説明

解体切断機

【課題】ジョーの先端部に設けられたチップ嵌合凹部の外側壁の変形を防止し、ジョーの耐久性の向上を図る。
【解決手段】固定ジョーに対して開閉自在に設けられた可動ジョー4の先端部両側にチップ嵌合凹部22を形成し、そのチップ嵌合凹部22のそれぞれに、固定ジョーの先端部とで被切断物Aを剪断する剪断チップ23を嵌合してボルト30の締め付けにより固定する。チップ嵌合凹部22の外側壁32に剪断チップ23の内側面23aに対して外向きに傾斜する第1平坦面33と、その第1平坦面33に対して逆向きに傾斜する傾斜面34と、剪断チップ23の内側面23aにほぼ平行する第2平坦面35を設け、一方、剪断チップ23には、衝合面38と、第1平坦面33に対向する制動面39を設け、被切断物の切断時に、剪断チップ23に負荷される剪断反力を第1平坦面33の面全体で受けるようにして、外側壁32の先端部に応力が集中するのを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、解体土木作業の際に用いられる解体切断機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、鉄骨・鉄筋コンクリート建造物の解体作業を行なう場合、パワーショベル等の作業機械におけるアーム先端部に解体切断機を取付け、その解体切断機により建造物を圧砕し、鉄筋や鉄骨等の鋼材を細かく切断するようにしている。
【0003】
解体切断機として、固定ジョーに対して可動ジョーを開閉自在とした片開き式と、一対のジョーを開閉自在とした両開き式のものとが存在する。いずれの解体切断機においても、一対のジョーの閉鎖時に互いに重なり合う裏面の内側縁に沿って剪断ブレードを取付け、その剪断ブレードにより被切断物を剪断により切断するようにしているものが大半である。
【0004】
ここで、一対のジョーの互いに対向する内側面が1つの平面で形成されて裏面の内側縁が一直線とされ、剪断ブレードがその直線状の内側縁に沿う取付けであると、被切断部の切断の際に、その被切断物に逃げが生じ、H形鋼や角パイプのような断面形状の大きな鋼材の場合、良好に切断することができない。
【0005】
そこで、特許文献1に記載された解体切断機においては、固定ジョーおよびその固定ジョーに対して開閉自在とされた可動ジョーの内側面を相反する方向に傾斜する2つの平坦面で形成して、上記固定ジョーと可動ジョーの裏面の内側縁を中央部が窪むV字状とし、そのV字状内側縁に沿って剪断ブレードを取付けるようにしている。
【0006】
また、可動ジョーの表裏両面の先端部に、その可動ジョーの内側面及び先端面で開口する一対のチップ嵌合凹部を形成し、そのチップ嵌合凹部のそれぞれに剪断チップを嵌合してねじ止めし、一方、固定ジョーの先端部には上記剪断チップに対向して剪断ブレードを取付け、その剪断ブレードと剪断チップによる剪断および上記裏面に設けられた対向一対の剪断ブレードによる剪断とで被切断物を切断するようにしている。
【0007】
ここで、図15(a)、(b)は、上記特許文献1に記載された解体切断機の可動ジョーを示し、支点軸80を中心にして揺動可能な可動ジョー81の裏面内側縁部に2枚の剪断ブレード82をV形の配置として可動ジョー81にボルト止めし、可動ジョー81の表裏両面の先端部に形成された一対のチップ嵌合凹部83のそれぞれには剪断チップ84を嵌合してボルト85の締付けにより固定し、上記剪断チップ84による被切断物の剪断時に、その剪断チップ84に負荷される剪断反力Fをチップ嵌合凹部83の外側壁83aおよびボルト85で受けるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2006−519089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記特許文献1に記載の解体切断機においては、チップ嵌合凹部83の外側壁83aが、剪断チップ84の内側面に略平行する平坦面であるため、被切断物の切断初期に、剪断チップ84の先端部に作用する剪断反力Fによって剪断チップ84は上記外側壁83aの先端pを中心にして回転モーメントが負荷されることになり、上記先端pに応力が集中する。このとき、一般的に、可動ジョー81は剪断チップ84の硬度より低い金属で形成されているため、上記外側壁83aの先端pが局部的に塑性変形し易く、耐久性に問題がある。
