説明

触媒ガス化のための石油コークス組成物

石油コークス、石炭及びガス化触媒の緊密な混合物を含む粒状組成物が開示されており、ここでガス化触媒は、蒸気の存在下でガス化してメタンと、少なくとも水素、一酸化炭素及び他の高級炭化水素の1つ又はそれ以上との複数のガスを得るための少なくとも石炭上に装填される。また、粒状組成物を製造し、そして粒子性組成物を複数のガス状生成物に転換する方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、石油コークス、石炭及び少なくとも1つのガス化触媒の粒状組成物に関する。さらに、本開示は、粒状組成物を製造するための、そしてそれを蒸気の存在下でガス化してガス状生成物、そして特にメタンを形成するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー価格の上昇や環境への懸念といった多くの要因から、石油コークス及び石炭のような低燃料価の炭素質供給原料から付加価値のあるガス状生成物を製造することは再び注目されている。メタン及び他の付加価値のあるガスを製造するためのこのような物質の触媒ガス化は、例えば、特許文献1〜26に記載されている。
【0003】
石油コークスは、原油残留物のような炭素源のディレードコーキング又は流動コーキング、及びオイルサンドをグレードアップするために使用されるコーキングプロセスから誘導された一般に固形の炭素質残留物である。石油コークスは、一般に、その高結晶質炭素及び重質油(heavy-gravity oil)から誘導された高レベルの有機硫黄のため、特に中程度の温度でのガス化反応性に乏しい。石油コークスの低い反応性を改善するためには触媒の使用が必要であるが、しかしながら、ある種の触媒は、ペットコーク(petcokes)中の硫黄含有化合物によって有害となることがある。石油コークスをメタン及び他の付加価値のあるガス状生成物にガス化するための一つの有益な触媒的方法は、上記の特許文献24に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】US3828474
【特許文献2】US3998607
【特許文献3】US4057512
【特許文献4】US4092125
【特許文献5】US4094650
【特許文献6】US4204843
【特許文献7】US4468231
【特許文献8】US4500323
【特許文献9】US4541841
【特許文献10】US4551155
【特許文献11】US4558027
【特許文献12】US4606105
【特許文献13】US4617027
【特許文献14】US4609456
【特許文献15】US5017282
【特許文献16】US5055181
【特許文献17】US6187465
【特許文献18】US6790430
【特許文献19】US6894183
【特許文献20】US6955695
【特許文献21】US2003/0167961A1
【特許文献22】US2006/0265953A1
【特許文献23】US2007/000177A1
【特許文献24】US2007/083072A1
【特許文献25】US2007/0277437A1
【特許文献26】GB1599932
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
石油コークス単独の反応は、非常に高い理論上の炭素転換率(例えば98%)を有することができるが、しかし、床組成の維持、ガス化反応器中の床の流動化、可能な液相の制御、並びにガス化反応器及びチャー回収における床の凝集に関しては問題がある。さらに、石油コークスは、本質的に低い水分含量を有し、慣用の触媒含浸法を可能にする水浸漬能(water soaking capacity)が非常に低い。従って、石油コークスをガス化するためのガス化触媒を担持し、そして提供することができる方法及び組成物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様において、本明細書は、流動床領域におけるガス化に適した粒子分布サイズを有する粒状組成物であって、粒状組成物は、(a)石油コークス;(b)石炭;及び(c)ガス化触媒の緊密な混合物を含み、これは、蒸気の存在下、そして適切な温度及び圧力下で、ガス化活性を示し、それによってメタン並びに水素、一酸化炭素、二酸化炭素、硫化水素、アンモニア及び他の高級炭化水素の1つ又はそれ以上を含む複数のガスを形成し、その際:(i)石油コークス及び石炭は、約5:95〜約95:5の質量比率で粒状組成物中に存在し;(ii)ガス化触媒は、少なくとも石炭上に装填され;(iii)ガス化触媒は、少なくとも1つのアルカリ金属の供給源を含み、そして粒状組成物において約0.01〜約0.08の範囲のアルカリ金属対炭素原子比を供給するのに十分な量で存在し;そして(iv)粒状組成物は、粒状組成物の質量に基づき約20質量%未満の全灰含量を含む、前記組成物を提供する。
【0007】
第2の態様において、本明細書は、(a)第1の態様による粒状組成物をガス化反応器に供給し;(b)粒状組成物をガス化反応器中、蒸気の存在下、そして適切な温度及び圧力下で反応させてメタン並びに水素、一酸化炭素、二酸化炭素、硫化水素、アンモニア及び他の高級炭化水素の1つ又はそれ以上を含む複数のガス状のものを形成し;そして(c)複数のガス状生成物を少なくとも部分的に分離してガス状生成物の1つの主要量を含む流れを生成する:ことを含む、粒状組成物を複数のガス状生成物に転換する方法を提供する。
【0008】
第3の態様において、本明細書は、(a)石油コークス微粒子、石炭微粒子及びガス化触媒を供給し;(b)石炭微粒子を、ガス化触媒を含む水溶液と接触させてスラリーを形成し;そして(c)スラリーを脱水して触媒装填された湿潤石炭ケークを形成し;そして(d)湿潤石炭ケーク及び石油コークス微粒子を混練して粒状組成物を形成する:ことを含む、第1の態様の粒状組成物の製造方法を提供する。
【0009】
発明の詳述
本明細書は、粒状組成物、粒状組成物の製造方法、及び粒状組成物の触媒ガス化方法に関する。一般に、粒状組成物は、1つ又はそれ以上の石炭、例えば、高灰分及び/又は高水分含量の石炭、特に低い等級の石炭、例えば亜炭、亜瀝青炭及びそれらの混合物との種々のブレンド中の1つ又はそれ以上の石油コークスを含む。このような粒状組成物は、生成物としてメタン及び他の付加価値のあるガスが得られる高い灰分及び水分含量を有する亜炭又は亜瀝青炭のような石炭を触媒ガス化するための経済的で商業的に実用的な方法のために提供することができる。また、このような粒状組成物は、石油コークスの触媒ガス化と関連するいくつかの技術的課題を減らす又は排除するのに役立つ。本明細書に記載された粒状組成物及び方法は、配合された供給原料としてそれを処理することによって商業的に実用的なガス化方法においてこれらの異なる供給原料を有効に活用する方法とみなされる。
