説明

触媒スクリャービン反応

本発明は、有機合成の分野に関する。より詳細には、本発明は、芳香族化合物又は芳香族成分と保護されたエナール化合物又は保護されたエナール成分、例えばアセタール又はアシラールとから、芳香族非共役エノールエステル又は芳香族非共役エノールエーテルを製造する方法を提供する。この反応は、式MX1-4の塩(ここで、Mは、Zn又はFeのような遷移金属を表し、かつXはモノ−アニオンを表す)又はBY3(ここで、Yは、フッ化物又は置換又は非置換のフェニル基を表す)により促進される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機合成の分野に関する。より詳細には、本発明は、芳香族化合物又は芳香族成分と保護されたエナール化合物又は保護されたエナール成分、例えばアセタール又はアシラールとから、芳香族非共役エノールエステル又は芳香族非共役エノールエーテルを製造する方法を提供する。この反応は、一部の金属誘導体の使用により促進される。
【0002】
従来技術
Scriabine反応は、芳香族化合物とエナール又は相応するアシラールとの間の反応からなる(I.Scriabine, Bull. Soc. Chem.Fr., 1961, 1194参照)。この反応は、ジヒドロけい皮アルデヒド誘導体を形成する手段を提供する。我々の知識の及ぶ限りでは、この反応に関する文献において報告された全ての方法及び実施例は、Al塩又はTiCl4が少なくとも化学量論量である。例えば、Aguillar他、Synthetic Comm. 2004, 2719を挙げることができる。
【0003】
故に、そのようなジヒドロけい皮アルデヒド誘導体を、触媒反応を用い、かつできれば、より環境にやさしい触媒を用いることにより入手することは大いに望ましい。
【0004】
発明の説明
前記の問題を解決するために、本発明は、式
【化1】

[式中、波線は、二重結合がE又はZの配置又はその混合物であってよいことを示しており;
それぞれR1は、別々に、水素又はハロゲン原子又はC1〜C6アルキル、アルコキシ又はアミノ基を表すか;又は2個のR1は、一緒になった場合には、置換又は非置換であり、かつ1又は2個の酸素、硫黄又は窒素原子を有するか又は有しないC3〜C10アルカンジイル又はアルケンジイル基を表し;
2又はR3は、別々に、水素原子又はC1〜C6アルキル基を表し;R2及びR3は、一緒になって、置換又は非置換のC3〜C10アルカンジイル又はアルケンジイル基を表してよく;
4は、C1〜C7アルキル又はフッ素化アルキル基、置換又は非置換のC7〜C10アルキル芳香族、C1〜C7アシル基、又は−COCOOH又は−COCH2COOH基を表し;かつ
5は、置換又は非置換のC2〜C9アルカンジイル又はアルケンジイル基を表す]で示される化合物を、
式(II)で示される化合物を式(III)で示される化合物でカップリングするか、
【化2】

[式中、R1〜R3は、式(I)で示された意味を有し、かつそれぞれR6は、別々に、C1〜C7アルキル又はフッ素化アルキル基、置換又は非置換のC7〜C10アルキル芳香族、C1〜C7アシル基を表すか、又はR6は、一緒になって、COCO又はCOCH2CO基を表す]
又は、それぞれ、式
【化3】

[式中、R1及びR3は、式(I)で示された意味を有し、R6は、式(III)で示された意味を有し、かつR5は、式(I′)で示された意味を有する]で示される化合物を環化することにより、製造する方法を提供するものであって、
前記方法が、
・式MXnの塩(ここで、Mは、Fe、Co、Ni、Cu及びZnからなる群から選択される遷移金属を表し、Xはモノ−アニオンを表し、かつnは、1〜3の整数である);及び
・式BY3のホウ素化合物(ここで、Yは、フッ化物又は置換又は非置換のフェニル基を表す)及びC2〜C10エーテル又はC1〜C8カルボン酸との前記ホウ素化合物のいずれかの付加物
からなる群から選択される少なくとも1つの触媒の触媒量の存在で実施されることにより特徴付けられる。
【0005】
1〜R6の可能な置換基は、1、2又は3個のハロゲン原子又はORa、NRa2又はRa基であり、ここでRaは水素原子又はC1〜C10の環状、線状又は分枝鎖状のアルキル又はアルケニル基、好ましくはC2〜C4の線状又は分枝鎖状のアルキル又はアルケニル基である。
【0006】
Yの可能な置換基は、ハロゲン化物原子又はメチル又はCF3基のような、1〜5個の基である。
【0007】
また、R1が水素原子ではない場合には、式(I)又は(I′)の化合物が異性体の混合物の形であってよいことが理解される。例えば、式(II)の化合物がメチルベンゼンである場合には、得られる化合物(I)は、オルト、又はメタ、及びパラ異性体の混合物の形であってよい。
【0008】
本発明の第一実施態様によれば、本発明は、R4がC1〜C7アルキル基、置換又は非置換のベンジル基又はC1〜C7アシル基を表す式(I)又は(I′)の化合物を製造する方法を提供する。
【0009】
別の実施態様によれば、R2又はR3は、別々に、水素原子又はC1〜C4アルキル基を表してよく;R2及びR3は、一緒になって、置換又は非置換のC3、C4又はC10アルカンジイル又はアルケンジイル基を表してよい。
【0010】
さらに、それぞれR1は、別々に、水素又はハロゲン原子又はC1〜C4 アルキル又はアルコキシ基を表してよいか;又は2個のR1は、一緒になった場合には、置換又は非置換であり、かつ1又は2個の酸素、硫黄又は窒素原子を有するか又は有しないC3〜C5アルカンジイル又はアルケンジイル基を表す。別の実施態様によれば、1又は2個のR1は、水素原子ではない。
【0011】
さらに、R5は、置換又は非置換のC2〜C3アルカンジイル又はアルケンジイル基を表してもよい。
【0012】
そのような実施態様において、出発物質は、式(II)及び(III)の相応する化合物、又は式(IV)の相応する化合物であると理解される。
【0013】
本発明のさらなる実施態様によれば、本発明は、式(II)の化合物と式(III)の化合物との反応による式(I)の化合物の製造方法を提供する。
