【0011】
図1は、本実施例における角形非水電解液二次電池の外観斜視図である。角形電池100は、図1に示すような外装形状をしており、横断面形状がオーバル形の電池容器5に、正極端子1、負極端子2、ガス放出弁3、及び注液口4を備える。正極端子1及び負極端子2は、外部への電気的接続のための端子であり、ガス放出弁3は、過充電等の異常時に内部に発生したガスを排出する。電解液は、注液口4から電池容器5に注入する。正極端子1、ガス放出弁3、及び注液口4は、上部の蓋板に設けられ、負極端子2は、底部の蓋板に設けられる。
【0012】
なお、以下の説明において、電池容器5の横断面形状(オーバル形)の長手方向を「幅方向」、短手方向を「厚さ方向」と呼び、幅方向と厚さ方向に直交する方向を「高さ方向」と呼ぶ。図1では、高さ方向は、電池容器5の正極端子1と負極端子2を結ぶ方向である。後述する捲回群についても、これらの方向を用いて説明する。
【0013】
図2は、本実施例における角形非水電解液二次電池の内部に収められている捲回群と集電部品の構造を示す切断模式図である。角形電池100は、図2に示すように、発電要素たる捲回群6を電池容器5の内部に収めている。捲回群6は、集電部品7を介して外部端子(正極端子1および負極端子2)と電気的に接続している。図2では、負極端子2に接続する集電部品を図示していない。
【0014】
捲回群6は、正極電極と負極電極とを、ポリエチレン製の微多孔膜からなるセパレータを間に介在させて、板状軸心の周りに巻き取ることにより作製される。捲回群6は、図2に示すように扁平形状であり、平面からなる平面部6aと曲面から成る湾曲部6bとを有する。捲回群6には、平面部6aと湾曲部6bがそれぞれ2つ存在する。なお、図2からわかるように、捲回群6の捲回軸方向は、高さ方向と平行である。
【0015】
正極電極は、85重量部の化学式LiCoOで表されるリチウム含有複合酸化物、10重量部のカーボンブラック及び黒鉛からなる導電材、及び5重量部のポリフッ化ビニリデン樹脂からなる結着剤を、NMP(N−メチル−2−ピロリドン溶液)に溶解させて一様なスラリとし、このスラリをアルミ箔に塗布したものを乾燥させ、所定の厚さにプレス成形することで作製される。
【0016】
負極電極は、90重量部の黒鉛、5重量部のカーボンブラックからなる導電材、及び5重量部のポリフッ化ビニリデン樹脂からなる結着剤を、NMPに溶解させて一様なスラリとし、このスラリを銅箔に塗布したものを乾燥させ、所定の厚さにプレス成形することで作製される。
【0017】
正極のアルミ箔及び負極の銅箔には、それぞれ高さ方向の一端にスラリを塗らない部分を設けている。このスラリを塗らない部分を集電部品7に溶接することにより、正極と正極端子1、及び負極と負極端子2の電気的接続を得ている。
【0018】
図3は、本実施例における角形非水電解液二次電池の電池容器の横断面図である。本実施例では、電池容器5は、捲回群6を収納したときに湾曲部6bに対向する内壁に、捲回群6に向かって突出する突起部8を有する。突起部8は、高さ方向に垂直な断面の形状、すなわち横断面の形状が半円状の棒状であり、高さ方向に延在している。ただし、この横断面の形状において、半円の直径部分は、電池容器5の内壁の形状に合わせて曲率を有する曲線で形成される。本実施例では、電池容器5に変形がない状態では、突起部8は捲回群6の湾曲部6bと応力なしで当接する。
【0019】
突起部8は、電池容器5と同じ材質であり横断面形状を上述の半円状に鋳造した線材を、電池容器5の内壁に溶接して形成する。具体的には、この線材を、YAGレーザーで数点スポット的に電池容器5の内壁に溶接して、突起部8を形成することができる。
【0020】
本実施例では、突起部8の横断面形状を半円状としたが、これに限るものではない。突起部8の横断面形状は、矩形や三角形等、様々な形状とすることができる。後述するように、突起部8の横断面形状は、正極と負極のソフトショートの制御因子となりうる。
【0021】
図3では、突起部8は、電池容器5の内壁のうち、捲回群6の2つの湾曲部6bにそれぞれ対向する2つの位置の内壁(幅方向の両端部の内壁)に形成されている。突起部8は、この2つの位置のうち、一方の位置の内壁(幅方向の一端の内壁)だけに形成してもよい。
【0022】
図4は、図3の線分A−A’における角形非水電解液二次電池の断面図である。図4に示すように、本実施例での突起部8は、高さ方向の中央付近で2つに分割され、高さ方向に不連続となっている。また、高さ方向において突起部8の存在する区間は、捲回群6の存在する区間よりも長くした。突起部8は、前述したように横断面形状が半円状の棒状であり、縦断面形状は図4に示すように矩形である。
