説明

角質剥離用粘着シート

【課題】
皮膚への糊残りがなくきれいに剥離でき、角質剥離量の多い、優れた角質剥離能を有する角質剥離用粘着シートを提供する。
【解決手段】
支持体と、該支持体上に形成された粘着剤層を有する角質剥離用粘着シートであって、前記粘着剤層の、32℃における貯蔵弾性率が2.0×10〜5.0×10Paであり、0℃における貯蔵弾性率が1.6×10〜4.0×10Paであることを特徴とする角質剥離用粘着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体と、該支持体上に形成された粘着剤層を有する、角質剥離能に優れる角質剥離用粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の最外層にある角質は、生体内と外界を分ける界面であり、生体成分が外界に漏出するのを防いだり、有害成分が生体内に進入するのを防ぐバリアー機能を有する。
このように、角質は生体にとって重要な機能を有するものであるが、例えば、薬物やワクチン等の有効成分を表皮から生体内に投与(経皮吸収)したり、臨床検査等を目的として吸引浸出液を皮膚から減圧吸引する際などにおいて、角質を除去することが必要な場合がある。
【0003】
従来、角質を除去する方法としては、例えば、皮膚表面に、粘着テープ(角質剥離用粘着シート)を貼着し、一定時間後に剥離することによって角質を除去する方法が知られている(特許文献1〜6等)。
しかしながら、従来の角質剥離用粘着シートでは、一回の剥離で剥離できる角質剥離量が少なく、複数の角質剥離用粘着シートで繰り返し剥離を行う必要があるなど、角質剥離能が不十分な場合があった。よって、より優れた角質剥離能を有する角質剥離用粘着シートの開発が求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−123326号公報
【特許文献2】特開平3−151951号公報
【特許文献3】特開2007−289672号公報
【特許文献4】特開2008−201698号公報
【特許文献5】特開2009−102304号公報
【特許文献6】特開2009−29742号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、その課題は、角質剥離能に優れる角質剥離用粘着シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、支持体と、該支持体上に形成された粘着剤層を有する角質剥離用粘着シートであって、前記粘着剤層の、32℃における貯蔵弾性率及び0℃における貯蔵弾性率が特定の範囲の値にある角質剥離用粘着シートは、角質剥離能に極めて優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
かくして本発明によれば、下記(1)〜(6)の角質剥離用粘着シートが提供される。
(1)支持体と、該支持体上に形成された粘着剤層を有する角質剥離用粘着シートであって、前記粘着剤層の、32℃における貯蔵弾性率が2.0×10〜5.0×10Paであり、0℃における貯蔵弾性率が1.6×10〜4.0×10Paであることを特徴とする角質剥離用粘着シート。
【0008】
(2)前記粘着剤層が、アクリル系重合体と、環球法による軟化点が80〜160℃のロジン系樹脂とを含む粘着剤組成物から形成されたものである(1)に記載の角質剥離用粘着シート。
(3)前記アクリル系重合体が、炭素数6〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、カルボキシル基を有するモノマー、ヒドロキシル基を有するモノマー、及び側鎖に塩構造を有さない窒素原子を有するモノマーからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーとを含むモノマー組成物を共重合してなるものである(2)に記載の角質剥離用粘着シート。
【0009】
(4)前記モノマー組成物が、さらに、分子内に重合性不飽和基を複数有するモノマーを含むものである(3)に記載の角質剥離用粘着シート。
(5)前記ロジン系樹脂の数平均分子量が300〜2000である(2)に記載の角質剥離用粘着シート。
(6)前記ロジン系樹脂の使用割合が、アクリル系重合体100質量部に対して、10〜40質量部である(2)に記載の角質剥離用粘着シート。
【発明の効果】
【0010】
本発明の角質剥離用粘着シートは、皮膚への糊残りがなくきれいに剥離でき、角質剥離量も多く、極めて優れた角質剥離能を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の角質剥離用粘着シートは、支持体と、該支持体上に形成された粘着剤層を有する角質剥離用粘着シートであって、前記粘着剤層の、32℃における貯蔵弾性率が、2.0×10〜5.0×10Paであり、0℃における貯蔵弾性率が1.6×10〜4.0×10Paであることを特徴とする。