【0014】
式(II)の化合物の限定されない例として、次のものを挙げることができる:非置換又は1又は2個のC1〜C4アルキル基により置換されたベンゼン、非置換又は1又は2個のC1〜C4アルキル基により置換された1,3−ベンゾジオキソール又はインダン、及び特に1,1−ジメチルインダン。
【0015】
式(III)の化合物の限定されない例として、次のものを挙げることができる:アクロレインジエチルアセタール、アクロレイン二酢酸、メタクロレイン二酢酸、クロトンアルデヒド二酢酸、チグリル二酢酸、シクロヘキセニルカルバルデヒド二酢酸。
【0016】
前記のように、本発明の方法は、式MXnの塩又は式BY3の化合物及び前記化合物の付加物である少なくとも1つの触媒の存在で実施される。前記触媒は、無水形であってよく、又は水の存在で不安定である酸を除いては、水和形であってもよい。しかしながら無水形が好ましい。
【0017】
さらに、本発明の特別な実施態様によれば、触媒としての式MXnの化合物の1つのみの使用も好ましい。
【0018】
本発明の特別な実施態様によれば、触媒は、BY3及びその付加物、FeX3、CoX2、NiX2、ZnX2、CuX2及びCuXからなる群から選択される。
【0019】
本発明の特別な実施態様によれば、BY3及び前記のBY3の付加物、FeX3、NiX2、ZnX2及びCuX2からなる群から選択される触媒が特に有用である。さらに、より詳細には、触媒は、BY3及び前記のBY3の付加物、FeX3及びZnX2の中から選択されてよい。
【0020】
前記のように、BY3は、単独で、又はエーテル又はカルボン酸とのその付加物の1つの形で使用されることができる。特別な例は、Et2O、Bu2O又はAcOHとのBF3の付加物である。
【0021】
本発明の別の実施態様によれば、Xは、置換又は非置換のアセチルアセトナート、Cl-、Br-、C1-9カルボキシラート、C1-10スルホナート、ClO4-、BF4-、PF6-、SbCl6-、AsCl6-、SbF6-、AsF6-、BR74-(ここでR7は、非置換又はハロゲン化物原子又はメチル又はCF3基のような1〜5個の基により置換されたフェニル基である)、又はR8SO3-(ここでR8は、塩素又はフッ化物原子である)からなる群から選択されるモノ−アニオンである。特にXは、Cl-、Br-及びトリフルオロメチルスルホン酸塩からなる群から選択されることができる。
【0022】
本発明の別の実施態様によれば、Yは、F又はC65である。
【0023】
本発明のさらなる実施態様によれば、触媒は、BF3、及びAcOH、FeCl3、ZnBr2又はZnCl2とのBF3の付加物である。
【0024】
触媒は、広い範囲の濃度で反応媒体に添加されることができる。限定されない例として、出発化合物(II)又は(IV)のモル量を基準として、0.001〜0.30モル当量の範囲の触媒濃度を挙げることができる。好ましくは、触媒濃度は、0.005〜0.15モル当量が含まれる。触媒の最適濃度が触媒の性質及び所望の反応時間に依存することは言うまでもない。
【0025】
また、出発化合物(III)のモル量を基準として、0.1〜0.30モル当量の範囲の触媒濃度を挙げることもできる。好ましくは、触媒濃度は、0.01〜0.10モル当量が含まれる。触媒の最適濃度が触媒の性質及び所望の反応時間に依存することは言うまでもない。
【0026】
"触媒量(catalytic amount)"がここでは、反応混合物に添加される触媒のモル当量を超えるモル収率で所望の化合物の形成を可能にするいずれかの量を意味することを言うものであることがここでは有用である。
【0027】
本発明の方法が実施されることができる温度は、典型的に0℃〜180℃、より好ましくは15℃〜100℃の範囲内である。もちろん、当業者は、出発物質及び最終生成物の融点及び沸点との関係で好ましい温度を選択することもできる。もちろん、当業者は、出発物質及び最終生成物並びに溶剤の融点及び沸点との関係で好ましい温度を選択することもできる。
【0028】
本発明の方法は、溶剤の存在又は不在で実施されることができる。当業者が予測しうるように、溶剤の存在は、出発化合物が反応条件下に固体の化合物である場合にのみ必須である。
【0029】
しかしながら、本発明の好ましい実施態様によれば、及び出発化合物の物理的な状態から独立して、本方法は、溶剤の存在で有利に実施される。好ましくは、前記溶剤は、無水であるか、又は水1%w/wを上回って含有しない。
【0030】
そのような溶剤の限定されない例は、C4〜C8エーテル、C3〜C6エステル、C3〜C6アミド、C6〜C9芳香族溶剤、C5〜C7の線状又は分枝鎖状又は環状の炭化水素、C1〜C2塩素化溶剤及びそれらの混合物である。
【0031】
さらに、この反応は、場合により相応するカルボン酸R9COOHを含有する、式R9C(O)O(O)CR9の無水カルボン酸(ここでR9はC1〜C7アルキル基、置換又は非置換のC7〜C10アルキル芳香族、C1〜C7アシル基を表す)の群に属する溶剤の存在で実施されることもできる。その場合に、任意の置換基はR6と同じである。
【0032】
式(III)又は(IV)の化合物は、先行技術のいずれかの方法に従って、製造され、かつ単離されることができる。選択的に、化合物(III)又は(IV)は、知られた先行技術のいずれかの方法に従って、現場で(in situ)、すなわち反応媒体中にその使用の直前に、生成されることもできる。
【0033】
特に、好ましくは式(III)又は(IV)の化合物は、出発物質として相応するエナールを使用する方法により、製造されるか又は生成される。
【0034】
故に、本発明のさらなる対象は、上記で定義された通りであって、さらに、それぞれ式(V)又は(V′)
【化4】

[式中、R1、R2、R3及びR5は、上記で示された意味と同じ意味を有する]で示される相応するエナールから出発する式(III)又は(IV)の化合物を現場生成する段階を含む発明の方法である。
【0035】
