解析装置、その方法及びそのプログラム
【課題】タイヤのトレッドパターンにおいて、一部の意匠を残したまま最適解を求めることができる解析装置を提供する。
【解決手段】解析装置は、有限要素モデルにおける意匠について、位相と形状が変更可能な変更初期意匠と両者を保持する固定初期意匠とに分け、両意匠から最適化した意匠を求める。
【解決手段】解析装置は、有限要素モデルにおける意匠について、位相と形状が変更可能な変更初期意匠と両者を保持する固定初期意匠とに分け、両意匠から最適化した意匠を求める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤのトレッドパターンにおいて、位相と形状との最適化を解析する解析技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、特許文献1においては、構造物の各部の弾性変形を利用して、所定部位に与えられた荷重又は変位に対し、他の部位に目的の荷重又は変位を出力する構造物を設計するための最適設計支援装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、非特許文献1においては、レベルセット法に基づく機械構造物の構造最適化が提案されている。
【0004】
さらに、非特許文献2においては、3次元の構造物に関してレベルセット法に基づく構造最適化も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2006/009026A1
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「レベルセット法に基づく構造最適化」 京都大学 西脇真二他、日本機械学会論文集(C編)第73巻第725号
【非特許文献1】”Structural optimization using sensitivity analysis and a level-set method”、Gregoire Allaire、Journal of Computational physics 194(2004) 363〜393
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、タイヤのトレッドパターンにおいて、例えば、図13(a)に示すように、タイヤ接地形状が丸型で、ショルダー部の接地圧がセンター部に比べて高い場合、ショルダー部の磨耗性能の低下が懸念される。そのため、図13(b)のハッチング領域に示すように、ショルダー部のブロックは、磨耗性能の向上を図るため、予めブロック形状とする必要があるので、この領域のブロック形状(意匠)を残しておく必要がある。
【0008】
しかし、上記のような従来の最適化の手法では、一部の意匠を残して構造物の形状の最適解を求めることはできないという問題点があった。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、タイヤのトレッドパターンにおいて、一部の意匠を残したまま最適解を求めることができる解析装置、その方法及びそのプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、タイヤのトレッドパターンの意匠を求める解析装置において、初期意匠を表した有限要素モデルを作成するモデル作成部と、前記有限要素モデルにおける初期意匠の境界を表した点列群に関するデータを取得するデータ取得部と、前記初期意匠に関して、設計変更が可能な初期意匠である変更初期意匠と、設計変更が不可能な初期意匠である固定初期意匠とに識別する識別部と、前記有限要素モデルにおける有限要素毎のヘビサイト関数の初期値を計算する第1計算部と、(1)前記有限要素毎の評価点と最短距離にある前記初期意匠を表す点を特定し、前記最短距離を値とするレベルセット関数を、前記有限要素毎に計算すると共に、(2)前記最短距離の値に関して前記ヘビサイト関数に基づいてプラス又はマイナスの符号を付加する第2計算部と、前記有限要素毎のレベルセット関数を用いて、前記初期値を計算したヘビサイト関数を再計算する第3計算部と、有限要素法を用いて各有限要素の変位場における歪みベクトルを少なくとも解析する解析部と、再計算した前記ヘビサイト関数の値と前記歪みベクトルとから目的凡関数を、前記有限要素毎に算出する関数算出部と、前記目的凡関数を最小化することにより、前記変更初期意匠に関する前記有限要素のレベルセット関数のみを更新する更新部と、更新した前記レベルセット関数を再初期化する再初期部と、前記有限要素毎の再初期化した前記レベルセット関数が収束しているか否かを判定し、収束していなければ前記解析部、前記関数算出部、更新部、再初期化部の処理を繰り返すように制御し、収束していれば、収束した前記レベルセット関数を最適化したレベルセット関数と判定する判定部と、前記有限要素毎の最適化したレベルセット関数から、最適化した意匠に変換する変換部と、を有することを特徴とする解析装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、一部の初期意匠を残したままタイヤのトレッドパターンの最適解を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態を示す解析装置のブロック図である。
【図2】解析装置のフローチャートである。
【図3】有限要素モデルの例である。
【図4】有限要素モデルに意匠を表す点列群を表記した図である。
【図5】固定初期意匠と変更初期意匠の識別を行った有限要素モデルの図である。
【図6】有限要素モデルにおいてヘビサイト関数を説明する図である。
【図7】レベルセット関数の評価を説明する図である。
【図8】レベルセット関数の定義を説明する図である。
【図9】レベルセット関数φ=0の等位線と有限要素との交差について説明する図である。
【図10】再初期化のための仮想点を説明する図である。
【図11】一般座標系と全体座標系の変換を示す図である。
【図12】レベルセット関数から意匠への変換を示す図である。
【図13】固定初期意匠を保持する理由を示す図である。
【図14】初期形状と固定初期意匠を設定しなかったときの図と、設定したときの図である。
【図15】反復回数、目的汎関数、Volumeとの関係を示す変更履歴のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態の解析装置10について図1〜図15に基づいて説明する。
【0014】
本発明の解析装置10は、タイヤのトレッドパターンの意匠に関する位相及び形状の最適解を求めるものである。
【0015】
ここで「形状」とは、構造物(タイヤ)の表面形状を意味し、この形状最適化問題とは、構造物の表面形状を設計変数とする最適化問題をいう。
【0016】
「位相」とは、空間上の位相、すなわち、構造物の形態を意味し、位相最適化問題とは、空間上の位相を設計変数とする最適化問題である。形態とは、上記形状の有無と配置という。
【0017】
(1)解析装置10の構成
本実施形態の解析装置10の構成について、図1のブロック図に基づいて説明する。
【0018】
図1に示すように、解析装置10は、モデル作成部12、データ取得部14、識別部16、第1計算部18、第2計算部20、第3計算部22、解析部24、関数算出部26、更新部28、再初期化部30、修正部32、判定部34、変換部36及び出力部38を有する。
【0019】
解析装置10は、例えば汎用のコンピュータを基本ハードウエアとして用いることでも実現することは可能である。すなわち、解析装置10の各部12〜38の構成は、前記のコンピュータに搭載されたプロセッサにプログラムを実行させることにより、実現することができる。このとき、各部12〜38の機能は、前記のプログラムをコンピュータに予めインストールすることで実現してもよいし、CD−ROMなどの記録媒体に記録して、又は、ネットワークを介して前記のプログラムを配布して、このプログラムをコンピュータに適宜インストールすることで実現してもよい。
【0020】
以下、各部12〜38の内容について図2のフローチャートに基づいて説明する。
【0021】
(2)モデル作成部12
まず、モデル作成部12について図3に基づいて説明する。
【0022】
図2のステップ1において、モデル作成部12は、有限要素法による解析のためのタイヤ全体を有限個の多数の要素に分割したタイヤ有限要素モデルを作成する。ここで、「有限要素法」とは、構造物の物性を調査するために、構造物を有限要素に分割し、それぞれ要素で記述される運動方程式を微積分演算により求める手法をいう。
【0023】
そして、タイヤ有限要素モデルから、タイヤの接地形状におけるタイヤのトレッドパターン(以下、単に「タイヤパターン」という)の有限要素モデルを作成する。これが、初期形状の有限要素モデルとなる。
【0024】
図3は初期形状の有限要素モデルを表し、各矩形の区画が有限要素を示し、その中央の黒丸が、各有限要素の重心点を表している。この各重心点が、後から説明するレベルセット関数の評価点となる。また、この初期形状の有限要素モデルにおいて表されている初期の各ブロックが初期の意匠であり、以下では、意匠の形状とは、タイヤのブロック形状を意味し、意匠の位相とは、ブロックの有無、配置を意味する。また、意匠は、閉領域である。さらに、後から説明する「仮想有限要素」とは、有限要素の各重心点を節点として、各節点を結んだ格子状の要素をいう。
【0025】
(3)データ取得部14
次に、データ取得部14について図4に基づいて説明する。
【0026】
図2のステップ2において、データ取得部14が、初期形状の有限要素モデルのタイヤパターンの各ブロックに対応した初期の各意匠に関して、図4に示すように初期の各意匠の境界を表す点列群の各点の位置を2次元データとして取得して記憶する。すなわち、x−y直交座標系(全体座標系)において各点が(x,y)で表される。データ取得部14は、初期の意匠が複数存在する場合には、意匠毎に点列群データを記録する。
【0027】
(4)識別部16
次に、識別部16について図5に基づいて説明する。
【0028】
図2のステップ3において、識別部16は、図5に示すように、データ取得部14で取得した初期意匠の点列群に関して、形状、位相を変更せず初期意匠のまま保持しておく点列データ群を識別する。この識別方法としては、ユーザ自身がフラグを立てたりして識別する。以下、初期意匠がそのまま保持されている意匠を「固定初期意匠」といい、形状や位相を変更させる初期意匠を「変更初期意匠」という。
【0029】
(5)第1計算部18
次に、第1計算部18について図6に基づいて説明する。
【0030】
図2のステップ4において、第1計算部18は、ヘビサイト関数Hの初期値を設定する。ここで、ヘビサイト関数Hを用いるのは、有限要素法による変位場における歪みと応力の計算と、レベルセット関数の更新を安定的に行うためである。