【0010】
また、先端pの変形が大きくなると、外側壁83aで上記回転モーメントを受けることができなくなり、その結果、ボルト85に剪断反力Fが作用し、そのボルト85が破損する可能性がある。さらに、先端pの変形に伴ってボルト締付け部に緩みやガタが生じると、被切断物の剪断時に、剪断チップ84に作用する回転モーメントを上記先端pやボルト85で受けるため、先端pの変形やボルト85の折損を一気に助長する結果となる。また、変形した先端pの補修にも手間がかかる。
【0011】
この発明の課題は、ジョーの先端部に設けられたチップ嵌合凹部における外側壁の先端部の変形を防止してジョーの耐久性の向上とボルトの折損を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、第1の発明においては、相対的に開閉自在とされ、閉鎖方向への揺動時に内側面の先端から中央部に向けて交わり始める一対のジョーを有し、一方のジョーの表裏両面の先端部に、そのジョーの先端面および内側面で開口するチップ嵌合凹部を形成し、そのチップ嵌合凹部のそれぞれに、一方のジョーの内側面先端部を覆う突出部を有し、その突出部を含む内側面の外周縁が剪断刃とされた一対の剪断チップのそれぞれを嵌合してボルト止めし、前記他方のジョーには、剪断チップの剪断刃に対向して剪断ブレードを取付け、その剪断ブレードと剪断チップとで被切断物を剪断するようにした解体切断機において、前記チップ嵌合凹部のジョー内側面の開口と対向する外側壁に、前記剪断チップの内側面に対して外向きに傾斜する第1平坦面と、その第1平坦面の後端側に剪断チップの内側面にほぼ平行する第2平坦面を形成して、その第1平坦面と第2平坦面の連設部位に屈曲部を設け、前記剪断チップには、前記第2平坦面に面衝合する衝合面と、前記第1平坦面に対向し、前記屈曲部を中心にして衝合面が第2平坦面から離れる方向に剪断チップが回転した際に前記第1平坦面に全面接触する制動面を設け、前記剪断チップにおける背面の外周部には、剪断チップの内側面の中途から後端方向に延びる縦向き切欠部と、その縦向き切欠部の後端に連続して外側面に至る横向き切欠部とを形成し、前記チップ嵌合凹部のチップ衝合面には縦向き切欠部および横向き切欠部に嵌り込む連続したL字状の突出部を設けた構成を採用したのである。
【0013】
ここで、一対のジョーは、一方が固定され、その固定ジョーに対して他方が開閉自在とされたものであってもよく、あるいは、一対のジョーのそれぞれが開閉自在とされたものであってもよい。
【0014】
上記の構成からなる解体切断機において、一対のジョーを閉じ、剪断チップと剪断ブレードとで被切断物を剪断するとき、上記一対のジョーは先端から交わり始めるため、H形鋼や板体等の幅寸法の大きな被切断物の剪断の際には、剪断チップの先端に剪断反力が作用し、剪断チップには、屈曲部を中心にして衝合面が第2平坦面から離れる方向の回転モーメントが負荷される。
【0015】
このとき、剪断チップの制動面が第1平坦面に対して全面接触し、剪断チップに負荷される回転モーメントは、上記第1平坦面の面全体で支持されることになる。また、第1平坦面および縦向き切欠部に嵌合する突出部が剪断チップの回転方向で対向しているため、剪断チップに負荷される回転モーメントは、その第1平坦面および突出部で分散されて受けられることになる。このため、チップ嵌合凹部の外側壁の先端(第1平坦面の先端)への応力集中はなく、チップ嵌合凹部の外側壁の先端部が局部的に塑性変形するようなことはない。
【0016】
また、第1平坦面および縦向き切欠部に対向する突出部で剪断チップに負荷される回転モーメントを受けることができるため、剪断チップを固定するボルトに回転モーメントが負荷されることがなく、ボルトが破損するようなこともない。
【0017】