式(III)又は(I′)の化合物の現場生成を含む方法は、前記化合物(III)又は(I′)がアセタール又はアシラールであり、その場合に後者がジェミナルなジカルボキシラートである場合に、特に有用である。
【0036】
目下、式(II)の化合物がアシラールである場合には、アシラールの環化を促進することができる触媒が、相応するアシラールへのエナールの転化を促進するのにも有用であることにも我々は注目した。
【0037】
故に、本発明のさらなる対象、及び実際には前記の方法の特別な実施態様は、上記で定義された通りの触媒の存在で、式(V)又は(V′)のエナールを、定義された通り、式R9C(O)O(O)CR9の無水カルボン酸(ここで、R9は上記で示された意味を有する)と反応させる段階を含む、上記で定義された通り、式(I)又は(I′)の化合物を製造する方法である。
【0038】
本発明は、目下、次の例によりさらに詳細に記載され、ここで、省略形は、当工業界で通常の意味を有し、温度は摂氏度(℃)で示されている。NMRスペクトルのデータは、それぞれ1H又は13CについてCDCl3中で400MHz又は100MHzで記録され、化学シフトδは、基準としてのTMSに対してppmで示されており、かつ結合定数Jは、Hzで表現されている。全ての省略形は当工業界で通常の意味を有する。各NMRスペクトルは、別々に明記されていない限り、得られた主要異性体に関して提供される。
【0039】
例1
アクロレイン二酢酸と2−メチルインダンとの間の反応
酢酸中のFeCl3・6H2Oの溶液(1.0M、1.0ml、1mmol)を無水酢酸(20.4g、200mmol)に5℃でゆっくりと滴加した。この溶液を室温に温めた。2−メチルインダン(20.0g、151mmol)及びジクロロメタン(15g)中のアクロレイン(5.6g、100mmol)の溶液を無水物溶液に、温度を約15℃で維持しながら、ゆっくりと滴加した。この混合物を20℃で4時間撹拌し、ついで酢酸エチル(150ml)で希釈し、飽和NaHCO3水溶液(50ml)をゆっくりと滴加した。水相を酢酸エチル(150ml)で再抽出した。合一した有機相を飽和NaHCO3水溶液(100ml)、ブライン(100ml)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、溶剤を真空中で除去した。150℃(2.9×10-1mbar)でのクーゲルロール(KugelRohr)蒸留によるさらなる精製により、所望の酢酸エノールが異性体の混合物として得られた(7.2g、30%)。
1H−NMR:1.13 (d, J 6.2, 3H), 2.11 (s, 3H), 2.43-2.59 (m, 3H), 2.98-3.06 (m, 2H), 3.29 (d, J 8.2, 2H), 5.53-5.60 (m, 1H), 6.95 (d, J 7.2, 1H), 7.02 (s, 1H), 7.10 (d, J 7.7, 1H), 7.18 (dt,J 13.8,1, 1H)。
13C−NMR:20.7 (q), 20.9 (q), 33.5 (t), 34.65 (d), 40.7 (t), 41.0 (t), 114.2 (d), 124.4 (d), 126.0 (d), 136.0 (d), 137.5 (s), 141.8 (s), 144.2 (s), 168.2 (s)。
【0040】
例2
アクロレイン二酢酸と2−メチルインダンとの間の反応
2−メチルインダン(2.6g、20mmol)及びアクロレイン二酢酸(1.6g、10mmol)及び臭化亜鉛(0.25g、1mmol)の懸濁液を周囲温度で24時間撹拌した。この反応媒体をついで酢酸エチル(50ml)で希釈し、飽和NaHCO3水溶液(50ml)をゆっくりと滴加した。水相を酢酸エチル(50ml)で再抽出した。合一した有機抽出物を飽和NaHCO3水溶液(50ml)、ブライン(50ml)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、ろ過し、溶剤を真空中で除去した。180℃(8.0×10-1mbar)でのクーゲルロール蒸留による残留物のさらなる精製により、酢酸エノールが異性体の混合物として得られ(0.65g、30%)、上記で製造したものと同一であった。
【0041】
例3
2,2−ジメチルジヒドロベンゾフランとアクロレイン二酢酸との間の反応
臭化亜鉛(50mg、0.2mmol)を、ジクロロメタン(5g)中のアクロレイン二酢酸(1.6g、10mmol)、2,2−ジメチルジヒドロベンゾフラン(1.5g、10mmol)の溶液中に懸濁させ、周囲温度で24時間撹拌した。この反応媒体をついで酢酸エチル(25ml)で希釈し、飽和NaHCO3水溶液(20ml)をゆっくりと滴加した。水相を酢酸エチル(25ml)で再抽出した。合一した有機相を、飽和NaHCO3水溶液(25ml)、ブライン(25ml)で洗浄し、ついでMgSO4で乾燥させ、ろ過し、溶剤を真空中で除去した。160℃(3.3×10-1mbar)でのクーゲルロール蒸留によるさらなる精製により、所望の酢酸エノールが異性体の混合物として得られた(0.9g、37%)。
1H−NMR:1.45 (s, 6H), 2.11 (s, 3H), 2.97 (s, 2H), 3.25 (d, J 7.7, 2H), 5.55 (dt, 12.3, 7.7, 1H), 6.64 (d, 8.2,1H), 6.91 (d, J 8.2, 1H), 6.96 (s, 1H), 7.16 (d, 12.3, 1H)。
13C−NMR:20.7 (q), 28.3 (q), 33.0 (t), 42.9 (t), 86.6 (s), 109.2 (d), 114.5 (d), 125.1 (d), 127.4 (s), 127.8 (d), 131.2 (s), 136.0 (d), 157.5 (s), 168.2 (s)。
【0042】
例4
2−メチルインダンとメタクロレイン二酢酸との間の反応
