説明

触媒作用を付与したセラミックウォール−フローフィルターの製造方法

触媒作用を付与したセラミックウォール−フローフィルターである。複数の通路を備えてなる、触媒作用を付与したセラミックウォール−フローフィルターの製造方法であって、通路壁の細孔構造中の圧力を周囲の大気圧より下げること、排気された通路壁の表面を、少なくとも一種の触媒成分またはその前駆物質を含む液体と接触させ、それによって、排気された通路壁に液体を浸透させること、および触媒成分またはその前駆物質を含むフィルターを乾燥させ、か焼することを含んでなる、方法。本方法で使用する装置(100)は、セラミックウォール−フローフィルター(14)の複数の通路を周囲の大気から密封して隔離するための手段(120)、隔離された通路中の圧力を周囲の大気圧未満に下げ、それによって、フィルター壁の細孔構造中に真空を確立するための手段(160、200、220)、少なくとも一種の触媒成分またはその前駆物質を含む液体を保持するための、少なくとも一個の貯蔵部(260)、および隔離され、排気された通路に予め決められた量の液体を供給するための手段(310、300、220)を備えてなる。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、触媒作用を付与した煤フィルター(CSF)の製造方法に、特にそのような、フィルターがセラミックウォール−フロー型である、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンにより発生する排ガスから粒子状物質を除去するためのフィルターは、この分野でディーゼル粒子状物質フィルター(DPF)と呼ばれることがある。
【0003】
ハニカムモノリス基材、例えばセラミックフロースルーモノリスまたはセラミックウォール−フローフィルター、上に触媒および/またはウォッシュコートを塗布することは公知である。例えば我々の国際特許第WO2004/079167号明細書(ここに参考として含める)参照。次いで、被覆したモノリス基材を乾燥させ、か焼して所望の製品を製造する。モノリス基材上に触媒ウォッシュコートを塗布する装置の一つが、我々の国際特許第WO99/47260号明細書(ここに参考として含める)に開示されている。
【0004】
ウォッシュコートは、一般的に高表面積粒子状金属酸化物、例えばセリア、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、またはそれらのいずれか2種類以上の混合酸化物、もしくは複合酸化物、例えばセリア−ジルコニア、シリカ−アルミナ、ゼオライト(シリカ−アルミナの特別な種類)、等を、典型的には水性媒体中に含んでなる、スラリーである。ウォッシュコートおよび/または金属酸化物粒子は、活性触媒金属塩または化合物、例えば白金族金属、例えば一酸化炭素および炭化水素の酸化を促進するための白金またはパラジウム、あるいは炭化水素還元剤の存在下でNO還元を促進するためのロジウム、煤燃焼を促進する溶融塩、例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩またはバナジウム、タングステンまたはモリブデンのランタン塩もしくは五酸化バナジウム、を包含することができる。銅および銀系の触媒、例えば銀または銅のバナジウム酸塩、窒素系還元剤、例えばアンモニア、の存在下で排ガス中のNOを還元するための、V/TiOおよびゼオライトを包含する選択的触媒還元(SCR)、およびリーン排ガスからNOを吸収するための、アルカリ金属、アルカリ土類金属、および希土類金属の少なくとも一種の化合物も使用できる。
【0005】
ここで「複合酸化物」とは、我々は、少なくとも2種類の金属からなる真の混合酸化物ではなく、少なくとも2種類の元素の酸化物を含んでなる、かなり無定形の酸化物材料を意味する。
【0006】
あるいは、やはり我々の国際特許第WO2004/079167号明細書に記載されているように、モノリス基材の材料自体を、上記金属のいずれかの好適な塩の水溶液で含浸させ、得られた物体を乾燥させ、か焼することができる。無論、ウォッシュコート処理し、乾燥させたモノリス基材も、この方法を使用して含浸させることができる。
【0007】
