触媒層−電解質膜積層体及び電極−電解質膜積層体の製造方法及び製造装置
【課題】アノード触媒層12aとカソード触媒層12bの両方の厚みのバラツキを抑制することを目的とする。
【解決手段】電解質膜11の両面に触媒層12が形成された触媒層−電解質膜積層体13の製造方法であって、電解質膜11を供給する工程と、電解質膜11の上面に、第1ダイヘッド3aによりアノード触媒層用塗工液を塗工しこれを乾燥させてアノード触媒層12aを形成する工程と、電解質膜11の下面に、第2ダイヘッド3bによりカソード触媒層用塗工液を塗工しこれを乾燥させてカソード触媒層12bを形成する工程と、を含み、第1ダイヘッド3aのマニホールド角度αは、第2ダイヘッド3bのマニホールド角度αよりも小さい。
【解決手段】電解質膜11の両面に触媒層12が形成された触媒層−電解質膜積層体13の製造方法であって、電解質膜11を供給する工程と、電解質膜11の上面に、第1ダイヘッド3aによりアノード触媒層用塗工液を塗工しこれを乾燥させてアノード触媒層12aを形成する工程と、電解質膜11の下面に、第2ダイヘッド3bによりカソード触媒層用塗工液を塗工しこれを乾燥させてカソード触媒層12bを形成する工程と、を含み、第1ダイヘッド3aのマニホールド角度αは、第2ダイヘッド3bのマニホールド角度αよりも小さい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒層−電解質膜積層体及び電極−電解質膜積層体の製造方法及び製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固体高分子形燃料電池は、触媒層及び導電性多孔質基材からなる電極を電解質膜の両面に形成した電極−電解質膜積層体(MEA)を主な構成としている。この電極−電解質膜積層体の製造方法として、例えば、特許文献1に示されるような、電解質膜を準備し、この電解質膜の両面にダイヘッドによって触媒層を塗工し、これに導電性多孔質基材を積層する方法が一般的に行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−168449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した方法で形成した触媒層は、アノード側及びカソード側の少なくともどちらかの触媒層の厚みにばらつきが生じるといった問題があった。このように各触媒層の厚みにばらつきが生じると発電にバラツキが生じ性能低下を招くという問題がある。そこで、本発明は、アノード側及びカソード側の両方の触媒層の厚みのバラツキを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る第1の触媒層−電解質膜積層体の製造方法は、電解質膜の両面に触媒層が形成された触媒層−電解質膜積層体の製造方法であって、電解質膜を供給する工程と、前記電解質膜の一方面上に、第1ダイヘッドによりアノード触媒層用塗工液を塗工し、前記アノード触媒層用塗工液を乾燥させてアノード触媒層を形成する工程と、前記電解質膜の他方面上に、第2ダイヘッドによりカソード触媒層用塗工液を塗工し、前記カソード触媒層用塗工液を乾燥させてカソード触媒層を形成する工程と、を含み、前記第1ダイヘッドのマニホールド角度は、前記第2ダイヘッドのマニホールド角度よりも小さい。
【0006】
上記製造方法では、第1及び第2ダイヘッドのマニホールドにマニホールド角度を付けることによって、塗工液がダイヘッドに注入されてから吐出されるまでの距離をダイヘッドの幅方向において調整し、幅方向における触媒層の厚みのバラツキを抑えることができる。また、一般的に、アノード触媒層用塗工液はカソード触媒層用塗工液よりも粘度の低いものが用いられるため、同じマニホールド角度を有するダイヘッドを用いてアノード触媒層用塗工液とカソード触媒層用塗工液を塗工すると、どちらかの触媒層に厚みのバラツキが発生する可能性があった。これに対して、本発明に係る製造方法では、一般的にカソード触媒層用塗工液よりも粘度の低いアノード触媒層用塗工液を塗工する第1ダイヘッドのマニホールド角度を第2ダイヘッドのマニホールド角度よりも小さくしているため、アノード触媒層とカソード触媒層の両方の触媒層のバラツキを抑制することができる。なお、第1ダイヘッドは、マニホールド角度を0.5〜1.0°とするとともに、粘度が0.03〜0.08Pa・sのアノード触媒層用塗工液を塗工し、第2ダイヘッドは、マニホールド角度を1.0〜1.5°とするとともに、粘度が0.1〜0.6Pa・sのカソード触媒層塗工液を塗工することでより触媒層の厚みのバラツキを抑制することができる。
【0007】
本発明に係る第2の触媒層−電解質膜積層体の製造方法は、電解質膜の両面に触媒層が形成された触媒層−電解質膜積層体の製造方法であって、第1基材シートを供給する工程と、前記第1基材シート上にアノード触媒層用塗工液を第1ダイヘッドによって塗工し、前記アノード触媒層用塗工液を乾燥させてアノード触媒層転写シートを作製する工程と、第2基材シートを供給する工程と、前記第2基材シート上にカソード触媒層用塗工液を第2ダイヘッドによって塗工し、前記カソード触媒層用塗工液を乾燥させてカソード触媒層転写シートを作製する工程と、電解質膜を供給する工程と、前記アノード触媒層が前記電解質膜と対向した状態で前記アノード触媒層転写シートを前記電解質膜の一方面上に向けて押圧して前記アノード触媒層を前記電解質膜の一方面上に転写する工程と、前記カソード触媒層が前記電解質膜と対向した状態で前記カソード触媒層転写シートを前記電解質膜の他方面上に向けて押圧して前記カソード触媒層を前記電解質膜の他方面上に転写する工程と、前記各触媒層が電解質膜に転写された後の各基材シートを剥離する工程と、を含み、前記第1ダイヘッドのマニホールド角度は、前記第2ダイヘッドのマニホールド角度よりも小さい。
【0008】
この製造方法によれば、上記第1の触媒層−電解質膜積層体の製造方法と同様に、第1ダイヘッドのマニホールド角度が第2ダイヘッドのマニホールド角度よりも小さく構成されているため、上述したのと同様の効果を奏することができる。また、この場合も、第1ダイヘッドは、マニホールド角度を0.5〜1.0°とするとともに、粘度が0.03〜0.08Pa・sのアノード触媒層用塗工液を塗工し、第2ダイヘッドは、マニホールド角度を1.0〜1.5°とするとともに、粘度が0.1〜0.6Pa・sのカソード触媒層用塗工液を塗工することでより触媒層のバラツキを抑制することができる。なお、上記アノード触媒層を電解質膜の一方面上に転写する工程と、カソード触媒層を電解質膜の他方面上に転写する工程とは、同時に行ってもよいし、別々に行ってもよい。
【0009】
また、本発明に係る第1の電極−電解質膜積層体の製造方法は、上記いずれかの触媒層−電解質膜積層体の製造方法と、前記各触媒層上に導電性多孔質基材を積層する工程と、を含む。この製造方法によれば、上述したいずれかの触媒層−電解質膜積層体の製造方法を含んでいるため、上述したのと同様の効果を奏することができる。
【0010】
また、本発明に係る第2の電極−電解質膜積層体の製造方法は、触媒層及び導電性多孔質基材を有する電極が電解質膜の両面に形成された電極−電解質膜積層体の製造方法であって、アノード導電性多孔質基材を供給する工程と前記アノード導電性多孔質基材上にアノード触媒層用塗工液を第1ダイヘッドによって塗工し、前記アノード触媒層用塗工液を乾燥させてアノード電極を作製する工程と、カソード導電性多孔質基材を供給する工程と、前記カソード導電性多孔質基材上にカソード触媒層用塗工液を第2ダイヘッドによって塗工し、前記カソード触媒層用塗工液を乾燥させてカソード電極を作製する工程と、電解質膜を供給する工程と、前記アノード触媒層が前記電解質膜と対向した状態で前記アノード電極を前記電解質膜の一方面上に向けて押圧して前記アノード触媒層と前記電解質膜とを接着させる工程と、前記カソード触媒層が前記電解質膜と対向した状態で前記カソード電極を前記電解質膜の他方面上に向けて押圧して前記カソード触媒層と前記電解質膜とを接着させる工程と、を含み、前記第1ダイヘッドのマニホールド角度は、前記第2ダイヘッドのマニホールド角度よりも小さい。
【0011】
この製造方法によれば、上述した製造方法と同様に第1ダイヘッドのマニホールド角度が第2ダイヘッドのマニホールド角度よりも小さくなっているため、両方の触媒層の厚みのバラツキを抑制することができる。また、この場合も、第1ダイヘッドは、マニホールド角度を0.5〜1.0°とするとともに、粘度が0.03〜0.08Pa・sのアノード触媒層用塗工液を塗工し、また第2ダイヘッドは、マニホールド角度を1.0〜1.5°とするとともに、粘度が0.1〜0.6Pa・sのカソード触媒層用塗工液を塗工することで、より触媒層のバラツキを抑制することができる。なお、上記アノード電極を電解質膜に向けて押圧する工程と、カソード電極を電解質膜に向けて押圧する工程とは、同時に行ってもよいし、別々に行ってもよい。
【0012】
また、本発明に係る第1の触媒層−電解質膜積層体製造装置は、電解質膜の両面に触媒層が形成された触媒層−電解質膜積層体を製造する装置であって、電解質膜を供給する電解質膜供給機構と、前記電解質膜の一方面上にアノード触媒層用塗工液を塗工する第1ダイヘッドと、前記電解質膜の他方面上にカソード触媒層用塗工液を塗工する第2ダイヘッドと、前記電解質膜に塗工されたアノード触媒層用塗工液及びカソード触媒層用塗工液を乾燥させる乾燥手段と、を備え、前記第1ダイヘッドのマニホールド角度は、前記第2ダイヘッドのマニホールド角度よりも小さい。
【0013】
この構成によれば、第1ダイヘッドのマニホールド角度は、前記第2ダイヘッドのマニホールド角度よりも小さく構成されているため、上述したように両方の触媒層の厚みのバラツキを防止することができる。また、この場合も、第1ダイヘッドは、マニホールド角度を0.5〜1.0°とするとともに、粘度が0.03〜0.08Pa・sのアノード触媒層用塗工液を塗工し、また第2ダイヘッドは、マニホールド角度を1.0〜1.5°とするとともに、粘度が0.1〜0.6Pa・sのカソード触媒層用塗工液を塗工することで、より触媒層のバラツキを抑制することができる。なお、上記乾燥手段は、アノード触媒層用塗工液及びカソード触媒層用塗工液を同時に乾燥させてもよいし、または、各触媒層を別々に乾燥させてもよい。また、上記乾燥手段は自然乾燥も含む概念である。
【0014】
また、本発明に係る第2の触媒層−電解質膜積層体製造装置は、電解質膜の両面に触媒層が形成された触媒層−電解質膜積層体を製造する装置であって、第1基材シートを供給する第1基材シート供給機構と、前記第1基材シート上にアノード触媒層用塗工液を塗工する第1ダイヘッドと、第2基材シートを供給する第2基材シート供給機構と、前記第2基材シート上にカソード触媒層用塗工液を塗工する第2ダイヘッドと、前記第1又は第2基材シート上に塗工されたアノード及びカソード用触媒層用塗工液を乾燥させてアノード触媒層転写シート及びカソード触媒層転写シートを形成する乾燥手段と、電解質膜を供給する電解質膜供給機構と、前記各触媒層が前記電解質膜と対向した状態で、前記アノード触媒層転写シートを前記電解質膜の一方面上に、前記カソード触媒層転写シートを前記電解質膜の他方面上に向けて押圧し前記各触媒層を前記電解質膜に転写させる押圧機構と、を備え、前記第1ダイヘッドのマニホールド角度は、前記第2ダイヘッドのマニホールド角度よりも小さい。
