説明

触媒

白金合金触媒PtXであって、バルク合金中における白金の原子百分率が5at%〜50at%であり、残部がXであり、前記合金の表面における白金の原子百分率が、10at%〜80at%であり、残部がXであり、ここで、前記合金の表面における白金の原子百分率at%が、前記バルク合金中における白金の原子百分率at%よりも、少なくとも25%超過であるものを開示する。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
本発明は、新規な白金合金触媒PtXであって、この合金の表面における白金の原子百分率%が、このバルクの合金組成物中における白金の原子百分率%よりも超過するものであり、並びに、本発明は、新規な白金合金触媒PtXの触媒としての使用、とりわけ燃料電池、例えば直接メタノール型燃料電池における使用に関する。
【0002】
燃料電池は、電解質で仕切られた2つの電極を備えてなる電気化学電池である。燃料、例えば、水素;メタノール、エタノールなどのアルコール;及び水素化物は、アノードに供給され、また、酸化剤、例えば、酸素又は空気は、カソードに供給される。電気化学反応は、電極で生じ、かつ、燃料の化学エネルギー及び酸化剤は、電気エネルギー及び熱に変換される。電気触媒は、アノードで燃料の電気化学的酸化と、及びカソードで酸素の電気化学的還元を促進するために使用される。
【0003】
燃料酸化用及び酸素還元用の電気触媒は、プラチナ(白金)、又は一以上の他の金属とプラチナ(白金)との合金を典型的には基本とする。白金合金は、高比表面積を有する(比表面積の高い)メタルブラック(支持されていない触媒)として使用することができ、又は、導電性カーボン基材(支持された触媒)上に付着(沈着)させることも可能である。
【0004】
白金は高価な金属であることから、電極触媒における白金の割合を減少しつつ、触媒活性を維持し又は改善することが望ましい。本発明者等は、従来の触媒と同様又は改良された触媒活性を有しつつ、白金含有量を少ないものとした、改良された白金触媒を提供することを模索した。
【0005】
従って、本発明は、白金合金触媒PtXを提供するものであり、この白金合金触媒PtXは、
バルク合金中における白金の原子百分率が、5at%〜50at%であり、残部がXであり、
前記合金の表面における白金の原子百分率が、10at%〜80at%であり、残部がXであり、
ここで、前記合金の表面における白金の原子百分率at%が、前記バルク合金中における白金の原子百分率at%よりも、少なくとも25%超過というものである。
【0006】
好適には、バルク合金中における白金の原子百分率が、5at%〜45at%であり、より好適には5at%〜35at%であり、より好適には10at%〜35at%であり、好ましくは20at%〜35at%である。本発明の一の態様によれば、バルク合金中における白金の原子百分率が、10at%〜34at%である。
【0007】
好適には、合金の表面における白金の原子百分率が、20%〜60%であり、より好適には20%〜45%であり、好ましくは30〜45%である。
【0008】
好適には、その表面における白金の原子百分率%が、バルク合金(即ち、白金表面富化「エンリッチ」)中における白金の原子百分率%よりも、少なくとも25%であり、より好適には少なくとも50%であり、最も好適には少なくとも65%であり、及び好ましくは少なくとも75%、を超過するものである。好適には、白金表面富化は、25%〜500%の範囲であり、より好適には50%〜500%の範囲であり、最も好適には65%〜500%の範囲であり、好ましくは75%〜500%の範囲である。
【0009】
白金表面富化は、下記の数式を使用して計算される。
Pt at%(表面) − Pt at%(バルク)
Pt at%(バルク)
【0010】
本明細書においては、「at%」とは、原子百分率、即ち、PtとXの総原子又は総モル(グラム分子量)に基づいたPtの百分率を意味し、如何なる追加の非金属成分(例えば、炭素)は考慮する必要はない。用語「合金」により、少なくともPtとX金属間のいくつかの密接な混合を意味するが、この密接な混合は合金粒子全体を通じて必ずしも均一である必要はない。
【0011】
