説明

角缶のネッキング方法およびその装置

【課題】 角缶であっても安定した形状にネッキングすることができる角缶のネッキング方法およびその装置を提供すること。
【解決手段】
角缶4の缶胴開口部のネッキング成形部4cを、中型11で支持するとともにネッキングダイ12で縮小成形するネッキング装置10で、ネッキング成形部4cの下部を拡縮可能な割り型の第2中型13で支持するようにする。
これにより、ネッキングダイ12に素缶4Aを沿わせることができ、平坦部4aも角部4bと同様に所望の形状にネッキングでき、形状も安定した成形ができるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は角缶のネッキング方法およびその装置に関し、缶胴の平坦部を角部と同様に安定した形状にネッキングできるようにしたもので、特に缶蓋の巻き締め部が缶胴の外側に出ないようにするのに好適なものである。
【背景技術】
【0002】
缶胴の開口部に缶蓋を巻き締めることで密封される缶は、種々の用途に用いられており、円筒状のもののほか、四角筒状や多角筒状などの缶胴のものがある。このような缶では、缶蓋の巻き締め部が缶胴の外側に出ないようにしたり、缶蓋の材料節減などのため缶胴の開口部を縮小するネッキング加工を施すことが行われることも多い。
【0003】
例えば円筒状の缶胴にネッキングを施す場合には、特許文献1に開示されたものを図6(a)に示すように、円筒缶1のネッキング成形部1aの内側に中型2を配置しておき、素缶1を挟む外側に配置したネッキングダイ3を閉じるように押し下げることで縮径(径を縮小すること)するようにしている。
【特許文献1】特開平6−254640号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、図6(b)に示すように、缶胴が四角筒状や多角筒状の角缶4の場合には、円筒状の缶胴の場合と異なり平坦部4aと角部4bとが混在するため、ネッキングの際に中型5を用いても均等に力が加わらず、ネッキング成形部4cの下部がネッキングダイ6に沿わず形状が安定せず、特に平坦部4aのネッキングが難しいという問題がある。
【0005】
この発明は、上記従来技術の課題に鑑みてなされたもので、角缶であっても安定した形状にネッキングすることができる角缶のネッキング方法およびその装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記従来技術の有する課題を解決するためこの発明の請求項1記載の角缶のネッキング方法は、角缶の缶胴開口部を縮小するネッキングをするに際し、前記角缶のネッキング成形部の内側に第1中型を配置するとともに、このネッキング成形部の下部に拡縮可能な割り型の第2中型を配置した後、ネッキングダイで成形するようにしたことを特徴とするものである。
【0007】
この角缶のネッキング方法によれば、ネッキング成形部を第1中型で支持するのに加えてその下部を第2中型で支持するようにしており、角缶の平坦部も角部と同様にネッキングダイに沿うように成形でき、形状が安定するとともに、所望の形状にネッキングできるようになる。また、缶胴の両端の開口部をネッキングする場合にも、第2中型を縮小させることで、ネッキング後の製品の取り出しを円滑にできるようにしている。
【0008】
また、この発明の請求項2記載の角缶のネッキング方法は、請求項1記載の構成に加え、 ボルスタ上の前記第2中型の外側に角型素缶を配置し、当該第2中型をネッキング成形部の下部を支持可能に拡大移動した後、この第2中型上にスライドに取り付けた前記第1中型を下降させてネッキング成形部に位置させるとともに、前記ネッキングダイを下降してネッキングするようにしたことを特徴とするものである。
【0009】
この角缶のネッキング方法によれば、ボルスタ上でセット状態の第2中型と角型素缶にスライドを下降させることで第1中型を第2中型上の所定位置にセットでき、さらにスライドを下降させてネッキングダイで成形できるようになり、第1および第2中型を用いても通常のネッキングと同様の工程で成形できるようになる。
【0010】
さらに、この発明の請求項3記載の角缶のネッキング方法は、請求項1または2記載の構成に加え、前記第2中型の拡縮および前記第1中型の挿脱をスライドの下降・上昇に連動させて行うようにしたことを特徴とするものである。
【0011】
この角缶のネッキング方法によれば、第2中型の拡縮および第1中型の挿脱をスライドの下降・上昇に連動させて行うようにしており、スライドを昇降させると、連動して第1および第2中型を装着したセット状態や脱出させる取出し状態にでき、工程を増やすことなく、効率的にネッキングすることができるようになる。