【0015】
この構成によれば、第1ダイヘッドのマニホールド角度は、前記第2ダイヘッドのマニホールド角度よりも小さく構成されているため、上述したように両方の触媒層の厚みのバラツキを防止することができる。また、この場合も、第1ダイヘッドは、マニホールド角度を0.5〜1.0°とするとともに、粘度が0.03〜0.08Pa・sのアノード触媒層用塗工液を塗工し、また第2ダイヘッドは、マニホールド角度を1.0〜1.5°とするとともに、粘度が0.1〜0.6Pa・sのカソード触媒層用塗工液を塗工することで、より触媒層のバラツキを抑制することができる。なお、上記乾燥手段は、アノード触媒層用塗工液及びカソード触媒層用塗工液を同時に乾燥させてもよいし、または、各触媒層を別々に乾燥させてもよい。また、上記乾燥手段は自然乾燥も含む概念である。
【0016】
本発明に係る電極−電解質膜積層体製造装置は、触媒層及び導電性多孔質基材を有する電極が電解質膜の両面に形成された電極−電解質膜積層体の製造装置であって、アノード導電性多孔質基材を供給するアノード導電性多孔質基材供給機構と、前記アノード導電性多孔質基材上にアノード触媒層用塗工液を塗工する第1ダイヘッドと、カソード導電性多孔質基材を供給するカソード導電性多孔質基材供給機構と、前記カソード導電性多孔質基材上にカソード触媒層用塗工液を塗工する第2ダイヘッドと、前記アノード導電性多孔質基材又はカソード導電性多孔質基材上に塗工されたアノード及びカソード用触媒層用塗工液を乾燥させてアノード電極及びカソード電極を形成する乾燥手段と、電解質膜を供給する電解質膜供給機構と、前記各触媒層が前記電解質膜と対向した状態で、前記アノード電極を前記電解質膜の一方面上に、前記カソード電極を前記電解質膜の他方面上に向けて押圧し前記各触媒層を前記電解質膜に接着させる押圧機構と、を備え、前記第1ダイヘッドのマニホールド角度は、前記第2ダイヘッドのマニホールド角度よりも小さい。
【0017】
この構成によれば、第1ダイヘッドのマニホールド角度は、前記第2ダイヘッドのマニホールド角度よりも小さく構成されているため、上述したように両方の触媒層の厚みのバラツキを防止することができる。また、この場合も、第1ダイヘッドは、マニホールド角度を0.5〜1.0°とするとともに、粘度が0.03〜0.08Pa・sのアノード触媒層用塗工液を塗工し、また第2ダイヘッドは、マニホールド角度を1.0〜1.5°とするとともに、粘度が0.1〜0.6Pa・sのカソード触媒層用塗工液を塗工することで、より触媒層のバラツキを抑制することができる。なお、上記乾燥手段は、アノード触媒層用塗工液及び雄カソード触媒層用塗工液を同時に乾燥させてもよいし、または、各触媒層を別々に乾燥させてもよい。また、上記乾燥手段は自然乾燥も含む概念である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、アノード触媒層及びカソード触媒層の厚みのバラツキを両方とも抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は第1実施形態に係る触媒層−電解質膜積層体製造装置を示す概略側面図である。
【図2】図2は第1実施形態に係る第1又は第2ダイヘッドを示す斜視図である。
【図3】図3は第1実施形態に係る第1又は第2ダイヘッドの上刃を示す正面図(a)、及び側面図(b)である。
【図4】図4は第1実施形態に係る第1又は第2ダイヘッドの下刃を示す正面図(a)、及び側面図(b)である。
【図5】図5は第1実施形態に係る第1又は第2ダイヘッドの側板を示す正面図である。
【図6】図6は第1実施形態に係る電極−電解質膜積層体製造装置を示す概略側面図である。
【図7】図7は第2実施形態に係る触媒層−電解質膜積層体製造装置を示す概略側面図である。
【図8】図8は第2実施形態に係る反転機構の詳細を示す斜視図である。
【図9】図9は第3実施形態に係る触媒層−電解質膜積層体製造装置を示す概略側面図である。
【図10】図10は第4実施形態に係るアノード触媒層転写シート製造装置(a)及びカソード触媒層製造装置(b)を示す概略側面図である。
【図11】図11は第4実施形態に係る電極−電解質膜積層体の製造方法を示す説明図である。
【図12】図12は第4実施形態に係る電極−電解質膜積層体の製造方法の他の例を示す概略側面図である。
【図13】図13は第5実施形態に係るアノード電極製造装置(a)及びカソード電極製造装置(b)を示す概略側面図である。
【図14】図14は第5実施形態に係る電極−電解質膜積層体の製造方法を示す説明図である。
【図15】図15は第5実施形態に係る電極−電解質膜積層体の製造方法の他の例を示す概略側面図である。
【図16】図16は実施例の結果、すなわち幅方向における各マニホールド角度毎のアノード触媒層の厚みのバラツキを示すグラフである。
【図17】図17は実施例の結果、すなわち幅方向における各マニホールド角度毎のカソード触媒層の厚みのバラツキを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態に係る触媒層−電解質膜積層体製造装置について図面を参照しつつ説明する。
【0021】
図1に示すように、触媒層−電解質膜積層体製造装置1は、電解質膜11を巻き出す巻出部2と、電解質膜11の上面にアノード触媒層用塗工液を塗工する第1ダイヘッド3aと、電解質膜11の下面にカソード触媒層用塗工液を塗工する第2ダイヘッド3bと、触媒層−電解質膜積層体13を巻き取る巻取部4と、を備えている。また、アノード触媒層用塗工液の塗工後にこれを乾燥させてアノード触媒層12aを形成するための第1乾燥部5aが第1ダイヘッド3aの下流に設置されており、カソード触媒層用塗工液の塗工後にこれを乾燥させてカソード触媒層12bを形成するための第2乾燥部5bが第2ダイヘッド3bの下流に設置されている。なお、上記巻出部2が本発明の電解質膜供給機構に相当する。
【0022】
巻出部2は、長尺の電解質膜11が巻かれた巻出ロール21と、この巻出ロール21から斜め上方に繰り出された電解質膜11を水平方向に搬送されるように案内する第1従動ローラ22とを備えている。巻出ロール21は第1駆動装置(図示省略)によって回転駆動されるものであり、また、第1従動ローラ22は、回転自在に設置されており、電解質膜11が搬送されることに伴い回転するように構成されている。
【0023】
第1ダイヘッド3aは、電解質膜11の上方に設置されており、電解質膜11の上面にアノード触媒層用塗工液を塗工するように構成されている。この第1ダイヘッド3aは、図2に示すように、電解質膜11の搬送方向の下流側に配置された上刃31と、この上刃31に対向し上流側に配置された下刃32と、これら上刃31及び下刃32の両側に取り付けられる一対の側板33とを備えている。
【0024】
上刃31は、図3に示すように、正面視矩形状で水平方向が長手方向となるように板状に形成されている。上刃31の一方の面には、略水平方向に延びる断面半円状のマニホールド311が形成されている。このマニホールド311は、完全に水平とはなっておらず、中央から両端側に行くに従って下方に下がるように形成されている。このマニホールド311から下端に亘って所定厚さtだけ削られることで、その厚さはマニホールド311から上方よりも薄くなっており、これにより排出路312が形成されている。なお、この排出路312の下端が吐出口313となっている。また、マニホールド311の中央には、上方へ延びる供給口314が形成されており、上刃31の上面から外部へ開口している。また、上刃31のマニホールド311が形成されている面とは反対側の面は、下方にいくにしたがって薄くなるように形成され、端部が鋭利に形成されている。なお、マニホールド311の下方に下がる角度、すなわち、マニホールド311と下端の吐出口313とがなす角度をマニホールド角度αという。
【0025】
下刃32は、図4に示すように、上刃31と異なりマニホールドや供給口、排出路、吐出口などが形成されておらず、平坦な面が形成されている。また、各側板33は、図5に示すように板状に形成され、上刃31と下刃32とを当接させたときの両側面にそれぞれ取り付けられるように構成されている。したがって、正面視では、五角形状に形成されている。
【0026】
第2ダイヘッド3bは、電解質膜11の下方に設置されており、電解質膜11の下面にカソード触媒層12bを塗工するように構成されている。この第2ダイヘッド3bは、マニホールド角度αが異なる点以外は上述した第1ダイヘッド3aと同じ構成となっている。このマニホールド角度αは、アノード触媒層用塗工液を塗工する第1ダイヘッド2の方が、カソード触媒層用塗工液を塗工する第2ダイヘッド3bよりも小さくなるよう形成されている。なお、第1ダイヘッド2のマニホールド角度αは、0〜1.5°程度とすることが好ましく、0.5〜1.0°程度とすることがさらに好ましい。また、第2ダイヘッド3bのマニホールド角度αは、0.5〜2°程度とすることが好ましく、1.0〜1.5°程度とすることがさらに好ましい。
【0027】
巻取部4は、電解質膜11の両面に触媒層12が形成された触媒層−電解質膜積層体13をロール状に巻き取る巻取ロール41と、水平方向に搬送されていた触媒層−電解質膜積層体13を巻取ロール41へと案内する第2従動ローラ42とを備えている。この巻取ロール41は第2駆動装置(図示省略)によって回転駆動されるように構成されている。また、第2従動ローラ42は、上述した第1従動ローラ22と同様に、回転自在に設置されており、電解質膜11が搬送されることに伴い回転するように構成されている。
【0028】
第1及び第2乾燥部5a、5bは、温風により乾燥することで第1ダイヘッド3aや第2ダイヘッド3bによって塗工された触媒層用塗工液を乾燥するような構成となっている。
【0029】
続いて、上記触媒層−電解質膜製造装置1による触媒層−電解質膜積層体13の製造方法について説明する。
【0030】
まず、巻出ロール21から巻き出されて第1従動ローラ22によって水平方向に搬送された電解質膜11の上面に、第1ダイヘッド3aによってアノード触媒層用塗工液を塗工する。より詳細には、第1ダイヘッド3aの供給口314からアノード触媒層用塗工液を圧入する。こうして圧入されたアノード触媒層用塗工液はマニホールド311内を幅方向に広がりながら排出路312を下方へと流れていき、下端の吐出口313から電解質膜11上へ塗工される。このように電解質膜11の上面に塗工されたアノード触媒層用塗工液は、第1乾燥部5a内を通過することによって乾燥されてアノード触媒層12aが形成される。なお、電解質膜11は、例えば、Dupont製Nafion(パーフルオロ系樹脂)等種々の材料を用いることができ、その厚さは25〜175μm程度とすることが好ましいが特にこれに限定されるものではない。また、このアノード触媒層用塗工液としては、カーボンに白金を担持した燃料電池用触媒をプロトン伝導性のある電解質樹脂溶液に水又はアルコールに分散した触媒インキ等を挙げることができ、この粘度は、せん断速度100[1/s]のときの値が0.001〜1Pa・sとすることが好ましく、0.01〜0.1Pa・sとすることがさらに好ましい。
【0031】