典型的なウォール−フローフィルターは、ハニカム形状を有し、そのハニカムは、入口末端および出口末端を有し、複数のセルが入口末端から出口末端に伸びており、それらのセルは、多孔質の壁を有し、セルの全数の一部が、入口末端でそれらの長さの一部に沿って塞がれており、セルの残りの部分は、入口末端では開いているが、出口末端でそれらの長さの一部に沿って塞がれているので、入口末端からハニカムのセルを通って流れる排ガス流は、開いたセルの中に入り、セル壁を通り、出口末端にある開いたセルを通ってフィルターの外に流れる。
【0008】
CSFは、触媒系で被覆できるように、触媒作用を付与していないフィルターよりも、より高い気孔率および一般的に大きな細孔径を必要とすることが知られている。触媒/ウォッシュコート系で装填量約50g/リットル(1416g/ft)で被覆した後、許容される低い圧損を得るためには、典型的な気孔率は約45〜55%である。触媒系がNO貯蔵/還元系を含んでなる場合、通常、ウォッシュコートの装填量を大きく、場合により100g/リットル(2831g/ft)より高くする必要がある。この後者の実施態様では、フィルター基材の気孔率は、60%を超えることがある。
【0009】
ウォール−フローフィルターの細孔構造に触媒ウォッシュコートを装填する一つの方法が、ヨーロッパ特許第EP−A−0766993号明細書(ここに参考として含める)に開示されている。上記のようにハニカムモノリスの一端が交互に塞がれている。塞がれた末端は排ガス出口末端向けであり、塞がれた末端を一番上にして配置する。ウォッシュコート組成物を塞がれた末端に塗布し、ウォッシュコートは通路を下に向かって流れ、毛管作用により多孔質壁中に浸透する。この工程を促進するために、モノリスを通して減圧下で、塗料溶液を吸引することができる。得られた物体を乾燥させ、モノリスの他端を塞ぎ、上記の構造を有するウォール−フローフィルターを形成する。
【0010】
我々は、ヨーロッパ特許第EP−A−0766993号明細書の方法は、多くの理由から実用的ではないと考えている。第一に、この方法は、非常に労力がかかり、所望の製品を得るために多くの個別工程が必要である。例えば、より優れた方法なら、未処理ウォール−フローフィルター、すなわち両端がすでに塞がれているフィルター、に触媒および/またはウォッシュコートを塗布するであろう。第二に、真空の使用により、所望のウォッシュコート成分がフィルターの細孔構造中に確実に入り込むとは限らない。特に、ウォール−フローフィルターの通路壁を横切って真空を作用させることにより、ウォッシュコート成分がケーキ状に蓄積し、所望の成分がモノリスの細孔構造中に十分に浸透できなくなる場合があることを見出した。一方、ウォッシュコート成分を細孔構造中に導入するのに毛管作用に頼ることは、特に粘性の高いウォッシュコートでは、時間がかかる。
【0011】
ここで我々は、セラミックウォール−フローフィルターに触媒および/またはウォッシュコートを塗布するための、先行技術に関連する問題が軽減または回避される方法を開発した。我々の方法の重要な特徴は、予め形成されたウォール−フローフィルターに触媒作用を付与することである、すなわちヨーロッパ特許第EP−A−0766993号明細書におけるような、フィルター基材に触媒作用を付与した後の、労力のかかる末端を塞ぐ工程を必要としないことである。
【0012】
一態様により、本発明は、複数の通路を備えてなる、触媒作用を付与したセラミックウォール−フローフィルターの製造方法であって、通路壁の細孔構造中の圧力を周囲の大気圧より下げること、排気された通路壁の表面を、少なくとも一種の触媒成分またはその前駆物質を含む液体と接触させ、それによって、排気された通路壁に液体を浸透させること、および触媒成分またはその前駆物質を含むフィルターを乾燥させ、か焼することを含んでなる、方法を提供する。
【0013】
「低圧」または「減圧」の用語、は、本明細書では用語「真空」と互換的に使用する。
【0014】
本発明の利点は、通路壁の表面を接触させる前に、セラミックウォール−フローフィルターの細孔構造から空気を除去することにより、通路壁中への液体の浸透性が大きく向上することである。
【0015】
一実施態様では、排気された通路壁を、少なくとも一種の触媒成分またはその前駆物質を含む液体と接触させ、フィルターを乾燥させる工程を、か焼工程の前に少なくとも一回繰り返す。これによって、二つの処方物間にある種の非相容性、例えばpH、がある場合にも、異なった触媒成分またはその前駆物質を調製し、フィルター上に個別に装填することができる。
