説明

解析デバイス装置、解析システム、解析方法

【課題】遺伝子情報をデータベース等で集中管理することなく、セキュリティを確保しながら、記憶・管理することができる解析デバイス装置を提供する。
【解決手段】コンピュータに通信可能に接続される解析デバイス装置であって、一塩基多型の情報であるSNP情報と前記SNP情報に対応する遺伝子型を表す情報である遺伝子型情報とのうちSNP情報が、外部機器から読み出し可能に情報を記憶するストレージ領域または外部機器から読み出し不可である情報を記憶するセキュア領域の領域に記憶され、遺伝子型情報が他方の領域に格納された記憶部と、前記記憶部を参照し、前記SNP情報と前記遺伝子型情報との情報を読み出し、読み出した前記SNP情報と前記遺伝子型情報とに基づいて遺伝子の診断を行う解析プログラムを実行する制御部と、前記制御部が実行した解析結果を出力する出力部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子情報を記憶する解析デバイス装置、解析システム、解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、遺伝子情報と疾病の関連性の研究が進み、遺伝子情報の有用性が高まっている。遺伝子情報データは、データサイズが大きいことや、情報の機密性が必要であることから、これを安全に記憶・保存する場合、維持・管理面、コスト面の課題が生じる。これを解決するために、様々なシステムが提案されている。例えば、遺伝子情報データを暗号化して記憶するシステムがある(例えば、特許文献1および2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−357130号公報
【特許文献2】特開2002−24385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1および2に示すシステムにおいては、遺伝子情報データそのもののデータサイズが大きいため、暗号化あるいは復号する際の処理の負荷が大きくなるとともに、大きな容量の記憶領域が必要となる問題がある。また、遺伝子情報は、個人情報でもあるため、上述の特許文献1および2においては、暗号化されてはいるものの、遺伝子情報データが一括して記憶されているので、第三者によって何らかの手法で復号されてしまうと、遺伝子情報データが把握できてしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、遺伝子情報をデータベース等で集中管理することなく、セキュリティを確保しながら、記憶・管理することができる解析デバイス装置、解析システム、解析方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、コンピュータに通信可能に接続される解析デバイス装置であって、一塩基多型の情報であるSNP情報と前記SNP情報に対応する遺伝子型を表す情報である遺伝子型情報とのうちSNP情報が、外部機器から読み出し可能に情報を記憶するストレージ領域または外部機器から読み出し不可である情報を記憶するセキュア領域の領域に記憶され、遺伝子型情報が他方の領域に格納された記憶部と、
前記記憶部を参照し、前記SNP情報と前記遺伝子型情報との情報を読み出し、読み出した前記SNP情報と前記遺伝子型情報とに基づいて遺伝子の診断を行う解析プログラムを実行する制御部と、前記制御部が実行した解析結果を出力する出力部と、を有することを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、上述の解析デバイス装置において、前記解析プログラムは、前記セキュア領域に記憶されており、前記制御部は、前記セキュア領域から前記解析プログラムを読み出して実行することを特徴とする。
また、本発明は、上述の解析デバイス装置において、前記制御部は、前記解析プログラムを実行し、解析対象として指定されるSNP情報に一致するSNP情報が前記記憶部に記憶されているか否かを判定し、一致するSNP情報が前記記憶部に記憶されている場合、前記SNP情報に対応する遺伝子型情報を前記記憶部から読み出し、読み出した遺伝子型情報を用いて解析を行うことを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、コンピュータに通信可能に解析デバイス装置が接続される解析システムであって、前記解析デバイス装置は、一塩基多型の情報であるSNP情報と前記SNP情報に対応する遺伝子型を表す情報である遺伝子型情報とのうちSNP情報が、外部機器から読み