次に、第1乾燥部5aを通過した電解質膜11の下面に、第2ダイヘッド3bによってカソード触媒層用塗工液を塗工する。このカソード触媒層用塗工液の塗工の詳細は、上記アノード触媒層用塗工液の塗工と同じであるため、その説明を省略する。なお、カソード触媒層用塗工液は、上述したアノード触媒層用塗工液と同じものを挙げることができ、その粘度は、せん断速度100[1/s]のときの値が0.001〜10Pa・sとすることが好ましく0.08〜1Pa・sとすることがさらに好ましい。そして、電解質膜11の下面に塗工されたカソード触媒層用塗工液は、第2乾燥部5bを通過することで乾燥されてカソード触媒層12bが形成される。
【0032】
以上のように電解質膜11の両面に触媒層12を形成することで完成した触媒層−電解質膜積層体13を、第2従動ローラ42を介して巻取ロール41によって巻き取る。このようにして作製したロール状の触媒層−電解質膜積層体13を枚葉状に切断し、各枚葉状の触媒層−電解質膜積層体13の各触媒層12上に導電性多孔質基材14を積層して電極−電解質膜積層体15を作製してもよい。また、触媒層−電解質膜積層体13を枚葉状に切断せずに、ロール状のままで電極−電解質膜積層体15を作製することもできる。例えば、図6に示すように、ロール状の触媒層−電解質膜積層体13を巻き出すとともに、この触媒層−電解質膜積層体13の上面及び下面のそれぞれにロール状の導電性多孔質基材14を巻き出し、一対の加圧ローラ6でこれらを挟んで加圧することで、触媒層−電解質膜積層体13の各触媒層12上に導電性多孔質基材14をそれぞれ接着させて電極−電解質膜積層体15を作製することができる。なお、上記導電性多孔質基材14としては、カーボン製の繊維や、ペーパー、フェルトなどを用いることができ、この厚さは20〜400μm程度とすることが好ましいが特にこれに限定されるものではない。
【0033】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る触媒層−電解質膜積層体製造装置1は、図7に示すように、第1実施形態と同様に、巻出部2、第1ダイヘッド3a、第2ダイヘッド3b、巻取部4、並びに、第1及び第2乾燥部5a、5bを備えている。第2実施形態特有の構成として、搬送中の電解質膜11を第2ダイヘッド3bの上流において反転させる反転機構7を有しており、第2ダイヘッド3bが、電解質膜11の下方ではなく上方に設置されており、電解質膜11の上面にカソード触媒層12bを塗工するように構成されている。このように、第2実施形態では、第1ダイヘッド3a及び第2ダイヘッド3bがともに電解質膜11の異なる面ではあるが、電解質膜11の上面に対して触媒層12を塗工するように構成されている。なお、種々の方法によって電解質膜11の表面と裏面とを反転させることができるが、このような反転機構の例として、例えば図8に示すように、電解質膜11の搬送に従って回転するよう設置された第1〜第3反転用従動ローラ71、72,73を第1乾燥部5aの下流にさらに備えた構成とすることができる。この構成では、水平方向に搬送されてきた電解質膜11を第1反転用従動ローラ71によって一旦上方へ搬送するよう向きを変え、第2反転用従動ローラ72でその上方に搬送されてきた電解質膜11を下方へ搬送するように向きを変え、第3反転用従動ローラ73で下方へ搬送されてきた電解質膜11を再度水平方向に搬送するように向きを変える。そして、第2反転用従動ローラ72と第3反転用従動ローラ73との間で電解質膜11を捩ることで反転させて第1ダイヘッド3aによってアノード触媒層12aが塗工された面を下面とし、何も塗工されていない面を上面とする。そして、第3反転用従動ローラ73の下流で第2ダイヘッド3bによってカソード触媒層用塗工液を塗工する。なお、その他の構成や方法などは上記第1実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0034】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る触媒層−電解質膜積層体製造装置1は、図9に示すように、第1実施形態と同様に、巻出部2,第1ダイヘッド3a,第2ダイヘッド3b、巻取部4、並びに、第1及び第2乾燥部5a、5bを備えている。第3実施形態特有の構成として、第2実施形態と同様に反転機構7を備えており、第1ダイヘッド3a及び第2ダイヘッド3bがともに電解質膜11の上方から各触媒層12を電解質膜11の異なる面に塗工するように構成されている。この第3実施形態に係る触媒層−電解質膜積層体製造装置1における反転機構7について説明すると、まず、第1実施形態と同様に、巻出ロール21から巻き出されて第1従動ローラ22によって水平方向に搬送された電解質膜11の上面に、第1ダイヘッド3aによってアノード触媒層用塗工液を塗工し、第1乾燥部5aによってこれを乾燥させてアノード触媒層12aを形成する。そして、この第1乾燥部5aを出た電解質膜11を第4反転用従動ローラ74によって上方に搬送するよう搬送方向を変え、第5反転用従動ローラ75で再度水平方向に搬送させる。そして、第6反転用従動ローラ76で下方に進行するよう搬送方向を変え、第7反転用従動ローラ77で水平方向に搬送させる。なお、この第7反転用従動ローラ77の下流では電解質膜11は水平方向に進行するが、その進行方向は、第1ダイヘッド3aの下流における進行方向とは逆となっているため、アノード触媒層12aが形成されていない面が上方を向いた状態で電解質膜11は搬送されている。そして、この第7反転用従動ローラ77の下流で第2ダイヘッド3bによってカソード触媒層用塗工液を塗工し、これを第2乾燥部5bによって乾燥させることでカソード触媒層12bを形成する。なお、この反転用従動ローラの数は特に限定されるものではなく、例えば、第5又は第6反転用従動ローラ75,76を省略してもよいし、逆にさらに反転用従動ローラを設置することもできる。また、その他の構成や方法などは上記第1実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0035】
(第4実施形態)
第4実施形態に係る触媒層−電解質膜積層体の製造方法について説明する。なお、上記第1実施形態と同様のものについては同一の符号を付してその説明を省略する。まず、図10(a)に示すように、巻出ロール21aから第1基材シート16aを巻き出し、この上面に第1ダイヘッド3aによってアノード触媒層用塗工液を塗工し、第1乾燥部5aによってこれを乾燥させてアノード触媒層12aを形成する。そして、基材シート16a上にアノード触媒層12aを形成することによってできたアノード触媒層転写シート17aを巻取ロール41aに巻き取る。また、これと同様に、図10(b)に示すように、巻出ロール21bから第2基材シート16bを巻出し、この上面に第2ダイヘッド3bによってカソード触媒層用塗工液を塗工し、第2乾燥部5bによってこれを乾燥させてカソード触媒層12bを形成する。そして、第2基材シート16b上にカソード触媒層12bを形成することによってできたカソード触媒層転写シート17bを巻取ロール41bに巻き取る。なお、各基材シート16としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、PFA,ETFE、FEP等のフッ素フィルムや、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンや、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド等を使用することができ、その厚さは12〜150μm程度とすることが好ましい。なお、巻出部2aが本発明の第1基材シート供給機構に相当し、巻出部2bが本発明の第2基材シート供給機構に相当する。
【0036】
以上のようにして形成されたロール状の各転写シート17を枚葉状に切断し、図11(a)に示すように、アノード触媒層転写シート17aとカソード触媒層転写シート17bとによって、各触媒層12が電解質膜11側を向くように電解質膜11を挟み、各触媒層転写シート17の背面側から加圧及び加熱することによって電解質膜に各触媒層12を接着させる。そして、図11(b)に示すように各基材シート16を剥離することによって触媒層−電解質膜積層体13が完成する。また、この各触媒層12上に導電性多孔質基材14を配置することで電極−電解質膜積層体15が完成する(図11(c))。
【0037】
なお、上述したようにロール状の各転写シート17を枚葉状に切断するのではなく、ロール状のままで電極−電解質膜積層体15を形成することもできる。例えば、図12に示すように、ロール状の電解質膜11を巻き出すとともに、この電解質膜11の上面においてロール状のアノード触媒層転写シート17aを巻出し、電解質膜11の下面においてロール状のカソード触媒層転写シート17bを巻出す。なお、各触媒層転写シート17は触媒層12が電解質膜11と対向するような向きで巻き出される。次に、一対の第1加圧ローラ6aでこれらを挟んで加圧することで、電解質膜11の上面にアノード触媒層12aを転写し、下面にカソード触媒層12bを転写し、その後、各転写シート17a、bの基材シート16a、bを剥離してこれを巻き取る。このようにして作製された触媒層−電解質膜積層体13の上面及び下面のそれぞれにロール状の導電性多孔質基材14を巻出し、さらに第2加圧ローラ6bでこれらを挟んで加圧することで、触媒層−電解質膜積層体13の各触媒層12上に導電性多孔質基材14を接着させて電極−電解質膜積層体15を作製することができる。なお、第1加圧ローラ6aが本発明の押圧機構に相当する。
【0038】
(第5実施形態)
第5実施形態に係る触媒層−電解質膜積層体の製造方法について説明する。なお、上記第1実施形態と同様のものについては同一の符号を付してその説明を省略する。まず、図13(a)に示すように、巻出ロール21aからアノード導電性多孔質基材14aを巻き出し、この上面に第1ダイヘッド3aによってアノード触媒層用塗工液を塗工し、第1乾燥部5aによってこれを乾燥させてアノード触媒層12aを形成する。そして、アノード導電性多孔質基材14a上にアノード触媒層12aを形成することによってできたアノード電極18aを巻取ロール41aに巻き取る。また、これと同様に、図13(b)に示すように、巻出ロール21bからカソード導電性多孔質基材14bを巻出し、この上面に第2ダイヘッド3bによってカソード触媒層用塗工液を塗工し、第2乾燥部5bによってこれを乾燥させてカソード触媒層12bを形成する。そして、カソード導電性多孔質基材14b上にカソード触媒層12bを形成することによってできたカソード電極18bを巻取ロール41bに巻き取る。
【0039】
以上のようにして形成されたロール状の電極18を枚葉状に切断し、図14に示すように、アノード電極18aとカソード電極18bとによって、各触媒層12が電解質膜11側を向くように電解質膜11を挟み、各電極18の背面側から加圧及び加熱することによって電解質膜11に各電極18を接着させることで電極−電解質膜積層体15が完成する。
【0040】
