説明

角質剥離用粘着体および美容方法

【課題】
皮膚に貼付し、剥離することにより、均一かつ効率よく角質層を剥離することができる角質剥離用粘着体、及び角質剥離用粘着体を用いた美容方法を提供する。
【解決手段】
支持体と、該支持体上に形成された粘着剤層を有する角質剥離用粘着体であって、前記粘着剤層が、少なくとも、架橋性ポリマー及び架橋剤を含有する粘着剤層形成用組成物から形成されてなり、かつ、JIS−Z0237に準拠して、引き剥がし速度0.1mm/秒で測定されたプローブタック値P1と、引き剥がし速度10mm/秒で測定されたプローブタック値P2との比P2/P1が、1.8以上であることを特徴とする角質剥離用粘着体、及びこの角質剥離用粘着体を用いた美容方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚に貼付し、剥離することにより、均一かつ効率よく角質層を剥離することができる角質剥離用粘着体、及び角質剥離用粘着体を用いた美容方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、皮膚の若返り効果を得る等の美容目的や薬物の経皮吸収の向上を目的として、皮膚の最外層である角質層を一定量除去するピーリングが行われている。
ピーリングの方法としては、ケミカルピーリング法やテープストリッピング法が知られている。
【0003】
ケミカルピーリング法は、特定の構造を有する有機酸を含有する皮膚外用剤を、角質層に塗布して、化学的な腐蝕によって角質層を剥離させる方法である。
しかしながら、このような有機酸を含有する皮膚外用剤を塗布する方法では、該外用剤が、皮膚に塗布されてから、洗い流されるまでの間に、皮膚のどの程度の深さまでを腐蝕するかを制御することが困難である。皮膚の腐蝕の程度が強いと、やけど等の皮膚障害が発生してしまうおそれがある。また、治療部位だけでなく、その周囲の健全な部分にも、薬剤が広がるおそれがある。
【0004】
テープストリッピング法は、支持体(シート)上に粘着剤層を有するテープ(角質剥離用粘着体ともいう。)を皮膚の適応部位に貼付し、これを所定時間経過後に剥離することにより、角質層を除去する方法である。
【0005】
従来、テープストリッピング法、およびこれに用いる角質剥離用粘着体としては、たとえば、下記のものが知られている。
(i)非特許文献1には、瞬間接着剤を支持体に塗布したシートにより角層を剥離したマウスにガンワクチンを塗布すると経皮的に腫瘍免疫が成立することが記載されている。
(ii)特許文献1には、イオントフォレーゼに好適な、シアノアクリレート系瞬間接着剤層を有する経皮投薬用皮膚処理材が記載されている。
(iii)特許文献2には、皮膚表皮角質層を物理的に破壊するために、粘着テープを表皮角質層面に接着させた後、剥離する粘着テープストリッピングが記載されている。また、用いる粘着テープとして、アクリル系ポリマー粘着剤、ゴム系ポリマー粘着剤を用いたものが例示されている。
(iv)特許文献3には、支持体の片面に、粘着剤及び皮膚刺激低減化剤を含有する粘着剤層が形成され、該粘着剤層が、所定の引き剥がし粘着力を有する皮膚処理用製剤が提案されている。また、用いる粘着剤として、アクリル系粘着剤やゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤が例示されている。
(v)特許文献4には、シート上に角質溶解薬及び角質機能改善薬を配合した粘着剤の層を設けてなる角質剥離シートが提案されている。また、用いる粘着剤として、アクリル系粘着剤やゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤が例示されている。
【0006】
しかしながら、上記文献に記載されている瞬間接着剤を支持体に塗布したシートを用いる場合、上記シートを皮膚に貼付する際には、目的とする皮膚以外の部位に誤って接着しないように細心の注意が必要であり、上記シートを皮膚に貼付した後には、瞬間接着剤が硬化するのを待たなければならず、またその硬化の程度の見極めは非常に困難であり、瞬間接着剤が皮膚に転着してしまうなどの不具合が生じ易い。また、上記文献に記載されている粘着シートによる薬物の経皮吸収の向上を目的とする場合、薬剤を効率よく経皮吸収させるためには、ある程度の厚さの角質層を除去する必要がある。そのためには、テープの貼付・剥離の操作を同一の場所で複数回繰り返し行わなければならず、患者の負担が大きく、作業性に欠ける場合があった。
【0007】
【非特許文献1】Proc.Natl.Acad.Sci.USA 2000 Jan.4;97(1):371−6
【特許文献1】特許第2820268号
【特許文献2】特開平10−316585号公報
【特許文献3】特開2003−81815号公報
【特許文献4】特開2005−200391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、剥離が必要な角質のみを、均一かつ効率よく除去することができる角質剥離用粘着体、及び角質剥離用粘着体を用いた美容方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、支持体と、該支持体上に形成された粘着剤層を有する角質剥離用粘着体について鋭意研究を重ねた。その結果、粘着剤層を架橋性アクリル系ポリマー及び架橋剤を含有する粘着剤層形成用組成物から形成し、かつ、該粘着剤層を、相対的に遅い引き剥がし速度で測定したプローブタック値P1と、相対的に速い引き剥がし速度で測定したプローブタック値P2との比P2/P1を特定値以上とすることにより、角質層を効率よく均一に剥離可能な角質剥離用粘着体が得られることを見出した。
【0010】
また、(a)適用部位に、美容成分を含む美容用組成物を適用した後、角質剥離用粘着体を適用部位に貼り付け、前記角質剥離用粘着体を前記適用部位から剥離すると、角質剥離効果を著しく高めることができること、及び、(b)前記角質剥離用粘着体を適用部位に貼り付けた後、前記角質剥離用粘着体を前記適用部位から剥離し、前記適用部位に美容成分を含む美容用組成物を適用すると、美容効果を著しく高めることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
かくして本発明の第1によれば、支持体と、該支持体上に形成された粘着剤層を有する角質剥離用粘着体であって、前記粘着剤層が、少なくとも、架橋性ポリマー及び架橋剤を含有する粘着剤層形成用組成物から形成されてなり、かつ、JIS−Z0237に準拠して、引き剥がし速度0.1mm/秒で測定されたプローブタック値P1と、引き剥がし速度10mm/秒で測定されたプローブタック値P2との比P2/P1が、1.8以上であることを特徴とする角質剥離用粘着体が提供される。