【0012】
また、この発明の請求項4記載の角缶のネッキング方法は、請求項1〜3のいずれかに記載の構成に加え、前記第2中型の拡大した隙間に充填中型を配置してネッキングするようにしたことを特徴とするものである。
【0013】
この角缶のネッキング方法によれば、第2中型の拡大した隙間に充填中型を配置してネッキングするようにしており、拡大することにより生じる隙間を充填中型で埋めて隙間をなくすことができ、一層安定した形状にネッキングすることができるようになる。
【0014】
さらに、この発明の請求項5記載の角缶のネッキング方法は、請求項4記載の構成に加え、前記充填中型の拡縮を前記スライドの下降・上昇に連動させて行い、この充填中型の拡縮に連動して前記第2中型を拡縮してネッキングするようにしたことを特徴とするものである。
【0015】
この角缶のネッキング方法によれば、前記充填中型の拡縮を前記スライドの下降・上昇に連動させて行い、この充填中型の拡縮に連動して前記第2中型を拡縮してネッキングするようにしており、第2中型の隙間を埋める充填中型を設けても充填中型を拡縮することで第2中型を連動させて拡縮でき、工程の増大を招くことなく、所望の形状に効率的にネッキングできるようになる。
【0016】
また、この発明の請求項6記載の角缶のネッキング方法は、請求項1〜5のいずれかに記載の構成に加え、前記ネッキングダイの前記ネッキング成形部とその下部との傾斜面の角度を25〜35度の範囲としてネッキングするようにしたことを特徴とするものである。
【0017】
この角缶のネッキング方法によれば、前記ネッキングダイの前記ネッキング成形部とその下部との傾斜面の角度を25〜35度の範囲としてネッキングするようにしており、角度を小さくすると、ネッキングによる縮小の効果が小さく、角度を大きくすると、軸方向の荷重が大きくなって座屈が発生してしまうという問題を回避して成形でき、特に下端開口部がすでにネッキングしてある場合に、この部分の座屈を防止するようにしている。
【0018】
さらに、この発明の請求項7記載の角缶のネッキング装置は、角缶の缶胴開口部のネッキング成形部を、中型で支持するとともにネッキングダイで縮小成形するネッキング装置であって、前記角缶のネッキング成形部の下部に、拡縮可能な割り型の第2中型を設けて支持可能に構成したことを特徴とするものである。
【0019】
この角缶のネッキング装置によれば、角缶の缶胴開口部のネッキング成形部を、中型で支持するとともにネッキングダイで縮小成形するネッキング装置で、ネッキング成形部の下部を拡縮可能な割り型の第2中型で支持するようにしており、ネッキングダイに素缶を沿わせることができ、平坦部も角部と同様に所望の形状にネッキングでき、形状も安定した成形ができるようになる。
【0020】
また、この発明の請求項8記載の角缶のネッキング装置は、請求項7記載の構成に加え、 前記第2中型をボルスタ上に拡縮移動可能に設けるとともに、この第2中型を拡縮移動する移動手段をスライドの下降・上昇に連動可能に設けたことを特徴とするものである。
【0021】
この角缶のネッキング装置によれば、第2中型をボルスタ上に拡縮移動可能に設けるとともに、この第2中型を拡縮移動する移動手段をスライドの下降・上昇に連動可能に設けており、スライドを下降するだけで第2中型を拡大してセットすることができ、上昇すれば縮小して製品を簡単に取り出すことができるようにしている。これにより、工程を増大させずに、効率的にネッキングすることができるようになる。
【0022】
さらに、この発明の請求項9記載の角缶のネッキング装置は、請求項7または8記載の構成に加え、前記中型をスライドに支持して前記ネッキング成形部に挿脱可能に構成したことを特徴とするものである。
【0023】
この角缶のネッキング装置によれば、中型をスライドに支持して前記ネッキング成形部に挿脱可能に構成してあり、通常の中型の設置や取り出しも特に必要とせず、スライドの操作で自動的に行うことができるようにしている。
【0024】
また、この発明の請求項10記載の角缶のネッキング装置は、請求項7〜9のいずれかに記載の構成に加え、前記第2中型に、拡大した隙間を埋める充填中型を拡縮可能に設けるとともに、この充填中型に前記スライドの下降・上昇に連動して拡縮する第2移動手段を設け、この第2移動手段を介して前記第2中型を拡縮可能に構成してなることを特徴とするものである。
【0025】
