説明

触媒組成物および鏡像異性体富化基質の脱富化におけるそれらの使用

鏡像異性体富化組成物に脱富化を受けさせる方法を提供し、この方法は、炭素−ヘテロ原子結合を含有していて前記炭素がキラル中心でありかつ前記ヘテロ原子がV族のヘテロ原子である基質の少なくとも1番目の鏡像異性体もしくはジアステレオマーを含んで成る鏡像異性体富化組成物を触媒系および場合により反応促進剤の存在下で反応させることで、炭素−ヘテロ原子結合を有する前記基質の1番目および2番目の鏡像異性体もしくはジアステレオマーを含んで成っていて前記1番目の鏡像異性体もしくはジアステレオマーに対する2番目の鏡像異性体もしくはジアステレオマーの比率が前記鏡像異性体富化組成物中に存在していた前記1番目の鏡像異性体もしくはジアステレオマーに対する2番目の鏡像異性体もしくはジアステレオマーの比率よりも高い生成物組成物を得ることを含んで成る。好適な触媒系には、式M[式中、Mは遷移金属であり、Xはハロゲン化物であり、Yは、場合により置換されていてもよいヒドロカルビルである中性の錯化基、場合により置換されていてもよい過ハロゲン化ヒドロカルビルである中性の錯化基、または場合により置換されていてもよいシクロペンタジエニルである錯化基であり、そしてn、pおよびrは整数である]で表される遷移金属ハロゲン化物錯体が含まれる。前記反応促進剤は好適にはハロゲン化物塩である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鏡像異性体富化基質(enantiomerically enriched substrates)、特にアミンに脱富化(de−enrichment)を受けさせる方法に関する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0002】
本発明の1番目の面に従い、鏡像異性体富化組成物に脱富化を受けさせる方法を提供し、この方法は、炭素−ヘテロ原子結合を含有していて前記炭素がキラル中心でありかつ前記ヘテロ原子がV族のヘテロ原子である基質の少なくとも1番目の鏡像異性体もしくはジアステレオマーを含んで成る鏡像異性体富化組成物を触媒系および場合により反応促進剤の存在下で反応させることで、炭素−ヘテロ原子結合を有する前記基質の1番目および2番目の鏡像異性体もしくはジアステレオマーを含んで成っていて1番目の鏡像異性体もしくはジアステレオマーに対する2番目の鏡像異性体もしくはジアステレオマーの比率が前記鏡像異性体富化組成物中に存在していた1番目の鏡像異性体もしくはジアステレオマーに対する2番目の鏡像異性体もしくはジアステレオマーの比率よりも高い生成物組成物を得ることを含んで成る。
【0003】
前記生成物組成物は、好適には、炭素−ヘテロ原子結合を含有していて前記炭素がキラル中心である基質の1番目と2番目の鏡像異性体のラセミ混合物である。
【0004】
本発明の方法を用いて鏡像異性的脱富化を受けさせることができる基質には、キラリティーを持つ第二級炭素原子の所のアミンおよび第二級炭素原子の所にキラリティーを持つアンモニウム塩が含まれる。
【0005】
本発明の方法において、好適には、炭素−ヘテロ原子結合を含有していて前記炭素原子がキラル中心である基質は、式(1):
【0006】
【化1】

