説明

触媒層保護フィルム及び触媒層転写シート

【課題】本発明は、触媒層転写シートからの触媒層の欠落を大幅に防止し、触媒層に欠落のない固体高分子型電解質燃料電池製造用触媒層転写シートを保護するためのフィルムを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の保護フィルムは、固体高分子電解質型燃料電池製造用触媒層転写シートの触媒層を保護するフィルムであって、基材フィルムの一方面が離型処理されており、触媒層と離型処理面との間の動摩擦係数が0.2〜0.4であり、厚みが4〜100μmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒層転写シート及び該転写シートの触媒層を保護するための保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池等の触媒層を作成する方法として、今日まで様々の方法が提案されている。これらの中でも、一度別の基材を用いて作製した触媒層を電解質膜に転写する転写法は、触媒層を形成することが容易であり、電解質膜及びガス拡散層にも悪影響が少ないため、有利である。
【0003】
転写法には、基材シートの一方面上に触媒層が形成された触媒層転写シートが一般に使用されている。かかる触媒層転写シートは、通常、包装袋に入れて包装され、保管されている。
【0004】
しかしながら、上記触媒層転写シートは、触媒層が非常に剥れ易く、そのために塗工装置を用いて基材シートに塗工し、乾燥後に巻き上げる際、ロール等に接触したり、基材シートと擦れて触媒層が欠落したり、包装の際、包装材が取扱時に触れることにより触媒層が欠落するのが避けられない。
【0005】
このような触媒層の欠落を防止するために、触媒層の保護フィルムが提案されている(特許文献1)。
【0006】
しかしながら、今日までに提案されている保護フィルムでは、触媒層転写シートと保護フィルムとを重ねた際に、触媒層転写シート裏面(触媒層が塗工されていない面)と保護フィルム裏面(触媒層と接触していない面)とが静電気により付着し、触媒層転写シートと保護フィルムがズレ易くなり、包装が極めて困難になったり、ズレた際に触媒層が剥き出し状態になり、触媒層がダメージを受ける問題を有している。
【特許文献1】(特開平10−302807号公報、0027段落)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題のない保護フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、触媒層転写シートの触媒層と接触する保護フィルム側に特定の離型層を設けることにより、所望の保護フィルムが得られることを見い出した。本発明は、このような知見に基づき完成されたものである。
【0009】
本発明は、下記項1〜5に示す保護フィルム及び触媒層転写シートを提供する。
項1.固体高分子電解質型燃料電池製造用触媒層転写シートの触媒層を保護するフィルムであって、基材フィルムの一方面が離型処理されており、触媒層と離型処理面との間の動摩擦係数が0.2〜0.4であり、厚みが4〜100μmである、保護フィルム。
項2.基材フィルムの他の一方面が帯電防止処理又は離型処理されている、項1に記載の保護フィルム。
項3.固体高分子電解質型燃料電池製造を製造するための触媒層転写シートであって、基材シートの一方面上に触媒層が形成され、他の一方面が帯電防止処理又は離型処理されている、触媒層転写シート。
項4.基材シートの一方面上に触媒層が形成された触媒層転写シートの触媒層面上に、項1に記載の保護フィルムが載置された保護フィルム付き触媒層転写シートであって、触媒層転写シートと接触している保護フィルムの反対側が帯電防止処理又は離型処理されている、保護フィルム付き触媒層転写シート。
項5.基材シートの一方面上に触媒層が形成された触媒層転写シートの触媒層面上に、項1に記載の保護フィルムが載置された保護フィルム付き触媒層転写シートであって、保護フィルムと接触している触媒層転写シートの反対側が帯電防止処理又は離型処理されている、保護フィルム付き触媒層転写シート。
【0010】
保護フィルム
本発明の保護フィルムは、固体高分子電解質型燃料電池製造用触媒層転写シートの触媒層を保護するためのフィルムである。
【0011】
本発明の保護フィルムは、基材フィルムの一方面が離型処理されている。触媒層と接触するのは、保護フィルムの離型処理面であり、触媒層と離型処理面との間の動摩擦係数が0.2〜0.4になるように離型処理が施されている。本発明の保護フィルムの総厚みは、4〜100μmである。
【0012】
動摩擦係数は、次のようにして決定される。即ち、触媒層転写シートの触媒層の上に、保護フィルムの離型処理面が接触するように保護フィルムを重ね、新東科学(株)製の引張り試験機(ヘイドン及びASTM平面圧子、100gの重り)を用いて保護フィルムを引っ張り、摩擦力を測定することにより、摩擦係数が求められる。