【0031】
第1計算部18は、各有限要素におけるヘビサイト関数Hが、0又は1の何れかを初期値として設定する。この設定は、ユーザ自身が行ってもよく、また、アプリケーションを用いて意匠の境界が有る場合は1、無い場合は0のように計算する。
【0032】
具体的には、ヘビサイト関数H(x,y)は、各有限要素の各重心点(x,y)での値を意味する。そして、第1計算部18は、図6に示すように、有限要素の重心点が、初期意匠を表す境界よりも外側のときは、初期値をH(x,y)=0と設定し、有限要素の重心点が、初期意匠を表す境界よりも内側のときは、初期値をH(x,y)=1と設定する。
【0033】
(6)第2計算部20
次に、第2計算部20について図7と図8に基づいて説明する。
【0034】
図2のステップ5において、第2計算部20は、有限要素毎にレベルセット関数φを計算する。
【0035】
まず、レベルセット関数φとは、図8に示すように、各有限要素の重心点と最短距離にある意匠を表す点を求め、これら点の間の最短の距離を求める関数である。レベルセット関数φについて、さらに詳しく説明する。
【0036】
レベルセット関数φは、各有限要素で値を持ち、その評価点を有限要素の中心(重心点)と設定し、その重心点の位置ベクトルをP=(xP,yP)とすると、レベルセット関数はφ(P)で表される。任意の有限要素における中心(重心点)の位置ベクトルP(xP,yP)と、意匠を表す点列(境界)の中で、位置ベクトルPに対して最短距離にある境界上の点の位置ベクトルをQ=(xQ,yQ)とすると、重心点におけるレベルセット関数φ(P)は次の式(1)で表される。
【数1】
【0037】
そこで第2計算部20は、式(1)を用いて有限要素毎にレベルセット関数φ(P)を計算する。但し、Pは、上記したように各有限要素の重心点の位置ベクトルを示す。
【0038】
次に、第2計算部20は、有限要素毎に求めたレベルセット関数φ(P)を評価する。レベルセット関数φ(P)を評価するとは、レベルセット関数φ(P)が求めた最短距離に符号を付加することである。まず、このレベルセット関数φ(P)で表される距離の符号は、意匠(閉領域)の内側又は外側にあるかで決定する。上記で説明したように、意匠(閉領域)の内側又は外側にあるかは、ヘビサイト関数Hの初期値(0又は1)でわかるため、第2計算部20は、図7に示すように対象とした有限要素の重心点が、意匠の外側にあれば(初期値=0のとき)、レベルセット関数φ(P)で求めた最短距離の符号に−を付加し、意匠の内側(ハッチングの領域)にあれば(初期値=1のとき)、+の符号を付加する。
【0039】
(7)第3計算部22
次に、第3計算部22について説明する。
【0040】
図2のステップ6において、第3計算部22は、第2計算部20で求めた有限要素毎のレベルセット関数φ(P)を用いて、第1計算部18で初期値を設定したヘビサイト関数Hを再計算する。ヘビサイト関数Hは、下記の式(2−1)〜式(2−3)に示すようにレベルセット関数φ(P)で計算できる。すなわち、ヘビサイト関数はH(φ(P))で表される。但し、Pは、ヘビサイト関数H(φ(P))を計算する評価点(各有限要素の重心点)の位置ベクトルを意味する。
【0041】
φ(P)/h<−1のときは、
H(φ(P))=Era ・・・(2−1)
−1<=φ(P)/h<=1のときは、
H(φ(P))=(1+Era)/2+φ(P)/h×{15/16−5/8×(φ(P)/h)2+3/16×(φ(P)/h)4}×(1−Era) ・・・(2−2)
1<φ(P)/hのときは、
H(φ(P))=1.0 ・・・(2−3)
となる。但し、hはヘビサイト関数H(φ(P))が0〜1へ遷移するときの幅であって、本実施形態では有限要素の辺の長さとする。また、Eraとは相対ヤング率を意味し、相対ヤング率とは、意匠内側のヤング率に対する意匠外側のヤング率の比である。
【0042】
(8)解析部24
次に、解析部24について説明する。
【0043】
図2のステップ7において、解析部24は、変位場(節点)における歪みベクトルと応力ベクトルを求める。
【0044】
有限要素法における剛性方程式は、次の式(3−1)のように表される。なお、支配方程式として「最小ポテンシャルエネルギーの原理」を用いる。
【0045】
Π=U−W ・・・(3−1)
但し、Πとは全ポテンシャルエネルギー(外力を受けて変形した状態から元の状態に戻ろうとする仕事量)、Uとは歪みエネルギー、Wとは外力による仕事である。
【0046】
Πについて変位u、v、wがつり合いを保つとき、Πは最小となる。
【0047】
歪みエネルギーUは次の式(3−2)のように表される。
【数2】
【0048】
但し、ε=(εx,εy,γxy)は歪みベクトル、σは応力ベクトルである。*はベクトルの内積を表す。
【0049】
εは、次の式(3−3)のように表される。
【0050】
ε=B*ui ・・・(3−3)
但し、uiは節点変位ベクトル(但し、i=1〜nであり、n=節点の数×自由度である。節点とは、各有限要素が交わる点を意味し、自由度とは、次元数を意味し、本実施形態では2次元であるため、自由度は2である)、Bは歪み−変位マトリックスである。このBはタイヤの材料によって決定できる。なお、節点が、タイヤという構造物の変位場となり、節点変位ベクトルuiが、変位場の変位ベクトルとなる。
【0051】
σは、次の式(3−4)のように表される。
【0052】
σ=D*ε ・・・(3−4)
但し、Dとは応力−歪みマトリックスである。
【0053】
式(3−3)と式(3−4)より
σ=D*B*ui ・・・(3−5)
となる。式(3−2)へ式(3−3)及び式(3−5)を代入すると、
【数3】
【0054】
一方で、外力による仕事を考えると、
−W=−fiT*ui ・・・(3−7)
となる。但し、fiは節点外力ベクトルである(但し、i=1〜nであり、n=節点数×自由度である)。
【0055】
以上より、Πは次の式(3−8)のように表される。
【0056】
Π=(uiT*K*ui−fiT*ui)/2 ・・・(3−8)
Πを各節点変位について偏微分して、まとめると、
dΠ/dui=K*ui−fi ・・・(3−9)
となる。
【0057】
また、Πの停留条件により、uiがつり合いを保つには
dΠ/dui=0 ・・・(3−10)
したがって式(3−9)と式(3−10)より
K*ui−fi=0 ・・・(3−11)
となる。この式を変形すると、
K*ui=fi ・・・(3−12)
となる。この式(3−12)が剛性方程式である。式(3−12)より未知数uiを求め、歪みベクトル及び応力ベクトルは次のように求めることができる。
【0058】
歪みベクトル ε=B*ui ・・・(3−13)
応力ベクトル σ=D*ε ・・・(3−14)
以上により、変位場(節点)における歪みベクトルと応力ベクトルを導くことができる。
【0059】
(9)関数算出部26
次に、関数算出部26ついて説明する。
【0060】
図2のステップ8において、関数算出部26は、目的汎関数を求める。この目的汎関数を求める前に、関数算出部26は、ラグランジュの未定定数λと歪力βを求める。
【0061】
(9−1)歪力βの求め方
関数算出部26が歪力βを求める方法について説明する。
【0062】
歪力βは、非特許文献1から次の式(4−1)のように表される。
【0063】
β=−ε*D+2b*u (4−1)
ここでbは物体力のベクトル、uは変位場(2次元で表された節点変位ベクトル、簡略表記のために有限要素のアドレスを示す添え字のiは省略している)、εは歪みベクトル、Dは応力−歪みマトリックス(弾性定数マトリックス)を意味する。本実施形態で扱う問題は、物体力(重力、遠心力など)は無視するので式(4−1)は次のようになる。
【0064】
β=−ε*D*ε ・・・(4−2)
本実施形態は2次元であるので、εは次の式(4−3)のように表される。
【0065】
ε=(εx,εy,γxy) ・・・(4−3)
εx,εy,γxyは式(3−3)より求められる。すなわち、式(3−3)を再表記すると、
ε=(εx,εy,γxy)=B*ui ・・・(4−4)
となる。Dは次の式(4−5)のように表される。
【数4】
【0066】
以上によりβは、次の式(4−6)のように表される。
【数5】
【0067】
関数算出部26は、βを上記の式(4−6)から求める。このβはスカラー量であり、有限要素毎に値が存在する。
【0068】
(9−2)ラグランジュの未定係数λの求め方
関数算出部26が、ラグランジュの未定定数λを求める方法について説明する。
【0069】
未定係数λは、非特許文献1から次の式(5−1)のように表される。
【数6】
【0070】
ここでΩは全領域を意味し、本実施形態では有限要素モデルの全領域を意味する。
【0071】
また、dH(φ)/dφは、式(2−1)〜式(2−3)を微分すると次のように表される。なお、φ(P)はφと簡易に表記している。
【0072】
φ/h<−1のときは、
dH(φ)/dφ=0 ・・・(5−2)
−1<=φ/h<=1のときは、
dH(φ)/dφ
=15/16h×{1−(φ/h)2}2×(1−Era) ・・・(5−3)
1<φ/hのときは、
dH(φ)/dφ=0 ・・・(5−4)
となる。
【0073】
そして、λを求めるために、式(5−1)の分子と分母の値をそれぞれ計算する。
【0074】
式(5−1)の分子の値Aを求め方は次の通りである。まず、第1〜第4の算出処理を有限要素毎に繰り返し行う。
【0075】
第1に、βを求める。
【0076】
第2に、φ/hを求める。
【0077】
第3に、φ/hの値によりdH(φ)/dφを求める。
【0078】
第4に、β×(dH(φ)/dφ)2を求める。
【0079】
そして、第1〜第4の算出処理を繰り返して、有限要素毎に求めたβ×(dH(φ)/dφ)2を全て積算して分子の値Aを求める。
【0080】
式(5−1)の分母の値Bを求め方は次の通りである。まず、第1〜第3の算出処理を有限要素毎に繰り返し行う。
【0081】
第1に、φ/hを求める。
【0082】
第2に、φ/hの値によりdH(φ)/dφを求める。
【0083】
第3に、(dH(φ)/dφ)2を求める。
【0084】
そして、第1〜第3の算出処理を繰り返して、有限要素毎に求めた(dH(φ)/dφ)2を全て積算して分子の値Bを求める。
【0085】
関数算出部26は、最後に次の式(5−5)からλを求める。なお、λは全領域Ω(全ての有限要素)に対して1つの値をとる。
【0086】
λ=A/B ・・・(5−5)
(9−3)目的汎関数Jの求め方
関数算出部26が、最終的な目的汎関数Jを求める方法について説明する。
【0087】
目的汎関数Jは、次の式(6)から求まる。
【数7】
【0088】
但し、ヘビサイト関数H(φ(P))は、式(2−1)〜式(2−3)で表されたものであり、Mmaxは許容される面積の最大値、MΩは、全領域Ω(有限要素全体)の面積を表す。