【0023】
電池容器5が厚さ方向に膨張して幅方向に収縮する力を受けた場合、突起部8は、巻回群6に押し付けられる。このとき、突起部8は高さ方向に存在する区間が捲回群6よりも長いので、捲回群6では、高さ方向の端部でも突起部8が押し込まれる。
【0024】
突起部8は、このように捲回群6を強く圧迫して、セパレータを微小に切断する。そして、突起部8を介して正極と負極とが接触するので、ソフトショートが誘発される。このソフトショートにより、正極と負極が小さな面積によって短絡し、通電抵抗が大きい状態で(すなわち、小さい短絡電流で)電気エネルギーを解放することで、不安全な現象が起きることを回避することができる。
【0025】
突起部8は、高さ方向に存在する区間が捲回群6よりも長いため、より小さい応力で突起部が押し込まれる捲回群6の端部に突起が存することにより、ソフトショートを誘発しやすくなっている。また、突起部8が高さ方向の中央付近で2つに分割され不連続となっているため、高さ方向の中央付近での突起部8の端部が捲回群6へ押し込まれやすくなり、これもソフトショートを誘発しやすい形状となっている。
【0026】
図5は、電池容器が厚さ方向に膨張した場合に、幅方向に収縮する様子を示す模式図である。角形電池100が過充電された場合等で電池の内圧が異常に上昇した場合、この異常な内圧の上昇によって電池容器5が厚さ方向に膨張する。そうすると、電池容器5は、多少の塑性変形による伸びはあるにしても容器周長はあまり変化しないので、厚さ方向に膨張した分、幅方向には収縮する力が働く。この収縮は、蓋板によって保持される電池容器5の高さ方向の端部よりも、電池容器5以外に保持体のない高さ方向の中央部で、より大きな変形となって現れる(図5の右図を参照)。
【0027】
図6は、電池容器が幅方向に収縮して、突起部が捲回群に押し込まれた状態を示す模式図である。電池容器5の中央部が大きく収縮した結果、電池容器5は、図6に示すように高さ方向の中央部が最も大きく変形し、くびれた形状になる。この変形により、電池容器5の内壁に設置した突起部8が捲回群6に押し込まれる。このとき、最も変形の大きい捲回群6の高さ方向の中央部では、突起部8が捲回群6を強く圧迫してセパレータを微小に切断し、正極と負極とを接触させてソフトショートを誘発させる。このソフトショートにより、電池の持つ電気エネルギーを低い速度で放電することができる。
【0028】
突起部8によりこのような機構を構成することによって、このような機構がない場合のように、電極の充電状態が高いままセパレータの大半部分が溶融して大面積で短絡し、正極と負極が低い抵抗で直接接触して大きな電流が流れ、この電流のジュール熱により電池の急峻な異常発熱が起こり、場合によっては破裂に至るような電池の不安全な挙動を未然に防ぐことができる。
【0029】
また、図4や図6に示すように、電池容器5の内壁に形成した突起部8が、高さ方向の中央付近で2つに分割され、高さ方向に不連続となっている場合、捲回群6の高さ方向の中央付近には、突起部8の端部が存在する。この場合、突起部8の端部がセパレータを微小に切断するので、これにより誘発されるソフトショートでは、より高い電気抵抗を以って正極と負極とが接触することになり、より小さな電流での短絡が生じるので、大きなジュール熱を発生させることなく、放電することができる。
【0030】
以上の実施例では、突起部8を高さ方向に2つに分割して不連続にした。突起部8は、高さ方向に3つ以上に分割して不連続にしてもよいし、高さ方向に分割しなくてもよい(不連続にしなくてもよい)。すなわち、高さ方向において、突起部8の数は、1つでも複数でもよい。高さ方向の突起部8の数を複数にする場合には、例えば、突起部8の分割数を多くして、突起部8を高さ方向に点在させてもよい。
【0031】
また、突起部8の突出長は、均一でなくてもよい。例えば、高さ方向の中央部の突出長が、他の部分の突出長より大きくてもよい。突起部8を高さ方向に2つ以上に分割して不連続にした場合には、分割された突起部8のそれぞれの突出長が、異なっていてもよい。この場合にも、例えば、高さ方向の中央部の突出長を、他の部分の突出長より大きくすることができる。
【0032】
図7は、図4と同様に、図3の線A−A’における角形非水電解液二次電池の断面図であり、突起部8を高さ方向に点在させた場合の図である。このように、突起部8を高さ方向に点在させると、セパレータを微小に切断してソフトショートを誘発させる効果をより大きくすることができる。
【0033】
また、突起部8を高さ方向に2つ以上に分割した場合、突起部8の分割片(分割された突起部8の1つ)の高さ方向の長さは、互いに異なっていてもよい。