第1の発明に係る解体切断機において、一方のジョーの内側面の先端部に剪断チップの突出部が嵌合される切欠部を形成し、その切欠部の内側面の先端部に第1平坦面と平行する第3平坦面を設けておくと、剪断チップに負荷される回転モーメントをその第3平坦面でも受けることができるため、回転モーメントをより分散させて受けることができ、チップ嵌合凹部おける外側壁の先端部の塑性変形をより効果的に防止することができる。
【0018】
また、第1平坦面の後端に、その第1平坦面と逆向きに傾斜して第2平坦面の先端に至る傾斜面を形成し、その傾斜面と第1平坦面の交差部にチップ嵌合凹部内に入り込む凸部を設けておくと、ボルトが万一破損したとしても、上記凸部によって剪断チップの前方への抜け落ちを防止することができ、安全である。
【0019】
上記の課題を解決するため、第2の発明においては、一対の相対的に開閉可能なジョーを有し、その一対のジョーの内側面を中央部が窪むV字形配置の第1平面と第2平面とで形成し、一対のジョーの閉鎖時に互いに重なり合う裏面のそれぞれに、前記第1平面に沿って延びるチップ嵌合凹部と、そのチップ嵌合凹部の後端に連続して前記第2平面に沿って延びるブレード嵌合凹部とを設け、前記チップ嵌合凹部内に剪断チップを嵌合してボルト止めし、前記ブレード嵌合凹部に剪断ブレードを嵌合してボルト止めし、前記一対のジョーを相対的に閉鎖して、対向一対の剪断チップおよび対向一対の剪断ブレードで被切断物を剪断するようにした解体切断機において、前記チップ嵌合凹部のジョー内側面の開口と対向する外側壁に、前記剪断チップの内側面に対して外向きに傾斜する第1平坦面と、その第1平坦面の後端側に剪断チップの内側面にほぼ平行する第2平坦面を形成して、その第1平坦面と第2平坦面の連設部位に屈曲部を設け、前記剪断チップには、前記第2平坦面に面衝合する衝合面と、前記第1平坦面に対向し、前記屈曲部を中心にして衝合面が第2平坦面から離れる方向に剪断チップが回転した際に前記第1平坦面に全面接触する制動面を設け、前記剪断チップにおける背面の外周部には、剪断チップの内側面の中途から後端方向に延びる縦向き切欠部と、その縦向き切欠部の後端に連続して外側面に至る横向き切欠部とを形成し、前記チップ嵌合凹部のチップ衝合面には縦向き切欠部および横向き切欠部に嵌り込む連続したL字状の突出部を設けた構成を採用したのである。
【0020】
上記の構成からなる解体切断機においても、第1の発明に係る解体切断機と同様に、一対のジョーを閉じ、対向一対の剪断チップで被切断物を剪断するとき、剪断チップに作用する回転モーメントを第1平坦面の面全体で受けることができると共に、その第1平坦面と突出部で分散して受けることができる。このため、チップ嵌合凹部の外側壁の先端への応力集中はなく、チップ嵌合凹部の外側壁の先端部が局部的に塑性変形するようなことはない。
【0021】
上記第2の発明において、第1の発明と同様に、第1平坦面の後端に、その第1平坦面と逆向きに傾斜して第2平坦面の先端に至る傾斜面を形成し、その傾斜面と第1平坦面の交差部にチップ嵌合凹部内に入り込む凸部を設けて、剪断チップの前方への抜け落ちを防止するのが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
上記のように、第1および第2のいずれの発明においても、被切断部の剪断時に、剪断チップに負荷される回転モーメントを第1平坦面の面全体で受けることができると共に、その第1平坦面と剪断チップの縦向き切欠部に嵌合する突出部で分散して受けることができるため、チップ嵌合凹部の外側壁の先端部が局部的に塑性変形するようなことが殆どなく、チップ嵌合凹部が形成されたジョーの耐久性の向上を図ることができると共に、剪断チップ取付け用のボルトの折損も防止することができる。また、外側壁の先端部を補修する面倒な作業を大幅に減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明に係る解体切断機の第1の実施の形態を示す正面図
【図2】図1の一部切欠左側面図
【図3】図1の一対のジョーを示す斜視図
【図4】可動ジョーの先端部を拡大して示す正面図
【図5】図4のV−V線に沿った断面図
【図6】図4のVI−VI線に沿った断面図
【図7】可動ジョーと一方の剪断チップを示す分解斜視図
【図8】可動ジョーと他方の剪断チップを示す分解斜視図