【0012】
(支持体)
本発明の角質剥離用粘着シートに用いる支持体は、粘着剤層を担持できるものであれば特に制約はない。
用いる支持体としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系フィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/メタクリル酸共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル等のポリオレフィン系フィルム、ポリウレタン系フィルム、ポリスチレン系の熱可塑性エラストマーフィルム等の樹脂フィルム;これらの樹脂フィルムにアルミニウムなどの金属を蒸着したフィルム;各種の合成繊維及び/又は天然繊維からなる、織布、編布、不織布等の繊維類;上質紙、グラシン紙、コート紙等の紙類;これらの積層体;等が挙げられる。
【0013】
支持体の厚さは、特に制限されないが、支持体が樹脂フィルムの場合には、通常5〜250μm、好ましくは10〜100μmであり、支持体が繊維類や紙類等からなる場合には、通常10〜1000μm、好ましくは20〜500μmである。
【0014】
また、支持体の粘着剤層が形成される側の面に、粘着剤層との密着性を高めるために、予め、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。また、得られる角質剥離用粘着シートを、運搬・保管に適した巻取体にする場合等においては、支持体の粘着剤層が形成されない側の表面を、シリコーン系剥離剤や長鎖アルキル化合物等によって剥離処理してもよい。
【0015】
(粘着剤層)
本発明の角質剥離用粘着シートに用いる粘着剤層は、32℃における貯蔵弾性率が2.0×10〜5.0×10Paであり、0℃における貯蔵弾性率が1.6×10〜4.0×10Paである。
貯蔵弾性率は、粘弾性材料の剛性を表す指標であり、従来公知の粘弾性測定装置により測定することができる。
【0016】
本発明の角質剥離用粘着シートは、上記のような貯蔵弾性率を有する粘着剤層を用いるため、優れた角質剥離性能を有する。特に、剥離時に、1m/min以上の剥離速度で皮膚から剥離することで、より優れた角質剥離能を発揮する。
【0017】
より詳しくは、粘着剤層の32℃における貯蔵弾性率を、2.0×10〜5.0×10Paとすることにより、角質剥離用粘着シートを貼付する際の皮膚の凹凸への追従性を特に優れたものとすることができる。
また、粘着剤層の0℃における貯蔵弾性率を、1.6×10〜4.0×10Paとすることにより、角質剥離用粘着シートを1m/min以上の剥離速度で皮膚から剥離する際に、皮膚への糊残りの生じないものとすることができる。
【0018】
貯蔵弾性率が上記範囲となる粘着剤層を得る方法は、特に限定されない。なかでも、アクリル系重合体、及び、環球法による軟化点が80〜160℃のロジン系樹脂を含む粘着剤組成物を用いて粘着剤層を形成する方法が好ましい。このような粘着剤組成物を支持体上に塗布して、得られる塗膜を乾燥することにより、簡便に、前記粘着剤層を形成することができる。
【0019】
(アクリル系重合体)
用いるアクリル系重合体としては、特に限定されないが、前記貯蔵弾性率を有する粘着剤層が簡便に得られる観点から、炭素数6〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、カルボキシル基を有するモノマー、ヒドロキシル基を有するモノマー、および側鎖に塩構造を有さない窒素原子を有するモノマーからなる群から選択される少なくとも1種のモノマー(以下、「カルボキシル基等を有するモノマー」ということがある。)とを含むモノマー組成物を共重合して得られるものが好ましい。ここで、「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸」又は「メタクリル酸」を意味する(以下にて同じ)。
【0020】
炭素数6〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(以下、単に「(メタ)アクリル酸アルキルエステル」ということがある。)としては、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等が挙げられる。
【0021】
前記モノマー組成物における、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの使用割合は、モノマー組成物全体に対して、70モル%以上であることが好ましく、80〜99.99モル%がより好ましく、90〜99.9モル%であることがさらに好ましい。