【0010】
触媒ガス化技術に対する最近の成果は、所有者共通の出願によるUS2007/0000177A1、US2007/0083072A1及びUS2007/0277437A1;及び米国特許出願第12/178,380号(2008年7月23日出願)、同第12/234,012号(2008年9月19日出願)及び同第12/234,018号(2008年9月19日出願)に記載されている。さらに、本発明の方法は、以下の米国特許出願の主題と併せて実施することができ、それぞれ、これと共に同日付けで出願されている:“CONTINUOUS PROCESSES FOR CONVERTING CARBONACEOUS FEEDSTOCK INTO GASEOUS PRODUCTS”と題する同出願第_________号(代理人整理番号FN−0018 US NP1);“CATALYTIC GASIFICATION PROCESS WITH RECOVERY OF ALKALI METAL FROM CHAR”と題する同出願第_________号(代理人整理番号FN−0007 US NP1);“PETROLEUM COKE COMPOSITIONS FOR CATALYTIC GASIFICATION”と題する同出願第_________号(代理人整理番号FN−0011 US NP1);“CARBONACEOUS FUELS AND PROCESSES FOR MAKING AND USING THEM”と題する同出願第_________号(代理人整理番号FN−0013 US NP1);“CATALYTIC GASIFICATION PROCESS WITH RECOVERY OF ALKALI METAL FROM CHAR”と題する同出願第_________号(代理人整理番号FN−0014 US NP1);“COAL COMPOSITIONS FOR CATALYTIC GASIFICATION”と題する同出願第_________号(代理人整理番号FN−0009 US NP1);“PROCESSES FOR MAKING SYNTHESIS GAS AND SYNGAS-DERIVED PRODUCTS”と題する同出願第_________号(代理人整理番号FN−0010 US NP1);“CATALYTIC GASIFICATION PROCESS WITH RECOVERY OF ALKALI METAL FROM CHAR”と題する同出願第_________号(代理人整理番号FN−0015 US NP1);“CATALYTIC GASIFICATION PROCESS WITH RECOVERY OF ALKALI METAL FROM CHAR”と題する同出願第_________号(代理人整理番号FN−0016 US NP1);“STEAM GENERATING SLURRY GASIFIER FOR THE CATALYTIC GASIFICATION OF A CARBONACEOUS FEEDSTOCK”と題する同出願第_________号(代理人整理番号FN−0017 US NP1);及び“PROCESSES FOR MAKING SYNGAS-DERIVED PRODUCTS”と題する同出願第_________号(代理人整理番号FN−0012 US NP1)。上記の全ては、完全に記載にされたものとして、すべての目的について参照により本明細書に組み込まれている。
【0011】
本明細書に記載されたすべての刊行物、特許出願、特許及び他の参考文献は、特に明記しない限り、完全に記載されたものとして、すべての目的についてそれらの全体で参照により本明細書に明確に組み込まれている。
【0012】
他に定義されていなければ、本明細書に用いられるすべての技術的及び科学的な用語は、本明細書が属する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾がある場合、定義を含めて、本明細書を照らし合わせる。
【0013】
特に注釈された場合を除き、登録商標は、大文字で示す。
【0014】
本明細書に記載されたものと類似の又は同等の方法及び物質は、本明細書の実施又は試験において使用することができるが、適切な方法及び物質は、本明細書に記載されている。
【0015】
特に明記しない限り、すべてのパーセンテージ、部、比率、などは、質量による。
【0016】
量、濃度、又は他の値若しくはパラメーターが、範囲又はより上の及びより下の値のリストとして記載されている場合、これは、範囲が別々に記載されているかどうかに関係なく、あらゆる上限及び下限の範囲のあらゆる対から構成される具体的に記載されたすべての範囲として理解すべきである。数値的な値の範囲が本明細書に列挙されている場合、特に明記しない限り、範囲はその端点、並びに範囲内のすべての整数及び有理数を含むものとする。本明細書の範囲は、範囲を定義する場合に列挙された具体的な値に制限されるわけではない。
【0017】
値又は範囲の端点を記載する際に「約」という用語を用いる場合、本明細書においては、相当する具体的な値又は端点を含むものと理解しなければならない。
【0018】
本明細書に使用されるように、用語「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「有する」「有している」又はその他のすべての変化形は、非独占的包含に適用されるものとする。例えば、要素のリストを含むプロセス、方法、商品、又は装置は、必ずしもそれらの要素だけに制限されるわけではなく、明確に記載されてない又はこのようなプロセス、方法、商品、若しくは装置に固有の他の要素を含むことができる。さらに、特に明記されていなければ、「又は」は、包括的な又はのことであり、排他的な又はのことではない。例えば、条件A又はBは、以下のいずれか1つによって満足される:Aが真であり(又は存在する)かつBが誤りである(又は存在しない)、Aが誤りであり(又は存在しない)かつBが真である(又は存在する)、そしてA及びBの両方が真である(又は存在する)。
【0019】
