説明

触覚センサユニット

【課題】小型の触覚センサユニット1を提供する
【解決手段】触覚センサユニット1は、変形を検出するピエゾ抵抗層11Wが形成されたカンチレバー12を有する半導体基板11とカンチレバー12を内部に埋め込んだ弾性体13とピエゾ抵抗層11Wと接続されたバンプ14とを有するセンサチップ10と、接続パッド22と接続された配線層21とを有する配線板20と、を具備し、バンプ14と接続パッド22とを介して、センサチップ10が配線板20にフリップチップ実装されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物との接触状態を摩擦力によるせん断応力から計測する触覚センサユニットに関し、特にカンチレバーが封入された弾性体の変形にもとづき接触状態を計測する触覚センサユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットハンドによって物体を確実に把持するためには、把持力だけでなく、物体との接触状態を計測することが必要である。特に、把持した物体が落下するのを防ぐためには、接触面に生じる摩擦力によるせん断応力を計測することが必要である。
【0003】
特開2007−218906公報には、せん断応力を検知するセンサチップが開示されている。なお、開示されているセンサチップは、変形方向が異なる複数のカンチレバーを有するが、以下では1個のカンチレバーを有するセンサチップ110を例に説明する。また、特開2007−218906公報には、センサチップしか開示されていないが、図1に示すように、センサチップ110が配線板120に実装された構造体を触覚センサユニット101として説明する。
【0004】
なお図は、いずれも模式図であり、説明を容易にするために部分的に拡大していたり、全ての構成要素を表示していなかったり、内部にあり外部からは不可視の構成要素を図示していたりする。またZ軸方向の寸法を高さ、または厚さということがある。例えば、図1において弾性体113の中に埋め込まれたカンチレバー112等は外部からは不可視であるが表示している。
【0005】
センサチップ110は、弾性体113の中に埋め込まれたカンチレバー112を有する半導体基板111からなる。カンチレバー112には変形に応じて電気抵抗が変化するピエゾ抵抗層112Yが形成されている。カンチレバー112はX軸方向に変形するが、Y軸方向およびZ軸方向には変形しにくいため、ピエゾ抵抗層112Yは弾性体113のX軸方向の変形により抵抗が変化する。
【0006】
ピエゾ抵抗層112Yの抵抗変化を外部の測定器(不図示)で検出するためには、センサチップ110を配線板120に実装し、センサユニット101とする必要がある。このため、センサチップ110のピエゾ抵抗層112Yと接続された接続パッド114と、配線板120の接続パッド122とが、ワイヤボンディング法によりワイヤ131により接続されている。ここでワイヤ131の高さ(Z軸方向寸法)は、300〜500μmである。さらに、ワイヤボンディングのためには、接続パッド114および接続パッド122は100μm角程度の面積が必要である。
【0007】
このため、触覚センサユニット101では、たとえカンチレバー構造を微小化したとしても、厚さ(高さ寸法)はワイヤ131の高さ以下にはできない。また触覚センサユニット101の面積(縦寸法×横寸法)も大きい。すなわち、触覚センサユニット101は小型化に限界があった。特に、カンチレバーを複数個有するセンサチップ110を実装した触覚センサユニットは、1ミリメートル以上の三次元寸法となるため、微小部品の組み立てに使用するロボットハンドに用いることは容易ではないことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−218906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、小型の触覚センサユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一形態の触覚センサユニットは、変形を検出するピエゾ抵抗層が形成されたカンチレバーを有する半導体基板と、前記カンチレバーを内部に埋め込んだ弾性体と、前記ピエゾ抵抗層と接続された接続用電極と、を有するセンサチップと接続パッドと、前記接続パッドと接続された配線層と、を有する配線板と、を具備し、前記接続用電極と前記接続パッドとを介して、前記センサチップが前記配線板にフリップチップ実装されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、小型の触覚センサユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】公知のセンサチップを説明するための斜視透視図である。