【0016】
特別な実施態様では、通路壁の細孔構造中における減圧を、以下に説明する理由から、液体接触工程の間維持する。
【0017】
本方法では、フィルター材料の平均細孔径、ウォッシュコートの比重、その固体含有量、粘度、等を考慮して、フィルター材料の通路壁中に浸透させるのに十分な時間、液体をフィルターと真空中で接触したままにする。これは、通常の実験により達成できるが、典型的には2秒間〜2分間、例えば5〜30秒間、のオーダーである。次いで、被覆されたフィルターを真空から解除し、公知の技術により乾燥させ、か焼する。
【0018】
本発明は、少なくとも一種のウォッシュコート成分、例えば粒子状金属酸化物から形成される、表面積を増加する触媒担体材料、を含む、典型的には水性媒体中のスラリーの形態にある液体を、フィルター基材に塗布することを意図している。ウォッシュコート成分は触媒の活性に貢献するので、表面積を増加することにより、ウォッシュコート成分は触媒成分と見なすことができる。一般的に、該または各粒子状金属酸化物材料のD50は、1〜20μmの範囲内にあり、下側の範囲にあるサイズ、例えば<15μm、あるいはさらに<5μm、が好ましい。フィルター基材中の平均細孔直径により粒子径を慎重に選択することにより、通路壁の表面における固体ウォッシュコート成分のケーキングを防止することができる。
【0019】
粒子状金属酸化物担体材料に加えて、ウォッシュコートは、少なくとも一種の金属塩の水溶液を含んでなる少なくとも一種の触媒成分前駆物質も含むことができ、その金属は、以下に記載する金属のいずれかから選択する。無論、触媒金属は、例えば初期湿潤含浸させ、次いで粉末を乾燥させ、か焼することにより担体材料上に予め形成することができ、続いて予め形成された触媒成分を水性媒体中に分散させる。当業者には公知のように、前駆物質、例えば金属の硝酸塩または酢酸塩、は、乾燥およびか焼の後に、触媒成分自体、例えば金属酸化物、に分解される。担体材料および前駆物質をウォッシュコート中で組み合わせることにより、前駆物質が主として担体材料上に分散することを意図している。
【0020】
粒子状金属酸化物成分の代わりに、またはそれに加えて、少なくとも一種の触媒成分を含む液体成分は、少なくとも一種の金属酸化物材料の、キャリヤー媒体、所望により水、中のゾルを含んでなることができる。ゾル粒子のD50は典型的には10〜500nmの範囲内にある。ゾルは、少なくとも一種の触媒成分の塩、すなわち前駆物質、も含むことができる。
【0021】
ウォッシュコート粒子状物質のサイズは、ディーゼルPM濾過に望ましい範囲の直径を有する細孔を閉塞させないように、適宜選択する。粒子状物質サイズは、公知の技術、例えば粉砕、により、調節することができる。
【0022】
触媒作用を付与したセラミックウォール−フローフィルターにおける、少なくとも一種のウォッシュコートを形成する粒子状金属酸化物触媒成分またはゾル成分の典型的な装填量は、20〜120g/リットル(566〜3398g/ft)である。当業者には公知のように、使用中にその系に作用する背圧があまり高くなり過ぎて、フィルターが、その、フィルター再生までに十分な量の煤を集める機能を果たせなくなる程度にまで、フィルターをウォッシュコート処理すべきではない。使用中に許容される背圧は、600℃で、流量600kghr−1で0.8バール(1x10Pa)までである。当業者は、ウォッシュコート装填量を適切に調節し、十分な煤を集め、この閾に達してから、フィルター再生技術を使用する系で能動的再生を開始することができる。
【0023】
あるいは、フィルターは、ゾルまたは粒子状担体スラリー形成成分の非存在下で、金属塩の水溶液を含浸させることもできる。一実施態様では、触媒前駆物質をフィルター材料自体により直接担持する。別の実施態様では、塩溶液が、ウォッシュコート実施態様における粒子状担体材料として一般的に使用される金属のいずれかの可溶性塩、例えばアルミニウム、セリウムおよび/またはジルコニウムの塩、を含むことができ、その際、触媒金属は、乾燥およびか焼の後、担体材料の酸化物によって担持することもできる。
【0024】