【0089】
(10)更新部28
次に、更新部28について説明する。
【0090】
図2のステップ9において、更新部28は、下記の式(7−3)で示す偏微分方程式を満たすために、レベルセット関数φ(P)を更新幅Δtで更新する。なお、本実施形態では、固定初期意匠は保持した状態で最適解を求めるため、固定初期意匠に属する有限要素のレベルセット関数φ(P)は更新させない。
【0091】
まず、上記で説明した目的汎関数Jを更新するために最小化することは、次の偏微分方程式を解くことと等価である。なお、偏微分を表す記号が明細書で表記できないため、「d」で代用する。また、φ(P)はφで簡略に表記する。
【0092】
dφ/dt+(β+λ)×dH(φ)/dφ=0 ・・・(7−1)
ここで、
g=(β+λ)×dH(φ)/dφ ・・・(7−2)
とおくと、
dφ/dt+g=0 ・・・(7−3)
となる。この式(7−3)が偏微分方程式である。この偏微分方程式を前進オイラー法を用いて有限差分法で近似すると次の式(7−4)のようになる。
【0093】
(φn+1i−φni)/Δt=−g ・・・(7−4)
但し、添字のnは反復回数、iは有限要素のアドレス、Δtは更新幅である。式(7−4)を変形すると、
φn+1i=φni−Δt×g ・・・(7−5)
となる。この式(7−5)によりレベルセット関数φを更新幅Δtで更新する。
【0094】
この求解において安定的に計算を進めるためには、Δtを適切に定める必要がある。この条件をCFL条件と呼び、次の式(7−6)で表わせる。
【0095】
dφmin/Δr<=1 ・・・(7−6)
ここでΔrは有限要素の間隔である。この式(7−6)を変形すると、
dφmin<=Δr ・・・(7−7)
この式(7−6)で表されたCFL条件を満たすようにdφminを決定する。dφminを決めた後に、Δtを以下の式(7−8)により定める。
【0096】
Δt=dφmin/max{g} ・・・(7−8)
この更新幅Δtを用いることで安定的に解が求まる。但し、max{g}は、上記の式(7−2)で求めるgの最大値を意味する。
【0097】
そして、本実施形態では、更新部28は、固定初期意匠については更新を行わないため、固定初期意匠に属する有限要素のときはΔt=0として計算するか、この計算をスキップして計算しない。
【0098】
(11)再初期化部30
次に、再初期化部30について説明する。
【0099】
図2のステップ10において、再初期化部30は、レベルセット関数φの再初期化を行う。
【0100】
再初期化を行う理由は、レベルセット関数φを更新すると、レベルセット関数φがゼロ等位線φ=0からの符号付距離関数の性質を失うという問題が生じるため、この再初期化を行う必要があるからである。
【0101】
(11−1)φ=0の等位線の求め方
φ=0の等位線を求めるには、図9に示すように、レベルセット関数φの4つの評価点で囲まれた仮想有限要素について、各辺を構成する評価点のレベルセット関数φの符号が異なる辺で必要があることがわかる。
【0102】
φ=0の等位線が交差する有限要素を特定した後、図10に示すように、特定した有限要素内でφ=0の仮想点Rを作成する。
【0103】
ここで、
φ(s,t)=a0+a1×s+a2×t+a3×s×t ・・・(8−1)
と定義する。但し、a3=0の場合について考える。φ(s,t)=0上の点は、任意のθを用いて次の式(8−2)、式(8−3)のように表せる。
【0104】
s=−a2/a3+(|(a1×a2−a0×a3)/a32|)1/2×eθ
・・・(8−2)
t=−a1/a3+(|(a1×a2−a0×a3)/a32|)1/2×eθ
・・・(8−3)
となる。θは、図10に示すように点P0と仮想点Rとの間の角度であるので、次の式(8−4)により求まる。
【0105】
θk=θ0+(θk−1−θ0)×k/(m−1) ・・・(8−4)
但し、k=1,2,・・・m−2である。
【0106】
再初期化部30は、式(8−4)を式(8−2)と式(8−3)に代入して、φ=0の仮想点R(s1,t1)を求める。
【0107】
(11−2)全体座標系への変換
再初期化部30は、上記で求めた仮想点Rを一般座標系(s,t)から全体座標系(x,y)へ座標変換する。その変換について図11に基づいて説明する。
【0108】
任意の有限要素に関する一般座標系(s,t)における仮想点Rと、全体座標系(x,y)における点Qとの関係は、形状関数を用いると次のようになる。なお、R1、R2、R3、R4は、一般座標系(s,t)における有限要素の節点である。
【0109】
F1=(1.0+s1)(1.0+t1)
F2=(1.0−s1)(1.0+t1)
F3=(1.0−s1)(1.0−t1)
F4=(1.0+s1)(1.0−t1) ・・・(9−1)
全体座標系における有限要素の4つの節点座標をQ1(x1,y1),Q2(x2,y2),Q3(x3,y3),Q4(x4,y4)とする。これらより点Q(x’,y’)は次の式(10−1)、式(10−2)により求まる。
【0110】
x’=F1×x1+F2×x2+F3×x3+F4×x4 ・・・(10−1)
y’=F1×y1+F2×y2+F3×y3+F4×y4 ・・・(10−2)
以上により、再初期化部30は、等位線φ=0上の仮想点Rの群を一般座標系(s,t)から全体座標系(x,y)へ座標変換して点Qの群を求める。
【0111】
(11−3)再初期化したφの求め方
再初期化部30は、上記で求めた点Qの群とレベルセット関数φの評価点(有限要素の重心点)との距離を計算し、最短距離にある点間距離を新たにレベルセット関数φの値とする。この計算は、第2計算部20が式(1)を用いて計算した方法と同様にして求める。この計算が再初期化である。なお、各レベルセット関数の符号は、再初期化する前のレベルセット関数の符号をそのまま付加する。
【0112】
さらに、再初期化部30は、再初期化したレベルセット関数を用いて、第3計算部22と同様に式(2−1)〜式(2−3)を用いてヘビサイト関数Hを再計算する。この再計算したヘビサイト関数Hは、解析部24において、歪みベクトル等を反復計算するときに用いる。
【0113】
(12)修正部32
次に、修正部32について説明する。
【0114】
図2のステップ11において、修正部32は、面積制約に対するレベルセット関数φの修正を行う。この修正を行う理由は、前記タイヤパターンの設計領域においては、最大面積が定められているからである。
【0115】
トポロジーを保存したまま面積の制約を満たすには、φ=0の等位線と同じトポロジーを持ち、距離qだけ離れたφ−q=0の等位線を求める必要がある。
【数8】
【0116】
この式(11−1)は、φ−q=0の等位線を意匠の境界とみなした領域の面積である。
【0117】
このqを求めるために次のように計算する。
【数9】
【0118】
qが十分小さいとすれば次の式(11−3)のように近似できる。
【数10】
【0119】
したがって、qは次の式(11−4)のようになる。
【数11】
【0120】
M(q)は目標の面積を表し、M(0)は現在の面積を表している。
【0121】
求めた面積の制約分の補正値qをレベルセット関数φから引くと修正したレベルセット関数φ’となる。すなわち、
φ’=φ−q ・・・(11−5)
となる。なお、以下の説明では、φ’は、単にφで表記する。
【0122】
(13)判定部34
次に、判定部32について説明する。
【0123】
図2のステップ12において、判定部32は、求解時の収束判定条件に基づいてレベルセット関数φ(P)が最適化されているか否かを判定する。
【0124】
まず、求解時の収束判定条件について説明する。
【0125】
判定部34は、(n+1)反復回数で求めたレベルセット関数φとn反復回数で求めたレベルセット関数φを用いて、収束判定を行う。
【0126】
平均自乗残差は次の式(12)のように表せる。
【数12】
【0127】
但し、errは収束判定値であり、本実施形態ではerr=1.0×10−6とする。なお、式(12)の中における(i,j)は、有限要素のアドレスを意味し、この判定部32までに記載された有限要素のアドレスiをx−y座標系における2次元で表記したものである。
【0128】
判定部32は、図2のステップ12において式(12)を満たすまで、すなわち、レベルセット関数φが収束するまで解析部24から修正部32の動作を繰り返すように制御する。すなわち、判定部32は、レベルセット関数φが式(12)に基づいて収束しなければ、反復回数nを1増加させてステップ7に戻る(図2のステップ12のNの場合)。
【0129】
そして、判定部32は、式(12)を具備すると、レベルセット関数φが収束したとして(図2のステップ12のYの場合)、ステップ13に進み、判定部32は、収束したそのレベルセット関数φ(P)を、最適化したレベルセット関数φ(P)と判定する。
【0130】
(14)変換部36
次に、変換部36について図12に基づいて説明する。
【0131】
図2のステップ14において、変換部36は、最適化したレベルセット関数φ(P)を、タイヤパターンにおける意匠へ変換する。
【0132】
図12には仮想有限要素を示し、仮想有限要素の各節点は、有限要素における中心(重心点)を示している。この仮想有限要素の辺を構成する節点に、最適化したレベルセット関数φ(P)の値が格納されている。但し、Pは各節点における位置ベクトルである。
【0133】
仮想有限要素の両端の節点に格納されたレベルセット関数φの値が異符号であれば、その辺上にレベルセット関数φ=0の点が存在する。変換部36は、そのゼロ点を、両端の節点でのレベルセット関数φの値で内分して求め、有限要素毎に求めたゼロ点をそれぞれ結んで線を求める。この結んだ線が、形状と位相が最適化されたタイヤパターンの意匠として表される。なお、この最適化された意匠は、固定初期意匠を保持し、変更初期意匠のみが変更されている。
【0134】
(15)出力部38
次に、出力部38について図14と図15に基づいて説明する。
【0135】
図2のステップ15において、出力部38は、以上のようにして求めた意匠を出力する。出力は、ディスプレイによって表示するか、又は、プリンタによって印刷する。
【0136】
図14(a)が初期意匠を示すタイヤパターンであり、図14(b)が従来の手法で最適化した意匠のタイヤパターンであり、図14(c)が本実施形態で最適化した意匠のタイヤパターンである。
【0137】
従来の手法では、固定初期意匠についても変更されているが、本実施形態では、固定初期意匠については形状及び位相が変更されず、変更初期意匠のみが変更されたものとなっている。
【0138】
また、図15に示すように、本実施形態では、面積の制約条件を具備し、かつ、目的汎関数が収束している。
【0139】
(16)効果
