説明

解放可能な踏段ロックシステム

乗客コンベアは、クランプと、ロックと、アクチュエータとを有する解放可能な踏段ロックシステムを備える。クランプは、踏段を推進機構に結合させ、ロックは、踏段と推進機構との間の結合を確保し、アクチュエータは、推進機構が踏段から切り離されまたは結合されることができるようにロックの状態を変更することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベアシステムに関する。特に本発明は、踏段および推進機構を有するコンベアシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
動く歩道またはエスカレータなどの通常の乗客コンベアは、閉ループ内を移動する一続きのパレットまたは踏段を備える。乗客コンベアによって乗客は、所定の距離にわたって輸送されながら踏段に沿って歩くことまたは立っていることができる。踏段は通常、踏段を前方に移動させる推進機構に取り付けられる。より詳細には、駆動シーブがチェーンスプロケットを駆動し、チェーンスプロケットが踏段チェーンを動かし、それによって、所定のトラックに沿って踏段と、踏段の上にいる乗客とを移動させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
踏段チェーンはしばしば、踏段に永久に固定された複数の軸によって接続された一対のチェーンストランドを備える。踏段と踏段チェーンとの固定によって、踏段はトラックに沿った任意の湾曲に確実に追随する。エスカレータの場合、トラックは低い位置と高い位置との間に延在し、閉ループ内で低い位置へと戻る。動く歩道は、上り傾斜の経路、下り傾斜の経路、または実質的に平坦なトラックを備えることができ、ときには、互いに反対方向に移動する並列した一対の歩行者用通路を備えることがある。トラックの構成にかかわらず、乗客コンベアの保守および修理に関連する費用を低減する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
コンベアは、負荷を支持する踏段と、踏段に接続され、踏段を移動させる推進機構とを備える。ロックシステムが、踏段を推進機構に取り付けており、クランプと、ロックと、アクチュエータとを備える。クランプは、踏段を推進機構に結合させるクランプ留め状態と、踏段を推進機構から切り離すクランプ解除状態とを有する。ロックは、クランプに取り付けられており、踏段と推進機構との間の結合を確保するロック状態と、推進機構を踏段から切り離すロック解除状態とを有する。アクチュエータは、ロックおよび踏段の両方に取り付けられており、ロックの状態を変更することができる。
【0005】
コンベアシステム内で踏段を移動させる方法は、コンベアシステムの閉ループ経路に沿って踏段を移動させ、踏段が負荷を支持する閉ループ経路の第1の部分において踏段を係合させ、踏段が負荷から解放される閉ループの第2の部分において踏段を係合解除する、ことを含む。
【0006】
コンベアシステム用の推進機構に踏段を着脱する方法は、コンベアシステム内の推進機構に踏段を取り付けるロックシステムを作動させ、ロックシステムの作動に応答してロックを第1のロックの状態から第2のロックの状態に変更し、踏段と推進機構の間の取り付けが変更されるようにロックの状態の変更に応答してクランプを第1のクランプ状態から第2のクランプ状態に変更する、ことを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明による踏段ロックシステムを示すために一部を切り欠いた例示的な乗客コンベアの斜視図。
【図2A】第1の実施例の踏段ロックシステムの概略側面図。
【図2B】第1の実施例の踏段ロックシステムの概略側面図。
【図3A】第2の実施例の踏段ロックシステムの概略側面図。
【図3B】第2の実施例の踏段ロックシステムの概略側面図。
【図4A】第3の実施例の踏段ロックシステムの概略側面図。
【図4B】第3の実施例の踏段ロックシステムの概略側面図。
【図5A】踏段ロックシステムの一連の作動のうちの一部を示す概略側面図。
【図5B】踏段ロックシステムの一連の作動のうちの一部を示す概略側面図。
【図5C】踏段ロックシステムの一連の作動のうちの一部を示す概略側面図。
【図5D】踏段ロックシステムの一連の作動のうちの一部を示す概略側面図。
【図5E】踏段ロックシステムの一連の作動のうちの一部を示す概略側面図。