出し可能に情報を記憶するストレージ領域または外部機器から読み出し不可である情報を記憶するセキュア領域の領域に記憶され、遺伝子型情報が他方の領域に格納された記憶部と、前記記憶部を参照し、前記SNP情報と前記遺伝子型情報との情報を読み出し、読み出した前記SNP情報と前記遺伝子型情報とに基づいて遺伝子の診断を行う解析プログラムを実行する制御部と、前記制御部が実行した解析結果を前記コンピュータに出力する出力部と、を有し、前記コンピュータは、前記出力部から出力される解析結果を受信する受信部と、前記受信部が受信した解析結果を出力する出力部と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、コンピュータに通信可能に解析デバイス装置が接続される解析システムにおける解析方法であって、前記解析デバイス装置の制御部が、一塩基多型の情報であるSNP情報と前記SNP情報に対応する遺伝子型を表す情報である遺伝子型情報とのうちSNP情報が、外部機器から読み出し可能に情報を記憶するストレージ領域または外部機器から読み出し不可である情報を記憶するセキュア領域の領域に記憶され、遺伝子型情報が他方の領域に格納された記憶部を参照し、前記SNP情報と前記遺伝子型情報との情報を読み出し、読み出した前記SNP情報と前記遺伝子型情報とに基づいて遺伝子の診断を行う解析プログラムを実行し、前記解析デバイス装置の出力部が、前記制御部が実行した解析結果を前記コンピュータに出力し、前記コンピュータの受信部が、前記解析デバイス装置の出力部から出力される解析結果を受信し、前記コンピュータの出力部が、前記受信部が受信した解析結果を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、この発明によれば、一塩基多型の情報であるSNP情報とSNP情報に対応する遺伝子型を表す情報である遺伝子型情報とのうちSNP情報が、外部機器から読み出し可能に情報を記憶するストレージ領域または外部機器から読み出し不可である情報を記憶するセキュア領域の領域に記憶され、遺伝子型情報が他方の領域に格納された記憶部を参照し、SNP情報と前記遺伝子型情報との情報を読み出し、読み出したSNP情報と遺伝子型情報とに基づいて遺伝子の診断を行う解析プログラムを実行し、その結果を出力するようにしたので、サーバやデータベースに個人の遺伝子情報を保管しなくてよい。
さらに、解析デバイス装置内に診断を行う解析プログラムが保存されるようにしたので、電子デバイス装置内で遺伝子解析の処理を行うことができる。
このように、遺伝子情報の解析を解析デバイス装置のセキュア領域内で解析を行うことができるので、セキュア領域の外(外部コンピュータ)に遺伝子情報を出力することなく解析を行うことができ、これにより、情報漏洩を防止しつつ、セキュリティを確保しつつ情報の格納をすることができる。
また、本発明によれば、解析対象として指定されるSNP情報に一致するSNP情報が記憶部に記憶されているか否かを判定し、一致するSNP情報が記憶部に記憶されている場合、SNP情報に対応する遺伝子型情報を記憶部から読み出すようにした。これにより、診断する際に必要となる遺伝子型情報を、SNP情報を基に検索して絞り込みを行ってから解析するようにしたので、全ての遺伝子型情報に対して解析処理を行う必要がなく、解析処理にかかる負荷と処理時間を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の一実施形態による遺伝子情報解析システム100の構成を示す概略ブロック図である。
【図2】メモリ34の記憶領域について説明する図である。
【図3】メモリ34に記憶される情報の一例を示す図である。
【図4】遺伝子情報解析システム100の動作を説明するシーケンス図である。
【図5】ある薬剤の副作用の有無の判定である場合における解析プログラムの処理を説明するフローチャートである。
【図6】ある薬剤の処方量を判断する場合における解析プログラムの処理を説明するフローチャートである。
【図7】ある薬剤の処方量を判断する場合における解析プログラムの処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態による遺伝子情報解析システム100について図面を参照して説明する。図1は、この発明の一実施形態による遺伝子情報解析システム100の構成を示す概略ブロック図である。
遺伝子情報は、そのデータ量が膨大であるので、この実施形態においては、メモリサイズを削減するために、遺伝子情報のうちSNP(Single Nucleotide Polymorphism)の情報を記憶する場合について説明する。