以上により、本実施形態の解析装置10であると、固定初期意匠を保持したまま、変更初期意匠のみについて形状及び位相の最適化問題を解決できる。
【変更例】
【0140】
上記実施形態では、タイヤパターンにおける意匠は、ブロック形状で説明したが、これに限らず、タイヤの接地形状において、陸部、溝部によって表される閉領域のどのような意匠であっても、解析装置10は最適化ができる。
【0141】
また、上記実施形態では、前記タイヤパターンの設計領域に関する面積制約を行ったが、面積制約が不要な場合には、修正部32を省略してもよい。
【0142】
また、上記実施例では、2次元のタイヤパターンで説明したが、3次元のタイヤパターンでも同様にこの解析装置10で解析できる。なお、この場合には、修正部32は、面積制約ではなく、前記タイヤパターンの設計領域に関する体積制約を行うこととなり、また、意匠は境界線ではなく境界面で表され、さらに、φ=0で表現されるのは等位線でなく等位面で表される。
【0143】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。本発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0144】
10・・・解析装置、12・・・モデル作成部、14・・・データ取得部、16・・・識別部、18・・・第1計算部、20・・・第2計算部、22・・・第3計算部、24・・・解析部、26・・・関数算出部、28・・・更新部、30・・・再初期化部、32・・・修正部、34・・・判定部、36・・・変換部、38・・・出力部
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤのトレッドパターンにおいて、位相と形状との最適化を解析する解析技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、特許文献1においては、構造物の各部の弾性変形を利用して、所定部位に与えられた荷重又は変位に対し、他の部位に目的の荷重又は変位を出力する構造物を設計するための最適設計支援装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、非特許文献1においては、レベルセット法に基づく機械構造物の構造最適化が提案されている。
【0004】
さらに、非特許文献2においては、3次元の構造物に関してレベルセット法に基づく構造最適化も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2006/009026A1
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「レベルセット法に基づく構造最適化」 京都大学 西脇真二他、日本機械学会論文集(C編)第73巻第725号
【非特許文献1】”Structural optimization using sensitivity analysis and a level-set method”、Gregoire Allaire、Journal of Computational physics 194(2004) 363〜393
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、タイヤのトレッドパターンにおいて、例えば、図13(a)に示すように、タイヤ接地形状が丸型で、ショルダー部の接地圧がセンター部に比べて高い場合、ショルダー部の磨耗性能の低下が懸念される。そのため、図13(b)のハッチング領域に示すように、ショルダー部のブロックは、磨耗性能の向上を図るため、予めブロック形状とする必要があるので、この領域のブロック形状(意匠)を残しておく必要がある。
【0008】
しかし、上記のような従来の最適化の手法では、一部の意匠を残して構造物の形状の最適解を求めることはできないという問題点があった。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、タイヤのトレッドパターンにおいて、一部の意匠を残したまま最適解を求めることができる解析装置、その方法及びそのプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、タイヤのトレッドパターンの意匠を求める解析装置において、初期意匠を表した有限要素モデルを作成するモデル作成部と、前記有限要素モデルにおける初期意匠の境界を表した点列群に関するデータを取得するデータ取得部と、前記初期意匠に関して、設計変更が可能な初期意匠である変更初期意匠と、設計変更が不可能な初期意匠である固定初期意匠とに識別する識別部と、前記有限要素モデルにおける有限要素毎のヘビサイト関数の初期値を計算する第1計算部と、(1)前記有限要素毎の評価点と最短距離にある前記初期意匠を表す点を特定し、前記最短距離を値とするレベルセット関数を、前記有限要素毎に計算すると共に、(2)前記最短距離の値に関して前記ヘビサイト関数に基づいてプラス又はマイナスの符号を付加する第2計算部と、前記有限要素毎のレベルセット関数を用いて、前記初期値を計算したヘビサイト関数を再計算する第3計算部と、有限要素法を用いて各有限要素の変位場における歪みベクトルを少なくとも解析する解析部と、再計算した前記ヘビサイト関数の値と前記歪みベクトルとから目的凡関数を、前記有限要素毎に算出する関数算出部と、前記目的凡関数を最小化することにより、前記変更初期意匠に関する前記有限要素のレベルセット関数のみを更新する更新部と、更新した前記レベルセット関数を再初期化する再初期部と、前記有限要素毎の再初期化した前記レベルセット関数が収束しているか否かを判定し、収束していなければ前記解析部、前記関数算出部、更新部、再初期化部の処理を繰り返すように制御し、収束していれば、収束した前記レベルセット関数を最適化したレベルセット関数と判定する判定部と、前記有限要素毎の最適化したレベルセット関数から、最適化した意匠に変換する変換部と、を有することを特徴とする解析装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、一部の初期意匠を残したままタイヤのトレッドパターンの最適解を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態を示す解析装置のブロック図である。
【図2】解析装置のフローチャートである。
【図3】有限要素モデルの例である。
【図4】有限要素モデルに意匠を表す点列群を表記した図である。
【図5】固定初期意匠と変更初期意匠の識別を行った有限要素モデルの図である。
【図6】有限要素モデルにおいてヘビサイト関数を説明する図である。
【図7】レベルセット関数の評価を説明する図である。
【図8】レベルセット関数の定義を説明する図である。
【図9】レベルセット関数φ=0の等位線と有限要素との交差について説明する図である。
【図10】再初期化のための仮想点を説明する図である。
【図11】一般座標系と全体座標系の変換を示す図である。
【図12】レベルセット関数から意匠への変換を示す図である。
【図13】固定初期意匠を保持する理由を示す図である。
【図14】初期形状と固定初期意匠を設定しなかったときの図と、設定したときの図である。
【図15】反復回数、目的汎関数、Volumeとの関係を示す変更履歴のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態の解析装置10について図1〜図15に基づいて説明する。
【0014】
本発明の解析装置10は、タイヤのトレッドパターンの意匠に関する位相及び形状の最適解を求めるものである。
【0015】
ここで「形状」とは、構造物(タイヤ)の表面形状を意味し、この形状最適化問題とは、構造物の表面形状を設計変数とする最適化問題をいう。
【0016】
「位相」とは、空間上の位相、すなわち、構造物の形態を意味し、位相最適化問題とは、空間上の位相を設計変数とする最適化問題である。形態とは、上記形状の有無と配置という。
【0017】
(1)解析装置10の構成
本実施形態の解析装置10の構成について、図1のブロック図に基づいて説明する。
【0018】
図1に示すように、解析装置10は、モデル作成部12、データ取得部14、識別部16、第1計算部18、第2計算部20、第3計算部22、解析部24、関数算出部26、更新部28、再初期化部30、修正部32、判定部34、変換部36及び出力部38を有する。
【0019】
解析装置10は、例えば汎用のコンピュータを基本ハードウエアとして用いることでも実現することは可能である。すなわち、解析装置10の各部12〜38の構成は、前記のコンピュータに搭載されたプロセッサにプログラムを実行させることにより、実現することができる。このとき、各部12〜38の機能は、前記のプログラムをコンピュータに予めインストールすることで実現してもよいし、CD−ROMなどの記録媒体に記録して、又は、ネットワークを介して前記のプログラムを配布して、このプログラムをコンピュータに適宜インストールすることで実現してもよい。
【0020】
以下、各部12〜38の内容について図2のフローチャートに基づいて説明する。
【0021】
(2)モデル作成部12
まず、モデル作成部12について図3に基づいて説明する。
【0022】
図2のステップ1において、モデル作成部12は、有限要素法による解析のためのタイヤ全体を有限個の多数の要素に分割したタイヤ有限要素モデルを作成する。ここで、「有限要素法」とは、構造物の物性を調査するために、構造物を有限要素に分割し、それぞれ要素で記述される運動方程式を微積分演算により求める手法をいう。
【0023】
そして、タイヤ有限要素モデルから、タイヤの接地形状におけるタイヤのトレッドパターン(以下、単に「タイヤパターン」という)の有限要素モデルを作成する。これが、初期形状の有限要素モデルとなる。
【0024】
図3は初期形状の有限要素モデルを表し、各矩形の区画が有限要素を示し、その中央の黒丸が、各有限要素の重心点を表している。この各重心点が、後から説明するレベルセット関数の評価点となる。また、この初期形状の有限要素モデルにおいて表されている初期の各ブロックが初期の意匠であり、以下では、意匠の形状とは、タイヤのブロック形状を意味し、意匠の位相とは、ブロックの有無、配置を意味する。また、意匠は、閉領域である。さらに、後から説明する「仮想有限要素」とは、有限要素の各重心点を節点として、各節点を結んだ格子状の要素をいう。
【0025】
(3)データ取得部14
次に、データ取得部14について図4に基づいて説明する。
【0026】
図2のステップ2において、データ取得部14が、初期形状の有限要素モデルのタイヤパターンの各ブロックに対応した初期の各意匠に関して、図4に示すように初期の各意匠の境界を表す点列群の各点の位置を2次元データとして取得して記憶する。すなわち、x−y直交座標系(全体座標系)において各点が(x,y)で表される。データ取得部14は、初期の意匠が複数存在する場合には、意匠毎に点列群データを記録する。
