説明

触媒燃焼器及び燃焼ヒータ並びに燃料電池システム

【課題】 均一な温度分布で燃焼させることができる触媒燃焼器及び燃焼ヒータ並びに燃料電池システムを提供する。
【解決手段】 触媒燃焼器11Aは、発泡金属などで形成された整流板9Aと、この整流板9Aの上流側に設けられる触媒燃焼部13とを備えている。燃料ガスと酸化剤ガスによる混合ガスMgが、触媒燃焼器11Aに供給されると、整流板9Aによって混合ガスMgに圧力損失が与えられることで燃料ガスと酸化剤ガスとが均一に混ざるようになり、触媒燃焼部13における燃焼温度の均一化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒反応により熱を生成する触媒燃焼器、及びこの触媒燃焼器により生成された熱を利用して冷却媒体を加熱する燃焼ヒータ、並びに触媒燃焼器を搭載した燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、触媒燃焼器として種々のものが提案されている。例えば、特許文献1に記載の触媒燃焼器は、燃料電池システムに搭載されるものであり、システム始動時には、燃料ガスとしてのメタノールと酸化剤ガスとしての空気とからなる混合ガスをヒータで加熱した後に触媒燃焼部に送り、また、通常運転時には、ヒータで加熱しないで供給した空気と、ヒータの下流側から吐出される排改質ガスおよび排空気とが混合されて触媒燃焼部に送られるように構成されている。
【0003】
ところで、この種の触媒燃焼器では、触媒反応における燃料ガスと酸化剤ガスとを均一な濃度で混ぜることが難しく、その結果、触媒燃焼部内での燃焼温度が不均一となってシステム性能が低下する問題がある。そこで、燃料ガスと酸化剤ガスとの均一な濃度の混合ガスを得る手段として、燃料ガスと酸化剤ガスとを混合させる混合部内において、触媒燃焼部の入口側の面に対向するようにして燃料ガス供給用の管状の燃料供給ポートを複数本平行に配置して、各燃料供給ポートに複数の燃料噴射孔を設けた触媒燃焼器が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−21112号公報(段落0013〜0020、図1)
【特許文献2】特開2003−211945号公報(段落0060〜0069、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2に記載の従来の触媒燃焼器では、触媒燃焼部に供給される燃料ガスの供給量が面方向に対してバラツキ易く、燃料ガスと酸化剤ガスとの混合割合が不均一となるため、燃料ガスの割合が多いところでは発熱量が増えて触媒の温度が高くなって触媒が局所的に劣化するおそれがある。また、特許文献2の触媒燃焼器では、触媒燃焼部の直前で燃料ガスが供給されるため、燃料ガスと酸化剤ガスとが均等に混ざり難い。
【0005】
また、特許文献1に示すように、触媒燃焼部の下流側に燃焼ガスの熱を冷媒に伝達する熱交換器を備えたものでは、触媒燃焼部に供給される燃料ガスと酸化剤ガスとの混合割合が面方向に対してバラツキが生じると、熱交換器に供給される燃焼ガスの発熱量にバラツキが生じて熱変換効率が低下したり、熱交換器を通る冷却媒体が局所的に高温になって、冷却媒体が変質するおそれがある。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するものであり、触媒燃焼部に供給される燃料ガスと酸化剤ガスとの混合割合を均一にして、触媒燃焼部内において均一な温度分布となるように燃焼させることができる触媒燃焼器を提供することを目的とする。
また、本発明は、触媒燃焼器によって生成される燃焼ガスを熱源として冷却媒体を加熱する熱交換器とを備えるものであって、熱変換効率に優れた燃焼ヒータ、およびシステム性能の向上を図ることができる燃料電池システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の触媒燃焼器は、燃料ガスと酸化剤ガスとの混合ガスを燃焼させる触媒燃焼部を備えた触媒燃焼器であって、前記触媒燃焼部の上流側に、前記混合ガスに少なくとも圧力損失を与える整流板を設けたことを特徴とする。