【0022】
カルボキシル基を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、β-カルボキシエチルアクリレート、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸等が挙げられる。
【0023】
ヒドロキシル基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチルエステル、クロロ−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリルアルコール等が挙げられる。
【0024】
側鎖に塩構造を有さない窒素原子を有するモノマーとしては、アミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基を有するアクリル系単量体;メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート等の、炭素数1〜4のモノまたはジアルキルアミノ基を有するアクリル系モノマー;N−ビニル−2−ピロリドン等のピロリドン環を有するビニル系モノマー;2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等のピリジン環を有するビニル系モノマー;1−ビニルイミダゾール、4−ビニルイミダゾール等のイミダゾール環を有するビニル系モノマー;等が挙げられる。
【0025】
前記モノマー組成物における、カルボキシル基等を有するモノマーの使用割合は、特に限定されないが、モノマー組成物全体に対して、30モル%未満であることが好ましく、0.01〜20モル%であることがより好ましく、0.1〜10モル%であることがさらに好ましい。
【0026】
本発明においては、前記モノマー組成物は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及びカルボキシル等を有するモノマーに加えて、さらに、分子内に重合性不飽和基を複数有するモノマーを含むことが好ましい。
【0027】
分子内に重合性不飽和基を複数有するモノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ボリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、グリセリンメタクリレートアクリレートなどの、ポリオール類のジ又はトリ(メタ)アルキル酸エステル類;ジビニルベンゼン;等が挙げられる。
【0028】
分子内に重合性不飽和基を複数有するモノマーを用いる場合、当該モノマーの使用割合は、特に限定されないが、モノマー組成物全体に対して、0.001〜0.1モル%であることが好ましく、0.01〜0.05モル%であることがより好ましい。
【0029】
アクリル系重合体は、前記モノマー組成物を従来公知の方法で共重合することによって得ることができる。
得られるアクリル系重合体の質量平均分子量(Mw)は、所望の貯蔵弾性率を有する粘着剤層を得る観点から、40万〜200万であるのが好ましく、60万〜160万であるのがより好ましい。
ここで質量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC分析)法によって測定し、標準ポリスチレンで換算した値である(以下にて同じ)。
【0030】
(ロジン系樹脂)
環球法(軟化点測定方法の一種)による軟化点が80〜160℃のロジン系樹脂としては、天然樹脂ロジン;変性ロジン;ロジングリセリンエステル、ロジンペンタエリスリトールエステル等のロジンエステル;水添ロジングリセリンエステル、水添ロジンペンタエリスリトールエステル等の水添ロジンエステル;等が挙げられる。
これらの中でも、耐皮膚刺激性、耐老化性の観点から、水添ロジンエステルが好ましく、水添ロジングリセリンエステルが特に好ましい。
【0031】
本発明においては、ロジン系樹脂として、環球法(軟化点測定方法の一種)による軟化点が80〜160℃のもの(以下、単に「ロジン系樹脂」ということがある。)を用いる。ロジン系樹脂として、環球法による軟化点が90〜135℃のものを用いることがさらに好ましい。
このような軟化点を有するロジン樹脂を用いることにより、所望の貯蔵弾性率を有する粘着剤層を得ることが容易にできる。
【0032】
用いるロジン系樹脂の数平均分子量は、所望の貯蔵弾性率を有する粘着剤層を得る観点から、300〜2000であるのが好ましい。
【0033】
ロジン系樹脂の使用割合は、所望の貯蔵弾性率を有する粘着剤層を得る観点から、アクリル系重合体100質量部に対して、10〜40質量部であるのが好ましい。
【0034】
