説明

触媒回収システム、炭化水素合成反応装置、および炭化水素合成反応システム、並びに触媒回収方法

【課題】簡素化、小型化を図るとともに、効率良く触媒粒子の回収作業を行うことが可能で、かつ排出された触媒粒子の酸化を抑制すること。
【解決手段】反応器本体30から抜き出されたスラリーを濃縮して濃縮スラリーを連続的に生成する濃縮スラリー生成部82と、濃縮スラリー生成部82から濃縮スラリーを排出する第1排出部84と、濃縮スラリー生成部82から排出された濃縮スラリーを冷却し、該濃縮スラリー中の媒体液を凝固させて凝固スラリーを生成する凝固スラリー生成部91と、凝固スラリー生成部91から凝固スラリーを回収する回収機構92と、を備えている触媒回収システム80を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒回収システム、炭化水素合成反応装置、および炭化水素合成反応システム、並びに触媒回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、天然ガスから液体燃料を合成するための方法の一つとして、天然ガスを改質して一酸化炭素ガス(CO)と水素ガス(H)とを主成分とする合成ガスを生成し、この合成ガスを原料ガスとしてフィッシャー・トロプシュ合成反応(以下、「FT合成反応」という。)により触媒を用いて炭化水素を合成し、さらにこの炭化水素を水素化・精製することで、ナフサ(粗ガソリン)、灯油、軽油、ワックス等の液体燃料製品を製造するGTL(Gas To Liquids:液体燃料合成)技術が開発されている。
このGTL技術に用いられる炭化水素合成反応装置では、媒体液(例えば、液体の炭化水素など)中に固体の触媒粒子(例えば、コバルト触媒など)を懸濁させてなるスラリーが収容された反応器本体の内部で、合成ガス中の一酸化炭素ガスと水素ガスとをFT合成反応させることで炭化水素を合成する。
【0003】
ここで近年、FT合成反応の過程で生じる反応による熱、流路の内壁との摩擦、またはそれ以外の外部要因等により劣化した触媒粒子をスラリーから分離・回収するために様々な触媒回収システムが検討されている。
この種の触媒回収システムとして、例えば下記特許文献1に示すような構成が知られている。この触媒回収システムは、スラリーを反応器本体から抜き出すための第1の流路と、抜き出したスラリーを貯留する貯留タンクと、貯留タンクのスラリーを処理するための第2の流路と、第2の流路の上流側から下流側に向けて設けられた複数のフィルタと、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2010−038400号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の触媒回収システムでは、貯留タンクに一旦、貯留されたスラリーからフィルタにより触媒粒子を分離するものであるため、貯留タンクおよび貯留タンク外に配設されたフィルタが必須となり、触媒回収システムが複雑化、大型化してしまうという問題があった。
また、スラリーから分離された触媒粒子を排出するときには、フィルタによって濾過され固形物となった状態の触媒粒子を排出するため、フィルタによるスラリーの濾過を停止する必要があるとともに人手による操作、作業が多く、効率が悪いという問題もあった。
さらに、固形物となった状態の触媒粒子を排出するときに、触媒粒子が酸化により発熱し易く、排出した触媒粒子を処理し難いという問題もあった。
【0006】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、簡素化、小型化を図るとともに、効率良く触媒粒子の回収作業を行うことが可能で、かつ排出された触媒粒子の酸化を抑制することができる触媒回収システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る触媒回収システムは、反応器本体に収容されたスラリーから、該スラリーに含まれる触媒粒子を回収する触媒回収システムであって、前記反応器本体から抜き出された前記スラリーを濃縮して濃縮スラリーを連続的に生成する濃縮スラリー生成部と、前記濃縮スラリー生成部から前記濃縮スラリーを排出する第1排出部と、前記濃縮スラリー生成部から排出された前記濃縮スラリーを冷却し、該濃縮スラリー中の媒体液を凝固させて凝固スラリーを生成する凝固スラリー生成部と、前記凝固スラリー生成部から前記凝固スラリーを回収する回収機構と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る触媒回収方法は、反応器本体に収容されたスラリーから、該スラリーに含まれる触媒粒子を回収する触媒回収方法であって、前記反応器本体から抜き出された前記スラリーを濃縮して濃縮スラリーを連続的に生成する濃縮スラリー生成工程と、前記濃縮スラリーを冷却し、該濃縮スラリー中の媒体液を凝固させて凝固スラリーを生成する凝固スラリー生成工程と、前記凝固スラリーを回収する回収工程と、を有することを特徴とする。
【0009】
これらの発明では、濃縮スラリー生成部によって、反応器本体から抜き出されたスラリーを濃縮して濃縮スラリーを連続的に生成し、第1排出部によって、濃縮スラリー生成部から濃縮スラリーを排出する。その後、凝固スラリー生成部によって媒体液を凝固させて凝固スラリーを生成した後、回収機構によって凝固スラリーを回収する。この凝固スラリーでは、触媒粒子の表面が、凝固した媒体液でコーティングされることとなる。
【0010】
以上により、反応器本体から抜き出されたスラリーから、触媒粒子を含む濃縮スラリーを分離・回収することで、スラリーから触媒粒子を分離・回収することができる。
ここで濃縮スラリー生成部が、濃縮スラリーを連続的に生成するので、反応器本体からスラリーを抜き出すのを止めずに、スラリーを抜き出し続けながら濃縮スラリーを生成し続け、スラリーから触媒粒子を分離することができる。これにより、前記従来技術のように、貯留タンクに一端、スラリーを貯留しなくても、スラリーから触媒粒子を分離することが可能になり、この触媒回収システムが、貯留タンクおよび貯留タンク外のフィルタを備えた構成でなくても良く、触媒回収システムの簡素化、小型化を図ることができる。
また第1排出部が、固形状の触媒粒子に比べて流動性が高い濃縮スラリーを排出するので、排出作業を簡便化することが可能になる。これにより、スラリーから触媒粒子を効率良く分離させることができる。
さらに回収機構において、濃縮スラリーが凝固スラリーとして回収され、触媒粒子の表面が、凝固した媒体液でコーティングされているので、排出された触媒粒子と空気との接触を抑えることが可能になり、触媒粒子の酸化を抑制することができる。
【0011】
また、本発明に係る触媒回収システムでは、前記濃縮スラリー生成部は沈降分離槽を備え、前記沈降分離槽内の前記スラリーは、前記触媒粒子が前記媒体液の下部に沈降することにより濃縮され、前記濃縮スラリーと、該濃縮スラリーと比較して触媒粒子含有量の少ない清澄スラリーと、に分離されてもよい。
【0012】
この場合、濃縮スラリー生成部が前記沈降分離槽を備えているので、沈降分離によって濃縮スラリーを連続的に生成することが可能になり、触媒回収システムの更なる簡素化を図ることができる。
【0013】
また、本発明に係る触媒回収システムでは、前記沈降分離槽は、前記スラリーが供給される供給口と、前記第1排出部が接続された排出口と、前記清澄スラリーが導出される導出口と、を備え、前記沈降分離槽内には、前記沈降分離槽内を、前記供給口および前記排出口が開口するとともに下側に位置する下室と、前記導出口が開口するとともに上側に位置する上室と、に区画する区画壁と、前記区画壁に貫設され、前記下室と前記上室とを連通する連通路と、が設けられていてもよい。
【0014】
この場合、供給口から下室内にスラリーが供給されると、スラリー中の触媒粒子が沈降し、スラリーが下室内で濃縮スラリーと清澄スラリーとに分離される。これらのうち、濃縮スラリーは、第1排出部によって排出口から排出される。一方、清澄スラリーは、供給口からスラリーが供給されることで下室内から押し出され、連通路および上室内を通って導出口から導出される。
以上のように、沈降分離槽内に前記区画壁と前記連通路が設けられていることから、濃縮スラリーを沈降分離槽内から排出しつつ、清澄スラリーを沈降分離槽内から導出することができる。
【0015】
また、本発明に係る触媒回収システムでは、前記区画壁は、前記供給口から前記沈降分離槽の中心軸に向かう方向に下方に傾斜していてもよい。
【0016】
この場合、区画壁が、供給口から沈降分離槽の中心軸に向かう方向に下方に傾斜しているので、供給口から下室内に供給されたスラリーの流動方向を、下方に向けて変化させることができる。これにより、スラリー中の触媒粒子を効果的に沈降させることができる。
【0017】
また、本発明に係る触媒回収システムでは、前記沈降分離槽内には、前記供給口から前記沈降分離槽の中心軸に向かう方向に下方に傾斜する傾斜壁が、前記区画壁よりも下方に、前記区画壁との間に隙間をあけて配設され、前記傾斜壁の傾斜角度は、前記触媒粒子の安息角以上であってもよい。
【0018】
この場合、供給口から供給されたスラリーは、流動方向が区画壁によって下方に向けて変化させられて、区画壁と傾斜壁との間の隙間を下方に向けて流動する。このとき、スラリー中の触媒粒子の少なくとも一部は、傾斜壁上に沈降する。ここで傾斜壁の傾斜角度が、触媒粒子の安息角以上となっているので、傾斜壁上に沈降した触媒粒子は、傾斜壁に沿って円滑に沈降し続けることとなる。
このように、傾斜壁の傾斜角度が、触媒粒子の安息角以上となっているので、スラリー中の触媒粒子の少なくとも一部を、傾斜壁に沿って円滑に沈降させることが可能になり、触媒粒子をより効果的に沈降させることができる。
【0019】