【0008】
前記本発明によれば、整流板を設けて混合ガスに圧力損失を発生させることにより、触媒燃焼部に流入する混合ガス内の燃料ガスと酸化剤ガスとの混合割合を均一化できるので、触媒燃焼部内での燃焼温度が不均一となるのを防止できる。
【0009】
また、前記整流板に形成される前記混合ガスが通過する開口径が、前記混合ガスの消炎径以下に設定されるように構成することが好ましい。
【0010】
このように、整流板に形成される開口の開口径が混合ガスの消炎径以下に設定されることで、整流板を消炎板としても利用することが可能になる。よって、触媒燃焼部で火炎が発生した際にその火炎がその上流側の燃料ガスの供給側に伝播するのを防止する機能、いわゆる、逆火防止機能を発揮することができる。しかも、別個に消炎板を設ける必要がないので、触媒燃焼器の小型化および軽量化を図ることもできる。
【0011】
例えば、前記整流板は、発泡金属からなる。整流板として発泡金属を選択することにより、圧力損失によって燃料ガスと酸化剤ガスとが均一化する方向に混合されるとともに、さらに発泡金属内で燃料ガスと酸化剤ガスとが互いに攪拌されて、燃料ガスと酸化剤ガスとの混合割合を高精度に均一化できるようになる。
【0012】
また、前記整流板は、平板と波板とが交互に積層されて、前記平板と前記波板との間に形成される隙間に前記混合ガスが流通するように構成したものであってもよい。
【0013】
また、本発明の燃焼ヒータは、前記触媒燃焼器と、前記触媒燃焼器の下流側に設けられて前記触媒燃焼器によって生成される燃焼ガスを熱源として冷却媒体を加熱する熱交換器とを備えることを特徴とする。
【0014】
前記本発明の燃焼ヒータによれば、触媒燃焼器での燃焼むらを防止できるので、冷却媒体を均一な温度帯の熱源で加熱することができ、熱変換効率を高めることが可能になる。
【0015】
また、本発明の燃料電池システムは、燃料ガスと酸化剤ガスとの化学反応により発電する燃料電池と、前記燃料電池内に冷却媒体を循環させて前記燃料電池を冷却する冷却手段と、前記触媒燃焼器と、前記燃料ガスと前記酸化剤ガスとを混合して前記触媒燃焼器に供給する混合器と、前記触媒燃焼器によって生成された燃焼ガスを熱源として前記冷却媒体を加熱する熱交換器とを備えることを特徴とする。
【0016】
前記本発明の燃料電池システムによれば、触媒燃焼器から供給される燃焼ガスの温度分布を均一化できるので、冷却手段内部の圧力を安定化させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の触媒燃焼器によれば、燃焼むらを防止して、局所的な高温による触媒の劣化を防止できる。また、本発明の燃焼ヒータによれば、熱変換効率を向上できるとともに、冷却媒体の変質を防止することができる。また、本発明の燃料電池システムによれば、システム性能の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態の触媒燃焼器を搭載した燃焼ヒータについて図1ないし図4を参照して説明する。図1は燃焼ヒータを示す断面図、図2は第1実施形態の触媒燃焼器の整流板を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線断面図、図3は第1実施形態の触媒燃焼器に導入される混合ガスの流れを模式的に示す図、図4は図1のA−A線断面図である。
【0019】
図1に示すように、燃焼ヒータ10は、触媒燃焼器11Aと熱交換器1とを備えて構成されている。また、燃焼ヒータ10の上流側には混合器52が配管15を介して接続されている。この混合器52は、後記する燃料電池システムF1(図5参照)に設けられて、燃料ガスとしての水素と酸化剤ガスとしての空気とからなる混合ガスMgを触媒燃焼器11Aに供給するように構成されている。
【0020】
前記触媒燃焼器11Aは、円筒状に形成された金属製のケース12と、このケース12内に収容される触媒燃焼部13と、この触媒燃焼部13をケース12内に支持する支持部材14と、整流板9Aとで構成されている。
