説明

解熱鎮痛用固形製剤

【課題】 解熱鎮痛薬は即効性が求められる薬剤であり、効果の発現時間が短いものが求められている。その様な中、イブプロフェンとエテンザミドを同時投与して即効性と相乗効果を同時に発現するには、イブプロフェンおよびエテンザミドの両薬物共に素早い溶出が求められる。
本発明は、イブプロフェンとエテンザミドを同時配合した製剤において、両薬剤の溶出性を向上させた製剤の提供を目的とする。
【解決手段】 平均粒子径5〜100μmのエテンザミドおよび平均粒子径15〜40μmのイブプロフェンを含有する固形製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は解熱鎮痛作用を有する薬剤に関する。
【背景技術】
【0002】
イブプロフェンは強力な解熱鎮痛作用を有し、以前より解熱鎮痛薬や総合感冒薬の有効成分として用いられる。従来、イブプロフェンと、解熱鎮痛薬の有効成分の1種であるエテンザミドを適切な配合比で投与すると、解熱鎮痛効果が相乗的に増加する事が開示されている(特許文献1)。
【0003】
解熱鎮痛薬は即効性が求められる薬剤であり、効果の発現時間が短いものが求められている。その様な中、イブプロフェンとエテンザミドを同時投与して即効性と相乗効果を同時に発現するには、イブプロフェンおよびエテンザミドの両薬物共に素早い溶出が求められる。
【0004】
難溶性薬物の溶出性を向上するには、粒子径を小さくすることが一般的に行われている。そのため難溶性薬物の溶出性向上を目指してイブプロフェンなどの難溶性薬物の平均粒子径を1〜15μmにし、ポリグリセリン脂肪酸エステル等を配合した懸濁剤とする技術(特許文献2)、超難水溶性の薬物の溶出性を向上させるために1μm以下の超微粒子にする技術(特許文献3)などが知られている。
【0005】
このように薬物の溶出性向上のために薬物を微細化することは一般的に行われていることである。
【0006】
【特許文献1】特許2013734号
【特許文献2】国際公開番号WO97/41832
【特許文献3】国際公開番号WO96/19239
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らはイブプロフェンとエテンザミドを同時配合した製剤において両薬剤の溶出性を向上させるべく成分の微粒子化を行った。しかし、得られた製剤は満足できる溶出性を得ることはできなかった。
【0008】
本発明は、イブプロフェンとエテンザミドを同時配合した製剤において、両薬剤の溶出性を向上させた製剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは課題を解決するために種々検討した結果、イブプロフェンとエテンザミドをそれぞれ特定の範囲の平均粒子径にすることにより、イブプロフェンとエテンザミド両方の溶出性が向上した即効性に優れた薬剤となることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は平均粒子径5〜100μmのエテンザミドおよび平均粒子径15〜40μmのイブプロフェンを含有する固形製剤である。
【0011】
一般的に薬物の溶出性は平均粒子径が小さいほど増加するが、本発明の薬物の組み合わせでは一方の平均粒子径が小さくなりすぎると他方の溶出性を減少させるという驚くべき知見が得られており、それぞれの薬剤の平均粒子径がそれぞれ特定の範囲にはいることにより初めて両薬剤の溶出性が向上する。
【発明の効果】
【0012】
イブプロフェンとエテンザミドの両薬剤を特定の平均粒子径範囲にすることにより、両薬剤とも溶出性が向上することがわかった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明で配合するエテンザミドは平均粒子径5〜100μmの範囲である必要がある。平均粒子径が大きすぎても小さすぎても、イブプロフェンの溶出性を低下させ、さらにエテンザミドの溶出性も低下させてしまうからである。
【0014】
本発明で配合するイブプロフェンは平均粒子径15〜40μmの範囲である必要がある。平均粒子径が大きすぎるとイブプロフェンの溶出性が低下し、平均粒子径が小さすぎると、イブプロフェンだけではなくエテンザミドの溶出性をも低下させてしまうからである。
【0015】
本発明で配合する薬物の平均粒子径はレーザー回折・散乱法により測定することができる。