【0007】
[式中、
Xは、NHR、NR、(NHRを表し、
は、アニオンを表し、
、Rは、各々独立して、場合により置換されていてもよいヒドロカルビル、過ハロゲン化ヒドロカルビル、場合により置換されていてもよい複素環基または置換基を表し、
は、水素原子、場合により置換されていてもよいヒドロカルビル、過ハロゲン化ヒドロカルビル、場合により置換されていてもよい複素環基または除去可能基を表し、
は、水素原子、場合により置換されていてもよいヒドロカルビル、過ハロゲン化ヒドロカルビル、または場合により置換されていてもよい複素環基を表すか、或は場合により、RとR、RとR、RとRおよびRとRの中の1つ以上が場合により置換されていてもよい環1個または2個以上を形成するように連結していてもよいが、但しR、R、RおよびRが*がキラル中心であるように選択されることを条件とする]
で表される化合物である。
【0008】
1−4が独立して表し得るヒドロカルビル基には、アルキル、アルケニルおよびアリール基およびこれらの任意組み合わせ、例えばアラルキルおよびアルカリール、例えばベンジル基などが含まれる。
【0009】
1−4が表し得るアルキル基には、炭素原子数が20以下、特に炭素原子数が1から7、好適には炭素原子数が1から5の直鎖および分枝アルキル基が含まれる。アルキル基が分枝している場合、そのような基が含有する分枝鎖の炭素原子数はしばしば10以下、好適には分枝鎖の原子数は4以下である。特定の態様におけるアルキル基は環式であってもよく、それは一般に最も大きな環の中に炭素原子を3から10個含有し、そして場合により、橋渡しされている環を1個以上含有することを特徴としてもよい。R1−4が表し得るアルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、2−プロピル、ブチル、2−ブチル、t−ブチルおよびシクロヘキシル基が含まれる。
【0010】
1−4が表し得るアルケニル基には、C2−20、好適にはC2−6のアルケニル基が含まれる。存在する炭素−炭素二重結合の数は1以上であってもよい。アルケニル基は置換基、特にフェニル置換基を1個以上持っていてもよい。アルケニル基の例には、ビニル、スチリルおよびインデニル基が含まれる。RまたはRのいずれかがアルケニル基を表す場合、炭素−炭素二重結合が存在する位置は好適にはC−ヘテロ原子部分に対してβ位である。
【0011】
1−4が表し得るアリール基は環を1個または縮合環を2個以上含有していてもよく、そのような環もしくは縮合環にはシクロアルキル、アリールまたは複素環式環が含まれ得る。R1−4が表し得るアリール基の例には、フェニル、トリル、フルオロフェニル、クロロフェニル、ブロモフェニル、トリフルオロメチルフェニル、アニシル、ナフチルおよびフェロセニル基が含まれる。
【0012】
1−4が独立して表し得る過ハロゲン化ヒドロカルビル基には、過ハロゲン化アルキルおよびアリール基およびこれらの任意組み合わせ、例えばアラルキルおよびアルカリール基などが含まれる。R1−4が表し得る過ハロゲン化アルキル基の例には−CFおよび−Cが含まれる。
【0013】
1−4が独立して表し得る複素環式基には、芳香、飽和および部分不飽和環系が含まれ、これらは環を1個または縮合環を2個以上から成っていてもよく、そのような環もしくは縮合環にはシクロアルキル、アリールまたは複素環式環が含まれ得る。複素環式基は複素環式環を少なくとも1個含有し、それらの中で最も大きな環は環原子を通常は3から7個含有し、それらの中の少なくとも1個の原子は炭素でありそして少なくとも1個の原子はN、O、SまたはPの中のいずれかである。RまたはRのいずれかが複素環式基を表すか或は含んで成る場合、C−ヘテロ原子基と結合しているRまたはRの中の原子は好適には炭素原子である。R1−4が表し得る複素環式基の例には、ピリジル、ピリミジル、ピロリル、チオフェニル、フラニル、インドリル、キノリル、イソキノリル、イミダゾリルおよびトリアゾリル基が含まれる。
【0014】
が表し得る除去可能基には、−P(O)R,−P(O)OROR,−P(O)OROH,−P(O)(OH),−P(O)SRSR10,−P(O)SRSH,−P(O)(SH),−P(O)NR1112NR1314,−P(O)NR1112NHR13,−P(O)NHR11NHR13,−P(O)NR1112NH,−P(O)NHR11NH,−P(O)(NH),−P(O)ROR,−P(O)ROH,−P(O)RSR,−P(O)RSH,−P(O)RNR1112,−P(O)RNHR11,−P(O)RNH,−P(O)ORSR,−P(O)ORSH,−P(O)OHSR,−P(O)OHSH,−P(O)ORNR1112,−P(O)ORNHR11,−P(O)ORNH,−P(O)OHNR1112,−P(O)OHNHR11,−P(O)OHNH,−P(O)SRNR1112,−P(O)SRNHR11,−P(O)SRNH,−P(O)SHNR1112,−P(O)SHNHR11,−P(O)SHNH,−P(S)R,−P(S)OROR,−P(S)OROH,−P(S)(OH),−P(S)SRSR10,−P(S)SRSH,−P(S)(SH),−P(S)NR1112NR1314,−P(S)NR1112NHR13,−P(S)NHR11NHR13,−P(S)NR1112NH,−P(S)NHR11NH,−P(S)(NH),−P(S)ROR,−P(S)ROH,−P(S)RSR,−P(S)RSH,−P(S)RNR1112,−P(S)RNHR11,−P(S)RNH,−P(S)ORSR,−P(S)OHSR,−P(S)ORSH,−P(S)OHSH,−P(S)ORNR1112,−P(S)ORNHR11,−P(S)ORNH,−P(S)OHNR1112,−P(S)OHNHR11,−P(S)OHNH,−P(S)SRNR1112,−P(S)SRNHR11,−P(S)SRNH,−P(S)SHNR1112,−P(S)SHNHR11,−P(S)SHNH,−PR,−POROR,−PSRSR10,−PNR1112NR1314,−PROR,−PRSR,−PRNR1112,−PORSR,−PORNR1112,−PSRNR1112,−S(O)R15,−S(O)16,−COR17,−CO18,−SiR192021,−OH,−OR22,−OC(O)R23,−NR2627またはN=CR2829[ここで、RおよびRは、独立して、場合により置換されていてもよいヒドロカルビル、過ハロゲン化ヒドロカルビル、場合により置換されていてもよい複素環基、または−N=CR2425ここで、R24およびR25はRで定義した通りである、を表し、RからR23は、各々独立して、場合により置換されていてもよいヒドロカルビル、過ハロゲン化ヒドロカルビル、または場合により置換されていてもよい複素環基を表し、そしてR26からR29は、各々独立して、水素、場合により置換されていてもよいヒドロカルビル、過ハロゲン化ヒドロカルビル、または場合により置換されていてもよい複素環基を表す]が含まれる。
【0015】
1−29のいずれかが置換されているヒドロカルビルもしくは複素環式基である場合、そのような置換基1個または2個以上は反応の速度にも立体選択率にも悪影響を与えないような置換基であるべきである。任意の置換基には、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、アミノ、チオール、アシル、ヒドロカルビル、過ハロゲン化ヒドロカルビル、複素環、ヒドロカルビルオキシ、モノ−もしくはジ−ヒドロカルビルアミノ、ヒドロカルビルチオ、エステル、カーボネート、アミド、スルホニルおよびスルホンアミド基、ここで、ヒドロカルビル基は、この上でRに関して定義した通りである、が含まれる。存在する置換基は1個以上であってもよい。
【0016】
またはRが表し得る置換基には、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、アミノ、チオール、アシル、カルボキシル、ヒドロカルビルオキシ、モノ−もしくはジ−ヒドロカルビルアミノ、ヒドロカルビルチオ、エステル、カーボネートおよびアミド基が含まれる。
【0017】
とR、RとR、RとRおよびRとRの中のいずれかが式(1)で表される化合物の炭素原子および/またはX原子のいずれかと一緒になって環を形成するように連結している場合、それらは場合により環ヘテロ原子、好適にはO、SまたはN環原子を1個以上含有していてもよい5、6もしくは7員の環であるのが好適である。そのような式(1)で表される化合物の例には、1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1−フェニル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリンおよび1−メチル−6,7,−ジメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリンが含まれる。
【0018】
XがNHR、NR、(NHRで表される式(1)で表される化合物には、アミンまたはアンモニウム塩が含まれる。式(1)で表される化合物がアミンの場合、それを場合によりアンモニウム塩に変化させてもよい。好適なアンモニウム塩の代表例は、Xが(NHR、ここで、RまたはRは同じまたは異なる、である式(1)で表される化合物である。式(1)で表される化合物がアンモニウム塩の場合、Qで表されるアニオンが存在する。存在させてもよいアニオンの例は、ハロゲン化物、水素硫酸塩、炭酸塩、水素炭酸塩、トシル酸塩、蟻酸塩、酢酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩およびトリフルオロ酢酸塩である。
【0019】
好適な特定態様では、RとRの両方を異ならせ、そして両方が異なるC1−6アルキル基であるか、両方が異なるアリール基、特に一方がフェニル基であるように選択するか、或は一方がアリール、特にフェニルでありそしてもう一方がC1−6アルキルであるように選択する。RおよびRの中の一方または両方が置換フェニル基の場合、置換基が存在していてもよく、特にC−X基に対してパラ位に置換基が存在していてもよい。
【0020】
式(1)で表される化合物の例には、N−メチル−1−フェニルエチルアミン、N−ベンジル−1−フェニルエチルアミン、1−(2−ナフチル)エチルアミン、1−(1−ナフチル)エチルアミンおよび1−フェニルエチルアミンが含まれる。
【0021】
前記触媒系は、好適には、遷移金属触媒および場合により配位子を含んで成る。
【0022】
場合により存在させてもよい配位子には、アルコール、スルフィドおよび好適にはアミン、特に式(1)で表されるアミンである基質が含まれる。式(1)で表される好適なアミンである基質は、R1−4の中の少なくとも1個が場合により置換されていてもよいα−メチル基含有ヒドロカルビルである式(1)で表される置換アミンである。
【0023】
配位子を用いる場合、場合により、その配位子と前記遷移金属触媒を前記基質と反応させる前に前以て混合または前以て配位させておいてもよい。そのような前以て配位させておいてもよい配位子および遷移金属触媒の例には、公開番号がWO97/20789、WO98/42643およびWO02/44111の国際特許出願(これらは各々引用することによって本明細書に組み入れられる)に開示されている触媒、またはTet.Lett.2002、43、4699に記述されている触媒、例えば水素化ビス−ジカルボニル[1−ヒドロキシル−2,3,4,5−テトラフェニルシクロペンタジエニルルテニウム(II)など、J.Am.Chem.Soc.2003、125、11494に記述されているクロロジカルボニル[1−(i−プロピルアミノ)−2,3,4,5−テトラフェニルシクロペンタジエニルルテニウム(II)、およびJ.Mol.Catal.A.Chemical 189、2002、119に記述されている挟み錯体(pincer complexes)、例えばビス−1,3−ジ−t−ブチルホスフィノメチル−ジヒドロイリジウム−2−ベンゼンなどが含まれる。
【0024】
遷移金属触媒には、遷移金属のハロゲン化物、遷移金属ハロゲン化物錯体および遷移金属の錯体が含まれるが、そのような遷移金属は場合により置き換え可能(displaceable)配位子と錯体を形成していてもよい。
【0025】
置き換え可能配位子には、ホスフィン、例えばトリ−ヒドロカルビルホスフィン、例えばPhPなど、カルベン、例えばイミダゾールカルベンなど、ニトリル、例えばアセトニトリルなど、一酸化炭素、トリフレート、アルケンおよびジエンが含まれる。遷移金属が場合により置き換え可能配位子と錯体を形成していてもよい遷移金属錯体の例には、式M
[式中、
Mは、遷移金属であり、
Lは、置き換え可能配位子であり、
Xは、ハロゲン化物であり、
Yは、場合により置換されていてもよいヒドロカルビルである中性の錯化基、場合により置換されていてもよい過ハロゲン化ヒドロカルビルである中性の錯化基、または場合により置換されていてもよいシクロペンタジエニルである錯化基であり、そして
nは、整数であり、そして
o、pおよびrは、各々、0または整数であるが、但しo+p+rが整数であることを条件とする]
で表される錯体が含まれる。
【0026】
そのような遷移金属触媒は、好適には、周期律表のVIII族の遷移金属、特にルテニウム、ロジウムまたはイリジウムなどが基になった遷移金属ハロゲン化物または遷移金属ハロゲン化物錯体である。
【0027】
そのような遷移金属触媒は、より好適には、式M
[式中、
Mは、遷移金属であり、
Xは、ハロゲン化物であり、
Yは、場合により置換されていてもよいヒドロカルビルである中性の錯化基、場合により置換されていてもよい過ハロゲン化ヒドロカルビルである中性の錯化基、または場合により置換されていてもよいシクロペンタジエニルである錯化基であり、そして
n、pおよびrは、整数である]
で表される遷移金属ハロゲン化物錯体である。
【0028】
遷移金属触媒は実質的にこの上に示した式で表される通りであると考えているが、ある場合には、また、そのような遷移金属触媒は二量体、三量体または他のある種の高分子(polymeric)種として存在する可能性もある。
【0029】
Xが表し得るハロゲン化物には、塩化物、臭化物およびヨウ化物が含まれる。Xは好適にはヨウ化物である。
【0030】
Mが表し得る金属には、移動水素化(transfer hydrogenation)に触媒採用を及ぼし得る金属が含まれる。好適な金属には遷移金属、より好適には周期律表のVIII族の金属(鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウムおよび白金)、より好適にはルテニウム、ロジウムまたはイリジウム、最も好適にはイリジウムが含まれる。
【0031】
整数n、p、rを典型的には遷移金属ハロゲン化物錯体が全体として中性種であるように選択する。従って、n、p、rの選択は当該金属の原子価状態および存在するハロゲン化物の数および錯化基Yの性質に直接関係する。例えば、Yが負に帯電しているシクロペンタジエニルである錯化基の場合、当該金属の原子価状態と均衡を取るに必要な負帯電ハロゲン化物の数はYが中性のヒドロカルビルである錯化基の時の数よりも少ないであろう。
【0032】
当該金属がルテニウムの場合、それは好適にはIIの原子価状態で存在する。当該金属がロジウムまたはイリジウムの場合、それは、Yが場合により置換されていてもよい中性のヒドロカルビルまたは場合により置換されていてもよい中性の過ハロゲン化ヒドロカルビル配位子の時には好適にはIの原子価状態で存在し、そしてYが場合により置換されていてもよいシクロペンタジエニル配位子の時には好適にはIIIの原子価状態で存在する。特に好適な金属はイリジウムである。
【0033】
Yが表し得る場合により置換されていてもよいヒドロカルビルまたは過ハロゲン化ヒドロカルビルである中性の錯化基には、場合により置換されていてもよいアリールおよびアルケニルである錯化基が含まれる。
【0034】
Yが表し得る場合により置換されていてもよいアリールである錯化基は、環を1個または縮合環を2個以上含有していてもよく、そのような環もしくは縮合環にはシクロアルキル、アリールまたは複素環式環が含まれ得る。そのような錯化基が含有する環は好適には6員の芳香環である。アリールである錯化基が有する環1個または2個以上はしばしばヒドロカルビル基で置換されている。そのような置換の様式および置換基の数は多様であり、存在する環の数の影響を受け得るが、存在する置換基の数はしばしば1から6である。置換基には、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、アミノ、チオール、アシル、ヒドロカルビル、過ハロゲン化ヒドロカルビル、複素環、ヒドロカルビルオキシ、モノ−もしくはジ−ヒドロカルビルアミノ、ヒドロカルビルチオ、エステル、カーボネート、アミド、スルホニルおよびスルホンアミド基、ここで、ヒドロカルビル基は、この上でRに関して定義した通りである、が含まれ得る。そのような1から6個の置換基は、典型的に、各々独立して、ヒドロカルビル基、好適には2、3または6個のヒドロカルビル基、より好適には6個のヒドロカルビル基である。好適なヒドロカルビル置換基には、メチル、エチル、イソプロピル、メンチル、ネオメンチルおよびフェニルが含まれる。特にアリールである錯化基が単一の環の場合、そのような錯化基は好適にはベンゼンまたは置換ベンゼンである。錯化基が過ハロゲン化ヒドロカルビルの場合、それは好適には多ハロゲン置換(polyhalogenated)ベンゼン、例えばヘキサクロロベンゼンまたはヘキサフルオロベンゼンなどである。ヒドロカルビル置換基が鏡像異性および/またはジアステレオマー中心を含有する場合、それらの鏡像異性および/またはジアステレオマー的に高純度の形態を用いるのが好適である。特にベンゼン、p−シミル(cymyl)、メシチレンおよびヘキサメチルベンゼンが好適な錯化基である。
【0035】
Yが表し得る場合により置換されていてもよいアルケニルである錯化基には、C2−30、好適にはC6−12アルケンまたはシクロアルケンが含まれるが、それらが有する炭素−炭素二重結合は好適には2個以上、好ましくは、炭素−炭素二重結合は2個のみである。そのような炭素−炭素二重結合は、場合により、存在し得る他の不飽和系と共役していてもよく、好適には互いに共役している。そのようなアルケンもしくはシクロアルケンは好適にはヒドロカルビル置換基で置換されていてもよい。そのアルケンが有する二重結合が1個のみの場合、そのような場合により置換されていてもよいアルケニルである錯化基は個別のアルケンを2個含有し得る。好適なヒドロカルビル置換基にはメチル、エチル、イソプロピルおよびフェニルが含まれる。場合により置換されていてもよいアルケニルである錯化基の例には、シクロ−オクタ−1,5−ジエンおよび2,5−ノルボルナジエンが含まれる。特にシクロ−オクタ−1,5−ジエンが好適である。
【0036】
Yが表し得る場合により置換されていてもよいシクロペンタジエニルである錯化基には、エータ−5結合を形成し得るシクロペンタジエニル基が含まれる。そのようなシクロペンタジエニル基はしばしば1から5個の置換基で置換されている。置換基には、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、アミノ、チオール、アシル、ヒドロカルビル、過ハロゲン化ヒドロカルビル、複素環、ヒドロカルビルオキシ、モノ−もしくはジ−ヒドロカルビルアミノ、ヒドロカルビルチオ、エステル、カーボネート、アミド、スルホニルおよびスルホンアミド基、ここで、ヒドロカルビル基は、この上でRに関して定義した通りである、が含まれ得る。シクロペンタジエニル基は好適には1から5個のヒドロカルビル基、より好適には3から5個のヒドロカルビル基、最も好適には5個のヒドロカルビル基で置換されている。好適なヒドロカルビル置換基にはメチル、エチルおよびフェニルが含まれる。ヒドロカルビル置換基が鏡像異性および/またはジアステレオマー中心を含有する場合、それらの鏡像異性および/またはジアステレオマー的に高純度の形態を用いるのが有利であり得る。場合により置換されていてもよいシクロペンタジエニルである錯化基の例には、シクロペンタジエニル、ペンタメチル−シクロペンタジエニル、ペンタフェニルシクロペンタジエニル、テトラフェニルシクロペンタジエニル、エチルテトラメチルペンタジエニル、メンチルテトラフェニルシクロペンタジエニル、ネオメンチルテトラフェニルシクロペンタジエニル、メンチルシクロペンタジエニル、ネオメンチルシクロペンタジエニル、テトラヒドロインデニル、メンチルテトラヒドロインデニルおよびネオメンチルテトラヒドロインデニル基が含まれる。特にペンタメチルシクロペンタジエニルが好適である。
【0037】
式M[式中、Mは、RhまたはIrであり、そしてYは、場合により置換されていてもよいシクロペンタジエニル基である]で表される遷移金属ハロゲン化物錯体が好適である。式M[式中、Mは、Irであり、そしてYは、場合により置換されていてもよいシクロペンタジエニル基である]で表される遷移金属ハロゲン化物錯体が最も好適である。非常に好適な錯体は、式Mで表される遷移金属ヨウ化物錯体であり、より好適には、MがIrでありそしてYが場合により置換されていてもよいシクロペンタジエニル基である錯体である。
【0038】
遷移金属ハロゲン化物錯体の例にはRuCl(シミル),RhCl(Cp),RhBr(Cp),Rh(Cp),IrCl(Cp),Ru(シミル),RhClCp,RhBrCp,RhlCpおよびIr(Cp、ここで、Cpはペンタメチルシクロペンタジエニル基である、が含まれる。
【0039】
好適な特定態様における触媒系は、好適には、式M[式中、Mは遷移金属であり、Xはハロゲン化物であり、Yは、場合により置換されていてもよいヒドロカルビルである中性の錯化基、場合により置換されていてもよい過ハロゲン化ヒドロカルビルである中性の錯化基、または場合により置換されていてもよいシクロペンタジエニルである錯化基であり、そしてn、pおよびrは整数である]で表される遷移金属ハロゲン化物錯体と式(1)で表されるアミン配位子を接触させることで得ることができる組成物である。
【0040】
有利には、そのような触媒系の少なくとも一部を固体状担体に担持されている状態または封じ込められている(encapsulated)系として導入してもよい。当該触媒系を固体状担体に担持されている状態または封じ込められている系として存在させる場合、そのような担持触媒系は、特に繰り返しが想定される場合必要であり得る分離作業の実施に役立ちかつ段階と段階の間の材料の循環を容易にする可能性がある。当該触媒系の担持または封じ込めで使用可能な固体状担体または封じ込め技術の例がWO03/006151およびWO05/016510に記述されている。
【0041】
場合により存在させてもよい反応促進剤には、ハロゲン化物塩、例えば金属のハロゲン化物などが含まれる。好適な反応促進剤には臭化物、特にヨウ化物塩が含まれる。ヨウ化カリウムおよびヨウ化セシウムが非常に好適である。
【0042】
本発明のさらなる面では、式(1)で表される出発アミンの脱水素で生じる式(2):
【0043】
【化2】