少なくとも一種の触媒成分またはその前駆物質は、アルミニウム、セリウム、ジルコニウム、チタンまたはケイ素またはそれらのいずれか2種類以上の混合物、もしくは複合酸化物を含んでなることができる。セリア(酸化セリウム)は、特定の排ガス成分の酸化に触媒作用することが知られており、その塩は、触媒前駆物質と見なすことができる。同様に、セリアを含む混合酸化物および複合酸化物、例えばセリア−ジルコニア、は、それ自体触媒作用するが、特性、例えば熱的安定性、が改良されていることも公知である。
【0025】
本発明に使用する液体の金属塩成分は、所望により白金、パラジウム、ロジウム、オスミウムおよびイリジウムからなる群から選択された、少なくとも一種の白金族金属、所望により銅、鉄、バナジウム、モリブデン、タングステンおよびセリウムからなる群から選択された、少なくとも一種の卑金属、および/またはアルカリ金属、アルカリ土類金属および希土類金属からなる群から選択された塩基性金属を含んでなることができる。さらに、触媒成分は、上記の序論で記載した物質のどれでも含むことができる。
【0026】
無論、所望によりTiO上に担持されたバナジウム化合物、例えばV、およびゼオライト、例えばゼオライトベータまたはZSM−5、上に担持された鉄は、還元剤、例えばアンモニア、の存在下でリーン排ガス中にあるNOの還元に触媒作用するのに活性であり、本発明は、そのようなSCR触媒を含むフィルターに触媒作用を付与することも意図している。
【0027】
本発明は、酸化触媒、例えばPt、およびアルカリ金属、例えばカリウムまたはセシウム、の少なくとも一種の化合物、少なくとも一種のアルカリ土類金属、例えばバリウム、ストロンチウム、カルシウムまたはマグネシウム、典型的にはバリウム、の化合物、または少なくとも一種の希土類金属、例えばイットリウムまたはランタン、の化合物を含んでなるフィルター上に、NO吸収性ウォッシュコートを塗布することも意図している。リーン排ガスからNOを吸収する触媒は、例えばヨーロッパ特許第EP−A−0560991号明細書(ここに参考として含める)から公知である。典型的には酸化物として存在するので、使用中、これらの化合物は、水酸化物、硝酸塩または炭酸塩の形態を取ることができる。
【0028】
本発明で使用するのに好適なフィルターモノリス材料は、圧損が比較的低く、濾過効率が比較的高い。当業者には公知のように、気孔率と機械的強度との間には妥協すべき点があり、細孔径が小さく、気孔率が低い基材は、気孔率が高い基材よりも、強度が高い。熱的特性、つまり熱容量および熱伝導率の両方、は、気孔率が増加すると、低下する。しかし、本発明のフィルターは、例えば約50g/リットル(1416g/ft)の触媒および所望によりウォッシュコートを担持することを意図しているので、好適なフィルター材料は、典型的には気孔率が、約100g/リットル(2832g/ft)までの高いウォッシュコート装填量でNO貯蔵成分を含んでなるフィルターには、45〜55%、さらには60%以上である。そのような材料の望ましい特徴は、良好な細孔の相互接続性を有し、閉鎖された、または「行き止まり」になった細孔ができるだけ少ないことである。好適な平均細孔直径は、5〜40μm、例えば8〜25μm、例えば15〜20μmである。本明細書で記載する気孔率値は、水銀細孔測定法または電子顕微鏡法により測定できる。
【0029】
典型的には、フィルター材料は、セラミック材料を含んでなり、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、チタン酸アルミニウム、焼結された金属、アルミナ、コージーライト、ムライト、ポリューサイト(例えば国際特許第WO02/38513号明細書(ここに参考として含める)参照)、サーメット(thermet)、例えばAl/Fe、Al/NiまたはBC/Fe、またはそれらの2種類以上の成分を含んでなる複合材料、の少なくとも一種を含んでなる。
【0030】
本発明のフィルターを製造するのに好ましい材料は、コージーライト(ケイ酸マグネシウムアルミニウム)、炭化ケイ素およびチタン酸アルミニウムである。概算化学量論量MgAlSi18を有する好適なコージーライト型材料は、国際特許第WO01/91882号明細書(ここに参考として含める)および国際特許第WO2004/002508号明細書(ここに参考として含める)に開示されているが、代替品、例えばアルミノケイ酸リチウムセラミック、も、必要な特性を有していれば、使用できる。コージーライト型材料は、一般的に熱膨脹率(CTE)が低く、弾性率(E)が低いのが特徴である。
