説明

触媒反応器及び触媒オキシクロリネーション反応方法

【課題】パラフィンおよびオレフィンの炭化水素のオキシクロリネーション反応が燃焼反応を最小にし、塩素化された化合物の歩留まりを高めることができる改善された反応器の提供。
【解決手段】第1の原料流は、メタンまたはエチレンのようなパラフィンまたはオレフィンの炭化水素を含み、第2の原料流は、酸素および水素の塩化物を含み、これら原料流をそれぞれ連続して反応器に導入可能な制御ができる複数の入口から供給するスイング反応器10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
2つ以上の反応物の原料流を連続的に供給する触媒オキシクロリネーション反応(oxychlorination:酸素化塩素化反応)方法を提供する。1つの原料流は、パラフィンまたはオレフィンの炭化水素を含み、第2の原料流は、酸素および水素の塩化物を含む。これら2つの原料流は、オキシクロリネーション触媒を含む反応器に供給され、その製品は、塩素化された成分および水からなる。
【背景技術】
【0002】
炭化水素をオキシクロリネーション反応させる数多くの試みがなされてきたが、その結果は期待に応えるものではなかった。例えば、メタンが適切な触媒の下で酸素および水素の塩化物を反応すると、塩化メチルと高級の塩素化されたメタンの合成物が生成される。不運にも、これらの反応条件の下では、メタンのかなりの量が取り除かれて、一酸化炭素および二酸化炭素となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この困難を克服するために、種々の研究が試行されてきた。1つの方法は、燃焼をなくすか、あるいは少なくとも低減する改良された触媒を特定することであった。他の方法は、反応器の構造に着目することにあった。例えば、より良い温度制御を与え、製品の高い歩留まりを推定的に与えるために、流動床反応器が繰り返し研究されてきた。
これらの思惑における成功は、排他的であることが分かっている。従って、本発明の目的は、パラフィンおよびオレフィンの炭化水素のオキシクロリネーション反応用の改善された反応器の構造を提供することにある。この目的とともに他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および含まれている図面から明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、パラフィンおよびオレフィンの炭化水素のオキシクロリネーション反応に用いられるスイング供給による反応器および運転方法を提供する。反応物の複数の原料流は、オキシクロリネーション触媒を含む反応器に連続して供給される。原料流の制御は、操作バルブによって実現される。
パラフィンの炭化水素は、メタン、プロパン、ブタンエタン、または他の有利なアルカンとすることができる。オレフィンの炭化水素は、メチレン、エチレン、または他のものとすることができる。これらの化合物は、塩化水素と酸素または空気とを反応させることができる。製品は、モノ置換またはポリ置換された塩素化炭化水素を含む。
【0005】
用いられた触媒は、銅、鉄、および希土類元素の塩を含む。また、その活性化を増大させるために、触媒にアルカリ金属の塩化物を加えることもできる。これらの触媒成分は、気相との接触に親和性を与えるために、不活性担体上に付着させる。
本発明の他の適用は、本発明を実施することを意図した以下の最良の形態の説明を添付した図面と共に読めば、当業者に明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0006】
以下の詳細な説明は添付された図面を参照する。同じ参照符号は、幾つかの図面を通して同じ部品である。
【図1a】2つの原料流が用いられる場合のスイング反応器の概略図である。
【図1b】2つの原料流が用いられる場合のスイング反応器の概略図である。
【図2a】3つの原料流の概略図である。
【図2b】3つの原料流の概略図である。
【図2c】3つの原料流の概略図である。
【図3a】2つの流出流を有するスイング反応器の図である。
【図3b】2つの流出流を有するスイング反応器の図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