【図2】第1実施形態の触覚センサユニットを説明するための斜視透視図である。
【図3】第1実施形態の触覚センサユニットを説明するための分解図である。
【図4】第1実施形態の触覚センサユニットのカンチレバー説明するための断面図である。
【図5】第1実施形態の触覚センサユニットを説明するための上面図である。
【図6】第1実施形態の触覚センサユニットを説明するための断面図である。
【図7】第2実施形態の触覚センサユニットを説明するための断面図である。
【図8】第3実施形態の触覚センサユニットを説明するための断面図である。
【図9】第4実施形態の触覚センサユニットのセンサチップを説明するための斜視透視図である。
【図10】第5実施形態の触覚センサユニットを説明するための分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1実施形態>
以下、図2〜図6を用いて、本発明の第1実施形態の触覚センサユニット(以下、「センサユニット」ともいう)1について説明する。
【0014】
図2および図3に示すように、本実施形態のセンサユニット1では、半導体基板11と弾性体13とを有するセンサチップ10の半導体基板11は、配線板20にフリップチップ実装されている。すなわち、センサチップ10の接続用電極であるバンプ14と、配線板20の接続パッド22とが、直接接合されている。すなわち、フリップチップ実装では、ワイヤボンディング実装と異なり、ワイヤ等の接続線は使用されていない。
【0015】
センサユニット1の半導体基板11は、X軸方向の変形を検出可能な2個のカンチレバー12を有する。すなわち、カンチレバー12は半導体基板11の主面に対して略垂直に立ち上げられた状態で弾性体13の中に封入されている。
【0016】
そして、図3に示すように、配線板20には弾性体13を挿通可能な貫通部23が形成されており、配線板20の板厚T20よりも弾性体13の膜厚T13が厚い。また、貫通部23のX軸方向寸法L20およびY軸方向寸法W20は、弾性体13のX軸方向寸法L13およびY軸方向寸法W13よりも大きい。このため、図2に示すように、貫通部23を挿通した弾性体13の表面が、配線板20の表面から突出している。
【0017】
センサユニット1では、弾性体13の表面と対象物との接触による摩擦力が、弾性体13内にせん断応力を発生し、このせん断応力がカンチレバー12を変形させる。そしてカンチレバー12の変形を検出することで、せん断応力を検出する。
【0018】
図4に示すように、半導体基板11は、シリコン基板11Z(厚さ300μm)上に酸化シリコン層11Y(厚さ400nm)とシリコン層11X(厚さ290nm)とを有するSOI(Silicon on Insulator)ウエハから作製されている。なお、図4は模式図であるため、例えばシリコン基板11Zの厚さは、他の層に比べて薄く表示している。
【0019】
カンチレバー12は、感応部12Xと、ヒンジ部12Yと、固定部12Zと、から構成されている。カンチレバー12は、例えば全体の長さ寸法が450μm、全体の幅寸法が150μmであり、感応部12Xにおける幅寸法が110μm、ヒンジ部12Yの長さ寸法が150μmに形成されている。
【0020】
そして、ヒンジ部12Yの厚さは感応部12Xの幅の100分の1未満であり、1μm以下である。このため、他の方向と比較して、厚み方向に顕著に変形する。厚さが1μm以下と極薄く作成されたヒンジ部12Yは弾性変形する領域が広く、破損することなく大きく変形することができる。すなわちカンチレバー12は、シリコン基板11Zではなく膜厚が薄いシリコン層11Xを基体としているためにX方向の外力により容易に変形する。
【0021】
すなわち、カンチレバー12にはX方向の変形を検出するピエゾ抵抗層11Wが形成されており、固定部12Zおよび感応部12Xには、ピエゾ抵抗層14Wよりも抵抗の低い導電膜14Cが形成されている。
【0022】
このため、ヒンジ部12Yのピエゾ抵抗層11Wの抵抗変化が、導電膜14Cの延設部に配設した接続用電極であるバンプ14を介して検出可能である。すなわちバンプ14は配線板20の接続パッド22と接続され、接続パッド22は配線層21と接続されており、配線層21の延設部に測定器(不図示)を接続することで、ピエゾ抵抗層11Wの抵抗変化が測定される。