【図9】可動ジョーの閉鎖途中の状態を示す正面図
【図10】解体切断機の第2の実施の形態を示す正面図
【図11】解体切断機の第3の実施の形態を示す正面図
【図12】図11に示す一対のジョーの閉鎖途中の状態を示す正面図
【図13】図12のXIII−XIII線に沿った断面図
【図14】ジョーと剪断チップを示す分解斜視図
【図15】(a)は、従来の解体切断機の可動ジョーを示す正面図、(b)は、(a)のXV−XV線に沿った断面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明の実施の形態を図1乃至図15に基づいて説明する。図1乃至図9は、この発明に係る解体切断機の第1の実施の形態を示す。図1に示すように、解体切断機は、パワーショベル等の作業機械におけるアーム先端部に対して着脱自在に取付けられるブラケット1を有し、そのブラケット1の下端に筒状のシリンダケーシング2の上部が回転自在に接続されている。
【0025】
シリンダケーシング2の下部内には固定ジョー3の上部が嵌合されてシリンダケーシング2に一体化され、その固定ジョー3に対向して可動ジョー4が設けられている。
【0026】
図2および図3に示すように、固定ジョー3は、刃物取付プレート5と、これに対向配置されたガイドプレート6の先端部間にタイプレート7を設けたコの字状をなし、上記刃物取付プレート5とガイドプレート6の対向内側面間には上記可動ジョー4が挿入可能な間隔が設けられている。
【0027】
刃物取付プレート5とガイドプレート6の一側上部間には支点軸8が渡され、その支点軸8を中心にして可動ジョー4が揺動自在に支持されている。可動ジョー4の上部にはシリンダケーシング2内に組込まれた油圧シリンダ9が接続されている。可動ジョー4は油圧シリンダ9の作動により支点軸8を中心に開閉し、その閉鎖方向への揺動時に刃物取付プレート5と交わり合うようになっている。
【0028】
図3に示すように、刃物取付プレート5の可動ジョー4と対向する内側面10は、相対的に傾きをもつ第1平面10aおよび第2平面10bで形成されて長さ方向の中央部が窪むV字形とされている。また、刃物取付プレート5の可動ジョー4に重なり合う裏面には、上記2つの平面10a、10bに沿って剪断ブレード12、13が取付けられている。
【0029】
一方、ガイドプレート6の内側面には円弧状の盗み14が形成されている。また、ガイドプレート6の刃物取付プレート5に対する対向面の先端部およびタイプレート7の上面のそれぞれには剪断ブレード15、16が取付けられている。
【0030】
図1に示すように、可動ジョー4の固定ジョー3と対向する内側面17は、相対的に傾きをもつ第3平面17aおよび第4平面17bで形成されて長さ方向の中央部が窪み、閉鎖方向への揺動時に、刃物取付プレート5に対して内側面の先端から交わり始めて中央部に至るようになっている。
【0031】
可動ジョー4の刃物取付プレート5に重なり合う裏面には、上記2つの平面17a、17bに沿って剪断ブレード19、20が取付けられている。この剪断ブレード19、20は刃物取付プレート5に取付けられた剪断ブレード12、13とで固定ジョー3と可動ジョー4の間に配置される被切断物を剪断するようになっている。
【0032】
図4乃至図8に示すように、可動ジョー4の表裏両面の先端部には、その可動ジョー4の内側面17および先端面18で開口する一対のチップ嵌合凹部22が形成され、そのチップ嵌合凹部22のそれぞれに可動ジョー4より硬質の金属材料から成る一対の剪断チップ23のそれぞれが嵌合されている。
【0033】
各剪断チップ23は、可動ジョー4の内側面17の先端部を覆う突出部24を有し、その突出部24は可動ジョー4の内側面17の先端部に形成された切欠部25に嵌合されて、他方の剪断チップ23の突出部24と突き合わせの配置とされている。
【0034】
剪断チップ23における背面の外周部には、剪断チップ23の内側面の中途から後端方向に延びる縦向き切欠部26aと、その縦向き切欠部26aの後端に連続して外側面に至る横向き切欠部26bとが形成されている。一方、チップ嵌合凹部22のチップ衝合面27には上記縦向き切欠部26aおよび横向き切欠部26bに嵌合するL字状の突出部28が設けられている。