また、本発明に係る触媒回収システムでは、前記連通路には、該連通路内での前記触媒粒子の上昇を規制する規制手段が設けられていてもよい。
【0020】
この場合、連通路に前記規制手段が設けられているので、清澄スラリーの連通路内での流動に伴って触媒粒子が上昇するのを規制することが可能になり、上室内に触媒粒子が進入するのを抑制することができる。
【0021】
また、本発明に係る触媒回収システムでは、前記規制手段は、前記連通路の内周面から突設された邪魔板を備え、前記邪魔板は、前記連通路の内周面から該連通路の通路軸に向かう方向に下方に傾斜していてもよい。
【0022】
この場合、邪魔板が、連通路の内周面から該連通路の通路軸に向かう方向に下方に傾斜しているので、連通路内での触媒粒子の上昇を確実に規制することができる。
【0023】
また、本発明に係る触媒回収システムでは、前記上室内には、内部が前記導出口に連通するとともに前記導出口と前記上室との連通を遮断する集油管が設けられ、前記集油管には、該集油管内と前記上室とを連通する流通孔が形成され、前記流通孔の流路面積は、前記導出口の流路面積よりも大きくなっていてもよい。
【0024】
この場合、上室内の清澄スラリーは、流通孔および集油管内を通って導出口から導出される。ここで流通孔の流路面積が、導出口の流路面積よりも大きくなっているので、流通孔を流通する際の清澄スラリーの流速を、導出口から導出される際の清澄スラリーの流速よりも小さくすることができる。これにより、清澄スラリー中の触媒粒子が流通孔を通して集油管内に流入するのを抑制することが可能になり、導出口から触媒粒子が流出するのを抑制することができる。
【0025】
また、本発明に係る触媒回収システムでは、前記沈降分離槽には、該沈降分離槽内を加熱する槽加熱手段が設けられていてもよい。
【0026】
この場合、沈降分離槽に前記槽加熱手段が設けられているので、沈降分離槽内のスラリー中の媒体液が温度低下して凝固するのを抑制することが可能になり、スラリー中で触媒粒子を確実に沈降させることができる。
【0027】
また、本発明に係る触媒回収システムでは、前記沈降分離槽には、該沈降分離槽内の前記濃縮スラリーの沈降界面を検出する界面検出手段が設けられていてもよい。
【0028】
この場合、沈降分離槽に前記界面検出手段が設けられているので、検出された濃縮スラリーの沈降界面に基づいて第1排出部を作動させ、沈降分離槽から濃縮スラリーを排出させることができる。
【0029】
また、本発明に係る触媒回収システムでは、前記第1排出部は、前記沈降分離槽から前記濃縮スラリーを排出する第1上流路と、前記第1上流路から前記濃縮スラリーが排出される一時ホッパーと、前記一時ホッパーから前記濃縮スラリーを排出する第1下流路と、前記第1上流路を開閉する第1上バルブと、前記第1下流路を開閉する第1下バルブと、を備えていてもよい。
【0030】
この場合、第1排出部によって沈降分離槽から濃縮スラリーを排出するときには、各バルブにより第1上流路および第1下流路を予め閉状態にしておく。そしてまず、第1上バルブを作動させて第1上流路を開状態として、第1上流路を通して沈降分離槽内の濃縮スラリーを一時ホッパー内に排出する。その後、第1上バルブを作動させて第1上流路を閉状態とした後、第1下バルブを作動させて第1下流路を開状態し、第1下流路を通して一時ホッパー内の濃縮スラリーを排出する。
以上により、第1排出部を通した沈降分離槽内と外部との連通を遮断した状態で、沈降分離槽から濃縮スラリーを排出することが可能になり、濃縮スラリー排出時における沈降分離槽内の圧力を安定させることができる。
【0031】
また、本発明に係る触媒回収システムでは、前記一時ホッパーには、該一時ホッパー内を加熱するホッパー加熱手段が設けられていてもよい。
【0032】
この場合、一時ホッパーに前記ホッパー加熱手段が設けられているので、一時ホッパー内の濃縮スラリー中の媒体液が温度低下して凝固するのを抑制することが可能になり、一時ホッパーから濃縮スラリーを確実に排出させることができる。
【0033】
また、本発明に係る触媒回収システムでは、前記一時ホッパーには、該一時ホッパー内を加圧する第1ホッパー加圧手段を備えていてもよい。
【0034】
この場合、一時ホッパーに前記第1ホッパー加圧手段が設けられているので、第1ホッパー加圧手段によって一時ホッパー内の濃縮スラリーを加圧することで、一時ホッパーから濃縮スラリーを確実に排出させることができる。
【0035】
また、本発明に係る触媒回収システムでは、前記沈降分離槽から前記清澄スラリーを導出する清澄流路を備え、前記清澄流路には、該清澄流路内の前記清澄スラリーを減圧する減圧弁が設けられていてもよい。
【0036】
この場合、清澄流路に前記減圧弁が設けられているので、沈降分離槽から清澄流路を通して清澄スラリーを抜き出すときに沈降分離槽内の圧力が低下するのを抑制することが可能になり、沈降分離槽内の圧力を安定させることができる。
【0037】
また、本発明に係る触媒回収システムでは、前記清澄流路から前記清澄スラリーが供給される遠心分離機と、前記遠心分離機によって前記清澄スラリーから分離された残触媒含有スラリーを排出する第2排出部と、を備え、前記第2排出部は、前記遠心分離機から前記残触媒含有スラリーを排出する第2上流路と、前記第2上流路から前記残触媒含有スラリーが排出される残触媒ホッパーと、前記残触媒ホッパーから前記残触媒含有スラリーを排出する第2下流路と、を備え、前記残触媒ホッパーには、該残触媒ホッパー内を加圧する第2ホッパー加圧手段が設けられていてもよい。
【0038】
この場合、遠心分離機で清澄スラリーから分離された残触媒含有スラリーは、第2上流路を通って残触媒ホッパーに排出された後、第2下流路を通って排出される。ここで残触媒ホッパーに、前記第2ホッパー加圧手段が設けられているので、第2ホッパー加圧手段によって残触媒ホッパー内の残触媒含有スラリーを加圧することで、残触媒ホッパーから残触媒含有スラリーを確実に排出させることができる。
【0039】
また、本発明に係る触媒回収システムでは、前記凝固スラリー生成部は、前記濃縮スラリーが排出される冷却ホッパーと、前記冷却ホッパー内を冷却する冷却手段と、を備え、前記冷却ホッパーには、該冷却ホッパー内のガスを廃棄するガス廃棄路が設けられていてもよい。
【0040】
この場合、濃縮スラリーは、濃縮スラリー生成部から冷却ホッパーに排出されるとともに冷却手段によって冷却される。このとき、冷却ホッパー内の濃縮スラリーからガスが発生するが、このガスは、ガス廃棄路を通して廃棄される。
このように、冷却ホッパーに前記ガス廃棄路が設けられているので、冷却ホッパー内でガスが滞留するのを抑制することができる。
【0041】
また、本発明に係る触媒回収システムでは、前記回収機構は、前記凝固スラリーを破砕する破砕手段を備えていてもよい。
【0042】
この場合、回収機構が前記破砕手段を備えているので、凝固スラリーを後処理容易な程度、小さく破砕することが可能になり、回収した凝固スラリーを容易に後処理することができる。
【0043】
また、本発明に係る炭化水素合成反応装置は、水素ガスおよび一酸化炭素ガスを主成分とする合成ガスと、媒体液中に固体の触媒粒子を懸濁させてなるスラリーとを接触させることによって炭化水素化合物を合成する炭化水素合成反応装置であって、前記スラリーを収容するとともに前記合成ガスが供給される反応器本体と、前記触媒回収システムと、を備えていることを特徴とする。
【0044】
この発明によれば、炭化水素合成反応装置は、簡素化および小型化された触媒回収システムを備えているので、小型化および簡素化を図ることができる。
【0045】
また、本発明に係る炭化水素合成反応システムは、前記炭化水素合成反応装置と、炭化水素原料を改質して前記合成ガスを生成し、前記合成ガスを前記反応器本体に供給する合成ガス生成ユニットと、前記炭化水素化合物から液体燃料を製造するアップグレーディングユニットと、を備えていることを特徴とする。
【0046】
この発明によれば、炭化水素合成反応システムは、簡素化および小型化された炭化水素合成反応装置を備えているので、小型化および簡素化を図ることができる。
【発明の効果】
【0047】
本発明に係る触媒回収システムおよび触媒回収方法によれば、前記システムの簡素化、小型化を図るとともに、効率良く触媒粒子の回収作業を行うことが可能で、かつ排出された触媒粒子の酸化を抑制することができる。
また、本発明に係る炭化水素合成反応装置および炭化水素合成反応システムによれば、前記装置およびシステムの小型化および簡素化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態に係る液体燃料合成システムの全体構成を示す概略図である。
【図2】図1に示す液体燃料合成システムが備える触媒回収システムの全体構成を示す概略図である。
【図3】図2に示す触媒回収システムが備える沈降分離槽の縦断面図である。
【図4】図3に示すA−A断面矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明の一実施形態に係る液体燃料合成システムの一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、液体燃料合成システム(炭化水素合成反応システム)1は、天然ガス等の炭化水素原料を液体燃料に転換するGTLプロセスを実行するプラント設備である。この液体燃料合成システム1は、合成ガス生成ユニット3と、FT合成ユニット(炭化水素合成反応装置)5と、アップグレーディングユニット7とから構成される。合成ガス生成ユニット3は、炭化水素原料である天然ガスを改質して一酸化炭素ガスと水素ガスを含む合成ガスを製造する。FT合成ユニット5は、製造された合成ガスからFT合成反応により液体の炭化水素化合物を生成する。アップグレーディングユニット7は、FT合成反応により合成された液体の炭化水素化合物を水素化・精製して液体燃料その他の製品(ナフサ、灯油、軽油、ワックス等)を製造する。以下、これら各ユニットの構成要素について説明する。
