説明

触媒コンバーター、触媒コンバーター用保持材及びその製造方法

【課題】触媒担体の保持力に優れるとともに、金属製ケーシングに装着したときの触媒担体の割れを防止でき、更に筒状の金属製ケーシングであっても容易に圧入可能で、安価な触媒コンバーター用保持材、並びに触媒担体の割れがなく、安定性に優れた触媒コンバーターを提供する。
【解決手段】触媒担体と、触媒担体を収容する金属製ケーシングと、触媒担体に巻回されて触媒担体と金属製ケーシングとの間隙に介装される保持材とを備えた触媒コンバーターに用いられる保持材であって、他の部位よりも密度を高くした高密度部位が点在していることを特徴とする触媒コンバーター用保持材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排気ガス中に含まれるパティキュレートや一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物等を除去する触媒コンバーター(排気ガス浄化装置ともいう)、並びに触媒担体を金属製ケーシング内に保持するための触媒コンバーター用保持材に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排気系には、触媒コンバーターやディーゼルパティキュレート捕捉装置やNOx吸蔵・浄化装置等の排気浄化装置が配置される。図1はこれら排気浄化装置の一例である触媒コンバーター10の一例を示す断面図であるが、この触媒コンバーター10では、内燃機関から排出された排気ガスが導入される導入管16が金属製ケーシング11の一端部に接続されるとともに、他端部には、触媒担体12を通過した排気ガスを外部に排出する排出管17が設けられている。また、金属製ケーシング11の内部には、触媒担体12が触媒コンバーター用保持材13を介して設置されている。さらに、図には示されないが、触媒担体に対して排気ガス導入側(吸気側ともいう)となる部分には、触媒担体すなわちハニカムフィルタに蓄積したパティキュレートを燃焼させてフィルタ機能を回復させる(再生処理ともいう)ための電気ヒータや温度センサが設置されても良いし、燃焼用空気を送り込むための別配管が接続されても良い。こうした構成によれば、触媒担体においてパティキュレートの蓄積量が多くなって圧損等が大きくなったときに、再生処理を行うこともできる。
【0003】
金属製ケーシング11は、図2に示すように、筒体をその長手方向に沿って2分割した構成とすることができ、触媒コンバーター用保持材13を巻装した触媒担体12を下部シェル22b内の所定箇所に設置した後、上部固定部23に形成した貫通孔23aと、下部固定部24に形成した貫通孔24aとが丁度重なるように、上部シェル22aを下部シェル22bの上に載置し、ボルト25を貫通孔23a、24aに挿通しナット等で固定する。または、上部固定部23と下部固定部24とを溶接してもよい。また、金属製ケーシング11は、図3に示すような筒状体50であってもよく、図2に示したような2分割構造の金属製ケーシングにおける組立て作業が不要であるものの、触媒コンバーター用保持材13を巻装した触媒担体12を筒状体の開口51から圧入する必要がある。
【0004】
触媒コンバーター用保持材13は、触媒担体12を保持し、かつ、金属製ケーシング11と触媒担体12との間隙を閉塞する必要があり、例えば、触媒担体の軸方向全長にストライプ状に他の部位よりも密度が高い高密度部位を形成したり(特許文献1参照)、触媒担体の周方向に円環状に高密度部位を形成する(特許文献2参照)ことにより、保持力を高くすることが行われている。
【0005】
【特許文献1】特開平1−247711号公報
【特許文献2】特開2003−262117号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高密度部位は、無機繊維を他の部位よりも強く圧縮して形成されるため、無機繊維が折れるなどしてマットダメージが大きくなる。そのため、高密度部位が軸方向または周方向に連続して形成されていると、高密度部位と他の部位との境界に沿って割れが発生するおそれがある。特に、図3に示したような筒状の金属製ケーシングを用いる場合には、圧入の際に高密度部位が抵抗となり、大きな力が加わるため、前記の境界に沿う割れが発生しやすい。
【0007】