【図5F】踏段ロックシステムの一連の作動のうちの一部を示す概略側面図。
【図6】推進機構を係合するクランプの4つの実施例のうちの1つの概略側面図。
【図7】推進機構を係合するクランプの4つの実施例のうちの1つの概略側面図。
【図8】推進機構を係合するクランプの4つの実施例のうちの1つの概略側面図。
【図9】推進機構を係合するクランプの4つの実施例のうちの1つの概略側面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本願で使用されるように、乗客コンベアは、エスカレータおよび動く歩道の両方を含む。同様に、踏段は、エスカレータ用の踏段および動く歩道用のパレットの両方を含む一般的な用語として使用される。また、推進機構は、チェーン、ベルト、およびロープ、またはコンベア内で踏段を移動させる任意の他の手段を含む一般的な用語として使用される。
【0009】
従来、乗客コンベアの各踏段は、作動中は推進機構に永久的に固定されている。従来の踏段は、整備および修理のために推進機構から解放されるだけである。踏段と推進機構との間に耐久性のある接続を有することが好ましいとはいえ、接続は、永久的な固定にする必要はない。実際、踏段と推進機構との間の解放可能な取り付けシステムであったならば、出費や整備費用が低減し、駆動の快適さも向上するであろう。本発明は、乗客コンベア内の推進機構に踏段を取り付ける解放可能なロックシステムである。
【0010】
図1は、踏段14と推進機構16との間の解放可能な取り付けシステム12を示すために一部を切り欠いた乗客コンベア10の一実施例の斜視図である。図1には、乗客コンベア10の構成要素すなわち、解放可能な取り付けシステム12、踏段14、推進機構16、機械18、駆動シーブ20、張力シーブ22、乗客部分24、および戻り部分26が示される。解放可能な取り付けシステム12は、乗客部分24において踏段14を推進機構16に結合させ、乗客コンベア10の戻り部分26にある間、踏段14を推進機構16から切り離す。
【0011】
乗客コンベア10は、図1では競技場型の動く歩道として図示されているとはいえ、本発明は、それに限定されず、他の種類の動く歩道やエスカレータなどの乗客コンベアにも適合可能である。解放可能な取り付けシステム12は、踏段14と推進機構16との間に配置される。踏段14は、乗客コンベア10の動く歩道を形成し、乗客を保持する上面と、解放可能な取り付けシステム12に接続される下面とを有する。他の実施例では、解放可能な取り付けシステムは、各踏段14の側面に取り付けられる。踏段14は、限定される訳ではないが、長方形、正方形、円形、および半月形などの多くの形状を取り得る。解放可能な取り付けシステム12の第1の端部は、踏段14の下面に取り付けられ、解放可能な取り付けシステム12の反対の第2の端部は、推進機構16に結合されているか、あるいは推進機構16から切り離されている。図1の切り欠いた部分は、踏段14を推進機構16に結合させている解放可能な取り付けシステム12を示している。推進機構16は、チェーン、ロープ、ベルト、または踏段14を移動させる任意の他の適切な手段とすることができる。機械18は、駆動シーブ20に隣接して取り付けられるように中央に配置されている。張力シーブ22は、駆動シーブ20の反対側に離れている。推進機構16は、閉ループ経路を形成するように駆動シーブ20および張力シーブ22の両方の周りに延在する。1つの完全なループ内に、乗客を支持する1つまたは複数の乗客部分24と、踏段14を乗客部分24の最初に戻す1つまたは複数の戻り部分26とが存在することができる。図1に示される競技場型の乗客コンベア10では、2つの戻り部分26によって分離された2つの乗客部分24があり、2つの戻り部分26はまた期せずして方向転換部となっている。より従来型のエスカレータに類似している別の実施例では、単一の戻り部26が、下の乗降場から上の乗降場へ上方へと単一の乗客部分24の下に延在可能であり、単一の乗客部分24は、上の乗降場から下の乗降場へ下方へと延在する。いくつかの実施例が予想されるが、全ての実施例は、共通の特徴、すなわち、踏段14と推進機構16との間の解放可能な取り付けシステム12を共通に有している。
【0012】