【0044】
[式中、
Xは、NR、NR、(NRを表し、
は、アニオンを表し、
、Rは、各々独立して、場合により置換されていてもよいヒドロカルビル、過ハロゲン化ヒドロカルビル、場合により置換されていてもよい複素環基または置換基を表し、
は、水素原子、場合により置換されていてもよいヒドロカルビル、過ハロゲン化ヒドロカルビル、場合により置換されていてもよい複素環基または除去可能基を表し、
は、水素原子、場合により置換されていてもよいヒドロカルビル、過ハロゲン化ヒドロカルビル、または場合により置換されていてもよい複素環基を表すか、或は場合により、RとR、RとR、RとRおよびRとRの中の1つ以上が場合により置換されていてもよい環1個または2個以上を形成するように連結していてもよい]
で表される相当するイミンを製造することができる。
【0045】
有利には、強酸化剤を化学量論的量で用いる必要のない穏やかな条件下でイミンを得ることができる。
【0046】
式(1)で表される出発アミンの脱水素で生じる相当するイミンの生成を抑制または助長する必要がある場合、有利には、水素受容体および/または水素供与体を用いてもよい。
【0047】
本発明の方法に存在させてもよい水素受容体には、酸、酸素、アルデヒドおよびケトン、イミンおよびイミニウム塩、易水素化可能炭化水素、染料、クリーンな酸化剤、炭酸塩、重炭酸塩およびこれらの任意組み合わせに由来するプロトンが含まれる。
【0048】
便利な適合性酸のいずれか、例えば蟻酸、酢酸、水素炭酸塩、水素硫酸塩、アンモニウム塩またはアルキルアンモニウム塩などからプロトンを生じさせることができる。便利には、当該基質自身からプロトンを生じさせてもよい。
【0049】
水素受容体として使用可能なアルデヒドおよびケトンは炭素原子を一般に1から20個、好適には炭素原子を2から15個、より好適には炭素原子を3から5個含有する。アルデヒドおよびケトンには、アルキル、アリール、ヘテロアリールアルデヒドおよびケトン、およびアルキル、アリールまたはヘテロアリール基を混ぜて有するケトンが含まれる。水素受容体の代表例であり得るアルデヒドおよびケトンの例には、ホルムアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトンおよびベンゾフェノンが含まれる。水素受容体がアルデヒドまたはケトンの場合、アセトンが特に好適である。
【0050】
水素受容体として使用可能な易水素化可能炭化水素には、水素を受け取る性質を有する炭化水素または還元系を生じる性質を有する炭化水素が含まれる。水素受容体として使用可能な易水素化可能炭化水素の例には、キノン、ジヒドロアレーン(dihydroarenes)およびテトラヒドロアレン(tetrahydroarenes)が含まれる。
【0051】
水素受容体の代表例であり得るクリーンな酸化剤には、高い酸化電位を有する酸化剤、特に標準的な水素電極を基準にして約0.1eVより大、しばしば約0.5eVより大、好適には約1eVより大の酸化電位を有する酸化剤が含まれる。水素受容体の代表例であり得るクリーンな酸化剤の例には、酸化性金属および酸素が含まれる。
【0052】
染料には、ローズベンガル、プロフラビン、臭化エチジウム(ethidium)、エオシンおよびフェノールフタレインが含まれる。
【0053】
炭酸塩および重炭酸塩には、炭酸および重炭酸のアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムおよび第四級アミン塩が含まれる。
【0054】
最も好適な水素受容体は、酸、アセトン、酸素、基質アミンおよび炭酸塩および重炭酸塩のプロトンである。
【0055】
水素供与体には、水素、第一級および第二級アルコール、第一級、第二級および第三級アミン、カルボン酸およびこれらのエステルおよびアミン塩、易脱水素可能炭化水素、クリーンな還元剤およびこれらの任意組み合わせが含まれる。
【0056】
水素供与体として使用可能な第一級および第二級アルコールは、炭素原子を一般に1から10個、好適には炭素原子を2から7個、より好適には炭素原子を3または4個含有する。水素供与体の代表例であり得る第一級および第二級アルコールの例には、メタノール、エタノール、プロパン−1−オール、プロパン−2−オール、ブタン−1−オール、ブタン−2−オール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコールおよびメントールが含まれる。水素供与体がアルコールの場合、第二級アルコールが好適であり、特にプロパン−2−オールおよびブタン−2−オールが好適である。
【0057】
水素供与体として使用可能な第一級、第二級および第三級アミンは、炭素原子を一般に1から20個、好適には炭素原子を2から14個、より好適には炭素原子を3から8個含有する。水素供与体の代表例であり得る第一級、第二級および第三級アミンの例には、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、ヘキシルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジ−イソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジ−イソブチルアミン、ジヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジベンジルアミン、ピペリジン、(R)または(S)6,7−ジメトキシ−1−メチルジヒドロイソキノリン、トリエチルアミンが含まれる。水素供与体がアミンの場合、第一級アミンが好適であり、特に第二アルキル基を含有する第一級アミン、特にイソプロピルアミンおよびイソブチルアミンが好適である。
【0058】
水素供与体として使用可能なカルボン酸またはこれらのエステルまたは塩は、炭素原子を一般に1から10個、好適には炭素原子を1から3個含有する。特定態様におけるカルボン酸は有利にベータ−ヒドロキシ−カルボン酸である。そのようなカルボン酸とC1−10アルコールからエステルを生じさせることができる。水素供与体として使用可能なカルボン酸の例には、蟻酸、乳酸、アスコルビン酸およびマンデル酸が含まれる。カルボン酸を水素供与体として用いる場合、そのようなカルボン酸の少なくともいくらかを好適には塩として存在させる。アミン塩を生じさせてもよい。そのような塩を生じさせる時に使用可能なアミンには、芳香および非芳香両方のアミンが含まれるが、これらもまた第一級、第二級および第三級アミンであり、炭素原子を典型的に1から20個含有する。第三級アミン、特にトリアルキルアミンが好適である。塩を生じさせる時に使用可能なアミンの例には、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジ−イソプロピルエチルアミンおよびピリジンが含まれる。最も好適なアミンはトリエチルアミンである。カルボン酸の少なくともいくらかをアミン塩として存在させる場合、特に蟻酸とトリエチルアミンの混合物を用いる場合、酸とアミンのモル比を一般に約5:2にする。反応過程中にいずれかの成分を添加、通常はカルボン酸を添加することで、そのような比率を維持してもよい。他の好適な塩にはナトリウム、カリウム、マグネシウムが含まれる。
【0059】
水素供与体として使用可能な易脱水素可能炭化水素には、芳香化を起こす性質を有する炭化水素または高共役系を生じる性質を有する炭化水素が含まれる。水素供与体として使用可能な易脱水素可能炭化水素の例には、シクロヘキサジエン、シクロヘキセン、テトラリン、ジヒドロフランおよびテルペンが含まれる。
【0060】
水素供与体の代表例であり得るクリーンな還元剤には、高い還元電位を有する還元剤、特に標準的な水素電極を基準にして約−0.1eV以上、しばしば約−0.5eV以上、好適には約−1eV以上の還元電位を有する還元剤が含まれる。水素供与体の代表例であり得る奇麗な還元剤の例には、ヒドラジンおよびヒドロキシルアミンが含まれる。
【0061】
最も好適な水素供与体は、(R)または(S)6,7−ジメトキシ−1−メチルジヒドロイソキノリン、プロパン−2−オール、ブタン−2−オール、蟻酸トリエチルアンモニウム、蟻酸ナトリウム、蟻酸カリウム、および蟻酸トリエチルアンモニウムと蟻酸の混合物である。
【0062】
気体状水素を存在させてもよいが、本方法を通常は気体状水素の存在無しに実施する、と言うのは、それは不必要であると思われるからである。
【0063】
典型的には、不活性なパージ用ガスを用いてもよい。
【0064】
本方法を適切には−78から+180℃、好適には−20から+110℃、より好適には+40から+80℃の範囲内の温度で実施する。
【0065】
基質である式(1)で表される化合物の初期濃度を適切には0.05から1.0の範囲内にするが、大規模な操作を便利に実施しようとする場合には、モルを基準にして例えば6.0以下、より特別には0.75から2.0にしてもよい。基質と触媒系のモル比を適切には50:1以上にするが、この比率は50000:1以下、好適には250:1から5000:1、より好適には500:1から2500:1であってもよい。
【0066】
反応促進剤を存在させる場合、そのような反応促進剤を好適には当該基質を基準にしてモル過剰量、特に1から5倍、または便利であるならば、例えば20倍に及ぶモル過剰量で用いる。
【0067】
水素供与体および/または受容体を存在させる場合、そのような水素供与体および/または受容体を好適には当該基質を基準にしてモル過剰量、特に5から20倍、または便利であるならば、例えば500倍に及ぶモル過剰量で用いる。
【0068】
反応時間は典型的に1.0分から24時間の範囲、特に8時間以内、便利には約3時間である。反応後の混合物を標準的手順で処理する。
【0069】
反応用溶媒、例えばジメチルホルムアミド、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、または便利には、基質であるアミンが反応温度で液状の時には基質であるアミンを存在させてもよい。好適な溶媒には、非極性芳香溶媒、例えばトルエン、メシチレン、p−シメンおよびクメンなど、および極性非プロトン性溶媒、例えばジオキサン、エーテル、例えばジエチルエーテルまたはテトラヒドロフランなど、および酢酸エステル、例えばt−BuOAcなどが含まれる。通常は、水を実質的に存在させないで実施するのが好適であるが、水が反応を過度に抑制することはないと思われる。水を溶媒として用いる場合、好適にはpH緩衝剤を用いる。基質であるアミンまたは反応用溶媒が水と混和せずかつ所望生成物が水溶性の場合には、水を2番目の相として存在させる方が望ましい可能性がある。当該基質の濃度を反応時間、収率および鏡像異性体過剰度の脱富化が最適になるように選択してもよい。
【0070】
本発明の方法は有利にキラル工程、例えばキラル分離、化学的および酵素的キラル分割などで得られた望まれない異性体を再利用しようとする時に使用可能である。キラル分離または分割を実施する時、典型的には、ラセミ混合物に結果として所望の鏡像異性体もしくは鏡像異性副生成物の分離がもたらされるような物理的、化学的または生化学的処理を受けさせるが、しばしば、未反応または望まれない鏡像異性体もしくは鏡像異性副生成物が残存する。本発明の方法は、未反応の鏡像異性体を所望の鏡像異性体を含有する使用可能な原料に変化させる方法を提供するものである。
【0071】
本発明を以下の実施例で例示する。
[実施例1]
【0072】
40℃のクロロホルム/テトラヒドロフラン中で(S)6,7−ジメトキシ−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリンのラセミ化および脱水素
5mlの丸底フラスコに塩化ペンタメチルシクロペンタジエニルイリジウム(III)二量体(8.30mg、96%、7.97mg=0.01ミリモル)を加えた。クロロホルム(250μl)を加えた後、その触媒溶液を磁気撹拌子で触媒の全部が溶解する結果としてオレンジ色の溶液が生じるまで撹拌した。(S)−6,7−ジメトキシ−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン(218.2mg、95%、207.25mg=1.00ミリモル)およびヨウ化カリウム(167.7mg、99%、166.01mg=1.00ミリモル)を加えた後、テトラヒドロフラン(750μl)を用いた洗浄を実施した。そのフラスコに水冷却器を取り付けた後、40℃のオイルバスの中に置いて、タイマーを開始させた。
【0073】
主にヨウ化カリウムが溶液の状態でないままであり、40℃で約5分後に反応溶液が褐色になりそして全体に渡ってその色のままであった。
【0074】
規則的な間隔でサンプルを採取して、その反応溶液(40μl)をジクロロメタン(2ml)と2.5Mの水酸化ナトリウム溶液(2ml)に添加した。有機層を分離した後、硫酸ナトリウムで乾燥させた。その結果として得た溶液をキラルGCおよびアキラルGCで分析した。
分析
ガスクロ(変換用)
Varian CP−SIL 8CBカラム(25m、320μm、0.12μm)、150℃の等温(12.0psi、10分間)、25℃/分(4分間)の後、250℃(4分間)。
アミン=4.8−5.0分
イミン=5.19−5.21分
ガスクロ(ee用)
Varian Chirasil−Dex−CBカラム(25m、250μm、0.25μm)、165℃の等温(60分間)。
N.B. 注入前に各サンプル瓶に無水トリフルオロ酢酸を1滴添加した。
鏡像異性体1の滞留時間=46.3−46.5分
鏡像異性体2の滞留時間=47.2−47.4分
【0075】
【表1】