また、触媒担体はセラミックス製で肉薄のハニカム構造体であるため、金属製ケーシングに装着した際、触媒コンバーター用保持材の高密度部位から大きな押圧力を受けて、高密度部位に沿って割れが生じるおそれがある。また、筒状の金属製ケーシングを用いる場合には、圧入の際に触媒コンバーター用保持材の挿入不良に付随して触媒担体にも余分な力が加わり、触媒担体にも割れや破損を起こすおそれがある。
【0008】
更には、高密度部位の面積が大きく、無機繊維等の材料が多く必要になるため、コスト増を招くという問題をある。
【0009】
そこで本発明の目的は、触媒担体の保持力に優れるとともに、金属製ケーシングに装着したときの触媒担体の割れを防止でき、更に筒状の金属製ケーシングであっても容易に圧入可能で、安価な触媒コンバーター用保持材を提供することを目的とする。また、触媒担体の割れがなく、安定性に優れた触媒コンバーターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は下記の触媒コンバーター、触媒コンバーター用保持材及びその製造方法を提供する。
(1)触媒担体と、触媒担体を収容する金属製ケーシングと、触媒担体に巻回されて触媒担体と金属製ケーシングとの間隙に介装される保持材とを備えた触媒コンバーターに用いられる保持材であって、他の部位よりも密度を高くした高密度部位が点在していることを特徴とする触媒コンバーター用保持材。
(2)上記(1)に記載の触媒コンバーター用保持材において、高密度部位の総面積が保持材全面積の10〜80%を占めることを特徴とする触媒コンバーター用保持材。
(3)上記(1)または(2)に記載の触媒コンバーター用保持材において、厚さが一定であることを特徴とする触媒コンバーター用保持材。
(4)上記(1)〜(3)の何れか1項に記載の触媒コンバーター用保持材において、保持材の厚さは5〜30mmであり、保持材全体としての密度は0.1〜0.6g/cmであることを特徴とする触媒コンバーター用保持材。
(5)上記(4)に記載の触媒コンバーター用保持材において、高密度部位の密度は0.20〜0.7g/cmであることを特徴とする触媒コンバーター用保持材。
(6)無機繊維を含有する水性スラリーを、高密度部位に相当する部分に凹部が形成された金型に流し込み、脱水成形して湿潤成形体とし、前記湿潤成形体全体を厚さ方向に圧縮しながら乾燥することを特徴とする触媒コンバーター用保持材の製造方法。
(7)触媒担体と、触媒担体を収容する金属製ケーシングと、触媒担体に巻回されて触媒担体と金属製ケーシングとの間隙に介装される保持材とを備えた触媒コンバーターにおいて、前記保持材には、他の部位よりも密度を高くした高密度部位が点在していることを特徴とする触媒コンバーター。
【発明の効果】
【0011】
本発明の触媒コンバーター用保持材は、高密度部位が連続的ではなく、点状に形成されているため、従来の高密度部位を有する触媒コンバーター用保持材と遜色の無い保持力を有し、また、触媒担体に巻装して金属製ケーシングに装着した状態でも、触媒担体には高密度部位による高い押圧力が点状に加わるだけであり、触媒担体が高密度部位に沿って割れるおそれもない。また、筒状の金属製ケーシングに圧入する場合に挿入不良を起こすことがなく、自身及び触媒担体の割れを防止できる。更に、高密度部位の面積が少ないため、低コストでもある。
【0012】
従って、本発明の触媒コンバーター用保持材を備える触媒コンバーターも、触媒担体を割れを生じることなく良好に保持する。また、排気ガスの漏れも無い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に関して詳細に説明する。
【0014】
本発明の触媒コンバーター用保持材は、全体として無機繊維製のマット材であるが、他の部位よりも高密度の高密度部位を点在したものである。全体形状には制限がなく、例えば、図4(A)に示すように、平板状の本体部41の一端に凸部42を形成し、他端に凸部42と嵌合可能な形状の凹部43を形成した形状とすることができる。尚、凸部42及び凹部43の形状は、図示される矩形の他に、三角形や半円形状であってもよい。また、凸部42及び凹部43の個数も1個には限定されず、2個以上であってもよい。
【0015】