【0023】
ピエゾ抵抗層11Wの電気抵抗は、ヒンジ部12Yの変形量に応じて変化する。変形量と抵抗値との関係は予め測定されて、測定器に相関性データとして入力保持されている。変形量は、外力作用により弾性体13に生じるせん断応力τにより弾性体13に生じたせん断歪みγにもとづく。このため、ピエゾ抵抗層11Wの抵抗変化を検出することで、せん断応力τを検出することができる。
【0024】
配線板20は、例えばポリイミドを基体とする厚さ(Z方向寸法)30μmのフレキシブル配線板であり、配線層21の長さ、言い換えれば、配線板20のY方向寸法は、例えば、ロボットハンドの長さ等の仕様に応じて決定される。
【0025】
なお、図4においてはピエゾ抵抗層11Wに接続パッド14Pを配設し、接続パッド14Pの上に凸形状のバンプ14を配設した例を示しているが、接続パッド14Pは無くともよいし、接続パッド14Pの膜厚が厚い場合には接続パッド14Pを接続用電極として用いてもよい。
【0026】
図5に示すように、センサユニット1ではセンサチップ10が配線板20にフリップチップ実装されているために、接続のために必要な面積、すなわち配線板20の接続パッド22の大きさは50μm角程度であり、ワイヤボンディング法を用いた接合に必要な大きさよりも、小さい。このため、センサユニット1は、縦横(XY)方向のサイズが小さい。
【0027】
さらに図3および図6(図5のVI−VI線/模式断面図)に示すように、センサユニット1では、厚さ(Z)方向の大きさは、センサチップ10の厚さ(T13+T11)である。すなわち、配線板20の厚さT20はセンサユニット1の厚さに影響を及ぼさない。さらに、フリップチップ実装を用いているため、ワイヤの高さの影響も受けない。
【0028】
センサユニット1は、ワイヤボンディング実装ではないためワイヤ131の高さによる制限がなく、所定の厚さの半導体基板11を用いた場合には、カンチレバーの寸法、すなわち弾性体13の厚さT13でセンサユニット1の厚さが決まる。例えば半導体基板11の厚さT11が300μmの場合に、弾性体13の厚さT13を100μmにすれば、センサユニット1は厚さ400μmにまで薄くできる。弾性体の厚さT13を100μmにするためには、カンチレバー12の立ち上げ高さを80μm程度にすればよい。
【0029】
なお、半導体基板11の厚さT11は、エッチング等により50μm程度まで薄く加工することが可能であり、センサユニット1は、高さを、さらに小さくすることもできる。
【0030】
以上の説明のように、センサユニット1は、小型である。このため精密部品の組み立て等に使われる微小なロボットハンドへの搭載は、従来の触覚センサユニットでは不可能であったが、センサユニット1では可能である。
【0031】
さらに図2に示すように、配線板20の貫通部23に挿通された弾性体13の最大変形量は、貫通部23との隙間の大きさ、例えばX方向の変形に対しては、(L20−L13)であり、Y方向の変形に対しては、(W20−W13)であり、これより大きく変形することはない。すなわち、貫通部23は弾性体13の過度の変形を防止する安全機能を有している。
【0032】
このためセンサユニット1は想定外の強い外力が加わっても、弾性体13が過度に変形することがないために、弾性体13等が破損するおそれがない。
【0033】
なお、隙間の大きさは仕様に応じて設計されるが、貫通部23の厚さ(Z軸方向)方向で変化していてもよい。例えば、隙間の大きさを、弾性体13の変形状態と同じように、下面側(半導体基板11側)は小さく、上面側は大きくすることにより、弾性体13が大きく変形しても、面状態で貫通部23と接触するため破損しにくい。
【0034】
次に、センサユニット1の製造方法について説明する。
最初に、所定のSOIウエハ(シリコン層11Xの厚さ290nm)の表面の自然酸化膜を除去した後に、n型不純物試薬が表面に塗布される。赤外線ランプ加熱装置または熱酸化炉を用いて熱拡散することで、ピエゾ抵抗層11Wが形成される。100nmのピエゾ抵抗層11Wのシート抵抗は例えば、200Ω/sqである。
【0035】
次に、ピエゾ抵抗層11Wの上に、導電膜14Cとして、Au下地膜(50nm)/Ni磁性体膜(150nm)が蒸着法またはスパッタ法等により成膜される。導電膜14Cとしては、例えば、Cr/Ni膜、Ti/Fe膜等であってもよい。
【0036】