乗客コンベア10は、1つの位置から別の位置へと乗客および/または貨物を移動させるように構成される。乗客は、1つの位置から別の位置へと迅速に送られるように踏段14に沿って歩くことまたは立っていることができる。解放可能な取り付けシステム12は、踏段14を推進機構16に結合させているか、または推進機構16から切り離している。機械18は、駆動シーブ20を駆動し、駆動シーブ20の作動を制御している。駆動シーブ20は、推進機構16を前方に移動させ、推進機構16は、駆動シーブ20と張力シーブ22との間の閉ループ内を移動する。解放可能な取り付けシステム12によって結合されると、推進機構16は、踏段14が乗客コンベア10の閉ループにわたって同じ湾曲に追随するように踏段14を整列させる。解放可能な取り付けシステム12は、限定される訳ではないが乗客部分22などの乗客コンベア10の第1の部分にある間、踏段14を推進機構16に結合させ、限定される訳ではないが戻り部分22などの乗客コンベアの第2の部分にある間、踏段14を推進機構16から切り離すであろうことが予想される。このように、踏段14は、閉ループに沿って送られながら、所定の間隔で解放可能な取り付けシステム12によって推進機構16に結合されおよび推進機構16から切り離される。
【0013】
図2A、図2Bは、第1の実施例の解放可能な取り付けシステム12Aの概略側面図である。図2Aは、踏段14を推進機構16に結合させている解放可能な取り付けシステム12Aを示し、図2Bは、踏段14を推進機構16から切り離している解放可能な取り付けシステム12Aを示す。図2A、図2Bには、解放可能な取り付けシステム12A、推進機構16、ローラ27、アクチュエータ28A、トラック29A、ロック30A、クランプ32A、レバー24、第1のばね36、アーム38、およびハンド40が図示される。停止状態で、解放可能な取り付けシステム12Aは、踏段14を推進機構16に結合させている。ローラ27およびトラック29の組み合わせによる解放可能な取り付けシステム12Aの作動によって踏段14は推進機構16から切り離される。
【0014】
解放可能な取り付けシステム12Aは、3つのサブシステムすなわち、アクチュエータ28A、ロック30A、およびクランプ32Aを備える。アクチュエータ28Aは、解放可能な取り付けシステム12Aの左側の大部分であり、ローラ27およびトラック29の組み合わせを備えているとはいえ、アクチュエータ28Aは、限定される訳ではないが、レバー、ばね、またはソレノイドなどの他の形態をとることができる。アクチュエータ28Aが停止または非駆動状態にある場合、トラック29は存在せずまたは少なくともローラ27と接触しない。アクチュエータ28Aが作動または駆動されると、トラック29は、ローラ27の上面と接触する。ロック30Aは、レバー34および第1のばね36を備えており、アクチュエータ28Aに取り付けられ、解放可能な取り付けシステム12の中央部分を形成する。レバー34は最初にローラ27の両側面から所定のポイントへ外側へと延在し、次いで第1のばね36の方へ内側へと延在して戻る。第1のばね36は、解放可能な取り付けシステム12の中心近くでレバー34間に延在する。ロック30Aがロックされまたは停止状態にある場合、第1のばね36は、レバー34を互いに近くに保持し、ロック30Aが作動されまたはロック解除されると、第1のばね36は、レバー34を外側に押圧する。クランプ32Aは、アーム38およびハンド40を備えており、ロック30Aに取り付けられ、解放可能な取り付けシステムの右側の大部分を形成する。アーム38は、解放可能な取り付けシステム12の中心から所定のポイントへ外側へと延在し、次いでハンド40へ中心へと延在して戻る。ハンド40は、各38アームの右側の大部分から中心へと延在し、半月状の形状をなす。クランプ32Aが停止状態またはクランプ留め状態にある場合、ハンド40は、推進機構16の外周と接触し、作動されまたはクランプ解除されると、ハンド40は、推進機構16から離れて外側へと移動する。推進機構16は、丸形ロープとして図示されているとはいえ、フラットベルト、結合されたチェーン、または任意の他の推進機構も同様に可能である。クランプ32Aは、アーム38およびハンド40を使用して推進機構16のクランプ留めおよびクランプ解除の間で交替し、それによって、推進機構16から踏段14を着脱する。
【0015】