【0021】
前記触媒燃焼部13は、微細な気体流通路を多数有した円柱形状のベース材に白金やパラジウムなどの酸化触媒を担持させて形成したものである。
【0022】
前記整流板9Aは、図2(a)に示すように、円盤状に形成され、図1に示すように、前記触媒燃焼部13の上流側のケース12内に配設されている。図2(b)に示すように、整流板9Aは、発泡金属板9からなり、発泡金属板9の両面を挟むようにして補強板19,19が設けられている。
【0023】
前記発泡金属板9は、図示していないが、スポンジなどの樹脂発泡体と同様な3次元網目状構造をもつ金属多孔質体であり、内部の気孔同士が一方の補強板19側の面からもう一方の補強板19の面に連通する連続気孔構造となっている。また、発泡金属板9は、ステンレス、アルミニウム、銅、ニッケルなどの金属から形成されるが、金属に限定されるものではなく、セラミックなどの非金属であってもよい。また、発泡金属板9に形成される気孔の開口径は、混合ガス(図3に示す燃料電池システムF1であれば水素と空気)Mgの消炎径以下に設定することが好ましい。消炎径とは、火炎を通過させることのできない最大寸法である。
【0024】
このように、発泡金属板9の開口径を消炎径以下に設定することにより、火炎が整流板9Aを通過して混合器52に伝播されるのを阻止することができる。例えば、この消炎径としては、混合ガス(燃料ガス/酸化剤ガス)Mgが水素/空気であれば、約0.6mm以下に設定することが好ましく、混合ガス(燃料ガス/酸化剤ガス)Mgがプロパンガス/空気であれば、約2.7mm以下に設定することが好ましい。ただし、例示した消炎径は、混合ガスの種類だけで決まるものではなく、燃料ガスと酸化剤ガスとの濃度や、圧力などによって変化するので、混合ガスの種類、濃度、圧力などに基づいて適宜設定することが好ましい。また、発泡金属板9の開口径を変更することにより、混合ガスに与える圧力損失を変化させることができる。
【0025】
前記補強板19は、ステンレスやアルミニウムなどの金属材料で形成され、その一面に複数の貫通孔19aを形成して構成したものである。なお、各貫通孔19aの径は、混合ガスMgに与える圧力の損失量に応じて適宜変更するようにしてもよい。また、発泡金属で形成された整流板9Aのみで十分な強度を確保できるものであれば、補強板19を設けなくてもよい。
【0026】
図1および図4に示すように、前記熱交換器1は、筐体2と、この筐体2内に収められる熱交換部5とを有して構成されている。筐体2は、金属材料などによって円筒状に形成されている。熱交換部5は、いずれも金属材料などで形成された熱供給管群3と熱回収管部4とで構成され、熱回収管部4の内側に熱供給管群3が設けられている。
【0027】
図4に示すように、前記熱供給管群3は、流路断面が紙面上下方向に所定幅寸法で細長く形成された複数(本実施形態では7つ)の熱供給管3a,3b,3b,3c,3c,3d,3dで構成され、各熱供給管3a〜3dが互いに間隔を開けた状態で平行に配置されている。これら熱供給管3a〜3dは、いずれもその長手方向(紙面上下方向)の両端部が、熱回収管部4の内壁4aの近傍まで延びている。
【0028】
前記熱回収管部4は、略円筒状であり、その内側の空間内において前記熱供給管3a〜3dが、それぞれ前記した状態で図示しない支持部材によって支持されている。
【0029】
また、前記熱交換器1では、筐体2の内側に熱回収管部4が設けられるが、このとき筐体2と熱回収管部4との間に空気層6が設けられるように熱回収管部4が支持部材4b,4b(図1参照)によって支持されている。なお、筐体2と熱回収管部4との間は、空気層6に限定されるものではなく、例えば、グラスウールなどの無機繊維系断熱材、ポリスチレンフォーム、発泡ポリスチレン、硬質ウレタンフォーム、高発泡ポリエチレン、フェノール樹脂フォームなどの発泡プラスチック系断熱材などを充填してもよい。また、筐体2を設けずに、熱供給管群3と熱回収管部4のみで構成されたものであってもよい。
【0030】
