説明

触媒担持フィルタ

【課題】スート堆積前後の圧損上昇の抑制効果を得ながら、高いスートの燃焼速度を得ることができ、さらに、再生効率を向上させるハニカムフィルタを提供する。とりわけ、触媒群を細孔から表出させることにより、スートと触媒との接触機会を増やしながら、かつ耐久性を維持できる。
【解決手段】多数の細孔5を有する多孔質のセラミックからなる隔壁4によって区画された、排ガスの流路となる複数のセルが形成されたハニカム構造の基材を備えた触媒担持フィルタであって、複数のセルの一方の開口端部と他方の開口端部には互い違いに目封じされてなる目封止部が形成されてなり、隔壁4上には、隔壁内の平均細孔径より小さい平均細孔径を有するPM捕集層20が形成されるとともに、PM捕集層20は、触媒が担持された触媒層を有してなり、さらに、PM捕集層20の最外輪郭上17には、触媒群15を分布させている触媒担持フィルタ1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジン等の内燃機関、又は各種燃焼装置から排出される排ガス中に含まれるパティキュレートを捕集し、或いは浄化するために使用される触媒担持フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関、又は各種燃焼装置(以下、適宜「内燃機関等」という)から排出される排ガスにはスート(黒鉛)を主体とする粒子状物質(以下、適宜「パティキュレート・マター」、「パティキュレート」、或いは「PM」という)が多量に含まれている。このパティキュレートがそのまま大気中に放出されると環境汚染を引き起こすため、内燃機関等からの排ガス流路には、パティキュレートを捕集するためのフィルタが搭載されていることが一般的である。
【0003】
このような目的で使用されるフィルタとしては、例えば、多数の細孔を有する多孔質セラミックスからなる隔壁によって区画された、ガスの流路となる複数のセルを有するハニカム構造体からなり、複数のセルの一方の開口端部と他方の端部とが目封止部によって、互い違いに目封じされてなるハニカムフィルタが挙げられ、さらに、近年においては、パティキュレートの酸化(燃焼)を促進するための酸化触媒を備えたハニカムフィルタが使用されている(以下、適宜「触媒担持フィルタ」という)。
【0004】
たとえば、図14、15に示されるハニカムフィルタ100では、多数の細孔を有する多孔質セラミックスからなる隔壁105によって区画された、ガスの流路となる複数のセル101を有するハニカム構造体100からなり、複数のセル101の一方の開口端部Xと他方の端部Yとが目封止部107によって、互い違いに目封じされている。さらに、隔壁105の入口側111(排ガス流入側を以下「入口側」と言う」)に形成される細孔の開口部109には触媒117がコートされて、隔壁上に、ガスGがその細孔の開口部109から流入し、隔壁の出口側113(排ガス流出側を以下「出口側」と言う」)に形成される、細孔の開口部115を経て隣接するセルの流路に流出するように構成される。
【0005】
このように、従来のフィルタでは、排ガス流入セルから排ガスを流入させると、排ガスが隔壁を通過する際に排ガス中のパティキュレートが隔壁に捕集され、パティキュレートが除去された浄化ガスが流出セルから流出することになる。加えて、ハニカムフィルタの隔壁の表面及び隔壁に存在する細孔の内部表面に担持された酸化触媒により、パティキュレートの酸化(燃焼)が、促進されることによって、排ガス中のパティキュレートを減少させることができ、排ガスを効果的に浄化せんとする。
【0006】
ところで、このような排ガス中に含まれるパティキュレートを確実に捕集し得るような平均細孔径からなる捕集層を有する多孔質セラミックから構成された触媒担持フィルタにおいては、隔壁の入口側に、隔壁の出口側よりも細孔径の小さい層を形成し、その細孔径の小さい層に、更に触媒がコートされている。しかし、このように捕集層として細孔径を小さくしたものに、更に、触媒を担持(コート)して触媒層を形成すると、触媒担持後の細孔径は更に小さくなってしまうため、スートの大半が触媒層に侵入させづらいといった問題があった。すなわち、微粒状のスートを除いて、エンジンから飛んでくるスートの平均径は、入口層に形成された触媒層の平均細孔径よりも大きいため、細孔径内にほとんど侵入できず、その結果、触媒層を形成してもスートと触媒との接触が十分に得られず、スート再生効率が不十分なものとなっていた。
【0007】
特に、スートを低温で燃焼できる触媒をコートするものである場合には、スートと触媒との接触が非常に重要であり、スートが触媒に接触できないと、その触媒の効果を十分に発揮することができないため、問題となっていた。
【0008】
また、従来のDPFでは、前述のように、入口層は平均細孔径が小さい上に、隔壁の入口層内に触媒が層状にコートされている触媒層からなる場合には、スートが堆積する前の圧損上昇を抑制しながら、高いスート燃焼速度を得難いものとなっていた。すなわち、従来のDPFのように触媒層として構成される場合には、触媒そのものは透過抵抗が高い、つまり、パーミアビリティーが低いため、スートが堆積していない状態では、圧損が高くなる虞がある。換言すれば、エンジンを十分に連続運転した場合には、触媒層は平均細孔径が小さくスートのほとんどが細孔内に侵入できないから、スートの大半が入口層上に、いわばケーキ層状に堆積することになる。しかし、エンジンの初期運転時には、入口層上は、いわばケーキ層状にスートが堆積していない状態であるため、エンジンから飛んでくるスートや排ガス等の流速から生じる応力に対しての、いわゆる緩衝効果を期待できず、触媒層内への透過抵抗が高くなり、圧損が高くなる虞がある。
【0009】
とりわけ、従来のDPFでは、触媒が隔壁の入口全体にコートされた触媒層として構成されているため、ハニカム基材に多数の細孔を施しても、触媒によって細孔が全て覆われてしまうため、多孔性としての特性を引き出しづらい。換言すれば、触媒そのものは透過抵抗が高い、つまり、パーミアビリティーが低いにも拘わらず、触媒層として入口層全体に触媒を一面に担持させることによって、更に、圧損を生じやすくさせていた。
【0010】
また、従来のDPFでは、隔壁層から剥離が生じてしまい、触媒機能が低減しやすいといった問題があった。通常、隔壁と触媒とは少なくとも熱膨張率に差異があるが、従来のDPFでは、隔壁上に担持させる触媒は層状に構成されているため、隔壁の入口層に形成されている細孔全てが閉塞されてしまう。したがって、この閉塞した状態で再生を行うと、隔壁と触媒との熱膨張率は著しく差異を生じてしまう。その結果、繰り返し再生を行うと、触媒の担持状態に損傷が生じるため、隔壁層から剥離が生じやすく、繰り返し使用できないといった問題が生じていた。
【0011】
このような従来の問題に対して、次の特許文献1〜3がある。
【0012】
特許文献1では、「流体及び流体内の成分の触媒反応によって出現する粒状物を、流体がフィルタを通過する際に濾過する」ことを目的に、隔壁の入口側に、隔壁よりも細孔径の小さい層(膜)を形成し、且つ、それらに触媒がコートされている、触媒濾過デバイスが開示されている。しかし、同文献1の「小さい層」では、細孔径が小さいが故に、スートが前述の「小さい層」内にほとんど侵入しない。そのため、スートと触媒との接触が十分に得られず、その結果、十分なスート再生効率も得られない。特に、特許文献2のように、低温でスートを燃焼させる触媒がコートされる場合には、スートと触媒とを十分に接触させる必要があるが、文献1の触媒濾過デバイスでは、接触機会がほとんど期待できないため、触媒機能を十分に発揮できず、再生効率を著しく低減させるものである。
【0013】
特許文献3では、「PMを効率よく捕集するとともに、圧損の上昇を抑制し、さらに、外周部においても捕集したPMを速やかに燃焼して浄化できる」ことを目的に、酸化触媒を含む第1層と、パティキュレートを捕集する第2層と、パティキュレートを捕集する第3層とで構成される排ガス浄化フィルタが開示されている。しかし、同文献3の排ガス浄化フィルタでは、パティキュレートが通過し得る大きな細孔で構成された触媒を含む第1層(平均細孔径:50μm)では、膜強度、第2層との接着強度が十分でないため、耐久後にその層の剥離が起こる場合が考えられ、また、パティキュレートが通過して第2層に堆積してしまうため、そのパティキュレートは第1層の触媒が寄与しない事から、十分な再生効率が得られず、上記の通り、スートの燃焼特性が高い触媒がコートされる場合には、特にその効果を十分に引き出すことができない。
【0014】
以上のように特許文献1〜3のいずれにおいても十分な対応はなされておらず、未だ解決に至っておらず、更なる改良が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特表平07−505083号公報
【特許文献2】特開2007−209913号公報
【特許文献3】特開2006−77672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上述のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、隔壁の入口層は、隔壁の他の層よりも平均細孔径の小さい層として形成されるとともに、入口層の最外輪郭上に触媒群を堆積させることにより、スート堆積前後の圧損上昇の抑制効果を得ながら、高いスートの燃焼速度を得ることができ、さらに、再生効率を向上させる触媒担持フィルタを提供する。とりわけ、触媒群を細孔から表出させることにより、スートと触媒との接触機会を増やしながら、かつ耐久性を維持できる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明により、以下の触媒担持フィルタが提供される。
【0018】
[1] 多数の細孔を有する多孔質のセラミックからなる隔壁によって区画された、排ガスの流路となる複数のセルが形成されたハニカム構造の基材を備えた触媒担持フィルタであって、前記複数のセルの一方の開口端部と他方の開口端部には互い違いに目封じされてなる目封止部が形成されてなり、前記隔壁上には、隔壁内の平均細孔径より小さい平均細孔径を有するPM捕集層が形成されるとともに、前記PM捕集層は、触媒が担持された触媒層を有してなり、さらに、前記PM捕集層の最外輪郭上には、触媒群を分布させている触媒担持フィルタ。
【0019】
[2] 前記触媒群の、前記最外輪郭上に分布している3次元接触割合が、20%以上80%以下である[1]に記載の触媒担持フィルタ。
【0020】
[3] 前記触媒群の、前記最外輪郭上であって、所定領域の長さ方向に形成される最外輪郭線に対して、接触している長さの割合が、20%以上80%以下である[1]又は[2]に記載の触媒担持フィルタ。
【0021】
[4] 前記触媒群の厚さが、前記最外輪郭線より30μm以下である[1]〜[3]のいずれかに記載の触媒担持フィルタ。
【0022】
[5] 前記触媒群の、前記最外輪郭線に接する長さが、前記PM捕集層内を形成する粒子の平均粒子径の1倍以上20倍以下である[1]〜[4]のいずれかに記載の触媒担持フィルタ。
【0023】
[6] 前記触媒群及び前記触媒層の触媒がPM除去触媒である[1]〜[5]のいずれかに記載の触媒担持フィルタ。
【0024】
[7] 前記PM除去触媒は、PM除去触媒の粒子からなる[6]に記載の触媒担持フィルタ。
【0025】
[8] さらに、排ガスが流出する前記隔壁の出口層は、未燃ガスの酸化を促進するガス浄化触媒が担持又はコートされたガス浄化触媒層として構成されている[1]〜[7]のいずれかに記載の触媒担持フィルタ。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、隔壁上に、平均細孔径の小さいPM捕集層及び触媒層が形成され、さらに、PM捕集層の最外輪郭上に、触媒群を分布させることによって、スート堆積前後の圧損上昇の抑制効果を得ながら、高いスートの燃焼速度を得ることができ、さらに、再生効率を向上させるハニカムフィルタを提供できるという優れた効果を奏する。とりわけ、触媒群をPM捕集層の細孔から表出させることにより、スートと触媒との接触機会を増やしながら、かつ耐久性を維持できる。とりわけ、入口層としてのPM捕集層に排ガスに含まれるPMを除去するための触媒を担持又はコートして、パティキュレートと酸化触媒との接触度合いを向上させてPMを確実に除去させて、再生効率の向上を図ることができる。