【0013】
基材フィルムとしては、例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタラート、ポリパルバン酸アラミド、ポリアミド(ナイロン)、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテル・エーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート等の高分子フィルムを挙げることができる。
【0014】
また、基材フィルムは、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の耐熱性樹脂から構成されていてもよい。
【0015】
更に、基材フィルムは、高分子フィルム以外にアート紙、コート紙、軽量コート紙等の塗工紙、ノート用紙、コピー用紙等の非塗工紙であってもよい。
【0016】
基材フィルムとしては、安価で入手が容易な高分子フィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタラート等がより好ましい。
【0017】
基材フィルムの厚さは、取り扱い性及び経済性の観点から通常4〜100μm、好ましくは6〜75μm、より好ましくは25〜50μmとするのがよい。
【0018】
離型処理は、例えば、基材フィルム上に離型層を形成させるか、基材フィルム上に凹凸処理を施すことにより行われる。
【0019】
離型層は、離型性に優れた材料を用いて形成される。
【0020】
好ましい離型層の一例を示せば、離型層は、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂にシリコーンオイル、シリコーンワックス、シリコーン樹脂、弗素樹脂等の離型性に優れた材料を添加して得られる混合物から形成されている。
【0021】
また、他の好ましい離型層の一例を示せば、離型層は、アミノ基、水酸基、メルカプト基、エポキシ基、イソシアネート基、カルボキシル基、ビニル基等の反応性を有する各種反応性シリコーンオイルや同様な反応性基を有する弗素化合物と、これらの反応性基と反応する基を有する熱可塑性樹脂とを反応させて得られるポリマー、ポリイソシアネート、ポリアミン等の架橋剤を用いて両者を反応させたグラフトコポリマー、ビニル変性シリコーンオイルやビニル基含有弗素化合物と他のビニル基やアクリロイル基を有するモノマーとを適当な比率で共重合させたグラフトコポリマー等から形成されている。
【0022】
離型層は、上記の如き必要成分を溶剤に溶解又は分散させて塗工液を調製し、該塗工液を、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等の形成手段により塗布及び乾燥して形成することができる。また、添加剤として滑り性を向上させる滑剤を使用することもできる。かかる滑剤としては、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス等のワックス類;高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸塩、高級アルコール、レシチン等のリン酸エステル;シリコーンオイル;シリコーンワックス;シリコーン樹脂;ポリテトラフルオロエチレン等の弗素樹脂の粉末;弗化ビニル樹脂の粉末;グアナミン樹脂、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、ウレタン樹脂、ナイロン樹脂等各種樹脂の粉末;窒化硼素;シリカ;木粉;タルク等が挙げられる。
【0023】
基材フィルムの一方面上に形成される離型層は任意の厚さでよいが、一般的には0.001〜50μm、好ましくは0.01〜10μmの厚さである。
【0024】
基材フィルムと離型層とから構成される保護フィルムの一例を示す断面図を図1に示す。
【0025】
本発明では、基材フィルム及び離型層間の密着性を向上させるために、基材フィルムと離型層との間にプライマー層が形成されていてもよい。
【0026】
かかるプライマー層を形成する樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリオール樹脂等が挙げられる。プライマー層は、厚さが0.01〜10μmの範囲となるように形成することが好ましい。
【0027】
基材フィルムの表面を凹凸処理するに当たっては、公知の方法を広く使用することができる。例えば、無機フィラーをフィルムとなる樹脂に練りこみ、延伸させてフィルムを形成させたり、樹脂にフィラーを含有させた層を設けることにより、凹凸を付けることができる。
【0028】
本発明の保護フィルムは、離型処理が施された基材フィルムの反対側が帯電防止処理又は離型処理されているのが好ましい。
【0029】