【0016】
本発明で配合する薬剤はジェットミル法などで粉砕することにより平均粒子径を調節することもできる。
【0017】
本発明でイブプロフェンの配合量は、解熱鎮痛効果の点から1回投与量あたり50〜150mgが好ましい。また、エテンザミドの配合量は、解熱鎮痛効果の点から1回投与量あたり50〜500mgが好ましい。それらの配合比は解熱鎮痛作用の相乗効果の点からイブプロフェン1質量部あたりエテンザミドが0.05〜10質量部になる範囲が好ましい。
【0018】
本発明の固形製剤は、平均粒子径を調整したイブプロフェンとエテンザミドを用いて、賦形剤、滑沢剤などの通常の成分を配合し、一般的な方法で製造することができる。
【0019】
本発明の固形製剤の剤形は、錠剤、顆粒剤、粉剤、カプセル剤などの剤形にすることができる。
【0020】
以下、本発明を実施例および試験例によりさらに詳細に説明する。
【実施例1】
【0021】
イブプロフェン(平均粒子径:23.1μm,マイクロトラックにより分散圧0.20MPaにて測定。以下同様。)15.12g、エテンザミド(平均粒子径:20.2μm)8.82g、結晶セルロース1.22g、ステアリン酸マグネシウム0.076gを秤量し、ポリエチレン製袋内にて均一になるように混合し、粉状製剤を得た。
【0022】
比較例1
実施例1のイブプロフェン(平均粒子径23.1μm)を、より粒子径の小さいイブプロフェン(平均粒子径10.7μm)15.12gに替えて、実施例1と同様にして、比較用粉状製剤を得た。
【0023】
比較例2
実施例1のイブプロフェン(平均粒子径23.1μm)を、より粒子径の大きいイブプロフェン(平均粒子径50.2μm)15.12gに替えて、実施例1と同様にして、比較用粉状製剤を得た。
【0024】
比較例3
実施例1のエテンザミド(平均粒子径:20.2μm)を、より粒子径の小さいエテンザミド(平均粒子径:2.5μm)8.82gに替えて、実施例1と同様にして、比較用粉状製剤を得た。
【0025】
比較例4
実施例1のエテンザミド(平均粒子径:20.2μm)を、より粒子径の大きいエテンザミド(平均粒子径:172.2μm)8.82gに替えて、実施例1と同様にして、比較用粉状製剤を得た。
【0026】
試験例1(溶出試験)
実施例1、比較例1、比較例2、比較例3および比較例4で得られた製剤を日本薬局方一般試験法溶出試験法第2法(パドル法)に準拠して試験を実施した。試験液は精製水を用い、パドル回転数を毎分50回転にて試験を行い溶出率(%)を求めた。イブプロフェンの溶出試験結果を表1および図1に、エテンザミドの溶出試験結果を表2および図2に示した。
【0027】
【表1】

【0028】
【表2】

【0029】
表および図から明らかなように、驚くべきことに、一方の薬物の粒子径が他方の薬物の溶出性に大きく影響していることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明により、イブプロフェンとエテンザミドの溶出性がともに優れた製剤を提供することが可能になったので、医薬品として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】イブプロフェンの溶出率を示した図であり、縦軸に溶出率(%)、縦軸に時間(分)を示した。
【図2】エテンザミドの溶出率を示した図であり、縦軸に溶出率(%)、縦軸に時間(分)を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径5〜100μmのエテンザミドおよび平均粒子径15〜40μmのイブプロフェンを含有する固形製剤。
【請求項2】
平均粒子径5〜100μmのエテンザミドおよび平均粒子径15〜40μmのイブプロフェンを含有し、配合比としてイブプロフェン1質量部に対してエテンザミドが0.05〜10質量部である固形製剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−315956(P2006−315956A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−136804(P2005−136804)
【出願日】平成17年5月10日(2005.5.10)
【出願人】(000002819)大正製薬株式会社 (437)
【Fターム(参考)】