踏段14が閉ループ経路に沿って移動する間に、解放可能な取り付けシステム12Aは、少なくとも1つの状態変更を経験する。アクチュエータ28A(ローラ27およびトラック29の組み合わせ)の作動によって、ロック30A(レバー34および第1のばね36)の状態変更が生じ、最終的に、踏段14が推進機構16に結合されまたは推進機構16から切り離される。図2Aでは、解放可能な取り付けシステム12Aは、停止状態または非作動状態にあり、踏段14は、推進機構16に結合されている。トラック29Aが存在せず、ローラ27には押圧力が掛かっていないので、ローラ27は左側に移動可能である。レバー34は、第1のばね36のばね力によって伸長した停止位置に保持される。アーム38は、圧縮され、ハンド40に押圧力を加え、ハンド40は、踏段14を推進機構16に結合させるように推進機構16にしっかりと係合する。図2Aに示される結合状態は、踏段14が負荷を支持しているとき、例えば乗客コンベア10の乗客部分24にある間、有利である。
【0016】
図2Bでは、解放可能な取り付けシステム12Aは、踏段14を推進機構16から切り離すように作動する。第1に、アクチュエータ28Aが駆動される、すなわち、トラック29Aがローラ27に力を加え、ローラを右側に押す。第2に、ロック30Aがロック解除される、すなわち、レバー34がローラ27の動きによって押圧され、第1のばね36はそのばね力を解放する。第3に、クランプ32がクランプ解除される、すなわち、レバー34の動きによってアーム38が外側に移動して、ハンド40を推進機構16から解放する。この係合解除状態は、踏段14が負荷を支持していないとき、例えば乗客コンベア10の戻り部分26にある間、有利である。乗客コンベア10の1つの完全なループ内で、解放可能な取り付けシステム12Aは、図2Aに示される結合位置と図2B示される切り離し位置との間で1回または複数回、交替することができる。
【0017】
図3A、図3Bは、第2の実施例の解放可能な取り付けシステム12Bの概略側面図である。図3Aは、踏段14を推進機構16に結合させている解放可能な取り付けシステム12Bを示し、図3Bは、踏段14を推進機構16から切り離している解放可能な取り付けシステム12Bを示す。図3A、図4Bには、解放可能な取り付けシステム12B、推進機構16、ローラ27、アクチュエータ28B、トラック29、ロック30B、クランプ32B、アーム38、ハンド40、第2のばね42、レバー44、および第3のばね46が図示される。作動によって切り離しがトリガされていた上述の解放可能な取り付けシステム12Aとは対照的に、解放可能な取り付けシステム12Bの作動によって踏段14は推進機構16に結合される。
【0018】
解放可能な取り付けシステム12Bは、踏段14の下側に接続される。解放可能な取り付けシステム12Bは、3つのサブシステムすなわち、アクチュエータ28B、ロック30B、およびクランプ32Bを備える。アクチュエータ28Bは、解放可能な取り付けシステム12Bの左側の大部分であり、ローラ27およびトラック29Bの組み合わせを備えているとはいえ、他の作動手段も同様に可能である。作動されると、トラック29Bは、ローラ27と接触する。ロック30Bは、アクチュエータ28Bの右側で解放可能な取り付けシステム12Bの中央部分に位置する。ロック30Bは、レバー44を備え、レバー44は、第2のばね42を取り囲む箱形を形成するようにローラ27の両側面から外側へと延在する。クランプ32Bは、ロック30Bから延在し、解放可能な取り付けシステム12Bの右側の大部分を形成する。クランプ32Bは、アーム38を備えており、アーム38は、第2のばね42から下方へかつ外側へと延在して44と接触し、次いで、ハンド40の方へと内側に曲がる。ハンド40は、推進機構16と係合または係合解除するようにアーム38から中心へと延在する。クランプ32Bはさらに、第2のばね42に隣接してアーム38の頂部間に延在する第3のばね46を備える。解放可能な取り付けシステム12Bは、踏段と推進機構16との間にしっかりとしているが依然として解放可能な係合を提供するように構成される。
【0019】
図3Aでは、解放可能な取り付けシステム12Bは、作動状態にあり、踏段14は、推進機構16に結合されている。トラック29Aは、アクチュエータ28Bが作動状態となるようにローラ27を右側に押す。レバー44が力を右に伝え、第2のばね42を圧縮した状態に保持し、ロック32Bをロック状態に保持する。ロック32Bの内向きの押圧力によって確実に第3のばね46が圧縮状態にとどまり、アーム38およびハンド40は、クランプ32Bがクランプ留めされるように推進機構16にしっかりと係合する。図3Aに示される解放可能な取り付けシステム12Bのクランプ留めまたは結合状態は、踏段14が負荷を支持しているとき、踏段14を推進機構16に接続するように利用可能である。