本明細書において種々の要素及び成分を記載するための単数形の使用は、単に便宜上のものであって明細書の一般的な意味を表す。この説明は、1つ又は少なくとも1つを含むものとして読み取らなければならず、そして単数は、それが他を意味することが明白でなければ複数も含む。
【0020】
本明細書における物質、方法、及び例は、説明のためだけであって具体的に記載された場合を除いて、制限しようとするものではない。
【0021】
石油コークス
本明細書に用いられる用語「石油コークス」には、(i)石油精製で得られた高沸点炭化水素画分の固形熱分解生成物(重質残留物(heavy residues)−「残油ペットコーク」);及び(ii)タールサンド処理の固形熱分解生成物(瀝青砂又はオイルサンド−「タールサンドペットコーク」)の両方が含まれる。このような炭化生成物には、例えば、生、か焼、針状及び流動床石油コークスが含まれる。
【0022】
残油ペットコークは、例えば、重質残留性原油(heavy-gravity residual crude oil)をグレードアップするために使用されるコーキングプロセスによって原油から誘導することができ、その石油コークスは、コークス質量に基づき、典型的に約1.0質量%又はそれ未満、そしてより典型的には0.5質量%又はそれ未満の灰分を微量成分として含む。典型的に、このような低灰分コークス中の灰分は、ニッケル及びバナジウムのような金属を主に含む。
【0023】
タールサンドペットコークは、例えばオイルサンドをグレードアップするために使用されるコーキングプロセスによってオイルサンドから誘導することができる。タールサンドペットコークは、タールサンドペットコークの全質量に基づき、典型的に約2質量%〜約12質量%の範囲、そしてより典型的に約4質量%〜約12質量%の範囲で微量成分として灰分を含む。典型的に、高灰分コークス中の灰分は、シリカ及び/又はアルミナのような物質を主に含む。
【0024】
石油コークスは、一般に典型的に約0.2〜約2質量%の範囲(全石油コークス質量に
基づく)で本質的に低い水分含量を有し;また、それは、典型的に慣用の触媒含浸方法を可能にするための水浸漬能が非常に低い。本明細書の粒状組成物では、この問題が排除されており、石油コークス−石炭ブレンドにおける有益効果のために石油コークス中の低水分含量を使用する。生成した粒状組成物は、例えば、低い平均水分含量を含み、これは慣用の乾燥操作に対する下流の乾燥操作の効率を高める。
【0025】
石油コークスは、石油コークスの全質量に基づき、少なくとも約70質量%の炭素、少なくとも約80質量%の炭素、又は少なくとも約90質量%の炭素を含むことができる。典型的に、石油コークスは、石油コークスの質量に基づき、約20質量%パーセント未満の無機化合物を含む。
【0026】
石炭
本明細書に用いられる用語「石炭」は、泥炭、亜炭、亜瀝青炭、瀝青炭、無煙炭、又はそれらの混合物を意味する。ある実施態様において、石炭は、全石炭質量に基づき、約85%未満、又は約80%未満、又は約75%未満、又は約70%未満、又は約65%未満、又は約60%未満、又は約55%未満、又は約50質量%未満の炭素含量を有する。別の実施態様において、石炭は、全石炭質量に基づき、約85%まで、又は約80%まで、又は約75質量%までの範囲の炭素含量を有する。有用な石炭の例としては、Illinois #6、Pittsburgh #8、Beulah (ND)、Utah Blind Canyon、及びPowder River Basin (PRB)石炭が含まれるが、これらに制限されるわけではない。無煙炭、瀝青炭、亜瀝青炭及び亜炭は、乾燥基準における石炭の全質量により、それぞれ約10質量%、約5〜約7質量%、約4〜約8質量%、及び約9〜約11質量%の灰分を含んでもよい。しかしながら、あらゆる特定の石炭供給源の灰分は、当業者に知られているように石炭の等級及び供給源に左右される。例えば“Coal Data: A Reference”, Energy Information Administration, Office of Coal, Nuclear, Electric and Alternate Fuels, U.S. Department of Energy, DOE/EIA-0064(93), February 1995参照。
【0027】
石炭から製造された灰分は、当業者に知られているように、典型的にフライアッシュ及びボトムアッシュの両方を含む。瀝青炭からのフライアッシュは、フライアッシュの全質量に基づき、約20〜約60質量%のシリカ及び約5〜約35質量%のアルミナを含むことができる。亜瀝青炭からのフライアッシュは、フライアッシュの全質量に基づき、約40〜約60質量%のシリカ及び約20〜約30質量%のアルミナを含むことができる。亜炭からのフライアッシュは、フライアッシュの全質量に基づき、約15〜約45質量%のシリカ及び約20〜約25質量%のアルミナを含むことができる。例えば、Meyers, et al., “Fly Ash. A Highway Construction Material”, Federal Highway Administration, Report No. FHWA-IP-76-16, Washington, DC, 1976参照。
【0028】
瀝青炭からのボトムアッシュは、ボトムアッシュの全質量に基づき、約40〜約60質量%のシリカ及び約20〜約30質量%のアルミナを含むことができる。亜瀝青炭からのボトムアッシュは、ボトムアッシュの全質量に基づき約40〜約50質量%のシリカ及び約15〜約25質量%のアルミナを含むことができる。亜炭石炭からのボトムアッシュは、ボトムアッシュの全質量に基づき、約30〜約80質量%のシリカ及び約10〜約20質量%のアルミナを含むことができる。例えば、Moulton, Lyle K, “Bottom Ash and Boiler Slag”, Proceedings of the Third International Ash Utilization Symposium, U.S. Bureau of Mines, Information Circular No. 8640, Washington, DC, 1973参照。
【0029】
触媒成分
本明細書による粒状組成物は、上述の石油コークス及び石炭に基づいており、そしてアルカリ金属として、ある量のアルカリ金属成分を、及び/又はアルカリ金属を含有する化合物をさらに含む。
【0030】