前記粘着剤組成物には、本発明の効果を損なわない限りにおいて、その他の成分を添加してもよい。その他の成分としては、硬化剤、薬剤、保湿剤、酸化防止剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤、隠蔽剤、可塑剤、ワックス、着色剤、無機フィラー、有機フィラー、増量剤、カップリング剤等の各種添加剤が挙げられる。
【0035】
(粘着剤組成物の調製)
前記粘着剤組成物は、前記アクリル系重合体、ロジン系樹脂、所望によりその他の成分、及び有機溶媒を、常法に従って適宜混合・攪拌することにより調製することができる。
【0036】
用いる有機溶媒としては、トルエンなどの芳香族炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタンなどの脂肪族炭化水素系溶媒;シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素系溶媒;及びこれらの溶媒の2種以上からなる混合溶媒;等が挙げられる。
【0037】
有機溶媒の使用割合は特に限定されないが、粘着剤組成物全体に対して、通常5〜90質量%、好ましくは10〜80質量%、より好ましくは20〜70質量%である。
【0038】
(粘着剤層の形成)
粘着剤層を支持体上に形成する方法としては、特に制限されず、例えば、(i)支持体上に、前記粘着剤組成物を塗布、乾燥し、粘着剤層を形成する方法、(ii)剥離処理が施されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等の離型シート上に、前記粘着剤組成物を塗布、乾燥して粘着剤層を形成し、形成された粘着剤層の上に、支持体をラミネート(圧着)し、その後、前記離型シートを剥離する方法、等が挙げられる。
【0039】
粘着剤組成物の塗布は、既存の塗布装置を用いて行うことができる。塗布装置としては、グラビアコーター、マイヤーバーコーター、ロールコーター、ナイフコーター、ダイコーター、スクリーンコーター等が挙げられる。
【0040】
乾燥温度は特に制約はないが、通常60〜200℃、好ましくは80〜120℃である。乾燥時間は乾燥温度にもよるが、通常5秒から10分間、好ましくは10秒から5分間である。
【0041】
得られる粘着剤層の平均厚さは、特に限定されないが、効果的に角質を剥離する観点から、好ましくは1〜200μmであり、より好ましくは10〜50μmである。
【0042】
(離型シート)
得られる粘着剤層の上には、保存・運搬用に離型シートをラミネートしてもよい。
離型シートとしては、上質紙、グラシン紙、コート紙、ポリエチレンラミネート紙、ポリプロピレンラミネート紙等の紙類;PET等のポリエステル系フィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系フィルム等の合成樹脂フィルム;及びこれらの紙類又は合成樹脂フィルムの片面または両面に、シリコーン系剥離剤や長鎖アルキル化合物等により剥離処理が施されたもの;等が挙げられる。なかでも、入手容易性、取り扱い容易性等から、剥離処理が施されたポリエステル系フィルムが好ましい。
離型シートは、角質剥離用粘着シート使用時に剥離される。
【0043】
(角質剥離用粘着シート)
得られる本発明の角質剥離用粘着シートは、角質剥離能に優れる。角質剥離能に優れることは、例えば、角質剥離量が多いこと、また皮膚に糊残り等が見られないこと等から確認することができる。
角質剥離量の測定方法としては、下記実施例に記載の方法等が挙げられる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を、実施例及び比較例によりさらに詳細に説明する。但し、本発明はこれら実施例等によって何ら制限されない。
【0045】
(実施例1)
先ず、アクリル酸−2−エチルヘキシル(2EHA)95mol%と、N−ビニル−2−ピロリドン(VP)4.97mol%と、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDM)0.03mol%とからなるモノマー組成物1を共重合して得たアクリル系重合体1の酢酸エチル溶液(固形分:40質量%)を用意した。
ここに、ロジン系樹脂として、軟化点:95℃、数平均分子量:580の水添ロジングリセリンエステル樹脂(荒川化学工業社製、商品名「パインクリスタルKE−311」、以下「ロジン系樹脂A」という。)を、アクリル系重合体(固形分)100質量部に対して、15.0質量部添加し、混合して、粘着剤組成物1を得た。
【0046】