【0020】
図3Bでは、解放可能な取り付けシステム12Bは、停止状態にあり、踏段14は、推進機構16から切り離されている。第1に、アクチュエータ28Bが非作動状態になる、すなわち、トラック29Bが終了しまたは少なくともローラ27ともはや接触しない。第2に、ローラ27への押圧力がなくなることで、ロック30Bがロック解除される。レバー44および第2のばね42が外側へと伸長し、第3のばね43を解放する。第3に、第3のばね43が外側へと移動し、クランプ32Bのアーム38およびハンド40を同様に外側へと引っ張る。アーム38およびハンド40が外側へと移動することで、クランプ32Bはクランプ留め状態からクランプ解除状態へと効果的に変更される。このクランプ解除状態で、推進機構16の係合は、終了し、解放可能な取り付けシステム12Bは、停止状態となる。図3Bに示される解放可能な取り付けシステム12Bの切り離し状態は、踏段14が負荷を支持していないとき、踏段14を推進機構16から係合解除するように利用可能である。例えば、踏段14は、乗客コンベア10の戻り部分26の上で推進機構16から切り離され、それによって、踏段14は、負荷を支持するために必要とされる湾曲または速度とは異なる湾曲または速度で戻り部分26を通過することができる。
【0021】
図4A、図4Bは、第3の実施例の解放可能な取り付けシステム12Cの概略側面図である。図4Aは、踏段14を推進機構16に結合させている解放可能な取り付けシステム12Cを示し、図4Bは、踏段14を推進機構16から切り離している解放可能な取り付けシステム12Cを示す。図4A、図4Bには、解放可能な取り付けシステム12C、踏段14、推進機構16、アクチュエータ28C、ロック30C、クランプ32C、ローラ48、ピストン50、第1のクランプ52、第2のクランプ54、ばね56、およびトラック58が図示される。図2A、図2Bを参照して上述した解放可能な取り付けシステム12Aと同様に、解放可能な取り付けシステム12Cの作動によって踏段14は推進機構16から切り離される。
【0022】
アクチュエータ28Cおよびロック30Cの組み合わせが、踏段14の下に配置され、踏段14に接続される。アクチュエータ28Cおよびロック30Cの組み合わせは、ピストン50からほぼ直角に延在するローラ48を備える。2部品クランプ32Cが、アクチュエータ28Cおよびロック30Cの組み合わせの下に配置され、アクチュエータ28Cおよびロック30Cの組み合わせに取り付けられる。2部品クランプ32Cは、ピストン50の下端に取り付けられた第1のクランプ52と、ピストン50の側面に隣接するが離れて配置された第2のクランプ54とを備える。ばね56がローラ48の近くのピストンの上端に取り付けられ、アクチュエータ28Cおよびロック30Cの組み合わせの構成要素とみなされる。アクチュエータ28Cとロック30Cとを組み合わせることで、解放可能なロックシステム12Cの全体の大きさが低減され、踏段14と推進機構16との間のより小型の解放可能な係合システム12Cが得られる。
【0023】
図4Aでは、解放可能な取り付けシステム12Cは、停止状態にあり、踏段14は、推進機構16に結合されている。トラック58が存在しないので、ローラ48、ピストン、およびばね56は、伸長した停止位置にとどまる。アクチュエータ28Cおよびロック30Cの組み合わせがしっかりした休止状態に維持されており、2部品クランプ32Cにトリガが送られないので、第1のクランプ52および第2のクランプ54は、これら両方ともが推進機構16に係合しているクランプ留め状態にとどまる。図4Aに示される結合状態は、踏段14が負荷を支持しているとき、例えば乗客コンベア10の乗客部分24にある間、有利である。
【0024】
図4Bでは、解放可能な取り付けシステム12Cは、作動状態にあり、踏段14は、推進機構16から切り離されている。ローラ48は、トラック58(または、代替として、トラック58の単なる変化)と接触し、トラック58は、ローラ48と、取り付けられたピストン50とを上方へ押す。ピストン50の上方への力によって、ばね56の長さを低減することでばね56を圧縮し、それによって、アクチュエータ28Cおよびロック30Cの組み合わせの状態変更を完了する。第1のクランプ52は、ピストン50に取り付けられているので、ピストン50によって上方へと引っ張られ、それによって、クランプ32Cは、推進機構16に対するその把持を解放する。推進機構16は次いで、第2のクランプ54から外され、それによって、踏段14および推進機構16は、互いに完全に分離される。いったん解放可能な取付システム12Cが推進機構16を踏段14から係合解除すると、推進機構16および踏段14は両方とも、例えば乗客コンベア10の戻り部分26に沿って、自由に別々の経路に追随する。