【0027】
(4)識別部16
次に、識別部16について図5に基づいて説明する。
【0028】
図2のステップ3において、識別部16は、図5に示すように、データ取得部14で取得した初期意匠の点列群に関して、形状、位相を変更せず初期意匠のまま保持しておく点列データ群を識別する。この識別方法としては、ユーザ自身がフラグを立てたりして識別する。以下、初期意匠がそのまま保持されている意匠を「固定初期意匠」といい、形状や位相を変更させる初期意匠を「変更初期意匠」という。
【0029】
(5)第1計算部18
次に、第1計算部18について図6に基づいて説明する。
【0030】
図2のステップ4において、第1計算部18は、ヘビサイト関数Hの初期値を設定する。ここで、ヘビサイト関数Hを用いるのは、有限要素法による変位場における歪みと応力の計算と、レベルセット関数の更新を安定的に行うためである。
【0031】
第1計算部18は、各有限要素におけるヘビサイト関数Hが、0又は1の何れかを初期値として設定する。この設定は、ユーザ自身が行ってもよく、また、アプリケーションを用いて意匠の境界が有る場合は1、無い場合は0のように計算する。
【0032】
具体的には、ヘビサイト関数H(x,y)は、各有限要素の各重心点(x,y)での値を意味する。そして、第1計算部18は、図6に示すように、有限要素の重心点が、初期意匠を表す境界よりも外側のときは、初期値をH(x,y)=0と設定し、有限要素の重心点が、初期意匠を表す境界よりも内側のときは、初期値をH(x,y)=1と設定する。
【0033】
(6)第2計算部20
次に、第2計算部20について図7と図8に基づいて説明する。
【0034】
図2のステップ5において、第2計算部20は、有限要素毎にレベルセット関数φを計算する。
【0035】
まず、レベルセット関数φとは、図8に示すように、各有限要素の重心点と最短距離にある意匠を表す点を求め、これら点の間の最短の距離を求める関数である。レベルセット関数φについて、さらに詳しく説明する。
【0036】
レベルセット関数φは、各有限要素で値を持ち、その評価点を有限要素の中心(重心点)と設定し、その重心点の位置ベクトルをP=(xP,yP)とすると、レベルセット関数はφ(P)で表される。任意の有限要素における中心(重心点)の位置ベクトルP(xP,yP)と、意匠を表す点列(境界)の中で、位置ベクトルPに対して最短距離にある境界上の点の位置ベクトルをQ=(xQ,yQ)とすると、重心点におけるレベルセット関数φ(P)は次の式(1)で表される。
【数1】
【0037】
そこで第2計算部20は、式(1)を用いて有限要素毎にレベルセット関数φ(P)を計算する。但し、Pは、上記したように各有限要素の重心点の位置ベクトルを示す。
【0038】
次に、第2計算部20は、有限要素毎に求めたレベルセット関数φ(P)を評価する。レベルセット関数φ(P)を評価するとは、レベルセット関数φ(P)が求めた最短距離に符号を付加することである。まず、このレベルセット関数φ(P)で表される距離の符号は、意匠(閉領域)の内側又は外側にあるかで決定する。上記で説明したように、意匠(閉領域)の内側又は外側にあるかは、ヘビサイト関数Hの初期値(0又は1)でわかるため、第2計算部20は、図7に示すように対象とした有限要素の重心点が、意匠の外側にあれば(初期値=0のとき)、レベルセット関数φ(P)で求めた最短距離の符号に−を付加し、意匠の内側(ハッチングの領域)にあれば(初期値=1のとき)、+の符号を付加する。
【0039】
(7)第3計算部22
次に、第3計算部22について説明する。
【0040】
図2のステップ6において、第3計算部22は、第2計算部20で求めた有限要素毎のレベルセット関数φ(P)を用いて、第1計算部18で初期値を設定したヘビサイト関数Hを再計算する。ヘビサイト関数Hは、下記の式(2−1)〜式(2−3)に示すようにレベルセット関数φ(P)で計算できる。すなわち、ヘビサイト関数はH(φ(P))で表される。但し、Pは、ヘビサイト関数H(φ(P))を計算する評価点(各有限要素の重心点)の位置ベクトルを意味する。
【0041】
φ(P)/h<−1のときは、
H(φ(P))=Era ・・・(2−1)
−1<=φ(P)/h<=1のときは、
H(φ(P))=(1+Era)/2+φ(P)/h×{15/16−5/8×(φ(P)/h)2+3/16×(φ(P)/h)4}×(1−Era) ・・・(2−2)
1<φ(P)/hのときは、
H(φ(P))=1.0 ・・・(2−3)
となる。但し、hはヘビサイト関数H(φ(P))が0〜1へ遷移するときの幅であって、本実施形態では有限要素の辺の長さとする。また、Eraとは相対ヤング率を意味し、相対ヤング率とは、意匠内側のヤング率に対する意匠外側のヤング率の比である。
【0042】
(8)解析部24
次に、解析部24について説明する。
【0043】
図2のステップ7において、解析部24は、変位場(節点)における歪みベクトルと応力ベクトルを求める。
【0044】
有限要素法における剛性方程式は、次の式(3−1)のように表される。なお、支配方程式として「最小ポテンシャルエネルギーの原理」を用いる。
【0045】
Π=U−W ・・・(3−1)
但し、Πとは全ポテンシャルエネルギー(外力を受けて変形した状態から元の状態に戻ろうとする仕事量)、Uとは歪みエネルギー、Wとは外力による仕事である。
【0046】
Πについて変位u、v、wがつり合いを保つとき、Πは最小となる。
【0047】
歪みエネルギーUは次の式(3−2)のように表される。
【数2】
【0048】
但し、ε=(εx,εy,γxy)は歪みベクトル、σは応力ベクトルである。*はベクトルの内積を表す。
【0049】
εは、次の式(3−3)のように表される。
【0050】
ε=B*ui ・・・(3−3)
但し、uiは節点変位ベクトル(但し、i=1〜nであり、n=節点の数×自由度である。節点とは、各有限要素が交わる点を意味し、自由度とは、次元数を意味し、本実施形態では2次元であるため、自由度は2である)、Bは歪み−変位マトリックスである。このBはタイヤの材料によって決定できる。なお、節点が、タイヤという構造物の変位場となり、節点変位ベクトルuiが、変位場の変位ベクトルとなる。
【0051】
σは、次の式(3−4)のように表される。
【0052】
σ=D*ε ・・・(3−4)
但し、Dとは応力−歪みマトリックスである。
【0053】
式(3−3)と式(3−4)より
σ=D*B*ui ・・・(3−5)
となる。式(3−2)へ式(3−3)及び式(3−5)を代入すると、
【数3】
【0054】
一方で、外力による仕事を考えると、
−W=−fiT*ui ・・・(3−7)
となる。但し、fiは節点外力ベクトルである(但し、i=1〜nであり、n=節点数×自由度である)。
【0055】
以上より、Πは次の式(3−8)のように表される。
【0056】
Π=(uiT*K*ui−fiT*ui)/2 ・・・(3−8)
Πを各節点変位について偏微分して、まとめると、
dΠ/dui=K*ui−fi ・・・(3−9)
となる。
【0057】
また、Πの停留条件により、uiがつり合いを保つには
dΠ/dui=0 ・・・(3−10)
したがって式(3−9)と式(3−10)より
K*ui−fi=0 ・・・(3−11)
となる。この式を変形すると、
K*ui=fi ・・・(3−12)
となる。この式(3−12)が剛性方程式である。式(3−12)より未知数uiを求め、歪みベクトル及び応力ベクトルは次のように求めることができる。
【0058】
歪みベクトル ε=B*ui ・・・(3−13)
応力ベクトル σ=D*ε ・・・(3−14)
以上により、変位場(節点)における歪みベクトルと応力ベクトルを導くことができる。
【0059】
(9)関数算出部26
次に、関数算出部26ついて説明する。
【0060】
図2のステップ8において、関数算出部26は、目的汎関数を求める。この目的汎関数を求める前に、関数算出部26は、ラグランジュの未定定数λと歪力βを求める。
【0061】
(9−1)歪力βの求め方
関数算出部26が歪力βを求める方法について説明する。
【0062】
歪力βは、非特許文献1から次の式(4−1)のように表される。
【0063】
β=−ε*D+2b*u (4−1)
ここでbは物体力のベクトル、uは変位場(2次元で表された節点変位ベクトル、簡略表記のために有限要素のアドレスを示す添え字のiは省略している)、εは歪みベクトル、Dは応力−歪みマトリックス(弾性定数マトリックス)を意味する。本実施形態で扱う問題は、物体力(重力、遠心力など)は無視するので式(4−1)は次のようになる。
【0064】
β=−ε*D*ε ・・・(4−2)
本実施形態は2次元であるので、εは次の式(4−3)のように表される。
【0065】
ε=(εx,εy,γxy) ・・・(4−3)
εx,εy,γxyは式(3−3)より求められる。すなわち、式(3−3)を再表記すると、
ε=(εx,εy,γxy)=B*ui ・・・(4−4)
となる。Dは次の式(4−5)のように表される。
【数4】
【0066】
以上によりβは、次の式(4−6)のように表される。
【数5】
【0067】
関数算出部26は、βを上記の式(4−6)から求める。このβはスカラー量であり、有限要素毎に値が存在する。
【0068】
(9−2)ラグランジュの未定係数λの求め方
関数算出部26が、ラグランジュの未定定数λを求める方法について説明する。
【0069】
未定係数λは、非特許文献1から次の式(5−1)のように表される。
【数6】
【0070】
ここでΩは全領域を意味し、本実施形態では有限要素モデルの全領域を意味する。
【0071】
また、dH(φ)/dφは、式(2−1)〜式(2−3)を微分すると次のように表される。なお、φ(P)はφと簡易に表記している。
【0072】
φ/h<−1のときは、
dH(φ)/dφ=0 ・・・(5−2)
−1<=φ/h<=1のときは、
dH(φ)/dφ
=15/16h×{1−(φ/h)2}2×(1−Era) ・・・(5−3)
1<φ/hのときは、
dH(φ)/dφ=0 ・・・(5−4)
となる。
【0073】
そして、λを求めるために、式(5−1)の分子と分母の値をそれぞれ計算する。
【0074】
式(5−1)の分子の値Aを求め方は次の通りである。まず、第1〜第4の算出処理を有限要素毎に繰り返し行う。
【0075】
第1に、βを求める。
【0076】
第2に、φ/hを求める。
【0077】
第3に、φ/hの値によりdH(φ)/dφを求める。
【0078】
第4に、β×(dH(φ)/dφ)2を求める。
【0079】
そして、第1〜第4の算出処理を繰り返して、有限要素毎に求めたβ×(dH(φ)/dφ)2を全て積算して分子の値Aを求める。