[実施例2]
【0076】
塩化ペンタメチルシクロペンタジエニルイリジウム(III)二量体(16.6mg、96%、15.9mg、0.020ミリモル)をクロロホルム(0.5ml)に溶解させることで前記二量体の溶液を調製した結果、暗オレンジ色の溶液(イリジウム触媒溶液)が生じた。
【0077】
ヨウ素の固体(17.1mg、99%、16.9mg、0.067ミリモル)をテトラヒドロフラン(0.5ml)に溶解させることでヨウ素の溶液を調製した結果、暗褐色の溶液(ヨウ素溶液)が生じた(この溶液の75μlは0.01ミリモルのヨウ素に相当する)。
【0078】
これらの反応で用いる少量のヨウ化カリウムを170℃のオーブンに入れて一定重量になるまで乾燥させた。ヨウ化カリウムの2番目のサンプルを粉砕して微粉末にした後、オーブンに入れて一定重量(重量損失が〜1%)になるまで乾燥させた。
【0079】
下記の材料を各瓶に加えることで磁気撹拌子と(R)−N−メチル−α−メチルベンジルアミン(13.8mg、98%、13.5mg、0.10ミリモル)が入っている7個のGC瓶を組み立てた:
1. ヨウ化セシウム(26.0mg、99.9%、26.0mg、0.10ミリモル)、テトラヒドロフラン(75μl)およびイリジウム触媒溶液(25μl)。
2. ヨウ化カリウム(15.1mg、99%、14.9mg、0.10ミリモル)、ヨウ素溶液(75μl)およびイリジウム触媒溶液(25μl)。
3. ヨウ素溶液(75μl)およびイリジウム触媒溶液(25μl)。
4. 臭化カリウム(12.0mg、99%、11.9mg、0.09ミリモル)、ヨウ素溶液(75μl)およびイリジウム触媒溶液(25μl)。
5. ヨウ化カリウム乾燥粉末(16.8mg、99%、16.6mg、0.10ミリモル)、ヨウ素溶液(75μl)およびイリジウム触媒溶液(25μl)。
6. ヨウ化カリウム(16.8mg、99%、16.6mg、0.10ミリモル)、ヨウ素溶液(75μl)およびイリジウム触媒溶液(25μl)。
7. 乾燥させたヨウ化カリウム(16.8mg、99%、16.6mg、0.10ミリモル)、ヨウ素溶液(75μl)およびイリジウム触媒溶液(25μl)。
【0080】
各瓶を密封して40℃のステムブロック(stem block)に入れ、一晩撹拌した後、サンプルを採取して反応溶液(20μl)をジクロロメタン(2ml)と2.5Mの水酸化ナトリウム(2ml)に入れて反応を消滅させ、有機層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、キラルGCおよびアキラルGCで分析した。
分析
ガスクロ(変換用)
HP−5 5%メチルフェニルシロキサン毛細管カラム(30m、320μm、0.25μm)、70℃の等温(30分間、15.0psi)。
N−メチル−α−メチルベンジルアミン=6.8分
ガスクロ(ee用)
Varian Chirasil−Dex−CBカラム(25m、250μm、0.25μm)、100℃の等温(60分間)。
N.B. 注入前に各サンプル瓶に無水トリフルオロ酢酸を1滴添加した。
R鏡像異性体N−メチル−α−メチルベンジルアミン=58.4分
S鏡像異性体N−メチル−α−メチルベンジルアミン=54.8分
【0081】
【表2】