この角缶のネッキング装置によれば、前記第2中型に、拡大した隙間を埋める充填中型を拡縮可能に設けるとともに、この充填中型に前記スライドの下降・上昇に連動して拡縮する第2移動手段を設け、この第2移動手段を介して前記第2中型を拡縮可能に構成しており、第2中型の隙間を埋める充填中型を設けても充填中型を第2移動手段で拡縮することで第2中型の移動手段を連動させて拡縮でき、工程の増大を招くことなく、所望の形状に効率的にネッキングできるようになる。
【0026】
さらに、この発明の請求項11記載の角缶のネッキング装置は、請求項7〜10のいずれかに記載の構成に加え、前記ネッキングダイの前記ネッキング成形部とその下部との傾斜面の角度を25〜35度の範囲に形成してなることを特徴とするものである。
【0027】
この角缶のネッキング装置によれば、前記ネッキングダイの前記ネッキング成形部とその下部との傾斜面の角度を25〜35度の範囲に形成しており、角度を小さくすると、ネッキングによる縮小の効果が小さく、角度を大きくすると、軸方向の荷重が大きくなって座屈が発生してしまうという問題を回避して成形でき、特に下端開口部がすでにネッキングしてある場合に、この部分の座屈を防止できるようになる。
【発明の効果】
【0028】
この発明の請求項1記載の角缶のネッキング方法によれば、ネッキング成形部を第1中型で支持するのに加えてその下部を第2中型で支持するようにしたので、角缶の平坦部も角部と同様にネッキングダイに沿うように成形でき、形状が安定するとともに、所望の形状にネッキングすることができる。また、缶胴の両端の開口部をネッキングする場合にも、第2中型を縮小させることで、ネッキング後の製品の取り出しを円滑に行うことができる。
【0029】
また、この発明の請求項2記載の角缶のネッキング方法によれば、ボルスタ上でセット状態の第2中型と角型素缶にスライドを下降させることで第1中型を第2中型上の所定位置にセットでき、さらにスライドを下降させてネッキングダイで成形することができる。 これにより、第1および第2中型を用いても通常のネッキングと同様の工程で成形することができる。
【0030】
さらに、この発明の請求項3記載の角缶のネッキング方法によれば、第2中型の拡縮および第1中型の挿脱をスライドの下降・上昇に連動させて行うようにしたので、スライドを昇降させると、連動して第1および第2中型を装着したセット状態や脱出させる取出し状態にでき、工程を増やすことなく、効率的にネッキングすることができる。
【0031】
また、この発明の請求項4記載の角缶のネッキング方法によれば、第2中型の拡大した隙間に充填中型を配置してネッキングするようにしたので、拡大することにより生じる隙間を充填中型で埋めて隙間をなくすことができ、一層安定した形状にネッキングすることができる。
【0032】
さらに、この発明の請求項5記載の角缶のネッキング方法によれば、前記充填中型の拡縮を前記スライドの下降・上昇に連動させて行い、この充填中型の拡縮に連動して前記第2中型を拡縮してネッキングするようにしたので、第2中型の隙間を埋める充填中型を設けても充填中型を拡縮することで第2中型を連動させて拡縮することができ、工程の増大を招くことなく、所望の形状に効率的にネッキングすることができる。
【0033】
また、この発明の請求項6記載の角缶のネッキング方法によれば、前記ネッキングダイの前記ネッキング成形部とその下部との傾斜面の角度を25〜35度の範囲としてネッキングするようにしたので、角度を小さくすると、ネッキングによる縮小の効果が小さく、角度を大きくすると、軸方向の荷重が大きくなって座屈が発生してしまうという問題を回避して成形することができ、特に下端開口部がすでにネッキングしてある場合に、この部分の座屈を防止することができる。
【0034】
さらに、この発明の請求項7記載の角缶のネッキング装置によれば、角缶の缶胴開口部のネッキング成形部を、中型で支持するとともにネッキングダイで縮小成形するネッキング装置で、ネッキング成形部の下部を拡縮可能な割り型の第2中型で支持するようにしたので、ネッキングダイに素缶を沿わせることができ、平坦部も角部と同様に所望の形状にネッキングすることができ、形状も安定した成形ができる。
【0035】
また、この発明の請求項8記載の角缶のネッキング装置によれば、第2中型をボルスタ上に拡縮移動可能に設けるとともに、この第2中型を拡縮移動する移動手段をスライドの下降・上昇に連動可能に設けたので、スライドを下降するだけで第2中型を拡大してセットすることができ、上昇すれば縮小して製品を簡単に取り出すことができる。これにより、工程を増大させずに、効率的にネッキングすることができる。