帯電防止処理は、例えば、基材フィルム上に帯電防止層を形成させることにより行われる。
【0030】
帯電防止層の形成には、例えば、公知のバインダー樹脂がいずれも使用可能であり、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアクリレート系樹脂、ポリビニルホルマール系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン−アクリル共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、ポリエーテル系樹脂等の溶剤又は水可溶性の樹脂が挙げられ、これらの樹脂に、公知の帯電防止剤、ニッケル、アルミニウム、コバルト、クロム、マグネシウム、モリブデン、パラジウム、ロジウム、スズ、タンタル、チタン、タングステン、インジウム、カドミウム、ルテニウム、ジルコニウム、鉄、鉛、白金、亜鉛、金、銀、銅等の導電性金属;これらの酸化物;アンチモン酸亜鉛(ZnO・Sb25)、酸化スズ(SnO2)、酸化インジウム(InO3)、酸化カドミウム(CdO)等の導電性金属酸化物;ステアレート、メタクリレート、エトキシレート、アクリレート等の導電性樹脂;四級アンモニウム塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩等の界面活性剤;カーボン粉末;スルホン化ポリアニリン;カルボキシル基、水酸基、アミノ基、スルホン酸基等の親水性基を有する化合物等を分散した組成により構成される。
【0031】
帯電防止層の厚みは、通常0.001〜10μm、好ましくは0.01〜1μmである。
【0032】
帯電防止層の表面電気抵抗は、1013Ω/□以下であるのが好ましく、1012Ω/□以下であるのがより好ましい。帯電防止層の表面電気抵抗は、例えば、高抵抗率計三菱油化(株)製のHirestaIPを用いて500Vの印加電圧にて測定できる。
【0033】
本発明では、帯電防止処理の代わりに、離型処理がなされていてもよい。離型処理の方法、離型処理により形成される離型層の厚さ等は、上記と同様でよい。
【0034】
このような保護フィルムの一例を示す断面図を図2に示す。
【0035】
本発明の保護フィルムは、これを触媒層転写シート、より具体的には固体高分子電解質型燃料電池製造用触媒層転写シートの触媒層を保護するために使用される。例えば、本発明保護フィルムの離型処理面と触媒層転写シートの触媒層とが接触するように重ね合わせることにより、触媒層の欠落を大幅に防止することができる。
【0036】
また、本発明の保護フィルムは、公知の触媒層−電解質膜積層体又は触媒層付きガス拡散電極の触媒層を保護するために使用することもできる。
【0037】
保護フィルムの一方面のみに離型処理が施されている保護フィルムを、触媒層転写シートの触媒層の欠落防止に使用する場合、触媒層転写シートは、下記に示す層構成であるのが望ましい。
【0038】
触媒層転写シート
触媒層転写シートは、基材シートの一方面上に触媒層が形成され、他の一方面が帯電防止処理又は離型処理されている。このような触媒層転写シートの一例を示す断面図を図3に示す。
【0039】
基材シートとしては、例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリパルバン酸アラミド、ポリアミド(ナイロン)、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテル・エーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート等の高分子フィルムを挙げることができる。
【0040】
また、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の耐熱性フッ素樹脂を用いることもできる。
【0041】
更に、基材はシート、高分子フィルム以外に、アート紙、コート紙、軽量コート紙等の塗工紙、ノート用紙、コピー用紙等の非塗工紙等の紙であってもよい。また、基材は、カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素繊維からなるシートであってもよい。
【0042】
基材シートの厚さは、取り扱い性及び経済性の観点から、通常6〜100μm程度、好ましくは10〜50μm程度、より好ましくは15〜30μm程度とするのがよい。
【0043】
基材シートとしては、安価で入手が容易な高分子フィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレート等がより好ましい。
【0044】
触媒層は、基材シートの一方面上に形成されている。
【0045】
触媒層は、公知のものであり、一般的には、触媒粒子を担持させた炭素粒子及び水素イオン伝導性高分子電解質を含有する。
【0046】