高密度部位30の形状や配置にも制限が無く、図示のように、正方形の高密度部位を等間隔で配置することができる。また、図示は省略するが、高密度部位30は長方刑や円形、楕円、多角形、あるいは不定形でもよく、不規則に配置することもできる。図4(B)は触媒コンバーター用保持材13を触媒担体12に巻装した状態を示す図であるが、高密度部位30は、触媒担体12の周方向及び軸方向の両方向に対し、不連続に配置される。従って、高密度部位が軸方向または周方向に連続して形成された触媒コンバーター用保持材に比べて、自身及び触媒担体12の高密度部位に沿う割れが生じ難い。
【0016】
高密度部位30は、上記の割れを防ぎつつ、必要な保持力を確保するために、その総面積は、保持材全面積の10〜80%を占めることが好ましく、20〜70%を占めることがより好ましく、30〜70%を占めることが更に好ましい。特に80%を超える場合は、触媒コンバーター用保持材全体として熱伝導率が大きくなりすぎ、断熱性能に劣るようになる。また、高密度部位30は、筒状の金属ケーシング11に圧入する際に圧入端となる端面13a,13bから所定距離離間させて形成することが好ましい。筒状の金属製ケーシングに圧入する場合、高密度部位30は抵抗となるため、端面13a,13bに高密度部位30が形成されていると、挿入不良により自身及び触媒担体12を損傷するおそれがある。
【0017】
個々の高密度部位30の面積は、必要な保持力を確保できれば特に制限はないが、少なくとも0.5cmであればよい。また、その上限は保持材の大きさによってさまざまであるので、具体的数値を挙げることができないが、例えば正方形であれば一辺が、円形であれば直径が、保持材の幅(短いほうの長さ)の1/10〜1/3である。
【0018】
高密度部位30の密度は、他の部位の密度の1.3〜10倍であることが好ましく、1.5〜7倍であることがより好ましく、1.5〜5倍であることがさらに好ましい。この密度比が1.5倍未満では、疎密効果による触媒担体12の保持力増加が多く望めなくなる。一方、10倍を超えると、製造時の高密度化の際に無機繊維が破損するおそれがあり、更には、他の部位との密度差が大きすぎて他の部位との境界で割れが発生するおそれもある。高密度部位30の密度は、後述するキャニング時の保持材の密度を満たせば特に制限はなく、具体的には、0.20〜0.7g/cmであることが好ましく、0.4〜0.65g/cmであることがより好ましい。
【0019】
触媒コンバーター用保持材は熱伝導率が小さいほど好ましいが、高密度部位30では無機繊維が密に存在するため伝熱しやすく、それを補うために他の部位には、高密度部位よりも密度が低い低密度部位が形成される。こうした低密度部位の密度は、保持材としての断熱性とシール性とを付与できれば特に制限はない。さらに、高密度部位30と低密度部位との境界での割れをより確実に防ぐために、他の部位には、高密度部位30の密度よりは低密度で、かつ、低密度部位よりも高密度の中密度部位を形成してもよい。
【0020】
キャニング前の触媒コンバーター用保持材全体としての密度は、保持力や断熱性能、シール性能等を考慮すると、0.1〜0.6g/cmであることが好ましく、0.13〜0.3g/cmであることがより好ましい。
【0021】
また、触媒コンバーター用保持材は、保持力や断熱性能、シール性能等を考慮すると、厚さが一定であることが好ましい。具体的には、±15%以内とする。具体的には、5〜30mmであればよく、6〜12mmであることが好ましい。
【0022】
更に、触媒コンバーター用保持材には、必要に応じて、不織布や樹脂シート、樹脂コーティング等からなる補強層を添設することもできる。また、全体をニードル加工してもよい。
【0023】
本発明の触媒コンバーター用保持材は、従来の無機繊維製マットの製造方法に準じて製造することができ、例えば、無機繊維とバインダーとを含む水性スラリーを成形型に流し込み、吸引脱水して湿潤成形体とし、湿潤成形体全体を厚さ方向に均等に圧縮しながら乾燥して得られるが、成形に際し、高密度部位に対応する箇所に凹部が形成された成形型を用いることにより、凹部に対応する部分が突出した湿潤成形体が得られ、全体を厚み方向に圧縮することで高密度部位と他の部位とが形成される。
【0024】