【0050】
まず、合成ガス生成ユニット3について説明する。
合成ガス生成ユニット3は、例えば、脱硫反応器10と、改質器12と、排熱ボイラー14と、気液分離器16および18と、脱炭酸装置20と、水素分離装置26とを主に備える。脱硫反応器10は、水素化脱硫装置等で構成されて原料である天然ガスから硫黄成分を除去する。改質器12は、脱硫反応器10から供給された天然ガスを改質して、一酸化炭素ガス(CO)と水素ガス(H)とを主成分として含む合成ガスを製造する。排熱ボイラー14は、改質器12にて生成した合成ガスの排熱を回収して高圧スチームを発生する。気液分離器16は、排熱ボイラー14において合成ガスとの熱交換により加熱された水を気体(高圧スチーム)と液体とに分離する。気液分離器18は、排熱ボイラー14にて冷却された合成ガスから凝縮分を除去し気体分を脱炭酸装置20に供給する。脱炭酸装置20は、吸収塔(第2吸収塔)22と、再生塔24と、を有する。吸収塔22では、気液分離器18から供給された合成ガスに含まれる炭酸ガスが吸収液によって吸収される。再生塔24では、炭酸ガスを吸収した吸収液が炭酸ガスを放散し、吸収剤が再生される。水素分離装置26は、脱炭酸装置20により炭酸ガスが分離された合成ガスから、当該合成ガスに含まれる水素ガスの一部を分離する。ただし、上記脱炭酸装置20は場合によっては設けないこともある。
【0051】
改質器12では、例えば、下記の化学反応式(1)、(2)で表される水蒸気・炭酸ガス改質法を用い、二酸化炭素と水蒸気によって天然ガスが改質され、一酸化炭素ガスと水素ガスとを主成分とする高温の合成ガスが製造される。なお、この改質器12における改質法は、上記の水蒸気・炭酸ガス改質法に限定されない。例えば、水蒸気改質法、酸素を用いた部分酸化改質法(POX)、部分酸化改質法と水蒸気改質法の組合せである自己熱改質法(ATR)、炭酸ガス改質法などを利用することもできる。
【0052】
CH+HO→CO+3H ・・・(1)
CH+CO→2CO+2H ・・・(2)
【0053】
水素分離装置26は、脱炭酸装置20又は気液分離器18と気泡塔型反応器30とを接続する主配管から分岐した分岐ライン上に設けられる。この水素分離装置26は、例えば、圧力差を利用して水素の吸着と脱着を行う水素PSA(Pressure Swing Adsorption:圧力変動吸着)装置などで構成できる。この水素PSA装置は、並列配置された複数の吸着塔(図示せず。)内に吸着剤(ゼオライト系吸着剤、活性炭、アルミナ、シリカゲル等)を有している。各吸着塔で水素の加圧、吸着、脱着(減圧)、パージの各工程を順番に繰り返すことで、合成ガスから分離した純度の高い水素ガス(例えば99.999%程度)を、連続して供給することができる。
【0054】
水素分離装置26における水素ガス分離方法は、上記の水素PSA装置による圧力変動吸着法に限定されない。例えば、水素吸蔵合金吸着法、膜分離法、或いはこれらの組合せなどを用いてもよい。
【0055】
水素吸蔵合金法は、例えば、冷却/加熱されることで水素を吸着/放出する性質を有する水素吸蔵合金(TiFe、LaNi、TiFe0.7〜0.9Mn0.3〜0.1、又はTiMn1.5など)を用いて、水素ガスを分離する手法である。水素吸蔵合金法では、例えば水素吸蔵合金が収容された複数の吸着塔において、水素吸蔵合金の冷却による水素の吸着と、水素吸蔵合金の加熱による水素の放出とが交互に繰り返される。これにより、合成ガス中の水素ガスを分離・回収することができる。
【0056】
膜分離法は、芳香族ポリイミド等の高分子素材の膜を用いて、混合ガスから膜透過性に優れた水素ガスを分離する手法である。この膜分離法は、分離対称の相変化を必要としないため、運転に必要なエネルギーが小さくて済み、ランニングコストが小さい。また、膜分離装置の構造が単純でコンパクトなため、設備コストが低く設備の所要面積も小さくて済む。さらに、分離膜には駆動装置がなく、安定運転範囲が広いため、保守管理が容易であるという利点がある。
【0057】
次に、FT合成ユニット5について説明する。
FT合成ユニット5は、例えば、気泡塔型反応器(反応器本体)30と、気液分離器34と、分離器36と、気液分離器38と、第1精留塔40と、触媒回収システム80と、を主に備える。気泡塔型反応器30は、上記合成ガス生成ユニット3で製造された合成ガス、即ち、一酸化炭素ガスと水素ガスとからFT合成反応により液体炭化水素化合物を合成する。気液分離器34は、気泡塔型反応器30内に配設された伝熱管32内を通過して加熱された水を、水蒸気(中圧スチーム)と液体とに分離する。分離器36は、気泡塔型反応器30の中央部に接続され、触媒と液体炭化水素化合物を分離する。気液分離器38は、気泡塔型反応器30の塔頂に接続され、未反応合成ガス及び気体炭化水素化合物を冷却する。第1精留塔40は、気泡塔型反応器30から分離器36、気液分離器38を介して供給された液体炭化水素化合物を各留分に分留する。
【0058】
このうち、気泡塔型反応器30は、合成ガスから液体の炭化水素化合物を合成する反応器の一例であり、FT合成反応により合成ガスから液体の炭化水素化合物を合成するFT合成用反応器として機能する。この気泡塔型反応器30は、例えば、塔型の容器内部に主に触媒粒子と媒体油(媒体液、液体の炭化水素)とからなるスラリーが貯留された気泡塔型スラリー床式反応器で構成される。この気泡塔型反応器30は、FT合成反応により合成ガスから気体又は液体の炭化水素化合物を合成する。詳細には、この気泡塔型反応器30では、原料ガスである合成ガスは、気泡塔型反応器30の底部の分散板から気泡となって供給され、媒体油中に触媒粒子が懸濁されたスラリー内を通過する。そして、懸濁状態の中で下記化学反応式(3)に示すように、合成ガスに含まれる水素ガスと一酸化炭素ガスとが反応して炭化水素化合物が合成される。
【0059】
【化1】

【0060】
なお、触媒粒子は、媒体油より比重が大きくなっているとともに、FT合成反応中に発生する熱や、流路の内壁との摩擦等により劣化することがある。また、このFT合成反応は発熱反応であるため、気泡塔型反応器30は内部に伝熱管32が配設された熱交換器型になっている。気泡塔型反応器30には、冷媒として例えば水(BFW:Boiler Feed Water)が供給され、上記FT合成反応の反応熱を、スラリーと水との熱交換により中圧スチームとして回収できるようになっている。
【0061】
次に、アップグレーディングユニット7について説明する。アップグレーディングユニット7は、例えば、ワックス留分水素化分解反応器50と、中間留分水素化精製反応器52と、ナフサ留分水素化精製反応器54と、気液分離器56,58,60と、第2精留塔70と、ナフサ・スタビライザー72とを備える。ワックス留分水素化分解反応器50は、第1精留塔40の塔底に接続されている。中間留分水素化精製反応器52は、第1精留塔40の中央部に接続されている。ナフサ留分水素化精製反応器54は、第1精留塔40の塔頂に接続されている。気液分離器56,58,60は、これら水素化反応器50,52,54のそれぞれに対応して設けられている。第2精留塔70は、気液分離器56,58から供給された液体炭化水素化合物を分留する。ナフサ・スタビライザー72は、気液分離器60から供給された、及び第2精留塔70から分留されたナフサ留分の液体炭化水素化合物を精留する。その結果、ナフサ・スタビライザー72は、ブタン及びブタンより軽質の成分をオフガスとして排出し、炭素数5以上の成分を製品のナフサとして回収する。
【0062】
次に、以上のような構成の液体燃料合成システム1により、天然ガスから液体燃料を合成する工程(GTLプロセス)について説明する。
【0063】
液体燃料合成システム1には、天然ガス田又は天然ガスプラントなどの外部の天然ガス供給源(図示せず。)から、炭化水素原料としての天然ガス(主成分がCH)が供給される。上記合成ガス生成ユニット3は、この天然ガスを改質して合成ガス(一酸化炭素ガスと水素ガスを主成分とする混合ガス)を製造する。
【0064】
具体的には、まず、上記天然ガスは、水素分離装置26によって分離された水素ガスとともに脱硫反応器10に導入される。脱硫反応器10では、導入された水素ガスと水素化脱硫触媒により、天然ガスに含まれる硫黄分が硫化水素に転換される。更に、脱硫反応器10では、生成した硫化水素が例えばZnO等の脱硫剤により吸着除去される。このようにして天然ガスを予め脱硫しておくことにより、改質器12及び気泡塔型反応器30等で用いられる触媒の活性が硫黄により低下することを防止できる。
【0065】
このようにして脱硫された天然ガス(二酸化炭素を含んでもよい。)は、二酸化炭素供給源(図示せず。)から供給される二酸化炭素(CO)ガスと、排熱ボイラー14で発生した水蒸気とが混合された上で、改質器12に供給される。改質器12では、例えば、上述した水蒸気・炭酸ガス改質法により、二酸化炭素と水蒸気とにより天然ガスが改質され、一酸化炭素ガスと水素ガスとを主成分とする高温の合成ガスが製造される。このとき、改質器12には、例えば、改質器12が備えるバーナー用の燃料ガスと空気(エア)とが供給されている。そして、当該バーナーにおける燃料ガスの燃焼熱により、吸熱反応である上記水蒸気・炭酸ガス改質反応に必要な反応熱がまかなわれている。
【0066】
このようにして改質器12で製造された高温の合成ガス(例えば、900℃、2.0MPaG)は、排熱ボイラー14に供給され、排熱ボイラー14内を通過する水との熱交換により冷却(例えば400℃)される。そして、合成ガスの排熱が水により回収される。このとき、排熱ボイラー14において合成ガスにより加熱された水は気液分離器16に供給される。そして、この合成ガスにより加熱された水は、気液分離器16において高圧スチーム(例えば3.4〜10.0MPaG)と、水とに分離される。分離された高圧スチームは、改質器12または他の外部装置に供給され、分離された水は排熱ボイラー14に戻される。