バルク合金中における白金の原子百分率は、当業者に知られている標準的な手法、例えば、試料の湿式化学分析温浸(消化)「wet chcmical analysis digestion 」に続いて、誘導結合プラズマ(ICP)の発光分光、によって測定することが可能である。その表面におけるPtの原子百分率は、X線光電子分光法(XPS)又は高感度低エネルギーイオン散乱(HS-LEIS)により測定することが可能である。HS-LEISは、XPSよりも優れた表面感度手法であり、かつ、単に最外表面層を観察するものである。従って、両者は表面におけるPtの原子百分率を測定するために使用することが可能であるが、表面富化百分率は僅かに差が生じるものとなる。
【0012】
Xは、好適には、貴金族金属(白金以外)、即ち、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、オスミウム、金、銀、又は遷移金属からなる群から選択されてなる一以上の金属である。特に好適な金属は、Ru、Pd、Rh、Os、Sn、Bi、Pb、Ir、Mo、Sb、W、Au、Re、又はこれらの酸化物である。より好適には、Xはロジウム、イリジウム、オスミウム、ルテニウム又は錫の一以上のものである。好ましくは、Xがルテニウム、錫、又はルテニウム及び錫である。
【0013】
この合金触媒の白金表面富化により、本発明による触媒は、一般に予期されるものと比較して優れた触媒活性を示し、特に、燃料電池における電極触媒として使用された際に、予想外の顕著な効果を発揮する。
【0014】
本発明による触媒は、金属Xの連続蒸着という一工程、続いて、白金を堆積し、及び、続いてH含有ガスによる焼成により調製されてよい。この焼成工程は、好適には、最大500℃までの温度で行われてよい。
【0015】
本発明による触媒は、支持されていない触媒(即ち、金属ブラック)として、又は支持された触媒(即ち、支持材に分散された)として、燃料電池で使用することが可能であり;好ましくは、本発明による触媒は支持された触媒として使用される。好適には、支持された触媒の総重量に対して、PtX合金の量は5〜90重量%であり、好ましくは20〜80重量%である。好適には、本発明による支持された触媒において、PtX合金は導電性支持材上に分散されてなり、ここで、導電性支持材としては、例えば、オイル炉ブラック、超導電性ブラック、アセチレンブラック、及びこれらの様々な黒鉛化ブラックである。模範的な炭素は、Akzo Nobel Ketjen EC300J、Cabot Vulcan XC72R、Denkaアセチレンブラック等が包含される。本発明による触媒は、好ましくは導電性炭素材に分散されたPtX合金から本質的になるものである。
【0016】
本発明による別の態様は、本発明による触媒を備えてなる電極を提供する。この触媒は、電気的導電性を有する基材に支持されていないか、又は堆積されていてよい。この触媒は、EP0 731 520に開示されているようは、従来技術を使用して基材上に体積させることが可能である。この触媒は、水性及び/又は有機溶媒と、必要に応じて、高分子バインダーと、プロトン導電性高分子を含んでなる、インク中に処方されて良い。このインクは、スプレー、印刷及びドクターブレード法等の様々方法を使用して、電気的導電性を有する基材上に堆積させることが可能である。典型的な基材は、カーボン紙〔例えば、東レ会社(日本)から入手可能なToray(商品名)紙、又は、三菱レーヨン(日本)から入手可能なU105紙,U107紙〕、織炭素布地〔三菱化学(日本)から入手可能な、カーボンクロスMKシリーズ〕、又は不織炭素繊維ウェッブ〔例えば、E−TEK社(米国)から入手可能な不織基材のELATシリーズ;Freudenberg FCCT KG社(ドイツ)から入手可能な、H2315シリーズ;SGL テクノロジーGmbH(独国)から入手可能な、Sigracet(商品名)シリーズ〕に基づく基材が挙げられる。カーボン紙、布、又はウェッブは、層に埋め込まれた、又は大きい平らな表面上に被覆された、または両方を組み合わせた、粒子状材料で典型的には変性される。この粒子材料は、典型的には、カーボンブラックと、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのポリマーの混合物である。好適には、ガス拡散基材は、その厚みが100〜300μmである。好ましくは、電気的触媒層と接触するガス拡散基材の表面にカーボンブラックとPTFEのような粒子材料の層が存在する。