【0080】
式(5−1)の分母の値Bを求め方は次の通りである。まず、第1〜第3の算出処理を有限要素毎に繰り返し行う。
【0081】
第1に、φ/hを求める。
【0082】
第2に、φ/hの値によりdH(φ)/dφを求める。
【0083】
第3に、(dH(φ)/dφ)2を求める。
【0084】
そして、第1〜第3の算出処理を繰り返して、有限要素毎に求めた(dH(φ)/dφ)2を全て積算して分子の値Bを求める。
【0085】
関数算出部26は、最後に次の式(5−5)からλを求める。なお、λは全領域Ω(全ての有限要素)に対して1つの値をとる。
【0086】
λ=A/B ・・・(5−5)
(9−3)目的汎関数Jの求め方
関数算出部26が、最終的な目的汎関数Jを求める方法について説明する。
【0087】
目的汎関数Jは、次の式(6)から求まる。
【数7】
【0088】
但し、ヘビサイト関数H(φ(P))は、式(2−1)〜式(2−3)で表されたものであり、Mmaxは許容される面積の最大値、MΩは、全領域Ω(有限要素全体)の面積を表す。
【0089】
(10)更新部28
次に、更新部28について説明する。
【0090】
図2のステップ9において、更新部28は、下記の式(7−3)で示す偏微分方程式を満たすために、レベルセット関数φ(P)を更新幅Δtで更新する。なお、本実施形態では、固定初期意匠は保持した状態で最適解を求めるため、固定初期意匠に属する有限要素のレベルセット関数φ(P)は更新させない。
【0091】
まず、上記で説明した目的汎関数Jを更新するために最小化することは、次の偏微分方程式を解くことと等価である。なお、偏微分を表す記号が明細書で表記できないため、「d」で代用する。また、φ(P)はφで簡略に表記する。
【0092】
dφ/dt+(β+λ)×dH(φ)/dφ=0 ・・・(7−1)
ここで、
g=(β+λ)×dH(φ)/dφ ・・・(7−2)
とおくと、
dφ/dt+g=0 ・・・(7−3)
となる。この式(7−3)が偏微分方程式である。この偏微分方程式を前進オイラー法を用いて有限差分法で近似すると次の式(7−4)のようになる。
【0093】
(φn+1i−φni)/Δt=−g ・・・(7−4)
但し、添字のnは反復回数、iは有限要素のアドレス、Δtは更新幅である。式(7−4)を変形すると、
φn+1i=φni−Δt×g ・・・(7−5)
となる。この式(7−5)によりレベルセット関数φを更新幅Δtで更新する。
【0094】
この求解において安定的に計算を進めるためには、Δtを適切に定める必要がある。この条件をCFL条件と呼び、次の式(7−6)で表わせる。
【0095】
dφmin/Δr<=1 ・・・(7−6)
ここでΔrは有限要素の間隔である。この式(7−6)を変形すると、
dφmin<=Δr ・・・(7−7)
この式(7−6)で表されたCFL条件を満たすようにdφminを決定する。dφminを決めた後に、Δtを以下の式(7−8)により定める。
【0096】
Δt=dφmin/max{g} ・・・(7−8)
この更新幅Δtを用いることで安定的に解が求まる。但し、max{g}は、上記の式(7−2)で求めるgの最大値を意味する。
【0097】
そして、本実施形態では、更新部28は、固定初期意匠については更新を行わないため、固定初期意匠に属する有限要素のときはΔt=0として計算するか、この計算をスキップして計算しない。
【0098】
(11)再初期化部30
次に、再初期化部30について説明する。
【0099】
図2のステップ10において、再初期化部30は、レベルセット関数φの再初期化を行う。
【0100】
再初期化を行う理由は、レベルセット関数φを更新すると、レベルセット関数φがゼロ等位線φ=0からの符号付距離関数の性質を失うという問題が生じるため、この再初期化を行う必要があるからである。
【0101】
(11−1)φ=0の等位線の求め方
φ=0の等位線を求めるには、図9に示すように、レベルセット関数φの4つの評価点で囲まれた仮想有限要素について、各辺を構成する評価点のレベルセット関数φの符号が異なる辺で必要があることがわかる。
【0102】
φ=0の等位線が交差する有限要素を特定した後、図10に示すように、特定した有限要素内でφ=0の仮想点Rを作成する。
【0103】
ここで、
φ(s,t)=a0+a1×s+a2×t+a3×s×t ・・・(8−1)
と定義する。但し、a3=0の場合について考える。φ(s,t)=0上の点は、任意のθを用いて次の式(8−2)、式(8−3)のように表せる。
【0104】
s=−a2/a3+(|(a1×a2−a0×a3)/a32|)1/2×eθ
・・・(8−2)
t=−a1/a3+(|(a1×a2−a0×a3)/a32|)1/2×eθ
・・・(8−3)
となる。θは、図10に示すように点P0と仮想点Rとの間の角度であるので、次の式(8−4)により求まる。
【0105】
θk=θ0+(θk−1−θ0)×k/(m−1) ・・・(8−4)
但し、k=1,2,・・・m−2である。
【0106】
再初期化部30は、式(8−4)を式(8−2)と式(8−3)に代入して、φ=0の仮想点R(s1,t1)を求める。
【0107】
(11−2)全体座標系への変換
再初期化部30は、上記で求めた仮想点Rを一般座標系(s,t)から全体座標系(x,y)へ座標変換する。その変換について図11に基づいて説明する。
【0108】
任意の有限要素に関する一般座標系(s,t)における仮想点Rと、全体座標系(x,y)における点Qとの関係は、形状関数を用いると次のようになる。なお、R1、R2、R3、R4は、一般座標系(s,t)における有限要素の節点である。
【0109】
F1=(1.0+s1)(1.0+t1)
F2=(1.0−s1)(1.0+t1)
F3=(1.0−s1)(1.0−t1)
F4=(1.0+s1)(1.0−t1) ・・・(9−1)
全体座標系における有限要素の4つの節点座標をQ1(x1,y1),Q2(x2,y2),Q3(x3,y3),Q4(x4,y4)とする。これらより点Q(x’,y’)は次の式(10−1)、式(10−2)により求まる。
【0110】
x’=F1×x1+F2×x2+F3×x3+F4×x4 ・・・(10−1)
y’=F1×y1+F2×y2+F3×y3+F4×y4 ・・・(10−2)
以上により、再初期化部30は、等位線φ=0上の仮想点Rの群を一般座標系(s,t)から全体座標系(x,y)へ座標変換して点Qの群を求める。
【0111】
(11−3)再初期化したφの求め方
再初期化部30は、上記で求めた点Qの群とレベルセット関数φの評価点(有限要素の重心点)との距離を計算し、最短距離にある点間距離を新たにレベルセット関数φの値とする。この計算は、第2計算部20が式(1)を用いて計算した方法と同様にして求める。この計算が再初期化である。なお、各レベルセット関数の符号は、再初期化する前のレベルセット関数の符号をそのまま付加する。
【0112】
さらに、再初期化部30は、再初期化したレベルセット関数を用いて、第3計算部22と同様に式(2−1)〜式(2−3)を用いてヘビサイト関数Hを再計算する。この再計算したヘビサイト関数Hは、解析部24において、歪みベクトル等を反復計算するときに用いる。
【0113】
(12)修正部32
次に、修正部32について説明する。
【0114】
図2のステップ11において、修正部32は、面積制約に対するレベルセット関数φの修正を行う。この修正を行う理由は、前記タイヤパターンの設計領域においては、最大面積が定められているからである。
【0115】
トポロジーを保存したまま面積の制約を満たすには、φ=0の等位線と同じトポロジーを持ち、距離qだけ離れたφ−q=0の等位線を求める必要がある。
【数8】
【0116】
この式(11−1)は、φ−q=0の等位線を意匠の境界とみなした領域の面積である。
【0117】
このqを求めるために次のように計算する。
【数9】
【0118】
qが十分小さいとすれば次の式(11−3)のように近似できる。
【数10】
【0119】
したがって、qは次の式(11−4)のようになる。
【数11】
【0120】
M(q)は目標の面積を表し、M(0)は現在の面積を表している。
【0121】
求めた面積の制約分の補正値qをレベルセット関数φから引くと修正したレベルセット関数φ’となる。すなわち、
φ’=φ−q ・・・(11−5)
となる。なお、以下の説明では、φ’は、単にφで表記する。
【0122】
(13)判定部34
次に、判定部32について説明する。
【0123】
図2のステップ12において、判定部32は、求解時の収束判定条件に基づいてレベルセット関数φ(P)が最適化されているか否かを判定する。
【0124】
まず、求解時の収束判定条件について説明する。
【0125】
判定部34は、(n+1)反復回数で求めたレベルセット関数φとn反復回数で求めたレベルセット関数φを用いて、収束判定を行う。
【0126】
平均自乗残差は次の式(12)のように表せる。
【数12】
【0127】
但し、errは収束判定値であり、本実施形態ではerr=1.0×10−6とする。なお、式(12)の中における(i,j)は、有限要素のアドレスを意味し、この判定部32までに記載された有限要素のアドレスiをx−y座標系における2次元で表記したものである。
【0128】
判定部32は、図2のステップ12において式(12)を満たすまで、すなわち、レベルセット関数φが収束するまで解析部24から修正部32の動作を繰り返すように制御する。すなわち、判定部32は、レベルセット関数φが式(12)に基づいて収束しなければ、反復回数nを1増加させてステップ7に戻る(図2のステップ12のNの場合)。
【0129】
そして、判定部32は、式(12)を具備すると、レベルセット関数φが収束したとして(図2のステップ12のYの場合)、ステップ13に進み、判定部32は、収束したそのレベルセット関数φ(P)を、最適化したレベルセット関数φ(P)と判定する。
【0130】
(14)変換部36
次に、変換部36について図12に基づいて説明する。
【0131】
図2のステップ14において、変換部36は、最適化したレベルセット関数φ(P)を、タイヤパターンにおける意匠へ変換する。
【0132】
図12には仮想有限要素を示し、仮想有限要素の各節点は、有限要素における中心(重心点)を示している。この仮想有限要素の辺を構成する節点に、最適化したレベルセット関数φ(P)の値が格納されている。但し、Pは各節点における位置ベクトルである。
【0133】
仮想有限要素の両端の節点に格納されたレベルセット関数φの値が異符号であれば、その辺上にレベルセット関数φ=0の点が存在する。変換部36は、そのゼロ点を、両端の節点でのレベルセット関数φの値で内分して求め、有限要素毎に求めたゼロ点をそれぞれ結んで線を求める。この結んだ線が、形状と位相が最適化されたタイヤパターンの意匠として表される。なお、この最適化された意匠は、固定初期意匠を保持し、変更初期意匠のみが変更されている。