ゲノム塩基配列中に一塩基が変異した多様性が見られ、その変異が集団内で1%以上の頻度で見られる場合、これは一塩基多型(SNP)と呼ばれる。人間の場合、1000〜2000個に一個の割合で、各個人によって異なる配列部分(SNP)が存在することが知られており、このSNPを利用した解析(連鎖解析や関連解析)により、疾患関連遺伝子の特定が可能となることが期待されている。
例えば、ALDH2(アルデヒドデヒドロゲナーゼ遺伝子)のSNPに依存して、アルコールに対する強さの遺伝的要因が発現することは既知である。
また近年、臨床での応用が期待される遺伝子のSNPも多く見出されている。例えば、CYP2C9とVKORC1は、経口抗凝固薬のワルファリンの効能に影響を及ぼすことが知られている。患者がこれらの遺伝子に酵素活性を低下させるようなSNPを持つ場合には、効果が強く発現し、有毒な中間代謝産物が蓄積し、副作用が生じるケースがある。逆に、患者が薬剤の働きを妨害するようなSNPを持つ場合には、投薬量を増加する処置が望まれる。従って、特定のSNPを予め検査して遺伝子型を判断することによって、患者ごとに副作用を回避し、適切な薬剤投与量を決定し、効率的な治療を行うことが可能となる。このような医療は「オーダーメイド医療」や「テーラーメイド医療」等と呼ばれ、注目されている。オーダーメイド医療において、SNPを利用した診断の実用化・普及が大いに期待されている。
【0013】
遺伝子情報解析システム100は、サーバ1とコンピュータ2と解析デバイス3とを含んで構成される。
サーバ1は、遺伝子情報を解析するプログラムである解析エンジンを記憶している。この解析エンジンは、例えば、新しい遺伝子解析手法がある場合に、その解析手法に応じた解析エンジンが更新される。
コンピュータ2は、サーバ1とインターネット等のネットワークを介して接続され、サーバ1から解析エンジンをダウンロードしてハードディスク等の記憶領域に記憶する。このコンピュータ2は、ユーザからの要求に応じて、解析に必要な情報や、最新の解析エンジンを解析デバイスへ送信する。また、解析デバイス装置3が実行する解析プログラムの実行結果を解析デバイス装置3から受信し、受信した診断結果をディスプレイ装置に表示する。
【0014】
解析デバイス3は、例えば、セキュア領域を有するICチップが搭載されるデバイス装置であればよく、ICカード以外に、ICチップが搭載された携帯電話、携帯電話に使用されるUIMカード、USBメモリ装置等であってもよい。この実施形態では、解析デバイス装置3がICカードである場合について説明する。
解析デバイス3において、通信インタフェース31は、CPU33とコンピュータ2との間の通信を行う。また、通信インタフェース31は、CPU33が実行した解析結果をコンピュータ2に出力する。コプロセッサ32は、CPU33からの指示に応じて、各種演算を行う。
CPU33は、メモリ34に記憶されたSNP情報と遺伝子型情報と解析プログラムを読み出して、解析プログラムを実行する機能を有する。例えば、この解析プログラムは、病名に応じて、解析デバイス内でSNPを診断し、その診断結果をデバイス上のディスプレイ装置に表示したり、外部に接続されるコンピュータ2に出力をする。
また、CPU33は、解析プログラムを実行し、解析対象として指定されるSNP情報に一致するSNP情報がメモリ34に記憶されているか否かを判定し、一致するSNP情報がメモリ34に記憶されている場合、SNP情報に対応する遺伝子型情報をメモリ34から読み出し、読み出した遺伝子型情報を用いて解析を行う。
【0015】
メモリ34は、RAM35、EEPROM36、ROM37とを含んで構成される。メモリ34は、SNP情報と遺伝子型情報とを用いて診断・解析を行う解析プログラムが記憶される。RAM35、EEPROM36、ROM37は、それぞれ、記憶領域が設けられ、各種情報を記憶する。
【0016】
図2は、メモリ34の記憶領域について説明する図である。
この図に示すように、メモリ34には、外部機器から読み出し可能に情報を記憶する直接読出可能領域(ストレージ領域)と、外部機器から読み出し不可である情報を記憶する直接読出不可領域(セキュア領域)とがある。
ストレージ領域には、一塩基多型の情報であるSNP情報と、解析結果を出力するプログラムである表示アプリケーションが記憶される。
セキュア領域には、遺伝子型情報と、解析デバイス装置を利用する際のユーザ認証を行うための情報であるユーザID、ログインパスワードが記憶される他、遺伝子型情報を暗号化する場合に用いられる暗号鍵と、遺伝子情報を解析するプログラムである遺伝診断アプリが記憶される。