【0017】
或いは、本発明による触媒層に適用される基材は、予め形成されたガス拡散基材であってもよいし、既に、触媒層に適用された、アノード又はカソード、即ち、ガス拡散基材(先に説明したものであってよい)であってもよい。
【0018】
高分子電解質膜(PEM)燃料電池では、電解質は高分子電解質膜である。電気触媒は、高分子電解質膜の一方又は両方の面に堆積させて、触媒化された膜(触媒膜)として形成されてもよい。別の態様によれば、本発明は、高分子電解質膜上に堆積した本発明による触媒を備えてなる触媒化された膜を提供する。この触媒は、公知の手法を用いて、その膜の上に堆積しうることができる。この触媒は、インク中に処方され、及びその膜に直接堆積され、又は転写空白(decal blanck)部に堆積され、続いて膜に転写するものであってもよい。一以上の追加の触媒層(例えば、Pt,PtRu)を、この膜の上に本発明による触媒層に連続的に付与し、二以上の触媒層を有する膜で被覆された触媒を形成してもよい。この一以上の追加の触媒層は、本発明による触媒層であてもよいし、或いは、例えば、スクリーン印刷のような従来の手法で付与される、通常の触媒層であってもよい。
【0019】
或いは、本発明による触媒層が適用される膜は、予め形成された膜被覆された触媒であってもよい。また、多層構造として得られたものであってよいが、本発明による触媒層はこの膜の上における最終層であてもよく、従って、ガス拡散層に近似する近いものであってよい。
【0020】
この膜は、燃料電池で使用するのに適した何れの膜であってよく、例えば、この膜は、過フッ素化スルホン酸材料、例えばNafion(商品名:DuPont社)、Flemion(商品名:Asahi Glass社)、およびAciplex(商品名:Asahi Kasei社)を基本(基材)とし、これらの膜は、変性せずに使用してもよく、或いは、変性して、例えば添加剤を包含して、高温度性能を改善させてもよい。或いは、この膜は、例えば、Polyfuel、JSR、FuMaTech等の、スルホン化炭化水素膜を基本(基材)とすることができる。この膜は、プロトン伝導性材料と、機械的強度のような特性を与える他の材料を包含する、複合膜であってよい。例えば、この膜は、欧州特許第0 875 524号明細書に記載されている、プロトン伝導性膜とシリカ繊維のマトリックスを含んでなるものであってよく、又はこの膜は、拡張(膨張)させたPTFE基材を含んでなるものであってよい。或いは、この膜は、ホスホン酸でドープしたポリベンゾイミダゾールを基本(基材)とし、かつ、PEMEASのような開発者による膜、例えば、120℃〜180℃の温度範囲で操作しうるCeltec(商品名)−P、及び、他の新しく開発さえた膜、例えばCeltec(商品名)−V膜を包含する。本発明による触媒層はまた、例えば、Solvay社から入手可能なFuMaTechのような、例えばOH導電性膜、プロトン以外の電荷キャリアーを使用する膜と共に使用することにも適している。
【0021】
本発明における別の態様によれば、本発明による触媒上に適用される基材は、移動基材(transfer substrate)である。従って、本発明による別の態様によれば、本発明による触媒を備えた移動基材を提供される。この移動基材は当業者に知られた何れの好適な移動基材であってよいが、しかし、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又はポリプロピレン(特に、二軸方向−配向されたポリプロピレン、BOPP)又はポリウレタン被覆された紙のようなポリマー被覆された紙、が好ましい。この移動基材は、シリコン放出紙又はアルミフォイルのような金属箔であってもよい。本発明による触媒は、ガス拡散基材、ガス拡散電極、膜、又は当業者に知られた技術により触媒被覆された膜に転換されてもよい。
【0022】