次に、導電膜14CおよびSi層11Xが、カンチレバー12形状にパターニング後にエッチングされる。なお、半導体基板11は少なくとも1個のカンチレバーを有していればよい。さらに、カンチレバー12の固定部12Zおよびヒンジ部12YからNi膜が除去され、さらに、ヒンジ部12YからAu膜が除去される。
【0037】
次に、固定部12ZのAu層上に接続パッド14Pが形成され、接続パッド14Pの上に接続用電極であるバンプ14が形成される。バンプ14は、確実にフリップチップ実装するための凸状電極であり、例えば高さ50μmの金バンプである。
【0038】
そして、カンチレバー12の直下を含む所定範囲のSi基板11ZがDeep−RIEによってエッチングされ、さらにSiO層11YがHF蒸気によって除去される。
【0039】
次に、カンチレバー12の感応部12XのNi磁性体膜に外部から基板面に垂直方向の磁界を印加することで、ヒンジ部12Yが略直角に折れ曲がり、感応部12Xが半導体基板11の主面に対して直立した状態となる。磁界を印加した状態で、カンチレバー12の表面に姿勢保持および強度補強部材として例えばパリレン層(不図示)がCVD法により成膜される。
【0040】
そして、カンチレバー12を内部に含む所定の形状(XYZ寸法)の容器内に、例えばPDMS(Polydimethylsiloxane)が流し込まれ、硬化処理が行われることで、カンチレバー12を内部に埋め込んだ弾性体13が作成される。弾性体13としては各種の樹脂材料を用いることができるが、シリコーン系樹脂が好ましい。なお弾性体13は透明である必要はない。
【0041】
ここで、弾性体13の厚さT12は、配線板20の厚さT20よりも、例えば50〜200μm厚くなるように設定される。
【0042】
センサチップ10の製造においては、最初にSOIウエハを個片化して1個ずつ製造することもできるし、ウエハレベルで多数のセンサチップ10を一括製造し、切断して個々のセンサチップ10を得ることもできる
【0043】
配線板20は、フレキシブル銅張積層板の銅膜をパターニングすることにより、接続パッド22と配線層21とが形成される。この場合には、配線層21の一端部が接続パッド22である。
【0044】
さらに配線板20は、弾性体13を挿通するための貫通部23がエッチング、サンドブラスト、または機械的加工法等により形成される。貫通部23の大きさは弾性体13の大きさをもとに設定される。
【0045】
そして、配線板20の貫通部23にセンサチップ10が挿通された状態で、例えば超音波接合により、フリップチップ実装される。実装後に配線板20とセンサチップ10の間にアンダーフィル材を充填して接合信頼性を向上してもよい。
【0046】
以上の説明のように、小型の触覚センサユニット1は、フリップチップ実装を用いているために、製造が容易であり、生産性が高い。
【0047】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態の触覚センサユニット1Aについて説明する。触覚センサユニット1Aは触覚センサユニット1と類似しているため同じ構成要素には同じ符号を付し説明は省略する。
【0048】
図7に示すように触覚センサユニット1Aのセンサチップ10Aには、半導体基板11Aの第1の主面16と第2の主面17とを貫通する貫通配線部15が形成されている。ここで、第1の主面16は弾性体13が形成された面であり、第2の主面17は第1の主面16と対向する面である。
【0049】
そして、ピエゾ抵抗層11Wが貫通配線部15を介して第2の主面17に形成された接続用電極であるバンプ14Aと接続されている。
【0050】
そして、バンプ14Aと接続パッド22Aとを介して、センサチップ10Aが配線板20Aに実装されている。
【0051】
貫通配線部15の作製では、最初に、例えば、異方性エッチングまたはサンドブラスト等の公知の手法を用いて貫通孔が形成される。なお、貫通孔はテーパー形状であってもよい。その後、貫通孔表面を絶縁膜(不図示)で被覆した後、例えば、めっき法による金配線または導電性ペーストの充填により貫通孔を導体配線とする。
【0052】
本実施形態の触覚センサユニット1Aは、触覚センサユニット1と同様の効果を有し、さらにカンチレバー形成面(第1の主面16)とは反対の第2の主面17に、接続用電極であるバンプ14Aを形成するため、実施形態1よりも大きな接続用電極を用いてもセンサ寸法が大きくなることがない。
【0053】