なお、上述したようにロール状の電極18を枚葉状に切断するのではなく、ロール状のままで電極−電解質膜積層体15を形成することもできる。例えば図15に示すように、ロール状の電解質膜11を巻き出すとともに、この電解質膜11の上面において触媒層12aが電解質膜11と対向するようにロール状のアノード電極18aを巻き出し、また、電解質膜11の下面においてロール状のカソード電極18bを触媒層12bが電解質膜11と対向するように巻き出す。そして、一対の加圧ローラ6によってこれらを挟んで加圧することで、電解質膜11と各触媒層12とを接合させて電極−電解質膜積層体15が完成する。なお、この加圧ローラ6が本発明の押圧機構に相当する。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0042】
例えば、上記各実施形態では、アノード及びカソード触媒層用塗工液を乾燥させるための乾燥手段として、第1及び第2乾燥部を設けていたが、自然乾燥させることもできる。また、第1ダイヘッド3a下流の第1乾燥部5aを省略して、第2乾燥部5bのみでアノード及びカソード触媒層用塗工液を乾燥させることもできる。
【実施例】
【0043】
まず、表1に示すような配合でアノード触媒層用塗工液及びカソード触媒層用塗工液をそれぞれ作製した。
【0044】
【表1】
【0045】
このようなアノード触媒層用塗工液及びカソード触媒層用塗工液を、図2及び3に示すような構成のダイヘッドを使用して厚さ25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに幅100mmで塗工した。なお、ダイヘッドは、マニホールド角度αが異なるものを5種類用意した。この5種類のダイヘッドによってPETフィルムに塗工し、その幅方向の中心から幅方向に10mm間隔で触媒層の厚みを測定し、この厚みの測定値を表2に示した。なお、幅方向の端部は実際には切断して製品として使用されない領域であるため、中央から幅方向に40mmずつ計80mmの領域のみを測定した。また、アノード触媒層の厚みのバラツキ結果をグラフにしたものを図16に示し、カソード触媒層の厚みのバラツキ結果をグラフにしたものを図17に示した。なお、各グラフの縦軸の目盛り間隔は2μmである。また、各グラフは、測定した厚みを示すものではなく、厚みのバラツキを示すものである。
【0046】
【表2】
【0047】
この表2及び各グラフから分かるように、触媒層を幅方向に均一の厚さで塗るためには、アノード触媒層用塗工液を塗工する第1ダイヘッド3aと、カソード触媒層用塗工液を塗工する第2ダイヘッド3bとのマニホールド角度αを異なる値とすることが好ましい、すなわち、第1ダイヘッド3aのマニホールド角度αを第2ダイヘッド3bのマニホールド角度αよりも小さくした方が好ましいことが分かった。そして、第1ダイヘッド3aのマニホールド角度αは0.5〜1.0°とすることで幅方向における触媒層の厚みのバラツキがもっとも小さくなり、また、第2ダイヘッド3bのマニホールド角度αは1.0〜1.5°とすることで幅方向における触媒層の厚みのバラツキがもっとも小さくなることも分かった。
【符号の説明】
【0048】
1 触媒層−電解質膜積層体製造装置
2 巻出部
3a 第1ダイヘッド
3b 第2ダイヘッド
5a 第1乾燥部(乾燥手段)
5b 第2乾燥部(乾燥手段)
11 電解質膜
12a アノード触媒層
12b カソード触媒層
13 触媒層−電解質膜積層体
14 導電性多孔質基材
15 電極−電解質膜積層体
16a 第1基材シート
16b 第2基材シート
17a アノード触媒層転写シート
17b カソード触媒層転写シート
18a アノード電極
18b カソード電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒層−電解質膜積層体及び電極−電解質膜積層体の製造方法及び製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固体高分子形燃料電池は、触媒層及び導電性多孔質基材からなる電極を電解質膜の両面に形成した電極−電解質膜積層体(MEA)を主な構成としている。この電極−電解質膜積層体の製造方法として、例えば、特許文献1に示されるような、電解質膜を準備し、この電解質膜の両面にダイヘッドによって触媒層を塗工し、これに導電性多孔質基材を積層する方法が一般的に行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−168449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した方法で形成した触媒層は、アノード側及びカソード側の少なくともどちらかの触媒層の厚みにばらつきが生じるといった問題があった。このように各触媒層の厚みにばらつきが生じると発電にバラツキが生じ性能低下を招くという問題がある。そこで、本発明は、アノード側及びカソード側の両方の触媒層の厚みのバラツキを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る第1の触媒層−電解質膜積層体の製造方法は、電解質膜の両面に触媒層が形成された触媒層−電解質膜積層体の製造方法であって、電解質膜を供給する工程と、前記電解質膜の一方面上に、第1ダイヘッドによりアノード触媒層用塗工液を塗工し、前記アノード触媒層用塗工液を乾燥させてアノード触媒層を形成する工程と、前記電解質膜の他方面上に、第2ダイヘッドによりカソード触媒層用塗工液を塗工し、前記カソード触媒層用塗工液を乾燥させてカソード触媒層を形成する工程と、を含み、前記第1ダイヘッドのマニホールド角度は、前記第2ダイヘッドのマニホールド角度よりも小さい。
【0006】
上記製造方法では、第1及び第2ダイヘッドのマニホールドにマニホールド角度を付けることによって、塗工液がダイヘッドに注入されてから吐出されるまでの距離をダイヘッドの幅方向において調整し、幅方向における触媒層の厚みのバラツキを抑えることができる。また、一般的に、アノード触媒層用塗工液はカソード触媒層用塗工液よりも粘度の低いものが用いられるため、同じマニホールド角度を有するダイヘッドを用いてアノード触媒層用塗工液とカソード触媒層用塗工液を塗工すると、どちらかの触媒層に厚みのバラツキが発生する可能性があった。これに対して、本発明に係る製造方法では、一般的にカソード触媒層用塗工液よりも粘度の低いアノード触媒層用塗工液を塗工する第1ダイヘッドのマニホールド角度を第2ダイヘッドのマニホールド角度よりも小さくしているため、アノード触媒層とカソード触媒層の両方の触媒層のバラツキを抑制することができる。なお、第1ダイヘッドは、マニホールド角度を0.5〜1.0°とするとともに、粘度が0.03〜0.08Pa・sのアノード触媒層用塗工液を塗工し、第2ダイヘッドは、マニホールド角度を1.0〜1.5°とするとともに、粘度が0.1〜0.6Pa・sのカソード触媒層塗工液を塗工することでより触媒層の厚みのバラツキを抑制することができる。
【0007】
本発明に係る第2の触媒層−電解質膜積層体の製造方法は、電解質膜の両面に触媒層が形成された触媒層−電解質膜積層体の製造方法であって、第1基材シートを供給する工程と、前記第1基材シート上にアノード触媒層用塗工液を第1ダイヘッドによって塗工し、前記アノード触媒層用塗工液を乾燥させてアノード触媒層転写シートを作製する工程と、第2基材シートを供給する工程と、前記第2基材シート上にカソード触媒層用塗工液を第2ダイヘッドによって塗工し、前記カソード触媒層用塗工液を乾燥させてカソード触媒層転写シートを作製する工程と、電解質膜を供給する工程と、前記アノード触媒層が前記電解質膜と対向した状態で前記アノード触媒層転写シートを前記電解質膜の一方面上に向けて押圧して前記アノード触媒層を前記電解質膜の一方面上に転写する工程と、前記カソード触媒層が前記電解質膜と対向した状態で前記カソード触媒層転写シートを前記電解質膜の他方面上に向けて押圧して前記カソード触媒層を前記電解質膜の他方面上に転写する工程と、前記各触媒層が電解質膜に転写された後の各基材シートを剥離する工程と、を含み、前記第1ダイヘッドのマニホールド角度は、前記第2ダイヘッドのマニホールド角度よりも小さい。
【0008】
この製造方法によれば、上記第1の触媒層−電解質膜積層体の製造方法と同様に、第1ダイヘッドのマニホールド角度が第2ダイヘッドのマニホールド角度よりも小さく構成されているため、上述したのと同様の効果を奏することができる。また、この場合も、第1ダイヘッドは、マニホールド角度を0.5〜1.0°とするとともに、粘度が0.03〜0.08Pa・sのアノード触媒層用塗工液を塗工し、第2ダイヘッドは、マニホールド角度を1.0〜1.5°とするとともに、粘度が0.1〜0.6Pa・sのカソード触媒層用塗工液を塗工することでより触媒層のバラツキを抑制することができる。なお、上記アノード触媒層を電解質膜の一方面上に転写する工程と、カソード触媒層を電解質膜の他方面上に転写する工程とは、同時に行ってもよいし、別々に行ってもよい。
【0009】
また、本発明に係る第1の電極−電解質膜積層体の製造方法は、上記いずれかの触媒層−電解質膜積層体の製造方法と、前記各触媒層上に導電性多孔質基材を積層する工程と、を含む。この製造方法によれば、上述したいずれかの触媒層−電解質膜積層体の製造方法を含んでいるため、上述したのと同様の効果を奏することができる。
【0010】
また、本発明に係る第2の電極−電解質膜積層体の製造方法は、触媒層及び導電性多孔質基材を有する電極が電解質膜の両面に形成された電極−電解質膜積層体の製造方法であって、アノード導電性多孔質基材を供給する工程と前記アノード導電性多孔質基材上にアノード触媒層用塗工液を第1ダイヘッドによって塗工し、前記アノード触媒層用塗工液を乾燥させてアノード電極を作製する工程と、カソード導電性多孔質基材を供給する工程と、前記カソード導電性多孔質基材上にカソード触媒層用塗工液を第2ダイヘッドによって塗工し、前記カソード触媒層用塗工液を乾燥させてカソード電極を作製する工程と、電解質膜を供給する工程と、前記アノード触媒層が前記電解質膜と対向した状態で前記アノード電極を前記電解質膜の一方面上に向けて押圧して前記アノード触媒層と前記電解質膜とを接着させる工程と、前記カソード触媒層が前記電解質膜と対向した状態で前記カソード電極を前記電解質膜の他方面上に向けて押圧して前記カソード触媒層と前記電解質膜とを接着させる工程と、を含み、前記第1ダイヘッドのマニホールド角度は、前記第2ダイヘッドのマニホールド角度よりも小さい。
【0011】
この製造方法によれば、上述した製造方法と同様に第1ダイヘッドのマニホールド角度が第2ダイヘッドのマニホールド角度よりも小さくなっているため、両方の触媒層の厚みのバラツキを抑制することができる。また、この場合も、第1ダイヘッドは、マニホールド角度を0.5〜1.0°とするとともに、粘度が0.03〜0.08Pa・sのアノード触媒層用塗工液を塗工し、また第2ダイヘッドは、マニホールド角度を1.0〜1.5°とするとともに、粘度が0.1〜0.6Pa・sのカソード触媒層用塗工液を塗工することで、より触媒層のバラツキを抑制することができる。なお、上記アノード電極を電解質膜に向けて押圧する工程と、カソード電極を電解質膜に向けて押圧する工程とは、同時に行ってもよいし、別々に行ってもよい。
【0012】