【0035】
剪断チップ23のそれぞれは、一方の剪断チップ23および可動ジョー4を貫通し、他方の剪断チップ23に形成されたねじ孔29にねじ込まれる複数のボルト30の締め付けによって可動ジョー4に取付けられている。
【0036】
ここで、可動ジョー4の裏面に形成されたチップ嵌合凹部22は可動ジョー4の長さ方向に延長され、その延長部に前述の剪断ブレード19、20が嵌合されており、その先端側の剪断ブレード19と剪断チップ23は端面が衝合する突き合せの配置とされている。
【0037】
図4に示すように、剪断チップ23の内側面23aは可動ジョー4における内側面17の第3平面17aとほぼ同一面を形成しており、上記突出部24を含む内側面17aの外周縁に剪断刃31が形成され、その剪断刃31は固定ジョー3に取付けられた剪断ブレード12、15、16とでその対向部間に配置される被切断物を剪断するようになっている。
【0038】
可動ジョー4は、前述のように、その閉鎖方向への揺動時に、刃物取付プレート5に対して先端から交わり始めて長さ方向の中央部に至るため、特に、剪断チップ23の先端部による被切断物の剪断開始時に、その剪断チップ23に剪断による剪断反力Fが負荷されることになる。図4に示すLは、その剪断反力Fの作用線を示し、その作用線Lの方向は、被切断物の大きさや形状に応じて変化する。
【0039】
図4に示すように、チップ嵌合凹部22の可動ジョー4の内側面の開口と対向する外側壁32には、先端側から、剪断チップ23の内側面23aに対して外向きに傾斜する第1平坦面33と、その第1平坦面33の後端に連続して第1平坦面33と逆向きに傾斜する傾斜面34と、その傾斜面34の後端に連続して剪断チップ23の内側面23aにほぼ平行する第2平坦面35とが形成され、上記第1平坦面33と傾斜面34の交差部にチップ嵌合凹部22に入り込む凸部36が設けられている。
【0040】
なお、傾斜面34を省略し、第1平坦面33の後端に第2平坦面35を連続させて、その第1平坦面33と第2平坦面35の交差部に屈曲部を設けるようにしてもよい。
【0041】
また、剪断チップ23の突出部24が嵌合される切欠部25の内面25a先端部には、上記第1平坦面33に略平行する第3平坦面37が形成されている。
【0042】
一方、剪断チップ23には、上記傾斜面34および第2平坦面35に面衝合する衝合面38と、第1平坦面33に微小間隙を介して対向する制動面39が設けられており、被切断物の剪断時に剪断チップ23の先端に力が作用して、前述の凸部36を中心に衝合面38が第2平坦面35から離れる方向に揺動した際に制動面39は第1平坦面33に全面接触するようになっている。
【0043】
ここで、上記微小間隙は、チップ嵌合凹部22の各面33乃至35および剪断チップ23の各面38、39の加工上から必然的に形成されるものであってもよく、積極的に形成されたものであってもよい。
【0044】
実施の形態で示す解体切断機は上記の構造からなり、図1に示す油圧シリンダ9を伸長すると、可動ジョー4は支点軸8を中心にして閉鎖方向に揺動する。図9は可動ジョー4が完全に閉鎖する手前の状態を示す。
【0045】
ここで、可動ジョー4を閉鎖方向に揺動させると、その可動ジョー4は、内側面17が長さ方向の中央部で窪んでいるため、固定ジョー3に対して内側面の先端から長さ方向の中央部に向けて交わり始めるように揺動する。
【0046】
このため、図1の鎖線で示すように、固定ジョー3と可動ジョー4の対向部間に、例えば、H形鋼からなる被切断物Aを位置させて可動ジョー4を閉鎖方向に揺動させることにより、図9に示すように、被切断物Aは、剪断チップ23と剪断ブレード12、15、16および固定ジョー3の先端側剪断ブレード12と可動ジョー4の先端側剪断ブレード19で初期剪断されることになる。
【0047】
ここで、剪断チップ23と剪断ブレード12、15、16とが被切断物Aを剪断する際、剪断チップ23の先端に剪断反力Fが作用し、剪断チップ23には、凸部36を中心にして衝合面38が第2平坦面35から離れる方向(図4の矢印で示す方向)の回転モーメントが負荷される。