無機繊維としては、従来から保持材に用いられている種々の無機繊維を用いることができる。例えば、アルミナ繊維、ムライト繊維、あるいはその他のセラミック繊維等を適宜使用できる。より具体的には、アルミナ繊維としては、例えばAlが90重量%以上(残りはSiO分)であって、かつX線的には低結晶化度のものが好ましく、また、その繊維径が3〜7μm、ウエットボリューム200cc/5g以上が好ましい。ムライト繊維としては、例えばAl分/SiO分重量比が72/28〜80/20程度のムライト組成であって、かつX線的には低結晶化度のものが好ましく、また、その平均繊維径が3〜7μm、ウエットボリューム200cc/5gが好ましい。その他のセラミック繊維としては、シリカアルミナ繊維やシリカ繊維を挙げることができるが、何れも従来から保持材に使用されているもので構わない。また、ガラス繊維やロックウール、生体溶解性繊維を配合してもよい。
【0025】
尚、上記ウエットボリュームは、次の方法で算出される。
1)乾燥した繊維材料5gを少数点2桁以上の精度を有する秤で計量する。
2)計量した繊維材料を500gのガラスビーカーに入れる。
3)2)のガラスビーカーに温度20〜25℃の蒸留水を400cc程度入れ、攪拌機を用いて繊維材料を切断しないように慎重に攪拌し、分散させる。この分散は超音波洗浄機を使用してもよい。
4)3)のガラスビーカーの中味を1000mlのメスシリンダーに移し、目盛で1000ccまで蒸留水を加える。
5)4)のメスシリンダーの口を手等で塞ぎ、水が漏れないように注意しながら上下逆さまにして攪拌する。これを計10回繰り返す。
6)攪拌停止後、室温下で静置し、30分経過後の繊維沈降体積を目視で計測する。
7)上記操作を3サンプルについて行い、その平均値を測定値とする
【0026】
成形材料には、少量の有機バインダーや有機繊維を配合することもできる。また、バーミキュライト等の膨張材を配合することもできる。
【0027】
有機バインダーは公知のもので構わず、ゴム類、水溶性有機高分子化合物、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等を使用できる。具体的には、ゴム類の例としては、n−ブチルアクリレートとアクリロニトリルの共重合体、エチルアクリレートとアクリロニトリルの共重合体、ブタジエンとアクリロニトリルの共重合体、ブタジエンゴム等がある。水溶性有機高分子化合物の例としては、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等がある。熱可塑性樹脂の例としては、アクリル酸、アクリル酸エステル、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル等の単独重合体及び共重合体、アクリロニトリル・スチレン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体等がある。熱硬化性樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等がある。
【0028】
有機繊維も公知のもので構わないが、細く長いものほどバインド力が高く、高度にフィブリル化したセルロースやセルロースナノファイバー等が好ましい。
【0029】
また、触媒コンバーター用保持材は、他の部位の密度を有する第1の無機繊維製マット材と、高密度部位の密度を有する第2の無機繊維製マット材とをそれぞれ別体に製造しておき、第1の無機繊維製マット材に所定形状の空所を不連続に開け、この空所と一致する形状に打ち抜いた第2の無機繊維製マット材で塞ぐことにより作製することができる。
【0030】
更に、第1の無機繊維製マット材の表面に、高密度部位の形状に打ち抜いた第2の無機繊維製マット材を接合してもよい。接合方法には制限が無く、接着剤を用いてよく、縫合してもよい。
【0031】
低密度部位や中密度部位を形成する場合は、それぞれの密度の無機繊維製マット材を作製し、同様に、第1の無機繊維製マット材に設けた空所を塞いだり、積層すればよい。
【0032】
本発明はまた、上記の触媒コンバーター用保持材を備える触媒コンバーターに関する。本発明の触媒コンバーターは、例えば図1に示したように、触媒担体12に上記の触媒コンバーター用保持材13を巻装した状態で金属製ケーシング11に収容し、導入管16お呼び排出管17を接合して構成される。
【0033】