【0036】
さらに、この発明の請求項9記載の角缶のネッキング装置によれば、中型をスライドに支持して前記ネッキング成形部に挿脱可能に構成したので、通常の中型の設置や取り出しも特に必要とせず、スライドの操作で自動的に行うことができる。
【0037】
また、この発明の請求項10記載の角缶のネッキング装置によれば、前記第2中型に、拡大した隙間を埋める充填中型を拡縮可能に設けるとともに、この充填中型に前記スライドの下降・上昇に連動して拡縮する第2移動手段を設け、この第2移動手段を介して前記第2中型を拡縮可能に構成したので、第2中型の隙間を埋める充填中型を設けても充填中型を第2移動手段で拡縮することで第2中型の移動手段を連動させて拡縮でき、工程の増大を招くことなく、一層高精度に所望の形状にネッキングすることができる。
【0038】
さらに、この発明の請求項11記載の角缶のネッキング装置によれば、前記ネッキングダイの前記ネッキング成形部とその下部との傾斜面の角度を25〜35度の範囲に形成したので、角度を小さくすると、ネッキングによる縮小の効果が小さく、角度を大きくすると、軸方向の荷重が大きくなって座屈が発生してしまうという問題を回避して成形することができ、とくに下端開口部がすでにネッキングしてある場合に、この部分の座屈を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1および図2はこの発明の角缶のネッキング方法およびその装置の一実施の形態にかかり、図1(a)はネッキング前の角型素缶の平面図および正面図、(b)はネッキング後の角缶の平面図および正面図、図2はネッキング装置の一実施の形態にかかり、(a)はネッキング前およびネッキング後の状態の縦断面図、(b)はネッキング前およびネッキング後の状態の第2中型部分の平面図である。
【0040】
この角缶のネッキング装置(以下、単にネッキング装置とする。)10では、例えば図1(a)に示すように、断面形状が四角形状の角筒状の角型素缶4Aを用い、その缶胴の上下開口部を縮小するネッキングを行い、同図(b)に示すように、ネッキング成形部4cを備えた断面形状が四角形状の角缶4を得るようにしており、平坦部4aおよび角部4bを均一にネッキングできるようにする。
【0041】
なお、この実施の形態では、角缶として四角形缶を例に説明するが、これに限らず、多角形缶であっても良い。
【0042】
この角型素缶4Aとしては、例えばアルミニウムのPETラミネート材を用いて底付き円筒状に絞り加工した後、底部分を切り落とす等で円筒状にトリム加工を行い、これを四角筒状にリフォーム加工したものが用いられるほか、種々の製造工程で角筒状に加工したものを用いることができる。
【0043】
このような角型素缶4Aをネッキングするネッキング装置10は、これまでと同様、ネッキング成形部4cの内側に位置させて支持する第1中型11と外型であるネッキングダイ12とに加え、ネッキング成形部4cの下部を支持する拡縮可能な割り型で構成した第2中型13を備えて構成される。
【0044】
このネッキング装置10では、第1中型11がプレス機構14のスライド15に支持されて一体に昇降できるとともに、第1中型11だけで相対的に昇降できるようにスライド15にスライド可能な吊りボルト16および下方に付勢するばね17を介して吊り下げられている。この第1中型11は、その外形がネッキング成形部4cの外形に対応する四角形状の支持部11aとされ、中心部に貫通孔11bが形成された四角形のリング状としてある。
【0045】
また、外型となるネッキングダイ12は、プレス機構14のスライド15にボルトで取り付けられて第1中型11の外側に配置してあり、下端部内形が角型素缶4Aの外側に位置する部分12aと、その上部のネッキング加工のための縮小加工部12bとを備えている。
【0046】
これにより、プレス機構14のスライド15を下降すると、連動して第1中型11およびネッキングダイ12が下降されて、第1中型11を後述するようにセットした後、ネッキングダイ12でネッキングすることができる。
【0047】
一方、角型素缶4Aのネッキング成形部4cの下部を支持する第2中型13は、プレス機構14のボルスタ18上に設置してあり、4つに分割された割り型で構成されて拡縮可能となっている。
【0048】