なお、この実施形態においては、ストレージ領域にSNP情報、セキュア領域に遺伝子型情報が記憶される場合について説明するが、セキュア領域にSNP情報、ストレージ領域に遺伝子型情報が記憶されるようにしてもよい。
ここで、SNP情報は、例えば、SNPの名称であり、一般的に知ることができる情報である。一方、遺伝子型情報は、個人の情報であり、機密性が必要である。この実施形態においては、ストレージ領域にSNP情報、セキュア領域に遺伝子型情報を記憶するようにしたので、個人の情報である遺伝子型情報については、解析デバイス装置の外に読み出すことができないため、個人情報のセキュリティを向上させることができる。なお、セキュリティ領域は、一般に耐タンパ性が高いので、セキュリティを確保できる。
【0017】
ここでは、ROM37内またはEEPROM36内に直接読出可能領域と直接読出不可領域とを設ける構成としてもよいし、ROM37内を直接読出不可領域、EEPROM36内を直接読出可能領域を設ける構成であってもよい。
図3は、メモリ34に記憶される情報をストレージ領域とセキュア領域とに分けて記憶する場合の一例を示す図である。ここでは、ストレージ領域にSNP情報が記憶され、このSNP情報に対応付けて、セキュア領域に遺伝子型情報が記憶されている。このSNP情報と遺伝子型情報とは、メモリ領域のアドレス情報によって関連付けされるようにしてもよい。このように、個人で異なる遺伝子型を持つことが知られるSNP名を表すSNP情報と遺伝子型情報とを利用する。
【0018】
図4は、遺伝子情報解析システム100の動作を説明するシーケンス図である。
ここでは、コンピュータ2には、サーバ1から解析エンジンがダウンロードされているものとする。
まず、コンピュータ2は、ユーザからの診断要求が入力されると、診断要求された診断項目を解析デバイス装置3に送信する(ステップS1)。この診断項目とは、例えば、薬剤名とその薬剤に関する情報であり、薬剤に関する情報には副作用の有無や薬の処方量などが該当する。また、性別や体重などの個人情報を含めても良い。
解析デバイス装置3のCPU33は、コンピュータ2から診断項目を受信すると、解析プログラムを選択実行し、診断項目に適合する診断情報(特定のSNP情報と遺伝子型情報の組み合わせ)の検索を行う(ステップS2)。ここでは、該当するSNP情報と遺伝子型情報との組み合わせの情報と、メモリ34内のストレージ領域とセキュア領域とにアクセスして記憶された情報とを比較し、一致する組み合わせがあるか否かを検索する。
【0019】
続いて、CPU33は、検索結果を基に、解析プログラムをメモリ34から読み出して実行する(ステップS3)。ここでは、ステップS2で得られた検索一致または不一致の結果に基づいて、診断・解析を行う。そして、CPU33は、解析結果が得られると、その解析結果を通信インタフェース31を介してコンピュータ2に送信する(ステップS4)。ここでは、解析結果として種々のデータを送信することが可能であるが、例えば、診断対象である薬剤に対する副作用の有無を送信する。
コンピュータ2は、解析結果を受信すると、ディスプレイ装置に表示する(ステップS5)。
【0020】
一方、ユーザは、コンピュータ2を定期的にサーバ1にアクセスさせる。この際、コンピュータ2は、サーバ1にアクセスすると、更新された解析エンジンがある場合、更新後の解析エンジンをダウンロードし(ステップS6)、コンピュータ2の解析結果表示プログラムを更新したり、解析エンジンに含まれる解析プログラムを解析デバイス装置3に送信し、更新要求を送信する(ステップS8)。
解析デバイス装置3は、更新要求と更新用の解析プログラムをコンピュータ2から受信すると、解析プログラムを更新する(ステップS9)。この更新は、更新前の解析プログラムに更新後の解析プログラムを上書きすることによって更新してもよいし、アップデート情報として更新後の解析プログラムを追加プログラムとしてメモリ34のストレージ領域にCPU33が書き込むようにしてもよい。
【0021】
次に、解析デバイス装置3が実行する解析プログラムについて、さらに説明する。図5は、診断・解析内容が、ある薬剤の副作用の有無の判定である場合における解析プログラムの処理を説明するフローチャートである。
この診断・解析の一例としては、抗がん剤である「イリノテカン」をモデルにした場合であり、副作用とSNPの関連性について、診断・解析する場合について説明する。