【0012】
本発明の角質剥離用粘着体においては、前記粘着剤層形成用組成物が、さらにオリゴマーを含有するのが好ましい。
また、本発明の角質剥離用粘着体においては、前記架橋性ポリマーが、アクリル系ポリマーであることが好ましい。
【0013】
本発明の第2によれば、角質剥離用粘着体を用いた美容方法であって、支持体と、該支持体上に形成された粘着剤層を有する角質剥離用粘着体を、適用部位に貼り付けた後、前記角質剥離用粘着体を前記適用部位から剥離する剥離工程と、前記適用部位に、美容成分を含む美容用組成物を適用する美容成分適用工程と、を含み、かつ前記粘着剤層が、少なくとも、架橋性ポリマーおよび架橋剤を含有する粘着剤層形成用組成物から形成されてなり、かつ、JIS−Z0237に準拠して、引き剥がし速度0.1mm/秒で測定されたプローブタック値P1と、引き剥がし速度10mm/秒で測定されたプローブタック値P2との比P2/P1が、1.8以上であることを特徴とする美容方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の角質剥離用粘着体は、剥離が必要な部位の角質を必要な厚さだけ、均一かつ効率よく除去することができる。
本発明の角質剥離用粘着体は、皮膚外用剤が長時間皮膚に接触して皮膚を腐蝕するというおそれがなく、やけど等の皮膚障害が発生するおそれがない。
本発明の角質剥離用粘着体は、剥離が必要な部位に貼付すればよいので、所望の部位のみの角質を確実に除去することができる。
本発明の角質剥離用粘着体は皮膚に対し安全であり、美容用のピーリング、薬剤の経皮吸収を目的としたピーリングに有用である。
また、本発明の美容方法によれば、本発明の角質剥離用粘着体の角質剥離効果を著しく高めることができ、適用部位に、美容成分を適用することによる美容効果を著しく高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
1)角質剥離用粘着体
本発明の角質剥離用粘着体は、支持体と、該支持体上に形成された粘着剤層を有する角質剥離用粘着体であって、前記粘着剤層が、少なくとも、架橋性ポリマー及び架橋剤を含有する粘着剤層形成用組成物から形成されてなり、かつ、JIS−Z0237に準拠して、引き剥がし速度0.1mm/秒で測定されたプローブタック値P1と、引き剥がし速度10mm/秒で測定されたプローブタック値P2との比P2/P1が、1.8以上であることを特徴とする。
【0016】
本発明の角質剥離用粘着体に用いる支持体としては、粘着剤層を担持して角質剥離用粘着体を形成できるものであれば、特に制約はなく、得られる角質剥離用粘着体の使用目的等を考慮して適宜選択することができる。
【0017】
用いる支持体の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系フィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/メタクリル酸共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル等のポリオレフィン系フィルム、ポリウレタン系フィルム、ポリスチレン系の熱可塑性エラストマーフィルム等の樹脂フィルム;各種の合成繊維及び/または天然繊維からなる織布、編布、不織布;上質紙、グラシン紙、コート紙等の紙;これらの積層体;等が挙げられる。
【0018】
支持体の厚さは、特に制限されないが、支持体が樹脂フィルムの場合には、通常5〜250μm、好ましくは10〜100μmであり、支持体が織布、不織布、紙等からなる場合には、通常10〜1000μm、好ましくは20〜500μmである。
【0019】
なお、支持体の粘着剤層が形成される側の面に、粘着剤層との密着性を高めるために、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。また、得られる角質剥離用粘着体を、運搬・保管に適した巻取体にする場合等においては、支持体の粘着剤層が形成されない側の表面を、シリコーン系剥離剤や長鎖アルキル化合物等によって剥離処理してもよい。
【0020】
本発明の角質層剥離用粘着体の粘着剤層は、少なくとも、架橋性ポリマー及び架橋剤を含有する粘着剤層形成用組成物から形成されてなる。
【0021】
架橋性ポリマーは、架橋可能な官能基を少なくとも一つ有するポリマーである。架橋性ポリマーとしては、架橋性(メタ)アクリル系ポリマー、架橋性ウレタン系ポリマー等が挙げられる。架橋性ウレタン系ポリマーは、特に限定されることなく使用することができ、ポリオールとイソシアネート化合物を用いて製造することができる。
【0022】
これらの中でも、より効果的に角質層を剥離可能な角質剥離用粘着体が得られることから、架橋性(メタ)アクリル系ポリマーが好ましい。ここで、(メタ)アクリル系ポリマーとは、メタクリル系ポリマーまたはアクリル系ポリマーであることを示す(以下にて同じ)。
【0023】
架橋性(メタ)アクリル系ポリマーとしては、
(i)架橋可能な官能基を有する(メタ)アクリル系モノマー(a1)の単独重合体;
(ii)架橋可能な官能基を有する(メタ)アクリル系モノマー(a1)の2種以上からなる共重合体;
(iii)架橋可能な官能基を有する(メタ)アクリル系モノマー(a1)と、架橋可能な官能基を有する(メタ)アクリル系モノマー(a1)と共重合可能で架橋可能な官能基を有さないその他のモノマー(b1)との共重合体;
(iv)架橋可能な官能基を有する(メタ)アクリル系モノマー(a1)と、架橋可能な官能基を有する(メタ)アクリル系モノマー(a1)と共重合可能で架橋可能な官能基を有するその他のモノマー(b2)との共重合体;
(v)架橋可能な官能基を有さないアクリル系モノマー(a2)と、架橋可能な官能基を有さないアクリル系モノマー(a2)と共重合可能で架橋可能な官能基を有するその他のモノマー(b2)との共重合体;等が挙げられる。
【0024】
架橋可能な官能基を有する(メタ)アクリル系モノマー(a1)としては、
アクリル酸;メタクリル酸;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;等が挙げられる。
【0025】