[実施例3]
【0082】
ガスパージ
実施例3.1:空気パージ
5mlの丸底フラスコに塩化ペンタメチルシクロペンタジエニルイリジウム(III)二量体(16.6mg、96%、15.9mg、0.02ミリモル)、(R)−N−メチル−α−メチルベンジルアミン(275.9mg、98%、270.4mg、2.00ミリモル)およびヨウ化カリウム(335.4mg、99%、332.0mg、2.00ミリモル)を仕込んだ。トルエン(4ml)を加えた後のフラスコに水冷却器を取り付けた後、80℃のオイルバスの中に置いた。空気パージを反応溶液の中に通し(10ml/分)そしてタイマーを開始させた。反応溶液が直ちに暗赤/褐色に変わり、それが60分かけて色あせて暗オレンジ色の溶液になった。溶液の色が徐々に色あせて、撹拌を一晩行うと透明なオレンジ色の溶液になった。
【0083】
パージによって損失した溶媒を補充する目的で5時間後にトルエン(2ml)を加えた。
【0084】
規則的な間隔で100−200μlを取り出すことでサンプルを採取し、それをジクロロメタン(2ml)と2.5Mの水酸化ナトリウム(2ml)に入れて反応を消滅させ、有機層を分離した後、硫酸ナトリウムで乾燥させた。その結果として生じた有機層をキラルGCおよびアキラルGCで分析した。
実施例3.2:パージ無し
5mlの丸底フラスコに塩化ペンタメチルシクロペンタジエニルイリジウム(III)二量体(16.6mg、96%、15.9mg、0.02ミリモル)、(R)−N−メチル−α−メチルベンジルアミン(275.9mg、98%、270.4mg、2.00ミリモル)、ヨウ化カリウム(335.4mg、99%、332.0mg、2.00ミリモル)およびビフェニル(155.0mg、99.5%、154.2mg、1.00ミリモル)を仕込んだ。トルエン(4ml)を加えた後のフラスコに水冷却器を取り付けた後、そのフラスコを80℃のオイルバスの中に置いて、タイマーを開始させた。反応溶液が直ちに暗赤/褐色に変わり、それが60分かけて色あせて暗オレンジ色の溶液になった。溶液の色が徐々に色あせて、撹拌を一晩行うと透明なオレンジ色の溶液になった。
【0085】
規則的な間隔で100−200μlを取り出すことでサンプルを採取し、それをジクロロメタン(2ml)と2.5Mの水酸化ナトリウム(2ml)に入れて反応を消滅させ、有機層を分離した後、硫酸ナトリウムで乾燥させた。その結果として生じた有機層をキラルGCおよびアキラルGCで分析した。
実施例3.3:窒素パージ
5mlの丸底フラスコに塩化ペンタメチルシクロペンタジエニルイリジウム(III)二量体(16.6mg、96%、15.9mg、0.02ミリモル)、(R)−N−メチル−α−メチルベンジルアミン(275.9mg、98%、270.4mg、2.00ミリモル)、ヨウ化カリウム(335.4mg、99%、332.0mg、2.00ミリモル)およびn−デカン(143.4mg、99%、142.0mg、1.00ミリモル)を仕込んだ。トルエンの中に窒素を30分間吹き込むことで、この溶媒に脱気を受けさせた後、それを4ml加え、そのフラスコに水冷却器を取り付けた後、80℃のオイルバスの中に入れ、そしてタイマーを開始させた。窒素パージを反応溶液の中に通した(10ml/分)。反応溶液が直ちに暗赤/褐色に変わり、それが60分かけて色あせて暗オレンジ色の溶液になった。溶液の色が徐々に色あせて、撹拌を一晩行うと透明なオレンジ色の溶液になった。パージによって損失した溶媒を補充する目的で325分後にトルエン(2ml)を加えた。
【0086】
規則的な間隔で100−200μlを取り出すことでサンプルを採取し、それをジクロロメタン(2ml)と2.5Mの水酸化ナトリウム(2ml)に入れて反応を消滅させ、有機層を分離した後、硫酸ナトリウムで乾燥させた。その結果として生じた有機層をキラルGCおよびアキラルGCで分析した。
分析
ガスクロ(変換用)
HP−5 5%メチルフェニルシロキサン毛細管カラム(30m、320μm、0.25μm)、70℃の等温(30分間、15.0psi)。
N−メチル−α−メチルベンジルアミン=6.8分
ガスクロ(ee用)
N−メチル−α−メチルベンジルアミン
Varian Chirasil−Dex−CBカラム(25m、250μm、0.25μm)、100℃の等温(60分間)。
N.B. 注入前に各サンプル瓶に無水トリフルオロ酢酸を1滴添加した。
R鏡像異性体N−メチル−α−メチルベンジルアミン=58.4分
S鏡像異性体N−メチル−α−メチルベンジルアミン=54.8分
【0087】
【表3】