イリノテカンは、国内では、大腸がんや肺がん、子宮頸がん、卵巣がん、胃がん、乳がん、悪性リンパ腫等に適用される薬剤の一つであり、今日のがん臨床で広く用いられている。UGT(グルクロン酸転移酵素 (UDP-glucuronosyltransferase))活性の低下をきたすUGT1A1遺伝子多型をもつ人は、白血球減少や下痢などの副作用リスクが高まることが報告されている。
薬剤の副作用の有無は、複数箇所の特定SNPの特定遺伝子型に該当するか否かに基づいて判断される場合が多い。イリノテカンは、例えば、2箇所のSNPの特定によって判断される。
【0022】
解析デバイス装置3は、コンピュータ2から、診断項目として、薬剤名(薬剤A)と薬の副作用の有無の情報を受信する(ステップS10)。そして、CPU33は、薬の副作用の有無を解析する解析プログラムを選択起動し、診断項目に適合する診断情報が、例えば、SNP情報がrs XXXXXXXXであり、遺伝子型がCCであることを解釈する。次に、当該診断情報のSNP情報に一致するSNP情報がメモリ34のストレージ領域に記憶されているか否かを検索する(ステップS11)。
一致するSNP情報が無ければ、CPU33は、ステップS16に移行し、コンピュータ2に解析結果として、副作用無し、の情報を送信する。
一方、一致する該当するSNP情報がストレージ領域にある場合、CPU33は、この見つかったSNP情報に対応する遺伝子型情報をセキュア領域から読み出し(ステップS13)、読み出した遺伝子型情報が、コンピュータ2から送信された遺伝子型情報と一致するか否かを判定する(ステップS14)。
一致しなければ、ステップS16に移行し、一致すれば、「副作用あり」の情報を含む診断・解析結果をコンピュータ2に送信する(ステップS15)。
【0023】
次に、解析デバイス装置3が実行する解析プログラムの他の例について説明する。ここでは、診断・解析の一例として、薬剤が抗凝固薬「薬剤B」である場合をモデルとして説明する。
図6は、診断・解析内容が、ある薬剤の処方量を判断する場合における解析プログラムの処理を説明するフローチャートである。ここでは、解析デバイス装置3は、診断デバイスに遺伝子型を送信するのみであり、処方量に関しては、診断デバイス(コンピュータ2のアプリケーション)にて解析をする場合を表す。
【0024】
解析デバイス装置3は、コンピュータ2から、診断項目として、薬剤名(薬剤B)と薬の処方量などの情報を受信する(ステップS20)。そして、CPU33は、薬の処方量を解析する解析プログラムを選択起動し、診断項目に適合する診断情報が、例えば、SNP情報がrs YYYYYYYであり、遺伝子型がAG、CG、AAであることを解釈する。次に、当該診断情報のSNP情報に一致するSNP情報をメモリ34のストレージ領域から検索する(ステップS21)。
CPU33は、一致するSNP情報に対応する遺伝子型情報を読み出し、遺伝子型情報を、ステップS20において受信した遺伝子型情報と比較することによって判別する(ステップS23)。
CPU33は、遺伝子型情報が、CGである場合、診断結果「CG」をコンピュータ2に送信し(ステップS24)、遺伝子型情報がAGである場合、診断結果「AG」をコンピュータ2に送信し(ステップS25)、遺伝子型情報がAAである場合、診断結果「AA」をコンピュータ2に送信する(ステップS26)。
【0025】
コンピュータ2が診断結果を受信すると、受信した診断結果が示す遺伝子型情報に基づいて、抗凝固薬の処方量をアプリケーションを実行することによって決定する。
【0026】
なお、抗凝固薬は種々あるが、その一例として、「ワルファリン」がある。ワルファリンは日本で経口投与可能な唯一の抗凝固薬であり、血栓性疾患 (脳梗塞、肺塞栓等) の治療と予防に使用されている。ワルファリンは、薬効の個人差が大きく、用量のコントロールが難しいため、過量投与の場合は、出血 (脳出血、粘膜出血、皮下出血等)、過少投与の場合は血栓形成を起こしてしまうため、ユーザに応じた適量投与量を見つけておくことが望ましい。
【0027】
次に、解析デバイス装置3が実行する解析プログラムの他の例について、説明する。ここでは、診断・解析の一例として、薬剤が抗凝固薬「薬剤A」である場合であって、解析デバイス装置3が、遺伝子型の判別を行った後に、解析も行う場合について説明する。図7は、診断・解析内容が、ある薬剤の処方量を判断する場合における解析プログラムの処理を説明するフローチャートである。
ここでは、遺伝子型情報と処方量とを対応づけしてメモリ34内のセキュア領域またはストレージ領域に記憶しておく。
【0028】