【0134】
(15)出力部38
次に、出力部38について図14と図15に基づいて説明する。
【0135】
図2のステップ15において、出力部38は、以上のようにして求めた意匠を出力する。出力は、ディスプレイによって表示するか、又は、プリンタによって印刷する。
【0136】
図14(a)が初期意匠を示すタイヤパターンであり、図14(b)が従来の手法で最適化した意匠のタイヤパターンであり、図14(c)が本実施形態で最適化した意匠のタイヤパターンである。
【0137】
従来の手法では、固定初期意匠についても変更されているが、本実施形態では、固定初期意匠については形状及び位相が変更されず、変更初期意匠のみが変更されたものとなっている。
【0138】
また、図15に示すように、本実施形態では、面積の制約条件を具備し、かつ、目的汎関数が収束している。
【0139】
(16)効果
以上により、本実施形態の解析装置10であると、固定初期意匠を保持したまま、変更初期意匠のみについて形状及び位相の最適化問題を解決できる。
【変更例】
【0140】
上記実施形態では、タイヤパターンにおける意匠は、ブロック形状で説明したが、これに限らず、タイヤの接地形状において、陸部、溝部によって表される閉領域のどのような意匠であっても、解析装置10は最適化ができる。
【0141】
また、上記実施形態では、前記タイヤパターンの設計領域に関する面積制約を行ったが、面積制約が不要な場合には、修正部32を省略してもよい。
【0142】
また、上記実施例では、2次元のタイヤパターンで説明したが、3次元のタイヤパターンでも同様にこの解析装置10で解析できる。なお、この場合には、修正部32は、面積制約ではなく、前記タイヤパターンの設計領域に関する体積制約を行うこととなり、また、意匠は境界線ではなく境界面で表され、さらに、φ=0で表現されるのは等位線でなく等位面で表される。
【0143】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。本発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0144】
10・・・解析装置、12・・・モデル作成部、14・・・データ取得部、16・・・識別部、18・・・第1計算部、20・・・第2計算部、22・・・第3計算部、24・・・解析部、26・・・関数算出部、28・・・更新部、30・・・再初期化部、32・・・修正部、34・・・判定部、36・・・変換部、38・・・出力部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤのトレッドパターンの意匠を求める解析装置において、
初期意匠を表した有限要素モデルを作成するモデル作成部と、
前記有限要素モデルにおける初期意匠の境界を表した点列群に関するデータを取得するデータ取得部と、
前記初期意匠に関して、設計変更が可能な初期意匠である変更初期意匠と、設計変更が不可能な初期意匠である固定初期意匠とに識別する識別部と、
前記有限要素モデルにおける有限要素毎のヘビサイト関数の初期値を計算する第1計算部と、
(1)前記有限要素毎の評価点と最短距離にある前記初期意匠を表す点を特定し、前記最短距離を値とするレベルセット関数を、前記有限要素毎に計算すると共に、(2)前記最短距離の値に関して前記ヘビサイト関数に基づいてプラス又はマイナスの符号を付加する第2計算部と、
前記有限要素毎のレベルセット関数を用いて、前記初期値を計算したヘビサイト関数を再計算する第3計算部と、
有限要素法を用いて各有限要素の変位場における歪みベクトルを少なくとも解析する解析部と、
再計算した前記ヘビサイト関数の値と前記歪みベクトルとから目的凡関数を、前記有限要素毎に算出する関数算出部と、
前記目的凡関数を最小化することにより、前記変更初期意匠に関する前記有限要素のレベルセット関数のみを更新する更新部と、
更新した前記レベルセット関数を再初期化する再初期部と、
前記有限要素毎の再初期化した前記レベルセット関数が収束しているか否かを判定し、収束していなければ前記解析部、前記関数算出部、更新部、再初期化部の処理を繰り返すように制御し、収束していれば、収束した前記レベルセット関数を最適化したレベルセット関数と判定する判定部と、
前記有限要素毎の最適化したレベルセット関数から、最適化した意匠に変換する変換部と、
を有することを特徴とする解析装置。
【請求項2】
前記モデル作成部が作成する有限要素モデルは、2次元の有限要素モデル、又は、3次元の有限要素モデルである、
ことを特徴とする請求項1に記載の解析装置。
【請求項3】
前記タイヤパターンの設計領域に関する面積制約、又は、体積制約に基づいて、再初期化した前記レベルセット関数を修正する修正部をさらに有する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の解析装置。
【請求項4】
前記評価点が、前記有限要素の重心点である、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の解析装置。
【請求項5】
前記第1計算部は、前記有限要素の前記評価点が、前記初期意匠を表す境界よりも外側のときは前記初期値を0と設定し、前記初期意匠を表す境界よりも内側のときは前記初期値を1と設定する、
ことを特徴とする請求項4に記載の解析装置。
【請求項6】
前記第2計算部は、前記最短距離を値とする前記レベルセット関数の符号に関して、前記ヘビサイト関数の前記初期値が0のときはマイナスの符号を付加し、前記初期値が1のときはプラスの符号を付加する、
ことを特徴とする請求項5に記載の解析装置。
【請求項7】
前記第3計算部は、前記レベルセット関数の値に加えて、前記有限要素の辺の長さと相対ヤング率から前記ヘビサイト関数の値を、前記有限要素毎に再計算する、
ことを特徴とする請求項6に記載の解析装置。
【請求項8】
前記解析部は、前記有限要素の前記評価点を節点とした前記変位場における前記歪みベクトルと応力ベクトルを、前記有限要素法における剛性方程式に基づいて解析する、
ことを特徴とする請求項7に記載の解析装置。
【請求項9】
前記関数算出部は、
前記歪みベクトルを用いて歪力を前記有限要素毎に算出し、
前記歪力と前記レベルセット関数を用いてラグランジュの未定定数を前記有限要素毎に算出し、
再計算した前記ヘビサイト関数、前記ラグランジュの未定定数、前記歪みベクトルを用いて、前記目的凡関数を前記有限要素毎に算出する、
ことを特徴とする請求項8に記載の解析装置。
【請求項10】
前記更新部は、
前記レベルセット関数に関する偏微分方程式を、前進オイラー法を用いた有限差分法で近似し、この近似した式に関して、前記変更初期意匠に属する前記有限要素については所定の更新幅で更新し、かつ、前記固定初期意匠に属する前記有限要素については前記更新幅を0として更新するか、又は、この更新を計算しない、
ことを特徴とする請求項9に記載の解析装置。
【請求項11】
前記再初期化部は、
更新した前記レベルセット関数φに関して、φ=0の等位線又は等位面を算出し、
前記有限要素毎の評価点と前記φ=0上の点と最短距離にある前記φ=0上の点を特定し、前記最短距離を値とする前記レベルセット関数を、前記有限要素毎に計算する、
ことを特徴とする請求項10に記載の解析装置。
【請求項12】
前記判定部は、
前記更新後で、かつ、再初期化した前記レベルセット関数の値と、前記更新前で、かつ、再初期化した前記レベルセット関数の値との平均自乗残差値を求め、前記平均自乗残差値が所定値より小さくなれば収束したと判定する、
ことを特徴とする請求項11に記載の解析装置。
【請求項13】
前記変換部は、
前記有限要素毎の最適化した前記レベルセット関数から求めたφ=0の各点をそれぞれ結んだ線又は面を、最適化した意匠の境界線又は境界面に設定する、
ことを特徴とする請求項12に記載の解析装置。
【請求項14】
最適化した前記意匠を出力する出力部をさらに有する、
ことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載の解析装置。
【請求項15】
タイヤのトレッドパターンの意匠を求める解析方法において、
初期意匠を表した有限要素モデルを作成するモデル作成ステップと、
前記有限要素モデルにおける初期意匠の境界を表した点列群に関するデータを取得するデータ取得ステップと、
前記初期意匠に関して、設計変更が可能な初期意匠である変更初期意匠と、設計変更が不可能な初期意匠である固定初期意匠とに識別する識別ステップと、
前記有限要素モデルにおける有限要素毎のヘビサイト関数の初期値を計算する第1計算ステップと、
(1)前記有限要素毎の評価点と最短距離にある前記初期意匠を表す点を特定し、前記最短距離を値とするレベルセット関数を、前記有限要素毎に計算すると共に、(2)前記最短距離の値に関して前記ヘビサイト関数に基づいてプラス又はマイナスの符号を付加する第2計算ステップと、
前記有限要素毎のレベルセット関数を用いて、前記初期値を計算したヘビサイト関数を再計算する第3計算ステップと、
有限要素法を用いて各有限要素の変位場における歪みベクトルを少なくとも解析する解析ステップと、
再計算した前記ヘビサイト関数の値と前記歪みベクトルとから目的凡関数を、前記有限要素毎に算出する関数算出ステップと、
前記目的凡関数を最小化することにより、前記変更初期意匠に関する前記有限要素のレベルセット関数のみを更新する更新ステップと、
更新した前記レベルセット関数を再初期化する再初期ステップと、
前記有限要素毎の再初期化した前記レベルセット関数が収束しているか否かを判定し、収束していなければ前記解析ステップ、前記関数算出ステップ、更新ステップ、再初期化ステップの処理を繰り返すように制御し、収束していれば、収束した前記レベルセット関数を最適化したレベルセット関数と判定する判定ステップと、
前記有限要素毎の最適化したレベルセット関数から、最適化した意匠に変換する変換ステップと、
を有することを特徴とする解析方法。
【請求項16】
タイヤのトレッドパターンの意匠を求める解析プログラムにおいて、
コンピュータに、
初期意匠を表した有限要素モデルを作成するモデル作成機能と、
前記有限要素モデルにおける初期意匠の境界を表した点列群に関するデータを取得するデータ取得機能と、
前記初期意匠に関して、設計変更が可能な初期意匠である変更初期意匠と、設計変更が不可能な初期意匠である固定初期意匠とに識別する識別機能と、
前記有限要素モデルにおける有限要素毎のヘビサイト関数の初期値を計算する第1計算機能と、
(1)前記有限要素毎の評価点と最短距離にある前記初期意匠を表す点を特定し、前記最短距離を値とするレベルセット関数を、前記有限要素毎に計算すると共に、(2)前記最短距離の値に関して前記ヘビサイト関数に基づいてプラス又はマイナスの符号を付加する第2計算機能と、