図1に示すように、前記熱回収管部4には、前記熱供給管群3の下流側(図示右側)に位置する下部に、冷却媒体Mrが供給される導入口7が設けられ、また熱供給管群3の上流側(図示左側)に位置する上部に、冷却媒体Mrが排出される排出口8が設けられている。
【0031】
次に、第1実施形態の触媒燃焼器11Aが設けられた燃焼ヒータ10の作用について説明する。
図1に示すように、混合器52において、燃料ガスと酸化剤ガスとが混合されて、混合ガスMgが配管15を介して触媒燃焼器11Aに送られる。このとき、混合ガスMgが触媒燃焼部13の上流側に設けられた整流板9Aに当ることにより、混合ガスMgが一旦滞留して圧力損失が発生するようになる(図3参照)。このように混合ガスMgの流れ(流速または流量)が一旦抑えられることによって、混合ガスMg内の燃料ガスと酸化剤ガスと均等に混ざるようになる。また、整流板9Aを発泡金属とすることにより、混合ガスMgが発泡金属内で攪拌されるので、燃料ガスと酸化剤ガスとをさらに均等に混ぜることが可能になる。そして、均等に混ざった状態の混合ガスMgは、一方の補強板19の貫通孔19a(図2(a)(b)参照)、発泡金属板9内、およびもう一方の補強板19の貫通孔19aを通って触媒燃焼部13に向けて排出される。これにより、触媒燃焼部13の入口側の面13a(図3参照)に対して、燃料ガスと酸化剤ガスとの混ざり度合が均一な混合ガスMgを供給することが可能になり、触媒燃焼部13内での燃焼温度を均一化できるようになる。よって、触媒燃焼器11Aでは、熱交換部5に対して、燃焼温度分布が均一な燃焼ガスMsを供給できるようになる。
【0032】
本実施形態の触媒燃焼器11Aでは、触媒燃焼部13内での燃焼むらを防止することができるので、触媒燃焼部13内での燃焼温度が局所的に高くなって、触媒が劣化したり、変質したりするのを防止できるようになる。
【0033】
図4に示すように、前記熱交換器1に供給された燃焼ガスMsは、熱供給管群3の各熱供給管3a〜3d内を通って、配管16から排出される。また、熱交換器1に供給される冷却媒体Mrは、導入口7から供給されて、各熱供給管3a〜3dの外側と熱回収管部4の内側とで囲まれる空間(流路)内を通って、燃焼ガスMsとは逆向きに並行に流れるようにして排出口8から排出される(図1参照)。このように、触媒燃焼部13において混合ガスMgを燃焼して燃焼ガスMsを生成し、この燃焼ガスMsを熱源として冷却媒体Mrが加熱される。
【0034】
本実施形態の燃焼ヒータ10では、触媒燃焼部13で均一な温度分布の燃焼ガスMsを得ることができるので、熱交換部5内を通る冷却媒体Mrも温度分布が均一となるように加熱される。このように冷却媒体Mrの温度分布を均一化できるので、熱変換効率を高めることが可能になる。その結果、冷却媒体Mrの温度が局所的に高くなり、冷却媒体Mrが変質したりまたは劣化することを防止できるようになる。
【0035】
次に、本実施形態の触媒燃焼器11Aを搭載した燃焼ヒータ10の動作について、車両用の燃料電池システムF1(図5参照)に搭載した場合を例に挙げて説明する。この燃焼ヒータ10は、後記する燃料電池FCの冷却系40内を流れる冷却液(冷却媒体)Mrを加熱して、燃料電池FCを暖機する際に利用される。
【0036】
まず、最初に、燃料電池システムF1の全体構成について図5を参照して説明する。
この燃料電池システムF1は、燃料電池FC、水素供給系20、空気供給系30、冷却系40、暖機系50、希釈系70および制御装置80を含んで構成されている。
【0037】
燃料電池FCは、アノード極(水素極)P1とカソード極(酸素極)P2とを有するPEM(Proton Exchange Membrane)型の燃料電池であり、アノード極P1に燃料ガスである水素が供給され、カソード極P2に酸化剤ガスである空気が供給されることにより発電するようになっている。
【0038】