BF3酢酸錯体(0.2g、1mmol)を、60℃に加熱した2−メチルインダン(13.2g、100mmol)及びメタクロレイン二酢酸(8.7g、50mmol)の撹拌溶液に添加した。この混合物を60℃で1時間撹拌し、ついで冷却し、かつ酢酸エチル(50ml)で希釈し、飽和NaHCO3水溶液(50ml)をゆっくりと滴加した。水相を酢酸エチル(50ml)で再抽出し、合一した有機相をNaHCO3(100ml)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、ろ過し、溶剤を真空中で除去した。残留物を、160℃(6.0×10-1mbar)でのクーゲルロール蒸留によりさらに精製して、酢酸エノールが異性体の混合物として得られた(2.3g、19%)。
1H−NMR:(主要異性体のみ)1.13 (d, J 6.7, 3H), 1.60 (d, J 1.5, 3H), 2.14 (s, 3H), 2.44-2.59 (m, 3H), 2.97-3.05 (m, 2H), 3.22 (s, 2H), 6.93 (d, J 6.7, 1H), 6.99 (s, 1H), 7.05 (d, J 1.5, 1H), 7.08 (d, J 7.2, 1H)。
13C−NMR:13.6 (q), 20.8 (q), 20.7 (q), 34.7 (d), 40.2 (t), 40.8 (t), 41.1 (t), 121.6 (s), 124.2 (d), 124.8 (d), 126.6 (d), 131.1 (d), 136.8 (s), 141.8 (s), 144.1 (s), 168.3 (s)。
【0043】
例5
芳香族化合物とアクロレイン二酢酸との間の反応
A)一般的な手順
酢酸中のFeCl3・6H2Oの溶液(1.0M、2〜3ml、2〜3mmol、5〜10%mol)を、0℃に冷却したインダン誘導体(35mmol)、無水酢酸(2g)及びアクロレイン二酢酸(6.5g、41mmol)の撹拌溶液に添加した。周囲温度でさらに60分間撹拌し、酢酸エチル(50ml)で希釈し、飽和重炭酸ナトリウム(25ml)をゆっくりと滴加した。水相を酢酸エチル(50ml)で再抽出し、合一した有機相を、重炭酸塩(50ml)で、ついでブライン(50ml)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、溶剤を真空中で除去した。粗製生成物を、クーゲルロール蒸留により、最初に前記インダンを回収するために中程度の真空(5〜10mbar)下に、ついで高真空(1.0〜4.0×10-1mbar)下に、精製した。
【0044】
2−エチルインダン
収率(18%)、2.8×10-1mbarでの沸点160℃
1H−NMR:0.96 (t, J 7.2, 3H), 1.50 (5重線, J 7.2, 2H), 2.10 (s, 3H), 2.34 (7重線, J 7.2, 2H), 2.60-2.46 (m, 2H), 2.95-3.05 (m, 2H), 3.28 (d, J 7.7, 2H), 5.51-5.60 (m, 1H), 6.94 (d, J 7.7, 1H), 7.01 (s, 1H), 7.09 (d, J 7.7, 1H) 7.17 (dt, J 12.3, 1.5,1H)
13C−NMR:12.8 (q), 20.7 (q), 28.7 (t), 33.5 (t), 38.6 (t), 38.9 (t), 42.2 (d), 114.3 (d), 124.4 (d), 126.1 (d), 136.1 (d), 137.6 (s), 141.8 (s), 144.2 (s), 168.2。
【0045】
2−プロピルインダン
収量1.4g、18%、2.5×10-1mbarでの沸点150℃
1H−NMR:0.88-0.95 (m, 3H), 1.36-1.51 (m, 4H), 2.14 (s, 3H), 2.41-2.59 (m, 2H), 2.95-3.05 (m, 2H), 3.28 (d, J 7.7, 2H), 5.56 (dt, J 12.8,7.2, 1H), 6.94 (d, J 7.7, 1H), 7.01 (s,1H), 7.08-7.19 (m,2H)。
13C−NMR:14.3 (q), 20.7 (q), 21.5 (t), 33.5 (t), 38.1 (t), 38.9 (t), 40.20 (d), 114.3 (d), 124.4 (d), 126.0 (d), 126.1 (d), 136.1 (d), 137.5 (s), 141.8 (s), 143.7 (s), 144.2 (s), 168.2 (s)。
【0046】
2,2−ジメチルインダン
溶離液としてエーテル:ペンタン(1:19、ついで1:9)を用いるシリカ(200ml)上でのカラムクロマトグラフィーにより精製することにより、所望の酢酸エノールが得られた(1.1g、14%)。
1H−NMR:1.13 (s, 6H), 2.11 (s, 3H), 2.65-2.73 (m, 4H), 3.28 (d, J 7.7, 2H), 5.50-5.60 (m, 1H), 6.94 (d, J 7.7, 1H), 6.98 (s, 1H), 7.07 (d, J 7.7,1H), 7.18 (dt, J 10.8, 1.5,1H)。
13C−NMR:20.8 (q), 28.8 (q), 33.5 (t), 40.2 (s), 47.4 (t), 47.7 (t), 114.3 (d), 124.7 (d), 126.0 (d), 136.1 (d), 137.5 (s), 141.6 (s), 144.0 (s), 168.2 (s)。
【0047】
シス,トランス−1,2−ジメチルインダン
収量1.7g、28%、4.5×10-1mbarでの沸点150℃。
1H−NMR:0.94-1.08 (m, 3H), 1.10-1.14 (m, 3H), 1.16-1.20 (m, 1H), 1.25-1.29 (m, 1H), 2.11 (s, 3H), 2.47-2.58 (m, 3H), 2.90-2.99 (m, 2H), 3.12 (7重線, J 6.7, 1H), 3.30 (t, J6.2, 2H), 5.55-5.59 (m, 1H), 6.94-7.20 (m, 4H)。