また、本発明に係る第1の触媒層−電解質膜積層体製造装置は、電解質膜の両面に触媒層が形成された触媒層−電解質膜積層体を製造する装置であって、電解質膜を供給する電解質膜供給機構と、前記電解質膜の一方面上にアノード触媒層用塗工液を塗工する第1ダイヘッドと、前記電解質膜の他方面上にカソード触媒層用塗工液を塗工する第2ダイヘッドと、前記電解質膜に塗工されたアノード触媒層用塗工液及びカソード触媒層用塗工液を乾燥させる乾燥手段と、を備え、前記第1ダイヘッドのマニホールド角度は、前記第2ダイヘッドのマニホールド角度よりも小さい。
【0013】
この構成によれば、第1ダイヘッドのマニホールド角度は、前記第2ダイヘッドのマニホールド角度よりも小さく構成されているため、上述したように両方の触媒層の厚みのバラツキを防止することができる。また、この場合も、第1ダイヘッドは、マニホールド角度を0.5〜1.0°とするとともに、粘度が0.03〜0.08Pa・sのアノード触媒層用塗工液を塗工し、また第2ダイヘッドは、マニホールド角度を1.0〜1.5°とするとともに、粘度が0.1〜0.6Pa・sのカソード触媒層用塗工液を塗工することで、より触媒層のバラツキを抑制することができる。なお、上記乾燥手段は、アノード触媒層用塗工液及びカソード触媒層用塗工液を同時に乾燥させてもよいし、または、各触媒層を別々に乾燥させてもよい。また、上記乾燥手段は自然乾燥も含む概念である。
【0014】
また、本発明に係る第2の触媒層−電解質膜積層体製造装置は、電解質膜の両面に触媒層が形成された触媒層−電解質膜積層体を製造する装置であって、第1基材シートを供給する第1基材シート供給機構と、前記第1基材シート上にアノード触媒層用塗工液を塗工する第1ダイヘッドと、第2基材シートを供給する第2基材シート供給機構と、前記第2基材シート上にカソード触媒層用塗工液を塗工する第2ダイヘッドと、前記第1又は第2基材シート上に塗工されたアノード及びカソード用触媒層用塗工液を乾燥させてアノード触媒層転写シート及びカソード触媒層転写シートを形成する乾燥手段と、電解質膜を供給する電解質膜供給機構と、前記各触媒層が前記電解質膜と対向した状態で、前記アノード触媒層転写シートを前記電解質膜の一方面上に、前記カソード触媒層転写シートを前記電解質膜の他方面上に向けて押圧し前記各触媒層を前記電解質膜に転写させる押圧機構と、を備え、前記第1ダイヘッドのマニホールド角度は、前記第2ダイヘッドのマニホールド角度よりも小さい。
【0015】
この構成によれば、第1ダイヘッドのマニホールド角度は、前記第2ダイヘッドのマニホールド角度よりも小さく構成されているため、上述したように両方の触媒層の厚みのバラツキを防止することができる。また、この場合も、第1ダイヘッドは、マニホールド角度を0.5〜1.0°とするとともに、粘度が0.03〜0.08Pa・sのアノード触媒層用塗工液を塗工し、また第2ダイヘッドは、マニホールド角度を1.0〜1.5°とするとともに、粘度が0.1〜0.6Pa・sのカソード触媒層用塗工液を塗工することで、より触媒層のバラツキを抑制することができる。なお、上記乾燥手段は、アノード触媒層用塗工液及びカソード触媒層用塗工液を同時に乾燥させてもよいし、または、各触媒層を別々に乾燥させてもよい。また、上記乾燥手段は自然乾燥も含む概念である。
【0016】
本発明に係る電極−電解質膜積層体製造装置は、触媒層及び導電性多孔質基材を有する電極が電解質膜の両面に形成された電極−電解質膜積層体の製造装置であって、アノード導電性多孔質基材を供給するアノード導電性多孔質基材供給機構と、前記アノード導電性多孔質基材上にアノード触媒層用塗工液を塗工する第1ダイヘッドと、カソード導電性多孔質基材を供給するカソード導電性多孔質基材供給機構と、前記カソード導電性多孔質基材上にカソード触媒層用塗工液を塗工する第2ダイヘッドと、前記アノード導電性多孔質基材又はカソード導電性多孔質基材上に塗工されたアノード及びカソード用触媒層用塗工液を乾燥させてアノード電極及びカソード電極を形成する乾燥手段と、電解質膜を供給する電解質膜供給機構と、前記各触媒層が前記電解質膜と対向した状態で、前記アノード電極を前記電解質膜の一方面上に、前記カソード電極を前記電解質膜の他方面上に向けて押圧し前記各触媒層を前記電解質膜に接着させる押圧機構と、を備え、前記第1ダイヘッドのマニホールド角度は、前記第2ダイヘッドのマニホールド角度よりも小さい。
【0017】
この構成によれば、第1ダイヘッドのマニホールド角度は、前記第2ダイヘッドのマニホールド角度よりも小さく構成されているため、上述したように両方の触媒層の厚みのバラツキを防止することができる。また、この場合も、第1ダイヘッドは、マニホールド角度を0.5〜1.0°とするとともに、粘度が0.03〜0.08Pa・sのアノード触媒層用塗工液を塗工し、また第2ダイヘッドは、マニホールド角度を1.0〜1.5°とするとともに、粘度が0.1〜0.6Pa・sのカソード触媒層用塗工液を塗工することで、より触媒層のバラツキを抑制することができる。なお、上記乾燥手段は、アノード触媒層用塗工液及び雄カソード触媒層用塗工液を同時に乾燥させてもよいし、または、各触媒層を別々に乾燥させてもよい。また、上記乾燥手段は自然乾燥も含む概念である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、アノード触媒層及びカソード触媒層の厚みのバラツキを両方とも抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は第1実施形態に係る触媒層−電解質膜積層体製造装置を示す概略側面図である。
【図2】図2は第1実施形態に係る第1又は第2ダイヘッドを示す斜視図である。
【図3】図3は第1実施形態に係る第1又は第2ダイヘッドの上刃を示す正面図(a)、及び側面図(b)である。
【図4】図4は第1実施形態に係る第1又は第2ダイヘッドの下刃を示す正面図(a)、及び側面図(b)である。
【図5】図5は第1実施形態に係る第1又は第2ダイヘッドの側板を示す正面図である。
【図6】図6は第1実施形態に係る電極−電解質膜積層体製造装置を示す概略側面図である。
【図7】図7は第2実施形態に係る触媒層−電解質膜積層体製造装置を示す概略側面図である。
【図8】図8は第2実施形態に係る反転機構の詳細を示す斜視図である。
【図9】図9は第3実施形態に係る触媒層−電解質膜積層体製造装置を示す概略側面図である。
【図10】図10は第4実施形態に係るアノード触媒層転写シート製造装置(a)及びカソード触媒層製造装置(b)を示す概略側面図である。
【図11】図11は第4実施形態に係る電極−電解質膜積層体の製造方法を示す説明図である。
【図12】図12は第4実施形態に係る電極−電解質膜積層体の製造方法の他の例を示す概略側面図である。
【図13】図13は第5実施形態に係るアノード電極製造装置(a)及びカソード電極製造装置(b)を示す概略側面図である。
【図14】図14は第5実施形態に係る電極−電解質膜積層体の製造方法を示す説明図である。
【図15】図15は第5実施形態に係る電極−電解質膜積層体の製造方法の他の例を示す概略側面図である。
【図16】図16は実施例の結果、すなわち幅方向における各マニホールド角度毎のアノード触媒層の厚みのバラツキを示すグラフである。
【図17】図17は実施例の結果、すなわち幅方向における各マニホールド角度毎のカソード触媒層の厚みのバラツキを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態に係る触媒層−電解質膜積層体製造装置について図面を参照しつつ説明する。
【0021】
図1に示すように、触媒層−電解質膜積層体製造装置1は、電解質膜11を巻き出す巻出部2と、電解質膜11の上面にアノード触媒層用塗工液を塗工する第1ダイヘッド3aと、電解質膜11の下面にカソード触媒層用塗工液を塗工する第2ダイヘッド3bと、触媒層−電解質膜積層体13を巻き取る巻取部4と、を備えている。また、アノード触媒層用塗工液の塗工後にこれを乾燥させてアノード触媒層12aを形成するための第1乾燥部5aが第1ダイヘッド3aの下流に設置されており、カソード触媒層用塗工液の塗工後にこれを乾燥させてカソード触媒層12bを形成するための第2乾燥部5bが第2ダイヘッド3bの下流に設置されている。なお、上記巻出部2が本発明の電解質膜供給機構に相当する。
【0022】
巻出部2は、長尺の電解質膜11が巻かれた巻出ロール21と、この巻出ロール21から斜め上方に繰り出された電解質膜11を水平方向に搬送されるように案内する第1従動ローラ22とを備えている。巻出ロール21は第1駆動装置(図示省略)によって回転駆動されるものであり、また、第1従動ローラ22は、回転自在に設置されており、電解質膜11が搬送されることに伴い回転するように構成されている。
【0023】
第1ダイヘッド3aは、電解質膜11の上方に設置されており、電解質膜11の上面にアノード触媒層用塗工液を塗工するように構成されている。この第1ダイヘッド3aは、図2に示すように、電解質膜11の搬送方向の下流側に配置された上刃31と、この上刃31に対向し上流側に配置された下刃32と、これら上刃31及び下刃32の両側に取り付けられる一対の側板33とを備えている。
【0024】
上刃31は、図3に示すように、正面視矩形状で水平方向が長手方向となるように板状に形成されている。上刃31の一方の面には、略水平方向に延びる断面半円状のマニホールド311が形成されている。このマニホールド311は、完全に水平とはなっておらず、中央から両端側に行くに従って下方に下がるように形成されている。このマニホールド311から下端に亘って所定厚さtだけ削られることで、その厚さはマニホールド311から上方よりも薄くなっており、これにより排出路312が形成されている。なお、この排出路312の下端が吐出口313となっている。また、マニホールド311の中央には、上方へ延びる供給口314が形成されており、上刃31の上面から外部へ開口している。また、上刃31のマニホールド311が形成されている面とは反対側の面は、下方にいくにしたがって薄くなるように形成され、端部が鋭利に形成されている。なお、マニホールド311の下方に下がる角度、すなわち、マニホールド311と下端の吐出口313とがなす角度をマニホールド角度αという。
【0025】
下刃32は、図4に示すように、上刃31と異なりマニホールドや供給口、排出路、吐出口などが形成されておらず、平坦な面が形成されている。また、各側板33は、図5に示すように板状に形成され、上刃31と下刃32とを当接させたときの両側面にそれぞれ取り付けられるように構成されている。したがって、正面視では、五角形状に形成されている。
【0026】
第2ダイヘッド3bは、電解質膜11の下方に設置されており、電解質膜11の下面にカソード触媒層12bを塗工するように構成されている。この第2ダイヘッド3bは、マニホールド角度αが異なる点以外は上述した第1ダイヘッド3aと同じ構成となっている。このマニホールド角度αは、アノード触媒層用塗工液を塗工する第1ダイヘッド2の方が、カソード触媒層用塗工液を塗工する第2ダイヘッド3bよりも小さくなるよう形成されている。なお、第1ダイヘッド2のマニホールド角度αは、0〜1.5°程度とすることが好ましく、0.5〜1.0°程度とすることがさらに好ましい。また、第2ダイヘッド3bのマニホールド角度αは、0.5〜2°程度とすることが好ましく、1.0〜1.5°程度とすることがさらに好ましい。
【0027】