【0048】
このとき、剪断チップ23の制動面39が第1平坦面33に対して全面接触し、剪断チップ23に負荷される回転モーメントは、上記第1平坦面33の面全体で支持されることになる。また、第1平坦面33、縦向き切欠部26aに嵌合するL字状突出部28および第3平坦面37が、剪断チップ23に設けられた各面に回転方向で対向しているため、剪断チップ23に負荷される回転モーメントは、その第1平坦面33、突出部28および第3平坦面37に分散して受けられることになる。このため、チップ嵌合凹部22の外側壁32の先端(第1平坦面の先端)への応力集中はなく、第1平坦面33の先端が局部的に塑性変形するようなことはない。
【0049】
また、第1平坦面33、突出部28および第3平坦面37で剪断チップ23に負荷される回転モーメントを受けることができるため、剪断チップ23を固定するボルト30に回転モーメントが負荷されることがなく、ボルト30が破損するようなこともない。
【0050】
このように、剪断チップ23による被切断物Aの剪断時、剪断チップ23の先端に作用する剪断反力の負荷によって生じる回転モーメントは、第1平坦面33、突出部28および第3平坦面37のそれぞれに分散されて受けられるため、チップ嵌合凹部22の外側壁32の先端や切欠部25の内面25aの先端部が塑性変形するというようなことがなく、可動ジョー4の耐久性の低下を抑制することができる。
【0051】
また、第1平坦面33の後端側には凸部36が設けられているため、もし、ボルト30が破損したとしても、剪断チップ23が前方に抜け落ちることがなく安全である。
【0052】
ここで、被切断物Aをうまく切断できずに固定ジョー3内に剪断チップ23と被切断物Aが噛み込んだ時など、可動ジョー4を開放する方向に動かすと、剪断チップ23は被切断物A側に残り、剪断チップ23には、引張り方向の力、すなわち、第1平坦面33から離れる方向に大きな力が負荷されて、剪断チップ23が図4の矢印で示す回転方向と反対の方向に回転しようとする。このとき、第2平坦面35が剪断チップ23の衝合面38と回転方向で対向し、かつ、縦向き切欠部26aの閉塞端がL字状突出部28の先端面と回転方向で対向しているため、剪断チップ23に負荷される力は、その第2平坦面35およびL字状突出部28の先端面で受けられることになり、ボルト30に回転モーメントが負荷されるようなことはない。
【0053】
なお、剪断チップ23における剪断刃31の先端を除く他の部分で被切断物Aを剪断する際にも剪断チップ23に負荷される剪断反力を第1平坦面33、突出部28および第3平坦面37で受けることができるため、第1平坦面33の先端が局部的に塑性変形するようなことはない。
【0054】
図1乃至図3では、解体切断機として、固定ジョー3に対して可動ジョー4を開閉させるようにした片開き式の荷重切断機を示したが、解体切断機はこれに限定されるものではない。例えば、図10に示す第2の実施の形態のように、支点軸40を中心にして一対のジョー41、42を開閉自在に設け、それぞれのジョー41、42を油圧シリンダ43、44で揺動させるようにした両開き式の解体切断機であってもよい。
【0055】
上記のような両開き式の解体切断機においては、一方のジョー41の先端部両側に一対の剪断チップ23を、図4乃至図8に示す取付け手順により取付け、図3に示すように、他方のジョー42の先端部にその剪断チップ23とで被切断物を剪断する剪断ブレードを取付けるようにする。
【0056】
図11乃至図14は、この発明に係る解体切断機の第3の実施の形態を示す。この実施の形態においては、作業機械におけるアーム先端部に対して着脱自在に取付けられる固定ブラケット50に可動ブラケット51を回転自在に連結し、その可動ブラケット51の対向側板52の先端部間に2本の支点軸53を左右方向に間隔をおいて設け、その支点軸53を中心にして開閉自在に支持された左右一対のジョー54を、それぞれのジョー54に接続された油圧シリンダ55の作動により開閉させるようにしている。
【0057】