水素供給系20は、アノード極P1の上流側に、高圧水素タンク21と、遮断弁22と、レギュレータ(減圧手段)23とが設けられている。また、アノード極P1の下流側には、逆止弁24と、燃料ポンプ25とが設けられている。水素供給系20の各機器は、燃料配管29a〜29fにより接続されている。高圧水素タンク21からの水素は、遮断弁22およびレギュレータ23を介して、アノード極P1に供給される。また、アノード極P1から排出されたアノードオフガスは、逆止弁24を介して燃料ポンプ25に流入し、燃料ポンプ25に圧送されてアノード極P1に再び導入(再循環)される。
【0039】
空気供給系30は、カソード極P2の上流側に、エアポンプ31が設けられ、カソード極P2の下流側に背圧弁32が設けられている。エアポンプ31は、モータにより駆動されるスーパーチャージャ等であり、制御装置80からの信号によりモータの回転速度が制御される。空気供給系30の各機器は、エア配管39a,39bにより接続されている。背圧弁32は、制御装置80からの信号により作動する。なお、燃料電池FCに供給される空気は、図示しない加湿器により加湿される。
【0040】
冷却系40は、ラジエタ41の他、サーモスタット弁42、水ポンプ43、三方電磁弁44を備えている。冷却系40の各機器は、冷却液配管49a〜49fにより接続され、冷却液配管49aには燃料電池FCの出口側冷却液温度を燃料電池FCの温度として検出する温度センサ45が設置されている。サーモスタット弁42は、燃料電池FCの暖機を促進すべく、始動後の冷機時にラジエタ41を経由させずに冷却液を循環させる。また、三方電磁弁44は、制御装置80からの信号により作動し、水ポンプ43からの冷却液を燃焼ヒータ10を経由せずに直接に燃料電池FCに供給する通常運転位置と、前記燃焼ヒータ10に供給する暖機運転位置とに切り換えられる。なお、ラジエタ41、サーモスタット弁42、水ポンプ43、三方電磁弁44および冷却液配管49a〜49fにより、本実施形態の冷却手段が構成されている。
【0041】
暖機系50は、本実施形態の燃焼ヒータ10を備え、この燃焼ヒータ10でアノードオフガスや水素(燃料ガス)を燃焼させ、その熱エネルギーで燃料電池FCを暖機する役割を担っている。また、暖機系50は、燃焼ヒータ10の他、前記したように、この燃焼ヒータ10に導入されるアノードオフガスや水素(燃焼ガス)とカソードオフガス(酸化剤ガス)とを混合する混合器52とを備えている。また、暖機系50は、アノードオフガスを混合器52に導く第1燃料ガスライン67と、水素を混合器52に導く第3燃料ガスライン68と、カソードオフガスを混合器52に導く第1カソードオフガスライン64と、燃料電池FCの冷却液を燃焼ヒータ10に導く暖機系冷却液ライン69とを有している。
【0042】
第1燃料ガスライン67は、アノード極P1の下流側の燃料配管29dと混合器52とを連絡する燃料配管67a〜67cと、これら燃料配管67a〜67cにより接続された気水分離器53と、第1ガス流量制御弁54とから構成されている。第1ガス流量制御弁54は、制御装置80からの信号により作動する。気水分離器53は、燃料配管67aから流入したアノードオフガス中の水分を図示しないプレートにより分離し、混合器52側の燃料配管67bに水分が除かれたアノードオフガスを流入させ、希釈装置71側の後記する燃料配管79aに水分を含んだアノードオフガスを流入させる。燃料配管67cには、混合器52への燃料ガス供給量を検出する流量センサ55が設置されている。
【0043】
第3燃料ガスライン68は、水素供給系20の燃料配管29cと第1燃料ガスライン67の燃料配管67cとを連絡する燃料配管68a,68bと、これら燃料配管68a,68bの間に介装された第3ガス流量制御弁56とから構成されている。第3ガス流量制御弁56は、制御装置80からの信号により制御される。
【0044】
第1カソードオフガスライン64は、空気供給系30における背圧弁32の出口側と混合器52とを連絡するエア配管64a,64bと、これらエア配管64a,64bの間に介装された気水分離器57とから構成されている。気水分離器57は、前記気水分離器53と同様のプレート式であり、カソード極P2側のエア配管64aから流入したカソードオフガス中の水分をプレートにより分離し、混合器52側のエア配管64bに水分が除かれたカソードオフガスを流入させ、希釈装置71側の後記するエア配管78aに水分を含んだカソードオフガスを流入させる。