13C−NMR:14.7 (q), 15.2 (q), 20.8 (q), 33.6 (t), 38.0 (d), 39.4 (t), 39.8 (t), 42.0 (d), 42.4 (d), 114.2 (d), 123.6 (d), 124.4 (d), 126.1 (d), 126.2 (d), 134.4 (s), 136.1 (d), 141.0 (s), 149.3 (s), 168.2 (s)。
【0048】
B)テトラヒドロナフタレン
FeCl3・6H2Oの溶液(酢酸中1.0M、1.0ml、1mmol)を、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン(21.65g、164mmol)、無水酢酸(1.4g、13.6mmol)、アクロレイン二酢酸(5.4g、34mmol)の撹拌溶液に添加した。この溶液を周囲温度でさらに3時間撹拌し、ついで5%重炭酸ナトリウム溶液(200ml)中へ注ぎ、ついで水相をエーテル(200ml)で抽出した。有機相をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、溶剤を真空中で除去した。残留物を、シクロヘキサン:酢酸エチル19:1を用いるシリカ(300ml)上でのカラムクロマトグラフィーによりさらに精製し、酢酸エノールがレジオ異性体の混合物として得られた(α及びβ(主要な)ナフチル、さらにE及びZ)。
1H NMR(双方の異性体):1.70-1.86 (m, 4H), 2.11 (s, 3H), 2.64-2.80 (m, 4H), 3.21-3.29 (m, 2H), 5.55 (dt, J 12,7, 1H), 6.82-7.25 (m, 4H)。
13C NMR(双方の異性体):20.7 (q), 22.8 (t), 23.2 (t), 23.3 (t), 23.4 (t), 26.2 (t), 29.2 (t), 29.6 (t), 30.3 (t), 30.8 (t), 33.4 (t), 113.9 (d), 114.7 (d), 126.2 (d), 126.3 (d), 126.8 (d), 128.5 (d), 128.8 (d), 130.1 (d), 135.9 (s), 136.0 (s), 136.9 (d), 137.2 (d), 137.6 (s), 138.1 (s), 138.4 (d), 138.6 (d), 168.2 (s)。
【0049】
C)1,1−ジメチルインダン
FeCl3・6H2O(酢酸中1M、0.3ml)の溶液を、1,1−ジメチルインダン(4.1g、28mmol)、アクロレイン二酢酸(1.1g、7mmol)及び無水酢酸(0.3g、2.8mmol)の撹拌溶液にゆっくりと滴加した。室温で2時間撹拌した後に、混合物をブライン(50ml)中へ注ぎ、水相をエーテル(100ml)で抽出した。有機相を重炭酸ナトリウム(50ml)、ついでブライン(50ml)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、溶剤を真空中で除去した。残留物を10mbarで120℃でのクーゲルロール蒸留によりさらに精製して1,1−ジメチルインダン(2.2g)を回収し、ついで0.3mbarで160℃での蒸留により、酢酸エノールが異性体の混合物として得られた(1.2g、収率:70%)。
1H NMR:1.25 (s, 6H), 1.91 (t, J 7, 2H), 2.11 (s, 3H), 2.84 (t, J 7, 2H), 3.32 (d, J 7, 2H), 5.58 (dt, J 12, 7, 1H), 6.95 (s, 1H), 6.96 (d, J 8, 1H), 7.10 (d, J 8, 1H), 7.18 (dt, J 12, 8, 1H)。
13C NMR:20.7 (q), 28.6 (q), 29.6 (q), 33.6 (t), 41.6 (t), 43.9 (t), 114.2 (d), 121.9 (d), 124.4 (d), 126.3 (d), 136.1 (d), 137.8 (s), 140.8 (s), 153.0 (s),168.1 (s)。
【0050】
例6
t−ブチルベンゼンとアクロレイン二酢酸との間の反応
FeCl3・6H2Oの溶液(酢酸中1M、2.5ml、2.5mmol)を、t−ブチルベンゼン(55g、410mmol)、アクロレイン二酢酸(13.5g、85mmol)及び無水酢酸(3.5g、34.3mmol)の撹拌溶液にゆっくりと滴加した。室温で3時間撹拌した後に、混合物をブライン(50ml)中へ注ぎ、水相をエーテル(2×100ml)で抽出した。有機相を重炭酸ナトリウム(50ml)、ついでブライン(50ml)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、溶剤を真空中で除去した。残留物を、シクロヘキサン、ついで5:95酢酸エチル:シクロヘキサンを用いるシリカ(500ml)上でのカラムクロマトグラフィーによりさらに精製してt−ブチルベンゼンが回収され、ついで酢酸エノールがメタ及びパラ異性体の混合物として得られた(2.7g、収率:14%)。
1H NMR:(双方の異性体)1.31 (s, 9H), 2.11 (s, 3H), 3.30 (d, J 8, 2H) 5.58 (dt, J 12, 8, 1H), 7.12-7.21 (m, 4H), 7.32 (d, J 8, 1H)。
13C NMR:20.7 (q), 30.1 (s), 31.4 (q), 33.0 (t), 34.4 (s), 112.6 (d), 113.9 (d), 125.4 (d), 127.9 (d), 128.0 (d), 134.5 (d), 136.2 (d), 136.7 (d), 136.9 (d), 149.0 (s), 149.2 (s), 168.0 (s), 168.2 (s)。
【0051】
例7
s−ブチルベンゼンとアクロレイン二酢酸との間の反応