次に、離型シートとしてのポリエチレンテレフタレート(PET)製リリースライナー(リンテック社製、商品名「SP−PET3811」)を用意し、その離型面に、上記で得た粘着剤組成物1を乾燥後の平均厚さが30μmとなるように塗布し、得られた塗膜を加熱乾燥して、粘着剤層1を形成した。その後、支持体として平均厚さ:50μmのPETフィルム(東レ社製、商品名「ルミラー」)を粘着剤層1上にラミネートして、角質剥離用粘着シート1を作製した。
【0047】
(実施例2〜5)
実施例1において、ロジン系樹脂Aの配合量(質量部)を、下記第1表に示す値に変更した以外は、実施例1と同様にして角質剥離用粘着シート2〜5を作製した。
【0048】
(実施例6)
実施例1において、ロジン系樹脂Aの代わりに、軟化点:99℃、数平均分子量:400の水添ロジングリセリンエステル樹脂(荒川化学工業社製、商品名「パインクリスタルKE−359」、以下「ロジン系樹脂B」という。)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして角質剥離用粘着シート6を作製した。
【0049】
(実施例7)
実施例1において、ロジン系樹脂Aの代わりに、軟化点:128℃、数平均分子量:400の水添ロジングリセリンエステル樹脂(荒川化学工業社製、商品名「パインクリスタルKE−604」、以下「ロジン系樹脂C」という。)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして角質剥離用粘着シート7を作製した。
【0050】
(実施例8)
実施例1において、モノマー組成物1に代えて、アクリル酸−2−エチルヘキシル(2EHA)95mol%と、アクリル酸(AAc)4.97mol%と、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDM)0.03mol%とからなるモノマー組成物2を共重合して得たアクリル系共重合体2の酢酸エチル溶液(固形分:40質量%)を用いた以外は、実施例1と同様にして角質剥離用粘着シート8を作製した。
【0051】
(実施例9)
実施例1において、モノマー組成物1に代えて、アクリル酸−2−エチルヘキシル(2EHA)95mol%と、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル(2HEA)4.97mol%と、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDM)0.03mol%とからなるモノマー組成物3を共重合して得たアクリル系共重合体3の酢酸エチル溶液(固形分:40質量%)を用いた以外は、実施例1と同様にして角質剥離用粘着シート9を作製した。
【0052】
(比較例1〜3)
実施例1において、ロジン系樹脂Aの配合量(質量部)を、下記第1表に示す値に変更した以外は、実施例1と同様にして角質剥離用粘着シート1r〜3rを作製した。
【0053】
(比較例4)
実施例1において、ロジン系樹脂A 15.0質量部の代わりに、グリセリン(旭電化工業社製、商品名「日本薬局方濃グリセリン」、分子量:92.09、以下「添加剤D」という。)5.0質量部を用いた以外は、前記実施例1と同様にして角質剥離用粘着シート4rを作製した。
【0054】
(比較例5)
実施例1において、ロジン系樹脂A 15.0質量部の代わりに、ミリスチン酸イソプロピル(日光ケミカルズ社製、商品名「NIKKOL IPM−EX」、分子量:270.45、以下「添加剤E」という。)5.0質量部を用いた以外は、前記実施例1と同様にして角質剥離用粘着シート5rを作製した。
【0055】
(比較例6)
実施例1において、ロジン系樹脂A 15.0質量部の代わりに、ポリエチレングリコール(和光純薬工業社製、商品名「PEG−200」、分子量:194、以下「添加剤F」という。)5.0質量部を用いた以外は、前記実施例1と同様にして角質剥離用粘着シート6rを作製した。
【0056】
(比較例7)
実施例8において、ロジン系樹脂Aを配合しなかった以外は、実施例8と同様にして角質剥離用粘着シート7rを作製した。
【0057】
(比較例8)
実施例1において、ロジン系樹脂Aの代わりに、軟化点:100℃、数平均分子量:700のC9系水添石油樹脂(荒川化学工業社製、商品名「アルコンP−100」、以下「添加剤G」という。)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして角質剥離用粘着シート8rを作製した。
【0058】
(比較例9)
実施例1において、ロジン系樹脂Aの15.0質量部の代わりに、前記添加剤Gを30.0質量部を用いた以外は、前記実施例1と同様にして角質剥離用粘着シート9rを作製した。
【0059】
(比較例10)
実施例1において、ロジン系樹脂Aの代わりに、軟化点:115℃、数平均分子量:1600のテルペン樹脂(ヤスハラケミカル社製、商品名「YSレジンPX−1150N」、以下「添加剤H」という。)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして角質剥離用粘着シート10rを作製した。