架橋可能な官能基を有さないアクリル系モノマー(a2)としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の、炭素数1〜18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート;フェニル(メタ)アクリレート、4−メチルフェニル(メタ)アクリレート、1−ナフチル(メタ)アクリレート等のアリール(メタ)アクリレート系モノマー;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート;等が挙げられる。
【0026】
架橋可能な官能基を有さないその他のモノマー(b1)としては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン等のα−オレフィン類;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類;ブタジエン、イソプレン等のジエン類;酢酸ビニル等のビニルエステル類;等が挙げられる。
これらの他のモノマーは一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
架橋可能な官能基を有するその他のモノマー(b2)としては、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸等のカルボキシル基含有モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル、脂環エポキシ基含有モノマー、ビニルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有モノマー;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート等のイソシアネート基含有モノマー;等が挙げられる。
これらは一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
本発明においては、これらの中でも、より本発明の目的にあった角質剥離用粘着体が得られることから、(v)架橋可能な官能基を有さないアクリル系モノマー(a2)と、架橋可能な官能基を有さないアクリル系モノマー(a2)と共重合可能で架橋可能な官能基を有するその他のモノマー(b2)との共重合体が好ましく、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能で架橋可能な官能基を有する他のモノマー(b2)との共重合体がより好ましく、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと架橋可能な官能基を有するビニルモノマーとの共重合体であるのが特に好ましい。また、前記架橋可能な官能基がカルボキシル基であることが特に好ましい。
【0029】
架橋性(メタ)アクリル系ポリマーを合成する際の、架橋可能な官能基を有するビニルモノマーの配合量は、全使用モノマーの2〜35モル%であるのが好ましい。架橋可能な官能基を有するビニルモノマーの配合量が2モル%未満では、架橋が不十分になり、35モル%を超えると、十分な角質剥離効果が得られない場合がある。
【0030】
架橋性ポリマーの数平均分子量(Mn)は、通常、300,000〜1,500,000、好ましくは350,000〜1,200,000、より好ましくは400,000〜1,000,000である。
【0031】
架橋性ポリマーの数平均分子量(Mn)が300,000未満では、得られる粘着剤の凝集力が不十分となり、糊残りが生じる場合がある。一方、数平均分子量(Mn)が1,500,000を超えると、高粘度となるため他の成分との均一な混合が困難となり、安定した物性の粘着剤が得られなくなるおそれがある。
ここで数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC分析)法によって測定し、標準ポリスチレンで換算した値とする(以下にて同じ)。
【0032】
用いる架橋剤としては、架橋性ポリマーに導入される官能基に対する反応性を有していればよく、例えば、エポキシ系架橋剤、金属塩系架橋剤、尿素系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、金属キレート系架橋剤、メラミン系架橋剤、アジリジン系架橋剤等、通常の粘着剤に使用される架橋剤が挙げられる。
これらの架橋剤は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
これらの中でも、トリレンジイソシアネート−3官能アルコール付加物、イソフォロンジイソシアネート−3官能アルコール付加物、ヘキサメチレンジイソシアネート−3官能アルコール付加物、トリレンジイソシアネート3量体、イソフォロンジイソシアネート3量体、ヘキサメチレンジイソシアネート3量体、ビュレット型ヘキサメチレンジイソシアネート3量体等のイソシアネート系架橋剤が、汎用性、物性の安定性の点で好適に用いられる。
【0034】
架橋剤の配合量は、架橋性ポリマー100質量部に対して、0.01〜15質量部であるのが好ましく、0.1〜5質量部であるのがより好ましい。架橋剤の配合量が0.01質量部未満では、十分に架橋させることができず、架橋剤の配合量が15質量部を超えると、架橋密度が過度に高くなり、粘着剤層の皮膚に対する濡れ性が著しく低下し、皮膚密着性、ひいては角質層剥離力が低くなる場合がある。
【0035】
前記粘着剤層形成用組成物は、前記架橋性ポリマー、架橋剤の他に、さらにオリゴマーを含有するのが好ましい。
【0036】
オリゴマーを含有させることにより、得られる粘着剤層の皮膚に対する濡れ性を向上させて皮膚密着性を高めることができる。このような角質剥離用粘着体は、好適な角質層剥離力を有する。
また、架橋性ポリマーとの相溶性の高いオリゴマーを用いることにより、粘着剤層形成用組成物に、後述する他の成分を添加した場合、これらの成分を組成物中に分散させ易くして、均一な角質剥離用粘着体を製造することができる。
【0037】
オリゴマーとしては、(メタ)アクリル系オリゴマー、ウレタン系オリゴマー等の、従来公知のオリゴマーを用いることができる。なかでも、(メタ)アクリル系モノマー由来の繰り返し単位を有するオリゴマーである(メタ)アクリル系オリゴマーが好ましく、ラクタム環、カルボキシル基、水酸基等の親水性基を有する(メタ)アクリル系オリゴマーがより好ましい。
【0038】
前記親水性基を有する(メタ)アクリル系オリゴマーとしては、ラクタム環、カルボキシル基、水酸基等の親水性基を有するビニルモノマーと(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合体であることが好ましい。
【0039】