【0027】
また、出口層としてのガス浄化触媒層に担持又はコートされている触媒が酸化触媒の場合には、耐久試験後の同等浄化性能を維持するためのトータルの触媒コート量を減らすことができ、AshがPM捕集層で捕捉されるため、ガス浄化触媒層の触媒劣化を防ぐことができる触媒担持フィルタを提供できる。
【0028】
さらに、出口層としてのガス浄化触媒層に担持又はコートされている触媒がNOx触媒の場合には、捕集層に堆積しているPMの再生によって、局所的なO濃度を下げられるため、出口大細孔層でのNOx浄化効率が上昇し、さらに、AshやSulfur成分がNOx触媒にいかないため、NOx触媒の劣化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態の触媒担持フィルタを示した模式図であって、セラミックフィルタの斜視図である。
【図2】図1の触媒担持フィルタを示した模式図であって、触媒担持フィルタの平面図である。
【図3】図1の触媒担持フィルタの断面図であって、模式的に示した図である。
【図4】本実施形態における触媒担持フィルタの隔壁の一部を模式的に示すともに、一部断面した斜視図である。
【図5】本実施形態における触媒担持フィルタの隔壁の一部を模式的に示すともに、一部断面した断面図である。
【図6】本実施形態における触媒担持フィルタの隔壁の一部を模式的に示すともに、一部拡大して断面した拡大断面図である。
【図7】本実施形態における触媒担持フィルタの触媒担持前の隔壁の一部を模式的に示すともに、一部拡大して断面した拡大断面図である。
【図8】本発明の別の実施形態が適用されるセラミックフィルタを示した模式図であって、触媒担持フィルタの触媒担持前の隔壁の一部を模式的に示すともに、一部拡大して断面した拡大断面図である。
【図9】本発明の別の実施形態が適用されるセラミックフィルタを示した模式図であって、触媒担持フィルタの触媒担持前の隔壁の一部を模式的に示すともに、一部拡大して断面した拡大断面図である。
【図10】本発明の別の実施形態が適用されるセラミックフィルタを示した模式図であって、触媒担持フィルタの触媒担持前の隔壁の一部を模式的に示すともに、一部拡大して断面した拡大断面図である。
【図11】本発明の別の実施形態が適用されるセラミックフィルタを示した模式図であって、セラミックフィルタの斜視図である。
【図12】パーミアビリティーの測定に用いる試験片について説明する模式図である。
【図13】本発明の一実施形態が適用されるセラミックフィルタを示した模式図であって、セラミックフィルタのPM捕集層を部分的に拡大した拡大図である。
【図14】従来のセラミックフィルタを示した模式図であって、セラミックフィルタの断面図である。
【図15】図14の一部拡大図であって、その断面を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の触媒担持フィルタを実施するための形態について具体的に説明する。但し、本発明はその発明特定事項を備える触媒担持フィルタを広く包含するものであり、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0031】
[1]本発明の触媒担持フィルタ:
本発明の触媒担持フィルタ1は、図1〜6に示されるように、多数の細孔5を有する多孔質のセラミックからなる隔壁4によって区画された、排ガスG1,G2の流路となる複数のセル3が形成されたハニカム構造の基材を備えた触媒担持フィルタであって、複数のセル3の一方の開口端部11aと他方の開口端部11bには互い違いに目封じされてなる目封止部13が形成されてなり、隔壁4上には、隔壁内の平均細孔径より小さい平均細孔径を有するPM捕集層20が形成されるとともに、PM捕集層20は、触媒が担持された触媒層を有してなり、さらに、PM捕集層20の最外輪郭上には、触媒群15を分布させている触媒担持フィルタ1として構成されている。
【0032】
[1―1]PM捕集層:
本実施形態の触媒担持フィルタでは、多数の細孔を有する多孔質のセラミックからなる隔壁上に、平均細孔径の小さいPM捕集層が入口層として形成されている。すなわち、PM捕集層として平均細孔径の小さい層を隔壁上に形成することにより、このPM捕集層で排ガスのスート(黒鉛)を主体とする粒子状物質(PM)を捕集し、スートの細孔内部への通過を阻止する役割を果たさせている。換言すれば、このPM捕集層に、スートの細孔内部への通過を阻止する役割を果たさせているのは、隔壁内の細孔内部へスートが通過すると、細孔内にスートが堆積し、その堆積時に圧損が上昇するため、その圧損の上昇を抑制しながら、高いスートの燃焼速度を得るためである。
【0033】
而して、平均細孔径の小さいPM捕集層が隔壁上に形成されることにより、スートのほとんどが細孔内に侵入せず、大半がPM捕集層(入口層)上にケーキ層状に堆積することになるが、その堆積したスートと後述の触媒群とが直接接触する事から、再生効率を向上させることができる。
【0034】
さらに、触媒そのものは透過抵抗が高い、つまり、パーミアビリティーが低いため、その触媒自体を、PM捕集層として隔壁上に形成せずに、隔壁内の表面層(排ガスが流入する側の層)に、触媒層を形成すると、排ガスが流入する際に、スートやAshが隔壁内に侵入しやすい。すなわち、PM捕集層より隔壁層は、平均細孔径が大きいため、スートやAshの侵入を阻止することができないからである。とりわけ、スートが十分に隔壁上に堆積していない状態では、細孔の開口に、いわばスートの蓋がないため、スートやAshが容易に侵入しやすくなる。その結果、スートやAshが侵入する際に圧損が生じる虞が極めて高い。しかし、本願のように、PM捕集層を隔壁上に形成し、後述のように、そのPM捕集層を触媒層にするとともに、さらに、触媒群をPM捕集層上に分布(分散)させることで、スート及びAshの細孔内への侵入を防ぐことができ、圧損を低減できるのである。
【0035】
加えて、触媒群をPM捕集層の最外輪郭上に分布させて形成すると、再生を繰り返し行っても、PM捕集層と、触媒との熱膨張率の差異の影響を低減させることができるため、PM捕集層から触媒群を含めた触媒の剥離を防ぐことができ、触媒機能を十分に発揮させることができる。すなわち、従来のように、触媒を、隔壁の排ガスが流入する隔壁内表面層に形成すると、再生を繰り返し行う過程で、隔壁と触媒との熱膨張率の差異が著しく生じてしまう。その結果、触媒が隔壁内の表面層から剥離してしまい、触媒機能が低減するため、繰り返し再生処理しづらかった。しかし、本実施形態のように、触媒群をPM捕集層の最外輪郭上に分布させることによって、触媒の剥離を防ぐことができる。したがって、耐久性の向上や、再生効率の向上を図ることができるのである。
【0036】
具体的には、図3に示されるように、セル3の有する隔壁4におけるガスの流入路の入口及びその近傍領域に、PM捕集層(図10の符号20参照)が形成されている。なお、この領域には、後述の触媒が担持(コート)された触媒層22としての役割を担うように構成される。また、図3に示されるように、セル3の有する隔壁4におけるガスの流出路(出口)およびその近傍には、ガス浄化触媒層(図10の符号24参照)が形成される。このガス浄化触媒層の領域は、少なくとも「PM捕集層として形成されている領域」を除いた領域となる。
【0037】
ここで、PM捕集層が、「隔壁上に」形成されるとは、ガスの流入側の隔壁上に形成されることをいう。すなわち、その隔壁上にスートの侵入を防ぐために平均細孔径を小さく形成したPM捕集層としての領域が形成されることをいう。具体的には、図3、4、6に示されるように、セル3が有する隔壁4上に、PM捕集層が、ガスの流入路の入口として形成されている。なお、「ガスの流出側となる出口層」とは、ハニカム構造の基材に備えられるガス流出側の隔壁であって、セルのガス流出側及びその近傍の隔壁に形成される領域をいう。より具体的には、図3、4、6に示されるように、セルの有する隔壁におけるガスの流出路(出口)およびその近傍をいう。
【0038】
なお、本実施形態では、ガスの流入路の入口としてのPM捕集層、及び基材からなる隔壁の2層構造からなるものに限らず、隔壁内であって、PM捕集層と隔壁との間に、たとえば、平均細孔径の異なる中間層を設けて3層以上からなる構成にしてもよい。
【0039】
図3、4を参照しながら説明する。図3に示されるように、セル3のガス流入側隔壁4aに、セルのガス流出側隔壁4b及びその近傍の隔壁よりも、図4で示されるように平均細孔径が小さい、スートの侵入を防ぐPM捕集層が形成される。なお、図3は、本実施形態における触媒担持フィルタの長さ方向断面を示した模式図であり、図4は、本実施形態における触媒担持フィルタの隔壁の一部を模式的に示すともに、一部を切断した断面図であって斜視図である。
【0040】
また、本明細書にいう「パーミアビリティー」とは、下記式(1)により算出される物性値をいい、所定のガスがその物(隔壁)を通過する際の通過抵抗を表す指標となる値である。ここで、下記式(1)中、Cはパーミアビリティー(m)、Fはガス流量(cm/s)、Tは試料厚み(cm)、Vはガス粘性(dynes・sec/cm)、Dは試料直径(cm)、Pはガス圧力(PSI)をそれぞれ示す。また、下記式(1)中の数値は、13.839(PSI)=1(atm)であり、68947.6(dynes・sec/cm)=1(PSI)である。
【0041】
【数1】

【0042】
パーミアビリティーの測定手順としては、ハニカム構造体、ハニカム触媒体いずれの場合も、図12に示すように、隔壁1枚を、リブ残り高さHが0.2mm以下となるように切り出した角板、又は円板状の試験片95の隔壁4に室温空気を通過させ、その際の通過抵抗を測定し、式(1)により求める。この際、リブ残り97によりできるシールとの隙間から空気が漏れないように、グリス等の流動性シールを併用することが望ましい。また、空気流量範囲としては、計算上の隔壁通過流速が0.1cm/sec以上、1cm/sec以下となる範囲での計測結果を用いる。
【0043】
また、本明細書において、「平均細孔径」、「気孔率」というときには、水銀圧入法により測定した平均細孔径、気孔率を意味するものとする。ただし、後述するように、SEM(走査型電子顕微鏡)により撮影した画像を2値化処理して測定評価することを適宜加えることにより行う。
【0044】
[1−2−1]触媒層:
触媒層は、PM捕集層に、さらに酸化触媒などの触媒を担持(コート)して形成した層からなる。すなわち、入口層としてのPM捕集層は、PMを捕集する役割(機能)を担うだけでなく、触媒機能をも担っている。
【0045】
換言すれば、この触媒層は、入口層としてのPM捕集層、つまり隔壁上に更に形成される領域に、PMを捕集するPM捕集層としての機能と、PMを酸化処理する機能等浄化処理可能な触媒の機能を備えさせたものであり、それらが相俟って、触媒担持フィルタとしての再生効率を向上させるものである。その結果、後述の触媒群と相乗的に、触媒担持フィルタとしての再生効率を著しく向上させることができるのである。
【0046】
具体的には、触媒層は、隔壁上に形成されているPM捕集層の細孔内に触媒を担持させた触媒層としている。さらに、この触媒層(PM捕集層)の最外輪郭上に触媒群を分布させて触媒群を担持させている。このように、触媒群と触媒層とが、いわば縦構造に形成されると、細孔の上部(排ガスの入口側)で触媒群に接触しなかったスートを、触媒群の下部(細孔内であって排ガスの入口側近傍)に担持してある触媒層に、確実に接触させることができるため、スートの燃焼機能を高めることができる。すなわち、触媒群の下の領域である細孔内であって、あたかも、触媒層を流れのよどみ部分のようなところに担持させて細孔(流路)を確保しながら、隔壁の細孔上に担持された触媒群を、隔壁層を形成するセラミック粒子間の開細孔の近傍に堆積(担持)させることで、開細孔を閉塞させないように調整できる。したがって、圧力損失を低減させながら、確実にスートの燃焼を向上させることができる。
【0047】
[1−2−1−1]酸化触媒:
本実施形態では、PM捕集層には、触媒が担持(コート)された触媒層が形成される。このようにして、触媒を担持(コート)することにより、触媒層で、排ガス中に含まれるパティキュレート等の酸化を促進することができ、再生効率を向上させることができる。