【0025】
図5A〜図5Fは、解放可能な取り付けシステム12Cの作動のさらなる詳細を示す一連の概略側面図である。図5A〜図5Fには、解放可能な取り付けシステム12C、踏段14、推進機構16、アクチュエータ28C、ロック30C、クランプ32C、ローラ48、ピストン50、第1のクランプ52、第2のクランプ54、ばね56、トラック58、トレーラホイール60、および踏段トラック62が図示される。解放可能な取り付けシステム12Cのこれらの構成要素は実質的に、図4A、図4Bを参照して上述したように配置される。さらに、踏段14の側面から延在するトレーラホイール60と、トレーラホイール60の下に配置された踏段トラック62とが、解放可能な取り付けシステム12Cのさらなる状況を説明するように図示される。当業技術内で知られるように、トレーラホイール60および踏段トラック62は、乗客コンベア10の閉ループ経路に沿って各踏段14を連続的に案内する。閉ループの乗客コンベア10に沿って移動しながら、解放可能な取り付けシステム12Cは、以下に詳述するように、乗客側24で推進機構16を係合させ、戻り側26で推進機構16を係合解除する。
【0026】
図5Aは、踏段14が乗客コンベア10の乗客側24を移動する際に、解放可能な取り付けシステム12Cによって推進機構16にしっかりと係合された、負荷を載せた踏段14を示す。ピストン50は、第1のクランプ52が推進機構16と接触するようにばね56によって下方へと偏倚されている。第1のクランプ52は、負荷を載せた踏段14と推進機構16との間に安全な接続が確保されるように所定の大きさの押圧力で推進機構16を第2のクランプ54に押圧している。第1のクランプ52によって使用される押圧力の大きさは、乗客コンベア10で許容可能な乗客の負荷を考慮して選択され、ばね56のばね定数によって実現される。
【0027】
図5Bは、踏段14が乗客コンベア10の戻り側26を入ったときなどの、負荷を降ろした直後の踏段14を示す。アクチュエータ28Cおよびロック30Cの組み合わせは、踏段14が戻り側26に入る際に、アクチュエータ28Cおよびロック30Cの組み合わせの状態を変更するように作動される。より詳細には、トラック58がローラ48を上方へと押し、ローラ48は、取り付けられたピストン50をばね56の方へ上方へと推進機構16から離れるように引っ張る。アクチュエータ28Cおよびロック30Cの組み合わせの作動によって、クランプ32Cの状態変更がトリガされる。第1のクランプ52が、ピストン50と共に上方へと持ち上げられることで、推進機構16は、第2のクランプ54に押圧されている状態から解放される。クランプ32Cの状態変更の完了後、推進機構16は踏段14から切り離される。
【0028】
図5Cは、推進機構16の踏段14からの切り離し直後の踏段14を示す。踏段14は、戻り側26の方向転換部を通って移動し続ける。より詳細には、踏段14は、乗客コンベア10の閉ループに沿って踏段トラック62およびトレーラホイール58に追随する方向68に移動する。しかしながら、推進機構16は、切り離され、解放可能な取り付けシステム12Cから離れるように横方向に引っ張られることができる。図示した実施例では、推進機構16は、トラクションホイール64によって方向66に駆動される。従って、戻り側26にある間、切り離されることによって、踏段14と推進機構16とは、異なる速さでおよび/または異なる方向に移動可能である。
【0029】
図5D〜図5Fは、踏段14が、戻り側26の最後に近づき、乗客側24に入る準備をする際の踏段14を示す。負荷を受けることを予想して、踏段14を推進機構16に結合させ、固定するために少なくとも3つのことが行われる。第1に、図5Dに示されるようにトラクションホイール64が推進機構16を第2のクランプ54の方へと戻すように案内する。第2に、図5Eに示されるように推進機構16が第2のクランプ54内へと戻って受けられる。第3に、トラック58が終了することで、ホイール48に加えられていた押圧力が取り除かれ、ピストン50が下がるとともにばね56が伸長することができる。また、ピストン50が下がると、第1のクランプ52が、推進機構16を第2のクランプ54に固定するように下方へと移動する。このように、解放可能な取り付けシステム12Cは、踏段14が乗客側24に安全に入り、負荷を支持することができるように、踏段14を推進機構16に結合させる。