従来技術においては、炭化水素のオキシクロリネーション反応は、触媒反応器に単一の原料流を供給することによって行われる。このような単一の原料流は、均一の成分を有し、所定のパラフィン、塩化水素、および酸素を含み、これらは全て親密に一緒に混合されている。
一般的な慣行に反して、本発明は、酸素含有流から炭化水素供給を分離することを意図している。この特徴は、燃焼を抑制するために重要である。この分離は、分離流内の反応物を反応器に連続的に供給することによって実現される。
【0008】
従って、目標がメチレンまたはエチレンを塩素化することにある特定の場合は、第1の原料流は酸素を含み、触媒を再生するために塩化水素が反応器に供給される。所定時間の後、この原料流は止められ、メタンまたはエチレンの原料流が反応器に供給される。いったん触媒が利用可能な塩素を使い果たすと、メタンまたはエチレンのシステムは停止し、このサイクルが繰り返される。
【0009】
この連続したイベントの間に行われる化学作用は、以下の化学反応式によって示される。
(1) 2CuCl+2HCl+0.5O→2CuCl+H
ここで、CuClは塩化第1銅であり、HClは塩化水素であり、Oは酸素であり、CuClは塩化第2銅であり、HOは水である。
(2) CH+2CuCl→CHCl+HCl+2CuCl
ここで、CHはメタンであり、CHClは塩化メチルである。
触媒の再生は、反応式(1)に示され、メタンの塩素化の間の触媒の消耗は、反応式(2)に示される。
【0010】
エチレンの化学作用は次の反応式によって示される。
(3) 2CuCl+2HCl+0.5O→2CuCl+H
(4) C+2CuCl→CCl+2CuCl
反応式(4)において、Cはエチレンであり、CClは2塩化エチレンである。反応式(1)および反応式(3)は、同じであることに注意されたい。
触媒は、銅の他、他の活性構成成分を含むが、化学作用は同じである。例えば、触媒の融点を抑制する目的で塩化物のイオンが含まれる。これに関しては、塩化カリウムが特に有効である。
【0011】
反応温度は、アルカンの不活性を克服するほど十分高くしなければならない。450℃の近くでは、反応速度は好適であるが、これらの温度では、アルカンは燃焼される。従って、本発明の提供は非常に重要である。
スイング反応器の実際の働きを図1に示す。まず、図1aに示すように、反応器10に酸素および水素の塩化物を含む原料流を与えるようにバルブ20が設定される。その後、バルブ20を回すことによって、酸素/水素の塩化物の原料流を入れないようにして、図1bに示すように、メタンの原料流が反応器に供給される。
【0012】
理想状態の下では、酸素含有の原料流とメタンの原料流との混合はない。このような結果は、栓流によって実現され、この状態は、最小のデッドスペースを含ませるように反応器10を設計することによって、また、触媒床における逆混合(back mixing)を最小にすることによって達成できる。
図2a、2b、および2cは、炭化水素と酸素の原料流が完全に分離されている代替方法を示す。この反応器は、3つの原料流を用いることによって機能する。図2cは、メタン(またはエチレン)の原料流、図2aは酸素含有の原料流、図2bは塩化水素の原料流である。2つのバルブ20a、20bが必要とされる。図2a、2b、および2cには、異なる動作モードが示される。動作の完全なサイクルは、以下の原料流、すなわち、酸素、塩化水素、メタン、塩化水素の連続を含む。その後、この連続が繰り返される。
【0013】
オキシクロリネーション方法においては、過多の炭化水素の原料流は、製品歩留まりを調整するために用いられることがある。これらのプロセスにおいて、未反応の炭化水素は回収され、原料流に再利用される。このような手順は、スイング反応器内に、図3aおよび3bに示す2つの流出流を与えることによって適合できる。
入力バルブ20は、図1aおよび1bについて上述したように動作する。言うまでもなく、空気は酸素と共に窒素を含み、その結果、反応器10への流入物は、基本的には同じである。出力バルブ22が追加される。一方の流出流は、水と窒素であり、他方は、バルブの位置に依存してCHClおよびHClである。
【0014】
スイング反応器の動力学は、触媒の相対量と流速とに依存する。サイクル回数は、以下の等式によって表わすことができる。
(5) f=S/M
ここで、fは1秒あたりのサイクル回数、Sは1秒あたりの塩化水素のモル数における流速、およびMは触媒内の塩化銅のモル数である。