【0048】
たとえば、前述の触媒には、酸化触媒を挙げることができる。
【0049】
酸化触媒としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の貴金属が好適に用いられる。
【0050】
また、本発明の触媒担持フィルタにおいては、他の触媒や浄化材が、さらに触媒群として担持されていてもよい。例えば、アルカリ金属(Li、Na、K、Cs等)やアルカリ土類金属(Ca、Ba、Sr等)からなるNO吸蔵触媒、三元触媒、セリウム(Ce)及び/又はジルコニウム(Zr)の酸化物に代表される助触媒、HC(Hydro Carbon)吸着材等が担持されていてもよい。
【0051】
たとえば、触媒にはCeとそれ以外の少なくとも1種の希土類金属、アルカリ土類金属、または遷移金属を含んでもよい。
【0052】
ここで、希土類金属としては、たとえば、Sm,Gd,Nd,Y,Zr,Ca,La、Pr等から選択することができる。
【0053】
また、触媒に含まれるアルカリ土類金属としては、たとえば、Mg,Ca,Sr,Ba等から選択することができる。
【0054】
また、触媒に含まれる遷移金属としては、たとえば、Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Sc,Ti,V,Cr等から選択することきる。
【0055】
また、酸化触媒、NO吸蔵触媒等の触媒成分の担持方法は特に限定されないが、例えば、ハニカム構造体の隔壁に対して、触媒成分を含む触媒液をウォッシュコートした後、高温で熱処理して焼き付ける方法等が挙げられる。また、例えば、ディッピング法等の従来公知のセラミック膜形成方法を利用して、セラミックスラリーをハニカム構造の基材の隔壁の入口層に付着させ、乾燥、焼成する方法等により、薄膜状の触媒層を形成すればよい。この際、触媒層の平均細孔径はセラミックスラリー中の骨材粒子の粒度や配合比等、気孔率はセラミックスラリー中の骨材粒子の粒度や造孔材の量等、コート層厚みはセラミックスラリーの濃度や膜形成に要する時間等を制御することにより所望の値に調整することができる。なお、上記微細コート層については、「少なくとも1層」とあるように、2層以上形成してもよい。
【0056】
なお、酸化触媒、NO吸蔵触媒等の触媒成分は、高分散状態で担持させるため、予めアルミナのような比表面積の大きな耐熱性無機酸化物に一旦担持させた後、ハニカム構造体の、PM捕集層、隔壁等に担持させてもよい。
【0057】
また、上記触媒群は、例えば、吸引法等の従来公知の触媒担持方法を応用して、触媒スラリーをPM捕集層の細孔内に担持させ、乾燥、焼成する方法等により形成してもよい。
【0058】
なお、「PM捕集層に触媒が担持される」とは、PM捕集層内に担持されることであって、PM捕集層上に層状に担持されるものは除く趣旨である。隔壁表面に触媒が担持されて触媒層を形成すると、触媒群と混在しながら隔壁表面が少なくとも露出しなくなり、本願の効果を奏しづらくなるからである。
【0059】
[1−3]触媒群:
本実施形態における触媒群は、入口層であるPM捕集層の細孔に触媒群を分布させてPM捕集層の最外輪郭上に担持させている。すなわち、触媒群は、PM捕集層上に触媒層として形成されているのではなく、入口層に形成される細孔に触媒が群として分布して担持されていることを意味する。換言すれば、入口層の隔壁上に、仮に触媒層を担持したものであれば、隔壁表面が全て触媒によって覆われてしまうため、隔壁上は、全て触媒層によって閉塞されることになり、前述のような隔壁と触媒との熱膨張率の差異が生じることにより触媒剥離が生じ易い。しかし、本実施形態では、PM捕集層上は全て触媒によって覆われずに部分的に入口表面が露出しているため、触媒剥離を防ぐことができる。
【0060】
より好ましいのは、入口層であるPM捕集層に形成される細孔は全て触媒群によって閉塞されずに、幾つかの細孔は、触媒が担持されていないことである。このように形成されることにより、入口層であるPM捕集層に形成される細孔が、全て触媒群によって閉塞されずに形成されると、PM捕集層と触媒との熱膨張率の差異がより生じにくくなり、触媒の剥離を効果的に防ぐことができる。すなわち、部分的に細孔の表面(開口)が露出しているため、熱膨張率の差異がより生じにくくなり触媒剥離を防ぐことができる。
【0061】
ここで、「触媒群」とは、微粒子状からなる触媒の集まりをいい、触媒が層状からなる触媒層として形成されるものを除く趣旨である。すなわち、触媒層のように、触媒が層状からなる、いわば一面として担持されているものを除く趣旨であり、微粒子状からなる触媒の集まりが、隔壁層上に群として分散(点在)している状態をいう。
【0062】
具体的には、図4〜6に示される触媒群15のように、微粒子状からなる触媒の集まりが、PM捕集層上に群として分散(点在)し、触媒が層状からなる触媒層として形成されていないものを挙げることができる。
【0063】
また、図4〜6に示されるように、触媒群が担持されている細孔は、触媒群とスートが接触し、スートを燃焼処理する。また、細孔全体の内の一部の細孔上では、触媒群が担持されていないため、PM捕集層の表面が一部露出している状態となる。したがって、触媒が層状に担持されず、透過抵抗を抑制できる。すなわち、パーミアビリティーを高く維持できるため、圧損を低減化でき、触媒つきハニカムの特性を十分に引き出すことができるのである。さらに、触媒群の下側には、触媒層が形成されているから、触媒群で仮にスート等に接触できず、細孔内に侵入しても、確実にPM捕集層で捕集できる。加えて、このPM捕集層は、触媒が担持された触媒層でもあるから、スート等を確実に浄化処理できる。
【0064】
また、入口層であるPM捕集層の細孔に触媒群を「分布」させてとは、触媒群を入口層の細孔に点在させてという意味であり、1つの細孔内に部分的に点在させて閉塞させない趣旨ではない。このように、触媒群を入口層の細孔に点在させるのは、触媒群として触媒を担持させても、過度に触媒群同士が接触しながら隣接する状態のもの、すなわち、過度に触媒群同士が密接している状態のものでは、触媒層としての層状となり得てしまうおそれがあり、本願の効果を奏しづらくなるからである。
【0065】
また、触媒群をPM捕集層の最外輪郭上に担持させているとは、触媒群をPM捕集層の最も外側の輪郭に担持させていることを意味する。ここで、「最外輪郭」とは、PM捕集層の最も外側の輪郭であって、この外側の輪郭を形成する粒子と投影線とが離れる点を結んだ際にできる輪郭をいい、さらに、粒子と粒子とが離れて細孔を形成する場合には、夫々の粒子表面の投影線から離れる点から、表層基準線に対して平行な線を引いて結んだ際にできる線をいう。すなわち、PM捕集層の最も外側の輪郭を形成する粒子は、PM捕集層の周囲を形成するものであって、流体の流れる流路とPM捕集層を区分けする境界に最も近いPM捕集層の領域、及び、PM捕集層の最も外側の輪郭を形成する粒子が隣接せずに細孔を形成する場合には、離間する夫々の粒子と投影線とが離れる点を表層基準線に対して平行に結んだ際にできる領域を意味する。換言すれば、肉眼でみるとPM捕集層は、一面状であるが、電子顕微鏡等でみると無数の凹凸から輪郭が形成されているが、そのような凹凸が形成される場合には、その凹あるいは凸の輪郭に沿った領域であって、細孔内においては、粒子と投影線とが離れる点を表層基準線に対して平行に結んだ際にできる領域に、触媒群を分散させながら担持させることを意味する。このように、PM捕集層の最も外側の輪郭であって、この外側の輪郭を形成する粒子と投影線とが離れる点を結んだ際にできる輪郭に、触媒群を担持させるのは、スートの燃焼を効率よく行うことができるからである。また、粒子と投影線とが離れる点を表層基準線に対して平行に結んだ際にできる領域に、触媒群を分散させながら担持させるのは、細孔内にまで、外側の輪郭を形成する粒子と投影線とが離れる点を結んだ際にできる輪郭にすると、スートが細孔内に侵入しやすくなり、圧損の低減がしづらいため、触媒機能を効果的に発揮させながら、圧損低減を向上させるために、前述の所望位置に担持させることにした。
【0066】
さらに、「表層基準線」とは、一視野内での表層凹凸の平均高さを示す線をいう。
【0067】
具体的には、図7に示されるように、PM捕集層は凹凸状からなる最外輪郭17が形成され、その最外輪郭上に触媒群15が担持されている。より具体的には、図8に示されるように、最外輪郭は、PM捕集層の最も外側の輪郭を形成する粒子99aと投影線とが離れる点Pを結んだ際にできる輪郭をいい、さらに、粒子と粒子とが離れて細孔を形成する場合には、夫々の粒子表面の投影線から離れる点Pから、表層基準線Hに対して平行な平行線Iを引いて、点Pから垂線を引いて前述の平行線Iと結んだ際にできる線をいう。なお、図で示される符号Jは、表層基準線に対する投影線を示している。
【0068】
ただし、ここでの「最外輪郭」には、PM捕集層を平面視した場合における、PM捕集層の最も外側の輪郭から形成される面としての領域(最外輪郭面)のみならず、PM捕集層断面を見た場合におけるPM捕集層の最も外側の輪郭から形成される、いわば線(最外輪郭線)としての領域を含むものである。
【0069】
また、触媒の平均粒子は、触媒の材質によって異なるものであるが、たとえば、アルミナやセリア粒子から、触媒が構成される場合には、2〜6μmの平均粒子からなり、夫々の粒子が凝集して触媒群を形成する場合には、5〜40μmからなることが好ましい。
【0070】
より好ましいのは、入口層の細孔に分布させた触媒群がPM捕集層の最外輪郭上に表出していることである。入口層の細孔に分布させた触媒群が、PM捕集層の最外輪郭上に表出していると、スートがケーキ層状にPM捕集層上に堆積した際に、その触媒群とスートとの接触面積を最大限にでき、スートの燃焼を促進させることができるからである。
【0071】
ここで、表出とは、隔壁の最も外側の輪郭から触媒群が出ていることを意味する。すなわち、流体の流れる流路と隔壁を区分けする境界を基準にした場合には、触媒群が担持されていなければ流体の流れる流路となり得る領域に、あたかも触媒群が溢れ出している状態をいい、換言すれば、肉眼でみると隔壁は、一面状であるが、電子顕微鏡等でみると無数の凹凸から輪郭が形成されているが、そのような凹凸が形成される場合には、その凹あるいは凸の輪郭に沿った領域から、あたかも触媒群が溢れ出している状態を意味する。
【0072】
具体的には、図5、6に示されるように、触媒群15が、細孔5内に留まらず、細孔外にもあふれ出ている状態を例示できる。
【0073】
さらに、触媒群の、最外輪郭上に分布している3次元接触割合が、20%以上80%以下であることが好ましい。最外輪郭上に分布している割合が、20%より小さいと、スートの燃焼効率が悪くなり、80%より大きいと圧損の虞が高くなる上、剥離しやすいからである。
【0074】
ここで、「3次元接触」とは、PM捕集層を平面視した場合における、PM捕集層の最も外側の輪郭から形成される面としての領域(最外輪郭面)に、触媒群を点在させながら接触させることのみならず、PM捕集層の断面を見た場合におけるPM捕集層の最も外側の輪郭から形成される、いわば線(最外輪郭線)としての領域に、触媒群を点在させながら接触させることをも意味する。すなわち、3次元的に触媒群が最外輪郭面に対して接触しながら点在している、或いは、断面視した際に2次元的に最外輪郭線に対して、接触しながら点在している、ことも含まれる。さらに、「接触割合」とは、最外輪郭面或いは最外輪郭線に対して、触媒群が接触する割合を意味する。換言すれば、最外輪郭面或いは最外輪郭線という所望の領域或いは所望の線上に、全て触媒群を接触させて、触媒層として形成させるのではなく、前述の所望割合になるように、触媒群を点在させている。このように、触媒群が、いわばPM捕集層の面、或いは、PM捕集層の線に対して、接触させる割合を調整することにより、よりPM捕集層、隔壁の圧損を制御しながら、スートの燃焼を促進させることができるため、好ましい。
【0075】
ここで、触媒群の、最外輪郭上における分布状態は、次のような方法により測定できる。まず、所望領域を樹脂埋め研磨した後、その断面をSEM観察する。SEM観察では、倍率200倍〜1000倍の視野にて、入口層の凹凸高さの平均を表す面に対して、直角の方向から投影させ、投影する面と際を測定して行う。すなわち、視野観察毎に再度研磨し、奥行き方向の断面を観察していき、擬似3次元の数値を算出して、最外輪郭上に分布状態を測定できる。