【0030】
図6〜図9は、それぞれ代替のクランプ32D〜32Gおよび推進機構16D〜16Gを示す。図6〜図9のそれぞれには、推進機構16、クランプ32、アーム38、およびハンド40が示される。クランプ32のハンド40は、しっかりと、それでも取り外し可能に推進機構16に係合することができる任意の形態をとることができる。
【0031】
図6〜図9は全て、アーム38と、アーム38から延在するハンド40とを有するクランプ32のさまざまな実施例を示す。ハンド40は、さまざまな形状の推進機構16を把持するようにさまざまな形状となっている。図6は、ハンド40Dが円柱状またはロープ状の推進機構16Dとの摩擦嵌合をなすように半月または半分の殻状の形状を有するハンド40Dを示す。図7は、平形またはベルト状の推進機構16Eとの摩擦嵌合をなすようにアーム38Eから略垂直に延在する平形のハンド40Eを示す。図8は、歯付きベルト状の推進機構16Fとの押し込み式嵌合をなすようにアーム38Fから略垂直に延在する平形の歯付きハンド40Fを示す。推進機構16Fから下方へと延在する歯66Aが、ハンド40Fから上方へと延在する歯66B間に位置する空間と嵌合しているとはいえ、他の構成も同様に可能である。図9は、チェーン付き推進機構16Gとの押し込み式嵌合をなすようにアーム38Gから略垂直に延在するハンド40Gを示す。推進機構16Gのチェーンリンク間に位置する空間と嵌合するように歯66Cが両方のハンド40Gから延在する。
【0032】
ハンド40を構成するのに使用される形状および材料は、主に推進機構16の大きさに依存し、多少は乗客コンベア10の種類に依存する。図6A〜図6Dに図示されたクランプ32D〜32Gは、パレット14と推進機構16との間に安全な接続が確保されるように十分な押圧力でハンド40が押圧されて推進機構16と接触するので、全て類似している。乗客の負荷は、任意の与えられた乗客コンベア10で使用することになるクランプ30の種類を決定する際に考慮すべき要因である。
【0033】
相対的な方向を規定するのを助けるために垂直、水平、上、下、上部、下部、左、および右を明細書全体にわたって使用してきた。本発明は、好ましい実施例を参照して説明したとはいえ、当業者は、本発明の趣旨および範囲から逸脱せずに形態や詳細にさまざまな変更が可能であること理解するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
解放可能な踏段ロックシステムを有するコンベアであって、
負荷を支持する踏段と、
踏段に接続され、踏段を移動させる推進機構と、
踏段を推進機構に取り外し可能に取り付けるロックシステムと、
を備え、ロックシステムは、
踏段を推進機構に結合させるクランプ留め状態と、踏段を推進機構から切り離すクランプ解除状態とを有する、クランプと、
クランプに取り付けられており、踏段と推進機構との間の結合を確保するロック状態と、推進機構を踏段から切り離すロック解除状態とを有する、ロックと、
ロックおよび踏段の両方に取り付けられており、ロックの状態を変更することができる、アクチュエータと、
を備えることを特徴とするコンベア。
【請求項2】
推進機構は、ロープ、ベルト、およびチェーンから成る群より選択されることを特徴とする請求項1記載のコンベア。
【請求項3】
コンベアは、エスカレータおよび動く歩道から成る群より選択されることを特徴とする請求項1記載のコンベア。
【請求項4】
ロックは、少なくとも1つのばねを備えることを特徴とする請求項1記載のコンベア。
【請求項5】
アクチュエータの作動によって踏段が推進機構から切り離されるように、ロックは、ロック状態へと偏倚され、クランプは、クランプ留め状態へと偏倚されることを特徴とする請求項4記載のコンベア。
【請求項6】
クランプは、少なくとも1つのばねを備えることを特徴とする請求項4記載のコンベア。
【請求項7】
アクチュエータの作動によって踏段が推進機構から切り離されるように、ロックは、ロック解除状態へと偏倚され、クランプは、クランプ解除状態へと偏倚されることを特徴とする請求項6記載のコンベア。