【0045】
暖機系冷却液ライン69は、前記した三方電磁弁44から供給された冷却液を燃焼ヒータ10に供給する冷却液配管69aと、燃焼ヒータ10で加熱された冷却液を燃料電池FCに供給する冷却液配管69bとから構成されている。
【0046】
希釈系70は、燃焼ヒータ10に接続された希釈装置71を備えており、アノードオフガスと燃焼ヒータ10の排気ガスとをこの希釈装置71内で酸素含有ガスにより希釈して大気中に放出する役割を担っている。希釈装置71は、多孔板71aにより仕切られた貯留室71bと拡散室71cとを有している。そして、貯留室71bに流入したアノードオフガスは、多孔板71aを介して徐々に拡散室71cに流入し、拡散室71cで酸素含有ガスと混合することにより希釈された後に大気中に排出される。また、希釈系70は、アノードオフガスを希釈装置71に導く第2燃料ガスライン79と、カソードオフガスを希釈装置71に導く第2カソードオフガスライン78とを有している。
【0047】
第2燃料ガスライン79は、気水分離器53と希釈装置71の貯留室71bとを連絡する燃料配管79a,79bと、これら燃料配管79a,79bの間に介装された第2ガス流量制御弁72とから構成されている。第2ガス流量制御弁72は、制御装置80からの信号により作動する。
【0048】
第2カソードオフガスライン78は、気水分離器57と希釈装置71とを連絡するエア配管78a,78bと、これらエア配管78a,78bの間に介装されたオリフィス73とから構成されている。
【0049】
次に、燃料電池システムF1が搭載された車両の暖機制御について説明する。
運転者により車両のイグニッションスイッチ(図示せず)がON状態にされると、制御装置80は、暖機制御を開始する。制御装置80は、水ポンプ43からの冷却媒体Mrを燃焼ヒータ10に供給する暖機運転位置に三方電磁弁44を切り換える。そして、第3ガス流量制御弁56を開弁方向へ所定量駆動させ、第1ガス流量制御弁54と第2ガス流量制御弁72とをそれぞれ閉鎖して、混合器52に、第3燃料ガスライン68および燃料配管67cを介して高圧水素タンク21の水素(燃料ガス)を導入する。このときの水素導入量は、流量センサ55によって監視される。一方、カソード極P2から排出されたカソードオフガス(酸化剤ガス)は、そのほぼ全量が第1カソードオフガスライン64を介して混合器52に導入される。
【0050】
水素とカソードオフガス(酸素)とは、混合器52内で混合された後に燃焼ヒータ10の触媒燃焼部13に導入される。そして、触媒燃焼部13において、水素とカソードオフガス中の酸素とが触媒燃焼して、熱源としての燃焼ガスMs(図1参照)が生成される。生成された燃焼ガスMsは、熱交換器1へ送られ、この熱交換器1では、燃焼ガスMsの熱が熱供給管3a〜3dを介して冷却媒体Mrに与えられて、冷却媒体Mrが加熱される。加熱された冷却媒体Mrは、冷却液配管69bおよび冷却液配管49eを介して燃料電池FCに供給される。このとき、燃料電池FCの温度を温度センサ45で監視して、燃料電池FCが発電可能となる温度に至るまで燃焼ヒータ10に水素とカソードオフガス(酸素)とを供給して暖機を続行する。暖機終了後は、三方電磁弁44を通常運転位置に駆動して、水ポンプ43からの冷却媒体Mrが燃焼ヒータ10を経由せずに直接に燃料電池FCに供給されるように制御する。
【0051】
このように、本実施形態の燃焼ヒータ10を燃料電池システムF1に搭載することにより、熱交換器1での熱変換効率を高めることができる。その結果、暖機時の燃料消費を低減することができる。また熱変換効率を高めることで、熱交換器1の小型化や軽量化を図ることができ、燃焼ヒータ10の小型化や軽量化を図ることもできる。
【0052】