【0076】
また、触媒群の、前記最外輪郭上であって、所定領域の長さ方向に形成される最外輪郭線に対して、接触している長さの割合が、20%以上80%以下であることが好ましい。PM捕集層から触媒群の剥離を有効に防止できるからである。他方、最外輪郭線に対して、接触している長さの割合が、20%より小さいと、スートの燃焼効率が悪くなり、80%より大きいと圧損が高くなる上、剥離しやすいから好ましくない。
【0077】
ここで、「触媒群の、最外輪郭上であって、所定領域の長さ方向に形成される最外輪郭線に対して、接触している長さの割合」は、SEM写真の画像解析にて、観察視野範囲内での最外輪郭線の長さを求め、その長さに対する、最外輪郭線に触媒が接している線の長さを求めることにより測定する。すなわち、[触媒群が最外輪郭線に接している長さ]/[最外輪郭線長さ]により求めることができる。
【0078】
また、「所定領域」の長さ方向に形成される最外輪郭線とは、入口層上に形成される任意の領域であって、その領域の長さ方向に形成される前述の「最外輪郭線」である。このように規定するのは、その「所定領域」には、ハニカムの軸方向(長さ方向)に形成される隔壁の一定領域を選定してもよいし、ハニカムの径方向に形成される隔壁の一定領域を選定してもよいし、また、ハニカムの軸方向(長さ方向)に対して、交差するように傾斜させて一定領域を選定してもよいし、更には、ハニカムの径方向に、交差するように傾斜させて一定領域を選定してもよい、ことを意味する。換言すれば、入口層上であれば、どの方向を選定してもよい。
【0079】
また、「接触している長さの割合」とは「最外輪郭線」に占める「触媒群と接触する線長」の割合をいう。「最外輪郭線の長さに占める触媒群が接触している長さの割合」とは、「最外輪郭線」に占める「触媒群と接触する線長」の割合をいう。
【0080】
より好ましいのは、触媒群の厚さが、前記最外輪郭線より30μm以下である。触媒群の厚さが30μmより大きいと、スート燃焼時に、局所的に高温となるだけでなく、触媒の厚みから起因して透過抵抗を高めてしまう。すなわち、パーミアビリティーが低くなってしまい、圧損の虞が高くなる上、触媒剥離が生じやすいからである。
【0081】
ここで、「触媒群の厚さ」とは、「最外輪郭線」から、入口層の凹凸の高さの平均を表す直線に直行する方向、すなわち、ハニカムフィルタの軸心に対して、直交する方向で測定した距離(寸法)をいう。具体的には、所望領域にある面積上及び断面上の領域を樹脂埋め研磨した後、その断面をSEM(走査型電子顕微鏡)観察を行い、EDX(エネルギー分散型蛍光X線分析)にて化学成分の定量分析をし、各測定位置において触媒成分の積算値をその位置での触媒担持量として測定することよって求めることができる。なお、SEM観察では、倍率200倍〜1000倍の視野にて、入口層の凹凸高さの平均を表す面に対して、直角の方向から投影させ、投影する面と際を測定する。
【0082】
より具体的には、たとえば、図13に示されるように、PM捕集層を形成するSiC粒子と触媒群とが接触している場合には、SiC粒子に触媒群が接触した箇所の接線を基準線S1として、その基準線S1に平行であって触媒群と接する基準平行線T1と、の距離が最大値となる、基準線S1に直行する基準垂直線U1を触媒群厚さとして測定する。このように、視野観察毎に再度研磨し、奥行き方向の断面を観察していき、擬似3次元の数値を算出して、最外輪郭上に分布状態を測定するとよい。
【0083】
また、個々の触媒群の、最外輪郭線に接する長さが、PM捕集層を形成する粒子の平均粒子径の1倍以上20倍以下であることがより好ましい。このように構成することにより、触媒群を適度に分布でき、透過抵抗を制御できる。すなわち、パーミアビリティーを向上させ、圧損を防ぐことができ、触媒群の剥離を防止できる。他方、個々の触媒群の、最外輪郭線に接する長さが、1倍より小さいと、PM捕集層上にAshが堆積した際にスートと触媒群との接触が著しく低下し、スートの再生効率が大きく低下する。また、触媒群の、最外輪郭線に接する長さが、PM捕集層を形成する平均細孔径の20倍より大きいと、触媒が隔壁上に担持される領域が結果的に大きくなり、その結果、透過抵抗を高めてしまう。さらに、個々の触媒群の、最外輪郭線に接する長さの下限が、PM捕集層を形成する粒子の平均粒子径に対して、4倍以上20倍以下であると触媒群がより分散された状態で、スート燃焼速度が十分に得られるためより好ましく、10倍以上20倍以下であると更に表面露出面積が十分にあるために耐久後のスート燃焼性能を十分に維持する事ができ、最も好ましい。
【0084】
さらに、前述の触媒群を構成する触媒としては、たとえば、PM燃焼除去のための酸化触媒を挙げることができる。なお、この酸化触媒は、[1−2−1]の「酸化触媒」で記載した内容と重複するため、異なる内容のみ記載するに留め、[1−2−1]の「酸化触媒」を参照されたい。
【0085】
また、酸化触媒の担持方法は特に限定されないが、例えば、ハニカム構造体の隔壁に対して、ディッピング法等の従来公知のセラミック膜形成方法を利用して、セラミックスラリーをハニカム構造の基材の隔壁の入口層に付着させ、DPFを引き出した後、入口側からエアーブローをするとよい。このようにエアーブローをする事で、エアーは細孔を通り抜けていく為、細孔を確保する事ができ、開口細孔以外のセラミック粒子の上には触媒群が残った状態で存在する。その後、乾燥、焼成する方法等により触媒群を形成すればよい。この際、PM捕集層の平均細孔径はセラミックスラリー中の骨材粒子の粒度や配合比等、気孔率はセラミックスラリー中の骨材粒子の粒度や造孔材の量等、触媒群の厚みはセラミックスラリーの濃度や膜形成に要する時間等を制御することにより所望の値に調整することができる。
【0086】
このようにPM燃焼触媒群を細孔上に分布させて、かつ、入口層であるPM捕集層にPM触媒を担持させて入口層をPM触媒層として構成することにより、PM触媒群に接触せずに入口層に侵入したスートがあっても、入口層に担持されたPM燃焼触媒によって、スートを燃焼させることができるため、燃焼効率を向上させることができ、加えて、圧損によるハニカム損傷を低減させることができる。
【0087】
また、PM除去触媒としては、PM除去触媒の粒子状に形成されたものを使用してコートされることが好ましい。このように構成されることにより、微小な細孔であっても担持すること可能となる。したがって、触媒群が、隔壁入口層上で、PM触媒群としてPMを酸化処理する役割(機能)をも担うことができる。
【0088】
[1−4]触媒群、PM捕集層、PM除去触媒層及び、ガス浄化触媒層との関係:
さらに、好ましくは、排ガスが流出する隔壁の出口層は、未燃ガスの酸化を促進するガス浄化触媒が担持又はコートされたガス浄化触媒層として構成されていることである。このように、隔壁の出口層は、未燃ガスの酸化を促進するガス浄化触媒が担持又はコートされたガス浄化触媒層として構成することにより、確実に未燃ガスを燃焼させることができる。すなわち、細孔上にある触媒群と、入口層の、PM除去触媒層であるPM捕集層と、出口層のガス浄化触媒層とが、相俟って本願の効果をあまねく奏することができるのである。
【0089】
すなわち、このように構成するのは、隔壁上にあるセラミック粒子からなる層(PM捕集層)は小細孔径・高気孔率を有しており、それのみでも圧損低減を得られるものの、セラミック粒子のみで高気孔率を維持しながら細孔径を小さくする事には限界がある。そのため、セラミック層の表層の開口部近傍に触媒群が担持し、その入口細孔のサイズを小さくする事で、スートの細孔内進入を阻害し、より圧損を低減させることができる。ここで、触媒群が完全に開口部を閉塞してしまうと圧損は大きくなる虞があるため、触媒群を、あたかも流れのよどみ部分のようなところに担持させて細孔(流路)を確保させることによって、再生効率を向上させながら圧損の低減を実現させるものである。
【0090】
また、触媒は隔壁細孔内の特にセラミック粒子間の流れのよどみ部分のようなところに主に堆積しているが、しかし、PMを燃焼させるという観点ではPMと触媒とがより多く接触させていた方が、再生速度を向上させることができる。この点、通常の隔壁構造であれば、ある程度のPMが細孔内に堆積するため、PMと触媒との接触を得ることができるが、隔壁入口側に隔壁よりも平均細孔径の小さいPM捕集層が製膜されていると、細孔径が小さいため、PMがPM捕集層の細孔内に入りにくくなる。そのため、PMと触媒との接触は非常に少なくなり易い。そこで、入口側であるPM捕集層の上に触媒群を分散させながら担持しておくと、PM捕集層上でもPMと触媒とが接触するため、フィルタ全体としての再生速度をより向上させることが可能となる。さらに、圧損低減の観点では、触媒を、いわば「流れのよどみ部分」のようなところに担持させて細孔(流路)を確保させることで、PM捕集層上(細孔上)に担持された触媒群をセラミック粒子間の開細孔の近傍に堆積させることができ、開細孔を閉塞させない。したがって、隔壁内に形成される触媒層の細孔が触媒により閉塞されずに圧損を確実に低減できるのである。なお、この開細孔を閉塞させないように触媒群を担持させるには、触媒コート工程で、エアーブロー等の方法により、流路を確保しながら、PMと接触できるようにすることが好ましい。
【0091】
ここで、前述の「流れのよどみ部分」は、粒子と結合材との間付近に形成されている形状変化の大きくなっているような部分をいうが、これに限られるものではなく、ごく普通のよどみも含まれる。具体的には、図9で示されるPM除去触媒が担持されているような領域に形成されるものを、この「よどみ」の一例として挙げることができる。
【0092】
このように、触媒群は、PM捕集層に担持されたPM除去触媒と同じ触媒から構成される場合には、最外輪郭線上にも同触媒を担持することによって、PM燃焼の着火点を作ることができ、再生効率を向上させることができる。すなわち、PM除去触媒層(セラミック層にPM除去触媒をコートした層)のみでは、その細孔径は小さいため、細孔内に堆積するスートの量が少なくなる。そのため、せっかくPM除去を目的とした触媒を担持しても、スートとの接触が少なくなり、浄化処理としての効果を発揮しづらい。したがって、最外輪郭線上にも同触媒を担持する事によって、前述の弊害を回避でき、いわばPM燃焼の着火点を作ることができ、本願の効果をより奏することができるのである。
【0093】
[1−5−1]ガス浄化触媒およびガス浄化触媒層:
ガス浄化触媒層は、ガス浄化触媒からなる層であって、セルのガス流出側及びその近傍の隔壁に、ガス浄化触媒を担持(コート)して形成される。ここで、「排ガス浄化触媒」というときは、排ガスを浄化する効果を有する触媒成分を意味し、排ガス中に含まれる窒素酸化物、炭化水素、或いは一酸化炭素といった有害成分の酸化あるいは還元による浄化を促進するための触媒の全てが含まれる。
【0094】
ガス浄化触媒として酸化触媒を担持(コート)する場合には、ガス浄化触媒層は、排ガス中に含まれるパティキュレートの酸化を促進するための層として隔壁の出口層に形成される。ガス浄化触媒として酸化触媒が担持されると、耐久後における同等の浄化性能を維持するために用いられる触媒コートのトータル量(以下、適宜「トータル触媒コート量」という)を減らすことができるため、好ましい。なお、AshはPM捕集層で捕捉されるため、前述のトータル触媒コート量の減量化と相俟って、ガス浄化触媒層の触媒劣化をも防ぐことができるため、好ましい。
【0095】
このガス浄化触媒として用いられる酸化触媒としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の貴金属が好適に用いられる。
【0096】
なお、酸化触媒がガス浄化触媒として担持される場合には、他の触媒や浄化材が、さらに担持されてもよい。例えば、アルカリ金属(Li、Na、K、Cs等)やアルカリ土類金属(Ca、Ba、Sr等)からなるNO吸蔵触媒、三元触媒、セリウム(Ce)及び/又はジルコニウム(Zr)の酸化物に代表される助触媒、HC(Hydro Carbon)吸着材等が担持されていてもよい。
【0097】