解析デバイス装置3は、コンピュータ2から、診断内容が薬の処方量であり、SNP情報と遺伝子型情報との組み合わせ(例えば、SNP情報がrs YYYYYYYであり、遺伝子型がAG、CG、AA)の情報を受信する(ステップS30)。そして、CPU33は、薬の処方量を解析する解析プログラムを起動し、受信したSNP情報に一致するSNP情報をメモリ34のストレージ領域から検索する(ステップS31)。
CPU33は、一致するSNP情報に対応する遺伝子型情報を読み出し、遺伝子型情報を、ステップS30において受信した遺伝子型情報とを比較することによって判別する(ステップS33)。
CPU33は、遺伝子型情報が、CGである場合、CGに応じた処方量をメモリ34から読み出し、読み出した処方量「標準量」をコンピュータ2に送信する(ステップS34)。一方、遺伝子型情報がAGである場合、CPU33は、AGに応じた処方量をメモリ34から読み出し、読み出した処方量「標準の1/2」をコンピュータ2に送信し(ステップS35)、遺伝子型情報がAAである場合、AAに応じた処方量をメモリ34から読み出し、読み出した処方量「標準の1/3」をコンピュータ2に送信する(ステップS36)。
コンピュータ2が診断結果を受信すると、受信した診断結果が示す処方量が、ディスプレイ装置に表示される。
【0029】
なお、遺伝子型については、SNPの種類に依存し、例えば全ての人はAA、AG、GGの3種類の型のどれかに該当するが、AAのみ特徴が異なり、AG、GG、の2種類はほぼ同程度の性質を示すケース、AA、AG、GGそれぞれ異なる性質を示すケースなど様々である。従って、実際には上述の図6、図7のような解析プログラムの処理に限定されるものではなく、様々なファクター(患者の体重、処方する薬剤の組み合わせ等)を考慮し、多量の実験・研究データ、経験をベースにして薬剤処方量を決めるようにしてもよい。
また投薬の維持容量は、遺伝子型だけではなく人種とも関連があるので、例えば、同じ遺伝子型でも日本人と欧米人では異なる処方量となるように、解析プログラムを変更するようにしてもよい。
【0030】
以上説明した実施形態によれば、診断する際に、自宅のコンピュータや携帯電話からWeb上の機能を利用したり、端末内に格納されたアプリケーションを実行することによって、解析デバイス装置3を用いて診断を行うことができるので、病院や研究所など、解析用サーバが設置された施設に出向いたり、専用端末を必要とせずに診断を行うことができる。
また、サーバからのダウンロードにより解析デバイス内の解析エンジンの更新を行うようにしたので、日々更新される遺伝子解析手法に従ったアプリケーションにアップデートすることができる。
【0031】
また、以上説明した実施形態においては、ICカード、コンピュータ2とを接続することで、遺伝子情報(SNP)を読み出し、解析・診断を行う遺伝子情報解析デバイスシステムとして利用することができる。このように、遺伝子型情報等のユーザ個人の情報をセキュア領域に格納したICカードとして構成するようにしたので、各ユーザは、自身の個人情報をICカードに格納して保持あるいは携帯するようにしたので、例えばサーバに一括して記憶されていないため、ユーザの情報の全てが一度に漏洩してしまうことを防ぐことができる。また、遺伝子型情報をセキュア領域に格納するようにしたので、仮に第三者がICカード3から読みだそうとしても、耐タンパ性がある領域に個人の情報である遺伝子型情報が格納されていることから、遺伝子型情報そのものが外部から閲覧されることを防止することができる。
【0032】
また、上述の解析デバイス装置3の機能としては、個人の薬の相性(薬の効き目、副作用、アレルギー等)や、アルコール耐性(お酒に強い、弱い等)の解析等を行う場合にも対応することができる。
【0033】
なお、上述の実施形態において、解析デバイス装置3のメモリサイズが不足する場合は、一部のセキュア領域のデータを暗号化して、ストレージ領域に保存してもよい。また、電子割符を用いて安全に分割するようにしてもよい。
また、セキュア領域に個人や病名を特定する遺伝情報を記憶し、ストレージ領域に公開されたとしても問題のない遺伝情報を記憶するようにしてもよい。また、格納する順番をランダムに変更するために、セキュア領域にSNP情報とアドレス情報とを記憶し、ストレージ領域に遺伝子型情報を記憶するようにしてもよい。
また、上述した実施形態においては、解析デバイス装置3から診断結果をコンピュータ2に送信して表示させる場合について説明したが、解析デバイス装置3に表示装置やスピーカ等の出力装置を設け、これらの出力装置によって診断結果を表示したり、音声を出力するようにしてもよい。
【0034】