【0067】
一方、排熱ボイラー14において冷却された合成ガスは、凝縮した液体分が気液分離器18において分離・除去された後、脱炭酸装置20の吸収塔22、又は気泡塔型反応器30に供給される。吸収塔22では、吸収塔22の内部に貯留されている吸収液によって、合成ガスに含まれる炭酸ガスが吸収され、当該合成ガスから炭酸ガスが除去される。吸収塔22内で炭酸ガスを吸収した吸収液は、吸収塔22から排出され、再生塔24に導入される。再生塔24に導入された吸収液は、例えばスチームで加熱されてストリッピング処理され、炭酸ガスを放散する。放散された炭酸ガスは、再生塔24から排出されて改質器12に導入され、上記改質反応に再利用される。
【0068】
このようにして、合成ガス生成ユニット3で製造された合成ガスは、上記FT合成ユニット5の気泡塔型反応器30に供給される。このとき、気泡塔型反応器30に供給される合成ガスの組成比は、FT合成反応に適した組成比(例えば、H:CO=2:1(モル比))に調整されている。なお、気泡塔型反応器30に供給される合成ガスは、脱炭酸装置20と気泡塔型反応器30とを接続する配管に設けられた圧縮器(図示せず。)により、FT合成反応に適した圧力(例えば3.6MPaG程度)まで昇圧される。
【0069】
また、上記脱炭酸装置20により炭酸ガスが分離された合成ガスの一部は、水素分離装置26にも供給される。水素分離装置26では、上記のように圧力差を利用した吸着、脱着(水素PSA)により、合成ガスに含まれる水素ガスが分離される。当該分離された水素は、ガスホルダー(図示せず。)等から圧縮機(図示せず。)を介して、液体燃料合成システム1内において水素を利用して所定反応を行う各種の水素利用反応装置(例えば、脱硫反応器10、ワックス留分水素化分解反応器50、中間留分水素化精製反応器52、ナフサ留分水素化精製反応器54など)に連続して供給される。
【0070】
次いで、上記FT合成ユニット5は、上記合成ガス生成ユニット3によって製造された合成ガスから、FT合成反応により、液体炭化水素化合物を合成する。
【0071】
具体的には、上記脱炭酸装置20において炭酸ガスが分離された合成ガスは、気泡塔型反応器30に導入され、気泡塔型反応器30内に貯留された触媒を含むスラリー内を通過する。この際、気泡塔型反応器30内では、上述したFT合成反応により、当該合成ガスに含まれる一酸化炭素と水素ガスとが反応して、炭化水素化合物が生成する。さらに、このFT合成反応時には、気泡塔型反応器30の伝熱管32内を通過する水によって、FT合成反応の反応熱が回収され、反応熱によって加熱された水が気化して水蒸気となる。この水蒸気は気液分離器34に供給されて凝縮した水と気体分に分離され、水は伝熱管32に戻されて、気体分は中圧スチーム(例えば1.0〜2.5MPaG)として外部装置に供給される。
【0072】
このようにして、気泡塔型反応器30で合成された液体炭化水素化合物は、気泡塔型反応器30の中央部から触媒粒子を含んだスラリーとして排出されて、分離器36に導入される。分離器36では、導入されたスラリーが触媒(固形分)と、液体炭化水素化合物を含んだ液体分とに分離される。分離された触媒の一部は気泡塔型反応器30に戻され、液体分は第1精留塔40に導入される。気泡塔型反応器30の塔頂からは、FT合成反応において反応しなかった合成ガスと、FT合成反応により生成した気体炭化水素化合物と、を含む気体副生成物が排出される。気泡塔型反応器30から排出された気体副生成物は、気液分離器38に導入される。気液分離器38では、導入された気体副生成物が冷却され、凝縮した液体炭化水素化合物と、ガス分とに分離される。分離された液体炭化水素化合物は、気液分離器38から排出され、第1精留塔40に導入される。分離されたガス分は、気液分離器38から排出され、その一部が気泡塔型反応器30に再導入される。気泡塔型反応器30では、再導入されたガス分に含まれる未反応の合成ガス(COとH)がFT合成反応に再利用される。また、気液分離器38から排出されたガス分の一部は、オフガスとして燃料に使用されたり、このガス分からLPG(液化石油ガス)相当の燃料が回収されたりする。
【0073】
第1精留塔40では、上記のようにして気泡塔型反応器30から分離器36、気液分離器38を介して供給された液体炭化水素化合物(炭素数は多様)が、ナフサ留分(沸点が約150℃より低い)と、中間留分(沸点が約150〜350℃)と、ワックス留分(沸点が約350℃を超える)とに分留される。この第1精留塔40の塔底から排出されるワックス留分の液体炭化水素化合物(主としてC21以上)は、ワックス留分水素化分解反応器50に導入される。第1精留塔40の中央部から排出される灯油・軽油に相当する中間留分の液体炭化水素化合物(主としてC11〜C20)は、中間留分水素化精製反応器52に導入される。第1精留塔40の塔頂から排出されるナフサ留分の液体炭化水素化合物(主としてC〜C10)は、ナフサ留分水素化精製反応器54に導入される。
【0074】
ワックス留分水素化分解反応器50は、第1精留塔40の塔底から排出された炭素数の多いワックス留分の液体炭化水素化合物(概ねC21以上)を、上記水素分離装置26から供給された水素ガスを利用して水素化分解して、炭素数を20以下に低減する。この水素化分解反応では、炭素数の多い炭化水素化合物のC−C結合が切断される。これにより、炭素数の多い炭化水素化合物が炭素数の少ない炭化水素化合物へと転換される。また、ワックス留分水素化分解反応器50においては、水素化分解反応と並行して、直鎖状飽和炭化水素化合物(ノルマルパラフィン)を水素化異性化して分岐状飽和炭化水素化合物(イソパラフィン)を生成する反応も進行する。これにより、ワックス留分水素化分解生成物の、燃料油基材として要求される低温流動性が向上する。さらに、ワックス留分水素化分解反応器50においては、原料であるワックス留分に含まれるアルコール等の含酸素化合物の水素化脱酸素反応及びオレフィンの水素化反応も進行する。水素化分解されワックス留分水素化分解反応器50から排出された液体炭化水素化合物を含む生成物は、気液分離器56に導入され、気体と液体とに分離される。分離された液体炭化水素化合物は、第2精留塔70に導入され、分離された気体分(水素ガスを含む。)は、中間留分水素化精製反応器52及びナフサ留分水素化精製反応器54に導入される。
【0075】
中間留分水素化精製反応器52では、第1精留塔40の中央部から排出された炭素数が中程度である灯油・軽油に相当する中間留分の液体炭化水素化合物(概ねC11〜C20)が水素化精製される。中間留分水素化精製反応器52では、水素分離装置26からワックス留分水素化分解反応器50を介して供給された水素ガスが、水素化精製に用いられる。この水素化精製反応においては、上記液体炭化水素化合物中に含まれるオレフィンが水素化されて飽和炭化水素化合物を生成するとともに、上記液体炭化水素化合物中に含まれるアルコール等の含酸素化合物が水素化脱酸素され飽和炭化水素化合物と水とに転換される。更に、この水素化精製反応においては、直鎖状飽和炭化水素化合物(ノルマルパラフィン)を異性化して分岐状飽和炭化水素化合物(イソパラフィン)に転換する水素化異性化反応が進行し、生成油の燃料油として要求される低温流動性を向上させる。水素化精製された液体炭化水素化合物を含む生成物は、気液分離器58で気体と液体に分離される。分離された液体炭化水素化合物は、第2精留塔70に導入され、気体分(水素ガスを含む。)は、上記水素化反応に再利用される。
【0076】
ナフサ留分水素化精製反応器54では、第1精留塔40の上部から排出された炭素数が少ないナフサ留分の液体炭化水素化合物(概ねC10以下)が、水素化精製される。ナフサ留分水素化精製反応器54では、水素分離装置26からワックス留分水素化分解反応器50を介して供給された水素ガスが、水素化精製に用いられる。この結果、水素化精製された液体炭化水素化合物を含む生成物は、気液分離器60で気体と液体に分離される。分離された液体炭化水素化合物は、ナフサ・スタビライザー72に導入され、分離された気体分(水素ガスを含む。)は、上記水素化反応に再利用される。このナフサ留分の水素化精製においては、主としてオレフィンの水素化及びアルコール等の含酸素化合物の水素化脱酸素が進行する。
【0077】
第2精留塔70では、上記のようにしてワックス留分水素化分解反応器50及び中間留分水素化精製反応器52から供給された液体炭化水素化合物をC10以下の炭化水素化合物(沸点が約150℃より低い)と、灯油(沸点が約150〜250℃)と、軽油(沸点が約250〜350℃)と、ワックス留分水素化分解反応器50からの未分解ワックス分(沸点約350℃を超える)とに分留する。第2精留塔70の塔底からは未分解のワックス留分が得られ、これはワックス留分水素化分解反応器50の上流にリサイクルされる。第2精留塔70の中央部からは灯油及び軽油が排出される。一方、第2精留塔70の塔頂からは、C10以下の気体炭化水素化合物が排出されて、ナフサ・スタビライザー72に導入される。
【0078】
さらに、ナフサ・スタビライザー72では、上記ナフサ留分水素化精製反応器54から供給された、及び第2精留塔70において分留されたC10以下の炭化水素化合物が蒸留され、製品としてのナフサ(C〜C10)が得られる。これにより、ナフサ・スタビライザー72の塔底からは、高純度のナフサが排出される。一方、ナフサ・スタビライザー72の塔頂からは、製品対象外である炭素数が所定数以下(C以下)の炭化水素化合物を主成分とするオフガスが排出される。このオフガスは、燃料ガスとして使用されたり、このオフガスからLPG相当の燃料が回収されたりする。
【0079】
次に図2に示すように、上記FT合成ユニット5が備える触媒回収システム80について説明する。