アルカリ金属成分は、少なくとも粒状組成物の石炭成分上に典型的に装填され、質量基準において、石油コークス及び石炭の合わせた灰分より約3〜約10倍多いアルカリ金属含量が達成される。
【0031】
適切なアルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、及びそれらの混合物である。カリウム供給源は、特に有用である。適切なアルカリ金属化合物としては、アルカリ金属炭酸塩、炭酸水素塩、ギ酸塩、シュウ酸塩、アミド、水酸化物、酢酸塩、又は類似化合物が含まれる。例えば、触媒は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム又は水酸化セシウムの1つ又はそれ以上、そして特に、炭酸カリウム及び/又は水酸化カリウムを含むことができる。
【0032】
また、前に組み込まれた参考文献に記載されたような共触媒又は他の触媒添加剤を用いてもよい。
【0033】
粒状組成物
典型的に、石油コークス及び石炭供給源は、それぞれ約25ミクロンから、又は約45ミクロンから、約2500ミクロンまで、又は約500ミクロンまでの平均粒子サイズ(average particle size)を有する微細な微粒子として供給することができる。当業者は、個々の微粒子及び粒状組成物に適切な粒子サイズを容易に測定することができる。例えば、流動床ガス化反応器を用いる場合、粒状組成物は、流動床ガス化反応器に用いられるガス速度で粒状組成物の流動化の開始を可能にする平均粒子サイズを有することができる。
【0034】
粒状組成物の石炭微粒子は、少なくともガス化触媒及び場合により、前に議論したような共触媒/触媒添加剤を含む。典型的に、ガス化触媒は、少なくとも1つのアルカリ金属の供給源を含むことができ、そして粒状組成物において、約0.01から、又は約0.02から、又は約0.03から、又は約0.04から、約0.08まで、又は約0.07まで、又は約0.06までの範囲のアルカリ金属対炭素原子比を供給するのに十分な量で存在する。
【0035】
粒状組成物中の石油コークス微粒子及び石炭微粒子の比率は、技術的要件、処理の経済的側面、有用性、並びに石炭及び石油コークス供給源の近接性に基づいて選ぶことができる。これらのブレンドについての2つの供給源の有用性及び近接性は、供給原料の価格、そしてさらに触媒ガス化方法の全体的な製造コストに影響を及ぼす。例えば、石油コークス及び石炭は、処理条件に応じて湿潤又は乾燥基準において質量で約5:95、約10:90、約15:85、約20:80、約25:75、約30:70、約35:65、約40:60、約45:55、約50:50、約55:45、約60:40、約65:35、約70:20、約75:25、約80:20、約85:15、約90:10、又は約95:5で配合することができる。
【0036】
さらに重要なことに、石油コークス及び石炭供給源、並びに石油コークス微粒子対石炭微粒子の比率は、供給原料ブレンドの他の物質特性の制御に使用することができる。
【0037】
典型的に、石炭及び他の炭素質物質は、カルシウム、アルミナ及びシリカを含む無機物質の有意量を含み、これらはガス化反応器中で無機酸化物(「灰」)を形成する。カリウム及び他のアルカリ金属は、約500〜600℃より上の温度で灰中のアルミナ及びシリカと反応して不溶性アルカリアルミノシリケートを形成することがある。この形態では、アルカリ金属は、実質的に水不溶性であり、触媒として不活性である。石炭ガス化反応器中の残留物の蓄積を回避するため、チャーの固形物パージ(solid purge of char)、すな
わち、灰、未反応の炭素質物質、及び種々のアルカリ金属化合物(水溶性及び水不溶性の両方)からなる固形物を常に回収する。好ましくは、アルカリ金属をチャーから回収し、すべての未回収触媒を一般に触媒補充流によって補う。供給原料中にあるアルミナ及びシリカが多いほど、アルカリ金属の回収率を高める費用が増える。
【0038】
本発明による粒状組成物を製造することによって、粒状組成物の灰含量は、石炭供給源中の微粒子及び/又は出発灰の比率に応じて、例えば、約20質量%若しくはそれ未満、又は約15質量%若しくはそれ未満、又は約10質量%若しくはそれ未満となるように選ぶことができる。別の実施態様において、生成した粒状組成物は、粒状組成物の質量に基づき、約5質量%から、又は約10質量%から、約20質量%まで、又は約15質量%までの範囲の灰含量を含むことができる。別の実施態様において、粒状組成物の灰は、灰の質量に基づき、約20質量%未満、又は約15質量%未満、又は約10質量%未満、又は約8質量%未満、又は約6質量%未満のアルミナを含むことができる。ある実施態様において、生成した粒状組成物は、粒状組成物の質量に基づき、約20質量%未満の灰を含むことができ、その際、粒状組成物の灰は、灰の質量に基づき、約20質量%未満のアルミナ、又は約15質量%未満のアルミナを含む。
【0039】
粒状組成物中のこのような低いアルミナ値は、ガス化プロセス中におけるアルカリ触媒の損失を減らすことができる。典型的に、アルミナは、アルカリ供給源と反応して、例えばアルカリアルミネート又はアルミノシリケートを含む不溶性のチャーが得られる。このような不溶性のチャーは、触媒回収の低下(すなわち触媒損失の増加)を招くことがあり、そのため、全ガス化プロセスにおいて補充触媒のさらなる費用が必要となり、これについては後で議論する。
【0040】
さらに、生成した粒状組成物は、有意により高い炭素%、さらにbtu/lb値及び粒状組成物の単位質量当たりのメタン生成物を有することができる。ある実施態様において、生成した粒状組成物は、石炭及びペットコークの合わせた質量に基づき、約75質量%から、又は約80質量%から、又は約85質量%から、又は約90質量%から、約95質量%までの範囲の炭素含量を有する。
【0041】
粒状組成物の製造方法
粒状組成物の製造に使用するための石油コークス及び石炭供給源は、ガス化用の粒状組成物を製造するための最初の処理が必要となりうる。例えば、石油コークス及び石炭のような2つ又はそれ以上の炭素質物質の混合物を含む粒状組成物を用いる場合、石油コークス及び石炭は、別々に処理して触媒を少なくとも石炭部分に加え、続いて混合する。
【0042】
粒状組成物用の石油コークス及び石炭供給源は、衝撃破砕及び湿式若しくは乾式粉砕のような当分野で知られているあらゆる方法に従って、別々に破砕及び/又は粉砕してそれぞれの微粒子を得ることができる。石油コークス及び石炭物質を破砕及び/又は粉砕するために使用する方法に応じて、生成した微粒子は、分粒して(すなわち、大きさによって分ける)適切な供給原料を提供する必要がありうる。