この第2中型13は、四角形の平面部の中央で分割してそれぞれが角部を中心に90度の割り型19を4個組み合わせて構成され、角型素缶4Aの内側に突き出す中型部19aとボルスタ18上に位置する水平部19bとを備えており、中型部19aの上部がネッキング成形部4cの下部に位置するようにしてある。この4つの割り型19で構成される第2中型13は、四角形の対角線方向である角部を中心とする放射方向にそれぞれが移動することで拡縮するようになっており、ボルスタ18に取り付けたキー20に沿って各割り型19のキー溝がガイドされるとともに、4つ組み合わせたときに円板状となる扇形状の水平部19bの外側を覆うようにリング状の押え部材21が設けられ、押え部材21の内側で各割り型19が拡縮移動可能となっている。
【0049】
また、第2中型13の各割り型19を拡縮移動するため移動手段22として、中心部にピストンロッド23が配置され、円柱側面に窪むように円錐面23aが形成してあり、第2中型13には、各割り型19のピストンロッド23側に突き出すように四分の1の部分円錐面19cが形成してある。これにより、これら円錐面23a,19c同士を接触させた状態で、ピストンロッド23を押すことで、各割り型19を外側に開くように移動させる拡大状態にでき、ピストンロッド23の円柱側面と各割り型19の円筒部内面を接触させることで拡大状態を保持できるようにしてある。一方、第2中型13の各割り型19を閉じるように移動させて縮小状態にするため、例えば中型部19aの下部に溝(図示例では2つ)が形成され、溝内に4つの割り型19を囲むようにコイルばね24を装着することで、縮小方向に付勢するようにしてある。なお、この溝とコイルばね24に替え、水平部19bの外周部と押え部材21との間にばねを介在させて縮小方向に付勢するようにしても良い。
【0050】
このように構成した角缶のネッキング装置10の動作とともに、角缶のネッキング方法について、図3に示す工程図により説明する。
【0051】
まず、プレス機構14のボルスタ18上の第2中型13を、移動機構22のピストンロッド23を引き上げた状態とすることで、閉じた縮小状態にしておき、角型素缶4Aを第2中型13の外側にセットする(図3(a)参照)。
【0052】
こののち、プレス機構14のスライド15を下降させると、第1中型11の貫通部11bを通過した第2中型13の移動手段22を構成するピストンロッド23の上端面がスライド15と接触した状態となる(同図(b)参照)。
【0053】
この状態から、さらにスライド15を下降すると、ピストンロッド23が押し下げられて円錐面23aと第2中型13の各割り型19の部分円錘面19cとの接触によって各割り型19が開くように外側に移動されて第2中型13が拡大状態となり、ネッキング成形部4cの下部を支持する。そして、このスライド15の下降に伴って拡大した第2中型13の上端面に、スライド15に吊りボルト16およびばね17で吊り下げられた第1中型11が載る状態となり、この第1中型11の支持部11aでネッキング成形部4cを支持する(同図(c)参照)。
【0054】
こうして第1中型11でネッキング成形部4cを、第2中型13でネッキング成形部4cの下部をそれぞれ支持した状態で、さらにプレス機構14のスライド15を下降すると、ネッキングダイ12によって角型素缶4Aのネッキングが開始され、ネッキングされた角缶4は、平坦部4aも角部4bと同様に所定形状に成形でき、平坦部4aと角部4bとを均一かつ安定した形状に成形できる。なお、このネッキングダイが下降する間、第1中型11は第2中型13上で停止し、スライドとは吊りボルト16部分で相対移動する。
【0055】
成形後、スライド15を上昇すると、スライド15の上昇に連動して外型であるネッキングダイ12が上昇するとともに、第1中型11も上昇され、角缶4内から自動的に取り出される。これにより、手作業による第1中型11の装着や取り外しの必要もなく、効率良くネッキングすることができる。
【0056】
また、第2中型13の移動手段であるピストンロッド23を押し上げるようにすることで、コイルばね24で縮小方向に付勢してある4つの割り型19が閉じるように移動して縮小状態となり、例え下端開口部がすでにネッキングしてある角缶4であってもこれを取り出すことができる。
【0057】
さらに、このネッキング方法およびその装置では、第2中型13を拡縮して角型素缶4Aのネッキング成形部4cの下部を支持するようにしたので、平坦部4aも角部4bと同様に均一かつ安定した形状に成形できるとともに、例え下端開口部がすでにネッキングしてある角缶4であってもこれを装着して上端開口部のネッキングをすることや加工後の取り出しを簡単に行うことができる。