触媒回収システム80は、気泡塔型反応器30に収容されたスラリーから触媒粒子を回収する。この触媒回収システム80は、気泡塔型反応器30から抜き出されたスラリーを濃縮して濃縮スラリーを連続的に生成する濃縮スラリー生成部82と、濃縮スラリー生成部82から濃縮スラリーを排出する第1排出部84と、濃縮スラリーと比較して触媒粒子含有量の少ない清澄スラリーを濃縮スラリー生成部82から導出する清澄流路86と、清澄流路86から清澄スラリーが供給される遠心分離機88と、遠心分離機88によって清澄スラリーから分離された残触媒含有スラリーを排出する第2排出部90と、濃縮スラリー生成部82から排出された濃縮スラリー、および遠心分離機88から排出された残触媒含有スラリーを冷却して媒体油を凝固させて凝固スラリーを生成する凝固スラリー生成部91と、凝固スラリー生成部91から凝固スラリーを回収する回収機構92と、を備えている。
【0080】
濃縮スラリー生成部82は、スラリーを濃縮スラリーと清澄スラリーとに分離する沈降分離槽94と、気泡塔型反応器30内と沈降分離槽94内とを連通するとともに開閉弁96aが設けられたスラリー流路96と、を備えている。
図3に示すように、沈降分離槽94は、上下方向に延在する筒状の密閉容器であり、沈降分離槽94の底壁部は、下側に向かうに従い漸次、縮径する逆テーパー状に形成されるとともに、沈降分離槽94の頂壁部は上方に向けて膨出している。
【0081】
図2から図4に示すように、沈降分離槽94は、スラリーが供給される供給口98と、第1排出部84が接続された排出口100と、清澄スラリーが導出される導出口102と、を備えており、供給口98には、前記スラリー流路96が接続されるとともに、導出口102には、前記清澄流路86が接続されている。
【0082】
図3に示すように、排出口100は、沈降分離槽94の底壁部の下端に形成され、上方に向けて開口している。供給口98および導出口102は、沈降分離槽94の周壁部に形成されており、図示の例では、供給口98は導出口102よりも上方に位置している。また図4に示すように、供給口98の開口方向98Aと、導出口102の開口方向102Aと、は、上面視で互いに直交している。
【0083】
また図3に示すように、沈降分離槽94内には、沈降分離槽94内を、供給口98および排出口100が開口するとともに下側に位置する下室104と、導出口102が開口するとともに上側に位置する上室106と、に区画する沈降促進バッフル(区画壁)108と、沈降促進バッフル108に貫設され、下室104と上室106とを連通する連通路110と、が設けられている。
【0084】
沈降促進バッフル108は、供給口98から沈降分離槽94の中心軸に向かう方向に下方に傾斜している。図4に示すように、沈降促進バッフル108の上面視形状は逆D字状となっており、沈降促進バッフル108の外周縁のうちの曲線部は、沈降分離槽94の周壁部の内周面に全長にわたって連結されている。また図3に示すように、沈降促進バッフル108の外周縁のうちの直線部は、水平方向に延びるとともに沈降促進バッフル108の下端を構成しており、沈降分離槽94の周壁部の内周面から離間している。さらに沈降促進バッフル108の上端部は、供給口98に対向しているとともに、沈降促進バッフル108の下端部の真上には、後述する集油管122が配置されている。
【0085】
また沈降分離槽94内には、供給口98から沈降分離槽94の中心軸に向かう方向に下方に傾斜する傾斜壁112が、沈降促進バッフル108よりも下方に、沈降促進バッフル108との間に隙間をあけて配設されている。傾斜壁112は、互いに隙間をあけて複数(図示の例では4つ)設けられている。これらの傾斜壁112は、沈降促進バッフル108と平行であるとともに上下方向に互いに同等の間隔をあけて設けられ、図示の例では、傾斜壁112と水平面とがなす傾斜角度θは、触媒粒子の安息角(例えば、約30度)以上となっている。また傾斜壁112の下端は、沈降促進バッフル108の下端と上下方向における位置が同等となっている。
【0086】
また複数の傾斜壁112のうち、最も下側に位置する下傾斜壁112aの上面視形状は逆D字状となっており、下傾斜壁112aの外周縁のうちの曲線部は、沈降分離槽94の周壁部の内周面に全長にわたって連結されている。
さらに複数の傾斜壁112のうち、下傾斜壁112aよりも上側に位置する他の傾斜壁112の上端と、沈降分離槽94の周壁部の内周面と、の間には隙間があいている。
【0087】
ここで、沈降促進バッフル108の下端(沈降促進バッフル108の外周縁における直線部)と、沈降分離槽94の周壁部の内周面と、の間の隙間には、上下方向に延在する流路壁114が配設されている。流路壁114の下端は下室104内に位置するとともに、流路壁114の上端は上室106内において導出口102よりも上方に位置しており、流路壁114の両側端は、沈降分離槽94の周壁部の内周面に全長にわたって連結されている。沈降促進バッフル108の下端と流路壁114との間には、微小隙間116があいている。そして、流路壁114と沈降分離槽94の周壁部の内周面との間が前記連通路110となっている。
【0088】
連通路110には、連通路110内での触媒粒子の上昇を規制する規制手段118が設けられている。規制手段118は、連通路110の内周面から突設された複数の邪魔板(粒子上昇防止バッフル)120を備えている。これらの邪魔板120は、連通路110の内周面から該連通路110の通路軸に向かう方向に下方に傾斜しており、連通路110の上端部内および連通路110の下端部内において互い違いになるように複数突設されている。図示の例では、邪魔板120は、流路壁114または沈降分離槽94の周壁部に突設されており、複数の邪魔板120のうち、最も下側に位置する下邪魔板120aは、沈降分離槽94の周壁部に突設されている。
【0089】
また図4に示すように、上室106内には、内部が導出口102に連通するとともに導出口102と上室106の連通を遮断する集油管122が設けられている。集油管122は、導出口102と同軸に配設されており、この集油管122には、該集油管122内と上室106とを連通する流通孔124が形成されている。図示の例では、流通孔124は、集油管122に沿って間隔をあけて複数配置された長穴状に形成されている。そして流通孔124の流路面積は、導出口102の流路面積よりも大きくなっている。なお流通孔124の流路面積とは、流通孔124が複数形成されている場合、各流通孔124の流路面積の総和を意味する。
【0090】
また図2および図3に示すように、沈降分離槽94には、沈降分離槽94内の濃縮スラリーの沈降界面を検出する界面検出手段126と、沈降分離槽94内を加熱する槽加熱手段128と、が設けられている。
図3に示すように、界面検出手段126には、触媒回収システム80の各構成を制御可能な制御部130が電気的に接続されており、この制御部130には、界面検出手段126によって検出された濃縮スラリーの界面データが送出される。
【0091】
図2に示すように、槽加熱手段128は、沈降分離槽94の外周面に旋回された熱伝導部128aと、熱伝導部128aに熱源を供給する熱源供給部128bと、を備えている。図示の例では、熱伝導部128aは、管状に形成されるとともに、熱源供給部128bは、熱伝導部128a内に熱源としての水蒸気を供給する。この水蒸気としては、例えばFT合成ユニット5の他の構成(気液分離器34等)で生成されたものを採用することができる。なお槽加熱手段128は、熱伝導部128aが電熱線で形成され、熱源供給部128bが熱源としての電気エネルギーを熱伝導部128aに供給する構成としてもよい。
【0092】
第1排出部84は、沈降分離槽94から濃縮スラリーを排出する第1上流路132と、第1上流路132から濃縮スラリーが排出される一時ホッパー134と、一時ホッパー134から濃縮スラリーを排出する第1下流路136と、第1上流路132を開閉する第1上バルブ138と、第1下流路136を開閉する第1下バルブ140と、を備えている。
一時ホッパー134には、一時ホッパー134内を加熱するホッパー加熱手段142と、一時ホッパー134内の濃縮スラリーを加圧する第1ホッパー加圧手段144と、が設けられている。
【0093】
ホッパー加熱手段142は、一時ホッパー134の外周面に旋回された熱伝導部142aと、熱伝導部142aに熱源を供給する熱源供給部142bと、を備えている。図示の例では、熱伝導部142aは、管状に形成されるとともに、熱源供給部142bは、熱伝導部142a内に熱源としての水蒸気を供給する。この水蒸気としては、例えばFT合成ユニット5の他の構成(気液分離器34等)で生成されたものを採用することができる。なおホッパー加熱手段142は、熱伝導部142aが電熱線で形成されるとともに、熱源供給部142bが熱源としての電気エネルギーを熱伝導部142aに供給する構成としてもよい。
第1ホッパー加圧手段144は、一時ホッパー134内に不活性ガスを供給することで、一時ホッパー134内の濃縮スラリーを加圧する。図示の例では、不活性ガスとして窒素ガスを採用している。
【0094】
清澄流路86には、清澄流路86を開閉する開閉弁86aと、清澄流路86内の清澄スラリーを減圧する減圧弁146と、が、沈降分離槽94側から遠心分離機88側に向けてこの順で設けられている。
遠心分離機88は、例えば縦型構造となっており、清澄スラリーを遠心分離することで、残触媒含有スラリーと分離油とに分離する。残触媒含有スラリーは、清澄スラリー中に残った触媒粒子を含有し、分離油は、清澄スラリーよりも清澄とされ、例えば、粒径が0.1μm以下でごく少量の触媒粒子と、媒体油と、を含有している。
また遠心分離機88には、分離油が貯留される分離油槽148が接続されている。
【0095】
第2排出部90は、遠心分離機88から残触媒含有スラリーを排出する第2上流路150と、第2上流路150から残触媒含有スラリーが排出される残触媒ホッパー152と、残触媒ホッパー152から残触媒含有スラリーを排出する第2下流路154と、第2上流路150を開閉する第2上バルブ156と、第2下流路154を開閉する第2下バルブ158と、を備えている。