巻取部4は、電解質膜11の両面に触媒層12が形成された触媒層−電解質膜積層体13をロール状に巻き取る巻取ロール41と、水平方向に搬送されていた触媒層−電解質膜積層体13を巻取ロール41へと案内する第2従動ローラ42とを備えている。この巻取ロール41は第2駆動装置(図示省略)によって回転駆動されるように構成されている。また、第2従動ローラ42は、上述した第1従動ローラ22と同様に、回転自在に設置されており、電解質膜11が搬送されることに伴い回転するように構成されている。
【0028】
第1及び第2乾燥部5a、5bは、温風により乾燥することで第1ダイヘッド3aや第2ダイヘッド3bによって塗工された触媒層用塗工液を乾燥するような構成となっている。
【0029】
続いて、上記触媒層−電解質膜製造装置1による触媒層−電解質膜積層体13の製造方法について説明する。
【0030】
まず、巻出ロール21から巻き出されて第1従動ローラ22によって水平方向に搬送された電解質膜11の上面に、第1ダイヘッド3aによってアノード触媒層用塗工液を塗工する。より詳細には、第1ダイヘッド3aの供給口314からアノード触媒層用塗工液を圧入する。こうして圧入されたアノード触媒層用塗工液はマニホールド311内を幅方向に広がりながら排出路312を下方へと流れていき、下端の吐出口313から電解質膜11上へ塗工される。このように電解質膜11の上面に塗工されたアノード触媒層用塗工液は、第1乾燥部5a内を通過することによって乾燥されてアノード触媒層12aが形成される。なお、電解質膜11は、例えば、Dupont製Nafion(パーフルオロ系樹脂)等種々の材料を用いることができ、その厚さは25〜175μm程度とすることが好ましいが特にこれに限定されるものではない。また、このアノード触媒層用塗工液としては、カーボンに白金を担持した燃料電池用触媒をプロトン伝導性のある電解質樹脂溶液に水又はアルコールに分散した触媒インキ等を挙げることができ、この粘度は、せん断速度100[1/s]のときの値が0.001〜1Pa・sとすることが好ましく、0.01〜0.1Pa・sとすることがさらに好ましい。
【0031】
次に、第1乾燥部5aを通過した電解質膜11の下面に、第2ダイヘッド3bによってカソード触媒層用塗工液を塗工する。このカソード触媒層用塗工液の塗工の詳細は、上記アノード触媒層用塗工液の塗工と同じであるため、その説明を省略する。なお、カソード触媒層用塗工液は、上述したアノード触媒層用塗工液と同じものを挙げることができ、その粘度は、せん断速度100[1/s]のときの値が0.001〜10Pa・sとすることが好ましく0.08〜1Pa・sとすることがさらに好ましい。そして、電解質膜11の下面に塗工されたカソード触媒層用塗工液は、第2乾燥部5bを通過することで乾燥されてカソード触媒層12bが形成される。
【0032】
以上のように電解質膜11の両面に触媒層12を形成することで完成した触媒層−電解質膜積層体13を、第2従動ローラ42を介して巻取ロール41によって巻き取る。このようにして作製したロール状の触媒層−電解質膜積層体13を枚葉状に切断し、各枚葉状の触媒層−電解質膜積層体13の各触媒層12上に導電性多孔質基材14を積層して電極−電解質膜積層体15を作製してもよい。また、触媒層−電解質膜積層体13を枚葉状に切断せずに、ロール状のままで電極−電解質膜積層体15を作製することもできる。例えば、図6に示すように、ロール状の触媒層−電解質膜積層体13を巻き出すとともに、この触媒層−電解質膜積層体13の上面及び下面のそれぞれにロール状の導電性多孔質基材14を巻き出し、一対の加圧ローラ6でこれらを挟んで加圧することで、触媒層−電解質膜積層体13の各触媒層12上に導電性多孔質基材14をそれぞれ接着させて電極−電解質膜積層体15を作製することができる。なお、上記導電性多孔質基材14としては、カーボン製の繊維や、ペーパー、フェルトなどを用いることができ、この厚さは20〜400μm程度とすることが好ましいが特にこれに限定されるものではない。
【0033】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る触媒層−電解質膜積層体製造装置1は、図7に示すように、第1実施形態と同様に、巻出部2、第1ダイヘッド3a、第2ダイヘッド3b、巻取部4、並びに、第1及び第2乾燥部5a、5bを備えている。第2実施形態特有の構成として、搬送中の電解質膜11を第2ダイヘッド3bの上流において反転させる反転機構7を有しており、第2ダイヘッド3bが、電解質膜11の下方ではなく上方に設置されており、電解質膜11の上面にカソード触媒層12bを塗工するように構成されている。このように、第2実施形態では、第1ダイヘッド3a及び第2ダイヘッド3bがともに電解質膜11の異なる面ではあるが、電解質膜11の上面に対して触媒層12を塗工するように構成されている。なお、種々の方法によって電解質膜11の表面と裏面とを反転させることができるが、このような反転機構の例として、例えば図8に示すように、電解質膜11の搬送に従って回転するよう設置された第1〜第3反転用従動ローラ71、72,73を第1乾燥部5aの下流にさらに備えた構成とすることができる。この構成では、水平方向に搬送されてきた電解質膜11を第1反転用従動ローラ71によって一旦上方へ搬送するよう向きを変え、第2反転用従動ローラ72でその上方に搬送されてきた電解質膜11を下方へ搬送するように向きを変え、第3反転用従動ローラ73で下方へ搬送されてきた電解質膜11を再度水平方向に搬送するように向きを変える。そして、第2反転用従動ローラ72と第3反転用従動ローラ73との間で電解質膜11を捩ることで反転させて第1ダイヘッド3aによってアノード触媒層12aが塗工された面を下面とし、何も塗工されていない面を上面とする。そして、第3反転用従動ローラ73の下流で第2ダイヘッド3bによってカソード触媒層用塗工液を塗工する。なお、その他の構成や方法などは上記第1実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0034】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る触媒層−電解質膜積層体製造装置1は、図9に示すように、第1実施形態と同様に、巻出部2,第1ダイヘッド3a,第2ダイヘッド3b、巻取部4、並びに、第1及び第2乾燥部5a、5bを備えている。第3実施形態特有の構成として、第2実施形態と同様に反転機構7を備えており、第1ダイヘッド3a及び第2ダイヘッド3bがともに電解質膜11の上方から各触媒層12を電解質膜11の異なる面に塗工するように構成されている。この第3実施形態に係る触媒層−電解質膜積層体製造装置1における反転機構7について説明すると、まず、第1実施形態と同様に、巻出ロール21から巻き出されて第1従動ローラ22によって水平方向に搬送された電解質膜11の上面に、第1ダイヘッド3aによってアノード触媒層用塗工液を塗工し、第1乾燥部5aによってこれを乾燥させてアノード触媒層12aを形成する。そして、この第1乾燥部5aを出た電解質膜11を第4反転用従動ローラ74によって上方に搬送するよう搬送方向を変え、第5反転用従動ローラ75で再度水平方向に搬送させる。そして、第6反転用従動ローラ76で下方に進行するよう搬送方向を変え、第7反転用従動ローラ77で水平方向に搬送させる。なお、この第7反転用従動ローラ77の下流では電解質膜11は水平方向に進行するが、その進行方向は、第1ダイヘッド3aの下流における進行方向とは逆となっているため、アノード触媒層12aが形成されていない面が上方を向いた状態で電解質膜11は搬送されている。そして、この第7反転用従動ローラ77の下流で第2ダイヘッド3bによってカソード触媒層用塗工液を塗工し、これを第2乾燥部5bによって乾燥させることでカソード触媒層12bを形成する。なお、この反転用従動ローラの数は特に限定されるものではなく、例えば、第5又は第6反転用従動ローラ75,76を省略してもよいし、逆にさらに反転用従動ローラを設置することもできる。また、その他の構成や方法などは上記第1実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0035】
(第4実施形態)
第4実施形態に係る触媒層−電解質膜積層体の製造方法について説明する。なお、上記第1実施形態と同様のものについては同一の符号を付してその説明を省略する。まず、図10(a)に示すように、巻出ロール21aから第1基材シート16aを巻き出し、この上面に第1ダイヘッド3aによってアノード触媒層用塗工液を塗工し、第1乾燥部5aによってこれを乾燥させてアノード触媒層12aを形成する。そして、基材シート16a上にアノード触媒層12aを形成することによってできたアノード触媒層転写シート17aを巻取ロール41aに巻き取る。また、これと同様に、図10(b)に示すように、巻出ロール21bから第2基材シート16bを巻出し、この上面に第2ダイヘッド3bによってカソード触媒層用塗工液を塗工し、第2乾燥部5bによってこれを乾燥させてカソード触媒層12bを形成する。そして、第2基材シート16b上にカソード触媒層12bを形成することによってできたカソード触媒層転写シート17bを巻取ロール41bに巻き取る。なお、各基材シート16としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、PFA,ETFE、FEP等のフッ素フィルムや、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンや、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド等を使用することができ、その厚さは12〜150μm程度とすることが好ましい。なお、巻出部2aが本発明の第1基材シート供給機構に相当し、巻出部2bが本発明の第2基材シート供給機構に相当する。
【0036】
以上のようにして形成されたロール状の各転写シート17を枚葉状に切断し、図11(a)に示すように、アノード触媒層転写シート17aとカソード触媒層転写シート17bとによって、各触媒層12が電解質膜11側を向くように電解質膜11を挟み、各触媒層転写シート17の背面側から加圧及び加熱することによって電解質膜に各触媒層12を接着させる。そして、図11(b)に示すように各基材シート16を剥離することによって触媒層−電解質膜積層体13が完成する。また、この各触媒層12上に導電性多孔質基材14を配置することで電極−電解質膜積層体15が完成する(図11(c))。
【0037】
なお、上述したようにロール状の各転写シート17を枚葉状に切断するのではなく、ロール状のままで電極−電解質膜積層体15を形成することもできる。例えば、図12に示すように、ロール状の電解質膜11を巻き出すとともに、この電解質膜11の上面においてロール状のアノード触媒層転写シート17aを巻出し、電解質膜11の下面においてロール状のカソード触媒層転写シート17bを巻出す。なお、各触媒層転写シート17は触媒層12が電解質膜11と対向するような向きで巻き出される。次に、一対の第1加圧ローラ6aでこれらを挟んで加圧することで、電解質膜11の上面にアノード触媒層12aを転写し、下面にカソード触媒層12bを転写し、その後、各転写シート17a、bの基材シート16a、bを剥離してこれを巻き取る。このようにして作製された触媒層−電解質膜積層体13の上面及び下面のそれぞれにロール状の導電性多孔質基材14を巻出し、さらに第2加圧ローラ6bでこれらを挟んで加圧することで、触媒層−電解質膜積層体13の各触媒層12上に導電性多孔質基材14を接着させて電極−電解質膜積層体15を作製することができる。なお、第1加圧ローラ6aが本発明の押圧機構に相当する。