【0031】
本発明で使用するチタン酸アルミニウム材料は、国際特許第WO2004/011124号明細書(ここに参考として含める)に記載されているチタン酸鉄−アルミニウム固溶体60〜90%およびムライト10〜40%、または国際特許第WO03/078352号明細書(ここに参考として含める)に開示されているストロンチウム長石チタン酸アルミニウムを包含することができる。
【0032】
一般的なセル幾何学的構造には、100/17、すなわち1平方インチあたり100セル(cpsi)(31セルcm−2)および壁厚0.017インチ(0.43mm)、200/12(62セルcm−2/0.30mm)、200/14(62セルcm−2/0.36mm)、200/19(62セルcm−2/0.48mm)および300/12(93セルcm−2/0.30mm)が挙げられる。例えば、200/19構造は、機械的により堅牢で、かさ体積熱容量がより高いフィルターを与える。従って、本発明で使用するセル密度は、50〜600cpsi(15.5セルcm−2〜186セルcm−2)でよい。
【0033】
別の態様で、本発明は、先行する請求項のいずれかによる方法で使用するための装置であって、セラミックウォール−フローフィルターの複数の通路を周囲の大気から密封して隔離するための手段、隔離された通路中の圧力を周囲の大気圧未満に下げ、それによって、フィルター壁の細孔構造中に真空を確立するための手段、少なくとも一種の触媒成分またはその前駆物質を含む液体を保持するための、少なくとも一個の貯蔵部、および隔離され、排気された通路に予め決められた量の液体を供給するための手段を備えてなる、装置を提供する。
【0034】
第一の実施態様で、本装置は、セラミックウォール−フローフィルターを受け入れるための、密封できる閉鎖部を有する加圧可能な容器を備えてなる。第二の実施態様で、本装置は、セラミックウォール−フローフィルターの第一末端を受け入れるための第一密封部材、およびフィルターの第二末端を受け入れるための第二密封部材を備えてなり、その際、減圧手段が第一および/または第二部材と関連し、供給手段が第一または第二密封部材と関連する。第二実施態様の特別な実施態様では、供給手段が第一密封(またはベース)部材と関連し、減圧手段が第二密封部材と関連する。セラミックウォール−フローフィルターの「外皮」の気孔率に応じて、その外皮を、実質的に不透過性材料から製造されたたわみ性ウェブの中に入れ、通路壁中の真空損失を下げる、および/または減圧手段によるエネルギー消費を下げる必要がある場合がある。そのような密封ウェブは、例えば自動化された装置ではロボットアームのジョーの上に配置されたパッドにより与えることができる。
【0035】
本発明の装置の特別な実施態様では、液体を供給している間、隔離された通路内の減圧を周囲の大気圧未満に維持するための手段を備える。フィルターが容器中に配置され、容器中を真空にしている場合、液体を大気圧から容器の中に導入する時に、フィルター材料中に、従って、フィルター材料自体に、ある程度の真空損失が生じる。そのような真空損失を補償するために、所望の真空を超えて容器を減圧しておき、液体の導入により引き起こされる真空損失により、真空が、フィルター媒体中への液体の浸透を促進するのに望ましい真空に低下するようにすることも本発明の範囲内である。
【0036】
しかし、フィルター基材の過度の減圧は、特に気孔率の高い材料では、基材にストレスを引き起こし、部品の破損につながることがあるので、行わないのが望ましい場合もある。従って、特別な実施態様では、液体媒体を容器に導入した後で容器中の真空が所望のレベルに戻るように、本装置を設定する。
【0037】
本装置は、隔離された通路中の圧力を下げる手段および液体を供給する手段の両方を制御する手段を備えてなり、少なくとも半自動化することができる。
【0038】
本発明で使用する典型的な真空圧は、66.7〜93.3kPa(500〜700mmHg)である。本発明の一態様では、フィルター全体を真空中に「浸す」。これによって、例えばヨーロッパ特許第EP−A−766993号明細書に開示されている方法におけるように、通路壁の表面におけるウォッシュコート成分のケーキングが阻止される。
【0039】
本発明をより深く理解するために、以下に本発明の装置の具体的な実施態様および例を、例示のためにのみ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0040】