ここで、触媒コンバーター用保持材13は、触媒担体12を良好に保持するとともに、断熱性能やシール性能を満足するために、金属ケーシング11に装着した状態(キャニング時)において、高密度部位の密度が0.35〜0.9g/cmであることが好ましく、0.45〜0.65g/cmであることがより好ましい。また、保持材全体としての密度が0.2〜1.2g/cmであることが好ましく、0.25〜0.6g/cmであることがより好ましい。
【実施例】
【0034】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。
【0035】
(実施例1)
アルミナ繊維(アルミナ80質量%、シリカ20質量%)100質量部に対し、有機バインダーとしてのアクリル樹脂0.5質量部、無機バインダーとしてコロイダルシリカを3質量部、水10000質量部の水性スラリーを作製した。次いで、等間隔で平面形状が正方形の凹部が形成された成形型に水性スラリーを流し込み、脱水成形して湿潤成形体を得た。そして、湿式成形体全体を厚み方向に圧縮しながら100℃で乾燥し、図4に示したような、正方形状の高密度部位が格子状に配置された保持材を得た。保持材は、厚さがほぼ均一で平均8mmであり、高密度部位の密度は0.25g/cm、他の部位の密度は0.075g/cm、保持材全体の密度は0.1625g/cmであった。また、高密度部位の総面積は、保持材全表面積の50%であった。
【0036】
得られた保持材を、直径110mmの触媒担体に巻き付け、内径118mm(ギャップ4mm)の筒状のSUS製ケーシングに圧入した。圧入に際し、高密度部位が挿入抵抗となることはなく、触媒担体の破損もなく圧入できた。また、ケーシング装着時の高密度部位の密度は0.5g/cm、他の部位の密度は0.15g/cm、保持材全体の密度は0.325g/cmであった。
【0037】
(実施例2)
実施例1同様にして、成形型の凹部の深さを変更して保持材を作製した。保持材は、厚さがほぼ均一で平均8mmであり、高密度部位の密度は0.27g/cm、他の部位の密度は0.06g/cm、保持材全体の密度は0.165g/cmであった。また、高密度部位の総面積は、保持材全表面積の50%であった。
【0038】
得られた保持材を、同様に、触媒担体に巻装してSUS製ケーシングに圧入したところ、触媒担体の破損もなく圧入できた。また、ケーシング装着時の高密度部位の密度は0.54g/cm、他の部位の密度は0.12g/cm、保持材全体の密度は0.33g/cmであった。
【0039】
(実施例3)
実施例1同様にして、高密度部位の面積を変更して保持材を作製した。保持材は、厚さがほぼ均一で平均8mmであり、高密度部位の総面積は、保持材全表面積の70%であった。また、高密度部位の密度は0.21g/cm、他の部位の密度は0.03g/cm、保持材全体の密度は0.16g/cmであった。
【0040】
得られた保持材を、同様に、触媒担体に巻装してSUS製ケーシングに圧入したところ、触媒担体の破損もなく圧入できた。また、ケーシング装着時の高密度部位の密度は0.42g/cm、他の部位の密度は0.06g/cm、保持材全体の密度は0.32g/cmであった。
【0041】
(実施例4)
実施例1と同様にして、高密度部位の面積を変更して保持材を作製した。保持材は、厚さがほぼ均一で平均8mmであり、高密度部位の総面積は、保持材全表面積の30%であった。また、高密度部位の密度は0.26g/cm、他の部位の密度は0.1g/cm、保持材全体の密度は0.15g/cmであった。
【0042】
得られた保持材を、同様に、触媒担体に巻装してSUS製ケーシングに圧入したところ、触媒担体の破損もなく圧入できた。また、ケーシング装着時の高密度部位の密度は0.52g/cm、他の部位の密度は0.2g/cm、保持材全体の密度は0.3g/cmであった。
【0043】
(実施例5)
実施例1と同様にして、高密度部位の面積を変更して保持材を作製した。保持材は、厚さがほぼ均一で平均8mmであり、高密度部位の総面積は、保持材全表面積の15%であった。また、高密度部位の密度は0.25g/cm、他の部位の密度は0.14g/cm、保持材全体の密度は0.16g/cmであった。
【0044】
得られた保持材を、同様に、触媒担体に巻装してSUS製ケーシングに圧入したところ、触媒担体の破損もなく圧入できた。また、ケーシング装着時の高密度部位の密度は0.5g/cm、他の部位の密度は0.28g/cm、保持材全体の密度は0.32g/cmであった。
【0045】
(比較例1)
実施例1と同様の水性スラリーを、凹部の無い平坦な成形型に流し込み、脱水成形、圧縮及び乾燥して、厚さ8mmで、密度0.16g/cmの保持材を得た。
【0046】
得られた保持材を、同様に、触媒担体に巻装してSUS製ケーシングに圧入したところ、触媒担体の破損もなく圧入できた。また、ケーシング装着時の密度は0.32g/cmであった。
【0047】
(保持力測定)
実施例1〜5及び比較例1の各保持材について、保持力を測定した。即ち、図5に示すように、円筒状のSUS製ケーシング100に、保持材110を巻装した触媒担体120を、その底部を浮かせた状態で収容しておき、触媒担体120の上面から荷重(5mm/分)を加え、触媒担体120が下方に動き出した時点での荷重をロードセルにて測定した。その結果、実施例1の保持材では1250N、実施例2の保持材では1320N、実施例3の保持材では1290N、実施例4の保持材では1100N、実施例5の保持材では950N、比較例1の保持材では900Nであった。ここで、各保持材の密度にそれほど差がないことから、各保持材に使用される無機繊維の量にもそれほど差がないと推察され、本発明に従う実施例の保持材は、比較例とほぼ同じ無機繊維の量であるにもかかわらず、触媒担体の保持力に優れていることがわかる。また、金属ケーシングへの圧入についても、実施例1〜5の保持材は比較例1の保持材と同様に支障は無かった。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】触媒コンバーターの一例を示す断面図である。
【図2】金属製ケーシングの一例を示す分解図である。
【図3】金属製ケーシングの他の例を示す斜視図である。
【図4】(A)本発明の触媒コンバーター用保持材の一例を示す平面図、(B)触媒担体に巻装した状態を示す斜視図である。
【図5】保持材の保持力の測定方法を示す概略図である。
【符号の説明】
【0049】
11 金属製ケーシング
12 触媒担体
13 触媒コンバーター用保持材
30 高密度部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒担体と、触媒担体を収容する金属製ケーシングと、触媒担体に巻回されて触媒担体と金属製ケーシングとの間隙に介装される保持材とを備えた触媒コンバーターに用いられる保持材であって、
他の部位よりも密度を高くした高密度部位が点在していることを特徴とする触媒コンバーター用保持材。
【請求項2】
請求項1に記載の触媒コンバーター用保持材において、高密度部位の総面積が保持材全面積の10〜80%を占めることを特徴とする触媒コンバーター用保持材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の触媒コンバーター用保持材において、厚さが一定であることを特徴とする触媒コンバーター用保持材。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の触媒コンバーター用保持材において、保持材の厚さは5〜30mmであり、保持材全体としての密度は0.1〜0.6g/cmであることを特徴とする触媒コンバーター用保持材。
【請求項5】
請求項4に記載の触媒コンバーター用保持材において、高密度部位の密度は0.20〜0.7g/cmであることを特徴とする触媒コンバーター用保持材。
【請求項6】
無機繊維を含有する水性スラリーを、高密度部位に相当する部分に凹部が形成された金型に流し込み、脱水成形して湿潤成形体とし、前記湿潤成形体全体を厚さ方向に圧縮しながら乾燥することを特徴とする触媒コンバーター用保持材の製造方法。
【請求項7】
触媒担体と、触媒担体を収容する金属製ケーシングと、触媒担体に巻回されて触媒担体と金属製ケーシングとの間隙に介装される保持材とを備えた触媒コンバーターにおいて、
前記保持材には、他の部位よりも密度を高くした高密度部位が点在していることを特徴とする触媒コンバーター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−41468(P2009−41468A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−207932(P2007−207932)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】