【0060】
(比較例11)
実施例1において、ロジン系樹脂Aの15.0質量部の代わりに、前記添加剤Hを30.0質量部を用いた以外は、前記実施例1と同様にして角質剥離用粘着シート11rを作製した。
【0061】
(比較例12)
実施例1において、アクリル酸−2−エチルヘキシル(2EHA)の代わりに、アクリル酸−n−ブチル(BA)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして角質剥離用粘着シート12rを作製した。
【0062】
(比較例13)
ニチバン社製のセロハンテープ(商品名:セロテープ(登録商標))を、比較例13の角質剥離用粘着シート13rとした。なお、セロハンテープの粘着剤の主成分は天然ゴムである。
【0063】
【表1】

【0064】
上記実施例及び比較例で得られた角質剥離用粘着シート1〜9、1r〜13rの粘着剤層の0℃及び32℃の貯蔵弾性率を、粘弾性測定装置(Rheometrics社製、装置名「DYNAMIC ANALYZER RDAII」)を用いて測定した。測定結果を、下記第2表に示す。
【0065】
角質剥離用粘着シート1〜9、1r〜13rにつき、タンパク質定量法(Lowry法)に準拠し、下記に示すように角質剥離量を測定した。測定結果を下記第2表に示す。
〈角質剥離量の測定〉
まず、各角質剥離用粘着シートから、離型シートを除去し、粘着剤層をブタ皮膚(ユカタンマイクロピッグ(YMPスキンキット)、日本チャールズ・リバー社より購入)に5分間貼着した後、角質剥離用粘着シートを1m/minの剥離速度で180°ピールにて剥離した。
剥離した角質剥離用粘着シートを12mmφに打ち抜き、DCプロテインアッセイキット(バイオラッドラボラトリーズ社製)にて角質剥離量(タンパク質量、μg/cm)を測定した。〔参照:F.Dreher,Colorimetric Method for Quantifying Human Stratum Corneum Removed by Adhesive−Tape−Stripping,Acta Derm Veneresol(Stockh),1998;78:186−189〕
【0066】
また、皮膚への糊残りの有無を目視にて観察し、糊残りが無い場合を「なし」、糊残りがある場合を「あり」、部分的に糊残りがある場合を「部分的にあり」と評価した。その結果を下記第2表に示す。また、糊残りがある場合は、角質剥離量の測定ができないため、角質剥離量の欄には測定不能と記載した。
【0067】
【表2】

【0068】
第2表から、実施例の角質剥離用粘着シート1〜9を用いた場合は、糊残りもなく、比較例の角質剥離用粘着シート1r〜13rを用いた場合よりも角質剥離量が多かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、該支持体上に形成された粘着剤層を有する角質剥離用粘着シートであって、
前記粘着剤層の、32℃における貯蔵弾性率が2.0×10〜5.0×10Paであり、0℃における貯蔵弾性率が1.6×10〜4.0×10Paであることを特徴とする角質剥離用粘着シート。
【請求項2】
前記粘着剤層が、アクリル系重合体と、環球法による軟化点が80〜160℃のロジン系樹脂とを含む粘着剤組成物から形成されたものである請求項1に記載の角質剥離用粘着シート。
【請求項3】
前記アクリル系重合体が、炭素数6〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、カルボキシル基を有するモノマー、ヒドロキシル基を有するモノマー、及び側鎖に塩構造を有さない窒素原子を有するモノマーからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーとを含むモノマー組成物を共重合してなるものである請求項2に記載の角質剥離用粘着シート。
【請求項4】
前記モノマー組成物が、さらに、分子内に重合性不飽和基を複数有するモノマーを含むものである請求項3に記載の角質剥離用粘着シート。
【請求項5】
前記ロジン系樹脂の数平均分子量が300〜2000である請求項2に記載の角質剥離用粘着シート。
【請求項6】
前記ロジン系樹脂の使用割合が、アクリル系重合体100質量部に対して、10〜40質量部である請求項2に記載の角質剥離用粘着シート。

【公開番号】特開2012−10966(P2012−10966A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150475(P2010−150475)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】