また、酸化触媒、NO吸蔵触媒等の触媒成分の担持方法は特に限定されないが、例えば、ハニカム構造の基材の隔壁に対して、触媒成分を含む触媒液をウォッシュコートした後、高温で熱処理して焼き付ける方法等が挙げられる。また、酸化触媒、NO吸蔵触媒等の触媒成分は、高分散状態で担持させるため、予めアルミナのような比表面積の大きな耐熱性無機酸化物に一旦担持させた後、ハニカム構造体の隔壁等に担持させることが好ましい。
【0098】
また、ガス浄化触媒がNO浄化触媒である場合には、ガス浄化触媒層は、NOの浄化をする層として、隔壁の出口層に形成されることになる。具体的には、隔壁の出口層にある、セルのガス流出側及びその近傍の隔壁に、このガス浄化触媒を担持させてガス浄化触媒層が形成される。このように、ガス浄化触媒としてNO浄化触媒が担持(コート)されガス浄化触媒層が形成されると、細孔上に分布させている触媒群と、隔壁入口のPM捕集層に堆積しているPMの再生処理(酸化処理)によって、局所的なO濃度を下げることができるとともに、隔壁の出口層に形成されるガス浄化触媒層によって、NO浄化効率を上昇させることができるため好ましい。なお、AshやSulfur成分は、NO触媒からなるガス浄化触媒層に流入しないため、NO触媒の触媒劣化を抑制できるという効果も奏することができる。
【0099】
また、このNO浄化触媒には、アルミナ、ジルコニア及びチタニア、並びに、それらの組み合わせからなる群より選択される金属酸化物をコート材として含むことができる。
【0100】
NO浄化触媒としては、NO吸蔵還元触媒又はNO選択還元触媒が挙げられる。
【0101】
ここで、「NO吸蔵還元触媒」とは、空燃比がリーン状態のときにNOを吸蔵し、一定間隔でリッチスパイクを行った時に(排ガスを燃料リッチにした時に)、吸蔵したNOをNに還元する触媒をいう。たとえば、アルミナ、ジルコニア、チタニアのような金属酸化物のコート材に白金、パラジウム、ロジウムのような貴金属と、アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群より選択される少なくとも1種の金属とを担持させて得ることができる。
【0102】
また、「NO選択還元触媒」とは、リーン雰囲気において、NOを還元成分と選択的に反応させて浄化する触媒をいう。例えば、銅、コバルト、ニッケル、鉄、ガリウム、ランタン、セリウム、亜鉛、チタニア、カルシウム、バリウム及び銀からなる群より選択される少なくとも1種の貴金属を、ゼオライト又はアルミナを含有するコート材に担持させて得ることができる。
【0103】
ガス浄化触媒の担持方法は特に限定されないが、例えば、ハニカム構造の基材の隔壁に対して、触媒成分を含む触媒液をウォッシュコートした後、高温で熱処理して焼き付ける方法等が挙げられる。また、例えば、ディッピング法等の従来公知のセラミック膜形成方法を利用して、セラミックスラリーをハニカム構造の基材の隔壁の出口層に付着させ、乾燥、焼成する方法等により、薄膜状のガス浄化触媒層を形成することができる。この際、浄化触媒層の平均細孔径はセラミックスラリー中の骨材粒子の粒度や配合比等、気孔率はセラミックスラリー中の骨材粒子の粒度や造孔材の量等、コート層厚みはセラミックスラリーの濃度や膜形成に要する時間等を制御することにより所望の値に調整することができる。
【0104】
また、三元触媒、酸化触媒、窒素酸化物吸蔵触媒等の触媒成分は、高分散状態で担持させるため、予めアルミナのような比表面積の大きい耐熱性無機酸化物に一旦担持させた後、ハニカム構造体の隔壁等に担持させることが好ましい。
【0105】
[1−5−2]その他PM除去触媒層とガス浄化触媒層との関係:
図9、10を参照しながら、触媒群とPM除去触媒層とガス浄化触媒層が協働して、スート及び、ガスの浄化処理が行われる様子を具体的に説明する。
【0106】
図9に示されるように、セル3のガス流入側隔壁4aであって、細孔上に触媒群15が形成され(担持され)、さらに、セル3のガス流入側隔壁4aの細孔径内には、セルのガス流出側隔壁4b及びその近傍の隔壁よりも、図10で示されるように平均細孔径が小さいPM捕集層20が形成されている。加えて、このPM捕集層には、PM除去触媒が所望領域に担持(コート)されて、PM除去触媒層22を形成している。また、セル3のガス流出側及びその近傍の隔壁には、ガス浄化触媒が担持されガス浄化触媒層24が形成されている。なお、図9は、本実施形態の別の形態における触媒担持フィルタの長さ方向断面を示した模式図であり、図10は、本実施形態の別の形態における触媒担持フィルタの長さ方向断面を模式的に示した図である。このように構成されると、図9に示されるように、ガスGは触媒群15に接触し、さらに、触媒群15に接触しなったガスGは、セル流路内に入った後、流入側隔壁4aから隔壁内部に流入し、流出側隔壁4bに流出する。而して、流入側隔壁4aの細孔上では、触媒群が形成され(担持され)、スートを燃焼させるだけでなく、セル3のガス流入側隔壁4aの細孔径では、PM捕集層が形成されているため、Ashを確実に捕集できる。加えて、PM捕集層はPM除去触媒層でもあるため、前述の触媒群に接触できなかったスートを、このPM除去触媒層で確実に接触させて燃焼処理することができる。したがって、Ashは、セルのガス流出側及びその近傍に入口層から出口層へと流入することを防ぐことができるため、セルのガス流出側及びその近傍の隔壁の触媒劣化を防ぐことができるのである。
【0107】
さらに、PM除去触媒層とガス浄化触媒層とは、以下のような関係であることが好ましい。
【0108】
PM除去触媒層には、ガス浄化触媒層よりも酸化触媒が多く担持(コート)されていることが好ましい。このように構成されることにより、触媒担持フィルタ全体としての触媒使用量を抑えながら、PM除去触媒層にて確実にPM除去を行うとともに、さらにガス浄化触媒層にてガスの未燃処理を確実に行うことができる。すなわち、PM除去触媒層で十分にPM処理が行われない程の酸化触媒量に留まると、そのガス浄化触媒層にAshが流入するおそれがあり、触媒劣化が生じ易くなるから好ましくなく、PM除去触媒層に担持される酸化触媒量が多すぎると、入口層であるPM捕集層の細孔を閉塞しスート付圧損のおそれが高くなるため好ましくない。さらに、PM除去触媒層及びガス浄化触媒層に担持される触媒量をそれぞれ増やして、触媒担持フィルタ全体の触媒担持トータル量を大きくしすぎると、再生時にクラックなどが発生しやすくなるため、触媒量の総量を調整することが好ましい。
【0109】
より好ましいのは、PM除去触媒層は、ガス浄化触媒層よりも1.05〜10倍多く、酸化触媒が担持されていることである。PM除去触媒層に担持される触媒量が、ガス浄化触媒層の1.05より少ないと、スートを燃焼させる機能が十分でなく、スート再生時に十分な再生効率が得られなくなる。また、ガス浄化触媒層の10倍よりも多いと、出口層に担持されるガス浄化触媒の量が非常に少なくなり、スート再生時の不完全燃焼によって生成されたCOの出口層(ガス浄化触媒層)での酸化が十分になされず、COエミッションが低減しやすくなり、COがスリップするため前述の所望数値範囲内に調整することが好ましい。すなわち、このような所望の数値範囲内で酸化触媒を担持させることにより、PM除去触媒層、ガス浄化触媒層が十分に機能し、再生効率を向上させることができるから好ましい。
【0110】
また、PM除去触媒層とガス浄化触媒層とに担持又はコートされる酸化触媒の総量が、15〜180g/Lであることが好ましい。15g/Lより少ないと、再生効率が低減し、出口層での触媒量も十分ではなくなり、未燃ガスの浄化効率も100%に到達しないおそれがある。また、180g/Lより多いと触媒がPM捕集層の細孔を閉塞し、スート付圧損の弊害が生じやすい。スート付圧損が大きくなると、実走行において、車両加速時の出力が低下するため、実用性に乏しくなるため好ましくない。
【0111】
また、PM除去触媒層に含まれる貴金属量がガス浄化触媒層よりも少ない、あるいは含まないことが好ましい。スートの再生には貴金属の添加は寄与が少ないため、貴金属を減らすと、コスト削減できるため好ましい。
【0112】
また、PM除去触媒層のセリア量はガス浄化触媒より、1.2〜10倍多く添加されていることが好ましい。セリア量比が1.2倍より小さいと、再生効率が低減するため好ましくなく、10倍よりも大きいと出口層での酸素吸蔵触媒の量が非常に少なくなるため、COの酸化時に局所的に酸素不足となり、HCのガスエミッションが十分に到達しなくなるため好ましくない。
【0113】
また、PM除去触媒層は、アスペクト比(縦横比)が2以上のセラミック粒子上に、PM除去触媒がコートされて形成されていることが好ましい。アスペクト比が2以上のセラミック粒子上に形成される場合には、PM除去触媒が担持或いはコーティングし易くなる。したがって、表層の厚さが均一になり易い、あるいは捕集されたPM等が剥離し易くなるため好ましい。
【0114】
このPM捕集層の平均細孔径は、パティキュレートを捕集するために小さく形成されていることが好ましい。ただし、パティキュレートを捕集するという目的を果たすために、適度な大きさに形成されることが好ましい。すなわち、PM捕集層の平均細孔径が小さ過ぎると、PM捕集層でPMが捕集される際に、PMがPM捕集層の細孔上部(Ashの流入側入口又は入口付近)で、いわば蓋となって目詰まりし易くなり、隔壁の出口層にガスの流入を遮るおそれがある。ガスの流入が遮られると、出口層に担持されたガス浄化触媒の酸化処理を妨げることになり、触媒浄化性能を低減させることになるから、好ましくない。他方、PM捕集層の平均細孔径が大き過ぎると、PM除去触媒を担持させづらくなり、或いは、仮にPM除去触媒を担持させてPM除去触媒層を形成できても、PMがPM捕集層(或いはPM除去触媒)に十分に接触しづらくなる。その結果、十分に捕集されずに、出口層のガス浄化触媒層に、いわば筒抜けとなって、ガス浄化を十分に出来なくなるおそれがある。したがって、触媒浄化性能を低減させることになるから、好ましくない。
【0115】
換言すれば、PM除去触媒としての酸化触媒が適量に担持(コート)されることが好ましい。PM除去触媒が適量に担持(コート)されることより、PMを十分に捕集でき、ガス浄化触媒層も十分に機能するからである。
【0116】
また、PM除去触媒層の細孔には、ガス浄化触媒層よりも小さくなるように酸化触媒が担持されると、たとえば、隔壁の一部に欠陥(細孔径が大きい細孔)が存在していた場合でも、その欠陥に排ガスが集中的に流入することを抑制することができるとともに、その欠陥から浄化ガス流出セル側にパティキュレートが漏洩する事態を防止することが可能である。
【0117】
また、ガスの流入側(入口側)セルが大きく、ガスの流出側(出口側)セルが小さいと通気性が確保されるため、ガスの流入側に形成される触媒層と、排ガス中に含まれる多数のパティキュレートが十分に接触しやすくなり、PM浄化性能を高めることができる上、PM浄化性が高めることができれば、セルの流出側に形成されるガス浄化触媒層での未燃ガスの浄化効率が高められ、しかも、触媒劣化を防止できるといった相乗効果を奏することができる。
【0118】
PM捕集層の平均細孔径としては、1〜15μmであることが好ましい。平均細孔径が1μm未満であるとパーミアビリティーが小さくなり細孔の透過抵抗が急上昇しやすくなるため好ましくなく、15μmより大きいと捕集性能が低下し、PMエミッションが欧州規制のユーロ5規制値をオーバーし易くなり好ましくない。したがって、PM捕集層の平均細孔径を、前述の所望範囲内に調整することにより、本願の効果を奏することができる。
【0119】
また、PM捕集層の平均粒子径としては、0.5μm〜15μmであることが好ましい。平均粒子径が0.5μmより小さいと隔壁の細孔内に侵入し、その隔壁細孔部を閉塞してしまうことで透過抵抗が上昇するため好ましくない。一方、15μmより大きいと、粒子間の隙間が大きくなるためPMが透過しやすくなり、結果としてPMエミッションが悪化するため好ましくない。
【0120】
PM捕集層の平均細孔径は、PM捕集層が形成された隔壁を、水銀圧入法により測定し、得られた細孔分布が二つの山を有する場合は、細孔径が小さい分布の方の細孔容積が最も大きい細孔径を、PM捕集層の平均細孔径とする。一方、得られた細孔分布が一つの山を有して、PM捕集層の細孔分布が特定できない場合は、隔壁の軸方向に対して垂直な断面の所望領域を樹脂埋め研磨し、倍率100倍〜1000倍の視野にてSEM(走査型電子顕微鏡)観察を行い、得られた画像を2値化処理し、PM捕集層の平均細孔径の測定を行う。