【0058】
また、第2中型13の拡縮移動をプレス機構14のスライド15の昇降に連動させて行うことができ、ネッキングに伴う工程を増大することなく、拡縮移動に伴う操作も必要とせずにネッキングすることができる。
【0059】
このようなネッキング装置10に用いられる外型であるネッキングダイ12は、その傾斜面の角度Θ、すなわち、図4に示すように、第2中型13と対向する部分を上方に延長する鉛直線を基準として、この基準に対して傾斜面の缶体の中心方向への倒れ角Θを25〜35度の範囲、好ましくは30度とする。
【0060】
この傾斜角Θを寝かせて大きくした場合には、ネッキング加工される角型素缶4Aの傾斜面が最初に接する部分が受ける軸荷重が増加することになり、このため角型素缶4Aの下端開口部のすでにネッキング加工した部分が座屈してしまう傾向がある。すなわち、2回目のネッキング加工による軸荷重で、ネッキング成形部そのものでなく、すでにネッキング成形してある部分が座屈する現象が発生するもので、傾斜角Θを45度した実験では、座屈が生じてしまった。
【0061】
一方、ネッキングダイ12の傾斜面の角度Θを、立てて小さくした場合には、ネッキングによる形状(縮小)の効果がハッキリとせず、しかもしわ等が発生する問題が生じる傾向がある。
【0062】
そして、このネッキングダイ12の傾斜面の角度Θを30度として実験を行ったところ、45度の場合に比べ、角缶4に加わる軸荷重が小さくなるとともに、すでにネッキング成形した部分の座屈強度も高まることから、上記の問題が全て解消され、必要な形状にネッキング成形でき、しかも座屈やしわの発生も見られなかった。
【0063】
次に、この発明の角缶のネッキング方法およびその装置の他の一実施の形態について、図5により説明するが、すでに説明した実施の形態と同一部分は、同一記号を記し、重複する説明は省略する。
【0064】
このネッキング装置30では、第2中型31を拡縮移動する場合に割り型間に隙間が生じないようにしたもので、4つの角部用中型32とこれらの間の隙間を埋める4つの充填中型33とで割り型が構成してある。なお、これら角部用中型32および充填中型33のいずれも、すでに説明した第2中型と同様に、ボルスタ上に位置する水平部と上方に突き出す中型部を備えており、角部用中型32の水平部は、すでに説明したように、円板状の4分の一の扇形状とされ、その両側の段差部に、充填中型33の矩形の水平部を配置して拡縮できるように押え部材で押えてある。
【0065】
そして、角部用中型32がプレス機構14のボルスタ18に取り付けたキー34に沿って対角線方向にガイドされて移動できるようになっており、各角部用中型32の背面を対角線方向と直交する平面32aとしてある。
【0066】
一方、各充填中型33は、隣接する2つの角部用中型32のそれぞれの平面32aに接するように両側に45度の傾斜ガイド面33aが形成され、角部用中型32の両側の平面32aと充填中型33の傾斜ガイド面33aを接触させることで移動方向を拘束し、充填中型33にキーなどのガイドを設けることなく、拡縮移動できるようになっている。
【0067】
このような第2中型31を拡縮移動するため、充填中型33に第2移動手段35が設けてあり、内側に窪む円錐面36aを備えたピストンロッド36および各充填中型33の内側の部分円錐面33bで第2移動手段35が構成され、互いの円錐面同士を接触させた状態で、ピストンロッド36を押し込むことで、充填中型33を開くように移動して拡大状態にできるようにしてある。
【0068】
そして、これら充填中型33の拡縮移動に連動して傾斜ガイド面33aを介して平面32aで接触している角部用中型32が移動されることになり、角部用中型32には、移動手段を必要としない。なお、角部用中型32には、それぞれを閉じる縮小方向に付勢するばねが水平部と押え部材21との間に設けてあり、これにより、傾斜がイド面33aと平面32aとが常に接触するようにしてある。
【0069】
なお、このネッキング装置30の他の構成はすでに説明したネッキング装置10と同一である。
【0070】
このように構成した角缶のネッキング装置30の動作とともに、角缶のネッキング方法について説明するが、ここでは、すでに説明したネッキング装置10との相違点を主に説明する。
【0071】
まず、プレス機構14のボルスタ18上の第2中型31を、第2移動機構35のピストンロッド36を引き上げた状態とすることで、閉じた縮小状態にしておき、角型素缶4Aを第2中型31の外側にセットする。
【0072】