前記有限要素毎のレベルセット関数を用いて、前記初期値を計算したヘビサイト関数を再計算する第3計算機能と、
有限要素法を用いて各有限要素の変位場における歪みベクトルを少なくとも解析する解析機能と、
再計算した前記ヘビサイト関数の値と前記歪みベクトルとから目的凡関数を、前記有限要素毎に算出する関数算出機能と、
前記目的凡関数を最小化することにより、前記変更初期意匠に関する前記有限要素のレベルセット関数のみを更新する更新機能と、
更新した前記レベルセット関数を再初期化する再初期機能と、
前記有限要素毎の再初期化した前記レベルセット関数が収束しているか否かを判定し、収束していなければ前記解析機能、前記関数算出機能、更新機能、再初期化機能の処理を繰り返すように制御し、収束していれば、収束した前記レベルセット関数を最適化したレベルセット関数と判定する判定機能と、
前記有限要素毎の最適化したレベルセット関数から、最適化した意匠に変換する変換機能と、
を実現させるための解析プログラム。
【請求項1】
タイヤのトレッドパターンの意匠を求める解析装置において、
初期意匠を表した有限要素モデルを作成するモデル作成部と、
前記有限要素モデルにおける初期意匠の境界を表した点列群に関するデータを取得するデータ取得部と、
前記初期意匠に関して、設計変更が可能な初期意匠である変更初期意匠と、設計変更が不可能な初期意匠である固定初期意匠とに識別する識別部と、
前記有限要素モデルにおける有限要素毎のヘビサイト関数の初期値を計算する第1計算部と、
(1)前記有限要素毎の評価点と最短距離にある前記初期意匠を表す点を特定し、前記最短距離を値とするレベルセット関数を、前記有限要素毎に計算すると共に、(2)前記最短距離の値に関して前記ヘビサイト関数に基づいてプラス又はマイナスの符号を付加する第2計算部と、
前記有限要素毎のレベルセット関数を用いて、前記初期値を計算したヘビサイト関数を再計算する第3計算部と、
有限要素法を用いて各有限要素の変位場における歪みベクトルを少なくとも解析する解析部と、
再計算した前記ヘビサイト関数の値と前記歪みベクトルとから目的凡関数を、前記有限要素毎に算出する関数算出部と、
前記目的凡関数を最小化することにより、前記変更初期意匠に関する前記有限要素のレベルセット関数のみを更新する更新部と、
更新した前記レベルセット関数を再初期化する再初期部と、
前記有限要素毎の再初期化した前記レベルセット関数が収束しているか否かを判定し、収束していなければ前記解析部、前記関数算出部、更新部、再初期化部の処理を繰り返すように制御し、収束していれば、収束した前記レベルセット関数を最適化したレベルセット関数と判定する判定部と、
前記有限要素毎の最適化したレベルセット関数から、最適化した意匠に変換する変換部と、
を有することを特徴とする解析装置。
【請求項2】
前記モデル作成部が作成する有限要素モデルは、2次元の有限要素モデル、又は、3次元の有限要素モデルである、
ことを特徴とする請求項1に記載の解析装置。
【請求項3】
前記タイヤパターンの設計領域に関する面積制約、又は、体積制約に基づいて、再初期化した前記レベルセット関数を修正する修正部をさらに有する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の解析装置。
【請求項4】
前記評価点が、前記有限要素の重心点である、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の解析装置。
【請求項5】
前記第1計算部は、前記有限要素の前記評価点が、前記初期意匠を表す境界よりも外側のときは前記初期値を0と設定し、前記初期意匠を表す境界よりも内側のときは前記初期値を1と設定する、
ことを特徴とする請求項4に記載の解析装置。
【請求項6】
前記第2計算部は、前記最短距離を値とする前記レベルセット関数の符号に関して、前記ヘビサイト関数の前記初期値が0のときはマイナスの符号を付加し、前記初期値が1のときはプラスの符号を付加する、
ことを特徴とする請求項5に記載の解析装置。
【請求項7】
前記第3計算部は、前記レベルセット関数の値に加えて、前記有限要素の辺の長さと相対ヤング率から前記ヘビサイト関数の値を、前記有限要素毎に再計算する、
ことを特徴とする請求項6に記載の解析装置。
【請求項8】
前記解析部は、前記有限要素の前記評価点を節点とした前記変位場における前記歪みベクトルと応力ベクトルを、前記有限要素法における剛性方程式に基づいて解析する、
ことを特徴とする請求項7に記載の解析装置。
【請求項9】
前記関数算出部は、
前記歪みベクトルを用いて歪力を前記有限要素毎に算出し、
前記歪力と前記レベルセット関数を用いてラグランジュの未定定数を前記有限要素毎に算出し、
再計算した前記ヘビサイト関数、前記ラグランジュの未定定数、前記歪みベクトルを用いて、前記目的凡関数を前記有限要素毎に算出する、
ことを特徴とする請求項8に記載の解析装置。
【請求項10】
前記更新部は、
前記レベルセット関数に関する偏微分方程式を、前進オイラー法を用いた有限差分法で近似し、この近似した式に関して、前記変更初期意匠に属する前記有限要素については所定の更新幅で更新し、かつ、前記固定初期意匠に属する前記有限要素については前記更新幅を0として更新するか、又は、この更新を計算しない、
ことを特徴とする請求項9に記載の解析装置。
【請求項11】
前記再初期化部は、
更新した前記レベルセット関数φに関して、φ=0の等位線又は等位面を算出し、
前記有限要素毎の評価点と前記φ=0上の点と最短距離にある前記φ=0上の点を特定し、前記最短距離を値とする前記レベルセット関数を、前記有限要素毎に計算する、
ことを特徴とする請求項10に記載の解析装置。
【請求項12】
前記判定部は、
前記更新後で、かつ、再初期化した前記レベルセット関数の値と、前記更新前で、かつ、再初期化した前記レベルセット関数の値との平均自乗残差値を求め、前記平均自乗残差値が所定値より小さくなれば収束したと判定する、
ことを特徴とする請求項11に記載の解析装置。
【請求項13】
前記変換部は、
前記有限要素毎の最適化した前記レベルセット関数から求めたφ=0の各点をそれぞれ結んだ線又は面を、最適化した意匠の境界線又は境界面に設定する、
ことを特徴とする請求項12に記載の解析装置。
【請求項14】
最適化した前記意匠を出力する出力部をさらに有する、
ことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載の解析装置。
【請求項15】
タイヤのトレッドパターンの意匠を求める解析方法において、
初期意匠を表した有限要素モデルを作成するモデル作成ステップと、
前記有限要素モデルにおける初期意匠の境界を表した点列群に関するデータを取得するデータ取得ステップと、
前記初期意匠に関して、設計変更が可能な初期意匠である変更初期意匠と、設計変更が不可能な初期意匠である固定初期意匠とに識別する識別ステップと、
前記有限要素モデルにおける有限要素毎のヘビサイト関数の初期値を計算する第1計算ステップと、
(1)前記有限要素毎の評価点と最短距離にある前記初期意匠を表す点を特定し、前記最短距離を値とするレベルセット関数を、前記有限要素毎に計算すると共に、(2)前記最短距離の値に関して前記ヘビサイト関数に基づいてプラス又はマイナスの符号を付加する第2計算ステップと、
前記有限要素毎のレベルセット関数を用いて、前記初期値を計算したヘビサイト関数を再計算する第3計算ステップと、
有限要素法を用いて各有限要素の変位場における歪みベクトルを少なくとも解析する解析ステップと、
再計算した前記ヘビサイト関数の値と前記歪みベクトルとから目的凡関数を、前記有限要素毎に算出する関数算出ステップと、
前記目的凡関数を最小化することにより、前記変更初期意匠に関する前記有限要素のレベルセット関数のみを更新する更新ステップと、
更新した前記レベルセット関数を再初期化する再初期ステップと、
前記有限要素毎の再初期化した前記レベルセット関数が収束しているか否かを判定し、収束していなければ前記解析ステップ、前記関数算出ステップ、更新ステップ、再初期化ステップの処理を繰り返すように制御し、収束していれば、収束した前記レベルセット関数を最適化したレベルセット関数と判定する判定ステップと、
前記有限要素毎の最適化したレベルセット関数から、最適化した意匠に変換する変換ステップと、
を有することを特徴とする解析方法。
【請求項16】
タイヤのトレッドパターンの意匠を求める解析プログラムにおいて、
コンピュータに、
初期意匠を表した有限要素モデルを作成するモデル作成機能と、
前記有限要素モデルにおける初期意匠の境界を表した点列群に関するデータを取得するデータ取得機能と、
前記初期意匠に関して、設計変更が可能な初期意匠である変更初期意匠と、設計変更が不可能な初期意匠である固定初期意匠とに識別する識別機能と、
前記有限要素モデルにおける有限要素毎のヘビサイト関数の初期値を計算する第1計算機能と、
(1)前記有限要素毎の評価点と最短距離にある前記初期意匠を表す点を特定し、前記最短距離を値とするレベルセット関数を、前記有限要素毎に計算すると共に、(2)前記最短距離の値に関して前記ヘビサイト関数に基づいてプラス又はマイナスの符号を付加する第2計算機能と、
前記有限要素毎のレベルセット関数を用いて、前記初期値を計算したヘビサイト関数を再計算する第3計算機能と、
有限要素法を用いて各有限要素の変位場における歪みベクトルを少なくとも解析する解析機能と、
再計算した前記ヘビサイト関数の値と前記歪みベクトルとから目的凡関数を、前記有限要素毎に算出する関数算出機能と、
前記目的凡関数を最小化することにより、前記変更初期意匠に関する前記有限要素のレベルセット関数のみを更新する更新機能と、
更新した前記レベルセット関数を再初期化する再初期機能と、
前記有限要素毎の再初期化した前記レベルセット関数が収束しているか否かを判定し、収束していなければ前記解析機能、前記関数算出機能、更新機能、再初期化機能の処理を繰り返すように制御し、収束していれば、収束した前記レベルセット関数を最適化したレベルセット関数と判定する判定機能と、
前記有限要素毎の最適化したレベルセット関数から、最適化した意匠に変換する変換機能と、
を実現させるための解析プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−221418(P2012−221418A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89410(P2011−89410)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】
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