FeCl3・6H2Oの溶液(酢酸中1M、0.5ml、0.5mmol)を、ジクロロメタン(15ml)中のs−ブチルベンゼン(11g、82mmol)、アクロレイン二酢酸(2.7g、17mmol)及び無水酢酸(0.7g、6.8 mmol)の撹拌溶液にゆっくりと滴加した。室温で3時間撹拌した後に、混合物を飽和重炭酸ナトリウム(50ml)中へ注ぎ、水相をエーテル(100ml)で抽出した。有機相を飽和重炭酸ナトリウム(50ml)、ついでブライン(50ml)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、溶剤を真空中で除去した。残留物を、シクロヘキサン、ついで5:95酢酸エチル:シクロヘキサンを用いるシリカ(500ml)上でのカラムクロマトグラフィーによりさらに精製してs−ブチルベンゼンを回収し、ついで酢酸エノールが異性体の混合物として得られた(1.3g、収率:33%)。
1H NMR:0.81 (t, J 7, 3H), 1.21 (d, J 7, 3H), 1.57 (q, J 7, 2H), 2.11 (s, 3H), 2.57 (s, J7, 1H), 3.30 (dd, J 8,1,2H), 5.65-5.52 (m, 1H), 7.10-7.25 (m, 5H)。
13C NMR:12.2 (q), 20.7 (q), 21.8 (q), 31.2 (t), 33.19 (t), 41.3 (d), 114.0 (d), 127.2 (d), 128.2 (d), 136.2 (d), 137.0 (s), 168.2 (s)。
【0052】
例8
1,3−ベンゾジオキソールとメタクロレイン二酢酸との間の反応
塩化亜鉛(0.14g、1mmol、10mol%)を、1,3−メチレンジオキシベンゼン(2.4g、20mmol)及びメタクロレイン二酢酸(1.72g、10mmol)の撹拌溶液に周囲温度で添加した。この溶液を周囲温度でさらに48時間撹拌した。この溶液を、酢酸エチル(59ml)及び5%重炭酸ナトリウム(50ml)で希釈し、水相を酢酸エチル(50ml)で再抽出し、有機相をブライン(50ml)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、溶剤を真空中で除去した。残留物を、溶離液としてのシクロヘキサン、ついで1:19、ついで1:9の酢酸エチル:シクロヘキサンを用いるシリカ(50ml)上でのカラムクロマトグラフィーによりさらに精製した。所望の生成物1.23gを、3.5×10-2mbarで125℃でのクーゲルロール蒸留によりさらに精製して、酢酸エノールが得られた(1.0g、収率:53%)。
1H NMR:1.58 (d, J 1.5, 3H), 2.14 (s, 3H), 3.17 (s, 2H), 5.91 (s, 2H), 6.63 (dd, J 8, 1.5, 1H), 6.67 (d, J 1.5, 1H), 6.72 (d, J 8, 1H), 7.02 (d, J 1.5, 1H)。
13C NMR:13.4 (q), 20.8 (q), 40.0 (t), 100.9 (t), 108.0 (d), 109.0 (d), 121.3 (s), 121.7 (d) 131.2 (d), 132.8 (s), 146.1 (s), 147.7 (s)及び168.3 (s)。
【0053】
例9
アニソールとチグリル二酢酸(tiglic diacetate)との間の反応
塩化亜鉛(0.14g、1mmol)を、アニソール(2.16g、20mmol)及びチグリル二酢酸(1.86g、10mmol)の溶液に添加し、この混合物を周囲温度で3時間撹拌した。この溶液を、酢酸エチル(25ml)及び飽和重炭酸ナトリウム(50ml)で希釈し、水相を酢酸エチル(25ml)で再抽出し、合一した有機相をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、溶剤を真空中で除去した。シクロヘキサン、ついで1:19、ついで1:9の酢酸エチル:シクロヘキサンを用いるシリカ(50ml)上でのカラムクロマトグラフィーによるさらなる精製により、酢酸エノールが異性体の混合物として得られた。3.5×10-2mbarで125℃でのクーゲルロール蒸留によるさらなる精製により、酢酸エノールが異性体の混合物として得られた(1.2g、収率:51%)。
【0054】
1H NMR:1.37 (d, J 7, 3H), 1.51 (d 1.5, 3H), 2.13 (s, 3H), 3.37 (q, J 7,1H), 3.77 (s, 3H), 6.83 (d, J 9, 2H), 7.13 (d, J 9, 2H), 7.13 (m, 1H)。
13C NMR:12.1 (q), 19.3 (q), 20.8 (q), 42.5 (d), 55.2 (q), 113.6 (d), 128.3 (d), 130.6 (d), 136.2 (s), 158.0 (s), 168.3 (s)。
【0055】
例10
2−メチルインダンとクロトンアルデヒド二酢酸との間の反応
無水酢酸(5g、49mmol)を、FeCl3・6H2O(1.08g、4mmol)及び2−メチルインダン(26.4g、200mmol)の懸濁液に添加し、5分後にクロトンアルデヒド二酢酸(6.88g、40mmol)をゆっくりと滴加した。この混合物をさらに7時間撹拌し、ついでブライン(50ml)中へ注ぎ、エーテル(100ml)で抽出し、有機抽出物を重炭酸ナトリウム(100ml)、ついでブライン(50ml)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、溶剤を真空中で除去した。残留物を10mbarで65℃での蒸留によりさらに精製して、2−メチルインダンを回収し、ついで0.1mbarで170℃での残留物の蒸留により、酢酸エノールが異性体の混合物として得られた(4.3g、収率:44%)。
【0056】