こののち、プレス機構14のスライド15を下降させると、第1中型11の貫通部11bを通過した第2中型31の第2移動手段35を構成するピストンロッド36の上端面がスライド15と接触した状態となり、この状態から、さらにスライド15を下降すると、ピストンロッド36が押し下げられて充填中型33の部分円錐面33bと円錐面36aとの接触によって各充填中型33が開くように外側に移動され、これに連動して角部用中型32が外側に押し出されて第2中型31が拡大状態となる。
【0073】
これにより、ネッキング成形部4cの下部を角部用中型32と充填中型33で隙間なく支持できるようになる。
【0074】
こののちの動作はすでに説明したものと同一であり、このスライド15の下降に伴って拡大した第2中型31の上端面に、スライド15に吊りボルト16およびばね17で吊り下げられた第1中型11が載る状態となり、この第1中型11の支持部11aでネッキング成形部4cを支持できるようになる。
【0075】
こうして第1中型11でネッキング成形部4cを、第2中型31でネッキング成形部4cの下部をそれぞれ支持した状態で、さらにプレス機構14のスライド15を下降すると、ネッキングダイ12によって角型素缶4Aのネッキングが開始され、ネッキングされた角缶4は、平坦部4aも角部4bと同様に所定形状に成形でき、平坦部4aと角部4bとを均一かつ安定した形状に成形でき、第2中型31の角度部用中型32の隙間が充填中型33で埋められているので、一層外型であるネッキングダイ12に沿った形状に成形することができる。
【0076】
成形後、スライド15を上昇すると、スライド15の上昇に連動して外型であるネッキングダイ12が上昇するとともに、第1中型11も上昇され、角缶4内から自動的に取り出される。これにより、手作業による第1中型11の装着や取り外しの必要もなく、効率良くネッキングすることができる。
【0077】
また、第2中型31の第2移動手段であるピストンロッド36を押し上げるようにすることで、ばねで縮小方向に付勢してある角部用中型32が閉じるように移動し、平面32aと傾斜ガイド面33aを介して接触している充填中型33も縮小状態となり、例え下端開口部がすでにネッキングしてある角缶4であってもこれを取り出すことができる。
【0078】
さらに、このネッキング方法およびその装置では、第2中型31を角部用中型32と充填中型33を拡縮して角型素缶4Aのネッキング成形部4cの下部を隙間なく支持するようにしたので、平坦部4aも角部4bと同様に一層均一かつ安定した形状に成形できるとともに、例え下端開口部がすでにネッキングしてある角缶4であってもこれを装着して上端開口部のネッキングをすることや加工後の取り出しを簡単に行うことができる。
【0079】
また、第2中型31を角部用中型32と充填中型33で構成しても、拡縮移動をプレス機構14のスライド15の昇降に連動させて行うことができ、ネッキングに伴う工程を増大することなく、拡縮移動に伴う操作も必要とせずにネッキングすることができる。
【0080】
このようにして上下端部の開口部をネッキングして縮小することで、底蓋や天蓋を巻き締めて密封する場合にも、巻き締め部が角缶の胴部より外側に出ることがなく、横に並べたり、積み重ねる場合に省スペースを図ることができる。
【0081】
なお、上記実施の形態では、角缶の用途などについては、特に説明していないが、通常の流体用の容器として用いられるもののほか、特に多数の角缶を並べたり、積み重ねるようにする場合のスペース効率の向上に有効である。
【0082】
また、上下端部のネッキングした後、さらに胴部に波型のビードを加工することで、二次電池やキャパシタなどの容器等として用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】この発明の角缶のネッキング方法およびその装置の一実施の形態にかかり、(a)はネッキング前の角型素缶の平面図および正面図、(b)はネッキング後の角缶の平面図および正面図である。
【図2】この発明の角缶のネッキング方法およびその装置の一実施の形態にかかり、(a)はネッキング装置のネッキング前およびネッキング後の状態の縦断面図、(b)はネッキング装置のネッキング前およびネッキング後の状態の第2中型部分の平面図である。
【図3】この発明の角缶のネッキング方法およびその装置の一実施の形態にかかる角缶のネッキング工程図である。
【図4】この発明の角缶のネッキング方法およびその装置の一実施の形態にかかり、ネッキングダイの傾斜面の角度の説明断面図である。