PEM燃料電池において、ポリマー電極膜は、2つの触媒層の間に挟持されてなり、かつ、各触媒層は電気的伝導性基材と接触されてなる。この5層アッセンブリは、膜電極アッセンブリとして知られている。本発明による更なる態様は、本発明による触媒層を備えてなる膜電極アッセンブリ(MEA)を提供する。このMEAは、下記の方法を包含する様々な方法で形成されてよいが、これらには限定されない。
【0023】
(i)イオン伝導性膜を2つのガス拡散電極(一つのアノードと、一つのカソード)の間に挟んでなるものであり、少なくとも一つの電極は本発明によるものであり;
(ii)触媒層により片側のみが被覆された触媒被覆された膜を、(i)ガス拡散基材とガス拡散電極の間に挟んでなるものであり、このガス拡散基材が触媒層で被覆した膜側に接触してなり、又は(ii)2つのガス拡散電極の間に挟んでなるものであり、ここで、少なくとも一つの触媒層及びガス拡散電極が本発明によるものであり;
(iii)触媒層により両側が被覆された触媒被覆された膜を、(i)2つのガス拡散基材、(ii)ガス拡散基材とガス拡散電極、又は(iii)2つのガス拡散電極、の間に挟んでなるものであり、ここで、少なくとも一つの触媒層及びガス拡散電極が本発明によるものである。
【0024】
このMEAは、MEAの末端領域を封止及び/又は補強する成分、例えば、WO2005/020356に開示された実施例をさらに備えてもよい。
【0025】
このMEAは、燃料電池スタックとして、例えば、プロトン交換膜型燃料電池(PEMFC)、ダイレクトメタノール型燃料電池(DMFC)、高温燃料電池(100℃〜250℃の範囲での温度で使用)、又はアルカリ型燃料電池として使用されてよい。従って、本発明による更なる態様は、本発明によるMEAを備えてなる燃料電池を提供する。このMEAは、通常の方法を用いて燃料電池に包含されてなる。
【0026】
或いは、本発明による電極は、燃料電池において直接に使用されてよく、例えば、支持するマトリックス、例えば炭化ケイ素中において、電解質が液体ホスホン酸である、ホスホン酸型燃料電池において使用されてよい。従って、本発明による別の態様は、燃料電池、特に、本発明による電極を備えた、ホスホン酸型燃料電池、を提供する。そのような燃料電池は、150℃〜210℃の範囲において作動してよい。
【0027】
本発明は、本発明による燃料電池を包含するポータブルディバイス「装置」(例えば、ポータブル電源供給源、ラップトップ型コンピュータ又はモバイル電話)を提供する。
【0028】
下記図により、本発明はその内容がさらに開示され、例示されるが、本発明の内容が限定して解釈されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、80℃で、実施例と比較例の電気触媒を包含する膜電極アッセンブリのアノード半分電池性能を示している。
【図2】図2は、80℃で、実施例と比較例の電気触媒を包含する膜電極アッセンブリのアノード半分電池性能を示している。
【図3】図3は、80℃で、実施例と比較例の電気触媒を包含する膜電極アッセンブリのアノード半分電池性能を示している。
【実施例】
【0030】
比較例1
市販されているPtRu触媒(HiSPEC(商品名)12100:ジョンソン・マッセイ社)を得た。
定量(バルク粒子の重量%)50%Pt、25%Ru(バルクで50at%Pt)
Ptの表面原子百分率=61;39%(XPS);46%(HS−LEIS)
バルクに対する表面Pt富化=22%(XPS);表面富化無し(HS−LEIS)。
【0031】
実施例1
Silversonミキサーを使用して、Ketjen EC300J(1g)を水中で分散させた。重炭酸ナトリウム(8.41g)を添加し、及び炭素スラリーを攪拌し、沸騰まで加熱した。30分沸騰させた後、Ru及びPt塩溶液を添加し、沸騰をさらに1.5時間継続した。[HPtClとしてPt1g:RuCl4.94gとして25%Pt、Ru2g、40.47%Ru]。この触媒をろ過により回収し、フィルタ床で洗浄した。この物質を105℃で一晩乾燥した。乾燥した物質の試料を5%H/Nで焼成した。
収量(乾燥、非還元)=5.06g
焼成条件:500℃、30分
焼成後2gから収量、1.57g
定量(バルク粒子の重量%)25.7%Pt、44.8%Ru(バルクで23at%Pt)
Ptの表面原子百分率=36.9%(XPS)
バルクに対する表面Pt富化=60%(XPS)