上式から幾つかの興味ある結論を引き出すことができる。回数が増えることによって、所定の流速に対して触媒の量を少なくすることができる。あるいは、触媒定数を保ちながら、その回数を増やすことによって流速を大きくすることができる。
【0015】
本発明は、パラフィンおよびオレフィンの炭化水素のオキシクロリネーションの際の燃焼反応を軽減および可能ならば除去する有効な手段を示す。この結果は、製品の歩留まりを高め、回収方法を簡略化し、および資本投資を低くする。スイング反応器によって与えられる柔軟性は、オキシクロリネーション化学における利点を拡大するものである。
本発明は、現在最も実用的で好適な具体例と考えられるものに関連して説明してきたが、本発明は、開示された具体例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨および範囲に含まれる種々の改良および均等の装置を含むことを意図し、この範囲は法の下で許容される改良および均等の構造の全てを包含するように幅広く解釈されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラフィンまたはオレフィンの炭化水素よりなるオキシクロリネーション反応(oxychlorination)用の触媒反応器であって、前記触媒反応器は、炭化水素およびオキシクロリネーション反応物の原料流を前記触媒反応器に連続して導入可能な制御を有する複数の入口を備えている、触媒反応器。
【請求項2】
請求項1の触媒反応器において、前記触媒反応器は、製品流を連続して異なる位置に転向可能な制御を有する複数の出口を備えている、触媒反応器。
【請求項3】
請求項1の触媒反応器において、前記パラフィンの炭化水素は、メタンまたはメチレンである、触媒反応器。
【請求項4】
請求項1の触媒反応器において、前記パラフィンの炭化水素は、エタンまたはエチレンである、触媒反応器。
【請求項5】
請求項1の触媒反応器において、前記パラフィンの炭化水素は、プロパンである、触媒反応器。
【請求項6】
請求項1の触媒反応器において、前記触媒反応器は銅塩を含む触媒を含む、触媒反応器。
【請求項7】
パラフィンまたはオレフィンの炭化水素よりなる触媒オキシクロリネーション反応(酸素化塩素化反応)の方法であって、前記方法は、
(a)オキシクロリネーション触媒を含む反応器に酸素を供給するステップと、
(b)前記反応器にパラフィンまたはオレフィンの炭化水素を供給するステップと、
を連続して行い、前記炭化水素はアルカンである、触媒オキシクロリネーション反応方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、前記アルカンは、メタン、プロパン、ブタン、メチレン、およびエチレンのうちの1つである、触媒オキシクロリネーション反応方法。
【請求項9】
請求項7に記載の方法であって、前記触媒は、銅、鉄、および希土類元素の塩からなる群から選択される、触媒オキシクロリネーション反応方法。
【請求項10】
炭化水素のオキシクロリネーション反応用の触媒反応器であって、
オキシクロリネーション触媒を含む反応器と、
前記反応器に炭化水素を導入する手段と、
前記反応器に酸素を個々にかつ連続的に導入する手段と、
を含む、触媒反応器。
【請求項11】
請求項1に記載の触媒反応器であって、前記導入する手段は、多位置バルブ(multi−position valve)を含む、触媒反応器。
【請求項12】
エチレンのオキシクロリネーション反応用の触媒反応器であって、前記触媒反応器は、前記エチレンおよびオキシクロリネーション反応物の原料流を前記反応器に連続的に導入可能な制御を有する複数の入口を備えている、触媒反応器。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3a】
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【図3b】
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【公開番号】特開2011−219390(P2011−219390A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87996(P2010−87996)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(508000179)
【氏名又は名称原語表記】STAUFFER,John,E.
【Fターム(参考)】