【0043】
当業者に知られているあらゆる方法は、微粒子の分粒に用いることができる。例えば、分粒は、スクリーニング又はスクリーン若しくは多くのスクリーンを通して微粒子を通過させることによって実施することができる。スクリーニング装置は、グリドル(grizzlies)、バースクリーン、及びワイヤーメッシュスクリーンを含むことができる。スクリーンは、静的であるか又はスクリーンを振盪若しくは振動させる機構を組み込むことができる。別法として、分級は、石油コークス及び石炭微粒子を分けるために用いることができる。分級装置は、鉱石選別器、ガスサイクロン、液体サイクロン、レーキ分級器、回転トロンメル又は流動化分級器を含むことができる。また、石油コークス及び石炭は、粉砕及び
/又は破砕する前に分粒又は分級することができる。
【0044】
石油コークス及び石炭供給源の品質に応じてさらなる供給原料の処理工程が必要となりうる。高水分の石炭は、破砕する前に、乾燥を必要とすることがある。一部の粘結炭は、ガス化反応器の操作を単純化するために部分酸化を必要とすることがある。イオン交換部位に欠損のある石炭供給原料は、前処理してさらなるイオン交換部位を生成し、触媒の装填及び/又は結合を促進することができる。このような前処理は、イオン交換できる部位を生成する及び/又は供給原料の多孔性を高める当分野に知られているあらゆる方法によって実施することができる(例えば、前に組み込まれたUS4468231及びGB1599932参照)。多くの場合、前処理は、当分野に知られているあらゆる酸化剤を用いて酸化的やり方で実施される。
【0045】
典型的には、石炭を湿式粉砕し、そして分粒(例えば、25〜2500ミクロンの粒子サイズ分布に)し、それから湿潤ケークの粘稠度までその遊離水を排出する(すなわち、脱水する)。湿式粉砕、分粒、及び脱水のための適切な方法の例は、当業者に知られており、これは前に組み込まれた米国特許出願第12/178,380号(2008年7月23日出願)に記載されている。
【0046】
本明細書の一実施態様に従って湿式粉砕により形成された石炭微粒子の濾過ケークは、約40%〜約60%、約40%〜約55%、又は50%未満の範囲の水分含量を有することができる。脱水して湿式粉砕された石炭の水分含量は、特定の石炭タイプ、粒子サイズ分布、及び使用する特定の脱水装置に左右されることは当業者に知られている。
【0047】
続いて、石炭微粒子を処理してそれに少なくとも第1の触媒(例えばガス化触媒)と結合させる。場合によっては、第2の触媒成分(例えば共触媒)を石炭微粒子に供給することができ;このような場合、石炭微粒子は、別々の処理工程で処理して第1の触媒及び第2の触媒を得ることができる。例えば、第1のガス化触媒(例えばカリウム及び/又はナトリウム供給源)を石炭微粒子に供給し、続いて個々に処理してカルシウムガス化共触媒供給源を石炭に供給することができる。別法として、第1及び第2の触媒を1回の処理で混合物として供給することができる(前に組み込まれたUS2007/0000177A1参照)。
【0048】
当業者に知られているあらゆる方法を用いて1つ又はそれ以上のガス化触媒を石炭微粒子と結合させることができる。このような方法としては、固体触媒供給源と混合すること及び触媒を石炭微粒子に含浸させることが含まれるが、これらに制限されるわけではない。当業者に知られているいくつかの含浸方法を使用してガス化触媒を組み込むことができる。これらの方法としては、初期浸潤含浸(incipient wetness impregnation)、蒸発含浸、真空含浸、浸漬含浸、イオン交換、及びそれらの方法の組み合わせが含まれるが、これらに制限されるわけではない。ガス化触媒は、触媒の溶液(例えば水性)と共にスラリー化することによって石炭微粒子に含浸することができる。
【0049】
石炭微粒子を触媒及び/又は共触媒の溶液でスラリー化する場合、生成したスラリーを脱水して典型的には、湿潤ケークとして、再び触媒化された石炭微粒子を供給することができる。石炭微粒子をスラリー化するための触媒溶液は、新たな若しくは補充触媒及びリサイクル触媒又は触媒溶液(以下の)を含む、本方法におけるあらゆる触媒供給源から製造することができる。触媒化された石炭微粒子の湿潤ケークを得るためにスラリーを脱水する方法としては、濾過(重力又は真空)、遠心分離及び流体加圧(fluid press)が含まれる。
【0050】
触媒がイオン交換を経て石炭微粒子に結合された、触媒化された炭素質供給原料を供給するための、石炭微粒子をガス化触媒と合わせるのに適切な1つの特定の方法は、前に組み込まれた米国特許出願第12/178,380号(2008年7月23日出願)に記載されている。イオン交換機構による触媒装填は、最大化され(石炭用に具体的には開発された吸着等温式に基づく)、そして細孔内のものを含む、湿潤して保持されたさらなる触媒は、全触媒目標値が制御されたやり方で得られるように制御される。このような装填により、湿潤ケークとして触媒化された石炭微粒子が得られる。触媒装填され、そして脱水された湿潤石炭ケークは、典型的に、例えば、約50%の水分を含む。装填された触媒の全量は、溶液中の触媒成分の濃度を調節するだけでなく、接触時間、温度及び方法によって制御され、これは、出発石炭の特徴に基づき、関連分野の当業者によって容易に決定することができる。
【0051】
別法として、スラリー化された石炭微粒子を、流動床スラリー乾燥器(すなわち液体を気化するために過熱水蒸気で処理する)で乾燥させるか、又は溶液を蒸発させて乾燥触媒化された石炭微粒子を得ることができる。
【0052】
触媒装填された石炭組成物は、例えば、石炭の酸性官能基においてイオン交換された触媒として、石炭基材(coal matrix)と結合して装填された、約50%を超える、約70%を超える、約85%を超える、又は約90%を超える触媒の全量を典型的に含む。石炭微粒子と結合して装填された全触媒のパーセンテージは、当業者に知られている方法に従って測定することができる。
【0053】
個々の石油コークス微粒子及び触媒化された石炭微粒子は、適切に合わせて、前に議論したように、例えば全触媒装填又は粒状組成物の他の品質を制御することができる。個々の微粒子の適切な比率は、供給原料の品質と同様に粒状組成物の所望の性質に左右される。例えば、石油コークス微粒子及び触媒化された石炭微粒子は、前に議論したように所定の灰を有する粒状組成物が得られるような比率で合わせることができる。