【0032】
実施例2〜7用の一般的な方法
Silversonミキサーを使用して、Ketjen EC300J(1g)を水(150ml)中で分散させた。このスラリーを、pH調整ユニットに接続された、温度プローブ及びpHプローブと、二つの供給内管を備えたビーカーに移した(必要であれば、50mlの追加の水)。Ru塩を水に添加し、体積を100ml迄とした。攪拌したカーボンスラリー中に、この溶液を10ml/分でNaOHと一緒に、5.0〜6.0の間(初期pH)で可能な限り近似したpHに維持できる可変レートにおいてポンプで注入した。この添加を完全に行った時、その温度は、必要に応じて最高100℃に上昇し、このスラリーを攪拌し、Pt塩を添加した。NaOHを添加し、5.0〜7.0の間(最終pH)にpHを維持した。このスラリーを攪拌した。もう一度、この反応を完全にし、この触媒をろ過により回収し、フィルタ床で洗浄した。この物質を105℃で一晩乾燥した。乾燥した物質の試料を5%H/Nで焼成した。
【0033】
実施例2
RuClとしてRu2g:4.94g、40.47%Ru
Pt硝酸塩としてPt1g:6.09g、16.41%Pt
NaOH:0.5M
pH(初期)5.0;pH(最終)5.0
収量(乾燥、非還元)=5.04g
焼成条件:200℃、1時間
焼成後、試料2gから収量=1.55g
定量(バルク粒子の重量%)21.5%Pt、44.7%Ru(バルクで20at%Pt)
Ptの表面原子百分率=38.8%(XPS)
バルクに対する表面Pt富化=94%(XPS)
【0034】
実施例3
ニトロシル硝酸塩としてRu2g:15.37g、13.01%Ru
Pt硝酸塩としてPt1g:6.09g、16.41%Pt
NaOH:1.0M
pH(初期)6.0;pH(最終)7.0
収量(乾燥、非還元)=5.48g
焼成条件:200℃、1時間
焼成後、試料2gから収量=1.4g
定量(バルク粒子の重量%)22.7%Pt、44.4%Ru(バルクで21at%Pt)
Ptの表面原子百分率=36.3%(XPS)
バルクに対する表面Pt富化=73%(XPS)
【0035】
実施例4
RuClとしてRu2g:4.94g、40.47%Ru
PtClとしてPt1g:46.56%Pt
NaOH:0.5M(第1回添加)及び1.0M(第2回添加)
pH(初期)6.0;pH(最終)7.0
収量(乾燥、非還元)=5.10g
焼成条件:200℃、1時間
焼成後、試料2gから収量=1.64g
定量(バルク粒子の重量%)20.5%Pt、42.9%Ru(バルクで21at%Pt)
Ptの表面原子百分率=39.6%(XPS);37%(HS−LEIS)
バルクに対する表面Pt富化=89%(XPS);76%(HS−LEIS)
【0036】
実施例5
RuClとしてRu2g:4.94g、40.47%Ru
Pt硝酸塩としてPt1g:6.09g、16.41%Pt
NaOH:0.5M
pH(初期)5.0;pH(最終)5.0
収量(乾燥、非還元)=5.04g
焼成条件:500℃、30分時間
焼成後、試料1.5gから収量=1.11g
定量(バルク粒子の重量%)21.5%Pt、44.7%Ru(バルクで20at%Pt)
Ptの表面原子百分率=38.8%(XPS)
バルクに対する表面Pt富化=94%(XPS)
【0037】
実施例6
RuClとしてRu2.47g:6.19g、39.9%Ru
PtClとしてPt0.53g:1.13g 46.71%Pt
NaOH:0.5M(第1回添加)及び1.0M(第2回添加)
pH(初期)6.0;pH(最終)7.0
収量(乾燥、非還元)=4.98g
焼成条件:200℃、30分時間
焼成後、試料2gから収量=1.55g
定量(バルク粒子の重量%)12.7%Pt、54.0%Ru(バルクで10at%Pt)
Ptの表面原子百分率=19%(HS−LEIS)
バルクに対する表面Pt富化=90%(HS−LEIS)
【0038】
実施例7
RuClとしてRu1.64g:4.11g、39.9%Ru
PtClとしてPt1.36g:2.92g 46.55%Pt
NaOH:0.5M(第1回添加)及び1.0M(第2回添加)
pH(初期)6.0;pH(最終)7.0
収量(乾燥、非還元)=5.07g
焼成条件:200℃、30分時間
焼成後、2g試料から収量=1.55g