また、図1における解析デバイス装置3の解析プログラム、コンピュータ2のアプリケーションの機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより遺伝子情報の解析や診断を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0035】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0036】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0037】
1 サーバ、2 コンピュータ、3 解析デバイス装置、31 通信インタフェース、32 コプロセッサ、33 CPU、34 メモリ、35 RAM、36 EEPROM、37 ROM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに通信可能に接続される解析デバイス装置であって、
一塩基多型の情報であるSNP情報と前記SNP情報に対応する遺伝子型を表す情報である遺伝子型情報とのうちSNP情報が、外部機器から読み出し可能に情報を記憶するストレージ領域または外部機器から読み出し不可である情報を記憶するセキュア領域の領域に記憶され、遺伝子型情報が他方の領域に格納された記憶部と、
前記記憶部を参照し、前記SNP情報と前記遺伝子型情報との情報を読み出し、読み出した前記SNP情報と前記遺伝子型情報とに基づいて遺伝子の診断を行う解析プログラムを実行する制御部と、
前記制御部が実行した解析結果を出力する出力部と、
を有することを特徴とする解析デバイス装置。
【請求項2】
前記解析プログラムは、前記セキュア領域に記憶されており、前記制御部は、前記セキュア領域から前記解析プログラムを読み出して実行する
ことを特徴とする請求項1記載の解析デバイス装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記解析プログラムを実行し、解析対象として指定されるSNP情報に一致するSNP情報が前記記憶部に記憶されているか否かを判定し、一致するSNP情報が前記記憶部に記憶されている場合、前記SNP情報に対応する遺伝子型情報を前記記憶部から読み出し、読み出した遺伝子型情報を用いて解析を行う
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の解析デバイス装置。
【請求項4】
コンピュータに通信可能に解析デバイス装置が接続される解析システムであって、
前記解析デバイス装置は、
一塩基多型の情報であるSNP情報と前記SNP情報に対応する遺伝子型を表す情報である遺伝子型情報とのうちSNP情報が、外部機器から読み出し可能に情報を記憶するストレージ領域または外部機器から読み出し不可である情報を記憶するセキュア領域の領域に記憶され、遺伝子型情報が他方の領域に格納された記憶部と、
前記記憶部を参照し、前記SNP情報と前記遺伝子型情報との情報を読み出し、読み出した前記SNP情報と前記遺伝子型情報とに基づいて遺伝子の診断を行う解析プログラムを実行する制御部と、
前記制御部が実行した解析結果を前記コンピュータに出力する出力部と、を有し、
前記コンピュータは、
前記出力部から出力される解析結果を受信する受信部と、
前記受信部が受信した解析結果を出力する出力部と、
を有することを特徴とする解析システム。
【請求項5】
コンピュータに通信可能に解析デバイス装置が接続される解析システムにおける解析方法であって、
前記解析デバイス装置の制御部が、一塩基多型の情報であるSNP情報と前記SNP情報に対応する遺伝子型を表す情報である遺伝子型情報とのうちSNP情報が、外部機器から読み出し可能に情報を記憶するストレージ領域または外部機器から読み出し不可である情報を記憶するセキュア領域の領域に記憶され、遺伝子型情報が他方の領域に格納された記憶部を参照し、前記SNP情報と前記遺伝子型情報との情報を読み出し、読み出した前記SNP情報と前記遺伝子型情報とに基づいて遺伝子の診断を行う解析プログラムを実行し、
前記解析デバイス装置の出力部が、前記制御部が実行した解析結果を前記コンピュータに出力し、
前記コンピュータの受信部が、前記解析デバイス装置の出力部から出力される解析結果を受信し、
前記コンピュータの出力部が、前記受信部が受信した解析結果を出力する
ことを特徴とする解析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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