【0088】
【表4】

【0089】
【表5】

[実施例4]
【0090】
5mlの丸底フラスコに塩化ペンタメチルシクロペンタジエニルイリジウム(III)二量体(16.6mg、96%、15.9mg、0.02ミリモル)、(R)−N−メチル−α−メチルベンジルアミン(275.9mg、98%、270.4mg、2.00ミリモル)、ヨウ化カリウム(335.4mg、99%、332.0mg、2.00ミリモル)およびトリデカン(186.2mg、99%、184.4mg、1.00ミリモル)を仕込んだ。トルエン(4ml)を加えた後のフラスコに水冷却器を取り付けた後、そのフラスコを80℃のオイルバスの中に置いて、タイマーを開始させた。反応溶液が直ちに暗赤/褐色に変わり、それが60分かけて色あせて暗オレンジ色の溶液になった。溶液の色が徐々に色あせて、撹拌を一晩行うと透明なオレンジ色の溶液になった。
【0091】
規則的な間隔で100−200μlを取り出すことでサンプルを採取し、それをジクロロメタン(2ml)と2.5Mの水酸化ナトリウム(2ml)に入れて反応を消滅させ、有機層を分離した後、硫酸ナトリウムで乾燥させた。その結果として生じた有機層をキラルGCおよびアキラルGCで分析した。
分析
ガスクロ(変換用)
HP−5 5%メチルフェニルシロキサン毛細管カラム(30m、320μm、0.25μm)、70℃の等温(30分間、15.0psi)。
N−メチル−α−メチルベンジルアミン=6.8分
ガスクロ(ee用)
N−メチル−α−メチルベンジルアミン
Varian Chirasil−Dex−CBカラム(25m、250μm、0.25μm)、100℃の等温(60分間)。
N.B. 注入前に各サンプル瓶に無水トリフルオロ酢酸を1滴添加した。
R鏡像異性体N−メチル−α−メチルベンジルアミン=58.4分
S鏡像異性体N−メチル−α−メチルベンジルアミン=54.8分
【0092】
【表6】