【請求項8】
クランプは、推進機構との摩擦嵌合をなすことを特徴とする請求項1記載のコンベア。
【請求項9】
クランプは、推進機構との押し込み式嵌合をなすことを特徴とする請求項1記載のコンベア。
【請求項10】
アクチュエータは、トラックおよびローラの組み合わせ、レバー、ばね、およびソレノイドから成る群より選択されることを特徴とする請求項1記載のコンベア。
【請求項11】
踏段は、負荷を支持するように構成された上側と、アクチュエータに取り付けられる下側とを有することを特徴とする請求項1記載のコンベア。
【請求項12】
コンベアシステム内で踏段を移動させる方法であって、
コンベアシステムの閉ループ経路に沿って踏段を移動させ、
踏段が負荷を支持する閉ループ経路の第1の部分において踏段を推進機構に係合させ、
踏段が負荷から解放される閉ループ経路の第2の部分において踏段を推進機構から係合解除する、
ことを含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
第1の部分および第2の部分は、閉ループ経路の完全なループを形成することを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項14】
第1の部分は、乗客を輸送する乗客部分を備え、第2の部分は、踏段を乗客部分の最初に戻す戻り部分を備えることを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項15】
第2の部分は、乗客部分と戻り部分との間に配置された方向転換部をさらに備えることを特徴とする請求項14記載の方法。
【請求項16】
コンベアシステム用の推進機構に踏段を着脱する方法であって、
コンベアシステム内の推進機構に踏段を取り付けるロックシステムを作動させ、
ロックシステムの作動に応答してロックを第1のロックの状態から第2のロックの状態に変更し、
踏段と推進機構の間の取り付けが変更されるようにロックの状態の変更に応答してクランプを第1のクランプ状態から第2のクランプ状態に変更する、
ことを含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
乗客コンベアシステム内の推進機構に踏段を取り付けるロックシステムを作動停止させ、
ロックシステムの作動に応答してロックを第2のロックの状態から第1のロックの状態に変更し、
踏段と推進機構の間の取り付けが変更されるようにロックの状態の変更に応答してクランプを第2のクランプ状態から第1のクランプ状態に変更する、
ことをさらに含むことを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項18】
クランプを第1のクランプ状態から第2のクランプ状態に変更することによって、踏段を推進機構に取り付けることを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項19】
クランプを第1のクランプ状態から第2のクランプ状態に変更することによって、踏段を推進機構から取り外すことを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項20】
コンベアシステムは、動く歩道であることを特徴とする請求項16記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図5C】
image rotate

【図5D】
image rotate

【図5E】
image rotate

【図5F】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2012−533494(P2012−533494A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−521602(P2012−521602)
【出願日】平成21年7月20日(2009.7.20)
【国際出願番号】PCT/US2009/051118
【国際公開番号】WO2011/010987
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(591020353)オーチス エレベータ カンパニー (402)
【氏名又は名称原語表記】OTIS ELEVATOR COMPANY
【Fターム(参考)】