図1は、本発明の触媒作用を付与したセラミックウォール−フローフィルターの製造に使用する、セラミックウォール−フローフィルター140(破線で示す)を受け入れるための、密封可能な閉鎖部130を備えた加圧可能な容器120を備えてなる装置100を示す。容器120の第一末端150は、加圧可能なライン180を経由して真空ポンプ16に接続されている。使用の際、バルブ200を開くことにより、容器120が減圧される。真空ポンプ160およびバルブ200の両方がCPU220により制御され、電気的接続部230によりCPUに接続されている。容器の第二末端またはベース末端240は、ライン280を経由して、少なくとも一種の触媒成分またはその前駆物質を含む液体を保持するための貯蔵部260に接続されている。それぞれやはりCPU220により制御されるバルブ300およびポンプ310が、組合せで、予め決められた量の液体を隔離され、排気された通路に供給するための手段を与える。貯蔵部260中のレベル検知手段(図には示していない)もCPU220に接続し、貯蔵部中の液体媒体の量が予め決められたレベルより下に減少した時に警告を示すか、または警報を発する。CPU220は、混合手段(図には示していない)を制御し、貯蔵部260中の液体媒体の混合を調整することもできる。例えば、ウォッシュコート中の粒子状成分の最適分散を確保するために、混合を連続的に行い、供給前に混合速度を増加するか、または供給前に混合を開始し、供給工程の間にスイッチを切ることができる。
【0041】
使用の際、加圧可能な容器の第一末端150を第二またはベース末端240から取り外し、密封可能な閉鎖部130の密封を解除する。密封可能な閉鎖部130は、容器の第一末端150および第二末端240の上に噛み合わせ手段(図には示していない)および所望により膨脹可能なo−リングまたはゴム、例えば合成ゴム重合体、製のガスケットを備えてなることができる。セラミックウォール−フローフィルター140を容器120のベース末端の内側に配置し、第一末端を再配置し、容器120を密封閉鎖する。CPU220により制御される真空ポンプ160およびバルブ200を使用し、センサー320からCPU220へのフィードバックにより、容器220およびフィルター140中に予め決められた減圧を達成する。次に、CPU220が、貯蔵部260の中にある液体ウォッシュコート組成物の混合を開始し、CPU220により制御されるポンプ310およびバルブ300を使用して予め決められた量の液体を減圧された容器240の中に導入し、それによって、液体がセラミックウォール−フローフィルター140の通路壁の表面と接触する。フィルター材料の細孔構造は排気されているので、液体成分は通路の壁に浸透する。CPU220は、センサー320により容器240中で検出された圧力に応答してポンプ160およびバルブ200を制御し、容器240中の真空を増加し、通路壁中への液体成分の浸透に影響を及ぼすことがある、液体成分を供給する際の真空損失を補償する。
【0042】

直径5.66インチ(14.38cm)、長さ6.00インチ(15.24cm)、300cpsi(46.5セルcm−2)、壁厚12/1000インチ(0.3mm)、容積2.47リットルのSiCディーゼル粒子状物質フィルター(DPF)を、可溶性白金族金属(PGM)塩および有機還元剤を含むアルミナ系ウォッシュコートスラリー(乾燥固体含有量25%)650gで被覆した。
【0043】
被覆工程は、入口および出口バルブを備えた、密封可能で加圧可能なステンレス鋼製の円筒形容器(適合する家庭用圧力調理器)中で行った。DPFを先ず容器中に入れ、容器を閉鎖し、次いで出口バルブに取り付けた真空ポンプにより空気を除去し、容器の内側を周囲の大気圧に対して減圧にした。次いで、ウォッシュコートスラリーの貯蔵部を容器の入口バルブに接続し、入口バルブを開いてウォッシュコートを容器の中に導入した。DPFを被覆スラリーと5〜30秒間接触させ、容器中の圧力が大気条件に戻ってから、被覆されたDPFを取り出した。
【0044】
ウォッシュコートは、圧縮空気で安定化させ、次いで循環空気流下、90℃で1時間乾燥させた。次いで、乾燥したDPFを500℃で1時間か焼した。
【0045】
ヨーロッパ特許第EP−A−0766993号明細書に記載されている方法を使用し、上記と同じウォッシュコートを使用して同等のSiCウォール−フローフィルターを製造した。