【図5】この発明の角缶のネッキング方法およびその装置の他の一実施の形態にかかり、(a)はネッキング装置のネッキング前およびネッキング後の状態の縦断面図、(b)はネッキング装置のネッキング前およびネッキング後の状態の第2中型部分の平面図である。
【図6】従来のネッキング加工の説明図で、(a)は円筒缶の場合を、(b)は角缶の場合をそれぞれ示すものである。
【符号の説明】
【0084】
4A 角型素缶
4 角缶
4a 平坦部
4b 角部
4c ネッキング成形部
10 角缶のネッキング装置(ネッキング装置)
11 第1中型
11a 支持部
11b 貫通孔
12 ネッキングダイ(外型)
12a 外側部
12b 縮小加工部
13 第2中型(割り型)
14 プレス機構
15 スライド
16 吊りボルト
17 ばね
18 ボルスタ
19 割り型
19a 中型部
19b 水平部
19c 部分円錐部
20 キー
21 押え部材
22 移動手段
23 ピストンロッド
23a 円錐面
24 コイルばね
30 角缶のネッキング装置
31 第2中型
32 角部用中型
32a 平面
33 充填中型
33a 傾斜ガイド面
33b 部分円錐面
34 キー
35 第2移動手段
36 ピストンロッド
36a 円錐面
Θ 外型の傾斜面の角度


【特許請求の範囲】
【請求項1】
角缶の缶胴開口部を縮小するネッキングをするに際し、
前記角缶のネッキング成形部の内側に第1中型を配置するとともに、このネッキング成形部の下部に拡縮可能な割り型の第2中型を配置した後、ネッキングダイで成形するようにしたことを特徴とする角缶のネッキング方法。
【請求項2】
ボルスタ上の前記第2中型の外側に角型素缶を配置し、当該第2中型をネッキング成形部の下部を支持可能に拡大移動した後、この第2中型上にスライドに取り付けた前記第1中型を下降させてネッキング成形部に位置させるとともに、前記ネッキングダイを下降してネッキングするようにしたことを特徴とする請求項1記載の角缶のネッキング方法。
【請求項3】
前記第2中型の拡縮および前記第1中型の挿脱をスライドの下降・上昇に連動させて行うようにしたことを特徴とする請求項1または2記載の角缶のネッキング方法。
【請求項4】
前記第2中型の拡大した隙間に充填中型を配置してネッキングするようにしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の角缶のネッキング方法。
【請求項5】
前記充填中型の拡縮を前記スライドの下降・上昇に連動させて行い、この充填中型の拡縮に連動して前記第2中型を拡縮してネッキングするようにしたことを特徴とする請求項4記載の角缶のネッキング方法。
【請求項6】
前記ネッキングダイの前記ネッキング成形部とその下部との傾斜面の角度を25〜35度の範囲としてネッキングするようにしたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の角缶のネッキング方法。
【請求項7】
角缶の缶胴開口部のネッキング成形部を、中型で支持するとともにネッキングダイで縮小成形するネッキング装置であって、
前記角缶のネッキング成形部の下部に、拡縮可能な割り型の第2中型を設けて支持可能に構成したことを特徴とする角缶のネッキング装置。
【請求項8】
前記第2中型をボルスタ上に拡縮移動可能に設けるとともに、この第2中型を拡縮移動する移動手段をスライドの下降・上昇に連動可能に設けたことを特徴とする請求項7記載の角缶のネッキング装置。
【請求項9】
前記中型をスライドに支持して前記ネッキング成形部に挿脱可能に構成したことを特徴とする請求項7または8記載の角缶のネッキング装置。
【請求項10】
前記第2中型に、拡大した隙間を埋める充填中型を拡縮可能に設けるとともに、この充填中型に前記スライドの下降・上昇に連動して拡縮する第2移動手段を設け、この第2移動手段を介して前記第2中型を拡縮可能に構成してなることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の角缶のネッキング装置。
【請求項11】
前記ネッキングダイの前記ネッキング成形部とその下部との傾斜面の角度を25〜35度の範囲に形成してなることを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載の角缶のネッキング装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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