ラクタム環を有するビニルモノマーとしては、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピペリドン、N−ビニル−ε−カプロラクタム等が挙げられる。なかでも、皮膚親和性が高いことから、N−ビニル−2−ピロリドンが好ましい。
【0040】
オリゴマーを合成する際の、前記親水性基を有するビニルモノマーの使用量は、全使用モノマーに対して5〜45モル%であるのが好ましく、10〜40モル%であるのがより好ましい。親水性基を有するビニルモノマーの使用量が5モル%未満では、得られる粘着剤層の皮膚に対する濡れ性が不十分で皮膚密着性、ひいては角質層剥離力が低くなるおそれがあり、45モル%を超えると、得られる粘着剤がゲル化により角質剥離用粘着体の製造または取り扱いが困難になるおそれがある。
【0041】
前記親水性基を有する(メタ)アクリル系オリゴマーの製造に用いる(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が2〜14のものが好ましい。具体的には、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸ラウリル等が挙げられる。これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0042】
用いるオリゴマーの数平均分子量(Mn)は、通常、4,000〜10,000、好ましくは5,000〜9,000である。数平均分子量(Mn)が4,000未満では、得られる組成物が過度に可塑化されて、角質剥離性能が低下する場合がある。一方、数平均分子量(Mn)が10,000を超えると、オリゴマーの粘度が過度に上昇して、架橋性ポリマーと均一に混合することが困難になったり、形成される粘着剤層の皮膚に対する濡れ性が低下して、皮膚密着性、ひいては角質剥離力が低下する場合がある。
【0043】
オリゴマーの配合量は、用いる架橋性ポリマーにもよるが、通常、架橋性ポリマー100質量部に対して、50〜700質量部、好ましくは80〜500質量部である。オリゴマーの配合量が50質量部未満であると、得られる粘着剤層の皮膚に対する濡れ性が著しく低下して、必要な粘着力が得られないおそれがあり、配合量が700質量部を超えると、粘着剤の凝集力が過度に低下して、皮膚に糊残りが生じたり、必要な粘着力が得られないおそれがある。
【0044】
粘着剤層形成用組成物は、非架橋性ポリマーをさらに含有していてもよい。
非架橋性ポリマーは、架橋可能な官能基を有しないポリマーである。架橋可能な官能基を有しないポリマーとしては、架橋可能な官能基を有しない(メタ)アクリル系ポリマー、架橋可能な官能基を有しないウレタン系ポリマー等が挙げられる。これらの中でも、架橋可能な官能基を有しない(メタ)アクリル系ポリマーが好ましい。
【0045】
非架橋性(メタ)アクリル系ポリマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体、またはビニルモノマーと(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合体が好ましく、ビニルモノマーと(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合体がより好ましく、ラクタム環を有するビニルモノマーと(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合体がさらに好ましい。
【0046】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、架橋性ポリマーの合成に用いるモノマーとして例示した(メタ)アクリル酸アルキルエステルと同様のものが挙げられる。ラクタム環を有するビニルモノマーとしては、オリゴマーの製造に用いるモノマーとして例示したラクタム環を有するビニルモノマーと同様のものが挙げられる。
【0047】
非架橋性ポリマーの数平均分子量(Mn)は、特に限定されないが、通常、300,000〜1,500,000、好ましくは350,000〜1,200,000、より好ましくは400,000〜1,000,000である。
【0048】
非架橋性ポリマーの数平均分子量(Mn)が300,000未満では、得られる粘着剤の凝集力が不十分となり、糊残りが生じる場合がある。一方、数平均分子量(Mn)が1,500,000を超えると、高粘度となるため他の成分との均一な混合が困難となり、安定した物性の粘着剤が得られなくなるおそれがある。
【0049】
非架橋性ポリマーを用いる場合、その配合量は、前記架橋性ポリマー100質量部に対して、50〜400質量部であるのが好ましく、100〜300質量部であるのがより好ましい。
【0050】
粘着剤層形成用組成物は、液状成分をさらに含有していてもよい。
液状成分は、角質に浸透し、角質を膨潤、軟化させるものである。これによって、皮膚から角質層を剥離する時の痛みを軽減することができる。
【0051】
液状成分の数平均分子量(Mn)は、特に限定されないが、角質への浸透性を確保するために、4,000未満であるのが好ましく、90〜3,000であるのがより好ましい。なお、低分子化合物の数平均分子量(Mn)は、分子の相対質量から求められる。
【0052】
また、液状成分のpHは6〜8であるのが好ましい。pHがこの範囲を外れると、皮膚を腐食するおそれが生じ、皮膚に対する安全性が低下する。
【0053】
液状成分は、常温常圧下で揮発しないものであることが好ましい。具体的には、20℃における蒸気圧が、通常1000Pa未満、好ましくは10Pa未満である。液状成分が揮発性のものであると、角質剥離用粘着体の保管時等に、粘着剤層から液状成分が揮発しないように、角質剥離用粘着体を密封する等の対処が必要になる。
【0054】
液状成分の具体例としては、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、エチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の多価アルコール;カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸等の脂肪酸;オリーブ油、ツバキ油、ひまし油、ベニバナ油、コーン油等の脂肪油;カプリン酸メチル、カプロン酸メチル、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、ステアリン酸メチル、パルミチン酸イソプロピル、ラウリン酸、イソプロピル、パルミチン酸イソオクチル、ステアリン酸イソオクチル、セバシン酸ジエチル等の脂肪酸エステル;流動パラフィン、スクワレン、スクワラン等の炭化水素油;液状界面活性剤等が挙げられる。これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0055】