定量(バルク粒子の重量%)29.7%Pt、34.3%Ru(バルクで30at%Pt)
Ptの表面原子百分率=50%(HS−LEIS)
バルクに対する表面Pt富化=67%(HS−LEIS)
【0039】
実施例8:アノード分極データ
比較例1と実施例1〜7で調製した触媒を使用して、膜電極アッセンブリを調製した。この触媒を欧州特許0 731 520号に開示された手法を用いてインクとして処方し、これを使用して、金属全充填量(Pt+Ru)が1.5mg/cmとしたアノード電気触媒層を調製した。このカソード電気触媒層は標準Ptブラック電気触媒を含有した。この膜電極アッセンブリをダイレクトメタノールテスト電池において試験した。図1から図3は、80℃で、実施例1〜7と比較例1の電気触媒を包含する膜電極アッセンブリのアノード半分電池性能を示している。本発明による実施例を包含するMEAsの性能は、比較例1と匹敵するかそれ以上であり、特に重要なのは、本発明による実施例は比較例と比較して、実質的に白金(Pt)添加量が減少しているにも関わらず、性能が好ましいということである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白金合金触媒PtXであって、
バルク合金中における白金の原子百分率が、5at%〜50at%であり、残部がXであり、
前記合金の表面における白金の原子百分率が、10at%〜80at%であり、残部がXであり、
ここで、前記合金の表面における白金の原子百分率at%が、前記バルク合金中における白金の原子百分率at%よりも、少なくとも25%超過である、白金合金触媒PtX。
【請求項2】
Xが、貴金属、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、オスミウム、金、銀、及び遷移金属からなる群から選択されてなる、一種以上の金属である、請求項1に記載の白金合金触媒。
【請求項3】
Xが、ルテニウム、又はスズ、或いはルテニウムとスズである、請求項1に記載の白金合金触媒。
【請求項4】
前記触媒が、分散された支持材に支持されず又は支持されてなる、請求項1〜3の何れか一項に記載の白金合金触媒。
【請求項5】
前記触媒が、分散された支持材に支持されてなる、請求項1〜3の何れか一項に記載の白金合金触媒。
【請求項6】
前記触媒が、導電性炭素支持材に分散されたPtX合金から本質的になるものである、請求項1〜5の何れか一項に記載の白金合金触媒。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載の白金合金触媒を備えてなる、電極。
【請求項8】
請求項1〜6の何れか一項に記載の白金合金触媒を備えてなる、触媒化された膜。
【請求項9】
請求項1〜6の何れか一項に記載の白金合金触媒を備えてなる、転送基板。
【請求項10】
請求項1〜6の何れか一項に記載の白金合金触媒を備えてなる、膜電極アセンブリ。
【請求項11】
請求項10に記載の膜電極アセンブリを備えてなる、燃料電池。
【請求項12】
請求項7に記載の電極を備えてなる、燃料電池。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の燃料電池を備えてなる、ポータブルデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−534130(P2010−534130A)
【公表日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−517491(P2010−517491)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【国際出願番号】PCT/GB2008/050611
【国際公開番号】WO2009/013540
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(590004718)ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー (152)
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】