【0038】
(第5実施形態)
第5実施形態に係る触媒層−電解質膜積層体の製造方法について説明する。なお、上記第1実施形態と同様のものについては同一の符号を付してその説明を省略する。まず、図13(a)に示すように、巻出ロール21aからアノード導電性多孔質基材14aを巻き出し、この上面に第1ダイヘッド3aによってアノード触媒層用塗工液を塗工し、第1乾燥部5aによってこれを乾燥させてアノード触媒層12aを形成する。そして、アノード導電性多孔質基材14a上にアノード触媒層12aを形成することによってできたアノード電極18aを巻取ロール41aに巻き取る。また、これと同様に、図13(b)に示すように、巻出ロール21bからカソード導電性多孔質基材14bを巻出し、この上面に第2ダイヘッド3bによってカソード触媒層用塗工液を塗工し、第2乾燥部5bによってこれを乾燥させてカソード触媒層12bを形成する。そして、カソード導電性多孔質基材14b上にカソード触媒層12bを形成することによってできたカソード電極18bを巻取ロール41bに巻き取る。
【0039】
以上のようにして形成されたロール状の電極18を枚葉状に切断し、図14に示すように、アノード電極18aとカソード電極18bとによって、各触媒層12が電解質膜11側を向くように電解質膜11を挟み、各電極18の背面側から加圧及び加熱することによって電解質膜11に各電極18を接着させることで電極−電解質膜積層体15が完成する。
【0040】
なお、上述したようにロール状の電極18を枚葉状に切断するのではなく、ロール状のままで電極−電解質膜積層体15を形成することもできる。例えば図15に示すように、ロール状の電解質膜11を巻き出すとともに、この電解質膜11の上面において触媒層12aが電解質膜11と対向するようにロール状のアノード電極18aを巻き出し、また、電解質膜11の下面においてロール状のカソード電極18bを触媒層12bが電解質膜11と対向するように巻き出す。そして、一対の加圧ローラ6によってこれらを挟んで加圧することで、電解質膜11と各触媒層12とを接合させて電極−電解質膜積層体15が完成する。なお、この加圧ローラ6が本発明の押圧機構に相当する。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0042】
例えば、上記各実施形態では、アノード及びカソード触媒層用塗工液を乾燥させるための乾燥手段として、第1及び第2乾燥部を設けていたが、自然乾燥させることもできる。また、第1ダイヘッド3a下流の第1乾燥部5aを省略して、第2乾燥部5bのみでアノード及びカソード触媒層用塗工液を乾燥させることもできる。
【実施例】
【0043】
まず、表1に示すような配合でアノード触媒層用塗工液及びカソード触媒層用塗工液をそれぞれ作製した。
【0044】
【表1】
【0045】
このようなアノード触媒層用塗工液及びカソード触媒層用塗工液を、図2及び3に示すような構成のダイヘッドを使用して厚さ25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに幅100mmで塗工した。なお、ダイヘッドは、マニホールド角度αが異なるものを5種類用意した。この5種類のダイヘッドによってPETフィルムに塗工し、その幅方向の中心から幅方向に10mm間隔で触媒層の厚みを測定し、この厚みの測定値を表2に示した。なお、幅方向の端部は実際には切断して製品として使用されない領域であるため、中央から幅方向に40mmずつ計80mmの領域のみを測定した。また、アノード触媒層の厚みのバラツキ結果をグラフにしたものを図16に示し、カソード触媒層の厚みのバラツキ結果をグラフにしたものを図17に示した。なお、各グラフの縦軸の目盛り間隔は2μmである。また、各グラフは、測定した厚みを示すものではなく、厚みのバラツキを示すものである。
【0046】
【表2】
【0047】
この表2及び各グラフから分かるように、触媒層を幅方向に均一の厚さで塗るためには、アノード触媒層用塗工液を塗工する第1ダイヘッド3aと、カソード触媒層用塗工液を塗工する第2ダイヘッド3bとのマニホールド角度αを異なる値とすることが好ましい、すなわち、第1ダイヘッド3aのマニホールド角度αを第2ダイヘッド3bのマニホールド角度αよりも小さくした方が好ましいことが分かった。そして、第1ダイヘッド3aのマニホールド角度αは0.5〜1.0°とすることで幅方向における触媒層の厚みのバラツキがもっとも小さくなり、また、第2ダイヘッド3bのマニホールド角度αは1.0〜1.5°とすることで幅方向における触媒層の厚みのバラツキがもっとも小さくなることも分かった。
【符号の説明】
【0048】
1 触媒層−電解質膜積層体製造装置
2 巻出部
3a 第1ダイヘッド
3b 第2ダイヘッド
5a 第1乾燥部(乾燥手段)
5b 第2乾燥部(乾燥手段)
11 電解質膜
12a アノード触媒層
12b カソード触媒層
13 触媒層−電解質膜積層体
14 導電性多孔質基材
15 電極−電解質膜積層体
16a 第1基材シート
16b 第2基材シート
17a アノード触媒層転写シート
17b カソード触媒層転写シート
18a アノード電極
18b カソード電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜の両面に触媒層が形成された触媒層−電解質膜積層体の製造方法であって、
電解質膜を供給する工程と、
前記電解質膜の一方面上に、第1ダイヘッドによりアノード触媒層用塗工液を塗工し、前記アノード触媒層用塗工液を乾燥させてアノード触媒層を形成する工程と、
前記電解質膜の他方面上に、第2ダイヘッドによりカソード触媒層用塗工液を塗工し、前記カソード触媒層用塗工液を乾燥させてカソード触媒層を形成する工程と、を含み、
前記第1ダイヘッドのマニホールド角度は、前記第2ダイヘッドのマニホールド角度よりも小さい、触媒層−電解質膜積層体の製造方法。
【請求項2】
前記第1ダイヘッドは、マニホールド角度が0.5〜1.0°であり、粘度が0.03〜0.08Pa・sのアノード触媒層用塗工液を塗工し、
前記第2ダイヘッドは、マニホールド角度が1.0〜1.5°であり、粘度が0.1〜0.6Pa・sのカソード触媒層塗工液を塗工する、請求項1に記載の触媒層−電解質膜積層体の製造方法。
【請求項3】
電解質膜の両面に触媒層が形成された触媒層−電解質膜積層体の製造方法であって、
第1基材シートを供給する工程と、
前記第1基材シート上にアノード触媒層用塗工液を第1ダイヘッドによって塗工し、前記アノード触媒層用塗工液を乾燥させてアノード触媒層転写シートを作製する工程と、
第2基材シートを供給する工程と、
前記第2基材シート上にカソード触媒層用塗工液を第2ダイヘッドによって塗工し、前記カソード触媒層用塗工液を乾燥させてカソード触媒層転写シートを作製する工程と、
電解質膜を供給する工程と、
前記アノード触媒層が前記電解質膜と対向した状態で前記アノード触媒層転写シートを前記電解質膜の一方面上に向けて押圧して前記アノード触媒層を前記電解質膜の一方面上に転写する工程と、
前記カソード触媒層が前記電解質膜と対向した状態で前記カソード触媒層転写シートを前記電解質膜の他方面上に向けて押圧して前記カソード触媒層を前記電解質膜の他方面上に転写する工程と、
前記各触媒層が電解質膜に転写された後の各基材シートを剥離する工程と、を含み、
前記第1ダイヘッドのマニホールド角度は、前記第2ダイヘッドのマニホールド角度よりも小さい、触媒層−電解質膜積層体の製造方法。
【請求項4】
前記第1ダイヘッドは、マニホールド角度が0.5〜1.0°であり、粘度が0.03〜0.08Pa・sのアノード触媒層用塗工液を塗工し、
前記第2ダイヘッドは、マニホールド角度が1.0〜1.5°であり、粘度が0.1〜0.6Pa・sのカソード触媒層用塗工液を塗工する、請求項3に記載の触媒層−電解質膜積層体の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の触媒層−電解質膜積層体の製造方法と、
前記各触媒層上に導電性多孔質基材を積層する工程と、
を含む、電極−電解質膜積層体の製造方法。
【請求項6】
触媒層及び導電性多孔質基材を有する電極が電解質膜の両面に形成された電極−電解質膜積層体の製造方法であって、
アノード導電性多孔質基材を供給する工程と
前記アノード導電性多孔質基材上にアノード触媒層用塗工液を第1ダイヘッドによって塗工し、前記アノード触媒層用塗工液を乾燥させてアノード電極を作製する工程と、
カソード導電性多孔質基材を供給する工程と、
前記カソード導電性多孔質基材上にカソード触媒層用塗工液を第2ダイヘッドによって塗工し、前記カソード触媒層用塗工液を乾燥させてカソード電極を作製する工程と、
電解質膜を供給する工程と、
前記アノード触媒層が前記電解質膜と対向した状態で前記アノード電極を前記電解質膜の一方面上に向けて押圧して前記アノード触媒層と前記電解質膜とを接着させる工程と、
前記カソード触媒層が前記電解質膜と対向した状態で前記カソード電極を前記電解質膜の他方面上に向けて押圧して前記カソード触媒層と前記電解質膜とを接着させる工程と、を含み、
前記第1ダイヘッドのマニホールド角度は、前記第2ダイヘッドのマニホールド角度よりも小さい、電極−電解質膜積層体の製造方法。
【請求項7】
前記第1ダイヘッドは、マニホールド角度が0.5〜1.0°であり、粘度が0.03〜0.08Pa・sのアノード触媒層用塗工液を塗工し、
前記第2ダイヘッドは、マニホールド角度が1.0〜1.5°であり、粘度が0.1〜0.6Pa・sのカソード触媒層用塗工液を塗工する、請求項6に記載の電極−電解質膜積層体の製造方法。
【請求項8】
電解質膜の両面に触媒層が形成された触媒層−電解質膜積層体を製造する装置であって、
電解質膜を供給する電解質膜供給機構と、
前記電解質膜の一方面上にアノード触媒層用塗工液を塗工する第1ダイヘッドと、
前記電解質膜の他方面上にカソード触媒層用塗工液を塗工する第2ダイヘッドと、
前記電解質膜に塗工されたアノード触媒層用塗工液及びカソード触媒層用塗工液を乾燥させる乾燥手段と、を備え、
前記第1ダイヘッドのマニホールド角度は、前記第2ダイヘッドのマニホールド角度よりも小さい、触媒層−電解質膜積層体製造装置。
【請求項9】
前記第1ダイヘッドは、マニホールド角度が0.5〜1.0°であり、粘度が0.03〜0.08Pa・sのアノード触媒層用塗工液を塗工し、
前記第2ダイヘッドは、マニホールド角度が1.0〜1.5°であり、粘度が0.1〜0.6Pa・sのカソード触媒層用塗工液を塗工する、請求項8に記載の触媒層−電解質膜積層体製造装置。
【請求項10】
電解質膜の両面に触媒層が形成された触媒層−電解質膜積層体を製造する装置であって、
第1基材シートを供給する第1基材シート供給機構と、
前記第1基材シート上にアノード触媒層用塗工液を塗工する第1ダイヘッドと、
第2基材シートを供給する第2基材シート供給機構と、