これらの中でも、保湿性、安全性により優れることから、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の多価アルコールが好ましい。
【0056】
液状成分を用いる場合の液状成分の配合量は、特に限定されないが、粘着剤層形成用組成物全体に対して、2.5〜40質量%であるのが好ましく、5〜30質量%であることがより好ましい。液状成分の配合量が2.5質量%未満であると、液状成分を用いる効果が低く、角質の剥離時に痛みが発生するおそれがある。一方、液状成分の配合量が40質量%を超えると、粘着剤の凝集力が低下して、糊残りが生じるおそれがある。
【0057】
粘着剤層形成用組成物は、さらに、本発明の効果を逸脱しない範囲で、得られる角質剥離用粘着体の目的に合わせ、その他の成分を含有していてもよい。
その他の成分としては、薬剤、酸化防止剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤、隠蔽剤、可塑剤、ワックス、着色剤、無機フィラー、有機フィラー、増量剤、カップリング剤等の各種添加剤が挙げられる。
【0058】
粘着剤層形成用組成物は、上記した架橋性ポリマー、架橋剤、並びに、所望により、オリゴマー、非架橋性ポリマー、液状成分、その他の成分及び有機溶媒を、常法に従って適宜混合して調製すればよい。
【0059】
ここで用いる有機溶媒としては、トルエンなどの芳香族炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタンなどの脂肪族炭化水素系溶媒;シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素系溶媒;及びこれらの溶媒の2種以上からなる混合溶媒;等が挙げられる。
【0060】
有機溶媒の使用量は、特に限定されないが、粘着剤層形成用組成物全体に対して、通常5〜80質量%、好ましくは10〜70質量%、より好ましくは20〜60質量%である。
【0061】
粘着剤層は、以上のようにして得られる粘着剤層形成用組成物から形成される。例えば、粘着剤層形成用組成物を、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセトン等の有機溶剤に溶解し、常法により支持体に塗布した後、乾燥させることにより、支持体上に均一に粘着剤層を形成することができる。
【0062】
粘着剤層形成用組成物の塗布は、既存の塗布装置を用いて行うことができる。塗布装置としては、グラビアコーター、マイヤーバーコーター、ロールコーター、ナイフコーター、ダイコーター、スクリーンコーター等が挙げられる。
【0063】
得られる粘着剤層の厚みは、効果的に角質層を剥離する観点から、5〜300μmであるのが好ましく、10〜200μmであるのがより好ましい。
【0064】
本発明の角質剥離用粘着体には、上記のようにして形成された粘着剤層上に、剥離層が形成されていてもよい。剥離層が形成された角質剥離用粘着体によれば、保管・運搬中、角質剥離を行う直前まで、剥離層により粘着剤層を有効に保護することができる。
【0065】
剥離層の材料としては、上質紙、グラシン紙、コート紙、ポリエチレンラミネート紙、ポリプロピレンラミネート紙等の紙類;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系フィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系フィルム等の合成樹脂フィルム;等を使用することができる。
【0066】
また、上記剥離層の材料である紙類、樹脂フィルムは、所望により、剥離層の片面または両面に、シリコーン樹脂等により剥離処理が施されたものであってもよい。
【0067】
上記剥離層付き角質剥離用粘着体を製造する方法としては、i)前記のように支持体上に粘着剤層形成用組成物を塗布、乾燥して粘着剤層を形成し、形成された粘着剤層上に剥離層をラミネートする方法、ii)剥離層上に、i)と同様にして、粘着剤層形成用組成物を塗布、乾燥して粘着剤層を形成し、形成された粘着剤層上に支持体をラミネートする方法等が挙げられる。
【0068】
本発明の角質剥離用粘着体は、その粘着層が、JIS−Z0237に準拠して、引き剥がし速度0.1mm/秒で測定されたプローブタック値P1と、引き剥がし速度10mm/秒で測定されたプローブタック値P2との比P2/P1は、1.8以上のものである。
粘着層のP2/P1の値を1.8以上のものとすることにより、角質層を効率よく均一に剥離可能な角質剥離用粘着体を得ることができる。
【0069】
粘着体のプローブタック値は、垂直に引き剥がすのに要する力の大きさを示すものである。本発明の角質剥離用粘着体においては、引き剥がし速度が遅い場合のプローブタック値P1に対し、引き剥がし速度が速い場合のプローブタック値P2が、1.8以上と大きいため、皮膚に対して高い初期接着力を有すると同時に、短時間の貼付で、効果的に角質層を除去することができる。
【0070】
角質剥離用粘着体の前記P2/P1の値を1.8以上とするには、粘着剤層形成用組成物に用いる架橋性ポリマーや架橋剤等の、種類、分子量、Tg、配合量等を、半経験的に適宜定めればよい。例えば、粘着剤層形成用組成物にオリゴマーを用いる場合には、ビニルピロリドン等の親水性基を有するモノマーの使用量を増やすことにより、前記P2/P1の値を容易に1.8以上とすることができる。但し、増やし過ぎると、用いる架橋性ポリマーと混ざりにくくなる場合がある。
【0071】
このような物性を有する本発明の角質剥離用粘着体によれば、均一にかつ効率よく角質層を除去することができる。すなわち、一度の貼付・剥離で、剥離する必要のある厚さの角質層をムラなく均一に剥離することができるので、何度も繰り返し貼付・剥離する必要がなく、皮膚を傷めることがなく、作業効率にも優れる。
【0072】
均一にかつ効率よく角質層が除去されることは、角質層残存率(%)を調べることで、確認することができる。
【0073】
角質層残存率(%)は、例えば、以下に示すように、未処理の角質層の厚みと、処理後に剥離されずに残存する角質層の厚みとを測定することにより、算出することができる。
【0074】