[実施例5]
【0093】
5mlの丸底フラスコにヨウ化ペンタメチルシクロペンタジエニルイリジウム(III)二量体(24.2mg、96%、23.25mg、0.02ミリモル)、(S)−N−メチル−α−メチルベンジルアミン(275.9mg、98%、270.4mg、2.00ミリモル)およびトリデカン(186.2mg、99%、184.4mg、1.00ミリモル)を仕込んだ。トルエン(4ml)を加えた後のフラスコに水冷却器を取り付けた後、そのフラスコを80℃のオイルバスの中に置いて、タイマーを開始させた。反応溶液が直ちに暗赤/褐色に変わり、それが60分かけて色あせて暗オレンジ色の溶液になった。溶液の色が徐々に色あせて、撹拌を一晩行うと透明なオレンジ色の溶液になった。
【0094】
規則的な間隔で100−200μlを取り出すことでサンプルを採取し、それをジクロロメタン(2ml)と2.5Mの水酸化ナトリウム(2ml)に入れて反応を消滅させ、有機層を分離した後、硫酸ナトリウムで乾燥させた。その結果として生じた有機層をキラルGCおよびアキラルGCで分析した。
分析
ガスクロ(変換用)
HP−5 5%メチルフェニルシロキサン毛細管カラム(30m、320μm、0.25μm)、70℃の等温(30分間、15.0psi)。
N−メチル−α−メチルベンジルアミン=6.8分
ガスクロ(ee用)
N−メチル−α−メチルベンジルアミン
Varian Chirasil−Dex−CBカラム(25m、250μm、0.25μm)、100℃の等温(60分間)。
N.B. 注入前に各サンプル瓶に無水トリフルオロ酢酸を1滴添加した。
R鏡像異性体N−メチル−α−メチルベンジルアミン=58.4分
S鏡像異性体N−メチル−α−メチルベンジルアミン=54.8分
【0095】
【表7】

【0096】
ヨウ化ペンタメチルシクロペンタジエニルイリジウム(III)二量体の製造
50mlの3つ口丸底フラスコに塩化ペンタメチルシクロペンタジエニルイリジウム(III)二量体(265.5mg、96%、254.9mg、0.32ミリモル)およびヨウ化ナトリウム(499.6mg、99%、494.6mg、3.30ミリモル)を加えた。そのフラスコに水冷却器を取り付け、残りの口にストッパーを付けた後、その容器の中にアルゴンを50ml/分で30分間流し込んだ。次に、そのアルゴンのパージ量を低くして5ml/分にし、無水アセトン(30ml)を加えた後、その反応フラスコを60℃のオイルバスの中に置いて、磁気撹拌子を用いた撹拌を実施すると、不溶なイリジウム二量体がいくらか入っている暗オレンジ色の溶液が生じた。その反応物をアルゴン下で3時間還流させた後、室温になるまで冷却した。その反応溶液のT.L.C.(ジクロロメタンが90%でメタノールが10%)により、反応が完全に進行して新しい化合物が1種のみ生じたことが分かった。その反応物に濃縮乾固を真空下で受けさせることで褐色/赤色固体を得、それをジクロロメタン(50ml)に溶解させ、超純水(2x25ml)で洗浄し、有機層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した後、濃縮乾固を真空下で実施することで褐色の固体(370.9mg)を得た。その固体をクロロホルム/メタノールから再結晶化させることで褐色の針様結晶を183.9mg(49.4%の収率)得た。
【0097】
前記結晶を炭素およびプロトンNMRで炭素/水素比に関して分析した。
分析
元素分析
計算値:C=20.66%、H=2.60%、N=0.00%
測定値:1回目:C=20.90%、H=2.51%、N=0.13%
2回目:C=20.86%、H=2.44%、N=0.00%
NMR
Cp*プロトン=1.83ppm一重線
Cp*第四炭素=89.3ppm
Cp*メチル炭素=11.13ppm
規模をより大きくした繰り返し製造
1000mlの1口丸底フラスコに塩化ペンタメチルシクロペンタジエニルイリジウム(III)二量体(4.57、96%、4.38g、5.507ミリモル)およびヨウ化ナトリウム(8.55g、99%、8.46g、56.7ミリモル)を加えた。そのフラスコに水冷却器を取り付け、残りの口にストッパーを付けた後、その容器の中にアルゴンを500ml/分で30分間流し込んだ。次に、そのアルゴンのパージ量を低くして20ml/分にし、無水アセトン(525ml)を加えた後、その反応フラスコを60℃のオイルバスの中に置いて、磁気撹拌子を用いた撹拌を実施すると、不溶なイリジウム二量体がいくらか入っている暗オレンジ色の溶液が生じた。その反応物をアルゴン下で3時間還流させた後、室温になるまで冷却した。その反応物に濃縮乾固を真空下で受けさせることで褐色/赤色固体を得、それをジクロロメタン(500ml)に溶解させ、超純水(3x250ml)で洗浄し、有機層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した後、濃縮乾固を真空下で実施することで褐色の固体を得た。その固体をクロロホルム/メタノールから再結晶化させることで褐色の針様結晶を得、濾液に濃縮乾固を受けさせそしてその結果として得た残留物をクロロホルム/メタノールから再結晶化させ、この操作を3回目として繰り返し、その3回の触媒収穫物を一緒にすることで5.102g(78.2%の収率)を得た。
アミンラセミ化の一般的手順(2ミリモルの規模)
5mlの1口丸底フラスコにキラルアミン(2ミリモル)、ヨウ化ペンタメチルシクロペンタジエニルイリジウム(III)二量体*(0.02ミリモル)およびトルエン(4ml)を加える。そのフラスコに冷却器を取り付け、それを80℃のオイルバスの中に置いた後、磁気撹拌子で撹拌する。
【0098】
サンプルを規則的間隔で取り出して、変換率および鏡像異性体過剰度に関して分析する。
* 代替手順は、塩化ペンタメチルシクロペンタジエニルイリジウム(III)二量体(0.02ミリモル)およびヨウ化カリウム(2ミリモル)を添加することを伴う。
【0099】
【表8】

【0100】
【表9】

[実施例19]
【0101】
いろいろな溶媒中で第三級アミンのラセミ化
5個の小瓶に(S)−(−)−N,N−ジメチル−1−フェネチルアミン(100mg、0.67ミリモル)、ヨウ化ペンタメチルシクロペンタジエニルイリジウム(III)二量体(7.8mg、0.0067ミリモル)を下記の溶媒に入れて加えた:トルエン、酢酸t−ブチル、シクロペンチルメチルエーテルおよびジイソプロピルアルコール(3ml)。水冷却器を取り付けた後の反応容器を90℃に加熱した。サンプルを規則的間隔で採取(約100μl)し、DCM(3ml)に入れて反応を消滅させた後、キラルGCで分析した。
分析方法
キラルGC
方法−steve55
CP chirasil dex CB DF=0.25 25mx0.25mm
膜厚=0.25μm
圧力=25.0psi
流量=3.2ml/分
温度=55℃の等温(80分間)
(S)−(−)−N,N−ジメチル−1−フェネチルアミン=73分
(R)−(+)−N,N−ジメチル−1−フェネチルアミン=71分
【0102】
【表10】