ここで、触媒粒子としては、例えば、白金、白金化合物等が挙げられる。白金化合物としては、例えば、ルテニウム、パラジウム、ニッケル、モリブデン、イリジウム、鉄等からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属と白金との合金等が挙げられる。
【0047】
水素イオン伝導性高分子電解質としては、例えば、パーフルオロスルホン酸系のフッ素イオン交換樹脂等が挙げられる。
【0048】
基材シート上に触媒層を形成させるに当っては、触媒粒子を担持させた炭素粒子及び水素イオン伝導性高分子電解質を適当な溶剤に混合、分散してペースト状にしておき、形成される触媒層が所望の層厚になるように、このペーストを公知の方法に従い基材シート上に塗布するのがよい。
【0049】
使用される溶剤としては、例えば、各種アルコール類、各種エーテル類、各種ジアルキルスルホキシド類、水又はこれらの混合物等が挙げられる。
【0050】
ペーストの塗布方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、ナイフコーター、バーコーター、スプレー、ディップコーター、スピンコーター、ロールコーター、ダイコーター、カーテンコーター、スクリーン印刷等の一般的な方法を適用できる。
【0051】
斯かるペーストを塗布した後、乾燥することにより、触媒層が形成される。乾燥温度は、通常40〜100℃程度、好ましくは60〜80℃程度である。乾燥時間は、乾燥温度にもよるが、通常5分〜2時間程度、好ましくは30分〜1時間程度である。
【0052】
触媒層の厚さは、通常10〜50μm程度、好ましくは15〜30μm程度がよい。
【0053】
触媒層転写シートは、触媒層が形成された基材シートの反対面が帯電防止処理又は離型処理されている。
【0054】
帯電防止層は、例えば、スルホン化ポリアニリンと硬化性樹脂、界面活性剤、金属塩等を公知の方法に従って基材シート上にコーティング処理することにより形成させることができる。
【0055】
帯電防止層の厚みは、通常0.001〜10μm、好ましくは0.01〜1μm、より好ましくは0.05〜0.5μmである。
【0056】
帯電防止層の表面電気抵抗は、1013Ω/□以下であるのが好ましく、1012Ω/□以下であるのがより好ましい。
【0057】
離型処理により形成される離型層は、上記と同じように離型性に優れた材料、例えば、フッ素樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂等の樹脂(好ましくはフッ素樹脂)を公知の方法に従って基材シート上にコーティングすることにより形成させることができる。
【0058】
基材シートに形成される離型層の厚みは、一般的には0.001〜50μm、好ましくは0.01〜10μmである。
【0059】
本発明の保護フィルムと触媒層転写シートとを重ね合わせた状態の断面図を図4及び図5に示す。
【0060】
図4は、基材フィルムの一方面上に離型層が形成され、他の一方面上に帯電防止層又は離型層が形成された本発明の保護フィルムと、基材シートの一方面上に触媒層が形成された触媒層転写シートとを重ね合わせたところを示す断面図である。
【0061】
図5は、基材フィルムの一方面上に離型層が形成された本発明の保護フィルムと、基材シートの一方面上に触媒層が形成され、他の一方面上に帯電防止層又は離型層が形成された触媒層転写シートとを重ね合わせたところを示す断面図である。
【0062】
これら保護フィルムと触媒層転写シートとを重ね合わせた状態でロール等に巻き付けた場合、基材フィルムと触媒層転写シートとの間には帯電防止層又は離型層が常に存在している状態になっているので、ロールで巻き上げる際に基材フィルムと触媒層転写シートとの間にズレが生じても、触媒層転写シート上の触媒層に負荷が掛からず、触媒層の欠落を大幅に防止することができる。
【発明の効果】
【0063】
本発明の保護フィルムを使用すれば、触媒層転写シートからの触媒層の欠落を大幅に防止することができる。それ故、本発明の保護フィルムを使用することにより、触媒層に欠落のない固体高分子型電解質燃料電池を製造するための触媒層転写シートを提供することができる。
【0064】
本発明の保護フィルムを使用すれば、触媒層転写シートの包装が極めて容易になる。
【0065】
更に、本発明の保護フィルムを使用すれば、触媒層に欠落のない触媒層電解質膜積層体又は触媒層付ガス拡散電極を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0066】
以下に実施例を掲げて、本発明をより一層明らかにする。
【0067】
実施例1
(1) 保護フィルムの作製
ポリエステルポリオール(東洋モートン製、アドコート)15.0重量部にメチルエチルケトン/トルエン(2:1)85.0重量部を配合してプライマー層用塗工液を調製した。
【0068】