【0121】
また、PM捕集層を形成する粒子の平均粒子径を測定する際には、隔壁の軸方向に対して垂直な断面の所望領域を樹脂埋め研磨した断面、または、破断面を、倍率100倍〜1000倍の視野にてSEM(走査型電子顕微鏡)観察を行い、PM捕集層を形成する粒子の粒子径を測定する。一視野内にて測定された全粒子径の平均を平均粒子径とする。
【0122】
また、PM除去触媒層の気孔率(PM捕集層に触媒が担持されていない状態で測定)では40〜90%あることが好ましく、より好ましいのは、気孔率が50〜80%である。PM除去触媒層の気孔率が、40%未満であると、圧力損失が大きくなるという問題が生じるおそれがあり、90%を超えると、PM除去触媒層の強度が不足するために、隔壁の表面からPM除去触媒層が剥離してしまうという問題が生じるおそれがあるため好ましくない。さらに、PM除去触媒層の気孔率が、上記範囲未満であると堆積するパティキュレートの量が多いため、フィルタの再生作業が困難となるという問題があり、上記範囲を超えると、触媒担持フィルタを構成するハニカム構造体の強度が低下し、キャニングが困難となるという問題があるため好ましくない
【0123】
なお、PM除去触媒層の気孔率は、隔壁を構成する多孔質セラミックの気孔率よりも5%以上大きく形成すると、PM除去触媒層における圧力損失(透過圧損)を小さくすることができるという利点があるため、好ましい。
【0124】
なお、PM除去触媒層(PM捕集層)の気孔率は、隔壁の軸方向に対して垂直な断面の所望領域を樹脂埋め研磨し、倍率100倍〜1000倍の視野にてSEM(走査型電子顕微鏡)観察を行い、得られた画像を2値化処理し、一視野内の空隙と粒子の面積比により、気孔率を測定する。
【0125】
また、ガス浄化触媒層(隔壁)の気孔率が30〜70%であることが好ましく、より好ましいのは、ガス浄化触媒層の気孔率が35〜60%である。30%未満であると、圧力損失が大きくなるという問題が生じるおそれがあるだけでなく、セルのガス流入口に形成されるPM除去触媒層で、PMが酸化触媒と十分に接触できないという問題が生じるおそれがあるからである。他方、70%を超えると、ガス浄化触媒層の強度が不足するために、隔壁の表面からPM除去触媒層が剥離してしまうという問題が生じるおそれがあるため好ましくない。
【0126】
[1−6]ハニカム構造の基材:
本実施形態におけるハニカム構造の基材は、図1〜3に示されるように、多数の細孔を有する多孔質のセラミックからなる隔壁4によって区画された、排ガスの流路となる複数のセル3を備えている。複数のセル3の一方の開口端部11aと他方の開口端部11bには互い違いに目封じされてなる目封止部13が形成されている。ただし、ハニカム構造の全体形状については特に限定されるものではなく、例えば、図1、2に示されるような円筒状の他、四角柱状、三角柱状等の形状を挙げることができる。
【0127】
また、ハニカム構造の基材が備えるセル形状(セルの形成方向に対して垂直な断面におけるセル形状)としては、例えば、図1に示されるような四角形セル、或いは六角形セル、三角形セル等の形状を挙げることができる。ただし、このような形状に限られるものではなく、公知のセルの形状を広く包含することができる。より好ましいセル形状としては、円形セル又は四角形以上の多角形セルを挙げることができる。このような円形セル又は四角形以上の多角形セルがより好ましいのは、セル断面において、コーナー部の触媒の厚付きを軽減し、触媒層の厚さを均一にできるからである。とりわけ、セル密度、開口率等を考慮すると、六角形セルが好適である。
【0128】
ハニカム構造の基材が備えるセル密度も特に制限はないが、本実施形態のような触媒担持フィルタとして用いる場合には、6〜1500セル/平方インチ(0.9〜233セル/cm)の範囲であることが好ましい。また、隔壁の厚さは、20〜2000μmの範囲であることが好ましい。
【0129】
更に、本実施形態のような触媒担持フィルタとして用いる場合には、ハニカム構造の基材の、複数のセルの一方の開口端部と他方の開口端部とを互い違いに目封じした構造とすることが望ましい。例えば、図3に示されるように、多数の細孔を有する多孔質セラミックからなる隔壁4によって区画された、ガスの流路となる複数のセル3を有する触媒フィルタ1を、複数のセル3の一方の開口端部7aと他方の開口端部7bとを目封止部13によって互い違いに目封じした構造とするとよい。このようなハニカム構造体1では、排ガス流入側端面Aに向かって開口する排ガス流入セル3から排ガスGを流入させると、排ガスGが隔壁4を通過する際に排ガスG中のパティキュレートが隔壁4に捕集され、パティキュレートが除去された浄化ガスGが、排ガス流出側端面Bに向かって開口する浄化ガス流出セル3から流出することになる。
【0130】
ハニカム構造の基材の材質は特に限定されないが、セラミックを好適に用いることができ、強度、耐熱性、耐食性等の観点から、コージェライト、炭化珪素、アルミナ、ムライト、又は窒化珪素のうちのいずれかであることが好ましい。
【0131】
また、上記のようなハニカム構造の基材は、例えば、セラミックからなる骨材粒子、水の他、所望により有機バインダ(ヒドロキシプロポキシルメチルセルロース、メチルセルロース等)、造孔材(グラファイト、澱粉、合成樹脂等)、界面活性剤(エチレングリコール、脂肪酸石鹸等)等を混合し、混練することによって坏土とし、その坏土を所望の形状に成形し、乾燥することによって成形体を得、その成形体を焼成することによって得ることができる。
【0132】
ハニカム構造の基材の作製方法としては、たとえば次のような方法が一例として挙げられる。ただし、このようなハニカム構造体の作製方法に限らず、公知のハニカム構造体の作製方法を用いることもできる。
【0133】
ハニカム構造体が、例えば、図11に示されるような、複数本のハニカムセグメント62からなるハニカムセグメント接合体63であって、セグメント同士が接合材64で接合され、外周面を所望形状に切削加工されて成型される場合には、次の手順で行うとよい。
【0134】
まず、ハニカムセグメントを作製する。このハニカムセグメント原料として、たとえば、SiC粉末及び金属Si粉末を80:20の質量割合で混合し、これにメチルセルロース及びヒドロキシプロポキシルメチルセルロース、界面活性剤及び水を添加して混練し、可塑性の坏土を得た。そして、所定の金型を用いて坏土を押出成形し、所望形状のハニカムセグメント成形体を成形する。次いで、得られたハニカムセグメント成形体をマイクロ波乾燥機で乾燥し、更に熱風乾燥機で完全に乾燥させた後、目封止をして焼成(仮焼き)する。
【0135】
この仮焼きは、脱脂のためにおこなわれるものであって、たとえば、酸化雰囲気において550℃で、3時間程度で行うものが挙げられるが、これに限られるものではなくハニカム成形体中の有機物(有機バインダ、分散剤、造孔材等)に応じて行われることが好ましい。一般に、有機バインダの燃焼温度は100〜300℃程度、造孔材の燃焼温度は200〜800℃程度であるので、仮焼温度は200〜1000℃程度とすればよい。仮焼時間としては特に制限はないが、通常は、3〜100時間程度である。
【0136】
さらに、焼成(本焼成)を行う。この「本焼成」とは、仮焼体中の成形原料を焼結させて緻密化し、所定の強度を確保するための操作を意味する。焼成条件(温度・時間)は、成形原料の種類により異なるため、その種類に応じて適当な条件を選択すればよい。たとえば、Ar不活性雰囲気で焼成する場合の焼成温度は一般的には、約1400℃〜1500℃前後程度であるが、これに限られるものではない。
【0137】
次に、PM捕集層を形成する。このPM捕集層は、炭化珪素粉末を含有するスラリーを準備し、そのスラリー中に前述のハニカムセグメント浸漬した後に焼成(PM捕集層を形成するための焼成工程)して形成する。この浸漬では、たとえば、前述のスラリーを貯留した貯留槽に、PM捕集層を形成するセル側の開口端部から他方の開口端部の近傍まで浸漬させて行うとよい。なお、スラリーに含有させる炭化珪素粉末の平均粒径は0.3〜5μm、有機高分子材料等からなる分散媒中に分散させて、その粘度を50,000c.p.程度に調整したものが好ましく、さらに、焼成温度は約1400℃〜1500℃前後程度であることが好ましい。
【0138】
次に、入口層の隔壁の細孔上に触媒群を形成する。この触媒群は、炭化珪素粉末を含有するスラリーを準備し、そのスラリー中に前述のハニカムセグメントを浸漬した後にハニカムセグメントを引き出した後、入口側からエアーブローをする。このエアーブローをする事で、エアーは細孔を通り抜けていく為、細孔を確保する事ができ、開口細孔以外のセラミック粒子の上には触媒群が残った状態で存在する。その後、乾燥、焼成する方法等により触媒群を形成する。スラリーに含有させる炭化珪素粉末の平均粒子径は0.3〜5μm、有機高分子材料等からなる分散媒中に分散させて、その粘度を50,000c.p.程度に調整したものが好ましく、さらに、焼成温度は約1400℃〜1500℃前後程度であることが好ましい。
【0139】
なお、必要に応じて、入口層のPM捕集層と出口層とを2層に形成し、後述の触媒担持工程でそれぞれの層に触媒をコートしてもよい。
【0140】
前述のような工程を経て所望寸法の複数のハニカムセグメント(焼結体)を得た後、そのハニカムセグメントの周面に、アルミノシリケートファイバ、コロイダルシリカ、ポリビニルアルコール、及び炭化珪素を混練してなる接合用スラリーを塗布し、互いに組み付けて圧着した後、加熱乾燥して、全体形状が四角柱状のハニカムセグメント接合体を得る。そして、そのハニカムセグメント接合体を、円柱形状に研削加工した後、その周面を、ハニカムセグメント成形体と同材料からなる外周コート層で被覆し、乾燥により硬化させることにより、セグメント構造を有する円柱形状のハニカム構造体を得ることができる。
【0141】
目封止部の形成方法としては、目封止スラリーを、貯留容器に貯留しておく。そして、上記マスクを施した側の端部を、貯留容器中に浸漬して、マスクを施していないセルの開口部に目封止スラリーを充填して目封止部を形成する。他方の端部については、一方の端部において目封止されたセルについてマスクを施し、上記一方の端部に目封止部を形成したのと同様の方法で目封止部を形成する。これにより、上記一方の端部において目封止されていないセルについて、他方の端部において目封止され、他方の端部においても市松模様状にセルが交互に塞がれた構造となる。また、目封止は、ハニカム成形体を焼成してハニカム焼成体を形成した後に、施してもよい。
【0142】
なお、目封止材としては、ハニカムセグメント原料と同様な材料を用いると、ハニカムセグメントとの焼成時の膨張率を同じにでき、耐久性の向上につながるため好ましい。
【0143】
また、例えば、コージェライトを隔壁母材の材料とする場合には、コージェライト化原料に、水等の分散媒、及び造孔材を加えて、更に、有機バインダ及び分散剤を加えて混練し、粘土状の坏土を形成する。コージェライト化原料(成形原料)を混練して坏土を調製する手段は、特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることが出来る。コージェライト原料を焼成する場合には、1410〜1440℃で焼成することが好ましく、3〜10時間程度焼成することが好ましい。
【0144】
なお、成形方法としては、上述のように調製した坏土を、所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有する口金を用いて押出成形する方法等を好適に用いることができる。
【0145】
[2−1]本実施形態の製造方法:
本発明の触媒担持フィルタの一実施形態の製造方法として、PM捕集層としての入口層上に触媒群が形成され、さらに、PM捕集層に触媒をコートして製造することが好ましい。成形しやすく、製品ばらつきの少ないものができるからである。
【0146】
具体的には、まず、前述のように既に隔壁入口側にPM捕集層が形成されているハニカム構造体(接合、加工済み)を準備する。また、ハニカム構造体の隔壁入口層に触媒群としてのスラリーを予め調製する。たとえば、触媒群がPM除去触媒であれば、酸化触媒のスラリーを予め調製する。
【0147】