【0054】
個々の石油コークス粒子及び触媒化された石炭微粒子は、混練、及び縦型若しくは横型ミキサー、例えば、一若しくは二軸、リボン、又はドラムミキサーを含むが、これらに制限されない当業者に知られているあらゆる方法によって合わせることができる。粒状組成物は、将来的な使用のために貯蔵することができ、又はガス化反応器へ導入するために供給操作に移すことができる。粒状組成物は、当業者に知られているあらゆる方法、例えば、スクリューコンベヤー又は空気輸送に従って貯蔵又は供給操作に運ぶことができる。
【0055】
触媒ガス化方法
本明細書の粒状組成物は、石油コークス及び石炭をメタンのような可燃性ガスに転換するための統合型ガス化方法(integrated gasification process)において特に有用である。このような方法のためのガス化反応器は、高い圧力及び温度で典型的に運転され、必要な温度、圧力、及び供給原料の流速を維持しながら、ガス化反応器の反応領域へ粒状組成物の導入が必要である。当業者は、スターフィーダー、スクリューフィーダー、回転ピストン及びロックホッパーを含む、高い圧力及び/又は温度環境に供給原料を供給するための供給システムに精通している。供給システムは、交互に用いられるロックホッパーのような2つ又はそれ以上の圧力平衡要素を含むことができることを理解しなければならない。
【0056】
場合によっては、粒状組成物は、ガス化反応器の操作圧力より上の圧力条件で製造することができる。従って、粒状組成物はさらに加圧することなくガス化反応器中に直接通過させることができる。
【0057】
適切なガス化反応器としては、向流固定床、並流固定床、流動床、噴流式、及び移動床反応器が含まれる。
【0058】
粒状組成物は、少なくとも約450℃、又は少なくとも約600℃若しくはそれ以上、約900℃まで、又は約750℃まで、又は約700℃までの中程度の温度;及び少なくとも約50psig、又は少なくとも約200psig、又は少なくとも約400psig、約1000psigまで、又は約700psigまで、又は約600psigまでの圧力で特にガス化に有用である。
【0059】
粒状組成物の加圧及び反応のためにガス化反応器に使用されるガスは、典型的に蒸気、及び場合により、酸素又は空気を含み、そして当業者に知られている方法に従って反応器に供給される。例えば、当業者に知られている蒸気ボイラーはいずれも反応器に蒸気を供給することができる。このようなボイラーは、例えば、微粉炭、バイオマスなど、及び粒状組成物の製造操作から排除された炭素質物質(例えば、微粉、前出)を含むがこれらに制限されないあらゆる炭素質物質を用いることにより駆動することができる。また、蒸気は、反応器からの排出物が水供給源と熱交換して蒸気を発生する燃焼タービンに接続された二次的なガス化反応器からも供給することができる。
【0060】
他の処理操作からのリサイクルされた蒸気もまた反応器に蒸気を供給するために使用することができる。例えば、前に議論したように、スラリー化された粒状組成物を流動床スラリー乾燥器で乾燥する場合、蒸発により生成した蒸気をガス化反応器に供給することができる。
【0061】
触媒的石炭ガス化反応に必要な少量の入熱は、当業者に知られているあらゆる方法により蒸気及びリサイクルガスのガス混合物を過熱してガス化反応器に供給することによって供給することができる。1つの方法では、CO及びH2の圧縮されたリサイクルガスを蒸気と混合し、生成した蒸気/リサイクルガス混合物をガス化反応器流出液との熱交換によってさらに過熱し、続いてリサイクルガス炉中で過熱することができる。
【0062】
メタン改質装置(methane reformer)には、熱的に中立な(thermally neutral)(断熱)条件下で反応の実行を保証するため反応器に供給されたリサイクル一酸化炭素及び水素を補充するプロセスが含まれうる。このような場合、メタンを、以下のように、メタン生成物から改質装置に供給することができる。
【0063】
記載された条件下での粒状組成物の反応では、典型的に、粗生成物ガス及びチャーが得られる。本方法中にガス化反応器で製造されたチャーは、通常、サンプリング、パージ、及び/又は触媒回収のためガス化反応器から除去される。チャーを除去する方法は、当業者によく知られている。例えば、EP−A−0102828によって教示されたような方法を使用することができる。チャーは、ロックホッパーシステムを通してガス化反応器から定期的に回収することができるが、他の方法も当業者に知られている。方法は、原料物質の費用を減らすため、そして触媒ガス化方法の環境影響を最小限にするために固形物パージからアルカリ金属を回収するために開発された。
【0064】
チャーは、リサイクルガス及び水でクエンチすることができ、そしてアルカリ金属触媒の抽出及び再利用のために触媒リサイクル操作に導かれる。特に有用な回収及びリサイクル方法は、US4459138、並びに前に組み込まれたUS4057512、US2007/0277437A1、“CATALYTIC GASIFICATION PROCESS WITH RECOVERY OF ALKALI METAL FROM CHAR”と題する米国特許出願第_________号(代理人整理番号FN−0007 US NP1)、“CATALYTIC GASIFICATION PROCESS WITH RECOVERY OF ALKALI METAL FROM CHAR”と題する米国特許出願第_________号(代理人整理番号FN−0014 US NP1)、“CATALYTIC GASIFICATION PROCESS WITH RECOVERY OF ALKALI METAL FROM CHAR”と題する米国特許出願第_________号(代理人整理番号FN−0015 US NP1)、及び“CATALYTIC GASIFICATION PROCESS WITH RECOVERY OF ALKALI METAL FROM CHAR”と題する米国特許出願第_________号(代理人整理番号FN−0016 US NP1)に記載されている。さらなる方法の詳細については、それらの文書を参照することができる。
【0065】