また、一対のジョー54のそれぞれの内側面56を第1平面56aと第2平面56bで形成して中央部が窪むV字状とし、先端側の第1平面56aの先端に内向きの爪部57を設けている。そして、一対のジョー54の閉鎖時に互いに重なり合う裏面の内側縁部のそれぞれに、第1平面56aに沿って延びるチップ嵌合凹部58と、そのチップ嵌合凹部58の後端に連続して前記第2平面56bに沿って延びるブレード嵌合凹部59とを設け、上記チップ嵌合凹部58内に剪断チップ60を嵌合してボルト61止めし、上記ブレード嵌合凹部59に剪断ブレード62を嵌合してボルト63止めしている。
【0058】
さらに、チップ嵌合凹部58のジョー内側面56の開口と対向する外側壁64に、先端側から順に、剪断チップ60の内側面60aに対して外向きに傾斜する第1平坦面65と、その第1平坦面65の後端に連続して第1平坦面65と逆向きに傾斜する傾斜面66と、その傾斜面66の後端に連続して剪断チップ60の内側面60aにほぼ平行する第2平坦面67とを形成し、その第1平坦面65と傾斜面66の交差部にチップ嵌合凹部58に入り込む凸部70を設けている。
【0059】
一方、剪断チップ60には、上記傾斜面66および第2平坦面67に面衝合する衝合面71と、第1平坦面65に微小間隙を介して対向する制動面72を設けている。この制動面72は、前述の凸部70を中心にして衝合面71が第2平坦面67から離れる方向(図12の矢印で示す方向)に揺動した際に第1平坦面65に全面接触するようになっている。
【0060】
また、剪断チップ60における背面の外周部には、剪断チップ60の内側面の中途から後端方向に延びる縦向き切欠部68aと、その縦向き切欠部68aの後端に連続して外側面に至る横向き切欠部68bとを形成し、一方、チップ嵌合凹部58のチップ衝合面には上記縦向き切欠部68aおよび横向き切欠部68bに嵌合するL字状の突出部69を設けている。
【0061】
上記の構成からなる解体切断機においても、第1の実施の形態で示す解体切断機と同様に、一対のジョー54を閉じ、対向一対の剪断チップ60の先端で被切断物を剪断するとき、剪断チップ60の先端部に作用する剪断反力により、剪断チップ60が凸部70を中心にして衝合面71が第2平坦面67から離れる方向に揺動して制動面72が第1平坦面65に全面接触するため、剪断チップ60に作用する回転モーメントを第1平坦面65の面全体で受けることができると共に、その第1平坦面65および突出部69で分散して受けることができる。このため、チップ嵌合凹部58の外側壁64の先端(第1平坦面65の先端)への応力集中はなく、チップ嵌合凹部58の第1平坦面65の先端が局部的に塑性変形するようなことはない。
【0062】
また、第1平坦面65およびL字状突出部69で剪断チップ60に作用する回転モーメント等の負荷を受けることができるため、隣接する剪断ブレード62に影響を与えるようなことがなく、剪断ブレード62にガタツキが生じることがない。また、剪断ブレード62で棒材などを切断するときも、剪断チップ60には負荷が伝わらないので、剪断チップ60の損傷がない。
【0063】
なお、第3の実施の形態では、一対のジョー54を異なる支点軸53を中心にして開閉自在としたが、共通の支点軸を中心にして開閉自在としてもよい。また、一方のジョーを固定し、他方のジョーを開閉自在としてもよい。
【符号の説明】
【0064】
3 固定ジョー
4 可動ジョー
12 剪断ブレート
15 剪断ブレード
16 剪断ブレード
17 内側面
22 チップ嵌合凹部
23 剪断チップ
24 突出部
25 切欠部
25a 内面
26a 縦向き切欠部
26b 横向き切欠部
28 突出部
31 剪断刃
32 外側壁
33 第1平坦面
34 傾斜面
35 第2平坦面
36 凸部
37 第3平坦面
38 衝合面
39 制動面
54 ジョー
56 内側面
56a 第1平面
56b 第2平面
58 チップ嵌合凹部
59 ブレード嵌合凹部
60 剪断チップ
62 剪断ブレード
64 外側壁
65 第1平坦面
66 傾斜面
67 第2平坦面
68a 縦向き切欠部
68b 横向き切欠部
69 突出部
70 凸部
71 衝合面