前記第2基材シート上にカソード触媒層用塗工液を塗工する第2ダイヘッドと、
前記第1又は第2基材シート上に塗工されたアノード及びカソード用触媒層用塗工液を乾燥させてアノード触媒層転写シート及びカソード触媒層転写シートを形成する乾燥手段と、
電解質膜を供給する電解質膜供給機構と、
前記各触媒層が前記電解質膜と対向した状態で、前記アノード触媒層転写シートを前記電解質膜の一方面上に、前記カソード触媒層転写シートを前記電解質膜の他方面上に向けて押圧し前記各触媒層を前記電解質膜に転写させる押圧機構と、を備え、
前記第1ダイヘッドのマニホールド角度は、前記第2ダイヘッドのマニホールド角度よりも小さい、触媒層−電解質膜積層体製造装置。
【請求項11】
前記第1ダイヘッドは、マニホールド角度が0.5〜1.0°であり、粘度が0.03〜0.08Pa・sのアノード触媒層用塗工液を塗工し、
前記第2ダイヘッドは、マニホールド角度が1.0〜1.5°であり、粘度が0.1〜0.6Pa・sのカソード触媒層用塗工液を塗工する、請求項10に記載の触媒層−電解質膜積層体製造装置。
【請求項12】
触媒層及び導電性多孔質基材を有する電極が電解質膜の両面に形成された電極−電解質膜積層体の製造装置であって、
アノード導電性多孔質基材を供給するアノード導電性多孔質基材供給機構と、
前記アノード導電性多孔質基材上にアノード触媒層用塗工液を塗工する第1ダイヘッドと、
カソード導電性多孔質基材を供給するカソード導電性多孔質基材供給機構と、
前記カソード導電性多孔質基材上にカソード触媒層用塗工液を塗工する第2ダイヘッドと、
前記アノード導電性多孔質基材又はカソード導電性多孔質基材上に塗工されたアノード及びカソード用触媒層用塗工液を乾燥させてアノード電極及びカソード電極を形成する乾燥手段と、
電解質膜を供給する電解質膜供給機構と、
前記各触媒層が前記電解質膜と対向した状態で、前記アノード電極を前記電解質膜の一方面上に、前記カソード電極を前記電解質膜の他方面上に向けて押圧し前記各触媒層を前記電解質膜に接着させる押圧機構と、を備え、
前記第1ダイヘッドのマニホールド角度は、前記第2ダイヘッドのマニホールド角度よりも小さい、電極−電解質膜積層体製造装置。
【請求項13】
前記第1ダイヘッドは、マニホールド角度が0.5〜1.0°であり、粘度が0.03〜0.08Pa・sのアノード触媒層用塗工液を塗工し、
前記第2ダイヘッドは、マニホールド角度が1.0〜1.5°であり、粘度が0.1〜0.6Pa・sのカソード触媒層用塗工液を塗工する、請求項12に記載の電極−電解質膜積層体製造装置。
【請求項1】
電解質膜の両面に触媒層が形成された触媒層−電解質膜積層体の製造方法であって、
電解質膜を供給する工程と、
前記電解質膜の一方面上に、第1ダイヘッドによりアノード触媒層用塗工液を塗工し、前記アノード触媒層用塗工液を乾燥させてアノード触媒層を形成する工程と、
前記電解質膜の他方面上に、第2ダイヘッドによりカソード触媒層用塗工液を塗工し、前記カソード触媒層用塗工液を乾燥させてカソード触媒層を形成する工程と、を含み、
前記第1ダイヘッドのマニホールド角度は、前記第2ダイヘッドのマニホールド角度よりも小さい、触媒層−電解質膜積層体の製造方法。
【請求項2】
前記第1ダイヘッドは、マニホールド角度が0.5〜1.0°であり、粘度が0.03〜0.08Pa・sのアノード触媒層用塗工液を塗工し、
前記第2ダイヘッドは、マニホールド角度が1.0〜1.5°であり、粘度が0.1〜0.6Pa・sのカソード触媒層塗工液を塗工する、請求項1に記載の触媒層−電解質膜積層体の製造方法。
【請求項3】
電解質膜の両面に触媒層が形成された触媒層−電解質膜積層体の製造方法であって、
第1基材シートを供給する工程と、
前記第1基材シート上にアノード触媒層用塗工液を第1ダイヘッドによって塗工し、前記アノード触媒層用塗工液を乾燥させてアノード触媒層転写シートを作製する工程と、
第2基材シートを供給する工程と、
前記第2基材シート上にカソード触媒層用塗工液を第2ダイヘッドによって塗工し、前記カソード触媒層用塗工液を乾燥させてカソード触媒層転写シートを作製する工程と、
電解質膜を供給する工程と、
前記アノード触媒層が前記電解質膜と対向した状態で前記アノード触媒層転写シートを前記電解質膜の一方面上に向けて押圧して前記アノード触媒層を前記電解質膜の一方面上に転写する工程と、
前記カソード触媒層が前記電解質膜と対向した状態で前記カソード触媒層転写シートを前記電解質膜の他方面上に向けて押圧して前記カソード触媒層を前記電解質膜の他方面上に転写する工程と、
前記各触媒層が電解質膜に転写された後の各基材シートを剥離する工程と、を含み、
前記第1ダイヘッドのマニホールド角度は、前記第2ダイヘッドのマニホールド角度よりも小さい、触媒層−電解質膜積層体の製造方法。
【請求項4】
前記第1ダイヘッドは、マニホールド角度が0.5〜1.0°であり、粘度が0.03〜0.08Pa・sのアノード触媒層用塗工液を塗工し、
前記第2ダイヘッドは、マニホールド角度が1.0〜1.5°であり、粘度が0.1〜0.6Pa・sのカソード触媒層用塗工液を塗工する、請求項3に記載の触媒層−電解質膜積層体の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の触媒層−電解質膜積層体の製造方法と、
前記各触媒層上に導電性多孔質基材を積層する工程と、
を含む、電極−電解質膜積層体の製造方法。
【請求項6】
触媒層及び導電性多孔質基材を有する電極が電解質膜の両面に形成された電極−電解質膜積層体の製造方法であって、
アノード導電性多孔質基材を供給する工程と
前記アノード導電性多孔質基材上にアノード触媒層用塗工液を第1ダイヘッドによって塗工し、前記アノード触媒層用塗工液を乾燥させてアノード電極を作製する工程と、
カソード導電性多孔質基材を供給する工程と、
前記カソード導電性多孔質基材上にカソード触媒層用塗工液を第2ダイヘッドによって塗工し、前記カソード触媒層用塗工液を乾燥させてカソード電極を作製する工程と、
電解質膜を供給する工程と、
前記アノード触媒層が前記電解質膜と対向した状態で前記アノード電極を前記電解質膜の一方面上に向けて押圧して前記アノード触媒層と前記電解質膜とを接着させる工程と、
前記カソード触媒層が前記電解質膜と対向した状態で前記カソード電極を前記電解質膜の他方面上に向けて押圧して前記カソード触媒層と前記電解質膜とを接着させる工程と、を含み、
前記第1ダイヘッドのマニホールド角度は、前記第2ダイヘッドのマニホールド角度よりも小さい、電極−電解質膜積層体の製造方法。
【請求項7】
前記第1ダイヘッドは、マニホールド角度が0.5〜1.0°であり、粘度が0.03〜0.08Pa・sのアノード触媒層用塗工液を塗工し、
前記第2ダイヘッドは、マニホールド角度が1.0〜1.5°であり、粘度が0.1〜0.6Pa・sのカソード触媒層用塗工液を塗工する、請求項6に記載の電極−電解質膜積層体の製造方法。
【請求項8】
電解質膜の両面に触媒層が形成された触媒層−電解質膜積層体を製造する装置であって、
電解質膜を供給する電解質膜供給機構と、
前記電解質膜の一方面上にアノード触媒層用塗工液を塗工する第1ダイヘッドと、
前記電解質膜の他方面上にカソード触媒層用塗工液を塗工する第2ダイヘッドと、
前記電解質膜に塗工されたアノード触媒層用塗工液及びカソード触媒層用塗工液を乾燥させる乾燥手段と、を備え、
前記第1ダイヘッドのマニホールド角度は、前記第2ダイヘッドのマニホールド角度よりも小さい、触媒層−電解質膜積層体製造装置。
【請求項9】
前記第1ダイヘッドは、マニホールド角度が0.5〜1.0°であり、粘度が0.03〜0.08Pa・sのアノード触媒層用塗工液を塗工し、
前記第2ダイヘッドは、マニホールド角度が1.0〜1.5°であり、粘度が0.1〜0.6Pa・sのカソード触媒層用塗工液を塗工する、請求項8に記載の触媒層−電解質膜積層体製造装置。
【請求項10】
電解質膜の両面に触媒層が形成された触媒層−電解質膜積層体を製造する装置であって、
第1基材シートを供給する第1基材シート供給機構と、
前記第1基材シート上にアノード触媒層用塗工液を塗工する第1ダイヘッドと、
第2基材シートを供給する第2基材シート供給機構と、
前記第2基材シート上にカソード触媒層用塗工液を塗工する第2ダイヘッドと、
前記第1又は第2基材シート上に塗工されたアノード及びカソード用触媒層用塗工液を乾燥させてアノード触媒層転写シート及びカソード触媒層転写シートを形成する乾燥手段と、
電解質膜を供給する電解質膜供給機構と、
前記各触媒層が前記電解質膜と対向した状態で、前記アノード触媒層転写シートを前記電解質膜の一方面上に、前記カソード触媒層転写シートを前記電解質膜の他方面上に向けて押圧し前記各触媒層を前記電解質膜に転写させる押圧機構と、を備え、
前記第1ダイヘッドのマニホールド角度は、前記第2ダイヘッドのマニホールド角度よりも小さい、触媒層−電解質膜積層体製造装置。
【請求項11】
前記第1ダイヘッドは、マニホールド角度が0.5〜1.0°であり、粘度が0.03〜0.08Pa・sのアノード触媒層用塗工液を塗工し、
前記第2ダイヘッドは、マニホールド角度が1.0〜1.5°であり、粘度が0.1〜0.6Pa・sのカソード触媒層用塗工液を塗工する、請求項10に記載の触媒層−電解質膜積層体製造装置。
【請求項12】
触媒層及び導電性多孔質基材を有する電極が電解質膜の両面に形成された電極−電解質膜積層体の製造装置であって、
アノード導電性多孔質基材を供給するアノード導電性多孔質基材供給機構と、
前記アノード導電性多孔質基材上にアノード触媒層用塗工液を塗工する第1ダイヘッドと、
カソード導電性多孔質基材を供給するカソード導電性多孔質基材供給機構と、
前記カソード導電性多孔質基材上にカソード触媒層用塗工液を塗工する第2ダイヘッドと、
前記アノード導電性多孔質基材又はカソード導電性多孔質基材上に塗工されたアノード及びカソード用触媒層用塗工液を乾燥させてアノード電極及びカソード電極を形成する乾燥手段と、
電解質膜を供給する電解質膜供給機構と、
前記各触媒層が前記電解質膜と対向した状態で、前記アノード電極を前記電解質膜の一方面上に、前記カソード電極を前記電解質膜の他方面上に向けて押圧し前記各触媒層を前記電解質膜に接着させる押圧機構と、を備え、
前記第1ダイヘッドのマニホールド角度は、前記第2ダイヘッドのマニホールド角度よりも小さい、電極−電解質膜積層体製造装置。
【請求項13】
前記第1ダイヘッドは、マニホールド角度が0.5〜1.0°であり、粘度が0.03〜0.08Pa・sのアノード触媒層用塗工液を塗工し、
前記第2ダイヘッドは、マニホールド角度が1.0〜1.5°であり、粘度が0.1〜0.6Pa・sのカソード触媒層用塗工液を塗工する、請求項12に記載の電極−電解質膜積層体製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−65758(P2011−65758A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212840(P2009−212840)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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