1H NMR(双方の主要異性体について):1.11-1.17 (m, 3H), 1.34 (d, J 7, 3/2H), 1.36 (d,J 6.6, 3/2H), 2.07 (s, 3/3H), 2.09 (s, 3/3H), 2.15 (s, 3/3H), 2.45-2.58 (m, 3H), 2.96-3.08 (m, 2H), 3.45 (5重線, J 7, 1/2H), 3.96 (m, 1/2H), 5.03 (dd, J 10, 7, 1/2H), 5.61 (dd, J 12.8, 7,1/2H), 6.94-7.20 (m, 4H)。
【0057】
13C NMR(双方の主要異性体について):20.7 (q), 20.9 (q), 22.0 (q), 34.5 (d), 34.8 (d), 40.8 (t), 41.1 (t), 119.3 (d), 123.0 (d), 124.4 (d), 124.8 (d), 126.0 (d), 132.6 (d), 135.0 (d), 141.9 (s), 143.5 (s), 144.2 (d), 168.7 (s)。
【0058】
例11
アニソールとシクロヘキセニルカルバルデヒド二酢酸との間の反応
FeCl3・6H2Oの溶液(酢酸中1M、0.31ml)を、アニソール(5.53g、51mmol)、シクロヘキサンカルバルデヒド二酢酸(2.3g、10.8mmol)及び無水酢酸(0.46g、4.5mmol)の撹拌溶液にゆっくりと滴加した。室温で4時間撹拌した後に、この混合物をブライン(50ml)中へ注ぎ、水相をエーテル(2×100ml)で抽出した。有機相を重炭酸ナトリウム(50ml)、ついでブライン(50ml)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、溶剤を真空中で除去した。残留物を、シクロヘキサン、ついで5:95酢酸エチル:シクロヘキサンを用いるシリカ(500ml)上でのカラムクロマトグラフィーによりさらに精製して、酢酸エノールが異性体の混合物として得られた(2.57g、91%)。
【0059】
MS: M(+) 260, 200, 172, 169, 121, 108,43 m/z。
【0060】
例12
6−フェニル−ヘキサ−2−エナールの分子内環化
FeCl3・6H2Oの溶液(無水酢酸中0.112M、1.2ml、0.134mmol)を6−フェニル−ヘキサ−2−エナール(1.8g、10mmol)に、撹拌しながら5℃で15分かけてゆっくりと滴加した。反応混合物をゆっくりと周囲温度に温め、さらに20時間撹拌した。黒ずんだ混合物を飽和重炭酸ナトリウム溶液中へ注ぎ、ついでエーテル(3×10ml)で抽出した。合一した有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、溶剤を真空中で除去した。残留物を、5.0×10-2mbarで140〜170℃でのクーゲルロールにより迅速に蒸留して、酢酸エノール(2−(1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレニル)ビニルアセタート)がE/Z異性体の混合物として得られた、1.8g、83%。
【0061】
E異性体:
1H NMR:1.68-1.70 (m, 1H), 1.71-1.80 (m, 1H), 1.86-2.01 (m, 2H), 2.12 (s, 3H), 2.72-2.84 (m, 2H), 3.41-3.49 (m, 1H), 5.49 (dd, J 13, 9, 1H), 7.05-7.19 (m, 5H)。
13C NMR:20.7 (q), 20.9 (t), 29.6 (t), 30.8 (t), 37.8 (d), 119.5 (d), 125.7 (d), 126.2 (d), 129.2 (d), 129.3 (d), 136.1 (d), 136.9 (s), 137.9 (s), 168.2 (s)。
【0062】
Z異性体:
1H NMR:1.54-1.64 (m, 1H), 1.73-1.83 (m, 1H), 1.89-2.03 (m, 2H), 2.18 (s, 3H), 2.75-2.86 (m, 2H), 3.99-4.06 (m, 1H), 4.98 (dd, J 10, 6, 1H), 7.05-7.14 (m, 4H), 7.16 (d, J 6,1H)。
13C NMR:20.8 (q), 21.5 (t), 29.6 (t), 30.1 (t), 34.9 (d), 118.7 (d), 125.8 (d), 126.0 (d), 128.9 (d), 129.1 (d), 133.9 (d), 136.8 (s), 138.5 (s), 168.2 (s)。
【0063】
例13
4−メチル−6−フェニル−ヘキサ−2−エナールの分子内環化
FeCl3・6H2Oの溶液(無水酢酸中0.112M、1.2ml、0.134mmol)を4−メチル−6−フェニル−ヘキサ−2−エナール(2.0g、10.1mmol)に、撹拌しながら5℃で15分かけてゆっくりと滴加した。反応混合物をゆっくりと周囲温度に温め、さらに20時間撹拌した。黒ずんだ混合物を飽和重炭酸ナトリウム溶液中へ注ぎ、ついでエーテル(3×10ml)で抽出した。合一した有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、溶剤を真空中で除去した。残留物を、5.0×10-2mbarで150〜180℃でのクーゲルロールにより迅速に蒸留して、酢酸エノール(2−(2−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレニル)ビニルアセタート)が異性体の混合物として得られた、2:2:1:1、1.9g、82%。
【0064】
1H NMR(主要異性体):0.96 (d, J 3, 3/2H), 0.98 (d, J 2.5, 3/2 H), 1.41-1.80 (m, 2H), 1.89-2.08 (m, 1H), 2.08 (s, 3/2H), 2.19 (s, 3/2H), 2.80-2.85 (m, 2H), 3.34 (dd, J 9.7, 5, 1/2H), 4.02 (dd, J 10, 5, 1/2H), 4.90 (dd, J 10.7, 6.6, 1/2H), 5.49 (dd, J 12.3, 10.2, 1/2H), 7.06-7.31 (m, 5H)。