【0096】
残触媒ホッパー152には、該残触媒ホッパー152内の残触媒含有スラリーを加圧する第2ホッパー加圧手段160が設けられている。
第2ホッパー加圧手段160は、残触媒ホッパー152内に不活性ガスを供給することで、残触媒ホッパー152内の残触媒含有スラリーを加圧する。図示の例では、不活性ガスとして窒素ガスを採用している。
【0097】
凝固スラリー生成部91は、この凝固スラリー生成部91に排出され、濃縮スラリーおよび残触媒スラリーの少なくとも一方を含有する排出スラリーを冷却し、該排出スラリー中の媒体油を凝固させて凝固スラリーを生成する。この凝固スラリー生成部91は、排出スラリーが排出される冷却ホッパー162と、冷却ホッパー162内を冷却する冷却手段164と、を備えている。
【0098】
冷却ホッパー162には、第1排出部84の第1下流路136が接続されるともに、第2排出部90の第2下流路154が接続されている。この冷却ホッパー162には、冷却ホッパー162内のガスを廃棄するガス廃棄路172が設けられており、ガス廃棄路172に流入したガスは、例えば外部の燃焼設備(図示せず。)に導入されて、燃焼された後に大気放出される。
冷却手段164は、冷却ホッパー162内に冷却水を供給する。
【0099】
回収機構92は、凝固スラリーを破砕する破砕手段166と、凝固スラリーが回収される触媒受槽168と、破砕手段166から触媒受槽168に凝固スラリーを移送する移送手段170と、を備えている。
破砕手段166は、冷却ホッパー162内に設けられており、この破砕手段166としては、例えば二軸回転式のスクリューを有する構成を採用することができる。
移送手段170は、凝固スラリーから冷却水を除去しながら移送する。図示の例では、移送手段170は、スクリューコンベアとされており、凝固スラリーを移送するスクリュー170aと、スクリュー170aを収容するケース170bと、を備えている。
【0100】
ケース170bの一端は、冷却ホッパー162の下部開口に連結され、ケース170bの他端は、触媒受槽168の上方に配置されるとともに下方に向けて開口している。このケース170bは、一端側から他端側に向かうに従い漸次上方に向けて傾斜している。なお図示の例では、ケース170bの一端には、冷却手段164の冷却水用のドレン174が設けられている。
【0101】
次に、以上のように構成された触媒回収システム80を用いて、スラリーから触媒粒子を分離して回収する触媒粒子の回収方法について説明する。触媒粒子の回収は、例えば、FT合成ユニット5の稼動を停止したときに行う。以下に示す各工程は、制御部130によって自動的に行われるようにしても良く、作業者が図示しない操作盤などを操作することにより行ってもよい。
【0102】
なお以下では、前記開閉弁86a、濃縮スラリー生成部82の開閉弁96a、第1排出部84の第1上バルブ138および第1下バルブ140、並びに第2排出部90の第2上バルブ156および第2下バルブ158が、各流路を閉じている状態から説明を始める。また沈降分離槽94内は、スラリーで満たされ、沈降分離槽94内の圧力は、気泡塔型反応器30内の圧力(例えば、3.6MPaG程度)と同等となっているものとする。さらに、沈降分離槽94内のスラリーは、濃縮スラリーと清澄スラリーとに沈降分離されており、濃縮スラリーの沈降界面は、下室104内に位置しているものとする。
【0103】
はじめに、気泡塔型反応器30から抜き出されたスラリーを、沈降分離槽94内で濃縮して濃縮スラリーを連続的に生成する濃縮スラリー生成工程と、沈降分離槽94から清澄スラリーを導出する導出工程と、を行う。
【0104】
濃縮スラリー生成工程では、まず、スラリー流路96の開閉弁96aおよび清澄流路86の開閉弁86aを開放し、スラリー流路96および供給口98を通して気泡塔型反応器30内のスラリーを沈降分離槽94の下室104内に供給する。図3に示すように、供給口98から供給されたスラリーは、供給口98から沈降分離槽94の中心軸に向かう方向に流動する。すると、沈降促進バッフル108に突き当たり、流動方向が下方に向けて変化させられ、沈降促進バッフル108と傾斜壁112との間の隙間、または傾斜壁112同士間の隙間を通って下室104を下方に向けて流動する。
【0105】
このようにスラリーが下室104を下方に向けて流動する過程で、このスラリー中の触媒粒子が沈降し、下室104の下部(沈降分離槽94の底壁部)に堆積することで、下室104の下部に濃縮スラリーが生成され、スラリーが下室104内で濃縮スラリーと清澄スラリーとに分離される。なおスラリーが、沈降促進バッフル108と傾斜壁112との間の隙間、または傾斜壁112同士間の隙間を流動するときには、スラリー中の触媒粒子の少なくとも一部が傾斜壁112上に沈降する。ここで本実施形態では、傾斜壁112の傾斜角度θが、触媒粒子の安息角以上となっているので、傾斜壁112上に沈降した触媒粒子は、傾斜壁112に沿って傾斜壁112の下端まで円滑に沈降し続け、その後、傾斜壁112の下端から下室104を下部に向けて沈降する。
なお、この濃縮スラリー生成工程は、例えば気泡塔型反応器30内のスラリーが僅かとなって抜き出されなくなる程度まで継続して行うことができる。
【0106】
一方、前記導出工程では、まず、前述した濃縮スラリー生成工程で供給口98から下室104内に供給されたスラリーが、その体積と同量の清澄スラリーを下室104から連通路110に押し出す。すると、連通路110内の清澄スラリーが上室106に押し出され、さらに、上室106内の清澄スラリーが流通孔124を通して集油管122内に押し出され、さらにまた、集油管122内の清澄スラリーが押し出されて導出口102から導出されることとなる。
以上で導出工程が終了する。
【0107】
ここで図3に示すように、本実施形態では、連通路110内に規制手段118が設けられているので、導出工程のとき、清澄スラリーの連通路110内での流動に伴って触媒粒子が上昇するのを規制することが可能になり、上室106内に触媒粒子が進入するのを抑制することができる。図示の例では、邪魔板120が、連通路110の内周面から該連通路110の通路軸に向かう方向に下方に傾斜しているので、連通路110内での触媒粒子の上昇を確実に規制することができる。
【0108】
さらに本実施形態では、流通孔124の流路面積が、導出口102の流路面積よりも大きくなっているので、流通孔124を流通する際の清澄スラリーの流速を、導出口102から導出される際の清澄スラリーの流速よりも小さくすることができる。これにより、清澄スラリー中の触媒粒子が流通孔124を通して集油管122内に流入するのを抑制することが可能になり、導出口102から触媒粒子が流出するのを抑制することができる。
なお本実施形態では、沈降促進バッフル108の下端と流路壁114との間に前記微小隙間116があいているので、上室106内で触媒粒子が沈降すると、この微小隙間116を通して下室104内に移動する。
【0109】
図2に示すように、導出工程で沈降分離槽94から導出された清澄スラリーは、清澄流路86を流通し、減圧弁146で減圧された後、遠心分離機88に供給される。そこで、清澄スラリーを遠心分離機88によって残触媒含有スラリーと分離油とに分離する遠心分離工程を行う。この遠心分離工程によって分離された分離油は、分離油槽148に貯留される。
【0110】
また、前述した濃縮スラリー生成工程を開始した後、沈降分離槽94から濃縮スラリーを排出する第1排出工程を行う。この第1排出工程は、例えば、界面検出手段126によって濃縮スラリーの沈降界面が予め決められた閾値以上の高さになったときに開始する。
【0111】
この第1排出工程では、第1下バルブ140により第1下流路136を予め閉状態にしておく。そしてまず、第1上バルブ138を作動させて第1上流路132を開状態として、第1上流路132を通して沈降分離槽94内の濃縮スラリーを一時ホッパー134内に排出する。その後、第1上バルブ138を作動させて第1上流路132を閉状態とした後、第1下バルブ140を作動させて第1下流路136を開状態し、第1下流路136を通して一時ホッパー134内の濃縮スラリーを排出する。このとき、第1ホッパー加圧手段144によって一時ホッパー134内の濃縮スラリーを加圧することで、一時ホッパー134から濃縮スラリーを確実に排出させることができる。
以上で第1排出工程が終了する。このように、第1排出工程は、第1排出部84を通した沈降分離槽94内と外部との連通を遮断した状態で行うことができる。
【0112】
また、前述した遠心分離工程によって分離された残触媒含有スラリーを、遠心分離機88から排出する第2排出工程を行う。
この第2排出工程では、各バルブ156、158により第2上流路150および第2下流路154を予め閉状態にしておく。そしてまず、第2上バルブ156を作動させて第2上流路150を開状態として、第2上流路150を通して遠心分離機88内の残触媒含有スラリーを残触媒ホッパー152内に排出する。その後、第2上バルブ156を作動させて第2上流路150を閉状態とした後、第2下バルブ158を作動させて第2下流路154を開状態し、第2下流路154を通して残触媒ホッパー152内の残触媒含有スラリーを排出する。このとき、第2ホッパー加圧手段160によって残触媒ホッパー152内の残触媒含有スラリーを加圧することで、残触媒ホッパー152から残触媒含有スラリーを確実に排出させることができる。
以上で第2排出工程が終了する。
【0113】
ここで、前記第1排出工程で排出された残触媒含有スラリー、および前記第2排出工程で排出された残触媒含有スラリーは、前記排出スラリーとして凝固スラリー生成部91の冷却ホッパー162内に排出される。そこで、第1排出工程および第2排出工程の少なくとも一方を開始した後、排出スラリーを冷却し、該排出スラリー中の媒体油を凝固させて凝固スラリーを生成する凝固スラリー生成工程と、該凝固スラリーを回収する回収工程と、を行う。