ガス化反応器から出る粗生成物ガス排出物は、ガス化反応器の一部を通過することができ、これは離脱領域として役立ち、ここでは、ガス化反応器を出るガスによって連行されるには重すぎる粒子(すなわち、微粉)が流動床に戻る。離脱領域は、ガスから微粉及び微粒子を除去するための1つ又はそれ以上の内部のサイクロン分離器又は類似のデバイスを含むことができる。離脱領域を通して通過してガス化反応器を出るガス排出物は、一般に、CH4、CO2、H2及びCO、H2S、NH3、未反応の蒸気、連行された微粉(entrained fines)、並びに他の不純物、例えばCOSを含む。
【0066】
次いで、微粉が除去されたガス流は、熱交換器を通過させてガスを冷却し、そして回収された熱を用いてリサイクルガスを予熱して高圧蒸気を生成することができる。残留物に連行された微粉は、外部サイクロン分離器、続いてベンチュリスクラバーのようないずれかの適切な手段によって除去することができる。回収された微粉は、アルカリ金属触媒を回収するために処理することができる。
【0067】
ベンチュリスクラバーから出るガス流は、COS除去(サワー法(sour process))のためCOS加水分解反応器に供給することができ、そして熱交換器中で冷却して残留熱を回収した後、アンモニア回収のためのスクラバーに入り、少なくともH2S、CO2、CO、H2、及びCH4を含む洗浄されたガスが得られる。COS加水分解の方法は、当業者に知られており、例えば、US4100256を参照のこと。
【0068】
洗浄されたガスからの残留熱を用いて低圧の蒸気を生成することができる。スクラバー水及びサワー法の凝縮液を処理してストリッピングし、そしてH2S、CO2及びNH3を回収することができ;このような方法は、当業者によく知られている。NH3は、水溶液(例えば20質量%)として典型的に回収することができる。
【0069】
続いて、酸性ガス除去法を用いてガスの溶媒処理を含む物理的吸収法によって洗浄されたガス流からH2S及びCO2を除去して洗浄されたガス流を得ることができる。このような方法は、洗浄されたガスを溶媒、例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジイソプロピルアミン、ジグリコールアミン、アミノ酸のナトリウム塩の溶液、メタノール、熱炭酸カリウム又は同様のものと接触させることを含む。1つの方法は、2つのトレイン(train)を有するSelexol(R) (UOP LLC, Des Plaines, IL USA)又はRectisol(R) (Lurgi AG, Frankfurt am Main, Germany)溶媒の使用を含むことができ;各トレインは、H2S吸収剤及びCO2吸収剤からなる。H2S、CO2及び他の不純物を含む使用済みの溶媒は、使用済みの溶媒を蒸気も若しくは他のストリッピングガスと接触させて不純物を除去することを含むか又はストリッパーカラムを通して使用済みの溶媒を通過させることにより当業者に知られているあらゆる方法によって再生することができる。回収された酸性ガスは、硫黄回収処理に送ることができる。生成した洗浄されたガス流は、主にCH4、H2、及びCO、並びに通常、少量のCO2及びH2Oを含む。酸性ガス除去及びサワー水ストリッピングから回収されたすべてのH2Sは、クラウス法を含む当業者に知られているあらゆる方法によって元素状硫黄に転換することができる。硫黄は、溶融液として回収することができる。
【0070】
洗浄されたガス流は、低温蒸留及びモレキュラーシーブ又はセラミック膜の使用を含むがこれらに制限されない当業者に知られたあらゆる適切なガス分離法によってさらに処理してCH4を分離して回収することができる。洗浄されたガス流からCH4を回収するための1つの方法としては、残留H2O及びCO2を除去するためのモレキュラーシーブ吸収剤とCH4を分別して回収する低温蒸留との併用使用が含まれる。典型的に、ガス分離方法によって2つのガス流、メタン生成物流及び合成ガス流(H2及びCO)を生成することができる。合成ガス流は、圧縮してガス化反応器にリサイクルすることができる。必要に応じて、メタン生成物の一部は、前に議論したように、改質装置に導くことができ、及び/又はメタン生成物の一部は、植物燃料として用いることができる。
【0071】
本明細書に記載された方法では、例えば、別の方法では技術的に困難であり、操作することが不経済である高灰の亜炭を都合よく使用することができる。亜炭を単独で処理すると、特定の(すなわち単位質量当たりの値)炭素転換率が非常に低く、そして触媒量が非常に高く、触媒回収率が低い。石油コークス単独の処理では、非常に高い理論上の炭素転換率(例えば98%)を有することができるが、床組成の維持、ガス化反応器における床の流動化、可能な液相の制御並びにガス化反応器及びチャー回収における床の凝集に関しては、それ自体課題がある。本明細書に記載された方法及び粒状組成物は、上記の欠点を回避し、そして高灰の亜炭及び高硫黄コークスにとって経済的であり、そのため商業的に実現性がある方法を可能にする。
【実施例】
【0072】
実施例1
亜炭−石油コークス粒状組成物
残油ペットコーク(resid petcoke)及び高灰石炭(Beulah, ND)のサンプルを得、そして以下のように処理した。受け入れたままの石油コークス及び/又は石炭(Beulah, ND)をジョークラッシャー(jaw-crushed)により自由流動状態(free-flowing state)にし、続いて注意深い段階破砕により過度の微粉生成を防ぎ、そして約0.85〜約1.4mmの範囲の粒子サイズを有する物質の量を最大にした。
【0073】
残油ペットコークサンプルの分析により以下のような結果を得た:水分0.22質量%、灰0.28質量%(近似分析);炭素88.81パーセント、硫黄5.89パーセント及びbtu/lb値15,210。残油ペットコークの灰成分は、主としてバナジウム及び酸化ニッケルを、より少量の他の成分と共に含有する。
【0074】
Beulah, ND石炭サンプルの分析から以下の結果を得た:水分35.58質量%、灰20.87質量%(近似分析);炭素56.9パーセント、硫黄1.27パーセント及びbtu/lb値6,680。Beulah, ND石炭の灰成分は、灰の質量に基づき、シリカ41.9パーセント及びアルミナ16.6パーセントを含む。
【0075】
微粉砕されたBeulah, ND石炭をエルレンマイヤーフラスコに加え、そして水酸化カリウムソーキング溶液を、スラリー形成フラスコに加えた。スラリー密度は、フラスコ中で約20質量%に維持した。フラスコ内の空気を窒素で置き替え、そしてフラスコを密閉した。次いで、フラスコを振盪器浴(shaker bath)に置き、そして室温で4時間撹拌した。処理した石炭を、約+325メッシュサイズを有する振動スクリーン上でフィルタリングすることによって脱水して触媒装填された湿潤石炭ケークを得た。触媒装填された湿潤石炭ケークを石油コークス微粒子と一緒に混練して乾燥基準において石油コークス対石炭比1:1を有する粒状組成物を得た。