基材フィルム(ポリエチレンテレフタレート(PET)、厚み38μm、東レ(株)製)の一方面上に、上記で調製したプライマー層用塗工液を乾燥時0.1g/m2の割合になるように塗工し、100℃で10分間乾燥してプライマー層を形成した。
【0069】
次に、ブチラール樹脂(BX−1、積水化学製)10重量部 、アミノ変性シリコーン(信越化学工業製、X−22−3050C)0.2重量部 、エポキシ変性シリコーン(信越化学工業製、X−22−3000E)0.2重量部 、ポリイソシアネート(スミジュールN−75、住友バイエル化学)0.4重量部 及びメチルエチルケトン/トルエン(1:1)89重量部を混合して、離型層用塗工液として調製した。
【0070】
基材フィルム上に形成されたプライマー層の上に、上記で調製した離型層用塗工液を固形分0.1g/m2の割合で塗工し、100℃で10分間乾燥して離型層(離型層の厚さ:約5μm)を形成することにより、本発明の保護フィルムを作製した。
離型層と下記(2)の触媒層との間の動摩擦係数:0.2
(2) 触媒層転写シートの作製
白金触媒(Pt−Ru担持触媒、田中貴金属(株)製)1重量部、電解質樹脂(5重量%ナフィオン溶液、デュポン社製)7重量部及びエタノール25重量部を混合して、触媒層形成用塗工液を調製した。
【0071】
ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET、厚み38μm、東レ(株)製)の一方面に、前記で調製した触媒層形成用塗工液を、塗工装置を使用して乾燥時に27.0g/m2になるように塗布し、100℃の乾燥炉で10分間乾燥することにより、触媒層転写シートを作製した。触媒層の厚さは、約26μmである。
(3) 保護フィルム付触媒層転写シートのロール品の作製
(1)で作製した保護フィルムと(2)で作製した触媒層転写シートとを、図6に示すように保護フィルムの離型層と触媒層転写シートの触媒層とが接触するように重ね合わせ、これを巻き取って、保護フィルム付の触媒層転写シートのロール品を作製した。
【0072】
比較例1
(1) 保護フィルム
基材フィルム(ポリエチレンテレフタレート(PET)、厚み38μm、東レ(株)製)に離型処理を施さないで、比較のための保護フィルムとした。
離型層と下記(2)の触媒層との間の動摩擦係数:0.51
(2) 触媒層転写シート
実施例1で作製した触媒層転写シートを使用した。
(3) 保護フィルム付触媒層転写シートのロール品の作製
(1)の保護フィルムと(2)の触媒層転写シートとを重ね合わせ、これを巻き取って、保護フィルム付の触媒層転写シートのロール品を作製した。
【0073】
試験例1
実施例1及び比較例1で得られた保護フィルム付触媒層転写シートのロール品について、巻き上げ直後における触媒層欠落の有無及び巻きシワを目視により確認した。
【0074】
その結果、実施例1で得られたロール品は、触媒層の欠落が全くなく、巻きシワも認められなかった。これに対して、比較例1で得られたロール品は、触媒層の欠落が随所に見られ、また多くの巻きシワが認められた。
【0075】
実施例2
(1) 保護フィルムの作製
実施例1で作製した保護フィルムを110mm×150mmの大きさにカットした。
離型層と下記(2)の触媒層との間の動摩擦係数:0.2
(2) 触媒層転写シート
実施例1(2)で作製した触媒層転写シートを110mm×150mmの大きさにカットした。
(3) 保護フィルム付触媒層転写シートの作製
保護フィルムの離型層と触媒層転写シートの触媒層とが接触するように重ね合わせ、保護フィルム付の触媒層転写シートを作製した。
【0076】
実施例3
(1) 保護フィルムの作製
一方面に凹凸処理を施した基材フィルム(ポリエチレンテレフタレート(PET)、厚み38μm、東レ(株)製、無機フィラーを練り込んだ樹脂を延伸してフィルムにしたもの、表面粗さRa0.4μm、Raの測定方法:JIS B0601)を110mm×150mmの大きさにカットした。
離型層と下記(2)の触媒層との間の動摩擦係数:0.31
(2) 触媒層転写シート
実施例1(2)で作製した触媒層転写シートを110mm×150mmの大きさにカットした。
(3) 保護フィルム付触媒層転写シートの作製
保護フィルムの離型層と触媒層転写シートの触媒層とが接触するように重ね合わせ、保護フィルム付の触媒層転写シートを作製した。
【0077】
比較例2
(1) 保護フィルムの作製
基材フィルム(ポリエチレンテレフタレート(PET)、厚み38μm、東レ(株)製、未処理)を110mm×150mmの大きさにカットした。
離型層と下記(2)の触媒層との間の動摩擦係数:0.51
(2) 触媒層転写シート
実施例1(2)で作製した触媒層転写シートを110mm×150mmの大きさにカットした。
(3) 保護フィルム付触媒層転写シートの作製
保護フィルムの離型層と触媒層転写シートの触媒層とが接触するように重ね合わせ、保護フィルム付の触媒層転写シートを作製した。