ただし、触覚センサユニット1Aでは高さ寸法(Z軸寸法)が、センサチップ10Aの厚さ(T13+T11)と、配線板20Aの厚さT20Aと、接合部(バンプ14A/接続パッド22A)の厚さT14との合計となるため、センサチップ10よりも厚くなる。しかし、接合部の厚さT14は50μm程度であり、ワイヤ配線に必要な厚さと比べると小さい。このため、触覚センサユニット1Aはワイヤ配線を有する従来の触覚センサユニットよりも小型である。
【0054】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態の触覚センサユニット1Bについて説明する。触覚センサユニット1Bは触覚センサユニット1と類似しているため同じ構成要素には同じ符号を付し説明は省略する。
【0055】
図8に示すように、触覚センサユニット1Bは、カンチレバー12を内部に埋め込んだ第1の弾性体13を覆う第2の弾性体30を有する。触覚センサユニット1Bでは、表面をさらに第2の弾性体により封入することにより、信頼性の向上に加えて、センサ特性の最適化を図ることができる。
【0056】
第2の弾性体30は、触覚センサユニット1Bを、センサユニットの底面を除いて封入している。第2の弾性体30により全体を封止することにより、センサチップと基板の配線部分の外部との電気的絶縁ができる。さらに、センサチップの接合の物理的強度を高めることができ、使用時のセンサチップ脱落を防ぎ、信頼性を向上させることができる。
【0057】
ここで、例えば、第2の弾性体30には、第1の弾性体13と異なる材料、特に、第1の弾性体13よりも弾性率の大きい材料、言い換えれば硬い材料を用いることができる。例えば、第1の弾性体13として厚さを300μmのPDMS(製品名:SIM-260,硬度(デュロメータタイプA:60))を用い、第2の弾性体30として厚さを100μmシリコーンゴム(製品名:KE-1204,硬度(デュロメータタイプA:70))を用いる。
【0058】
触覚センサユニット1Bに外力が加わった場合、カンチレバー12の変形量は、第2の弾性体30により抑制されるために、触覚センサユニット1Bよりも小さい。すなわち、触覚センサユニット1Bは触覚センサユニット1よりも、より大きな外力まで測定可能である。
【0059】
逆に、第2の弾性体30に第1の弾性体13よりも弾性率の小さい材料、言い換えれば低硬度材料を用いることで、より感度を高くしてもよい。すなわち、第2の弾性体30を変えることにより、同じ寸法設計のセンサチップを用いても外力に対する感度(弾性体変形量)が異なるため、計測できる外力の範囲が異なる触覚センサユニットが作製できるため、触覚センサユニットの使用用途を広げることができる。
【0060】
なお、触覚センサユニット1Bの大きさは、触覚センサユニット1よりも第2の弾性体30の分だけ大きいが、従来の触覚センサユニットと比べると小型である。より小型化するために、第2の弾性体30の厚さを、100μm未満としてもよい。
【0061】
さらに、第2の弾性体を金属膜等の導電弾性体で構成することにより、静電気による吸着を防止することができる。すなわち、極めて微細な部品を取り扱う場合、絶縁体である第1の弾性体13が帯電すると、ハンドリングが困難になる。しかし、導電体を表面に配設した触覚センサユニット1Bでは帯電しにくいため微細な部品の取り扱いが容易である。
【0062】
第2の弾性体として導電体を用いた場合には、さらに第2の弾性体の上を含むセンサユニット全体を非導電性の第3の弾性体で封止してもよい。
【0063】
以上の説明のように、非導電性の第2の弾性体30によりセンサユニット全体を封止することにより信頼性を向上させることができるが、第2の弾性体30により少なくとも第1の弾性体13の上面を覆うことで計測できる外力の範囲が異なる触覚センサユニットが作製できる。
【0064】
<変形例>
次に本発明の変形例の触覚センサユニット1C、1Dについて説明する。
図9に示すように触覚センサユニット1Cのセンサチップ10Cは、変形方向が互いに直交する3個のカンチレバー12A、12B、12Cを有する半導体基板11Cと、3個のカンチレバー12A、12B、12Cを内部に埋め込んだ弾性体13Cと、を具備する。すなわち、カンチレバー12AはX軸方向を変形方向とし、カンチレバー12BはY軸方向を変形方向とし、カンチレバー12CはZ軸方向を変形方向としている。
【0065】
このため、カンチレバー12Aとカンチレバー12Bとは弾性体13の表面沿いの方向に生じる力を検出するセンサとして機能し、カンチレバー12Cは、弾性体13のZ軸方向の力、すなわち圧力を検出するセンサとして機能する。
【0066】