次に、ハニカム構造体(接合、加工済み)を、120℃、2時間で乾燥させ、550℃、1時間で焼き付ける。さらに、PM除去触媒のスラリーにハニカム構造体の入口端面の所定の高さまで浸漬させ、出口端面より、所定の吸引圧力と吸引流量に調整しながら所定の時間吸引し、PM捕集層にPM除去触媒を担持する。さらに、ハニカムセグメントを浸漬した後にハニカムセグメントを引き出し、入口側からエアーブローをする。
【0148】
そして、前述と同様に120℃、2時間で乾燥させ、550℃、1時間で焼き付ける。このようにして触媒担持フィルタを得ることができる。
【0149】
なお、これらの触媒の担持方法は、特に限定されず、公知の方法で担持することができる。例えば、ディッピング或いは吸引法等の方法等が挙げられる。
【0150】
また、触媒の組成としては、たとえば、アルミナ:白金:セリア系材料=7:1:2(質量比)であって、セリア系材料はCe:Zr:Pr:Y:Mn=60:20:10:5:5(質量比)からなる触媒等が挙げられる。
【0151】
なお、ハニカム構造体の隔壁であって、排ガスの出口となる側(出口層側)にガス浄化触媒層を形成する場合には、ガス浄化触媒のスラリーを予め調製し、次に、ガス浄化触媒のスラリーにハニカム構造体の出口端面(PM捕集層が施されていない方)のセルより所定の高さまでを浸漬させ、入口端面(PM捕集層が施されている方)のセルより、所定の吸引圧力と吸引流量に調整しながら所定の時間のみ吸引し、下流層にガス浄化触媒を担持させる。その後、120℃、2時間で乾燥させ、550℃、1時間で焼き付けて、触媒担持フィルタを得ることができる。
【実施例】
【0152】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例における「部」および「%」は特に断りのない限り質量部および質量%を意味する。また、実施例における各種の評価、測定は、下記方法により実施した。
【0153】
[1]最外輪郭接触面積割合(3次元接触割合):
所望領域にある面積上に触媒群が接触している割合を調べた。すなわち、所望領域を樹脂埋め研磨した後、その断面をSEM(走査型電子顕微鏡)観察を行い、EDX(エネルギー分散型蛍光X線分析)にて化学成分の定量分析をし、各測定位置において触媒成分の積算値をその位置での触媒担持量として測定した。SEM観察では、倍率200倍〜1000倍の視野にて、入口層の凹凸高さの平均を表す面に対して、直角の方向から投影させ、投影する面と際を測定して行った。具体的には、視野観察毎に再度研磨し、奥行き方向の断面を観察していき、擬似3次元の数値を算出して、最外輪郭上に分布状態を測定した。
【0154】
[2]最外輪郭接触線割合:
所望領域にある断面上に触媒群が接触している割合を調べた。すなわち、所望領域を樹脂埋め研磨した後、その断面をSEM(走査型電子顕微鏡)観察を行い、EDX(エネルギー分散型蛍光X線分析)にて化学成分の定量分析をし、各測定位置において触媒成分の積算値をその位置での触媒担持量として測定した。SEM観察では、倍率200倍〜1000倍の視野にて、入口層の凹凸高さの平均を表す面に対して、直角の方向から投影させ、投影する面と際を測定して行った。具体的には、視野観察毎に再度研磨し、奥行き方向の断面を観察していき、擬似3次元の数値を算出して、最外輪郭上に分布状態を測定した。
【0155】
[3]触媒群厚さ:
所望領域にある面積上及び断面上に接触している触媒群の厚さを調べた。すなわち、所望領域を樹脂埋め研磨した後、その断面をSEM(走査型電子顕微鏡)観察を行い、EDX(エネルギー分散型蛍光X線分析)にて化学成分の定量分析をし、各測定位置において触媒成分の積算値をその位置での触媒担持量として測定した。SEM観察では、倍率200倍〜1000倍の視野にて、入口層の凹凸高さの平均を表す面に対して、直角の方向から投影させ、投影する面と際を測定して行った。具体的には、視野観察毎に再度研磨し、奥行き方向の断面を観察していき、擬似3次元の数値を算出して、最外輪郭上に分布状態を測定した。
【0156】
なお、触媒群の厚さは、前述したように、「最外輪郭線」から、入口層の凹凸の高さの平均を表す直線に直行する方向、すなわち、ハニカムフィルタの軸心に対して、直交する方向で測定した距離(寸法)であって、所望領域にある面積上及び断面上の領域を樹脂埋め研磨した後、その断面をSEM(走査型電子顕微鏡)観察を行い、EDX(エネルギー分散型蛍光X線分析)にて化学成分の定量分析をし、各測定位置において触媒成分の積算値をその位置での触媒担持量として測定することよって求めた。具体的には、図13に示されるように、PM捕集層を形成するSiC粒子と触媒群とが接触している場合には、SiC粒子に触媒群が接触した箇所の接線を基準線S1として、その基準線S1に平行であって触媒群と接する基準平行線T1と、の距離が最大値となる、基準線S1に直行する基準垂直線U1を触媒群厚さとして測定した。
【0157】
[4]圧損:
2.0Lのディーゼルエンジンに触媒コートDPFを搭載し、2000rpm×60Nm定常状態で4g/Lスート堆積時の圧損を測定した。
【0158】
[5−1]再生効率試験:
2.0Lのディーゼルエンジンに触媒コートDPFを搭載し、2000rpm×60Nm定常状態で、ポストインジェクションによりDPF入口ガス温度を600℃に制御し、4g/L堆積スートの再生試験を実施。ポストインジェクションを10分間キープし、試験前後のDPF質量差を測定。再生試験前の堆積スート量(A)と再生試験後の残スート量(B)より再生効率を測定した。具体的には、A−B/A×100(%)より再生効率を算出する。
【0159】
[5−2]耐久後再生効率試験:
2.0Lのディーゼルエンジンに触媒コートDPFを搭載し、欧州エミッション規制走行モードであるNEDCモードを16万km走行相当まで繰り返し運転した。その後、[5−1]の「再生効率試験」と同様の測定条件にて再生効率の測定を行うことで、耐久後再生効率を測定した。
【0160】
[6−1]DPF:
実施例、比較例とも以下に示すハニカム構造体を使用して、触媒担持フィルタを作製した。
【0161】
触媒担持フィルタの基材となるハニカム構造体は、原料として、SiC粉80質量%及び金属Si粉20質量%の混合粉末を使用し、これにメチルセルロース及びヒドロキシプロポキシルメチルセルロース、界面活性剤及び水を添加して、可塑性の坏土を作製し得られた坏土を押出成形機にて押出成形し、所望寸法のハニカムセグメント形状を4本×4本=計16本得た。次に、マイクロ波及び熱風で乾燥させた後、市松模様状を呈するように、セルの両端面を目封じして目封止をして、酸化雰囲気において550℃で3時間、脱脂のための仮焼をした。さらに、Ar不活性雰囲気で1700℃の焼成温度にて2時間焼成して、SiC結晶粒子をSiで結合させて複数のハニカムセグメント(焼結体)を得た。
【0162】
次に、ハニカムセグメント(焼結体)の周面に、接合用スラリーを塗布し、互いに組み付けて圧着した後、加熱乾燥して、全体形状が四角柱状のハニカムセグメント接合体を得、そのハニカムセグメント接合体を、円柱形状に研削加工した後、その周面を、ハニカムセグメント成形体と同材料からなる外周コート層で被覆し、乾燥により硬化させて、φ144×152mmL、12mil/300cpsi、気孔率40%、平均細孔径15μmのハニカム構造体を得た。
【0163】
さらに、ハニカム構造体の流入側のセル内に所定量のセラミックスラリーを注入し、出口側より吸引した後、700℃で乾燥・焼結させ、流入側セルにPM捕集層を形成した。PM捕集層の厚さ:50μmとし、全体として355μmの厚さ(隔壁(12mil[=305μm])及びPM捕集層の厚さ(50μm))になるように成型した。
【0164】
その後、120℃、2時間で乾燥させた後、550℃、1時間で触媒焼付けを行い、ハニカム構造の炭化珪素焼結体(SiC−DPF)を作製した。
【0165】
このようにして得られた、SiC−DPFの入口側よりPM除去触媒をディッピングによりコートする。次に、ディッピング後のエアーブロー圧力の調整により入口層最外輪郭上の触媒群の量をコントロールしながら分散させ、出口側にガス浄化触媒を担持させた。具体的には、前述までの工程を経て得られた触媒担持フィルタの出口側より、ガス浄化触媒をディッピングにより隔壁にコートし、触媒担持フィルタを得た。なお、この際にコートしたトータル触媒量は50g/Lである。
【0166】
[7]触媒:
触媒としては、酸化触媒を用いた。すなわち、前述のSiC−DPFが備える、多数のセルを区画・形成する隔壁に対して、酸化触媒成分を含む触媒液を後述の実施例、比較例のコートする所望箇所、コート量に応じて、ディッピングによりコートし、エアーブロー圧力の調整により入口層最外輪郭上の触媒群の量をコントロールしながら分散させて担持させて、高温で熱処理して焼き付ける方法により担持させ、浄化触媒フィルタを得た。
【0167】
PM除去触媒として、セリア系材料は、Ce:Zr:Pr:Y:Mn=60:20:10:5:5(質量比)からなる触媒を用い、ガス浄化触媒として、アルミナ:白金:セリア系材料=7:1:2(質量比)からなる触媒を用いた。
【0168】
さらに、触媒担持フィルタ触媒担持方法としては、触媒担持フィルタ1の場合には、PM捕集層への触媒は入口端面側から触媒スラリーを吸引して、各層へ触媒コートを行うとともに、エアーブロー圧力の調整により、触媒群を担持させた。その後、まず120℃、2時間で乾燥させた後、550℃、1時間で触媒焼付けを行った。また、触媒担持フィルタ1の場合には、前述の触媒担持工程を経た後、ガス浄化層への触媒は出口端面側から触媒スラリーを吸引によって担持させて触媒コートを行い、前述と同様に、120℃、2時間で乾燥させた後、550℃、1時間で触媒焼付けを行った。
【0169】
(実施例1〜実施例23)
表1に示されるように、前述のSiC−DPFにおける、「PM捕集層平均粒子径」を5μm、「最外輪郭接触面割合(3次元接触割合)」を18%、「最外輪郭接触線割合」19%とし、触媒群の「厚さ」を10μm、「最外輪郭線接触長さ」を24μmとして、実施例1の触媒担持フィルタを得た。同様に、「PM捕集層平均粒子径」を5μm、「最外輪郭接触面割合(3次元接触割合)」を20%、「最外輪郭接触線割合」21%とし、触媒群の「厚さ」を10μm、「最外輪郭線接触長さ」を28μmとして、実施例2の触媒担持フィルタを得た。同様に、「PM捕集層平均粒子径」を5μm、「最外輪郭接触面割合(3次元接触割合)」を50%、「最外輪郭接触線割合」49%とし、触媒群の「厚さ」を10μm、「最外輪郭線接触長さ」を56μmとして実施例3の触媒担持フィルタを得た。同様に、「PM捕集層平均粒子径」を5μm、「最外輪郭接触面割合(3次元接触割合)」を80%、「最外輪郭接触線割合」80%とし、触媒群の「厚さ」を10μm、「最外輪郭線接触長さ」を92μmとして実施例4の触媒担持フィルタを得た。同様に、「PM捕集層平均粒子径」を5μm、「最外輪郭接触面割合(3次元接触割合)」を20%、「最外輪郭接触線割合」18%とし、触媒群の「厚さ」を10μm、「最外輪郭線接触長さ」を32μmとして実施例5の触媒担持フィルタを得た。
【0170】
同様に、「PM捕集層平均粒子径」を5μm、「最外輪郭接触面割合(3次元接触割合)」を80%、「最外輪郭接触線割合」82%とし、触媒群の「厚さ」を10μm、「最外輪郭線接触長さ」を91μmとして実施例6の触媒担持フィルタを得た。同様に、「PM捕集層平均粒子径」を5μm、「最外輪郭接触面割合(3次元接触割合)」を17%、「最外輪郭接触線割合」20%とし、触媒群の「厚さ」を10μm、「最外輪郭線接触長さ」を26μmとして実施例7の触媒担持フィルタを得た。同様に、「PM捕集層平均粒子径」を5μm、「最外輪郭接触面割合(3次元接触割合)」を82%、「最外輪郭接触線割合」80%とし、触媒群の「厚さ」を10μm、「最外輪郭線接触長さ」を94μmとして実施例8の触媒担持フィルタを得た。同様に、「PM捕集層平均粒子径」を5μm、「最外輪郭接触面割合(3次元接触割合)」を85%、「最外輪郭接触線割合」84%とし、触媒群の「厚さ」を10μm、「最外輪郭線接触長さ」を94μmとして実施例9の触媒担持フィルタを得た。同様に、「PM捕集層平均粒子径」を5μm、「最外輪郭接触面割合(3次元接触割合)」を50%、「最外輪郭接触線割合」50%とし、触媒群の「厚さ」を20μm、「最外輪郭線接触長さ」を58μmとして実施例10の触媒担持フィルタを得た。
【0171】