なお、前記した暖機制御は一例であり、暖機時の燃料電池FCの温度に基づいて適宜変更することができる。例えば、高圧水素タンク21から水素を直接に混合器52に供給するのではなく、前記燃料電池システムF1の起動時(イグニッションスイッチをONしたとき)にアノード極P1や燃料配管29c〜29fに残留している水や不純物を排出する処理(パージ処理)を利用して、燃料電池FCから排出されるアノードオフガスを燃料ガスとして燃料電池システムF1を暖機するようにしてもよい。
【0053】
このようにパージ処理のアノードオフガスを利用して暖機する場合には、制御装置80の制御により三方電磁弁44を暖機運転位置に駆動する。そして、第3ガス流量制御弁56を閉じ、第1ガス流量制御弁54を開き、第2ガス流量制御弁72を閉じて、混合器52に、アノード極P1からパージされたアノードオフガスの全量と、カソード極P2から排出されたカソードオフガスの略全量とを流入して、燃焼ヒータ10内でアノードオフガスとカソードオフガスとを触媒燃焼させて燃焼ガスMs(熱エネルギー)を生成する。このように、従来は排出されていたアノードオフガスを燃料電池FCの暖機に利用できるので、燃料の消費量を低減できるようになる。
【0054】
なお、アノードオフガスに含まれる水分は、気水分離器53内で分離され、カソードオフガスに含まれる水分は、気水分離器57内で分離されるため、燃焼ヒータ10には水分を含まないアノードオフガスとカソードオフガスとが供給され、これにより安定した燃焼が可能になる。
【0055】
このように、本実施形態の燃焼ヒータ10を燃料電池システムF1に搭載することにより、熱交換器1での熱変換効率を高めることでシステム性能を向上できるようになる。
【0056】
また、本実施形態の燃料電池システムF1では、混合器52が触媒燃焼器11Aの上流側の近傍に設けられているので、混合器52で混合された燃料ガスと酸化剤ガスとがさらに混合されて、燃料ガスと酸化剤ガスとの混合割合をさらに高めることが可能になり、触媒燃焼部13での燃焼温度分布を高精度に均一化できるようになる。
【0057】
(第2実施形態)
図6は第2実施形態の触媒燃焼器に設けられる整流板を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のC−C線断面図、図7は第2実施形態の触媒燃焼器に導入される混合ガスの流れを模式的に示す図である。
図6(a)に示すように、第2実施形態の触媒燃焼器11Bの整流板9Bは、複数枚の平板19bと複数枚の波板19cとで構成され、各平板19bの平面と各波板19cの波面とが互いに対面するようにしてロウ付けなどによって接合される。そして、平板19bと波板19cとが接合された構造板が、同心円状となるように複数積層される。また、波板19cの凹凸のピッチが一定に形成されて、平板19bと波板19cとで囲まれる断面略三角形状の空隙19dの大きさが一定に設定されている。
【0058】
なお、整流板9Bの構造は、同心円状に積層されるものに限定されず、それぞれ長尺状に形成された1枚の平板19bと波板19cとを積層した構造のものが、中心から外周側に向けて螺旋状に巻回されて構成したものでもよい。または、平板19bと波板19cとが直線状に延びるように複数積層されたものでもよい。また、波板19cは、角張った凹凸形状であってもよい。
【0059】
第2実施形態では、前記した整流板9Bが設けられた場合であっても、図7に示すように、混合器52(図5参照)から燃料ガスと酸化剤ガスとによる混合ガスMgが触媒燃焼器11Bに供給された場合に、混合ガスMgが整流板9Bに当って、混合ガスMgに圧力損失が与えられる。これにより、混合ガスMgが整流板9Bの手前で一旦滞留するので、混合ガスMgの燃料ガスと酸化剤ガスとの混合割合がさらに均一化され、均一化された状態の混合ガスMgが整流板9Bの各空隙19dを通って触媒燃焼部13に供給される。この第2実施形態では、第1実施形態のように、整流板9Bの内部において混合割合が均一化する方向へ高められることはないが、整流板9Bの手前で圧力損失が混合ガスMgに生じるので、触媒燃焼部13での燃焼温度を均一化できるようになる。よって、触媒燃焼部13内で局所的に高温となるのを防止できるので、触媒燃焼部13の触媒の劣化を防止できる。また、この触媒燃焼器11Bを燃焼ヒータ10に搭載した場合であっても、冷却媒体Mrの局所的な高温による劣化を防止できるようになる。さらに、整流板9Bに形成される各空隙19dの開口径を消炎径以下に設定することにより、火炎が整流板9Bを通過するのを防ぎ、消炎板を別個に設ける必要がない。