なお、触覚センサユニット1Cでは、製造時に、カンチレバー12Cの磁性体膜を除去しておくことで、磁界印加時にカンチレバー12Cが直立した状態となることを防止することができる。
【0067】
触覚センサユニット1Cは、触覚センサユニット1等が有する効果を有し、さらに3方向の外力を計測することができる。
【0068】
図10に示すように触覚センサユニット1Dは、それぞれの変形方向が互いに直交する3個のカンチレバー12A、12B、13Cからなるカンチレバー群を6個有する半導体基板11Dと、それぞれがカンチレバー群を内部に埋め込んだ6個の弾性体13D1〜13D6と、を有するセンサチップ10Dと、貫通部23D1〜23D6が形成され、角部が丸められた配線板20Dと、を具備する。
【0069】
触覚センサユニット1Dは、触覚センサユニット1等が有する効果を有し、さらに広い面積にかかる力を1つのユニットで検出可能である。さらに角が丸い配線板20Dを有する触覚センサユニット1Dは、先端部のサイズを縮小することができる。
【0070】
本発明は、上述した実施形態等に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、実施形態等の組み合わせ、種々の変更、改変等ができる。
【符号の説明】
【0071】
1、1A〜1D…触覚センサユニット、10、10A、10C、10D…センサチップ、11、11A、11C、11D…半導体基板、11W…ピエゾ抵抗層、11X…シリコン層、11Y…酸化シリコン層、11Z…シリコン基板、12、12A〜12C…カンチレバー、12X…感応部、12Y…ヒンジ部、12Z…固定部、13…弾性体、13C…弾性体、14…バンプ、14A…バンプ、14C…導電膜、14P…接続パッド、14W…ピエゾ抵抗層、15…貫通配線部、16…第1の主面、17…第2の主面、20、20A、20D…配線板、21…配線層、22、22A…接続パッド、23…貫通部、30…弾性体、101…触覚センサユニット、110…センサチップ、111…半導体基板、112…カンチレバー、112Y…ピエゾ抵抗層、113…弾性体、114…接続パッド、120…配線板、122…接続パッド、131…ワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変形を検出するピエゾ抵抗層が形成されたカンチレバーを有する半導体基板と、前記カンチレバーを内部に埋め込んだ弾性体と、前記ピエゾ抵抗層と接続された接続用電極と、を有するセンサチップと
接続パッド、および、前記接続パッドと接続された配線層、を有する配線板と、を具備し、
前記接続用電極と前記接続パッドとを介して、前記センサチップが前記配線板にフリップチップ実装されていることを特徴とする触覚センサユニット。
【請求項2】
前記配線板に前記センサチップの前記弾性体を挿通可能な貫通部が形成されており、
前記貫通部に挿通された、前記配線板の板厚よりも厚さが厚い前記弾性体の表面が、前記配線板の表面から突出していることを特徴とする請求項1に記載の触覚センサユニット。
【請求項3】
前記半導体基板に、前記弾性体が形成された第1の主面と、前記第1の主面と対向する第2の主面と、を貫通する貫通配線部が形成されており、前記ピエゾ抵抗層が前記貫通配線部を介して前記第2の主面に形成された前記接続用電極と接続されていることを特徴とする請求項1に記載の触覚センサユニット。
【請求項4】
前記カンチレバーが、前記半導体基板(の第1の主面)に対して直立していることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の触覚センサユニット。
【請求項5】
前記半導体基板が、変形方向が互いに直交する複数のカンチレバーを有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の触覚センサユニット。
【請求項6】
前記弾性体である第1の弾性体を覆う第2の弾性体を有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の触覚センサユニット。
【請求項7】
前記第1の弾性体の弾性率と前記第2の弾性体の弾性率とが異なることを特徴とする請求項6に記載の触覚センサユニット。
【請求項8】
前記第1の弾性体が、前記第2の弾性体よりも弾性率が小さいことを特徴とする請求項6に記載の触覚センサユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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