同様に、「PM捕集層平均粒子径」を5μm、「最外輪郭接触面割合(3次元接触割合)」を50%、「最外輪郭接触線割合」50%とし、触媒群の「厚さ」を30μm、「最外輪郭線接触長さ」を56μmとして実施例11の触媒担持フィルタを得た。同様に、「PM捕集層平均粒子径」を5μm、「最外輪郭接触面割合(3次元接触割合)」を50%、「最外輪郭接触線割合」50%とし、触媒群の「厚さ」を32μm、「最外輪郭線接触長さ」を58μmとして実施例12の触媒担持フィルタを得た。同様に、「PM捕集層平均粒子径」を5μm、「最外輪郭接触面割合(3次元接触割合)」を50%、「最外輪郭接触線割合」50%とし、触媒群の「厚さ」を35μm、「最外輪郭線接触長さ」を61μmとして実施例13の触媒担持フィルタを得た。同様に、「PM捕集層平均粒子径」を5μm、「最外輪郭接触面割合(3次元接触割合)」を50%、「最外輪郭接触線割合」50%とし、触媒群の「厚さ」を10μm、「最外輪郭線接触長さ」を4μmとして実施例15の触媒担持フィルタを得た。また、実施例4と同様に、「最外輪郭接触面割合」を80%、「最外輪郭接触線割合」を80%とし、「触媒群厚さ」を10μmとしたDPF対して、PM除去とガス浄化の両機能を併せ持つ酸化触媒をコートし、実施例14の触媒担持フィルタを得た。
【0172】
同様に、「PM捕集層平均粒子径」を5μm、「最外輪郭接触面割合(3次元接触割合)」を50%、「最外輪郭接触線割合」50%とし、触媒群の「厚さ」を10μm、「最外輪郭線接触長さ」を5μmとして実施例16の触媒担持フィルタを得た。同様に、「PM捕集層平均粒子径」を5μm、「最外輪郭接触面割合(3次元接触割合)」を50%、「最外輪郭接触線割合」50%とし、触媒群の「厚さ」を10μm、「最外輪郭線接触長さ」を100μmとして実施例17の触媒担持フィルタを得た。同様に、「PM捕集層平均粒子径」を5μm、「最外輪郭接触面割合(3次元接触割合)」を50%、「最外輪郭接触線割合」50%とし、触媒群の「厚さ」を10μm、「最外輪郭線接触長さ」を110μmとして実施例18の触媒担持フィルタを得た。同様に、「PM捕集層平均粒子径」を10μm、「最外輪郭接触面割合(3次元接触割合)」を50%、「最外輪郭接触線割合」50%とし、触媒群の「厚さ」を10μm、「最外輪郭線接触長さ」を8μmとして実施例19の触媒担持フィルタを得た。同様に、「PM捕集層平均粒子径」を10μm、「最外輪郭接触面割合(3次元接触割合)」を50%、「最外輪郭接触線割合」50%とし、触媒群の「厚さ」を10μm、「最外輪郭線接触長さ」を10μmとして実施例20の触媒担持フィルタを得た。
【0173】
同様に、「PM捕集層平均粒子径」を10μm、「最外輪郭接触面割合(3次元接触割合)」を50%、「最外輪郭接触線割合」50%とし、触媒群の「厚さ」を10μm、「最外輪郭線接触長さ」を50μmとして実施例21の触媒担持フィルタを得た。同様に、「PM捕集層平均粒子径」を10μm、「最外輪郭接触面割合(3次元接触割合)」を50%、「最外輪郭接触線割合」50%とし、触媒群の「厚さ」を10μm、「最外輪郭線接触長さ」を200μmとして実施例22の触媒担持フィルタを得た。同様に、「PM捕集層平均粒子径」10μm、「最外輪郭接触面割合(3次元接触割合)」を50%、「最外輪郭接触線割合」50%とし、触媒群の「厚さ」を10μm、「最外輪郭線接触長さ」を220μmとして実施例23の触媒担持フィルタを得た。
【0174】
(比較例1)
前述のSiC−DPFにおける、「PM捕集層平均粒子径」5μm、「最外輪郭接触面割合(3次元接触割合)」を0%、「最外輪郭接触線割合」0%とし、触媒群の「厚さ」を0μm、「最外輪郭線接触長さ」を0μmとして、比較例1の触媒担持フィルタを得た。
【0175】
上述のようにして得られた実施例1〜23、及び比較例1の触媒担持フィルタを用いて前述のような実験を行った。この実験から求められた結果を、下記表1に示す。
【0176】
【表1】

【0177】
(試験結果考察1)
表1に示されるように、実施例1〜23では、良好な結果を得ることができた。特に、実施例2〜4、実施例7、実施例10、実施例11、実施例16、実施例17、実施例20〜22では、圧損を低減させながら再生効率が100%ととなり、更に耐久後の再生効率も低減させず、顕著な結果を得ることが証明された。また、その他の実施例についても後述する比較例1と比べて良好な結果を得ることができた。
【0178】
ここで、実施例1では、再生効率100%が得られず、耐久後再生効率も75%となったが、これは、最外輪郭接触面積割合(3次元接触割合)、及び最外輪郭接触線割合が20%より小さいため、スートと触媒との接触が十分でなかったためと思われる。なお、同試験条件で再生効率100%が得られないと、繰り返し再生を行っていく過程で、堆積スート量が徐々に多くなっていき、ある堆積量を超えるとスートが異常燃焼を起こし、DPFにクラックが発生する場合がある。また、ポストインジェクションキープ時間を延長すると、その分多く燃料を噴射する必要があるため燃費悪化率が高くなる等の弊害が生じる虞もある。
【0179】
また、実施例2〜4等と比較して実施例5、実施例6、実施例8、実施例9、実施例15、及び実施例19では、耐久後再生効率が若干低下することが確認された。これは、実施例5では、最外輪郭接触線割合が20%より小さく十分でないため、耐久後に触媒群の劣化によりスート燃焼効率が十分でなくなり、再生効率が85%を下回る結果となった。また、実施例6では、最外輪郭接触線割合が80%を超えているため、耐久後のAsh堆積により触媒群の大半が覆われ、スートとの接触が十分に得られなくなってしまったために、耐久後の再生効率が80%と大きく低下した。また、実施例8では、最外輪郭接触面割合が80%を超えているため、実施例6と同様に耐久後のAsh堆積により触媒とスートとの接触が十分でなくなってしまったことが原因にて、耐久後の再生効率が85%を下回った。実施例9では最外輪郭接触面割合、最外輪郭接触線割合とも80%をオーバーしているため、実施例6や実施例8と同様に耐久後のAsh堆積により再生効率が十分ではなくさらに、ガス浄化触媒層の表面開細孔が閉塞し、急激な圧損上昇を生じさせたものと思われる。実施例15、及び実施例19では最外輪郭線接触長さが十分でなかったため、耐久後の熱劣化により触媒群の効果が低下し、スートの燃焼機能が低下して再生効率が大きく低下した。ただし、比較例1と比べていずれも再生効率、及び耐久後再生効率が改善され、良好なDPFといえる。
【0180】
また、実施例9と同様に、実施例12、実施例13、実施例18、実施例23では、圧損が6kPa以上となってしまった。したがって、同出力を出すための燃料噴射量が増加するため、5%程度の燃費悪化が生じた。この点、実施例12、及び実施例13では、触媒群厚さが30μmを越えたためガス浄化触媒層の表面開細孔が閉塞して生じたものと思われる。また、実施例18、23では、「最外輪郭線接触長さ」を「PM捕集層平均粒子径」で除した値が、20を超えてしたまったことから、ガス浄化触媒層の表面開細孔が閉塞して生じたものと思われる。
【0181】
このように、実施例1、実施例5、実施例6、実施例8、実施例9、実施例12、実施例13、実施例15、実施例18、実施例19、実施例23では、それ以外の実施例と比較して、再生効率、又は/及び耐久後再生効率の低下、或いは、圧損の上昇等が見られるものの、それでもなお、後述する比較例1よりも再生効率、及び耐久後再生効率を著しく向上させていることからも、優れたDPFであることが確認できた。また、実施例14では、PM除去触媒層におけるスート燃焼機能が十分ではないため、初期時の再生効率は十分あるものの、耐久後の再生効率はPM除去触媒がコートされたものに比べ劣る結果であった。
【0182】
(試験結果考察2)
他方、また、比較例1では、再生効率100%が得られなかった。これは、比較例1では、表層上に触媒群がない場合は層に堆積している触媒にスートがほとんど接触しないためであると思われる。
【0183】
以上のような実験結果から、比較例では、再生を繰り返し行っていくと、圧損が生じやすく、また、再生するインターバルが再生を繰り返す毎に急速に短くなっていくことが裏づけられた。すなわち、実使用では再生を非常に高頻度で行わないといけないため、燃費が著しく悪化するため、実用化できないものであると思われる。
【産業上の利用可能性】
【0184】
本発明の触媒担持フィルタは、ディーゼルエンジン、普通自動車用エンジン、トラックやバス等の大型自動車用エンジンをはじめとする内燃機関、各種燃焼装置から排出される排ガス中に含まれるパティキュレートを捕集し、或いは浄化するために好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0185】
1:触媒フィルタ、1A:触媒担持フィルタ、3:セル、4:隔壁、4a:流入側隔壁、4b:流出側隔壁、5:細孔、7:入口層、9:出口層、11:開口端部、11a:一方の開口端部、11b:他方の開口端部、13:目封止部、15:触媒群、17:最外輪郭、17a:最輪郭線、20:PM捕集層、22:PM除去触媒層、24:ガス浄化触媒層、62:ハニカムセグメント、63:ハニカムセグメント接合体、64:接合材、66:外周コート層、95:試験片、97:リブ残り、99:セラミック粒子、99a:(最外輪郭の)セラミック粒子、99b:セラミック粒子、100:(従来の)ハニカムフィルタ、101、セル、103:細孔、105:隔壁、107:目封止部、109:開口部、111:入口側、113:出口側、115:開口部、A:ガス流入側端面、B:排ガス流出側端面、G:排ガス、G:(未処理前の)排ガス、G:(処理後の)排ガス、H:表層基準線、I:平行線、J:(表層基準線に対する)投影線、P:(投影線が隔壁の最も外側に位置するセラミック粒子から離れる)点、S1:基準線、T1:基準平行線、U1:基準垂直線、X:一方の開口端部、Y:他方の開口端部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の細孔を有する多孔質のセラミックからなる隔壁によって区画された、排ガスの流路となる複数のセルが形成されたハニカム構造の基材を備えた触媒担持フィルタであって、
前記複数のセルの一方の開口端部と他方の開口端部には互い違いに目封じされてなる目封止部が形成されてなり、
前記隔壁上には、隔壁内の平均細孔径より小さい平均細孔径を有するPM捕集層が形成されるとともに、前記PM捕集層は、触媒が担持された触媒層を有してなり、
さらに、前記PM捕集層の最外輪郭上には、触媒群を分布させている触媒担持フィルタ。
【請求項2】
前記触媒群の、前記最外輪郭上に分布している3次元接触割合が、20%以上80%以下である請求項1に記載の触媒担持フィルタ。
【請求項3】
前記触媒群の、前記最外輪郭上であって、所定領域の長さ方向に形成される最外輪郭線に対して、接触している長さの割合が、20%以上80%以下である請求項1又は2に記載の触媒担持フィルタ。
【請求項4】
前記触媒群の厚さが、前記最外輪郭線より30μm以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の触媒担持フィルタ。
【請求項5】
前記触媒群の、前記最外輪郭線に接する長さが、前記PM捕集層を形成する粒子の平均粒子径の1倍以上20倍以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の触媒担持フィルタ。
【請求項6】
前記触媒群及び前記触媒層の触媒がPM除去触媒である請求項1〜5のいずれか1項に記載の触媒担持フィルタ。
【請求項7】
前記PM除去触媒は、PM除去触媒の粒子からなる請求項6に記載の触媒担持フィルタ。
【請求項8】
さらに、排ガスが流出する前記隔壁の出口層は、未燃ガスの酸化を促進するガス浄化触媒が担持又はコートされたガス浄化触媒層として構成されている請求項1〜7のいずれか1項に記載の触媒担持フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−82615(P2010−82615A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193239(P2009−193239)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】