【0060】
なお、本発明の触媒燃焼器11A,11Bおよび燃焼ヒータ10並びに燃料電池システムF1は、車両に限定されるものではなく、船舶用、給湯用などその他各種の燃焼ヒータとして適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】燃焼ヒータを示す断面図である。
【図2】第1実施形態の触媒燃焼器の整流板を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線断面図である。
【図3】第1実施形態の触媒燃焼器に導入される混合ガスの流れを模式的に示す図である。
【図4】図1のA−A線断面図である。
【図5】本実施形態の燃焼ヒータを車両用の燃料電池システムに搭載したときの構成図である。
【図6】第2実施形態の触媒燃焼器の整流板を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のC−C線断面図である。
【図7】第2実施形態の触媒燃焼器に導入される混合ガスの流れを模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0062】
1 熱交換器
9 発泡金属板
9A,9B 整流板
10 燃焼ヒータ
11A,11B 触媒燃焼器
13 触媒燃焼部
19 補強板
19a 貫通孔
19b 平板
19c 波板
52 混合器
Mg 混合ガス
Mr 冷却媒体
Ms 燃焼ガス


【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと酸化剤ガスとの混合ガスを燃焼させる触媒燃焼部を備えた触媒燃焼器であって、
前記触媒燃焼部の上流側に、前記混合ガスに少なくとも圧力損失を与える整流板を設けたことを特徴とする触媒燃焼器。
【請求項2】
前記整流板に形成される前記混合ガスが通過する開口径が、前記混合ガスの消炎径以下に設定されることを特徴とする請求項1に記載の触媒燃焼器。
【請求項3】
前記整流板は、発泡金属からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の触媒燃焼器。
【請求項4】
前記整流板は、平板と波板とが交互に積層されて、前記平板と前記波板との間に形成される隙間に前記混合ガスが流通するように構成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の触媒燃焼器。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の触媒燃焼器と、前記触媒燃焼器の下流側に設けられて前記触媒燃焼器によって生成される燃焼ガスを熱源として冷却媒体を加熱する熱交換器とを備えることを特徴とする燃焼ヒータ。
【請求項6】
燃料ガスと酸化剤ガスとの化学反応により発電する燃料電池と、前記燃料電池内に冷却媒体を循環させて前記燃料電池を冷却する冷却手段と、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の触媒燃焼器と、前記燃料ガスと前記酸化剤ガスとを混合して前記触媒燃焼器に供給する混合器と、前記触媒燃焼器によって生成された燃焼ガスを熱源として前記冷却媒体を加熱する熱交換器とを備えることを特徴とする燃料電池システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−183977(P2006−183977A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−381241(P2004−381241)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】