【0114】
凝固スラリー生成工程では、冷却手段164によって冷却ホッパー162内に冷却水を供給し、排出スラリーを冷却して凝固スラリーを生成する。
そして回収工程では、まず、冷却ホッパー162内の破砕手段166によって凝固スラリーを破砕する。この凝固スラリーでは、触媒粒子の表面が、凝固した媒体油でコーティングされることとなる。
【0115】
その後、冷却ホッパー162の下部開口から凝固スラリーを排出した後、移送手段170によって、凝固スラリーを冷却水から除去しながら触媒受槽168に移送する。このとき、移送手段170によって凝固スラリーを移送するので、作業者による冷却ホッパー162近傍での作業を削減することができる。
なお、冷却ホッパー162内の排出スラリーからガスが発生するが、このガスは、ガス廃棄路172を通して廃棄される。
【0116】
以上説明したように、本実施形態に係る触媒分離回収システムによれば、気泡塔型反応器30から抜き出されたスラリーから、触媒粒子を含む濃縮スラリーを分離・回収することで、スラリーから触媒粒子を分離・回収することができる。
【0117】
ここで濃縮スラリー生成部82が、濃縮スラリーを連続的に生成するので、気泡塔型反応器30からスラリーを抜き出すのを止めずに、スラリーを抜き出し続けながら濃縮スラリーを生成し続け、スラリーから触媒粒子を分離することができる。これにより、前記従来技術のように、貯留タンクに一端、スラリーを貯留しなくても、スラリーから触媒粒子を分離することが可能になり、この触媒回収システム80が、貯留タンクおよび貯留タンク外のフィルタを備えた構成でなくても良く、触媒回収システム80の簡素化、小型化を図ることができる。
また、濃縮スラリー生成部82が前記沈降分離槽94を備えているので、沈降分離によって濃縮スラリーを連続的に生成することが可能になり、触媒回収システム80の更なる簡素化を図ることができる。
【0118】
また第1排出部84が、固形状の触媒粒子に比べて流動性が高い濃縮スラリーを排出するので、排出作業を簡便化することが可能になる。これにより、スラリーから触媒粒子を効率良く分離させることができる。
さらに回収機構92において、濃縮スラリーが凝固スラリーとして回収され、触媒粒子の表面が、凝固した媒体油でコーティングされているので、排出された触媒粒子と空気との接触を抑えることが可能になり、触媒粒子の酸化を抑制することができる。
【0119】
また、沈降分離槽94内に前記沈降促進バッフル108と前記連通路110が設けられていることから、濃縮スラリーを沈降分離槽94内から排出しつつ、清澄スラリーを沈降分離槽94内から導出することができる。
【0120】
また沈降促進バッフル108が、供給口98から沈降分離槽94の中心軸に向かう方向に下方に傾斜しているので、供給口98から下室104内に供給されたスラリーの流動方向を、下方に向けて変化させることができる。これにより、スラリー中の触媒粒子を効果的に沈降させることができる。
さらに、傾斜壁112の傾斜角度θが、触媒粒子の安息角以上となっているので、スラリー中の触媒粒子の少なくとも一部を、傾斜壁112に沿って円滑に沈降させることが可能になり、触媒粒子をより効果的に沈降させることができる。
【0121】
さらにまた、沈降分離槽94に前記槽加熱手段128が設けられているので、沈降分離槽94内のスラリー中の媒体油が温度低下して凝固するのを抑制することが可能になり、スラリー中で触媒粒子を確実に沈降させることができる。
【0122】
また、清澄流路86に前記減圧弁146が設けられているので、沈降分離槽94から清澄流路86を通して清澄スラリーを抜き出すときに沈降分離槽94内の圧力が低下するのを抑制することが可能になり、沈降分離槽94内の圧力を安定させることができる。
【0123】
また、沈降分離槽94に前記界面検出手段126が設けられているので、検出された濃縮スラリーの沈降界面に基づいて第1排出部84を作動させ、沈降分離槽94から濃縮スラリーを排出させることができる。
さらに、第1排出部84を通した沈降分離槽94内と外部との連通を遮断した状態で、沈降分離槽94から濃縮スラリーを排出することが可能になり、濃縮スラリー排出時における沈降分離槽94内の圧力を安定させることができる。
【0124】
また、一時ホッパー134に前記第1ホッパー加圧手段144が設けられているので、第1ホッパー加圧手段144によって一時ホッパー134内の濃縮スラリーを加圧することで、一時ホッパー134から濃縮スラリーを確実に排出させることができる。
さらに、一時ホッパー134に前記ホッパー加熱手段142が設けられているので、一時ホッパー134内の濃縮スラリー中の媒体油が温度低下して凝固するのを抑制することが可能になり、一時ホッパー134から濃縮スラリーを確実に排出させることができる。
【0125】
また残触媒ホッパー152に、前記第2ホッパー加圧手段160が設けられているので、第2ホッパー加圧手段160によって残触媒ホッパー152内の残触媒含有スラリーを加圧することで、残触媒ホッパー152から残触媒含有スラリーを確実に排出させることができる。
【0126】
また、回収機構92が前記破砕手段166を備えているので、凝固スラリーを後処理容易な程度に、小さく破砕することが可能になり、回収した凝固スラリーを容易に後処理することができる。
また、冷却ホッパー162に前記ガス廃棄路172が設けられているので、冷却ホッパー162内でガスが滞留するのを抑制することができる。
【0127】
そして、本実施形態に係るFT合成ユニット5によれば、簡素化および小型化された触媒回収システム80を備えているので、該ユニットの小型化および簡素化を図ることができる。
さらに、本実施形態に係る液体燃料合成システム1によれば、簡素化および小型化されたFT合成ユニット5を備えているので、該システムの小型化および簡素化を図ることができる。
【0128】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0129】
例えば、前記実施形態では、液体燃料合成システム1に供給される炭化水素原料として、天然ガスを用いたが、かかる例に限定されず、例えば、アスファルト、残油など、その他の炭化水素原料を用いてもよい。
【0130】
また、前記実施形態では、気泡塔型反応器30における合成反応として、FT合成反応による液体炭化水素の合成を例示したが、本発明はかかる例に限定されない。気泡塔型反応器における合成反応としては、例えば、オキソ合成(ヒドロホルミル化反応)「R−CH=CH+CO+H→R−CHCHCHO」、メタノール合成「CO+2H→CHOH」、ジメチルエーテル(DME)合成「3CO+3H→CHOCH+CO」などにも適用することができる。
【0131】
また、前記実施形態では、凝固スラリー生成部91の冷却ホッパー162には、ガス廃棄路172が設けられているものとしたが、ガス廃棄路172は無くてもよい。また、凝固スラリー生成部91は、冷却ホッパー162および冷却手段164を備えているものとしたが、排出スラリーを冷却して凝固スラリーを生成するものであれば、異なる構成を採用することも可能である。
さらに前記実施形態では、回収機構92は、破砕手段166、触媒受槽168および移送手段170を備えているものとしたが、凝固スラリー生成部91から凝固スラリーを回収するものであれば、異なる構成を採用することも可能である。
【0132】
また、前記実施形態では、残触媒ホッパー152に第2ホッパー加圧手段160が設けられているものとしたが、第2ホッパー加圧手段160は無くてもよい。
さらに、前記実施形態では、触媒回収システム80は、遠心分離機88および第2排出部90が設けられているものとしたが、これらは無くてもよい。例えば、清澄流路86から分離油槽148に清澄スラリーが導出される構成であってもよい。なおこの場合、凝固スラリー生成部91は、濃縮スラリーを排出スラリーとして冷却し、凝固スラリーを生成することとなる。
【0133】
また、前記実施形態では、一時ホッパー134にはホッパー加熱手段142および第1ホッパー加圧手段144が設けられているものとしたが、これらは無くてもよい。また第1排出部84は、濃縮スラリー生成部82から濃縮スラリーを排出するものであれば、前記実施形態に示すものに限られず、適宜変更することが可能である。
【0134】
また、前記実施形態では、沈降分離槽94に槽加熱手段128および界面検出手段126が設けられているものとしたが、これらは無くてもよい。
さらに、前記実施形態では、沈降分離槽94内に集油管122が設けられているものとしたが、集油管122は無くてもよい。
【0135】
また、前記実施形態では、規制手段118は邪魔板120を備えているものとしたが、連通路110内での前記触媒粒子の上昇を規制するものであれば、異なる構成を採用することも可能である。さらに、規制手段118は無くてもよい。
また、前記実施形態では、沈降分離槽94内に傾斜壁112が設けられているものとしたが、傾斜壁112は無くてもよい。さらに、前記実施形態では、沈降促進バッフル108は傾斜しているものとしたが、傾斜しておらず、単に下室104と上室106とを区画している区画壁であってもよい。
【0136】
また前記実施形態では、触媒粒子の回収を開始する際に、沈降分離槽94内が、スラリーで満たされているものとしたが、これに限られるものではない。例えば、沈降分離槽94内がスラリーで満たされていない場合であっても、気泡塔型反応器30からスラリーが供給され続けることで、沈降分離槽94内がスラリーで満たされることとなる。
【0137】
また、沈降分離槽94は、前記実施形態に示すものに限られず、内部のスラリーが、触媒粒子が媒体油中に沈降することにより濃縮され、濃縮スラリーと清澄スラリーとに分離されるものであれば、適宜変更することが可能である。