【0076】
石油コークスと、触媒処理されたBeulah, ND石炭との1:1ブレンドを含む粒状組成物では、以下の結果を得た:灰10.58質量%(近似分析);炭素72.86パーセント、硫黄3.58パーセント及びbtu/lb値12,445。50/50ブレンドの灰成分は、灰の質量に基づき、シリカ41.41パーセント及びアルミナ16.41パーセン
トを含む。
【0077】
実施例2
亜炭−石油コークス粒状組成物のガス化
実施例1からの1:1粒状組成物及び触媒処理されたBeulah, ND石炭のみを含むサンプルのガス化を、石英反応器を含む高圧装置中で行なった。各サンプル100mgを反応器中に保持された白金セル中に別々に入れ、そしてガス化した。典型的なガス化条件:全圧1.0MPa;高純度アルゴン雰囲気中のH2Oの分圧0.21MPa;温度、750℃〜900℃;及び反応時間2〜3時間。
【0078】
炭素転換率は、実施例1のサンプルについては88.4%、そして触媒処理されたBeulah, ND石炭のみを含むサンプルについては71%であると評価された。さらに、実施例1のサンプルでは、21,410scf/トンのメタン製造が評価されたのに対して、触媒処理されたBeulah, ND石炭のみについては13,963scf/トンであった。実施例1のサンプルに必要な触媒量は、13.5質量%であると評価されたのに対して触媒処理されたBeulah, ND石炭のサンプルについては26.6%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動床領域においてガス化に適する粒子分布サイズを有する粒状組成物であって、粒状組成物は、(a)石油コークス;(b)石炭;及び(c)ガス化触媒の緊密な混合物を含み、これは、蒸気の存在下、そして適する温度及び圧力下でガス化活性を示し、それによってメタンと、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、硫化水素、アンモニア及び他の高級炭化水素の1つ又はそれ以上とを含む複数のガスが形成され、ここで:
(i)石油コークス及び石炭は、粒状組成物において約5:95〜約95:5の質量比で存在し;
(ii)ガス化触媒は、少なくとも石炭上に装填され;
(iii)ガス化触媒は、少なくとも1つのアルカリ金属源を含み、粒状組成物において、0.01〜約0.08の範囲のアルカリ金属原子対炭素原子比を与えるのに十分な量で存在し;そして
(iv)粒状組成物は、粒状組成物の質量に基づき、約20質量%未満の全灰分を含むことを特徴とする、上記粒状組成物。
【請求項2】
アルカリ金属がカリウム、ナトリウム又は両方を含むことを特徴とする、請求項1に記載の粒状組成物。
【請求項3】
約25ミクロン〜約2500ミクロンの範囲の粒子サイズを有することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の粒状組成物。
【請求項4】
ガス化触媒が石炭上にのみ装填されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の粒状組成物。
【請求項5】
ガス化触媒が石炭及び石油コークス上の両方に装填されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の粒状組成物。
【請求項6】
粒状組成物の灰分が、灰の質量に基づき、約20質量%未満のアルミナを含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の粒状組成物。
【請求項7】
(a)粒状組成物をガス化反応器に供給する工程;
(b)ガス化反応器中、蒸気の存在下、そして適する温度及び圧力下で粒状組成物を反応させて、メタンと、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、硫化水素、アンモニア及び他の高級炭化水素の1つ又はそれ以上とを含む複数のガス状のものを形成させる工程;及び
(c)複数のガス状の生成物を少なくとも部分的に分離して1つのガス状生成物の主要量を含む流れを生成させる工程を含む粒状組成物を複数のガス状生成物に転換する方法であって、
粒状組成物が請求項1〜6のいずれか1項に記載された通りであることを特徴とする、上記方法。
【請求項8】
流れが主要量のメタンを含むことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
チャーが工程(b)で形成され、そしてチャーがガス化反応器から取り出され、そして触媒回収及びリサイクル過程に送られることを特徴とする、請求項7又は請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ガス化触媒が触媒回収及びリサイクル過程からリサイクルされたガス化触媒を含むことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
粒状組成物の製造方法であって、
(a)石油コークス微粒子、石炭微粒子及びガス化触媒を備える工程;
(b)石炭微粒子を、ガス化触媒を含む水溶液と接触させてスラリーを形成させる工程;及び
(c)スラリーを脱水して触媒装填された湿潤石炭ケークを形成させる工程;及び
(d)湿潤石炭ケーク及び石油コークス微粒子を混練して粒状組成物を形成させる工程;を含むことを特徴とする、上記方法。
【請求項12】
粒状組成物が請求項1〜6のいずれか1項に記載された通りであることを特徴とする、請求項11に記載の方法。

【公表番号】特表2011−508066(P2011−508066A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−540860(P2010−540860)
【出願日】平成20年12月23日(2008.12.23)
【国際出願番号】PCT/US2008/088141
【国際公開番号】WO2009/086362
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(508002586)グレイトポイント・エナジー・インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】