72 制動面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的に開閉自在とされ、閉鎖方向への揺動時に内側面の先端から中央部に向けて交わり始める一対のジョーを有し、一方のジョーの表裏両面の先端部に、そのジョーの先端面および内側面で開口するチップ嵌合凹部を形成し、そのチップ嵌合凹部のそれぞれに、一方のジョーの内側面先端部を覆う突出部を有し、その突出部を含む内側面の外周縁が剪断刃とされた一対の剪断チップのそれぞれを嵌合してボルト止めし、前記他方のジョーには、剪断チップの剪断刃に対向して剪断ブレードを取付け、その剪断ブレードと剪断チップとで被切断物を剪断するようにした解体切断機において、
前記チップ嵌合凹部のジョー内側面の開口と対向する外側壁に、前記剪断チップの内側面に対して外向きに傾斜する第1平坦面と、その第1平坦面の後端側に剪断チップの内側面にほぼ平行する第2平坦面を形成して、その第1平坦面と第2平坦面の連設部位に屈曲部を設け、前記剪断チップには、前記第2平坦面に面衝合する衝合面と、前記第1平坦面に対向し、前記屈曲部を中心にして衝合面が第2平坦面から離れる方向に剪断チップが回転した際に前記第1平坦面に全面接触する制動面を設け、前記剪断チップにおける背面の外周部には、剪断チップの内側面の中途から後端方向に延びる縦向き切欠部と、その縦向き切欠部の後端に連続して外側面に至る横向き切欠部とを形成し、前記チップ嵌合凹部のチップ衝合面には縦向き切欠部および横向き切欠部に嵌り込む連続したL字状の突出部を設けたことを特徴とする解体切断機。
【請求項2】
前記一方のジョーの内側面先端部に、前記剪断チップの突出部が嵌合される切欠部を形成し、その切欠部の内側面先端部に前記第1平坦面と平行する第3平坦面を設けた請求項1に記載の解体切断機。
【請求項3】
前記第1平坦面の後端に、その第1平坦面と逆向きに傾斜して第2平坦面の先端に至る傾斜面を形成し、その傾斜面と第1平坦面の交差部にチップ嵌合凹部内に入り込む凸部を設けた請求項1又は2に記載の解体切断機。
【請求項4】
一対の相対的に開閉可能なジョーを有し、その一対のジョーの内側面を中央部が窪むV字形配置の第1平面と第2平面とで形成し、一対のジョーの閉鎖時に互いに重なり合う裏面のそれぞれに、前記第1平面に沿って延びるチップ嵌合凹部と、そのチップ嵌合凹部の後端に連続して前記第2平面に沿って延びるブレード嵌合凹部とを設け、前記チップ嵌合凹部内に剪断チップを嵌合してボルト止めし、前記ブレード嵌合凹部に剪断ブレードを嵌合してボルト止めし、前記一対のジョーを相対的に閉鎖して、対向一対の剪断チップおよび対向一対の剪断ブレードで被切断物を剪断するようにした解体切断機において、
前記チップ嵌合凹部のジョー内側面の開口と対向する外側壁に、前記剪断チップの内側面に対して外向きに傾斜する第1平坦面と、その第1平坦面の後端側に剪断チップの内側面にほぼ平行する第2平坦面を形成して、その第1平坦面と第2平坦面の連設部位に屈曲部を設け、前記剪断チップには、前記第2平坦面に面衝合する衝合面と、前記第1平坦面に対向し、前記屈曲部を中心にして衝合面が第2平坦面から離れる方向に剪断チップが回転した際に前記第1平坦面に全面接触する制動面を設け、前記剪断チップにおける背面の外周部には、剪断チップの内側面の中途から後端方向に延びる縦向き切欠部と、その縦向き切欠部の後端に連続して外側面に至る横向き切欠部とを形成し、前記チップ嵌合凹部のチップ衝合面には縦向き切欠部および横向き切欠部に嵌り込む連続したL字状の突出部を設けたことを特徴とする解体切断機。
【請求項5】
前記第1平坦面の後端に、その第1平坦面と逆向きに傾斜して第2平坦面の先端に至る傾斜面を形成し、その傾斜面と第1平坦面の交差部にチップ嵌合凹部内に入り込む凸部を設けた請求項4に記載の解体切断機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−252299(P2011−252299A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125786(P2010−125786)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000229450)日本ニューマチック工業株式会社 (44)
【Fターム(参考)】