また、濃縮スラリー生成部82は、気泡塔型反応器30から抜き出されたスラリーを濃縮して濃縮スラリーを連続的に生成するものであれば、前記実施形態に示すものに限られず、適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0138】
1 液体燃料合成システム(炭化水素合成反応システム)
3 合成ガス生成ユニット
5 FT合成ユニット(炭化水素合成反応装置)
7 アップグレーディングユニット
30 気泡塔型反応器(反応器本体)
80 触媒回収システム
82 濃縮スラリー生成部
84 第1排出部
86 清澄流路
88 遠心分離機
90 第2排出部
91 凝固スラリー生成部
92 回収機構
94 沈降分離槽
98 供給口
100 排出口
102 導出口
104 下室
106 上室
108 沈降促進バッフル(区画壁)
110 連通路
112 傾斜壁
118 規制手段
120 邪魔板
122 集油管
124 流通孔
126 界面検出手段
128 槽加熱手段
132 第1上流路
134 一時ホッパー
136 第1下流路
138 第1上バルブ
140 第1下バルブ
142 ホッパー加熱手段
144 第1ホッパー加圧手段
146 減圧弁
150 第2上流路
152 ホッパー
154 第2下流路
160 第2ホッパー加圧手段
162 冷却ホッパー
164 冷却手段
166 破砕手段
172 ガス廃棄路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応器本体に収容されたスラリーから、該スラリーに含まれる触媒粒子を回収する触媒回収システムであって、
前記反応器本体から抜き出された前記スラリーを濃縮して濃縮スラリーを連続的に生成する濃縮スラリー生成部と、
前記濃縮スラリー生成部から前記濃縮スラリーを排出する第1排出部と、
前記濃縮スラリー生成部から排出された前記濃縮スラリーを冷却し、該濃縮スラリー中の媒体液を凝固させて凝固スラリーを生成する凝固スラリー生成部と、
前記凝固スラリー生成部から前記凝固スラリーを回収する回収機構と、を備えていることを特徴とする触媒回収システム。
【請求項2】
請求項1記載の触媒回収システムであって、
前記濃縮スラリー生成部は沈降分離槽を備え、
前記沈降分離槽内の前記スラリーは、前記触媒粒子が前記媒体液の下部に沈降することにより濃縮され、前記濃縮スラリーと、該濃縮スラリーと比較して触媒粒子含有量の少ない清澄スラリーと、に分離されることを特徴とする触媒回収システム。
【請求項3】
請求項2記載の触媒回収システムであって、
前記沈降分離槽は、
前記スラリーが供給される供給口と、
前記第1排出部が接続された排出口と、
前記清澄スラリーが導出される導出口と、を備え、
前記沈降分離槽内には、
前記沈降分離槽内を、前記供給口および前記排出口が開口するとともに下側に位置する下室と、前記導出口が開口するとともに上側に位置する上室と、に区画する区画壁と、
前記区画壁に貫設され、前記下室と前記上室とを連通する連通路と、が設けられていることを特徴とする触媒回収システム。
【請求項4】
請求項3記載の触媒回収システムであって、
前記区画壁は、前記供給口から前記沈降分離槽の中心軸に向かう方向に下方に傾斜していることを特徴とする触媒回収システム。
【請求項5】
請求項4記載の触媒回収システムであって、
前記沈降分離槽内には、前記供給口から前記沈降分離槽の中心軸に向かう方向に下方に傾斜する傾斜壁が、前記区画壁よりも下方に、前記区画壁との間に隙間をあけて配設され、
前記傾斜壁の傾斜角度は、前記触媒粒子の安息角以上であることを特徴とする触媒回収システム。
【請求項6】
請求項3から5のいずれか1項に記載の触媒回収システムであって、
前記連通路には、該連通路内での前記触媒粒子の上昇を規制する規制手段が設けられていることを特徴とする触媒回収システム。
【請求項7】
請求項6記載の触媒回収システムであって、
前記規制手段は、前記連通路の内周面から突設された邪魔板を備え、
前記邪魔板は、前記連通路の内周面から該連通路の通路軸に向かう方向に下方に傾斜していることを特徴とする触媒回収システム。
【請求項8】
請求項3から7のいずれか1項に記載の触媒回収システムであって、
前記上室内には、内部が前記導出口に連通するとともに前記導出口と前記上室との連通を遮断する集油管が設けられ、
前記集油管には、該集油管内と前記上室とを連通する流通孔が形成され、
前記流通孔の流路面積は、前記導出口の流路面積よりも大きくなっていることを特徴とする触媒回収システム。
【請求項9】
請求項2から8のいずれか1項に記載の触媒回収システムであって、
前記沈降分離槽には、該沈降分離槽内を加熱する槽加熱手段が設けられていることを特徴とする触媒回収システム。
【請求項10】
請求項2から9のいずれか1項に記載の触媒回収システムであって、
前記沈降分離槽には、該沈降分離槽内の前記濃縮スラリーの沈降界面を検出する界面検出手段が設けられていることを特徴とする触媒回収システム。
【請求項11】
請求項2から10のいずれか1項に記載の触媒回収システムであって、
前記第1排出部は、
前記沈降分離槽から前記濃縮スラリーを排出する第1上流路と、
前記第1上流路から前記濃縮スラリーが排出される一時ホッパーと、
前記一時ホッパーから前記濃縮スラリーを排出する第1下流路と、
前記第1上流路を開閉する第1上バルブと、
前記第1下流路を開閉する第1下バルブと、を備えていることを特徴とする触媒回収システム。
【請求項12】
請求項11記載の触媒回収システムであって、
前記一時ホッパーには、該一時ホッパー内を加熱するホッパー加熱手段が設けられていることを特徴とする触媒回収システム。
【請求項13】
請求項11または12に記載の触媒回収システムであって、
前記一時ホッパーには、該一時ホッパー内を加圧する第1ホッパー加圧手段を備えていることを特徴とする触媒回収システム。
【請求項14】
請求項2から13のいずれか1項に記載の触媒回収システムであって、
前記沈降分離槽から前記清澄スラリーを導出する清澄流路を備え、
前記清澄流路には、該清澄流路内の前記清澄スラリーを減圧する減圧弁が設けられていることを特徴とする触媒回収システム。
【請求項15】
請求項14記載の触媒回収システムであって、
前記清澄流路から前記清澄スラリーが供給される遠心分離機と、
前記遠心分離機によって前記清澄スラリーから分離された残触媒含有スラリーを排出する第2排出部と、を備え、
前記第2排出部は、
前記遠心分離機から前記残触媒含有スラリーを排出する第2上流路と、
前記第2上流路から前記残触媒含有スラリーが排出される残触媒ホッパーと、
前記残触媒ホッパーから前記残触媒含有スラリーを排出する第2下流路と、を備え、
前記残触媒ホッパーには、該残触媒ホッパー内を加圧する第2ホッパー加圧手段が設けられていることを特徴とする触媒回収システム。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか1項に記載の触媒回収システムであって、
前記凝固スラリー生成部は、
前記濃縮スラリーが排出される冷却ホッパーと、
前記冷却ホッパー内を冷却する冷却手段と、を備え、
前記冷却ホッパーには、該冷却ホッパー内のガスを廃棄するガス廃棄路が設けられていることを特徴とする触媒回収システム。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか1項に記載の触媒回収システムであって、
前記回収機構は、前記凝固スラリーを破砕する破砕手段を備えていることを特徴とする触媒回収システム。
【請求項18】
水素ガスおよび一酸化炭素ガスを主成分とする合成ガスと、媒体液中に固体の触媒粒子を懸濁させてなるスラリーとを接触させることによって炭化水素化合物を合成する炭化水素合成反応装置であって、
前記スラリーを収容するとともに前記合成ガスが供給される反応器本体と、
請求項1から17のいずれか1項に記載の触媒回収システムと、を備えていることを特徴とする炭化水素合成反応装置。
【請求項19】
請求項18記載の炭化水素合成反応装置と、
炭化水素原料を改質して前記合成ガスを生成し、前記合成ガスを前記反応器本体に供給する合成ガス生成ユニットと、
前記炭化水素化合物から液体燃料を製造するアップグレーディングユニットと、を備えていることを特徴とする炭化水素合成反応システム。
【請求項20】
反応器本体に収容されたスラリーから、該スラリーに含まれる触媒粒子を回収する触媒回収方法であって、
前記反応器本体から抜き出された前記スラリーを濃縮して濃縮スラリーを連続的に生成する濃縮スラリー生成工程と、
前記濃縮スラリーを冷却し、該濃縮スラリー中の媒体液を凝固させて凝固スラリーを生成する凝固スラリー生成工程と、
前記凝固スラリーを回収する回収工程と、を有することを特徴とする触媒回収方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−143717(P2012−143717A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4752(P2011−4752)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(504117958)独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構 (101)
【出願人】(509001630)国際石油開発帝石株式会社 (57)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【出願人】(591090736)石油資源開発株式会社 (70)
【出願人】(000105567)コスモ石油株式会社 (443)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】