先ず、被験者の上腕内側部の皮膚の粘着体貼付予定部位を、水で濡らしたタオルで軽く拭き、20分後、その部位の角質層の厚み(角質厚)を、高感度角質膜厚・水分計を用いて測定する。
【0075】
同様に、上腕内側部の皮膚を、水で濡らしたタオルで軽く拭き、20分後、そこに、角質剥離用粘着体を、粘着剤層が皮膚に接触するように貼付し、5分放置後、所定の力、速度で剥離する。角質剥離用粘着体を剥離した皮膚部位を、水で濡らしたタオルで軽く拭き、20分間放置後、その部位の角質厚を、高感度角質膜厚・水分計を用いて測定する。
未処理時の角質厚に対する、処理後の角質厚の値が、角質層残存率(%)となる。本発明の角質剥離用粘着体の角質層残存率(%)は、好ましくは73%以下、より好ましくは60%以下である。
【0076】
2)美容方法
本発明の美容方法は、角質剥離用粘着体を用いるものであって、支持体と、該支持体上に形成された粘着剤層を有する角質剥離用粘着体を、適用部位に貼り付けた後、前記角質剥離用粘着体を前記適用部位から剥離する剥離工程と、前記適用部位に、美容成分を含む美容用組成物を適用する美容成分適用工程と、を含み、かつ前記粘着剤層が、少なくとも、架橋性ポリマーおよび架橋剤を含有する粘着剤層形成用組成物から形成されてなり、かつ、JIS−Z0237に準拠して、引き剥がし速度0.1mm/秒で測定されたプローブタック値P1と、引き剥がし速度10mm/秒で測定されたプローブタック値P2との比P2/P1が、1.8以上であることを特徴とする。
【0077】
(1)剥離工程
剥離工程は、支持体と、該支持体上に形成された粘着剤層を有する角質剥離用粘着体を、適用部位に貼り付けた後、前記角質剥離用粘着体を前記適用部位から剥離する工程である。このように実施することにより、均一かつ効率よく角質を剥離することができる。
【0078】
用いる角質剥離用粘着体としては、支持体と、該支持体上に形成された粘着剤層を有し、かつ前記粘着剤層が、少なくとも、架橋性ポリマーおよび架橋剤を含有する粘着剤層形成用組成物から形成されてなり、かつ、JIS−Z0237に準拠して、引き剥がし速度0.1mm/秒で測定されたプローブタック値P1と、引き剥がし速度10mm/秒で測定されたプローブタック値P2との比P2/P1が、1.8以上のものである。具体的には、本発明の角質剥離用粘着体である。
【0079】
角質剥離用粘着体を貼付した後剥離するまでの手順を、以下に詳細に説明する。
まず、角質剥離用粘着体の粘着剤層を、適用部位に貼り付け、角質剥離用粘着体を5秒〜10秒程度圧着保持する。その後、角質剥離用粘着体を剥離するまでの時間は、適用部位の状態、貼付場所、粘着体の種類等にもよるが、通常数秒から数十分、好ましくは1〜30分である。所定時間圧着保持後に、適度に時間をおいて角質剥離用粘着体を剥離することにより、十分に粘着剤を皮膚表面に密着させることができ、効率的でムラのない角質剥離を実施することができる。
【0080】
剥離工程を実施するにあたり、剥離箇所や使用目的に応じて、角質剥離の回数を調節することが好ましい。すなわち、剥離箇所や使用目的に応じて、所望の角質剥離を実施することが好ましい。
【0081】
刺激に対して比較的過敏な部位(顔面、首筋等)の同一箇所に適用する場合は、角質剥離の回数は、1回が好ましく、多くても3回程度に抑えることが好ましい。この理由は、刺激に対して比較的過敏な部位(顔面、首筋等)の同一箇所に対して、角質剥離を頻繁に実施すると、必要以上に角層を除去してしまい、角質剥離後の皮膚が、外的刺激に対して過敏になったり、乾燥肌になったりする場合があるためである。
【0082】
また、例えば、角層が厚い部位(足裏、肘部、膝部等)に適用する場合は、角質剥離の回数は、1回〜複数回であることが好ましい。
【0083】
(2)美容成分適用工程
美容成分適用工程は、適用部位に、美容成分を含む美容用組成物を適用する工程である。
美容成分としては、保湿剤、美白成分、消炎剤、収斂剤、角質柔軟剤、育毛剤、日焼け止め及び/又は日焼け防止化合物、各種ビタミン類、コラーゲン、アミノ酸、セラミド等が挙げられる。
【0084】
用いる美容用組成物は、美容成分を必須成分として含むものであって、皮膚の手入れ及び/又は皮膚の治療に使用される美容用組成物や、老化した皮膚及び/又はストレスを受けた皮膚の手入れ/又は治療に使用される美容用組成物などが挙げられる。
【0085】
美容用組成物の形態としては、液、クリーム、ジェル、噴霧剤等が挙げられる。
美容用組成物を適用する方法としては、美容用組成物を、適用部位に直接塗布したり、含浸させたり、ミスト状に噴霧する方法が挙げられる。
【0086】
また、美容用組成物を適用する適用部位としては、美容用組成物による手入れ及び/又は治療が必要とされる部位であれば、特に限定されない。例えば、顔面、腕部、脚部、足部などが挙げられる。
【0087】
本発明において、美容用組成物の適用は、目的に応じて、(i)剥離工程の前工程、(ii)剥離工程の後工程、あるいは、(iii)剥離工程の前工程及び後工程として実施することができる。
【0088】
例えば、美容成分適用工程を、剥離工程の前工程として実施する場合、美容成分として角質柔軟成分を含む液を適用することができる。したがって、次工程の角質剥離を効果的に実施することができるようになり、角質剥離による皮膚への過剰な刺激を低減することができる。
【0089】
また、美容成分適用工程を、剥離工程の後工程として実施する場合、目的に応じた美容成分を付与することができる。すなわち、角質剥離をした部位に、美容成分を迅速に適用することにより、美容成分の作用を効果的に促進することができる。
【0090】
以上のように、本発明の美容方法によれば、本発明の角質剥離用粘着体の角質剥離効果を著しく高めることができ、適用部位に、美容成分を適用することによる美容効果を著しく高めることができる。
【0091】
本発明の美容方法を実施するにあたり、剥離箇所や使用目的に応じて、実施頻度を調節することが好ましい。
【0092】
例えば、角層が厚い部位(足裏、肘部、膝部等)に適用する場合は、本発明の美容方法を、1週間あたり3回以上の頻度で実施することが好ましい。このように定期的に角質剥離を実施することで、効率的に角質剥離を実施することができるとともに、角層のターンオーバー(新陳代謝)を促進することができる。
【0093】
一方、刺激に対して比較的過敏な部位(顔面、首筋等)の同一箇所に適用する場合は、例えば、1週間あたり2回以下の頻度で実施することが好ましい。刺激に対して比較的過敏な部位(顔面、首筋等)の同一部分に対して、角質剥離を1週間あたり3回以上実施すると、必要以上に角質を除去してしまい、角質剥離後の皮膚が、外的刺激に対して過敏になったり、乾燥肌になったりするおそれがある。