[実施例20]
【0103】
2相系中で第三級アミンのラセミ化
4個の個別の10ml丸底フラスコに(S)−(−)−N,N−ジメチル−1−フェネチルアミン(100mg、0.67ミリモル)、ヨウ化ペンタメチルシクロペンタジエニルイリジウム(III)二量体(7.8mg、0.0067ミリモル)をa)1/1のトルエン/水(3ml)およびb)1/1のトルエン/pH7の緩衝液(3ml)に入れて加えた。水冷却器を取り付けた後の反応容器を90℃に加熱した。サンプルを規則的間隔で採取(約100μl)し、DCM/2MのNaOH(3ml)に入れて反応を消滅させ、抽出し、乾燥(MgSO)させた後、キラルGCで分析した。
分析方法
キラルGC
方法−steve55
CP chirasil dex CB DF=0.25 25mx0.25mm
膜厚=0.25μm
圧力=25.0psi
流量=3.2ml/分
温度=55℃の等温(80分間)
(S)−(−)−N,N−ジメチル−1−フェネチルアミン=73分
(R)−(+)−N,N−ジメチル−1−フェネチルアミン=71分
【0104】
【表11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鏡像異性体富化組成物に脱富化を受けさせる方法であって、炭素−ヘテロ原子結合を含有していて前記炭素がキラル中心でありかつ前記ヘテロ原子が周期律表V族のヘテロ原子である基質の少なくとも1番目の鏡像異性体もしくはジアステレオマーを含んで成る鏡像異性体富化組成物を触媒系および場合により反応促進剤の存在下で反応させることで、炭素−ヘテロ原子結合を有する前記基質の1番目および2番目の鏡像異性体もしくはジアステレオマーを含んで成っていて1番目の鏡像異性体もしくはジアステレオマーに対する2番目の鏡像異性体もしくはジアステレオマーの比率が前記鏡像異性体富化組成物中に存在していた1番目の鏡像異性体もしくはジアステレオマーに対する2番目の鏡像異性体もしくはジアステレオマーの比率よりも高い生成物組成物を得ることを含んで成る方法。
【請求項2】
炭素−ヘテロ原子結合を含有していて前記炭素原子がキラル中心である前記基質が式(1):
【化1】

[式中、
Xは、NHR、NR、(NHRを表し、
は、アニオンを表し、
、Rは、各々独立して、場合により置換されていてもよいヒドロカルビル、過ハロゲン化ヒドロカルビル、場合により置換されていてもよい複素環基または置換基を表し、
は、水素原子、場合により置換されていてもよいヒドロカルビル、過ハロゲン化ヒドロカルビル、場合により置換されていてもよい複素環基または除去可能基を表し、
は、水素原子、場合により置換されていてもよいヒドロカルビル、過ハロゲン化ヒドロカルビル、または場合により置換されていてもよい複素環基を表すか、或は場合により、RとR、RとR、RとRおよびRとRの中の1つ以上が、場合により置換されていてもよい環1個または2個以上を形成するように連結していてもよいが、但しR、R、RおよびRが*がキラル中心であるように選択されることを条件とする]
で表される化合物である請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記触媒系が遷移金属触媒および場合により配位子を含んで成る請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記遷移金属触媒が式M
[式中、
Mは、遷移金属であり、
Xは、ハロゲン化物であり、
Yは、場合により置換されていてもよいヒドロカルビルである中性の錯化基、場合により置換されていてもよい過ハロゲン化ヒドロカルビルである中性の錯化基、または場合により置換されていてもよいシクロペンタジエニルである錯化基であり、そして
n、pおよびrは、整数である]
で表される遷移金属ハロゲン化物錯体である請求項3記載の方法。
【請求項5】
XがIである請求項4記載の方法。
【請求項6】
MがRhまたはIrでありそしてYが場合により置換されていてもよいシクロペンタジエニル基である請求項4または5記載の方法。
【請求項7】
MがIrであり、XがIでありそしてYが場合により置換されていてもよいシクロペンタジエニル基、好適にはペンタメチルシクロペンタジエニル基である請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記遷移金属触媒が式M[式中、MはIrであり、XはIであり、そしてYは場合により置換されていてもよいシクロペンタジエニル基、好適にはペンタメチルシクロペンタジエニル基である]で表される遷移金属ハロゲン化物錯体である請求項6記載の方法。
【請求項9】
反応促進剤を存在させる請求項1から8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記反応促進剤がハロゲン化物塩である請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記ハロゲン化物塩が金属のハロゲン化物である請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記金属のハロゲン化物がカリウムもしくはセシウムのヨウ化物である請求項11記載の方法。
【請求項13】
式(2):
【化2】

[式中、
Xは、NR、NR、(NRを表し、
は、アニオンを表し、
、Rは、各々独立して、場合により置換されていてもよいヒドロカルビル、過ハロゲン化ヒドロカルビル、場合により置換されていてもよい複素環基または置換基を表し、
は、水素原子、場合により置換されていてもよいヒドロカルビル、過ハロゲン化ヒドロカルビル、場合により置換されていてもよい複素環基または除去可能基を表し、
は、水素原子、場合により置換されていてもよいヒドロカルビル、過ハロゲン化ヒドロカルビル、または場合により置換されていてもよい複素環基を表すか、或は場合により、RとR、RとR、RとRおよびRとRの中の1つ以上が場合により置換されていてもよい環1個または2個以上を形成するように連結していてもよい]
で表される化合物を得る請求項1から12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
水素供与体または水素受容体を存在させる請求項1から13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
炭素−ヘテロ原子結合を含有する基質の少なくとも1番目の鏡像異性体もしくはジアステレオマーを含んで成る前記鏡像異性体富化組成物が、キラル分離または化学的もしくは酵素的キラル分割で得られた未反応の鏡像異性体もしくは副生成物である請求項1から14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
式M[式中、Mは遷移金属であり、Xはハロゲン化物であり、Yは、場合により置換されていてもよいヒドロカルビルである中性の錯化基、場合により置換されていてもよい過ハロゲン化ヒドロカルビルである中性の錯化基、または場合により置換されていてもよいシクロペンタジエニルである錯化基であり、そしてn、pおよびrは整数である]で表される遷移金属ハロゲン化物錯体と式(1):
【化3】

[式中、
Xは、NHR、NR、(NHRを表し、
は、アニオンを表し、
、Rは、各々独立して、場合により置換されていてもよいヒドロカルビル、過ハロゲン化ヒドロカルビル、場合により置換されていてもよい複素環基または置換基を表し、
は、水素原子、場合により置換されていてもよいヒドロカルビル、過ハロゲン化ヒドロカルビル、場合により置換されていてもよい複素環基または除去可能基を表し、
は、水素原子、場合により置換されていてもよいヒドロカルビル、過ハロゲン化ヒドロカルビル、または場合により置換されていてもよい複素環基を表すか、或は場合により、RとR、RとR、RとRおよびRとRの中の1つ以上が、場合により置換されていてもよい環1個または2個以上を形成するように連結していてもよいが、但しR、R、RおよびRが*がキラル中心であるように選択されることを条件とする]
で表されるアミン配位子を接触させることで得ることができる組成物。

【公表番号】特表2008−517989(P2008−517989A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−538511(P2007−538511)
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【国際出願番号】PCT/GB2005/004176
【国際公開番号】WO2006/046059
【国際公開日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【出願人】(507130369)エヌピーアイエル・フアーマシユーチカルズ(ユーケイ)リミテツド (2)
【氏名又は名称原語表記】NPIL Pharmaceuticals(UK)Limited
【Fターム(参考)】