13C NMR(主要異性体):18.3 (q), 18.9 (q), 20.7 (q), 20.8 (q), 26.7 (t), 26.9 (t), 28.7 (t), 28.8 (t), 32.1 (d), 32.4 (d), 116.0 (d), 117.8 (d), 125.9 (d), 126.0 (d), 128.9 (d), 129.7 (d), 136.9 (s), 138.5 (s), 168.1 (d), 168.2 (d) ppm。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】

[式中、波線は、二重結合がE又はZの配置又はその混合物であってよいことを示しており;
それぞれR1は、別々に、水素又はハロゲン原子又はC1〜C6アルキル、アルコキシ又はアミノ基を表すか;又は2個のR1は、一緒になった場合には、置換又は非置換であり、かつ1又は2個の酸素、硫黄又は窒素原子を有するか又は有しないC3〜C10アルカンジイル又はアルケンジイル基を表し;
2又はR3は、別々に、水素原子又はC1〜C6アルキル基を表し;R2及びR3は、一緒になって、置換又は非置換のC3〜C10アルカンジイル又はアルケンジイル基を表してよく;
4は、C1〜C7アルキル又はフッ素化アルキル基、置換又は非置換のC7〜C10アルキル芳香族、C1〜C7アシル基、又は−COCOOH又は−COCH2COOH基を表し;かつ
5は、置換又は非置換のC2〜C9アルカンジイル又はアルケンジイル基を表す]で示される化合物を、
式(II)で示される化合物を式(III)で示される化合物でカップリングするか、
【化2】

[式中、R1〜R3は、式(I)で示された意味を有し、かつそれぞれR6は、別々に、C1〜C7 アルキル又はフッ素化アルキル基、置換又は非置換のC7〜C10アルキル芳香族、C1〜C7アシル基を表すか、又はR6は、一緒になって、COCO又はCOCH2CO基を表す]
又は、それぞれ、式
【化3】

[式中、R1及びR3は、式(I)で示された意味を有し、R6は、式(III)で示された意味を有し、かつR5は式(I′)で示された意味を有する]で示された化合物を環化することにより、製造する方法であって、
前記方法を、
・式MXnの塩(ここで、Mは、Fe、Co、Ni、Cu及びZnからなる群から選択される遷移金属を表し、Xはモノ−アニオンを表し、かつnは1〜3の整数である);及び
・式BY3のホウ素化合物(ここで、Yは、フッ化物又は置換又は非置換のフェニル基を表す)及びC2〜C10エーテル又はC1〜C8カルボン酸との前記ホウ素化合物のいずれかの付加物
からなる群から選択される少なくとも1つの触媒の触媒量の存在で実施することを特徴とする、式(I)又は(I′)の化合物の製造方法。
【請求項2】
式(II)の化合物が、非置換又は1又は2個のC1〜C4アルキル基により置換されたベンゼン、非置換又は1又は2個のC1〜C4アルキル基により置換された1,3−ベンゾジオキソール又はインダンである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
式(III)の化合物が、アクロレインジエチルアセタール、アクロレイン二酢酸、メタクロレイン二酢酸、クロトンアルデヒド二酢酸、チグリル二酢酸、シクロヘキセニルカルバルデヒド二酢酸である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
触媒が、BY3及びその付加物、FeX3、CoX2、NiX2、ZnX2、CuX2及びCuXからなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
触媒が、BY3及びその付加物、FeX3及びZnX2からなる群から選択される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
Xが、置換又は非置換のアセチルアセトナート、Cl-、Br-、C1-9カルボキシラート、C1-10スルホナート、ClO4-、BF4-、PF6-、SbCl6-、AsCl6-、SbF6-、AsF6-、BR74-(ここで、R7は非置換又はハロゲン化物原子又はメチル又はCF3基のような1〜5個の基により置換されたフェニル基である)、又はR8SO3-(ここで、R8は塩素又はフッ化物原子である)からなる群から選択されるモノ−アニオンである、請求項4記載の方法。
【請求項7】
XがCl-、Br-又はトリフルオロメチルスルホン酸塩である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
触媒が、BF3、及びAcOH、FeCl3、ZnBr2又はZnCl2とのBF3の付加物である、請求項4記載の方法。
【請求項9】
さらに、それぞれ式(V)又は(V′)
【化4】

[式中、R1、R2、R3及びR5は請求項1と同じ意味を有する]で示される相応するエナールから出発して、式(III)又は(IV)の化合物を現場生成する段階を含む、請求項1記載の方法。

【公表番号】特表2008−544955(P2008−544955A)
【公表日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510707(P2008−510707)
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【国際出願番号】PCT/IB2006/051451
【国際公開番号】WO2006/120639
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(390009287)フイルメニツヒ ソシエテ アノニム (146)
【氏名又は名称原語表記】FIRMENICH SA
【住所又は居所原語表記】1,route des Jeunes, CH−1211 Geneve 8, Switzerland
【Fターム(参考)】