【実施例】
【0094】
以下、本発明を、実施例及び比較例によりさらに詳細に説明する。本発明は、これらの実施例によって何ら制限されない。
【0095】
(実施例1)
下記に示す架橋性ポリマー、非架橋性ポリマー、オリゴマー、架橋剤を混合し、粘着剤層形成用組成物Aを調製した。
【0096】
架橋性ポリマー:アクリル酸2−エチルヘキシル(以下、「2EHA」という。)とアクリル酸(以下、「AA」という。)との共重合体(2EHA:AA=80:20(モル比)、Mn=850,000、固形分:36質量%、溶媒:酢酸エチル)27.8質量部 非架橋性ポリマー:2EHAとN−ビニル−2−ピロリドン(以下、「NVP」という。)との共重合体(2EHA:NVP=88:12(モル比)、Mn=850,000、固形分:45質量%、溶媒:酢酸エチル)44.4質量部
オリゴマー:2EHAとNVPとの共重合体(2EHA:NVP=80:20(モル比)、Mn=6,000、固形分:98質量%)31.6質量部
架橋剤:イソシアネート系架橋剤(商品名:コロネートHL、固形分:75質量%、日本ポリウレタン工業社製)0.2質量部
【0097】
この混合溶液Aを、剥離フィルム(SP−PET381031、リンテック社製)上に、乾燥後(100℃、3分)の塗布量が35g/mになるように塗布し、粘着剤層を形成した。
さらに、形成された粘着剤層上に、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムをラミネートし、剥離フィルム付き角質剥離用粘着体(シート)Aを作製した。
【0098】
(実施例2)
実施例1において、オリゴマーとして、2EHAとNVPとの、2EHA:NVP=80:20(モル比)である共重合体(Mn=6,000、固形分:98質量%)の代わりに、2EHAとNVPとの、2EHA:NVP=88:12(モル比)である共重合体(Mn=6,000、固形分:98質量%)を用いた以外は、実施例1と同様な方法で、剥離フィルム付き角質剥離用粘着体(シート)Bを作製した。
【0099】
(実施例3)
実施例1において、粘着剤層形成用組成物を調製する際に、グリセリン(ADEKA社製)20質量部を添加した以外は、実施例1と同様な方法で、剥離フィルム付き角質剥離用粘着体(シート)Cを作製した。
【0100】
(実施例4)
実施例1において、オリゴマーとして、2EHAとNVPとの、2EHA:NVP=80:20(モル比)である共重合体(Mn=6,000、固形分:98質量%)の代わりに、2EHAとAAとの、2EHA:AA=88:12(モル比)である共重合体(Mn=6,000、固形分:98質量%)を用いた以外は、実施例1と同様な方法で、剥離フィルム付き角質剥離用粘着体(シート)Dを作製した。
【0101】
(実施例5)
粘着剤層形成用組成物を、ウレタン粘着剤(SP−205、東洋インキ社製)100質量部と、イソシアネート系架橋剤(サイアバインT−501B、固形分:75質量%、東洋インキ製造社製)0.25質量部とを混合して調製した以外は、実施例1と同様にして、剥離フィルム付き角質剥離用粘着体(シート)Eを作製した。
【0102】
(実施例6)
粘着剤層形成用組成物を、2−EHAとアクリル酸ブチル(以下、「BA」という。)とAAとの、2EHA:BA:AA=40:60:0.55(質量比)である共重合体(Mn=200万、固形分:55質量%)100質量部と、イソシアネート系架橋剤(コロネートHL、固形分:75質量%、日本ポリウレタン工業製)0.2質量部とを混合して調製した以外は、実施例1と同様にして、剥離フィルム付き角質剥離用粘着体(シート)Fを作製した。
【0103】
(比較例1)
角質剥離用粘着体として、ニチバン社製のセロハンテープ(角質剥離用粘着体(シート)Gとする。)を用意した。なお、セロハンテープの粘着剤の主成分は天然ゴムであった。
【0104】
(比較例2)
粘着剤層形成用組成物を、BAとメタクリル酸メチル(以下、「MMA」という。)とAA、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(以下、「HEA」という。)との、BA:MMA:AA:HEA=97.5:2.5:2:0.2(質量比)である共重合体(Mn=200万、固形分:35質量%)100質量部と、イソシアネート系架橋剤(BHS8515、固形分:37.5質量%、東洋インキ製造社製)1質量部とを混合して調製した以外は、実施例1と同様にして、剥離フィルム付き角質剥離用粘着体(シート)Hを作製した。
【0105】
(比較例3)
粘着剤層形成用組成物を、BAとAAとの、BA:AA=90:10(質量比)である共重合体(Mn=100万、固形分:35質量%)100質量部と、イソシアネート系架橋剤(BHS8515、固形分:37.5質量%、東洋インキ社製)2質量部とを混合して調製した以外は、実施例1と同様にして、剥離フィルム付き角質剥離用粘着体(シート)Iを作製した。
【0106】
実施例1〜6、比較例1〜3で得られた角質剥離用粘着体(シート)A〜Iを用いて、次に示す試験1〜3を行った。試験結果を、下記第1表にそれぞれ示す。
なお、実施例1〜6、比較例2,3の剥離フィルム付き角質剥離用粘着体の試験は、剥離フィルムを剥がしてから行った。
【0107】
(試験1)
JIS Z0237(その他の試験)に準拠し、引き剥がし速さ0.1mm/秒と、10mm/秒での、プローブタック値(P1,P2)を測定し、P2/P1値を算出した。
【0108】
(試験2)
上腕内側部の皮膚(試験予定部位)を、水で濡らしたタオルで軽く拭いた。20分後、その部位の角質厚を、高感度角質膜厚・水分計(高感度角質膜厚・水分計ASA−MX、アサヒバイオメッド社製)を用いて5回測定し、その平均値を、未処理時における角質厚とした。
【0109】
同様に、上腕内側部の皮膚(試験予定部位)を、水で濡らしたタオルで軽く拭いた。20分後、そこに、25mm×40mmに裁断した角質剥離用粘着体のサンプルを、粘着剤層が皮膚に接触するように貼付し、5分放置後、所定の力、速度で剥離した。サンプルを剥離した皮膚部位を、水で濡らしたタオルで軽く拭き、20分間放置した後、その部位の角質厚を、前記高感度角質膜厚・水分計を用いて5回測定し、その平均値を、処理後の角質厚とした。これらの結果から、未処理時における角質厚を基準(100)とする角質層残存率(%)を算出した。
【0110】
(試験3)
JIS Z0237に準じて粘着力(N/25mm)を測定した。なお、被着体としてはベークライト板(タイコーライトFL1063、ユーコー商会社製)を使用し、貼付時間は5分とした。