【0078】
試験例2
実施例2、実施例3及び比較例2で得られた保護フィルム付触媒層転写シートについて、摩擦試験を行った。即ち、摩擦試験は、学振型摩擦試験機(重り300g)を用い、土台側に触媒転写フィルムをアーム側に保護フィルムを取り付け、更にその上に300gの重りを載せ、触媒層転写フィルムと保護フィルムを50回こすり合わせ、触媒層表面を観察することにより行った。
【0079】
試験後のシートを目視により確認し、触媒層の表面に欠落、キズ等が発生しなかった場合を○、 触媒層が欠落し、基材フィルムが見える状態になった場合を×と判断した。その結果、実施例2及び実施例3で得られた保護フィルム付触媒層転写シートは○、比較例2で得られた保護フィルム付触媒層転写シートは×であった。
【0080】
実施例4
(1) 保護フィルムの作製
スルホン化ポリアニリン(日東化学工業製アクア−SAVE−01Z、固形分10%)0.25重量部(固形分)、水溶性ポリエステル樹脂(日本合成化学工業製ポリエスターWR−961、固形分30%の水溶液)4.75重量部(固形分) 、燐酸エステル系界面活性剤(第一工業製薬製プライサーフ217E)0.2重量部 、水45.0重量部及びイソプロピルアルコール50.0重量部を混合して、帯電防止処理用塗工液を調製した。
【0081】
実施例1で作製した保護フィルムの離型層とは反対面に、前記で調製した帯電防止処理用塗工液を、塗工装置を使用して乾燥時に0.1g/m2になるように塗布し、100℃の乾燥炉で10分間乾燥することにより、帯電防止層を形成した。
帯電防止層の表面抵抗値は、6.1×1012Ω/□であった。
(2) 触媒層転写シート
実施例1で作製した触媒層転写シートを使用した。
(3) 保護フィルム付触媒層転写シートのロール品の作製
(1)の保護フィルムと(2)の触媒層転写シートとを重ね合わせ、これを巻き取って、保護フィルム付の触媒層転写シートのロール品を作製した。
【0082】
試験例3
実施例1及び実施例4で作製した保護フィルム付触媒層転写シートのロール品から、保護フィルム付触媒層転写シートを150mm×100mmの大きさにカットし、それらを10枚重ね、袋に詰める作業を10回繰り返した。触媒層転写シートと保護フィルムとの間にズレが生ずるか否かを確認したところ、実施例4で作製した保護フィルム付触媒層転写シートはズレが殆ど確認されず、帯電防止層を形成した保護フィルムの方が一段と優れたズレ防止効果を発現することが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】図1は、保護フィルムの一例を示す断面図である。
【図2】図2は、保護フィルムの一例を示す断面図である。
【図3】図3は、触媒層転写シートの一例を示す断面図である。
【図4】図4は、保護フィルムと触媒層転写シートとを重ね合わせた一例を示す断面図である。
【図5】図5は、保護フィルムと触媒層転写シートとを重ね合わせた一例を示す断面図である。
【図6】図6は、実施例1の保護フィルムと触媒層転写シートとを重ね合わせた状態を示す断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体高分子電解質型燃料電池製造用触媒層転写シートの触媒層を保護するフィルムであって、
基材フィルムの一方面が離型処理されており、
触媒層と離型処理面との間の動摩擦係数が0.2〜0.4であり、
厚みが4〜100μmである、
保護フィルム。
【請求項2】
基材フィルムの他の一方面が帯電防止処理又は離型処理されている、請求項1に記載の保護フィルム。
【請求項3】
固体高分子電解質型燃料電池製造を製造するための触媒層転写シートであって、
基材シートの一方面上に触媒層が形成され、他の一方面が帯電防止処理又は離型処理されている、
触媒層転写シート。
【請求項4】
基材シートの一方面上に触媒層が形成された触媒層転写シートの触媒層面上に、請求項1に記載の保護フィルムが載置された保護フィルム付き触媒層転写シートであって、
触媒層転写シートと接触している保護フィルムの反対側が帯電防止処理又は離型処理されている、
保護フィルム付き触媒層転写シート。
【請求項5】
基材シートの一方面上に触媒層が形成された触媒層転写シートの触媒層面上に、請求項1に記載の保護フィルムが載置された保護フィルム付き触媒層転写シートであって、
保護フィルムと接触している触媒層転写シートの反対側が帯電防止処理又は離型処理されている、
保護フィルム付き触媒層転写シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−226540(P2008−226540A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−60198(P2007−60198)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】