【0046】
各DPFの樹脂取り付けた試料を使用し、走査電子顕微鏡の後方散乱画像により、それぞれの被覆されたDPFの断面を検査し、ウォッシュコートの触媒成分に関する被覆位置を確認した。図2は、ヨーロッパ特許第EP−A−0766993号明細書に記載されている方法に対する被覆分布を示し、図3は、本発明の実施態様に記載されている方法を使用して得た分布を示す。これらの画像で、触媒成分(10)は白色粒子として表され、基材(12)および樹脂取り付け材料(14)のより黒い粒子とコントラストを示している。図2では、被覆が、図3における分散と比較して、フィルターの壁全体にわたってより不均質に分散し、フィルターセルの縁部および角部で僅かに知覚し易く、通路壁の表面におけるウォッシュコート成分のケーキングを示唆していることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、本発明の一実施態様による装置を図式的に示す。
【図2】図2は、ヨーロッパ特許第EP−A−0766993号明細書に記載されている方法に関する被覆配分を示す、走査電子顕微鏡(SEM)で撮影した、触媒作用を付与したDPFの、樹脂に取り付けた試料の後方散乱画像である。
【図3】図3は、本実施態様で説明する方法を使用して得た、触媒作用を付与したDPFの、樹脂に取り付けた試料の類似のSEM画像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の通路を備えてなる、触媒作用を付与したセラミックウォール−フローフィルターの製造方法であって、
前記通路壁の細孔構造中の圧力を周囲の大気圧より下げ、
前記排気された通路壁の表面を、少なくとも一種の触媒成分またはその前駆物質を含む液体と接触させ、それによって、前記排気された通路壁に前記液体を浸透させ、及び、
前記触媒成分またはその前駆物質を含む前記フィルターを乾燥させ、か焼することを含んでなる、方法。
【請求項2】
前記排気された通路壁を、少なくとも一種の触媒成分またはその前駆物質を含む液体と接触させる工程と、前記フィルターを乾燥させる工程を、か焼工程の前に少なくとも一回繰り返す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記通路壁の前記細孔構造中における前記減圧を、前記液体接触工程の間維持する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも一種の触媒成分前駆物質を含む前記液体が、少なくとも一種の金属塩の水溶液を含んでなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも一種の触媒成分を含む前記液体が、少なくとも一種の粒子状金属酸化物材料をキャリヤー媒体、所望により水中に含むスラリーを含んでなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記または各粒子状金属酸化物材料のD50が、1〜20μmの範囲内にある、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも一種の触媒成分を含む前記液体が、少なくとも一種の金属酸化物材料をキャリヤー媒体、所望により水中に含むゾルを含んでなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ゾル粒子のD50が、10〜500nmの範囲内にある、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも一種の触媒成分またはその前駆物質が、アルミニウム、セリウム、ジルコニウム、チタンまたはケイ素またはそれらのいずれか2種類以上の混合酸化物、もしくは複合酸化物を含んでなる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記触媒作用を付与したセラミックウォール−フローフィルターにおける前記少なくとも一種の触媒成分の装填量が、20〜120g/リットル(566〜3398g/ft)である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも一種の触媒成分またはその前駆物質が、所望により白金、パラジウム、ロジウム、オスミウムおよびイリジウムからなる群から選択された、少なくとも一種の白金族金属を含んでなる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも一種の触媒成分またはその前駆物質が、所望により銅、鉄、バナジウム、モリブデン、タングステンおよびセリウムからなる群から選択された、少なくとも一種の卑金属を含んでなる、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記触媒成分またはその前駆物質が、アルカリ金属、アルカリ土類金属および希土類金属からなる群から選択された塩基性金属を含んでなる、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
個々の又は全ての白金族金属装填量、個々の又は全ての卑金属装填量、或いは個々の又は全ての塩基性金属装填量が、25〜200g/ft、所望により50〜150g/ftである、請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記セラミックフィルターを製造する材料が、ケイ素、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、チタン酸アルミニウム、アルミナ、コージーライト、ムライト、ポリューサイトおよびサーメット、例えばAl/Fe、Al/NiまたはBC/Feからなる群から選択される、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
未処理フィルター材料の気孔率が40〜60%である、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記フィルターのセル密度が、1平方インチあたり50〜600セル(cpsi(15.5セルcm−2〜186.0セルcm−2))である、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法で使用する装置(100)であって、
セラミックウォール−フローフィルター(140)の複数の通路を周囲の大気から密封して隔離するための手段(120)と、
前記隔離された通路中の圧力を周囲の大気圧未満に下げ、それによって、前記フィルター壁の細孔構造中に真空を確立するための手段(160、200、220)と、
少なくとも一種の触媒成分またはその前駆物質を含む液体を保持するための、少なくとも一個の貯蔵部(260)と、及び
前記隔離され、排気された通路に予め決められた量の液体を供給するための手段(310、300、220)を備えてなる、装置。
【請求項19】
セラミックウォール−フローフィルター(140)を受け入れるための、密封できる閉鎖部(130)を有する加圧可能な容器(120)を備えてなる、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記液体を供給している間、前記隔離された通路内の減圧を周囲の大気圧未満に維持するための手段(160、200、220)を備えてなる、請求項18または19に記載の装置。
【請求項21】
前記隔離された通路中の圧力を下げる手段および前記液体を供給する手段の両方を制御する手段(220、230)を備えてなり、少なくとも半自動化されている、請求項18〜20のいずれか一項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−526827(P2007−526827A)
【公表日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−501358(P2007−501358)
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【国際出願番号】PCT/GB2005/000870
【国際公開番号】WO2005/084806
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(590004718)ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー (152)
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】