【0111】
【表1】

【0112】
実施例1〜6の角質剥離用粘着体を用いた場合は、比較例1〜3の角質剥離用粘着体を用いる場合に比して角質層残存率が低く、すなわち角質剥離量が多かった。
【0113】
(実施例7)
パネラー8名に対し、実施例1の角質剥離用粘着体(シート)Aを提供して、各パネラー自身によって、各パネラー自身の眼もと部に対して、角質剥離用粘着体(シート)Aによる角質剥離後に、美容成分を含む液(コーセー社製、製品名「薬用 雪肌精」)を塗布する美容方法の実施を依頼した。角質剥離用粘着体(シート)の使用は週に一回とし、計8週間連続して試験を行った。
【0114】
(実施例8〜12)
実施例1の角質剥離用粘着体(シート)Aに代えて、実施例2〜6の角質剥離用粘着体(シート)B〜Fを使用した以外は実施例7と同様にして美容方法の実施を依頼した。
【0115】
(比較例4〜6)
実施例1の角質剥離用粘着体(シート)Aに代えて、比較例1〜3の角質剥離用粘着体(シート)G〜Iを使用した以外は実施例7と同様にして美容方法の実施を依頼した。
【0116】
上記実施例7〜12および比較例4〜6で行った美容方法について、以下の評価基準で評価を行い、評価結果を下記第2表にそれぞれ示す。
【0117】
[評価方法]
(試験4)連続使用における保湿向上効果確認試験
角質剥離用粘着体(シート)貼付前における、角質剥離用粘着体(シート)貼付部位の皮膚水分量を、水分計(登録商標:Corneometer CM825、Courage+Khazaha社製)で測定した。
測定は温度20℃、湿度40%の恒温・恒湿室で行い、パネラーには測定前に20分程度恒温・恒湿室で安静にしてもらった後に行った。角質剥離用粘着体(シート)を使用する前のパネラーの両目もと部の水分量を各5点測定し、平均した値を処理前の皮膚水分量とした。得られた測定値を(W1)とする。
【0118】
角質剥離用粘着体(シート)を貼付、剥離した後、美容成分を含む液(株式会社コーセー社製、製品名「薬用 雪肌精」)を左右均等に塗布する美容方法を、週一回、計8週間実施した後、同様に貼付部分の皮膚水分量を上記と同様にして測定した。得られた測定値を(W2)とする。
試験前後の水分量を以下の式を用いて比較し、保湿向上率とした。
【0119】
【数1】

【0120】
保湿向上効果の評価は以下の基準で行った。なお、変化率が100%の場合、試験前後で皮膚水分量に変化がないと解釈でき、変化率の値が大きいほど皮膚水分率が増加し、美容液の効果が高められたことを表す。
【0121】
1:保湿向上率100%以下、2:保湿向上率100〜110%、3:保湿向上率110〜125%、4:保湿向上率125〜140%、5:保湿向上率140%以上
【0122】
また、保湿の効果感について、パネラーに以下の評価基準によるアンケートをとった。
1:保湿感は変化していない。
2:保湿感はわずかに向上した。
3:保湿感は向上した。
4:保湿感は著しく向上した。
以上の結果を第2表に示した。
【0123】
(試験5)連続使用におけるメラニン量減少効果確認試験
角質剥離用粘着体(シート)を貼付前における角質剥離用粘着体(シート)貼付部位の皮膚水分量を、メラニン・紅斑測定装置(登録商標:Mexameter MX18、Courage+Khazaha社製)で測定した。
測定は温度20℃、湿度40%の恒温・恒湿室で行い、パネラーには測定前に20分程度恒温・恒湿室で安静にしてもらった後に行った。角質剥離用粘着体(シート)を使用する前のパネラーの両目もと部のメラニン値を各5点測定し、平均した値を処理前のメラミン量とした。得られた測定値をM1とする。
【0124】
角質剥離用粘着体(シート)を貼付し、剥離した後、美容成分を含む液(コーセー社製、製品名「薬用 雪肌精」)を左右均等に塗布する美容方法を、週一回、計8週間実施した後、貼付部分のメラニン値を同様にして測定した。得られた測定値をM2とする。
試験前後のメラニン量を以下の式を用いて比較し、メラニン量変化率とした。
【0125】
【数2】

【0126】
メラミン量減少効果の評価は以下の基準で行った。なお、変化率が100%の場合、試験前後でメラニン量に変化がないと解釈でき、変化率の値が小さいほどメラニン量が減少し、美容液の効果が高められたことを表す。
1:110%以上、2:110〜95%、3:95〜85%、4:85〜75%、5:75%以下
【0127】
【表2】

【0128】
第2表より、実施例1〜6の角質剥離用粘着体を使用した場合(実施例7〜12)は、比較例1〜3の角質剥離用粘着体を使用した場合(比較例4〜6)に比して、美容効果(保湿向上効果及びメラニン量減少効果)が著しく高められることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、該支持体上に形成された粘着剤層を有する角質剥離用粘着体であって、前記粘着剤層が、少なくとも、架橋性ポリマーおよび架橋剤を含有する粘着剤層形成用組成物から形成されてなり、かつ、JIS−Z0237に準拠して、引き剥がし速度0.1mm/秒で測定されたプローブタック値P1と、引き剥がし速度10mm/秒で測定されたプローブタック値P2との比P2/P1が、1.8以上であることを特徴とする角質剥離用粘着体。
【請求項2】
前記粘着剤層形成用組成物が、さらにオリゴマーを含有することを特徴とする請求項1に記載の角質剥離用粘着体。
【請求項3】
前記架橋性ポリマーが、アクリル系ポリマーであることを特徴とする請求項1または2に記載の角質剥離用粘着体。
【請求項4】
角質剥離用粘着体を用いた美容方法であって、
支持体と、該支持体上に形成された粘着剤層を有する角質剥離用粘着体を、適用部位に貼り付けた後、前記角質剥離用粘着体を前記適用部位から剥離する剥離工程と、
前記適用部位に、美容成分を含む美容用組成物を適用する美容成分適用工程と、を含み、
かつ前記粘着剤層が、少なくとも、架橋性ポリマーおよび架橋剤を含有する粘着剤層形成用組成物から形成されてなり、かつ、JIS−Z0237に準拠して、引き剥がし速度0.1mm/秒で測定されたプローブタック値P1と、引き剥がし速度10mm/秒で測定されたプローブタック値P2との比P2/P1が、1.8以上であることを特徴とする美容方法。

【公開番号】特開2009−102304(P2009−102304A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−212122(P2008−212122)
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】