【0034】
図8は、図4と同様に、図3の線A−A’における角形非水電解液二次電池の断面図であり、突起部8を高さ方向に3つに分割した場合の図である。高さ方向の中央部にある突起部8の分割片は、他の分割片よりも高さ方向の長さが短い。このように、高さ方向の中央部にある分割片の高さ方向の長さを短くすると、電池容器が変形した場合に、セパレータを微小に切断してソフトショートを誘発させる効果をより大きくすることができる。
【0035】
突起部8の高さ方向の分割数や、突起部8の分割片の高さ方向の長さは、電池の設計によって適宜変更することが有効なのは言うまでもない。
【0036】
本実施例では、電池容器の内壁に設けた突起部が不連続な場合に、よりソフトショート現象の起点になりやすいことを説明した。上述したように、突起部は、高さ方向に連続させても不連続にさせてもよい。また、突起部の横断面形状は、高さ方向の連続、不連続によらず、最適な形状を選択することができる。例えば、横断面形状は、より小さい直径の半円としたり、三角形等の多角形状としたりすることができる。また、突起部を分割して高さ方向に不連続にする場合には、変形の大きい電池容器の中央部にのみ、高さ方向の長さが比較的短い突起部を設けたり、突出長の大きい突起部を設けたりすることによって、セパレータの切裂をより起こりやすくすることができる。このように、突起部は、電池の設計に応じて最適な形状を選択することが可能である。
【0037】
また、高さ方向において、突起部の存在する区間を、捲回群の存在する区間よりも長くすると、捲回群の中央部だけでなく、捲回群の端部でのソフトショートを発生させることが可能となる。高さ方向における突起部の存在する区間の長さは、電池の設計に応じて決定すべきことは言うまでもない。
【0038】
また、捲回群の湾曲部が電池容器の蓋板に対向する構造の電池では、突起部を電池容器の上部の蓋板と底部の蓋板のいずれか一方または両方の内壁に設けてもよい。
【0039】
いずれの形状を選択するにしても、電池容器の内壁に設けた突起部により、不安全な現象に至る前にソフトショートを誘発させて低い速度で電気エネルギーを放出させる上で、本発明は有効である。
【符号の説明】
【0040】
1…正極端子、2…負極端子、3…ガス放出弁、4…注液口、5…電池容器、6…捲回群、6a…平面部、6b…湾曲部、7…集電部品、8…突起部、100…角形電池。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレータを介して正極電極及び負極電極を扁平に捲回した捲回群と、前記捲回群を収納する電池容器とを有する角形非水電解液二次電池であって、
前記捲回群は、扁平形状を形成する平面部と湾曲部とを有し、
前記電池容器は、前記捲回群の前記湾曲部に対向する内壁に突起部を有することを特徴とする角形非水電解液二次電池。
【請求項2】
前記突起部は、前記捲回群の捲回軸方向において、前記捲回群の存在する区間よりも長い区間にわたって存在する請求項1記載の角形非水電解液二次電池。
【請求項3】
前記突起部は、前記捲回群の捲回軸方向に不連続に存在する請求項1または2記載の角形非水電解液二次電池。
【請求項4】
前記電池容器は、前記捲回群の捲回軸方向に、複数の前記突起部を有する請求項1または2記載の角形非水電解液二次電池。
【請求項5】
前記突起部は、前記捲回群の捲回軸方向に点在する請求項1または2記載の角形非水電解液二次電池。
【請求項6】
前記電池容器は、前記捲回群の2つの前記湾曲部のそれぞれに対向する内壁に前記突起部を有する請求項1から5のいずれか1項記載の角形非水電解液二次電池。
【請求項7】
前記突起部は、前記捲回群の捲回軸方向に垂直な断面が、直径部分が曲率を有する半円形状である請求項1から6のいずれか1項記載の角形非水電解液二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−84471(P2013−84471A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224134(P2011−224134)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 次世代自動車用高性能蓄電システム技術開発 要素技術開発 高出力可能な高エネルギー密度型リチウムイオン電池の研究開発委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(505083999)日立ビークルエナジー株式会社 (438)
【Fターム(参考)】